以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るトルク変動低減装置の断面図であり、図2は、図1におけるY2−Y2線に沿ったトルク変動低減装置の断面図、図3は、トルク変動低減装置の斜視図、図4は、トルク変動低減装置の別の斜視図である。なお、図3及び図4では、トルク変動低減装置を構成する遊星歯車機構のキャリヤを省略して示している。
本発明の第1実施形態に係るトルク変動低減装置は、自動車等の車両に搭載される車両用エンジンに適用されてエンジンの出力軸であるクランクシャフトなどのトルクを伝達する回転軸に発生するトルク変動を低減するように構成されている。
本実施形態では、直列4気筒4サイクルエンジン、特に4気筒の全てを作動させる全筒運転と4気筒のうち2気筒のみを作動させる減筒運転とを切換可能に構成された直列4気筒4サイクルエンジンに適用される場合におけるトルク変動低減装置について説明する。
全筒運転と減筒運転とを切換可能に構成された直列4気筒4サイクルエンジンでは、全筒運転時にはクランクシャフトが1回転する間に2回のトルク変動が発生し、減筒運転時にはクランクシャフトが1回転する間に1回のトルク変動が発生する。
エンジンのクランクシャフトに発生するトルク変動は、作動させる気筒数が少ないほど大きく、減筒運転時には全筒運転時に比べて大きくなることから、本実施形態に係るトルク変動低減装置は、減筒運転時にクランクシャフトに発生するトルク変動を低減するように構成されている。
図1から図4に示すように、第1実施形態に係るトルク変動低減装置10は、トルクを伝達する回転軸1として直列4気筒4サイクルエンジンの出力軸であるクランクシャフト1を備えると共に、回転軸1と一体的に回転するウエイト支持部材11と、ウエイト支持部材11にそれぞれ回転可能に支持される4つのウエイト部材20とを備えている。
ウエイト支持部材11は、回転軸1の軸方向に離間して2つ設けられている。2つのウエイト支持部材11は、同一形状を有し、回転軸1の軸方向に離間して同様に配置されている。ウエイト支持部材11は、回転軸1の軸方向に所定の厚さを有すると共に回転軸1の軸方向から見て略十字形状に形成されている。ウエイト支持部材11は、中心に形成された略円形状の開口部11aの内周面が回転軸1にスプライン嵌合されて回転軸1と一体的に回転するようになっている。
ウエイト支持部材11はまた、図2に示すように、回転軸1の軸心C1から半径r1に中心を有する円形状の4つの開口部11bを有している。4つの開口部11bは、同一形状を有して回転軸1の周方向に90度ごとに等間隔に設けられている。ウエイト部材20は、ウエイト支持部材11の開口部11bを介してウエイト支持部材11に回転可能に支持されている。
ウエイト部材20は、回転軸1と平行に設けられた支軸21と、支軸21に固定されたウエイト22とを有し、支軸21は、ウエイト22の両側に設けられている。支軸21は、円柱状に形成され、回転軸1の軸心C1と平行に設けられた軸心C2を有してウエイト支持部材11に回転可能に支持されている。ウエイト22は、図2に示すように、支軸21の軸心C2の軸方向から見て軸心C2から径方向外側に向かって中心角が、これに限定されるものではないが、120度で拡がる略扇形状に形成されている。
ウエイト部材20では、支軸21とウエイト22とが一体的に形成されている。ウエイト部材20は、図2に示すように、支軸21の軸心C2から距離r2偏心した重心位置C3を有し、支軸21の軸心C2と重心位置C3とを結ぶ平面に対して対称に形成されている。4つのウエイト部材20は、同一形状を有して回転軸1の周方向に90度ごとに等間隔に配置されている。本実施形態では、ウエイト22は、略扇形状に形成されているが、ウエイト部材20が支軸21の軸心C2から偏心した重心位置を有する他の形状に形成することも可能である。
トルク変動低減装置10はまた、ウエイト部材20の支軸21に設けられた支軸被駆動ギヤ25と、支軸被駆動ギヤ25に噛み合いウエイト部材20の支軸21を駆動させる支軸駆動ギヤ26と、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とを連動させる遊星歯車機構30とを備えている。
ウエイト部材20の支軸21は、回転軸1の軸方向一方側に配置されたウエイト支持部材11に支持される部分が該ウエイト支持部材11よりも軸方向一方側に延びる延設部21aを備え、該延設部21aに支軸被駆動ギヤ25が固定して結合されている。支軸駆動ギヤ26は、ウエイト支持部材11の軸方向一方側において支軸被駆動ギヤ25に噛み合い、回転軸1に軸受5を介して回転可能に支持されている。
遊星歯車機構30は、支持被駆動ギヤ25及び支軸駆動ギヤ26の回転軸1の軸方向一方側に配置されている。遊星歯車機構30は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、サンギヤ31と、サンギヤ31に噛み合う3つの内側ピニオン33と、内側ピニオン33にそれぞれ噛み合う3つの外側ピニオン34と、内側ピニオン33及び外側ピニオン34を回転可能に支持するキャリヤ35と、外側ピニオン34に噛み合うリングギヤ32とで構成されている。
リングギヤ32の軸方向一方側には動力伝達部材32aが一体的に形成されている。動力伝達部材32aは、リングギヤ32から回転軸1の径方向内方に延び、その内周側が回転軸1にスプライン嵌合されている。これにより、遊星歯車機構30のリングギヤ32が回転軸1に連結されている。
キャリヤ35は、内側ピニオン33を回転可能に支持する内側ピニオンシャフト35aと、外側ピニオン34を回転可能に支持する図示しない外側ピニオンシャフトと、内側ピニオンシャフト35a及び前記外側ピニオンシャフトの両端部を固定して支持するキャリヤ本体35bとを有している。
キャリヤ本体35bは、内側ピニオンシャフト35a及び前記外側ピニオンシャフトにおける回転軸1の軸方向一方側及び軸方向他方側の端部をそれぞれ支持する一方側プレート部35c及び他方側プレート部35dと、一方側プレート部35cと他方側プレート部35dとを連結する図示しない連結部とで構成されている。
本実施形態では、キャリヤ本体35bの他方側プレート部35dが、回転軸1の径方向外方に延び、その外周側が回転軸1の外周側に配置されるケース3に固定されている。これにより、遊星歯車機構30のキャリヤ35がケース3に固定されている。
サンギヤ31は、回転軸1に軸受5を介して回転可能に支持されている。本実施形態では、サンギヤ31に、該サンギヤ31の回転軸1の軸方向他方側に配置される支軸駆動ギヤ26が一体的に形成されている。
このようにして構成されるトルク変動低減装置10では、図1及び図2に示すように、回転軸1が軸心C1周りにR1方向に回転されると、回転軸1の回転が動力伝達部材32aを介して遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力され、外側ピニオン34及び内側ピニオン33を介してサンギヤ31が回転軸1の軸心C1周りにR1方向に回転される。
サンギヤ31が回転軸1の軸心C1周りにR1方向に回転されるとき、サンギヤ31に一体的に形成された支軸駆動ギヤ26も回転軸1の軸心C1周りにR1方向に回転され、支持被駆動ギヤ25がウエイト部材20の支軸21の軸心C2周りにR1方向と反対方向であるR2方向に回転され、ウエイト部材20は支軸21の軸心C2周りにR2方向に回転される。ウエイト部材20はまた、回転軸1と一体的に回転されるウエイト支持部材11に支持されており、回転軸1が軸心C1周りにR1方向に回転されるとき回転軸1と共に回転軸1の軸心C1周りにR1方向に回転される。
このように、遊星歯車機構30は、回転軸1に連結されると共に支軸駆動ギヤ26及び支軸被駆動ギヤ25を介してウエイト部材20の支軸21に連結され、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とを連動させる。トルク変動低減装置10では、遊星歯車機構30は、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1とウエイト部材20の支軸21とを連動させる。
本実施形態では、支軸被駆動ギヤ25及び支軸駆動ギヤ26の歯数がともに40枚に設定され、遊星歯車機構30を構成するサンギヤ31及びリングギヤ32の歯数がそれぞれ50枚及び100枚に設定されている。なお、支軸被駆動ギヤ25、支軸駆動ギヤ26、並びに遊星歯車機構30を構成するサンギヤ31及びリングギヤ32の歯数は、これに限定されるものでなく、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように適宜設定することが可能である。
図5は、トルク変動低減装置による変動トルクを示すグラフである。図5では、回転軸1の角度位置である回転角度を横軸にとって表し、トルク変動低減装置10によって回転軸1に発生させる変動トルクを縦軸にとり、変動トルクは、回転軸1の回転方向である場合を上向きに、回転軸1の回転方向と反対方向である場合を下向きにとって表示している。
図5ではまた、直列4気筒4サイクルエンジンの減筒運転時における回転軸1に発生するトルク変動を破線L2で示しているが、トルク変動低減装置10は、図5の実線L1で示すように、回転軸1に発生するトルク変動L2と逆位相の変動トルクL1を発生させる。
本実施形態では、回転軸1は、4気筒のうち両端側の2気筒と中央側の2気筒とが180度の位相差で配置された直列4気筒4サイクルエンジンのクランクシャフトであり、減筒運転時にはクランクシャフトが1回転する間に1回のトルク変動が発生し、遊星歯車機構30は、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように構成されている。
図6は、回転軸の回転角度が0度及び45度であるときのトルク変動低減装置による変動トルクを説明するための説明図であり、図6(a)及び図6(b)はそれぞれ、回転軸1の回転位置が0度及び45度であるときの状態を示している。図7は、回転軸の回転角度が90度及び135度であるときのトルク変動低減装置による変動トルクを説明するための説明図であり、図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、回転軸1の回転角度が90度及び135度であるときの状態を示している。
図6及び図7では、トルク変動低減装置10のウエイト部材20、支軸被駆動ギヤ25及び支軸駆動ギヤ26を模式的に示し、ウエイト部材20に作用する遠心力F1をそれぞれ、ウエイト部材20の軸心C2にとって表示している。
図6(a)に示すように、例えば直列4気筒4サイクルエンジンの第1気筒のピストンが上死点にあるときなど、回転軸1の回転角度が0度であるときに、4つのウエイト部材20はそれぞれ支軸21の軸心C2と重心位置C3とを結ぶラインが回転軸1の軸心C1を通るように位置付けられる。
そして、回転軸1が軸心C1周りにR1方向に1回転されるとき、支軸駆動ギヤ26が回転軸1の軸心C1周りにR1方向に2回転され、支軸被駆動ギヤ26がウエイト部材20の軸心C2周りにR2方向に2回転されると共に回転軸1の軸心C1周りにR1方向に1回転され、ウエイト部材20は、ウエイト部材20の軸心C2周りにR2方向に2回転されると共に回転軸1の軸心C1周りにR1方向に1回転される。
本実施形態では、回転軸1が軸心C1周りにR1方向に1回転されるときに、ウエイト部材20は、ウエイト部材20の軸心C2周りにR1方向と反対方向に2回転されると共に回転軸1の軸心C1周りにR1方向に1回転され、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とは回転方向が逆方向に回転され、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とは1:−1の回転比となるように連動されている。なお、回転方向が反対方向である場合にはマイナス(−)として表している。
回転軸1が軸心C1周りに回転されるとき、ウエイト部材20にはそれぞれ、支軸21の軸心C2と重心位置C3とを結ぶ方向に遠心力F1が作用し、ウエイト部材20に作用する遠心力F1がそれぞれウエイト部材20の支軸21からウエイト支持部材11に伝達される。
図6(a)に示すように、回転軸1の回転角度が0度であるとき、ウエイト部材20にはそれぞれ支軸21の軸心C2と重心位置C3とを結ぶ方向に遠心力F1が作用し、この遠心力F1は、回転軸1の径方向外方に向かう力F1のみを有し、回転軸1の周方向の力がゼロとなる。
そして、ウエイト支持部材11に伝達される4つのウエイト部材20にそれぞれ作用する遠心力F1は、回転軸1の径方向外方に向かう力F1がそれぞれ打ち消し合って回転軸1に作用する遠心力F1による径方向の力がゼロとなると共に、回転軸1に作用する遠心力F1による回転軸1の周方向の力がゼロとなり、図5のS1で示すトルク変動低減装置10による変動トルクを発生させる。
回転軸1が軸心C1周りに回転され、図6(b)に示すように、回転軸1の回転角度が45度であるとき、ウエイト部材20にはそれぞれ支軸21の軸心C2と重心位置C3とを結ぶ方向に遠心力F1が作用し、この遠心力F1は、回転軸1の径方向外方に向かう力F2と回転軸1の回転方向と反対方向の周方向の力F3とに分解される。
回転軸1の回転角度が45度であるとき、ウエイト支持部材11に伝達される4つのウエイト部材20にそれぞれ作用する遠心力F1は、回転軸1の径方向外方に向かう力F2がそれぞれ打ち消し合って回転軸1に作用する遠心力F1による径方向の力がゼロとなる一方、回転軸1に作用する遠心力F1による周方向の力は回転軸1の回転方向と反対方向の周方向の力F3がそれぞれ作用し、図5のS2で示すトルク変動低減装置10による変動トルクを発生させる。
回転軸1が軸心C1周りにさらに回転され、図7(a)に示すように、回転軸1の回転角度が90度であるとき、ウエイト部材20にはそれぞれ支軸21の軸心C2と重心位置C3とを結ぶ方向に遠心力F1が作用し、この遠心力F1は、回転軸1の回転方向と反対方向の周方向の力F1のみを有し、回転軸1の径方向の力がゼロとなる。
回転軸1の回転角度が90度であるとき、ウエイト支持部材11に伝達される4つのウエイト部材20にそれぞれ作用する遠心力F1は、回転軸1に作用する遠心力F1による回転軸1の径方向の力がゼロとなる一方、回転軸1に作用する遠心力F1による周方向の力は回転軸1の回転方向と反対方向の周方向の力F1がそれぞれ作用し、図5のS3で示すトルク変動低減装置10による変動トルクを発生させる。
回転軸1が軸心C1周りにさらに回転され、図7(b)に示すように、回転軸1の回転角度が135度であるとき、ウエイト部材20にはそれぞれ支軸21の軸心C2と重心位置C3とを結ぶ方向に遠心力F1が作用し、この遠心力F1は、回転軸1の径方向内方に向かう力F2と回転軸1の回転方向と反対方向の周方向の力F3とに分解される。
回転軸1の回転角度が135度であるとき、ウエイト支持部材11に伝達される4つのウエイト部材20にそれぞれ作用する遠心力F1は、回転軸1の径方向内方に向かう力F2はそれぞれ打ち消し合って回転軸1に作用する遠心力F1による径方向の力がゼロとなる一方、回転軸1に作用する遠心力F1による周方向の力は回転軸1の回転方向と反対方向の周方向の力F3がそれぞれ作用し、図5のS4で示すトルク変動低減装置10による変動トルクを発生させる。
このように、回転軸1が軸心C1周りにR1方向に1回転されるとき、ウエイト部材20は、ウエイト部材20の軸心C2周りにR2方向に2回転されると共に回転軸1の軸心C1周りにR1方向に1回転され、ウエイト部材20に作用する遠心力F1がそれぞれウエイト部材20の支軸21を介してウエイト支持部材11に伝達され、図5の実線L1で示すように、トルク変動低減装置10は、回転軸1に発生するトルク変動L2と逆位相の変動トルクを発生させる。
本実施形態では、トルク変動低減装置10は、直列4気筒4サイクルエンジンにおける減筒運転時にクランクシャフトに発生するトルク変動に対してその逆位相の変動トルクを発生させてトルク変動を低減するようになっているが、例えば直列6気筒4サイクルエンジンにおける減筒運転時などにも適用することができる。
例えば直列6気筒4サイクルエンジンにおける減筒運転時に適用する場合、直列6気筒4サイクルエンジンにおける減筒運転時にクランクシャフトに発生するトルク変動に対してその逆位相の変動トルクを発生させるようにトルク変動低減装置10の遊星歯車機構30を構成する回転要素31、32の歯数や支軸被駆動ギヤ25及び支軸駆動ギヤ26の歯数が適宜設定されると共に回転軸1に発生するトルク変動とトルク変動低減装置10によって発生させる変動トルクとの位相合せが適宜調整される。
このように、本実施形態に係るトルク変動低減装置10では、トルクを伝達する回転軸1と一体的に回転するウエイト支持部材11と、回転軸1の周方向に等間隔に配置され、ウエイト支持部材11に回転可能に支持される支軸21から偏心した重心位置C3を有する複数のウエイト部材20とを備えると共に、回転軸1と支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1と支軸21とを連動させる遊星歯車機構30を備えている。
これにより、遊星歯車機構30を用いて回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1と支軸21とが連動されるので、回転軸1に発生するトルク変動を確実に低減することができる。遊星歯車機構30を用いることでトルク変動低減装置10を径方向にコンパクトに構成することができるので、コンパクトに構成しつつトルク変動を確実に低減することができる。
また、支軸21に設けられた支軸被駆動ギヤ25と、支軸被駆動ギヤ25に噛み合い支軸21を駆動させる支軸駆動ギヤ26とを備え、支軸駆動ギヤ26は、遊星歯車機構30を構成するサンギヤ31に一体的に設けられることにより、遊星歯車機構30の内周側に配置されるサンギヤ31を出力として該サンギヤ31に支軸駆動ギヤ26を一体化することで、比較的簡単な構成によってコンパクトに構成しつつ回転軸1に発生するトルク変動を確実に低減することができる。
第1実施形態に係るトルク変動低減装置10は、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1と支軸21とを連動させる遊星歯車機構30が、ダブルピニオン型の遊星歯車機構を用いているが、シングルピニオン型の遊星歯車機構を用いることも可能である。
図8は、本発明の第2実施形態に係るトルク変動低減装置の断面図である。第2実施形態に係るトルク変動低減装置50は、第1実施形態に係るトルク変動低減装置10と、遊星歯車機構としてシングルピニオン型の遊星歯車機構を用いること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
第2実施形態に係るトルク変動低減装置50についても、図8に示すように、回転軸1と一体的に回転するウエイト支持部材11と、ウエイト支持部材11にそれぞれ回転可能に支持されると共に回転軸1の周方向に等間隔に配置され、支軸21から偏心した重心位置C3を有する複数のウエイト部材20とを備えている。
トルク変動低減装置50はまた、支軸21に設けられた支軸被駆動ギヤ25と、支軸被駆動ギヤ25に噛み合い支軸21を駆動させる支軸駆動ギヤ26とを備えると共に、回転軸1と支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1と支軸21とを連動させる遊星歯車機構60を備えている。
遊星歯車機構60は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、サンギヤ61と、サンギヤ61に噛み合う3つのピニオン63と、ピニオン63を回転可能に支持するキャリヤ65と、ピニオン63に噛み合うリングギヤ62とで構成されている。
リングギヤ62は、リングギヤ62に一体的に形成された動力伝達部材32aを介して回転軸1に連結されている。キャリヤ65は、ピニオン63を回転可能に支持するピニオンシャフト65aとピニオンシャフト65aの両端部を固定して支持するキャリヤ本体65bとを有し、回転軸1の外周側に配置されるケース3に固定されている。サンギヤ61には、支軸駆動ギヤ26が一体的に形成されている。
本実施形態では、回転軸1が軸心C1周りにR1方向に回転されるときに、ウエイト部材20は、ウエイト部材20の軸心C2周りにR1方向と同一方向に回転されると共に回転軸1の軸心C1周りにR1方向に回転され、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とは回転方向が同方向に回転される。
トルク変動低減装置50についても、遊星歯車機構60は、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1とウエイト部材20の支軸21とを連動させる。
本実施形態では、直列4気筒4サイクルエンジンの減筒運転時に回転軸1に発生するトルク変動を低減するように、遊星歯車機構60を用いて回転軸1とウエイト部材20の支軸21とは1:1の回転比となるように連動される。
トルク変動低減装置50の遊星歯車機構60を構成する回転要素61、62の歯数や支軸駆動ギヤ25及び支軸被駆動ギヤ26の歯数が適宜設定されると共に、回転軸1に発生するトルク変動とトルク変動低減装置50によって発生させる変動トルクとの位相合せが適宜調整される。
本実施形態に係るトルク変動低減装置50においても、遊星歯車機構60を用いて回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1と支軸21とが連動されるので、回転軸1に発生するトルク変動を確実に低減することができる。遊星歯車機構60を用いることでトルク変動低減装置50を径方向にコンパクトに構成することができるので、コンパクトに構成しつつ回転軸1に発生するトルク変動を確実に低減することができる。
また、支軸21に設けられた支軸被駆動ギヤ25、支軸被駆動ギヤ25に噛み合い支軸21を駆動させる支軸駆動ギヤ26とを備え、支軸駆動ギヤ26は、遊星歯車機構60を構成するサンギヤ61に一体的に設けられることにより、遊星歯車機構60の内周側に配置されるサンギヤ61を出力として該サンギヤ61に支軸駆動ギヤ26を一体化することで、比較的簡単な構成によってコンパクトに構成しつつトルク変動を確実に低減することができる。
第2実施形態に係るトルク変動低減装置50は、遊星歯車機構60としてシングルピニオン型の遊星歯車機構を用い、リングギヤ62が回転軸1に連結され、キャリヤ65がケース3に固定されているが、キャリヤを回転軸1に連結し、リングギヤをケース3に固定することも可能である。
図9は、本発明の第3実施形態に係るトルク変動低減装置の断面図である。第3実施形態に係るトルク変動低減装置70は、第2実施形態に係るトルク変動低減装置50と、遊星歯車機構を構成するキャリヤが回転軸1に連結されると共にリングギヤがケース3に固定されること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
第3実施形態に係るトルク変動低減装置70についても、図9に示すように、回転軸1と一体的に回転するウエイト支持部材11と、ウエイト支持部材11にそれぞれ回転可能に支持されると共に回転軸1の周方向に等間隔に配置され、支軸21から偏心した重心位置C3を有する複数のウエイト部材20とを備えている。
トルク変動低減装置70はまた、支軸21に設けられた支軸被駆動ギヤ25と、支軸被駆動ギヤ25に噛み合い支軸21を駆動させる支軸駆動ギヤ26とを備えると共に、回転軸1と支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1と支軸21とを連動させる遊星歯車機構80を備えている。
遊星歯車機構80は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、サンギヤ81と、サンギヤ81に噛み合う3つのピニオン83と、ピニオン83を回転可能に支持するキャリヤ85と、ピニオン83に噛み合うリングギヤ82とで構成されている。
リングギヤ82は、回転軸1の外周側に配置されるケース3に固定されている。キャリヤ85は、ピニオン83を回転可能に支持するピニオンシャフト85aとピニオンシャフト85aの両端部を固定して支持するキャリヤ本体85bとを有し、キャリヤ本体85bに一体的に形成された動力伝達部材85cを介して回転軸1に連結されている。サンギヤ81には、支軸駆動ギヤ26が一体的に形成されている。
本実施形態では、回転軸1が軸心C1周りにR1方向に回転されるときに、ウエイト部材20は、ウエイト部材20の軸心C2周りにR1方向と反対方向のR2方向に回転されると共に回転軸1の軸心C1周りにR1方向に回転され、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とは回転方向が逆方向に回転される。
トルク変動低減装置70についても、遊星歯車機構80は、回転軸1とウエイト部材20の支軸21とが回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1とウエイト部材20の支軸21とを連動させる。
本実施形態では、直列4気筒4サイクルエンジンの減筒運転時に回転軸1に発生するトルク変動を低減するように、遊星歯車機構80を用いて回転軸1とウエイト部材20の支軸21とは1:−1の回転比となるように連動される。
トルク変動低減装置70の遊星歯車機構80を構成する回転要素81、82の歯数や支軸駆動ギヤ25及び支軸被駆動ギヤ26の歯数が適宜設定されると共に、回転軸1に発生するトルク変動とトルク変動低減装置70によって発生させる変動トルクとの位相合せが適宜調整される。
本実施形態に係るトルク変動低減装置70においても、遊星歯車機構80を用いて回転軸1に発生するトルク変動と逆位相の変動トルクを発生させる所定の回転比となるように回転軸1と支軸21とが連動されるので、回転軸1に発生するトルク変動を確実に低減することができる。遊星歯車機構80を用いることでトルク変動低減装置70を径方向にコンパクトに構成することができるので、コンパクトに構成しつつ回転軸1に発生するトルク変動を確実に低減することができる。
また、支軸21に設けられた支軸被駆動ギヤ25、支軸被駆動ギヤ25に噛み合い支軸21を駆動させる支軸駆動ギヤ26とを備え、支軸駆動ギヤ26は、遊星歯車機構80を構成するサンギヤ81に一体的に設けられることにより、遊星歯車機構80の内周側に配置されるサンギヤ81を出力として該サンギヤ81に支軸駆動ギヤ26を一体化することで、比較的簡単な構成によってコンパクトに構成しつつトルク変動を確実に低減することができる。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。