以下、本発明に係るパワートレインについて実施形態毎に説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態に係るパワートレイン1は、駆動源としてのエンジン2、該エンジン2の出力軸20に連結されたダンパ3、及び、該ダンパ3の出力軸41にエンジン遮断クラッチ4を介して連絡された変速機構6を備えている。なお、パワートレイン1は、ダンパ3に代えて、トルクコンバータを備えてもよい。
変速機構6は、例えばFR(フロントエンジンリヤドライブ)車に搭載される縦置き式の自動変速機を構成するものである。以下、説明の便宜上、変速機構6の軸心方向に関して、駆動源側(図1の左側)をフロント側、駆動輪側(反駆動源側)(図1の右側)をリヤ側として説明する。
変速機構6は、その軸心に沿って延びる入力軸51と、該入力軸51と同一軸線上において入力軸51よりもリヤ側に配置された出力軸26とを備えている。
変速機構6の入力軸51は、ダンパ3及びエンジン遮断クラッチ4を介してエンジン2に連絡されており、エンジン遮断クラッチ4の締結状態において、エンジン2の出力回転が入力軸51に入力される。変速機構6の出力軸26は、差動装置(図示せず)を介して駆動輪(図示せず)に連絡されており、変速機構6から差動装置に伝達された動力は、走行状況に応じた回転差となるように左右の駆動輪に伝達される。
次に、変速機構6の構成の一例について説明する。変速機構6は、例えば前進8段、後退1段の有段式とされている。変速機構6は、例えば、複数のプラネタリギヤセット(以下、単に「ギヤセット」という)PG1,PG2,PG3,PG4、複数のクラッチCL1,CL2,CL3、及び、複数のブレーキBR1,BR2を備えている。
複数のギヤセットとしては、フロント側から、ダブルピニオン型の第1、第2ギヤセットPG1,PG2、シングルピニオン型の第3、第4ギヤセットPG3,PG4がこの順で配設されている。
第2ギヤセットPG2と第3ギヤセットPG3との間には、第1クラッチCL1が配設され、第3ギヤセットPG3と第4ギヤセットPG4との間には、フロント側から第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3がこの順で配設されている。第1ギヤセットPG1のフロント側には、フロント側から第1、第2ブレーキBR1,BR2がこの順で配設されている。
前記第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4は、それぞれ3つの回転要素を有し、これらの回転要素として、第1ギヤセットPG1は、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、第1キャリヤC1を有し、第2ギヤセットPG2は、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、第2キャリヤC2を有し、第3ギヤセットPG3は、第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、第3キャリヤC3を有し、第4ギヤセットPG4は、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、第4キャリヤC4を有する。
ここで、ダブルピニオン型の第1、第2ギヤセットPG1,PG2は、第1、第2サンギヤS1,S2にそれぞれ噛み合わされた第1ピニオンと、該第1ピニオンと第1、第2リングギヤR1,R2とにそれぞれ噛み合わされた第2ピニオンとを有し、これらのピニオンが第1、第2キャリヤC1,C2にそれぞれ支持されている。また、シングルピニオン型の第3、第4ギヤセットPG3,PG4は、第3、第4サンギヤS3,S4と第3、第4リングギヤR3,R4とにそれぞれ噛み合わされたピニオンを有し、これらのピニオンが第3、第4キャリヤC3,C4にそれぞれ支持されている。
この変速機構6においては、第1サンギヤS1と第3リングギヤR3、第1リングギヤR1と第4リングギヤR4、第2サンギヤS2と第4キャリヤC4、及び、第2リングギヤR2と第3キャリヤC3とが、それぞれ常時連結されている。そして、入力軸51は、第2サンギヤS2及び第4キャリヤC4に常時連結され、出力軸26は、第1リングギヤR1及び第4リングギヤR4に常時連結されている。
また、第1クラッチCL1は、第2キャリヤC2と第3サンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2クラッチCL2は、第3サンギヤS3と第3リングギヤR3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第3クラッチCL3は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
さらに、第1ブレーキBR1は、変速機ケース10と第2キャリヤC2との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2ブレーキBR2は、変速機ケース10と第1キャリヤC1との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
この変速機構6によれば、以上の構成において、図2の締結表に示すように、5つの摩擦締結要素から3つの摩擦締結要素を選択的に締結することにより、前進の1〜8速及び後退速が形成される。
ただし、以上で説明した変速機構6の構成は一例に過ぎず、変速機構6の具体的な構成は特に限定されるものでない。
図1に示すように、上記のエンジン遮断クラッチ4は、ダンパ3の出力軸41を構成する第1回転部材22と、変速機構6の入力軸51を構成する第2回転部材24とを断接するものである。エンジン遮断クラッチ4、第1回転部材22及び第2回転部材24は、いずれも変速機構6の軸心上に配置されている。
車両走行中において、エンジン遮断クラッチ4は基本的には締結されているが、走行時アイドルストップの実行によってエンジン2が停止されたときなど、必要に応じてエンジン遮断クラッチ4が解放されることで、エンジン2と駆動輪との間の動力伝達が遮断される。
本実施形態では、エンジン遮断クラッチ4が解放されることにより、車両走行中にエンジン2が自動停止された状態でも、駆動輪側の回転を利用して後述のオイルポンプ38を駆動できるようになっている。これにより、電動オイルポンプの使用頻度が低減されることで電力消費の抑制を実現できたり、電動オイルポンプを廃止したりすることが可能になる。なお、車両走行中にエンジン遮断クラッチ4が解放されることで、コースト走行を行うことも可能である。
エンジン2側の第1回転部材22と駆動輪側の第2回転部材24との間には、エンジン遮断クラッチ4と並列にワンウェイクラッチ5が設けられている。ワンウェイクラッチ5は、第1回転部材22の回転数に比べて第2回転部材24の回転数が高いときにフリーとなり、第1回転部材22の回転数が第2回転部材24の回転数に到達するまで上昇したときにロックされるように構成されている。
このようなワンウェイクラッチ5が設けられていることにより、例えば、ワンウェイクラッチ5がロック状態とされた車両走行中にエンジン遮断クラッチ4が解放され、エンジン2が自動停止されると、エンジン回転数(第1回転部材22の回転数)が駆動輪側の第2回転部材24の回転数未満に低下するまでの間、ワンウェイクラッチ5のロック状態が継続されるため、エンジン2の空吹きを抑制できる。
その後、ワンウェイクラッチ5がフリーとなった状態でエンジン2が再始動されると、エンジン回転数が駆動輪側の第2回転部材24の回転数に到達したときにワンウェイクラッチ5がロックされ、これにより、第1回転部材22と第2回転部材24が同じ回転数で回転する状態でエンジン遮断クラッチ4が締結されることで、締結ショックを抑制できる。
なお、ワンウェイクラッチ5の具体的な構成は限定されるものでないが、後に、ワンウェイクラッチ5の構成の一例について説明する。
また、パワートレイン1は、変速機構6の入力軸51から偏心させた位置に、該入力軸51に平行な支持軸28が配設されている。支持軸28は、軸受を介して変速機ケース10に回転自在に支持されている。支持軸28上には機械式のオイルポンプ38が設けられており、支持軸28の回転によってオイルポンプ38が駆動される。オイルポンプ38は、エンジン遮断クラッチ4及び変速機構6の各摩擦締結要素CL1,CL2,CL3,BR1,BR2の油圧室や、変速機ケース10内の各種被潤滑部等にオイルを供給する。
支持軸28は、巻掛け伝動機構30を介して入力軸51に駆動連結されている。巻掛け伝動機構30は、第2回転部材24に設けられた駆動スプロケット32と、支持軸28に設けられた被動スプロケット34と、駆動スプロケット32及び被動スプロケット34に巻き掛けられたチェーン36とを備えている。これにより、駆動スプロケット32から出力された第2回転部材24の回転が、チェーン36及び被動スプロケット34を介して支持軸28に入力される。
なお、駆動スプロケット32の径と被動スプロケット34の径を等しくすることで、支持軸28を第2回転部材24と同じ回転数で回転させることができるが、被動スプロケット34を駆動スプロケット32よりも小径とすることで、第2回転部材24よりも増速された回転を支持軸28に入力させたり、被動スプロケット34を駆動スプロケット32よりも大径とすることで、第2回転部材24よりも還俗された回転を支持軸28に入力させたりしてもよい。
このように、エンジン遮断クラッチ4よりも駆動輪側の第2回転部材24の回転を利用してオイルポンプ38を駆動可能となっているため、車両走行中にエンジン2が停止されたときにも、エンジン遮断クラッチ4を解放することで、駆動輪側の回転を利用してオイルポンプ38の駆動を継続し、該オイルポンプ38によって所要のオイル供給を行うことができる。
支持軸28上には、被動スプロケット34とオイルポンプ38のみが設けられている。支持軸28は、専らオイルポンプ38のロータを回転させるために設けられた専用部材であって、トルクを伝達する必要はないため、小径の支持軸28を用いることができる。したがって、小径の支持軸28上に設けられるオイルポンプ38のロータ及びステータも小径に構成することができ、これにより、変速機ケース10のコンパクト化を図ることができる。
また、支持軸28上にオイルポンプ38と被動スプロケット34以外の部品を配置する必要がないことから、軸方向においてオイルポンプ38の設置スペースを確保しやすく、これにより、オイルポンプ38の容量を増大させやすい。
続いて、図3〜図5を参照しながら、パワートレイン1の要部の具体的な構成について説明する。
図3に示すように、変速機ケース10は、筒状の第1ケース部材11と、第1ケース部材11の内周側に配設された第2ケース部材12及び第3ケース部材13とを備えている。第2ケース部材12は、第1ケース部材11に例えばボルトにより固定されており、第3ケース部材13は、第2ケース部材12のフロント側に配置されており、第2ケース部材12に例えばボルトにより固定されている。
第2ケース部材12は、第1ケース部材11の内周側に隣接して配置された筒状部12aと、該筒状部12aのリヤ側端部から径方向内側に延びるリヤ側縦壁部12bと、リヤ側縦壁部12bの内周端部から軸方向両側に延びるリヤ側ボス部12cとを備えている。
第3ケース部材13は、第2ケース部材12の筒状部12aのフロント側端部に結合されており、該結合部から径方向内側に延びるフロント側縦壁部13aと、フロント側縦壁部13aの内周端部から軸方向両側に延びるフロント側ボス部13bとを備えている。
第2ケース部材12の筒状部12aの内側において、フロント側縦壁部13aとリヤ側縦壁部12bとの間には、エンジン遮断クラッチ4、変速機構6の第1ブレーキBR1、第1回転部材22のリヤ側の一部、及び、第2回転部材24のフロント側の一部が配設されている。
第1回転部材22は、変速機構6の軸心に配置されたダンパ3の出力軸41を有する。出力軸41は、フロント側ボス部13bの内側に嵌合されている。
また、第1回転部材22は、出力軸41のリヤ側端部に一体に連なるベース部42を備えている。ベース部42は、出力軸41及びフロント側ボス部13bよりも大径とされている。ベース部42は、エンジン遮断クラッチ4の内周側に配置されており、該エンジン遮断クラッチ4を径方向内側から支持している。
ベース部42は、フロント側へ軸方向に延びる環状のフロント側延長部42aと、リヤ側へ軸方向に延びるリヤ側延長部42bとを備えている。フロント側延長部42aは、フロント側ボス部13bの外側に嵌合されており、該フロント側ボス部13bにラジアルベアリング80を介して回転自在に支持されている。リヤ側延長部42bは、エンジン遮断クラッチ4よりもリヤ側に配置されている。リヤ側延長部42bは、変速機ケース10のフロント側ボス部13bの外周面よりも大径とされ、ベース部42のフロント側延長部42aの外周面よりも小径とされている。ベース部42のリヤ側延長部42bの軸心には、軸方向に延びてリヤ側に開放した係合穴42cが設けられている。
さらに、第1回転部材22は、ベース部42とは別体の環状部46を備えており、該環状部46は、ベース部42の外周面に固定されている。なお、環状部46はベース部42と一体に設けられてもよい。
また、第1回転部材22は、環状部46よりもリヤ側においてベース部42から径方向外側に延びる第1フランジ部43と、該第1フランジ部43の外周端部からフロント側へ軸方向に延びるエンジン遮断クラッチ4の内側回転部44と、該内側回転部44から径方向外側に延びる第2フランジ部45とを備えている。ベース部42、第1フランジ部43、内側回転部44及び第2フランジ部45は、全て一体に設けられているが、これらは、相互に結合された複数の別体の部品で構成されてもよい。
第1回転部材22の環状部46と第1フランジ部43との間には、エンジン遮断クラッチ4の締結ピストン64の内周側の一部とリターンスプリング65が配設されており、環状部46と締結ピストン64との間に、エンジン遮断クラッチ4の締結油圧室69が形成されている。
第2回転部材24は、変速機構6の入力軸51を有し、該入力軸51は、リヤ側ボス部12cの内側に嵌合されている。入力軸51のフロント側端部には、第1回転部材22の係合穴42cに挿入される内側嵌合部51aが一体に設けられている。内側嵌合部51aは、入力軸51のリヤ側ボス部12cに嵌合された部分に比べて小径とされている。内側嵌合部51aは、例えばブッシュ81を介して相対回転自在に第1回転部材22のベース部42の内側に嵌合支持されている。
また、第2回転部材24は、入力軸51から径方向外側に延びる第1フランジ部51bと、第1フランジ部51bの外周端部からフロント側へ軸方向に延びる外側嵌合部52と、外側嵌合部52のフロント側端部から径方向外側に延びる第2フランジ部53と、第2フランジ部53の外周端部からフロント側へ軸方向に延びるエンジン遮断クラッチ4の外側回転部55とを備えている。
第1フランジ部51bは、入力軸51と一体に設けられている。第1フランジ部51bは、ベース部42のリヤ側に隣接して配置されており、第1フランジ部51bとベース部42のリヤ側端面との間にはスラストベアリング83が介装されている。
外側嵌合部52は、そのリヤ側端部において第1フランジ部51bの外周端部に例えば溶接により固定されている。ただし、外側嵌合部52は、第1フランジ部51bと一体に設けられてもよい。外側嵌合部52は、内側嵌合部51aと軸方向にオーバラップして配置されている。外側嵌合部52は、ベース部42のリヤ側延長部42bの外側にラジアルベアリング82を介して相対回転自在に嵌合支持されている。
外側嵌合部52の外周面には、上述の駆動スプロケット32が一体に設けられている。ただし、外側嵌合部52とは別体の駆動スプロケット32が外側嵌合部52の外周面に固定されてもよい。駆動スプロケット32は、ベース部42のリヤ側延長部42b及びラジアルベアリング82と軸方向にオーバラップして配置されている。これにより、駆動スプロケット32は、ラジアルベアリング82を介してベース部42によって径方向内側から支持されている。
駆動スプロケット32は、変速機ケース10のフロント側ボス部13b及びベース部42のフロント側延長部42aの各外周面よりも大径とされており、第1回転部材22の内側回転部44よりも小径とされている。また、軸方向において、駆動スプロケット32は、エンジン遮断クラッチ4と変速機構6の第1ブレーキBR1との間に配置されている。
第2フランジ部53は、外側嵌合部52のフロント側端部に一体に連なっている。ただし、外側嵌合部52とは別体の第2フランジ部53が外側嵌合部52に例えば溶接により結合されてもよい。第2フランジ部53は、第1回転部材22の第1フランジ部43及び第2フランジ部45のリヤ側に隣接して配置されている。
外側回転部55は、第2フランジ部53の外周端部に例えば溶接により固定されている。ただし、外側回転部55と第2フランジ部53は一体に設けられてもよい。外側回転部55は、第1回転部材22の内側回転部44の径方向外側に間隔を空けて配置されており、該内側回転部44と共にエンジン遮断クラッチ4を構成している。
エンジン遮断クラッチ4の外側回転部55は、変速機ケース10の筒状部12aの内周面に近接して対向配置されており、このように配置された外側回転部55が第2回転部材24の一部で構成されていることにより、例えば筒状部12aに取り付けられたセンサによって、第2回転部材24の回転を検知しやすくなる。
エンジン遮断クラッチ4の内側回転部44と外側回転部55との間には、内側回転部44の外側にスプライン嵌合された内側摩擦板61と、外側回転部55の内側にスプライン嵌合された外側摩擦板62が、軸方向に交互に並べて配置されている。これらの摩擦板61,62は、軸方向のフロント側から締結ピストン64によって押し付けられることで、相互に締結される。
また、外側回転部55の内側には、第1回転部材22の第2フランジ部45のフロント側への軸方向移動を規制するスナップリング63が装着されている。これにより、第1回転部材22の第2フランジ部45と第2回転部材24の第2フランジ部53が、相互に当接ないし近接して対向配置された状態が維持されている。
これら第1及び第2回転部材22,24の第2フランジ部45,53は、ワンウェイクラッチ5を構成している。ワンウェイクラッチ5の具体的な構成は限定されるものでないが、例えば、図4に示すようなワンウェイクラッチ5が用いられる。
図4は、径方向外側から見たワンウェイクラッチ5を模式的に示す断面図であり、図4(a)は、ワンウェイクラッチ5のフリー状態、図4(b)は、ワンウェイクラッチ5のロック状態を示す。
図4(a)及び図4(b)に示すように、ワンウェイクラッチ5は、第1回転部材22の第2フランジ部45における第2回転部材24の第2フランジ部53との対向面に設けられた複数の凹部47と、第2回転部材24の第2フランジ部53に設けられた複数のストラット57とを備えている。
第1回転部材22側において、複数の凹部47は、周方向に所定の間隔を空けて設けられている。各凹部47は、リヤ側に開放するように設けられている。また、凹部47には、第1回転部材22の回転時における凹部47の移動方向とは反対側に向かってリヤ側に傾斜した係合面47aが設けられている。
第2回転部材24側において、複数のストラット57は、周方向に所定の間隔を空けて設けられている。第2回転部材24側におけるストラット57のピッチは、第1回転部材22側における凹部47のピッチよりも小さい。各ストラット57は、フロント側に開放した収容凹部56に収容されている。また、各ストラット57には、第2回転部材24の回転時における移動方向とは反対側の端部に、軸方向のフロント側に付勢するばね58の一端が取り付けられている。
図4(a)に示すように、第1回転部材22よりも高い回転数で第2回転部材24が回転しているときは、第2回転部材24側の各ストラット57は、第1回転部材22側の係合面47aに係合されることなく各凹部47を通過するため、第1回転部材22と第2回転部材24が相対的に空転するフリー状態となる。
一方、図4(b)に示すように、第1回転部材22の回転数が上昇して第2回転部材24の回転数を超えようとするとき、第1回転部材22側の凹部47に対向配置された第2回転部材24側のストラット57は、ばね58によるフロント側への付勢力によって凹部47に押し込まれ、係合面47aに係合される。このようにして一部のストラット57が係合面47aに係合されると、第1回転部材22と第2回転部材24が同じ回転数で回転するロック状態となる。
なお、図4に示す例では、第1回転部材22側に凹部47が設けられ、第2回転部材24側にストラット57が設けられているが、第1回転部材22側にストラット57を設け、第2回転部材24側に凹部47を設けてもよい。また、本実施形態において、ワンウェイクラッチ5の構成は、上記のタイプのものに限定されるものでなく、公知の種々のワンウェイクラッチを用いることができる。
図3に示すように、ワンウェイクラッチ5は、エンジン遮断クラッチ4の摩擦板61,62のリヤ側に軸方向に並べて配置されている。このように、ワンウェイクラッチ5とエンジン遮断クラッチ4の摩擦板61,62が軸方向に並べて配置されることにより、エンジン遮断クラッチ4とワンウェイクラッチ5がコンパクトに集約されたレイアウトが実現されており、これにより、パワートレイン1のコンパクト化を図ることが可能になっている。
エンジン遮断クラッチ4及びワンウェイクラッチ5のリヤ側には、変速機構6のブレーキBR1が配設されている。該ブレーキBR1は、第2回転部材24とは異なる回転数で回転する第3回転部材70と、変速機ケース10を断接するものである。
第3回転部材70は、入力軸51の外側に例えばブッシュ85を介して嵌合されたスリーブ部70aと、該スリーブ部70aのフロント側端部から径方向外側に延びるフランジ部70bと、該フランジ部70bの外周端部からフロント側へ軸方向に延びるブレーキBR1の内側回転部70cとを備えている。
スリーブ部70aは、変速機ケース10のリヤ側ボス部12cの内側に嵌合されている。なお、スリーブ部70aとリヤ側ボス部12cとの間には別の回転部材74が介在している。フランジ部70bは、軸方向において第2回転部材24の第1フランジ部51bのリヤ側に隣接して配置されている。フランジ部70bと第1フランジ部51bとの間にはスラストベアリング84が介装されている。フランジ部70bは、上述の駆動スプロケット32とリヤ側ボス部12cとの間を通るように配置されている。
ブレーキBR1の内側回転部70cは、エンジン遮断クラッチ4の内側回転部44と略同じ径を有する。ブレーキBR1の内側回転部70cの外側には内側摩擦板71がスプライン嵌合されており、変速機ケース10の筒状部12aの内側には外側摩擦板72がスプライン嵌合されている。これらの摩擦板71,72は、軸方向に交互に並べて配置されており、軸方向のリヤ側から締結ピストン73によって押し付けられることで相互に締結される。
以上で説明した第1実施形態によれば、車両走行中にエンジン2が停止されたときでも、エンジン遮断クラッチ4が解放されることで、駆動輪側の第2回転部材24上に設けられた駆動スプロケット32から取り出された回転を、図5に模式的に示す巻掛け伝動機構30を介して、変速機構6の軸心から偏心された支持軸28に伝達することができ、これにより、該支持軸28上のオイルポンプ38を駆動することができる。
ここで、駆動スプロケット32には、チェーン36によって被動スプロケット34側へ引っ張る力が軸方向に直角な方向に作用するが、駆動スプロケット32は、エンジン遮断クラッチ4(図3参照)を支持する第1回転部材22のベース部42の外側に嵌合されていることから、該ベース部42によって安定的に支持することができる。
また、走行時アイドルストップが実行されても、エンジン2及び第1回転部材22は惰性による回転を継続するため、回転状態の第1回転部材22によって第2回転部材24上の駆動スプロケット32が支持されることで、第1回転部材22と駆動スプロケット32との間に大きな回転差が生じることを抑制でき、これにより、駆動スプロケット32の回転抵抗を軽減することができる。
[第2実施形態]
続いて、図6の断面図を参照しながら、本発明の第2実施形態に係るパワートレインの要部の構成について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素については、説明を省略するとともに、図6において第1実施形態と同じ符号を付している。
図6に示すように、第2実施形態においても、変速機ケース10の第2ケース部材12の筒状部12aの内側において、フロント側縦壁部13aとリヤ側縦壁部12bとの間には、エンジン遮断クラッチ104、変速機構のブレーキBR11、第1回転部材22のリヤ側の一部、及び、第2回転部材24のフロント側の一部が配設されている。
第1回転部材22は、第1実施形態と同様の出力軸41とベース部42に加えて、ベース部42のフロント側延長部42aから径方向外側に延びるフランジ部143と、該フランジ部143の外周端部からリヤ側へ軸方向に延びるエンジン遮断クラッチ104の外側回転部144とを備えている。なお、フランジ部143は、ベース部42とは別体とされ、外側回転部144はフランジ部143と一体とされている。
フランジ部143のリヤ側には、エンジン遮断クラッチ104の締結ピストン165及びリターンスプリング166が配置されており、フランジ部143と締結ピストン165との間に、エンジン遮断クラッチ104の締結油圧室169が形成されている。
第2回転部材24は、変速機構6の入力軸51と、入力軸51のフロント側端部から径方向外側に延びる第1フランジ部51bと、第1フランジ部51bの外周端部からフロント側へ軸方向に延びる外側嵌合部52と、外側嵌合部52のフロント側端部から径方向外側に延びる第2フランジ部153と、第2フランジ部153の外周端部からフロント側へ軸方向に延びるエンジン遮断クラッチ104の内側回転部154とを備えている。
第1フランジ部51bは、入力軸51と一体に設けられている。第1フランジ部51bは、ベース部42のリヤ側に隣接して配置されており、第1フランジ部51bとベース部42のリヤ側端面との間にはスラストベアリング83が介装されている。
外側嵌合部52は、そのリヤ側端部において第1フランジ部51bの外周端部に例えば溶接により固定されている。ただし、外側嵌合部52は、第1フランジ部51bと一体に設けられてもよい。外側嵌合部52は、ベース部42のリヤ側延長部42bの外側にラジアルベアリング82を介して相対回転自在に嵌合支持されている。
外側嵌合部52の外周面には、駆動スプロケット32が一体に設けられている。ただし、外側嵌合部52とは別体の駆動スプロケット32が外側嵌合部52の外周面に固定されてもよい。駆動スプロケット32は、ベース部42のリヤ側延長部42b及びラジアルベアリング82と軸方向にオーバラップして配置されている。これにより、駆動スプロケット32は、ラジアルベアリング82を介してベース部42によって径方向内側から支持されている。
駆動スプロケット32は、変速機ケース10のフロント側ボス部13bよりも大径とされており、エンジン遮断クラッチ104の内側回転部154よりも小径とされている。また、軸方向において、駆動スプロケット32は、エンジン遮断クラッチ104と変速機構6のブレーキBR1との間に配置されている。
第2フランジ部153は、外側嵌合部52のフロント側端部に一体に連なっている。ただし、外側嵌合部52とは別体の第2フランジ部153が外側嵌合部52に例えば溶接により結合されてもよい。
内側回転部154は、第2フランジ部153の外周端部に一体に連なっている。ただし、内側回転部154と第2フランジ部153は、例えば溶接により固定されてもよい。内側回転部154は、第1回転部材22の外側回転部144の径方向内側に間隔を空けて配置されており、該外側回転部144と共にエンジン遮断クラッチ104を構成している。
エンジン遮断クラッチ104の内側回転部154と外側回転部144との間には、内側回転部154の外側にスプライン嵌合された内側摩擦板161と、外側回転部144の内側にスプライン嵌合された外側摩擦板162が、軸方向に交互に並べて配置されている。これらの摩擦板161,162は、軸方向のフロント側から締結ピストン165によって押し付けられることで、相互に締結される。
また、外側回転部144の内側には、環状の第1部品145がスプライン嵌合され、内側回転部154の外側には、環状の第2部品155がスプライン嵌合されている。これにより、第1部品145は、第1回転部材22と常時一体回転し、第2部品155は、第2回転部材24と常時一体回転する。第1部品145と第2部品155は、ワンウェイクラッチ5の構成部品である。
第1部品145は、摩擦板161,162のリヤ側に隣接して配置されており、更にそのリヤ側に、第2部品155が隣接して配置されている。第1部品145は、外側回転部144の内側に装着されたスナップリング163によりリヤ側への軸方向移動が規制されている。第1部品145は、第2部品155の径方向外側を通ってリヤ側へ突出した部分を有し、該突出部分に装着されたスナップリング164によって、第2部品155のリヤ側への軸方向移動が規制されている。
第2実施形態において、ワンウェイクラッチ5は、第1部品145と第2部品155とを断接するものである。ワンウェイクラッチ5の構成は限定されるものでないが、例えば、上述した図4に示す構成のワンウェイクラッチ5が用いられる。この場合、第1部品145に凹部47、第2部品155にストラット57を設けてもよいし、第1部品145にストラット57、第2部品155に凹部47を設けてもよい。また、その他の種々のタイプのワンウェイクラッチが用いられてもよい。
第2実施形態では、ワンウェイクラッチ5を構成する第1部品145及び第2部品155が、第1回転部材22及び第2回転部材24とは別体であることにより、簡素な形状に形成されている。そのため、ワンウェイクラッチの組付性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
第2実施形態においても、ワンウェイクラッチ5は、エンジン遮断クラッチ104の摩擦板161,162のリヤ側に軸方向に並べて配置されている。このようにエンジン遮断クラッチ104とワンウェイクラッチ5がコンパクトに集約されたレイアウトによって、パワートレインのコンパクト化を図ることが可能になっている。
エンジン遮断クラッチ104及びワンウェイクラッチ5のリヤ側には、変速機構のブレーキBR11が配設されている。該ブレーキBR11は、第2回転部材24とは異なる回転数で回転する第4回転部材170と、変速機ケース10を断接するものである。
第4回転部材170は、入力軸51の外側に例えばブッシュ185を介して嵌合されたスリーブ部170aと、該スリーブ部170aのフロント側端部から径方向外側に延びるフランジ部170bと、該フランジ部170bの外周端部からリヤ側へ軸方向に延びるブレーキBR11の内側回転部170cとを備えている。
スリーブ部170aは、変速機ケース10のリヤ側ボス部12cの内側に例えばブッシュ186を介して嵌合されている。フランジ部170bは、軸方向において第2回転部材24の第1フランジ部51bのリヤ側に隣接して配置されている。フランジ部170bと第1フランジ部51bとの間にはスラストベアリング184が介装されている。フランジ部170bは、駆動スプロケット32とリヤ側ボス部12cとの間を通るように配置されている。
ブレーキBR11の内側回転部170cは、エンジン遮断クラッチ104の内側回転部154よりも大径とされ、外側回転部144よりも小径とされている。ブレーキBR11の内側回転部170cの外側には内側摩擦板171がスプライン嵌合されており、変速機ケース10の筒状部12aの内側には外側摩擦板172がスプライン嵌合されている。これらの摩擦板171,172は、軸方向に交互に並べて配置されており、軸方向のリヤ側から締結ピストン173によって押し付けられることで相互に締結される。
以上の第2実施形態においても、車両走行中にエンジンが停止されたとき、エンジン遮断クラッチ104が解放されることで、駆動輪側の第2回転部材24上に設けられた駆動スプロケット32から取り出された回転を、巻掛け伝動機構30を介して、変速機構の軸心から偏心された支持軸28に伝達することができ、これにより、該支持軸28上のオイルポンプ38を駆動することができる。
そして、チェーン36によって軸方向に直角な方向に引っ張る力が作用する駆動スプロケット32は、エンジン遮断クラッチ104を支持する第1回転部材22のベース部42によって、径方向内側から安定的に支持される。
また、走行時アイドルストップが実行されても、第1回転部材22は惰性による回転を継続するため、回転状態の第1回転部材22によって第2回転部材24上の駆動スプロケット32が支持されることで、第1回転部材22と駆動スプロケット32との間に大きな回転差が生じることを抑制でき、これにより、駆動スプロケット32の回転抵抗を軽減することができる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、変速機構の軸心上の回転出力部として駆動スプロケット32が設けられ、オイルポンプ38が設けられた支持軸28上の回転入力部として被動スプロケット34が設けられ、これらのスプロケット32,34が巻掛け部材としてのチェーン36を介して駆動連結される例を説明したが、本発明において、回転出力部及び回転入力部は、スプロケットに限定されるものでなく、歯車やプーリ等を用いてもよい。すなわち、本発明では、回転出力部と支持軸を駆動連結する機構として、種々の噛み合い伝動機構ないし巻掛け伝動機構を採用し得る。