JP2017088662A - 炭化水素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
dhkl1=λ/(2sinθ1) ……(1)
dhkl2=λ/(2sinθ2) ……(2)
UCS1={(dhkl1)2(h2+k2+l2)}1/2 ……(3)
ただし、式(3)中、(h2+k2+l2)の値は43
UCS2={(dhkl2)2(h2+k2+l2)}1/2 ……(4)
ただし、式(4)中、(h2+k2+l2)の値は56
dhkl1=λ/(2sinθ1) ……(1)
dhkl2=λ/(2sinθ2) ……(2)
UCS1={(dhkl1)2(h2+k2+l2)}1/2 ……(3)
ただし、式(3)中、(h2+k2+l2)の値は43
UCS2={(dhkl2)2(h2+k2+l2)}1/2 ……(4)
ただし、式(4)中、(h2+k2+l2)の値は56
単位結晶格子サイズ(以下、「UCS」とも表記する。)を調整する前の原料のFAU型ゼオライトを含む触媒(通常、FAU型ゼオライト、アルミナ等のバインダー成分、その他、カオリンなどの副次成分から構成される。以下、「触媒原料」と表記する。)としては、流動接触分解(FCC)装置用に、東ソー社等で工業的に製造され、市販されているもの(以下、「FCC触媒」と表記する。)をそのまま、あるいは、適宜加工して用いることができる。なお、本発明では触媒の、ゼオライト以外の部分をマトリックスと表記する。このマトリックスは、サブミクロンサイズの細孔を有している。
UCSを2.42以上2.45以下に調整したFAU型ゼオライト(以下、「UCS調整FAUゼオライト」とも云う。)を有する触媒(以下、「UCS調整触媒」と表記する。)は、例えば、市販のFAU型ゼオライトを含む触媒を、水蒸気(100%)内で、750〜850℃で8時間以上(ただし、処理時間が長すぎても処理によるUCS調整効果は飽和する。)、熱処理(以下、「水熱劣化処理」と表記する。)を行う、または、FCC装置への新触媒の供給と廃触媒の抜出の速度(トン/日)とを調整することで得ることができる。なお、本発明はこの限りでなく、UCSが2.42以上2.45以下となったFAU型ゼオライトやそれを含む触媒があればそのまま使用することもできる。
上記のように調製した炭化水素製造用触媒により、例えば高級脂肪酸トリグリセリドからなる植物油や高級脂肪酸と高級アルコールからなるワックスエステル等の含酸素有機原料から接触分解反応により、原料中に含まれる酸素が除去され、炭化水素が生成する。このとき、原料中の酸素は一酸化炭素、二酸化炭素、水として取り除かれる。生成物にはプロピレン等の低級オレフィンやベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素など、高オクタン価ガソリン基材や化学品製造の基幹化合物として用いることができる有用物質が含まれる。
市販の、FAU型ゼオライトを含むRFCC触媒(Grace社製)について水熱劣化処理を行い、そのUCSの調整を行った。具体的には、水蒸気中で800℃の熱処理を行った。そのときのUCSの時間変化を図1に示す。
接触反応は図2にモデル的に示すASTM F−3907に準拠して作製された、マイクロ型FCC特定検定装置(以下、「反応装置」とも云う。)を用いて行った。
反応試験では、反応温度450〜500℃、触媒重量2〜6g、原料供給量1〜1.4gの範囲で変更した。また、原料供給時間は75秒とした。
各条件における原料と触媒の接触時間の指標として、重量空間速度(WHSV(Weight hourly space velocity))を用いた。WHSVは式(5)により算出される値である。
異なるモデル物質を原料とした実験結果の比較を行う際は、原料のモル数をそろえるための指標として気体空間速度(気体空間速度(GHSV(Gas hourly space velocity))を用いた。気相中の原料を理想気体とみなし、式(6)にGHSVを求める式を示す。
GHSVもWHSV同様、逆数をとると原料の単位体積当たりの単位触媒体積における接触時間となり、この値が大きいほど、原料がより長時間、触媒と接していることとなる。
気体生成物の無機成分(水素や窒素、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2))と炭化水素成分の合計量についてはTCD検出器付きのガスクロマトグラフ(GC−TCD)により、気体や液体の生成物の炭化水素成分の分析はFID検出器付きのガスクロマトグラフ(GC−FID)により、それぞれ分析した。この際、必要に応じ、内標準法や標準物質による検量線による補正などの手法を用いた。また、一部の成分はガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)を用いて、同定を行った。なお、触媒上に付着したコークは窒素・炭素測定装置(NCアナライザー;住化分析センター(株))を用いて分析した。
反応生成物は表1に示すように分類し、評価した。なお、分析結果における各成分は表1に併記した略号を用いて示す。また、生成物分析結果の一部では、名称省略形として表2に示す略号を用いた。以下、同じ。)。
接触反応の反応機構を調べるためにモデル物質としてトリラウリンを原料として用いて検討を行った。トリラウリンはココナッツ油の主成分であるラウリン酸で構成されたトリグリセリドであり、分子式はC39H74O6、分子量は638.98[g/mol]である。融点は47℃で、室温では固体である。
触媒を用いる実際の検討に先立ち、触媒の代わりに石英砂4.03gを充填した反応装置にトリラウリンを1.33g導入し、トリラウリンの470℃における熱分解反応での生成物を調べた。その結果、熱物性反応生成物の収率は後述する、触媒を用いた場合の結果と比較すると十分に小さいことから、触媒を用いた反応試験結果において、熱分解の影響は事実上無視できることが確認された。
実際のFCCプロセスで使われながら、UCSが2.427(nm)に調整されたUCS調整FAUゼオライトを有するUCS調整触媒(以下、「UCS調整触媒(2.43)」と表記する。)を用いて、表3に示す5つの反応条件で、それぞれ触媒反応試験を行った(表3中、「sec」は「秒」、「hr」は「時」、「hr−1」は「毎時」を、それぞれ示す。以下、同じ。)。なお、UCSの値は、シリコンピークトップ角度による補正を行ったものである(以下、同じ。)。また、試験結果を表4に、1/WHSVと炭化水素成分の収率との関係を図4に、そして、1/WHSVと生成炭化水素種との関係を図5に、それぞれ示す。
表5にトリラウリンの触媒反応で生成された含酸素化合物成分と各成分の収率を示す。また、図13から図15に横軸を1/WHSVとして、各含酸素化合物成分の収率変化を示す。表5によれば、トリラウリンからは側鎖脂肪酸の炭素数に近い含酸素化合物が生成されていることが理解される。特に、図13に示したアルデヒド成分であるドデカナール(dodecanal)、カルボン酸成分であるラウリン酸(lauric acid)、ケトン成分の12−トリコサノン(12−tricosanone)(以下、特に断りがない限り、原料側鎖の炭素数の2倍より1つ少ない炭素数を有する直鎖ケトン成分を「ケトン」と表記する。)の3つが含酸素化合物中で大きな割合を占める。他にも2−トリデカノン(2−tridecanone)などが生成されているが、そのほとんどは0.2%以下の収率で少ない。また、炭素数の小さい含酸素化合物成分として、接触時間が短い条件において微量のアクロレイン(acrolein)が検出された。アクロレインは炭素数3の不飽和アルデヒドである。アクロレインはグリセリンの脱水により得られることが知られており、トリラウリンの接触分解においても側鎖の脂肪酸が脱離した後のグリセリン主鎖から生成されたと考えられる。ここで、図13から図15に収率を示すいずれの含酸素化合物も接触時間の増加とともに収率が減少していることから、これらの含酸素化合物は反応中間体であると考えられる。すなわち、反応が十分に進行すれば含酸素化合物は消失することが示された。この結果より、接触分解反応により植物油から高品位な炭化水素燃料を製造することが可能であることが確認された。
上記で検討したトリグリセリドの接触分解反応機構から、以下のようなことが明らかになった。
・多く生成される直鎖パラフィンの炭素数は側鎖脂肪酸の炭素数よりも1つ少ない。
・反応中間体として多く生成されるアルデヒド成分とカルボン酸成分の炭素数は側鎖脂肪酸の炭素数と等しい。
・ケトン成分の炭素数は側鎖脂肪酸の炭素数を2倍して1引いた値と同じになる。・カルボン酸成分の減少がアルデヒド成分やケトン成分に比べ大きい。
・2−ケトン(2−ketone)成分やビニルエステル(vinyl ester)成分も生成する。
・グリセリン由来であるアクロレインが生成する。
・全体の酸素収率は反応を進行させるとその大部分がCO及びCO2収率となる。
上記のように、トリグリセリドの接触分解反応経路が明らかになった。ここで、接触分解反応は触媒中に含まれるゼオライトが主活性点となっている。しかし、実際の接触分解で原料として用いる植物油の分子径は20〜50nmとゼオライトの細孔径に対して非常に大きいことから、植物油の接触分解反応では原料の触媒中での拡散に対して立体障害が生じていると考えられる。そのため、側鎖脂肪酸の炭素数の違いにより分子径が異なるトリグリセリドを原料とした触媒反応試験を行うことで、触媒中での原料拡散に対する立体障害の影響を検討した。実験には、上記で用いたトリラウリン(側鎖炭素数12)に加え、トリカプリリン(側鎖炭素数8)とトリパルミチン(側鎖炭素数16)を用いた。
トリカプリリンは炭素数が8の脂肪酸であるカプリン酸で構成されたトリグリセリドである。分子式はC27H50O6、分子量は470.67[g/mol]である。融点は9℃で、室温では液体である。
表7にトリカプリリンでの触媒試験条件、表8に反応生成物分析の結果を示し、図19と図20に横軸を1/WHSVとして、炭化水素成分の収率と、その他の成分の収率を示す。また、図21に炭素数別の各直鎖パラフィンの収率を示す。
表9にトリカプリリンの触媒反応で得られた含酸素化合物成分と各成分の収率を示す。また、図22と図23に横軸を1/WHSVとして、各含酸素化合物の収率の変化を、図24には横軸を1/WHSVとして、原料であるトリカプリリンの収率の変化を示す。
トリパルミチンは炭素数が16の脂肪酸であるパルミチン酸から構成されたトリグリセリドである。分子式はC51H98O6、分子量は807.29[g/mol]である。融点は66℃で、室温では固体である。
表11にトリパルミチンでの触媒試験条件、表12に反応生成物の分析結果を示す。また、図28から図30にそれぞれ、反応の進行による炭化水素収率の変化、淡化水素の各成分の収率の変化、及び、炭素別直鎖パラフィンの収率の変化を示す。
表13にトリパルミチンの触媒反応で得られた含酸素化合物とそれら各成分の収率を示す。また、図31と図32に1/WHSVを横軸として各含酸素化合物の収率を示す。
異なる原料を比較する際、重量基準であるWHSVに加え、エステル結合の数(モル数)をそろえた指標としてGHSVを用いた。また、異なる原料を用いた時、それぞれの現良好を構成する脂肪酸の炭素数に対応した直鎖パラフィン成分や中間体が検出されるので、以下、これら脂肪酸の炭素数を「m」と表記する。すなわち、トリラウリンならm=12、トリカプリリンならm=8、トリパルミチンならm=16である。
炭化水素成分の収率について、図36から図41に、横軸を1/WHSVとして、炭化水素、n−Cm-1(炭素数がm−1個の直鎖パラフィン)、パラフィン成分、オレフィン成分、単環芳香族、及び、多環芳香族の収率をそれぞれ示す。これらの図から収率は異なるものの、どの原料を用いても、おおむね似た挙動となっており、炭化水素の分解では炭素数が異なる場合でも同じように反応が進行していることがここでも確認される。
図48と図49にそれぞれ横軸を1/GHSVとして、炭化水素の収率、及び、酸素基準としたCO+CO2の収率を示す。また、同じ温度で行ったココナッツ油及び大豆油での結果も掲載する(これらの原料、及び、不飽和脂肪酸から構成される大豆油による接触反応については後述する。)。
上記において、トリグリセリドの接触分解反応では、触媒のマトリックス部において脱酸素反応が進行することが示唆された。ここで、マトリックス部での反応活性点として、マトリックスを構成する成分であるカオリンやアルミナが考えられる。そこで、これらの成分がトリグリセリドの脱酸素反応にどのように寄与しているのかを調べるために、これら成分を単独で用いた触媒反応試験を行い、反応生成物を分析した。なお、ここでFCC触媒の組成はゼオライト約30wt%、カオリン約50wt%、アルミナ約20wt%である。そこで、カオリン及びアルミナを石英砂と混合して希釈した後に、触媒を用いた場合と同程度の重量で触媒層に充填し、その触媒活性を調べた。
12.01×41.85十1.008×79.1十16.00×6=678.35[g/mol] ……(5)
ユーグレナワックスエステルから接触分解反応によって炭化水素燃料を合成することを目指し、反応試験を行った。さらに、ワックスエステルの接触分解反応の特徴について調べた。
ワックスエステルは高級脂肪酸と高級アルコールからなるエステルであり、常温で固体の黄色ないし榿色の物質である。ユーグレナが生産するユーグレナワックスエステルは、ミリスチン酸(炭素数14)とミリスチルアルコール(炭素数14)からなるミリスチルミリステートを主成分としており、炭素数13や15の奇数鎖の脂肪酸と脂肪アルコールとからなるワックスエステルも多く存在している。一般に、他の微細藻類や油糧植物の生産する主要な脂肪酸炭素鎖は炭素数16や18であることから、炭素数14の脂肪酸を大量に生産可能な点は非常に有用である。表18にユーグレナワックスエステルの組成を示す。この表より、一分子あたりの分子量を次の数式(6)から429.76とする。
12.01×28.359十1.O08×56.718十16.00×2=429.76[g/mol] ……(6)
表19にユーグレナワックスエステルでの触媒試験の反応条件を示し、表20に反応生成物の分析結果を示す。また、図55から図57にそれぞれWHSVの逆数に対し、炭化水素収率、それぞれの成分の収率、及び、無機ガス(H2、CO、CO2)収率を示す。
図58と図59にそれぞれ、1/WHSVとユーグレナワックス分解反応生成物中の炭素数別の直鎖パラフィン成分、及び、オレフィン成分の収率との関係を示す。
表21に触媒反応試験で得られた含酸素化合物とその収率を示す。また、図64に1/WHSVの増加に伴う、炭素数が14のアルデヒド(テトラでカナール(tetradecanal))とカルボン酸(ミリスチン酸(myristic acid))の収率変化を、図65から図68に1/WHSVの増加に伴う、炭素数別の各成分の収率変化を示す。
ユーグレナワックスエステルから生成された中間体は、トリグリセリドの場合と同様のものであり、このため、ユーグレナワックスエステルの接触分解の反応経路はトリグリセリドと反応経路が大きく違うとは考えにくい。しかし、ユーグレナワックスエステルはグリセリンではなく高級脂肪酸と高級アルコールとからなるワックスエステルであるため、アルコール部分でトリグリセリドと異なった反応経路となっていると考えられる。炭素数が14程度のオレフィンが多く生成されていることから、次に示すような経路を想定した。カルボン酸以降の反応経路は反応機構(C)に示した(反応経路(B)とほぼ同じなので、検出できた成分のみを抜粋した。)。
バイオマス実原料であるココナッツ油及び大豆油を原料に用いて接触分解反応試験を行い、反応生成物の分析を行った。ここで、ココナッツ油の側鎖は主に飽和脂肪酸から構成されるのに対し、大豆油の側鎖には不飽和脂肪酸が多く含まれる。そこで、ココナッツ油での反応と大豆油での反応とを比較することにより、側鎖中の不飽和結合の有無による違いについても検討を行った。
大豆油に含まれる脂肪酸の組成を表22に示す。主成分は炭素数18の不飽和脂肪酸であるオレイン酸及びリノール酸である。表22より、大豆油の平均分子量を数式(7)で算出した860.23とした。
12.01×55.41十1.008×97.97十16.00×6=860.23[g/mol] ……(7)
温度を変えてココナッツ油の接触分解反応試験を行った。表23に触媒反応試験の条件、表24に反応生成物の分析結果を示す。また、図71に各反応温度における炭化水素収率を示す。図71から、反応温度が高くなると炭化水素成分が多く生成されていることが理解される。これは反応温度の上昇に伴って、原料の分解がより進行しているためであると考えられる。さらに、表24に示すように生成物中にCOやCO2が検出されたことから脱酸素反応も進行していると考えられる。なお、本実験では反応温度を470℃とした実験を2回行い再現性の確認をとった。その結果、2回ともほぼ同じ炭化水素収率(56.1%,54.5%)を示した。以降は、反応温度を470℃で行った得た反応生成物である、2MTBio oil03について、分析を行った結果について記載する。
ココナッツ油の接触分解反応生成物についてさらに詳細に分析を行った。図74、図75、図76に、470℃における反応生成物中のパラフィン成分、オレフィン成分、及び、芳香族成分について、炭素数別の収率をそれぞれ示す。
ココナッツ油の反応試験では多くの含酸素化合物が生成した。表25に含酸素成分とGC−FIDにより検出された保持時間(RetentionTime 以下、「RT」と表記する。)、各反応温度で各成分が検出されているかどうかを示す。
表25から含酸素化合物は、炭素数の異なるアルデヒド成分、カルボン酸成分、ケトン成分であることがわかる。また、反応温度が450℃と470℃の場合には多くの含酸素化合物が検出されたのに対し、反応温度が500℃の場合は検出された含酸素化合物の種類が少なくなっている。これは、反応温度が高いと分解反応や脱酸素反応がより促進されるので、これらの含酸素化合物は他の成分へ分解されたと考えられる。また、RTが143分以降のケトンに注目すると、RTが6〜9分間隔で規則的に検出されていることが確認される。このように規則的に検出されることから、これらのケトンの炭素数には規則性があることが考えられ、すでに同定された8−ペンタデカノン(8−pentadecanone(C15))と12−トリコサノン(12−tricosanone(C23))、16−ヘントリアコンタノン(16−hentriacontanone(C31))のRTの間隔からそれぞれのケトンの炭素数を推定した。すると、それぞれのケトンの炭素数はいずれも奇数になることがわかった。さらに、12−トリコサノンや16−ヘントリアコンタノンのように中央の炭素でカルボニル結合している成分が生成されていることから、同定されていない他のケトンも同様に、中央の炭素、もしくは中央から少しずれた位置の炭素が酸素とカルボニル結合していると考えられる。
表26に大豆油の接触分解反応試験の反応条件を示し、反応生成物分析の結果を表27に示す。なお、この実験条件は表23に示したココナッツ油での470℃での反応試験と同じ条件で行っているが、大豆油の接触分解反応生成液中には含酸素化合物は検出されなかった。このことから、大豆油の脱酸素反応は非常に速やかに進行することが確かめられた(ポイント(f))。
原料植物油の側鎖脂肪酸の炭素数はココナッツ油よりも大豆油の方が大きいにもかかわらず、反応生成物は大豆油の方が低分子化が進行していることがわかる。これはトリグリセリドの側鎖脂肪酸に含まれる不飽和結合の分解が速やかに進行したためと考えられる。不飽和脂肪酸側鎖の速やかな分解は、図77と図78において、原料中の側鎖脂肪酸の炭素数に対応する直鎖パラフィンや直鎖オレフィンの生成が観察されなかったことからも確かめられる。以上の結果より、植物油の側鎖に不飽和脂肪酸が含まれていると、脱酸素反応及び分解反応が速やかに進行することが確認された。
トリグリセリドのモデル物質での接触反応における炭化水素の収率、及び、酸素基準でのCO及びCO2の収率のGHSVの比較結果を示した図48、及び、図49に大豆油での結果を併せて載せたが、これらの図において、トリグリセリドのモデル物質や飽和脂肪酸からなるトリグリセリドであるココナッツ油での収率と比べ、不飽和脂肪酸からなるトリグリセリドである大豆油では、CO及びCO2の収率がやや低い値となった。ここで、大豆油での反応生成液中には含酸素化合物は検出されなかったことから、不飽和脂肪酸トリグリセリドの反応では原料中の酸素の多くが水に変換された。上記にも示したとおり、不飽和脂肪酸トリグリセリドの接触分解では脱酸素及び分解反応が速やかに進行することがわかっており、この結果からは触媒のマトリックス部分では脱酸素反応だけでなく側鎖の不飽和脂肪酸の分解も進行している可能性が考えられる。このため、図49において、大豆油からのCO及びCO2の生成が少ないことの原因として、グリセリン主鎖のエステル結合よりも側鎖の不飽和脂肪酸が先に分解されることで、エステル結合の脱酸素反応経路が変化した可能性、側鎖の分解に伴って生成した水素がエステルの脱酸素反応に影響した可能性、側鎖の分解に伴って生成した水素とエステル結合の脱炭酸反応によって生成したCO2の間で逆シフト反応(CO2+H2→CO+H20)が進行した可能性などが考えられる。なお、水素化脱酸素反応は原料中の炭素を消費せず水素を消費する反応であるため、反応系内の水素/炭素比が減少し、反応生成物である炭化水素において脱水素化が促進されるため、石油化学基材となる有用な、不飽和結合を有するオレフィンやオレフィンがさらに環化脱水素した芳香族化合物が多く生成される(ポイント(e))。
UCS調整FAU型ゼオライトとMFI型ゼオライトとを併用して接触分解を行った。
上記のUCSの調整の検討で用いたものと同じFCC用のFAU型触媒(Grace社製。以下、「FCC新触媒」と表記する。)を粉砕したもの、MFI型ゼオライト(東ソー社製。Si/Al比は1500。)、及び、アルミナゾル(日揮触媒化成社Cataloid AP−1)を表28に示した配合比(重量比)で混合した後、蒸留水を少量添加して練り、次いで、成形機を用いて粒状に成形した後、常温で乾燥させた後に粉砕、その後、空気を流通させながら120℃で3時間の乾燥、及び、550℃で3時間での加熱処理を行い、すり鉢で粉砕したのち、粒子径を45〜150μmのものを、篩い分けを行って得た。
一体成形型触媒の作製と同様に、ただし、原料は、カオリン、MFIゼオライト、及び、アルミナパウダーを表29に示した配合比(重量比)で用いて造粒し、粒子径を45〜150μmに揃えた。
上記で用いたMFI型ゼオライトはプロトンタイプであるが、造粒段階で混合した不純物を除去するために、上記の造粒物、及び、MFI型触媒をそれぞれ、2mol/L(リットル)の硝酸アンモニウム水溶液に減圧下で1晩、浸漬した。その後、上澄み液を捨てた。造粒物1g当たり10mLの2mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を加え80℃で2時間攪拌し、濾過した。この、硝酸アンモニウム水溶液を添加し濾過、の一連の動作を計3回行った後、同様に、蒸留水で洗浄し濾過する、の動作を3回繰り返した。その後、1晩減圧乾燥を行った後、約100mL/分の流速で乾燥空気を流通させながら120℃で3時間の乾燥、及び、550℃での3時間の加熱処理を行った。そして、すり鉢で粉砕したのち、篩い分けを行って粒子径を45〜150μmに揃えた。
FCC新触媒、及び、上記でイオン交換を行った触媒に対して、800℃の水蒸気雰囲気下で、12時間の水熱劣化処理を行い、以下で用いる触媒を得た。これらUCSが調整された各触媒、及び、FCC新触媒のUCS(nm)を、表30に示す。
表30に示すように、以下の接触反応に用いる触媒中のFAU型ゼオライトのUCSは2.42以上2.45以下に調整されている。
上記で準備した触媒を用いてココナッツ油の接触分解を行った。
反応試験条件、及び、その条件での収率を表31〜35に示す。なお、表中、「MFI/(FAU+MFI)」の値は、原料全ゼオライト中のMFI型ゼオライトの重量比率を示す。また、収率に関して、メタン法での結果を示した。
図80に各反応試験における転化率を示す。C16+転化率とは、原料が炭素数15以下の分子にどれだけ添加したかを割合で示したものである。図の横軸はWHSVの逆数をとったもので、横軸が右へ行くほど滞留時問が長く、反応が進行している。
図81から図83にそれぞれ、WHSV32、WHSV24、及び、WHSV16における各生成物の収率を示す。グラフの横軸は全ゼオライト中のMFI型ゼオライトの含有比である。
図84から図86に、それぞれWHSV32、WHSV24、及び、WHSV16における分岐別のパラフィン成分の収率を示す。グラフの横軸はゼオライト中のMFI型ゼオライトの含有比である。
図87に多環芳香族成分の収率、図88に単環芳香族成分の収率をそれぞれ示した。グラフの横軸はゼオライト中のMFI型ゼオライトの含有比である。
飽和脂肪酸からなるトリグリセリドを主成分とするココナッツ油と、不飽和脂肪酸からなるトリグリセリドを主成分とするヒマワリ油を混合し、接触分解を行った。反応温度は470℃、WHSVは16hr-1とし、触媒にはUCS調整触媒(2.43)を用いた。
ココナッツ油単独の反応では含酸素化合物が9wt%以上検出されたのに対し、ヒマワリ油単独の反応では含酸素化合物は1wt%以下に抑えられた。これは、ヒマワリ油が有する不飽和結合が接触分解反応場において速やかに分解したためであり、上記した大豆油での結果(ポイント(f))と一致する。一方、ココナッツ油にヒマワリ油を添加した場合の含酸素化合物収率は、ヒマワリ油を10wt%添加することで3wt%まで大幅に低減し、20wt%以上添加した場合にはヒマワリ油単独の試験結果と同程度の1wt%以下の含酸素化合物収率となった。これは、ヒマワリ油の不飽和結合の分解によって生成した分解反応物がココナッツ油の飽和脂肪酸トリグリセリドの脱酸素反応を促進したためと考えられる。すなわち、少量の不飽和脂肪酸トリグリセリドを混合することにより、活性の低い飽和脂肪酸トリグリセリドの脱酸素反応を促進できることが確かめられた。
2 導入管
3、5 ヒータ
4 反応部
4a 熱電対
4b 石英ウール
6 触媒
7 液捕集機
8 飛散液捕集トラップ
9 ガスビュレット
Claims (5)
- 出力X線の波長が0.15406nmのCuKα−X線源を有するローターフレックス型X線回折分析装置によって測定される、(533)面のピークの反射角(θ1)及び(642)面のピークの反射角(θ2)と、X線の波長(λ)0.154060nm(CuKα1)と、から次式(1)及び(2)でそれぞれ算出される2つの格子面間隔定数dhkl1及びdhkl2を用いて、次式(3)及び(4)により算出される2つの単位結晶格子サイズ(nm)UCS1及びUCS2の算術平均値が2.42以上2.45以下であるFAU型ゼオライトを少なくとも有する炭化水素製造用触媒を用いて、
接触分解反応によって含酸素有機原料から炭化水素を生成させることを特徴とする炭化水素の製造方法。
[数1]
dhkl1=λ/(2sinθ1) ……(1)
dhkl2=λ/(2sinθ2) ……(2)
UCS1={(dhkl1)2(h2+k2+l2)}1/2 ……(3)
ただし、式(3)中、(h2+k2+l2)の値は43
UCS2={(dhkl2)2(h2+k2+l2)}1/2 ……(4)
ただし、式(4)中、(h2+k2+l2)の値は56 - 前記含酸素有機原料が、高級脂肪酸グリセリド、及び/または、高級脂肪酸と高級アルコールとのワックスエステルであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
- 前記含酸素有機原料が、ユーグレナ由来のワックスエステルであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素の製造方法。
- 前記炭化水素製造用触媒が、前記FAU型ゼオライトに加えてMFI型ゼオライトを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の炭化水素の製造方法。
- 前記炭化水素製造用触媒のマトリックス中にアルミナが配されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の炭化水素の製造方法。
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