以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下において、本発明の経口組成物を「本発明の組成物」と記載する場合がある。
本発明の組成物は、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を含む。
プロテオグリカンは、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)及びタンパク質が結合した構造を有する化合物である。グリコサミノグリカンは、2糖の繰り返し構造を有する酸性糖であり、具体例としては、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸等が挙げられる。酸性糖が有する2糖の繰り返し構造において、当該2糖のうち、通常、一方はアミノ糖であり、もう一方がウロン酸であることが知られている。そのため、プロテオグリカンの検出には、ウロン酸を検出するための常法の1つであるカルバゾール硫酸法を用いることができる。
また、タンパク質に櫛の歯状にグリコサミノグリカンが結合した化合物はプロテオグリカンモノマーとも呼ばれ、当該プロテオグリカンモノマーにおけるタンパク質はコアタンパク質とも呼ばれる。特に、生体内では、プロテオグリカンモノマーがリンクタンパク質を介してヒアルロン酸と結合した会合体を形成していると考えられており、当該会合体はプロテオグリカン集合体(proteoglycanaggregate)とも呼ばれる。なお、本明細書において、「プロテオグリカン」とは、プロテオグリカンモノマー及びプロテオグリカン集合体を包含する意味で用いられる。また、ヒアルロン酸はグリコサミノグリカンの一種である。
本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物はプロテオグリカンを含有する。特に、本発明の組成物は、高分子量のプロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を含むことが好ましい。ここで、本明細書において、「高分子量のプロテオグリカン」とは、分子量が180万ダルトン(Da)以上のプロテオグリカンを意味し、好ましくは、分子量が250万ダルトン以上、300万ダルトン以上、400万ダルトン以上、500万ダルトン以上、600万ダルトン以上、700万ダルトン以上、800万ダルトン以上、900万ダルトン以上、1000万ダルトン以上、1100万ダルトン以上、1200万ダルトン以上、1300万ダルトン以上、1400万ダルトン以上、1500万ダルトン以上、1600万ダルトン以上、1700万ダルトン以上、1800万ダルトン以上、1900万ダルトン以上、又は2000万ダルトン以上のプロテオグリカンである。
なお、魚類軟骨水抽出物に上記した分子量以上のプロテオグリカンが含まれるか否かについては、例えば、魚類軟骨水抽出物を下記の条件のゲル濾過クロマトグラフィーにより処理し、得られる各フラクションに含まれるウロン酸量(プロテオグリカン量を反映する)をカルバゾール硫酸法により定量し、当該ウロン酸量に基づくクロマトグラムを作成することにより確認することができる。以下、このようなウロン酸量に基づくクロマトグラムを、「ウロン酸量クロマトグラム」と記載する場合がある。
[ゲル濾過クロマトグラフィー条件]
・カラム
Sepharose CL-2B充填カラム(Sepharose CL-2Bを担体としてφ1cm×50cmのカラムに充填したもの。Sepharose CL-2Bのデキストランの分画範囲は100〜20,000kDaであり、GE Healthcare社等から入手できる。Sepharose CL-2Bは、2%架橋アガロース、粒子径60〜200μm(レーザー回折散乱法による)、CAS登録番号65099-79-8である。)
・バッファー
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.1,0.2M NaCl含有)
・アプライサンプル量
魚類軟骨水抽出物4mg(乾燥質量換算)(1mLバッファーに溶解させて使用)
・流速
0.15mL/min
・分画フラクション量
1mL/tube
・分子量検量線
下記の各種デキストラン分子量マーカーについて上記と同様の条件でゲル濾過クロマトグラフィーを行い、糖検出のための周知の方法であるフェノール・硫酸法により各フラクションの吸光度(デキストラン量を反映する)を測定し、各マーカーが溶出されたフラクションを求め、当該条件のゲル濾過クロマトグラフィーの各フラクションに含まれる成分の分子量を反映する検量線を作成する。なお、「各マーカーが溶出されたフラクション」とは、各マーカーが最も多く溶出されたフラクションを意味する。換言すれば、各デキストラン分子量マーカーをゲル濾過した際の、デキストラン量を反映するクロマトグラムにおけるピークトップに相当するフラクションである。
(デキストラン分子量マーカー)
Dextran from Leuconostoc mesenteroides(mol wt 5,000,000−40,000,000)(SIGMA)・・・カラムのvoid volume測定用、20,000kDa
Dextran Standard 1,400,000(SIGMA)・・・1,400kDa
Dextran Standard 270,000(SIGMA) ・・・270kDa
但し、Dextran from Leuconostoc mesenteroidesについては、これに含まれる低分子のデキストランを除去する前処理を行った後、マーカーとして用いる。当該前処理は、上述のゲル濾過クロマトグラフィー条件によりDextran from Leuconostoc mesenteroidesそのものを溶出させ、分子量20,000kDa以上の分子を回収し、凍結乾燥させることで行う。具体的には、フェノール・硫酸法により各フラクションの吸光度を測定して作成した、デキストラン量を反映するクロマトグラムにおいて、最初に出現したピークに相当するフラクションを回収し、これを凍結乾燥する(これにより、分子量20,000kDa以上の分子を回収、凍結乾燥できると考えられる)。この凍結乾燥物を実際にマーカー(カラムのvoidvolume測定用)として用いる。
デキストラン量を反映するクロマトグラムを得るための吸光度測定は、Hodge, J. E. and Hofreiter, B. T., Method in Carbohydrate Chemistry, 1, 338 (1962)に記載の方法(フェノール・硫酸法)に従う。具体的には、次のようにして行う。
〔1〕105×15mmの試験管に試料水溶液を500μL加える。
〔2〕フェノール試薬(5 v/v%フェノール水溶液)を500μL加え、撹拌する。
〔3〕濃硫酸を2.5mL加え、すぐに10秒間激しく撹拌する。
〔4〕室温に20分以上放置する。
〔5〕分光光度計で490nmの吸収を測定する。
なお、カルバゾール硫酸法とは、ウロン酸(グルクロン酸(GlcA)、イズロン酸等)の発色色素であるカルバゾール溶液を測定検体に添加し、分光光度計を用いて吸光度を測定し、当該吸光度を基にウロン酸量を算出する周知の方法である。濃度を規定したグルクロン酸標準溶液を用いて検量線を作成し、検体中のグルクロン酸含量を求める。より具体的には、次のようにして行う。ホウ酸ナトリウム・10水和物0.95gを濃硫酸100mLに溶解した試薬2.5mLを試験管にとり、氷冷する。これに被検体0.5mL(2〜20μgのウロン酸を含むようにするのが好ましい)を静かに重層する。室温以上にならないように水冷しながらよく攪拌する。ガラス球で蓋をした後に、沸騰湯浴中で10分間加熱し、室温まで水冷する。これに、カルバゾール125mgを無水メチルアルコール100mLに溶解した試薬を0.1mL加えて混合し、更に15分間沸騰湯浴中で加熱する。その後、室温まで水冷し530nmにおける吸光度を測定する。ブランクは蒸留水0.5mLを用いる。同時に、グルクロン酸を用いて検量線を作成する(下述する実施例のカルバゾール硫酸法も、ここに記載した方法で行った。)。
本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物中のウロン酸量(カルバゾール硫酸法により定量)全量のうち、乾燥質量換算で、10質量%以上は、分子量が180万ダルトン以上のプロテオグリカンに由来することが好ましい。換言すれば、魚類軟骨水抽出物は、乾燥質量換算で、分子量180万ダルトン以上のプロテオグリカンが含むウロン酸量が、当該抽出物に含まれるウロン酸全量の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上である。当該割合は大きい程好ましい。
また、本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物中のウロン酸量全量のうち、乾燥質量換算で、10質量%以上は、分子量が250万ダルトン以上のプロテオグリカンに由来することが好ましい。換言すれば、魚類軟骨水抽出物は、乾燥質量換算で、分子量250万ダルトン以上のプロテオグリカンが含むウロン酸量が、当該抽出物に含まれるウロン酸全量の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上である。当該割合は大きい程好ましい。
さらに、本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物中のウロン酸量全量のうち、乾燥質量換算で、7質量%以上は、分子量が500万ダルトン以上のプロテオグリカンに由来することが好ましい。換言すれば、魚類軟骨水抽出物は、乾燥質量換算で、分子量500万ダルトン以上のプロテオグリカンが含むウロン酸量が、当該抽出物に含まれるウロン酸全量の7質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上、13質量%以上、16質量%以上、20質量%以上、24質量%以上、27質量%以上、30質量%以上、34質量%以上、又は37質量%以上である。当該割合は大きいほど好ましい。
なお、特定の分子量(仮にXダルトンとする)以上のプロテオグリカンが含むウロン酸量が、魚類軟骨水抽出物に含まれるウロン酸全量のどの程度の割合を占めるのかは、上述したウロン酸量クロマトグラムのピーク面積から求めることができる。具体的には、当該ウロン酸量クロマトグラムのピーク面積全体に対して、分子量Xダルトン以上のウロン酸が占める面積割合を求めればよい。より具体的には、縦軸をウロン酸量、横軸をフラクションNo.としたウロン酸量クロマトグラムにおいて、分子量Xダルトンのプロテオグリカンを含むフラクションを通るように垂線を引き、その垂線で分断されたピーク部分のうち、分子量のより大きいプロテオグリカンを含むピーク部分の面積が、ピーク全体の面積のどの程度の割合を占めるかを求めればよい。
なお、魚類軟骨水抽出物に含まれるウロン酸は、プロテオグリカンに含まれるものの他、プロテオグリカンから分断された糖鎖に含まれるもの等も想定される。
魚類軟骨水抽出物に含まれるウロン酸量(カルバゾール硫酸法により定量)は、乾燥質量換算で、当該抽出物の好ましくは5質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、よりさらに好ましくは12.5質量%以上、より一層好ましくは15質量%以上、特に好ましくは17.5質量%以上である。なお、本明細書(特に図表)において、ウロン酸量を示す際にグルクロン酸の略号であるGlcAを用いて「GlcA(μg)」と記載する場合がある。なお、魚類軟骨水抽出物に含まれるプロテオグリカン中のグリコサミノグリカンは、ほぼコンドロイチン硫酸と考えられる。そして、おおよそのコンドロイチン硫酸量は、ウロン酸量に係数2.593を乗ずることで求められることが知られている。よって、魚類軟骨水抽出物に含まれるおおよそのプロテオグリカン量は、ウロン酸量に係数2.593を乗ずることで算出できる。
また、本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物には、分子量180万ダルトン以上のプロテオグリカンが、乾燥質量換算で、当該抽出物全量を基準として、30質量%以上含まれることが好ましく、35質量%以上含まれることがより好ましい。
本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物には、分子量250万ダルトン以上のプロテオグリカンが、乾燥質量換算で、当該抽出物全量を基準として、15質量%以上含まれることが好ましく、20質量%以上含まれることがより好ましい。
本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物には、分子量500万ダルトン以上のプロテオグリカンが、乾燥質量換算で、当該抽出物全量を基準として、5質量%以上含まれることが好ましく、10質量%以上含まれることがより好ましく、15質量%以上含まれることがさらに好ましく、20質量%以上含まれることがよりさらに好ましく、25質量%以上含まれることがより一層好ましく、30質量%以上含まれることが特に好ましく、35質量%以上含まれることが最も好ましい。
また、本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物には、プロテオグリカン以外にも、脂質、タンパク質、灰分、炭水化物などの成分が含まれる。
本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物は、脂質量が少ないことが好ましい。魚類軟骨水抽出物に含まれる脂質量とプロテオグリカンの質量比(脂質量/プロテオグリカン量)は、当該抽出物の原料である魚類軟骨に含まれる脂質量とプロテオグリカンの質量比(脂質量/プロテオグリカン量)よりも小さいことが好ましい。魚類軟骨水抽出物に含まれる脂質量は、乾燥質量換算で、当該抽出物全量を基準として、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることがより一層好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。このような脂質量の少ない魚類軟骨水抽出物は、例えば、後述するように、原料である魚類軟骨に対して脱脂処理(即ち、脂質除去)を施した上で抽出に供することにより得ることができる。また、抽出前に脱脂処理を施すことなく抽出処理を行い、得られた抽出物に対して公知の脱脂処理を施すことによっても得ることができる。
本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物は、含まれるタンパク質のうちそのほとんどがコラーゲン(好ましくはII型コラーゲン)であることが好ましい。具体的には、魚類軟骨水抽出物に含まれるタンパク質のうちコラーゲンが80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。魚類軟骨水抽出物に含まれるコラーゲン量は、乾燥質量換算で、当該抽出物全量を基準として、30質量%以上であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。
魚類軟骨水抽出物に含まれる灰分量は、乾燥質量換算で、当該抽出物全量を基準として、15質量%以下であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることがさらに好ましい。
上記した魚類軟骨水抽出物に含まれるプロテオグリカン以外の成分の定量は公知の方法に従って行うことができる。例えば、脂質量についてはソックスレー抽出法、タンパク質量についてはケルダール法(コラーゲン量についてはアミノ酸自動分析法(HPLC法)によるヒドロキシプロリン量の定量)、灰分量については直接灰化法などの方法により定量することができる。
なお、上記した脂質量はソックスレー抽出法により算出した値である。また、上記したタンパク質量は、ケルダール法でサンプル中の窒素量を測定し、当該窒素量からグリコサミノグリカン由来の窒素量を差し引いて求めた値(即ち、当該タンパク質量は、プロテオグリカン由来のタンパク質量を含まない値)であり、上記したコラーゲン量は、アミノ酸自動分析法(HPLC法)によってサンプル中のヒドロキシプロリン量を測定し、コラーゲン中にはヒドロキシプロリンが6.7%含まれるものとして算出した値である。さらに、上記した灰分量は、直接灰化法により算出した値である。
本発明の組成物に含まれる魚類軟骨水抽出物は、魚類の軟骨(魚類軟骨)から抽出される。魚類としては、サケ科サケ属の魚が好ましく、具体的には、マス(カラフトマス、サクラマス、サツキマス等)、サケ(シロザケ、ベニザケ、ギンザケ、マスノスケ、スチールヘッド等)などが例示される。また、サメ、タラ等も用いることができる。これらの中でも、サケ、又はマスが好ましい。また、軟骨としては特に制限されず、例えば、頭部軟骨を用いることができる。頭部軟骨の中では、特に、鼻軟骨が好ましい。また、通常、魚類(特に、サケやマス)が食品製品等へ加工される際に頭部は廃棄されることから、頭部軟骨の入手コストは安く、大量に安定供給され得るという利点もある。
抽出は、水を用いて行われる。魚類軟骨は、魚類から採取した軟骨をそのまま抽出に供してもよいし、微細化(例えば、小片化又は粉末化)してから抽出に供してもよい。また、後述するように、例えば、抽出前にエタノールなどの有機溶媒を用いて魚類軟骨に脱脂処理を施す等の前処理を行ってもよい。このようにして、水によりプロテオグリカン(高分子量のプロテオグリカンを含む)を抽出することができる。また、あるいは、水抽出を行う際、水を加熱しつつ行なう、あるいは沸騰水などの熱水を用いることにより、効率良く魚類軟骨水抽出物を得ることができる。
上記の通り、魚類軟骨は、魚類から採取した軟骨をそのまま抽出に供することができる。抽出に供するまで、凍結して保存しておくことが好ましい。凍結方法は特に制限されず、公知の凍結方法を用いることができる。例えば、フリーザーを用いて、魚類軟骨を−20〜−80℃程度で24〜72時間程度保存する方法が例示できる。また、魚類軟骨は、脱脂(すなわち脂肪除去)処理されているものを用いることもできる。脱脂処理されたものを用いることで、脂質の混入が少ない精製度の高い魚類軟骨水抽出物を得ることができるため好ましい。脱脂処理方法としては、後述する「脱脂処理された魚類軟骨」を得る方法が例示できる。
小片化魚類軟骨は、魚類軟骨を小片化したものである。小片化は、公知の方法により行うことができる。例えば、公知のブレンダーやミル等の機器を用いて、魚類軟骨(好ましくは凍結魚類軟骨)を小片化することができる。小片化操作は、できるだけ低温で行うことが好ましい。例えば、小片化された魚類軟骨が凍結状態を保持可能な温度であることが好ましい。具体的には0℃以下が例示できる。
また、小片化魚類軟骨は、抽出効率の観点からは、凍結された小片化魚類軟骨(凍結小片化魚類軟骨)であることが好ましい。凍結小片化魚類軟骨は、(i)魚類軟骨を凍結した後小片化することで、又は(ii)魚類軟骨を小片化した後凍結することで、得ることができるが、(i)により得られるものが特に好ましい。凍結方法は特に制限されず、公知の凍結方法を用いることができる。例えば、フリーザーを用いて、魚類軟骨を−20〜−80℃程度で24〜72時間程度保存する方法が例示できる。
小片化魚類軟骨又は凍結小片化魚類軟骨は、1小片あたり0.001〜0.5g程度が好ましく、0.005〜0.3g程度がより好ましく、0.01〜0.1g程度がさらに好ましい。小片化操作は、このような小片が得られるように行われるのが好ましい(使用機器条件を検討することにより、このような小片が得られる機器使用条件は簡単に決定できる)。
粉末化魚類軟骨は、魚類軟骨を粉末化したもの(魚類軟骨粉末)である。粉末化は、公知の方法により行うことができる。例えば、公知のブレンダーやミル等の機器を用いて、魚類軟骨(好ましくは凍結魚類軟骨)を粉末化することができる。粉末化操作は、できるだけ低温(例えば0℃以下)で行うことが好ましい。
また、粉末化魚類軟骨は、抽出効率の観点からは、凍結された粉末化魚類軟骨(凍結粉末化魚類軟骨)であることが好ましい。凍結粉末化魚類軟骨は、(i’)魚類軟骨を凍結した後粉末化することで、又は(ii’)魚類軟骨を粉末化した後凍結することで、得ることができるが、(i’)により得られるものが特に好ましい。凍結方法は特に制限されず、公知の凍結方法を用いることができる。例えば、フリーザーを用いて、魚類軟骨を−20〜−80℃程度で24〜72時間程度保存する方法が例示できる。
なお、「粉末」は「小片」に比べて、小さいものを指すが、明確に区別することを意図する訳ではない。魚類軟骨を微細化したもののうち、比較的大きめの欠片のものを「小片」、比較的小さめの欠片のものを「粉末」と称している。従って、特に制限される訳ではないが、粉末としては、粒径約10〜1000μm程度、好ましくは50〜500μm程度、より好ましくは100〜200μm程度(レーザー回折散乱法により測定)の粒径を有する粒子を含む粉末が望ましい。これらの粒径を有する粒子は、粉末中多く(例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上)含まれることが好ましい。
用いられる小片化魚類軟骨又は粉末化魚類軟骨は、脱脂(すなわち脂肪除去)されているものも使用できる。つまり、小片化脱脂魚類軟骨又は粉末化脱脂魚類軟骨も使用できる。脱脂処理されたものを用いることで、脂質の混入が少ない精製度の高い魚類軟骨水抽出物を得ることができるからである。小片化脱脂魚類軟骨又は粉末化脱脂魚類軟骨は、(α)脱脂処理された魚類軟骨を小片化又は粉末化することにより、あるいは(β)魚類軟骨を小片化又は粉末化した後に脱脂処理することにより、得ることができる。
脱脂方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、上記(α)において魚類軟骨を脱脂処理する方法としては、例えば、魚類軟骨を1〜24時間程度流水(例えば水道蛇口からの流水)にさらす方法が例示される。また、魚類軟骨の入手は公知の方法で行うことができ、例えば魚類組織(好ましくは魚類頭部)を水に1〜24時間程度漬けて膨潤させ、軟骨(好ましくは鼻軟骨)以外の組織を除去する方法や、あるいは、凍結サケ頭部を解凍後、直ちに鼻軟骨を取り出し、さらに流水に1〜24時間程度さらして洗浄及び脱脂する方法が例示される。肉片等が残存する場合は、ピンセット等により残存する肉片等を取り除くことが好ましい。なお、この段階では魚類軟骨は小片化又は粉末化されていないため、流水にさらす等しても、ほとんどプロテオグリカンは抽出されないと考えられる。また、下記の(β)の場合と同様に、有機溶媒により脂質を抽出除去する方法も用いることができる。
また、例えば、(β)において、小片化魚類軟骨又は粉末化魚類軟骨を脱脂処理する方法としては、例えば、有機溶媒により脂質を抽出除去する方法が例示される。有機溶媒としては、エタノール、ヘキサン、アセトン等が例示される。より具体的には、上記(β)の方法として、特開2009−173702号公報に記載される方法を好ましく用いることができる。つまり、例えば、以下の工程A〜Eを含む方法により、粉末化脱脂魚類軟骨を得、これを本発明に用いることができる(より詳細な条件も特開2009−173702号公報に記載されている)。
A.凍結した水棲動物組織(魚類組織)を破砕し、これに水を加え、温度0〜20℃、pH4.8〜7で処理する工程
B.Aの固液混合物を遠心分離し、最上部の脂質層と中間層の水層を取り除き、沈殿物を回収する工程
C.沈殿物を乾燥し、微粉末化する工程
D.得られた乾燥微粉末に、溶媒としてヘキサン、アセトン又はエタノールを加え、残存脂質を抽出除去する工程
E.溶媒を除去する工程
なお、凍結処理及び脱脂処理が両方なされた小片化魚類軟骨又は粉末化魚類軟骨(凍結小片化脱脂魚類軟骨又は凍結粉末化脱脂魚類軟骨)を用いるのが、さらに好ましい。これらは、例えば、脱脂処理された魚類軟骨を凍結し、これを小片化又は粉末化することにより得ることができる。
これらの脱脂方法は、小片化魚類軟骨又は粉末化魚類軟骨だけでなく、魚類から採取した軟骨そのものにも適用できる。
魚類軟骨(小片化魚類軟骨及び粉末化魚類軟骨を含む。なお、以下、小片化魚類軟骨及び粉末化魚類軟骨まとめて「微細化魚類軟骨」と記載する場合がある。)は水抽出に供される。水抽出に用いる水(以下、「抽出水」と記載する場合がある。)としては、例えば、ミリQ水、蒸留水、脱イオン水、精製水、水道水等が例示される。また、抽出水のpHは、通常5.5〜8.0程度、好ましくはpH6.0〜7.5程度、より好ましくはpH6.5〜7.5程度である。酸やアルカリ、塩基類などpHを大きく変動される物質を溶解させるのは好ましくない。なお、有機酸や無機酸等の酸化合物や水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物を抽出水に添加すると、高分子量プロテオグリカン(特に分子量が1000万ダルトンを超える高分子量プロテオグリカン)が減少若しくは消失するため、酸化合物やアルカリ化合物は添加しないことが好ましい。なお、限定的な解釈を望むものではないが、これは、酸化合物やアルカリ化合物の影響により、抽出処理中にプロテオグリカン集合体が崩壊することが原因ではないかと推測される。
水抽出は、例えば、魚類軟骨を水に適当な時間(例えば30分以上、好ましくは30分〜24時間程度、より好ましくは1〜12時間程度、さらに好ましくは2〜6時間程度、よりさらに好ましくは3〜4時間程度)浸漬させることで行うことができる。水の量は、特に制限されないが、例えば抽出に供される小片化魚類軟骨又は粉末化魚類軟骨が全て水に浸かる程度の量が例示される。水抽出の際、静置してもよいし、撹拌してもよい。撹拌することが好ましい。また、抽出時の水の温度は特に制限はされないが、常温よりも高い温度であることが好ましい。具体的には、30℃以上であり、50〜100℃程度が好ましく、70〜100℃程度がより好ましく、80〜100℃程度がさらに好ましく、90〜100℃程度が特に好ましい。本明細書において、このような、常温よりも高い温度の水を「熱水」と、当該熱水を用いた抽出により得られる抽出物を「魚類軟骨熱水抽出物」と、それぞれ記載する場合がある。また、熱水を用いる場合、抽出時に加温してもよいし、抽出前に予め温めておいてもよい。また、加圧下で加熱してもよい。また、加熱を行う場合は、高分子量のプロテオグリカンが熱により分解されるおそれがあるため、加熱された抽出水を抽出処理中に置換してもよい。抽出水を置換する場合の各抽出水における抽出時間間隔は、例えば15分〜4時間毎、好ましくは30分〜2時間又は1時間程度が例示される。好ましい一態様としては、魚類軟骨に、これらを全量浸漬できる量の水(好ましくは加熱された水)を加え、3〜4時間加熱しつつ静置若しくは撹拌する、という方法が挙げられる。また、他の好ましい一態様としては、“魚類軟骨に、これらを全量浸漬できる量の水(好ましくは加熱された水)を加え、1時間加熱しつつ静置し、この水を回収する”という工程を4回繰り返す方法が挙げられる(この場合、合計4時間の水抽出を行うことになる)。
水抽出後は、液体部分を回収することで、魚類軟骨水抽出物を得ることができる。液体部分の回収は、例えば遠心分離(例えば5000rpm、20分、4℃での遠心分離が例示できる)処理や連続遠心分離処理などを行い、上清を回収することで行い得る。当該液体(上清)をそのまま本発明の魚類軟骨水抽出物として用いてもよいし、公知の方法により更に精製(例えば脱脂)してもよい。あるいは、減圧蒸留法等により、濃縮してもよい。またあるいは、凍結乾燥法やスプレードライ法等により、乾燥や粉末化してもよい。
上記したプロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物は、経口摂取することにより、脂質代謝を改善することができる。そのため、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物、又は当該抽出物を含む経口組成物は、脂質代謝改善用組成物として好ましく用いることができる。例えば、本発明の脂質代謝改善用組成物は、医薬分野及び/又は食品分野において用いることができる。なお、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物は、より具体的には、経口摂取することにより、血中総コレステロール量、血中非善玉コレステロール値、及び血中中性脂肪量を低減させることができる。従って、本明細書において「脂質代謝改善(作用)」は、「血中総コレステロール低減(作用)」、「血中非善玉コレステロール低減(作用)」及び「血中中性脂肪低減(作用)」を包含する。よって、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物、又は当該抽出物を含む経口組成物は、血中総コレステロール低減用組成物、血中非善玉コレステロール値、及び/又は血中中性脂肪低減用組成物としても好ましく用いることができる。脂質代謝改善用組成物の場合と同様、血中総コレステロール低減用組成物、血中非善玉コレステロール低減用組成物、及び/又は血中中性脂肪低減用組成物は、医薬分野及び/又は食品分野において用いることができる。以下、本発明の組成物(即ち、脂質代謝改善用組成物、血中総コレステロール低減用組成物、血中非善玉コレステロール低減用組成物、及び/又は血中中性脂肪低減用組成物)を医薬分野及び/又は食品分野において用いる場合について詳述する。
本発明の組成物を医薬分野において用いる場合、即ち、本発明の組成物を医薬組成物として用いる場合、当該組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と記載する。)は、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物のみからなるものであってもよいし、さらに、必要に応じて他の成分を配合したものであってもよい。本発明の医薬組成物において配合することができる他の成分としては、例えば、薬学的に許容される基剤、担体、添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、甘味剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤、保湿剤、保存剤、pH調整剤、粘稠化剤など)等が挙げられる。このような基剤、担体、添加剤等は、例えば、医薬品添加物辞典2007(株式会社薬事日報社)に具体的に記載されており、例えばこれに記載されるものを用いることができる。また、本発明の医薬組成物の製剤形態としては、服用又は経口投与可能な形態であれば特に制限されず、常法に従って、例えば、錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、チュアブル剤、ソフト錠剤等の製剤に調製することができる。
本発明の医薬組成物におけるプロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物の配合量は、脂質代謝改善作用が発揮される限り特に制限されず、一日当たりの好ましい当該魚類軟骨水抽出物の摂取量に応じて適宜設定できる。好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
上述のように、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物は脂質代謝改善作用を有することから、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を含む本発明の医薬組成物は、経口摂取することにより、心筋梗塞、動脈硬化症、脳梗塞、虚血性心疾患、冠動脈疾患、脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、肥満等の治療及び/又は予防を行うことができる。中でも、本発明の医薬組成物は、脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、又は肥満の治療及び/又は予防のために好ましく用いることができ、特に、脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、又は肥満の予防のために好ましく用いることができる。
本発明の医薬組成物の投与対象は、特に上述したような疾患を有する患者、あるいは上述したような疾患を患う可能性の高い人(いわゆる予備軍)が好ましい。上述したような疾患を患う可能性の高い人としては、例えば、閉経後の女性(例えば、40代後半以降の女性)、血中総コレステロール値、血中非善玉コレステロール値、及び血中中性脂肪値のうち少なくとも1つの値が高い人(即ち、血中総コレステロール値、血中非善玉コレステロール値、及び血中中性脂肪値のうち少なくとも1つの値が基準値を超えている人)、血中総コレステロール値、血中非善玉コレステロール値、及び血中中性脂肪値のうち少なくとも1つの値が高めの人(即ち、血中総コレステロール値、血中非善玉コレステロール値、及び血中中性脂肪値のうち少なくとも1つの値がが基準値を超えないものの、基準値の上限値に近い人)、メタボリックシンドロームと診断された人又はその予備軍、などが挙げられる。
本発明の医薬組成物の経口投与時期は特に限定されず、製剤形態、対象者の年齢、対象者の症状の程度等を考慮して適宜投与時期を選択することが可能である。なお、嚥下困難者等、口を経て投与することが困難な対象者の場合、胃瘻等を通じて直接胃へ送達してもよい。
本発明の医薬組成物の投与量は、対象者の年齢、対象者の症状の程度、その他の条件等に応じて適宜選択され得る。通常、当該医薬組成物中のプロテオグリカン量が、成人一日あたり好ましくは1〜1000mg、より好ましくは10〜300mgの範囲となる量を目安とするのが好ましい。なお、1日1回又は複数回(好ましくは2〜3回)に分けて投与することができる。
また、本発明の組成物を食品分野において用いる場合、本発明の組成物は、食品添加剤又は飲食品として用いることができる。なお、本発明の属する技術分野における当業者において技術常識として認識されていることであるが、「食品添加剤」と「飲食品」とは明確に区別されるものである。「飲食品」とは、日常的に食物として摂取されるものの総称を指し、「食品添加剤」とは、最終的には飲食品に添加あるいは配合された状態で飲食品と共に摂取されるものではあるが、それ自体単独で食物として摂取される性質のものではなく、飲食品の調理中、製造中、摂取直前、あるいは摂取中などに当該飲食品に対して所望の効果あるいは作用を付与することを目的として用いられる性質のものである。
本発明の組成物を食品添加剤として用いる場合、当該組成物(以下、「本発明の食品添加剤」と記載することがある)は、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物そのものであってもよいし、さらに、必要に応じて他の成分を配合したものであってもよい。本発明の食品添加剤において配合することができる他の成分としては、食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤や、その他食品添加剤として利用され得る成分・材料などが挙げられる。また、このような食品添加剤の形態としては特に限定されず、例えば、液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状とすることができる。このような食品添加剤は、常法に従って適宜調製することができる。本発明の食品添加剤におけるプロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物の配合量は、脂質代謝改善作用が発揮される限り特に制限されないが、好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
本発明の食品添加剤は、該食品添加剤が添加あるいは配合された飲食品を食べる又は飲むことにより摂取される。なお、当該添加又は配合は飲食品の調理中又は製造中に行ってもよいし、飲食品の摂取直前又は摂取中に行ってもよい。このようにして、本発明の食品添加剤を含む飲食品を経口摂取することにより、脂質代謝改善作用が発揮される。なお、本発明の食品添加剤の摂取対象、摂取量等の各条件は、特に制限されず、例えば、上記した本発明の医薬組成物と同様であることが好ましい。
上記の通り、食品添加剤は、飲食品の調理中、製造中、摂取直前、又は摂取中に当該飲食品に対して所望の効果あるいは作用を付与することを目的として用いられる性質のものであることから、本発明の食品添加剤は、飲食品に対して脂質代謝改善作用を付与するために用いられる。換言すると、本発明の食品添加剤は、飲食品に対して脂質代謝改善作用を付与するための食品添加剤であるといえる。
本発明の組成物を飲食品として用いる場合、当該組成物(以下、「本発明の飲食品」と記載する。)は、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物、及び食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤、その他食品として利用され得る成分・材料等が適宜配合されたものである。例えば、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を含む、加工食品、飲料、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品(病院食、病人食又は介護食等)等が例示できる。また、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を、例えば、凍結乾燥やスプレードライするなどして、粉末状とし、飲料類(ジュース等)、菓子類(例えば、ガム、グミ、チョコレート、キャンディー、ビスケット、クッキー、おかき、煎餅、プリン、ゼリー、杏仁豆腐等)、パン類、スープ類(粉末スープ等を含む)、加工食品等の各種飲食品に含有させたものであってもよい。なお、病院食とは病院に入院した際に供される食事であり、病人食は病人用の食事であり、介護食とは被介護者用の食事である。
なお、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等)、サプリメントとして、本発明に係る飲食品を調製する場合は、継続的な摂取が行いやすいように、例えば、顆粒、カプセル、錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(ドリンク剤)等の形態に調製することが好ましく、なかでもカプセル、タブレット、錠剤の形態が摂取の簡便さの点からは好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。顆粒、カプセル、錠剤等の形態の、本発明の飲食品は、薬学的及び/又は食品衛生学的に許容される担体等を用いて、常法に従って適宜調製することができる。また、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
本発明に係る飲食品におけるプロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物の配合量は、脂質代謝改善作用が発揮され得る限り特に制限されないが、好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
本発明に係る飲食品は、脂質代謝改善のために好ましく用いることができる。また、摂取対象、摂取量等の各条件は、特に制限はされないが、例えば、上記した本発明の医薬組成物と同様であることが好ましい。
また、本発明は、心筋梗塞、動脈硬化症、脳梗塞、虚血性心疾患、冠動脈疾患、脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、肥満等の患者、又はこれらの疾患を患う可能性の高い人(予備軍)に対し、本発明の組成物を経口投与又は経口摂取することを特徴とする心筋梗塞、動脈硬化症、脳梗塞、虚血性心疾患、冠動脈疾患、脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、肥満等の治療及び/又は予防方法も包含する。さらに、本発明は、当該方法は、心筋梗塞、動脈硬化症、脳梗塞、虚血性心疾患、冠動脈疾患、脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、肥満等の患者、又はこれらの疾患を患う可能性の高い人(予備軍)に対し、本発明の組成物を経口投与又は経口摂取する又はさせることを特徴とする血中総コレステロール低減、血中非善玉コレステロール低減、及び/又は血中中性脂肪低減方法をも包含する。具体的には、前述の本発明の組成物を経口投与又は経口摂取する又はさせることで実施される。なお、当該方法における、経口投与又は摂取量等の各条件は前述の通りである。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
製造例1:サケ鼻軟骨水抽出物の調製
以下の手順により、プロテオグリカンを含有するサケ鼻軟骨水抽出物を調製した。なお、サケ鼻軟骨としては、凍結サケ頭部を解凍後、直ちに鼻軟骨を取り出し、さらに流水に6時間以上さらして洗浄及び脱脂して得られたサケ鼻軟骨を用いた。
サケ鼻軟骨をフリーザーに保存して凍結させ、これを「凍結サケ鼻軟骨ブロック」として用いた。当該凍結サケ鼻軟骨ブロックの写真を図1に示す。なお、用いたサケ頭部の大きさにもよるが、凍結サケ鼻軟骨ブロック1個は、およそ、大きさ6.0cm×2.5cm〜10.0cm×4.0cm、重量12.46g〜34.71gの塊(10個あたりの平均の重量は23.40g)であった。
上記凍結サケ鼻軟骨ブロックをブレンダーに入れて10秒間破砕し、これを「凍結サケ鼻軟骨小片」とした。当該凍結サケ鼻軟骨小片の写真を図2に示す。なお、無作為に20小片を採取して、各小片の大きさ及び重量を確認したところ、大きさはおよそ0.2〜1.0cm、重量は約0.0069g〜0.1602g(20個あたりの平均の重量は0.0395g)であった。また、凍結サケ鼻軟骨ブロック100gから96.8gの凍結サケ鼻軟骨小片が得られた。
上記で得られた凍結サケ鼻軟骨小片に水を加え、95℃で加熱することによりプロテオグリカンを抽出した。具体的には、凍結サケ鼻軟骨小片1000gに質量比で2.5倍量の精製水を加え、95℃で3.5時間加熱した後、濾過および遠心分離により不溶物(残渣)を取り除き上清を回収し、上清を濃縮後凍結乾燥してサケ鼻軟骨水抽出物の凍結乾燥粉末(FDサンプル)47.06gを得た。
試験例1:分子量分析
上記製造例1で得られたFDサンプルを、下記条件のゲル濾過クロマトグラフィーにより各フラクションに分離した。そして、各フラクションに含まれるウロン酸量をカルバゾール硫酸法により定量した。そして、これらの結果を基にして、ウロン酸量クロマトグラムを作成した。ウロン酸量クロマトグラムを図3に示す。なお、FDサンプル全量(47.06g)中、ウロン酸量は10.84gであった。
また、図3には、ウロン酸量クロマトグラムにおいて180万ダルトン、250万ダルトン、及び500万ダルトンの分子量を有する画分が溶出されたフラクションの位置も併せて示す。なお、ゲル濾過クロマトグラフィーの分画フラクションは下記の通り1mL/tubeとしたため、図3の横軸(Elution Volume(mL))は、フラクションNo.も反映している。
[ゲル濾過クロマトグラフィー条件]
・カラム
Sepharose CL-2B充填カラム(Sepharose CL-2Bを担体としてφ1cm×50cmのカラムに充填したもの。Sepharose CL-2Bのデキストランの分画範囲は100〜20,000kDaであり、GE Healthcare社等から入手できる。Sepharose CL-2Bは、2%架橋アガロース、粒子径60〜200μm(レーザー回折散乱法による)、CAS登録番号65099-79-8である。)
・バッファー
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.1,0.2M NaCl含有)
・アプライサンプル量
ウロン酸量として1mg/ml
・流速
0.15mL/min
・分画フラクション量
1mL/tube
・分子量検量線
分子量マーカーとして、次の各種デキストランについて上記と同様の条件(但し、アプライサンプル量は1mg/mLバッファー)でゲル濾過クロマトグラフィーを行い、フェノール・硫酸法により各フラクションの吸光度(デキストラン量を反映する)を測定し、検量線を作成した。
(デキストラン分子量マーカー)
Dextran from Leuconostoc mesenteroides(mol wt 5,000,000−40,000,000)(SIGMA)・・・カラムのvoid volume測定用、20,000kDa
Dextran Standard 1,400,000(SIGMA)・・・1,400kDa
Dextran Standard 270,000(SIGMA) ・・・270kDa
但し、Dextran from Leuconostoc mesenteroidesについては、当該マーカーに含まれる低分子のデキストランを除去する前処理を行った後、用いた。当該前処理は、上述のゲル濾過クロマトグラフィー条件によりDextran from Leuconostoc mesenteroidesそのものを溶出させ、分子量20,000kDa以上の分子を回収し、凍結乾燥させることで行った。具体的には、フェノール・硫酸法により各フラクションの吸光度を測定して作成した、デキストラン量を反映するクロマトグラムにおいて、最初に出現したピークに相当するフラクションを回収し、これを凍結乾燥した(これにより、分子量20,000kDa以上の分子を回収、凍結乾燥できると考えられる)。この凍結乾燥物を実際にマーカー(カラムのvoid volume測定用)として用いた。
デキストラン量を反映するクロマトグラムを得るための吸光度測定は、Hodge, J. E. and Hofreiter, B. T., Method in Carbohydrate Chemistry, 1, 338 (1962)に記載の方法(フェノール・硫酸法)に従い、具体的には次のようにして行った。
〔1〕105×15mmの試験管に試料水溶液を500μL加える。
〔2〕フェノール試薬(5 v/v%フェノール水溶液)を500μL加え、撹拌する。
〔3〕濃硫酸を2.5mL加え、すぐに10秒間激しく撹拌する。
〔4〕室温に20分以上放置する。
〔5〕分光光度計で490nmの吸収を測定する。
得られた検量線は(y=-3.693Ln(x)+50.89;R2=0.9921)であり、R2値から考えて、分子量とフラクションNo.(即ち、溶出液量)はよく相関していることが分かった。
図3から明らかなように、FDサンプルには分子量180万ダルトン以上のプロテオグリカン、250万ダルトン以上のプロテオグリカン、及び500万ダルトン以上のプロテオグリカンが含まれることが分かった。
また、FDサンプルにおける分子量180万ダルトン以上のプロテオグリカン、250万ダルトン以上のプロテオグリカン、及び500万ダルトン以上のプロテオグリカンのそれぞれが含むウロン酸量が、FDサンプル全体のウロン酸量に占める割合について図3に示されるウロン酸量クロマトグラムを基に算出した。具体的には、図3に示されるウロン酸量クロマトグラムにおいて、ピーク面積全体に対して、分子量180万ダルトン以上のプロテオグリカン、250万ダルトン以上のプロテオグリカン、及び500万ダルトン以上のプロテオグリカンがそれぞれ含むウロン酸が占める面積割合を算出した。より具体的には、分子量180万ダルトン以上、250万ダルトン以上、及び500万ダルトン以上のそれぞれに相当する溶出液量点に垂線を引き、該クロマトグラムを分割した際の2部分の面積比を求めた。結果を下記表1に示す。
試験例2:成分分析
さらに、FDサンプルの組成を分析した。各成分の分析は、次のようにして行った。タンパク質量、脂質、灰分、水分、及びヒドロキシプロリン(コラーゲン量測定のために用いる)の定量は、財団法人日本食品分析センターに委託してFDサンプル100gあたりの成分分析を行った。タンパク質量はケルダール法、脂質量はソックスレー抽出法、灰分量は直接灰化法、水分量は常圧熱乾燥量、ヒドロキシプロリン量はアミノ酸自動分析法(HPLC法)によって測定した。また、炭水化物量はタンパク質量、脂質量、灰分量、及び水分量を100(g)から減じることにより算出した。
なお、タンパク質量は、上記の通りケルダール法で測定したが、当該方法は窒素量を指標とする方法であり、グリコサミノグリカン由来の窒素も測定対象となることがあるため、以下のように補正した。
まず、非タンパク質であるグリコサミノグリカン由来の窒素量を差し引くため、カルバゾール硫酸法により求めたウロン酸量から酸性糖成分量(コンドロイチン硫酸換算)を算出し(具体的には、ウロン酸量に換算係数2.593を乗じる)、コンドロイチン硫酸由来の窒素は分子量の2.9%に相当するため、得られた酸性糖成分量に2.9%を乗じることによりグリコサミノグリカン由来の窒素量を算出した。
グリコサミノグリカン由来の窒素量を差し引いて得られた窒素量には、コラーゲン由来の窒素量とコラーゲン以外のタンパク質由来の窒素量が含まれている。コラーゲンとその他のタンパク質では、いわゆるタンパク係数が異なるため、各由来の窒素量を把握する必要がある。
コラーゲンの定量は、上述の通り、コラーゲンに特異的に存在するアミノ酸であるヒドロキシプロリン(Hyp)を定量することにより行った。具体的には、コラーゲン量は、コラーゲンに存在するヒドロキシプロリンを測定し、コラーゲン中にヒドロキシプロリンが6.7%含まれるものとして算出した。このようにして得られたコラーゲン量を、コラーゲンのタンパク係数5.55で除することにより、コラーゲン由来の窒素量を算出した。
また、ケルダール法により得られた窒素量から、グリコサミノグリカン由来の窒素量、及びコラーゲン由来の窒素量を差し引いて得られた値に、一般のタンパク質のタンパク係数である6.25を乗じてコラーゲン以外のタンパク質量を算出した。
そして、タンパク質量は、コラーゲン量に上記で算出したコラーゲン以外のタンパク質量を加えることにより算出した。
以上のFDサンプルに含まれる各成分の分析結果を下記表2に示す。なお、表2に示す数値の単位は「g/FDサンプル100g」である。また、表2には、分子量180万ダルトン以上のプロテオグリカン量も併せて示す。当該分子量180万ダルトン以上のプロテオグリカン量の値は、表2における「グリコサミノグリカン量」に、表1における「180万Da以上の比率」を乗じた値である。
試験例3:脂質代謝改善作用の検討
試験には8週齢の雌SDラット40匹を用いた。馴化飼育後、30匹の両側卵巣を外科的に摘出し、閉経モデルラットを作製した。また、10匹には偽手術を施した。
上記で手術を施したラット30匹を10匹ずつ3群に分け、各群のラットに、ラット飼育用固形飼料(MF)、ラット飼育用固形飼料に上記製造例1で得られたFDサンプルを5質量%となるように配合した飼育飼料(MF+5%PG)、及びラット飼育用固形飼料に上記製造例で得られたFDサンプルを10質量%となるように配合した飼育飼料(MF+10%PG)をそれぞれ12週間自由摂取させた。また、対照には偽手術を施したラット10匹にラット飼育用固形飼料(MF)を12週間自由摂取させた。なお、ラットの飼育は照明設備及び換気施設を有する専門の動物飼育施設で行い、照明は12時間明暗循環とし、飲水は自由摂取とした。また、試験期間中、1週間に1度体重計測を行うとともに、皮膚状態及び糞便の状態、並びに行動に異常がないか否かを毎日確認した。
以下において、閉経モデルラットにMFを摂取させた群を「閉経モデル対照群」と、閉経モデルラットにMF+5%PGを摂取させた群を「5%PG摂取群」と、閉経モデルラットにMF+10%PGを摂取させた群を「10%PG摂取群」と、偽手術を施したラットにMFを摂取させた群を「健常対照群」と記載する。
12週間の自由摂取期間終了後、各ラットについて、ペントバルビタール麻酔下の開腹によって副大動脈から採血し、1,500Gで10分間遠心分離を行い、血清を回収した。その後、回収した血清について、生化学自動分析装置(日立社製)を用いて総コレステロール量(TCHO)、善玉コレステロール量(HDLC)及び中性脂肪量(TG)を測定した。なお、総コレステロール量、善玉コレステロール量及び中性脂肪量はいずれも酵素法により測定した。また、総コレステロール量(TG)から善玉コレステロール量(HDLC)を差し引くことにより、非善玉コレステロール量(non−HDLC)を算出した。また、測定結果は、解析ソフトウェアを用いたt検定により有意差検定を行い、p<0.05を有意差ありと判断した。
以上の試験結果のうち、体重推移を図4に、総コレステロール量を図5に、善玉コレステロール量を図6に、非善玉コレステロール量を図7に、中性脂肪量を図8にそれぞれ示す。なお、図5〜8中、棒グラフの上部おいて縦に2つ並べて付された記号のうち、上部の記号は閉経モデル対照群に対する有意差の有無を、下部の記号は健常対照群に対する有意差の有無をそれぞれ示している。また、閉経モデル対照群の上部に付された記号は健常対照群に対する有意差の有無を示している。さらに、図5〜図8中で用いた記号のうち、「N.S」は有意差が認められなかったことを、「*」はp<0.05を、「**」はp<0.01を、「***」はp<0.001をそれぞれ示す。例えば、図8における「5%PG摂取群」の棒グラフの上部に示された2つの記号のうち、上部の「*」はp値が0.01未満であり、閉経モデル対照群に対して有意差が認められたことを示し、下部の「***」はp値が0.001未満であり、健常対照群に対して有意差が認められたことを示している。
試験期間中の各ラットの皮膚状態及び行動異常の有無を毎日確認したところ、異常を示すラットは確認されなかった。さらに、試験期間中の各ラットの糞便の状態を毎日確認したところ、5%PG摂取群及び10%PG摂取群では、閉経モデル対照群及び健常対照群よりも軟らかく、脂っぽい糞便であることが確認された。また、5%PG摂取群と10%PG摂取群とを比較すると、10%PG摂取群の方がより軟らかく、脂っぽい糞便であることが確認された。これらの結果から、FDサンプルの配合割合が増加するにつれ、糞便が軟化し、脂質含有量が高くなることが強く示唆された。限定的な解釈を望むものではないが、これは、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を経口摂取することにより、消化管内での脂質の吸収が抑制される(即ち、脂質の排出が促進される)ことが理由であるものと考えられる。
図4から明らかなように、閉経モデル対照群、5%PG摂取群、及び10%PG摂取群では、健常対照群に対して顕著な体重の増加が確認された。限定的な解釈を望むものではないが、これは、卵巣摘出に伴うエストロゲンの減少によるものであると考えられている。さらに、5%PG摂取群及び10%PG摂取群では、閉経モデル対照群に対して体重の増加が抑制されていることが確認された。以上の結果から、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を経口摂取することにより、体重の増加を抑制できることが強く示唆された。
図5〜7から明らかなように、閉経モデル対照群において健常対照群よりも有意に血中総コレステロール量、血中善玉コレステロール量、及び血中非善玉コレステロール量が高いことが確認された。限定的な解釈を望むものではないが、これは、卵巣摘出に伴うエストロゲンの減少によるものであると考えられている。さらに、血中善玉コレステロール量については、5%PG摂取群及び10%PG摂取群と閉経モデル対照群との間で有意差は認められなかったのに対して、血中総コレステロール量及び血中非善玉コレステロール量については、5%PG摂取群及び10%PG摂取群は閉経モデル対照群よりも有意に低いことが確認された。以上の結果から、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を経口摂取することにより血中総コレステロール量を減少させることが分かった。さらに、血中非善玉コレステロール量の減少が確認されたことから、血中総コレステロール量の減少は主に血中悪玉コレステロール量の減少に依ることが強く示唆された。
図8から明らかなように、5%PG摂取群及び10%PG摂取群では、閉経モデル対照群及び健常対照群よりも有意に血中中性脂肪量が低いことが確認された。以上の結果から、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を経口摂取することにより、血中中性脂肪量を減少させることができることが分かった。
以上のように、プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出は経口摂取することにより血中の総コレステロール量、血中非善玉コレステロール量、及び中性脂肪量を減少させることができることから、本発明の経口組成物は脂質代謝の改善のために用いることができることが分かった。