JP2017087237A - はんだ合金およびそれを用いた実装構造体 - Google Patents
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Abstract
Description
上記実装構造体の構成部材のうち、はんだ合金は電子部品(より詳細には電子部品の端子電極等)や回路基板と比較して融点が低いため、例えば約100℃以上の高温環境において、はんだ接合部の機械的特性が顕著に低下し得る。
また、はんだ合金は他の構成部材に比較して弾性率が小さいため、温度変化に伴う構成部材間の線膨張係数の違いによるひずみや、振動、衝撃による負荷がはんだ接合部に集中的に加わり得る。特に、構成部材間の線膨張係数の違いによるひずみが繰り返し加わることにより、はんだ接合部にクラックが発生し得、これは断線を招くことが懸念され得る。
そのため、上記実装構造体に使用されるはんだ合金では、温度変化によって発生する繰り返しひずみに対する耐熱疲労特性が高いことが求められ、機械的特性として特に高温環境での高い強度と延性が必要とされる。
Sb、In、CuおよびBiを含有して、残部がSnから成り、以下の式:
0.5≦[Sb]≦1.25
0.66×[Sb]+4.16≦[In]≦6.0
0.5≦[Cu]≦1.2
0.1≦[Bi]≦0.5
(式中、[Sb]、[In]、[Cu]および[Bi]は、それぞれSb、In、CuおよびBiの含有率(質量%)を表す)
を満たす、はんだ合金が提供される。
1.33×[Sb]+3.83≦[In]≦0.67×[Sb]+4.67
を更に満たす。
また、本明細書中、はんだ合金の金属組成を説明するのに、Sn以外の金属元素の直前に数値または数値範囲を示すことがあるが、これは、当該技術分野において一般的に使用されているように、金属組成中に占める各元素の質量%(=重量%)を数値または数値範囲で示しており、残部がSnから成ることを意味する。
0.5≦[Sb]≦1.25
0.66[Sb]+4.16≦[In]≦6.0
0.5≦[Cu]≦1.2
0.1≦[Bi]≦0.5
(式中、[Sb]、[In]、[Cu]および[Bi]は、それぞれSb、In、CuおよびBiの含有率(質量%)を表す)
を満たす。
まず、はんだ合金におけるIn含有率およびSb含有率について説明する。
Snを主成分とするはんだ合金では、In含有率が約15質量%以下の低In含有率領域において、SnにInが固溶した合金(β−Sn相)を形成する。
固溶とは、母金属の結晶格子中の一部が固溶元素に原子レベルで置き換わる現象である。一般的に固溶元素の効果は、母金属元素と固溶元素の原子径の差により母元素の結晶格子にひずみを発生させることによって、応力負荷時に転移などの結晶欠陥の移動を抑制することができる。その結果、金属の強度を向上させることができる一方、応力負荷時の延性は低下する。固溶によるはんだ合金の強度向上は、固溶元素の含有率が大きいほど大きくなる。
しかしながら、Sn系はんだにInを固溶させた場合は、In含有率にもよるが、温度を次第に高くしていった場合(図1を参照のこと)、約100℃以上に高くなるころから、β−Sn相から、異なる構造のγ相(InSn4)への相変態が進む。つまり、異なる2相が同程度共存する状態(γ+β−Sn)となる。この2相共存状態になることで、粒界でのすべりの寄与が大きくなり、高温での延性は向上する。
一方で、In含有率が大きい場合、β−Sn相からγ相への変態が過剰に発生する。この場合、γ相とβ−Sn相の結晶格子構造の体積が異なるため、繰り返し熱サイクルがかかることではんだ合金の自己変形が生じる。これは、はんだ接合部内部における破断や、異なるはんだ接合部間の短絡を生じさせるため問題となる。
これは、Sb含有によって合金組織の状態が変化するためである。Sb含有率が比較的小さい場合、SbはSn−In系合金においてInと同様にSnに固溶する。更にSb含有率が大きくなると、Inと化合物(InSn)を形成して合金組織中に析出する。
Inと共にSbがSnに固溶することにより、温度変化時のSnやInの元素の移動が抑制され、β−Sn相とγ相の変態開始温度を変化させる。
はんだ合金の機械的特性は、Sbが固溶することで、In固溶と同様にはんだ合金の強度を向上させる。加えて、後述するが、ある特定のIn含有率の際に見られる高温での延性向上を、Sbの固溶は更に促進することを、本発明者らは新たに見出している。
更にSb含有率が大きくなると、結晶組織間にピンのようにInSnが析出し、変形を抑制する。一方で、InSbの析出により延性は低下するため、耐熱疲労特性向上には過度のInSbの析出は不適である。
Cuは、はんだ付け時の融点の低下および被接合部材の材質の選択性向上の目的で含有している。
このうち、被接合部材の母材がNiの場合は、Inを含みかつCuを含まないまたは少量含むはんだ合金を用いてはんだ付けを行った際に、界面反応層(Ni3Sn4)においてInが一部取り込まれる。そのため、はんだ付け後のはんだ接合部の機械的特性の変化が生じる。被接合部材の母材がNiの場合、界面反応層に一部取り込まれる量だけInを予め多く含有する必要がある。しかしながら、実際の回路基板においては、一枚の回路基板上に様々な電子部品が搭載されるため、母材がCu、Niそれぞれの電子部品が搭載される場合には、In含有率の予めの調整は困難である。
しかし、はんだ合金に一定量のCuを含有することで、はんだ付け時にはんだ合金中のCuが界面反応層にCu6Sn5系の合金層を形成し、Inの取り込みを防ぐことができ、被接合部材の選択性が向上する。
このような効果を発現するためには、Cu含有率が0.5質量%以上であることが望ましい。よって、Cu含有率の下限値は0.5質量%である。
Biは、はんだ材料の機械的強度の向上と融点の低下の目的で含有している。はんだ合金中では、Bi含有率が比較的小さい場合はβ−Snに固溶し、Bi含有率が大きくなるとBiまたはBi化合物が析出する形で存在する。
はんだ合金に含有されるSnおよび他の各元素をそれぞれの含有率となるように、かつ合計で100gとなるように秤量した。
秤量したSnを、セラミック製のるつぼ内に投入し、500℃の温度および窒素雰囲気に調整して、電気式ジャケットヒータの中に設置した。
Snが溶融したことを確認した後、他の元素を融点の低い順に投入し、1種の元素を投入する毎に3分間攪拌した。
その後、るつぼを電気式ジャケットヒータから取り出して、25℃の水が満たされた容器に浸漬して冷却し、これによりはんだ合金を作製した。
β−Snとγの相変態が急激に進行する温度である変態温度を評価するために、上記で作製したはんだ合金を10mg取り出し、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を行った。測定時の昇温レートは10℃/分とし、25℃から250℃までの範囲で測定した。
図2は、実施例1−3のはんだ合金と比較例1−1のはんだ合金の測定結果を示している。示差操作熱量計曲線の変曲点(変態点)である点Aおよび点Bの温度を読み取ることで、その変態温度を測定することができる。Sbを含まない比較例1−1のはんだ合金では点Aから変態温度が159℃となるのに対し、Sbを1.0質量%含む実施例1−3のはんだ合金では点Bから変態温度が179℃に上昇していることが確認できる。
表1に示す他の実施例および比較例につき同様にして測定した変態温度を表1に併せて示す。なお、比較例1−4においては明確な変態温度を示さなかった。
次に、はんだ合金の高温環境での機械的特性として強度および延性(それぞれ150℃での引張強度および伸び)を評価するために、引張試験片を用いて150℃環境での引張試験を行った。引張試験片は、上記で作製したはんだ合金をるつぼに投入し、電気式ジャケットヒータで250℃に加熱して溶融させ、引張試験片形状に加工されたグラファイト製の鋳型に流し込むことにより作製した。引張試験片は、直径3mm、長さ15mmのくびれ部を有する丸棒形状を有するものとした。150℃での引張試験の結果から、引張試験機のストロークひずみおよび引張応力を測定し、これらの最大値をそれぞれ伸び(破断伸び)および引張強度として測定した。結果を表1に併せて示す。
変態温度が150℃以上、かつ機械的特性として強度を表す引張強度と延性を表す伸びの双方が比較例1−4の場合と比較して改善されている場合を判定「○」、特に150℃での伸びが比較例1−4の場合と比較して2倍以上改善されている場合を判定「◎」とし、本発明の効果が発現されているとしている。変態温度が150℃未満、引張強度および伸びの値が比較例1−4の場合の値未満のいずれかに該当する場合を判定「×」とする。
なお、これら実施例および比較例から、In含有率が5.0質量%である場合、いずれも変態温度は150℃以上であることが分かる。
In含有率が小さい比較例2−1の場合、伸びは向上するものの、引張強度が十分でなく、判定は「×」である。また、In含有率の増加と共に変態温度は低下し、In含有率が6.5質量%である比較例2−2の場合には、150℃での引張強度および伸びはいずれも良好であるが、変態温度が150℃未満であるため、判定は「×」である。
(式1)
4.5=0.5a+b
5.0=1.25a+b
0.66[Sb]+4.16≦[In]≦6.0 ・・・A
但し、Sb含有率は、上述した説明から、下記の式を満たすことに留意されたい。
0.5≦[Sb]≦1.25
(式2)
4.5=0.5a+b
5.5=1.25a+b
1.33[Sb]+3.83≦[In] ・・・B1
(式3)
5.0=0.5a+b
5.5=1.25a+b
[In]≦0.67[Sb]+4.67 ・・・B2
1.33[Sb]+3.83≦[In]≦0.67[Sb]+4.67
但し、Sb含有率は、上述した説明から、下記の式を満たすことに留意されたい。
0.5≦[Sb]≦1.25
まず、作製したはんだ合金を、粒径数十μmのはんだ粉に加工し、はんだ粉とフラックス(有機溶剤、ロジン、還元成分、チキソ剤から構成される)とを90:10の重量比となるように秤量し、これらを混練することではんだペーストを作製した。このはんだペーストを、厚さ150μmのメタルマスクを用いて回路基板101上の回路基板電極102に印刷した。印刷したはんだペースト上に、チップ抵抗103を搭載し、最高240℃の条件でリフロー加熱を行い、回路基板電極101とチップ抵抗103とをはんだ接合部104を形成して接合することで、実装構造体を作製した。使用した回路基板101の回路基板電極102の母材は、CuおよびNiであった。
このようにして作製した実装構造体を−40℃/150℃の温度サイクル試験に付して、2000サイクル後のはんだ接合部104の変形を目視観察した。目視観察で変形が認められなかった場合に電気的接続の評価を行い、初期との抵抗値の変化が10%以上あったものを電気的不良「あり」とし、変化が無かったものまたは10%未満であったものを電気的不良「なし」として判定した。なお、表4の電気的不良欄における「−」は評価を行わなかったことを示す。
他方、In、Sb含有率が異なる比較例4−1〜4−3、4−5、4−6では、はんだ接合部の電気的不良が発生し、Sb含有率が比較的小さくIn含有率が過度に大きい比較例4−4およびSbを含まずIn含有率が過度に大きい従来例4では、はんだ接合部の自己変形が発生した。
Cuを含有しない比較例4−7では、回路基板電極の母材がNiの場合に断線が発生した。
また、Cu含有率が1.5質量%の比較例4−8、Biを含有しない比較例4−9、Bi含有率が1.0質量%の比較例4−10、Agを含む従来の一般的なはんだ合金である比較例1−4、ならびに従来例1〜3では、電気的不良が発生した。
Sb、In、CuおよびBiを含有して、残部がSnから成り、以下の式:
0.5≦[Sb]≦1.25
0.66[Sb]+4.16≦[In]≦6.0
0.5≦[Cu]≦1.2
0.1≦[Bi]≦0.5
(式中、[Sb]、[In]、[Cu]および[Bi]は、それぞれSb、In、CuおよびBiの含有率(質量%)を表す)
を満たす、はんだ合金において、本発明の効果を奏することが確認された。
0.5≦[Sb]≦1.25
1.33[Sb]+3.83≦[In]≦0.67[Sb]+4.67
0.5≦[Cu]≦1.2
0.1≦[Bi]≦0.5
(式中、[Sb]、[In]、[Cu]および[Bi]は、それぞれSb、In、CuおよびBiの含有率(質量%)を表す)
を満たす。
101 回路基板
102 回路基板電極
103 チップ抵抗
104 はんだ接合部
Claims (4)
- Sb、In、CuおよびBiを含有して、残部がSnから成り、以下の式:
0.5≦[Sb]≦1.25
0.66[Sb]+4.16≦[In]≦6.0
0.5≦[Cu]≦1.2
0.1≦[Bi]≦0.5
(式中、[Sb]、[In]、[Cu]および[Bi]は、それぞれSb、In、CuおよびBiの含有率(質量%)を表す)
を満たす、はんだ合金。 - 以下の式:
1.33[Sb]+3.83≦[In]≦0.67[Sb]+4.67
を更に満たす、請求項1に記載のはんだ合金。 - 少なくともSbが固溶したγ相およびβ−Sn相を含む合金組織を有する、請求項1または2に記載のはんだ合金。
- 電子部品が回路基板に実装された実装構造体であって、電子部品の電極部と回路基板の電極部とが、請求項1〜3のいずれかに記載のはんだ合金によって接合されている、実装構造体。
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