JP2017067496A - マイクロ化学チップ - Google Patents

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宏▲祥▼ 岩崎
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Tsutomu Takano
努 高野
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【課題】予め試薬を収容しておくのに、これを充填するためのパッケージが不要で、安価に製造でき、かつ小型化することが可能なマイクロ化学チップを提供する。【解決手段】マイクロ化学チップ1は、被験液を流す液流路41とそれに連通している収容キャビティ46とが、重ねられた第1流路シート30と第2流路シート40との接合面の間で接着されていないことによって形成されており、被験液に含まれる対象成分を捕捉する活性部位を露出させた磁性粉体70が、水溶性樹脂によって収容キャビティ46に粘着しつつ収容されているものである。【選択図】図1

Description

本発明は、生体由来検体を被験物としそのバイオ成分を微量分析する装置や、薬理作用を示すバイオ成分等の有用物質を化学的に微量合成するマイクロリアクターに装着して用いられるマイクロ化学チップに関するものである。
血液や尿などの生体由来試料のような被験液を微量だけ用いて、酵素の特異的基質選択性を利用し、試料中の基質と作用する酵素反応量やその基質量を酵素又は基質で発色する試薬による着色度合いで定量したり、酵素含有膜を用い酵素反応量を電極で電気信号に変換して基質量を定量したりする分析や、DNA抽出・そのPCR増幅(ポリメラーゼ連鎖反応増幅)や、イオン濃度測定や、DNA又はタンパク質又はペプチドの微量合成などを行うのに、マイクロ化学チップが用いられている。
マイクロ化学チップは、ステンレス基材、シリコン基材、石英基材又はガラス基材である無機基材や、樹脂基材又はゴム基材である有機基材に、被験液を加圧して送り込み流動させて混合、反応、分離、検出するための微細流路を切削やエッチングで形成したものである。このようなマイクロ化学チップの微細流路の途中に試薬の注入口を設け、そこから必要な試薬を注入し、被験液と反応させることにより、対象成分を分析・検出する。
この試薬注入の操作を省略して、分析操作を簡便にしたり、人為的な操作ミスの発生を防止したりするためのもので、試料受容槽と反応槽との間に接続された流路とを有し試料に含まれる微細な成分の反応を行うためのマイクロ化学チップに、試料が予め充填された試料室を有するパッケージを、別途装着することにより、試料室内の試料を試料受容槽に充填する試料充填装置が、特許文献1に開示されている。
またマイクロ化学チップにパッケージを別途装着するのは、面倒なうえ、パッケージのための部品点数増加や、パッケージ製造の手間や、パッケージ分のスペース確保のためのマイクロ化学チップの小型化の制約という問題を引き起こしていた。
国際公開2009/035062号
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、予め試薬を収容しておくのに、これを充填するためのパッケージが不要で、安価に製造でき、かつ小型化することが可能なマイクロ化学チップを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた本発明のマイクロ化学チップは、被験液を流す液流路とそれに連通している収容キャビティとが、重ねられた流路シートの接合面の間で接着されていないことによって形成されており、前記被験液に含まれる対象成分を捕捉する活性部位を露出させた磁性粉体が、水溶性樹脂によって前記収容キャビティに粘着しつつ収容されているものである。
マイクロ化学チップは、前記収容キャビティに連通し、前記磁性粉体が流れ込む分枝キャビティを有しているものであってもよい。
マイクロ化学チップは、前記水溶性樹脂が、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、及びゼラチンから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
マイクロ化学チップは、前記水溶性樹脂と前記磁性粉体との質量比が、3:100〜300:100であるものであってもよい。
マイクロ化学チップは、前記活性部位が、前記対象成分に吸着、結合、付着、及び/又は反応するものであることが好ましい。
マイクロ化学チップは、前記活性部位が、核酸吸着体、プローブ、オリゴヌクレオチド、ペプチド吸着剤、ペプチド、リガンド、抗原、抗体、ウィルス、細胞、酵素、触媒、反応基質、反応性活性基、造影剤、生理活性化合物、シランカップリング剤、有機アルミネート、無機アルミネート、有機チタネート、及び無機チタネートから選ばれる少なくとも一つであるものであってもよい。
マイクロ化学チップは、前記活性部位が、前記磁性粉体の表面に結合して露出し、又は前記磁性粉体を取り巻く被覆樹脂から露出していることが好ましい。
マイクロ化学チップは、前記液流路に連通し前記被験液を注入する液注入口及び排出する液排出口と、前記収容キャビティに対応する押圧口とを有しているカバー基板が、前記液流路シートの少なくとも何れか一方の面に積層して接合されているものであってもよい。
マイクロ化学チップは、前記液流路に沿っていることにより前記被験液を脈動させて流すガス流路が、前記液流路シートの少なくとも何れか一方の面とこれに重ねられた支持シートとの接合面の間で接着されていないことによって形成されていることが好ましい。
前記の目的を達成するためになされた本発明のマイクロ化学チップの製造方法は、2枚の流路シートを重ね合わせて一部接着せずに接合することにより、被験液を流す液流路とそれに連通している収容キャビティとを、形成するマイクロ化学チップの製造方法であって、前記流路シートの接合面上で前記収容キャビティを形成するパターン部位に、前記被験液に含まれる対象成分を捕捉する活性部位を露出させた磁性粉体と水溶性樹脂との組成物を、付す工程と、前記収容キャビティと液流路とを形成する全パターン部位を残して、前記2枚の流路シートを接合する工程とを、有するものである。
本発明のマイクロ化学チップは、磁性粉体が水溶性樹脂によって収容キャビティに収容されているというシンプルな構成であり、被験液の対象成分を選択的に捕捉するものである。マイクロ化学チップは、この磁性粉体を予め内蔵した簡素な構造を有しているものであるので、小型化することができる上に、安価にかつ速やかに製造できる。
このマイクロ化学チップは、磁性粉体と水溶性樹脂とを有しているので、水溶性樹脂が磁性紛体を確りと収容キャビティに粘着させており、かつ被験液に接触してそれの水分で速やかに溶解するので、磁性粉体の飛散防止と被験液に含まれる対象成分の確実な捕捉とを、両立させることができる。
このマイクロ化学チップは、収容キャビティに連通した分枝キャビティを有しているものであると、磁性粉体と被験液とを両キャビティ間で往復させるだけで、確実に撹拌することができるので、磁性粉体の活性部位によって対象成分が十分にかつ確実に捕捉されて、洗浄や反応等によって精製や分析ができる。
本発明のマイクロ化学チップの製造方法は、微細な液流路へ連通している収容キャビティに、被験液に含まれる対象成分を捕捉する活性部位を露出させた磁性粉体が水溶可能な水溶性樹脂によって予め粘着させたまま内蔵されたマイクロ化学チップを、簡便に製造することができる。
本発明を適用するマイクロ化学チップを示す模式的な分解斜視図である。 本発明を適用するマイクロ化学チップを示す模式的な部分断面図である。 本発明の実施例のマイクロ化学チップを示す模式的な分解斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明を適用するマイクロ化学チップ1の一例は、それの製造途中を示す図1の通り、第1流路シート30と第2流路シート40とが重ね合わされており、第1流路シート30の上面に支持シートであるスペーサーシート20が重ねられ、第2流路シート40の下面に別な支持シートであるベースシート50が重ねられ、さらにスペーサーシート20の上面にカバー基板10が重ねられているものである。カバー基板10、スペーサーシート20、第1流路シート30、第2流路シート40、及びベースシート50は、この順に積層されて接合し一体化している。カバー基板10は剛直なポリカーボネート樹脂で成形され、スペーサーシート20、第1流路シート30、第2流路シート40、及びベースシート50は、柔軟なシリコーンゴムで成形されており弾性を有している。
第1流路シート30と第2流路シート40とは、液流路41と被験液送液開始部42と遊離液送液開始部43と薬液反応部44と被験液送液終了部45と収容キャビティ46と分枝キャビティ47とを残して接着されている。そのため液流路41等は、その周囲が接着されており、第1流路シート30と第2流路シート40とに挟まれつつ接着されていないことにより形成されている。
磁性粉体70と粘稠性を有する水溶性樹脂の溶液との混合液が、収容キャビティ46が形成される位置に付着された後、乾燥されることにより、磁性粉体70が乾燥固化した水溶性樹脂によって担持されつつ収容キャビティ46に粘着して収容されている。
磁性粉体70は、磁性金属や磁性金属酸化物の粒子の表面で核酸吸着体がコーティング及び/又は化学結合して露出している所謂磁性ビーズである。この磁性金属として、Fe、Ni、及びCoを挙げることができる。また磁性金属酸化物として、マグネタイト(Fe)、マグヘマイト(γ−Fe)、マグネタイト−マグヘマイト中間体、鉄−白金合金(FePt)のような強磁性の鉄含有化合物が挙げられる。また鉄含有化合物は、マグネタイトの鉄の一部が他の金属に置換された混晶フェライトであってもよい。このような金属として例えば、Mn、Ni、Zn、Co、Cu、Mg、Sn、Ca、及びCdが挙げられる。
核酸吸着体は、磁性粉体70の表面で露出しており、被験液中の核酸を吸着して捕捉する活性部位となっている。このような核酸吸着体として、ニトロセルロース、アセチルセルロース、アミノ化セルロースのようなセルロース誘導体;非晶質多孔性シリカ、アルミノケイ酸塩のようなケイ素化合物;ヒドロキシアパタイト;ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N,N’-ジメチルアミノアクリルアミドのようなポリマーリガンドが挙げられる。被験液中の核酸は、例えばDNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)である。磁性粉体70は、核酸吸着体が核酸を吸着した後、酸処理、界面活性剤処理、及び/又はイオン交換作用等で核酸を解離する。
このような磁性ビーズは、分散液中に磁性粉体70が分散した懸濁液として入手可能である。例えば、プロメガ社製のRelia Plep(商品名)、DNA IQ System DNA IQ Resin(商品名)、及びMagaZorb DNA Mini-Prep Kit MagaZorb Reagent(商品名)、東洋紡株式会社製のMag Extractor(商品名)、並びにロシュ社製のMagNA Pure LC DNA Isolation(商品名)を挙げることができる。
磁性粉体70が有する活性部位として、核酸吸着体を挙げたが、マイクロ化学チップ中で、対象成分と自在に、吸着・解離でき、結合形成・結合切断でき、付着・解離でき、及び/又は反応し必要に応じ開裂でき、それにより、対象成分を精製したり分析したりできるものであれば、特に限定されない。例えば、活性部位は、磁性粉体70から露出し対象成分を捕捉する化学的/生化学的サイト(反応場)を有するものであれば、特に限定されず、一種だけを用いても、複数種を用いてもよい。具体的に、プローブ、オリゴヌクレオチド、ペプチド吸着剤、ペプチド、リガンド、抗原、抗体、ウィルス、細胞、酵素、触媒、反応基質、反応性活性基、造影剤、生理活性化合物、シランカップリング剤、有機アルミネート、無機アルミネート、有機チタネート、及び無機チタネートなどを、適宜選択できる。活性部位は、磁性粉体70の磁性金属や磁性金属酸化物の粒子に共有結合や水素結合やイオン結合によって直接的に付着若しくは吸着若しくは結合し又はスペーサー分子を介して間接的に結合したものであってもよく、磁性粉体70の磁性金属や磁性金属酸化物の粒子を取り巻く被覆樹脂材や有機及び/又は無機被覆材自体の官能基や官能基群であってもよく、それら被覆樹脂材や有機及び/又は無機被覆材に含有されたものであってもよく、被覆樹脂材や有機及び/又は無機被覆材に共有結合や水素結合やイオン結合によって直接的に結合し又はスペーサー分子を介して間接的に結合したものであってもよい。共有結合は、エーテル結合、アミド結合、エステル結合での直接的な共有結合であってもよく、アミノエポキシ化合物や、エポキシ樹脂や、アミノ基含有ポリエーテルポリオール、ビオチン含有化合物等の両反応性のスペーサー分子を介して間接的に共有結合したものでもよい。
磁性粉体70が有するその他の活性部位として、
DNAやRNAの相補性を利用して特定の遺伝子やウィルスを検出したり、クローニングしたり、ハイブリダイゼーションしたりするのに用いる相補的遺伝子断片や一本鎖核酸であるDNAプローブ、RNAプローブ、及びPRCのプライマーのようなオリゴヌクレオチド;
抗原等のペプチド・タンパク質を特異的に又は非特異的に吸着し酸等の解離剤で解離する表面修飾セルロースのようなペプチド吸着剤;
上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)のような成長因子、免疫グロブリンE(IgE)、サイトカイン等のタンパク質を始めとするポリペプチドやオリゴペプチドや糖タンパクのようなペプチドであって、これらに対するリガンドを有する対象物質へ可逆的又は不可逆的に結合できその後に可逆的に対象物質を解離したり不可逆的に対象物質を失活したりするペプチド;
それら成長因子等のペプチドに対し可逆的又は不可逆的に結合できそれらペプチドを可逆的に解離したり不可逆的にペプチドを失活したりするリガンド;
抗サイロキシン抗体等の甲状腺ホルモン抗体、抗細胞間接着分子抗体、抗IgE抗体を始めとする、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等で例示される抗体であって、これらに対する抗原に結合できる酸やエチレングリコール等の解離液で抗原と解離し得る抗体;
肝炎抗原や花粉等で例示される抗原であって、抗体に結合でき酸等の解離液で抗体と解離し得る抗原;
ヘルペス、ポリオウィルス、狂犬病ウィルス、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、インフルエンザウィルス、トリインフルエンザウィルスのようなウィルス;
これらウィルスに対し可逆的又は不可逆的に結合できそれらウィルスを可逆的に解離したり不可逆的にウィルスを失活したりする、ウィルス表層への結合性レクチンのようなリガンド;
末梢血単核球細胞、ヒト細気管支肺胞上皮癌細胞等の腫瘍細胞、ヒト羊膜細胞のような細胞;
これら細胞に対し可逆的又は不可逆的に結合できそれら細胞を可逆的に解離したり不可逆的にウィルスを失活したりするリガンド;
リパーゼやグルコシダーゼのような分解酵素、アデノシン三リン酸(ATP)合成酵素のような合成酵素で例示される酵素;
酸化還元反応、立体特異的な不斉還元反応で例示される反応の触媒;
前記酵素に反応して分解又は合成等を引き起こす応反応基質;
アビジン又はストレプトアビジンがビオチン又はビオチン誘導体と強い特異的親和性を有することにより細胞やタンパク質を特異的に結合して分離するための反応性活性基;
蛍光タンパク質発現用レンチウイルス粒子、蛍光ラベル化剤、細胞蛍光染色プローブ;フルオレセインやローダミン等の蛍光色素、ビオチン標識分子で例示される造影剤;
細胞膜や細胞内に存在する受容体と反応するアゴニスト、アンタゴニストのような生理活性物質;
これらの受容体(リガンド、タンパク質)
が挙げられる。
これらの磁性粉体70は、それに対象成分を吸着、結合、付着、及び/又は反応させた後、対象成分ごと磁性粉体70を収容キャビティに退避させ十分に洗浄してから、次の工程へ移行するのに用いたり、磁性粉体70と対象成分とを長時間攪拌しながら接触させて付着、及び/又は反応させるのに用いたりするものである。
磁性粉体70の形状は特に限定されないが、球状、楕円状、板状、及び針状を挙げることができる。また磁性粉体70の平均粒径は、対象成分の大きさに合わせて選択される。磁性粉体70の平均粒径が、対象成分に対して大き過ぎると、被験液中で沈降してしまい拡散し難いので、核酸を十分に吸着できない。一方、小さ過ぎると、磁性粉体70の比表面積が大きすぎて水溶性樹脂に確りと担持され難くなる。磁性粉体70の比表面積は、水溶性樹脂との濡れ性、被験液への分散性、及び対象成分の捕捉性の観点から適宜設定される。
磁性粉体70は、磁石100(図2参照)によって引き寄せられ、捕集できる飽和磁化量を有していることが好ましい。この飽和磁化量が大きいと、磁性粉体70は、磁石100によって確実に捕集される。その一方で、飽和磁化量が大き過ぎると、磁性粉体70が磁力によって互いを引き付け合うため凝集し、被験液中における分散性が低下してしまう。
磁性粉体70は、スチレンのようなポリマー粒子を核とし、このポリマー粒子を、上述のような金属及び/又は金属酸化物が取り巻くように被覆しており、さらにこの金属酸化物を取り巻くように被覆している被覆樹脂が活性部位を露出させている多層構造を有しているものであってもよい。核であるポリマー粒子として、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレンのようなスチレン及びその誘導体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸ラウリル、及びメタクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸誘導体又はメタクリル酸誘導体の重合体及び/又は共重合体を好適に用いることができる。ポリマー粒子は、金属酸化物で被覆され易いように、プラズマ処理、アルカリ処理、及び/又は酸処理されているものであってもよい。
金属酸化物を取り巻く被覆樹脂は、活性部位と結合し得る例えばアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びエポキシ基のような結合性官能基を有している高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物として、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、及びトリアミノ官能性シラン(H2NCH2CH2-NHCH2CH2-NHCH2CH2CH2-Si-(OCH3)3)のようなオルガノシラン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸トリメチルアンモニウムメチルメトサルフェート、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルのようなアクリル酸誘導体又はメタクリル酸誘導体;ウンデシレン酸;ウンデシレニルアルコール;メチルプロペンスルホン酸;オレイルアミン;アクロレイン;グルタルアルデヒドの重合体又は共重合体を好適に用いることができる。なお、上記の結合性官能基は、活性部位と結合しておらず露出していることによって、磁性粉体70の反応活性基として作用することにより被験液中の対象成分を捕捉することができる。
水溶性樹脂として、セルロースエーテルのような水溶性のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、及びゼラチンを挙げることができる。このような水溶性樹脂は、粘稠性の溶液を調製できるので、磁性粉体70を均一に分散させることができる。また、その粘度の調整が容易であるので、磁性粉体70の粒径や密度に応じて、適当な粘度を有する水溶性樹脂溶液を、都度調製することができる。しかも乾燥させることによって、磁性粉体70を担持したまま固化するので、磁性粉体70をマイクロ化学チップ内に飛散させない。さらに被験液に速やかに溶解し、磁性粉体70の核酸の捕捉を妨げず、安価で入手容易である。なかでもカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロースエーテルが好ましく、これらのセルロースエーテルがメタノールやエタノールのようなアルコールによって湿潤されているものであることがより好ましい。それによって水溶性樹脂が塊を形成せず、かつ泡立たないので磁性粉体70を万遍なく被覆して担持することができる。さらに速やかに乾燥させることができる。なお水溶性樹脂は、完全に乾燥されておらず、幾らか水を含んだゲルであってもよい。
磁性粉体70と水溶性樹脂との質量比は、磁性粉体70の種類、被験液の種類、及びマイクロ化学チップに注入される被験液の容量に応じて適宜設定されるが、乾燥した状態で、水溶性樹脂:磁性粉体=3:100〜300:100であると好ましく、3:100〜100:100であるとより好ましい。磁性粉体70に対して水溶性樹脂が少なすぎると、磁性粉体70が水溶性樹脂に確りと担持されず、かつ収容キャビティ46に十分に粘着できないので、マイクロ化学チップ1内で飛散し、液流路41に入り込んでしまう。一方多すぎると、被験液に溶解しきれず粒状に残ってしまい、核酸吸着体の核酸吸着を妨げたり、粘度が高くなって規定量を分注することが困難になったりする。
このようにマイクロ化学チップ1は、磁性粉体70が水溶性樹脂によって収容キャビティ46に粘着しているというシンプルな構成を有している。そのため磁性粉体70を充填するのに、マイクロ化学チップ1とは別に成形されたパッケージが不要である。またこのパッケージに磁性粉体70を充填する工程及び磁性粉体70が充填されたパッケージをマイクロ化学チップ1に収容する工程が不要であるので、マイクロ化学チップ1を安価にかつ速やかに製造できる。さらにこのようなパッケージを収容するスペースも不要であるので、それに起因するマイクロ化学チップ1の設計上の制約がなく、小型化することができる。
液流路41は、始点末端である被験液送液開始部42から終点末端である被験液送液終了部45へ延びている。液流路41の途中に収容キャビティ46と薬液反応部44とが設けられている。収容キャビティ46は、液流路41aを介して分枝キャビティ47に連通している。廃液槽49は、カバー基板10、スペーサーシート20、及び第1流路シート30を貫通して開けられた廃液槽19,29,39と重なっており、収容キャビティ46に連通している。廃液槽19,29,39,49を貫くように、廃液を吸収する発泡体61が収容され、廃液槽19の開口に、カバーフィルム62が被せられ、カバー基板10に接着されている。マイクロ化学チップ1内で生じた廃液は、廃液槽49に送られて、廃液槽19,29,39,49に収容されている発泡体61に吸収されるので、液流路41に逆流せず、液流路41等を汚染しない。また廃液は、カバーフィルム62によってマイクロ化学チップ1から外部へと遺漏しない。それにより、マイクロ化学チップ1の周囲が廃液によって汚染されない。
被験液送液開始部42、遊離液送液開始部43、薬液反応部44、及び被験液送液終了部45は、第1流路シート30に開けられた貫通孔32,33,34,35、及びスペーサーシート20に開けられた貫通孔22,23,24,25を、夫々経てカバー基板10に開けられた被験液注入口12、遊離液注入口13、薬液注入口14、及び被験液排出口15に夫々つながり、外界へ通じている。これらの注入口や排出口は夫々被験液を注入・排出したり、これに含まれる対象成分と反応する薬液を注入したりするものである。収容キャビティ46、及び分枝キャビティ47に対応する収容キャビティ押圧口16、及び分枝キャビティ押圧口17が、カバー基板10に夫々開けられている。各キャビティ押圧口16,17にガスが流れ込むことによって、各キャビティ46,47が押圧される。この押圧操作によって被験液と磁性粉体70とが確実に混合される(図2参照)。
第1流路シート30の上面に、スペーサーシート20が重ねられ、その上面にカバー基板10が重ねられている。スペーサーシート20は、カバー基板10との間で、ガス流路や液流路のような非接着部位を有していない。そのため、ポリカーボネート製のカバー基板10と、シリコーンゴム製のスペーサーシート20とは、異種の材料同士であっても、確りと接着されて剥離しない。スペーサーシート20と第1流路シート30とが上側ガス流路31a,31bを残して接着されていることによって、液流路41,41aに沿った複数の上側ガス流路31a,31bがスペーサーシート20と第1流路シート30とに挟まれて夫々形成されている。一方、第2流路シート40の下面にベースシート50が重ねられて、上側ガス流路31a,31bと同様に、下側ガス流路51cが形成されている。
上側ガス流路31a,31b及び下側ガス流路51cにガスを流入出させるガス流入出口11a,11b,11cが、カバー基板10に夫々開けられている。ガス流入出口11a,11bは、スペーサーシート20に開けられたガス流入出孔21a,21bを経て、上側ガス流路31a,31bに連通している。またガス流入出口11cは、スペーサーシート20、第1流路シート30、及び第2流路シート40に夫々開けられたガス流入出孔21c,31c,41cを経て、下側ガス流路51cに連通している。ガス流入出口11a,11b,11cからガスが繰返し流入出することにより、液流路41,41aが閉塞したり開通したりする。各ガス流路31a,31b,51cは、略V字形をなしており、V字の一端がガス流入出口11a,11b,11cに接続している。各ガス流路31a,31b,51cにガスが流入すると、V字の折返し部位からそれの他端に向かってガスが流れ込み、液流路41,41aが扱かれるように閉塞するので、被験液が脈動して液流路41,41a内をスムーズに流れる。
廃液槽19,29,39,49が、カバー基板10、スペーサーシート20、第1流路シート30、及び第2流路シート40を貫通して形成されている。
カバー基板10、及び各シート20,30,40,50の外周で抉れた切欠18,28,38,48,58が、夫々形成されている。製造過程において、切欠18,28,38,48,58が治具に立設された突起(不図示)に嵌まることにより、カバー基板10、及び各シート20,30,40,50を位置合わせしつつ重ねて積層することができる。
マイクロ化学チップ1は、次のようにして製造される。まずカバー基板10となる基材から、レーザーカッターでガス流入出口11a,11b,11c、各注入口12,13,14、及び被験液排出口15、各キャビティ押圧口16,17、並びに廃液槽19を開け、カバー基板10を切り出す。放電管によって、カバー基板10の下側面にコロナ放電処理を施して活性化させることにより、活性基を生成させる。
スペーサーシート20となるシリコーンゴムシートに、ガス流入出孔21a,21b,21c、貫通孔22,23,24,25、及び廃液槽29を打抜きによって開け、さらにスペーサーシート20の外形に切り出す。放電管によってスペーサーシート20の両面にコロナ放電処理を施して活性化させることにより、活性基を生成させる。
第1流路シート30となるシリコーンゴムシートの上面側に、インクジェットプリンタにより、上側ガス流路31a,31bとなるパターンをマスキング剤で印刷して付す。ガス流入出孔31c、貫通孔32,33,34,35、及び廃液槽39を打抜きによって開け、第1流路シート30の外形に切り出す。放電管によって第1流路シート30の両面にコロナ放電処理を施して活性基を生成させる。このとき、マスキング剤が付されている部位は隠蔽されているので、コロナ放電処理によって活性化されず活性基を生成しない。
第2流路シート40となるシリコーンゴムシートの上面側に、インクジェットプリンタにより、液流路41、被験液送液開始部42、遊離液送液開始部43、薬液反応部44、被験液送液終了部45、収容キャビティ46、及び分枝キャビティ47となるパターンをマスキング剤で印刷して付す。ガス流入出孔41c及び廃液槽49を打抜きによって開け、第2流路シート40の外形に切り出す。放電管によって第2流路シート40の両面にコロナ放電処理を施して活性化させることにより、活性基を生成させる。この第2流路シート40を、80℃一定に保たれたホットプレート上に載置する。
磁性粉体70が分散している市販の懸濁液を遠沈管に取り分け、ボルテックスミキサーで激しく撹拌した後、遠沈管の外側に磁石を近づけて磁性粉体70を磁石に引き寄せる。上澄み液を廃棄した後、純水を加えて撹拌することにより磁性粉体70を洗浄する。再度磁石を近づけて、磁性粉体70を引き寄せ純水を廃棄する。粘稠性のセルロースエーテル溶液にエタノールを加えて湿潤させ、さらに水を加えて所望の粘度に調整する。このセルロースエーテル溶液に、磁性粉体70を加えて撹拌し、磁性粉体70とセルロースエーテル溶液との混合液を調製する。この混合液を十分に撹拌して、磁性粉体70がセルロースエーテル溶液に均一に分散したところで規定量量りとる。次いでホットプレート上に載置された第2流路シート40のマスキング剤によって付された収容キャビティ46のパターン上に混合液を載せ、2分間放置する。それによって、セルロースエーテルが乾燥固化し、収容キャビティ46のパターン上に確りと粘着する。磁性粉体70はこのセルロースエーテルに担持されているので、第2流路シート40の移動や、室内の空気の対流によって飛散したり脱落したりしない。
ベースシート50となるシリコーンゴムシートの上面側に、インクジェットプリンタにより、下側ガス流路51cとなるパターンをマスキング剤で印刷して付し、第2ガス流路シートの外形に切り出す。放電管によって第2流路シート40の両面にコロナ放電処理を施して活性化させることにより、活性基を生成させる。
最後に、治具に立設された突起(不図示)に、切欠18,28,38,48,58を嵌めながら、ガス流入出口11aとガス流入出孔21aと上側ガス流路31aとが重なり合い、ガス流入出口11bとガス流入出孔21bと上側ガス流路31bとが重なり合い、ガス流入出口11cとガス流入出孔21c,31c,41cと下側ガス流路51cとが重なり合い、被験液注入口12と貫通孔22,32と被験液送液開始部42とが重なり合い、遊離液注入口13と貫通孔23,33と遊離液送液開始部43とが重なり合い、被験液排出口15と貫通孔25,35と被験液送液終了部45とが重なり合い、薬液注入口14と貫通孔24,34と薬液反応部44とが重なり合い、収容キャビティ押圧口16と収容キャビティ46とが重なり合い、分枝キャビティ押圧口17と分枝キャビティ47とが重なり合うように、カバー基板10、及び各シート20,30,40,50を重ね合わせる。このとき磁性粉体70は、上記のように乾燥固化したセルロースエーテルに確りと担持されているので、第1流路シート30が第2流路シート40に重ねられる際に生じた静電気によって飛散しない。
重ねられることによって積層されたカバー基板10、及び各シート20,30,40,50を加熱しながら加圧する。コロナ放電によってカバー基板10、及び各シート20,30,40,50の表面に生成したヒドロキシ基のような活性基同士が脱水反応し、共有結合であるエーテル基を形成させて接合することができる。一方、マスキング剤が付されている部位は、活性基が生成していないので接合されない。それによって、スペーサーシート20と第1流路シート30とに挟まれた上側ガス流路31a,31b、第1流路シート30と第2流路シート40とに挟まれた液流路41、被験液送液開始部42、遊離液送液開始部43、薬液反応部44、磁性粉体70を収容している収容キャビティ46、及び分枝キャビティ47、並びに第2流路シート40とベースシート50とに挟まれた下側ガス流路51cが形成される。このようにしてマイクロ化学チップ1を得る。
なお、マスキング剤がインクジェットプリンタで印刷される例を示したが、オフセット印刷のような製版印刷で印刷されてもよく、必要なパターンが打抜かれたマスクでパターン領域外を覆って刷毛塗りや噴霧で付されてもよい。
マイクロ化学チップ1の部材であるカバー基板10、及び各シート20,30,40,50の接合は、直接的な共有結合の他、単分子膜としてシランカップリング剤のような分子接着剤の分子を介した間接的な共有結合であってもよい。
分子接着剤とは、その分子中の官能基が被着体と共有結合による化学反応することによって、各部材10,20,30,40,50同士を接合するためのもので、単分子又は多分子の分子接着剤分子による共有結合を介して直接的に又は間接的に結合するものである。分子接着剤は、二つの官能基が被着体である各部材10,20,30,40,50に夫々化学反応して共有結合を形成するもので、このような両官能性の分子の総称であり、具体的には、シランカップリング剤をはじめとする各種カップリング剤が挙げられる。
分子接着剤は、より具体的には、
トリエトキシシリルプロピルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール(TES)、アミノエチルアミノプロピル トリメトキシシランのようなアミノ基含有化合物;トリエトキシシリルプロピルアミノ基のようなトリアルコキシシリルアルキルアミノ基とメルカプト基又はアジド基とを有するトリアジン化合物、下記化学式(1)
Figure 2017067496
(式(1)中、Wは、スペーサ基、例えば置換基を有していてもよいアルキレン基、アミノアルキレン基であってもよく、直接結合であってもよい。Yは、OH基又は加水分解や脱離によりOH基を生成する反応性官能基、例えばトリアルコキシアルキル基である。−Zは、−N又は−NRである(但し、R,Rは同一又は異なりH又はアルキル基、−RSi(R(OR3−m[R,Rはアルキル基、RはH又はアルキル基、mは0〜2]。なお、アルキレン基、アルコキシ基、アルキル基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の炭化水素基である。)で表わされるトリアジン化合物、例えば2,6−ジアジド−4−{3−(トリエトキシシリル)プロピルアミノ}−1,3,5−トリアジン(P−TES);
トリアルコキシシリルアルキル基を有するチオール化合物;
トリアルキルオキシシリルアルキル基を有するエポキシ化合物;
CH2=CH-Si(OCH3)2-O-[Si(OCH3)2-O-]n-Si(OCH3)2-CH=CH2 (n=1.8〜5.7)で例示されるビニルアルコキシシロキサンポリマーのようなシランカップリング剤
が挙げられる。
また、分子接着剤は、反応性基含有ポリシロキサンとして、下記化学式(2)
Figure 2017067496
(式(1)中、p及びqは0又は2〜200の数でrは0又は2〜100の数であってp+q+r>2である。-A,-A及び-Aは、-CH、-C、-CH=CH、-CH(CH)2、-CHCH(CH)、-C(CH)、-C又は-C12と、-OCH、-OC、-OCH=CH、-OCH(CH)、-OCHCH(CH)、-OC(CH)、-OC及び-OC12から選ばれヒドロキシ基と反応し得る反応性基との何れかである。-B及び-Bは、-N(CH)COCH又は-N(C)COCHと、-OCH、-OC、-OCH=CH、-OCH(CH)、-OCHCH(CH)、-OC(CH)、-OC、-OC12、-OCOCH、-OCOCH(C)C、-OCOC、-ON=C(CH)及び-OC(CH)=CHから選ばれヒドロキシ基と反応し得る反応性基との何れかである。p,q及びrを正数とする-{O-Si(-A)(-B)}p-と-{O-Ti(-A)(-B)}-と-{O-Al(-A)}-との繰返単位中の-A,-A,-A,-B及び-Bの少なくとも何れかが前記反応性基であり、各部材10,20,30,40,50同士の接合の際、表面のヒドロキシ基と反応するものである)で模式的に示される化合物が挙げられる。この化合物は、繰返単位が、ブロック共重合、又はランダム共重合したものであってもよい。このようなヒドロキシ基と反応する反応性基含有ポリシロキサンの溶液に、各部材10,20,30,40,50を浸漬し、その後熱処理すると、各部材10,20,30,40,50の表面のヒドロキシ基に、反応性基含有ポリシロキサンが結合し、単層の分子膜を形成する結果、接合すべき他方のヒドロキシ基との反応性基が増幅される。各部材10,20,30,40,50の一方の表面上のヒドロキシ基が、反応性基含有ポリシロキサンに化学的結合する結果、各部材のヒドロキシ基が反応性基含有ポリシロキサンを介して間接的に結合して、各部材10,20,30,40,50同士が接着される。浸漬処理に代えて、反応性基含有ポリシロキサン溶液の噴霧処理、引続く乾燥処理、及び必要に応じて加熱処理するものであってもよい。
カバー基板10がポリカーボネート樹脂で形成されており、各シート20,30,40,50がシリコーンゴムで形成されている場合、コロナ放電処理されるだけで、十分に活性基が発現するので直接接合してもよいが、前記シランカップリング剤のような分子接着剤を用いて、接合してもよい。一方、何れかが非シリコーンゴム製の樹脂である場合、前記シランカップリング剤のような分子接着剤の0.05〜1質量%のアルコール溶液例えばメタノール溶液へ浸漬され乾燥された後、接合されることが好ましい。
各部材10,20,30,40,50同士を接合する際、それらの接合面がコロナ放電処理されて、常圧で重ねられた後、常圧下のまま共有結合させてもよいが、減圧下又は加圧下で共有結合させてもよい。例えば、50〜10torrの減圧条件、10torr未満〜1×10−2torrの真空条件下で、10〜200kgfを加え、さらに接触界面を加熱して共有結合させることが好ましい。
各部材10,20,30,40,50の表面に施すコロナ放電処理としては、例えば大気圧コロナ表面改質装置(信光電気計測株式会社製、製品名コロナマスター)を用いて、例えば、電源:AC100V、出力電圧:0〜20kV、発振周波数:0〜40kHzで0.1〜60秒、温度0〜60℃の条件で行われる。このようなコロナ放電処理は、水、アルコール類、アセトン類、エステル類等で濡れている状態で、行われてもよい。各部材10,20,30,40,50の表面を活性化させるのに施す処理は、大気圧プラズマ処理及び/又は紫外線照射処理であってもよい。
各部材10,20,30,40,50は、これらの接合面同士の少なくとも一方が、コロナ処理されて生じた活性基同士で、共有結合し易くなるように、白金触媒、例えば1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)触媒(Pt(dvs))2.1−2.4%キシレン溶液(Gelest社製品)のような白金錯体を、白金換算で10〜1000ppmの濃度で含んでいてもよい。
各部材10,20,30,40,50の接合面同士の少なくとも一方が、ビニルアルコキシシリル基を有するビニルアルコキシシランユニットを有するシランカップリング剤、例えばポリビニルメトキシシロキサンを、0.5〜10質量部の濃度で含んでいてもよい。シランカップリング剤のビニル基と、シリコーンゴムポリマー内のビニル基やハイドロジェンシロキサン基とがパーオキサイドや白金触媒により共有結合するエーテル結合とは別な共有結合によって一層強固に接合できるようになる。このとき、白金触媒を含んでいると一層、共有結合し易くなるので好ましい。
このマイクロ化学チップ1は、被験液である生体試料から核酸を抽出する例について、図1及び2を参照して説明すると、以下のようにして使用される。
マイクロ化学チップ1をマイクロリアクター(不図示)に装着する。マイクロリアクターのポンプにつながれたガス圧送チューブ(不図示)が、ガス流入出口11a〜11c、収容キャビティ押圧口16、及び分枝キャビティ押圧口17に挿し込まれて固定される。被験液を被験液注入口12から注入する。被験液は貫通孔22,32を経て、被験液送液開始部42に到達し、液流路41を押し広げ、そこへ送り込まれる。
ガス流入出口11cから、ガスが流入する。このガスは例えば圧縮空気である。ガスは、ガス流入出孔21c,31c,41cを経て、下側ガス流路51cに到達し、これを押し広げる結果、液流路41の下側で、被験液を扱くようにして先方方向へ向かって、送り出す。
一方、予めガス流入出口11aからガスを上側ガス流路31aへ流入させておき、下側ガス流路51cへのガスの流入に応じ、上側ガス流路31aからガスを流出させる。すると、上側ガス流路31aが萎む結果、液流路41の上下側で、被験液が扱かれるとともに脈動して、さらに先方方向へ送り出される。
図2にマイクロ化学チップ1の模式断面図を示す。同図中、白抜き矢印はガスの流入を示している。同図(a)に示すように液流路41内で送り出された被験液(同図(a)中、実線矢印)が、収容キャビティ46内に流れ込む。このときガスが、ガス流入出口11bから上側ガス流路31bへ予め流入していることによって、上側ガス流路31bが膨らみ、分枝キャビティ47に連通した液流路41a(同図(c)参照)が閉塞しているので、収容キャビティ46内は被験液で満たされる。それにより水溶性樹脂が速やかに溶解し、磁性粉体70が被験液中に拡散する。
図2(b)に示すように、ガス流入出口11aからガスが流入することにより、上側ガス流路31aが膨らむ。それによって磁性粉体70が拡散した被験液は、収容キャビティ46内に液密に収容される。次いでベースシート50の下方で、磁石100が収容キャビティ46に接近することにより、磁石100の磁力が磁性粉体70を収容キャビティ46の底面へ引き寄せる。それにより磁性粉体70は、収容キャビティ46の底面に集まる。さらに磁石100が収容キャビティ46から離反し(同図中、二点鎖線)、磁力が除去されることによって、磁性粉体70が被験液中に舞い上がるように拡散する。このように磁石100の接近と離反とが繰り返される。それによって、磁性粉体70の表面の核酸吸着体に被験液中の核酸が吸着し、捕捉される。
図2(c)に示すように上側ガス流路31b内のガスが、ガス流入出口11bから流出して上側ガス流路31bが萎むとともに、収容キャビティ押圧口16にガスが送り込まれ、収容キャビティ46が押圧される。それにより、被験液及び磁性粉体70が、収容キャビティ46から押し出されて液流路41aを流れ(同図中、実線矢印)、分枝キャビティ47に流れ込む。このとき上側ガス流路31aにガスが留まって、液流路41が閉塞されたままであるので、被験液及び磁性粉体70は被験液送液開始部42(図1参照)に向かって逆流しない。
図2(d)に示すように、収容キャビティ46の押圧が解かれるとともに、分枝キャビティ押圧口17にガスが送り込まれて分枝キャビティ47が押圧される。それにより、被験液及び磁性粉体70は、液流路41aを再び流れ(同図中、実線矢印)、収容キャビティ46へ向かって流動する。同図(b)〜(d)に示す工程が複数回繰り返されることによって、被験液と磁性粉体70とが撹拌される。その結果、被験液中の核酸が磁性粉体70の表面の核酸吸着体に吸着する。
最後に図2(e)に示すように、磁石100が収容キャビティ46に接近したまま、上側ガス流路31a内のガスがガス流入出口11aから流出して上側ガス流路31aが萎み、かつガス流入出口11bから上側ガス流路31bにガスが流入して上側ガス流路31bが膨らむとともに、収容キャビティ押圧口16にガスが流れ込む。それにより、核酸を吸着した磁性粉体70が磁石100に引き寄せられて収容キャビティ46内に留まりつつ、核酸を含まない被験液のみが、収容キャビティ46から廃液槽19,29,39,49(図1参照)に向かって流動する。廃液槽19,29,39,49に到達した被験液は、発泡体61に吸収される。
このようにマイクロ化学チップ1は、磁性粉体70が水溶性樹脂に担持されて収容キャビティ46に収容されているというシンプルな構造であるので、磁石100を収容キャビティ46に接近・離反させたり、ガスを各ガス流路31a,31b,51cに流入出させたりするという単純な操作で磁性粉体70と被験液とを十分に接触させて、被験液中の核酸を磁性粉体70の核酸吸着体に吸着させることができる。しかもこのマイクロ化学チップ1は、収容キャビティ46に連通した分枝キャビティ47を有しているので、両キャビティ46,47間で被験液と磁性粉体70とを往復させて撹拌することができる。その結果、磁性粉体70の核酸吸着体に被験液中の核酸を十分にかつ確実に吸着させることができる。
次いで遊離液が、遊離液注入口13から注入され、貫通孔23,33を経て遊離液送液開始部43に到達する。遊離液は、被験液と同様に液流路41内で脈動して収容キャビティ46に到達し、核酸を吸着した磁性粉体70と接触する。それにより、核酸が磁性粉体70の核酸吸着体から遊離して遊離液中に分散する。核酸が分散した遊離液は、液流路41のさらに先方方向へ送り込まれる。このとき磁性粉体70は、磁石100に引き寄せられているので(図2(e)参照)、収容キャビティ46に滞留したままである。なお遊離液は、エリューションバッファー(Elution Buffer)とも呼ばれ、例えば水酸化ナトリウム溶液及び炭酸水素ナトリウムのようなアルカリ化剤溶液やセルラーゼ含有溶液を挙げることができる。
核酸を含んだ被験液は、薬液反応部44に到達する。薬液注入口14からDNAポリメラーゼ等のPCR反応溶液が注入され、貫通孔24,34を経て薬液反応部44に到達し、被験液と混合される。この被験液は、一層先方方向の分岐点に送り出され、さらに等分されて終には被験液送液終了部45に至り、貫通孔35,25を経て被験液排出口15から排出される。排出された被験液にプライマーが加えられ、この混合液の加熱と冷却とが繰り返されることにより核酸が増幅される。得られた核酸について電気泳動等の所望の分析が行われる。
液流路41や各ガス流路31a,31b,51cの幅、長さ、形状、及び配置は、その用途に応じて適宜設計すればよい。例えば液流路41は、0.5μm〜5mm幅であることが好ましい。またマイクロ化学チップ1の厚さは、それを装着する装置やマイクロリアクターの用途に応じ、適宜選択されるが、0.5〜10mmであることが好ましい。また、収容キャビティ46は図1に示すように液流路41の途中に設けてもよく、被験液送液開始部42に設けても、被験液送液終了部45に設けてもよい。
各部材10,20,30,40,50の接合方法として、分子接着及び分子接着剤を挙げたが、この他に、これら部材の接合方法として、超音波溶着による接合方法、レーザー溶着による接合方法、シリコーンゴムシート同士の圧着による接合方法、並びにアクリル系接着剤、ゴム系接着剤、及びシリコーン系接着剤を用いた接合方法を挙げることができる。
超音波溶着は、重ね合わされた部材に、超音波溶接機を用いて発生させた振動を加えることによって接触界面に摩擦熱を発生させ、接触界面を溶融させて接合する方法である。超音波溶着機は、入力された電源を特定の周波数を有する電気信号に変換する発振器と、この電気信号を機械的振動に変換するトランスデューサーと、この機械的振動を増幅するブースターと、増幅された機械的振動を部材に伝達する共鳴体(ホーン)とを有するものである。発生させる振動の周波数は、15〜70kHzが好ましく、接合する部材の材料、厚さ、及び形状に応じて適宜設定される。
レーザー溶着は、重ね合わされた部材の接触界面に、レーザー光を照射することにより、接触界面を熱溶融させて接合する方法である。レーザー光として、GaAlAs、GaAs、及びInPのような半導体から発せられる半導体レーザー、He−Neレーザー、及びCOレーザーのような気体レーザー、並びにルビーレーザー、ガラスレーザー、及びYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーのような固体レーザーを挙げることができる。レーザー光の波長は、600〜1200nmであることが好ましく、接合する部材の材料、厚さ、及び形状に応じて適宜設定される。また接合前に、部材の重ね合わせ面の一方に、レーザー光吸収剤を塗布することが好ましい。それにより、レーザー光が吸収され易くなるので、部材を速やかに接合できる。レーザー光吸収剤として、例えばシアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、及びジイモニウム化合物を主成分とするレーザー光吸収剤を挙げることができ、なかでもマイクロ化学チップ1の透明性を確保する観点から、高い可視光透過率を有するジイモニウム化合物を主成分とするレーザー光吸収剤が好ましい。
低可塑度のシリコーンゴムシートは、粘着性(タック性)に富んでいるので、シリコーンゴム同士を重ね合わせ、荷重を印加することによって、これらを圧着することができる。
アクリル系接着剤としてポリ(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするものが挙げられ、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる単量体を重合させたホモポリマー、又はそれらの何れかを共重合させたコポリマーを挙げることができる。ゴム系接着剤として、例えば、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、及び/又はスチレン−イソプレンゴムを主成分とするものが挙げられる。シリコーン系接着剤としてオルガノポリシロキサンを主成分とするものを挙げることができ、例えば、ジメチルポリシロキサンやジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体のような末端アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンを挙げることができる。接着剤は、塗布、噴霧、及び/又は印刷によって各部材10,20,30,40,50に付すことができる。
カバー基板10及びカバーフィルム62の樹脂は、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブテレンテレフタレート樹脂、セルロース及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、二酢酸セルロース、表面ケン化酢酸ビニル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、i−ポリプロピレン、石油樹脂、ポリスチレン、s‐ポリスチレン、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、ABS樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4‐トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイドとトリアリルイソシアヌルブレンド物、(ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイド、トリアリルイソシアヌル、パーオキサイド)ブレンド物、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PPI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶樹脂、アラミド繊維、炭素繊維とこれら複数材料のブレンド物で例示される高分子材料、その架橋物が挙げられる。
各シート20,30,40,50の材料は、エラストマーであることが好ましく、シリコーンゴムがより好ましく、三次元化シリコーンゴムであるとより一層好ましい。このシリコーンゴムとして具体的に、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PVMQ)、フルオロメチルシリコーンゴム(FVMQ)、及びジメチルシリコーンゴム(MQ)が挙げられる。三次元化シリコーンゴムとして、具体的に、主としてパーオキサイド架橋型シリコーンゴム、付加架橋型シリコーンゴム、縮合架橋型シリコーンゴム、紫外線架橋型シリコーンゴムで例示されるシリコーンゴム、これらのシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物を、成形金型等に入れて、架橋させることにより製造された、立体的な架橋構造を有する三次元化シリコーンゴム弾性体が挙げられる。
三次元化シリコーンゴム弾性体の素材のパーオキサイド架橋型シリコーンゴムは、パーオキサイド系架橋剤で架橋できるシリコーン原料化合物を用いて合成されたものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリジメチルシロキサン(分子量:50万〜90万)、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万〜90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万〜20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜5万)、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万〜1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサン、メタアクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、(メタアクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
三次元化シリコーンゴム弾性体の素材の付加型シリコーンゴムは、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万〜90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万〜20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜5万)、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万〜1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン(分子量:0.05万〜10万)、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーのようなH基含有ポリシロキサンの組成物、
アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサンのようなアミノ基含有ポリシロキサンと、エポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなエポキシ基含有ポリシロキサン、琥珀酸無水物末端ポリジメチルシロキサンのような酸無水物基含有ポリシロキサン及びトルイルジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート基含有化合物との組成物から得られるものである。
三次元化シリコーンゴム弾性体の素材の縮合型シリコーンゴムは、スズ系触媒の存在下で合成されたシラノール末端ポリジメチルシロキサン(分子量:0.05万〜20万)、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフルオロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなシラノール基末端ポリシロキサンからなる単独縮合成分の組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、テトラアセトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、ジt−ブトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエノキシメチルシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ−n−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、ビニルトリイソプロペノイキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリ(エチルメチル)オキシムメチルシラン、ビス(N−メチルベンゾアミド)エトキシメチルシラン、トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、トリアセトアミドメチルシラン、トリジメチルアミノメチルシランのような架橋剤との組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、クロル末端ポリジメチルシロキサン、ジアセトキシメチル末端ポリジメチルシロキサン、末端ポリシロキサンのような末端ブロックポリシロキサンの組成物から得られるものである。
三次元化シリコーンゴム弾性体の素材のシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物に用いられるオレフィン系ゴムは、1,4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴムが挙げられる。
シリコーンゴム以外のエラストマーとして、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びウレタン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。これらのエラストマーは、単独で用いられてもよいし、複数の種類が混合されて用いられてもよい。
マスキング剤は、被験液やそれに用いられる薬剤に不活性なもので、フルオロプロパノール、パーフルオロアルキシルシランのようなフッ素化合物含有コーティング剤、界面活性剤のような離型剤、塩化メチレンやクロロホルム、1−ブロモプロパン、ハイドロフルオロエーテルのようなハロゲン系溶媒が挙げられる。これらのマスキング剤は、単独で用いられてもよく、複数混合して用いられてもよい。マスキング剤は、被験液や反応試薬等に不活性な染料や顔料で着色されていてもよい。マスキング剤がハロゲン系溶媒を含有していると、それを付した基材箇所が荒れて光散乱されるようになるので、目視し易くなる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
1.磁性粉体と水溶性樹脂溶液との混合液の調製
水溶性樹脂(信越化学工業株式会社製、製品名;メトローズ60SH−03)1gとエタノール7gとを混合し、十分膨潤させた後、これに超純水3gを混合し、メトローズ60SH−03を完全に溶解させ、水溶性樹脂溶液を得た。次いで、1.5mL容量のマイクロチューブに、磁性粉体であるIQ Resin(プロメガ株式会社製、製品名;DNA IQ System)の懸濁液の7μLを加え、ネオジム磁石を用いて磁性粉体をマイクロチューブの壁面に引き寄せて集め、マイクロピペットを用いて上澄み液を取り除いた。そこへ、調製した水溶性樹脂溶液10μLを加え混合し、磁性粉体と水溶性樹脂溶液との混合液を得た。
2.液流路及びガス流路形成用マスキング剤の調製
紫外線硬化樹脂(帝国インキ製造株式会社製、製品名;UV−TEC410クリアー)を100質量部、シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名;XIAMETER OFS−6020 SILANE)を0.025質量部、及びフッ素樹脂粉末(旭硝子株式会社製、製品名;Fluon PTFE ルブリカントL173JE)を100質量部加え、三本ロールミル(株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製、製品名;EXAKT M−80E)を用いて混合し、液流路及びガス流路形成用マスキング剤を得た。
3.マイクロ化学チップの作製
図3に、実施例で作製したマイクロ化学チップ1を示す。なお本実施例において、上側ガス流路を要しなかったので、第1流路シート30に上側ガス流路31a,31bを設けず、かつスペーサーシート20を省略した(図1参照)。シリコーンゴムとしてメチルビニルシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名;SH851)の100質量部と、パーオキサイド系加硫剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名;RC−4、50%シリカ溶液)の0.5質量部とを混練し、第1流路シート30、第2流路シート40、及びベースシート50用の組成物を得た。これを加圧加熱して、各シート30,40,50を成形した。さらに、第1流路シート30に、複数のガス流入出孔、貫通孔32,33,35、及び廃液槽39を、第2流路シート40に、複数のガス流入出孔を、夫々打ち抜きによって開けた。
第2流路シート40の上面40a、及びベースシート50の上面50aに、コロナ放電表面改質装置(信光電気計装株式会社製、製品名;コロナスキャナー)を用いて、ギャップ長1mm、電圧13.5kV、70mm/秒の条件で1回のコロナ放電処理を施し、上面40a,50aの表面を活性化した。305メッシュのポリエステル製網目スクリーン(スクリーン印刷版)を用いて、上面40aに、液流路41a〜41e、被験液送液開始部42、遊離液送液開始部43、被験液送液終了部45、収容キャビティ46、分枝キャビティ47、及び廃液槽49のパターンを、マスキング剤で印刷して付した。これと同様にして、上面50aに下側ガス流路51a〜51eのパターンを、マスキング剤で印刷して付した。さらに、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、使用ランプ名;M04−L41)を用いて、各上面40a,50aに、300mJ/cm、波長365nmの紫外線を夫々照射し、マスキング剤を硬化させてマスキング層を形成した。
第1流路シート30の下面30bと第2流路シート40の上面40aとに、コロナ放電表面改質装置(信光電気計装株式会社製、製品名;コロナスキャナー)を用いて、ギャップ長1mm、電圧13.5kV、70mm/秒の条件で3回のコロナ放電処理を施し、下面30b及び上面40aの表面を活性化した。調製した磁性粉体と水溶性樹脂溶液との混合液を、上面40a上で硬化したマスキング層によって形成された収容キャビティ46のパターン上に分注して載せ、80℃で90秒間乾燥することにより、水溶性樹脂に担持された磁性粉体70を、そこに粘着させた。その後、下面30bと上面40aと向合せた状態で、第1流路シート30と、第2流路シート40とを、位置合わせしつつ重ね合わせた。これを、80℃で10分間、70kgfで熱圧着することによって、第1流路シート30と、第2流路シート40とを接合し、収容キャビティ46に磁性粉体70を収容した。
第2流路シート40の下面40bとベースシート50の上面50aとに、コロナ放電表面改質装置(信光電気計装株式会社製、製品名;コロナスキャナー)を用いて、ギャップ長1mm、電圧13.5kV、70mm/秒の条件で、3回のコロナ放電処理を施し、下面40b及び上面50aの表面を、活性化した。その後、下面40bと上面50aとを向合せた状態で、流路シート40とベースシート50とを位置合わせしつつ重ね合わせた。これを、80℃で10分間、70kgfで熱圧着することによって、第2流路シート40とベースシート50とを、接合した。
ポリカーボネート板(タキロン株式会社製、製品名;PC1600)を、カバー基板10の外形に切り出し、ガス流入出口11a〜11e、被験液注入口12、遊離液注入口13、被験液排出口15、収容キャビティ押圧口16、及び分枝キャビティ押圧口17、排気穴19aを打ち抜きによって開けた。さらに、カバー基板10の下面10bの一部を、フライス盤で彫り込んで、廃液槽19を形成した。
このカバー基板10をエタノールで洗浄した後、0.1質量%の2,6−ジアジド−4−{3−(トリエトキシシリル)プロピルアミノ}−1,3,5−トリアジン(P−TES)のエタノール溶液に浸漬し、エアーガンで風乾により乾燥させた。その後、カバー基板10の下面10bに、紫外線照射装置を用いて、200mJ/cm、波長254nmの紫外線を照射した。
第1流路シート30の上面30aに、コロナ放電表面改質装置(信光電気計装株式会社製、製品名;コロナスキャナー)を用いて、ギャップ長1mm、電圧13.5kV、70mm/秒の条件で3回コロナ放電処理を施し、上面30aの表面を活性化した。廃液槽19内に、これよりも一回り小さくカットした不織布ワイパー(旭化成せんい株式会社製、製品名;ベンコット(登録商標))をセットした後(不図示)、上面30aとカバー基板10の下面10bとを向合せた状態で、各シート30,40,50の接合品とカバー基板10とを位置合わせしつつ重ね合わせた。これを、80℃で10分間、70kgfで熱圧着して接合することによって、マイクロ化学チップ1を得た。
4.評価用溶液及びブランク溶液の調製
評価用検体として、0.5μg/μL pUC18 DNA(タカラバイオ株式会社製、製品名;pUC18 DNA)の2μL、1質量%のBSA溶液(和光純薬工業株式会社製、アルブミン,ウシ血清由来(BSA),pH5.2(フラクションV)を超純水で調製したもの)の2μL、及び超純水の36μLを混合し、タンパク質を含有した評価用溶液の40μLを、調製した。さらに、0.5μg/μL pUC18 DNA(タカラバイオ株式会社製、製品名;pUC18 DNA)の2μL、及び超純水の38μLを混合し、タンパク質を含有しないブランク溶液の40μLを、調製した。
5.核酸の濃度及び純度の測定
評価用溶液の2μLを、微量分光光度計(Thermo SCIENTIFIC社製、製品名;NanoDrop2000c)にセットし、波長260nm及び280nmにおける吸光度を測定した。核酸の濃度を波長260nmの吸光度から求めた。また核酸の純度を、波長260nmと280nmとの吸光度の比であるA260/A280によって求めた。ブランク溶液についても同様にして測定した。
6.核酸の抽出
(6-1)吸着工程
マイクロリアクターにマイクロ化学チップ1をセットした。評価用溶液の38μLと、Lysis Bufferの100μLとを混合して被験液を調製し、この被験液を、被験液注入口12から被験液送液開始部42へ注入した。ガス流入出口11b,11c,11d,11eからガスを流し込み、下側ガス流路51b,51c,51d,51eを膨らませ、液流路41b,41c,41d,41eを閉じた。被験液注入口12にガスを流入させて、被験液を液流路41aへ流し込んだ。ガスの流入を続け、被験液を収容キャビティ46へ送り込み、被験液がすべて収容キャビティ46に収容されたところで、下側ガス流路51aにガスを流入させて液流路41aを閉じた。
収容キャビティ46内で、磁性粉体70を担持している水溶性樹脂が溶解して、磁性粉体70が被験液に拡散したことを確認した後、下側ガス流路51bからガスを流出させた。それにより、液流路41bを開通させ、収容キャビティ46と分枝キャビティ47とを通液可能に連通させた。収容キャビティ押圧口16及び分枝キャビティ押圧口17に、ガスを交互に10回流入出させて、磁性粉体70が拡散した被験液を、収容キャビティ46と分枝キャビティ47と間で行き来させた。それにより磁性粉体70の核酸吸着体に被験液中の核酸が吸着するようにした。その後、室温で5分間放置した。
(6-2)廃液工程
収容キャビティ46の下方のベースシート50に、ネオジム磁石である磁石100(図2(b)参照)を宛がった状態で、分枝キャビティ押圧口17、下側ガス流路51bの順にガスを流入させ、液流路41bを収容キャビティ46に向かって脈動させた。それによって磁性粉体70が拡散した被験液を、収容キャビティ46に集めるとともに、磁性粉体70を磁石100に引き付けた。次いで、下側ガス流路51cからガスを流出させて、収容キャビティ押圧口16、下側ガス流路51cの順にガスを流入させた。核酸を吸着した磁性粉体70を、磁石100に引き付けておくことにより、これを収容キャビティ46に留めたまま、被験液を廃液槽19,39,49に送った。廃液槽19,39,49内の空気が排気穴19aから排気されることにより、被験液を廃液槽19,39,49に流し込むとともに不織布ワイパーに吸収させた。
(6-3)洗浄工程1
下側ガス流路51b〜51eを閉じた状態で、下側ガス流路51aからガスを流出させて、液流路41aを開通させ、Lysis Bufferの150μLを、被験液注入口12から被験液送液開始部42へ注入した。このLysis Bufferを、被験液と同様にして収容キャビティ46に収容し、磁石100を取り除いた。下側ガス流路51bからガスを流出させて、収容キャビティ46と分枝キャビティ47とを、通液可能に連通させた。その後、収容キャビティ押圧口16及び分枝キャビティ押圧口17に、ガスを交互に5回流入出させて、Lysis Bufferを、収容キャビティ46と分枝キャビティ47と間で行き来させた。それによって、磁性粉体70を、Lysis Bufferに拡散させて洗浄した。再び、収容キャビティ46の下方のベースシート50に、磁石100を宛がい、被験液と同様にして、Lysis Bufferだけを、廃液槽19,39,49に排出した。
(6-4)洗浄工程2
2×Wash Buffer:イソプロパノール:エタノール=2:1:1の量に混合した洗浄液を調製し、上記の洗浄工程1と同様の操作を3回繰り返した。
(6-5)乾燥工程
下側ガス流路51a,51cからガスを流出させ、液流路41a,41cを開通させた状態で、被験液注入口12からガスを2分間送り込み、磁性粉体70を風乾した。
(6-6)抽出工程
Elution Bufferの50μLを、遊離液注入口13から遊離液送液開始部43へ注入した。下側ガス流路51a,51c,51dにガスを流入させて、液流路41a,41c,41dを閉じた。下側ガス流路51eからガスを流出させて、液流路41eを開通させた。遊離液注入口13からガスを流し込み、Elution Bufferを、液流路41eへ流し込んだ。ガスの流入を継続し、Elution Bufferを収容キャビティ46へ送り込み、下側ガス流路51eにガスを流入させて、液流路41eを閉じた。磁石100を取り除いた後、下側ガス流路51bからガスを流出させて液流路41bを開通させ、収容キャビティ46と分枝キャビティ47とを、通液可能に連通させた。その後、収容キャビティ押圧口16及び分枝キャビティ押圧口17に、ガスを交互に5回流入出させた。収容キャビティ46と分枝キャビティ47との間で行き来させることにより、磁性粉体70をElution Bufferに拡散させた。
最後に、分枝キャビティ押圧口17、下側ガス流路51bの順にガスを流入させて、核酸を含んだElution Bufferを、収容キャビティ46に集めた。さらに、収容キャビティ46の下方のベースシート50に、65℃に温度調整した熱ピン(不図示)を押し当てて、5分間インキュベートし、磁性粉体70の核酸吸着体に吸着した核酸を、Elution Buffer中に遊離させた。
熱ピンを取り除き、室温で1分間放冷した後、収容キャビティ46の下方のベースシート50に、磁石100を宛がった。下側ガス流路51dからガスを流出させて液流路41dを開通させた後、収容キャビティ押圧口16、下側ガス流路51dの順でガスを流入させて、増幅された核酸を含んだ抽出液を、被験液送液終了部45へ送り、被験液排出口15から排出させた。
ブランク溶液についても、上記の工程と同様の操作を行い、核酸を抽出した。
得られた評価用溶液の抽出液の2μLを、上記の「5.核酸の濃度及び純度の測定」と同様にして、核酸抽出後における吸光度、及び核酸の濃度を測定した。ブランク溶液の抽出液についても、同様にして測定した。夫々の溶液について、抽出前後における測定結果を、表1にまとめて示す。
Figure 2017067496
表1から明らかなように、本発明のマイクロ化学チップによれば、タンパク質が混入していても、高純度の核酸を抽出することが可能である。
本発明のマイクロ化学チップは、迅速に分析結果を知る必要がある救急医療現場での患者の生体成分の分析、犯罪現場で微量な血痕・体液・毛髪・生体組織細胞等の遺留品からDNAを抽出し、そのDNAを増やすPCR増幅し、電気泳動でDNAを特定するDNA解析、新規医薬品探索のための各種医薬候補品の物性・薬効評価、オーダーメード医療のための診断、ペプチドやDNAや機能性低分子の微量合成などに、用いられる。
このマイクロ化学チップは、それらの分析装置やマイクロリアクターに装着して、遺伝子診察・治療を行う医療分野や、生体試料を用いた犯罪捜査分野における各種分析、海洋や湖沼等の遠隔地での水中ロボットを用いた微生物探索、医薬品開発における各種合成に用いることができる。
1はマイクロ化学チップ、10はカバー基板、10bは下面、11a,11b,11c,11d,11eはガス流入出口、12は被験液注入口、13は遊離液注入口、14は薬液注入口、15は被験液排出口、16は収容キャビティ押圧口、17は分枝キャビティ押圧口、18は切欠、19は廃液槽、19aは排気穴、20はスペーサーシート、21a,21b,21cはガス流入出孔、22,23,24,25は貫通孔、28は切欠、29は廃液槽、30は第1流路シート、30aは上面、30bは下面、31a,31bは上側ガス流路、31cはガス流入出孔、32,33,34,35は貫通孔、38は切欠、39は廃液槽、40は第2流路シート、40aは上面、40bは下面、41,41a,41b,41c,41d,41eは液流路、41cはガス流入出孔、42は被験液送液開始部、43は遊離液送液開始部、44は薬液反応部、45は被験液送液終了部、46は収容キャビティ、47は分枝キャビティ、48は切欠、49は廃液槽、50はベースシート、50aは上面、51a,51b,51c,51d,51eは下側ガス流路、58は切欠、61は発泡体、62はカバーフィルム、70は磁性粉体、100は磁石である。

Claims (10)

  1. 被験液を流す液流路とそれに連通している収容キャビティとが、重ねられた流路シートの接合面の間で接着されていないことによって形成されており、前記被験液に含まれる対象成分を捕捉する活性部位を露出させた磁性粉体が、水溶性樹脂によって前記収容キャビティに粘着しつつ収容されていることを特徴とするマイクロ化学チップ。
  2. 前記収容キャビティに連通し、前記磁性粉体が流れ込む分枝キャビティを有していることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ化学チップ。
  3. 前記水溶性樹脂が、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、及びゼラチンから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ化学チップ。
  4. 前記水溶性樹脂と前記磁性粉体との質量比が、3:100〜300:100であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
  5. 前記活性部位が、前記対象成分に吸着、結合、付着、及び/又は反応するものであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
  6. 前記活性部位が、核酸吸着体、プローブ、オリゴヌクレオチド、ペプチド吸着剤、ペプチド、リガンド、抗原、抗体、ウィルス、細胞、酵素、触媒、反応基質、反応性活性基、造影剤、生理活性化合物、シランカップリング剤、有機アルミネート、無機アルミネート、有機チタネート、及び無機チタネートから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
  7. 前記活性部位が、前記磁性粉体の表面に結合して露出し、又は前記磁性粉体を取り巻く被覆樹脂から露出していることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
  8. 前記液流路に連通し前記被験液を注入する液注入口及び排出する液排出口と、前記収容キャビティに対応する押圧口とを有しているカバー基板が、前記液流路シートの少なくとも何れか一方の面に積層して接合されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
  9. 前記液流路に沿っていることにより前記被験液を脈動させて流すガス流路が、前記液流路シートの少なくとも何れか一方の面とこれに重ねられた支持シートとの接合面の間で接着されていないことによって形成されていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
  10. 2枚の流路シートを重ね合わせて一部接着せずに接合することにより、被験液を流す液流路とそれに連通している収容キャビティとを、形成するマイクロ化学チップの製造方法であって、
    前記流路シートの接合面上で前記収容キャビティを形成するパターン部位に、前記被験液に含まれる対象成分を捕捉する活性部位を露出させた磁性粉体と水溶性樹脂との組成物を、付す工程と、
    前記収容キャビティと液流路とを形成する全パターン部位を残して、前記2枚の流路シートを接合する工程とを、
    有することを特徴とするマイクロ化学チップの製造方法。
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