以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《紫外線硬化型組成物》
まず、本発明の紫外線硬化型組成物について説明する。
本発明の紫外線硬化型組成物は、紫外線の照射により重合する重合性化合物と、金属粉末とを含むものである。
ところで、従来から、光沢感のある外観を呈する装飾品の製造方法として、金属めっきや、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写等が用いられてきた。
しかし、これらの方法では、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難であるといった問題があった。
他方、顔料または染料を含む組成物を、インクジェット法等の方法により、記録媒体に付与する記録方法が用いられている。このような方法では、微細なパターンの形成や、曲面部への記録にも好適に適用できるという点で優れている。また、近年、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型組成物)が用いられている。
しかしながら、紫外線硬化型組成物では、顔料や染料の代わりに、金属粉末を適用しようとした場合、当該金属が本来有している光沢感等の特性を十分に発揮させることができないという問題点があり、また、組成物の安定性(保存安定性)に劣り、ゲル化による粘度上昇による吐出安定性の低下等の問題を引き起こす。また、金属粉末を含む組成物を用いた場合、顔料または染料を含む組成物を用いた場合に比べて、摩擦による外観の変化が大きいという問題点があった。
そこで、発明者は、上記のような問題を解決する目的で鋭意研究を行った結果、本発明に至った。すなわち、本発明の紫外線硬化型組成物は、重合性化合物および金属粉末に加え、さらに、フッ素原子を含有するデンドリック高分子(樹状高分子)を含むものである。これにより、紫外線硬化型組成物中における金属粉末の分散安定性を優れたものとし、紫外線硬化型組成物の保存安定性、長期間にわたる吐出安定性を優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、金属粉末を印刷部の外表面付近に好適に配列させることができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等の特性を十分に発揮させることができる。また、金属粉末とともにフッ素原子を含有するデンドリック高分子(フッ素含有粉末)も印刷部の外表面付近に好適に配置させることができ、印刷部の耐擦性を優れたものとし、摩擦による外観の変化(例えば、光沢感の低下、審美性(美的外観)の低下等)を効果的に防止することができる。このような優れた効果は、フッ素原子を含有するデンドリック高分子(樹状高分子)は、高度な分岐構造(ハイパーブランチ構造)を有しており、一般的なフッ素系材料(例えば、PTFEやPVDF等のフッ素系樹脂)に比べて嵩高く、比重が比較的小さいものであるため、紫外線硬化型組成物中における分散安定性に優れていることにより、発揮されるものと考えられる。また、デンドリック高分子は、一般に、高い球形度(真球度)を有する粒子状の樹状高分子であり、高い対称性を有しているとともに、通常の高分子材料とは異なり、分子量分布が非常にシャープであり、粒度分布も非常にシャープであるという特徴を有している。その結果、紫外線硬化型組成物のチクソ性を効果的に抑制することができるものと考えられる。また、合成時には、世代(デンドロン部分の分岐回数)の制御によって、容易かつ確実に、所望の大きさの粒子を得ることができるという特徴を有している。これらの優れた特徴から、上記のような優れた効果を安定的に発揮させることができる。また、フッ素原子を含有するデンドリック高分子(樹状高分子)の合成原料(特に、デンドロン部分の構成成分)が有するフッ素原子の位置や存在比率等を調整することにより、デンドリック高分子(フッ素含有粉末)の表面自由エネルギーや重合性化合物等との親和性等を好適に調整することができる。その結果、優れた耐擦性と印刷部の膜強度とを高いレベルで両立することができる。
これに対し、紫外線硬化型組成物がフッ素原子を含有するデンドリック高分子(フッ素含有粉末)を含有しない場合には、紫外線硬化型組成物を用いて形成された印刷部の耐擦性を十分に優れたものとすることができない。また、紫外線硬化型組成物の保存安定性も低下する。
また、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の代わりに、単なるフッ素系材料で構成された粉末(例えば、粉砕法等の方法により得られた粉末等)を含む場合にも、上記のような優れた効果は得られない。より具体的には、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の代わりに、単なるフッ素系材料で構成された粉末を含む場合には、フッ素系材料で構成された粉末の比重が高く、長期間の保管においてフッ素系材料で構成された粉末の凝集や沈降がおこりやすく、紫外線硬化型組成物の保存安定性を十分に優れたものとすることが困難となったり、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感、耐擦性を十分に優れたものとすることが困難となる。
本発明の紫外線硬化型組成物は、いかなる方法で記録媒体上に付与されるものであってもよいが、インクジェット法により付与(吐出)されるものであるのが好ましい。インクジェット法では、微細なパターンの形成や、曲面部への記録にも好適に適用できる。また、インクジェット法では、インク(紫外線硬化型組成物)がノズル等の微細な流路を通過する必要があるが、インク(紫外線硬化型組成物)の保存安定性が劣る場合に、このような部位で固形分の凝集・析出が発生したり、ゲル化による粘度上昇によって、吐出安定性が低下し、所望のパターン(印刷部)の形成をすることができないという問題があったが、本発明では、インクジェット法に紫外線硬化型組成物を適用した場合であっても、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、紫外線硬化型組成物がインクジェット法に適用されるものである場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。以下の説明では、本発明の紫外線硬化型組成物がインクジェット法に適用される場合について中心的に説明する。
<金属粉末>
金属粉末の構成粒子は、少なくとも、外観上視認される部位(例えば、表面付近)が金属材料で構成されたものであればよく、例えば、全体が金属材料で構成されたものであってもよいし、非金属材料で構成された基部と、当該基部を被覆する金属材料で構成された被膜とを有するものであってもよい。また、少なくとも表面付近を含む領域が金属材料で構成された母粒子に対し、表面処理剤による表面処理層が設けられたものであってもよい。
また、金属粉末の構成粒子を構成する金属材料としては、単体としての金属や各種合金等を用いることができるが、当該金属材料は、主としてAlで構成されたものであるのが好ましい。
これにより、記録物の生産コストの上昇を抑制しつつ、記録物の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができる。また、Alは、本来、各種金属材料の中でも特に優れた光沢感を呈するものであるが、紫外線硬化型組成物に、Alで構成された粒子を適用しようとした場合に、紫外線硬化型組成物の保存安定性は特に低いものとなり、ゲル化による粘度上昇による吐出安定性の低下等の問題が特に発生し易いことを本発明者は見出していた。これに対し、本発明では、Alで構成された粒子を用いた場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、金属粉末を構成する金属材料が主としてAlで構成されたものである場合に、本発明の効果がより顕著に発揮される。
金属粉末は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、気相成膜法により金属材料で構成された膜を形成し、その後、当該膜を粉砕することにより得られたものであるのが好ましい。これにより、本発明の紫外線硬化型組成物を用いて形成されるパターン(印刷部)において、金属材料が本来有している光沢感等をより効果的に表現させることができる。また、各粒子間での特性のばらつきを抑制することができる。また、当該方法を用いることにより、比較的薄い金属粉末であっても好適に製造することができる。
このような方法を用いて金属粉末を製造する場合、例えば、基材上に、金属材料で構成された膜の形成(成膜)を行うことにより、金属粉末を好適に製造することができる。前記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルム等を用いることができる。また、基材は、成膜面に離型剤層を有するものであってもよい。
また、前記粉砕は、液体中において、前記膜に超音波振動を付与することにより行われるものであるのが好ましい。これにより、後述するような粒径の金属粉末を容易かつ確実に得ることができるとともに、各粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきの発生を抑制することができる。
また、上記のような方法で、粉砕を行う場合、前記液体としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン等の炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン等のエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、アセトニトリル等の極性化合物を好適に用いることができる。このような液体を用いることにより、金属粉末の不本意な酸化等を防止しつつ、金属粉末の生産性を特に優れたものとし、また、各粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきを特に小さいものとすることができる。
以下、金属粉末の構成粒子が、母粒子(少なくとも表面付近を含む領域が金属材料で構成された母粒子)に対し、表面処理剤による表面処理が施されたものである場合について説明する。
表面処理剤は、紫外線硬化型組成物中における金属粉末(粒子)の分散安定性を高め、インクジェット法による吐出安定性を向上させる機能を有する。また、金属粉末の表面エネルギーが低下するよう表面処理されたものであれば、紫外線硬化型組成物の構成材料として表面張力の低い重合性化合物を用いた場合であっても、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、確実に金属粉末を印刷部の外表面付近により好適に配列(リーフィング)させることができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等の特性をより効果的に発揮させることができる。したがって、重合性化合物の選択の幅が広がり、金属材料が本体有している光沢感を犠牲にすることなく、紫外線硬化型組成物の特性や紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の特性(例えば、紫外線硬化型組成物の粘度、保存安定性、吐出安定性、記録物の耐擦性等)を容易に調整することができる。
表面処理剤としては、例えば、炭素数が2以上4以下の置換基を有していてもよいアルキル基を有する短鎖化合物、炭素数が8以上20以下の置換基を有していてもよいアルキル基を有する長鎖化合物、シラン化合物、リン酸化合物、カルボン酸、イソシアネート化合物等を用いることができる。
短鎖化合物が有するアルキル基および/または長鎖化合物が有するアルキル基が置換基を有するものである場合、当該置換基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲノ基、水酸基等が挙げられる。
シラン化合物としては、ケイ素原子に、水素原子および/または炭化水素基(水素原子の一部または全部が他の原子または原子団で置換されたものを含む)が直接結合した構造を有する化合物を用いることができる。
より具体的には、シラン化合物しては、例えば、水素化ケイ素(SinH2n+2(ただし、nは、1以上の整数である。))、HaSiR(4−a)(ただし、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基、aは、1以上4以下の整数である。)等を用いることができる。
リン酸化合物としては、例えば、炭素数が6以上のアルキル基を、分子内に少なくとも1つ有する化合物(長鎖アルキル系リン酸化合物)を用いることができる。
特に、リン酸化合物(長鎖アルキル系リン酸化合物)は、下記式(1)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
PORn(OH)3−n (1)
(式(1)中、Rは、CH3(CH2)m−、CH3(CH2)m(CH2O)l−、CH3(CH2)m(CH2CH2O)l−または、CH3(CH2)mO−であり、nは1以上3以下の整数であり、mは5以上19以下の整数であり、lは2以上20以下の整数である。)
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとし、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(1)中、mは、5以上19以下の整数であるのが好ましいが、7以上17以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(1)中、lは、2以上20以下の整数であるのが好ましいが、4以上16以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
カルボン酸としては、炭化水素基と、カルボキシル基とを有する化合物(脂肪酸)を用いることができる。このような化合物の具体例としては、デカン酸、テトラデカン酸、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸等を挙げることができる。
イソシアネート化合物としては、−N=C=Oで表される部分構造を有する化合物を用いることができる。このような化合物は、金属粉末(母粒子)を構成する金属材料と反応することにより、−NHCOO−で表される部分構造を有するものとして、粒子(母粒子)の表面を修飾することとなるが、−NHCOO−で表される部分構造においては、水素結合の力が働く。このため、粒子の表面に緻密な表面処理を施すことができ、上記のような効果を顕著に発揮させることができる。
イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物を用いることができる。
イソシアネート化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化学構造を有するものを用いることができる。
RNCO (2)
(式(2)中、Rは、CH3(CH2)m−であり、mは2以上18以下の整数である。)
式(2)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましく、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。
表面処理剤としては、例えば、フッ素系化合物(フッ素系表面処理剤)を用いてもよい。
これにより、紫外線硬化型組成物中における金属粉末の分散安定性および化学的安定性を特に優れたものとし、紫外線硬化型組成物の保存安定性、長期間にわたる吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、金属粉末(フッ素系表面処理剤で表面処理された金属粉末)をフッ素原子を含有するデンドリック高分子とともに印刷部の外表面付近に好適に配置させることができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等の特性を十分に発揮させることができるとともに、印刷部の耐擦性を特に優れたものとし、摩擦による外観の変化(例えば、光沢感の低下、審美性(美的外観)の低下等)をより効果的に防止することができる。特に、金属粉末の表面処理剤およびフッ素原子を含有するデンドリック高分子が、共通して、フッ素系の材料で構成されたものであることにより、印刷部において、金属粉末の構成粒子の近傍にフッ素原子を含有するデンドリック高分子を配置させることができるため、印刷部の耐擦性を、より高いレベルで、かつ、確実に優れたものとすることができ、前記のような効果を顕著に発揮させることができる。また、金属粉末を構成する粒子がフッ素系表面処理剤で表面処理されたものであることにより、紫外線硬化型組成物の構成材料として表面張力の低い重合性化合物や粘度が高く流動性が低い重合化合物を用いた場合であっても、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、金属粉末を印刷部の外表面付近により好適に所望の時間以内に配列(リーフィング)させることができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等の特性をより効果的に発揮させることができる。したがって、重合性化合物の選択の幅が広がり、金属材料が本来有している光沢感を犠牲にすることなく、紫外線硬化型組成物の特性や紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の特性(例えば、紫外線硬化型組成物の粘度、保存安定性、吐出安定性、記録物の耐擦性等)を容易に調整することができる。
フッ素系化合物(フッ素系表面処理剤)は、パーフルオロアルキル構造を有するものであるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性をさらに優れたものとし、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
また、フッ素系化合物(フッ素系表面処理剤)は、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を含むものであればよいが、より具体的には、例えば、上述したような短鎖化合物、長鎖化合物、シラン化合物、リン酸化合物、カルボン酸、イソシアネート化合物が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された構造を有する化合物(フッ素系短鎖化合物、フッ素系長鎖化合物、フッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸化合物、フッ素置換脂肪酸、フッ素系イソシアネート化合物等)等が挙げられる。
このような化合物を表面処理剤として用いることにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。特に、金属粉末の構成粒子の表面自由エネルギーをより効果的に低下させることができ、重合性化合物との間での界面エネルギーの差をより大きいものとし、疎水性相互作用がより強く働くこととなり、記録物の表面に、金属粉末をより効果的に配列させることができる。その結果、記録物の光沢感を特に優れたものとすることができる。
中でも、フッ素系シラン化合物を用いた場合、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物が特に優れた耐久性、耐候性を示し、より長期にわたって膜の硬度が保持できる。
また、リン酸化合物の表面処理剤は酸に強いため、フッ素系リン酸化合物を用いた場合、酸性の環境下においても、紫外線硬化型組成物を用いて製造された記録物が優れた耐久性、耐候性を示す。
また、フッ素置換脂肪酸(フッ素系脂肪酸)を用いた場合、金、銀、白金等の貴金属、銅やアルミニウム等で構成された母粒子に対してより効果的に表面処理を行うことができ、官能基が小さく結晶性の高い膜(表面処理層)を形成することができるため、表面自由エネルギーを効果的に下げることができる。その結果、より小さな粒子を効果的に記録物の表面に並べることができ、耐擦性のさらなる向上を図ることができる。
また、フッ素系イソシアネート化合物を用いた場合、母粒子に対してより緻密な表面処理を施すことができるとともに、母粒子との結合力をより強固なものとすることができ、金属粉末の耐久性が高まるため、より長期にわたって耐擦性を保持することができる。
フッ素系シラン化合物としては、下記式(3)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
R1SiX1 aR2 (3−a) (3)
(式(3)中、R1は、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、aは、1以上3以下の整数である。)
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとし、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(3)中のR1としては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、さらに、分子構造に含まれる水素原子(フッ素原子で置換されていない水素原子)のうちの少なくとも一部がアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基等で置換されていてもよく、炭素鎖中に−O−、−S−、−NH−、−N=等のヘテロ原子やベンゼン等の芳香族環が挟まっていてもよい。R1の具体例としては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたフェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等が挙げられる。
パーフルオロアルキル構造(CnF2n+1)を有するフッ素系シラン化合物としては、例えば、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
CnF2n+1(CH2)mSiX1 aR2 (3−a) (4)
(式(4)中、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、nは、1以上14以下の整数であり、mは、2以上6以下の整数であり、aは、1以上3以下の整数である。)
このような構造を有する化合物の具体例としては、CF3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)11−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(C2H5)(OC2H5)2等が挙げられる。
また、フッ素系シラン化合物としては、上述したパーフルオロアルキル構造(CnF2n+1)の代わりにパーフルオロアルキルエーテル構造(CnF2n+1O)を有するものを用いることもできる。
パーフルオロアルキルエーテル構造(CnF2n+1O)を有するフッ素系シラン化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
CpF2p+1O(CpF2pO)r(CH2)mSiX1 aR2 (3−a) (5)
(式(5)中、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上10以下の整数であり、mは、2以上6以下の整数であり、aは、1以上3以下の整数である。)
このような構造を有する化合物の具体例としては、CF3O(CF2O)6−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)2(CF2O)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)8−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(C2H5)(OCH3)2等が挙げられる。
フッ素系リン酸化合物としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有するリン酸化合物を用いることができる。
特に、フッ素系リン酸化合物は、下記式(6)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
PORn(OH)3−n (6)
(式(6)中、Rは、CF3(CF2)m−、CF3(CF2)m(CH2)l−、CF3(CF2)m(CH2O)l−、CF3(CF2)m(CH2CH2O)l−、CF3(CF2)mO−、または、CF3(CF2)m(CH2)lO−であり、nは1以上3以下の整数であり、mは2以上18以下の整数であり、lは1以上18以下の整数である。)
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとし、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(6)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましいが、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(6)中、lは、1以上14以下の整数であるのが好ましいが、1以上10以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
フッ素置換脂肪酸(フッ素系脂肪酸)としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有する脂肪酸を用いることができる。
フッ素置換脂肪酸としては、例えば、CF3−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)3−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)5−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)6−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)7−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)9−CH2CH2-COOHやこれらのエステル等が挙げられるが、中でも、CF3(CF2)5−CH2CH2-COOHが好ましい。
これにより、母粒子を構成するシリコン、アルミニウム、マグネシウム、チタン等の金属原子と、加熱による脱水反応により強固な結合を結び、緻密な膜を形成することができるため、粒子の表面エネルギーを効果的に下げることができる。
フッ素系イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子と少なくとも1個のイソシアネート基とを有する化合物を用いることができる。
フッ素系イソシアネート化合物としては、例えば、下記式(7)で表される化学構造を有するものを用いることができる。
RfNCO (7)
(式(7)中、Rfは、CF3(CF2)m−、または、CF3(CF2)m(CH2)l−であり、mは2以上18以下の整数であり、lは1以上18以下の整数である。)
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、より好適に金属粉末を印刷部の外表面付近に配列(リーフィング)させることができ、製造される記録物の印刷部の光沢感を特に優れたものとすることができる。また、製造される記録物の印刷部の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(7)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましく、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(7)中、lは、1以上14以下の整数であるのが好ましく、1以上10以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、金属粉末は、複数種の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。このような場合、同一の粒子に複数種の表面処理剤による表面処理が施されていてもよいし、金属粉末が、異なる表面処理剤による表面処理が施された複数種の粒子を含むものであってもよい。
上記のような表面処理剤は、母粒子に直接処理するものであってもよいが、前記母粒子に対して酸または塩基を処理させた後に、当該母粒子に対して表面処理剤による処理を行うのが好ましい。これにより、母粒子表面に、表面処理剤による化学的な結合による修飾をより確実に行うことができ、上述したような効果をより効果的に発揮させることができる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、炭酸、蟻酸、安息香酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、亜硫酸、次亜硫酸、亜硝酸、次亜硝酸、亜リン酸、次亜リン酸等のプロトン酸を用いることができる。中でも、塩酸、リン酸、酢酸が好適である。一方、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。
同一の粒子に対し、複数種の表面処理を施す場合、各表面処理剤に対応する複数の工程に分けて表面処理を行ってもよいし、同一工程で、複数種の表面処理剤による表面処理を行ってもよい。
また、表面処理剤による母粒子への表面処理は、例えば、前述したように、気相成膜法により形成した金属製の膜を液体中で粉砕して母粒子を形成する際に、当該液体中に表面処理剤を含ませておくことにより行うものであってもよい。
これにより、母粒子の形成とともに、表面処理を行うことができ、金属粉末、紫外線硬化型組成物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、金属粉末の各部位に高い均一性で表面処理を施すことができる。また、表面処理剤として前述したようなものを用いる場合(特に、フッ素系リン酸化合物を用いる場合)、表面処理剤が金属粉末の分散を促進するように働き、超音波などによる粉砕のエネルギーが効率よく個々の粒子に伝達されることにより前記膜の粉砕をより短時間に効率よく行うことができ、後述するような粒径の条件を満足するサイズのバラツキが少ない金属粉末をより効率よく得ることができ、金属粉末、紫外線硬化型組成物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
同一の粒子に対し、複数種の表面処理を施す場合、各表面処理剤に対応する複数の工程に分けて表面処理を行ってもよいし、同一工程で、複数種の表面処理剤による表面処理を行ってもよい。
金属粉末を構成する粒子は、球状、紡錘形状、針状等、いかなる形状のものであってもよいが、鱗片状をなすものであるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物が付与される記録媒体上で、当該粒子の主面が記録媒体の表面形状に沿うように、金属粉末を配置することができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等を、得られる記録物においてもより効果的に発揮させることができ、形成されるパターン(印刷部)の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができる。また、金属粉末が上述したような表面処理が施されたものである場合に、記録物の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
本発明において、鱗片状とは、平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した際(平面視した際)の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいい、特に、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S1[μm2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S0[μm2]に対する比率(S1/S0)が、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは8以上である。この値としては、例えば、任意の10個の粒子について観察を行い、これらの粒子についての算出される値の平均値を採用することができる。
金属粉末を構成する粒子が鱗片状をなすものである場合、粒子の平均厚さは、10nm以上80nm以下であるのが好ましく、20nm以上70nm以下であるのがより好ましい。
これにより、上述したような粒子が鱗片状であることによる効果がより顕著に発揮される。
金属粉末の構成粒子の平均厚さは、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の平均粒径よりも大きいものであるのが好ましい。
これにより、記録物において、フッ素原子を含有するデンドリック高分子が、金属粉末の構成粒子よりも外表面側(観察者の視点側)に過剰に存在することをより効果的に防止することができ、印刷部の光沢感をより優れたものとすることができる。
金属粉末の平均粒径(D50)は、200nm以上3.0μm以下であるのが好ましく、250nm以上640nm以下であるのがより好ましく、300nm以上600nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感、高級感をさらに優れたものとすることができる。特に、記録物の印刷部において、フッ素原子を含有するデンドリック高分子が過剰に外表面に露出し、金属粉末を構成する質感(光沢感等)を阻害してしまうことをより効果的に防止することができ、記録物の光沢感、高級感をさらに優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
これに対し、金属粉末の平均粒径が前記下限値未満であると、紫外線硬化型組成物中において、金属粉末の凝集が生じやすくなり、紫外線硬化型組成物の保存安定性が低下する場合がある。また、このような凝集を生じることにより、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部において、不本意な色むら等を生じやすくなる。
また、金属粉末の平均粒径が前記上限値を超えると、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性が低下する場合がある。
なお、本発明において、平均粒径とは、粒子分散液をレーザー回折・散乱法を用いて測定された体積分布のメジアン径のことを指し、多数個の測定結果を大きさ(粒子径)毎の存在比率の累積として表した場合に、累積でちょうど中央値の50%を示す粒子のサイズ(体積平均粒径)である。金属粉末の構成粒子が鱗片状をなすものである場合、平均粒径は、金属粉末の構成粒子を平面視した際の形状、大きさに基づいて求められるものとする。
金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)は、80nm以上1.1μm以下であるのが好ましく、100nm以上1.1μm以下であるのがより好ましく、150nm以上400nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、金属粉末の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)は、300nm以上4.0μm以下であるのが好ましく、400nm以上1.1μm以下であるのがより好ましく、500nm以上1.0μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、金属粉末の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
金属粉末の粒度分布における半値幅は、0.50μm以下であるのが好ましく、0.45μm以下であるのがより好ましく、0.30μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、金属粉末の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
また、本発明の紫外線硬化型組成物では、金属粉末は、その構成粒子として表面処理が施されたものを含むものであるのが好ましいが、金属粉末の構成粒子の一部として、表面処理が施されていないものを含んでいてもよい。ただし、このような場合であっても、金属粉末全体に対する表面処理が施された構成粒子の含有率は、90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのがより好ましく、99質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
紫外線硬化型組成物中における金属粉末の含有率は、0.9質量%以上29質量%以下であるのが好ましく、1.2質量%以上19.3質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感および耐擦性をより高いレベルで両立することができる。また、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
<フッ素原子を含有するデンドリック高分子>
上述したように、本発明の紫外線硬化型組成物は、フッ素原子を含有するデンドリック高分子を含むものである。
フッ素原子を含有するデンドリック高分子は、紫外線硬化型組成物を構成する重合性化合物を硬化させた硬化物状態において、透明性を有するものであるのが好ましい。これにより、本発明の紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の美的外観を特に優れたものとすることができる。
なお、金属粉末を含まない以外は同様の組成を有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなる厚さ100μmの硬化物の厚さ方向の可視光の透過率(波長:600nmの光の透過率)は、85%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。
これにより、重合性化合物を硬化させるための光をデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)が透過しやすいため、記録物を形成するときに紫外線硬化型組成物の硬化が内部まで均等に進みやすくなり、本発明の紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の美的外観をさらに優れたものとすることができる。
本発明において、デンドリック高分子は、デンドリマーやハイパーブランチポリマーを含む概念であり、デンドリマーの場合は、一般に、コアと、デンドロンとを備えている。一方、ハイパーブランチポリマーはコアやデンドロンの区別は無く単一の骨格構造をもっている。
フッ素原子を含有するデンドリック高分子(特に、デンドリマー)としては、例えば、アクリル骨格を有するもの、エポキシ骨格を有するもの、ポリアミドアミン(PAMAM)骨格を有するもの、ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸(MPA)骨格を有するもの、ポリプロピレンイミン骨格を有するもの、ポリリシン骨格を有するもの、ポリフェニルエーテル骨格を有するもの、ジチオカルバメート骨格を有するもの等を用いることができるが、特に、アクリル骨格やジチオカルバメート骨格を有するものであるのが好ましい。
これにより、印刷部におけるデンドリック高分子の透明性を特に優れたものとし、記録物の審美性(美的外観)を特に優れたものとすることができる。また、アクリル骨格を有するデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)は、後に詳述する重合性化合物との親和性に優れているため、紫外線硬化型組成物の保存安定性等を特に優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部における重合性化合物の重合物とフッ素原子を含有するデンドリック高分子との密着性を特に優れたものとすることができ、印刷部の耐擦性、膜強度等を特に優れたものとすることができる。
本発明の紫外線硬化型組成物中に含まれるデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)がデンドリマーである場合のコアとしては、例えば、2官能以上の多官能アクリレートであるペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
本発明の紫外線硬化型組成物中に含まれるデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)のデンドロンとしては、例えば、3官能以上の多官能アクリレート等が挙げられる。
また、フッ素原子を含有するデンドリック高分子、デンドリック高分子を構成するフッ素原子含有低分子(デンドロンの構成単位)としては、例えば、特開2002−220468号公報、特開2003−226611号公報、特開2009−235372号公報等に開示されているものを用いることができる。
また、紫外線硬化型組成物中に含まれるデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)がハイパーブランチポリマーである場合のデンドリック高分子としては、例えば、ジチオカルバメート骨格を有する特願2012−546933(P2012−546933)に開示されているものを用いることができる。
フッ素原子を含有するデンドリック高分子の表面自由エネルギーは、18mN/m以上28mN/m以下であるのが好ましく、19mN/m以上25mN/m以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物のインクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとしつつ、印刷部の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
フッ素原子を含有するデンドリック高分子の平均粒径(D50)は、2nm以上20nm以下であるのが好ましく、2nm以上10nm以下であるのがより好ましく、2.5nm以上9nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性を特に優れたものとしつつ、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
これに対し、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の平均粒径が前記下限値未満であると、紫外線硬化型組成物を用いて形成された印刷部の耐擦性が低下する。また、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性も低下する。
また、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の平均粒径が前記上限値を超えると、印刷部の光沢感が低下し、記録物の審美性(美的外観)が低下する。また、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性も低下する。
金属粉末の厚さをTM[μm]、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の平均粒径をDF[μm]としたとき、0.05≦DF/TM≦0.7の関係を満足するのが好ましく、0.07≦DF/TM≦0.5の関係を満足するのがより好ましく、0.10≦DF/TM≦0.35の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、記録物において、フッ素原子を含有するデンドリック高分子が、金属粉末の構成粒子よりも外表面側(観察者の視点側)に過剰に存在することをより効果的に防止することができ、印刷部の光沢感をより優れたものとすることができるとともに、記録物の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
金属粉末の平均粒径をDM[μm]、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の平均粒径をDF[μm]としたとき、5≦DM/DF≦300の関係を満足するのが好ましく、15≦DM/DF≦200の関係を満足するのがより好ましく、25≦DM/DF≦200の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、印刷部の光沢感をより優れたものとすることができるとともに、記録物の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
フッ素原子を含有するデンドリック高分子の微粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)は、0.7nm以上45nm以下であるのが好ましく、1.7nm以上9nm以下であるのがより好ましく、2.2nm以上8nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
フッ素原子を含有するデンドリック高分子の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)は、1.3nm以上55nm以下であるのが好ましく、2.3nm以上11nm以下であるのがより好ましく、2.7nm以上10nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
フッ素原子を含有するデンドリック高分子の粒度分布における半値幅は、2nm以下であるのが好ましく、1nm以下であるのがより好ましく、0.5nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
フッ素原子を含有するデンドリック高分子は、通常、球状をなすものである。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の耐擦性をより確実に優れたものとすることができる。また、フッ素原子を含有するデンドリック高分子が球状をなすものである場合、紫外線硬化型組成物中(印刷部中)におけるフッ素原子を含有するデンドリック高分子の含有率を高いものとし、上述したようなフッ素原子を含有するデンドリック高分子を含むことによる効果をより効果的に発揮しつつ、記録物の外観上、フッ素原子を含有するデンドリック高分子が悪影響を与えることをより効果的に防止することができる。
紫外線硬化型組成物中におけるフッ素原子を含有するデンドリック高分子の含有率は、0.010質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.050質量%以上4.0質量%以下であるのがより好ましく、0.10質量%以上3.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感および耐擦性をより高いレベルで両立することができる。
紫外線硬化型組成物中における金属粉末の含有率をXM[質量%]、フッ素原子を含有するデンドリック高分子の含有率をXF[質量%]としたとき、0.05≦XF/XM≦0.5の関係を満足するのが好ましく、0.07≦XF/XM≦0.45の関係を満足するのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、光沢感と耐擦性とをより高いレベルで両立することができる。
<重合性化合物>
重合性化合物は、紫外線の照射により重合し、硬化する成分である。このような成分を含むことにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。
重合性化合物は、液状をなすものであり、紫外線硬化型組成物において、金属粉末およびフッ素原子を含有するデンドリック高分子を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。
これにより、別途、記録物の製造過程において除去される(蒸発する)分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているものを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を防止することができる。また、重合性化合物を含むことにより、様々な記録媒体(基材)に対する、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の密着性を優れたものとすることができる。すなわち、重合性化合物を含むことにより、紫外線硬化型組成物は、メディア対応性に優れたものとなる。
重合性化合物としては、紫外線の照射により重合する成分であればよく、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)等を用いることができるが、紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として、少なくともモノマー成分を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘度の成分であるため、紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとする上で有利である。
特に、紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として、脂環構造を有するモノマーを含むのが好ましい。
脂環構造を有するモノマーを、金属粉末(特に、上述したような表面処理剤で表面処理された金属粉末)およびフッ素原子を含有するデンドリック高分子とともに含むことにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
このような優れた効果が得られるのは、以下のような理由によるものであると考えられる。すなわち、脂環構造を有するモノマーを含むことにより、紫外線硬化型組成物中におけるフッ素原子を含有するデンドリック高分子および金属粉末の分散安定性を特に優れたものとすることができ、紫外線硬化型組成物中でのフッ素原子を含有するデンドリック高分子および金属粉末の凝集、沈降等を長期間にわたって好適に防止することができる。そして、このような効果が、フッ素原子を含有するデンドリック高分子を含むことによる効果と相乗的に作用し合うことにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができるものと考えられる。
脂環構造を有するモノマーとしては、例えば、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、メバロン酸ラクトン(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、トリ(メタ)アクリル化イソシアヌレート等が挙げられるが、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジルアクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチル アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル アクリレート、メバロン酸ラクトン アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、および、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感、高級感をさらに優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
中でも、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、および、N−ビニルピロリドンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、紫外線硬化型組成物中における金属粉末およびフッ素原子を含有するデンドリック高分子の分散安定性、インクジェット法による吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、金属粉末を印刷部の外表面付近により好適に配列させることができ、得られる記録物の光沢感をさらに優れたものとすることができる。
また、紫外線を照射した際の紫外線硬化型組成物の硬化速度、記録物の生産性について更なる向上を図る観点からは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、アクリロイルモルホリン、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、および、テトラヒドロフルフリルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、アクリロイルモルホリン、および/または、γ−ブチロラクトンアクリレートを含むものであるのがより好ましく、γ−ブチロラクトンアクリレートを含むものであるのがさらに好ましい。
また、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、および、ベンジルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部の可撓性をさらに優れたものとすることができる。
また、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部の耐擦性の更なる向上を図る観点からは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、および、アクリロイルモルホリンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、γ−ブチロラクトンアクリレート、および/または、N−ビニルカプロラクタムを含むものであるのがより好ましい。
また、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、イソボルニルアクリレート、および、テトラヒドロフルフリルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、紫外線硬化型組成物の硬化時における収縮率をより小さいものとし、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部に不本意な皺などが生じることによる光沢感の低下等をより効果的に防止することができる。
紫外線硬化型組成物中における脂環構造を有するモノマーの含有率は、40質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上88質量%以下であるのがより好ましく、55質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、金属粉末およびフッ素原子を含有するデンドリック高分子の分散安定性、紫外線硬化型組成物の保存安定性を特に優れたものとし、長期にわたって特に優れた吐出安定性が得られる。特に、紫外線硬化型組成物が分散剤を含まないものであっても、上記のような優れた効果が得られる。なお、紫外線硬化型組成物は、脂環構造を有するモノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
脂環構造を有するモノマーは、共有結合により形成された環状構造の構成原子数が、5以上のものであるのが好ましく、6以上のものであるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。
紫外線硬化型組成物は、脂環構造を有するモノマーとして、脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマー(芳香族性を示さない複素環を有する単官能モノマー)を含むものであるのが好ましい。
これにより、金属粉末およびフッ素原子を含有するデンドリック高分子の分散安定性を特に優れたものとし、長期にわたって特に優れた吐出安定性が得られる。特に、紫外線硬化型組成物が分散剤を含まないものであっても、上記のような優れた効果が得られる。このような単官能モノマーとしては、例えば、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、メバロン酸ラクトン (メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
紫外線硬化型組成物中における前記単官能モノマー(脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマー)の含有率は、10質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、硬化収縮を抑制し、散乱が少なく、より光沢感に優れたパターン(印刷部)を備えた記録物の製造に好適に用いることができる。なお、紫外線硬化型組成物は、脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
本発明において、紫外線硬化型組成物を構成する重合性化合物は、脂環構造を有さないモノマーを含むものであってもよい。
このようなモノマー(脂環構造を有さないモノマー)としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール300ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、3−(メタ)アクリロイロキシプロピルアクリレート、w−カルボキシ(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
脂環構造を有するモノマーに加えて、このような脂環構造を有さないモノマーを含むことにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の紫外線硬化型組成物の反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
中でも、フェノキシエチルアクリレートを含むものである場合、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、金属粉末を印刷部の外表面付近により好適に配列させることができ、得られる記録物の光沢感をさらに優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、フッ素原子を含有するデンドリック高分子を印刷部の外表面付近により好適に配置させることができ、得られる記録物の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
また、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものである場合、紫外線を照射した際の紫外線硬化型組成物の硬化速度、記録物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
また、フェノキシエチルアクリレート、および/または、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレートを含むものである場合、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部の可撓性をさらに優れたものとすることができる。
また、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部の耐擦性の更なる向上を図る観点からは、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、および、トリプロピレングリコールジアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものであるのがより好ましい。
また、フェノキシエチルアクリレートを含むものである場合、紫外線硬化型組成物の硬化時における収縮率をより小さいものとし、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部に不本意な皺などが生じることによる光沢感の低下等をより効果的に防止することができる。
紫外線硬化型組成物中における脂環構造を有するモノマー以外のモノマーの含有率は、5質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上40質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の硬化速度、可撓性、硬化時における収縮率等の調整がさらに容易になる。なお、紫外線硬化型組成物は、脂環構造を有さないモノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として、モノマー以外に、オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を含むものであってもよい。オリゴマー、プレポリマーとしては、例えば、上述したようなモノマーを構成成分としたものを用いることができる。紫外線硬化型組成物は、特に多官能のオリゴマーを含むものであるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。オリゴマーとしては、繰り返し構造がウレタンであるウレタンオリゴマー、繰り返し構造がエポキシであるエポキシオリゴマー等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型組成物中における重合性化合物の含有率は、70質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、80質量%以上98質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感、耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。なお、紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
<物質A>
また、本発明の紫外線硬化型組成物は、下記式(8)で示される部分構造を有する物質Aを含むものであるのが好ましい。
紫外線硬化型組成物が、このような化学構造を有する物質Aを、フッ素原子を含有するデンドリック高分子とともに含むこと、さらには、脂環構造を有するモノマーとともに含むことにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、硬化性を特に優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物においては、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感・高級感をより効果的に発揮させ、印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとし、記録物の耐久性を特に優れたものとすることができる。
式(8)中、R1は、酸素原子、水素原子、炭化水素基またはアルコキシル基(酸素原子に鎖式または脂環式の炭化水素基が結合したもの)であればよいが、特に、水素原子、メチル基、または、オクチルオキシ基であるのが好ましい。これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
また、式(8)中、R2〜R5は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であればよいが、炭素数1以上3以下のアルキル基であるのが好ましく、メチル基であるのがより好ましい。これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
紫外線硬化型組成物中における物質Aの含有率は、0.1質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感、耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。なお、紫外線硬化型組成物は、物質Aとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
物質Aの含有率をXA[質量%]、金属粉末の含有率をXM[質量%]としたとき、0.01≦XA/XM≦0.8の関係を満足するのが好ましく、0.05≦XA/XM≦0.4の関係を満足するのがより好ましい。
このような関係を満足することにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
<消泡剤>
紫外線硬化型組成物は添加物として消泡剤を含むものであってもよい。
消泡剤は紫外線硬化型組成物の表面張力を低下させ、ノズル近傍におけるメニスカス位置で発生する気泡を大幅に低減できるため、紫外線硬化型組成物のインクジェットにおける吐出安定性を優れたものにできる。
これに対し、紫外線硬化型組成物が消泡剤を含有しない場合には、表面自由エネルギーの低いフッ素系表面処理剤で処理された顔料やフッ素含有粒子が紫外線硬化型組成物の中に発生した気泡における気体−液体界面に配列しやすくなることにより、気泡が長時間安定に存在できるようなる。その結果、インクジェット法においてピエゾ素子などから発生する吐出エネルギーが安定化した気泡に吸収・減衰されることで、吐出不良や液滴重量の低下、液滴の飛翔速度の低下や飛翔方向の曲りなど様々な問題を引き起こされる。そのため、吐出安定性を十分に優れたものとすることができず、紫外線硬化型組成物の均一性も著しく劣化してしまう。
特に、消泡剤としてフッ素を含むアクリル系消泡剤または極性官能基を持たないアクリル系消泡剤を用いることにより、吐出安定性を優れたものにすることができる。これらの消泡剤は分子量が小さく、フッ素系表面処理剤で処理された顔料やフッ素含有粒子よりも拡散・移動速度が非常に速いため気泡の発生を効果的に抑制することができる。
本発明で用いることのできるフッ素を含むアクリル系消泡剤の具体例としては、BYK−3440(ビックケミー社製)、BYK−3441(ビックケミー社製)等を挙げることができる。
また、本発明で用いることのできる極性官能基を持たないアクリル系消泡剤とは、極性官能基として電気陰性度の高い水酸基やアミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ケトン基などの官能基を分子内に持たないアクリル共重合物であり、具体例としては、DISPERBYK−354(ビックケミー社製)、DISPERBYK−392(ビックケミー社製)等を挙げることができる。
消泡剤の含有量は1.5重量%以下であるのが好ましく、0.1重量%以上1.0重量%であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感を十分に優れたものとしつつ、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができる。なお、消泡剤はフッ素を含むアクリル系消泡剤または極性官能基を持たないアクリル系消泡剤として2種以上の化合物を含むものであってもよい。
この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。なお、紫外線硬化型組成物中における消泡剤の含有率が高すぎると、消泡に作用しない余剰消泡剤の濃度が高まることにより、紫外線硬化型組成物の外表面付近に金属粉末およびフッ素含有粉末を好適に配置させることが困難となり、最終的に得られる記録物(印刷部)の光沢感、耐擦性を十分に優れたものとすることが困難になる可能性がある。
<分散剤>
本発明の紫外線硬化型組成物は、分散剤を含むものであってもよい。
これにより、紫外線硬化型組成物中における金属粉末、フッ素含有粉末の分散安定性をさらに優れたものとすることができ、紫外線硬化型組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。
特に、本発明の紫外線硬化型組成物は、分散剤として、酸基をもつ重合体構造を有するもの(以下、「酸基含有高分子分散剤」ともいう)を含むものであってもよい。
これにより、紫外線硬化型組成物の吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
なお、酸基含有高分子分散剤は、カルボン酸、リン酸、スルホン酸基などの酸基をもち、重合体構造を有するものであればよく、具体的な分子量は限定されない。
酸基含有高分子分散剤を構成する重合体構造は、特に限定されないが、例えば、アクリル系の重合体構造(共重合体を含む)、メタクリル系の重合体構造(共重合体を含む)、ポリウレタン系の重合体構造、水酸基含有カルボン酸エステル構造、ポリエーテル系の重合体構造、シリコーン系の重合体構造等が挙げられる。
酸基含有高分子分散剤の酸価は、特に限定されないが、3mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であるのが好ましく、10mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であるのがより好ましい。
本発明で用いることのできる酸基をもつ高分子分散剤の具体例としては、DISPERBYK−102(ビックケミー社製)、DISPERBYK−106(ビックケミー社製)、DISPERBYK−110(ビックケミー社製)、DISPERBYK−111(ビックケミー社製)、DISPERBYK−140(ビックケミー社製)、DISPERBYK−142(ビックケミー社製)、DISPERBYK−145(ビックケミー社製)、DISPERBYK−118(ビックケミー社製)、DISPERBYK−180(ビックケミー社製)、DISPERBYK−191(ビックケミー社製)、DISPERBYK−2095(ビックケミー社製)、DISPERBYK−2096(ビックケミー社製)、プライサーフA212C(第一工業製薬製)、プライサーフA215C(第一工業製薬製)、プライサーフA208N(第一工業製薬製)、プライサーフA219B(第一工業製薬製)、PN−411(味の素ファインテクノ社製)、PA−111(味の素ファインテクノ社製)等を挙げることができる。
紫外線硬化型組成物が分散剤を含むものである場合、紫外線硬化型組成物中における分散剤の含有率は、5.0質量%以下であるのが好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感を十分に優れたものとしつつ、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができる。なお、紫外線硬化型組成物は、酸性高分子分散剤(酸基含有高分子分散剤)として2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。なお、紫外線硬化型組成物中における分散剤の含有率が高すぎると、分散に作用しない余剰分散剤の濃度が高まることにより、いわゆる高分子分散液の枯渇効果により、金属粉末、フッ素含有粉末の粒子間が近接した場合に生じる浸透圧により粒子凝集が促進され、平均粒子径の増大、さらには顔料の紫外線硬化成分からの分離・沈降が起こってしまう。結果的に、記録媒体に付与された紫外線硬化型組成物において、金属粉末およびフッ素含有粉末の均一性が低下するとともに粉末粒子の流動性が大幅に低下し、付与された紫外線硬化型組成物の外表面付近に、金属粉末およびフッ素含有粉末を好適に配置させることが困難となり、最終的に得られる記録物(印刷部)の光沢感、耐擦性を十分に優れたものとすることが困難になる可能性がある。
<その他の成分>
本発明の紫外線硬化型組成物は、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、溶剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
光重合開始剤は、紫外線照射によってラジカルやカチオン等の活性種を発生し、上記重合性化合物の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、重合性化合物への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線硬化型組成物中における光重合開始剤の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下であるのが好ましい。
光重合開始剤の含有量が前記範囲であると、紫外線硬化速度が十分大きく、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色がほとんどない。
紫外線硬化型組成物がスリップ剤を含むものであると、レベリング作用により記録物の表面が平滑になり、耐擦性が向上する。
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン、ポリアクリレート変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、ポリアクリレート、ポリエステル等の高分子系界面活性剤を用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、または、ポリアクリレート変性ジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
なお、本発明の紫外線硬化型組成物は、重合禁止剤を含むものであってもよいが、重合禁止剤を含む場合であっても、紫外線硬化型組成物中における重合禁止剤の含有率は、0.6質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、相対的に、紫外線硬化型組成物中における重合性化合物の含有率を高いものとすることができるため、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の耐擦性等を特に優れたものとすることができる。また、本発明では、このように重合禁止剤の含有率が比較的低い場合であっても、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性を十分に優れたものとすることができる。
また、本発明の紫外線硬化型組成物は、記録物の製造工程において除去される(蒸発する)有機溶剤を含まないものであるのが好ましい。これにより、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を効果的に防止することができる。
振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される、本発明の紫外線硬化型組成物の室温(20℃)での粘度は、25mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下であるのがより好ましい。
これにより、インクジェット法による液滴吐出を好適に行うことができる。
《記録物》
次に、本発明の記録物について説明する。
本発明の記録物は、上述したような紫外線硬化型組成物を記録媒体上に付与し、その後、紫外線を照射することにより製造されたものである。すなわち、本発明の記録物は、上述したような紫外線硬化型組成物の硬化物と、記録媒体とを備えたものである。
このような記録物は、光沢感、耐擦性に優れたパターン(印刷部)を有するものである。
上述したように、本発明に係る紫外線硬化型組成物は、重合性化合物を含むものであり、記録媒体に対する密着性に優れるものである。このように、本発明の紫外線硬化型組成物は記録媒体に対する密着性に優れるものであるため、記録媒体は、いかなるものであってもよく、吸収性または非吸収性のいずれを用いてもよく、例えば、紙(普通紙、インクジェット用専用紙等)、プラスチック材料、金属、セラミックス、木材、貝殻、綿、ポリエステル、ウール等の天然繊維・合成繊維、不織布等を用いることができる。また、記録媒体の形状は、特に限定されず、シート状等、いかなるものであってもよい。
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、紫外線硬化型組成物の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出は、公知の液滴吐出装置を用いて行うことができる。
インクジェット法により吐出された紫外線硬化型組成物は、紫外線の照射により硬化する。
紫外線源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、紫外線レーザダイオード(UV−LD)等を用いることができる。中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−LED)および紫外線レーザダイオード(UV−LD)が好ましい。
本発明の記録物は、いかなる用途のものであってもよく、例えば、装飾品やそれ以外に適用されるものであってもよい。本発明の記録物の具体例としては、コンソールリッド、スイッチベース、センタークラスタ、インテリアパネル、エンブレム、センターコンソール、メーター銘板等の車両用内装品、各種電子機器の操作部(キースイッチ類)、装飾性を発揮する装飾部、指標、ロゴ等の表示物等が挙げられる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、本発明の記録物が記録媒体(基材)と印刷部とからなるものである場合について中心的に説明したが、本発明の記録物は、記録媒体(基材)、印刷部に加え、他の構成を有するものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]記録物製造用組成物の製造
(実施例1)
まず、表面が平滑なポリエチレンテレフタレート製のフィルム(表面粗さRaが0.02μm以下)を用意した。
次に、このフィルムの一方の面の全体にシリコーンオイルを塗布した。
次に、シリコーンオイルを塗布した面側に、蒸着法により、Alで構成された膜を形成した。
次に、Alの膜が形成されたポリエチレンテレフタレート製のフィルム(基材)を、ジエチレングリコールジエチルエーテル:99質量部にフッ素系表面処理剤としてのCF3(CF2)5(CH2)2O(P)(OH)2:1質量部を溶解してなる液体中に入れ、55℃にて27kHzの超音波振動を3時間付与した。これにより、Al製の母粒子にCF3(CF2)5(CH2)2O(P)(OH)2による表面処理が施された鱗片状の粒子からなる金属粉末の分散液が得られた。
このようにして得られた金属粉末の体積平均粒径(D50)は0.45μm、金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)は0.28μm、金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)は0.77μm、金属粉末の粒度分布における半値幅は0.32μmであった。
次に、金属粉末の分散液を、フッ素原子を含有するデンドリック高分子(フッ素含有粉末)、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのγ−ブチロラクトンアクリレート、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのフェノキシエチルアクリレート、下記式(9)で表される化学構造を有する物質A、酸基含有高分子分散剤としてのDISPERBYK−118(ビックケミー社製)、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(ACETO社製)、および、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)と混合することにより、記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を得た。なお、フッ素原子を含有するデンドリック高分子としては、ハイパーブランチポリマーの球状粒子であって、体積平均粒径が7.5nmのFA−200F(日産化学工業製)を用いた。
(実施例2〜20)
金属粉末の構成粒子およびフッ素原子を含有するデンドリック高分子を、表1に示すような構成にするとともに、記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)の調製に用いる原料の種類・比率を変更することにより、表2、表3に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にして記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を製造した。
(比較例1)
フッ素原子を含有するデンドリック高分子を含まない組成とした以外は、前記実施例1と同様にして記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を製造した。
(比較例2)
フッ素原子を含有するデンドリック高分子の代わりに、ポリテトラフルオロエチレンで構成された球状の粒子からなるフッ素含有粉末(体積平均粒径(D50):40nm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を製造した。
(比較例3)
金属粉末として、ガスアトマイズ法を用いて製造された球形状のAl粉末(表面処理剤による表面処理を施していないもの)を用いた以外は、前記比較例1と同様にして記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を製造した。
前記各実施例および比較例について、記録物製造用組成物に含まれる金属粉末およびフッ素含有粉末の構成を表1にまとめて示し、記録物製造用組成物の組成を表2、表3にまとめて示した。なお、表中、フッ素系リン酸化合物としてのCF3(CF2)5(CH2)2O(P)(OH)2を「FAP1」、フッ素系シラン化合物としての(CF3(CF2)7CH2CH2Si(OC2H5)3)を「FAS1」、フッ素系シラン化合物としての(CF3(CF2)5CH2CH2Si(OC2H5)3)を「FAS2」、フッ素置換脂肪酸としてのCF3(CF2)7(CH2)2COOHを「FFA1」、フッ素系イソシアネート化合物としてのCF3(CF2)7(CH2)2NCOを「IS1」、アルキルリン酸化合物としてのラウリルリン酸:CH3(CH2)11−(OCH2CH2)2−O−PO(OH)2を「LAP」、アルキルエーテルリン酸化合物としてのラウレス−2リン酸:CH3(CH2)11−(OCH2CH2)2−O−PO(OH)2を「LEP」、アルキルシラン化合物としてのオクチルトリエトキシシランを「OTS」、CH3(CH2)7O−PO(OH)2を「AP1」、アクリル骨格のデンドリマーで構成されたデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)を「FA−1」、エポキシ骨格のデンドリマーで構成されたデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)を「FE−1」、ハイパーブランチポリマーで構成されたデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)のFA−200F(日産化学工業製)を「FA200」、ハイパーブランチポリマーで構成されたデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)のFA−E−50(日産化学工業製)を「FA50」、ハイパーブランチポリマーで構成されたデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)のFH1−50(日産化学工業製)を「FH1」、ハイパーブランチポリマーで構成されたデンドリック高分子(フッ素原子を含有するデンドリック高分子)のFX−032N(日産化学工業製)を「FX」、ポリテトラフルオロエチレンを「PTFE」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのγ−ブチロラクトンアクリレートを「BLA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラヒドロフルフリルアクリレートを「THFA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのN−ビニルカプロラクタムを「VC」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのN−ビニルピロリドンを「VP」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアクリロイルモルホリンを「AMO」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを「TAOEI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートを「DCPTeOEA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアダマンチルアクリレートを「AA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを「DMTCDDA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジメチロールジシクロペンタンジアクリレートを「DMDCPTA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルアクリレートを「DCPTeA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンタニルアクリレートを「DCPTaA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのイソボルニルアクリレートを「IBA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキシルアクリレートを「CHA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジアクリル化イソシアヌレートを「DAI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのトリアクリル化イソシアヌレートを「TAI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのγ−ブチロラクトンメタクリレートを「BLM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラヒドロフルフリルメタクリレートを「THFM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを「DCPTeOEM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアダマンチルメタクリレートを「AM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのペンタメチルピペリジルメタクリレートを「PMPM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラメチルピペリジルメタクリレートを「TMPM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての2−メチル−2−アダマンチル メタクリレートを「MAM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての2−エチル−2−アダマンチル メタクリレートを「EAM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのメバロン酸ラクトン メタクリレートを「MLM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルメタクリレートを「DCPTeM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンタニルメタクリレートを「DCPTaM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのイソボルニルメタクリレートを「IBM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキシルメタクリレートを「CHM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートを「CHDOLA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートを「MEDOLA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのフェノキシエチルアクリレートを「PEA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのジプロピレングリコールジアクリレートを「DPGDA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのトリプロピレングリコールジアクリレートを「TPGDA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としての2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレートを「HPPA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としての4−ヒドロキシブチルアクリレートを「HBA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのエチルカルビトールアクリレートを「ECA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのメトキシトリエチレングリコールアクリレートを「MTEGA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのt−ブチルアクリレートを「TBA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのベンジルアクリレートを「BA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのアクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルを「VEEA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのベンジルメタクリレートを「BM」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのウレタンアクリレートを「UA」、酸性高分子分散剤としてのDISPERBYK−118(ビックケミー社製、酸価:36mgKOH/g)を「D1」、酸性高分子分散剤としてのDISPERBYK−2090(ビックケミー社製、酸価:61mgKOH/g)を「D2」、酸性高分子分散剤としてのプライサーフA219B(第一工業製薬製、酸価:50mgKOH/g)を「D3」、上記式(9)で表される化合物(物質A)を「A1」、下記式(10)で表される化合物(物質A)を「A2」、下記式(11)で表される化合物(物質A)を「A3」、下記式(12)で表される物質Aを「A4」、消泡剤としてのBYK−3441を「B3441」、消泡剤としてのDISPERBYK−354を「D354」、消泡剤としてのDISPERBYK−392を「D392」、Irgacure 819(チバ・ジャパン社製)を「ic819」、Speedcure TPO(ACETO社製)を「scTPO」、Speedcure DETX(Lambson社製)を「scDETX」、BYK-350(ビックケミー社製)を「BY350」、ヒドロキノンモノメチルエーテルを「MEHQ」、LHP−96(楠本化成社製)を「LHP」、LF−1982(楠本化成社製)を「LF−1」、LF−1984(楠本化成社製)を「LF−2」で示した。また、表中、実施例15について、母粒子の構成材料の組成は、各元素の含有率を重量比で示した。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例の記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)の20℃における粘度は、いずれも、3mPa・s以上15mPa・s以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例の記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を構成する金属粉末に関して、それぞれ任意の10個の金属粒子について観察を行い、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S1[μm2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S0[μm2]に対する比率(S1/S0)を求め、これらの平均値を求めたところ、S1/S0の平均値は、いずれも、19以上であった。また、金属粉末として表面処理が施されたものを用いた実施例および比較例においては、金属粉末全体に対する表面処理が施された構成粒子の含有率は、いずれも、99質量%以上であった。また、金属粉末を含まない以外は前記各実施例の紫外線硬化型組成物と同様の組成を有する組成物を硬化させてなる厚さ100μmの硬化物の厚さ方向の可視光の透過率(波長:600nmの光の透過率)は、いずれも、90%以上であった。
[2]液滴吐出の安定性評価(吐出安定性評価)
前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用いて、下記に示すような試験による評価を行った。
まず、チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、50%RHの環境下で、各記録物製造用組成物について、ノズル穴のサイズが直径22μmの液滴吐出ヘッドの各ノズルから、周波数20kHzで連続吐出を実施しながら、液滴の吐出平均速度、インクの重量を測定しておいた。次に各ノズルからそれぞれ1000000発(1000000滴)の液滴の連続吐出を行った時点の状況を撮影画像としてコンピュータに取り込み、不良ノズル(抜け、吐出曲がり、インク重量変化などを伴う吐出速度減速など正常に吐出していないノズルの総数)を取り込みカウントする。この場合の抜けとは液滴がノズルの穴から出なくなったり、噴霧状に異常な放出を起こしている状態であり、また吐出曲がりとはノズル面の法線方向に吐出を実施している正常状態に対して±5度以上の範囲で曲がった飛行をする状態を示す。吐出速度の減速はあらかじめ算出して置いた吐出平均速度に対して3%以上減速したものを不良ノズルとして計算する。この不良ノズルの発生確率(評価ノズル総数に対する不良ノズルの比率)が少なければ吐出の安定性が高いと判断できる。
[2.1]曲がり不良発生率
A:曲がり不良の発生確率が0.5%未満。
B:曲がり不良の発生確率が0.5%以上1.0%未満。
C:曲がり不良の発生確率が1.0%以上5.0%未満。
D:曲がり不良の発生確率が5.0%以上10.0%未満。
E:曲がり不良の発生確率が10.0%以上。
[2.2]抜け不良発生率(吐出抜け)
A:抜け不良の発生確率が0.5%未満。
B:抜け不良の発生確率が0.5%以上1.0%未満。
C:抜け不良の発生確率が1.0%以上2.0%未満。
D:抜け不良の発生確率が2.0%以上5.0%未満。
E:抜け不良の発生確率が5.0%以上。
[3]記録物製造用組成物の保存安定性評価(長期安定性評価)
[3.1]分散性
前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物について、40℃の環境下に、60日間放置した後、ろ過精度3μmのカプセルフィルタ(ヤマシンフィルタ社製)にて1L通液した際の通液前後の濃度を測定し、分散不足による粗大粒子をフィルタろ過することによるロスを濃度の減少率で求め、以下の基準に従い、評価した。
A:インク濃度減少率が5%未満。
B:インク濃度減少率が5%以上10%未満。
C:インク濃度減少率が10%以上20%未満。
D:インク濃度減少率が20%以上。
[3.2]粘度の上昇率
前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物について、60℃の環境下に、20日間放置した後、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例の記録物製造用組成物の20℃における粘度を測定し、製造直後からの粘度の上昇率を求め、以下の基準に従い、評価した。
A:粘度の上昇率が5%未満。
B:粘度の上昇率が5%以上10%未満。
C:粘度の上昇率が10%以上18%未満。
D:粘度の上昇率が18%以上23%未満。
E:粘度の上昇率が23%以上、または、異物の発生が認められる。
[4]硬化性
前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物について、エプソン製インクジェットプリンター;PM800Cへ導入し、記録媒体として三菱樹脂(株)製、ダイアホイル G440E(厚さ38μm)を用いて、インク量wet 9g/m2にて、ベタ印刷を行い、印刷後、ただちにLED−UVランプ;フォセオン社製 RX firefly(ギャップ6mm ピーク波長395nm 1000mW/cm2)を用いて紫外線の照射を行い、記録物製造用組成物が硬化したか否かを確認し、以下の5段階の基準に従い、評価した。硬化したか否かは、綿棒にて表面をこすって、未硬化のインク組成物が付着しないか否かで判断した。なお、下記A〜Eの照射量に該当するかどうかは、ランプを何秒照射したかによって算出できる。
A:200mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
B:200mJ/cm2以上350mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
C:350mJ/cm2以上500mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
D:500mJ/cm2以上1000mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
E:1000mJ/cm2以上の紫外線照射量にて硬化する。もしくはまったく硬化
しない。
[5]記録物の製造
各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用いて、それぞれ、以下のようにして、記録物としてのインテリアパネルを製造した。
まず、記録物製造用組成物をインクジェット装置に投入した。
その後、ポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に、所定のパターンで、記録物製造用組成物を吐出し、365nm、380nm、395nmの波長に極大値を有するスペクトルの紫外線を、照射強度160mW/cm2を10秒間照射し、基材上の記録物製造用組成物を硬化させた。その後、80℃で1時間加熱し、記録物としてのインテリアパネルを得た。
上記のような方法を用いて、各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用いて、それぞれ、10個のインテリアパネル(記録物)を製造した。
また、基材として、ポリエチレンテレフタレート(三菱樹脂社製 ダイアホイル G440E 38μm厚)を用いて成形したもの、低密度ポリエチレン(三井化学東セロ社製 T.U.X(L−LDPE) HC−E #80)を用いて成形したもの、2軸延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ社製 OP U−1 #60)を用いて成形したもの、硬質塩化ビニル(アクリサンデー社製 サンデーシート(透明)0.5mm厚)を用いて成形したものを用いた以外は、上記と同様にして、各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用いて、それぞれ、10個ずつのインテリアパネル(記録物)を製造した。
[6]記録物の評価
上記のようにして得られた各記録物について、以下のような評価を行った。
[6.1]記録物の外観評価
前記各実施例および比較例で製造した各記録物を目視により観察し、以下の7段階の基準に従い、評価した。
A:高級感に溢れる光沢感を有し、極めて優れた外観を有している。
B:高級感に溢れる光沢感を有し、非常に優れた外観を有している。
C:高級感のある光沢感を有し、優れた外観を有している。
D:高級感のある光沢感を有し、良好な外観を有している。
E:光沢感に劣り、外観がやや不良。
F:光沢感に劣り、外観が不良。
G:光沢感に劣り、外観が極めて不良。
[6.2]光沢度
前記各実施例および比較例で製造した各記録物のパターン形成部について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度が320以上。
B:光沢度が250以上320未満。
C:光沢度が150以上250未満。
D:光沢度が150未満。
[6.3]耐擦性
前記各実施例および比較例に係る記録物について、記録物の製造から48時間経過した時点で、JIS L0849に準じ、学振式堅牢度試験機において500gの荷重を載せて布擦りを30回行い、上記[6.2]で述べたのと同様の方法により、布擦り後の記録物についても光沢度(煽り角度60°)を測定し、布擦り前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度の低下率が10%未満。
B:光沢度の低下率が10%以上20%未満。
C:光沢度の低下率が20%以上30%未満。
D:光沢度の低下率が30%以上50%未満。
E:光沢度の低下率が50%以上。
これらの結果を表4に示す。なお、表4中、ポリカーボネート製の基材を用いて製造された記録物を「M1」、ポリエチレンテレフタレート製の基材を用いて製造された記録物を「M2」、低密度ポリエチレン製の基材を用いて製造された記録物を「M3」、2軸延伸ポリプロピレン製の基材を用いて製造された記録物を「M4」、硬質塩化ビニル製の基材を用いて製造された記録物を「M5」で示した。
表4から明らかなように、本発明の組成物(紫外線硬化型組成物)は、液滴の吐出安定性、保存安定性および硬化性に優れていた。また、本発明の記録物は、優れた光沢感、外観を有しており、パターン形成部の耐擦性にも優れていた。また、本発明の組成物(紫外線硬化型組成物)を用いることにより、記録媒体の種類によらず、安定的に優れた結果が得られた。これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。