JP2017067706A - 腎疾患診断のためのエクソソーム回収法 - Google Patents

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Abstract

【課題】腎疾患の検査に有用な特定のエクソソームを回収する方法、及び回収されたエクソソームの用途を提供することを課題とする。
【解決手段】(1)生体試料からエクソソームを分離するステップ、(2)分離したエクソソームの中から、α8インテグリンを表面に発現しているエクソソームを分取するステップを含む、メサンギウム細胞由来のエクソソームの回収法が提供される。
【選択図】なし

Description

本発明はエクソソームの回収技術に関する。詳しくは、生体試料からメサンギウム細胞由来のエクソソームを選択的に回収する方法及びその用途に関する。
エクソソームは、ほぼ全ての細胞が放出する50〜140nmの小嚢であり、その由来細胞が持つタンパク質、mRNA、microRNA(miRNA)等を内包する。脂質二重膜に覆われているが故にRNaseに耐性であり、且つ安定して長期保存できることから、バイオマーカーとして注目を集めている。従来、患者血漿、尿などの体液から超遠心法等を用いてエクソソームが分離されてきた(例えば非特許文献1を参照)。最近では、エクソソームの一般的な表面マーカーであるCD81などを用いて回収する方法(例えば特許文献1)も利用されている。
血中には様々な細胞由来のエクソソームが存在している。目的(標的)細胞由来のエクソソームを回収できれば、当該細胞が関与する疾患の診断や治療等に有益な情報が得られる可能性がある。実際、起始細胞に特異的なエクソソームを分離して解析すること(特許文献2)、尿試料中のエクソソームを特定のタンパク質に対する抗体を利用して濃縮すること(特許文献3)などが試みられている。
特開2013−185921号公報 特表2012−508577号公報 特表2014−528076号公報
Glioblastoma microvesicles transport RNA and proteins that promote tumour growth and provide diagnostic biomarkers. Nature Cell Biology 2008 Dec;10(12)
本邦には慢性腎臓病の患者が1,300万人いると想定されており、腎不全の進行に伴う血液透析を含めた腎代替療法の必要性や、合併症として、心筋梗塞などの心血管病の発症などから、社会的にも腎疾患の早期診断、治療に対するニーズが高まっている。多くの腎疾患は、検尿異常の指摘から腎臓内科専門医紹介となり、腎生検を行うことで確定診断がなされる。ただし、観血的な処置を行うリスクから、腎生検を行うことが出来る施設は限られており、検査の適応判断も一定とはいえない。
上記の通り、バイオマーカーとしてエクソソームが注目されており、腎疾患への適用も期待される。しかしながら、あらゆる細胞がエクソソームを分泌することから、従来の回収法では血管内皮細胞、上皮細胞、血小板など、様々な由来細胞をもつエクソソームが混在した状態で回収され、腎疾患に対する特異性に劣る。そこで本発明は、腎疾患の検査に有用な特定のエクソソームを回収する方法、及び回収されたエクソソームの用途(腎疾患の検査法等)を提供することを課題とする。
透析導入となる腎疾患として頻度の多い、糖尿病性腎症、IgA腎症及びループス腎炎ではメサンギウム細胞が病変の首座であることに着目し、メサンギウム細胞由来のエクソソームを選択的に回収することを目指した。メサンギウム細胞由来のエクソソームを選択的に回収できれば、糖尿病性腎症等の早期診断、それに基づく早期の治療介入等の実現に向け大きく前進する。
検討を重ねた結果、平滑筋細胞で発現が認められるとされるα8インテグリンがメサンギウム細胞由来のエクソソームを分離・回収するためのマーカーになることが判明するとともに、α8インテグリンに対する抗体を用いることによって、従来法で調製したエクソソーム(由来細胞が異なるエクソソームの集団)からメサンギウム細胞由来のエクソソームを選択的に回収することに成功した。即ち、メサンギウム細胞由来のエクソソームを選択的に回収する方法を開発した。この新規回収法の有効性を検証するために、当該方法で回収されたエクソソームを試料として、糖尿病腎症のマーカーの検出を試みたところ、高感度の検出が可能であった。即ち、当該回収方法の有効性が裏づけられるとともに、回収したエクソソームを利用して腎疾患の診断が可能であることが示唆された。
以下の発明は、主として以上の成果に基づく
[1]以下のステップ(1)及び(2)を含む、メサンギウム細胞由来のエクソソームの回収法:
(1)生体試料からエクソソームを分離するステップ;
(2)分離したエクソソームの中から、α8インテグリンを表面に発現しているエクソソームを分取するステップ。
[2]抗α8インテグリン抗体による捕捉によって、ステップ(2)の分取が行われる、[1]に記載の回収法。
[3]抗α8インテグリン抗体が固相担体に固定化されている、[2]に記載の回収法。
[4]固相担体が磁気ビーズである、[3]に記載の回収法。
[5]生体試料が血漿、血清又は尿である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の回収法。
[6]遠心処理、密度勾配遠心分離、フィルター処理、サイズ排除クロマトグラフィー及び超遠心処理からなる群より選択される一以上の処理によって、ステップ(1)の分離が行われる、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の回収法。
[7]ステップ(2)の後、抗α8インテグリン抗体に捕捉された状態でエクソソームを回収する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の回収法。
[8]ステップ(2)の後、抗α8インテグリン抗体からエクソソームを脱離し、回収する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の回収法。
[9]α8インテグリンの発現を指標として回収したエクソソーム内又は表面の標的分子を検出することを特徴とする、腎疾患の検査法。
[10]標的分子がRNA、DNA又はタンパク質である、[9]に記載の検査法。
[11]RNAがmicroRNAである、[10]に記載の検査法。
[12]エクソソームが[1]〜[6]のいずれか一項に記載の回収法で回収されたものである、[9]〜[11]のいずれか一項に記載の検査法。
[13]エクソソームが[7]に記載の回収法で回収されたものであり、
抗α8インテグリン抗体に捕捉された状態のエクソソームを試料として標的分子を検出する、[9]〜[11]のいずれか一項に記載の検査法。
[14]α8インテグリンの発現を指標として一定量の生体試料から回収したエクソソームの量を検出することを特徴とする、検査法。
電子顕微鏡による磁気ビーズ表面の観察。左:コントロール、右:抗α8インテグリン抗体による免疫染色。 電子顕微鏡による磁気ビーズ表面の観察。左:抗体でコートされていない磁気ビーズ、中央:抗α8インテグリン抗体でコートされた磁気ビーズ、右:磁気ビーズによるエクソソームの捕捉を示す模式図。スケールバーは100nmである。 糖尿病性腎症患者におけるmicroRNAの発現比較。左:非選択的に回収したエクソソームから抽出したRNAを検出、右:新規回収法によって選択的に回収したエクソソームから抽出したRNAを検出。
本発明の第1の局面はメサンギウム細胞由来のエクソソームの回収法に関する。「メサンギウム細胞」は腎臓の糸球体を支持する結合組織(メサンギウム)の構成細胞である。糸球体係蹄の中軸部にメサンギウム細胞が認められる。「メサンギウム細胞由来」とは、メサンギウム細胞が産生したものであることを意味する。本発明は、メサンギウム細胞が産生したエクソソームを選択的に回収することにより、腎疾患の検査、腎疾患に対する治療効果の判定、腎疾患の発症ないし進展メカニズムの解明等に有用な試料を提供する。
本発明の回収法では、以下のステップ(1)及び(2)を行う。
(1)生体試料からエクソソームを分離するステップ
(2)分離したエクソソームの中から、α8インテグリンを表面に発現しているエクソソームを分取するステップ
ステップ(1)は次のステップに適した試料、即ち、エクソソームの濃度が高められた(換言すれば、夾雑物の量が低減した)試料を調製するステップである。従って、当該ステップを、「試料中のエクソソームを濃縮するステップ」と言い換えることも可能である。ステップ(2)を実施する上で支障のない限り、当該ステップで得られる試料、即ち分離したエクソソームの濃度ないし純度は問わない。
ステップ(1)の分離は例えば従来法で行うことができる。従来法では、遠心処理、密度勾配遠心分離、フィルター処理、サイズ排除クロマトグラフィー、超遠心処理等が利用される(例えばThe impact of disparate isolation methods for extracellular vesicles on downstream RNA profiling.J Extracell Vesicles. 2014 Sep 18;3等を参照)。これらの手法の二つ以上を組み合わることにより、エクソソームの濃度がより高い試料を調製することが可能である。従来法の具体例を示すと、まず、生体試料(例えば血漿)をリン酸緩衝液(PBS)等で希釈した後、300G〜1200Gで20分〜30分の遠心処理を行う。次に、上清を口径0.1μm〜0.22μmのフィルターで処理した後100,000Gで60分〜180分の超遠心処理を行う。そして、リン酸緩衝液(PBS)等で溶解して沈渣(ペレット)を回収する。尚、エクソソームの濃縮のための装置や試薬(例えば、システムバイオサイエンス社が提供するExoQuick)を利用してステップ(1)の分離を行うことにしてもよい。
生体試料としては、血漿、血清、尿等を用いることができる。中でも、血漿は特に好ましい生体試料である。血漿は、血清と異なり、エクソソームを放出し得る血小板を含まない。従って、血漿の使用は、本発明の目的物であるメサンギウム細胞由来エクソソームを、より夾雑物が少ない状態で調製することを可能にする。
ステップ(1)に続くステップ(2)では、分離したエクソソームから特定の特徴を示すエクソソームを分取する。「分取する」とは、目的物、即ち、メサンギウム細胞由来のエクソソームを選択的に回収することをいう。選択性は高いことが望ましいが、夾雑物がない状態での回収のみを意図したものではない。本発明ではメサンギウム細胞由来エクソソームを選択的に回収するために、エクソソーム表面に発現するα8インテグリンを利用する。具体的には、α8インテグリンの発現を指標とし、α8インテグリンの発現が認められるエクソソームを分取する。このような分取が可能である限り、その手法、操作などは特に限定されない。好ましくは免疫学的手法を利用する。典型的には、抗α8インテグリン抗体を用い、α8インテグリンを発現しているエクソソームを捕捉する。抗α8インテグリン抗体は常法で調製することができる。抗α8インテグリン抗体は市販もされており(例えばSanta Cruz Niotechnology社が提供する製品番号sc-365798の抗体等)、容易に入手することができる。尚、α8インテグリンは、タイプ1膜一回貫通型タンパクとして知られており、βプロペラドメインの構造を備える。
固相担体に固定化されている(換言すれば、固相化された)抗α8インテグリン抗体を用いれば、簡便な操作によって効率的に目的物(メサンギウム細胞由来のエクソソーム)を分取することが可能である。ここでの固相担体として、磁気ビーズ、樹脂(ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂等)、ガラス等を採用することができる。好ましい固相担体の一つは磁気ビーズである。例えば、フェライトやマグネタイトなどの酸化鉄、酸化クロム、コバルトなどの磁性材料の粒子を磁気ビーズとして用いることができる。磁気ビーズの粒径は特に限定されないが、例えば、粒径が2.8nm〜4.5μmの磁気ビーズを用いることができる。磁気ビーズへの抗α8インテグリン抗体の結合には、例えば、プロテインGやプロテインA等の抗体結合性タンパク質(例えばInvitrogen; Exosomes Immunoprecipitatin(proteinG); 10612D)を利用すればよい。抗体結合性タンパク質が表面に固定された磁気ビーズと抗α8インテグリン抗体を適当な条件下で接触させることにより、抗体結合性タンパク質を介して抗α8インテグリン抗体が固相化された磁気ビーズを得ることができる。尚、ビオチンとストレプトアビジンの結合反応を利用して抗α8インテグリン抗体を磁気ビーズに固定化することも可能である(例えばInvitrogen; Exosomes-Streptavidin for isolation/Detection; 106-08Dを参照)。
本発明の第1の態様では、ステップ(2)の後、抗α8インテグリン抗体に捕捉された状態でエクソソームを回収する。換言すれば、抗α8インテグリン抗体からの脱離操作を介することなく、エクソソームの回収が行われる。別の態様(第2の態様)では、ステップ(2)の後、抗α8インテグリン抗体からエクソソーム脱離し、回収する。この態様の場合、抗α8インテグリン抗体に結合していないエクソソームが得られる。
エクソソームが回収できていることの確認は、電子顕微鏡による観察、CD63等のエクソソーム特異的マーカーを利用した検出等によって行うことができる。
回収したメサンギウム細胞由来エクソソームは、腎疾患の診断のための検査、治療効果の判定等に用いられる試料として有用である。そこで、本発明の第2の局面では、α8インテグリンの発現を指標として回収したエクソソーム内又は表面の標的分子を検出することを特徴とした、腎疾患の検査法を提供する。上記の第1の態様で回収したエクソソームの場合、抗α8インテグリン抗体に捕捉された状態のエクソソームを試料として標的分子を検出することができる。例えば、抗α8インテグリン抗体に捕捉された状態のエクソソームを直接、FACSでの解析に供し、エクソソームの表面に発現する標的分子を検出する。抗α8インテグリン抗体に捕捉された状態のエクソソームから特定の成分(例えば、エクソソームに含まれるmicroRNA(miRNA)等のRNA、タンパク質、DNA)を精製し、所望の検出に供することにしてもよい。上記の第2の態様で回収したエクソソームの場合にも、直接又は精製の操作を経た後、所望の検出に供される。ここでの精製は、例えば、溶解、抽出、遠心処理、フィルター処理、クロマトグラフィー等を単独で又は二以上を組み合わせて行うことができる。
典型的には、腎疾患の指標として有用な標的分子が検出対象となる。該当する標的分子を例示すると、let-7a、let-7e、let-7g、let-7i、miR-16、miR-21、miR-29a、miR-29b,miR-29c,miR-93、miR-126、miR-141、miR-145、miR-146a、miR-205、miR-192、miR-192、miR-200a、miR-200b、miR-200c、miR-215、miR-216、miR-217、miR-377等のmicroRNA、TGF-β受容体やその下流シグナルのDNA変異等、IgA Fcレセプター(CD89)等のタンパク質である。標的分子の検出は常法で行えばよい。例えば、核酸分子(RNAやDNA)の検出には核酸増幅反応を利用した各種方法、タンパク質の検出にはウエスタンブロット法、酵素免疫測定法(EIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)、放射免疫測定法(RIA法)、ラテックス凝集法等を用いることができる。膜表面タンパクに関してはフローサイトメトリー(FCM)も利用可能である。microRNAを標的分子とした場合の検出法の具体例としてTaqMan microRNA Assay(Applied Biosystems社)を挙げることができる。尚、核酸増幅反応の例として、PCR(Polymerase chain reaction)法若しくはその変法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法(Tsugunori Notomi et al. Nucleic Acids Research, Vol.28, No.12, e63, 2000; Kentaro Nagamine, Keiko Watanabe et al. Clinical Chemistry, Vol.47, No.9, 1742-1743, 2001)、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法(特許第3433929号、特許第3883476号)、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、3SR(Self-sustained Sequence Replication)法、SDA(Standard Displacement Amplification)法、TMA(Transcription Mediated Amplification)法、RCA(Rolling Circle Amplification)を挙げることができる。
本発明の検査法によって得られる情報、即ち検査結果は、腎疾患の診断や鑑別、腎疾患の重症度の判定、腎疾患に対する治療効果の判定、腎疾患に対する治療効果のモニタリング等に利用され得る。ここでの腎疾患としては、例えば、糖尿病性腎症、IgA腎症、IgA血管炎、ループス腎炎、膜性増殖性腎炎を挙げることができる。
ところで、増殖能が高い、或いは増殖能が亢進した細胞ではエクソソーム産生量が増加するとの報告がある(例えばMicroRNA signature of tumor-derived exosomes as diagnostic biomarkers of ovarian cancer Gynecologic Oncology 110 (2008) 13-21を参照)。また、腎疾患の悪化段階ではメサンギウム細胞が増加する。これらの点を考慮すると、回収されるエクソソームの量は腎疾患の発症や病態を反映し得る。そこで本発明は、α8インテグリンの発現を指標として一定量の生体試料から回収したエクソソームの量を検出することを特徴とする検査法をも提供する。ここでのエクソソームの回収には、上記の本発明の回収法を利用できる。
腎疾患の診断に適した新規エクソソーム回収法を開発すべく、以下の検討を行った。
1.メサンギウム細胞由来エクソソームの表面抗原の解析
(1)方法
ヒト培養メサンギウム細胞(Normal human mesangium cell)(RONZA社)を5% CO2、37℃の条件で培養した。培養後の上清を回収し、従来法でエクソソームを濃縮した。得られた溶液と、抗CD63抗体が予め固相化された磁気ビーズExosomes-Human CD63 Isolation/Detection(Invitrogen; 10606D)とを混合し、1時間、常温でインキュベートした。専用マグネット台に静置することで磁気ビーズを回収し、抗α8インテグリン抗体を用いた免疫染色(電子顕微鏡)に供した。
(2)結果
ヒト培養メサンギウム細胞由来のエクソソーム上には、メサンギウム細胞本体と同様に、α8インテグリンが発現していることが確認された(図1)。
2.メサンギウム細胞由来エクソソームの選択的回収
(1)方法
プロテインGが固相化された磁気ビーズ(Exosomes Immunoprecipitation (proteinG) ;Imvitrogen ;10612D)を、マニュアルに沿って抗α8インテグリン抗体(Santa Cruz Niotechnology, INC; sc-365798)とインキュベートし、抗α8インテグリン抗体でコートされた磁気ビーズを作製した。
一方、EDTA採血管にて回収されたヒト血漿を500μl用意し、PBS 30mlで希釈した後、800G、20分間の条件で遠心処理した。得られた上清を0.22μmのフィルター(Pall社)に通した。その後、4℃、100,000G、70分間の条件で超遠心処理を行った。超遠心後の上清は廃棄し、エクソソームのペレットを500μlのPBSにて回収した。回収物を、事前に作製した磁気ビーズと混合し、常温で30分間、ローテーションをかけながらインキュベートした。処理後の磁気ビーズをPBSにて3回洗い、回収した。回収した磁気ビーズの表面を電子顕微鏡で観察した。
(2)結果
電子顕微鏡による観察の結果、磁気ビーズ表面にエクソソームが捕捉されていることが確認された(図2)。即ち、抗α8インテグリン抗体でコートされた磁気ビーズによって、ヒト血漿からα8インテグリンを発現する、メサンギウム細胞由来のエクソソームを回収することに成功した。尚、内皮細胞(HUVEC)からは、抗α8インテグリン抗体でコートされた磁気ビーズでエクソソームを回収することはできなかった。即ち、高い選択性があることが示された。
3.回収したエクソソームを用いたRNA解析
(1)方法
回収したエクソソーム(磁気ビーズに捕捉された状態)から、Trizolを用いたRNA抽出法にてRNAを調製し、各種解析に供した。
(2)結果
磁気ビーズで捕捉して回収したエクソソームからRNAを抽出し、バイオアナライザー(Agilent Technologies, Inc)にて解析した結果、十分な品質かつ量のRNAが回収できていた。得られたRNAをPCRにて解析したところ、メサンギウム細胞に異常を認める糖尿病性腎症の患者血漿では、糖尿病腎症のマーカーとして報告されたmiRNA(miR-21)の発現が有意差をもって変化していることがわかった(図3右)。尚、比較のために、抗CD63抗体でコートされた磁気ビーズを用いて非選択的に回収したエクソソームから抽出したRNAを試料とした場合の結果を図3左に示した。
これまでに、確固とした腎メサンギウム細胞特異的な表面マーカーは報告されていない。本発明の回収法によれば、腎メサンギウム細胞由来のエクソソームを選択的に回収することができる。本発明によって回収したエクソソームを試料とすれば、腎疾患特異的なバイオマーカーの高感度の検出、高精度の解析等が可能となる。本発明を利用することにより、例えば、腎疾患の診断や治療効果判定に役立つ、もしくは専門施設に紹介すべきかのメルクマールになるべき新しい基準を提供することができる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (14)

  1. 以下のステップ(1)及び(2)を含む、メサンギウム細胞由来のエクソソームの回収法:
    (1)生体試料からエクソソームを分離するステップ;
    (2)分離したエクソソームの中から、α8インテグリンを表面に発現しているエクソソームを分取するステップ。
  2. 抗α8インテグリン抗体による捕捉によって、ステップ(2)の分取が行われる、請求項1に記載の回収法。
  3. 抗α8インテグリン抗体が固相担体に固定化されている、請求項2に記載の回収法。
  4. 固相担体が磁気ビーズである、請求項3に記載の回収法。
  5. 生体試料が血漿、血清又は尿である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回収法。
  6. 遠心処理、密度勾配遠心分離、フィルター処理、サイズ排除クロマトグラフィー及び超遠心処理からなる群より選択される一以上の処理によって、ステップ(1)の分離が行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回収法。
  7. ステップ(2)の後、抗α8インテグリン抗体に捕捉された状態でエクソソームを回収する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の回収法。
  8. ステップ(2)の後、抗α8インテグリン抗体からエクソソームを脱離し、回収する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の回収法。
  9. α8インテグリンの発現を指標として回収したエクソソーム内又は表面の標的分子を検出することを特徴とする、腎疾患の検査法。
  10. 標的分子がRNA、DNA又はタンパク質である、請求項9に記載の検査法。
  11. RNAがmicroRNAである、請求項10に記載の検査法。
  12. エクソソームが請求項1〜6のいずれか一項に記載の回収法で回収されたものである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の検査法。
  13. エクソソームが請求項7に記載の回収法で回収されたものであり、
    抗α8インテグリン抗体に捕捉された状態のエクソソームを試料として標的分子を検出する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の検査法。
  14. α8インテグリンの発現を指標として一定量の生体試料から回収したエクソソームの量を検出することを特徴とする、検査法。
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