JP2017083717A - 画像形成装置 - Google Patents

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Takahiro Ishihara
孝容 石原
板垣 智久
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智久 板垣
暢彦 財間
Nobuhiko Zaima
暢彦 財間
靖人 白藤
Yasuto Shirafuji
靖人 白藤
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Abstract

【課題】長期の使用に伴い、感光体の膜厚が減少することで画像を形成するトナー高さが増大し粒状性の低下を招く。
【解決手段】感光体の膜厚に関する情報を把握して、その情報に基づいて積算露光プロファイルを変更し、濃度調整を行なって画像形成を行なう構成とした。
【選択図】図17

Description

本発明は、複写機、複合機、プリンターなどの画像形成装置に係わり、特に感光体を用いる電子写真方式の画像形成装置に関する。
従来の複写機、複合機などの電子写真方式の画像形成装置では、一様に帯電された感光体に、画像データに基づいて選択的な露光を行なうことによって静電潜像を形成し、この静電潜像を顕在化するためにトナーによって現像を行い感光体上にトナー像を形成する。
さらに感光体上に形成されたトナー像を記録媒体へと転写し、転写後の記録媒体上のトナー像を定着工程により記録媒体に定着させ、画像形成を行なう。
このような画像形成装置においては、画像形成後に感光体上に転写されずに残留したトナーを除去するために、クリーングブレードなどのクリーニング部材を当接させてトナーを削り落としている。そのため、長期の使用に伴いこのクリーニング部材との摺擦によって感光体の表面が徐々に削れ、感光体の膜厚が低下するということが生じる。
感光体の膜厚が低下すると感光体内における電界強度が増大するため、感光体支持体からの電荷注入が促進される。そのため、感光体の帯電能の低下や、非画像部を露光する反転露光系では非画像部の電荷を露光によって除去しきれず、非画像部にトナーが付着してしまう所謂カブリ等の現象を招く。
この感光体の膜厚の減少に伴う帯電能の低下に対応するために、特許文献1には感光体の膜厚に関する情報に基づいて感光体の露光手段の露光量を制御する構成が提案されている。
また、感光体の膜厚の低下に伴う別の問題として、感光体上での露光スポットのスポット径が非常に小さいとき、感光体の膜厚の減少に伴う感光体内における電界強度の増大によって、励起キャリアの生成量が増加し、そのキャリアの拡散によって静電潜像の電位分布(潜像プロファイル)が広がり、潜像が劣化するということが生じる。
この、キャリアの生成量の増大に伴う潜像の劣化は、感光体上での露光スポット径が50μm以上の時は画像に対する影響はないが、感光体上での露光スポット径をさらに小型にしたときに(16μm程度)顕著になる。
そこで、特許文献2には感光体上での露光スポット径が50μm以下のとき特許文献2(1)式を満たすように露光光源の露光エネルギーまたはビームスポット面積を変化させる構成が提案されている。
[感光体膜厚の現象に伴う潜像の良化]
上記では感光体の膜厚の減少によって生じる問題を述べたが、感光体の膜厚が減少することによって画像品質にとって良い方向へ向かう面も存在することが知られている。
特許文献2のように露光スポット径が非常に小さい場合を除いて、一般に静電潜像の電位分布(潜像プロファイル)は感光体の膜厚が減少することによって鮮鋭になる。ここで、図1は同材質で膜厚の異なる感光体を帯電し、それを同一の光量で露光した際に形成される潜像プロファイルを示す。図1中の線分Aは現像電位面を示している。ここで現像電位面とは、トナー担持体に印加される(直流)電圧と等電位の面のことであり、一般には静電潜像の電位と現像電位面との差と、トナー一粒子あたりの電荷量に応じて現像されるトナー量が決まる。
図1に示すように、感光体の膜厚が減少すると潜像プロファイルの現像電位面での傾きが大きくなり、現像電位面に対する深さが深い潜像となる。ここでいう潜像プロファイルの現像電位面での傾きとは、潜像プロファイルの現像電位面との交点における傾きの絶対値として定義する。
例えば、積層型の感光体の場合、露光によって電荷発生層で生成されたキャリアが電荷輸送層に注入され、感光体内の電界に沿って感光体表面に移動し、感光体の表面電位を中和して静電潜像を形成する。ここで電荷輸送層の膜厚を減少させることによって、感光体内の電界強度を増大させ、キャリアの拡散距離を減少させることによって、感光体内の電界と垂直な方向へのキャリアの拡散を抑制し、露光プロファイルに忠実かつ鮮鋭な潜像プロファイルを形成することができる。
静電潜像に対するトナーの現像工程という観点で、この潜像プロファイルの鮮鋭さ、つまり潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび現像電位面に対する深さによる影響を考えると、この傾きおよび深さが大きいほど、トナーが潜像に対して引き寄せられる力が強くなる。
そのため静電潜像に対してトナーが忠実に現像され、また、感光体上の形成されたトナー像の端部におけるトナーの飛散具合も小さいため、画像データに対する再現度が良好なトナー像を形成することが出来る。
このように感光体の膜厚を薄くすると、感光体支持層による電荷注入の弊害はあるものの、潜像プロファイルが鮮鋭化することで画像データに対する出力画像の再現性が良好になるということが従来知られていた結果であった。
特開2002−296853号公報 特開2007−72335号公報
しかし、本発明者が調査した結果、感光体の膜厚が減少することで潜像プロファイルは鮮鋭化するものの、出力画像の粒状性が低下してしまうという現象が確認された。
この現象を表す一例を図2に示す。図2は感光体膜厚に対して、粒状性を示す指数であるRMS粒状度をとったものである。
ここで、RMS粒状度とは粒状性を標準化するための指数であり、ANSI PH−2.40−1985で標準化されている。RMS粒状度はある画像の濃度分布の標準偏差によって与えられ、次式によって算出する。
ただし、Diは濃度分布を表し、
は平均濃度を表す。
ここでRMS粒状度の値が大きいほど粒状性としてはよくないことに注意しておく。
図2より感光体の膜厚が25μmになるまでは膜厚が減少することで、粒状性が良化していくものの、感光体の膜厚が25μm以下になると膜厚が減少することで粒状性は低下していく。感光体の膜厚が25μmになるまでの粒状性の良化については、潜像プロファイルが鮮鋭化することによる画像データに対する出力画像の再現性が良化として説明することができる。しかし、感光体の膜厚が25μm以下では、潜像プロファイルが鮮鋭化しているにもかかわらず粒状性が低下してしまう。
この原因について解析したところ、詳細については後ほど述べるが、感光体の膜厚が減少することで潜像プロファイルが鮮鋭化することで、感光体上のハーフトーンのドットを形成するトナー像の高さが高くなり、現像以降の画像形成工程での乱れに弱いためであることが判明した。
従来の構成ではこの潜像プロファイルの鮮鋭化に伴う粒状性の低下に対応できる構成ではないために、感光体の膜厚が減少することによる粒状性の低下を防ぐことは困難であった。
例えば特許文献1における構成のように、感光体の膜厚の減少に対して黒ベタ部での潜像電位を一定にする構成にしたとしても、ハーフトーンを構成するドットやラインの潜像プロファイルが鮮鋭化するため、使用開始時の初期状態に対して粒状性は低下してしまう。
また、特許文献2における構成は、特許文献2の(1)式を満たすことで潜像プロファイルを鮮鋭化するための構成であり、潜像プロファイルが鮮鋭化する限りにおいては問題とならないため、本発明における感光体の膜厚が減少することよる潜像プロファイルの鮮鋭化によって粒状性が低下する課題には対応することが出来ない。また、スポット径が50μm以上の場合においても、膜厚の減少具合によっては、潜像プロファイルの鮮鋭化によって粒状性が低下する課題が起こりうるため、特許文献2における構成では本課題に対応することは出来ない。
本発明は、このような課題を解決するためのものである。すなわち、感光体膜厚が減少しても潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定に保つことで、経時の使用に伴う粒状性の劣化を抑え、画像品質を維持することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、
感光体の膜厚に関する情報を検知する手段と、感光体上の露光スポットの積算光量プロファイルを変更する手段とを持ち、前記感光体の膜厚に関する情報の検知手段によって検知された感光体の膜厚に関する情報に基づいて、感光体に形成される潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定にする構成とした。
本発明に係る画像形成装置は、感光体の膜厚に関する情報に基づいて、感光体の露光スポットの積算光量プロファイルを変化させ、潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定にし、さらに黒ベタ部のトナー濃度に応じて、黒部ベタ部のトナー濃度が一定になるように光量の調整を行なう構成とした。そのため感光体の膜厚が減少しても潜像プロファイルが鮮鋭化することなく、感光体上のトナー像の高さを一定に保つことができ、経時の使用に伴う粒状性の劣化を抑え、画像品質を維持することができる。
膜厚の減少に対する潜像プロファイルの変化を示す図である。 膜厚の減少に対する粒状性の変化を示したものである。 実施例1における構成の概略図である。 実施例1における感光体の構成の概略図である。 (a)は実施例1における露光装置の概略図、(b)は実施例1におけるコリメータ光学系の概略図である。 実施例1における膜厚検出器の概略図である。 膜厚の減少に伴うトナー高さの変化を示した図である。 膜厚の減少に対する潜像プロファイルの変化を示す図である。 膜厚の減少に対して、潜像プロファイルの現像電位面に対する深さおよび傾きを示した図である。 膜厚の減少およびそれに伴うトナー高さの増加に対して、ドット面積の標準偏差値を示した図である。 トナー高さのみを増大させたときのドット面積の標準偏差値を示す図である。 スポット径の変化に対する潜像プロファイルの変化を示す図である。 スポット径の変化に対して潜像プロファイルの現像電位面に対する深さおよび傾きを示した図である。 膜厚とスポット径の組み合わせに対して潜像プロファイルの現像電位面に対する深さおよび傾きを示した図である。 潜像プロファイルの現像電位面に対する深さおよび傾きを一定にするための膜厚とスポット径の組み合わせを示す図である。 実施例1における制御を含めた構成を示すブロック図である。 実施例1における画像形成の流れを示すフローチャートである。 (a)は実施例1における画像形成にともなう膜厚の減少を示す図、(b)は実施例1の画像形成装置使用時の膜厚の変化に対して粒状性を示した図である。 (a)は実施例2における露光装置の概略説明図、(b)は実施例2における露光光源の概略説明図である。 (a)は実施例2における感光体の露光方法の説明図、(b)はスポットの重なりによる積算光量プロファイルの変化を示す図、(c)はスポット間のずれ量が大きい場合の積算光量プロファイルを示した図である。 スポット間のずれ量に対して積算光量プロファイルの傾きを示した図である。 スポット間のずれ量に対して潜像プロファイルを示した図である。 スポット間のずれ量に対して潜像プロファイルの現像電位面に対する深さおよび傾きを示した図である。 潜像プロファイルの現像電位面に対する深さおよび傾きを一定にするための膜厚とスポット間のずれ量の組み合わせを示す図である。 実施例2の画像形成装置使用時の膜厚の変化に対して粒状性を示した図である。
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[画像形成装置の構成および画像形成工程の概略]
図3は本実施例の画像形成装置の概略図である。感光体1はローラー帯電装置2によって負極性に一様に帯電される。ローラー帯電装置2には感光体1に流入する電流量から感光体の膜厚を検知する膜厚検出器12が取り付けられている。
感光体の帯電電位は電位センサー13によって検知することができる。
画像信号に対応して露光光源および感光体上の積算光量プロファイルの変更手段および走査光学系からなるスキャナー7から放出されるレーザー光Lが感光ドラム1上に照射されることによって感光体の電位は減衰し、静電潜像が形成される。
二成分現像器3によって静電潜像はトナー像として現像され、感光体上に形成されたトナー像は1次転写ローラー4によって中間転写ベルト14上に転写される。中間転写ベルト14上に転写されたトナー像は2次転写ローラー9によって記録媒体10に転写される。
記録媒体10に転写されたトナー像は定着器11によって熱と圧力を付与され定着される。感光体1に残存した転写残トナーはクリーナー5によって掻き取られる。クリーナー5内の掻き取られた転写残トナーは図示しない廃トナー容器に搬送され回収される。その後除電ランプ6によって感光体の潜像電位の履歴を消去した後、再びローラー帯電装置2によって帯電され、一連の画像形成工程が繰り返し行なわれる。
また、濃度検出器15によって中間転写ベルト上の黒ベタ部のトナー濃度が読み取られ、黒ベタ部のトナー濃度が一定になるようにレーザー光Lの強度が調整される。
[感光体の構成]
本実施例に用いた感光体1は積層型有機感光体であり、その構成概略図を図4に示す。
感光体1の層構成は感光体1の表層に近い順から、電荷輸送層21、電荷発生層22、下部被服層23の四つの層構成をなし、下部被服層23の下に基盤となるとなるAl素管24が配置した構成となっている。それぞれの層の役割を以下に示す。
電荷輸送層:電荷発生層で発生したキャリアをドラム表層まで運ぶ役割を果たしている。ドラムの帯電極性がマイナスの場合、この層によって正孔が輸送される。
電荷発生層:光励起によって、電子正孔対のキャリアが生成される。
下部被覆層:電荷発生層によって発生したキャリアをAl基盤部まで輸送する。ドラム帯電極性がマイナスの場合、この層によって電子が輸送される。
本実施例における膜厚とは、被覆層から下部被服層までの膜厚の総和を意味する。また、本実施例に用いた感光体1の膜厚は、画像形成開始前の初期状態では25μmである。
[露光装置の構成]
次に図5(a)に本実施例における露光装置であるスキャナー7の概略説明図を示す。
露光光源31は中心波長680nmの半導体レーザーからなり、露光光源31より照射されたレーザー光Lは、焦点調整機構32を備えたコリメートレンズ33を通り平行光となった後、6つのミラーにより構成される回転多面体ミラー34によって反射および走査される。回転多面体ミラー34によって反射されたレーザー光Lはf−θレンズ35によって感光体上に集光される露光光源31にはレーザードライバーが接続されており、レーザーの発光タイミングの制御やレーザー強度の制御を行なう。
焦点調整機構32およびコリメートレンズ33からなるコリメートレンズ光学系の詳細を図示したものを図5(b)に示す。図5(b)においてレーザーの光軸方向を矢印Aで示す。
図5(b)に示すようにレーザーの入射方向および出射方向に中空を有するフレーム41に、ステッピングモーター42およびガイド軸43が設けられている。コリメートレンズ33はガイド軸43および、リードネジ44により支持される。ここで、コリメートレンズ33はその焦点方向とレーザーの光軸方向が一致するように支持されている。また、ガイド軸43はその軸がレーザーの光軸方向と一致するように設けられている。
コリメートレンズ33にはガイド軸43と摺接するすべり軸受けおよびリードネジ44に螺合するメスネジが取り付けられており、コリメートレンズ33はリードネジ44の回転に伴ってガイド軸43方向に移動する。
リードネジ44はステッピングモーター42と系合し、ステッピングモーター42の回転に伴って回転する。また、リードネジ44のステッピングモーター42と逆方向の端部はフレーム41に取り付けられた軸受け45によって支持される。
ここで、制御信号によってステッピングモ−ター42が駆動し、リード軸44の回転に伴ってコリメートレンズ33がその焦点方向に動くことによって、感光体上のスポット径を変更させることができる。
ここで、露光スポットの光量分布はガウシアンであり、スポット径とは光量分布の光量ピーク値の1/e2の値における光量分布の直径とする。本実施例では、感光体上のスポット径を変更することで、感光体上の露光スポットの積算量プロファイルを変化させる。
本実施例での初期状態におけるスポット径の設定値は40μmである。また、感光体の露光量は、露光光源21の半導体レーザーのレーザー強度を制御することにより変化させることができる。
ここでコリメートレンズのその焦点方向への移動量に対して、感光体上のスポット径を示したものを表1に示す。
本実施例では表1に示すようなスポット径−コリメートレンズの移動量の変換テーブルに基づいて、所望のスポット径になるようにコリメートレンズの焦点方向に対する移動量の調整を行なう。
[膜厚検出器の構成]
次に、図7に、膜厚検出器12の概略説明図を示す。
膜厚検出器12は、ローラー帯電装置2に流入する電流を測定する電流計51、電位センサー13および電流計31からの出力信号を読み取り膜厚を計算する膜厚計算部52からなる。
感光体膜厚の検出原理は感光体の静電容量の変化より膜厚を計算するものである。すなわち、感光体の膜厚をd、感光体に流れる電流値をI、感光体に流入する電荷量をQ、感光体の表面電位をV、プロセススピードをp、ローラー帯電装置による有効帯電領域の長さをl、感光体の長手方向の長さをLとすれば、
流入電荷量Q、感光体の静電容量Cおよび感光体の電位Vの間には
Q=C・V・・・(1)
の関係が成り立つ。
また、流入電荷量Qは感光体に電位Vが形成される時間Δtを用いて
Q=I・Δt・・・(2)
と表せる。ここで、有効帯電領域内に流入する電荷量および、有効帯電領域内の電位形成時間を考えれば、
Q=I・Δt=I・l/p・・・(3)
となる。また、感光体の静電容量Cは感光体の誘電率ε、真空の誘電率ε0を用いて
C=ε0・ε・l・L/d・・・(4)
と表せる。(1)式、(3)式、(4)式より感光体の膜厚dは、感光体に流れる電流値をIおよび感光体
の表面電位Vを用いて、
d=ε0εL・p・V/I・・・(5)
と表せる。
この計算式によって、電流計31によって計測した電流Iおよび電位センサー31によって計測した電位Vとから感光体の膜厚を算出することが出来る。
ここで電流計31に流れる電流量に対して、(5)式によって算出された感光体の膜厚を示したものを表2に示す。ただし、ここで表2は感光体の電位がV=−700[V]の場合であり、本実施例ではこのような電流量―感光体膜厚の変換テーブルを、感光体の電位に応じて記憶している。
本実施例ではこの電流量−感光体膜厚の変換テーブルに基づいて、電流計31に流れる電流量から、感光体の膜厚を算出する。
本実施例においては膜厚検出器12によって検知した膜厚に基づいて、スポット径の変更を行い、変更後のスポット径は潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定にするように決定される。
[感光体膜厚の減少が粒状性に及ぼす影響]
ここで、本発明の理解のために、感光体膜厚が減少することによって、感光体上のトナー像の高さに及ぼされる影響および、潜像プロファイルに及ぼされる影響について述べる。
[感光体膜厚の変化がトナー高さに及ぼす影響]
まず、感光体の膜厚が変化することで、感光体上のトナー高さに及ぼされる影響およびその原因について述べる。
感光体膜厚に対して、同一のハーフトーン画像を構成するドットの感光体上におけるトナー高さをとったものを図7に示す。図7より、感光体膜厚が減少するほどハーフトーン画像を構成する感光体上のドットのトナー高さが高くなる。
[感光体膜厚の変化が潜像プロファイルの形状に及ぼす影響]
この感光体膜厚が減少することで、感光体上のドットのトナー高さが高くなる原因を考察するために、感光体膜厚の減少に伴う潜像プロファイルの形状の変化がトナー高さに対して及ぼす影響について述べる。ここで、潜像プロファイルの形状を直接観測することは困難なので、露光プロファイルと電荷キャリアの生成およびその感光体内での輸送過程に基づいた潜像シミュレーションによって潜像プロファイルの形状を比較した。
感光体の膜厚に対して、1ドットの潜像プロファイルをプロットしたものを図8に示す。
図8において縦軸は潜像の電位を表し、左から順に感光体の膜厚が30μm、25μm、20μm、15μm時の潜像プロファイルを並べたものである。ここで、シミュレーションにおける露光条件は各膜厚に対して黒ベタでの濃度が一定となる現像コントラスト電位を実験により求め、黒ベタにおける現像コントラスト電位がその値となるようにしている。
図8により得られた潜像プロファイルから、潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび現像電位面に対する深さを示したものを図9(a)および(b)に示す。
図9(a)および(b)より感光体の膜厚が薄くなるに伴い、潜像プロファイルの現像電位面での傾きが大きく、現像電位面に対する深さが深い潜像となる。これは感光体の膜厚が減少することによって、感光体内の電界強度が増大し、キャリアの拡散距離が減少する効果と、感光体の表層に達するまでの距離が小さくなり、拡散距離が減少する効果によるものである。潜像プロファイルの現像電位面に対する深さが深くなることによってそれを埋めるための電荷量がトナーの高さ方向に増大する。また潜像プロファイルの現像電位面における傾きが増大することによって感光体上のトナー像の端部における飛び散りが減少し、潜像に対して忠実にトナーが現像されることでトナー高さが増大する。
このように、感光体の膜厚が減少することで潜像プロファイルが鮮鋭化し、感光体上のトナー像の高さが高くなることで、画像形成工程における静電的、力学的な乱れによってトナー像が乱れやすく、粒状性の低下が生じるのである。
[膜厚の減少による乱れやすさ]
次に、感光体上のトナー高さが高くなることによって粒状性に及ぼされる影響について述べる。
トナー高さが粒状性に対して及ぼす影響を調べるために、まずトナー高さとドットの乱れやすさの関係を調査した。そのために、出力画像のハーフトーンを構成するドット面積の標準偏差値を1ドットの乱れ具合を示す値と考え、感光体の膜厚を30μmから15μmまで変化させた感光体を用意し、その感光体を用いて画像形成を行い、ドット面積の標準偏差値を測定した。その結果を図10(a)に示す。また、図10(a)のドット面積標準偏差をそれぞれの感光体の膜厚のトナー高さに対してプロットしたものを図10(b)に示す。ここで図10(b)の横軸のトナー高さは、トナー高さの変化量と膜厚の減少量が揃うように示してある。ここで、ドット面積の標準偏差値はその値が大きいほど1ドットの乱れが大きいことに留意しておく。
図10(a)より感光体の膜厚が25μmの場合と15μmの場合の結果を比較することで、感光体の膜厚が減少することで1ドットの乱れが大きくなっていることがわかる。また、図10(b)より、トナー高さが2μmから3.8μmの結果から(膜厚が25μmから15μmへの変化に対応)トナー高さが増大するにともなって、1ドットの乱れが大きくなっていることがわかる。これは感光体の膜厚が25μmから15μmへと増加していくことによって、トナー高さが上昇することにより、現像以降の工程で乱れやすいためである。
[トナー高さのみによる乱れやすさ]
また、感光体の膜厚の変化によるトナーの現像性の変化など、トナーの高さ以外による粒状性に対する影響を除くために、膜厚25μmの結果に対して、現像コントラストを7%程度上昇させ、トナー高さのみを上昇させた出力画像に対して、トナー高さとドット面積の標準偏差値の関係を測定した。その結果を図11に示す。
図11より、トナー高さが高くなることによってドット面積の標準偏差値が上昇し、1ドットの乱れが上昇していく。
このように、感光体の膜厚が減少することで潜像プロファイルが鮮鋭化し、感光体上のトナー高さが高くなるために、現像以降の画像形成工程おける力学的、静電的な乱れによって出力画像の粒状性が低下してしまう。
[露光スポット径が潜像プロファイルに及ぼす影響]
次に、本実施例における感光体膜厚の減少に対するスポット径の変更手段の理解のために、露光スポット径が潜像プロファイルに及ぼす影響を述べる。
その影響を調べるために、1ドットの潜像プロファイルをシミュレーションした結果について述べる。露光スポット径は40μm、50μm、60μmの3つの条件とし、感光体の膜厚は、本実施例における使用前の感光体1の膜厚25μmとした。ここで、シミュレーションでの露光条件は各露光スポット径に対して黒ベタでの現像コントラスト電位が一定となるようにしている。ここで、現像コントラスト電位とは、黒ベタ部の潜像電位と、現像電位との差で与えられる。
その結果を図12に示す。図12において縦軸は潜像の電位を表し、左から順に露光スポット径が60μm、50μm、40μmの結果である。図12により得られた潜像プロファイルから、潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび現像電位面に対する深さを示したものを図13(a)および(b)に示す。
図13(a)および(b)より露光スポット径が小さくなるに伴い、潜像プロファイルの現像電位面での傾きが大きく、現像電位面に対する深さが深い潜像となる。これは、露光スポット径が小さくなることによって、露光プロファイルのある露光強度における傾きが大きく、光量ピーク値が大きくなるためである。つまり、感光体の電荷発生層に生成される励起キャリア数は、露光強度に依存するため、露光プロファイルの傾きや、光量ピーク値は、電荷発生層に生成される励起キャリア分布の傾きおよび、ピーク値に反映される。そのため、露光プロファイルの傾きおよびピーク値は、潜像プロファイルの傾きおよび深さに反映される。そのため露光スポット径が小さくなることによって露光プロファイルのある露光強度における傾きが大きく、光量ピーク値が大きくなり、潜像プロファイルの現像電位面での傾きが大きく、現像電位面に対する深さが深い潜像となる。
以上の図9(a)および(b)と図13(a)および(b)の結果より潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きおよび深さへの影響としては、膜厚を変化させても、スポット径を変化させることも同じ影響を及ぼすことがわかる。
このことから、感光体の膜厚が減少したとしても、スポット径を大きくすることによって、感光体の膜厚の減少による潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きおよび深さの増大の効果を打ち消すことができる。
[感光体膜厚と露光スポット径の組み合わせに対する潜像プロファイル形状の変化]
そこで、本実施例の使用開始時の初期状態における感光体膜厚25μm、スポット径40μmの組み合わせ時における潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび深さに対して、感光体膜厚が20μmおよび15μmに減少した際の潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび深さを、スポット径を変化させてシミュレーションを行った。スポット径は初期状態における40μmから5μmずつ増加させることとした。
その結果を図14(a)および(b)に示す。図14(a)は感光体膜厚に対して潜像プロファイルの現像電位面での傾きをとったものであり、図14(b)は感光体膜厚に対して潜像プロファイルの現像電位面に対する深さをとったものである。また、それぞれのデータ点において右に示される「40μm」などの表記は、そのデータ点のシミュレーションに使用したスポット径の大きさを表している。また、図14(a)および(b)にいずれも左端に示すデータが感光体膜厚30μm、スポット径40μmの画像形成開始前の初期状態における潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きおよび深さを示しており、その値を実線で示した。
感光体の膜厚の減少に対して、潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きおよび深さを一定にするためには、この実線で示される画像形成開始前の初期状態における潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きおよび深さの値に近づければよい。
図14(a)より、感光体膜厚が20μmの場合は、潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きが画像形成開始前の初期状態に最も近いのは、スポット径50μmの場合である。感光体膜厚が15μmの場合は、潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きが画像形成開始前の初期状態に最も近いのは、スポット径60μmの場合である。また、図14(b)より、感光体膜厚が20μmの場合は、潜像プロファイルの現像電位面に対する深さが画像形成開始前の初期状態に最も近いのは、スポット径50μmの場合である。感光体膜厚が15μmの場合は、潜像プロファイルの現像電位面に対する深さが、画像形成開始前の初期状態に最も近いのは、スポット径60μmの場合である。
以上のことから、潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きおよび深さを画像形成開始前の初期状態に対して一定にするためには、感光体膜厚が20μmの場合はスポット径を50μmとすれば良く、感光体膜厚が15μmの場合にはスポット径を60μmとすれば良い。
上記に述べたシミュレーション結果は感光体膜厚を25μm、20μm、15μmという代表的な3点に対して示したが、さらに細かい感光体の膜厚変動に対して、潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きが画像形成開始前の初期状態に対して一定になるようなスポット径をシミュレーションした結果を図15に示す。
それぞれの感光体の膜厚に対して図15で示される曲線に基づいてスポット径を変更することで、潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きおよび深さを初期状態に対して一定に保つことが出来る。このようにして作成した、潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定に保つための膜厚―スポット径の変換表を表3に示す。
本実施例においては、表3に示す潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定に保つための膜厚―スポット径の変換テーブルを持つ。
この変換テーブルおよび膜厚検出器12によって検知した膜厚から露光に使用するためのスポット径の大きさを決定し、スキャナー7のコリメータレンズ33をその焦点方向に動かすことによって、前記膜厚及び膜厚―スポット径の変換テーブルによって決定されたスポット径に変更する。
[画像形成シークエンス]
次に図16に示すブロック図および図17に示すフローチャートを参照しつつ、本実施例における画像形成工程を説明する。
制御部も含めた本実施例の画像形成装置の構成は図16に示すようであり、画像信号の入力を行なうホスト61および、破線で示した画像形成を行なうエンジン部、点線で示した画像形成を制御する制御部からなる。制御部は画像形成装置の全体を制御するコントローラ62、エンジンの制御を行なうエンジン制御部63、入力情報に基づいて演算を行なうCPU64、膜厚―スポット径・スポット径−コリメートレンズ移動量・トナー濃度−露光量の変換テーブル、前回計測時の膜厚の情報を記憶する記憶手段65とからなる。
まずホスト61に対してプリント信号が入力されることで、画像形成が開始される(S1)。次に、スポット径および黒ベタ濃度検出によるレーザー強度の制御を行なうタイミングかどうかを判断する。ここで、この判断はコントローラ62によって行なわれ、コントローラ62が電源入力を検知した時か、定着装置71の温度情報がコントローラ62へと伝えられその値が100℃以下に達してから最初の印字時であるとコントローラ62が判断した時、S3の制御シークエンスが行なわれる。そうでない場合、S8のシークエンスを行なう(S2)。制御を行なう場合、エンジン制御部63に制御信号が送られ、帯電装置68が作動し、感光体1が帯電されると共に、帯電ローラー電流検出器72と感光体電位検出器73が作動する。
帯電ローラー電流検出器72と感光体電位検出器73によって検出された帯電ローラー電流と感光体電位と、記憶手段65に記憶された電流―膜厚変換テーブルによりCPU64によって感光体の膜厚が算出される(S3)。その時、算出された膜厚の値と、記憶手段65に記憶された前回測定時の感光体の膜厚の値の差分をCPU64によって演算し、その値をコントローラ62に送り、コントローラ62はその値の絶対値が2μm以内ならばS7のシークエンスを、膜厚の変化がある場合はS4のシークエンスを行なうという判断を行なう(S4)。
膜厚の変化がある場合、膜厚の値と、記憶手段54に記憶された膜厚−スポット径の変換テーブルとから、CPU64によって画像形成に使用するスポット径の値が算出される(S5)。次に、決定されたスポット径と記憶手段54に記憶されたスポット径−コリメートレンズの移動量の変換テーブルに基づいてCPU53によってコリメートレンズの移動量が算出される。決定されたコリメートレンズの移動量はコントローラ62によって制御信号に変換され、制御信号はエンジン制御部63を介してコリメートレンズ駆動部67へ送られ、コリメートレンズが駆動することでスポット径が変更される(S6)。
さらにコントローラ52は黒ベタ画像を出力する信号を出力し、変更したスポット径を用いて黒ベタ画像が出力される。この黒ベタ画像の中間転写ベルト上での濃度が、トナー濃度検出器57によって読み取られる。読み取られたトナー濃度の値はCPU53へと送られ、トナー濃度の値と、記憶手段54に記憶されたトナー濃度−レーザー強度変換テーブルによって、画像形成に使用するレーザー強度が算出される。算出されたレーザー強度の値はコントローラ52によって制御信号に変換され、制御信号はエンジン制御部56を介してレーザードライバー55へと送られレーザー強度が変更される(S7)。
次に、S3−S7の画像形成前のシークエンスによって決定された露光スポット径、及び露光レーザー強度を用いて画像形成が行なわれる(S8)。なお、表3に示した潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定に保つための膜厚―スポット径の変換テーブルは、感光体の特性(誘電率・露光強度と生成電位の関係など)、によっても異なる。
そのため本実施例における感光体と異なった特性を持った感光体を用いて画像形成を行なう場合、それぞれの感光体の膜厚および露光スポット径の組み合わせによる潜像プロファイルに対するシミュレーションを行なうことによって、感光体の特性に応じた潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定に保つための変換テーブルを作成するべきである。
[効果]
次に本実施例の画像形成装置を用いた時の効果について示す。本実施例の効果を示すためにも、本実施例の画像形成装置および、本実施例の画像形成装置においてスポット径を一定とした(初期状態の40μmのまま)ものの二つを比較することとした。
画像形成枚数は50,000枚までとし、画像形成に用いた記録媒体はキヤノン社製カラーレーザーコピア紙(A3サイズ、坪量81.4g)を用いた。
各出力枚数における感光体の膜厚を読み取り、出力画像の粒状性の値と比較することとした。図18(a)に出力枚数と感光体膜厚の減少の関係を、本実施例の画像形成装置および、本実施例の画像形成装置においてスポット径を一定としたものの二つについて示す。図18(a)に示すように、出力枚数が増加するに伴って感光体の膜厚は減少して行き、画像形成枚数が50,000枚になると両者ともに15μm以下となってしまう。
出力枚数と感光体膜厚の減少の関係は、本実施例の画像形成装置および、本実施例の画像形成装置においてスポット径を一定としたものの二つについてほぼ差がないため、感光体の膜厚に対して出力画像の粒状性を示すRMS粒状度を取ったものを図18(b)に示す。図18(b)の結果を見てもわかる通り、本実施例の画像形成装置においてスポット径を一定とした場合、感光体の膜厚の減少に伴って粒状性が低下していく。これに対して、本実施例における画像形成装置を使用した場合では、感光体の膜厚が減少しても粒状性は変化しない。
このように、膜厚検出器によって検知した膜厚に基づいて、露光スポット径を潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さが一定になるように変更することによって感光体の膜厚が減少しても粒状性の値を一定に保つことが出来る。
なお、図18に示した長期使用に伴う膜厚の減少量は感光体の構成によっても異なり、特に感光体に膜厚の削れを防止する被覆層などによって保護されている場合、膜厚の減少量は小さくなる。しかし、その場合も本実施例のように感光体の膜厚に応じてスポット径を変更することによって本実施例と同様の効果を期待できる。
[実施例2の構成]
本実施例は実施例1における露光装置の構成および感光体上の露光スポットの積算光量プロファイルの変更手段を変えたものであり、それ以外の構成は実施例1と共通である。
[露光装置の構成]
図19(a)に本実施例における露光装置の概略図を示す。露光光源81は16個のレーザー光源を有する面発光レーザーである。その配列は、図19(b)に示すように16個のレーザーが1次元的に配列しており走査面に対して15°の傾きを有している。
それぞれのビームの感光体上における露光スポットの光量分布はガウシアンであり、全て同一の分布を形成する。また、感光体上に形成される露光スポットの解像度はレーザーの主走査方向、副走査方向共に1200dpiである。また、それぞれのビームの感光体上での露光スポット径は40μmである。
露光光源81より照射されたレーザー光L’は、コリメートレンズ82を通り平行光となった後、6つのミラーにより構成される回転多面体ミラー83によって反射および走査される。回転多面体ミラー83によって反射されたレーザー光L’はf−θレンズ84によって感光体上に集光される。
露光光源81にはレーザードライバーが接続されており、レーザーの発光タイミングの制御やレーザー強度の制御を行なう。
また、レ−ザー走査平面上にレーザーの走査タイミングを検出するフォトダイオード85が設けられており、感光体走査領域外のレーザー光の走査タイミングを検知する。検出された信号はレーザードライバー86に送られ、その検出タイミングを元にレーザードライバー86は露光光源81の各レーザーの、感光体の走査開始タイミングを制御する。
[積算光量プロファイルの変化法]
本実施例では、感光体上の積算光量プロファイルを変化させるための手段として、二つのレーザー光におけるスポットの重なりを用いて行う。
図20(a)に本実施例における露光レーザーの感光体上における走査の仕方について示す。露光光源である16個のレーザーの、あるポリゴン面に対する走査開始時の感光体上の露光スポットを図20(a)に実線の円として示す。ここで、16個のレーザーのスポットが感光体の副走査方向に対して一列に並んでいるのは、16個のレーザーの発光タイミングをずらしているためである。ここで便宜上、この実線の円で示される露光スポットによる走査を第一走査と呼ぶことにする。
ここで、次のポリゴン面に対する走査開始時の感光体上の露光スポットを図23に破線の円として示す。また、便宜上この破線の円で示される露光スポットによる走査を第二走査と呼ぶことにする。
図20(a)に示すように、本実施例では二つのポリゴン面による走査レーザーの感光体上でのスポットの中心をわずかにずらして重ね合わせることで、感光体上に積算光量プロファイルを形成する。
二つのポリゴン面による走査レーザーの感光体上でのスポットの中心をずらす方法は、第一走査時の走査開始タイミングに対して、第二走査時の走査開始タイミングを、フォトダイオード85によって検出されたわずかにずらすことによって行なう。
二つのスポットにおける中心間のずれ量をΔとすると、第一走査時と第二走査時における走査レーザーの走査開始時のタイミングのずれ量に応じて、スポットの中心間のずれ量Δを変化させることができる。
本実施例では、感光体の膜厚の減少に応じて、前記スポットの中心間のずれ量Δを変化させ、積算光量プロファイルを変化させることによって、潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定にする。
ここで、本実施例における膜厚の減少に対する積算光量プロファイルの変化方法に対する理解のために、スポットの中心をずらすことによってどのように積算光量プロファイルが変化するか、またその積算光量プロファイルの変化によってどのように潜像プロファイルの形状が変化するかについて示す。
[スポットの中心間のずれ量Δによる積算光量プロファイル形状の変化]
まず、二つのレーザーにおけるスポット中心のずれ量Δに対して積算光量プロファイルがどう変化するかについて示す。図20(b)にスポット中心のずれ量Δを0μm(ずれ無し)、10μm、20μm場合の露光プロファイルのシミュレーション結果を示す。
ここで、二つのスポット径がずれた場合の積算光量プロファイル形状はガウシアンではないが、比較のため、それぞれの光量ピークに対する1/e2の露光強度における傾きを図21に示す。
このように、スポット中心のずれ量を増大させることによって、スポット中心がずれていない場合の積算光量プロファイルの1/e2での傾き、および光量ピーク値を減少させることが出来る。
ただし、このずれ量Δをあまりに大きくしすぎると、図20(c)のように、積算光量プロファイルが二つのピークを持つ形状になってしまうため、注意が必要である。
シミュレーションによると、積算光量プロファイルに二つのピークが出るまでのずれ量Δの大きさは25μmであり、本実施例ではずれ量の大きさがこの値を超えないようにした。
[スポットの中心間のずれ量Δによる潜像プロファイル形状に対する影響]
次に、実施例1の場合と同様にスポットの中心間をずらすことによる潜像プロファイルに対する影響を調べるために、1ドットの潜像プロファイルをシミュレーションした結果について述べる。
スポット中心間のずれ量Δは0μm(ずれ無し)、10μm、20μmの3つの条件とし、感光体の膜厚は、本実施例における使用前の感光体1の膜厚25μmとした。ここで、シミュレーションでの露光条件は、二つのレーザーによって1ドットの積算光量プロファイルを形成し、そのドットによって形成された黒ベタでのコントラスト電位が一定となるようにしている。
その結果を図22に示す。図22において縦軸は潜像の電位を表し、左から順にスポットの中心のずれ量が0μm、10μm、20μmの結果である。
図22により得られた潜像プロファイルから、潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび現像電位面に対する深さを示したものを図23(a)および(b)に示す。
図23(a)および(b)に示すようにスポット中心のずれ量を増加させるに伴い、潜像プロファイルの現像電位面での傾きが小さく、現像電位面に対する深さが浅い潜像となる。
このように、潜像プロファイルの傾きおよび深さに対しては、二つのビームにおけるスポット中心のずれ量の変化させても、一つのビームの露光スポット径を変化させても同じ影響をおよぼす。
[スポット間のずれ量Δと膜厚の変化による潜像プロファイル形状に対する影響]
次に実施例1の場合と同様に、感光体の膜厚変動に対して、潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きが画像形成開始前の初期状態に対して一定になるようなスポット中心のずれ量をシミュレーションによって算出した。その結果を図24に示す。
それぞれの感光体の膜厚に対してこの曲線に基づいてスポット中心のずれ量を変更することで、潜像プロファイルの現像電位面に対する傾きおよび深さを画像形成開始前の初期状態に対して一定に保つことが出来る。
図24を元に作成した、潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定に保つための膜厚―スポット中心のずれ量の変換表を表4に示す。
本実施例においては、表4に示す膜厚―スポット中心のずれ量の変換テーブルを持つ。
この変換テーブルおよび膜厚検出器12によって検知した膜厚に基づいて、露光に使用するためのスポット中心のずれ量を決定し、レーザードライバー86によって第一走査時と第二走査時におけるレーザーの走査開始時のタイミングを変化させてスポット中心のずれ量を前記ずれ量にあわせ、画像形成を行なう。
なお、表4に示した潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定に保つためのスポット中心のずれ量の変換テーブルは、感光体の特性(誘電率・露光強度と生成電位の関係など)、によっても異なる。
そのため本実施例における感光体と異なった特性を持った感光体を用いて画像形成を行なう場合、それぞれの感光体の膜厚およびスポット中心のずれ量の組み合わせによる潜像プロファイルに対するシミュレーションを行なうことによって、感光体の特性に応じた潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さを一定に保つための変換テーブルを作成するべきである。
[実施例2の効果]
次に本実施例の画像形成装置を用いた時の効果について示す。実施例1の場合と同様に、本実施例の画像形成装置および、本実施例の画像形成装置においてスポット中心をずらさないものの二つを比較することとした。
画像形成枚数は50,000枚までとし、画像形成に用いた記録媒体はキヤノン社製カラーレーザーコピア紙(A3サイズ、坪量81.4g)を用いた。
各出力枚数における感光体の膜厚を読み取り、出力画像の粒状性の値と比較することとした。
実施例1の場合と同様に、感光体の膜厚に対して出力画像のRMS粒状度を取ったものを図25に示す。図25の結果を見てもわかる通り、本実施例の画像形成装置においてスポット中心をずらさない場合、感光体の膜厚の減少に伴って粒状性が低下していく。これに対して、本実施例における画像形成装置を使用した場合では、感光体の膜厚が減少しても粒状性は変化しない。
このように、膜厚検出器によって検知した膜厚に基づいて、二つのビームにおけるスポット中心のずれ量を潜像プロファイルの現像電位面での傾きおよび、現像電位面に対する深さが一定になるように変更することによって感光体の膜厚が減少しても粒状性の値を一定に保つことが出来る。
本発明に係る画像形成装置によれば、感光体の膜厚が減少しても潜像プロファイルが鮮鋭化することなく、感光体上のトナー像の高さを一定に保つことができ、経時の使用に伴う粒状性の劣化を抑え、経時の使用でも画像品質を維持することが出来る安定性の高い画像形成装置を提供することができる。
1 感光体、7 スキャナー、12 膜厚検出器、32 焦点調整機構、
33 コリメートレンズ、L レーザービーム、L’ レーザービーム

Claims (3)

  1. 感光体と、
    前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
    前記静電潜像を色材によって現像するための現像手段と、
    前記感光体の膜厚に関する情報を把握する膜厚把握手段と、
    前記感光体上の積算光量プロファイルを変更する積算光量プロファイル変更手段と、
    前記感光体の膜厚に関する情報から前記積算光量プロファイルを定めるための対応関係の膜厚―積算光量プロファイル情報と、
    感光体電位、現像バイアス、画像データのうちを少なくとも1つを用いて濃度を調整することができる濃度調整手段を有する画像形成装置において、
    前記膜厚に関する情報と、前記膜厚―積算光量プロファイル情報に基づいて、前記感光体上積算光量プロファイルを変更し、
    前記濃度調整手段によって濃度調整を行い、
    画像形成を行なうことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記感光体上の露光スポットの積算光量プロファイルを変更する手段は、前記露光光源より照射された露光スポットの集光状態を調整する光学的な焦点調整手段であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記露光手段は複数の光源によって構成され、前記感光体上の、同一画素を構成する露光スポットの積算光量プロファイルを変更する手段は、前記露光手段を構成する複数の光源より照射され前記感光体上に形成された複数の露光スポットを、前記露光スポットの中心が互いにずれるように配置し、前記露光スポットの中心部のずれ量に応じて、前記露光スポットの重ねあわせとして形成される積算光量プロファイルを変更する手段であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
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