JP2017075112A - 抗認知症用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規抗認知症薬を創薬する際のリード化合物としても利用できるとともに、加工し易く、安全で安価な食品由来な抗認知症用組成物を提供する。【解決手段】本発明の抗認知症用組成物は、ヒペロシドを含有することを主要な特徴とする。なお、抗認知症用組成物はサンショウ果皮の抽出物が好ましい。【選択図】なし
Description
本発明は、ヒペロシド(hyperoside)を有効成分として含有する抗認知症用組成物に関する。
21世紀に入って、先進国では高齢化が進行しており、特に我が国では2020年には4人に1人が高齢者となると予想されている。高齢化社会においては、高齢者の生活の質の向上、社会福祉費用の増加を防ぐ等の観点から、高齢者の健康維持が求められている。
高齢者に多い病気の中でも、アルツハイマー型認知症は、認知機能の低下、人格の変化を主な症状とする疾患であり、介護による家族崩壊や徘徊による人身事故等社会に与える影響が大きく、大きな問題となっている。
アルツハイマー型認知症は、従来、変性したアミロイドβタンパク質の異常蓄積が主な原因であると考えられており、異常リン酸化tauタンパク質の重合によるpaired helical filaments(PHF)の形成は、病気の原因というよりは、その結果であると考えられていた。しかし、近年の研究では、アミロイドβタンパク質の異常蓄積に加えて、PHF形成も原因の一つと考えられている。
さて、アルツハイマー型認知症には、認知機能の一時的な改善をもたらすことができるドネペジル塩酸塩(一般名、特許文献1を参照。)などの薬剤が開発され、使用されている。ただ、これらの薬剤は、認知症を根本的に治療するものではなく、認知症の悪化を抑制できるに過ぎなかった。また、これらの薬剤は、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、発疹、掻痒感などの副作用が生じることが多かった。さらに、これらの薬剤は高価であり、長期間にわたって使用しなければならないため、医療費等の社会福祉費用を増加させていた。
そこで、薬剤ではなく、日常の摂取する食品によって、認知症の進行を抑制することが注目されており、シークワーサーに含まれる抗認知症成分ノビレチン(非特許文献1を参照。)やローヤルゼリー(非特許文献2を参照。)等が研究されている。
また、発明者らは、うなぎの蒲焼などの食品に香りづけや風味づけのために使用するサンショウの果皮が認知症予防効果を備えていることを見出し、これを含む抗認知症用組成物について特許出願している(特許文献2を参照。)。
ただ、サンショウ果皮に含まれる多様な成分のうち、どの成分が抗認知症効果の原因となっており、それがどのように機能しているのか、は分かっていなかった。そのためサンショウ果皮に含まれる有効成分をリード化合物として、新規の抗認知症薬を生み出すことはできなかった。
また、サンショウ果皮を製造する際に、サンショウ果実の混入を避けることは困難である。そのため、サンショウ果皮に含まれる脂肪分によって、抗認知症用組成物をカプセルに詰める際や錠剤に加工する際などに、生産性が低下することもあった。
本発明は、新規抗認知症薬を創薬する際のリード化合物としても利用できるとともに、加工し易く、安全で安価な食品由来な抗認知症用組成物を提供することを課題とする。
発明者らは、鋭意検討の結果、サンショウ果皮に含まれるヒペロシドがtauタンパク質のPHFの形成阻害と関連することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の抗認知症用組成物は、ヒペロシドを有効成分として含有することを主要な特徴とする。
なお、本願発明の抗認知症用組成物は、ヒペロシドを有効成分として含有していればよく、ヒペロシドの純品以外にも、植物、例えばサンショウ果皮からヒペロシドを有機溶媒等により抽出した抽出エキス、抽出エキスの溶媒抽出物、抽出エキスのカラム精製物、及びこれらとヒペロシドの効果を妨げない成分とを混ぜた混合物なども含むものである。
本発明の抗認知症用組成物は、我が国において昔から栽培され、香辛料として使用されてきたサンショウに含まれているヒペロシドを有効成分とするものである。そのため、本発明の抗認知症用組成物は、少量でも効果を示すとともに安全で安価である。また、ヒペロシドをサンショウから製造する場合には、サンショウの新たな用途開発によってサンショウの栽培やその加工に関わる産業をより発展させることができる。
本発明の抗認知症用組成物は、ヒペロシドを含有するものである。そこで、本発明の抗認知症用組成物を構成するヒペロシドなどの詳細について以下に説明する。
1.ヒペロシド
ヒペロシドは、フラボノイドの一種であるケルセチンの配糖体であって、下記の化学式(1)に示すような構造を有する。また、ヒペロシドは、高い抗酸化性を有し、血圧降下作用・コレステロール値低下効果が期待されている。
ヒペロシドは、フラボノイドの一種であるケルセチンの配糖体であって、下記の化学式(1)に示すような構造を有する。また、ヒペロシドは、高い抗酸化性を有し、血圧降下作用・コレステロール値低下効果が期待されている。
2.ヒペロシドの調製方法
本発明で使用するヒペロシドは、化学的合成、発酵による生産、動植物からの抽出など公知の何れの方法で調製したものであってもよい。ただ、安価で安全であることから、サンショウ果皮からの抽出物が好ましい。そこで、サンショウ果皮からヒペロシドを抽出する方法を一例として、以下に詳説する。
本発明で使用するヒペロシドは、化学的合成、発酵による生産、動植物からの抽出など公知の何れの方法で調製したものであってもよい。ただ、安価で安全であることから、サンショウ果皮からの抽出物が好ましい。そこで、サンショウ果皮からヒペロシドを抽出する方法を一例として、以下に詳説する。
(1)サンショウ果皮
サンショウ果皮を採取するサンショウには、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)の植物であれば特に限定することなく使用できる。具体的には、サンショウ(サンショウ、Zanthoxylum piperitum DC)、アサクラザンショウ(Z.piperitum DC.var.inerme Makino)、イヌザンショウ(青椒、青花椒:Z.schinifolium Sieb.et Zucc.)、ホワジョウ(花椒:Z.bungeanum Maxim.)などが例示できる。中でも、食品に一般的に使用されており、品質に優れ、安全性の高いサンショウ、アサクラザンショウが好ましく、和歌山県の特産品である品種名ブドウザンショウがより好ましい。
サンショウ果皮を採取するサンショウには、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)の植物であれば特に限定することなく使用できる。具体的には、サンショウ(サンショウ、Zanthoxylum piperitum DC)、アサクラザンショウ(Z.piperitum DC.var.inerme Makino)、イヌザンショウ(青椒、青花椒:Z.schinifolium Sieb.et Zucc.)、ホワジョウ(花椒:Z.bungeanum Maxim.)などが例示できる。中でも、食品に一般的に使用されており、品質に優れ、安全性の高いサンショウ、アサクラザンショウが好ましく、和歌山県の特産品である品種名ブドウザンショウがより好ましい。
サンショウ果皮としては、サンショウ果皮を含んでいれば特に限定することなく使用することができるが、中でも、成熟果実から種子をできるだけ除いた果皮が好ましく、それを乾燥した成熟果実の乾燥果皮がより好ましい。
また、このサンショウ果皮は、サンショウの果皮等をそのまま使用してもよいが、サンショウ果皮と後述する他の成分との混合し易さなどを考慮して、公知の方法、すなわち、すり鉢、石臼、ボールミル等により粉末状に加工してから使用するほうが好ましい。中でも、効率がよいことから、ボールミル等の機械的粉砕機によって粉砕したものが好ましい。
サンショウ果皮の具体例としては、成熟サンショウ果実の乾燥果皮の粉砕物である「粉サンショウ」、乾燥未熟サンショウ果実全体の粉砕物である「乾燥実サンショウ粉末」、又は乾燥サンショウ葉、枝、若しくはこれらの混合物の粉砕物である「乾燥葉サンショウ粉末」が挙げられる。中でも、乾燥果皮の重量費が大きいため、「粉サンショウ」が好ましい。
(2)ヒペロシドの調製方法
ヒペロシドは、例えば、溶媒抽出、超臨界抽出、カラムクロマトグラフィ、合成吸着剤、再結晶等の公知の抽出・精製方法、スプレイドライやフリーズドライ等の公知の乾燥方法を単独又は組み合わせて、収量が大きく純度が高くなるように調製すればよい。
ヒペロシドは、例えば、溶媒抽出、超臨界抽出、カラムクロマトグラフィ、合成吸着剤、再結晶等の公知の抽出・精製方法、スプレイドライやフリーズドライ等の公知の乾燥方法を単独又は組み合わせて、収量が大きく純度が高くなるように調製すればよい。
具体的には、以下の調製方法が考えられる。まず、サンショウ果皮をメタノール、エタノール、アセトン等の有機溶媒に浸漬してエキスを抽出し、当該エキスを水で希釈する。つぎに、希釈したエキスとジエチルエーテル等の有機溶媒により溶媒抽出し、その水相を回収する。さらに、回収した水相をDIAION HP-20などのスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤を使用して精製する。最後に、精製物を、メタノール、エタノール等のアルコール類に溶解して再結晶する。
なお、ヒペロシドの精製度は、高くなれば精製コストは高くなるものの、抗認知症効果は高まるので、精製コストと販売価格に応じて自由に設定すればよい。例えば、抗認知症用組成物を健康食品として製造する場合には、ヒペロシドの精製度はそれほど高くなくてもよいので、メタノールと水との混合溶媒(1:1)を使用してサンショウ果皮からエキスを抽出し、抽出したエキスをスプレイドライで乾燥させて得られる粉末であってもよい。
3.抗認知症用組成物
(1)その他の成分
本発明の抗認知症用組成物は、ヒペロシドを有効成分とするものである。ただ、食味や食感を向上させるため、最終製品である抗認知症用組成物の形態(液体、固体など)に合わせて、ヒペロシドに加えて公知の物質やその混合物を使用してもよい。
(1)その他の成分
本発明の抗認知症用組成物は、ヒペロシドを有効成分とするものである。ただ、食味や食感を向上させるため、最終製品である抗認知症用組成物の形態(液体、固体など)に合わせて、ヒペロシドに加えて公知の物質やその混合物を使用してもよい。
例えば、抗認知症用組成物が液剤のような液体製剤である場合には、水、緩衝液、液体甘味料、及びこれらの混合物が使用できる。
また、抗認知症用組成物が、トローチ剤、チュアブル剤、丸剤、錠剤、顆粒剤、散剤等のように固体製剤である場合には、ブドウ糖、乳糖、コーンスターチ等の糖類、カラギナン、キサンタンガム、アラビアガム、ペクチン等の増粘性多糖類、ステアリン酸マグシウム、タルク等の無機物、及びこれらの混合物が使用できる。なお、抗認知症用組成物を公知のカプセルに詰めてカプセル剤として使用してもよい。
さらに、抗認知症用組成物が、キャンディー、キャラメル、グミ、チューインガム、飴等の食品の場合には、砂糖、水飴、ゼラチン、ガムベース等の食品原料、及びこれらの混合物が使用できる。
(2)製造方法
本発明の抗認知症用組成物は、その形態に合わせて、特に限定することなく公知の方法によって製造することができる。例えば、例えば、抗認知症用組成物が液体製剤である場合には、各成分を計量して攪拌すれば製造できる。また、また、抗認知症用組成物が固体製剤である場合には、各成分を計量して型に入れて錠剤機等で加圧すれば製造できる。さらに、抗認知症用組成物が食品の場合には、計量した材料を加熱撹拌機等で加熱攪拌すれば製造できる。
本発明の抗認知症用組成物は、その形態に合わせて、特に限定することなく公知の方法によって製造することができる。例えば、例えば、抗認知症用組成物が液体製剤である場合には、各成分を計量して攪拌すれば製造できる。また、また、抗認知症用組成物が固体製剤である場合には、各成分を計量して型に入れて錠剤機等で加圧すれば製造できる。さらに、抗認知症用組成物が食品の場合には、計量した材料を加熱撹拌機等で加熱攪拌すれば製造できる。
(3)服用量など
なお、1回当たりのヒペロシドの服用量及びこれを含有する抗認知症用組成物の服用量は、抗認知症用組成物中のヒペロシドの含有量、認知症患者の年齢、性別、症状に応じて自由に設定することができる。具体的には、ヒペロシドの服用量は0.01〜10mg/1日が好ましい。
なお、1回当たりのヒペロシドの服用量及びこれを含有する抗認知症用組成物の服用量は、抗認知症用組成物中のヒペロシドの含有量、認知症患者の年齢、性別、症状に応じて自由に設定することができる。具体的には、ヒペロシドの服用量は0.01〜10mg/1日が好ましい。
1.サンショウの抗認知症効果の確認
本発明の抗認知症用組成物の材料であるサンショウ果皮が、マウスに対して抗認知症効果があるか否かを調べた。具体的には、以下のようにして調べた。
本発明の抗認知症用組成物の材料であるサンショウ果皮が、マウスに対して抗認知症効果があるか否かを調べた。具体的には、以下のようにして調べた。
(1)被験物質及び実験動物
1)被験物質等
被験物質は、完熟サンショウ果実(和歌山県産、品種名:ブドウザンショウ)を乾燥させ、篩で篩って果皮と種子とを分離した。果皮を粉砕して80メッシュの篩を通過した粉サンショウを使用した。
1)被験物質等
被験物質は、完熟サンショウ果実(和歌山県産、品種名:ブドウザンショウ)を乾燥させ、篩で篩って果皮と種子とを分離した。果皮を粉砕して80メッシュの篩を通過した粉サンショウを使用した。
また、注射用水((株)大塚製薬工場、ロット番号:5A78N、室温保存)、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(関東化学(株)、ロット番号:311U2057、室温保存、以下CMCと省略する。)をそれぞれ使用した。
2)実験動物とその飼育方法
認知症及びパーキンソン症状を呈する21週齢、雄性のSJLB(SPF)マウス77匹を、(株)トランスジェニックより2015年3月5日に入手した。入手した動物は入荷日に尾へのフェルトペンによるマーキングにより個体識別し、入荷から投与開始日前日まで馴化した。
認知症及びパーキンソン症状を呈する21週齢、雄性のSJLB(SPF)マウス77匹を、(株)トランスジェニックより2015年3月5日に入手した。入手した動物は入荷日に尾へのフェルトペンによるマーキングにより個体識別し、入荷から投与開始日前日まで馴化した。
なお、入荷日を入荷0日として入荷7日までの期間は検疫した。毎日一般状態観察して、体重を電子天秤GX-6000((株)エー・アンド・デイ)によって、入荷1(入荷翌日)、3、7及び14日に測定した。各ケージには、入荷から投与開始日前日までは試験番号、性別及び個体識別番号を記入したカードを付け、投与開始日以降は群及び動物番号を追記した。
実験動物は、温度22±3℃、湿度50±20%、換気回数13〜17回/時間(HEPAフィルターでろ過したオールフレッシュ方式)、照明時間8:00〜20:00(明12時間、暗12時間)の設定環境下の飼育室(101動物室)内で、ステンレス製可動ラック(1790W×470D×1650Hmm)にポリサルフォン製ケージ(外径:220W×380D×185Hmm)を置いて動物を個別に収容して、飼育した。
飼料は給餌器を使用せず、ケージの蓋の上に固型飼料ラボMRストック(日本農産工業(株)、ロット番号:20141175)を置くことにより自由に与えた。飲料水はポリサルフォン製給水器(先管ステンレス製)により水道水を自由に与えた。ラックについては2回/月、ケージ及びペパークリーン(ペパーレット(株))交換については1回/週、給水器については2回/週の頻度で、それぞれオートクレープで高圧蒸気滅菌したものと交換した。また、汚物は1回/週、オートクレープで高圧蒸気滅菌したペパークリーンの交換により処理した。
(2)実験方法
1)投与物質の調製方法
被験物質を、電子上皿天秤又は電子分析天秤Sartorius Laboratory(ザルトリウス(株))を使用して秤量したのち、0.5% CMCに溶解し、全量を所定量にメスアップしたものを被験物質高用量群の投与物質とした。また、被験物質高用量群を所定濃度に希釈したものを、被験物質低用量群の投与物質とした。2回/週の頻度で調製し、残余投与物質は、大量の水道水で希釈し廃棄した。
1)投与物質の調製方法
被験物質を、電子上皿天秤又は電子分析天秤Sartorius Laboratory(ザルトリウス(株))を使用して秤量したのち、0.5% CMCに溶解し、全量を所定量にメスアップしたものを被験物質高用量群の投与物質とした。また、被験物質高用量群を所定濃度に希釈したものを、被験物質低用量群の投与物質とした。2回/週の頻度で調製し、残余投与物質は、大量の水道水で希釈し廃棄した。
2)投与物質の投与方法
投与液量は、最新の体重を基づいて10mL/kgの割合で換算して、小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで算出した。投与液を経口ゾンデ(ステンレス製経口ゾンデ、(株)夏目製作所)を装着した注射筒(ディスポーザブルシリンジ、テルモ(株))に充填し、1回/1日、42日間(42回)強制経口投与した。
投与液量は、最新の体重を基づいて10mL/kgの割合で換算して、小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで算出した。投与液を経口ゾンデ(ステンレス製経口ゾンデ、(株)夏目製作所)を装着した注射筒(ディスポーザブルシリンジ、テルモ(株))に充填し、1回/1日、42日間(42回)強制経口投与した。
3)群分け方法
入荷時に動物をケージに無作為に所属させ、検疫・馴化期間中に一般状態に異常の認められなかった動物を使用した。フットプリントを指標に、層別連続無作為化法により表2の群構成表に従い群分けを実施した。
入荷時に動物をケージに無作為に所属させ、検疫・馴化期間中に一般状態に異常の認められなかった動物を使用した。フットプリントを指標に、層別連続無作為化法により表2の群構成表に従い群分けを実施した。
4)一般状態観察及び体重測定
投与期間中、一般状態は毎日観察し、体重は2回/週の頻度で測定した。
投与期間中、一般状態は毎日観察し、体重は2回/週の頻度で測定した。
5)学習・記憶能の評価
(a)シャトルボックス
獲得試行は、投与6週目に実施した。マウスをステップスルー型受動的回避反応装置(室町機械(株))の明室(幅9x奥行き11.5x高さ15cm)に入れてから、30秒後に暗室(幅14x奥行き17.5x高さ15cm)の扉を開き、マウスが暗室に進入するまでの時間(潜時)を測定した。測定後、暗室中のマウスに0.2mAの電流を3秒間流してから元のケージに収容した。なお、「マウスが暗室に進入する。」とは、暗室の扉を閉めた時マウスが明室に戻れなくなるまで進入した状態と定義した。潜時は最大で60秒まで計測した。
(a)シャトルボックス
獲得試行は、投与6週目に実施した。マウスをステップスルー型受動的回避反応装置(室町機械(株))の明室(幅9x奥行き11.5x高さ15cm)に入れてから、30秒後に暗室(幅14x奥行き17.5x高さ15cm)の扉を開き、マウスが暗室に進入するまでの時間(潜時)を測定した。測定後、暗室中のマウスに0.2mAの電流を3秒間流してから元のケージに収容した。なお、「マウスが暗室に進入する。」とは、暗室の扉を閉めた時マウスが明室に戻れなくなるまで進入した状態と定義した。潜時は最大で60秒まで計測した。
また、再生試行は、獲得試行実施の翌日に実施した。マウスを獲得試行と同様に操作し、潜時を測定した。ただし、暗室に進入したマウスに電流刺激は与えないものとした。潜時は最大で300秒まで計測した。
(b)オープンフィールド
投与6週目に実施した。マウスをオープンフィールド(幅45x奥行き45x高さ40cm、バイオリサーチ(株)製)内の中央近辺に置き、20分間自由に探索させ、一定時間の移動距離を解析した。
投与6週目に実施した。マウスをオープンフィールド(幅45x奥行き45x高さ40cm、バイオリサーチ(株)製)内の中央近辺に置き、20分間自由に探索させ、一定時間の移動距離を解析した。
(c)水迷路
投与5〜6週目に実施した。水迷路(直径90cm、高さ60cm、バイオリサーチ(株)製)を白い無害の塗料で白濁させ、仮想の4象限(東西南北)に分けた。円形のプラットフォームを水表面から深さ約1.5cmに沈め、北の象限の中央に設置した。迷路外手掛かりとしては、水迷路の壁に黒い目印を設置した。
投与5〜6週目に実施した。水迷路(直径90cm、高さ60cm、バイオリサーチ(株)製)を白い無害の塗料で白濁させ、仮想の4象限(東西南北)に分けた。円形のプラットフォームを水表面から深さ約1.5cmに沈め、北の象限の中央に設置した。迷路外手掛かりとしては、水迷路の壁に黒い目印を設置した。
水迷路内に設置したプラットフォームに到達するまでの時間を5日間(5回/日)連続で測定した。各測定は、北の象限を除いた任意の象限よりマウスの顔を水迷路の外縁に向けた状態で入れて開始した。マウスがプラットフォームに到達し、10秒間静止した場合に測定を終了した。なお、マウスが60秒以内にプラットフォームを見つけられなかった場合は、測定実施者がマウスをプラットフォームまで誘導し、そこで10秒間保った後に終了した。潜時は最大で60秒まで計測した。
(d)フットプリント
投与前及び投与6週目に実施した。マウスをスロープ(幅約5cm、傾斜角度30度)の下端に置き、黒色の塗料をマウスの後肢に塗布し、スロープに設置した紙片上をマウスに進ませて、歩幅(stride length(cm))を測定した。なお、1匹につき3回の測定を実施し、各測定の最長の歩幅の平均歩幅を個体値とした。
投与前及び投与6週目に実施した。マウスをスロープ(幅約5cm、傾斜角度30度)の下端に置き、黒色の塗料をマウスの後肢に塗布し、スロープに設置した紙片上をマウスに進ませて、歩幅(stride length(cm))を測定した。なお、1匹につき3回の測定を実施し、各測定の最長の歩幅の平均歩幅を個体値とした。
(e)解剖
最終投与翌日に実験動物を解剖した。具体的には、実験動物をイソフルラン麻酔下で放血安楽致死させたのち、直ちに脳を摘出した。摘出した脳は10%中性緩衝ホルマリン溶液に固定して保存した。
最終投与翌日に実験動物を解剖した。具体的には、実験動物をイソフルラン麻酔下で放血安楽致死させたのち、直ちに脳を摘出した。摘出した脳は10%中性緩衝ホルマリン溶液に固定して保存した。
(f)統計処理
得られた数値は各群で平均値及び標準誤差を算出した。群分け後は体重において、一元配置分散分析で有意差がないことを確認した。A群とB、C群の比較は、Bartlett法により等分散性を検定し、等分散の場合はさらに一元配置分散分析し、有意な場合はDunnett法により平均値を比較した。不等分散の場合はKruskal-WallisのH検定をし、有意な場合はDunnett法により平均順位を比較した。Bartlett法、一元配置分散分析及びKruskal-WallisのH検定については、有意水準を危険率5%、Dunnett法については有意水準を危険率5%及び1%とした。
得られた数値は各群で平均値及び標準誤差を算出した。群分け後は体重において、一元配置分散分析で有意差がないことを確認した。A群とB、C群の比較は、Bartlett法により等分散性を検定し、等分散の場合はさらに一元配置分散分析し、有意な場合はDunnett法により平均値を比較した。不等分散の場合はKruskal-WallisのH検定をし、有意な場合はDunnett法により平均順位を比較した。Bartlett法、一元配置分散分析及びKruskal-WallisのH検定については、有意水準を危険率5%、Dunnett法については有意水準を危険率5%及び1%とした。
(3)実験結果
1)一般状態観察及び体重測定
投与期間中、一般状態観察によって、特記する異常所見及び死亡例は認められなかった。また、体重推移を図1〜3に示す。なお、図1は体重推移を群ごとに示すグラフであり、図2は体重推移を群ごとに示す表であり、図3は体重推移を個体ごとに示す表である。
1)一般状態観察及び体重測定
投与期間中、一般状態観察によって、特記する異常所見及び死亡例は認められなかった。また、体重推移を図1〜3に示す。なお、図1は体重推移を群ごとに示すグラフであり、図2は体重推移を群ごとに示す表であり、図3は体重推移を個体ごとに示す表である。
群分け時の体重は、対照群では28.7±0.5(平均値±標準誤差、以下は省略する。)g、サンプル低用量群では28.6±O.6g、サンプル高用量群では29.0±0.6gであった。解剖日の体重は、対照群では28.8±0.5g、サンプル低用量群では29.2±0.5g、サンプル高用量群では28.3±0.5gであった。投与期間中、対照群と比較して、各群において有意な差は認められなかった。
2)学習・記憶能の評価
(a)シャトルボックス
潜時を図4〜6に示す。なお、図4は潜時を群ごとに示すグラフであり、図5は潜時と移動距離とを群ごとに示す表であり、図6は潜時を個体ごとに示す表である。
(a)シャトルボックス
潜時を図4〜6に示す。なお、図4は潜時を群ごとに示すグラフであり、図5は潜時と移動距離とを群ごとに示す表であり、図6は潜時を個体ごとに示す表である。
これらの図に示すように、獲得試行の潜時は、対照群では18.5±4.0(平均値±標準誤差、以下は省略する。)sec、サンプル低用量群では23.8±5.7sec、サンプル高用量群では16.2±2.4secであった。再生試行の潜時は、対照群では16.3±2.6sec、サンプル低用量群では46.0±11.Osec、サンプル高用量群では62.8±25.1secであった。再生試行の潜時において、対照群と比較して、各群ともに有意な延長が認められた。
(b)オープンフィールド
移動距離を図7〜8に示す。なお、図7は移動距離を群ごとに示すグラフであり、図8は移動距離を個体ごとに示す表である。
移動距離を図7〜8に示す。なお、図7は移動距離を群ごとに示すグラフであり、図8は移動距離を個体ごとに示す表である。
これらの図に示すように、対照群では7734.44±387.38(平均値±標準誤差、以下は省略する。)cm、サンプル低用量群では6814.62±376.94cm、サンプル高用量群では7764.38±355.21cmであった。対照群と比較して、サンプル低用量群で低値を示したものの、各群ともに有意な差は認められなかった。
(c)水迷路
逃避潜時の経時変化を図9〜11に示す。なお、図9は逃避潜時の経時変化を群ごとに示すグラフであり、図10は逃避潜時の経時変化を群ごとに示す表であり、図11は逃避潜時の経時変化を個体ごとに示す表である。
逃避潜時の経時変化を図9〜11に示す。なお、図9は逃避潜時の経時変化を群ごとに示すグラフであり、図10は逃避潜時の経時変化を群ごとに示す表であり、図11は逃避潜時の経時変化を個体ごとに示す表である。
これらの図に示すように、試行1日目の逃避潜時は、対照群では53.31±2.70(平均値±標準誤差、以下は省略する。)sec、サンプル低用量群では57.72±1.21sec、サンプル高用量群では55.45±1.70secであった。試行2日目の逃避潜時は、対照群では51.65±1.94sec、サンプル低用量群では53.57±1.23sec、サンプル高用量群では50.08±2.77secであった。
試行3日目の逃避潜時は、対照群では46.84±3.45sec、サンプル低用量群では45.89±2.63sec、サンプル高用量群では44.62±3.91secであった。試行4日目の逃避潜時は、対照群では42.31±4.26sec、サンプル低用量群では42.64±3.64sec、サンプル高用量群では40.01±5.26secであった。試行5日目の逃避潜時は、対照群では40.10±3.89sec、サンプル低用量群では39.10±5.97sec、サンプル高用量群では35.93±3.99secであった。
試行2日目以降の潜時において、対照群と比較して、サンプル高用量群で低値を示したものの、各群ともに有意な差は認められなかった。
(d)フットプリント
歩幅の経時変化を図12〜14に示す。なお、図12は歩幅の経時変化を群ごとに示すグラフであり、図13は歩幅の経時変化を群ごとに示す表であり、図14は歩幅の経時変化を個体ごとに示す表である。
歩幅の経時変化を図12〜14に示す。なお、図12は歩幅の経時変化を群ごとに示すグラフであり、図13は歩幅の経時変化を群ごとに示す表であり、図14は歩幅の経時変化を個体ごとに示す表である。
これらの図に示すように、群分け時の歩幅は、対照群では6.16±0.04(平均値±標準誤差、以下は省略する。)cm、サンプル低用量群では6.13±0.04cm、サンプル高用量群では6.13±0.05cmであった。投与3週目の歩幅は、対照群では6.25±0.10cm、サンプル低用量群では6.46±0.14cm、サンプル高用量群では6.54±0.18cmであった。投与6週目の歩幅は、対照群では6.10±0.09cm、サンプル低用量群では6.80±0.14cm、サンプル高用量群では6.74±0.11cmであった。
このように、投与3週目の歩幅は、対照群と比較して、各群ともに高値を示したものの、有意な延長は認められなかった。反対に、投与6週目の歩幅において、対照群と比較して、各群ともに有意な延長が認められた。
(4)まとめ
シャトルボックスを使用したステップスルー型受動的回避学習試験において、潜時の延長が認められたことから、本発明の抗認知症用組成物の被験物質の学習・記憶能力改善効果が明らかとなった。また、フットプリントにおいて歩幅の延長が認められたことから、本発明の抗認知症薬の運動機能改善効果も明らかとなった。そのため、本発明の抗認知症用組成物は、抗認知作用及びパーキンソン症状改善作用を発揮する優れた食品素材であることが明らかとなった。
シャトルボックスを使用したステップスルー型受動的回避学習試験において、潜時の延長が認められたことから、本発明の抗認知症用組成物の被験物質の学習・記憶能力改善効果が明らかとなった。また、フットプリントにおいて歩幅の延長が認められたことから、本発明の抗認知症薬の運動機能改善効果も明らかとなった。そのため、本発明の抗認知症用組成物は、抗認知作用及びパーキンソン症状改善作用を発揮する優れた食品素材であることが明らかとなった。
2.活性本体の探索
実施例1から、サンショウ果皮粉末が抗認知症作用を備えていることが分かった。そこで、サンショウ果皮に含まれるPHF形成阻害物質を探索した。具体的には、図15に従って、以下のような手順で探索した。
実施例1から、サンショウ果皮粉末が抗認知症作用を備えていることが分かった。そこで、サンショウ果皮に含まれるPHF形成阻害物質を探索した。具体的には、図15に従って、以下のような手順で探索した。
(1)抽出
和歌山県産ブドウザンショウの果皮10kgを10Lのナス型フラスコに入れ、メタノール(MeOH)5Lを加え室温で1週間冷浸した。冷浸後,減圧吸引ろ過によりサンショウ果皮とメタノール抽出物に分離した。サンショウ果皮について新たにメタノールを加え冷浸した。これをさらにもう一度繰り返し合計3回の冷浸を行った。得られた3回分のメタノール抽出物15Lを減圧下濃縮乾固し、エキス3.5kg得た。
和歌山県産ブドウザンショウの果皮10kgを10Lのナス型フラスコに入れ、メタノール(MeOH)5Lを加え室温で1週間冷浸した。冷浸後,減圧吸引ろ過によりサンショウ果皮とメタノール抽出物に分離した。サンショウ果皮について新たにメタノールを加え冷浸した。これをさらにもう一度繰り返し合計3回の冷浸を行った。得られた3回分のメタノール抽出物15Lを減圧下濃縮乾固し、エキス3.5kg得た。
(2)粗精製
抽出で得られたエキスを水/メタノール(1:1)混合液に溶解し、混合溶液をDIAION HP-20(MITSUBISHI CHEMICAL)に吸着させた。その後、水100%、20%、50%及び100%とメタノールの比率を順次上げながら、各溶媒5Lずつで溶出させた。
抽出で得られたエキスを水/メタノール(1:1)混合液に溶解し、混合溶液をDIAION HP-20(MITSUBISHI CHEMICAL)に吸着させた。その後、水100%、20%、50%及び100%とメタノールの比率を順次上げながら、各溶媒5Lずつで溶出させた。
(3)活性の確認
得られた各分画のtauタンパク質重合阻害効果を検討したところ、50% MeOH-H2O 溶出分画F1にtauタンパク質重合阻害活性が認められた。なお、tauタンパク質重合阻害活性は以下の公知の方法により測定した。
得られた各分画のtauタンパク質重合阻害効果を検討したところ、50% MeOH-H2O 溶出分画F1にtauタンパク質重合阻害活性が認められた。なお、tauタンパク質重合阻害活性は以下の公知の方法により測定した。
まず、終濃度がそれぞれTau(4RMBD、ヒト由来遺伝子を用いてtauタンパク質分子中の微小管結合ドメイン(4RMBD)を大腸菌の系を用いて大量発現させたものを使用した。)25μM、ヘパリン(ヘパリンナトリウム:和光純薬)6.25μM、ThS(チオフラビンS:和光純薬)10μM、粗精製物178μg/mLとなり、全量が600μLになるように、50mM Tris-HCl pH7.6で測定液を調製した。つぎに、測定液をキュベットに入れ、キュベットを分光光度計(FP-6500:日本分光)にセットし、400.0nmの光で励起して、500.0nmにおける蛍光を25℃で測定した。
その結果、図16に示すように、50% MeOH-H2O溶出分画F1にtauタンパク質重合阻害活性が確認できた。また、電子顕微鏡よりtauタンパク質重合体の確認を行った。その結果を図17に示す。図17の電子顕微鏡写真から、エキスによってtauタンパク質の自己重合が抑制されていることが分かった。なお、電子顕微鏡写真は以下の方法で撮影した。
まず、tauタンパク質を含み、エキスを含まないネガティブコントロールと、tauタンパク質と溶出分画F1とを含む試料から、それぞれtauタンパク質の量が15μMとなるように電顕試料液を調製した。各電顕試料にヘパリン3.8μM(終濃度)を加えて室温で2時間インキュベートした。インキュベートした電顕試料をマイクログリット(200メッシュ:NISHIN EM Co.Ltd.)に載せ、2%酢酸ウランによりネガティブ染色したのち、電子顕微鏡(HITACHI H-600:日立ハイテクノロジーズ、使用加速電圧:75kV)で撮影した。
(3)精製
50% MeOH-H2O分画F1(850g)について、活性を指標に分離精製を進め、活性本体を特定した。具体的には、以下のように精製した。まず、ODS silica gel(富士シリシア化学)を充填剤とした中圧カラムクロマトグラフィー(水100%、10%,20%,50%,100%メタノール各1L)を使用して、分画F1を再度分離した。その結果、図18に示すように、50%MeOH-H2Oで溶出した分画F2(7.2g)及びF3(10.8g)に最も強い活性が認められた。
50% MeOH-H2O分画F1(850g)について、活性を指標に分離精製を進め、活性本体を特定した。具体的には、以下のように精製した。まず、ODS silica gel(富士シリシア化学)を充填剤とした中圧カラムクロマトグラフィー(水100%、10%,20%,50%,100%メタノール各1L)を使用して、分画F1を再度分離した。その結果、図18に示すように、50%MeOH-H2Oで溶出した分画F2(7.2g)及びF3(10.8g)に最も強い活性が認められた。
つぎに、ODS silica gelによって分画F2を再度分離し、50% MeOH-H2Oで溶出した分画F4(3.2g)を得た。さらに、得られたF4を逆相HPLC(ナカライCOSMOSIL 5C18-MS-II,移動相60% MeOH-H2O)を使用して分離した。得られた各分画について1H NMRスペクトルを測定し、活性発現に必要と考えられている芳香環を含む物質の有無を調べた。
その結果、分画F5(15.3mg)において芳香環の吸収が観察された。そこで、分画F5を逆相HPLC(移動相50%MeOH-H2O)で精製し、フラボノイド配糖体(6.4mg)を単離した。単離したフラボノイド配糖体の1H NMRスペクトルを測定したところ、図19に示すように、ヒペロシド(hyperoside、quercetin 3-O-β-D-galactopyranoside)であることが分かった。また、分画F5の濃度を変えてtauタンパク質重合阻害活性を測定したところ、図20に示すように、この分画F5は、濃度依存的にtauタンパク質の自己重合を阻害する働きを有することが分かった。
3.より効率的な分離方法の検討
高純度のヒペロシドをより効率的、かつ大量に分離する方法を検討した。具体的には、以下の分離方法を検討した。
高純度のヒペロシドをより効率的、かつ大量に分離する方法を検討した。具体的には、以下の分離方法を検討した。
(1)再結晶
実施例2で分離して使用しなかった活性分画F3を、種々の溶媒を使用して再結晶して、最適な溶媒を検討した。その結果、メタノールを使用した場合に、ヒペロシドが短時間で再結晶できた。特に、再結晶を数回繰り返すことによって、活性分画F3から比較的大量に高純度のヒペロシド(502.4mg)が単離できた。
実施例2で分離して使用しなかった活性分画F3を、種々の溶媒を使用して再結晶して、最適な溶媒を検討した。その結果、メタノールを使用した場合に、ヒペロシドが短時間で再結晶できた。特に、再結晶を数回繰り返すことによって、活性分画F3から比較的大量に高純度のヒペロシド(502.4mg)が単離できた。
(2)分離方法の検討
(1)から、再結晶が有効であることが分かったので、より簡便な分離方法、具体的には図21に示す分離方法に従って分離した。具体的には、以下の手順に従って、分離した。まず、サンショウ果皮10kgを実施例2と同様の方法で抽出し、エキス(3.2kg)を得た。つぎに、エキスを水に溶解したのち、ジエチルエーテルで抽出して脂溶性物質を除き、水層F6を得た。さらに、水層F6をDIAION HP-20(H2O-MeOH gradient)に通し、50% MeOH-H2Oで溶出した分画F7(90.5g)を分離した。最後に、分画F7をメタノールにより再結晶し、高純度のヒペロシド7.2gを得た
(1)から、再結晶が有効であることが分かったので、より簡便な分離方法、具体的には図21に示す分離方法に従って分離した。具体的には、以下の手順に従って、分離した。まず、サンショウ果皮10kgを実施例2と同様の方法で抽出し、エキス(3.2kg)を得た。つぎに、エキスを水に溶解したのち、ジエチルエーテルで抽出して脂溶性物質を除き、水層F6を得た。さらに、水層F6をDIAION HP-20(H2O-MeOH gradient)に通し、50% MeOH-H2Oで溶出した分画F7(90.5g)を分離した。最後に、分画F7をメタノールにより再結晶し、高純度のヒペロシド7.2gを得た
サンショウの辛味成分サンショウアミド、サンショウオールは、通常の摂取量では人体に影響がないとされるが、大量に摂取すると魚などある種の生物に対して毒性が認められている。本分離方法は、これらの脂溶性物質をエチルエーテル層として大幅に除くこといているので、前記毒性を大幅に低下できる。
4.ヒペリシドの含有量の比較
和歌山県産サンショウ果皮のヒペロシド含有量を測定し、中国産サンショウの果皮のヒペロシド含有量と比較した。具体的には、以下の手順で測定した。
和歌山県産サンショウ果皮のヒペロシド含有量を測定し、中国産サンショウの果皮のヒペロシド含有量と比較した。具体的には、以下の手順で測定した。
(1)分析サンプルの調製
粉末にした和歌山県産サンショウ果皮4.5g及び中国産サンショウ果皮5.0gを精秤し、それぞれナス型フラスコに入れた。ナス型フラスコに100%メタノールをそれぞれ60 mL加え、80℃で1時間加熱還流抽出した。ナス型フラスコを自然冷却させたのち、内容液を吸引ろ過して、得られたろ液の液量がメスフラスコによって正確に全量100mLになるように100% メタノールを加えて調整し、分析サンプルとした。
粉末にした和歌山県産サンショウ果皮4.5g及び中国産サンショウ果皮5.0gを精秤し、それぞれナス型フラスコに入れた。ナス型フラスコに100%メタノールをそれぞれ60 mL加え、80℃で1時間加熱還流抽出した。ナス型フラスコを自然冷却させたのち、内容液を吸引ろ過して、得られたろ液の液量がメスフラスコによって正確に全量100mLになるように100% メタノールを加えて調整し、分析サンプルとした。
(2)検量線の作成
ヒペロシド標準品(別途、独自に精製したものを使用した。)を100% メタノールに溶解して、以下のHPLC条件で検量線を作成した。その結果を図22に示す。
1)HPLC本体
ポンプ:PU-2086 Plus(JASCO)
カラムオーブン:CO-2060 Plus (JASCO)
検出器:RI-2031 Plus (JASCO)
インテグレーター:807-IT (JASCO)
2)測定条件
移動相:2.5%酢酸:MeOH:アセトニトリル(70:10:20)
流速:1mL/min
Attenuator:128
Injection:標準サンプル2.0,1.0,0.2,0.1mg/mLをそれぞれ25μLずつサンプリングした。
ヒペロシド標準品(別途、独自に精製したものを使用した。)を100% メタノールに溶解して、以下のHPLC条件で検量線を作成した。その結果を図22に示す。
1)HPLC本体
ポンプ:PU-2086 Plus(JASCO)
カラムオーブン:CO-2060 Plus (JASCO)
検出器:RI-2031 Plus (JASCO)
インテグレーター:807-IT (JASCO)
2)測定条件
移動相:2.5%酢酸:MeOH:アセトニトリル(70:10:20)
流速:1mL/min
Attenuator:128
Injection:標準サンプル2.0,1.0,0.2,0.1mg/mLをそれぞれ25μLずつサンプリングした。
(3)測定結果及びその比較
標準サンプルと同じ条件で、和歌山産サンショウ果皮及び中国産サンショウ果皮由来のサンプルを、50μLをそれぞれ3回ずつサンプリングした。図23にHPLCの結果の一例を示す。なお、図23の(a)はヒペロシド標準品由来、(b)は日本和歌山県産山椒、(c)中国産山椒由来サンプルのHPLCチャートをそれぞれ示す。
標準サンプルと同じ条件で、和歌山産サンショウ果皮及び中国産サンショウ果皮由来のサンプルを、50μLをそれぞれ3回ずつサンプリングした。図23にHPLCの結果の一例を示す。なお、図23の(a)はヒペロシド標準品由来、(b)は日本和歌山県産山椒、(c)中国産山椒由来サンプルのHPLCチャートをそれぞれ示す。
また、HPLCのピーク面積をもとにサンショウ果皮1000mgに含まれるヒペロシドの含量の平均を算出した。その結果を図24に示す。なお、図23の(a)はヒペロシド標準品由来、(a)は日本和歌山県産山椒、(b)は中国産山椒由来サンプルの算出結果である。
以上の結果から、和歌山県産サンショウ果皮には、理論上実殻10kgあたり約100gのヒペロシドが含まれていることが分かった。また、中国産サンショウ果皮は理論上実殻10kgあたり約20gのヒペロシドが含まれていることが分かった。したがって、和歌山県産サンショウ果皮には、中国産サンショウ果皮よりも多くのヒペロシドが含まれていることが分かった。なお、リンゴ、ドクダミ、アシタバ、ハーブ類などヒペロシドを含有する食品、植物の報告はあるが、これらの含有率は含有率1%の和歌山産サンショウ果皮にはおよばないことも分かった。
5.ヒペリシドのアミロイドβタンパク質重合阻害作用の検討
ヒペロシドが、tauタンパク質と同様に、アルツハイマー型認知症発症に関与すると考えられているアミロイドβタンパク質の自己重合に対して、重合阻害活性を有するか否かを確認した。具体的には、アミロイドβタンパク質重合阻害活性を以下の公知の方法により測定した。その結果を図25に示す。なお、ヒペロシドは実施例3で精製したF5を使用した。また、ヒペロシドのみを加えていない反応液を実験対照として使用した。
ヒペロシドが、tauタンパク質と同様に、アルツハイマー型認知症発症に関与すると考えられているアミロイドβタンパク質の自己重合に対して、重合阻害活性を有するか否かを確認した。具体的には、アミロイドβタンパク質重合阻害活性を以下の公知の方法により測定した。その結果を図25に示す。なお、ヒペロシドは実施例3で精製したF5を使用した。また、ヒペロシドのみを加えていない反応液を実験対照として使用した。
まず、終濃度がそれぞれアミロイドβタンパク質(Amyloid β-Protein (human 1-42):ペプチド研究所)25μM、ThS(チオフラビンS:和光純薬)3μM、ヒペロシド160μg/mLとなり、全量が600μLになるように、50mM Tris-HCl pH7.6で測定液を調製した。つぎに、測定液をキュベットに入れ、キュベットを分光光度計にセットし、389.0nmの光で励起して、488.0nmにおける蛍光を37℃で測定した。その結果を図25に示す。
図25から、ヒペロシドが、測定開始から5時間後、23時間後において、アミロイドβタンパク質(Aβ)の自己重合反応をそれぞれ有意に阻害したことが確認できた。このことから、ヒペロシドはtauタンパク質だけではなく、アミロイドβタンパク質の重合阻害活性も有することが確認できた。
本発明の抗認知症用組成物は、簡単、安全、安価に認知症の症状を改善できる。そのため、認知症の介護に必要な労力を軽減し、医療費の増加を防ぐことができる。また、従来は薬味としてしか利用されてこなかったサンショウの利用範囲を広げ、その消費量を増やすことによって、サンショウ生産農家の生活安定にも貢献できる。
発明者らは、鋭意検討の結果、サンショウ果皮に含まれるヒペロシドがtauタンパク質のPHFの形成阻害と関連することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の抗認知症用組成物は、tauタンパク質重合阻害活性を有するヒペロシドを有効成分として含有することを主要な特徴とする。
Claims (2)
- ヒペロシド(hyperoside)を有効成分として含有する抗認知症用組成物。
- サンショウ果皮の抽出物である請求項1に記載の抗認症用組成物。
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