本発明のオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム骨格を有する下記式(1)またはクロコニウム骨格を有する下記式(2)で表されるものである。
式(1)および式(2)中、R1〜R4はそれぞれ独立して、下記式(3)で示される構造単位を表す。
式(3)中、環Aおよび環Bは、置換基を有していてもよい4〜9員の飽和または不飽和の炭化水素環を表し、X1およびX2はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、Y1およびY2はそれぞれ独立して、有機基または極性官能基を表し、*は式(1)中の4員環または式(2)中の5員環との結合部位を表し、mおよびnは、それぞれ独立して0〜3の整数を表し、mが2以上である場合、複数のY1は同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、複数のY2は同一であっても異なっていてもよい。
本発明のオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に式(3)で示される構造単位が結合しているため、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格からビスインドレニン骨格に至る広い範囲にπ電子が広がって吸収波長を長波長化することができ、800nmを超える波長域の光線を効果的に吸収することができる。本発明のオキソカーボン系化合物は、例えば、600〜1100nmの範囲で吸収が最大となる波長(極大吸収波長)よりも長波長側で透過率が50%となる波長(%T50)が800nm以上となることが好ましく、極大吸収波長が800nm以上となることがより好ましい。
スクアリリウム骨格を有する化合物(以下、「スクアリリウム化合物」と称する)とクロコニウム骨格を有する化合物(以下、「クロコニウム化合物」と称する)には、それぞれ、共役関係にある化合物が存在している場合がある。式(1)のスクアリリウム化合物と共役関係にある化合物としては、例えば、下記式(1a),(1b)で表される化合物が挙げられる。式(2)のクロコニウム化合物と共役関係にある化合物としては、例えば、下記式(2a)〜(2c)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式においては、式(3)の構造単位の一方(スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格から遠い方)のインドレニン骨格を省略して示している。本発明のオキソカーボン系化合物はこれら全ての共役関係にある化合物を含むものとし、具体的には、式(1)のスクアリリウム化合物には、下記式(1a),(1b)で表されるような共役関係にある化合物が含まれ、式(2)のクロコニウム化合物には、下記式(2a)〜(2c)で表されるような共役関係にある化合物も含まれる。
スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に結合する、式(3)で示される構造単位において、*は式(1)で示されるスクアリリウム骨格の4員環または式(2)で示されるクロコニウム骨格の5員環との結合部位を表している。
式(3)で示される構造単位は、ビスインドレニン骨格の一方のピロール環に環Aが縮環し、他方のピロール環に環Bが縮合した構造を有する。環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい4〜9員である飽和または不飽和炭化水素環を表す。環Aおよび環Bは、好ましくは5〜8員環であり、より好ましくは6〜8員環である。
環Aは、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に結合する炭素原子とピロール環のα位の炭素原子との間に二重結合を有するとともに、ピロール環のα位の炭素とβ位の炭素を含んで構成される不飽和炭化水素環である。環Aは、当該二重結合以外にも不飽和結合(好ましくは二重結合)を有していてもよく、好ましくは不飽和結合(二重結合)を1個のみ有する。本発明のオキソカーボン系化合物は、環Aを有することにより、分子どうしの会合が促進され、その結果、吸収波形のショルダーピークを大幅に低減することが可能となり、光学特性を改善することができる。さらに本発明のオキソカーボン系化合物は、環Aを有することによる分子歪みによってπ−π*遷移のバンドギャップが狭くなり、かつビスインドレニン骨格を有することによりπ電子系が広範囲に広がることができるため、吸収波長の長波長化を達成することができる。
環Aの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。中でも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましい。
環Bは、環Aが縮環しないピロール環のα位の炭素とβ位の炭素を含んで構成される飽和または不飽和炭化水素環である。環Bは、不飽和結合(好ましくは二重結合)を有する不飽和炭化水素環であってもよく、不飽和結合を有しない飽和炭化水素環であってもよい。環Bの構造としては、環Aで例示したシクロアルケン構造や、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等のシクロアルカン構造が挙げられる。環Bは芳香族炭化水素環であってもよく、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等が挙げられる。なお、製造容易性の点から、環Bとしては、飽和炭化水素環(シクロアルカン構造)であることが好ましい。
環Aおよび/または環Bは置換基を有していてもよい。具体的には環Aは置換基Z1を有していてもよく、環Bは置換基Z2を有していてもよい。置換基Z1と置換基Z2は、同一であっても異なっていてもよい。置換基Z1と置換基Z2としては、有機基または極性官能基が挙げられる。
環Aに結合していてもよい置換基Z1の数は0〜6であり、かつ環Aの構成員数から3を引いた値以下であることが好ましい。環Bに結合していてもよい置換基Z2の数は0〜6であり、かつ環Bの構成員数から2を引いた値以下であることが好ましい。置換基Z1の数が2以上である場合、あるいは置換基Z2の数が2以上である場合、複数の置換基Z1は同一であっても異なっていてもよく、複数の置換基Z2は同一であっても異なっていてもよい。この場合、複数の置換基Z1は、各々別の炭素原子に結合していてもよいし、2個の置換基Z1が1個の炭素原子に結合していてもよい。同様に、複数の置換基Z2は、各々別の炭素原子に結合していてもよいし、2個の置換基Z2が1個の炭素原子に結合していてもよい。置換基Z1と置換基Z2の数はそれぞれ、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは0〜3の整数であり、さらに好ましくは0〜2の整数である。
置換基Z1,Z2の有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミド基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO2R)、カルボキシ基(カルボン酸基)、ベンゾチアゾール基、ハロゲノアルキル基、シアノ基等が挙げられる。また極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の脂環式アルキル基;等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6であり、特に脂環式アルキル基の場合には3以上が好ましい。前記アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有する置換基としては、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
前記アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)としては、例えば、メチルチオオキシ基(メチルチオ基)、エチルチオオキシ基(エチルチオ基)、プロピルチオオキシ基(プロピルチオ基)、ブチルチオオキシ基(ブチルチオ基)、ペンチルチオオキシ基(ペンチルチオ基)、ヘキシルチオオキシ基(ヘキシルチオ基)、ヘプチルチオオキシ基(ヘプチルチオ基)、オクチルチオオキシ基(オクチルチオ基)、ノニルチオオキシ基(ノニルチオ基)、デシルチオオキシ基(デシルチオ基)、ウンデシルチオオキシ基(ウンデシルチオ基)、ドデシルチオオキシ基(ドデシルチオ基)、トリデシルチオオキシ基(トリデシルチオ基)、テトラデシルチオオキシ基(テトラデシルチオ基)、ペンタデシルチオオキシ基(ペンタデシルチオ基)、ヘキサデシルチオオキシ基(ヘキサデシルチオ基)、ヘプタデシルチオオキシ基(ヘプタデシルチオ基)、オクタデシルチオオキシ基(オクタデシルチオ基)、ノナデシルチオオキシ基(ノナデシルチオ基)、イコシルチオオキシ基(イコシルチオ基)等が挙げられる。アルキルチオオキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルキルチオオキシ基中のアルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等の無置換アルコキシカルボニル基の他、トリフルオロメチルオキシカルボニル基等の置換アルコキシカルボニル基が挙げられる。ここで置換基としては、ハロゲノ基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜5である。前記アルコキシカルボニル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
前記アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、メトキシメチルスルホニル基、シアノメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基の置換または無置換のアルキルスルホニル基等が挙げられる。アルキルスルホニル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルキルスルホニル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ペンタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、より好ましくは6〜15である。前記アリール基は置換基を有していてもよく、アリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基等が挙げられる。前記アラルキル基は置換基を有していてもよく、アラルキル基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ピレニルオキシ基、インデニルオキシ基、アズレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、クオーターフェニルオキシ基、ペンタレニルオキシ基、ヘプタレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記アリールチオオキシ基(アリールチオ基)としては、例えば、フェニルチオオキシ基、ビフェニルチオオキシ基、ナフチルチオオキシ基、アントリルチオオキシ基、フェナントリルチオオキシ基、ピレニルチオオキシ基、インデニルチオオキシ基、アズレニルチオオキシ基、フルオレニルチオオキシ基、ターフェニルチオオキシ基、クオーターフェニルチオオキシ基、ペンタレニルチオオキシ基、ヘプタレニルチオオキシ基、ビフェニレニルチオオキシ基、インダセニルチオオキシ基、アセナフチレニルチオオキシ基、フェナレニルチオオキシ基等が挙げられる。アリールチオオキシ基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基等の置換または無置換のフェニルオキシカルボニル基;1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基等の置換または無置換のナフチルオキシカルボニル基;等が挙げられる。アリールオキシカルボニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、2−メトキシフェニルスルホニル基、2−ブトキシフェニルスルホニル基、2−フルオロフェニルスルホニル基、3−メチルフェニルスルホニル基、3−クロロフェニルスルホニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基、3−シアノフェニルスルホニル基、3−ニトロフェニルスルホニル基、3−フルオロフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、4−フルオロフェニルスルホニル基、4−シアノフェニルスルホニル基、4−メトキシフェニルスルホニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルホニル基等の置換または無置換のフェニルスルホニル基;1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基等の置換または無置換のナフチルスルホニル基;等が挙げられる。アリールスルホニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記アリールスルフィニル基としては、例えば、フェニルスルフィニル基、2−クロロフェニルスルフィニル基、2−メチルフェニルスルフィニル基、2−メトキシフェニルスルフィニル基、2−ブトキシフェニルスルフィニル基、2−フルオロフェニルスルフィニル基、3−メチルフェニルスルフィニル基、3−クロロフェニルスルフィニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルフィニル基、3−シアノフェニルスルフィニル基、3−ニトロフェニルスルフィニル基、4−メチルフェニルスルフィニル基、4−フルオロフェニルスルフィニル基、4−シアノフェニルスルフィニル基、4−メトキシフェニルスルフィニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルフィニル基等の置換または無置換のフェニルスルフィニル基;1−ナフチルスルフィニル基、2−ナフチルスルフィニル基等の置換または無置換のナフチルスルフィニル基;等が挙げられる。アリールスルフィニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記ヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。ヘテロアリール基の炭素数は、2〜20が好ましく、より好ましくは3〜15である。
前記アミド基(−NHCOR)としては、Rが炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ハロゲン化炭化水素基であるもの等が挙げられる。
前記スルホンアミド基(−NHSO2R)としては、Rが炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ハロゲン化炭化水素基であるもの等が挙げられる。
前記ハロゲノアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、6−フルオロヘキシル基、4−フルオロシクロヘキシル基等のモノハロゲノアルキル基;ジクロロメチル基等のジハロゲノアルキル基;1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−プロピル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ブチル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基等のトリハロメチル単位を有するアルキル基;トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基等のパーハロゲノアルキル基;等が挙げられる。ハロゲノアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。ハロゲノアルキル基のハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
前記ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
置換基Z1,Z2の有機基または極性官能基としては、上記の中でも、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、アリール基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アリールオキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基、水酸基が好ましく、アルキル基または水酸基がより好ましく、これによりオキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めやすくなる。この場合、アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2である。置換基Z1と置換基Z2としては、具体的には、メチル基、エチル基、水酸基等が好ましく挙げられる。また、環Aが置換基Z1を有しないこと、および/または、環Bが置換基Z2を有しないことも、好ましい態様の一つである。
環Aの一部を構成するピロール環のβ位の炭素原子には、水素原子、有機基または極性官能基が結合し(式(3)におけるX1)、環Bの一部を構成するピロール環のβ位の炭素原子には、水素原子、有機基または極性官能基が結合している(式(3)におけるX2)。式(3)中、置換基X1,X2の有機基と極性官能基としては、置換基Z1,Z2で例示した有機基や極性官能基が挙げられる。中でも、式(3)のX1,X2としては、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アリールオキシカルボニル基が好ましく、アルキル基またはアリール基がより好ましく、これにより、オキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めやすくなる。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜8である。X1,X2がアルキル基またはアリール基である場合、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
式(3)において、ビスインドレニン骨格に含まれるビフェニル骨格中、一方のベンゼン環には置換基Y1が結合していてもよく、他方のベンゼン環には置換基Y2が結合していていもよい。置換基Y1,Y2は、それぞれ独立して有機基または極性官能基を表し、mおよびnは、それぞれ独立して0〜3の整数を表し、mが2以上である場合、複数のY1は同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、複数のY2は同一であっても異なっていてもよい。
置換基Y1,Y2の有機基または極性官能基としては、具体的には、置換基Z1,Z2の有機基や極性官能基として例示した置換基が挙げられる。また、置換基Y1,Y2は、式(4):−CH=CH−Ra1(式(4)中、Ra1は、脂肪族炭化水素基、アリール基またはヘテロアリール基を表す)で表されるエチレン含有基や、式(5):−CH=N−Ra2(式(5)中、Ra2は、置換基を有していてもよいアミノ基を表す)で表されるイミン含有基であってもよく、これによりオキソカーボン系化合物の吸収波長の長波長化を図ることができる。
式(4)中、Ra1の脂肪族炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは不飽和である。このような脂肪族炭化水素基としては、−(CH=CH)k−(kは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数である)で表される繰り返し単位を有する基が好ましく、例えばビニル基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20のものが好ましく、より好ましくは1〜10のものが挙げられる。式(4)中、Ra1のアリール基とヘテロアリール基としては、置換基Z1,Z2で例示したアリール基とヘテロアリール基が挙げられる。
式(5)中、Ra2のアミノ基は、置換または無置換のいずれであってもよい。置換基を有するアミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基等が挙げられる。Ra2のアミノ基に結合するアルキル基やアリール基としては、置換基Z1,Z2で例示したアルキル基やアリール基が挙げられる。
置換基Y1,Y2の有機基または極性官能基としては、上記の中でも、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基、ハロゲノ基、アリール基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アリールオキシカルボニル基(エステル基)、シアノ基、ニトロ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基、ハロゲノ基、アリール基がより好ましく、これによりオキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めたり、オキソカーボン系化合物の製造が容易になる。この場合、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2であり、アリール基の炭素数は6〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。
式(3)の構造単位において、環Aを含むインドレニン骨格のベンゼン環と環Bを含むインドレニン骨格のベンゼン環は、単結合を介して互いにどの位置に結合していてもよいが、オキソカーボン系化合物のπ電子を距離的により広い範囲に広げ、吸収波長の長波長化を図りやすくする点から、式(3)の構造単位は、下記式(3−1)〜式(3−4)で示される構造単位から選ばれるものであることが好ましい。すなわち、式(1)および式(2)のR1〜R4は、それぞれ独立して、下記式(3−1)〜式(3−4)で示される構造単位から選ばれることが好ましい。なお、下記式(3−1)〜式(3−4)中、環A、環B、X1、X2、Y1、Y2、mおよびnは上記と同じ意味を表す。
中でも、オキソカーボン系化合物の構造異性体の生成を抑え、単一のオキソカーボン系化合物を得ることが容易になる点から、式(1)および式(2)のR1〜R4は、それぞれ独立して、式(3−1)で示される構造単位であることが好ましい。式(3−1)で示される構造単位では、ピロール環を構成する窒素原子がベンゼン環の4位と4’位に位置することとなる。なお、上記式(3−1)で示される構造単位は、下記式(3−1’)で表される構造単位と同一の構造と見なす。式(3−2)〜式(3−4)で示される構造単位についても同様である。
式(3)および式(3−1)〜式(3−4)の構造単位中、ビフェニル骨格の2位、2’位、6位および6’位には水素原子が結合していることが好ましい。すなわち、ビスインドレニン骨格のベンゼン環同士の結合位置に対するオルト位には、置換基が結合せずに水素原子が結合していることが好ましい。これにより、式(3)および式(3−1)〜式(3−4)で表される構造が立体的に混雑せず、構造的に安定化しやすくなる。この場合、置換基Y1,Y2の数を表すmおよびnは、0または1であることが好ましい。なお、ビフェニル骨格の各位置は下記の構造式に基づき定められる。
本発明のオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に式(3)で示される構造単位が結合しているため、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格からビスインドレニン骨格に至る広い範囲にπ電子が広がって吸収波長が長波長化し、800nmを超える波長域の光線を効果的に吸収することができる。そのため、本発明のオキソカーボン系化合物は、暗視用撮像素子の光学フィルタに適用することにより、近赤外領域(例えば、800〜1000nm)における光学特性の入射角度依存性を低減し、視野角度を改善することができる。また本発明のオキソカーボン系化合物は、可視光領域における色変化が小さく、よりニュートラルグレーに近い色目を発現することができるため、可視光線を受光する一般の撮像装置に適用しても、画像の色味の変化を抑えることができる。例えば、フタロシアニン系化合物の中には800nm前後に極大吸収波長を有するものもあるが、フタロシアニン系化合物は450nm付近以下の波長域に吸収ピークを有するため、フタロシアニン系化合物を含有する光学フィルタは緑色に着色されたものとなり、可視光領域での適用が制限される。しかし、本発明のオキソカーボン系化合物によれば、昼夜兼用の監視カメラ等の撮像装置に好適に適用することができる。
本発明のオキソカーボン系化合物は、例えば、下記式(6)で表されるビスインドレニン化合物を、スクアリン酸またはクロコン酸と反応させることにより製造することができる。なお、下記式(6)中、環A、環B、X1、X2、Y1、Y2、mおよびnは、上記の式(3)における意味と同じである。
原料として用いるビスインドレニン化合物は、ビフェニル骨格のそれぞれのベンゼン環にアミノ基が結合したジアミノビフェニル化合物を亜硝酸ナトリウムで酸化しジアゾニウム塩とし、これを還元することによりビスヒドラジン塩酸塩を得て、シクロアルカノンと反応させることにより合成することができる。このとき、2位に置換基を有するシクロアルカノンを用いることにより、X1やX2に当該置換基を導入することができ、また2位以外の位置に置換基を有するシクロアルカノンを用いれば、環Aおよび環Bに任意の置換基を導入することができる。置換基Y1とY2は、ビフェニル骨格のベンゼン環に任意の置換基を有するジアミノビフェニル化合物を用いることにより、導入することができる。
スクアリン酸またはクロコン酸とビスインドレニン化合物との反応において、ビスインドレニン化合物の使用量は、スクアリン酸またはクロコン酸に対し、1倍mol以上が好ましく、より好ましくは1.5倍mol以上であり、さらに好ましくは2倍mol以上であり、また5倍mol以下が好ましく、より好ましくは4倍mol以下であり、さらに好ましくは3倍mol以下である。
スクアリン酸またはクロコン酸とビスインドレニン化合物との反応は、溶媒存在下で実施することが好ましい。使用できる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;THF、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記溶媒の使用量(合計)は、スクアリン酸またはクロコン酸に対して、1質量倍以上が好ましく、5質量倍以上がより好ましく、10質量倍以上がさらに好ましく、また100質量倍以下が好ましい。
スクアリン酸またはクロコン酸とビスインドレニン化合物との反応において、反応温度は適宜設定すればよく、例えば30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、また170℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。当該反応は還流状態で行うことが好ましい。反応時間は特に限定されず、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、また24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。反応時の雰囲気は、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気とすることが好ましい。
スクアリリウム化合物は、公知の合成手法を適宜採用し、ビスインドレニン化合物とスクアリン酸とを反応させることによって合成することができる。例えば、次の論文に記載の合成法を参考にしてスクアリリウム化合物を合成することができる:Serguei Miltsov et al., “New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines”, Tetrahedron Letters, Vol.40, Issue 21, p.4067-4068 (1999)。
クロコニウム化合物の合成方法は特に限定されないが、公知の合成手法を適宜採用し、ビスインドレニン化合物とクロコン酸とを反応させることによって合成できる。例えば、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載されている方法を参考にしてクロコニウム化合物を合成することができる。
上記の反応により得られたオキソカーボン系化合物は、必要に応じて、ろ過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製することができる。得られたオキソカーボン系化合物の化学構造は、質量分析法、単結晶X線構造解析法、フーリエ変換赤外分光法、核磁気共鳴分光法などの公知の分析方法により解析することができる。
本発明のオキソカーボン系化合物は、樹脂成分と混合して、樹脂組成物とすることができる。本発明の樹脂組成物は、本発明のオキソカーボン系化合物と樹脂成分とを含むものである。本発明の樹脂組成物は、本発明のオキソカーボン系化合物を含有しているため、800nmを超える波長域の光線を効果的に吸収することができる。本発明の樹脂組成物は、フィルムに成形したりすることで、暗視用撮像素子の光学フィルタに好適に適用することができ、これにより、近赤外領域における光学特性の入射角度依存性が低減され、視野角度が改善された光学フィルタとすることができる。また、樹脂組成物を板状に成形して、暗視グラス等を作製することもできる。なお本発明において、「暗視用」とは、暗視専用を意味するものではなく、例えば可視光下でも使用可能なものも含まれる。
樹脂組成物に含まれるオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム化合物であってもよいし、クロコニウム化合物であってもよいし、両者が含まれていてもよい。樹脂組成物に含まれるオキソカーボン系化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明のオキソカーボン系化合物は一種の色素と見なすことができるが、本発明の樹脂組成物は、本発明のオキソカーボン系化合物とともに他の色素を含有していてもよい。樹脂組成物に含まれていてもよい色素としては、例えば、本発明のオキソカーボン系化合物以外のスクアリリウム系色素やクロコニウム系色素、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、コリン類等)、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素、ジインモニウム系色素、サブフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ジピロメテン系色素等が挙げられる。これら他の色素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の樹脂組成物が他の色素をも含有する場合、他の色素の含有量は、本発明のオキソカーボン系化合物と他の色素の合計100質量%に対し、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは、他の色素を実質的に含まないことである。
樹脂組成物中の本発明のオキソカーボン系化合物の含有量は、所望の光学特性を発揮させる点から、樹脂組成物の固形分100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、樹脂組成物の成形性や成膜性等を高める点から、樹脂組成物中の本発明のオキソカーボン系化合物の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。樹脂組成物が他の色素も含有する場合は、本発明のオキソカーボン系化合物と他の色素との合計含有量が上記範囲にあることが好ましい。
樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、公知の樹脂を用いることができる。樹脂成分としては、透明性が高く、本発明のオキソカーボン系化合物を溶解または分散できるものが好ましい。他の色素を併用する場合は、樹脂成分は、他の色素も溶解または分散できるものが好ましい。このような樹脂成分を選択することにより、透過させたい波長域における高透過率と、遮断したい波長域における高吸収性を両立させることができる。
樹脂成分としては、重合が完結した樹脂のみならず、樹脂原料(樹脂の前駆体、当該前駆体の原料、樹脂を構成する単量体等を含む)であって、樹脂組成物を成形する際に重合反応または架橋反応して樹脂に組み込まれるものも用いることができる。本発明においては、いずれの樹脂も樹脂成分に含まれる。なお後者の場合は、重合反応で得られた反応液中に存在する、未反応物、反応性末端官能基、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等により、オキソカーボン系化合物の構造の一部または全部が分解してしまうこともあり得る。従って、そのような懸念がある場合には、重合が完結した樹脂にオキソカーボン系化合物を配合して、樹脂組成物を形成することが望ましい。
樹脂成分としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、ポリシクロオレフィン樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ブチラール樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(例えば、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN)等)等が挙げられる。
樹脂成分は透明性が高いことが好ましく、これにより樹脂組成物を光学用途に好適に適用しやすくなる。樹脂成分は、例えば、厚さ0.1mmでの全光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。樹脂成分の前記全光線透過率の上限は特に限定されず、全光線透過率は100%以下であればよいが、例えば95%以下であってもよい。全光線透過率は、JIS K 7105に基づき測定する。
樹脂成分はガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましく、これにより、樹脂組成物やこれから得られる各種成形体の耐熱性を高めることができる。樹脂成分のガラス転移温度は、例えば、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。樹脂成分のガラス転移温度の上限は特に限定されないが、樹脂組成物の成形加工性を確保する点から、例えば380℃以下が好ましい。
樹脂組成物は、射出成形等の成形に用いることのできる熱可塑性樹脂組成物であってもよく、スピンコート法や溶媒キャスト法等により塗工できるよう塗料化された樹脂組成物であってもよい。
樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である場合は、当該樹脂組成物を、射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形等をすることにより成形品を得ることができる。この方法では、樹脂成分として熱可塑性樹脂を用い、当該熱可塑性樹脂にオキソカーボン系化合物を配合し、加熱成形することにより成形品が得られる。例えば、ベース樹脂の粉体またはペレットにオキソカーボン系化合物を添加し、150℃〜350℃程度に加熱し、溶解させた後、成形するとよい。成形品の形状は特に限定されるものではないが、厚さ200μm以下のフィルムや厚さ200μm超の板状物等の面状成形体;異形品等の成形体等が挙げられる。また樹脂を混練する際に、紫外線吸収剤、可塑剤等、通常の樹脂成形に用いる添加剤を加えてもよい。
樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、オキソカーボン系化合物を含む液状またはペースト状の樹脂組成物を、透明基板(例えば、樹脂板、フィルム、ガラス板等)上に塗工することで、厚さ200μm以下のフィルムや、厚さ200μm超の板状物等の面状成形体を形成することができる。塗料化された樹脂組成物としては、例えば、オキソカーボン系化合物を、樹脂を含む溶媒(溶剤)に溶解させて塗料化したものや、オキソカーボン系化合物を数μm以下に微粒化して樹脂のエマルジョン中に分散したもの等が挙げられる。
樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、樹脂成分としては、有機溶剤に可溶な溶剤可溶性樹脂を用いることが好ましい。なお溶剤可溶性樹脂とは、有機溶剤に可溶な樹脂を意味し、有機溶剤100質量部に対し、1質量部以上溶解する樹脂が好ましい。樹脂成分が溶剤可溶性樹脂であれば、例えばスピンコート法や溶媒キャスト法等により成膜することで、厚みの薄いフィルムを容易に作製することができる。溶剤可溶性樹脂は、架橋反応(硬化反応)することが可能な反応性基(例えば、エポキシ基やオキセタン環、エチレンスルフィド基等の開環重合性基や、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基および/または付加硬化性基)を有するものであってもよい。
溶剤可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐光性に優れる観点から、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂が好ましい。
ポリイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にイミド結合を含む重合体であり、例えば、テトラカルボン酸2無水物とジアミンとを重合させてポリアミド酸を得て、これを脱水・環化(イミド化)させることにより製造することができる。ポリアミド樹脂としては、芳香族環がイミド結合で連結された芳香族ポリイミドを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、デュポン社製のカプトン(登録商標)、三井化学社製のオーラム(登録商標)、サンゴバン社製のメルディン(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI3000シリーズ等を用いることができる。
ポリアミドイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合とイミド結合を含む重合体である。ポリアミドイミド樹脂は、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のトーロン(登録商標)、東洋紡社製のバイロマックス(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI5000シリーズ等を用いることができる。
フッ素化芳香族ポリマーは、1以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位を有する重合体であり、これらの中でも、1以上のフッ素原子を有する芳香族環とエーテル結合とを含む繰り返し単位を必須的に含む重合体であることが好ましい。フッ素化芳香族ポリマーは、例えば、特開2008−181121号公報に記載されたものを用いることができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有する重合体であり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する樹脂が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系樹脂は主鎖に環構造を有するものも好ましく、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、マレイミド環構造等のカルボニル基含有環構造;オキセタン環構造、アゼチジン環構造、テトラヒドロフラン環構造、ピロリジン環構造、テトラヒドロピラン環構造、ピペリジン環構造等のカルボニル基非含有環構造が挙げられる。カルボニル基含有環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2004−168882号公報、特開2008−179677号公報、国際公開第2005/54311号、特開2007−31537号公報等に記載されたものを用いることができる。
ポリスルホン樹脂は、芳香族環とスルホニル基(−SO2−)と酸素原子とを含む繰り返し単位を有する重合体である。ポリスルホン樹脂は、例えば、住友化学社製のスミカエクセル(登録商標)PES3600PやPES4100P、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のUDEL(登録商標)P−1700等を用いることができる。
シクロオレフィン系樹脂は、モノマー成分の少なくとも一部としてシクロオレフィンを用い、これを重合して得られる重合体であり、主鎖の一部に脂環構造を有するものであれば特に限定されない。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプラスチック社製のトパス(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)およびゼオノア(登録商標)、JSR社製のアートン(登録商標)等を用いることができる。
エポキシ系樹脂は、エポキシ化合物(プレポリマー)を硬化剤や硬化触媒の存在下で架橋化することで硬化させることができる樹脂である。エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物等が挙げられ、例えば、大阪ガスケミカル社製のフルオレンエポキシ(オグソール(登録商標)PG−100)、三菱化学社製のビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)828EL)や水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)YX8000)、ダイセル社製の脂環式液状エポキシ化合物(セロキサイド(登録商標)2021P)等を用いることができる。
樹脂組成物は、溶媒(溶剤)を含有するものであってもよく、例えば、樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、溶媒を含むことにより樹脂組成物の塗工が容易になる。溶媒としては、有機溶剤を用いることが好ましく、例えば、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。
溶媒の含有量としては、樹脂組成物100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、また100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。溶媒の含有量をこのような範囲内に調整することにより、オキソカーボン系化合物濃度の高い樹脂組成物を得ることが容易になる。
なお、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等は、オキソカーボン系化合物を分解するおそれがあるため、使用量は少ない方が好ましい。そのためアミド類の含有量は、樹脂組成物100質量%中、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がさらにより好ましく、0質量%が特に好ましい(すなわち、アミド類を含まない)。
樹脂組成物は、例えば、350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物(紫外線吸収剤)を含んでいてもよい。これらの化合物の存在により、350〜400nm波長域の光に起因する樹脂組成物の劣化を抑制することができる。350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を併用する場合、当該化合物としては、例えば、BASF社製のTINUVIN(登録商標)シリーズを用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、分散剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、密着性向上剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
本発明の樹脂組成物は、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途で用いられるフィルタ形成用の樹脂組成物として好ましく使用できる。本発明の樹脂組成物は、特に暗視用撮像素子の光学フィルタに好適に適用することができる。本発明の光学フィルタによれば、近赤外領域(例えば、800〜1000nm)における光学特性の入射角度依存性が低減され、視野角度が改善された暗視用撮像素子に適した光学フィルタとすることができる。
このようなフィルタは、本発明の樹脂組成物を射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形、溶媒キャスト法などの公知の方法で面状に成形することにより得ることができる。得られた面状成形体は、単層の樹脂成形体からフィルタを形成してもよく、支持体と一体化されてフィルタが形成されてもよい。
支持体と一体化されたフィルタは、例えば、樹脂組成物を、支持体表面(または、支持体と樹脂層との間にバインダー層等の他の層を有する場合は、当該他の層の表面)にスピンコート法や溶媒キャスト法により塗布し、乾燥または硬化することにより形成することができる。また、支持体に対して、樹脂組成物から形成された面状成形体を熱圧着することによりフィルタを形成してもよい。
樹脂組成物から形成された樹脂層は、支持体の一方面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。樹脂層の厚さは特に限定されないが、所望の近赤外線カット性能を確保し、かつ薄型化を実現する点から、例えば0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、また15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましく、3μm以下が特に好ましい。
支持体としては、樹脂板、樹脂フィルム、ガラス板等の透明基板を用いることが好ましい。支持体に用いられる樹脂板または樹脂フィルムは、例えば、上記に説明した樹脂成分から形成されたものが好ましく用いられる。支持体としてガラス板を用いる場合は、支持体と樹脂層の間に、例えばシランカップリング剤から形成されたバインダー層を設けることが好ましい。これにより樹脂層とガラス支持体との密着性を高めることができる。なお、樹脂層を形成する樹脂組成物に、密着性向上剤としてシランカップリング剤を含めるようにしても、樹脂層とガラス支持体との密着性を高めることができる。
本発明の樹脂組成物から光学フィルタを形成する場合、光学フィルタは、蛍光灯等の映り込みを低減する反射防止性や防眩性を有する層、傷付き防止性能を有する層、その他の機能を有する透明基材等を有していてもよい。
本発明の光学フィルタは、樹脂層上に近赤外線反射膜が設けられていることが好ましい。近赤外線反射膜は、樹脂層よりも入光側に設けられていることが好ましい。近赤外線反射膜としては、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化スズを少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜等を用いることができる。光学フィルタに近赤外線反射膜が設けられていれば、光学フィルタの透過光から近赤外線をよりカットすることができる。なお、近赤外線反射膜は、紫外線反射機能を同時(同膜)に含んでいてもよい。
近赤外線反射膜の中では、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を用いるのが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7〜2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素を含有ドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.2〜1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
本発明の光学フィルタは、暗視用撮像素子に特に好適に用いられる。撮像素子は、固体撮像素子やイメージセンサチップとも称され、被写体の光を電気信号等に変換して出力する電子部品である。撮像素子は、通常、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサ)を有し、レンズを有していてもよい。暗視用撮像素子は、監視カメラ等に用いることができるのはもちろんのこと、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、表示素子(LED等)等の一般の撮像装置にも用いることができる。撮像素子は、本発明の光学フィルタを1または2以上含み、必要に応じて、さらに他のフィルタ(例えば、可視光線カットフィルタ、赤外線カットフィルタ、紫外線カットフィルタ等)を有していてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(1)化合物の合成
(1−1)合成例1(スクアリリウム化合物1の合成)
300mLの4口フラスコに塩酸60mLを入れ、フラスコ内の温度を−10℃以下に冷却し、フラスコ内の温度が0℃を超えないようにしながら、o−トリジン5.00g(0.023mol)を加えて溶解させた。発熱が収まった後に、フラスコ内の温度を−10℃以下に維持したまま、亜硝酸ナトリウム3.32g(0.048mol)を蒸留水22gに溶かした溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに塩化スズ・2水和物52.13g(0.231mol)を塩酸52mLに溶かした溶液を、フラスコ内の温度が0℃を超えないように1時間かけて滴下し、反応を進行させた。反応終了後、ろ別して得たケーキを真空乾燥機を用いて60℃で12時間乾燥し、(3,3’−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル)ビスヒドラジン塩酸塩を7.0g得た。o−トリジンに対する収率:96.1mol%であった。
次いで、50mLの4口フラスコに、上記で得られた(3,3’−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル)ビスヒドラジン塩酸塩7.84g(0.025mol)、2−メチルシクロオクタノン6.97g(0.050mol)、溶媒として1−ブタノール60gを仕込み、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、60℃にて4時間反応させて、ビスインドレニン化合物を得た。反応終了後、ビスインドレニン化合物を含む溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、得られたろ液を300mLの4口フラスコに移した。そこへスクアリン酸1.89g(0.017mol)とトルエン80gを加えて、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、かつディーンスターク装置を用いて溶出してくる水を取り除きながら、還流条件にて6時間反応させた。反応終了後、得られた反応液をエバポレーターで濃縮し、得られた固形物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製し、精製された単離物をさらにメタノール中で再結晶して、目的物であるスクアリリウム化合物1を4.0g得た。スクアリン酸に対する収率は33.3mol%であった。
得られた化合物は、質量分析計(島津製作所社製「LCMS−2020」、M/Z=50−2000、ポジティブ・ネガティブ同時スキャン)により同定した。具体的には、得られた化合物約1mgをガラス棒に塗布して付着させ、直接イオン化ユニット(DART)(島津製作所社製「DART−OS」、ヒーター温度500℃)にてイオン化し、質量分析計に導入することにより、当該化合物のマススペクトルを測定した。
(1−2)合成例2(比較スクアリリウム化合物1の合成)
50mLの4口フラスコに、1−ナフチルヒドラジン塩酸塩2.00g(0.01mol)、2−メチルシクロヘキサノン1.07g(0.01mol)、溶媒として1−ブタノール36gを仕込み、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、60℃にて4時間反応させて、ピロール環含有化合物を得た。反応終了後、ピロール環含有化合物を含む溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、得られたろ液を200mLの4口フラスコに移した。そこへスクアリン酸0.55g(0.005mol)とトルエン36gを加えて、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、かつディーンスターク装置を用いて溶出してくる水を取り除きながら、還流条件にて6時間反応させた。反応終了後、得られた反応液をエバポレーターで濃縮し、得られた固形物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製し、精製された単離物をさらにメタノール中で再結晶して、表1に示す比較スクアリリウム化合物1を0.4g得た。スクアリン酸に対する収率は23.1mol%であった。
(1−3)合成例3(比較フタロシアニン化合物1の合成)
特許第5539676号公報に記載の合成法により、表1に示す比較フタロシアニン化合物1を得た。
(2)評価
分光光度計(島津製作所社製「UV−1800」)を用いて、各化合物のクロロホルム溶媒中の吸収スペクトル(透過スペクトル)を測定ピッチ1nmで測定し、波長200〜1100nmにおける光の透過率を求めた。各化合物について、波長600〜1100nmの範囲で吸収が最大となる波長(極大吸収波長λmax)、極大吸収波長よりも長波長側で透過率が50%となる波長(%T50)、波長400nmにおける透過率(%T(400nm))をそれぞれ求め、その結果を表2にまとめた。また、スクアリリウム化合物1と比較フタロシアニン化合物1の各透過スペクトルを図1に示した。
スクアリリウム化合物1は、極大吸収波長λmaxが844.5nm、透過率が50%となる波長%T50が882.5nmとなり、800nmを超える波長域の光線を吸収でき、暗視用撮像素子の光学フィルタとして十分な機能を発揮するものとなった。一方、比較スクアリリウム化合物1は、極大吸収波長λmaxが739.5nm、透過率が50%となる波長%T50が772.5nmとなり、800nmを超える波長域の光線をほとんど吸収しない結果となった。比較フタロシアニン化合物1は、800nmを超える波長域の光線を吸収できるものの、400nmにおける透過率がスクアリリウム化合物1よりも低下した。図1を見ても、スクアリリウム化合物1は比較フタロシアニン化合物1よりも400〜600nmの波長領域における透過性に優れ、かつ急峻なスペクトルの変化がなく、よりなだらかに変化していることが分かる。これは可視光領域における色変化が小さく、よりニュートラルグレーに近い色目を発現可能であることを示すものであり、特定色への着色を嫌う光学フィルタ用途に対して、より好適な色素であることを示すものである。そのため、スクアリリウム化合物1は、例えば昼夜兼用の監視カメラ等の撮像装置の光学フィルタに好適に適用できるものとなる。