JP2017077672A - フレキソ印刷機 - Google Patents
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Abstract
【課題】印刷速度の増減に対して、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を簡単に調整することができる2ロール方式のフレキソ印刷機を提供すること。【解決手段】インク貯留部1と、インク絞りロール2と、アニロックスロール3と、印版41を備える印刷シリンダ4と、プレスロール5とを備え、インク絞りロール2がアニロックスロール3に摺接することによって、インク貯留部1においてアニロックスロール3へ転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを調整したうえで、アニロックスロール3から印版41に転移されたインクQを、印刷シリンダ4とプレスロール5との隙間に通紙される段ボールシートSに転写して印刷するフレキソ印刷機である。アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して増加又は減少させた状態で段ボールシートSに印刷する。【選択図】図1
Description
本発明は、段ボールシート製段機(コルゲータ)により製造された段ボールシートに対して印刷を行うフレキソ印刷機に関する。
段ボールシート用のフレキソ印刷機は、インク供給装置と、アニロックスロールと、印版を備えた印刷シリンダと、プレスロールとを備え、インク供給装置からアニロックスロールを介して印版に転移されたフレキソインク(以下、「インク」と略称する)を、印刷シリンダとプレスロールとの隙間に通紙される段ボールシートに印刷する装置である。斯かるフレキソ印刷機におけるアニロックスロールにインクを転移させる方式として、チャンバブレード方式(例えば、特許文献1を参照)と2ロール方式(例えば、特許文献2を参照)とが、一般に知られている。
チャンバブレード方式は、図15に示すように、チャンバフレーム101と、該チャンバフレーム上端に設けたシールブレード102と、該チャンバフレーム下端に設けたドクターブレード103と、これらのシールブレード102およびドクターブレード103に接触しながら回転するアニロックスロール104とにより囲まれて形成されるインクチャンバ105内へインクを供給し、該アニロックスロール104の外周面に形成された凹部溝(以下、「セル」という)にインクを転移する方式である。このチャンバブレード方式では、アニロックスロール104の回転方向に対して逆刃状にセットされたドクターブレード103によって、アニロックスロール104の表層に付着する余分なインクを掻き落とすこと、インクチャンバ105が密閉されインク溶剤の蒸発が抑制されてインク粘度を一定に保持しやすいこと等の理由から、薄く均一な印刷が可能である。
しかしながら、チャンバブレード方式では、ドクターブレード103によって、アニロックスロール104の表層に付着する余分なインクを掻き落とすので、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を調整すること、特に印刷が濃くなるように調整することが困難であるという問題があった。
これに対して、2ロール方式は、図16に示すように、インク貯留部201に貯留されるインクをインク絞りロール202がアニロックスロール203(インク転移ロールに相当)に摺接して、アニロックスロール203へ転移させるインク量を調整する方式である。2ロール方式では、インク絞りロール202がゴムロールであるので、アニロックスロール203の摩耗は進みにくく、経済的であり、また、印刷速度が遅い段階においては、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を調整することも、インク粘度やアニロックスロール203に対するインク絞りロール202の加圧力(押し当ての程度)を調節すること等によって、可能であった。
しかしながら、上記2ロール方式では、インク絞りロール202とアニロックスロール203との接触絞りによって、アニロックスロール203へ転移させるインク量をコントロールするので、印刷速度が高速化するにつれて、アニロックスロール203のセル容積以外に絞りきれない薄いインク膜がアニロックスロール表面に残ることになり、結果として印版204へのインク供給量が増加してしまうことになる(図17を参照)。なお、図17は、2ロール方式のフレキソ印刷機における印刷速度とインク膜厚との関係を示すグラフ図であり、印刷速度とインク膜厚とが略比例関係を示し、同一の印刷速度では、インク粘度の低下によってインク膜厚が薄くなることを示している。
そこで、印版204へのインク供給量の増加を抑制させるためには、インク絞りロール202のゴム硬度を更に高くする方法や、インク粘度を更に下げる方法が考えられる。ところが、インク絞りロール202のゴム硬度を更に高くすると、印刷速度を高速化させる上で、インク絞りロール202とアニロックスロール203との間で作用する摩擦力が大きくなり、インク絞りロール202及びアニロックスロール203の駆動モータをそれぞれ大型化する必要が生じ、フレキソ印刷機200の設備費が大幅に増加せざるを得なかった。また、インク粘度を更に下げると、印刷対象がベタ部では泳ぎ現象(印刷面上に、不定形の濃淡が生じ、インク膜厚が局部的に不均一な状態)が発生しやすく、印刷対象が網点部ではマージナルゾーン(印刷部の縁に生じる濃い輪郭部)のにじみが発生しやすくなる。そのため、2ロール方式では、印刷速度を高速化させたときにおいて、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を簡単に調整することが困難であるという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、印刷速度の増減に対して、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を簡単に調整することができる2ロール方式のフレキソ印刷機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るフレキソ印刷機は、次のような構成を有している。
(1)インク貯留部と、インク絞りロールと、アニロックスロールと、印版を備える印刷シリンダと、プレスロールとを備え、前記インク絞りロールが前記アニロックスロールに摺接することによって、前記インク貯留部において該アニロックスロールに付着したインクの単位面積当たりのインク量を調整したうえで、前記アニロックスロールから前記印版に転移された前記インクを、前記印刷シリンダと前記プレスロールとの隙間に通紙される段ボールシートに転写して印刷するフレキソ印刷機であって、
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して増加又は減少させた状態で前記段ボールシートに印刷することを特徴とする。
(1)インク貯留部と、インク絞りロールと、アニロックスロールと、印版を備える印刷シリンダと、プレスロールとを備え、前記インク絞りロールが前記アニロックスロールに摺接することによって、前記インク貯留部において該アニロックスロールに付着したインクの単位面積当たりのインク量を調整したうえで、前記アニロックスロールから前記印版に転移された前記インクを、前記印刷シリンダと前記プレスロールとの隙間に通紙される段ボールシートに転写して印刷するフレキソ印刷機であって、
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して増加又は減少させた状態で前記段ボールシートに印刷することを特徴とする。
本発明においては、アニロックスロールの周速度を、印刷シリンダの周速度に対して増加又は減少させるので、アニロックスロールから印刷シリンダの印版に転移させるインクの単位面積当たりのインク量を、印刷速度に応じて増加又は減少させることができる。そのため、例えば、印刷速度を所定の速度より高速化させた場合、アニロックスロールのセル容積以外に絞りきれない薄いインク膜がアニロックスロール表面に残っても、アニロックスロールの周速度を、印刷シリンダの周速度に対して減少させることによって、印刷シリンダの印版に転移させるインクの単位面積当たりのインク量を減少させることができる。その結果、段ボールシートへ印刷したインクの濃度を所定の範囲内に抑え、印刷の精細度(シャープさ)を確保させることができる。このとき、印刷シリンダの印版に転移させる単位面積当たりのインク量が減少することによって、アニロックスロールから飛散するインクの飛散量を低減させることもできる。
また、例えば、印刷速度を所定の速度より低速化させた場合、インク絞りロールの絞り量が増してアニロックスロールのセルに残るインク量が減少しても、アニロックスロールの周速度を、印刷シリンダの周速度に対して増加させることによって、印刷シリンダの印版に転移させるインクの単位面積当たりのインク量を増加させることができる。その結果、段ボールシートへ印刷したインクの濃度を所定の範囲内に保つことができる。また、印刷シリンダの印版に転移させるインクの単位面積当たりのインク量を増加させることによって、濃い色合いの印刷を得ることもできる。なお、このとき、印刷シリンダの印版に転移させるインクの単位面積当たりのインク量が増加するが、印刷速度を低速化させた分だけ、インクが付着しているアニロックスロール表層の周速度が遅くなり当該インクに対する遠心力が減少するので、アニロックスロールから飛散するインクの飛散量を低減させることもできる。
その結果、本発明によれば、印刷速度の増減に対して、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を簡単に調整することができる2ロール方式のフレキソ印刷機を提供することができる。
(2)(1)に記載されたフレキソ印刷機において、
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して95%以上100%未満の範囲で減少させることを特徴とする。
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して95%以上100%未満の範囲で減少させることを特徴とする。
本発明においては、アニロックスロールの周速度は、印刷シリンダの周速度に対して95%以上であるので、アニロックスロールの周速度と印刷シリンダの周速度とが同一の場合に比較して、アニロックスロールから印刷シリンダの印版に転移させるインクの単位面積当たりのインク量を少なくとも95%程度以上確保でき、印版における局部的なインク不足を回避させることができる。また、このときのアニロックスロールの周速度と印刷シリンダの周速度との差異は、最大5%程度であるので、アニロックスロールと印版との接触部に生じる摩擦熱を過大にさせるほどではない。そのため、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を安定して調整することができる。
(3)(2)に記載されたフレキソ印刷機において、
前記アニロックスロールの周速度は、ベタ部を印刷する場合には、前記印刷シリンダの周速度に対して98%以上であることを特徴とする。
前記アニロックスロールの周速度は、ベタ部を印刷する場合には、前記印刷シリンダの周速度に対して98%以上であることを特徴とする。
本発明においては、アニロックスロールの周速度を、ベタ部を印刷する場合には、印刷シリンダの周速度との差異を2%以内の微小にすることによって、アニロックスロールと印版との滑りを抑制させることができる。そのため、例えば、ベタ部の白抜きの文字に対して、文字が二重に印刷されるような現象(いわゆるゴースト現象)を有効に回避させることができる。
(4)(1)に記載されたフレキソ印刷機において、
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して100%を超え102%以下の範囲で増加させることを特徴とする。
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して100%を超え102%以下の範囲で増加させることを特徴とする。
本発明においては、アニロックスロールの周速度は、印刷シリンダの周速度に対して102%以下であるので、マージナルゾーンのにじみやゴースト現象の発生を抑制しつつ、濃い色合いの印刷を安定的に得ることができる。すなわち、アニロックスロールの周速度と印刷シリンダの周速度とが同一の場合に比較して、アニロックスロールから印刷シリンダの印版に転移させるインクの単位面積当たりのインク量を少なくとも102%程度以下に制限でき、印版における局部的なインク過大を防止して輪郭部のマージナルゾーンのにじみを回避させることができる。また、このときのアニロックスロールの周速度と印刷シリンダの周速度との差異は、最大2%程度であるので、アニロックスロールと印版との接触部に生じる滑りを過大にさせるほどではない。そのため、ゴースト現象も回避できる。したがって、濃い色合いの印刷において印刷の精細度(シャープさ)を安定して確保することができる。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載されたフレキソ印刷機において、
前記アニロックスロールの外周面には、亀甲状セルや斜め格子で区画された斜め格子状セル等のように、上方が開放され、かつ、周囲が閉じられた凹部として形成されたセルが、均一に配列されていることを特徴とする。
前記アニロックスロールの外周面には、亀甲状セルや斜め格子で区画された斜め格子状セル等のように、上方が開放され、かつ、周囲が閉じられた凹部として形成されたセルが、均一に配列されていることを特徴とする。
本発明においては、アニロックスロールの外周面においてインクを収容するセルは、上方が開放され、かつ、周囲が閉じられた凹部として形成されているので、例えば井桁状に繋がった溝部として形成されたセル構造と比較して、セルからインクが離脱しやすく、セル容積内に収容したインクを残らず印版に転移させやすい。また、セルが均一に配列されているので、印版に転移するインクの単位面積当たりのインク量を均一化させやすい。したがって、印版に転移したインクの膜厚分布は、アニロックスロールの周速度を、印刷シリンダの周速度に対して増加又は減少させても、その周速度の差異による影響を受けにくい。その結果、段ボールシートへ印刷したインクの濃度をより一層均一に維持させながら、印刷の精細度(シャープさ)を確保させることができる。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載されたフレキソ印刷機において、
前記インク絞りロールのゴム硬度は、ショアA60〜85の範囲内であることを特徴とする。
前記インク絞りロールのゴム硬度は、ショアA60〜85の範囲内であることを特徴とする。
本発明においては、インク絞りロールは、そのゴム硬度をショアA60〜85の範囲内とすることによって、アニロックスロールに対する所定の弾力性を確保できる。そのため、印刷速度を高速化させた場合においても、インク絞りロール及びアニロックスロールの駆動力を増加させることなく、インク絞りロールの絞り機能を維持させることができる。その結果、印刷速度を高速化させる上で、インク絞りロール及びアニロックスロールの駆動モータをそれぞれ大型化する必要がなく、フレキソ印刷機における設備費の大幅な増加を回避することができる。
本発明によれば、印刷速度の増減に対して、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を簡単に調整することができる2ロール方式のフレキソ印刷機を提供することができる。
次に、本発明に係る実施形態であるフレキソ印刷機について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本フレキソ印刷機の全体構造とその動作方法を説明し、その後、本フレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果及びインク飛散結果(アニロックスロールの周速度を、印刷シリンダの周速度に対して減少させた場合)を説明する。
<本フレキソ印刷機の全体構造及びその動作方法>
まず、本実施形態に係るフレキソ印刷機の全体構造及びその動作方法を、図1〜図5を用いて説明する。図1に、本発明に係る実施形態のフレキソ印刷機の概略側面図を示す。図2に、図1に示すフレキソ印刷機における印刷部の模式的断面図を示す。図3に、図1に示すフレキソ印刷機におけるアニロックスロールの外周面に形成された亀甲状セルの拡大平面図を示す。図4に、図1に示すフレキソ印刷機におけるアニロックスロールの外周面に形成された斜め格子状セルの拡大平面図を示す。図5に、図1に示すフレキソ印刷機において、アニロックスロールと印刷シリンダの印版との接触部におけるインク転移状況を表す模式的断面図を示す。なお、図1に示す矢印の方向によって、装置の上下方向、前後方向を示す。ここで、前方は下流側を意味し、後方は上流側を意味する。他の図面においても、同様である。
まず、本実施形態に係るフレキソ印刷機の全体構造及びその動作方法を、図1〜図5を用いて説明する。図1に、本発明に係る実施形態のフレキソ印刷機の概略側面図を示す。図2に、図1に示すフレキソ印刷機における印刷部の模式的断面図を示す。図3に、図1に示すフレキソ印刷機におけるアニロックスロールの外周面に形成された亀甲状セルの拡大平面図を示す。図4に、図1に示すフレキソ印刷機におけるアニロックスロールの外周面に形成された斜め格子状セルの拡大平面図を示す。図5に、図1に示すフレキソ印刷機において、アニロックスロールと印刷シリンダの印版との接触部におけるインク転移状況を表す模式的断面図を示す。なお、図1に示す矢印の方向によって、装置の上下方向、前後方向を示す。ここで、前方は下流側を意味し、後方は上流側を意味する。他の図面においても、同様である。
図1〜図5に示すように、フレキソ印刷機10には、インク貯留部1と、インク絞りロール2と、アニロックスロール3と、印版41を備える印刷シリンダ4と、プレスロール5と、送りロール6と、インク供給タンク7と、左右一対の機枠8、8とを備えている。インク絞りロール2及びアニロックスロール3の周囲には、インク飛散防止用のカバー体81、82、83が、機枠8、8に固定されている。機枠8、8の下端には、移動用ローラ体84を備えている。そして、フレキソ印刷機10は、インク絞りロール2がアニロックスロール3に摺接することによって、インク貯留部1においてアニロックスロール3に付着するインクQの単位面積当たりのインク量qを調整したうえで、アニロックスロール3から印版41に転移されたインクQを、印刷シリンダ4とプレスロール5との隙間に上流側から下流側へ通紙される段ボールシートSに転写して印刷する。印刷された段ボールシートSは、印刷シリンダ4及びプレスロール5の前方に配置された上下一対の送りロール6(61、62)によって、下流側へ搬送される。
ここで、インク貯留部1は、機枠8、8の上部で前後に隣接して水平状に配置され、かつ、外周面が互いに摺接するインク絞りロール2及びアニロックスロール3の外周面上部と、インク絞りロール2及びアニロックスロール3の軸方向端部に摺接する側部止め板11とによって堰き止められた略V字状のインク池である。インク貯留部1は、機枠8、8の下部に配置されたインク供給タンク7とインク供給管71及びインク回収管74によって接続されている。インク供給管71には、開閉バルブ72とインク供給ポンプ73とが直列に接続され、インク回収管74には、開閉バルブ75とインク回収ポンプ76とが直列に接続されている。本フレキソ印刷機10の印刷時には、上記開閉バルブ72、75を開き、インク供給ポンプ73とインク回収ポンプ76とをそれぞれ作動させることによって、インク貯留部1とインク供給タンク7との間でインクQを循環させる。これによって、インク貯留部1からアニロックスロール3を介して印版41に転移させるインクQの粘度を、所定の範囲内に維持させている。
また、インク絞りロール2は、軸部22に円筒状ゴム部材21が積層されたロール体であって、その軸部22が機枠8、8に回転可能に軸支されている。円筒状ゴム部材21の外周面は、平滑面に形成されている。また、インク絞りロール2は、駆動モータ(図示しない)に連結され、印刷時には所望の周速度V0で回転することができる。インク絞りロール2の周速度V0は、インク絞り機能を発揮させるため、後述するアニロックスロール3の周速度V1より若干遅く設定されている。なお、本フレキソ印刷機10の印刷速度Tを高速化させた場合(例えば、印刷速度が200〜400枚/分程度のとき)においても、インク絞りロール2及びアニロックスロール3の駆動モータをそれぞれ大型化させることなく、インク絞りロール2の絞り機能を発揮させるため、インク絞りロール2の円筒状ゴム部材21におけるゴム硬度は、ショアA60〜85の範囲内であることが好ましい。なお、印刷速度は、搬送方向の寸法が0.5m程度の段ボールシートを長さ0.5m程度の間隔をあけて1分間連続して印刷したときの印刷枚数で表示している(以下、同じ)。
また、アニロックスロール3は、円筒状シリンダ部31の外周面311(311B)にセラミックス又は硬質クロムメッキが被覆されたロール体であって、インク絞りロール2の後方で該インク絞りロール2と平行に配置された状態で、その軸部32が機枠8、8に回転可能に軸支されている。また、アニロックスロール3は、駆動モータ(図示しない)に連結され、印刷時には所望の周速度V1で回転することができる。アニロックスロール3の外径は、インク絞りロール2の外径と略同一に形成されている。アニロックスロール3の外周面311(311B)には、インクQ2を収容するため、上方が開放され、かつ、周囲が閉じられた凹部として微小なセル(例えば、亀甲状セル312又は斜め格子状セル312B)が均一に配列、形成されている。隣接するセル312(312B)同士間の外周面311(311B)には、微少幅の平滑面が形成されている。亀甲状セル312は、周囲が6角形に形成され(図3)、また、斜め格子状セル312Bは、周囲がひし形又は正方形に形成され(図4)、各凹部の深さは、30〜40μm程度である。斜め格子状セル312Bは、ひし形又は正方形の対角線がアニロックスロール3の回転方向と略一致するように形成されている。なお、例えば、井桁状に繋がった溝部として形成されたセル構造では、溝部が繋がった交差部にインクが集合して当該交差部にインクが残留しやすい傾向があるが、上方が開放され、かつ、周囲が閉じられた凹部として形成された微小なセル(例えば、亀甲状セル312又は斜め格子状セル312B)は、セルからインクが離脱しやすく、セル容積内に収容したインクを残らず印版に転移させやすい特徴がある。
また、印刷シリンダ4は、円筒状シリンダ部42の外周面に樹脂製又はゴム製の印版41が装着された筒状体であって、アニロックスロール3の下方で該アニロックスロール3と平行に配置され、かつ、アニロックスロール3と印版41とがキスタッチされた状態で、その軸部43が機枠8、8に回転可能に軸支されている。また、印刷シリンダ4は、駆動モータ(図示しない)に連結され、印刷時には所望の周速度V2で回転することができる。印刷シリンダ4の外径は、アニロックスロール3の外径より大きく形成されている。なお、印刷シリンダ4の周速度V2の大きさは、フレキソ印刷機10の印刷速度Tの大きさに相当する。
本フレキソ印刷機10では、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して増加又は減少させた状態で段ボールシートSに印刷することができる。例えば、印刷速度Tを所定の速度(例えば、印刷速度が180枚/分のとき)より高速化させた場合(例えば、印刷速度が280枚/分のとき)、アニロックスロール3のセル容積以外に絞りきれない薄いインク膜Q1がアニロックスロール3の外周面311(311B)に残りやすくなる。その場合、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して減少させることによって、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを減少させる。印版41の単位面積当たりのインク量qが減少すると、段ボールシートSへ印刷したインクQの濃度が薄くなり、輪郭が鮮明となって印刷の精細度(シャープさ)が向上する。このように、アニロックスロール3の周速度V1と印刷シリンダ4の周速度V2との周速比を変化させることによって、段ボールシートSへ印刷したインクQの濃度を所定の範囲内に抑え、印刷の精細度(シャープさ)を確保させることができる。このとき、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qが減少することによって、アニロックスロール3から飛散するインクQの飛散量Rを低減させることもできる。
また、例えば、印刷速度Tを所定の速度(例えば、印刷速度が180枚/分のとき)より低速化させた場合(例えば、印刷速度が100枚/分のとき)、インク絞りロール2の絞り量が増してアニロックスロール3のセル312(312B)に残るインクQ2が減少しやすくなる。その場合、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して増加させることによって、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを増加させる。その結果、段ボールシートSへ印刷したインクQの濃度を所定の範囲内に保持させることができる。また、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを増加させることによって、意識的に濃い色合いの印刷を得ることもできる。
なお、このとき、印刷シリンダ4の印版41に転移させる単位面積当たりのインク量qが増加するが、印刷速度Tを低速化させた場合には、アニロックスロール3から印版41に転移するインクQの周速度V3が遅くなり遠心力Fが減少するので、アニロックスロール3から飛散するインクの飛散量Rを低減させることもできる(図5を参照)。
ただし、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を安定して調整する上では、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して95%以上100%未満の範囲で減少させることが好ましい。また、アニロックスロール3の周速度V1は、ベタ部Bを印刷する場合には、印刷シリンダ4の周速度V2に対して98%以上であることが好ましい。一方、マージナルゾーンのにじみやゴースト現象の発生を抑制しつつ、濃い色合いの印刷を安定的に得るためには、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して100%を超え102%以下の範囲で増加させることが好ましい。
<印刷結果及びインク飛散結果>
次に、本フレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果及びインク飛散結果(アニロックスロールの周速度を、印刷シリンダの周速度に対して減少させた場合)を、図6〜図14を用いて説明する。図6に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:文字、アニロックスロールの周速比:100%)を示す。図7に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:文字、アニロックスロールの周速比:98%)を示す。図8に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:文字、アニロックスロールの周速比:95%)を示す。図9に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:ベタ部の白抜き文字、アニロックスロールの周速比:100%)を示す。図10に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:ベタ部の白抜き文字、アニロックスロールの周速比:98%)を示す。図11に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:ベタ部の白抜き文字、アニロックスロールの周速比:95%)を示す。図12に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷したときの、インク飛散結果の写真図(対象:ベタ部、アニロックスロールの周速比:100%)を示す。図13に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷したときの、インク飛散結果の写真図(対象:ベタ部、アニロックスロールの周速比:98%)を示す。図14に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷したときの、インク飛散結果の写真図(対象:ベタ部、アニロックスロールの周速比:95%)を示す。
次に、本フレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果及びインク飛散結果(アニロックスロールの周速度を、印刷シリンダの周速度に対して減少させた場合)を、図6〜図14を用いて説明する。図6に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:文字、アニロックスロールの周速比:100%)を示す。図7に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:文字、アニロックスロールの周速比:98%)を示す。図8に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:文字、アニロックスロールの周速比:95%)を示す。図9に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:ベタ部の白抜き文字、アニロックスロールの周速比:100%)を示す。図10に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:ベタ部の白抜き文字、アニロックスロールの周速比:98%)を示す。図11に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷した印刷結果の写真図(対象:ベタ部の白抜き文字、アニロックスロールの周速比:95%)を示す。図12に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷したときの、インク飛散結果の写真図(対象:ベタ部、アニロックスロールの周速比:100%)を示す。図13に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷したときの、インク飛散結果の写真図(対象:ベタ部、アニロックスロールの周速比:98%)を示す。図14に、図1に示すフレキソ印刷機を用いて段ボールシートに印刷したときの、インク飛散結果の写真図(対象:ベタ部、アニロックスロールの周速比:95%)を示す。
図6〜図14に示す印刷結果及びインク飛散結果を得たときの試験条件は、以下の通りである。すなわち、印刷速度Tは、220枚/分程度(高速)とし、使用するインクQの粘度は、ザーンカップ#4で8秒程度である。アニロックスロール3のセル312は、200線程度である。また、使用する印版41には、文字M単独で印刷する印刷部(図6〜図8)と、ベタ部Bの中に白抜きで文字Mを印刷する印刷部(図9〜図11)とを備え、各印刷部の文字Mは、10pt、8pt、6ptの3種類の大きさの文字を比較評価できるように上下で隣接して配置した。アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対する比率(周速比)を100%、98%、95%に変化させて、テスト用の段ボールシートSに印刷した印刷結果(印刷品質)を評価した。また、アニロックスロール3のカバー体81の内側にA4用紙を貼付した上で、アニロックスロール3の周速度V1を上記周速比(100%、98%、95%)に変化させて、テスト用の段ボールシートSを連続200枚通紙したときのA4用紙へのインク付着状況(インク飛散結果)を比較した。
(文字単独の印刷結果)
文字単独で印刷した場合、図6に示すように、アニロックスロール3の周速比が100%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2)のときには、文字Mの輪郭部に対するインクのはみ出しが多く文字印刷の精細度(シャープさ)が低下している。特に、6ptの文字H1では、インクのはみ出しによって文字の判読が困難な箇所が見られる。これに対して、図7に示すように、アニロックスロール3の周速比が98%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.98)のときには、文字Mの輪郭部に対するインクのはみ出しが減少し、8pt以上の文字では文字印刷の精細度(シャープさ)が改善されている。ただし、6ptの文字H2では、インクのはみ出しによって文字の判読が若干困難な箇所が見られる。更に、図8に示すように、アニロックスロール3の周速比が95%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.95)のときには、文字Mの輪郭部に対するインクのはみ出しが大幅に減少し、全体的に文字印刷の精細度(シャープさ)が改善されている。なお、6ptの文字H3でも、インクのはみ出しが減り、文字の判読が可能となった。したがって、文字部を単独で印刷する場合には、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して95%以上100%未満の範囲で設定することが好ましい。
文字単独で印刷した場合、図6に示すように、アニロックスロール3の周速比が100%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2)のときには、文字Mの輪郭部に対するインクのはみ出しが多く文字印刷の精細度(シャープさ)が低下している。特に、6ptの文字H1では、インクのはみ出しによって文字の判読が困難な箇所が見られる。これに対して、図7に示すように、アニロックスロール3の周速比が98%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.98)のときには、文字Mの輪郭部に対するインクのはみ出しが減少し、8pt以上の文字では文字印刷の精細度(シャープさ)が改善されている。ただし、6ptの文字H2では、インクのはみ出しによって文字の判読が若干困難な箇所が見られる。更に、図8に示すように、アニロックスロール3の周速比が95%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.95)のときには、文字Mの輪郭部に対するインクのはみ出しが大幅に減少し、全体的に文字印刷の精細度(シャープさ)が改善されている。なお、6ptの文字H3でも、インクのはみ出しが減り、文字の判読が可能となった。したがって、文字部を単独で印刷する場合には、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して95%以上100%未満の範囲で設定することが好ましい。
(ベタ部の印刷結果)
次に、ベタ部Bの中に白抜きで文字Mを印刷した場合、図9に示すように、アニロックスロール3の周速比が100%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2)のときには、文字Mの輪郭部に対してベタ部Bからインクのはみ出しが多く文字印刷の精細度(シャープさ)が低下している。特に、6ptの文字J1では、ベタ部Bのインクのはみ出しによって文字が消えかかり、全体的にその判読が困難になっている。これに対して、図10に示すように、アニロックスロール3の周速比が98%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.98)のときには、文字Mの輪郭部に対するベタ部Bからインクのはみ出しが減少し、8pt以上の文字では文字印刷の精細度(シャープさ)が改善されている。ただし、6ptの文字J2では、ベタ部Bのインクのはみ出しによって文字の判読が若干困難な箇所が見られる。更に、図11に示すように、アニロックスロール3の周速比が95%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.95)のときには、文字Mの輪郭部に対するベタ部Bからインクのはみ出しが大幅に減少し、全体的に文字印刷の精細度(シャープさ)が改善されている。なお、6ptの文字J3でも、ベタ部Bのインクのはみ出しが減り、文字の判読が可能となった。しかし、図11においては、ベタ部の中に文字が二重に印刷されるような現象G(いわゆるゴースト現象)が見られる。ところが、図10においては、ゴースト現象は殆んど見られない。したがって、ベタ部を印刷する場合には、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して98%以上100%未満の範囲で設定することが好ましい。
次に、ベタ部Bの中に白抜きで文字Mを印刷した場合、図9に示すように、アニロックスロール3の周速比が100%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2)のときには、文字Mの輪郭部に対してベタ部Bからインクのはみ出しが多く文字印刷の精細度(シャープさ)が低下している。特に、6ptの文字J1では、ベタ部Bのインクのはみ出しによって文字が消えかかり、全体的にその判読が困難になっている。これに対して、図10に示すように、アニロックスロール3の周速比が98%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.98)のときには、文字Mの輪郭部に対するベタ部Bからインクのはみ出しが減少し、8pt以上の文字では文字印刷の精細度(シャープさ)が改善されている。ただし、6ptの文字J2では、ベタ部Bのインクのはみ出しによって文字の判読が若干困難な箇所が見られる。更に、図11に示すように、アニロックスロール3の周速比が95%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.95)のときには、文字Mの輪郭部に対するベタ部Bからインクのはみ出しが大幅に減少し、全体的に文字印刷の精細度(シャープさ)が改善されている。なお、6ptの文字J3でも、ベタ部Bのインクのはみ出しが減り、文字の判読が可能となった。しかし、図11においては、ベタ部の中に文字が二重に印刷されるような現象G(いわゆるゴースト現象)が見られる。ところが、図10においては、ゴースト現象は殆んど見られない。したがって、ベタ部を印刷する場合には、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して98%以上100%未満の範囲で設定することが好ましい。
(インク飛散結果)
次に、ベタ部Bを印刷する箇所で、アニロックスロール3のカバー体81の内側に貼付したA4用紙に付着するインク飛散結果は、図12に示すように、アニロックスロール3の周速比が100%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2)のときには、インク粒R1の大きさ及び数量において最大となり、図13に示すように、アニロックスロール3の周速比が98%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.98)のときには、インク粒R2の大きさ及び数量においてアニロックスロール3の周速比が100%のときの略1/2程度に減少し、図14に示すように、アニロックスロール3の周速比が95%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.95)のときには、インク粒R3の大きさ及び数量においてアニロックスロール3の周速比が100%のときの略1/4程度に減少したようにみられる。なお、文字M単独で印刷する箇所におけるインク飛散量は、ベタ部Bを印刷する箇所より全体的に少なくなるが、アニロックスロール3の周速比が100%から98%、95%に減少するに従って、インク飛散量が減少する傾向は、ベタ部Bを印刷する箇所におけるインク飛散量と同じである。したがって、インク飛散結果においても、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して95%以上100%未満の範囲で設定することが好ましい。
次に、ベタ部Bを印刷する箇所で、アニロックスロール3のカバー体81の内側に貼付したA4用紙に付着するインク飛散結果は、図12に示すように、アニロックスロール3の周速比が100%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2)のときには、インク粒R1の大きさ及び数量において最大となり、図13に示すように、アニロックスロール3の周速比が98%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.98)のときには、インク粒R2の大きさ及び数量においてアニロックスロール3の周速比が100%のときの略1/2程度に減少し、図14に示すように、アニロックスロール3の周速比が95%(アニロックスロール3の周速度V1=印刷シリンダ4の周速度V2×0.95)のときには、インク粒R3の大きさ及び数量においてアニロックスロール3の周速比が100%のときの略1/4程度に減少したようにみられる。なお、文字M単独で印刷する箇所におけるインク飛散量は、ベタ部Bを印刷する箇所より全体的に少なくなるが、アニロックスロール3の周速比が100%から98%、95%に減少するに従って、インク飛散量が減少する傾向は、ベタ部Bを印刷する箇所におけるインク飛散量と同じである。したがって、インク飛散結果においても、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して95%以上100%未満の範囲で設定することが好ましい。
<本実施形態における作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るフレキソ印刷機10によれば、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して増加又は減少させるので、アニロックスロール3から印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを、印刷速度Tに応じて増加又は減少させることができる。そのため、例えば、印刷速度Tを所定の速度より高速化させた場合、アニロックスロール3のセル容積以外に絞りきれない薄いインク膜Q1がアニロックスロール表面に残っても、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して減少させることによって、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを減少させることができる。その結果、段ボールシートSへ印刷したインクQの濃度を所定の範囲内に抑え、印刷の精細度(シャープさ)を確保させることができる。このとき、印刷シリンダ4の印版41に転移させる単位面積当たりのインク量qが減少することによって、アニロックスロール3から飛散するインクQの飛散量Rを低減させることもできる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るフレキソ印刷機10によれば、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して増加又は減少させるので、アニロックスロール3から印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを、印刷速度Tに応じて増加又は減少させることができる。そのため、例えば、印刷速度Tを所定の速度より高速化させた場合、アニロックスロール3のセル容積以外に絞りきれない薄いインク膜Q1がアニロックスロール表面に残っても、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して減少させることによって、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを減少させることができる。その結果、段ボールシートSへ印刷したインクQの濃度を所定の範囲内に抑え、印刷の精細度(シャープさ)を確保させることができる。このとき、印刷シリンダ4の印版41に転移させる単位面積当たりのインク量qが減少することによって、アニロックスロール3から飛散するインクQの飛散量Rを低減させることもできる。
また、例えば、印刷速度Tを所定の速度より低速化させた場合、インク絞りロール2の絞り量が増してアニロックスロール3のセル312(312B)に残るインクQ2の量が減少しても、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して増加させることによって、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを増加させることができる。その結果、段ボールシートSへ印刷したインクQの濃度を所定の範囲内に保つことができる。また、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを増加させることによって、意識的に濃い色合いの印刷を得ることもできる。なお、このとき、印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qが増加するが、印刷速度Tを低速化させた分だけ、インクQが付着しているアニロックスロール表層の周速度V3が遅くなり当該インクQに対する遠心力Fが減少するので、アニロックスロール3から飛散するインクQの飛散量Rを低減させることもできる。
その結果、本実施形態によれば、印刷速度Tの増減に対して、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を簡単に調整することができる2ロール方式のフレキソ印刷機10を提供することができる。
また、本実施形態によれば、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して95%以上であるので、アニロックスロール3の周速度V1と印刷シリンダ4の周速度V2とが同一の場合に比較して、アニロックスロール3から印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを少なくとも95%程度以上確保でき、印版41における局部的なインク不足を回避させることができる。また、このときのアニロックスロール3の周速度V1と印刷シリンダ4の周速度V2との差異は、最大5%程度であるので、アニロックスロール3と印版41との接触部に生じる摩擦熱を過大にさせるほどではない。そのため、印刷の濃淡や精細度(シャープさ)を安定して調整することができる。
また、本実施形態によれば、アニロックスロール3の周速度V1を、ベタ部Bを印刷する場合には、印刷シリンダ4の周速度V2との差異を2%以内の微小にすることによって、アニロックスロール3と印版41との滑りを抑制させることができる。そのため、例えば、ベタ部Bの文字Mに対して、文字が二重に印刷されるような現象(いわゆるゴースト現象)を有効に回避させることができる。
また、本実施形態によれば、アニロックスロール3の周速度V1は、印刷シリンダ4の周速度V2に対して102%以下であるので、マージナルゾーンのにじみやゴースト現象の発生を抑制しつつ、濃い色合いの印刷を安定的に得ることができる。すなわち、アニロックスロール3の周速度V1と印刷シリンダ4の周速度V2とが同一の場合に比較して、アニロックスロール3から印刷シリンダ4の印版41に転移させるインクQの単位面積当たりのインク量qを少なくとも102%程度以下に制限でき、印版41における局部的なインク過大を防止して輪郭部のマージナルゾーンのにじみを有効に回避させることができる。また、このときのアニロックスロール3の周速度V1と印刷シリンダ4の周速度V2との差異は、最大2%程度であるので、アニロックスロール3と印版41との接触部に生じる滑りを過大にさせるほどではない。そのため、ゴースト現象も有効に回避できる。したがって、濃い色合いの印刷において印刷の精細度(シャープさ)を安定して確保することができる。
また、本実施形態によれば、アニロックスロール3の外周面311(311B)においてインクQを収容するセル312(312B)は、上方が開放され、かつ、周囲が閉じられた凹部として形成されているので、例えば井桁状に繋がった溝部として形成されたセル構造と比較して、セル312(312B)からインクQ2が離脱しやすく、セル容積内に収容したインクQ2を残らず印版41に転移させやすい。また、セル312(312B)が均一に配列されているので、印版41に転移するインクQの単位面積当たりのインク量qを均一化させやすい。したがって、印版41に転移したインクQの膜厚分布は、アニロックスロール3の周速度V1を、印刷シリンダ4の周速度V2に対して増加又は減少させても、その周速度の差異による影響を受けにくい。その結果、段ボールシートSへ印刷したインクQの濃度をより一層均一に維持させながら、印刷の精細度(シャープさ)を確保させることができる。
また、本実施形態によれば、インク絞りロール2は、そのゴム硬度をショアA60〜85の範囲内とすることによって、アニロックスロール3に対する所定の弾力性を確保できる。そのため、印刷速度Tを高速化させた場合においても、インク絞りロール2及びアニロックスロール3の駆動力を増加させることなく、インク絞りロール2の絞り機能を維持させることができる。その結果、印刷速度Tを高速化させる上で、インク絞りロール2及びアニロックスロール3の駆動モータをそれぞれ大型化する必要がなく、フレキソ印刷機10における設備費の大幅な増加を回避することができる。
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、様々に変更することができることは言うまでもない。例えば、本実施形態では、インク貯留部1と、インク絞りロール2と、アニロックスロール3と、印版41を備える印刷シリンダ4と、プレスロール5と、送りロール6と、インク供給タンク7と、一対の機枠8、8とを備えるフレキソ印刷機10を1台設けた場合について説明したが、例えば、多色刷りを行うために、上記フレキソ印刷機を複数台連続して設けてもよい。その場合、文字Mやベタ部Bの大きさ、各インクQの粘度等に対応してアニロックスロール3の周速度V1の印刷シリンダ4の周速度V2に対する周速比をフレキソ印刷機毎に変更することもできる。
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、様々に変更することができることは言うまでもない。例えば、本実施形態では、インク貯留部1と、インク絞りロール2と、アニロックスロール3と、印版41を備える印刷シリンダ4と、プレスロール5と、送りロール6と、インク供給タンク7と、一対の機枠8、8とを備えるフレキソ印刷機10を1台設けた場合について説明したが、例えば、多色刷りを行うために、上記フレキソ印刷機を複数台連続して設けてもよい。その場合、文字Mやベタ部Bの大きさ、各インクQの粘度等に対応してアニロックスロール3の周速度V1の印刷シリンダ4の周速度V2に対する周速比をフレキソ印刷機毎に変更することもできる。
本発明は、段ボールシート製段機(コルゲータ)により製造された段ボールシートに対して印刷を行うフレキソ印刷機として利用できる。
1 インク貯留部
2 インク絞りロール
3 アニロックスロール
4 印刷シリンダ
5 プレスロール
6 送りロール
7 インク供給タンク
8 機枠
10 フレキソ印刷機
312 セル(亀甲状セル)
312B セル(斜め格子状セル)
41 印版
B ベタ部
M 文字
Q インク
Q1、Q2 インク
q インク量
S 段ボールシート
T 印刷速度
V1 周速度
V2 周速度
2 インク絞りロール
3 アニロックスロール
4 印刷シリンダ
5 プレスロール
6 送りロール
7 インク供給タンク
8 機枠
10 フレキソ印刷機
312 セル(亀甲状セル)
312B セル(斜め格子状セル)
41 印版
B ベタ部
M 文字
Q インク
Q1、Q2 インク
q インク量
S 段ボールシート
T 印刷速度
V1 周速度
V2 周速度
Claims (6)
- インク貯留部と、インク絞りロールと、アニロックスロールと、印版を備える印刷シリンダと、プレスロールとを備え、前記インク絞りロールが前記アニロックスロールに摺接することによって、前記インク貯留部において前記アニロックスロールに付着したインクの単位面積当たりのインク量を調整したうえで、前記アニロックスロールから前記印版に転移された前記インクを、前記印刷シリンダと前記プレスロールとの隙間に通紙される段ボールシートに転写して印刷するフレキソ印刷機であって、
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して増加又は減少させた状態で前記段ボールシートに印刷することを特徴とするフレキソ印刷機。 - 請求項1に記載されたフレキソ印刷機において、
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して95%以上100%未満の範囲で減少させることを特徴とするフレキソ印刷機。 - 請求項2に記載されたフレキソ印刷機において、
前記アニロックスロールの周速度は、ベタ部を印刷する場合には、前記印刷シリンダの周速度に対して98%以上であることを特徴とするフレキソ印刷機。 - 請求項1に記載されたフレキソ印刷機において、
前記アニロックスロールの周速度を、前記印刷シリンダの周速度に対して100%を超え102%以下の範囲で増加させることを特徴とするフレキソ印刷機。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載されたフレキソ印刷機において、
前記アニロックスロールの外周面には、上方が開放され、かつ、周囲が閉じられた凹部として形成されたセルが均一に配列されていることを特徴とするフレキソ印刷機。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載されたフレキソ印刷機において、
前記インク絞りロールのゴム硬度は、ショアA60〜85の範囲内であることを特徴とするフレキソ印刷機。
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Cited By (2)
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JP2019181729A (ja) * | 2018-04-04 | 2019-10-24 | 株式会社フジクラ | 印刷装置、印刷方法、光ファイバテープの製造方法 |
CN111791575A (zh) * | 2020-07-22 | 2020-10-20 | 广州威品技术研发有限公司 | 一种柔性凸版印刷机 |
-
2015
- 2015-10-20 JP JP2015206664A patent/JP2017077672A/ja active Pending
Cited By (2)
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JP2019181729A (ja) * | 2018-04-04 | 2019-10-24 | 株式会社フジクラ | 印刷装置、印刷方法、光ファイバテープの製造方法 |
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