JP2017075679A - フォイル軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】起動時に軸を迅速に浮上できるようにし、かつその効果を長期にわたって維持できるようにする。【解決手段】フォイル軸受の軸受隙間に粒子23を供給する。トップフォイル部12a1に段差24を設け、トップフォイル部12a1の表面に沿う方向でかつ軸6の回転方向Rと直交する方向Nの両端部121,122から、当該両端部間の領域に向かう空気流を生じさせる。【選択図】図12

Description

本発明は、フォイル軸受に関する。
ターボ機械(例えばガスタービンやターボチャージャ)の主軸は高温環境下で高速回転する。また、ターボ機械では、エネルギー効率の観点から油循環用の補機を別途設けることが困難な場合がある他、潤滑油のせん断抵抗が主軸の高速回転化の阻害要因となる場合がある。そのため、ターボ機械の主軸の支持用軸受としては、潤滑油を使用した転がり軸受や動圧軸受ではなく、圧力発生流体として空気を用いる空気動圧軸受を使用する場合が多い。
空気動圧軸受としては、回転側の軸受面と静止側の軸受面の双方を剛体で構成したものが一般的である。しかしながら、この種の空気動圧軸受では、両軸受面間に形成される軸受隙間の隙間幅管理が不十分であると、安定限界を超えた際にホワールと称される自励的な軸の振れ回りが生じ易くなる。従って、一般的な空気動圧軸受において、軸受性能を安定的に発揮するには、軸受隙間の隙間幅を高精度に管理する必要がある。しかしながら、ターボ機械のように温度変化の大きい環境では、熱膨張の影響で軸受隙間の隙間幅が変動し易いため、軸受性能を安定的に発揮させるのが困難である。
ホワールが生じ難く、かつ温度変化の大きい環境下でも軸受隙間の隙間幅管理を容易にできる軸受としてフォイル軸受が知られている。フォイル軸受は、曲げに対して剛性の低い可撓性を有する金属薄板(フォイル)で軸受面を構成し、この軸受面のたわみを許容することで荷重を支持するものであり、軸受隙間が運転条件等に応じた適切な幅に自動調整されるという特徴を有する。例えば下記の特許文献1に、ラジアル荷重を支持するラジアルフォイル軸受の一例が開示されている。
ところで、フォイル軸受では、特に軸の低速回転時に、軸受隙間に形成される空気膜の剛性(圧力)が十分に高まっていないため、両軸受面が繰り返し摺動接触する。このような摺動接触に伴う軸受面の摩耗や回転トルクの上昇を抑制するため、特許文献1には、軸との間で軸受隙間を形成する各フォイルの表面に、DLC膜、チタンアルミナイトライド膜、あるいは二硫化モリブデン膜等の被膜を形成することが開示されている。
特開2012−92967号公報
軸の停止中は、図19に示すように、軸6の外周面とフォイル12の表面に形成した被膜21が広範囲にわたって接触した状態にある。この状態で、軸6の回転を開始しても、密着状態の軸6の外周面と被膜21の間に空気がスムーズに引き込まれないため、楔空間で十分な圧力が発生せず、軸6の浮上が遅れる点が問題となる。軸の浮上遅れは、エネルギーロス等の種々の不具合を招く。
そこで、本発明は、起動時に軸を迅速に浮上できるようにし、かつその効果を長期にわたって維持できるフォイル軸受を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、支持すべき軸との間に軸受隙間を形成する軸受面を備えたトップフォイル部と、トップフォイル部の背後に配置され、前記トップフォイル部を弾性的に支持する支持部とを有し、前記軸受隙間に生じた流体圧力で軸の相対回転を非接触状態で支持するフォイル軸受において、前記軸受隙間に粒子が供給され、かつトップフォイル部に、その表面に沿う方向でかつ前記相対回転方向と直交する方向の両端部から、当該両端部間の領域に向かう流体流れを生じさせる流体制御部を設けたことを特徴とする。
このように軸受隙間内に粒子を供給することにより、回転側部材(例えば軸)の停止中は、軸受隙間を介して対向する二つの面の間に介在した粒子がスペーサとして機能するため、当該二つの面の間に微小隙間が形成される。この場合、軸の回転開始直後からこの微小隙間に空気が引きこまれやすくなるため、楔空間に速やかに流体動圧を発生させて軸を早期に浮上させることが可能となる。
また、流体制御部により、軸受隙間に、トップフォイル部の両端部から、その間の領域に向かう流体流れが発生するため、軸受隙間外への粒子の漏れを防止することが可能となる。従って、フォイル軸受を長期間使用しても軸受隙間内の粒子が枯渇することはなく、粒子が奏する上記の効果を長期間得ることができる。
流体制御部は、前記軸受隙間の幅方向の段差で形成することができる。この段差は、支持部の形状に倣ってトップフォイル部を弾性変形させることで形成することができる。この場合、支持部の各部での支持反力を調整することにより、流体制御部(段差)の形状を任意に変更して、流体の流れ方向をコントロールすることができる。
例えば、前記相対回転方向の複数箇所にフォイルを配置し、各フォイルに前記トップフォイル部と、隣接するトップフォイル部を背後から支持するアンダーフォイル部とを設け、アンダーフォイル部で前記支持部を構成することができる。
アンダーフォイル部の後端に、前記相対回転方向に凹んだ切り欠き部を設ければ、トップフォイル部が切り欠き部の形状に倣って弾性変形するため、切り欠き部の形状を変更するだけで流体制御部(段差部)の形状をコントロールすることが可能となる。
粒子の粒径を、軸受隙間の最小幅よりも小さくすることにより、粒子が軸の回転中に軸受隙間の最小幅部に噛み込みにくくなる。そのため、軸の不安定挙動を抑制することができる。
前記相対回転方向の複数箇所にトップフォイル部を配置し、隣接するトップフォイル部の境界部に、前記軸受隙間の幅を、その最小幅よりも大きくした幅広部を設け、前記幅広部よりも反回転方向側のトップフォイル部に、当該トップフォイル部の表裏を貫通し、かつ前記幅広部に開口する流通孔を設ければ、流通孔から噴出する流体の流れにより、トップフォイル部上に堆積した粒子を吹き飛ばすことができる。そのため、この粒子を軸受隙間内で流動させることが可能となる。
このように本発明によれば、楔空間に速やかに流体動圧を発生させて軸を早期に浮上させることができる。そのため、回転側の部材を迅速に定常回転状態に移行させることが可能となる。また、粒子の軸受隙間外への漏れを防止できるため、上記の効果を長期にわたり安定的に得ることができる。
マイクロガスタービンの概略構成を示す図である。 マイクロガスタービンのロータ支持構造の概略構成を示す図である。 本発明にかかるフォイル軸受の断面図である。 フォイルの平面図である。 連結した二枚のフォイルを裏面側から見た平面図である。 三枚のフォイルを仮組みした状態を示す斜視図である。 フォイルの仮組体をフォイルホルダに取り付ける様子を示す斜視図である。 フォイル重複部を拡大して示す断面図である。 トップフォイル部を拡大して示す断面図である(軸の定常回転状態)。 トップフォイル部を拡大して示す断面図である(軸の回転開始直後)。 連結した二枚のフォイルを表面側から見た平面図である。 図11中のX−X線断面を拡大して表す図である。 図12中のY−Y線断面図である。 連結した二枚のフォイルを表面側から見た平面図である。 連結した二枚のフォイルを表面側から見た平面図である。 連結した二枚のフォイルを表面側から見た平面図である。 ラジアルフォイル軸受を展開して表した断面図である。 ラジアルフォイル軸受の他の実施形態を示す断面図である。 従来のフォイル軸受のトップフォイル部を拡大して示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、ターボ機械の一例として、マイクロガスタービンと称されるガスタービン装置の構成を概念的に示す。このガスタービン装置は、主要な構成として、翼列を形成したタービン1と、圧縮機2と、発電機3と、燃焼器4と、再生器5とを備える。タービン1および圧縮機2は、水平方向に延びる軸6に取り付けられて軸6と共に回転側のロータを構成する。軸6の軸方向一端は発電機3に連結されている。このマイクロガスタービンが運転されると、吸気口7から空気が吸入され、吸入された空気は、圧縮機2で圧縮されると共に再生器5で加熱された上で燃焼器4に送り込まれる。燃焼器4は、圧縮・加熱された空気に燃料を混合してこれを燃焼させることにより高温・高圧のガスを発生させ、このガスによりタービン1を回転させる。タービン1が回転すると、その回転力が軸6を介して発電機3に伝達され、発電機3が回転駆動される。発電機3が回転駆動することにより生じた電力は、インバータ8を介して出力される。タービン1を回転させた後のガスは比較的高温であるため、このガスを再生器5に送り込んで燃焼前の圧縮空気との間で熱交換を行うことで、燃焼後のガスの熱を再利用する。再生器5で熱交換を終えたガスは、排熱回収装置9を通ってから排ガスとして排出される。
図2に、図1に示したマイクロガスタービンにおけるロータの支持構造の一例を概念的に示す。この支持構造では、軸6の周囲にラジアル軸受10が配置され、軸6に設けたフランジ部6bの軸方向両側にそれぞれスラスト軸受30が配置される。これらラジアル軸受10およびスラスト軸受30により、軸6がラジアル方向およびスラスト両方向に回転自在に支持される。この支持構造において、タービン1と圧縮機2の間の領域は、高温・高圧のガスで回転されるタービン1に隣接している関係上高温雰囲気となる。加えて、軸6は、数万rpm以上の回転速度で回転する。そのため、この支持構造で使用する軸受10,30としては、空気動圧軸受、特にフォイル軸受が適合する。
以下、本発明の実施の形態であって、上記のマイクロガスタービン用のラジアル軸受10に適合するフォイル軸受を図面に基づいて説明する。
図3に示すように、ラジアルフォイル軸受10は、円筒面状の内周面11aを有するフォイルホルダ11と、フォイルホルダ11の内周面11a上で、軸6の回転方向の複数箇所に配置されたフォイル12とを有する。図示例のフォイル軸受10は、内周面11aに3枚のフォイル12が周方向に並べて配置された、いわゆる多円弧型のフォイル軸受である。フォイル12の内径側に軸6が挿入されている。
フォイルホルダ11は、例えば焼結金属や溶製材等の金属(例えば鋼材)で形成することができる。フォイルホルダ11の内周面11aのうち、回転方向Rに離隔した複数箇所(フォイル数と同数)には、各フォイル12の取り付け部となる軸方向溝11bが形成されている。
フォイル12は、ばね性に富み、かつ加工性のよい金属、例えば鋼材料や銅合金からなる厚さ20μm〜200μm程度の帯状フォイルを、プレス加工等により所定形状に加工することで形成される。鋼材料や銅合金の代表例として、炭素鋼や黄銅を挙げることができるが、一般的な炭素鋼では、雰囲気に潤滑油が存在せず油による防錆効果が期待できないため、錆による腐食が発生し易くなる。また、黄銅では加工ひずみによる置き割れを生じることがある(黄銅中のZnの含有量が多いほどこの傾向が強まる)。そのため、帯状フォイルとしては、ステンレス鋼もしくは青銅製のものを使用するのが好ましい。
図4に示すように、フォイル12は、軸6の回転方向R側の第一領域12aと、反回転方向側の第二領域12bとを有する。
第一領域12aは、軸受面Xを形成するトップフォイル部12a1と、トップフォイル部12a1の表面に沿い、かつ回転方向Rと直交する方向N(以下、単に「直交方向Nと呼ぶ」)の両端および中央に設けられ、かつ、それぞれ回転方向Rに突出する凸部12a2とを有する。凸部12a2の基端部には、フォイル縁部から反回転方向に延びる微小な切り込み12a3が設けられている。
第二領域12bの後端12d(反回転方向側の端部)には、前記直交方向Nに離隔して、回転方向Rに向けて凹んだ二つの切り欠き部12b2が形成される。各切り欠き部12b2の前記直交方向Nにおける幅寸法は、回転方向Rに向けて徐々に縮小している。本実施形態では、切り欠き部12b2全体を円弧状に形成した場合を例示しているが、各切り欠き部12b2は、頂部を尖端状とした略V字状に形成することもできる。各切り欠き部12b2の前記直交方向両側には、それぞれ反回転方向に突出する突出部12b1が形成されている。
第一領域12aと第二領域12bの境界で、かつ前記直交方向Nの両端および中央には、隣接するフォイル12の凸部12a2が差し込まれる差込口12c1、12c2、12c1が設けられる。このうち、両端の差込口12c1は、前記直交方向Nに直線状に延びて、フォイル12の両端部にそれぞれ開口している。中央の差込口12c2は、前記直交方向Nに沿って延びる直線状の切り欠き部分と、該切り欠き部分から反回転方向側に延び、その先端を円弧状とした幅広の切り欠き部分とからなる。各差込口12c1,12c2,12c1の間の領域12c3により、第一領域12aと第二領域12bが連結された状態にある。
図5に示すように、一方のフォイル12の各凸部12a2、12a2、12a2を、隣接するフォイル12の差込口12c1、12c2、12c1にそれぞれ差し込むことにより、2枚のフォイル12を連結する事ができる。同図中では、組み合わせ後の二つのフォイル12のうち、一方のフォイル12にグレーの色を付している。
そして、図6に示すように、3枚のフォイル12を図5と同様の結合手法により周状に連結する事で、各フォイル12を仮組みの状態にする事ができる。この仮組体を、図7に示すように、筒状にしてフォイルホルダ11の内周に矢印B2の方向へ挿入する事で、フォイル軸受10が組み立てられる。具体的には、3枚のフォイル12の仮組体をフォイルホルダ11の内周に挿入しながら、各フォイル12の凸部12a2を、フォイルホルダ11の一方の端面に開口した軸方向溝11b(図7参照)に軸方向一方側から差込む。以上により、3枚のフォイル12が、フォイルホルダ11の内周面11aに回転方向Rに並べた状態で取り付けられる。
この状態では、図8に示すように、各フォイル12の回転方向Rの端部に形成された凸部12a2は、隣接するフォイル12の背後でフォイルホルダ11に保持される。具体的には、各フォイル12の凸部12a2は、隣接するフォイル12の差込口12c1(12c2)を介して、フォイルホルダ11の軸方向溝11bに嵌合している。一方、各フォイル12の反回転方向側に位置する第二領域12bは、隣接するフォイル12のトップフォイル部12a1とフォイルホルダ11の内周面11aとの間に配されてアンダーフォイル部を構成する。アンダーフォイル部12bは、隣接するフォイル12のトップフォイル部12a1を背後から弾性的に支持する支持部として機能する。トップフォイル部12a1とアンダーフォイル部12bが重なり合った部分はフォイル重複部Wを構成する。このフォイル重複部Wは、回転方向Rの複数箇所(本実施形態では三カ所)に形成される。
このフォイル軸受10では、図3に示すように、各フォイル12の回転方向R側の一端(凸部12a2)がフォイルホルダ11に取り付けられると共に、反回転方向側の領域が他のフォイル12と係合した状態にある。これにより、隣接するフォイル12同士が回転方向Rで互いに突っ張り合った状態となるため、各フォイル12のトップフォイル部12a1がフォイルホルダ11側に張り出し、フォイルホルダ11の内周面11aに沿った形状に湾曲する。各フォイル12の回転方向R側への移動は、各フォイル12の凸部12a2が軸方向溝11bに突き当たるために規制されるが、各フォイル12の反回転方向側への移動は規制されず、各フォイル12は反回転方向に移動可能の状態にある。
図8に示すように、軸方向溝11bがフォイルホルダ11の内周面の接線方向に対して角度θ1だけ傾斜して設けられるため、軸方向溝11に挿入された凸部12a2の近傍では、トップフォイル部12a1がフォイル12全体の湾曲方向(フォイルホルダ11の内周面11aの湾曲方向)と逆方向に湾曲しようとする。また、トップフォイル部12a1は、アンダーフォイル部12bに乗り上げることで、フォイルホルダ11の内周面11aから離反する方向に傾斜した状態で立ち上がる。これらの作用により、トップフォイル部12a1がフォイルホルダ11に弾性的に支持された状態となり、そのためにトップフォイル部12a1が軸6の変位や熱膨張等に追従して変形可能となる。
図3に示すように、軸6の一方向回転中は、トップフォイル部12a1の軸受面Xと軸6の外周面の間に楔空間が形成される。この楔空間に生じた空気膜の圧力により、軸6が浮上力を受けるため、各フォイル12の軸受面Xと軸6の間に環状のラジアル軸受隙間Cが形成され、軸6がフォイル12に対して非接触の状態で回転自在に支持される。トップフォイル部12a1の弾性変形により、ラジアル軸受隙間Cの隙間幅は運転条件等に応じた適正幅に自動調整されるため、軸6の回転が安定的に支持される。なお、図3においては理解の容易化のためラジアル軸受隙間Cの隙間幅を誇張して描いている(図9、図10、図12、図17〜図19も同じ)。
既に述べたように、フォイル軸受10においては、軸6の回転開始直後および軸6の停止直前にトップフォイル部12a1と軸6の外周面が接触する。この接触部における耐摩耗性や潤滑性の向上を図るため、図9に示すように、軸受隙間Cを介して対向する軸6の外周面およびトップフォイル部12a1の表面(軸と対向する面)のうち、何れか一方または双方に被膜21が形成される(図9ではトップフォイル部12a1の表面に被膜21を形成した場合を例示している)。この被膜21としては、例えばDLC膜、チタンアルミナイトライド膜、二硫化タングステン膜、二硫化モリブデン膜、あるいは樹脂膜等が使用可能である。なお、被膜21は少なくともトップフォイル部12a1の表面に形成されるが、これ以外のフォイル12の面(例えばフォイル12の裏面も含む全面)に被膜21を形成する場合もある。また、フォイルホルダ11の内周面11aに被膜21を形成する場合もある。
本発明のフォイル軸受10では、その組み立て完了時点でラジアル軸受隙間C内に多数の粒子23が供給される。図9に示すように、軸6の回転中は、この粒子23がラジアル軸受隙間C内を浮遊・流動する。
図10に示すように、軸6の停止中は、ラジアル軸受隙間Cを介して対向する二つの面(本実施形態では軸6の外周面と被膜21の表面)の間に粒子23が介在してスペーサとして機能するため、これら二つの面の間に微小な隙間Csが形成される。図19に示した従来構造のように、二つの面が互いに密着することはない。そのため、軸6の回転開始直後からこの微小な隙間Csに空気が引きこまれやすくなり(図中の黒塗り矢印で空気の流れを示す)、楔空間に速やかに十分な空気圧(動圧)を発生させて軸6を浮上させることができる。従って、軸6を迅速に定常回転に移行させることが可能となる。
軸6の回転中に、軸受隙間Cを形成する二つの面の間に粒子23が噛み込んだ場合でも、軸6の回転に伴って粒子23が転動するため、フォイル12と軸6の間に生じる摩擦力を低減することができる。従って、被膜21の摩耗が進んだ場合でも、トップフォイル部12a1の表面や軸6の外周面が急激に摩耗することはない。このように両面がマイルドに摩耗するため、トップフォイル部12a1や軸6が直ちに致命的なダメージ(凝着や焼き付き等)を受けることはない。このマイルド摩耗により生じた摩耗粉や被膜21の摩耗粉は、上記の粒子23と同等の機能を奏し、軸6の停止時に微小隙間Csを形成するため、何らかの要因で軸受隙間C内の粒子23数が減少した場合も、軸6を迅速に定常回転に移行させることができる。なお、軸6やフォイル12を何れも鋼材料で形成した場合、これら部材が摩耗することで生じた摩耗粉は、直ちに酸化されて酸化鉄となる。
粒子23の硬度がトップフォイル部12a1の表面や軸6の外周面の硬度よりも高い場合には、粒子23が砥粒として機能し、母材の摩耗粉(この摩耗粉が酸化することで形成される酸化物粉末も含む)の生成が促進される。この摩耗粉は上記のとおり、起動時の隙間Csの形成に寄与するものであるから、摩耗粉の生成が促進されること自体には特に問題はない。一方、粒子23の硬度がトップフォイル部12a1の表面や軸6の表面と同程度、あるいはそれ以下の場合には、トップフォイル部12a1の表面と軸6の表面の間に粒子23が噛み込みにくくなるため、軸6の不安定挙動(回転トルクの変動等)を抑制することができる。従って、粒子23の材質には、特別な制約はなく、例えば、酸化鉄(Fe23)やアルミナ(Al23)等の金属酸化物の粉末、二硫化モリブデン(MoS2)や二硫化タングステン(WS2)等の硫化物の粉末、銅(Cu)、銀(Ag)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)等の軟質金属の粉末、黒鉛粉に代表される炭素系粉末等が粒子23として広く使用可能である。以上で例示した粉末は、一種のみを用いても良いし、複数種を混合して使用しても良い。
特にフォイル12および軸6の素材として鋼材料を使用した場合、前記粒子23として酸化鉄を使用することで、粒子の主要元素(Fe)がフォイル12および軸6の素材に含まれる主要元素と共通することになる。この場合、フォイル12や軸部材6から生じた摩耗粉(酸化した摩耗粉)が粒子23と同等の組成となり、かつ当該粒子23と同等の機能を奏するため、微小隙間Csの管理がより容易なものとなり、軸6を安定して定常回転状態に移行させることが可能となる。また、前記粒子23として、潤滑性に優れる粒子、例えば銅粉を使用した場合には、軸6とトップフォイル部12a1との摺動接触部における摩擦力が低下するため、軸の不安定挙動を抑制することができる。
このように、粒子23は、重要視される効果等を勘案し、フォイル12および軸6の何れか一方または双方の素材と同種の材料(主要元素が共通する材料)で形成し、あるいはフォイル12および軸6の何れの素材とも異なる異種材料(主要元素が互いに異なる材料)で形成することができる。
粒子23の粒径は、軸受隙間Cの最小幅Cminよりも小さくするのが好ましい。具体的には、レーザ回析・散乱法を用いて測定した時の粒子23の平均粒径が軸受隙間Cの最小幅Cminよりも小さくなるように粒子23を選定する。これにより、軸6の定常回転中は、粒子23が軸受隙間Cの最小幅部分をスムーズに通過するため、軸6の不安定挙動を低減することが可能となる。また、粒子23の平均粒径が、軸6やトップフォイル部12a1の表面粗さ(JIS B 0601に規定の算術平均粗さ)以上となるように粒子23を選定するのが好ましい。
ところで、このように軸受隙間C内に粒子23を流動・浮遊させる場合、軸受隙間Cからの粒子23の漏れを何らかの手段で防止する必要がある。漏れ防止構造として、転がり軸受等のシール装置で使用される接触式のシールを用いると、トルクロスが増大し、また、タービンの近傍のような高温環境下では、シール部材が早期に劣化してシール機能が損なわれるおそれがある。一方、ラビリンス隙間等を用いた非接触シールでは、高温環境下で使用した際の熱膨張との関係で、隙間幅の管理が難しくなり、安定したシール機能を得ることが困難となる。
かかる事情に鑑み、本発明では、軸受隙間C内の空気の流れを積極的に制御することで、軸受隙間Cからの粒子23の漏れを防止することにしている。
図11は、この着想の具体例を示すもので、図5に示す二枚のフォイル12の連結体を、図5とは逆の表面側から見た状態を示す平面図である。図11に示すように、本発明では、トップフォイル部12a1に、前記直交方向の両端部121,122から、当該両端部間の領域に向かう空気流を生じさせる流体制御部24を設けている。
図12は、図11中のX−X線断面を拡大して表している。図12に示すように、流体制御部24は、例えば、トップフォイル部12a1の表面に設けたテーパ状の段差部で形成することができる。この段差部24は、軸受隙間Cの幅方向に段差Sを有するものである。既に述べたように、フォイル重複部Wでは、トップフォイル部12a1がアンダーフォイル部12bに乗り上げた形になっているため、トップフォイル部12a1のうち、アンダーフォイル部12bの後端12dと重なった領域付近に段差Sが形成される。軸6の回転中は、流体圧力によりトップフォイル部12a1がアンダーフォイル部12bに押さえ付けられるため、トップフォイル部12a1は、アンダーフォイル部12bの後端12dに設けられた切り欠き部12b2(図2参照)の形状に倣うように弾性変形する。トップフォイル部12a1には切り込み12a3が形成されており、この切り込み12a3によってトップフォイル部12a1の剛性が低下しているため、トップフォイル部12a1はスムーズに弾性変形することができる。
この際、切り欠き部12b2が回転方向R側に凹んだ形状であるため、前記直交方向Nの断面(図12のY−Y断面)で見ると、図13に示すように、トップフォイル部12a1は、切り欠き部12b2の頂部を通る中心線を底とした凹形状に変形する。図11中の一点鎖線は、以上の形態を有する段差部24の等高線の一例を表している。
このような形態の段差部24をトップフォイル部12a1に形成することにより、軸6の回転中は、図11に示すように、段差部24に面した軸受隙間Cに、トップフォイル部12a1の両端121,122から、その間の領域に向かう、前記直交方向Nに対して傾斜した方向の空気流(矢印で示す)が発生する。軸受隙間C内の粒子23は、この空気流に乗って軸受隙間C内を流動するため、軸受隙間C外への粒子23の漏れを防止することが可能となる。軸6の停止中は、粒子23がファンデルワールス力等により、軸6の外周面やトップフォイル部12a1の表面に付着するため、軸受隙間Cからの粒子23の漏れが抑制される。以上の作用から、フォイル軸受10を長期間使用しても軸受隙間C内の粒子22が枯渇することはなく、粒子23が奏する上記の効果を長期にわたり得ることができる。
これに対し、図14に示すように、アンダーフォイル部12bに切り欠き部12b2を設けず、アンダーフォイル部12bの後端12dを前記直交方向Nと平行な直線状とした場合、図11に示す傾斜状の空気流が生じないため、上記の効果は得られない。
この実施形態のフォイル軸受では、図12に示すように、フォイル重複部Wのうち、段差部24の回転方向R側の端部付近で軸受隙間Cが最小幅Cminとなる。この最小幅Cminとなる部分のうち、各切り欠き部12b2の頂部の延長線と交差する領域が軸受隙間Cの最大圧力発生部となる。本実施形態では、この最大圧力発生部が前記直交方向Nの二カ所に形成されるため、一つのフォイル軸受10でモーメント荷重を支持することができる。
図11に示す実施形態では、アンダーフォイル部12bのうち、両端部121,122に隣接する後端12dを前記直交方向Nに対して平行な直線状に形成しているが、図15に示すように、当該後端12dを凹状の切り欠き部12b2に滑らかにつながる傾斜形状として、切り欠き部12b2と一体にしてもよい。これによりフォイル両端部121,122付近における空気流の傾斜角度が、図11に示す実施形態に比べてより一層大きくなるため、軸受隙間外への粒子23の漏れをより確実に防止することが可能となる。
また、図11に示す実施形態では、前記直交方向Nに二つの切り欠き部12b2を形成した場合を例示したが、切り欠き部12b2の数は任意である。一例として、図16では、切り欠き部12b2の数を一つとした場合を例示している。この場合、前記直交方向Nでは、ラジアル軸受隙間Cにおける最大圧力発生部が一個所のみに形成される。
なお、以上の説明では、トップフォイル部12a1に形成した段差部24の形状を、切り欠き部12b1の形状を異ならせることでコントロールする場合を例示しているが、段差部24の形状は、これ以外の任意の方法でコントロールすることが可能である。例えば、アンダーフォイル部12bに軸受隙間Cの幅方向に突出する多数の突出部を形成し、突出部の配置パターンを変更することで段差部24の形状をコントロールする手法や、フォイルホルダ11の内周面11aに、当該内周面11aに対して起立する多数の繊維体を植設し、繊維体の密度パターンを変更することで段差部24の形状をコントロールする手法等が考えられる。何れの手法でも、突出部や繊維体がトップフォイル部12a1を弾性的に支持する支持部を構成する。
ところで、本発明のフォイル軸受10のように、軸受隙間Cに粒子23を流動させる場合、トップフォイル部12a1の表面の特定箇所に粒子23が堆積し易くなる。例えば、多円弧型のラジアルフォイル軸受10では、図17に示すように、隣接する二つのフォイル12の境界部25付近の軸受隙間Cに、その最小幅Cminよりも幅広の幅広部C1が形成されるが、この幅広部C1は空気流が澱む領域であるため、幅広部C1のうち、特に境界部25よりも回転方向側のトップフォイル部12a1の表面に粒子23が堆積しやすい。このように粒子23が特定箇所に堆積すると、その分だけ軸受隙間Cを流動する粒子23の数が減るため、粒子23が奏する上記の効果が減殺される。なお、図17では、理解の容易化のため、各部材を平面状に展開した状態を表している。
以上の問題を解決するため、図17に示すように、幅広部C1のうち、境界部25よりも反回転方向側のトップフォイル12a1に、その表裏を貫通し、幅広部C1に開口する流通孔26を形成するのが好ましい。このように流通孔26を形成することで、軸6の回転開始時には、軸受隙間C内での空気の流動に引き込まれる形で、トップフォイル部12a1の背後の空間から流通孔26に空気が引き込まれ、幅広部C1に向けて空気流が噴出される。この空気流により、堆積した粒子23が吹き飛ばされるため、粒子23を再び軸受隙間C内で流動させることが可能となる。従って、粒子23の有効活用を図ることができる。
以上の説明では、フォイル軸受として、いわゆる多円弧型のラジアルフォイル軸受を例示したが、フォイル軸受の形態はこれに限られるものではなく、任意の形態のフォイル軸受に本発明を適用することができる。例えば図18に示すように、回転方向Rに配置した各フォイル12のうち、回転方向R側の端部(前端)をそれぞれ自由端とした、いわゆるリーフ型のフォイル軸受にも本発明を適用することができる。リーフ型のフォイル軸受では、フォイルホルダ11に取り付けた各リーフ12のうち、回転方向R側の領域がトップフォイル部12a1を形成し、反回転側の領域がトップフォイル部12a1の背後でトップフォイル部12a1を支持するアンダーフォイル部12b(支持部)を構成する。アンダーフォイル部12bにトップフォイル部12a1が乗り上げることでトップフォイル部12a1に弾性が付与される。アンダーフォイル部12bの後端12dに切り欠き部を設ける等して当該後端12dの形状を変更することにより、段差部24の形状をコントロールすることができる。また、図示は省略するが、軸6とトップフォイル部の間にスラスト軸受隙間を形成するスラストフォイル軸受(図2の符号30参照)にも本発明を同様に適用することができる。
また、以上の説明では、軸6を回転側部材とし、フォイルホルダ11を固定側部材とした場合を例示したが、これとは逆に軸6を固定側部材とし、フォイルホルダ11を回転側部材とする場合にも本発明を適用することができる。但し、この場合はフォイル12が回転側部材となるので、遠心力によるフォイル12全体の変形を考慮してフォイル12の設計を行う必要がある。
さらに、本発明にかかるフォイル軸受は、上述したガスタービンに限られず、例えば過給機のロータを支持するフォイル軸受としても使用することができる。以上の例示に限らず、本発明にかかるフォイル軸受は、自動車等の車両用軸受、さらには産業機器用の軸受として広く使用することが可能である。また、本実施形態の各フォイル軸受は、圧力発生流体として空気を使用した空気動圧軸受であるが、これに限らず、圧力発生流体としてその他のガスを使用することもでき、あるいは水や油などの液体を使用することも可能である。
6 軸
10 フォイル軸受
11 フォイルホルダ
11a 内周面
11b 軸方向溝(取り付け部)
12 フォイル
12a 第一領域
12a1 トップフォイル部
12b 第二領域(アンダーフォイル部)
12b1 突出部
12b2 切り欠き部
12d 後端
21 被膜
23 粒子
25 境界部
26 流通孔
121,122 両端部
C 軸受隙間
C1 幅広部
R 回転方向
N トップフォイル部の表面に沿い、かつ回転方向と直交する方向

Claims (7)

  1. 支持すべき軸との間に軸受隙間を形成する軸受面を備えたトップフォイル部と、トップフォイル部の背後に配置され、前記トップフォイル部を弾性的に支持する支持部とを有し、前記軸受隙間に生じた流体圧力で軸の相対回転を非接触状態で支持するフォイル軸受において、
    前記軸受隙間に粒子が供給され、かつトップフォイル部に、その表面に沿う方向でかつ前記相対回転方向と直交する方向の両端部から、当該両端部間の領域に向かう流体流れを生じさせる流体制御部を設けたことを特徴とするフォイル軸受。
  2. 前記流体制御部を、前記軸受隙間の幅方向の段差で形成した請求項1記載のフォイル軸受。
  3. 前記段差を、前記支持部の形状に倣ってトップフォイル部を弾性変形させることで形成した請求項2記載のフォイル軸受。
  4. 前記相対回転方向の複数箇所にフォイルを配置し、各フォイルに前記トップフォイル部と、隣接するトップフォイル部を背後から支持するアンダーフォイル部とを設け、アンダーフォイル部で前記支持部を構成した請求項1〜3何れか1項に記載のフォイル軸受。
  5. アンダーフォイル部の後端に、前記相対回転方向に凹んだ切り欠き部を設けた請求項4に記載のフォイル軸受
  6. 前記粒子の粒径を、前記軸受隙間の最小幅よりも小径にした請求項1〜5何れか1項に記載のフォイル軸受。
  7. 前記相対回転方向の複数箇所にトップフォイル部を配置し、隣接するトップフォイル部の境界部に、前記軸受隙間の幅を、その最小幅よりも大きくした幅広部を設け、前記幅広部よりも反回転方向側のトップフォイル部に、当該トップフォイル部の表裏を貫通し、かつ前記幅広部に開口する流通孔を設けた請求項1〜6何れか1項に記載のフォイル軸受。
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