JP2017076068A - 光学機能素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】透光部材の表面近傍に高い位相差の屈折率変化領域が効率良く形成された光学機能素子の製造方法を提供する。
【解決手段】平行に配列された複数本の屈折率変化領域が形成されている波長板ユニットを二次元に複数行複数列で配列してなる光学機能素子を、レンズ27で収束されたフェムト秒レーザ2をガラス10に照射することでガラス10から製造するための光学機能素子の製造方法である。この製造方法では、レンズ27とガラス10との距離を調整し、レーザ出力器21からフェムト秒レーザ2を出力し、出力されたフェムト秒レーザ2の位相を空間光位相変調器22のホログラムにより変調し、フェムト秒レーザ2をレンズ27により収束し、収束されるとともに位相が変調されたフェムト秒レーザ2をガラス10に照射する。
【選択図】図5

Description

本発明は、光学機能素子の製造方法に関するものである。
光学機能素子は、入射される光の偏光状態を変化させ、または、所定方向の偏光のみを透過させるものである。光学軸が一方向となる波長板ユニットを二次元に複数行複数列で配列することで光の偏光情報を取得するような新たな光学機能素子を作製することも可能である。個々の波長板ユニットは、その光学軸を一方向とするために、光学機能素子を構成する透光部材(ガラスなど)に、高屈折率領域と低屈折率領域とが交互に且つ平行に形成される。これにより、複屈折が発現され、つまり屈折率変化領域が形成される。
光学機能素子として、透光部材に形成された屈折率変化領域の位相差を高くするために、当該屈折率変化領域の横断面形状を工夫したものが提案されている(例えば、特許文献1)。屈折率変化領域の位相差が高い光学機能素子は、偏光イメージングセンサに使用することが可能である。しかしながら、光学機能素子を偏光イメージングセンサに使用するには、屈折率変化領域を部材の表面近傍に位置させることが好ましい。なぜなら、偏光イメージングセンサでは、光学機能素子の透光部材と撮像素子とを貼り合わせる必要があり、この貼り合わせにより光学機能素子にクロストークが発生し得るが、屈折率変化領域が透光部材の表面近傍に位置すると、このクロストークが低減されるからである。
特開2015−14740号公報
光学機能素子の製造方法には、一般的に、図7に示すように、レンズにより収束されたフェムト秒レーザ102を透光部材10に照射して所定深さDまで透過させることにより、当該透光部材10に屈折率変化領域105を形成する方法が採用される。この方法で製造される光学機能素子の位相差を高くするには、透光部材10に照射するフェムト秒レーザ102のエネルギーを高くする必要がある。ここで、フェムト秒レーザ102のエネルギーを、最も低くした状態(0.8μJ)を図14に示し、少し高くした状態(1.0μJ)を図15に示し、さらに高くした状態(1.5μJ)を図16に示し、最も高くした状態(2.5μJ)を図17に示す。なお、図14〜図17に示すフェムト秒レーザ102は、いずれも、周波数が1kHz、波長が780nm、パルス幅が220fsおよび加工速度が2μm/sであって、開口数が0.8のレンズにより収束されたものである。また、図14〜図17における位相差の測定波長は、いずれも546nmである。これら図14〜図17に示すように、フェムト秒レーザ102のエネルギー(Energy)を高くしていくと、フェムト秒レーザ102により形成される最も高い位相差(Retardance)となる屈折率変化領域105は、透光部材10の表面10sからより離れた深い位置となる。具体的には、図14に示すように、フェムト秒レーザ102のエネルギーが低いと、屈折率変化領域105の横断面が、略円形となりフェムト秒レーザ102の照射方向に短くなるので、屈折率変化領域105の位相差が小さくなってしまう。しかしながら、屈折率変化領域105を効率良く形成できるのは、透光部材10の表面から浅い位置となる。これに対して、図17に示すように、フェムト秒レーザ102のエネルギーが高いと、屈折率変化領域105の横断面が、照射方向を長軸とする楕円形となり当該照射方向に長くなるので、屈折率変化領域105の位相差が大きくなる。しかしながら、屈折率変化領域105を効率良く形成できるのは、透光部材10の表面から深い位置となってしまう。また、エネルギーの高いフェムト秒レーザ102が集光する位置を透光部材10の表面から浅い位置にするなど、屈折率変化領域105を透光部材10の表面から浅い位置に形成しようとすれば、形成される屈折率変化領域105の位相差は、図17の右側に示すグラフに従って、小さくなってしまう。このため、エネルギーの高いフェムト秒レーザ102では、透光部材10の表面10s近傍に高い位相差の屈折率変化領域105を効率良く形成することができない。
そこで、本発明は、透光部材の表面近傍に高い位相差の屈折率変化領域が効率良く形成された光学機能素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、第1の発明に係る光学機能素子の製造方法は、平行に配列された複数本の屈折率変化領域が形成されている波長板ユニットを二次元に複数行複数列で配列してなる光学機能素子を、レンズにより収束されたフェムト秒レーザを透光部材に照射することで当該透光部材から製造するための光学機能素子の製造方法であって、
レンズと透光部材との距離を調整するステップと、
フェムト秒レーザを出力するステップと、
出力されたフェムト秒レーザを上記レンズにより収束するステップと、
収束されたフェムト秒レーザを透光部材に照射するステップとを有し、
上記フェムト秒レーザが、上記透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するように制御されたものである。
また、第2の発明に係る光学機能素子の製造方法は、第1の発明に係る光学機能素子の製造方法において、フェムト秒レーザの透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、収束される前のフェムト秒レーザの位相を変調することにより行われるものである。
さらに、第3の発明に係る光学機能素子の製造方法は、第1または2の発明に係る光学機能素子の製造方法において、フェムト秒レーザの透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、他の透光部材にフェムト秒レーザを完全に透過させることにより行われるものである。
加えて、第4の発明に係る光学機能素子の製造方法は、第1または2の発明に係る光学機能素子の製造方法において、フェムト秒レーザの透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、上記透光部材の表面からフェムト秒レーザを照射して透過させることにより行われ、
上記照射の後に、上記透光部材を表面から切削加工するものである。
また、第5の発明に係る光学機能素子の製造方法は、第1または2の発明に係る光学機能素子の製造方法において、フェムト秒レーザの透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、上記透光部材の裏面からフェムト秒レーザを透過させることにより行われるものである。
上記光学機能素子の製造方法によると、透光部材の表面近傍に高い位相差の屈折率変化領域が効率良く形成された光学機能素子を製造することができる。
本発明の実施の形態に係る光学機能素子を模式的に示す平面図である。 同光学機能素子の屈折率変化領域における高屈折率部を線で示す平面図である。 同光学機能素子を構成する波長板ユニットを模式的に示す斜視図である。 同光学機能素子を構成する波長板ユニットの屈折率変化領域における高屈折率部を線で示す斜視図である。 本発明の実施例1に係る光学機能素子の製造装置を概略的に示す斜視図である。 空間位相変調器のホログラムによりフェムト秒レーザの位相が変調された場合とされない場合とで形成される屈折率変化領域の位相差の違いを示すグラフである。 フェムト秒レーザによりガラスに屈折率変化領域が形成される状態を示す斜視図であり、左側の図はフェムト秒レーザにおいて収束される位置の調整および位相の変調がされた場合である実施例1を示し、右側の図はフェムト秒レーザにおいて収束される位置の調整および位相の変調がされない場合である従来例を示す。 フェムト秒レーザによりガラスに屈折率変化領域が形成される状態を示す斜視図であり、左側の図はフェムト秒レーザにおいて収束される位置の調整および位相の変調がされた場合である実施例1を示し、右側の図はフェムト秒レーザにおいて収束される位置の調整がされたものの位相の変調がされない場合である比較例を示す。 本発明の実施例2に係る屈折率変化領域が形成される状態を示す斜視図である。 ガラスに形成された同屈折率変化領域を示す斜視図である。 本発明の実施例3に係る屈折率変化領域が形成される状態を示す斜視図である。 ガラスに形成された同屈折率変化領域を示す斜視図である。 本発明の実施例4に係る屈折率変化領域が形成される状態を示す斜視図である。 エネルギーが0.8μJのフェムト秒レーザによりガラスに形成される屈折率変化領域の、ガラスの表面からの深さ(縦軸)と位相差(横軸)との関係を示すグラフである。 エネルギーが1.0μJのフェムト秒レーザによりガラスに形成される屈折率変化領域の、ガラスの表面からの深さ(縦軸)と位相差(横軸)との関係を示すグラフである。 エネルギーが1.5μJのフェムト秒レーザによりガラスに形成される屈折率変化領域の、ガラスの表面からの深さ(縦軸)と位相差(横軸)との関係を示すグラフである。 エネルギーが2.5μJのフェムト秒レーザによりガラスに形成される屈折率変化領域の、ガラスの表面からの深さ(縦軸)と位相差(横軸)との関係を示すグラフである。 フェムト秒レーザによる光強度分布のコンター図および屈折率変化領域に適する光強度の量についてのグラフである。
以下、本発明の実施の形態に係る光学機能素子の製造方法について、図面に基づき説明する。
まず、光学機能素子の概略について図1および図2に基づき説明する。なお、図1は光学機能素子1を模式的に示す平面図であり、図2は図1に対応するとともに光学機能素子1の高屈折率部11(後述する)を線で示した平面図である。
この光学機能素子1は、二次元に多数行多数列で配列される波長板ユニットからなるが、本実施の形態では説明および図面を簡単にするために、図1に示すように、波長板ユニット3が二次元に6行6列で配列されるものとする。1つの波長板ユニット3は、矩形状であって、その光学軸4が一方向となるように構成される。上記光学機能素子1を構成する多数(図1では6行6列で36個)の波長板ユニット3のうち、行および列で隣り合う4つの波長板ユニット3の光学軸4方向は、いずれも異なるとともに、規則的にされている。一例として、図1に示すように、行および列で隣り合う4つの波長板ユニット3の光学軸4は、互いに45°をなしている。このように光学軸4方向を規則的にするのは、光学機能素子1に入力された入射光の偏光方向を知るためである。具体的には、光学機能素子1に入射光が入力されると、入力された入射光の偏光方向と波長板ユニット3の光学軸4方向との関係により、入力された入射光の偏光方向が変化する。ここで、上記光学機能素子1に偏光子(ある所定方向の偏光のみを透過させる光学的な素子)が設けられたもの、つまり偏光イメージングセンサに使用される偏光イメージングフィルタに、入射光が入力される場合について説明する。上記光学機能素子1を透過した入射光は、上記光学軸4方向に従って、さまざまな偏光方向を有するものに変換される。この変換された入射光のうち、ある所定方向の偏光のみが上記偏光子を透過する。このため、上記偏光イメージングフィルタを透過した入射光は、その偏光方向によって光強度が異なる。この光強度の異なりから、光学機能素子1に入力された入射光の偏光方向が明らかになる。
図1は上記光学機能素子1の光学軸4を両矢印で模式的に示した図であるが、実際の光学軸4は、石英ガラス(透光部材の一例であり、以下では単にガラスという)に形成された屈折率変化領域(高屈折率部11および低屈折率部12からなる)の作用により定められる。この屈折率変化領域は、図7に基づいて後述するように、フェムト秒レーザ2(パルス幅が10−12秒〜10−15秒のパルスレーザ)をガラス10に照射することにより、当該フェムト秒レーザ2の集光位置に形成される。図2に示すように、高屈折率部11を線で表すと、各波長板ユニット3に平行線が見られる。すなわち、この平行線が、酸素過剰により屈折率が高くなった高屈折率部11である。一方で、上記平行線以外が、酸素欠陥により屈折率が低くなった低屈折率部12である。上記高屈折率部11および低屈折率部12からなる屈折率変化領域は、高屈折率部11および低屈折率部12が交互に現れているので、周期構造であるといえる。この周期構造が、ガラス10に波長板としての機能を与える。また、図1と図2との比較から明らかなように、上記光学軸4方向は、上記高屈折率部11の平行線と平行な方向である。
次に、光学軸4方向が規則的にされた1つの単位である、行および列で隣り合う4つの波長板ユニット3に着目して、図3および図4に基づき説明する。
図3は行および列で隣り合う4つの波長板ユニット3を模式的に示した斜視図であり、図4は図3の4つの波長板ユニット3を実際に示した斜視図である。波長板ユニット3は、図4に示すように、ガラス10の表面10sから浅い位置dに、つまりガラス10の表面10s近傍に、複数本の楕円柱状の屈折率変化領域(以下では単に楕円柱領域5という)が同一平面上で並列に(つまり筏状に)形成されたものである。そして、1つの波長板ユニット3は、同一の周期構造を有する楕円柱領域5が形成される。図7に示すように、一般に各楕円柱領域5,105は、楕円体の屈折率変化領域5s,105sが直線状に連なってなるものである。このような楕円体の屈折率変化領域5s,105sは、一定の偏光を有するとともに収束されたエネルギーの高いフェムト秒レーザ2,102をガラス10に照射することにより、当該フェムト秒レーザ2,102の集光位置に形成される。したがって、各楕円柱領域5,105は、上記フェムト秒レーザ2,102と、このフェムト秒レーザ2,102が照射されているガラス10とを相対移動させることにより、当該フェムト秒レーザ2,102の集光位置の軌跡に形成される。
次に、上記波長板ユニット3が二次元に多数行多数列で配列されてなる光学機能素子1の実施例1〜4に係る製造装置および製造方法について説明する。
まず、本実施例1に係る製造装置について図5に基づき簡単に説明する。
図5に示すように、上記光学機能素子1の製造装置20は、フェムト秒レーザ2の経路順に、レーザ出力器21、空間光位相変調器22、波長板23、ミラー25、レンズ27および電動ステージ29を備える。
上記レーザ出力器21は、空間光位相変調器22に向けてフェムト秒レーザ2を出力するものである。上記空間光位相変調器22は、そのホログラムにより、入射されたフェムト秒レーザ2の位相を変調するとともに、当該フェムト秒レーザ2を反射するものである。上記波長板23は、上記フェムト秒レーザ2における所定の直線偏光を回転させるものである。上記ミラー25は、波長板23を透過したフェムト秒レーザ2を、ガラス10に向けて反射するものである。上記レンズ27は、ガラス10に照射されるフェムト秒レーザ2を収束するものであり、ガラス10の表面から浅い位置でエネルギーの高いフェムト秒レーザ2が集光するように位置の調整が可能である。上記電動ステージ29は、上記ガラス10を載置するとともに上記フェムト秒レーザ2に対して当該ガラス10を移動させ得るものである。
次に、上記製造装置20を使用した光学機能素子1の製造方法について説明する。
予め、ガラス10の表面から浅い位置にエネルギーの高いフェムト秒レーザ2が集光するように、レンズ27の位置を調整、正確にはレンズ27とガラス10との距離を調整する。この調整の目的は、これまでの実験値(例えば図14〜図17に示すグラフ)に基づき、形成される屈折率変化領域5の位相差が最も大きくなる位置と、エネルギーの高いフェムト秒レーザ2が集光する位置とを一致させることである。次に、図5に示すように、レーザ出力器21からエネルギーの高い(1.0μJ以上)フェムト秒レーザ2を出力させる。このフェムト秒レーザ2は、空間光位相変調器22により、位相が変調されるとともに、上記波長板23およびミラー25に向けて反射される。そして、このフェムト秒レーザ2は、上記波長板23により所定の偏光方向に変換されて、ミラー25によりガラス10に向けて反射される。ミラー25により反射されたフェムト秒レーザ2は、レンズ27により収束して、ガラス10に表面10sから照射されて浅い位置に集光する。
図7における左側に示すように、ガラス10との距離が調整されたレンズ27により収束されるとともに空間光位相変調器22により位相が変調されたフェムト秒レーザ2(図7における左側)をガラス10に照射すると、ガラス10の表面10sから浅い位置dに、フェムト秒レーザ2が集光して、楕円体の屈折率変化領域5sが形成される。なお、屈折率変化領域5sが照射方向で長径となる楕円体なのは、球面収差およびレーザのエネルギー密度の影響による。この影響により、フェムト秒レーザ2が、ガラス10に照射された状態でガラス10での照射方向の光強度分布が伸長する。なお、光強度分布が伸長するとは、光強度分布の散布度が上昇することを意味する。そして、電動ステージ29により、照射方向に対して垂直な方向にガラス10を相対移動させると、ガラス10の表面10sから浅い位置dに、つまりガラス10の表面10s近傍に楕円柱領域5が形成される。このような楕円柱領域5を同一平面上で並列に(つまり筏状に)形成していくことで、図3および図4に示す波長板ユニット3が形成される。また、このような波長板ユニット3を二次元に多数行多数列で配列することで、図1および図2に示す光学機能素子1が製造される。
ここで、従来例として図7における右側に示すように、レンズ27とガラス10との距離を最適なものに調整せず、且つフェムト秒レーザ102の位相を変調しない場合、すなわち、ガラス10との距離が最適なものに調整されないレンズ27により収束されるとともに位相が変調されないフェムト秒レーザ102(図7における右側)をガラス10に照射すると、ガラス10の表面10sから深い位置Dに楕円体の屈折率変化領域105sが形成される。この場合、楕円柱領域105が、ガラス10の表面10s近傍ではなく、ガラス10の表面10sから深い位置Dに波長板ユニットが形成されてしまうことになる。このため、従来のようにフェムト秒レーザ102の位相を変調しない場合、ガラス10の表面10s近傍に楕円柱領域5(照射方向で長径となる楕円柱状の屈折率変化領域)が形成された光学機能素子1を製造することはできない。仮に、ガラス10の表面から浅い位置dにフェムト秒レーザ102が集光するようにレンズ27とガラス10との距離を調整しても、フェムト秒レーザ102の位相を変調しない場合、比較例として図8における右側に示すように、ガラス10の表面10sから浅い位置dに屈折率変化領域105sが形成されるものの、この屈折率変化領域105sは、照射方向で長径ではなく短径の楕円体となり、位相差が小さくなる。このため、ガラス10に照射される前のフェムト秒レーザ2の位相を変調することにより、ガラス10に照射されるフェムト秒レーザ2の光強度分布を伸長させる必要がある。なぜなら、上記光強度分布を伸長させることで、図8における左側に示すように、形成される楕円柱領域5の横断面が照射方向を長軸とした適切な楕円となるからである。ここで、屈折率変化領域の位相差について、次の式(1)が成立する。
(位相差)=(複屈折率)×(複屈折領域の照射方向長さ)・・・(1)
すなわち、位相差は複屈折領域の照射方向長さに比例するので、位相差を大きくするには、楕円柱領域5の横断面を照射方向にできるだけ長くする方がよいとも思われる。そして、楕円柱領域5の横断面を照射方向に長くするには、上述した光強度分布の調整を利用する。集光深さの違いによる加工形状の差異を考えた場合、集光するレンズ27とガラス10の屈折率の関係により球面収差が生じるため、集光深さが深い位置でより球面収差の影響が強くなり光強度分布が照射方向に伸び、複屈折領域の照射方向の長さが伸長する。そのため、十分に高いエネルギーのフェムト秒レーザ2を集光した場合、浅い位置よりも深い集光位置の方が、位相差が大きくなる。しかしながら、楕円柱領域5の横断面を照射方向に長くし過ぎると、全体として構造変化を誘起するエネルギー密度が低下し、結果として、複屈折率が下がる、または複屈折領域として作用する照射方向長さが短くなってしまうので、位相差を却って小さくしてしまう。したがって、位相差を大きくするには、楕円柱領域5の横断面を照射方向に適切に長くすべきであり、このために上記フェムト秒レーザ2の位相を変調することが必要である。つまり、光強度分布さえ適切にすれば、浅い位置にも高い位相差を形成することは可能である。
上記変調を空間光位相変調器22により行うと、楕円柱領域5の横断面がより適切な楕円になり、光学機能素子1の位相差がより高くなる。この実験例として、図6のグラフに示すように、空間光位相変調器22のホログラムで位相が変調されたフェムト秒レーザ2(グラフ上の符号6)と、位相が変調されないフェムト秒レーザ102(グラフ上の符号106)とで、エネルギーを1.0から2.0μJまで高くしていった場合に、ガラス10の表面10sから浅い位置d(深さ50μm)に形成される屈折率変化領域の位相差を調べた。なお、これらフェムト秒レーザ2,102は、いずれも加工速度を10μm/sとした。この結果、ホログラムで位相が変調されたフェムト秒レーザ2の場合(符号6)の方が、位相が変調されないフェムト秒レーザ102の場合(符号106)よりも、上記エネルギーを高くすることに伴う屈折率変化領域の位相差の上昇率が高くなった。この結果から、ガラス10に照射されるフェムト秒レーザ2の位相を空間光位相変調器22のホログラムにより変調することで、ガラス10の表面10s近傍に高い位相差の屈折率変化領域が効率良く形成されると言える。
このように、本実施例1に係る光学機能素子1の製造方法によると、透光部材であるガラス10の表面10s近傍に高い位相差の屈折率変化領域が効率良く形成された光学機能素子1を製造することができる。
上記実施例1では、フェムト秒レーザ2のガラス10に照射された状態での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、上述したように、収束される前のフェムト秒レーザ2の位相を空間光位相変調器22で変調することにより行われる。これに対して、本実施例2では、上記制御が他の透光部材(例えば、他のガラス)にフェムト秒レーザ102を完全に透過させることにより行われる。
以下、上記実施例1と異なる部分に着目して説明するとともに、上記実施例1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例2に係る光学機能素子1の製造方法を具体的に説明すると、上記実施例1の空間光位相変調器22を使用する代わりに、図9に示すように、ガラス10の表面10sに所定厚さD−dの他のガラス10’を載置する。この他のガラス10’の表面10’sからフェムト秒レーザ102が照射されて上記ガラス10の内部で集光する。これにより、上記他のガラス10’の表面10’sから深い位置Dに楕円体の屈折率変化領域105sが形成される。そして、フェムト秒レーザ102が照射される方向に対して垂直な方向にこれらガラス10,10’を相対移動させると、上記他のガラス10’の表面10’sから深い位置Dに楕円柱領域105が形成される。しかしながら、図10に示すように、楕円柱領域105が形成された後に上記他のガラス10’を上記ガラス10の表面10sから取り外すことで、結果的に、上記ガラス10の表面10sから浅い位置dに楕円柱領域105が形成されたことになる。なお、上記他のガラス10’に楕円柱領域105が形成されないのは、フェムト秒レーザ102のエネルギー密度が低いことによる。
このように、本実施例2に係る光学機能素子1の製造方法によると、透光部材であるガラス10の表面10s近傍に高い位相差の屈折率変化領域が効率良く形成された光学機能素子1を製造することができる。
上記実施例2では、フェムト秒レーザ2のガラス10に照射された状態での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、上述したように、他のガラス10’にフェムト秒レーザ2を完全に透過させることにより行われる。これに対して、本実施例3では、上記制御が上記ガラス10の表面からフェムト秒レーザ2を照射して透過させることにより行われ、且つ上記照射の後に、上記透光部材を表面から除去加工する。
以下、上記実施例1および2と異なる部分に着目して説明するとともに、上記実施例1および2と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例3に係る光学機能素子1の製造方法を具体的に説明すると、上記実施例1の空間光位相変調器22を使用せず、図11に示すように、ガラス10の表面10sからフェムト秒レーザ102が照射されて上記ガラス10の表面10sから深い位置Dで集光する。これにより、上記他のガラス10の表面10sから深い位置Dに楕円体の屈折率変化領域105sが形成される。そして、フェムト秒レーザ102が照射される方向に対して垂直な方向にこのガラス10を相対移動させると、上記他のガラス10の表面10sから深い位置Dに楕円柱領域105が形成される。しかしながら、図12に示すように、楕円柱領域105が形成された後に上記ガラス10を表面10sから所定厚さD−dだけ除去加工(例えば、切削、研磨またはエッチングなどの加工)することで、結果的に、上記ガラス10の表面10sから浅い位置dに楕円柱領域105が形成されたことになる。
このように、本実施例3に係る光学機能素子1の製造方法によると、透光部材であるガラス10の表面10s近傍に高い位相差の屈折率変化領域が効率良く形成された光学機能素子1を製造することができる。
上記実施例1〜3では、上述したように、フェムト秒レーザ2,102をガラス10,10’の表面10s,10s’から照射する。これに対して、本実施例4では、図13に示すように、フェムト秒レーザ102をガラス10の裏面10bからから照射する。これにより、フェムト秒レーザ102が、ガラス10に照射された状態での照射方向の光強度分布が伸長するように制御される。
以下、上記実施例1〜3と異なる部分に着目して説明するとともに、上記実施例1〜3と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例4に係る光学機能素子1の製造方法を具体的に説明すると、上記実施例1の空間光位相変調器22を使用せず、図13に示すように、所定厚さD+dのガラス10の裏面10bからフェムト秒レーザ102が照射されて上記ガラス10の裏面10bから深い位置Dで集光する。これにより、上記他のガラス10の裏面10bから深い位置Dに楕円体の屈折率変化領域105sが形成される。そして、フェムト秒レーザ102が照射される方向に対して垂直な方向にこのガラス10を相対移動させると、上記他のガラス10の裏面10bから深い位置Dに楕円柱領域105が形成される。しかしながら、ガラス10が所定厚さD+dなので、結果的に、上記ガラス10の表面10sから浅い位置dに楕円柱領域105が形成されたことになる。
このように、本実施例4に係る光学機能素子1の製造方法によると、透光部材であるガラス10の表面10s近傍に高い位相差の屈折率変化領域が効率良く形成された光学機能素子1を製造することができる。
ところで、上記実施例1では、空間光位相変調器22によりフェムト秒レーザ2の位相を変調するとして説明したが、ガラスホログラムなど他の手段により位相を変調してもよい。
また、上記実施例2では、透光部材および他の透光部材の一例として、いずれもガラス10,10’(石英ガラス)について説明したが、透光部材および他の透光部材で屈折率の異なるものを採用してもよい。例えば、ガラス10よりも屈折率の高いものとしては、光学ガラスまたはサファイアなどがあり、ガラス10よりも屈折率の低いものとしては、フッ化リチウム(LiF)またはフッ化マグネシウム(MgF)などである。
なお、光強度分布の計算結果を図18にコンター図およびグラフで示す。コンター図では、色の薄くなっている部分が屈折率変化領域105sに適する光強度となる部分であり、グラフでは、横軸が屈折率変化領域105sに適する光強度の量である。図18で明らかなように、フェムト秒レーザ102をガラス10の表面10sから浅い位置に集光させると、屈折率変化領域105sに適する光強度分布がフェムト秒レーザ102の照射方向に短くなる。
1 光学機能素子
2 フェムト秒レーザ
3 波長板ユニット
4 光学軸
5 楕円柱領域
10 ガラス
10s ガラスの表面
11 高屈折率部
12 低屈折率部
20 光学機能素子の製造装置
21 レーザ出力器
22 空間光位相変調器
23 直線偏光板
25 ミラー
27 レンズ
29 電動ステージ

Claims (5)

  1. 平行に配列された複数本の屈折率変化領域が形成されている波長板ユニットを二次元に複数行複数列で配列してなる光学機能素子を、レンズにより収束されたフェムト秒レーザを透光部材に照射することで当該透光部材から製造するための光学機能素子の製造方法であって、
    レンズと透光部材との距離を調整するステップと、
    フェムト秒レーザを出力するステップと、
    出力されたフェムト秒レーザを上記レンズにより収束するステップと、
    収束されたフェムト秒レーザを透光部材に照射するステップとを有し、
    上記フェムト秒レーザが、上記透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するように制御されたものであることを特徴とする光学機能素子の製造方法。
  2. フェムト秒レーザの透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、収束される前のフェムト秒レーザの位相を変調することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の光学機能素子の製造方法。
  3. フェムト秒レーザの透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、他の透光部材にフェムト秒レーザを完全に透過させることにより行われることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機能素子の製造方法。
  4. フェムト秒レーザの透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、上記透光部材の表面からフェムト秒レーザを照射して透過させることにより行われ、
    上記照射の後に、上記透光部材を表面から除去加工することを特徴とする請求項1または2に記載の光学機能素子の製造方法。
  5. フェムト秒レーザの透光部材に照射された状態で当該透光部材での照射方向の光強度分布が伸長するようにされる制御が、上記透光部材の裏面からフェムト秒レーザを透過させることにより行われることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機能素子の製造方法。

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