前記課題を解決するためになされた第1の発明は、車両に搭載されて、歩行者端末装置との間で歩車間通信を行う車載端末装置であって、前記歩車間通信を行う歩車間通信部と、小電力通信を行う小電力通信部と、通常モードおよび代表端末モードの2つの動作モードを切り替える通信制御部と、を備え、前記通常モードでは、前記歩行者端末装置との間で前記歩車間通信により歩行者情報および車両情報を相互に交換し、前記代表端末モードでは、自装置の周辺に存在する前記歩行者端末装置の代表端末として、前記小電力通信により前記歩行者端末装置から歩行者情報を取得して、その歩行者情報を他の車載端末装置に提供し、また、他の車載端末装置から取得した車両情報を前記小電力通信により前記歩行者端末装置に提供する構成とする。
これによると、代表端末となった車載端末装置と歩行者端末装置との間で小電力通信により情報のやり取りが行われるため、歩行者端末装置の電力消費を抑えて、歩行者端末装置の省電力化を図ることができ、また、歩行者端末装置および車載端末装置が多数存在する状況でも、歩行者端末装置と車載端末装置との間の通信のトラフィックを低減して通信の輻輳を低減することができる。
また、第2の発明は、前記通信制御部は、自車両が所定の代表端末移行条件を満たす状態となると、自発的に代表端末モードに移行する構成とする。
これによると、歩行者端末装置の代表端末として適切な車載端末装置を速やかに代表端末にすることができる。
また、第3の発明は、前記通信制御部は、他の車載端末装置において自車両が所定の代表端末移行条件を満たす状態であると判定されることで前記他の車載端末装置から送信される代表端末移行要求を受信すると、前記代表端末モードに移行する構成とする。
これによると、歩行者端末装置の代表端末として適切な車載端末装置を速やかに代表端末にすることができる。
また、第4の発明は、前記代表端末移行条件は、車両の走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間以上継続することである構成とする。
これによると、車両の走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間以上継続する場合、すなわち、車両が停車中または徐行運転中である場合には、車載端末装置を、歩行者端末装置の代表端末として適切に機能させることができる。
また、第5の発明は、前記代表端末移行条件は、危険エリアを含むように設定された所定の対象エリア内に車両が存在することである構成とする。
これによると、危険エリアにおける通信の輻輳を低減して、危険エリアにおける交通事故を確実に低減することができる。
また、第6の発明は、前記対象エリアは、前記危険エリアとしての事故多発地帯の周辺である構成とする。
これによると、事故多発地帯における通信の輻輳を低減して、事故多発地帯における交通事故を確実に低減することができる。
また、第7の発明は、前記対象エリアは、前記危険エリアとしての踏切の周辺である構成とする。
これによると、踏切の周辺における通信の輻輳を低減して、踏切事故を確実に低減することができる。
また、第8の発明は、前記対象エリアは、前記危険エリアとしての災害発生地域である構成とする。
これによると、災害発生地域における通信の輻輳を低減して、災害発生地域における交通事故を確実に低減することができる。
また、第9の発明は、前記対象エリアは、前記危険エリアとしての旅客車両の乗降エリアの周辺である構成とする。
これによると、旅客車両の乗降エリアの周辺における通信の輻輳を低減して、乗降エリアの周辺における交通事故を確実に低減することができる。
また、第10の発明は、前記通信制御部は、自車両が所定の代表端末解除条件を満たす状態となると、自発的に代表端末モードを解除する構成とする。
これによると、車載端末装置が無用に代表端末を継続することを回避することができる。
また、第11の発明は、前記代表端末解除条件は、車両の走行速度が所定の速度を超えたことである構成とする。
これによると、車両の走行速度が高くなると、歩行者端末装置が代表端末として適切に機能することができないため、車両の走行速度が高くなると、代表端末を解除することで、車載端末装置が無用に代表端末を継続することを回避することができる。
また、第12の発明は、前記代表端末解除条件は、前記歩行者端末装置からの信号を受信しない状態が所定の時間以上継続したことである構成とする。
これによると、歩行者端末装置からの信号を長時間受信しないと、車載端末装置の周辺に歩行者端末装置が存在しないことから、歩行者端末装置からの信号を長時間受信しないと、代表端末を解除することで、車載端末装置が無用に代表端末を継続することを回避することができる。
また、第13の発明は、前記代表端末解除条件は、前記代表端末モードに移行してから所定の時間が経過したことである構成とする。
これによると、1つの車載端末装置が長時間に渡って代表端末を継続することを回避することができる。
また、第14の発明は、歩行者が所持して、車載端末装置との間で歩車間通信を行う歩行者端末装置であって、前記歩車間通信を行う歩車間通信部と、小電力通信を行う小電力通信部と、通常モードおよびグループ内端末モードの2つの動作モードを切り替える通信制御部と、を備え、前記通常モードでは、前記車載端末装置との間で前記歩車間通信により歩行者情報および車両情報を相互に交換し、前記グループ内端末モードでは、自装置の周辺に存在する代表端末となった前記車載端末装置に前記小電力通信により歩行者情報を提供し、また、前記代表端末となった車載端末装置において他の車載端末装置から取得した車両情報を、前記小電力通信により前記代表端末となった車載端末装置から取得する構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、歩行者端末装置の省電力化を図るとともに、歩車間通信のトラフィックを低減して歩車間通信の輻輳を低減することができる。
また、第15の発明は、前記通信制御部は、前記グループ内端末モードに移行すると、前記歩車間通信部の動作を停止する構成とする。
これによると、グループ内端末モードにおいて歩車間通信を停止するため、歩行者端末装置のより一層の省電力化を図ることができる。
また、第16の発明は、車両に搭載される車載端末装置と、歩行者が所持する歩行者端末装置と、を備え、前記車載端末装置と前記歩行者端末装置との間で歩車間通信を行う歩車間通信システムであって、前記車載端末装置は、前記歩車間通信を行う歩車間通信部と、小電力通信を行う小電力通信部と、通常モードおよび代表端末モードの2つの動作モードを切り替える通信制御部と、を備え、前記歩行者端末装置は、前記歩車間通信を行う歩車間通信部と、小電力通信を行う小電力通信部と、通常モードおよびグループ内端末モードの2つの動作モードを切り替える通信制御部と、を備え、前記車載端末装置および前記歩行者端末装置が通常モードのときに、前記車載端末装置と前記歩行者端末装置との間で歩車間通信により歩行者情報および車両情報を相互に交換し、前記車載端末装置が代表端末モードに移行するとともに、その車載端末装置の周辺に存在する前記歩行者端末装置がグループ内端末モードに移行すると、前記車載端末装置が、グループ内の前記歩行者端末装置の代表端末として、前記小電力通信により前記歩行者端末装置から歩行者情報を取得して、その歩行者情報を他の車載端末装置に提供し、また、他の車載端末装置から取得した車両情報を前記小電力通信により前記歩行者端末装置に提供する構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、歩行者端末装置の省電力化を図るとともに、歩車間通信のトラフィックを低減して歩車間通信の輻輳を低減することができる。
また、第17の発明は、前記車載端末装置は、前記代表端末モードに移行すると、代表端末通知を送信し、前記歩行者端末装置は、前記代表端末通知を受信すると、前記グループ内端末モードに移行する構成とする。
これによると、代表端末となった車載端末装置の周辺に存在する歩行者端末装置を速やかにグループ内端末モードに移行させることができる。
また、第18の発明は、車両に搭載される車載端末装置と、歩行者が所持する歩行者端末装置との間で歩車間通信を行う歩車間通信方法であって、前記車載端末装置および前記歩行者端末装置が通常モードのときに、前記車載端末装置と前記歩行者端末装置との間で歩車間通信により歩行者情報および車両情報を相互に交換し、前記車載端末装置が代表端末モードに移行するとともに、その車載端末装置の周辺に存在する前記歩行者端末装置がグループ内端末モードに移行すると、前記車載端末装置が、グループ内の前記歩行者端末装置の代表端末として、小電力通信により前記歩行者端末装置から歩行者情報を取得して、その歩行者情報を他の車載端末装置に提供し、また、他の車載端末装置から取得した車両情報を前記小電力通信により前記歩行者端末装置に提供する構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、歩行者端末装置の省電力化を図るとともに、歩車間通信のトラフィックを低減して歩車間通信の輻輳を低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る歩車間通信システムの全体構成図である。
この歩車間通信システムは、歩行者が所持する歩行者端末装置1および携帯情報端末装置2と、車両に搭載される車載端末装置3およびカーナビゲーション装置4と、を備えている。
歩行者端末装置1は、自装置の位置情報を取得する測位機能と、車載端末装置3との間で歩車間通信を行う通信機能と、を備えている。携帯情報端末装置2は、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ウェラブル端末などである。歩行者端末装置1および携帯情報端末装置は相互に接続され、携帯情報端末装置2において、歩行者端末装置1から出力される情報に基づいて、事故回避のための歩行者に対する注意喚起などの出力動作(例えば音声出力や画面表示)が行われる。
車載端末装置3は、自装置の位置情報を取得する測位機能と、歩行者端末装置1との間で歩車間通信を行う通信機能と、他の車載端末装置3との間で車車間通信を行う通信機能と、を備えている。カーナビゲーション装置4は、運転者に対して経路案内を行うものである。車載端末装置3およびカーナビゲーション装置4は相互に接続され、カーナビゲーション装置4において、車載端末装置3から出力される情報に基づいて、事故回避のための運転者に対する注意喚起などの出力動作(例えば音声出力や画面表示)が行われる。
なお、車載端末装置3は、運転者が所持する携帯情報端末装置2と接続されて、運転者に対する注意喚起などの出力動作を携帯情報端末装置2に行わせるようにしてもよい。また、車載端末装置3は、歩車間通信や車車間通信の他に、道路上に設置された路側装置との間で路車間通信を行う通信機能も備えている。
また、歩行者端末装置1は、携帯情報端末装置2に内蔵されたものとしてもよく、車載端末装置3は、カーナビゲーション装置4に内蔵されたものとしてもよい。また、歩行者端末装置1および車載端末装置3では、携帯情報端末装置2およびカーナビゲーション装置4が有する測位機能を利用して、自装置の位置情報を取得するようにしてもよい。
さて、この歩車間通信システムでは、通常時に、歩行者端末装置1と車載端末装置3との間で、歩行者の位置情報などの歩行者情報と、車両の位置情報などの車両情報とを、歩車間通信を利用して相互に交換する。また、車載端末装置3同士の間では、車両の位置情報などの車両情報を、車車間通信を利用して相互に交換する。
一方、車載端末装置3が搭載された車両が所定の代表端末移行条件を満たす状態となると、車載端末装置3が、自装置の周辺に存在する歩行者端末装置1の代表端末となる。そして、代表端末となった車載端末装置3から所定の範囲内に存在する歩行者端末装置1が、車載端末装置3を共通の代表端末とするグループを形成する。
歩行者端末装置1および車載端末装置3は、小電力通信の機能を有しており、代表端末となった車載端末装置3では、歩車間通信の代わりに小電力通信を利用して、グループ内の歩行者端末装置1から歩行者情報を取得して、その歩行者情報および自身の車両情報を車車間通信により他の車載端末装置に提供し、また、車車間通信により他の車載端末装置3から取得した車両情報および自身の車両情報を、小電力通信を利用してグループ内の歩行者端末装置1に提供する。このとき、代表端末となった車載端末装置3は、車車間通信ではなく歩車間通信を用いて他の車載端末装置と通信を行ってもよい。
なお、歩行者情報や車両情報には、歩行者の位置情報や車両の位置情報の他に、歩行者端末装置1や車載端末装置3の識別情報(端末IDやMACアドレスなど)がある。また、歩行者情報や車両情報には、歩行者端末装置1および車載端末装置3、あるいは携帯情報端末装置2およびカーナビゲーション装置4に設けられたセンサ(図示せず)で取得した歩行者や車両の進行方向や移動速度に関する情報も含まれる。
次に、図1に示した歩車間通信システムにおける通信状況について説明する。図2は、歩車間通信システムにおける通信状況を示す説明図である。
車載端末装置3では、自車両が所定の代表端末移行条件を満たす状態となると、自発的に代表端末モードに移行し、その周辺に存在する歩行者端末装置1の代表端末になる。本実施形態では、車両の走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間以上継続する、すなわち、車両が停車中または徐行運転中であることを代表端末移行条件とする。
車載端末装置3では、代表端末に移行すると、代表端末通知を小電力通信により周辺の歩行者端末装置1に送信する。この代表端末通知は、代表端末になった車載端末装置3が存在することを周辺の歩行者端末装置1に通知するものであり、この代表端末通知には、車載端末装置3の識別情報(端末IDやMACアドレスなど)、および位置情報などが含まれる。
歩行者端末装置1では、代表端末となった車載端末装置3からの代表端末通知を受信し、かつ、所定のグループ形成条件を満たす場合に、グループ内端末モードに移行する。本実施形態では、歩行者端末装置1が、代表端末となった車載端末装置3を基準とした所定の範囲(グループ形成エリア)内に存在することをグループ形成条件とし、このグループ形成条件を満たす歩行者端末装置1が、車載端末装置3を共通の代表端末とするグループを形成する。
このとき、代表端末となった車載端末装置3から送信される代表端末通知の信号の受信レベルに基づいて、代表端末となった車載端末装置3までの距離を推定して、自装置がグループ形成エリア内に存在するか否かを判定すればよい。なお、代表端末通知に車載端末装置3の位置情報を付加して送信するようにすると、歩行者端末装置1および車載端末装置3の位置情報から、代表端末となった車載端末装置3までの距離を測定することができる。また、グループ形成エリアは、安定した小電力通信が可能なように、代表端末通知の信号の受信レベルなどによる通信品質が所定の基準を満たすように設定される。
このようにして、車載端末装置3が代表端末モードに移行するとともに、歩行者端末装置1がグループ内端末モードに移行すると、歩行者情報が歩行者端末装置1から小電力通信により代表端末となった車載端末装置3に送信される。代表端末となった車載端末装置3では、歩行者端末装置1から送信される歩行者情報を受信すると、その歩行者情報と自身の車両情報とを、車車間通信により他の車載端末装置3に送信する。
また、代表端末となった車載端末装置3では、他の車載端末装置3から車車間通信により送信される車両情報を受信すると、その車両情報と自身の車両情報とを、小電力通信によりグループ内の歩行者端末装置1に送信する。
なお、代表端末となった車載端末装置3では、歩行者端末装置1から取得した歩行者ごとの歩行者情報を他の車載端末装置3に提供する他に、歩行者ごとの位置情報に基づいて、複数の歩行者が存在するエリアの範囲を表すグループ情報を取得して、そのグループ情報を他の車載端末装置3に提供するようにしてもよい。これにより、狭いエリアに多数の歩行者が存在する場合に、通信量を削減することができる。この場合、グループ情報は、歩行者が存在するエリアを特定する情報であり、例えば、エリアの中心や端点の位置情報(緯度、経度、高度)とエリアの形態(形状、長さ、幅など)などから構成される。
ところで、車載端末装置3では、代表端末に移行すると、代表端末通知の送信を開始し、以後、代表端末が解除されるまで、代表端末通知を定期的に送信する。これにより、グループ形成エリア内に新たに進入した歩行者端末装置1を速やかにグループに加入させることができる。
次に、図1に示した歩行者端末装置1および車載端末装置3の概略構成について説明する。図3は、歩行者端末装置1および車載端末装置3の概略構成を示すブロック図である。
歩行者端末装置1は、位置情報取得部11と、歩車間通信部12と、小電力通信部13と、入出力部14と、制御部15と、バッテリー16と、を備えている。
位置情報取得部11は、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位システムにより自装置の位置情報を取得する。
歩車間通信部12は、車載端末装置3との間で歩車間通信を行うものである。この歩車間通信では、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯(例えば700MHz帯や5.8GHz帯)を使用して無線通信が行われる。
小電力通信部13は、車載端末装置3との間で小電力通信を行うものである。この小電力通信では、Bluetooth(登録商標)や、920MHz帯を利用した特定小電力無線や、Wi−Fi(登録商標)などの無線LANなど、歩車間通信よりも小電力、すなわち、送信出力が小さい(例えば10mW以下)の無線通信を行う。
入出力部14は、携帯情報端末装置2との間で情報の入出力を行うものである。この入出力部14から出力される情報に基づいて、携帯情報端末装置2において、歩行者に対する注意喚起などのための出力動作が行われる。
バッテリー16は、歩行者端末装置1の各部に電力を供給するものである。
制御部15は、位置情報取得部11、歩車間通信部12、小電力通信部13、および入出力部14を制御するものであり、通信制御部21と、通信情報処理部22と、を備えている。
通信制御部21は、車載端末装置3との間での通信を制御するものである。本実施形態では、通常モードおよびグループ内端末モードの2つの動作モードを切り替える。通常モードでは、車載端末装置3との間で歩車間通信により情報を送受信し、グループ内端末モードでは、代表端末となった車載端末装置3との間で小電力通信により情報を送受信する。
また、通信制御部21では、代表端末となった車載端末装置3からの代表端末通知を受信し、かつ、所定のグループ形成条件を満たす場合に、グループ内端末モードに移行する。また、代表端末となった車載端末装置3からの代表端末通知を受信しない状態が所定の時間以上継続すると、グループ内端末モードを解除して通常モードに復帰する。
また、通信制御部21では、グループ内端末モードにおいて歩車間通信部12の動作を停止する。具体的には、歩車間通信部12に対するバッテリー16からの給電を停止する。
通信情報処理部22は、車載端末装置3との間で送受信される情報を処理するものである。通常モードでは、位置情報取得部11から自装置の位置情報を取得して、その自装置の位置情報を含む歩行者情報を歩車間通信部12に出力して、歩車間通信部12から歩行者情報を車載端末装置3に対して送信させる。また、歩車間通信部12で車載端末装置3から受信した車両情報を取得し、その車両情報を入出力部14から携帯情報端末装置に出力させる。
また、グループ内端末モードでは、位置情報取得部11から自装置の位置情報を取得して、その自装置の位置情報を含む歩行者情報を小電力通信部13に出力して、小電力通信部13から歩行者情報を代表端末の車載端末装置3に対して送信させる。また、小電力通信部13で車載端末装置3から受信した車両情報を取得し、その車両情報を入出力部14から携帯情報端末装置に出力させる。
なお、携帯情報端末装置2において、歩行者に対する注意喚起などのための出力動作を行わせるために、歩行者や車両の位置情報などに基づいて、事故回避のための危険判定処理を行う必要があり、この危険判定処理は歩行者端末装置1の制御部15で行うことも可能であるが、歩行者や車両の位置情報などを携帯情報端末装置2に提供して、携帯情報端末装置2の危険判定アプリケーションで危険判定処理を行うようにしてもよい。
車載端末装置3は、位置情報取得部31と、歩車間通信部32と、小電力通信部33と、車車間通信部34と、入出力部35と、制御部36と、を備えている。
位置情報取得部31は、歩行者端末装置1の位置情報取得部11と同様に、衛星測位システムにより自装置の位置情報を取得する。
歩車間通信部32は、歩行者端末装置1との間で歩車間通信を行うものである。この歩車間通信では、歩行者端末装置1の歩車間通信部12と同様に、ITSを利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯を使用して無線通信が行われる。
車車間通信部34は、他の車載端末装置3との間で車車間通信を行うものである。この車車間通信では、歩車間通信と同様に、ITSを利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯を使用して無線通信が行われる。
小電力通信部33は、歩行者端末装置1の小電力通信部13と同様に、歩車間通信よりも小電力の無線通信を行う。
入出力部35は、カーナビゲーション装置4との間で情報の入出力を行うものである。この入出力部35から出力される情報に基づいて、カーナビゲーション装置4において、運転者に対する注意喚起などのための出力動作が行われる。
制御部36は、位置情報取得部31、歩車間通信部32、小電力通信部33、車車間通信部34、および入出力部35を制御するものであり、通信制御部41と、通信情報処理部42と、を備えている。
通信制御部41は、歩行者端末装置1との間での通信を制御するものである。本実施形態では、通常モードおよび代表端末モードの2つの動作モードを切り替える。通常モードでは、歩行者端末装置1との間で歩車間通信により情報を送受信し、代表端末モードでは、自装置の周辺に存在する歩行者端末装置1の代表端末として、歩行者端末装置1との間で小電力通信により情報を送受信する。
また、通信制御部41では、自車両が所定の代表端末移行条件を満たす状態となると、自発的に代表端末モードに移行する。そして、代表端末通知を小電力通信部33から送信させる。本実施形態では、車両の走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間以上継続する、すなわち、車両が停車中または徐行運転中であることを代表端末移行条件とする。なお、自車両の走行速度は、カーナビゲーション装置4から取得することができる。
また、通信制御部41では、自車両が所定の代表端末解除条件を満たす状態となると、自発的に代表端末モードを解除して通常モードに復帰する。本実施形態では、走行速度が所定の速度を超えたこと、歩行者端末装置1からの信号、具体的には、歩行者情報を通知するための状態通知信号を受信しない状態が所定の時間以上継続したこと、代表端末に移行してから所定の時間(例えば30分)が経過したことを、代表端末解除条件とする。これらの代表端末解除条件の少なくともいずれかを満たす状態となると、代表端末モードを解除する。
通信情報処理部42は、歩行者端末装置1および他の車載端末装置3との間で送受信される情報を処理するものである。通常モードでは、位置情報取得部31から自装置の位置情報を取得して、その自装置の位置情報を含む車両情報を歩車間通信部32に出力して、歩車間通信部32から車両情報を歩行者端末装置1に対して送信させる。また、歩車間通信部32で歩行者端末装置1から受信した歩行者情報を取得し、その歩行者情報を入出力部35からカーナビゲーション装置4に出力させる。
また、代表端末モードでは、位置情報取得部31から自装置の位置情報を取得し、また、小電力通信部33で歩行者端末装置1から受信した歩行者情報を取得し、自装置の位置情報を含む車両情報と歩行者情報とを車車間通信部34に出力して、車車間通信部34に車両情報および歩行者情報を、他の車載端末装置3に対して送信させる。また、歩行者端末装置1から受信した歩行者情報を入出力部35からカーナビゲーション装置4に出力させる。
また、車車間通信部34で他の車載端末装置3から受信した車両情報を取得し、さらに、位置情報取得部31から自装置の位置情報を取得し、その自装置の位置情報を含む自身の車両情報と他車両の車両情報とを小電力通信部33に出力して、その車両情報を小電力通信部33から歩行者端末装置1に対して送信させる。また、他の車載端末装置3から受信した車両情報を入出力部35からカーナビゲーション装置4に出力させる。
この車載端末装置3には、車両に搭載されたバッテリー37から電力が供給される。なお、車載端末装置3では、車両のイグニッションスイッチをオフとしてエンジンを停止させた状態でも、バッテリー37からの給電が継続されて、代表端末として動作する。このとき、車載端末装置3の消費電力に比較してバッテリー37は十分に大容量であるため、特に問題とはならない。
なお、歩行者端末装置1の制御部15および車載端末装置3の制御部36はプロセッサにより構成され、この制御部15,36の通信制御部21,41および通信情報処理部22,42は、メモリに記憶された所定のプログラムをプロセッサに実行させることで実現される。
また、カーナビゲーション装置4において、運転者に対する注意喚起などのための出力動作を行わせるために、歩行者や車両の位置情報などに基づいて、事故回避のための危険判定処理を行う必要があり、この危険判定処理は車載端末装置3の制御部36で行うことも可能であるが、歩行者や車両の位置情報などをカーナビゲーション装置4に提供して、カーナビゲーション装置4の危険判定アプリケーションで危険判定処理を行うようにしてもよい。
また、歩車間通信部12,32、小電力通信部13,33、および車車間通信部34では、所要の情報をブロードキャスト(同報通信)で送信することが基本となるが、歩行者端末装置1や車載端末装置3の識別情報(端末IDやMACアドレスなど)を付加して送信相手を指定して送信することで、ユニキャスト(1対1通信)やマルチキャスト(1対多通信)とすることができ、状況に応じて適切な通信形態を選択すればよい。
次に、図1に示した歩行者端末装置1および車載端末装置3における通信の手順について説明する。図4は、歩行者端末装置1および車載端末装置3における通信の手順を示すシーケンス図である。
車載端末装置3では、所定の代表端末移行条件が発生して、歩行者端末装置1の代表端末となる代表端末モードに移行すると、小電力通信により代表端末通知を送信する。なお、代表端末通知の送信は、車載端末装置3が代表端末に移行してから代表端末が解除されるまで定期的に繰り返される。
歩行者端末装置1では、代表端末となった車載端末装置3からの代表端末通知を受信すると、自装置がグループ形成条件を満たす場合に、代表端末通知の送信元の車載端末装置3にグループ内端末要求を小電力通信で送信する。このグループ内端末要求は、代表端末通知の送信元の車載端末装置3を代表端末として自装置がグループ内端末として通信することを要求するものであり、このグループ内端末要求には、要求先の車載端末装置3の識別情報(端末IDやMACアドレスなど)などが付加される。
次に、代表端末となった車載端末装置3では、歩行者端末装置1からのグループ内端末要求を受信すると、歩行者端末装置1がグループ内端末として通信することを承認する趣旨で、グループ内端末要求の送信元である歩行者端末装置1の識別情報を含む代表端末通知を小電力通信により送信する。
歩行者端末装置1では、自装置の識別情報を含む代表端末通知を受信すると、グループ内端末モードに移行して、歩車間通信を停止する。そして、自身の歩行者情報を、代表端末となった車載端末装置3に小電力通信により送信する。
代表端末となった車載端末装置3では、歩行者端末装置1からの歩行者情報を受信すると、その歩行者情報と自身の車両情報とを、車車間通信により他の車載端末装置3に送信する。このとき、複数の歩行者端末装置1から送信される歩行者情報をまとめて一度に送信するようにすると、通信量を削減することができてよいが、歩行者情報を受信する度に歩行者情報を送信するようにしてもよい。
また、代表端末となった車載端末装置3では、他の車載端末装置3から車車間通信により送信される車両情報を受信すると、その他車両の車両情報と自身の車両情報とを、小電力通信によりグループ内の歩行者端末装置1に送信する。
そして、代表端末に移行した車載端末装置3において、自車両が所定の代表端末解除条件を満たす状態になると、代表端末モードを解除して通常モードに復帰し、代表端末通知の送信を停止する。
歩行者端末装置1では、車載端末装置3からの代表端末通知を受信しない状態が所定の時間だけ継続すると、グループ内端末モードを解除して通常モードに復帰し、歩車間通信を再開する。
なお、車載端末装置3では、歩行者端末装置1からのグループ内端末要求を受信したところで、代表端末モードに移行するようにしてもよい。
ところで、本実施形態では、代表端末となった車載端末装置3と歩行者端末装置1との間で、車載端末装置3の識別情報が付加された代表端末通知と、歩行者端末装置1の識別情報が付加されたグループ内端末要求とをやり取りすることで、代表端末となった車載端末装置3がグループ内の歩行者端末装置1を認識し、また、グループ内の歩行者端末装置1が代表端末となった車載端末装置3を認識することができるようにしたが、以下のような変形例も可能である。
まず、代表端末となった車載端末装置3では、代表端末モードを所定の時間継続するものとし、その継続時間のタイムアップまでの残り時間を車両情報に付加して歩行者端末装置1にブロードキャストで送信する。歩行者端末装置1では、残り時間が付加された車両情報を受信すると、自装置がグループ形成条件を満たす場合に、グループ内端末モードに移行する。そして、代表端末となった車載端末装置3からの車両情報を順次受信して、残り時間が所定のしきい値を下回ると、グループ内端末要求を送信する。代表端末となった車載端末装置3では、歩行者端末装置1からのグループ内端末要求を受信することができると、代表端末モードを継続し、歩行者端末装置1からのグループ内端末要求を受信することができないと、代表端末モードを解除する。
これにより、グループ内端末要求を送信しない歩行者端末装置1はグループから離脱し、グループ内端末要求を送信した歩行者端末装置1はグループに継続して参加し、グループ内端末要求を送信する歩行者端末装置1が全くなくなると、グループを解散する、すなわち、代表端末を解除することができる。
また、別の変形例として、グループ内の歩行者端末装置1が代表端末となった車載端末装置3にグループ内端末要求を所定の間隔で定期的に送信し、代表端末となった車載端末装置3において、歩行者端末装置1からのグループ内端末要求を受信しない状態が所定の時間以上継続することを代表端末解除条件として、この代表端末解除条件を満たす状態となると、代表端末モードを解除するようにしてもよい。
次に、図1に示した車載端末装置3における処理の手順について説明する。図5は、車載端末装置3における処理の手順を示すフロー図である。
車載端末装置3では、まず、通常モードにおいて、周辺の歩行者端末装置1から歩車間通信で送信される歩行者情報を受信し、また、自身の車両情報を周辺の歩行者端末装置1に歩車間通信で送信する処理が行われる(ST101)。
そして、自車両が所定の代表端末移行条件を満たす状態となり(ST102でYes)、かつ、既に代表端末モードに移行していなければ(ST103でNo)、代表端末モードに移行する(ST104)。ここで、本実施形態では、自車両の走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間だけ継続したこと、すなわち、自車両が停車中または徐行運転中であることを代表端末移行条件としている。
このようにして代表端末モードに移行すると、車載端末装置3では、まず、歩行者端末装置1に対して代表端末通知を所定の間隔で小電力通信により送信する処理を開始する(ST105)。
そして、グループ内の歩行者端末装置1から小電力通信で送信される歩行者情報を受信し、その歩行者情報と自身の車両情報を他の車載端末装置3に車車間通信で送信する処理が行われる(ST106)。また、他の車載端末装置3から車車間通信で送信される車両情報を受信し、その車両情報をグループ内の歩行者端末装置1に小電力通信で送信する処理が行われる(ST107)。
一方、既に代表端末モードであれば(ST103でYes)、特別な処理は行われず、代表端末モードによる動作が継続される(ST106,107)。
また、自車両が代表端末移行条件を満たす状態ではなく(ST102でNo)、かつ、既に代表端末モードに移行しており(ST108でYes)、かつ、自車両が所定の代表端末解除条件を満たす状態であると(ST109でYes)、代表端末モードを解除して通常モードに復帰する(ST110)。
ここで、本実施形態では、走行速度が所定の速度を超えたこと、歩行者端末装置1からの信号、具体的には、歩行者情報を通知するための状態通知信号を受信しない状態が所定の時間以上継続したこと、代表端末に移行してから所定の時間(例えば30分)が経過したことを、代表端末解除条件とする。これらの代表端末解除条件の少なくともいずれかを満たす状態となると、代表端末モードを解除する。
走行速度が所定の速度を超えた場合、すなわち、車両が走り出した場合、代表端末として不適切であるため、代表端末モードを解除する。また、歩行者端末装置1からの状態通知信号を受信しない場合、すなわち、周辺に歩行者端末装置1が存在しない場合、代表端末モードを継続する必要がないため、代表端末モードを解除する。また、1つの車載端末装置3を長時間に渡って代表端末とすることは不適切であるため、代表端末に移行してから所定の時間が経過した場合には、代表端末モードを解除する。これにより、他に代表端末として適切な車載端末装置3が存在すれば、その車載端末装置3が代表端末となり、車載端末装置3が順次交代して代表端末となる。
また、既に代表端末モードに移行していない場合(ST108でNo)には、特別な処理は行われず、通常モードによる動作が継続される(ST101)。また、既にグループ内端末モードに移行しているが(ST108でYes)、自車両が所定の代表端末解除条件を満たす状態ではない場合(ST109でNo)には、特別な処理は行われず、代表端末モードによる動作が継続される(ST106,107)。
なお、代表端末モードで行われる小電力通信および車車間通信(ST106、ST107)は、所定の間隔で定期的に行う他に、歩行者端末装置1と車載端末装置3との間の距離や、歩行者端末装置1と車載端末装置3との間の相対速度に応じて、通信の時間間隔を変化させるようにしてもよい。例えば、歩行者端末装置1と車載端末装置3との間の距離が短い場合には、通信の時間間隔を短くし、歩行者端末装置1と車載端末装置3との間の近接する向きの相対速度が高い場合には、通信の時間間隔を短くする。これらの場合においては、交通事故が発生する可能性が高いため、通信の時間間隔を変化させることにより、交通事故防止と通信頻度の低減の両立が可能である。
次に、図1に示した歩行者端末装置1における処理の手順について説明する。図6は、歩行者端末装置1における処理の手順を示すフロー図である。
歩行者端末装置1では、まず、通常モードにおいて、周辺の車載端末装置3から歩車間通信で送信される車両情報を受信し、また、自身の歩行者情報を周辺の車載端末装置3に歩車間通信で送信する処理が行われる(ST201)。
そして、代表端末となった車載端末装置3から小電力通信で送信される代表端末通知を受信し(ST202でYes)、かつ、既にグループ内端末モードでなければ(ST208でNo)、グループ内端末モードに移行して(ST204)、歩車間通信部12の動作を停止する(ST205)。そして、車載端末装置3から小電力通信で送信される車両情報を受信し、また、歩行者情報を車載端末装置3に小電力通信で送信する(ST206)。
なお、本実施形態では、歩行者端末装置1が、代表端末となった車載端末装置3を基準として設定されたグループ形成エリア内に存在することをグループ形成条件とし、このグループ形成条件を満たす場合にグループ内端末モードに移行する。
一方、既にグループ内端末モードであれば(ST203でYes)、特別な処理は行われず、グループ内端末モードによる動作が継続される(ST206)。
また、代表端末となった車載端末装置3からの代表端末通知を受信することができず(ST202でNo)、かつ、既にグループ内端末モードであり(ST207でYes)、かつ、代表端末通知を受信していない状態が所定の時間だけ継続していれば(ST208でYes)、グループ内端末モードを解除して通常モードに復帰して(ST209)、歩車間通信部12の動作を再開する(ST210)。
また、既にグループ内端末モードに移行していない場合には(ST207でNo)、特別な処理は行われない。また、既にグループ内端末モードに移行しているが(ST207でYes)、代表端末通知を受信していない状態が所定の時間だけ継続していない場合(ST208でNo)には、グループ内端末モードによる動作が継続される(ST206)。
なお、本実施形態では、歩行者端末装置1では、グループ内端末モードに移行すると、歩車間通信を停止するようにしたが、歩車間通信を停止しない構成も可能である。この場合、代表端末となった車載端末装置3からの代表端末通知の定期的な送信を歩車間通信により行うことができる。また、歩行者端末装置1からのグループ内端末要求の送信を歩車間通信により行うことができる。
以上のように、本実施形態では、車両に搭載された車載端末装置3が、その周辺に存在する歩行者端末装置1の代表端末となり、歩行者端末装置1が、代表端末となった車載端末装置3と小電力通信により情報の送受信を行う。このため、歩行者端末装置1の電力消費を抑えて、歩行者端末装置1の省電力化を図ることができ、また、歩行者端末装置1および車載端末装置3が多数存在する状況でも、通信のトラフィックを低減して通信の輻輳を低減することができる。なお、車載端末装置3が代表端末となることで、車載端末装置3の電力消費が増大する場合があるが、車両には大容量のバッテリー37が搭載されているため、大きな影響はない。
また、本実施形態では、歩行者端末装置1において、グループ内端末モードに移行すると、歩車間通信部12の動作を停止するため、歩行者端末装置1のより一層の省電力化を図ることができる。
また、本実施形態では、代表端末移行条件を満たす、すなわち、歩行者端末装置1の代表端末として適切である車載端末装置3が、自発的に代表端末になる。このため、歩行者端末装置1の代表端末として適切な車載端末装置3を速やかに代表端末にすることができる。
なお、本実施形態では、代表端末となった車載端末装置3と他の車載端末装置3との間で車車間通信により所要の情報を送受信するようにしたが、代表端末となった車載端末装置3を歩行者とみなして、代表端末となった車載端末装置3が、他の車載端末装置3との間で歩車間通信を行うようにしてもよい。この点については、以下に示す実施形態でも同様である。
ところで、この歩車間通信システムでは、歩行者情報や車両情報として、歩行者や車両の位置情報、さらに進行方向や移動速度に関する情報などを通信するようにしているが、この他に、以下に示すような情報を通信することも可能である。
例えば、車両が道路に停車している場合、車両の故障や事故が原因でやむを得ず停車する場合がある。この場合、進路の前方に故障車や事故車が停車していることを他の車両の運転者に通知することができるとよい。そこで、代表端末となった車載端末装置3では、自車両の運転者に停車原因を入力させて、故障車や事故車であることを示す情報を、位置情報などとともに車車間通信により他の車載端末装置3に送信するようにしてもよい。これにより、故障車が停車していることを他の車両の運転者が知ることができる。
また、車両が道路に停車している場合、荷物の積み卸しなどの理由で停車する場合がある。この場合、当該車両の停車予定時間を他の車両の運転者に通知することができるとよい。そこで、代表端末となった車載端末装置3では、自車両の運転者に停車予定時間を入力させて、その停車予定時間に関する情報を、位置情報などとともに車車間通信により他の車載端末に送信するようにしてもよい。これにより、停車中の車両が後どの程度停車しているかを他の車両の運転者が知ることができる。
また、車両が道路に停車している場合、迷惑駐車の場合がある。この場合、当該車両の運転者に苦情を通知することができるとよい。そこで、他の車両の車載端末装置3において、車両の停車位置に基づいて迷惑駐車か否かを判定し、迷惑駐車である場合には、位置情報などとともに苦情通知を、その車載端末装置3から代表端末に移行した車載端末装置3に車車間通信により送信し、代表端末に移行した車載端末装置3では、苦情通知を、位置情報などともに小電力通信により歩行者端末装置1に送信するようにしてもよい。これにより、運転者が所持する歩行者端末装置1で苦情通知を受信して、自分の車両に苦情が来ていることを運転者が知ることができる。
なお、道路が混雑している場合には、苦情通知が殺到することがある。この場合、他の車載端末装置3から苦情通知を受信する度に歩行者端末装置1に送信するようにしてもよいが、苦情通知の送信回数の上限値を設定したり、苦情通知を所定の周期で送信するようにしたりして、苦情通知を制限するようにしてもよい。また、停車中の車両の運転者への通知は、迷惑駐車に対する苦情の通知に限定されるものではなく、種々の通知が可能である。
ここで、歩行者には、自転車、シニアカー、電動車いす、農機等の車両に乗車している人物(つまり広義の歩行者)を含めることも可能であり、このような車両に乗車している人物が所持する歩行者端末装置1が、代表端末となった車載端末装置3と通信を行う。
また、代表端末となった車載端末装置3は、歩行者端末装置1だけでなく、他の車両(例えば、他の停車中または徐行運転中の車両(故障車や事故車を含む)、自動二輪車、軽自動車、自動車教習所の教習車、運転歴の浅いドライバーが運転する車両、運転が不得意なドライバーが運転する車両等)の車載端末装置3からも位置情報等を集めて、各車載端末装置3の位置情報等を他の車載端末装置3に通知することも可能である。例えば、自動車教習所の教習車、運転歴の浅いドライバーが運転する車両、運転が不得意なドライバーが運転する車両等に対しては、幅寄せ等を行うことは交通事故を増発する恐れがあるため、このような事態を防止することも可能であるという効果もある。更に、自動二輪車や軽自動車等の比較的交通事故の被害者になりやすい車両の車載端末装置3からも位置情報等を集めて、各車載端末装置3の位置情報等を他の車載端末装置3に通知することも可能である。こうすることにより、左折時の自動二輪車の巻き込み事故等も防止できるという効果もある。
また本発明は、一般道路だけでなく、高速道路において適用することも有効である。例えば、高速道路で車両が故障して、路肩に人がいる場合、故障車と路肩にいる人の両方を早く発見することが可能となり、高速道路における事故を防止できるという効果もある。更に、高速道路に歩行者が迷い込む問題も最近増えているが、高速道路の出入り口等に設置された通信機や停車中の点検用車両等から、高速道路に迷い込んだ歩行者の位置情報を通知することにより、高速道路に迷い込んだ歩行者の早期発見も可能となる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図7は、第2実施形態に係る歩車間通信システムにおける通信状況を示す説明図である。
第1実施形態では、自車両が所定の代表端末移行条件を満たす状態となると、車載端末装置3が自発的に代表端末に移行するようにしたが、この第2実施形態では、代表端末に移行する車載端末装置3を他の車載端末装置3が選定するようにしている。
すなわち、車載端末装置3が、所定の代表端末移行条件を満たす他の車両を検知すると、その車両の車載端末装置3に対して代表端末移行要求を車車間通信で送信し、該当する車両の車載端末装置3では、代表端末移行要求を受信すると、代表端末モードに移行して、歩行者端末装置1に小電力通信により代表端末通知を送信する。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間だけ継続したこと、すなわち、停車中または徐行運転中であることを代表端末移行条件としている。また、車両の周囲に歩行者がいなければ、その車両の車載端末装置3を代表端末とする必要がないため、代表端末移行条件を満たすことに加えて、車両の周辺エリアに歩行者が存在することを条件にして、代表端末に移行する車載端末装置3を選定する。
次に、図7に示した歩行者端末装置1および車載端末装置3における通信の手順について説明する。図8は、歩行者端末装置1および車載端末装置3における通信の手順を示すシーケンス図である。
図8に示す本実施形態における歩行者端末装置1および車載端末装置3における通信の手順は、図4に示した例と略同様であるが、特に本実施形態では、車載端末装置3において、所定の代表端末移行条件を満たす他の車両を検知すると、その車両の車載端末装置3に対して代表端末移行要求を車車間通信により送信し、代表端末移行要求を受信した車載端末装置3では、代表端末モードに移行して、代表端末通知を小電力通信により歩行者端末装置1に送信する。
次に、図7に示した車載端末装置3における処理の手順について説明する。図9および図10は、車載端末装置3における処理の手順を示すフロー図であり、図9は、代表端末となる車載端末装置3を選定する側の車載端末装置3の場合を示し、図10は、代表端末となる側の車載端末装置3の場合を示す。
まず、代表端末となる車載端末装置3を選定する側の車載端末装置3について説明する。
図9に示すように、車載端末装置3では、まず、他の車載端末装置3から車車間通信で送信される車両情報を受信し、また、歩行者端末装置1から歩車間通信で送信される歩行者情報を受信する(ST301)。
次に、所定の代表端末移行条件を満たす他の車両があるか否かの判定が行われる(ST302)。本実施形態では、走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間だけ継続した場合、すなわち、停車中または徐行運転中であることを代表端末移行条件としており、他の車載端末装置3から車車間通信により取得した車両の位置情報および速度情報に基づいて判定が行われる。
ここで、車載端末装置3では、停車または徐行運転の状態となると、周囲の車載端末装置3に対して車車間通信により車両情報を所定の間隔で送信するようにするとよい。これにより、代表端末となる車載端末装置3を選定する側の車載端末装置3において、停車中または徐行運転中である車両を見つけ出すことができる。
次に、代表端末移行条件を満たす他の車両の周辺に歩行者が存在するか否かの判定が行われる(ST303)。この判定は、当該車両の車載端末装置3から取得した車両の位置情報と、歩行者端末装置1から取得した歩行者の位置情報とに基づいて行われる。
そして、代表端末移行条件を満たす他の車両が見つかり(ST302でYes)、さらに、当該車両の周辺に存在する歩行者が見つかると(ST303でYes)、当該車両の車載端末装置3に代表端末移行要求を車車間通信で送信する(ST304)。
一方、代表端末移行条件を満たす他の車両が見つからない場合(ST102でNo)や、該当する車両が見つかっても、当該車両の周辺に存在する歩行者が見つからない場合(ST103でNo)には、特に処理は行われない。
なお、前記の処理に続いて、迷惑駐車の苦情通知を送信する処理を行うようにしてもよい。この場合、まず、車両の停車位置に基づいて迷惑駐車か否かを判定し、迷惑駐車である場合には、当該車両の車載端末装置3に苦情通知を車車間通信で送信する。
次に、代表端末となる側の車載端末装置3について説明する。
この場合、図10に示すように、車載端末装置3における処理の手順は、図5に示した例と略同様であるが、特に本実施形態では、他の車載端末装置3から代表端末移行要求を受信すると(ST401でYes)、代表端末モードに移行する。ここで、既に代表端末モードに切り替わっていれば(ST103でYes)、代表端末移行要求は無視される。
また、代表端末移行要求に、対象となる車載端末装置3の識別情報を付加するようにすると、代表端末移行要求を受信した車載端末装置3が、自装置に対する代表端末移行要求であることを把握することができる。
また、自車両が所定の代表端末解除条件を満たす状態となると(ST109でYes)、自発的に代表端末モードを解除して通常モードに復帰する。本実施形態では、図5に示した例と同様に、走行速度が所定の速度を超えたこと、歩行者端末装置1からの状態通知信号を受信しない状態が所定の時間以上継続したこと、代表端末に移行してから所定の時間が経過したことを代表端末解除条件としており、これらの代表端末解除条件の少なくともいずれかを満たす状態となると、代表端末モードを解除して通常モードに復帰する。
なお、車載端末装置3において、自車両が代表端末移行条件を満たす状態となると、自車両の位置情報を含む車両情報を車車間通信で送信し、これに続いて他の車載端末装置3から代表端末移行要求を受信した場合に、代表端末に移行するようにしてもよい。
以上のように本実施形態では、代表端末移行条件を満たす、すなわち、歩行者端末装置1の代表端末として適切である車載端末装置3が、他の車載端末装置3により選定される。これにより、歩行者端末装置1の代表端末として適切な車載端末装置3を速やかに代表端末にすることができる。
また、本実施形態では、対象車両の周囲に歩行者がいない場合に、その車両の車載端末装置3に代表端末移行要求を送信しないため、車載端末装置3が無駄に代表端末に移行することを避けることができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図11は、第3実施形態に係る歩車間通信システムにおける通信状況を示す説明図である。
本実施形態では、事故多発地帯である交差点を危険エリアとして、その危険エリアを含む所定の範囲に対象エリアが設定されており、この対象エリアに車両が進入すると、その車両に搭載された車載端末装置3が代表端末となる。そして、代表端末となった車載端末装置3を基準にした所定の範囲(グループ形成エリア)内に存在する歩行者端末装置1が、車載端末装置3を共通の代表端末とするグループを形成する。
なお、グループ形成エリアは、代表端末となった車載端末装置3から所定の距離以内のエリアとしてもよいが、対象エリアや危険エリアが小電力通信の通信可能エリアに収まる場合には、対象エリアや危険エリアをグループ形成エリアとして、対象エリアや危険エリアに存在する歩行者端末装置1のみをグループに加入させるようにしてもよい。
グループ内の歩行者端末装置1は、歩行者情報(位置情報など)を代表端末となった車載端末装置3に小電力通信により送信する。代表端末となった車載端末装置3では、歩行者端末装置1から歩行者情報を受信すると、その歩行者情報と自身の車両情報(位置情報など)とを、周辺の車載端末装置3に車車間通信により送信する。
また、代表端末となった車載端末装置3では、周辺の車載端末装置3から車両情報(位置情報など)を車車間通信により受信すると、その車両情報と自身の車両情報とを、グループ内の歩行者端末装置1に小電力通信により送信する。
このようにして、交差点の周辺に存在する歩行者や車両の位置情報などが、周辺の歩行者端末装置1や車載端末装置3に通知され、歩行者や車両の位置情報などに基づいて、必要に応じて歩行者や車両の運転者に対する注意喚起を行うことで、事故多発地帯である交差点の周辺における交通事故を低減することができる。
ここで、代表端末となった車載端末装置3では、危険エリア内に存在する歩行者および車両に限定して歩行者情報および車両情報を通知するようにしてもよい。これにより、無駄な通知を回避することができる。
なお、危険エリア内に存在する歩行者および車両に限定するには、歩行者や車両の位置情報を危険エリアの位置情報と比較して、歩行者や車両が危険エリア内に存在するか否かの判定を行う必要があり、この処理は、代表端末となった車載端末装置3で行うようにすればよいが、歩行者端末装置1や他の車載端末装置3において、自身の歩行者情報や車両情報を通知する際に、自装置が危険エリア内に存在するか否かの判定を行い、自装置が危険エリア内に存在する場合にのみ、自身の歩行者情報や車両情報を通知するようにしてもよい。
また、本実施形態において車載端末装置3で行われる処理の手順は、図5に示した例と略同様であるが、特に本実施形態では、自車両が交差点に近づく、具体的には、交差点から所定の範囲に設定された対象エリア内に車両が進入し、かつ、自車両の走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間以上継続したこと、すなわち、自車両が停車中または徐行運転中であることを代表端末移行条件とし、この代表端末移行条件を満たす状態となると(図5のST102でYes)、車載端末装置3が代表端末モードに移行する。
また、本実施形態では、自車両が交差点から離れる、すなわち、自車両が対象エリア外に移動したことを代表端末解除条件とし、この代表端末解除条件を満たす状態となると(図5のST109でYes)、代表端末モードを解除して通常モードに復帰する。
また、図5に示した例と同様であり、走行速度が所定の速度を超えたこと、歩行者端末装置1からの状態通知を受信しない状態が所定の時間以上継続したこと、代表端末に移行してから所定の時間が経過したことを代表端末移行条件とし、これらの代表端末解除条件の少なくともいずれかを満たす状態となると、代表端末モードを解除する。
以上のように、本実施形態では、危険エリアである事故多発地帯の周辺に対象エリアを設定して、車両が対象エリア内に進入すると、その車両に搭載された車載端末装置3が代表端末となる。これにより、事故多発地帯における通信の輻輳を低減して、事故多発地帯における交通事故を確実に低減することができる。
なお、代表端末となった車載端末装置3において、歩行者端末装置1から取得した歩行者情報を車車間通信により他の車載端末装置3に提供する際に、歩行者情報の提供先を、車種で絞り込むようにしてもよい。例えばトラックやバスなどの大型車あるいはバイクのような特定の車種のみを対象にして、歩行者情報を提供するようにしてもよい。また、歩行者情報の提供先を、周辺の車両の状況などに応じて適宜に選択することができるようにしてもよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図12は、第4実施形態に係る歩車間通信システムにおける通信状況を示す説明図である。
本実施形態では、踏切の周辺に対象エリアが設定されており、この対象エリア内に車両が進入すると、その車両に搭載された車載端末装置3が代表端末となる。そして、代表端末となった車載端末装置3を基準にした所定の範囲(グループ形成エリア)内に存在する歩行者端末装置1が、車載端末装置3を共通の代表端末とするグループを形成する。
また、本実施形態では、列車に車載端末装置3が搭載されており、この車載端末装置3が、代表端末が歩行者端末装置1から取得した歩行者情報(位置情報など)の提供先となる。また、列車の車載端末装置3から、列車の位置情報などの列車情報が、代表端末となった車載端末装置3を介して歩行者端末装置1に提供される。
具体的には、グループ内の歩行者端末装置1において、歩行者情報(位置情報など)を代表端末となった車載端末装置3に小電力通信により送信する。代表端末となった車載端末装置3では、歩行者端末装置1から歩行者情報を受信すると、その歩行者情報と自身の車両情報(位置情報など)とを、列車の車載端末装置3に車車間通信により送信する。
また、列車の車載端末装置3では、列車情報(位置情報など)を代表端末となった車載端末装置3に車車間通信により送信する。代表端末となった車載端末装置3では、列車の車載端末装置3から列車情報を受信すると、その列車情報と自身の車両情報とを、グループ内の歩行者端末装置1に小電力通信により送信する。
このようにして、踏切の周辺に存在する歩行者の位置情報などが、列車の車載端末装置3に通知され、歩行者の位置情報などに基づいて、必要に応じて列車の運転手に対する注意喚起を行うことで、踏切事故を低減することができる。また、列車の位置情報などが、踏切の周辺に存在する歩行者端末装置1や車載端末装置3に通知され、列車の位置情報などに基づいて、必要に応じて歩行者や車両の運転者に対する注意喚起を行うことで、踏切事故を低減することができる。
なお、列車の位置情報に加えて、列車の運転状況(速度やブレーキ操作など)に関する情報を、列車情報として歩行者端末装置1や車載端末装置3に通知するようにしてもよい。
また、踏切の周辺では、車両の走行速度が低いため、歩行者と車両との事故の可能性が低いことから、歩行者端末装置1および車載端末装置3では、対象エリアに進入したところで、歩車間通信部12,32の動作を停止するようにしてもよい。
また、踏切事故を防止する上では、列車が踏切から十分に離れた位置で列車の車載端末装置3と通信できるように、列車との間の車車間通信は大出力で電力消費量が大きくなる。このため、車載端末装置3では、対象エリアに進入したところで、車車間通信を開始するようにしてもよい。
また、踏切の周辺の対象エリア内に車両が存在しない場合には、歩行者端末装置1が列車の車載端末装置3と歩車間通信により直接通信を行うことになる。このとき、歩行者端末装置1において、代表端末となる車載端末装置3からの信号を受信すると、歩車間通信を停止して、小電力通信によるグループ通信を開始し、また、代表端末となる車載端末装置3からの信号を受信しない状態が所定の時間以上継続すると、歩車間通信を開始して、列車の車載端末装置3と直接通信を行うようにすればよい。
また、本実施形態において車載端末装置3で行われる処理の手順は、図5に示した例と略同様であるが、特に本実施形態では、自車両が踏切に近づく、具体的には、踏切から所定の範囲に設定された対象エリア内に車両が進入し、かつ、車両の走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間以上継続したこと、すなわち、自車両が停車中または徐行運転中であることを代表端末移行条件とし、この代表端末移行条件を満たす状態となると(図5のST102でYes)、車載端末装置3が代表端末モードに移行する。
また、本実施形態では、自車両が踏切から離れる、すなわち、自車両が対象エリア外に移動したことを代表端末解除条件とし、この代表端末解除条件を満たす状態となると(図5のST109でYes)、代表端末モードを解除して通常モードに復帰する。
また、図5に示した例と同様に、走行速度が所定の速度を超えたこと、歩行者端末からの状態通知を受信しない状態が所定の時間以上継続したこと、代表端末に移行してから所定の時間(例えば数時間)が経過したことを代表端末解除条件とし、これらの代表端末解除条件の少なくともいずれかを満たす状態となると、代表端末モードを解除する。
また、本実施形態では、図12に示したように、位置情報の検出誤差を考慮して、遮断機の内側に危険エリアが設定されており、特に、遮断機から所定の範囲を除外してその内側の危険度が高いエリアを危険エリアとしている。そして、歩行者や車両が危険エリア内にある場合にのみ、歩行者情報や車両情報を列車の車載端末装置3に通知する。位置情報の検出誤差が原因で、遮断機の外側で列車が通過するまで待っているにもかかわらず、危険エリア内にいると誤判定する可能性があるが、遮断機から所定の範囲を除外してその内側の危険度が高いエリアを危険エリアとすることにより、誤判定を回避することが可能となる。
具体的には、代表端末となった車載端末装置3において、歩行者端末装置1から小電力通信により送信される歩行者情報を受信すると、その歩行者情報に含まれる歩行者の位置情報を危険エリアの位置情報と比較して、危険エリア内に存在する歩行者を選択し、その歩行者に関する歩行者情報を列車の車載端末装置3に車車間通信により送信する。このとき、自車両が危険エリア内に存在する場合は、自車両に関する車両情報も列車の車載端末装置3に送信する。
そして、列車の車載端末装置3において、歩行者情報や車両情報に基づいて、列車の運転手に対して適宜な警告を行う。これにより、無用な警告をなくして、踏切事故を確実に低減することができる。
なお、歩行者端末装置1において、自身の歩行者情報を代表端末となった車載端末装置3に通知する際に、自装置が危険エリア内に存在するか否かの判定を行い、自装置が危険エリア内に存在する場合にのみ歩行者情報を通知するようにしてもよい。
また、歩行者が危険エリア内にあることに加えて、歩行者が移動していない場合、すなわち、急病などの何らかのトラブルにより危険エリア内で歩行者が静止している場合にのみ、歩行者情報を列車の車載端末装置3に通知するようにしてもよい。
以上のように、本実施形態では、踏切の周辺に対象エリアを設定して、車両が対象エリア内に進入すると、その車両に搭載された車載端末装置3が、踏切の周辺に存在する歩行者端末装置の代表端末となる。これにより、踏切の周辺における通信の輻輳を低減して、踏切事故を確実に低減することができる。
なお、列車との間の通信は、遠距離通信となるため、大出力で電力消費量が大きくなることから、歩行者端末装置1が列車の車載端末装置3と歩車間通信により直接通信を行うようにすると、歩行者端末装置1のバッテリー16の消費が大幅に増大する問題が生じるが、車載端末装置3では、必要な電力を車両に搭載された大容量のバッテリー37から供給すればよく、大出力の通信を行っても問題はない。
また、遮断機の内側の危険度が高いエリアを危険エリアとして、危険エリアを対象エリアより狭い範囲に設定して、歩行者や車両が危険エリア内にある場合にのみ、歩行者情報や車両情報を列車の車載端末装置3に通知するようにすることで、無用な警告を回避することができる。
なお、本実施形態では、列車に車載端末装置3を搭載して、この列車の車載端末装置3と代表端末となった車載端末装置3との間で所要の情報を車車間通信により送受信するようにしたが、前記のように、代表端末となった車両の車載端末装置3を歩行者とみなして、代表端末となった車載端末装置3が、列車の車載端末装置3との間で歩車間通信を行うようにしてもよい。また、代表端末となった車載端末装置3が、踏切の近傍に設置された通信装置との間で通信を行い、その通信装置に接続された通信システムを経由して列車と通信を行うようにしてもよい。例えば、代表端末となった車載端末装置3が、道路に設置された路側装置との間で路車間通信を行い、路側装置に接続された通信システムを経由して列車と通信を行うようにしてもよい。
ここで、踏切の周辺に車両が存在しない場合も考えられるが、その場合は、自転車、シニアカー、電動車いす、農機等に搭載された車載端末装置3を代表端末に設定することも可能であることはいうまでもない。なお、自転車、シニアカー、電動車いす、農機等も存在しない場合は、歩行者が所持する歩行者端末装置1を代表端末に設定することになるが、その場合は、電池残量が多い歩行者端末装置1、線路の最も近くにいる歩行者端末装置1等を代表端末に設定することが可能である。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図13は、第5実施形態に係る歩車間通信システムにおける通信状況を示す説明図である。
本実施形態では、災害発生地域を対象エリアとしており、災害発生地域に存在する車両の車載端末装置3が代表端末となる。そして、代表端末となった車載端末装置3を基準にした所定の範囲(グループ形成エリア)内に存在する歩行者端末装置1が、車載端末装置3を共通の代表端末とするグループを形成する。
また、本実施形態では、災害発生地域で救助活動を行う救助ヘリコプターに車載端末装置3が搭載されており、この車載端末装置3が、代表端末が歩行者端末装置1から取得した歩行者情報(位置情報など)の提供先となる。また、救助ヘリコプターの車載端末装置3から、救助ヘリコプターの位置情報などの救助用移動体情報が、代表端末となった車載端末装置3を介して歩行者端末装置1に提供される。
具体的には、グループ内の歩行者端末装置1において、歩行者情報(位置情報など)を代表端末となった車載端末装置3に小電力通信により送信する。代表端末となった車載端末装置3では、歩行者端末装置1から歩行者情報を受信すると、その歩行者情報を救助ヘリコプターの車載端末装置3に車車間通信により送信する。これにより、災害発生地域内に存在する人物の位置を救助隊員が把握することができる。
また、救助ヘリコプターの車載端末装置3では、救助用移動体情報(位置情報など)を代表端末となった車載端末装置3に車車間通信により送信する。代表端末となった車載端末装置3では、救助ヘリコプターの車載端末装置3から救助用移動体情報を受信すると、その救助用移動体情報を、グループ内の歩行者端末装置1に小電力通信により送信する。これにより、災害発生地域内にいる人物が救助ヘリコプターの位置を把握することができる。
また、本実施形態では、歩行者端末装置1において、救助を求める人物により救助要請が入力され、歩行者情報とともに救助要請通知が、歩行者端末装置1から代表端末となった車載端末装置3に送信され、さらに、その歩行者情報および救助要請通知が、代表となった車載端末装置3から救助ヘリコプターの車載端末装置3に送信される。これにより、救助を求める人物がどこにいるかを救助隊員が把握することができる。
そして、救助ヘリコプターの車載端末装置3において、救助隊員により救助要請に対する応答が入力され、救助用移動体情報とともに救助要請応答通知が、救助ヘリコプターの車載端末装置3から代表端末となった車載端末装置3に送信され、さらに、救助用移動体情報および救助要請応答通知が、代表端末となった車載端末装置3から歩行者端末装置1に送信される。これにより、救助要請が届いたことを、救助を求める人物が把握することができる。
また、本実施形態において車載端末装置3で行われる処理の手順は、図5に示した例と略同様であるが、特に本実施形態では、ETWS(地震および津波の警報配信システム:Earthquake and Tsunami Warning System)などの緊急情報配信システムによる緊急情報を受信し、かつ、車両の走行速度が所定の速度以下となる状態が所定の時間以上継続したことを代表端末移行条件とし、この代表端末移行条件を満たす状態となると(図5のST102でYes)、代表端末モードに移行する。
ここで、緊急情報は、災害発生地域にある車載端末装置3および歩行者端末装置1に一斉配信され、緊急情報の配信エリアが災害発生地域に限定されるため、車載端末装置3が緊急情報を受信することが、すなわち、車載端末装置3が対象エリアとしての災害発生地域に存在することを示す。
また、本実施形態では、車両に搭載されたバッテリー37の残量が所定値以下となったこと、対象エリアとしての災害発生地域の外に車両が移動したことを代表端末解除条件とし、この代表端末解除条件の少なくともいずれかを満たす状態となると(図5のST109でYes)、代表端末モードを解除して通常モードに復帰する。
また、図5に示した例と同様に、走行速度が所定の速度を超えたこと、歩行者端末からの状態通知信号を受信しない状態が所定の時間以上継続したこと、代表端末に移行してから所定の時間(例えば数時間)が経過したことを代表端末解除条件とし、これらの代表端末解除条件の少なくともいずれかを満たす状態となると、代表端末モードを解除する。
なお、災害発生地域では、道路上の歩行者や車両が増えて、事故が発生する可能性が高くなることから、災害発生地域は危険エリアと考えることができ、本実施形態では、危険エリアと対象エリアとが一致する。
以上のように、本実施形態では、災害発生地域を対象エリアとして、車両が災害発生地域内に存在すると、その車両に搭載された車載端末装置3が代表端末となる。これにより、災害発生地域における通信の輻輳を低減して、災害発生地域における交通事故を確実に低減することができる。特に、災害発生地域では、道路上の歩行者や車両が増えて、通信のトラフィックが大幅に増大することで、通信の輻輳が頻発することが想定されるが、本実施形態では、通信のトラフィックを低減することができるため、災害発生地域における通信の輻輳を低減することができる。
また、本実施形態では、歩行者端末装置1が小電力通信により所要の情報を送受信するため、歩行者端末装置1の省電力化を図ることができる。特に、災害発生地域では、歩行者端末装置1を充電することができない状態が長時間継続することが想定されるが、歩行者端末装置1の省電力化により、歩行者端末装置1を充電することなく長時間に渡って使用を継続することができる。
また、本実施形態では、災害発生地域で救助を求める人物に関する歩行者情報とともに救助要請通知が救助ヘリコプターの車載端末装置3に送信され、救助ヘリコプターに対して救助を要請することができる。そして、この救助要請が代表端末となった車載端末装置3を介して行われるため、救助要請に関する通信の輻輳を低減して、救助要請が届かなくなる不都合を回避することができる。
なお、本実施形態では、救助ヘリコプターに車載端末装置3を搭載して、この車載端末装置3との間で代表端末となった車載端末装置3が車車間通信を行うものとしたが、この車車間通信の相手となる車載端末装置3は、救助ヘリコプターに搭載されたものに限定されるものではなく、救助ロボットや救助車両、ドローン等の小型飛行機など、災害発生地域での救助活動に利用される種々の救助用移動体に搭載されたものとしてもよい。また、代表端末となった車載端末装置3と救助用移動体との間の通信は、車車間通信に限定されるものではなく、種々の通信方式を採用することができる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図14は、第6実施形態に係る歩車間通信システムにおける通信状況を示す説明図である。
本実施形態では、バス停(乗降エリア)の周辺に対象エリアが設定されており、この対象エリアにバス(旅客車両)が進入すると、バスに搭載された車載端末装置3が代表端末となる。そして、代表端末となったバスの車載端末装置3から所定の範囲内に存在する歩行者端末装置1が、バスの車載端末装置3を共通の代表端末とするグループを形成する。
グループ内の歩行者端末装置1は、歩行者情報(位置情報など)をバスの車載端末装置3に小電力通信により送信する。バスの車載端末装置3では、歩行者端末装置1から歩行者情報を受信すると、その歩行者情報と、自車両(バス)の車両情報(位置情報など)とを、周辺の車載端末装置3に車車間通信により送信する。また、バスの車載端末装置3では、周辺の車載端末装置3から車両情報(位置情報など)を車車間通信により受信すると、その車両情報と自身の車両情報とを、グループ内の歩行者端末装置1に小電力通信により送信する。
このようにして、歩行者情報が周辺の車載端末装置3に通知される。そして、歩行者情報に基づいて、必要に応じて車両の運転者に対する注意喚起を行うことで、バス停の周辺において歩行者の安全を確保することができる。また、バス停の周辺に駐停車する車両が存在すると、バスがバス停に停車する際の邪魔になるが、バスの車両情報に基づいて、バスがバス停の近くまで来ていることを、周辺の車両の運転者に通知することで、バス停の周辺に停車しないように周辺の車両の運転者を促すことができる。
なお、人物がバスに乗車する際に車道(危険エリア)に進入する場合も考えられるが、この場合、無用な注意喚起が行わないようにしてもよい。すなわち、バスおよび歩行者の位置情報に基づいて、歩行者が車道に進入したことが検知された場合でも、歩行者の位置がバスと歩道との間の車道部分であれば、注意喚起を行わないようにする。
また、本実施形態におけるバスの車載端末装置3で行われる処理の手順は、図5に示した例と略同様であるが、特に本実施形態では、バスがバス停に近づく、具体的には、バス停(乗降エリア)から所定の範囲に設定された対象エリアにバスが進入したことを代表端末移行条件とし、この代表端末移行条件を満たす状態となると(図5のST102でYes)、代表端末モードに移行する。
また、本実施形態では、バスがバス停から離れる、具体的には、対象エリア外にバスが移動したことを代表端末解除条件とし、この代表端末解除条件を満たす状態となると(図5のST109でYes)、代表端末モードを解除して通常モードに復帰する。
また、図5に示した例と同様に、走行速度が所定の速度を超えたこと、歩行者端末からの状態通知信号を受信しない状態が所定の時間以上継続したこと、代表端末に移行してから所定の時間が経過したことを代表端末移行条件とし、これらの代表端末解除条件の少なくともいずれかを満たす状態となると、代表端末モードを解除する。
また、歩行者がバスに乗車すると、その人物に関する歩行者情報を周辺の車両の車載端末装置3に通知する必要はない。そこで、本実施形態では、歩行者情報を周辺の車両の車載端末装置3に送信する処理(図5のST106)において、バスに乗車した人物の歩行者情報を除外するようにする。また、歩行者がバスに乗車すると、その人物に周辺の車両に関する車両情報を通知する必要はない。そこで、本実施形態では、車両情報を周辺の歩行者端末装置1に送信する処理(図5のST107)において、バスに乗車した人物の歩行者端末装置1を通知対象から除外するようにする。
具体的には、歩行者端末装置1において、歩行者およびバスの位置情報などに基づいて、自装置を所持する人物がバスに乗車したことを検知する。そして、バスに乗車したことが検知されると、バス乗車通知を小電力通信でバスの車載端末装置3に送信する。バスの車載端末装置3では、バス乗車通知を歩行者端末装置1から受信すると、その歩行者端末装置1を除く歩行者情報と自身の車両情報とを他の車載端末装置3に送信し、また、他の車両に関する車両情報を、バスに乗車した人物の歩行者端末装置1を除く歩行者端末装置1に送信する。
本実施形態における歩行者端末装置1で行われる処理の手順は、図6に示した例と略同様であるが、前記のように、歩行者がバスに乗車したことを検知して、バス乗車通知を小電力通信でバスの車載端末装置3に送信する処理が、適宜なタイミングで行われる。
以上のように、本実施形態では、バス停の周辺に対象エリアを設定して、バスが対象エリア内に進入すると、そのバスに搭載された車載端末装置3が、バス停の周辺に存在する歩行者端末装置1の代表端末となる。これにより、バス停の周辺における通信の輻輳を低減して、バス停の周辺における交通事故を確実に低減することができる。また、バスに乗車した人物の歩行者端末装置1を除外して歩行者情報や車両情報の送受信が行われるため、無用な通信による通信量の増大を回避することができる。
なお、本実施形態では、バス停(乗降エリア)に面した車道が危険エリアとなり、危険エリアと一致するように対象エリアを設定してもよいが、危険エリアより広い範囲を対象エリアとし、対象エリアにバスが進入すると、バスの車載端末装置3を代表端末に移行させるとともに、危険エリア内に存在する歩行者のみを対象にして歩行者情報を通知するようにしてもよい。
また、本実施形態では、バスに搭載された車載端末装置3が代表端末となる例について説明したが、バスに搭載された車載端末装置3の代わりにタクシー(旅客車両)に搭載された車載端末装置3を代表端末にすることも可能である。この場合、タクシー乗り場(乗降エリア)の周辺に対象エリアが設定される。タクシーの車載端末装置3および歩行者端末装置1の動作は、バスの車載端末装置3が代表端末となる場合と同様である。
なお、バスやタクシーに搭載された車載端末装置3を代表端末に設定する場合、以下のような従来にないサービスも可能にすることができるという新たな効果もある。
例えば、高齢者や体の不自由な人等がバスに乗車するという情報並びにどのバス停から乗車するかという情報も、位置情報と一緒に予めバスに通知しておくことによって、高齢者や体の不自由な人に対して、予め優先席等を確保しておくことも可能となる。ここで、バスの床等にLEDライト等を設置しておき、バスの乗車口から優先席までの動線に設置したLEDライト等を点灯させ、優先席への案内を行うようなサービスも可能である。このサービスにおいては、優先席からバスの下車口までの動線に設置したLEDライト等を点灯させ、高齢者や体の不自由な人等を下車しやすくすることも可能である。
また、高齢者や体の不自由な人がタクシーに乗車するという情報を、位置情報と一緒に予めタクシーに通知しておくことによって、高齢者や体の不自由な人に対して、優先的にタクシーを割当てることも可能となる。
また、観光バス等に搭載された車載端末装置3を代表端末に設定し、乗客の位置情報を収集することにより、乗客の搭乗確認、未搭乗の乗客がどこにいるかの確認等を行うことも可能となる。
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態に示した本発明に係る車載端末装置、歩行者端末装置、歩車間通信システム、ならびに歩車間通信方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
例えば、前記の実施形態では、車両に搭載された車載端末装置を、その周辺に存在する歩行者端末装置の代表端末にしたが、車載端末装置が搭載される車両は、乗用車のような一般的な車両の他に、シニアカー(電動歩行補助車)、電動自転車、農機などの小型の車両であってもよい。このような小型の車両は、歩行者端末装置に比較して大容量のバッテリーが搭載されているため、電力消費の観点から大きな影響はない。なお、このような小型の車両と、乗用車のような一般的な車両と、バスやトラックのような大型の車両とが混在する場合には、大容量のバッテリーを搭載した大型の車両から優先して代表端末にするとよい。
また、前記の実施形態では、歩行者端末装置が歩車間通信の機能を有する例について説明したが、歩車間通信の機能を有しない歩行者端末装置を用いることも可能である。すなわち、歩行者端末装置が小電力通信の機能を有していれば、代表端末となった車載端末装置と通信を行うことができ、これにより、代表端末となった車載端末装置を介して、歩車間通信や車車間通信で交換される情報を利用することができる。