JP2017088446A - 薄板ガラスの製造装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工が簡単な成形体で、溶融ガラスの幅方向両端部の局所的な厚みの変動を抑えながら、成形される薄板ガラスの幅方向寸法を増大する。【解決手段】下端部6aで収束する一対の逆斜面部6を有する成形体1を備えた薄板ガラスの製造装置であって、逆斜面部6の幅方向両端部は、下端部6aを含む下方領域に形状一定部61を有すると共に、形状一定部61の上方領域に形状変化部62を有する。形状一定部61の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向と平行であり、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保つ。形状変化部62の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜しており、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保つ。【選択図】図1
Description
本発明は、オーバーフローダウンドロー法により薄板ガラスを製造するための技術の改良に関する。
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板や、有機EL照明用のカバーガラスに代表されるように、各種分野に利用される薄板ガラスには、表面欠陥やうねりに対して厳しい製品品位が要求される場合がある。
そこで、この種の薄板ガラスの製造方法としては、平滑で欠陥のないガラス表面を得るために、オーバーフローダウンドロー法が多く利用されている。
オーバーフローダウンドロー法を体現する製造装置としては、種々のものが提案されている。例えば、特許文献1に開示の製造装置では、溶融ガラスの幅方向両端部の局所的な厚みの変動を抑えつつ、成形される薄板ガラスの幅方向寸法の増大を図ることを目的として、溶融ガラスが流下する成形体の逆斜面部の幅方向両端部に、溶融ガラスの幅方向中央側への流れを規制するための流れ規制部を設けることが開示されている。
流れ規制部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜しており、かつ、いずれの垂直断面内においても、その垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保っている。また、流れ規制部は、溶融ガラスが融合される逆斜面部の下端部を含む逆斜面部の上下方向の全域に亘って形成されている。
ところで、成形体は、例えば、成形体の元となるレンガ等の耐火物を研削して形成される。そのため、特許文献1に開示の、流れ規制部のような複雑な形状変化部が逆斜面部の幅方向両端部の上下方向全域という広い範囲に設けられていると、成形体の加工が必然的に難しくなるという問題がある。特に、成形体の逆斜面部の下端部は欠け等の加工不良が生じやすい部位であるため、逆斜面部の下端部まで複雑な形状変化部が及んでいると、成形体の加工の難しさが顕著になる。
本発明は、加工が簡単な成形体で、溶融ガラスの幅方向両端部の局所的な厚みの変動を抑えながら、成形される薄板ガラスの幅方向寸法を増大することを技術的課題とする。
上記課題を解決するために創案された本発明は、下端部で収束する一対の逆斜面部を有する成形体を備え、逆斜面部のそれぞれに沿って流下する溶融ガラスを下端部で融合一体化し、一枚の薄板ガラスを成形する薄板ガラスの製造装置であって、逆斜面部の幅方向両端部は、下端部を含む下方領域に形状一定部を有すると共に、形状一定部の上方領域に形状変化部を有し、形状一定部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向と平行であり、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保ち、形状変化部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜しており、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保つことを特徴とする。
本願発明者等は鋭意研究を重ねた結果、形状変化部を逆斜面部の幅方向両端部の上下方向全域に亘って設けなくても、上下方向全域に亘って設けた場合と同等の結果を得ることができることを知見するに至った。すなわち、逆斜面部の幅方向両端部において、逆斜面部の上方領域のみを形状変化部とし、逆斜面部の下方領域は形状一定部としても、逆斜面部の上下方向全域を形状変化部とした場合と同様に、溶融ガラスの幅方向両端部の局所的な厚みの変動を抑えながら、成形される薄板ガラスの幅方向寸法を増大できるという結果を得た。
この場合、逆斜面部の幅方向両端部において、下端部を含む下方領域は、形状一定部とされるため、加工不良が生じやすい下端部を含む領域の形状が簡単になる。しかも、加工が難しい形状変化部は、逆斜面部の幅方向両端部のうち、上方領域という狭い範囲に絞られる。したがって、逆斜面部の幅方向両端部の上下方向全域を形状変化部とした場合に比べ、成形体の加工が非常に簡単になる。
上記の構成において、形状変化部の表面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
すなわち、形状変化部の表面が平面であれば、形状変化部の加工がより簡単になる。一方、形状変化部の表面が曲面であれば、逆斜面部の表面の幅方向中央部と滑らかに連続させることができるので、溶融ガラスの流れが均一な分布を示し易いという利点がある。
上記の構成において、成形体の幅方向両端部に、逆斜面部を流下する溶融ガラスの幅方向端部を案内するガイド面を有するガイド部材が外側から嵌め込まれていることが好ましい。
このようにすれば、ガイド部材のガイド面で溶融ガラスの幅方向端部を案内する際に、溶融ガラスの幅方向端部がガイド面に密着するので、溶融ガラスの幅方向の収縮が生じ難くなる。
この場合、ガイド面に、形状一定部の一部を下方から覆いながら幅方向中央部側に延びる延長部が設けられており、延長部と形状一定部との間の隙間が、成形体とガイド部材との間の隙間に連通していることが好ましい。
すなわち、成形体の幅方向端部にガイド部材を嵌め込んだ構造の場合、溶融ガラスが、ガイド部材のガイド面に沿って流下する過程で成形体とガイド部材との間の隙間に侵入することがある。そして、成形体とガイド部材との間の隙間に侵入した溶融ガラスは、成形体の下端部において、逆斜面部を正常に流下する溶融ガラスから分離した位置で、単独で筋状に流下するおそれがある。この筋状に流下した溶融ガラスは、成形体の下方で雫状のガラス玉(図7の符号Gx1を参照)を形成するとともに、ある程度の大きさになった時点で落下する。このようにガラス玉が落下すると、例えば、製造装置の構成要素(冷却ローラ、牽引ローラなど)に衝突してガラス粉が発生したり、製造された薄板ガラスに成形体の下方で衝突して薄板ガラスが破損したりするおそれがある。そこで、上記の構成にように、延長部と形状一定部との間の隙間を、成形体とガイド部材との間の隙間に連通させることで、成形体とガイド部材との間の隙間に侵入した溶融ガラスを、延長部と形状一定部との間の隙間を利用して、成形体の幅方向中央側に誘導することが好ましい。これにより、成形体とガイド部材との間の隙間に侵入した溶融ガラスを、成形体の逆斜面部を正常に流下する溶融ガラスと合流させることができるので、上述したガラス玉が形成されるのを防止することができる。
ここで、このような効果は、逆斜面部の下方領域を形状一定部とすることにより、達成されるものである。すなわち、逆斜面部の下方領域まで形状変化部とした場合、逆斜面部の下方領域の表面も、水平断面において幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜する。そのため、延長部を適正に逆斜面部の下方領域に被せ難くなる。また、延長部と逆斜面部との間の隙間が著しく大きくなるなど、隙間の管理も難しくなる。したがって、延長部を設けることができない場合もある。これに対し、本発明では、逆斜面部の上方領域のみを形状変化部とし、延長部を設ける逆斜面部の下方領域は形状一定部としていることから、逆斜面部の下方領域の表面は、水平断面において幅方向と平行である。そのため、延長部を適正に逆斜面部の下方領域に被せやすく、延長部と逆斜面部との間の隙間の管理も容易となる。
上記の構成において、延長部は、逆斜面部に沿って配置された薄肉部材で形成され、その表面に逆斜面部を流下する溶融ガラスが乗り上げ可能であってもよい。
このようにすれば、成形体の逆斜面部を正常に流下する溶融ガラスが延長部に乗り上げるので、成形体とガイド部材との間の隙間に侵入した溶融ガラスを延長部と形状一定部との間の隙間から外部に流出させる際に、成形体の逆斜面部を正常に流下する溶融ガラスと確実に合流させることができる。
上記の構成において、延長部は、形状一定部に沿って配置された厚肉部材で形成され、その先端部の厚み部分で逆斜面部を流下する溶融ガラスの幅方向端部を案内可能であってもよい。
このようにすれば、延長部の先端部の厚み部分で逆斜面部を正常に流下する溶融ガラスの幅方向端部が案内されるので、成形体とガイド部材との間の隙間に侵入した溶融ガラスを延長部と形状一定部との間の隙間から外部に流出させる際に、成形体の逆斜面部を正常に流下する溶融ガラスと確実に合流させることができる。
上記課題を解決するために創案された本発明は、下端部で収束する一対の逆斜面部を有する成形体を用い、逆斜面部のそれぞれに沿って流下する溶融ガラスを下端部で融合一体化し、一枚の薄板ガラスを成形する薄板ガラスの製造方法であって、逆斜面部の幅方向両端部は、下端部を含む下方領域に形状一定部を有すると共に、形状一定部の上方領域に形状変化部を有し、形状一定部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向と平行であり、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保ち、形状変化部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜しており、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保つことを特徴とする。
このような構成によれば、既に述べた対応する構成と同様の効果を享受できる。
以上のように本発明によれば、加工が簡単な成形体で、溶融ガラスの幅方向両端部の局所的な厚みの変動を抑えながら、成形される薄板ガラスの幅方向寸法を増大することが可能となる。
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置は、オーバーフローダウンドロー法を実行するための成形体1を備えている。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置は、オーバーフローダウンドロー法を実行するための成形体1を備えている。
成形体1は、製造される薄板ガラスの幅方向に対応する方向に長尺である。成形体1の頂部には、その幅方向に沿って形成されたオーバーフロー溝2が設けられている。成形体1の幅方向と直交する方向の両側には、一対の外側面部3が設けられている。オーバーフロー溝2から両側に溢れ出た溶融ガラスGは、それぞれの外側面部3に沿って流下する。ここで、図1に示すXYZからなる直交座標系において、X方向及びY方向は水平方向にあり、Z方向が垂直方向である。X方向が上記の「幅方向」であり、Y方向が上記の「幅方向と直交する方向」である。なお、図2〜図4においても同様とする。
オーバーフロー溝2の幅方向の一端側には、供給パイプ4が接続されている。この供給パイプ4を通じて、オーバーフロー溝2内に溶融ガラスGが供給される。溶融ガラスGの供給方法はこれに限定されず、例えば、オーバーフロー溝2の両端側から溶融ガラスGを供給するようにしてもよいし、オーバーフロー溝2の上方から溶融ガラスGを供給するようにしてもよい。
一対の外側面部3のそれぞれは、垂直面部5と、垂直面部5の下方に連なる逆斜面部6とを備えている。垂直面部5同士は、互いに一定の距離を保ったまま対向する平行な面である。逆斜面部6同士は、下方に向かうに連れて互いに接近するように傾斜しており、下端部6aで一つに収束する。下端部6aは、幅方向に延びる直線部で構成されている。なお、垂直面部5は、傾斜面や曲面などに形状を変更してもよいし、省略してもよい。
成形体1の幅方向両端部には、外側面部3を流下する溶融ガラスGの幅方向両端部を案内するガイド面71を有するガイド部材7が設けられている。ガイド部材7は、ガイド部材7に設けられた嵌合凹部(図7の符号72を参照)を成形体1の幅方向端部に外側から嵌め込むことで、成形体1に固定されている。なお、図2では、ガイド部材7を省略している。
逆斜面部6の幅方向両端部は、下端部6aを含む下方領域に形状一定部61を有し、上方領域(図1のクロスハッチングを付した領域)に形状変化部62を有している。
形状一定部61の幅方向端部と形状変化部62の幅方向端部は、それぞれガイド部材7のガイド面71に接している。
逆斜面部6の幅方向中央部は、逆斜面部6の幅方向両端部の形状一定部61と同一形状である。すなわち、形状変化部62は、逆斜面部6の幅方向両端部の上方領域のみに形成されており、逆斜面部6のうち形状変化部62を除く部分は、形状一定部61とされている。
図3(a),(b)及び(c)に示すように、形状一定部61の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向(X方向)と平行である。
図4(a),(b)及び(c)に示すように、形状一定部61の表面は、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線P1が斜め下方を向く一定の傾斜を保っている。
この実施形態では、形状一定部61の表面は、下端部6aを通り、垂直面に対して傾斜した平面で構成される。
一方、図3(a)及び(b)に示すように、形状変化部62の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方(Y方向の外方)側に移行するように傾斜している。すなわち、形状変化部62の厚み(Y方向の寸法)は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて増加するようになっている。
形状変化部62の幅方向寸法Wは、上下方向のいずれの位置でも一定となっている。なお、形状変化部62の幅方向寸法Wは、上下方向で変化してもよい。
図4(b)及び(c)に示すように、形状変化部62の表面は、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線P2が斜め下方を向く一定の傾斜を保っている。
この実施形態では、図3(a)及び(b)に示すように、形状変化部62の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜した直線となっているため、形状変化部62の表面は、垂直面に対して傾斜した平面で構成される。なお、形状変化部62の表面は、垂直面に対して傾斜した曲面で構成されていてもよい。この場合、形状変化部62の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜した曲線(放物線)となる。
図4(b)及び(c)に示すように、垂直断面内において、一対の形状一定部61のなす角θ1は、一対の形状変化部62のなす角θ2よりも小さい。角θ1は、幅方向のいずれの位置でも一定であるが、角θ2は、幅方向中央側から幅方向端部側に向かうに連れて大きくなる。角θ1は、例えば25°〜55°である。角θ2の最大値と角θ1の角度差は、例えば2°〜20°(好ましくは、7°〜15°)である。この角度差が大きくなると、逆斜面部6を流下する溶融ガラスGを幅方向端部側に誘導する力が大きくなる。
次に、以上のように構成された製造装置による薄板ガラスの製造方法を説明する。
図1及び図4(a)〜(c)に示すように、オーバーフロー溝2から両側に溢れ出させた溶融ガラスGを両外側面部3に連続的に供給する。両外側面部3のそれぞれでは、溶融ガラスGを垂直面部5の表面に沿って流下させた後、逆斜面部6の表面に沿って流下させる。そして、最終的に、両外側面部3を流下する溶融ガラスGを逆斜面部6の下端部6aで融合一体化させ、一枚の薄板ガラスを連続成形する。
この際、逆斜面部6の形状変化部62は、図3(a)及び(b)に示すように、いずれの水平断面内においても、幅方向中央側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜していることから、その傾斜によって垂直面部5から流下してくる溶融ガラスGの流れを捕捉して、幅方向端部側に誘導することができる。その結果、溶融ガラスGの幅方向中央側へ接近する流れは規制され、溶融ガラスGの幅方向両端部の収縮は抑制される。そして、溶融ガラスGの幅方向両端部が形状変化部62からその下方領域に形成された形状一定部61に乗り移った段階では、逆斜面部6の下端部6aまでの距離は短くなっている。そのため、溶融ガラスGが形状一定部61に乗り移ってから下端部6aに至るまでの間に、溶融ガラスGの幅方向両端部が大きく収縮することはない。
また、形状変化部62は、図4(b)及び(c)に示すように、いずれの垂直断面内においても表面に対する垂線P2が斜め下方を向く一定の傾斜を保っているので、形状変化部62を流下する溶融ガラスGの流れ方向がその途中で急激に変化することがない。そして、形状一定部61も、図4(a)、(b)及び(c)に示すように、いずれの垂直断面内においても表面に対する垂線P1が斜め下方を向く一定の傾斜を保ったまま、下端部6aへと至るので、形状一定部61を流下する溶融ガラスGの流れ方向もその途中で急激に変化することがない。したがって、溶融ガラスGの幅方向両端部における局所的な厚みの変動を小さく抑えることができる。
このように製造された薄板ガラスの製品部(耳部を除く幅方向中央部)の厚みは、例えば、10〜1000μmとなる。また、その製品部の板幅は、例えば、0.5〜4mとなる。
ここで、逆斜面部6の幅方向両端部において、下端部6aを含む下方領域は、形状一定部61とされるため、加工不良が生じやすい下端部6aを含む領域の形状が簡単になる。また、加工が難しい形状変化部62は、逆斜面部6の幅方向両端部のうち、上方領域という狭い範囲に絞られる。したがって、逆斜面部の幅方向両端部における上下全領域を逆斜面部とした場合に比べ、成形体1の加工が非常に簡単になる。なお、成形体1は、例えば、耐熱レンガを所望の形状に研削加工することにより製造される。
(第2の実施形態)
図5に示すように、本発明の第2の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置が、第1の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置と相違するところは、ガイド部材7のガイド面71に、下端部6aを含む形状一定部61の一部を下方から覆いながら幅方向中央部側に延びる延長部8が設けられている点にある。以下では、相違点を中心に説明する。なお、成形体1の基本的構造は、第1の実施形態と同様であるので詳しい説明は省略する。
図5に示すように、本発明の第2の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置が、第1の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置と相違するところは、ガイド部材7のガイド面71に、下端部6aを含む形状一定部61の一部を下方から覆いながら幅方向中央部側に延びる延長部8が設けられている点にある。以下では、相違点を中心に説明する。なお、成形体1の基本的構造は、第1の実施形態と同様であるので詳しい説明は省略する。
図6に示すように、延長部8は、逆斜面部6の形状一定部61に沿った薄肉部材(例えば、0.5〜3mmの厚み)で構成されている。延長部8の表面の少なくとも一部は、成形体1の外側面部3を正常に流下する溶融ガラスGの流下エリアの一部を構成している。すなわち、溶融ガラスGが、延長部8の表面に乗り上げるようになっている。なお、延長部8は、形状変化部62には設けられていない。
延長部8の先端部8aは、下方に移行するに連れて幅方向中央側に接近するように傾斜している。なお、延長部8の先端部8aは、傾斜していなくてもよい。
延長部8は、耐熱性及び耐食性を有する金属、これらの合金、又はこれらの複合材料で形成される。具体的には、延長部8は、例えば、白金、白金合金、セラミック分散複合材料などによって形成される。延長部8は、ガイド部材7のガイド面71に溶接などによって隙間なく固定されている。
延長部8と形状一定部61(逆斜面部6)との間の隙間は、成形体1とガイド部材7との間の隙間に連通している。詳細には、成形体1とガイド部材7との間の隙間は、成形体1の幅方向両端部とガイド部材7の嵌合凹部72の間の隙間である。この隙間は、薄板ガラスの製造過程で生じる成形体1とガイド部材7の間の熱膨張差を主たる原因として生じるものである。
ここで、延長部8の幅方向中央側への突出量は、溶融ガラスGの逆斜面部6の下端部6a周辺における幅方向の収縮量を考慮して決定する。すなわち、この実施形態では、収縮した溶融ガラスGの幅方向端部よりも延長部8が幅方向中央側に入るように、延長部8の突出量を決定する。
以上のように構成すれば、成形体1とガイド部材7との間の隙間に、例えば矢印F1方向から侵入した溶融ガラスGxを、延長部8と形状一定部61との間の隙間を利用して、成形体1の幅方向中央側に誘導することができる。そして、成形体1の外側面部3を正常に流下する溶融ガラスGが、薄肉部材からなる延長部8の表面に乗り上げるので、成形体1とガイド部材7との間の隙間に侵入した溶融ガラスGxを、矢印F2で示すように、延長部8と形状一定部61との間の隙間から外部に流出させる際に、成形体1の外側面部3を正常に流下する溶融ガラスGと確実に合流させることができる。その結果、図7に示すように、成形体1とガイド部材7との間の隙間に侵入した溶融ガラスGxが、成形体1の外側面部3を正常に流下する溶融ガラスGから分離して、成形体1の下方でガラス玉Gx1を形成するという事態が生じるのを防止することができる。すなわち、ガラス玉Gx1が落下して、製造される薄板ガラスが汚染されたり、破損したりするという問題が生じるのを防止することできる。
また、このような効果は、延長部8を設ける逆斜面部6の下方領域を形状一定部61とすることにより達成されるものである。すなわち、逆斜面部6の下方領域まで形状変化部62とした場合、図8(a)に示すように、逆斜面部6の下方領域の表面も、水平断面において幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜する。そのため、延長部8を適正に逆斜面部6(形状変化部62)の下方領域に被せ難く、延長部8と逆斜面部6との間の隙間が著しく大きくなる。そのため、図8(a)に例示するように、溶融ガラスGが延長部8の表面に乗り上げないおそれがある。また、溶融ガラスGが延長部8の表面に乗り上げたとしても、延長部8の先端部8aと逆斜面部6との間に大きな段差ができるため、溶融ガラスGの流れに悪影響を与え、製造される薄板ガラスの厚みの変動が却って大きくなるという問題も生じ得る。これに対し、この実施形態では、逆斜面部6の上方領域のみを形状変化部62とし、延長部8を設ける逆斜面部6の下方領域は形状一定部61としていることから、図8(b)に示すように、逆斜面部6の下方領域の表面は、水平断面において幅方向と平行である。そのため、延長部8を適正に逆斜面部6の下方領域に被せやすく、延長部8と逆斜面部6との間の隙間の管理も容易となる。また、延長部8の表面が逆斜面部6の表面からあまり離れていなので、溶融ガラスGが延長部8の表面に円滑に乗り上げる。
(第3の実施形態)
図9及び図10に示すように、本発明の第3の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置が、第2の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置と相違するところは、延長部9の構造にある。以下では、相違点を中心に説明する。なお、成形体1の基本的構造は、第1の実施形態と同様であるので詳しい説明は省略する。
図9及び図10に示すように、本発明の第3の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置が、第2の実施形態に係る薄板ガラスの製造装置と相違するところは、延長部9の構造にある。以下では、相違点を中心に説明する。なお、成形体1の基本的構造は、第1の実施形態と同様であるので詳しい説明は省略する。
延長部9は、形状一定部61に沿って配置された厚肉部材(例えば、5〜50mmの厚み)で形成され、その先端部9aの厚み部分(端面)で逆斜面部6を流下する溶融ガラスGの幅方向端部を案内可能とされている。
延長部9の先端部9aは、下方に移行するに連れて幅方向中央側に接近するように傾斜している。
ここで、延長部9の幅方向中央側への突出量は、溶融ガラスGの逆斜面部6の下端部6a周辺における幅方向の収縮量を考慮して決定する。すなわち、この実施形態では、溶融ガラスGの収縮した幅方向端部に延長部9の先端部9aが接するか、又は、溶融ガラスGの収縮した幅方向端部よりも幅方向中央側に僅かに入るように、延長部9の突出量を決定する。後者の場合、溶融ガラスGの幅方向端部が、延長部9の先端部9aによって、通常の収縮量よりも僅かに大きく幅方向中央側に誘導される。
このような構成によれば、延長部9の先端部9aの厚み部分で逆斜面部6を正常に流下する溶融ガラスGの幅方向端部が案内されるので、成形体1とガイド部材7との間の隙間に侵入した溶融ガラスGxを、矢印F2で示すように、延長部8と形状一定部61との間の隙間から外部に流出させる際に、成形体1の逆斜面部6を正常に流下する溶融ガラスGと確実に合流させることができる。
図11〜図14に示すような成形体のガイド面から500mmの範囲を簡略化した解析モデルにおいて、逆斜面部を流下する溶融ガラスの挙動を解析し、溶融ガラスの流れ及び厚み分布を求めた。なお、シミュレーションに際して、製造装置下方における板引きは考慮していない。
解析モデルの概要は、以下のようなものである。
(1)実施例1:図11(a)及び(b)に示すように、逆斜面部の幅方向端部の上方領域のみを形状変化部(図中のハッチングを付した部分)とし、形状変化部を除く逆斜面部のその他の領域を形状一定部とした成形体において、形状一定部の角θ1を30°、形状変化部の角θ2の最大値を34°としたもの。
(2)実施例2:図12(a)及び(b)に示すように、逆斜面部の幅方向端部の上方領域のみを形状変化部(図中のハッチングを付した部分)とし、形状変化部を除く逆斜面部のその他の領域を形状一定部とした成形体において、形状一定部の角θ1を30°、形状変化部の角θ2の最大値を36°としたもの。
(3)実施例3:図13(a)及び(b)に示すように、逆斜面部の幅方向端部の上方領域のみを形状変化部(図中のハッチングを付した部分)とし、形状変化部を除く逆斜面部のその他の領域を形状一定部とした成形体において、形状一定部の角θ1を30°、形状変化部の角θ2の最大値を38°としたもの。
(4)比較例1:図14(a)及び(b)に示すように、逆斜面部の幅方向端部の上下全領域を形状変化部(図中のハッチングを付した部分)とし、形状変化部を除く逆斜面部のその他の領域を形状一定部とした成形体において、形状一定部の角θ1を30°、形状変化部の角θ2の最大値を34°としたもの。
(1)実施例1:図11(a)及び(b)に示すように、逆斜面部の幅方向端部の上方領域のみを形状変化部(図中のハッチングを付した部分)とし、形状変化部を除く逆斜面部のその他の領域を形状一定部とした成形体において、形状一定部の角θ1を30°、形状変化部の角θ2の最大値を34°としたもの。
(2)実施例2:図12(a)及び(b)に示すように、逆斜面部の幅方向端部の上方領域のみを形状変化部(図中のハッチングを付した部分)とし、形状変化部を除く逆斜面部のその他の領域を形状一定部とした成形体において、形状一定部の角θ1を30°、形状変化部の角θ2の最大値を36°としたもの。
(3)実施例3:図13(a)及び(b)に示すように、逆斜面部の幅方向端部の上方領域のみを形状変化部(図中のハッチングを付した部分)とし、形状変化部を除く逆斜面部のその他の領域を形状一定部とした成形体において、形状一定部の角θ1を30°、形状変化部の角θ2の最大値を38°としたもの。
(4)比較例1:図14(a)及び(b)に示すように、逆斜面部の幅方向端部の上下全領域を形状変化部(図中のハッチングを付した部分)とし、形状変化部を除く逆斜面部のその他の領域を形状一定部とした成形体において、形状一定部の角θ1を30°、形状変化部の角θ2の最大値を34°としたもの。
次に、以上のような解析モデルを用いたシミュレーションの結果を図15〜18に示す。また、図19に、成形体下端から20mm上方位置の幅方向における溶融ガラスの厚みを示す。なお、図15〜18において、矢印は溶融ガラスの流れを示し、色の濃淡は溶融ガラスの厚みを示し、濃くなるに連れて厚みが薄くなるものとする。また、図19において、グラフの縦軸において、上側に移行するに連れて溶融ガラスの厚みが大きくなり、グラフの横軸において、右側に移行するに連れて成形体の幅方向端部に近づくものとする。
図18に示すように、比較例1では、逆斜面部の形状変化部に対応する領域において、溶融ガラスが幅方向端部側(ガイド部材側)に向かう流れが確認できる。また、溶融ガラスの厚みに関しては、逆斜面部の下端部で局所的に厚みが変動する部分がないことが確認できる。
一方、図15〜17に示すように、逆斜面部の幅方向両端部において、逆斜面部の上方領域のみを形状変化部とし、逆斜面部の下方領域は形状一定部とした場合(実施例1〜3)でも、逆斜面部の上下方向全域を形状変化部とした比較例1とほぼ同様に、溶融ガラスの幅方向の収縮を抑えつつ、板厚の変動を小さくできるという効果が得られることが認識できる。そして、図19から明らかなように、形状一定部の角θ1と形状変化部の角θ2の角度差を大きくするに連れて、端部における溶融ガラスの厚みの変化を小さくすることができる。そして、θ1とθ2の角度差を8°とした実施例3では、比較例1よりも小さい厚み変化を達成できている。
1 成形体
2 オーバーフロー溝
3 外側面部
4 供給パイプ
5 垂直面部
6 逆斜面部
6a 下端部
61 形状一定部
62 形状変化部
7 ガイド部材
71 ガイド面
72 嵌合凹部
8 延長部
8a 先端部
9 延長部
9a 先端部
G 溶融ガラス
2 オーバーフロー溝
3 外側面部
4 供給パイプ
5 垂直面部
6 逆斜面部
6a 下端部
61 形状一定部
62 形状変化部
7 ガイド部材
71 ガイド面
72 嵌合凹部
8 延長部
8a 先端部
9 延長部
9a 先端部
G 溶融ガラス
Claims (8)
- 下端部で収束する一対の逆斜面部を有する成形体を備え、前記逆斜面部のそれぞれに沿って流下する溶融ガラスを前記下端部で融合一体化し、一枚の薄板ガラスを成形する薄板ガラスの製造装置であって、
前記逆斜面部の幅方向両端部は、前記下端部を含む下方領域に形状一定部を有すると共に、前記形状一定部の上方領域に形状変化部を有し、
前記形状一定部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向と平行であり、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保ち、
前記形状変化部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜しており、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保つことを特徴とする薄板ガラスの製造装置。 - 前記形状変化部の表面が、平面であることを特徴とする請求項1に記載の薄板ガラスの製造装置。
- 前記形状変化部の表面が、曲面であることを特徴とする請求項1に記載の薄板ガラスの製造装置。
- 前記成形体の幅方向両端部に、前記逆斜面部を流下する溶融ガラスの幅方向端部を案内するガイド面を有するガイド部材が外側から嵌め込まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄板ガラスの製造装置。
- 前記ガイド面に、前記形状一定部の一部を下方から覆いながら幅方向中央部側に延びる延長部が設けられており、
前記延長部と前記形状一定部との間の隙間が、前記成形体と前記ガイド部材との間の隙間に連通していることを特徴とする請求項4に記載の薄板ガラスの製造装置。 - 前記延長部は、前記形状一定部に沿って配置された薄肉部材で形成され、その表面に前記逆斜面部を流下する溶融ガラスが乗り上げ可能であることを特徴とする請求項5に記載の薄板ガラスの製造装置。
- 前記延長部は、前記形状一定部に沿って配置された厚肉部材で形成され、その先端部の厚み部分で前記逆斜面部を流下する溶融ガラスの幅方向端部を案内可能であることを特徴とする請求項5に記載の薄板ガラスの製造装置。
- 下端部で収束する一対の逆斜面部を有する成形体を用い、前記逆斜面部のそれぞれに沿って流下する溶融ガラスを前記下端部で融合一体化し、一枚の薄板ガラスを成形する薄板ガラスの製造方法であって、
前記逆斜面部の幅方向両端部は、前記下端部を含む下方領域に形状一定部を有すると共に、前記形状一定部の上方領域に形状変化部を有し、
前記形状一定部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向と平行であり、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保ち、
前記形状変化部の表面は、いずれの水平断面内においても、幅方向中央部側から幅方向端部側に向かうに連れて外方側に移行するように傾斜しており、かつ、いずれの垂直断面内においても、その外方を向く垂線が斜め下方を向く一定の傾斜を保つことを特徴とする薄板ガラスの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015220262A JP2017088446A (ja) | 2015-11-10 | 2015-11-10 | 薄板ガラスの製造装置及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015220262A JP2017088446A (ja) | 2015-11-10 | 2015-11-10 | 薄板ガラスの製造装置及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017088446A true JP2017088446A (ja) | 2017-05-25 |
Family
ID=58768970
Family Applications (1)
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2017088446A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022066434A1 (en) * | 2020-09-28 | 2022-03-31 | Corning Incorporated | Glass forming body and method of making a glass article using the same |
CN115916712A (zh) * | 2020-06-18 | 2023-04-04 | 日本电气硝子株式会社 | 玻璃物品的制造装置以及其制造方法 |
-
2015
- 2015-11-10 JP JP2015220262A patent/JP2017088446A/ja active Pending
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