JP2017087954A - 車両用制動制御装置 - Google Patents

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Tomotaka Asano
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Abstract

【課題】この発明は、車両用制動制御装置に関し、車両の衝突後に、後輪の制動力を有効に活用した自動制動を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の車両用制動制御装置は、車両の各輪に配置されたブレーキ機構22が発生する制動力を制御する。ブレーキECU10は、車両の衝突を検知する衝突検出部24と、車両の衝突が検知された場合にブレーキ機構22に制動力を発生させる自動制動制御部26を備える。ABS制御部28は、左右後輪RL,RRの制動力を独立に制御する独立モードと、左右後輪RL,RRの制動力を制動力の低い側に揃えるローセレクトモードとの何れかにより、ABS制御を行う。モード切換部30は、衝突後の自動制動の実行中はABSのモードとして独立モードを選択する。
【選択図】図1

Description

この発明は、車両用制動制御装置に係り、特に、衝突時の制動力を適正に制御するうえで好適な車両用制動制御装置に関する。
特許文献1には、車両の衝突時に自動的に制動力を発生させる装置が開示されている。この装置によれば、初回の衝突に続く二次衝突の回避確立を高めることができる。
上述した自動制動の機能は、アンチロックブレーキシステム(以下、「ABS」と称す)と共に車両に搭載されることがある。ABSは、一般に以下の処理を行うことにより制動中における車輪のロックを回避する。
・推定車体速度Vbの演算
・各輪の車輪速度Vwiの演算
・VbとVwiに基づく各輪スリップ率Siの演算
・スリップ率Siが閾値を越えた車輪のブレーキ油圧を減圧
推定車体速度Vbは、例えば、車輪速度Vwiの4輪最大値等に基づいて算出される。そして、推定車体速度Vbには、その精度を高めるために加速度ガードがかけられるのが通常である。すなわち、車両において発生する加速度には車輪のグリップ力等の制約から限界値Glimが存在する。このため、サンプリング周期Δtの間に車体速度に生ずる変化量ΔVbは最大でGlim*Δtとなる。
加速度ガードの処理では、サンプリング周期毎に、前回と今回の差がGlim*Δtを超えないように推定車体速度Vbが算出される。具体的には、車輪速度Vwi等に基づく車体速度が前回の推定車体速度Vb(n-1)からGlim*Δtを超えて変化している場合は、その変化量がGlim*Δtとなるように今回の推定車体速度Vb(n)が算出される。このような手法によれば、車輪速度Vwi等の異常値に影響されることなく推定車体速度Vbを適正に演算し続けることができる。
ここで、ABSを搭載する車両において、各輪の制動力は通常独立に制御される。そして、ABSには、摩擦係数μの低い路面(以下、「低μ路面」と称す)での車両安定性を高める目的で、ローセレクト制御(低油圧選択制御)の機能が実装されることがある。
車輪がロック状態に移行する際のブレーキ油圧は、路面の摩擦係数μ(以下、「路面μ」と称す)が低いほど低圧となる。このため、ABSが作動し始める際のブレーキ油圧は、路面μが低いほど低圧となる。そして、制動による減速度は、ブレーキ油圧が低いほど小さなものとなる。このため、ABSが作動し始める際の車両の減速度は、路面μが低いほど小さなものとなる。
上述したローセレクト制御は、典型的には、閾値を下回る減速度の下でABSが作動し始めた場合に実行される。このような実行条件によれば、ABS制御の作動開始後、摩擦係数μの高い路面(以下、「高μ路面」と称す)では各輪の制動力が独立に制御され、また、低μ路面ではローセレクト制御により制動力が制御される。
ローセレクト制御では、左右後輪のブレーキ油圧が、低い方の油圧に揃えられる。低μ路面で各輪の制動力が独立に制御されると、左右後輪の一方のみが高い制動力を発揮する事態が生ずる。このような制動力は車両にヨー方向のモーメントを与えるため車両姿勢を変化させ得る。ローセレクト制御によれば、左右後輪の制動力を揃えることができるため、低μ路面において、制動中の車両姿勢を安定に維持することができる。
特開2000−313323号公報 特開2015−047980号公報
特許文献1に記載の装置は、上述した通り、車両の衝突を検知するとその後自動的に制動力を発生させる。ところで、車両の衝突時には、車輪速度Vwiに急激な落ち込みが生じると共に、車体速度に加速度ガードを超える大きな減速が生じることがある。ABSの搭載車両では加速度ガードの下で推定車体速度Vbが演算されるため、この場合、車輪速度Vwiと推定車体速度Vbとの間に大きな乖離が生じ、過大なスリップ率が誤認される事態が生ずる。
このため、特許文献1に記載の装置とABSとが共に搭載されている車両では、衝突により自動制動が開始された後、さほど大きな減速度が発生していない段階でABSが作動し始めることがある。そして、低い減速度の下でABSが開始されれば、高μ路上であってもローセレクト制御が開始され、ABSの作動中、後輪のブレーキ油圧は低圧側に揃えられる。この場合、左右後輪が何れも十分なグリップ余力を有しているにも係らず、それらのブレーキ油圧が不必要に低く抑え続けられることになる。
衝突後の自動制動では、二次衝突を回避する観点から、各輪が有効に制動力を発生することが望ましい。この点、特許文献1に記載の装置は、従来のABSと組み合わされた場合に、自動制動の間に後輪の制動力を有効に活用することができないという課題を有するものであった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、車両の衝突後に、後輪の制動力を有効に活用した自動制動を実施する車両用制動制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、車両の各車輪に配置されたブレーキ機構が発生する制動力を制御する車両用制動制御装置であって、
車両の衝突を検知する衝突検知手段と、
車両の衝突が検知された場合に前記ブレーキ機構に制動力を発生させる自動制動手段と、
左右後輪の制動力を独立に制御する独立モードと、左右後輪の制動力を制動力の低い側に揃えるローセレクトモードとの何れかにより、車輪のロックを抑制するように前記制動力を緩めるアンチロック手段と、
前記自動制動手段による制動中に前記独立モードを選択するモード切換手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、車両の衝突が検知されると、自動制動手段によってブレーキ機構による制動が自動的に開始される。この際、アンチロック手段は、ローセレクトモードではなく独立モードにより作動する。独立モードによれば、後輪の夫々は、他方の状態に影響されることなく制動力を発生する。このため、本発明によれば、衝突後の自動制動の際に、後輪の制動力が不必要に制限されることがなく、後輪の制動力を有効に活用することができる。
本発明の実施の形態1の構成を示す図である。 本発明の実施の形態1において、ブレーキECUが、図1に示すABS制御部と、モード切換部の一部を実現するために実行するルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態1において、ブレーキECUが、図1に示す自動制動制御部と、モード切換部の残部を実現するために実行するルーチンのフローチャートである。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は本発明の実施の形態1の車両用制動制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の制動制御装置はブレーキECU(Electronic Control Unit)10を備えている。
ブレーキECU10には、エアバッグECU12が電気的に接続されている。エアバッグECU12には、4つの衝突センサ14が電気的に接続されている。衝突センサ14は、車両の前方(Fr)、後方(Re)、右方(R)及び左方(L)に配置されており、夫々が感知した衝撃を電気信号に変換してエアバッグECU12に供給する。エアバッグECU12は、それらの電気信号に基づいて衝突の発生を検知し、衝突を検知した場合には衝突発生信号をブレーキECU10に供給する。
ブレーキECU10には、車輪速センサ16が電気的に接続されている。車輪速センサ16は、車両の4輪夫々に配置されており、各輪の回転速度に応じた車輪速信号をブレーキECU10に提供する。ブレーキECU10は、それらの回転速度に基づいて、各輪の車輪速度Vwiを算出することができる(但し、符号「i」は前後左右の各輪に割り当てられた識別子を意味するものとする)。
ブレーキECU10には、また、加速度センサ18が電気的に接続されている。加速度センサ18は、車両の前後方向の加速度を検知し、その加速度に応じた加速度信号をブレーキECU10に提供する。ブレーキECU10は、その加速度信号に基づいて車両前後方向の加速度を検知することができる。以下、本明細書では、車体速度が上昇する際の加速度を「加速G」と称し、また、車体速度が下降する際の減速度を「減速G」と称することとし、「G」は常に正の符号を有するものとして取り扱うこととする。
ブレーキECU10には、更に、ブレーキアクチュエータ20が電気的に接続されている。ブレーキアクチュエータ20には、油圧配管を介してブレーキ機構22が接続されている。ブレーキ機構22は、左右前輪(FL、FR)及び左右後輪(RL、RR)の夫々に配置されており、ブレーキ油圧に応じた圧力で作動するホイルシリンダ等を備えている。
ブレーキアクチュエータ20は、ブレーキペダルの踏力に応じた油圧を発生するマスタシリンダ、マスタシリンダ圧に頼らずにブレーキ油圧を昇圧するためのポンプ、及びブレーキフルードを貯留するためのリザーバ等を備えている。本実施形態において、ブレーキアクチュエータ20は、マスタシリンダ又はポンプを圧力源として各輪のブレーキ機構22にブレーキ油圧を供給することができる。
ブレーキアクチュエータは、また、各輪のブレーキ油圧を制御する油圧回路を備えている。本実施形態において、この油圧機構は、下記の2つのモードを選択的に実現することができるように構成されている。
(1)独立モード:四輪各輪のブレーキ油圧を独立に制御するモード。
(2)ローセレクトモード:後二輪についてはブレーキ油圧を低圧側の圧力に揃えるモード。
ブレーキECU10は、エアバッグECU12等との信号の授受に用いる入出力インターフェース、ROM/RAM等のメモリデバイス、CPU等を備えている。ブレーキECU10は、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、図10中にブロック別に示した主要機能、即ち、衝突検出部24、自動制動制御部26、ABS制御部28及びモード切換部30を実現する。
衝突検出部24は、エアバッグECU12から提供される衝突発生信号に基づいて車両の衝突を検出する。また、衝突検出部24は、車両の衝突を検出した場合には、その検出を表す信号を自動制動制御部26に提供する。
自動制動制御部26は、衝突検出部24によって車両の衝突が検出された場合に、自動的に制動力を発生させるための処理を行う。この際、ブレーキアクチュエータ20は、ブレーキECU10から供給されるブレーキ制御信号を受けて、ポンプによって昇圧されたブレーキ油圧を各輪のブレーキ機構22に供給する。これにより、車両の衝突後に、二次衝突を回避するための自動制動が実現される。
ABS制御部28は、各輪のロックを抑制するためのブレーキ制御信号を生成する。具体意的には、ABS制御部28は、車輪速センサ16から供給される車輪速信号と、加速度センサ18から供給される加速度信号とに基づいて、各輪のスリップ率Siを演算する。そして、各輪のスリップ率Siに応じたブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ20に供給する。ブレーキアクチュエータ20は、この信号を受けて、スリップ率Siが閾値を越えた車輪のブレーキ圧を減圧する。そして、スリップ率Siが適正値に復帰した段階で、再びその車輪に圧力源のブレーキ油圧を供給する。本実施形態では、これによりABSの機能が実現される。
モード切換部30は、上述した「独立モード」と「ローセレクトモード」を切り換えるための処理を行う。ABS制御部28は、モード切換部30の選択に従って、独立モードでのABS、又はローセレクトモードでのABSを実現するためのブレーキ制御信号を生成する。
[本実施形態の基本動作]
次に、図2を参照して本実施形態の装置の基本的な動作について説明する。図2は、本実施形態において、ABSの機能を実現するためにブレーキECU10が実行するルーチンのフローチャートである。ブレーキECU10が図2に示すルーチンを実行することにより、図1に示すABS制御部28、及びモード切換部30の一部が実現される。
図2に示すルーチンは、車両において制動処理が実行されている期間中、所定の周期で起動されるものとする。より具体的には、図2に示すルーチンは、運転者によって制動操作がなされている期間中、及びブレーキECU10によって自動制動が行われている期間中に、所定の周期毎に繰り返し実行されるものとする。
図2に示すルーチンでは、先ず、加速度センサ18から供給される加速度信号に基づいて車両の減速G(n)が検知される(ステップ100)。ここで、(n)は、今回のサンプリングタイミングを表す識別子である。また、上述した通り、Gは正の符号を有しているものとする。
次に、減速G(n)が減速ガード値Gg以下であるか否かが判別される(ステップ102)。減速ガード値Ggは、車両の走行中に生じ得る最大限の減速度を想定して設定した値である。減速G(n)が減速ガード値Gg以下であれば、異常な減速度G(n)は算出されていないと判断できる。このため、上記の条件が成立する場合は、減速度G(n)がそのまま維持される。
一方、減速G(n)が減速ガード値Gg以下に収まっていない場合は、ノイズ等何らかの影響により減速G(n)が異常な値を示している可能性が高いと判断できる。この場合、異常値の影響を抑えるため、減速G(n)の値が減速ガード値Ggに置き換えられる(ステップ104)。
次に、車輪速センサ16の夫々から供給される車輪速信号に基づいて、各輪の車輪速度Vwi(「i」は車輪位置を表す識別子)が検出される(ステップ106)。
次いで、車輪速度Vwiに基づいて、制動中の車体速度を精度良く表す値が基礎車輪速度Vw0として演算される(ステップ108)。本実施形態では、4輪の車輪速度Vwiの最大値が基礎車輪速度Vw0とされる。但し、基礎車輪速度Vw0の演算手法はこれに限定されるものではなく、その手法は、車両の特性等に応じて他の公知手法に置き換えることができる。
次に、基礎車輪速度Vw0が下記の条件を満たすか否かが判別される(ステップ110)。但し、Vb(n-1)は前回の処理サイクル時に算出された推定車体速度である。また、t0はサンプリング周期である。
Vw0≧Vb(n-1)−G(n)・t0 ・・・(1)
車両の減速度がG(n)であれば、前回の処理サイクル時から今回の処理サイクルまでの間に生ずる速度の変化はG(n)・t0となる。従って、(1)式右辺は減速度G(n)に基づいて算出した現在の車体速度を意味している。基礎車輪速度Vw0が、上記ステップ110の条件を満たしている場合は、その値Vw0は、減速度G(n)に対して異常でないと判断することができる。この場合は、その基礎車輪速度Vw0が今回の処理サイクルにおける推定車体速度Vb(n)とされる(ステップ112)。
一方、上記ステップ110の条件が成立しない場合は、基礎車輪速度Vw0が、減速度G(n)に対して過剰に低下していると判断できる。この場合、車輪ロック等の影響により基礎車輪速度Vw0が過剰に低下したものと判断して、上記(1)式右辺の値Vb(n-1)−G(n)・t0が、推定車体速度Vb(n)とされる(ステップ114)。尚、上記ステップ102〜114の処理は、加速度ガードをかけて推定車体速度Vbを演算する手法の一例である。その手法はこれに限定されるものではなく、加速度ガードを用いる他の公知手法に置き換えることが可能である。
上記の処理が終わると、次に、下記計算式に従って各輪のスリップ率Siが算出される(ステップ116)。
Si={(Vb−Vwi)/Vb}・100 ・・・(2)
ブレーキECU10は、車両において制動処理が行われている間に何れかの車輪でスリップ率Siが閾値を越えるとABSの作動を開始させる。本ルーチンでは、上記ステップ116に続いて、ABSの作動が、今回の処理サイクルにおいて開始されたか否かが判別される(ステップ118)。
その結果、今回の処理サイクルでABSの作動が開始されたと判断された場合は、本ルーチンで検知した減速G(n)がローセレクト閾値Gthを下回っているか否かが判別される(ステップ120)。ABSは、何れかの車輪にロックが生じた段階で作動し始める。そして、車輪のロックは、走行路の摩擦係数μが低いほど、その車輪が発生する制動力が小さい段階で発生する。このため、ABSが作動を開始する際に生じている減速度は走行中の路面の摩擦係数μと相関を有している。従って、本ステップの処理によれば、走行中の路面が、予め想定した低μ路であるかを判定することができる。
上記ステップ120の条件が成立する場合は、車両が低μ路を走行中であると判断することができる。この場合、ブレーキECU10は、ABSのモードとしてローセレクトモードを選択する(ステップ122)。低μ路走行中に独立モードでABSが実行されると、左右後輪の制動力がアンバランスとなり、車両挙動が不安定化することがある。ローセレクトモードによれば、左右後輪のブレーキ油圧を低圧側に揃えることができる。この場合、後輪の制動力に偏りが生じないため、制動中の車両挙動を安定に保つことができる。
一方、上記ステップ122の条件が成立しない場合は、ABSのモードとして独立モードが選択される(ステップ124)。ステップ122の条件が成立しない場合は、車両が高μ路を走行中であると判断できる。この場合、各輪が安定して高い制動力を発揮すると期待することができる。このような状況下では、独立モードでABSを作動させることにより、車両挙動を不安定化させることなく高い制動力を得ることができる。
以上の処理が終わると、次に、各輪の制動力を制御するための処理が行われる(ステップ126)。具体的には、各輪のスリップ率Si及び選択されたモード等に従い、各輪のブレーキ油圧が適宜制御される。
[本実施形態の特徴的動作]
(ABSと自動制動との関係)
次に、本実施形態の装置の特徴的動作について説明する。上述した通り、本実施形態の装置は、車両の衝突を検知すると、その後、二次衝突を回避するために自動制動を開始する。ここで、車両の衝突時には、通常走行時には生じない急減速、より具体的には、上述した減速ガード値Ggを超える減速Gを伴う減速が生ずることがある。その際、各輪の車輪速度Vwiは、現実の車体速度と同様に急激な低下を示す。
本実施形態の装置は、衝突後の自動制動の際にも必要に応じてABSを作動させる。この際、推定車体速度Vbは、加速度ガードの下で計算されるため、急激には低下しない。このため、車両の衝突時には、車輪速度Vwiだけが急激に下降して、推定車体速度Vbが現実値より高い値に計算され易い。このような計算がなされると、上記(1)式の演算により過大なスリップ率Siが誤認され、現実には何れの車輪にもABSを必要とするスリップ率Siが生じていない段階でABSが開始されてしまうことがある。
更に、この場合には、各輪がさほど大きな制動力を発揮していない段階でABSが開始される。その結果、ABSの作動開始時に、車両の減速Gがローセレクト閾値Gthを下回っていると判定される事態も生じ得る(上記ステップ120参照)。このため、車両の衝突後に単に自動制動が開始されるとすれば、ローセレクトモードが不必要に選択され、ABSの作動中、後輪の制動力が十分に活用されない事態が生じ得る。
このため、本実施形態では、車両の衝突により自動制動が開始され、その後ABSの作動が要求された場合は、その時点の減速Gに係らず、独立モードを選択してABSを作動させることとした。独立モードによれば、後二輪の制動力を夫々有効に活用することができる。また、この場合には、ABSが作動し始める段階で十分なグリップ余力が各輪に残されている。従って、独立モードによりABSを作動させることにより、車両姿勢を安定に維持したまま効率的に制動力を発生させることができる。
(ブレーキECUによる処理)
図3は、上記の機能を実現するためにブレーキECU10が実行するルーチンのフローチャートである。ブレーキECU10が図3に示すルーチンを実行することにより、図1に示す自動制動制御部26、及びモード切換部30の一部が実現される。図3に示すルーチンは、車両の始動後、所定の周期毎に繰り返し実行されるものとする。
図3に示すルーチンでは、先ず、衝突後の自動制動を開始するための条件が成立したか否かが判別される(ステップ130)。ここでは、具体的には、エアバッグECU12から衝突発生信号を受信した場合に自動制動の開始条件が成立したと判断する。
自動制動の開始条件が成立していると判別された場合は、次に、自動制動を開始するための処理を行う(ステップ132)。具体的には、ブレーキアクチュエータ20に対して自動制動の開始を指令するブレーキ制御信号を供給する。ブレーキアクチュエータ20は、この信号を受けると、以後、自動制動の終了が指令されるまで、ポンプによって昇圧されたブレーキ油圧とマスタシリンダによって昇圧されたブレーキ油圧のうち高い方の油圧を各輪のホイルシリンダに供給するように作動する。
一方、上記ステップ130において、今回の処理サイクルでは自動制動の開始条件の成立が認められないと判別された場合は、ステップ132がジャンプされる。この場合、自動制動が未だ開始されていなければその状態が維持され、また、自動制動が既に開始されていればその状態が維持される。
上記の処理が終わると、次に、衝突時のABSにおいて後二輪の油圧を独立に制御するための許可条件が成立しているか否かが判別される(ステップ134)。本実施形態では、下記二つの条件が共に成立している場合に、その許可条件の成立が判別される。
(1)衝突後の自動制動のための制御が実行中であること。
(2)推定車体速度VbがABSの作動を許可する速度を超えていること。
つまり、本実施形態では、衝突後の自動制動が開始されており、かつ、ABSの作動が許可されていれば、上記ステップ134の条件成立が判別される。この条件の成立が判別されると、ブレーキECU10は、ABSの作動中に後輪油圧を独立モードで制御するための処理を開始する(ステップ136)。この処理が開始されると、以後、図2に示すルーチンを含む他のルーチンでローセレクトモードが選択されても、ABSのモードは独立モードに維持される。このため、本実施形態の装置によれば、衝突後の自動制動の作動中は、ABSが低い減速Gの下で開始されたとしても、ABSの作動中、各輪の制動力を独立かつ有効に活用することができる。
他方、上記ステップ134の条件が成立しないと判別された場合は、後輪油圧を独立モードで制御するための処理を終了する(ステップ138)。この処理が実行されると、以後、他のルーチンでローセレクトモードが要求されれば、ローセレクトモードでABSを実行し得る状態となる。
上記の処理が終わると、次に、衝突後の自動制動の終了条件が成立しているか否かが判別される(ステップ140)。ここでは、車速が十分に低下した場合、或いは、運転者によって自動制動の終了を要求する操作がなされた場合等にこの条件の成立が判別される。
上記終了条件の成立が認められた場合は、速やかに自動制動の制御が終了される(ステップ142)。一方、この条件の成立が否定された場合は、ステップ142がジャンプされ、以後速やかに今回のルーチンが終了される。
以上説明した通り、図3に示すルーチンによれば、車両の衝突に起因する自動制動の実行中は、ABSのモードを独立モードに制限することができる。このため、本実施形態の装置によれば、車両の衝突時に過剰なスリップ率が誤認され、ABSが早期に開始される場合にも、後輪の制動力を有効に活用して自動制動により高い制動力を発生させることができる。
[実施の形態1の変形例]
ところで、上述した実施の形態1では、衝突による自動制動の実行中は、常にABSのモードとして独立モードを選択することとしているが、独立モードの選択条件はこれに限定されるものではない。
例えば、「運転者によるブレーキ操作が行われていないこと」を、独立モードの選択条件に加えることとしてもよい。この場合、車両の衝突後に運転者がブレーキ操作を行い得ない場合に限り独立モードにより最大限の制動力を発生させることとし、運転者がブレーキ操作を行い得る状況下では、車両の安定性を優先してローセレクトモードを活かしておくことができる。
更に、独立モードの選択条件には、「運転者によるブレーキ操作が行われていないこと」に加えて、或いは、これに代えて、「ステアリング操作が行われていないこと」を加えることとしてもよい。ステアリング操作が行われている場合は、運転者が車両の進行方向を変える意図を有していると推定できる。上記の条件によれば、この場合にローセレクトモードの選択を可能とすることができ、車両の安定性を高めることができる。また、この際、EBD(Electronic Brake force Distribution)を作動させて車両の安定性を更に高めることとしてもよい。
また、横方向の加速度を検出する加速度センサを車両に搭載して、横方向の加速度が検出された場合には、衝突後の自動制動時のABSモードとして独立モードを用いないこととしてもよい。この場合、ローセレクトモードによるABSが実行されることとなり、車両の安定性確保を重視した自動制動を実現することができる。
尚、上述した実施の形態1においては、エアバッグECU12、衝突センサ14及びブレーキECU10の衝突検出部24により本発明の「衝突検知手段」が実現されている。また、ブレーキECU10の自動制動制御部26及びブレーキアクチュエータ20により本発明の「自動制動手段」が実現されている。更に、ブレーキECU10のABS制御部28及びブレーキアクチュエータ20により本発明の「アンチロック手段」が実現されている。そして、ブレーキECU10のモード切換部30によって本発明における「モード切換手段」が実現されている。
10 ブレーキECU
12 エアバッグECU
14 衝突センサ
16 車輪速センサ
18 加速度センサ
20 ブレーキアクチュエータ
22 ブレーキ機構
24 衝突検出部
26 自動制動制御部
28 ABS制御部
30 モード切換部

Claims (1)

  1. 車両の各車輪に配置されたブレーキ機構が発生する制動力を制御する車両用制動制御装置であって、
    車両の衝突を検知する衝突検知手段と、
    車両の衝突が検知された場合に前記ブレーキ機構に制動力を発生させる自動制動手段と、
    左右後輪の制動力を独立に制御する独立モードと、左右後輪の制動力を制動力の低い側に揃えるローセレクトモードとの何れかにより、車輪のロックを抑制するように前記制動力を緩めるアンチロック手段と、
    前記自動制動手段による制動中に前記独立モードを選択するモード切換手段と、
    を備えることを特徴とする車両用制動制御装置。
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