JP2017082309A - 締結部材 - Google Patents

締結部材 Download PDF

Info

Publication number
JP2017082309A
JP2017082309A JP2015213949A JP2015213949A JP2017082309A JP 2017082309 A JP2017082309 A JP 2017082309A JP 2015213949 A JP2015213949 A JP 2015213949A JP 2015213949 A JP2015213949 A JP 2015213949A JP 2017082309 A JP2017082309 A JP 2017082309A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum
composite material
powder
based composite
fastening member
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015213949A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6749087B2 (ja
Inventor
泰史 大塚
Yasushi Otsuka
泰史 大塚
聡 吉永
Satoshi Yoshinaga
聡 吉永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yazaki Corp
Original Assignee
Yazaki Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yazaki Corp filed Critical Yazaki Corp
Priority to JP2015213949A priority Critical patent/JP6749087B2/ja
Publication of JP2017082309A publication Critical patent/JP2017082309A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6749087B2 publication Critical patent/JP6749087B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Manufacture Of Alloys Or Alloy Compounds (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)

Abstract

【課題】高温環境下においても応力緩和を抑制し、強度を維持することが可能な締結部材を提供する。【解決手段】本発明の締結部材は導電性を有し、さらにアルミニウム母相(1)と、アルミニウム母相の内部に分散し、かつ、一部または全ての添加物がアルミニウム母相におけるアルミニウムと反応することにより形成された分散体(2)とを有するアルミニウム基複合材料を備える。このように分散体がアルミニウム母相の内部に高分散することでアルミニウムの結晶粒を微細化しているため、高温環境下においても応力緩和を抑制し、強度を維持することができる。【選択図】図8

Description

本発明は、締結部材に関する。詳細には本発明は、高温条件下でも応力緩和を抑制することが可能な、導電性を有する締結部材に関する。
自動車用ワイヤーハーネスに用いられる電線等の導体材料としては主として銅が使用されてきたが、導体の軽量化という要請からアルミニウムも注目されている。銅は、材料としての引張強さ及び導電率の点で優れているが、重量が大きいという問題があるのに対し、アルミニウムは軽量ではあるが強度不足という課題が残されている。そのため、アルミニウムと他の材料を複合化することにより、導電率及び強度を向上させる方法が検討されている。
特許文献1では、所定量のケイ素及びマグネシウムを含有するアルミニウム合金で構成され、板表面における圧延方向の平均結晶粒径が150μm以下であり、十点平均粗さが4.0μm以下である電気接続部品用アルミニウム合金板が開示されている。また、特許文献2では、マトリックス金属中に短繊維状または粉体状の補強用基材を分散させた金属基複合材料を用いて、軽量ボルトを製造する方法が開示されている。そして、マトリックス金属がアルミニウム系金属であり、補強用基材がグラファイト、アルミナ、シリコンカーバイド、セラミックスから選択された1以上の物質から成ることが開示されている。
特開2015−34330号公報 特開昭63−76834号公報
アルミニウムの高強度化の手法としては、特許文献1のように合金化することが広く知られている。しかし、合金化によって強度を向上させた場合には、固溶元素によって導電率及び延性が低下してしまう。また、特許文献1のようなAl−Mg−Si系合金の時効析出温度は180℃付近にあるため、この合金を180℃付近の環境下で使用した場合、再結晶による軟化や時効析出により、当該合金の特性が変化する可能性があった。
また、特許文献2の金属基複合材料では、マトリックス金属中に短繊維状または粉体状の補強用基材を分散させている。しかし、補強用基材のサイズが大きく、再結晶により結晶粒が粗大化するため、強度が十分に向上しない恐れがあった。
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、高温環境下においても応力緩和を抑制し、強度を維持することが可能な締結部材を提供することにある。
本発明の第1の態様に係る締結部材は、アルミニウム母相と、アルミニウム母相の内部に分散し、かつ、一部または全ての添加物がアルミニウム母相におけるアルミニウムと反応することにより形成された分散体とを有するアルミニウム基複合材料を備える。さらに当該締結部材は、導電性を有する。
本発明の第2の態様に係る締結部材は、第1の態様に係る締結部材において、添加物は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンブラック、炭化ホウ素及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一つである。また分散体は、長径と短径との比(長径/短径)が1〜30であり、長径が0.01nm〜500nmであり、短径が0.01nm〜200nmである。
本発明の第3の態様に係る締結部材は、第1又は第2の態様に係る締結部材において、アルミニウム母相は、マグネシウムを0.01〜0.9質量%含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物であるアルミニウム合金である。
本発明の第4の態様に係る締結部材は、180℃雰囲気下で1ks経過時点での応力緩和率が60%以下であるアルミニウム基複合材料を備える。
本発明の締結部材は、分散体がアルミニウム母相の内部に高分散することで、アルミニウムの結晶粒を微細化している。そのため、高温環境下においても応力緩和を抑制し、強度を維持することができる。
(a)は、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料において、炭素の含有量と引張強さとの関係を示すグラフである。(b)は、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料において、炭素の含有量と導電率との関係を示すグラフである。 本実施形態に係るアルミニウム基複合材料の製造方法を示すフローチャートである。 (a)は、アルミニウムの導電率とアルミニウム内に含まれる酸素量との関係を示すグラフである。(b)は、アルミニウム内に含まれる酸素量とアルミニウム粉末の表面積との関係を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る導電部材(バスバー)の一例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る導電部材及び締結部材(ヒューズユニット)の一例を示す斜視図である。 実施例6及び比較例1の試料における引張強さと焼鈍温度との関係を示すグラフである。 実施例6及び比較例1の試料における導電率と焼鈍温度との関係を示すグラフである。 実施例1で得られたアルミニウム基複合材料の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られたアルミニウム基複合材料におけるラマン分光分析の結果を示すグラフである。 実施例1の試料で作製した伸線とAl−Mg−Si合金で作製した伸線における、180℃でのクリープ伸びと時間との関係を示すグラフである。 実施例6の試料で作製した伸線とAl−Mg−Si合金で作製した伸線における、応力緩和率と時間との関係を示すグラフである。
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る締結部材について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[第一実施形態]
本実施形態に係る締結部材は、アルミニウム母相と、当該アルミニウム母相の内部に分散し、かつ、一部または全ての添加物がアルミニウム母相におけるアルミニウムと反応することにより形成された分散体とを有するアルミニウム基複合材料を備えている。
(アルミニウム基複合材料)
まず、本実施形態の締結部材で使用されるアルミニウム基複合材料について説明する。
従来の溶融法で作製された純アルミニウム材料は、引張強さが70MPa程度しかなかった。さらに、強度を高めるために炭素を添加したとしても、炭素はアルミニウムとの濡れ性が悪いため、アルミニウム中に均一に分散させることは困難であった。そのため、このような従来のアルミニウム材料を使用しても、高温環境下における応力緩和を抑制することは困難であった。
これに対し、本実施形態の締結部材で使用されるアルミニウム基複合材料では、アルミニウム母相の内部に分散体を高分散させ、アルミニウムの結晶粒を微細化している。このように、アルミニウムの凝固組織を微細で均一にしたアルミニウム基複合材料を使用することにより、得られる締結部材の強度やじん性を高めることが可能となる。
アルミニウム基複合材料におけるアルミニウム母相としては、純度が99質量%以上のアルミニウムを用いることが好ましい。また、アルミニウム母相は、JIS H2102に規定される純アルミニウム地金のうち、1種アルミニウム地金以上の純度のものを用いることも好ましい。具体的には、純度が99.7質量%の1種アルミニウム地金、純度が99.85質量%以上の特2種アルミニウム地金、および純度が99.90質量%以上の特1種アルミニウム地金が挙げられる。アルミニウム母相としてこのようなアルミニウムを使用することにより、得られるアルミニウム基複合材料の導電性を高めることが可能となる。
なお、アルミニウム母相は、原材料及び製造段階にて混入される不可避不純物が含まれていてもよい。アルミニウム母相に含まれる可能性がある不可避不純物としては、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、ルビジウム(Pb)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)などが挙げられる。これらは本実施形態の効果を阻害せず、さらに本実施形態に係るアルミニウム基複合材料の特性に格別な影響を与えない範囲で不可避的に含まれるものである。なお、使用するアルミニウム地金に予め含有されている元素も、ここでいう不可避不純物に含まれる。不可避不純物の量としては、アルミニウム基複合材料中の合計で0.07質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るアルミニウム基複合材料では、アルミニウム母相の内部に、アルミニウムと添加物とが反応することにより形成された分散体が高分散している。つまり、当該分散体は、焼結により、添加物がアルミニウム母相におけるアルミニウムと結合することにより形成されたものである。このような添加物としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンブラック、炭化ホウ素(BC)及び窒化ホウ素(BN)からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。このような添加物はアルミニウムと容易に反応し、アルミニウムの結晶粒を微細化することが可能となる。
アルミニウム母相中に分散している分散体の形状は特に限定されないが、分散体の形状は棒状または針状であることが好ましい。分散体が棒状または針状であることにより、アルミニウム母相の内部での分散性が向上し、アルミニウム基複合材料の結晶粒をより微細化することが可能となる。なお、分散体が棒状または針状である場合、長径(L)と短径(D)との比は、長径(L)/短径(D)=1〜30であることが好ましい。また、長径(L)は0.01nm〜500nmであることが好ましく、短径(D)は0.01nm〜200nmであることが好ましい。なお、分散体の長径と短径は、アルミニウム基複合材料の断面を透過型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
また、本実施形態におけるアルミニウム基複合材料では、アルミニウム母相の内部に、棒状または針状の炭化アルミニウム(Al)からなる分散体が高分散していることがより好ましい。なお、この炭化アルミニウムは、棒状または針状の炭素材料が、焼結により、アルミニウム母相におけるアルミニウムと結合することにより形成されたものである。このような炭素材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、及びカーボンナノファイバーからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができ、この中でもカーボンナノチューブが特に好ましい。
カーボンナノチューブとしては、公知のものを用いることができる。カーボンナノチューブの短径は例えば0.4nm〜50nmであり、カーボンナノチューブの平均長径は例えば1μm以上である。また、カーボンナノチューブは、予め酸で洗浄することにより白金等の金属触媒やアモルファスカーボンを除去したり、予め高温処理することにより黒鉛化したものであってもよい。カーボンナノチューブにこのような前処理を行うと、カーボンナノチューブを高純度化したり高結晶化したりすることができる。
アルミニウム母相中に分散している棒状または針状の炭化アルミニウムは、上述の炭素材料とアルミニウム母相におけるアルミニウムとの反応により形成されている。ここで、カーボンナノチューブ等の炭素材料は、一部または全てがアルミニウム母相中のアルミニウムと反応している。そして、本実施形態では、添加物である炭素材料の全てがアルミニウム母相中のアルミニウムと反応し、炭化アルミニウムに組成変化していることが最も好ましい。しかし、例えば、カーボンナノチューブが球状に凝集した部分がアルミニウム母相中に残存している場合、その凝集の内部のカーボンナノチューブはアルミニウム母相と接触していない。そのため、アルミニウム母相中にカーボンナノチューブのまま残存してしまう可能性がある。ただ、アルミニウム基複合材料の強度を向上させる観点から、添加物である炭素材料の95質量%以上がアルミニウム母相中のアルミニウムと反応していることが好ましく、炭素材料の98質量%以上が反応していることがより好ましい。そして、添加物である炭素材料の全てがアルミニウム母相中のアルミニウムと反応していることが特に好ましい。
また、アルミニウム母相中において、隣接する分散体の間隔は2μm以下であることが好ましい。分散体の間隔が2μm以下であることにより、アルミニウム母相の内部における分散体の分散性を高め、アルミニウムの結晶粒を微細にすることが可能となる。なお、隣接する分散体の間隔も、アルミニウム基複合材料の断面を透過型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
本実施形態に係るアルミニウム基複合材料において、分散体の含有量は、炭素量換算で0.1〜2.0質量%であることが好ましい。分散体の含有量をこの範囲にすることにより、アルミニウム基複合材料を締結部材に使用した場合、所望の引張強さ及び導電率を得ることが可能となる。
図1(a)は、本実施形態におけるアルミニウム基複合材料中に含有する炭素量とアルミニウム基複合材料の引張強さとの関係を示す。また、図1(b)は、アルミニウム基複合材料中に含有する炭素量とアルミニウム基複合材料の導電率との関係を示す。図1に示すように、分散体と引張強さ及び導電率との間には、一次関数的な相関関係がある。つまり、アルミニウム基複合材料中の炭素量が増加すれば引張強さは上昇するが、導電率は低下する。
ここで、一般的なアルミニウムマンガン合金(3004−O材)は、引張強さが180MPaであり、導電率が42%IACSである。そのため、本実施形態に係る締結部材が従来のアルミニウム合金に対して導電率で優位性を得るためには、図1(b)より、アルミニウム基複合材料の分散体の含有量は炭素量換算で1.44質量%以下とすることがより好ましい。
本実施形態に係るアルミニウム基複合材料において、アルミニウム母相の結晶粒径は2μm以下であることが好ましい。アルミニウム母相の結晶粒径が2μm以下まで微細化されていることにより、アルミニウム基複合材料の強度やじん性を高めることが可能となる。なお、アルミニウム母相の結晶粒径は、線分法により求めることができる。
上述のように、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料は、アルミニウム母相と、アルミニウム母相の内部に分散し、かつ、一部または全ての添加物がアルミニウム母相におけるアルミニウムと反応することにより形成された分散体とを有する。アルミニウム母相にナノサイズの分散体が高分散することで、アルミニウムの結晶粒を微細化するため、アルミニウム基複合材料の強度やじん性を銅と同等のレベルまで高めることが可能となる。また、当該分散体は、分散体がアルミニウム母相におけるアルミニウムと反応することにより形成される。分散体が母相と反応していることで材料の均一性が確保されるため、材料の伸び及び導電率の低下を抑制することが可能となる。
次に、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料の製造方法について説明する。図2に示すように、まず、アルミニウム基複合材料の原料であるアルミニウム粉末と添加物とを秤量する。アルミニウム粉末としては、上述のように、導電性を高めるために純度が99質量%以上のアルミニウムを使用することが好ましい。また、添加物としては、上述のように、例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンブラック、炭化ホウ素(BC)及び窒化ホウ素(BN)等を用いることが好ましい。
秤量工程では、得られるアルミニウム基複合材料において、分散体の含有量が炭素量換算で例えば0.1〜2.0質量%となるように、アルミニウム粉末と添加物とを秤量する。
そして、秤量したアルミニウム粉末及び添加物を混合して、混合粉末を作製する。アルミニウム粉末と添加物との混合方法は特に限定されず、ミリングによる乾式法及びアルコール等で混合する湿式法の少なくともいずれか一方により混合することができる。
次に、混合したアルミニウム粉末及び添加物を圧粉成形することにより、圧粉体を作製する。この成形工程では、上記混合粉末に圧力を加えて押し固めることにより圧粉体を作製する。成形工程では、混合粉末中のアルミニウム粉末と添加物との隙間が最小になるように混合粉末が押し固められることが好ましい。
圧粉体の成形工程で混合粉末に圧力を加える方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、筒状の成形容器に混合粉末を投入した後、この容器内の混合粉末を加圧する方法が挙げられる。また、混合粉末に加える圧力は特に限定されず、アルミニウム粉末と添加物との隙間が最小になるように適宜調整することが好ましい。混合粉末に加える圧力としては、例えば、アルミニウム粉末を良好に成形することが可能な600MPaとすることができる。また、成形工程で混合粉末に圧力を加える処理は、例えば常温下で行うことができる。さらに、成形工程で混合粉末に圧力を加える時間は、例えば5〜60秒とすることができる。
次に、得られた圧粉体を焼結し、アルミニウム粉末と添加物とを反応させることにより、アルミニウム母相の内部で分散体を生成する。焼結工程では、アルミニウム粉末と添加物とが反応して分散体となる必要があることから、圧粉体の焼結温度は600℃以上とする。焼結温度が600℃未満の場合には、アルミニウム粉末と添加物との結合反応が十分に進行せず、得られるアルミニウム基複合材料の強度が不十分となる恐れがある。なお、焼結温度の上限は特に限定されないが、アルミニウムの溶融温度である660℃以下とすることが好ましく、630℃以下とすることがより好ましい。
圧粉体の焼結時間は特に限定されず、アルミニウム粉末と添加物とが反応する時間とすることが好ましい。具体的には、圧粉体の焼結時間は、例えば0.5〜5時間とすることが好ましい。また、圧粉体の焼結雰囲気は、アルミニウム粉末及び添加物の酸化を抑制するために、真空等の不活性雰囲気下で行う必要がある。
このような焼結工程により、アルミニウム母相の内部に分散体が分散したアルミニウム基複合材料を得ることができる。そして、得られたアルミニウム基複合材料を締結部材に加工しやすくするために、焼結工程にて得られた焼結体を押出加工することが好ましい。焼結体を押出加工することにより、締結部材の前駆体である棒材や板材等を得ることができる。
焼結体を押出加工する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、筒状の押出加工装置に焼結体を投入した後、焼結体を加熱して押し出す方法が挙げられる。焼結体の加熱は、焼結体が押出可能な温度である300℃以上となるように行うことが好ましい。このような押出加工を施すことにより、荒引線や板材などの素材を得ることができる。
本実施形態における製造方法において、アルミニウム粉末の平均粒子径(D50)は、0.25μm以上であることが好ましい。アルミニウム粉末の平均粒子径が0.25μm未満であっても、得られるアルミニウム基複合材料の強度を高めることは可能である。ただ、当該平均粒子径が0.25μm未満の場合には、アルミニウム粉末の表面における酸素量が増加し、締結部材として使用する際に導電率が低下する場合がある。つまり、アルミニウムは空気中の酸素と反応することにより、表面に緻密な酸化膜を形成するため、導電率が低下する場合がある。
図3(a)では、アルミニウムの導電率とアルミニウム内に含有される酸素量との関係を示す。また、図3(b)では、アルミニウム内に含有される酸素量とアルミニウム粉末の表面積との関係を示す。アルミニウム基複合材料を締結部材として使用する場合には、導電率が30%IACS以上にすることが好ましい。そのため、図3(a)より、アルミニウム内に含有する酸素量は、1.57質量%以下であることが好ましい。そして図3(b)より、アルミニウム内に含有する酸素量を1.57質量%以下とするためには、アルミニウム粉末の比表面積を17.45m/g以下とすることが好ましい。そのため、アルミニウム粉末の比表面積を17.45m/g以下とするためには、アルミニウム粉末の平均粉体径(D50)は0.25μm以上であることが好ましい。
アルミニウム粉末の平均粉体径の上限は特に限定されない。ただ、アルミニウム粉末の形状が略球状である場合には、アルミニウム粉末の平均粉体径は5μm以下であることが好ましい。当該平均粉体径が5μmを超える場合には、アルミニウム内に含有する酸素量が0.40質量%以下となり導電率が向上するため、締結部材として好適に使用できるアルミニウム基複合材料を得ることができる。ただ、当該平均粉体径が5μmを超える場合には、アルミニウム粉末の比表面積が減少するため、分散体の分散度が減少する。その結果、分散体を分散させたとしてもアルミニウムの結晶粒を微細し難くなり、得られる締結部材の強度が十分に向上しない可能性がある。
例えば、一般的に製造されている、溶融法によるAl−Mg−Si合金(6101−T6材)は、引張強さが220MPaであり、導電率が57%IACSである。そのため、常温環境下において、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料の引張強さをAl−Mg−Si合金以上とするためには、アルミニウム粉末の平均粉体径は5μm以下とすることが好ましい。
なお、アルミニウム粉末の形状が略球状であるとは、アルミニウム粉末のアスペクト比が1〜2の範囲内であることをいう。また、本明細書において、アスペクト比とは、粒子の顕微鏡像において、(最大長径/最大長径に直交する幅)で定義される粒子の形状を表す値をいう。
ただ、アルミニウム粉末の形状が扁平状である場合には、アルミニウム粉末を薄くすることで表面積が増え、粉末表面における分散体の分散度を向上させることができる。具体的には、粉体径が20μmの球状粉末を、厚さ1μm、長径72μmの扁平状に加工すれば、粉体径が3μmの球状粉末と同等の表面積となる。そのため、アルミニウム粉末の形状が扁平状である場合には、アルミニウム粉末の平均粉体径の上限は特に限定されない。なお、アルミニウム粉末の形状が扁平状であるとは、アルミニウム粉末の厚さに対する、最大長径の比(最大長径/厚さ)の比が10〜100の範囲内にあることをいう。また、アルミニウム粉末の平均粉体径、最大長径、最大長径に直交する幅及び厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定することができる。
アルミニウム粉末の形状を扁平状に加工する方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、φ5〜10μmのボールとアルミニウム粉末及び添加物とを遊星ボールミルのポットに投入し、回転処理することで得ることができる。
本実施形態に係るアルミニウム基複合材料の製造方法は、純度が99質量%以上のアルミニウム粉末と添加物とを混合して圧粉成形することにより、圧粉体を作製する工程を有する。さらに、当該製造方法は、圧粉体を600〜660℃の温度で加熱することにより、添加物をアルミニウム粉末におけるアルミニウムと反応させ、アルミニウム母相の内部に分散体を分散させる工程を有する。本実施形態の製造方法では、添加物は焼結工程にてアルミニウムと反応させてしまうため、煩雑な温度管理を行う必要がなく、製造工程を簡略化することが可能となる。
(締結部材)
次に、本実施形態の締結部材について説明する。本実施形態の締結部材は、上述のアルミニウム基複合材料を備えている。上述のように、アルミニウム基複合材料は、アルミニウム母相と、当該アルミニウム母相の内部に分散する分散体とを有しているため、強度やじん性を銅と同等のレベルまで高め、さらに伸び及び導電率の低下を抑制することができる。そのため、このようなアルミニウム基複合材料を締結部材として用いることにより、高温環境下でも高い導電率を維持しつつ、応力緩和を抑制し、強度を維持することができる。したがって、本実施形態の締結部材は、例えば180℃という高温環境下において、応力負荷状態で使用することが可能となる。
また、上述のアルミニウム基複合材料は、締結部材だけでなく導電部材にも使用することができる。上述のように、アルミニウム基複合材料は、強度やじん性を銅と同等のレベルまで高め、さらに伸び及び導電率の低下を抑制することができる。そのため、このようなアルミニウム基複合材料を導電部材として用いることにより、高温環境下でも高い導電率を維持しつつ、応力緩和を抑制し、強度を維持することができる。
このような締結部材としては、ボルト、ナット、ねじ、リベット、ピン等を挙げることができる。さらに導電部材としては、電気機器の間又は電気機器内部の部品の間を電気的に接続する、バスバー等の電気接続部品を挙げることができる。また、導電部材としては、電線やワイヤーハーネスの導体、及び電線等の導体に接続される端子を挙げることができる。
図4では、本実施形態の導電部材としてのバスバーの一例を示す。このようなバスバーを従来のアルミニウム合金で形成した場合、高温環境下では再結晶による軟化や時効析出処理により、当該合金の特性が変化する場合がある。そのため、このバスバーをボルト等の締結部材で締結する際、高温環境下や通電時の発熱によりバスバー10の締結部11に変形(クリープ変形)が生じる。その結果、連結具の締め付けトルクが低下して、連結具が緩んだり外れたりする可能性がある。
しかしながら、本実施形態の導電部材は、上述のアルミニウム基複合材料を使用しているため、高温環境下でも高い導電率を維持しつつ、応力緩和を抑制し、強度を維持することできる。したがって、高温環境下でも、バスバー10の締結部11におけるクリープ変形の発生を抑制することが可能となる。
図5では、本実施形態の締結部材及び導電部材を使用したヒューズユニットの一例を示す。ヒューズユニットは、車載のバッテリに直付けされて、車載の電装品等の負荷に電力を供給する部品である。
図5に示すように、ヒューズユニット20は、所定形状のバスバー21と、このバスバー21の所定の外周面を被覆する絶縁樹脂部25とを備えている。バスバー21には、バッテリ接続用端子部22、外部接続用端子部23が形成されている。バッテリ接続用端子部22及び外部接続用端子部23は、絶縁樹脂部25で被覆されずに露出されている。バッテリ接続用端子部22には、接続端子(図示せず)を介してバッテリポスト(図示せず)が接続される。外部接続用端子部23には、ボルト24が突設されている。そして、ボルト24に挿入した端子30の上からナット40を螺入し、ナット40とボルト24の締結力によって端子30を固定する。なお、端子30は、電線50の導体51に加締めるように接続されている。
そして、導電部材であるバスバー21及び端子30、並びに締結部材であるボルト24及びナット40に、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料を使用することができる。これにより、高い導電性を維持しつつも、応力緩和の発生を抑制し、固着力及び締結力を維持することが可能となる。
本実施形態の締結部材及び導電部材は、アルミニウム母相と、アルミニウム母相の内部に分散し、かつ、一部または全ての添加物がアルミニウム母相におけるアルミニウムと反応することにより形成された分散体とを有するアルミニウム基複合材料を備える。このように、アルミニウム基複合材料中に、炭化物及び窒化物の少なくとも一方からなる分散体を高密度で微細に分散させることにより、導電率及び延性を著しく低下させることなく、強度を向上させることが可能となる。また、アルミニウム基複合材料中の分散物はナノサイズであり、均一分散しているため、導電性が純アルミニウムよりも著しく低下しない。そのため、当該アルミニウム基複合材料を使用したバスバー、導体及び端子などの導電部材は高い導電性を有し、さらに高温環境下でも使用することが可能となる。
また、従来の純アルミニウム材料やAl−Mg−Si合金、Al−Mg合金は高温でのクリープ特性が不足していた。つまり、Al−Mg−Si合金やAl−Mg合金は、第二元素、第三元素が固溶しており、高温環境下で使用した場合、時効析出により当該合金の特性が変化する可能性があった。
これに対し、本実施形態のアルミニウム基複合材料は、第二元素が固溶していないため、第二元素が高温環境下で拡散し、特性が変化することがない。このため、従来材料であれば高温環境下で原子の拡散により応力緩和していたものが、本実施形態の複合材料を用いることで、応力緩和を抑制することができる。したがって、当該アルミニウム基複合材料を使用したボルトやナットなどの締結部材は、高温環境下での応力緩和の発生を抑制し、固着力及び締結力を維持することが可能となる。
また、本実施形態の締結部材及び導電部材は、180℃雰囲気下で1ks経過時点での応力緩和率が60%以下であるアルミニウム基複合材料を備えることが好ましい。アルミニウム基複合材料が180℃の高温環境下でも良好な耐応力緩和特性を有していることにより、高い固着力及び締結力を維持することができる。
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る締結部材について詳細に説明する。なお、第一実施形態と同一の構成について繰り返しの説明は省略する。
本実施形態の締結部材も、第一実施形態と同様に、アルミニウム母相と、アルミニウム母相の内部に分散し、かつ、一部または全ての添加物がアルミニウム母相におけるアルミニウムと反応することにより形成された分散体とを有するアルミニウム基複合材料を備える。ただ、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料は、アルミニウム母相がマグネシウムを0.01〜0.9質量%含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物であるアルミニウム合金である。
本実施形態に係るアルミニウム基複合材料は、アルミニウム母相として、アルミニウムとマグネシウムの合金(Al−Mg合金)を使用している。このようなAl−Mg合金を使用することにより、アルミニウム母相の内部に分散した添加物がAl−Mg合金と反応する。その結果、添加物がアルミニウムとマグネシウムの双方に反応して、三元系化合物を形成する。このような三元系化合物は、アルミニウム母相と分散体との界面に存在し、当該界面におけるアルミニウム母相と分散体との結合を強化する役割を果たす。そのため、アルミニウム母相と分散体との間の荷重伝達効率を向上させることができる。
また、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料も、内部に炭化物及び窒化物の少なくとも一方からなる分散体を高密度で微細に分散させているため、導電率及び延性を著しく低下させることなく、強度を向上させることが可能となる。その結果、当該アルミニウム基複合材料を使用した締結部材及び導電部材は高い導電性を有し、さらに高温環境下でも使用することが可能となる。また、当該アルミニウム基複合材料を使用した締結部材は、固着力及び締結力を長期間に亘り維持することが可能となる。
本実施形態に係るアルミニウム基複合材料において、添加物及び分散体は第一実施形態と同様とすることができる。また、アルミニウム母相における不可避不純物も、第一実施形態に記載のものを挙げることができる。
本実施形態に係るアルミニウム基複合材料の製造方法も第一実施形態と同様である。つまり、本実施形態に係るアルミニウム基複合材料の製造方法は、まず、Al−Mg合金の粉末と添加物とを混合して圧粉成形することにより、圧粉体を作製する。次に、圧粉体を600〜660℃の温度で加熱することにより、Al−Mg合金粉末におけるアルミニウム及びマグネシウムと添加物とを反応させ、アルミニウム母相の内部に分散体を分散させる。これにより、Al−Mg合金からなるアルミニウム母相の内部に、分散体が分散したアルミニウム基複合材料を得ることができる。
さらに、本実施形態の締結部材は、上述のアルミニウム基複合材料を用いれば、その他の態様は第一実施形態と同様とすることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
まず、得られるアルミニウム基複合材料における炭化アルミニウムの含有量が4.00質量%となるように、アルミニウム粉末とカーボンナノチューブとを秤量した。なお、アルミニウム粉末は、株式会社高純度化学研究所製、製品名ALE16PBを使用し、平均粉体径が20μmであった。また、カーボンナノチューブは、CNano Technology Limited製、製品名Flotube9000G2を使用した。
次に、秤量したアルミニウム粉末及びカーボンナノチューブを遊星ボールミルのポットに投入し、回転処理することにより、混合粉末を調製した。さらに、得られた混合粉末を金型に投入し、常温で600MPaの圧力を加えることにより、圧粉体を調製した。
得られた圧粉体を、電気炉を用いて、真空中630℃で300分間加熱することにより、本例の試料を調製した。なお、本例では、アルミニウム粉末とカーボンナノチューブの混合工程において遊星ボールミルを用いたため、アルミニウム粉末が扁平形状になった。
[実施例2]
アルミニウム粉末として、平均粉体径が3μmである、株式会社高純度化学研究所製、製品名ALE11PBを使用した。さらに、得られるアルミニウム基複合材料における炭化アルミニウムの含有量が4.84質量%となるように、アルミニウム粉末とカーボンナノチューブとを秤量した。これ以外は実施例1と同様にして、本例の試料を調製した。
[実施例3]
得られるアルミニウム基複合材料における炭化アルミニウムの含有量が3.16質量%となるように、アルミニウム粉末とカーボンナノチューブとを秤量した。これ以外は実施例2と同様にして、本例の試料を調製した。
[実施例4]
得られるアルミニウム基複合材料における炭化アルミニウムの含有量が0.40質量%となるように、アルミニウム粉末とカーボンナノチューブとを秤量した。これ以外は実施例2と同様にして、本例の試料を調製した。
[実施例5]
まず、得られるアルミニウム基複合材料における炭化アルミニウムの含有量が1.52質量%となるように、Al−Mg合金粉末とカーボンナノチューブとを秤量した。なお、Al−Mg合金粉末は、株式会社高純度化学研究所製のものを使用した。また、Al−Mg合金粉末は、Mg含有量が0.4質量%であり、さらに粉体径が24μmであった。カーボンナノチューブは、CNano Technology Limited製、製品名Flotube9000G2を使用した。
次に、秤量したAl−Mg合金粉末及びカーボンナノチューブを遊星ボールミルのポットに投入し、回転処理することにより、混合粉末を調製した。さらに、得られた混合粉末を金型に投入し、常温で600MPaの圧力を加えることにより、圧粉体を調製した。
得られた圧粉体を、電気炉を用いて、真空中630℃で300分間加熱することにより、本例の試料を調製した。
[実施例6]
まず、得られる微細結晶粒における、分散体としての炭化アルミニウムの含有量が4.00質量%となるように、純度99.9%のアルミニウム粉末とカーボンナノチューブとを秤量した。なお、アルミニウム粉末は、株式会社高純度化学研究所製、製品名ALE16PBを使用し、平均粉体径が20μmであった。また、カーボンナノチューブは、実施例1と同じものを使用した。
次に、秤量したアルミニウム粉末及びカーボンナノチューブを遊星ボールミルのポットに投入し、回転処理することにより、微細結晶粒前駆体を調製した。なお、この微細結晶粒前駆体を観察した結果、アルミニウム粉末は扁平形状であった。
得られた微細結晶粒前駆体と粗大結晶粒前駆体である純アルミニウム粉末とを、質量比で1:1となるように混合して、混合粉末を作製した。なお、粗大結晶粒前駆体である純アルミニウム粉末は、株式会社高純度化学研究所製、製品名ALE06PBを使用し、平均粉体径が106μm〜180μmであった。そして、得られた混合粉末を金型に投入し、常温で600MPaの圧力を加えることにより、圧粉体を調製した。
得られた圧粉体を、電気炉を用いて、真空中630℃で300分間加熱することにより、本例の試料を調製した。
[比較例1]
カーボンナノチューブを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、本例の試料を調製した。
[比較例2]
カーボンナノチューブを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にして、本例の試料を調製した。
[比較例3]
JIS1060−Oに規定の、溶融法によるアルミニウム展伸材を、そのまま本例の試料とした。
[評価]
(降伏応力、引張強さ、伸び、導電率、結晶粒径)
実施例及び比較例で得られた試料の、室温時における降伏応力、引張強さ及び伸びをJIS Z2241に準拠して測定した。また、各試料の、室温時における導電率をJIS H0505に準拠して測定した。さらに各試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、アルミニウム母相の結晶粒径を線分法により求めた。各実施例及び比較例の試料における降伏応力、引張強さ、伸び、導電率及び結晶粒径を、試料の組成と共に表1に示す。
表1より、本実施形態に係る実施例1乃至4は、比較例1及び3よりも引張強さを向上させることが可能となった。また、実施例1及び2並びに比較例1より、炭化アルミニウムの含有量を増やすことにより導電率は低下するが、引張強さを大幅に向上させることが可能となった。また、実施例3及び4並びに比較例1より、炭化アルミニウムの含有量を調整することにより、導電率を維持しつつも引張強さを向上させることが可能となった。
さらに、実施例5及び比較例2より、アルミニウム母相としてAl−Mg合金を用いた場合でも、炭化アルミニウムを含有させることにより、導電率を維持しつつも、降伏応力及び引張強さを向上させることが可能となった。
(焼鈍処理後の引張強さ、導電率)
まず、実施例6で得られた試料を押出加工することにより、直径7mmの押出材を得た。次に、当該押出材を伸線加工することにより、直径0.27mmの素線を得た。そして、当該素線を300℃で1時間焼鈍することにより、焼鈍材を得た。同様に、比較例1で得られた試料を押出加工することにより、直径7mmの押出材を得た。次に、当該押出材を伸線加工することにより、直径0.27mmの素線を得た。そして、当該素線を300℃で1時間焼鈍することにより、焼鈍材を得た。
上述のようにして得られた実施例6及び比較例1の押出材、素線及び焼鈍材に対し、JIS Z2241に準拠して引張強さを測定し、さらにJIS H0505に準拠して導電率を測定した。引張強さの測定結果を図6に示し、導電率の測定結果を図7に示す。なお、図6及び図7において、(a)は実施例6の素線の結果であり、(b)は実施例6の焼鈍材の結果であり、(c)は実施例6の押出材の結果である。また、図6及び図7において、(d)は比較例1の素線の結果であり、(e)は比較例1の焼鈍材の結果であり、(f)は比較例1の押出材の結果である。
図6に示すように、実施例6の試料は、300℃で焼鈍した後でも引張強さが200MPaを超えており、高い引張強さが維持できることが分かる。これに対し、比較例1の試料は、250℃で焼鈍した場合には引張強さが100MPaを大きく下回り、引張強さが大きく低下することが分かる。また、図7より、実施例6の試料は、300℃で焼鈍した後でも導電率が57%IACSを超えており、高い導電率を維持できることが分かる。
(電子顕微鏡観察)
図8では、実施例1の試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。図8より、実施例1のアルミニウム基複合材料は、アルミニウム母相1の内部に分散体2である炭化アルミニウムの粒子が高分散していることが確認できる。
(ラマン分光分析)
図9では、実施例1のアルミニウム基複合材料におけるラマン分光分析の結果を示す。図9の(1)は実施例1のアルミニウム基複合材料のスペクトルであり、(2)は炭素材料の一部がアルミニウムと反応していないアルミニウム基複合材料のスペクトルである。また、図9の(3)は、実施例1におけるアルミニウム粉末とカーボンナノチューブ(CNT)との圧粉体のスペクトルであり、(4)はカーボンナノチューブ単体のスペクトルである。図9より、実施例1のアルミニウム基複合材料は、炭化アルミニウム(Al)に係るピークは確認できるが、カーボンナノチューブのDバンドとGバンドのピークが確認できなかった。これに対し、(2)〜(4)では、カーボンナノチューブのDバンドとGバンドのピークが確認された。この結果から、実施例1のアルミニウム基複合材料では、炭素材料としてのカーボンナノチューブがアルミニウムと反応し、炭化アルミニウムに変化していることが分かる。
(クリープ特性)
まず、連続伸線機を用いて実施例1の試料を伸線し、φ0.32mmの素線を作製した。また、Al−Mg−Si合金(JIS A6061合金、T6処理)を同様に伸線し、φ0.32mmの素線を作製した。そして、得られた素線に対し、JIS Z2271:2010に準拠し、180℃でクリープ試験を行った。図10では、クリープ試験での時間と伸びの結果から得られた、クリープ伸びと時間との関係を示す。
図10に示すように、実施例1の試料を用いた素線は140000秒(38.9時間)を超えても、クリープ伸びが殆ど変化しないことが分かる。つまり、実施例1の試料は、180℃の高温環境下でも良好なクリープ特性を有していることが分かる。これに対し、Al−Mg−Si合金を用いた素線は、100000秒(27.8時間)を超えたあたりからクリープ伸びが増加しており、180℃の高温環境下ではクリープ特性が悪化することが分かる。
(応力緩和特性)
まず、連続伸線機を用いて実施例6の試料を伸線し、φ0.32mmの素線を作製した。また、Al−Mg−Si合金(JIS A6061合金、T6処理)を同様に伸線し、φ0.32mmの素線を作製した。そして、得られた素線に対し、株式会社島津製作所製エア式疲労・耐久試験システムADT−AV01K1S5を用いて、各試料の0.2%耐力の75〜80%を付与し、180℃で応力緩和試験を行った。図11では、応力緩和試験での時間と荷重測定の結果から得られた、応力緩和率と時間との関係を示す。
図11に示すように、実施例6の試料を用いた素線は、1000秒を超えても応力緩和率が40%以下であることが分かる。つまり、実施例6の試料は、180℃の高温環境下でも良好な耐応力緩和特性を有していることが分かる。これに対し、Al−Mg−Si合金を用いた素線は、試験開始当初から応力緩和率が増加しており、180℃の高温環境下では耐応力緩和特性が悪化することが分かる。
以上、本発明を実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
1 アルミニウム母相
2 分散体

Claims (4)

  1. アルミニウム母相と、前記アルミニウム母相の内部に分散し、かつ、一部または全ての添加物が前記アルミニウム母相におけるアルミニウムと反応することにより形成された分散体とを有するアルミニウム基複合材料を備え、導電性を有する締結部材。
  2. 前記添加物は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンブラック、炭化ホウ素及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
    前記分散体は、長径と短径との比(長径/短径)が1〜30であり、長径が0.01nm〜500nmであり、短径が0.01nm〜200nmである、請求項1に記載の締結部材。
  3. 前記アルミニウム母相は、マグネシウムを0.01〜0.9質量%含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物であるアルミニウム合金である、請求項1又は2に記載の締結部材。
  4. 180℃雰囲気下で1ks経過時点での応力緩和率が60%以下であるアルミニウム基複合材料を備える、締結部材。
JP2015213949A 2015-10-30 2015-10-30 締結部材 Active JP6749087B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015213949A JP6749087B2 (ja) 2015-10-30 2015-10-30 締結部材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015213949A JP6749087B2 (ja) 2015-10-30 2015-10-30 締結部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017082309A true JP2017082309A (ja) 2017-05-18
JP6749087B2 JP6749087B2 (ja) 2020-09-02

Family

ID=58712888

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015213949A Active JP6749087B2 (ja) 2015-10-30 2015-10-30 締結部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6749087B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019077901A (ja) * 2017-10-20 2019-05-23 矢崎総業株式会社 アルミニウム基複合材料及びそれを用いた電線並びにアルミニウム基複合材料の製造方法
WO2019245000A1 (ja) * 2018-06-21 2019-12-26 日立金属株式会社 アルミニウム基複合材
WO2019244999A1 (ja) * 2018-06-21 2019-12-26 日立金属株式会社 アルミニウム基複合材
WO2020105328A1 (ja) * 2018-11-21 2020-05-28 昭和電工株式会社 アルミニウム-炭素粒子複合材及びその製造方法
JP7488235B2 (ja) 2021-09-29 2024-05-21 矢崎総業株式会社 アルミニウム基複合部材、その製造方法及び電気接続部材
JP7525291B2 (ja) 2020-04-22 2024-07-30 矢崎総業株式会社 アルミニウム基複合線材及びそれを用いた電線並びにアルミニウム基複合線材の製造方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023550102A (ja) * 2020-11-19 2023-11-30 矢崎総業株式会社 バスバー用アルミニウム-炭素金属マトリックス複合体

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019077901A (ja) * 2017-10-20 2019-05-23 矢崎総業株式会社 アルミニウム基複合材料及びそれを用いた電線並びにアルミニウム基複合材料の製造方法
WO2019245000A1 (ja) * 2018-06-21 2019-12-26 日立金属株式会社 アルミニウム基複合材
WO2019244999A1 (ja) * 2018-06-21 2019-12-26 日立金属株式会社 アルミニウム基複合材
WO2020105328A1 (ja) * 2018-11-21 2020-05-28 昭和電工株式会社 アルミニウム-炭素粒子複合材及びその製造方法
JPWO2020105328A1 (ja) * 2018-11-21 2021-10-07 昭和電工株式会社 アルミニウム−炭素粒子複合材及びその製造方法
JP7342881B2 (ja) 2018-11-21 2023-09-12 株式会社レゾナック アルミニウム-炭素粒子複合材及びその製造方法
JP7525291B2 (ja) 2020-04-22 2024-07-30 矢崎総業株式会社 アルミニウム基複合線材及びそれを用いた電線並びにアルミニウム基複合線材の製造方法
JP7488235B2 (ja) 2021-09-29 2024-05-21 矢崎総業株式会社 アルミニウム基複合部材、その製造方法及び電気接続部材

Also Published As

Publication number Publication date
JP6749087B2 (ja) 2020-09-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6749087B2 (ja) 締結部材
JP6342871B2 (ja) アルミニウム基複合材料及びその製造方法
US11248279B2 (en) Aluminum-based composite material and method of manufacturing the same
CN109694970B (zh) 铝系复合材料、使用该铝系复合材料的电线以及铝系复合材料的制造方法
KR20130089665A (ko) 알루미늄 합금선 및 그것을 이용한 알루미늄 합금 연선, 피복 전선, 와이어 하네스
WO2018012208A1 (ja) アルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネス
US11130312B2 (en) Electrical wire and wire harness using the same
EP3736352A1 (en) Aluminum alloy wire and method for producing aluminum alloy wire
JP2016074950A (ja) 銅合金及びその製造方法
WO2016072304A1 (ja) 電線の製造方法、電線、及びワイヤーハーネス
US20230307154A1 (en) Aluminum-carbon metal matrix composites for busbars
JP5293996B2 (ja) 分散強化銅、分散強化銅の製造方法、及び電線用導体
JP7525291B2 (ja) アルミニウム基複合線材及びそれを用いた電線並びにアルミニウム基複合線材の製造方法
WO2020039711A1 (ja) 被覆電線、端子付き電線、銅合金線、銅合金撚線、及び銅合金線の製造方法
JP2013091816A (ja) 銅合金素材及びその製造方法
JP7488235B2 (ja) アルミニウム基複合部材、その製造方法及び電気接続部材
JP2009185320A (ja) 銅合金及びその製造方法
CN118389915A (zh) 一种高导电高强耐热铝合金材料及其制备方法和应用

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180919

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190821

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190924

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191113

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200324

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200515

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20200528

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200804

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200811

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6749087

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250