JP2017065575A - 車両の回生システム - Google Patents

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敏貴 ▲高▼橋
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Abstract

【課題】回生システムのエネルギー回収効率を改善する。【解決手段】高圧蓄圧器(10)は、容器(16)の内部がピストン(17)によってオイル室(19)と蓄圧室(20)とに仕切られた構成を有し、蓄圧室(20)に、ガスが貯留されたガス室(26)と、該ガス室(26)のガスが圧縮される方向へのピストン(17)のスライドにより圧縮されてオイル室(19)のオイルの圧力エネルギーを弾性エネルギーとして蓄積するコイルばね(28)とが設けられている。【選択図】図2

Description

ここに開示された技術は、加圧下でオイル及びガスを貯留する高圧蓄圧器を備えた車両の回生システムに関するものである。
従来から、この種の回生システムとして、オイルポンプ及び油圧モータの両機能を有するオイルポンプモータを備える回生システムが知られている。高圧蓄圧器は、オイルポンプモータを介して低圧リザーバと接続されている。高圧蓄圧器には、高圧のオイルが貯留され、低圧リザーバには、低圧のオイルが貯留されている。
この回生システムでは、下り坂走行などでの減速時には、駆動輪の動力がオイルポンプモータに入力される。それにより、オイルポンプモータはオイルポンプとして駆動され、低圧リザーバのオイルが高圧蓄圧器へ送り込まれる。その結果、高圧蓄圧器の内圧が上昇し、より高圧なオイルが高圧蓄圧器に蓄積される(減速回生)。
また、車両の発進時などには、高圧蓄圧器のオイルが低圧リザーバに向けて流出される。オイルポンプモータは、高圧蓄圧器からのオイルの吐出圧により油圧モータとして駆動され、その動力が駆動輪に出力される(力行)。その結果、車両が油圧走行される。そして、高圧蓄圧器から流出したオイルは低圧リザーバに回収される。
このような回生システムの一例は、例えば特許文献1に開示されている。
特開平10−244858号公報
上述した回生システムでは、車両が急減速したときの減速回生により高圧蓄圧器にオイルが一気に送り込まれると、それに伴ってピストンがガス室側に素早くスライドし、ガス室のガスが急激に圧縮される(断熱圧縮)。それにより、ガスの圧力及び温度が急上昇し、ガス室の圧力が早期に上限圧に達するため、ガス室のガスを十分に圧縮できない状態に陥り、ピストンを最大限ガス室側に寄った位置にまで押し込むことができなくなる。そうなると、オイル室のオイルの貯留量が比較的少ない状態で目一杯となるため、減速回生により期待した量の制動エネルギーを回収できず、燃費が悪化してしまう。
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回生システムのエネルギー回収効率を改善することにある。
上記の目的を達成するために、ここに開示された技術では、高圧蓄圧器のガスが急激に圧縮される場合における制動エネルギーの回収量が増大するように回生システムの構成を工夫した。
具体的には、ここに開示された技術は、車両の運転状態に応じてオイルポンプ及び油圧モータのいずれか一方として機能するオイルポンプモータに接続され、加圧下でオイル及びガスを貯留する高圧蓄圧器を備えた車両の回生システムを対象とする。
この回生システムの第1の態様では、高圧蓄圧器が、耐圧性を有する容器と、この容器の内部にスライド自在に配置されたピストンと、を備える。ピストンは、スライドする方向に容器の内部をオイル室と蓄圧室とに仕切っている。オイル室には、ピストンのスライドを伴って貯留量が変化するオイルが貯留される。蓄圧室には、ピストンのスライドによって圧縮又は膨張されるガスが貯留されたガス室と、このガス室のガスが圧縮される方向へのピストンのスライドにより圧縮されてオイル室のオイルの圧力エネルギーを弾性エネルギーとして蓄積する弾性部材とが設けられている。
この構成によれば、高圧蓄圧器のオイル室にオイルが流入されてその貯留量が増大すると、ピストンがガス室側にスライドし、そのスライドによってガス室のガスが圧縮される。このガスの圧縮により、オイル室に流入されるオイルの圧力エネルギーがガスの圧力エネルギーとして蓄積される。さらに、ガス室のガスが圧縮される方向にピストンがスライドすると、そのスライドによって弾性部材が圧縮される。この弾性部材の圧縮によって、オイル室に流入されるオイルの圧力エネルギーが弾性エネルギーとしても蓄積される。
このように、ガス室のガスの圧縮によるオイルの圧力エネルギーの蓄積に加え、弾性部材の圧縮によってもオイルの圧力エネルギーを蓄積するようにしたので、高圧蓄圧器に回収可能な制動エネルギーの容量を増大させることができる。そのことにより、車両が急減速したときの減速回生により高圧蓄圧器のガスが急激に圧縮される場合にも、制動エネルギーの回収量を増大させることができる。したがって、回生システムのエネルギー回収効率を改善することができる。
上記第1の態様において、蓄圧室はガス室と収容室とに仕切られ、弾性部材は収容室に収容されていてもよい。具体的には以下のような構成が好ましい。
すなわち、蓄圧室には、ピストンと同じ方向にスライド自在に配置された可動隔壁と、この可動隔壁のオイル室側へのスライドを規制する段差部とが設けられている。可動隔壁は、スライドする方向に蓄圧室をオイル室側のガス室とオイル室とは反対側の収容室とに仕切っている。収容室は、真空引きされており、可動隔壁と当該収容室の内壁との間に弾性部材を圧縮した状態で収容している。弾性部材は、可動隔壁をガス室側に付勢し、そのガス室の圧力が所定の圧力以下であるときに可動隔壁を段差部に押し付ける。ここでいう「真空引きされており」とは、例えば0.05気圧以下の極めて低い圧力にまで減圧されていることを含む意味である。
この構成では、高圧蓄圧器のオイル室へのオイルの流入に伴いピストンがガス室側にスライドし、そのスライドによってガス室の圧力が所定の圧力以上になり、その状態でオイル室にオイルが送り込まれると、ガス室を介して可動隔壁にかかる押圧力が弾性部材の付勢力に抗し、圧縮された状態にある弾性部材が可動隔壁に押圧されてさらに圧縮される。この弾性部材の圧縮により、ガス室の圧力が所定の圧力以上となった後のオイルの圧力エネルギーが弾性エネルギーとして蓄積される。
この回生システムによると、蓄圧室にガス室と仕切られた収容室を設け、この収容室に弾性部材を圧縮した状態で収容するようにしたので、弾性部材を自然長のまま蓄圧室に設ける場合に比べて、高圧蓄圧器をコンパクト化することができる。しかも、弾性部材を減圧されたケースに収容する等してなくてもよく、弾性部材をそのまま収容室に設置すればよいので、弾性部材の構成を簡略化することができる。
さらに、弾性部材は、ガス室の上限圧と同程度の付勢力で可動隔壁をガス室側に付勢していることが好ましい。ここでいう「上限圧」とは、車両の減速度が所定の速度以下の緩やかな減速時(緩減速時)における減速回生において、オイルポンプモータ(オイルポンプとして機能)の駆動によってオイル室にオイルがゆっくりと目一杯に押し込まれ、ガス室が周囲と熱交換可能な状態で空気が等温圧縮されたときのガス室の圧力を意味し、高圧蓄圧器の耐圧特性にも依存する。
この構成では、ガス室の圧力が上限圧よりも小さいと、可動隔壁が弾性部材の付勢力によって段差部に押し付けられた状態に維持される。また、ガス室の圧力が上限圧となった状態でオイル室にオイルが送り込まれると、ガス室を介して可動隔壁にかかる押圧力が弾性部材の付勢力に抗し、圧縮された状態にある弾性部材が可動隔壁に押圧されてさらに圧縮される。この弾性部材の圧縮により、ガス室の上限圧となった後のオイルの圧力エネルギーが弾性エネルギーとして蓄積される。
この回生システムによると、弾性部材をガス室の上限圧と同程度の付勢力が可動隔壁に作用する程度にまで圧縮された状態で収容室に収容するようにしたので、回生システムのエネルギー回収効率を改善しつつ高圧蓄圧器を好適にコンパクト化することができる。
また、弾性部材は、真空引きされた可撓性を有するケースに収容され、ガス室の内部に設けられていてもよい。
この構成によると、ケースに収容した弾性部材をガス室の内部に設置するだけでよいので、高圧蓄圧器に蓄圧室をガス室と収容室とに分ける等の複雑な構造を採用する必要がなく、高圧蓄圧器の構造を簡略化することができる。
また、この回生システムの第2の態様では、高圧蓄圧器が、耐圧性を有する容器と、この容器の内部にスライド自在に配置されたピストンと、を備える。ピストンは、スライドする方向に容器の内部をオイル室とガス室とに仕切っている。オイル室には、ピストンのスライドを伴って貯留量が変化するオイルが貯留される。ガス室には、ピストンのスライドによって圧縮又は膨張されるガスが貯留される。ガス室にはさらに、当該ガス室のガスと熱交換させる冷媒を内部に流通可能な熱交換器が設けられている。
そして、この回生システムは、オイル室にオイルが流入する減速回生時に、ガス室の圧力が所定の圧力以上となるか否かを判定し、所定の圧力以上となるときに、熱交換器に冷媒を流通させてガス室のガスを冷却する冷却制御を実行する制御装置をさらに備える。ここでいう「所定の圧力」とは、高圧蓄圧器のエネルギー回収効率に不具合を来す程度にまでガス室の圧力が上昇しているか否かを判定する基準となる圧力を意味し、ピストンの位置に応じて変化する値であってもよいし、ピストンの位置に拘わらず固定した値であってもよい。
この構成では、減速回生時において高圧蓄圧器のガス室の圧力が所定の圧力以上になると、熱交換器に冷媒が流通してガス室のガスが冷却される。ガス室のガスが冷却されると、ガスが温度低下に伴い収縮されてガス室の圧力が低下するため、オイル室にオイルを押し込むことができるようになる。それにより、車両が急減速したときの減速回生により高圧蓄圧器のガスが急激に圧縮される場合にも、オイル室に貯留されるオイルの貯留量を確保することができるので、制動エネルギーの回収量を増大させることができる。したがって、回生システムのエネルギー回収効率を改善することができる。
上記第2の態様において、オイルポンプモータを介して高圧蓄圧器に接続された、オイルを貯留する低圧リザーバをさらに備え、高圧蓄圧器のガス室には、車両の減速度が所定の速度以下の緩減速時における減速回生において、低圧リザーバのオイルがオイルポンプモータの駆動により高圧蓄圧器側に流出しきったときに上限圧となるように圧縮された空気が貯留されており、制御装置は、冷却制御の実行後において減速回生が終了されるか又は低圧リザーバのオイルが高圧蓄圧器側に流出しきったときに、冷却制御を終了するようにしてもよい。
冷却制御によってガス室の圧力が低下するほどオイル室にオイルを押し込むことができるようになるが、オイル室のオイルの貯留量に対しガス室の圧力が低下し過ぎると、高圧蓄圧器はオイル室に貯留したオイルを所望の圧力で吐出できなくなる。すなわち、せっかく高圧蓄圧器のエネルギー回収効率を改善しても、回収した制動エネルギーを力行時に満足に利用できなくなる。
これに対し、上記の構成によると、低圧リザーバのオイルが高圧蓄圧器側に流出しきったときに、高圧蓄圧器のガス室の圧力が上限圧となるようにし、そのときに冷却制御を終了するようにしたので、冷却制御によってガス室の圧力が低下し過ぎるのを防止できる。それによって、オイル室に貯留されるオイルの貯留量を確保しながら、オイル室に貯留されたオイルの全てを所望の圧力で吐出することができ、回収した制動エネルギーを力行時に効率良く利用することができる。
また、上記第2の態様において、熱交換器は、車室の空気を調和する空調システムに蒸発器として組み込まれていることが好ましい。
この構成によると、熱交換器が空調システムの一部として組み込まれているので、熱交換器に冷媒を供給する装置を別途設けなくてもよく、この回生システムを実現するためのコストを低減することができる。
さらに、制御装置は、空調システムの冷房運転よりも回生システムの減速回生を優先して行うことが好ましい。具体的には以下のような構成が好ましい。
すなわち、空調システムは、車室冷房用の蒸発器と、高圧蓄圧器のガス室に設けられた熱交換器からなる蓄圧用の蒸発器と、を備える。制御装置は、空調システムの冷房運転時に冷却制御を実行する場合において、蓄圧用の蒸発器に要求される冷却能力と車室冷房用の蒸発器に要求される冷却能力との合計が空調システムの冷却能力を超えるときには、蓄圧用の蒸発器への冷媒の供給を車室冷房用の蒸発器への冷媒の供給よりも優先して行う。
この構成によると、空調システムの冷房運転よりも回生システムの減速回生を優先して行うので、空調システムの冷房運転時にも回生システムのエネルギ回収効率を好適に改善することができる。
さらに、制御装置は、蓄圧用の蒸発器への冷媒の供給を車室冷房用の蒸発器への冷媒の供給よりも優先して行っているときに空調システムの設定温度が下げられた場合には、車室冷房用の蒸発器への冷媒の供給量を増大させることが好ましい。
この構成によると、冷却制御に運転者の冷房要求の意思を反映させることができ、車室の快適性を確保しながら回生システムのエネルギ回収効率を改善することができる。
上記回生システムによれば、車両が急減速したときの減速回生により高圧蓄圧器のガスが急激に圧縮される場合における制動エネルギの回収量を増大させることができ、回生システムのエネルギ回収効率を改善できる。その結果、燃費を向上させることができる。
実施形態1に係る車両の回生システムの構成を示す概念図である。 実施形態1に係る高圧蓄圧器の構成を示す概略断面図である。 車両の回生システムにおける減速回生時の状態を示す概念図である。 車両の回生システムにおける力行時の状態を示す概念図である。 実施形態1の高圧蓄圧器の減速回生時における動作を示す概略断面図である。 実施形態1の高圧蓄圧器の減速回生時における動作を示す概略断面図である。 実施形態1の変形例に係る高圧蓄圧器の構成を示す概略断面図である。 実施形態1の変形例に係る高圧蓄圧器の減速回生時における動作を示す概略断面図である。 実施形態2に係る車両の回生システムの構成を示す概念図である。 実施形態2に係る高圧蓄圧器の構成を示す概略断面図である。 実施形態2に係る高圧蓄圧器の減速回生時における動作を示す概略断面図である。 実施形態2に係る高圧蓄圧器の減速回生時における動作を示す概略断面図である。 実施形態2に係る車両の回生システムの制御の一例を示すフローチャート図である。
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《実施形態1》
−回生システムの構成−
図1に、この実施形態1に係る回生システムERSを用いた車両としての自動車Cの一例を示す。また、図2に、回生システムERSに用いられる高圧蓄圧器10の概略断面図を示す。回生システムERSは、図1に示すように、エンジン1、第1クラッチ2、トランスミッション3、ディファレンシャルギア4、駆動輪5、連結機構6、第2クラッチ7、オイルポンプモータ8、低圧リザーバ9、高圧蓄圧器10、制御装置11などで構成されている。
エンジン1は、例えばレシプロエンジンである。このエンジン1の出力軸は、第1クラッチ2、トランスミッション3及びディファレンシャルギア4を介して駆動輪5に連結されている。図1は、エンジン1を動力源として走行している状態を表しており、駆動輪5は、エンジン1によって回転駆動される。
オイルポンプモータ8は、車両の運転状態に応じてオイルポンプ及び油圧モータのいずれか一方として機能する装置であって、オイルの吐出口及び吸込口のいずれか一方として機能する第1オイル出入口8a及び第2オイル出入口8bを有する。図1に示すように、オイルポンプモータ8の回転軸は、第2クラッチ7及び連結機構6を介して、駆動輪5への出力軸に連結される。図1では、第2クラッチ7は切られた状態となっている。
オイルポンプモータ8がオイルポンプとして機能するときには、第1オイル出入口8aは吸込口として機能し、第2オイル出入口8bは吐出口として機能する(図3参照)。また、オイルポンプモータ8が油圧モータとして機能するときには、第1オイル出入口8aは吐出口として機能し、第2オイル出入口8bは吸込口として機能する(図4参照)。
低圧リザーバ9は、耐圧性を有する円筒状のリザーバ容器12と、このリザーバ容器12の内部にスライド自在に配置された円板状のピストン13とを備える。リザーバ容器12の内部は、ピストン13によってそのスライド方向にオイル室14とガス室15とに仕切られている。ガス室15には、例えば10〜30気圧レベルの低圧な空気が貯留されている。オイル室14には、ガス室15の空気と同じ気圧レベルで加圧されたオイルが貯留される。
高圧蓄圧器10は、図2に示すように、耐圧性を有する円筒状の蓄圧容器16と、この蓄圧容器16の内部にスライド自在に配置された円板状のピストン17とを備える。蓄圧容器16は、ピストン17がスライドされる一般径部16aと、この一般径部16aよりも内径が拡大された、当該蓄圧容器16の一端側部分を構成する拡径部16bとで構成されている。これら一般径部16aと拡径部16bとの間には、拡径部16b内方に臨む面からなる環状の段差部18が形成されている。
蓄圧容器16の内部は、ピストン17によってそのスライドする方向にオイル室19と蓄圧室20とに仕切られている。蓄圧容器16の蓄圧室20側の側端には、拡径部16bを開放する開口23が形成されている。この開口23は、円板状の側壁体24によって閉塞されている。この側壁体24は、蓄圧室20(後述する収容室27)の内壁を構成している。蓄圧室20のうち拡径部16bには、ピストン17がスライドする方向にスライド自在に配置された可動隔壁25が設けられている。
蓄圧室20は、可動隔壁25によってそのスライド方向にガス室26と収容室27とに仕切られている。ガス室26は、オイル室19側に配置され、オイル室19と収容室27との間に位置している。このガス室26には、例えば200〜350気圧レベルの高圧な空気が貯留されている。他方、収容室27は、オイル室19とは反対側の拡径部16bに設けられおり、0.05気圧以下の極めて低い圧力にまで真空引きされている。この収容室27には、可動隔壁25と側壁体24との間に弾性部材であるコイルばね28が圧縮した状態で収容されている。
コイルばね28は、ガス室26の上限圧と同程度の付勢力で可動隔壁25をガス室26側に付勢している。段差部18は、このコイルばね28の付勢力による可動隔壁25のガス室26側へのスライドを規制する。可動隔壁25は、ガス室26の圧力が上限圧よりも低いときにコイルばね28の付勢力によって段差部18に押し付けられる一方、ガス室26の上限圧よりも高い圧力で収容室27側に押圧されたときにコイルばね28の付勢力に抗して収容室27側にスライドする。
高圧蓄圧器10のオイル室19には、ガス室26の空気と同じ気圧レベル又はコイルばね28の付勢力と同じレベルで加圧されたオイルが貯留される。この高圧蓄圧器10のオイル室19と低圧リザーバ9のオイル室14とは、図1に示すように、オイルポンプモータ8にそれぞれ接続されており、オイルポンプモータ8を介して互いに接続されている。
具体的には、低圧リザーバ9及び高圧蓄圧器10には、オイル出入口9a,10aが設けられている。オイル出入口9a,10aは、オイル室14,19に連通しており、当該オイル室14,19にオイルを出入りさせる開口である。低圧リザーバ9のオイル出入口9aは、オイル経路を介してオイルポンプモータ8の第1オイル出入口8aに接続されている。他方、高圧蓄圧器10のオイル出入口10aは、オイル経路を介してオイルポンプモータ8の第2オイル出入口8bに接続されている。
低圧リザーバ9及び高圧蓄圧器10のオイル出入口9a,10aには、開閉弁29,30がそれぞれ設けられている。オイル出入口9a,10aの開閉弁29,30は、開状態のときに、オイル室14,19とオイルポンプモータ8とを連通させる。これら両開閉弁29,30は、通常時は閉状態とされている。
低圧リザーバ9及び高圧蓄圧器10のオイル室14,19に貯留されたオイルは、オイルポンプモータ8の駆動によって両者の間を行き来する。そのため、これら両オイル室14,19のオイルの貯留量は、オイルポンプモータ8の作動に応じて変化する。そして、低圧リザーバ9及び高圧蓄圧器10のガス室15,26の容積は、オイル室14,19のオイルの貯留量に応じて変化する。
すなわち、低圧リザーバ9及び高圧蓄圧器10においては、オイル室14,19にオイルが流入すると、その流入に伴ってピストン13,17がガス室15,26側にスライドし、そのスライドによってオイル室14,19の容積が大きくなり、それだけガス室15,26の容積が小さくなると共にガス室15,26の圧力が高くなる。また、オイル室14,19からオイルが流出すると、その流出に伴ってピストン13,17がオイル室14,19側にスライドし、そのスライドによってオイル室14,19の容積が小さくなり、それだけガス室15,26の容積が大きくなると共にガス室15,26の圧力が小さくなる。
制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェアと、制御プログラム等のソフトウェアとで構成されており、自動車Cの減速回生や力行を総合的に制御する機能を有している。例えば、エンジン1やオイルポンプモータ8の駆動制御、第1クラッチ2及び第2クラッチ7の接続制御、低圧リザーバ9及び高圧蓄圧器10の開閉弁29,30の開閉制御などは制御装置11によって行われる。
また、自動車Cには、回生システムERSを制御するために、各種センサが設けられている。
具体的には、高圧蓄圧器10に、ガス室26の圧力を検出する圧力センサ31と、蓄圧容器16の内部におけるピストン17のスライドする方向における位置を検出するポジションセンサ32とが設けられている。また、エンジン1には、その出力軸に連結されたクランクシャフトの回転角度を検出するクランク角センサ33が設けられている。その他、自動車Cには、車速を検出する車速センサ34と、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ35と、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ36とが設けられている。
自動車Cの運転中は、これらセンサ31〜36の検出値が、制御装置11に出力されるようになっている。制御装置11は、これらの検出値に基づいて回生システムERSを制御する。
−回生システムの制御−
次に、上記回生システムERSの制御とその動作について説明する。回生システムERSは、基本的な動作として減速回生と力行とを行う。これら減速回生と力行とについて、以下に、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、自動車Cの減速回生時の状態を示す概念図である。図4は、自動車Cの力行時の状態を示す概念図である。
<減速回生>
制御装置11は、自動車Cの走行時においてアクセルペダルの踏み込みが無くなったりブレーキペダルが踏み込まれたりすると、減速回生制御を実行する。減速回生制御では、図3に示すように、低圧リザーバ9及び高圧蓄圧器10の開閉弁29,30が開かれると共に、第1クラッチ2が切られて第2クラッチ7が繋げられ、駆動輪5の動力がオイルポンプモータ8に入力される。それによって、オイルポンプモータ8はオイルポンプとして駆動され、低圧リザーバ9のオイルが高圧蓄圧器10へ送り込まれる。その結果、高圧蓄圧器10の内圧が上昇し、高圧に加圧されたオイルが高圧蓄圧器10に蓄積される(減速回生)。
この減速回生制御は、自動車Cが停止するか、アクセルペダルが踏み込まれるか、又は高圧蓄圧器10のオイル室19に貯留されたオイルの貯留量が所定の量に達した時点で終了する。なお、自動車Cが停止したか否かは、車速センサ33の検出値に基づいて判定される。高圧蓄圧器10のオイルの貯留量は、ポジションセンサ32の検出値に基づいて算出される。
<力行>
また、制御装置11は、自動車Cの発進時や、減速走行又は定速走行からの加速時、さらには上り坂での定速走行時に、力行制御を実行する。力行制御では、図4に示すように、低圧リザーバ9及び高圧蓄圧器10の開閉弁29,30が開かれると共に、第1クラッチ2が切られて第2クラッチ7が繋げられ、高圧蓄圧器10のオイルが低圧リザーバ9に向けて流出される。オイルポンプモータ8は、高圧蓄圧器10からのオイルの吐出圧により油圧モータとして駆動され、その動力が駆動輪5に出力される(力行)。その結果、自動車Cが油圧走行される。そして、高圧蓄圧器10から流出したオイルは低圧リザーバ9に回収される。
この力行制御は、エンジン1の回転数が加速要求に見合う程度にまで上昇するか、又は高圧蓄圧器10のオイルが流出しきった時点で終了する。なお、自動車Cの発進や加速、上り坂での定速走行は、車速センサ34及びアクセルセンサ36の検出値に基づいて判定される。エンジン1の回転数は、クランク角センサ33の検出値に基づいて算出される。
−高圧蓄圧器の動作−
次に、自動車Cが急減速したときの減速回生時における高圧蓄圧器10の動作について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、高圧蓄圧器10のガス室2626の空気のみで蓄圧している状態を示す概略断面図である。図6は、高圧蓄圧器10のガス室26の空気とコイルばね28とで蓄圧している状態を示す概略断面図である。
自動車Cが急減速したときに、減速回生により高圧蓄圧器10のオイル室19に低圧リザーバ9からオイルが一気に送り込まれると、図5に示すように、ピストン17がガス室26側に素早くスライドし、ガス室26の空気が急激に圧縮される(断熱圧縮)。それにより、空気の圧力及び温度が急上昇し、ガス室26の圧力が早期に上限圧に達するため、ガス室26の空気を十分に圧縮できなくなる。
しかし、ガス室26の圧力が上限圧となった後にも減速回生が継続されてオイルがオイル室19に送り込まれると、図6に示すように、ガス室26を介して可動隔壁25にかかる押圧力がコイルばね28の付勢力に抗し、ピストン17がガス室26側にスライドすると共に可動隔壁25が収容室27側にスライドし、圧縮された状態にあるコイルばね28が可動隔壁25に押圧されてさらに圧縮される。それによって、オイル室19に流入されるオイルの圧力エネルギーが弾性エネルギーとしてコイルばね28に蓄積される。
−実施形態1の効果−
この実施形態1に係る回生システムERSによると、高圧蓄圧器10のオイル室19に送り込まれるオイルの圧力エネルギーを、ガス室26の空気の圧力エネルギーとして蓄積することに加え、コイルばね28の弾性エネルギーとしても蓄積するようにしたので、自動車Cが急減速したときの減速回生により高圧蓄圧器10の空気が急激に圧縮される場合にも、制動エネルギーの回収量を増大させることができる。したがって、回生システムERSのエネルギー回収効率を改善することができる。
《実施形態1の変形例》
図7に、この変形例に係る回生システムERSに用いられる高圧蓄圧器10の概略断面図を示す。上記実施形態1では、高圧蓄圧器10の蓄圧室20が可動隔壁25によってガス室26と収容室27とに仕切られ、コイルばね28が収容室27に収容されている構成を説明したが、この変形例では、図7に示すように、高圧蓄圧器10の蓄圧室20はガス室26からなる。すなわち、蓄圧容器16の内部は、ピストン17によってそのスライドする方向にオイル室19とガス室26とに仕切られている。
そして、コイルばね26は、伸縮方向をピストン17のスライドする方向に沿わせた状態で、その一端を側壁体24に固定してガス室26の内部に設けられている。このコイルばね26は、エラストマー等からなる可撓性を有するケース37に収容されている。ケース37の内部は、真空引きされており、コイルばね26の伸縮をなるべく妨げないようになっている。
図8に、この変形例の高圧蓄圧器10の減速回生時における動作を示す。減速回生によって低圧リザーバ9のオイルが高圧蓄圧器10のオイル室19に送り込まれると、そのオイル室19へのオイルの流入に伴いピストン17がガス室26側にスライドしていき、やがてコイルばね25のピストン27側の端部に当接する。しかる後にも減速回生が継続されると、図8に示すように、ガス室26の空気が圧縮されると共に、コイルばね25も圧縮されていく。これらガス室26の空気とコイルばね28の圧縮により、オイル室19に流入されるオイルの圧力エネルギーがガス室29の空気の圧力エネルギーとコイルばね28の弾性エネルギーとして蓄積される。
この変形例での減速回生制御は、自動車Cが停止するか、アクセルペダルが踏み込まれるか、又は高圧蓄圧器10のオイル室19に貯留されたオイルの貯留量が所定の量に達するか、高圧蓄圧器10のガス室26の圧力が上限圧に達した時点で終了する。
−変形例の効果−
この変形例に係る回生システムERSによると、ケース37に収容したコイルばね25をガス室26の内部に設置するだけでよいので、高圧蓄圧器10に蓄圧室20をガス室26と収容室27とに分ける等の複雑な構造を採る必要がなく、高圧蓄圧器10の構造を簡略化することができる。その他については、上記実施形態1と同様な効果を得ることができる。
《実施形態2》
この実施形態2に係る回生システムERSは、高圧蓄圧器10の構成及びそれに関連する空調システムACSの構成が上記実施形態1と異なる。なお、この実施形態2では、上記実施形態1の回生システムERSと同一の構成箇所及び制御については、上記実施形態1の説明に譲ることにしてその詳細な説明を省略する。
図9に、この実施形態2に係る回生システムERSを用いた自動車Cの一例を示す。この実施形態2の回生システムERSを用いた自動車Cは、図9に示すように、車室の空気を調和する空調システムACSを備える。空調システムACSは、主に、圧縮機40、凝縮器41、膨張弁42、冷房用蒸発器43及び送風機44を備え、循環経路45を通じて、冷媒がこれらを循環するように構成されている。冷媒には、例えばフロン系の冷媒が用いられる。
圧縮機40は、エンジン1を動力源として回転駆動されて気体冷媒を圧縮して高温高圧の状態にし、その高温高圧の冷媒を凝縮器41に供給する。凝縮器41は、圧縮された冷媒を外気と熱交換させて放熱すると共に液化させ、液化した冷媒を膨張弁42に供給する。膨張弁42は、液化された冷媒を減圧して低温低圧の状態とし、その低温低圧の冷媒を冷房用蒸発器43に供給する。冷房用蒸発器43は、低温低圧の冷媒を送風機44の駆動により送られる空調風と熱交換させて吸熱すると共に気化させ、気化した冷媒を圧縮機40に戻す。
空調システムACSは、冷房用蒸発器43で冷媒と熱交換された空調風を車室内に送り込むことにより、車室を冷房する。自動車Cには、この空調システムACSを制御するための空調制御パネル38が設けられている。空調制御パネル38には、空調システムACSのオン/オフスイッチ、設定温度及び風量を調節するダイヤルやタッチパネル等を備える。
図10に、この実施形態2の高圧蓄圧器10の構成を示す概略断面図を示す。高圧蓄圧器10は、図10に示すように、耐圧性を有する円筒状の蓄圧容器16と、この蓄圧容器16の内部にスライド自在に配置された円板状のピストン17とを備える。蓄圧容器16の内部は、ピストン17によってそのスライドする方向にオイル室19とガス室26とに仕切られている。
高圧蓄圧器10のガス室26には、上記実施形態1と同様に、例えば200〜350気圧レベルの高圧な空気が貯留されている。このガス室26の空気は、自動車Cの減速度が所定の速度以下の緩やかな減速時(緩減速時)における減速回生において、低圧リザーバ9のオイルがオイルポンプモータ8(オイルポンプとして機能)の駆動により高圧蓄圧器9側に流出しきったときに上限圧となるように圧縮されている。
そして、このガス室26の側壁体24寄りの位置には、熱交換器からなる蓄圧用蒸発器46が設けられている。この蓄圧用蒸発器46は、図9に示すように、上記空調システムACSに組み込まれている。具体的には、蓄圧用蒸発器46は、冷房用蒸発器46を迂回する迂回循環経路47を介して膨張弁42と圧縮機40とに接続されている。この迂回循環経路47のうち蓄圧用蒸発器46と膨張弁42とを接続する部分には、流通する冷媒の流量を調整する調整弁48が設けられている。
また、低圧リザーバ9には、リザーバ容器12の内部におけるピストンのスライドする方向における位置を検出するポジションセンサ49が設けられている。
制御装置11は、減速回生時に、高圧蓄圧器10のガス室26の圧力が所定の圧力以上となるか否かを判定し、所定の圧力以上となるときに、蓄圧用蒸発器46に冷媒を流通させてガス室26のガスを冷却する冷却制御を実行する。ここでの所定の圧力は、高圧蓄圧器10のエネルギー回収効率に不具合を来す程度にまでガス室26の圧力が上昇しているか否かを判定する基準となる圧力であり、本実施形態では、ピストン17の位置に拘わらず、例えば250気圧〜350気圧の範囲で固定した値に設定されている。また、制御装置11は、減速回生が終了されるか又は低圧リザーバ9のオイルが流出しきったときに、冷却制御を終了する。
−高圧蓄圧器の動作−
次に、自動車Cが急減速したときの減速回生時における高圧蓄圧器10の動作について、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、高圧蓄圧器10の冷却制御実行前の状態を示す概略断面図である。図12は、高圧蓄圧器10の冷却制御実行後の状態を示す概略断面図である。
自動車Cが急減速したときに、減速回生により高圧蓄圧器10のオイル室19に低圧リザーバ9からオイルが一気に送り込まれると、図11に示すように、ピストン17がガス室26側に素早くスライドし、ガス室26の空気が急激に圧縮される(断熱圧縮)。それにより、空気の圧力及び温度が急上昇し、ガス室26の圧力が早期に上限圧に達するため、ガス室26の空気を十分に圧縮できなくなる。
このとき、回生システムERSは、冷却制御を実行し、蓄圧用蒸発器46に冷媒を流通させ、それによって高圧蓄圧器10のガス室26の空気を冷却する。ガス室26の空気が冷却されると、空気が温度低下に伴い収縮されてガス室26の圧力が低下し、上限圧力よりも低くなってガス室26の空気の更なる圧縮が可能になる。このため、冷却制御を実行した後にも減速回生が継続されてオイルがオイル室19に送り込まれると、図12に示すように、ピストン17がガス室26側にスライドし、オイル室19にオイルがさらに押し込まれる。それにより、オイル室19に貯留されるオイルの貯留量を確保することができる。
次に、冷却制御を含めた回生システムERSの制御の一例を、図13を参照しながら説明する。図13は、この回生システムERSの制御の一例のフローチャート図である。自動車Cの走行中には、図13に示すように、制御装置11に、各種センサ31〜36の検出値と、制御パネル38からの空調システムACSのスイッチのオン/オフ状態、空調システムACSの設定温度などの情報とが入力される(ステップST001)。
そして、制御装置11は、空調システムACSのオン/オフ状態及び設定温度に基づいて冷房用蒸発器43に供給する冷媒の供給量(以下「目標供給量」という)を設定する(ステップST002)。このとき、空調システムACSがオフの状態である場合には、当該冷媒の供給量がゼロに設定される。また、空調システムACSがオンの状態である場合には、設定温度が低いほど当該冷媒の供給量が多く設定される。
次いで、制御装置11は、回生システムERSが減速回生の実行中であるか否かを判定する(ステップST003)。このとき、減速回生の実行中でない場合には、圧縮機40の駆動回転数を第1要求回転数Nc1に設定し(ステップST004)、当該制御を終了する。第1要求回転数Nc1は、冷房用蒸発器40への目標供給量の冷媒の供給を実現するために圧縮機40に必要とされる回転数である。
また、減速回生の実行中である場合には、制御装置11は、続いて高圧蓄圧器10のガス室26の圧力が上述した所定の圧力以上であるか否かを判定する(ステップST005)。このとき、高圧蓄圧器10のガス室26の圧力が所定の圧力未満である場合には、制御装置11は、圧縮機40の駆動回転数を第1要求回転数Nc1に設定し(ステップST004)、当該制御を終了する。
また、高圧蓄圧器10のガス室26の圧力が所定の圧力以上である場合には、冷却制御を実行する必要がある。この場合、制御装置11は、圧縮機40の駆動回転数を第2要求回転数Nc2に設定する(ステップST006)。第2要求回転数Ncは、冷房用蒸発器46への目標供給量の冷媒の供給を実現し、且つ蓄圧用蒸発器46にも一定量の冷媒を供給するために圧縮機40に必要とされる回転数である。
次いで、制御装置11は、第2要求回転数Ncが圧縮機40の回転数上限よりも高いか否かを判定する(ステップST007)。このとき、第2要求回転数Nc2が圧縮機40の回転数上限以下である場合には、制御装置11は、圧縮機40の回転数を第2要求回転数Nc2のままとして、調整弁48を所定の開度に開いて蓄圧用蒸発器46に一定量の冷媒を供給する冷却制御を実行する(ステップST008)。その後、後述する終了判定ステップ(ステップST012)に進む。
また、第2要求回転数Nc2が圧縮機40の回転数上限よりも高い場合、つまり冷房用蒸発器43に要求される冷却能力と蓄圧用蒸発器46に要求される冷却能力との合計が空調システムERSの冷却能力を超える場合には、制御装置11は、圧縮機40の駆動回転数を回転数上限に設定し、調整弁48を所定の開度に開いて蓄圧用蒸発器46に一定量の冷媒を供給する冷却制御を実行する(ステップST009)。このときの冷却制御では、蓄圧用蒸発器46への冷媒の供給を冷房用蒸発器43への冷媒の供給よりも優先して行う。
そして、制御装置11は、蓄圧用蒸発器46への冷媒の供給を優先して行っているときに空調システムERSの設定温度が下げられたか否かを判定する(ステップST010)。このとき、空調システムERSの設定温度が下げられてない場合には、制御装置11は、蓄圧用蒸発器46への冷媒の供給を優先して行ったまま冷却制御を続ける。その後、後述する終了判定ステップ(ステップST012)に進む。また、空調システムERSの設定温度が下げられた場合には、制御装置11は、調整弁48を閉側に作動させることにより蓄圧用蒸発器46への冷媒の供給量を減少させ、冷房用蒸発器43への冷媒の供給量を増大させる(ステップST011)。
しかる後、制御装置11は、終了判定ステップ(ステップST012)を行う。終了判定ステップでは、減速回生が終了されたか、又は低圧リザーバ9のオイルが高圧蓄圧器9側に流出しきったか否かを判定する。低圧リザーバ9のオイルが高圧蓄圧器9側に流出しきったか否かは、低圧リザーバ9のポジションセンサ49の検出値に基づいて判定される。すなわち、低圧リザーバ9のピストン位置がオイル出入口9a寄りの限界位置にある場合には、低圧リザーバ9のオイルは流出しきった状態にあり、それ以外の場合には低圧リザーバ9のオイル室14にオイルが残存した状態である。
このとき、減速回生が継続しており、且つ低圧リザーバ9のオイル室14にオイルが残存している場合には、圧縮機40の駆動回転数を第2要求回転数Nc2に設定するステップ(ステップST006)に戻り、圧縮機40の駆動回転数を設定し直して、その後のステップを繰り返す。また、減速回生が終了されたか、又は低圧リザーバ9のオイルが高圧蓄圧器10側に流出しきっている場合には、当該制御を終了する。
−実施形態2の効果−
この実施形態2に係る回生システムERSによると、自動車Cが急減速したときの減速回生により高圧蓄圧器10の空気が急激に圧縮される場合にも、オイル室19に貯留されるオイルの貯留量を確保することができるので、制動エネルギーの回収量を増大させることができる。したがって、回生システムERSのエネルギー回収効率を改善することができる。
以上のように、ここに開示する技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、ここに開示する技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
例えば、上記実施形態1,2について、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態1,2では、高圧蓄圧器10のガス室26には空気が貯留されているとしたが、これに限らない。当該ガス室26には、空気に代えて窒素ガス等のその他のガスが貯留されていてもよい。このことは、低圧リザーバ9についても同じである。
上記実施形態1では、高圧蓄圧器10の蓄圧容器16に段差部18が環状に形成されているとしたが、これに限らず、段差部18は、円弧状や部分的な突起として設けられていてもよい。
上記実施形態1では、高圧蓄圧器10の蓄圧室20が段差隔壁25によってオイル室19側のガス室26とオイル室19とは反対側の収容室27とに仕切られているとしたが、これに限らず、蓄圧室20は、オイル室19側の収容室27とオイル室19とは反対側のガス室26とに仕切られ、真空引きされた収容室26にコイルばね28が収容されていてもよい。
上記実施形態1では、高圧蓄圧器10の収容室26にコイルばね28が収容されているとし、上記実施形態2では、高圧蓄圧器10のガス室26にコイルばね28が設けられているとしたが、これに限らず、コイルばね28でなくても、圧縮されることによりオイル室19に送り込まれたオイルの圧力エネルギーを弾性エネルギーとして蓄積することが可能な弾性部材が設けられていればよい。
上記実施形態2では、蓄圧用蒸発器46が空調システムACSに組み込まれており、空調システムACSに循環する冷媒が蓄圧用蒸発器46の内部に流通するとしたが、これに限らず、蓄圧用蒸発器46に冷媒を循環させるのに専用の装置や機構が別途設けられていてもよい。
上記実施形態2では、冷却制御を開始するトリガーとなる所定の圧力は、固定した値に設定されているとしたが、これに限らず、当該所定の圧力は、蓄圧容器16の内部でのピストン17の位置に応じて変化する値であってもよい。
以上説明したように、ここに開示した技術は、加圧下でオイル及びガスを貯留する高圧蓄圧器を備えた車両の回生システムについて有用である。
ACS…空調システム、C…自動車(車両)、ERS…回生システム、1…エンジン、
2…第1クラッチ、3…トランスミッション、4…ディファレンシャルギア、
5…駆動輪、6…連結機構、7…第2クラッチ、8…オイルポンプモータ、
9…低圧リザーバ、10…高圧蓄圧器、11…制御装置、12…リザーバ容器、
13…ピストン、14…オイル室、15…ガス室、16…蓄圧容器、17…ピストン、
18…段差部、19…オイル室、20…蓄圧室、23…開口、24…側壁体、
25…可動隔壁、26…ガス室、27…収容室、28…コイルばね(弾性部材)、
29,30…開閉弁、31…圧力センサ、32…ポジションセンサ、
33…クランク角センサ、34…車速センサ、35…ブレーキセンサ、
36…アクセルセンサ、37…ケース、38…空調制御パネル、40…圧縮機、
41…凝縮器、42…膨張弁、43…冷房用蒸発器、44…送風機、45…循環経路、
46…蓄圧用蒸発器、47…迂回循環経路、48…調整弁、49…ポジションセンサ

Claims (9)

  1. 車両の運転状態に応じてオイルポンプ及び油圧モータのいずれか一方として機能するオイルポンプモータに接続され、加圧下でオイル及びガスを貯留する高圧蓄圧器を備えた車両の回生システムであって、
    前記高圧蓄圧器は、耐圧性を有する容器と、該容器の内部にスライド自在に配置されたピストンと、を備え、
    前記ピストンは、スライドする方向に前記容器の内部をオイル室と蓄圧室とに仕切り、
    前記オイル室には、前記ピストンのスライドを伴って貯留量が変化するオイルが貯留され、
    前記蓄圧室には、前記ピストンのスライドによって圧縮又は膨張されるガスが貯留されたガス室と、該ガス室のガスが圧縮される方向への前記ピストンのスライドにより圧縮されて前記オイル室のオイルの圧力エネルギーを弾性エネルギーとして蓄積する弾性部材とが設けられている
    ことを特徴とする車両の回生システム。
  2. 請求項1に記載された車両の回生システムにおいて、
    前記蓄圧室には、前記ピストンがスライドする方向にスライド自在に配置された可動隔壁と、該可動隔壁の前記オイル室側へのスライドを規制する段差部とが設けられ、
    前記可動隔壁は、スライドする方向に前記蓄圧室を前記オイル室側の前記ガス室と該オイル室とは反対側の収容室とに仕切り、
    前記収容室は、真空引きされており、前記可動隔壁と当該収容室の内壁との間に前記弾性部材を圧縮した状態で収容し、
    前記弾性部材は、前記可動隔壁を前記ガス室側に付勢し、該ガス室の圧力が所定の圧力以下であるときに前記可動隔壁を前記段差部に押し付ける
    ことを特徴とする車両の回生システム。
  3. 請求項2に記載された車両の回生システムにおいて、
    前記弾性部材は、前記ガス室の上限圧と同程度の付勢力で前記可動隔壁を前記ガス室側に付勢している
    ことを特徴とする車両の回生システム。
  4. 請求項1に記載された車両の回生システムにおいて、
    前記弾性部材は、真空引きされた可撓性を有するケースに収容され、前記ガス室の内部に設けられている
    ことを特徴とする車両の回生システム。
  5. オイルポンプ及び油圧モータのいずれか一方として機能するオイルポンプモータに接続され、加圧下でオイル及びガスを貯留する高圧蓄圧器を備えた車両の回生システムであって、
    前記高圧蓄圧器は、耐圧性を有する容器と、該容器の内部にスライド自在に配置されたピストンと、を備え、
    前記ピストンは、スライドする方向に前記容器の内部をオイル室とガス室とに仕切り、
    前記オイル室には、前記ピストンのスライドを伴って貯留量が変化するオイルが貯留され、
    前記ガス室には、前記ピストンのスライドによって圧縮又は膨張されるガスが貯留され、且つ当該ガス室のガスと熱交換させる冷媒を内部に流通可能な熱交換器が設けられ、
    前記オイル室にオイルが流入する減速回生時に、前記ガス室の圧力が所定の圧力以上となるか否かを判定し、所定の圧力以上となるときに、前記熱交換器に冷媒を流通させて前記ガス室のガスを冷却する冷却制御を実行する制御装置をさらに備える
    ことを特徴とする車両の回生システム。
  6. 請求項5に記載された車両の回生システムにおいて、
    前記オイルポンプモータを介して前記高圧蓄圧器に接続された、オイルを貯留する低圧リザーバをさらに備え、
    前記高圧蓄圧器のガス室には、車両の減速度が所定の速度以下の緩減速時における減速回生において、前記低圧リザーバのオイルが前記オイルポンプモータの駆動により前記高圧蓄圧器側に流出しきったときに上限圧となるように圧縮された空気が貯留されており、
    前記制御装置は、前記冷却制御の実行後において減速回生が終了されるか又は前記低圧リザーバのオイルが前記高圧蓄圧器側に流出しきったときに、前記冷却制御を終了する
    ことを特徴とする車両の回生システム。
  7. 請求項5又は6に記載された車両の回生システムにおいて、
    前記熱交換器は、車室の空気を調和する空調システムに蒸発器として組み込まれている
    ことを特徴とする車両の回生システム。
  8. 請求項7に記載された車両の回生システムにおいて、
    前記空調システムは、冷房用蒸発器と、前記熱交換器からなる蓄圧用蒸発器と、を備え、
    前記制御装置は、前記空調システムの冷房運転時に前記冷却制御を実行する場合において、前記冷房用蒸発器に要求される冷却能力と前記蓄圧用蒸発器に要求される冷却能力との合計が前記空調システムの冷却能力を超えるときには、前記蓄圧用蒸発器への冷媒の供給を前記冷房用蒸発器への冷媒の供給よりも優先して行う
    ことを特徴とする車両の回生システム。
  9. 請求項8に記載された車両の回生システムにおいて、
    前記制御装置は、前記蓄圧用蒸発器への冷媒の供給を前記冷房用蒸発器への冷媒の供給よりも優先して行っているときに前記空調システムの設定温度が下げられた場合には、前記冷房用蒸発器への冷媒の供給量を増大させる
    ことを特徴とする車両の回生システム。
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