JP2017064725A - Au系はんだ粉末及びこの粉末を含むはんだ用ペースト - Google Patents

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Abstract

【課題】粉末表面が酸化せずペーストに調製した後でペーストが経時劣化せず、リフロー時のはんだの溶融性と濡れ性に優れる。
【解決手段】中心核がSn、Ge又はSiからなり、被覆層がAuであるAu系はんだ粉末である。Au系はんだ粉末は、中心核がSnであるとき、粉末100質量%中、Snを15〜25質量%含み、残りがAuであるか、又は中心核がGeであるとき、粉末100質量%中、Geを8〜16質量%含み、残りがAuであるか、或いは中心核がSiであるとき、粉末100質量%中、Siを1〜5質量%含み、残りがAuである。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子部品等の実装に用いられる、中心核がSn、Ge又はSiからなり、被覆層がAuであるAu系はんだ粉末及びこの粉末を含むはんだ用ペーストに関する。
一般に、Au系はんだ粉末は、水晶デバイスやSAWデバイス等の封止材用途や、高輝度LEDやペルチェ素子、またはパワー半導体等のダイボンド用途等の250℃程度の高温雰囲気において高い信頼性や高熱伝導性を要求される接合部位に使用される高温はんだの一種である。従来、この種のAu−Si系合金、Au−Sn系合金又はAu−Ge系合金からなるAu系はんだ粉末は、回転電極法、アトマイズ法等で製造され、フラックスと混合することにより、Au系はんだ用ペーストとして利用されている(例えば、特許文献1参照。)。上記Au系はんだ粉末は、長期間保管した場合には、Si、Sn、Geが酸化されやすい元素のため、粉末表面が酸化されやすく、この酸化物とペースト中の活性成分との反応によりペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷不良、濡れ性の劣化等の経時劣化を生じる。
この課題を解決するために、重量%で、Au−Si合金、Au−Sn合金又はAu−Ge合金からなる金はんだ粉末:80〜98%、ペースト化剤:2〜20%からなり、粘度:25,000〜300,000センチポアズを有するはんだペーストにおいて、上記はんだペースト化剤に含まれる酸素分子及び水分子中の酸素原子が100ppm以下であることを特徴とするはんだペーストが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。このはんだペーストでは、はんだペースト化剤に含まれる酸素含有量を100ppm以下にするためには、従来のペースト化剤を不活性ガスによりバブリングしたり、蒸留している。
一方、従来より、はんだ粉末表面をめっきによりAuで被覆することにより、はんだ粉末表面の酸化を防止する技術が示されている(例えば、特許文献3、4、5参照。)。
特許文献3記載のクリーム半田は、半田を高温に加熱し、溶融状態にした後、不活性ガスとともにノズルにより広い容器内に半田微粒子を作り、これを通常の前処理溶液で活性化した後、無電解のAuメッキでAuの膜を約0.3μm付け、続いてこれをフラックスと樹脂である粘結剤と溶剤とを混合して、作られる。
また特許文献4記載のはんだペーストは、回路基板への部品実装に用いるはんだペーストを、このペーストの他の成分であるフラックス、溶剤、チキソ剤等と混合する前に、はんだ粉末表面を、めっき又は蒸着によりAuで被覆することにより、はんだ粉末表面の酸化、有機物汚染を抑えたことを特徴とする。具体的には、はんだ粉末表面をスパッタエッチング又は弱酸液により清浄化した後、めっき又は蒸着により金の薄膜で覆っている。
更に特許文献5記載のはんだペースト用表面被覆Au−Sn合金粉末は、Sn:15〜25質量%を含有し、残りがAu及び不可避不純物からなる組成を有するAu−Sn合金粉末の表面に、厚さ:10〜1000nmを有するAu、Pt、Rh、Pd、Ruの内のいずれかの貴金属からなる貴金属層を形成してなることを特徴とする。この貴金属層を形成するAu−Sn合金粉末としては、従来のガスアトマイズAu−Sn合金粉末が用いられる。そしてこの貴金属層は、上記貴金属を電解又は無電解めっきにより形成されるか、貴金属からなるターゲットを用いてスパッタリングして得られる。このはんだペースト用表面被覆Au−Sn合金粉末は、ロジンを含まないペースト化剤に添加しても、従来のはんだペーストに比べて濡れ広がり性に優れ、しかもロジンを含まないのでろう付け後の残渣の発生が少なく、ろう付け後の洗浄工程を省略することができ、しかも良好なはんだ付けを行うことができるのでコストを低減することができる。
特開平3−155493号公報(特許請求の範囲) 特許第3227868号公報(請求項1、段落[0005]〜段落[0008]) 特開平4−305393号公報(請求項1、段落[0010]) 特開平6−155070号公報(請求項1、請求項2、請求項7、段落[0023]、図6) 特開2004−141937号公報(請求項1、段落[0008]、段落[0013]、段落[0038])
しかしながら、特許文献2に記載されたように、はんだペースト化剤に含まれる酸素分子及び水分子中の酸素原子を100ppm以下にするためには、従来のペースト化剤を不活性ガスによりバブリングしたり、蒸留する必要があり、煩わしかった。
また、特許文献3及び4に記載されたAu被覆の方法は、一度はんだ粒子又ははんだ粉末を形成した後で、この粒子表面又は粉末表面を活性化(特許文献3)又は洗浄化処理(特許文献4)を行ってAuめっきしているため、特許文献4の図6に示すように、活性化又は洗浄化処理が不十分である場合、はんだ粉末表面に形成された酸化及び有機物汚染層が残存する。また特許文献5に記載されたAu被覆前のはんだ粉末は市販のガスアトマイズAu−Sn合金粉末であり、Au被覆前に特許文献3及び4と同様の前処理を必要とする。このため、特許文献3〜5に記載されたAu被覆のはんだ粉末ではんだ付けを行った際に、依然としてはんだ付け部に溶け残りや酸化物が存在して所望のはんだ付け強度が得られない恐れがあった。
また特許文献3には、Auメッキ膜を約0.3μm付けることのみが示され、どんな種類の微粒子でどの位の粒径の微粒子にどの程度Auを被覆するのか、特許文献3には示されていない。Auは高価であるため、はんだ粉末の種類及び粒径に相応したAuの被覆量を適切に規定する未だ解決すべき問題点があった。
更に特許文献5記載のはんだペースト用表面被覆Au−Sn合金粉末は、Au被覆層の厚さが1μm以下で薄いため、この粉末の保管中に、コアのAu−Sn成分がAu被覆層内に拡散し、粉末表面がAu−Sn合金化し、Au本来の酸化防止機能が劣化する恐れがあった。
本発明の第1の目的は、粉末表面が酸化せずペーストに調製した後でペーストが経時劣化しないはんだ粉末を提供することにある。本発明の第2の目的は、リフロー時の溶融性と濡れ性に優れたAu系はんだ粉末を含むはんだ用ペーストを提供することにある。
本発明の第1の観点は、中心核がSn、Ge又はSiからなり、被覆層がAuであり、中心核がSnであるとき、粉末100質量%中、Snを15〜25質量%含み、残りがAuであり、中心核がGeであるとき、粉末100質量%中、Geを8〜16質量%含み、残りがAuであり、中心核がSiであるとき、粉末100質量%中、Siを1〜5質量%含み、残りがAuであることを特徴とするAu系はんだ粉末である。
本発明の第2の観点は、第1の観点のAu系はんだ粉末とはんだ用フラックスとを含むはんだ用ペーストである。
本発明の第3の観点は、第2の観点のはんだ用ペーストを用いて電子部品を実装する方法である。
本発明の第1の観点のAu系はんだ粉末は、中心核がSn、Ge又はSiからなり、被覆層がAuであって、Sn、Ge又はSiを所定量含み、Auを主たる成分とするはんだ粉末である。このように、第1の観点のAu系はんだ粉末では、はんだ粉末表面が所定量Auで被覆されるため、はんだ粉末の表面が酸化せず、酸化によるはんだ用ペーストの濡れ性の劣化が防止される。Sn、Ge又はSiを共晶組成で含んだときのAu系はんだ粉末の融解温度はSnの場合、280℃であり、Geの場合、361℃であり、Siの場合、364℃である。このため、融点が1064℃のAuで被覆されていても、リフロー時にSnとAu、GeとAu又はSiとAuの各界面から溶融が速やかに開始されるとともに、溶融拡散性が良好で、溶融性と濡れ性に優れる。更にAu−Snに関しては、Auを粉末表面に所定量含むため、特許文献5とは異なり、はんだ粉末を長期間保管しても、はんだ粉末全体がAu−Snの金属間化合物になりにくく、粉末表面はAuで被覆されているので、Au本来の酸化防止機能が劣化しない。
本発明の第2の観点のはんだ用ペーストは、第1の観点のAu系はんだ粉末を含んでいる。そのため、このはんだ用ペーストは、第1の観点で述べた理由により、酸化防止機能を有しており、その結果、ペーストに調製した後一定時間経過しても、経時劣化が少なく、リフロー時の溶融性に優れるとともに、濡れ性に優れる。
本発明の第3の観点の電子部品を実装する方法では、上記本発明のはんだ用ペーストを用いるため、リフロー時にははんだ用ペーストの溶融の速さと、優れた溶融性により、簡便に、かつ高い精度で実装することができる。
本発明の第1実施形態の中心核がSnからなり、被覆層がAuであるはんだ粉末の断面構造の一例を模式的に表した図である。 本発明の第2実施形態の中心核がGeからなり、被覆層がAuであるはんだ粉末の断面構造の一例を模式的に表した図である。 本発明の第3実施形態の中心核がSiからなり、被覆層がAuであるはんだ粉末の断面構造の一例を模式的に表した図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
〔Au−Sn系はんだ粉末〕
第1の実施形態のAu系はんだ粉末は、図1に示すように、中心核11と中心核11を被覆する被覆層12で構成され、中心核11がSnからなり、被覆層12がAuである。第1の実施形態のAu系はんだ粉末は、このように、Snからなる中心核が、Auの被覆層で被覆されたはんだ粉末の構造になっている。この点で特許文献5のようなはんだ粉末の大部分がAu−Snの合金からなる構造とは異なる。こうしたはんだ粉末構造であるため、粉末表面の酸化が防止され、ペーストに調製した後一定時間経過しても、経時劣化が少なく、リフロー時の溶融性に優れるとともに、濡れ性に優れる。また、融点が1064℃のAuで被覆されていても、リフロー時に中心核と被覆層の界面に形成されるAu−Snの金属間化合物から溶融が速やかに開始されて粉末全体が溶融する。
第1の実施形態のAu系はんだ粉末は、平均粒径が1〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることが更に好ましい。平均粒径が下限値未満では、比表面積が高くなり易く、はんだ用ペーストにしたときに、ペーストの粘度が高くなり過ぎ、印刷時に不具合を生じ易い。また平均粒径が上限値を超えると、高精細の印刷に適さなくなり、また粉末製造時に液中に均一に分散させるのが困難である不具合を生じ易い。なお、本明細書において、粉末の平均粒径とは、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置(堀場製作所社製、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950)にて測定した体積累積中位径(Median径、D50)をいう。
第1の実施形態のAu系はんだ粉末は、中心核がSnであって、粉末100質量%中、Snを15〜25質量%、好ましくは18〜22質量%含み、残りがAuであるため、リフロー後は、AuSn、AuSnからなる融点280℃の共晶組成の接合層が形成される。その結果、リフロー後、再溶融及び接合強度の低下が起こりにくく、特に高温雰囲気に晒される電子部品等に好適に実装される。Snの含有量が15質量%未満又は25質量%を超えると、リフロー時においてはんだが十分に溶融しないため、接合不良が発生する。
〔Au−Sn合金はんだ粉末の製造方法〕
Au−Sn合金はんだ粉末の製造方法では、中心核の形成のためにSn粉末を使用する。このSn粉末の平均粒径は0.7〜35μmであることが好ましく、3.5〜14μmであることが更に好ましい。上述したSnの含有量の範囲を決めるためである。先ず、pH6に調整したチオ硫酸塩、亜硫酸塩、ナトリウム塩等の水溶液にSn粉末を添加し、更にセルロース系、ビニル系、多価アルコール、ゼラチン、カゼイン等の高分子化合物の分散剤を添加して混合する。これによりSn粉末の分散液を調製する。一方、塩化金、亜硫酸金等の水溶性Au化合物を水に溶解してAuイオン溶液を調製する。またAuイオンを還元するのに必要な量のアスコルビン酸塩、チオ尿素、ヒドラジン等の還元剤を水に溶解した還元剤水溶液を調製する。Auイオン溶液の添加割合は、はんだ粉末製造後に、Auの含有割合及びはんだ粉末の平均粒径が所定の範囲になるように調整する。具体的には、Au80質量%、Sn20質量%の共晶組成になるのに必要なモル濃度になるように調整する。
次に、Sn粉末分散液を攪拌し、そこにAuイオン溶液及び還元剤水溶液を同時に添加し、所定時間攪拌しながら保持する。これにより、液中のAuイオンがSn粉末表面上にて還元され、液中に金属粉末が分散した分散液が得られる。この分散液を固液分離し、回収した固形分を水洗し減圧乾燥する。フルイにより乾燥物を解砕することにより、Snからなる中心核と、この中心核を被覆するAu被覆層で構成された、平均粒径1〜50μmのSn核Au層付きのはんだ粉末が製造される。
<第2の実施の形態>
〔Au−Ge系はんだ粉末〕
第2の実施形態のAu系はんだ粉末は、図2に示すように、中心核21と中心核21を被覆する被覆層22で構成され、中心核21がGeからなり、被覆層22がAuである。第2の実施形態のAu系はんだ粉末は、このように、Geからなる中心核が、Auの被覆層で被覆されたはんだ粉末の構造になっている。こうしたはんだ粉末構造であるため、粉末表面の酸化が防止され、ペーストに調製した後ペースト調整後一定時間経過しても、経時劣化が少なく、リフロー時の溶融性に優れるとともに、濡れ性に優れる。
第2の実施形態のAu系はんだ粉末は、第1の実施形態と同じ平均粒径が1〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることが更に好ましい。
第2の実施形態のAu系はんだ粉末は、中心核がGeであって、粉末100質量%中、Geを8〜16質量%、好ましくは11〜13質量%含み、残りがAuである。その結果、リフロー後、再溶融及び接合強度の低下が起こりにくく、特に高温雰囲気に晒される電子部品等に好適に実装される。Geの含有量が8質量%未満又は16質量%を超えると、リフロー時においてはんだが十分に溶融しないため、接合不良が発生する。
〔Au−Ge合金はんだ粉末の製造方法〕
Au−Ge合金はんだ粉末の製造方法では、中心核の形成のためにGe粉末を使用する。このGe粉末の平均粒径は0.7〜35μmであることが好ましく、3.5〜14μmであることが更に好ましい。上述したGeの含有量の範囲を決めるためである。先ず、pH6に調整したチオ硫酸塩、亜硫酸塩、ナトリウム塩等の水溶液にGe粉末を添加し、更にセルロース系、ビニル系、多価アルコール、ゼラチン、カゼイン等の高分子化合物の分散剤を添加して混合する。これによりGe粉末の分散液を調製する。一方、塩化金、亜硫酸金等の水溶性Au化合物を水に溶解してAuイオン溶液を調製する。またAuイオンを還元するのに必要な量のアスコルビン酸塩、チオ尿素、ヒドラジン等の還元剤を水に溶解した還元剤水溶液を調製する。Auイオン溶液の添加割合は、はんだ粉末製造後に、Auの含有割合及びはんだ粉末の平均粒径が所定の範囲になるように調整する。具体的には、Au88質量%、Ge12質量%の共晶組成になるのに必要なモル濃度になるように調整する。
次に、Ge粉末分散液を攪拌し、そこにAuイオン溶液及び還元剤水溶液を同時に添加し、所定時間攪拌しながら保持する。これにより、液中のAuイオンがGe粉末表面にて還元され、液中に金属粉末が分散した分散液が得られる。この分散液を固液分離し、回収した固形分を水洗し減圧乾燥する。フルイにより乾燥物を解砕することにより、Geからなる中心核と、この中心核を被覆するAu被覆層で構成された、平均粒径1〜50μmのGe核Au層付きのはんだ粉末が製造される。
<第3の実施の形態>
〔Au−Si系はんだ粉末〕
第3の実施形態のAu系はんだ粉末は、図3に示すように、中心核31と中心核31を被覆する被覆層32で構成され、中心核31がSiからなり、被覆層32がAuである。第2の実施形態のAu系はんだ粉末は、このように、Siからなる中心核が、Auの被覆層で被覆されたはんだ粉末の構造になっている。こうしたはんだ粉末構造であるため、粉末表面の酸化が防止され、ペーストに調製した後ペースト調整後一定時間経過しても、経時劣化が少なく、リフロー時の溶融性に優れるとともに、濡れ性に優れる。
第3の実施形態のAu系はんだ粉末は、第1の実施形態と同じ平均粒径が1〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることが更に好ましい。
第3の実施形態のAu系はんだ粉末は、中心核がSiであって、粉末100質量%中、Siを1〜5質量%、好ましくは2.5〜3.5質量%含み、残りがAuである。その結果、リフロー後、再溶融及び接合強度の低下が起こりにくく、特に高温雰囲気に晒される電子部品等に好適に実装される。Siの含有量が1質量%未満又は5質量%を超えると、リフロー時においてはんだが十分に溶融しないため、接合不良が発生する。
〔Au−Si合金はんだ粉末の製造方法〕
Au−Si合金はんだ粉末の製造方法では、中心核の形成のためにSi粉末を使用する。このSi粉末の平均粒径は0.6〜30μmであることが好ましく、3〜12μmであることが更に好ましい。上述したSiの含有量の範囲を決めるためである。先ず、pH6に調整したチオ硫酸塩、亜硫酸塩、ナトリウム塩等の水溶液にSi粉末を添加し、更にセルロース系、ビニル系、多価アルコール、ゼラチン、カゼイン等の高分子化合物の分散剤を添加して混合する。これによりSi粉末の分散液を調製する。一方、塩化金、亜硫酸金の水溶性Au化合物を水に溶解してAuイオン溶液を調製する。またAuイオンを還元するのに必要な量のアスコルビン酸塩、チオ尿素、ヒドラジン等の還元剤を水に溶解した還元剤水溶液を調製する。Auイオン溶液の添加割合は、はんだ粉末製造後に、Auの含有割合及びはんだ粉末の平均粒径が所定の範囲になるように調整する。具体的には、Au96.85質量%、Si3.15質量%の共晶組成になるのに必要なモル濃度になるように調整する。
次に、Si粉末分散液を攪拌し、そこにAuイオン溶液及び還元剤水溶液を同時に添加し、所定時間攪拌しながら保持する。これにより、液中のAuイオンがSi粉末表面にて還元され、液中に金属粉末が分散した分散液が得られる。この分散液を固液分離し、回収した固形分を水洗し減圧乾燥する。フルイにより乾燥物を解砕することにより、Siからなる中心核と、この中心核を被覆するAu被覆層で構成された、平均粒径1〜50μmのSi核Au層付きのはんだ粉末が製造される。
〔はんだ用ペースト及びその調製方法〕
以上の工程により、得られた第1〜第3の実施形態のAu系はんだ粉末は、はんだ用フラックスと混合してペースト化して得られるはんだ用ペーストの材料として好適に用いられる。はんだ用ペーストの調製は、はんだ粉末とはんだ用フラックスとを所定の割合で混合してペースト化することにより行われる。はんだ用ペーストの調製に用いられるはんだ用フラックスは、特に限定されないが、溶剤、ロジン、チキソ剤及び活性剤等の各成分を混合して調製されたフラックスを用いることができる。
上記はんだ用フラックスの調製に好適な溶剤としては、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、α−テルピネオール等の沸点が180℃以上である有機溶剤が挙げられる。また、ロジンとしては、ガムロジン、水添ロジン、重合ロジン、エステルロジン等が挙げられる。
また、チキソ剤としては、硬化ひまし油、脂肪酸アマイド、天然油脂、合成油脂、N,N’−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、12−ヒドロキシステアリン酸、1,2,3,4−ジベンジリデン−D−ソルビトール及びその誘導体等が挙げられる。
また、活性剤としては、ハロゲン化水素酸アミン塩が好ましく、具体的には、トリエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、エタノールアミン、ブチルアミン、アミノプロパノール、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンラウレルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メトキシプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、エチルヘキシルアミン、エトキシプロピルアミン、エチルヘキシルオキシプロピルアミン、ビスプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、アニリン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、3−アミノ−1−プロペン、イソプロピルアミン、ジメチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン等のアミンの塩化水素酸塩又は臭化水素酸塩が挙げられる。
はんだ用フラックスは、上記各成分を所定の割合で混合することにより得られる。フラックス全体量100質量%中に占める溶剤の割合は30〜60質量%、チキソ剤の割合は1〜10質量%、活性剤の割合は0.1〜10質量%とするのが好ましい。溶剤の割合が下限値未満では、フラックスの粘度が高くなりすぎるため、これを用いたはんだ用ペーストの粘度も応じて高くなり、はんだの充填性低下や塗布ムラが多発する等、印刷性が低下する不具合を生じる場合がある。一方、上限値を越えるとフラックスの粘度が低くなりすぎるため、これを用いたはんだ用ペーストの粘度も応じて低くなることから、はんだ粉末とフラックス成分が沈降分離する不具合を生じる場合がある。また、チキソ剤の割合が下限値未満では、はんだ用ペーストの粘度が低くなりすぎるため、はんだ粉末とフラックス成分が沈降分離するという不具合を生じる場合がある。一方、上限値を越えるとはんだ用ペーストの粘度が高くなりすぎるため、はんだ充填性や塗布ムラ等の印刷性低下という不具合を生じる場合がある。また、活性剤の割合が下限値未満では、はんだ粉末が溶融せず、十分な接合強度が得られないという不具合を生じる場合があり、一方、上限値を越えると保管中に活性剤がはんだ粉末と反応し易くなるため、はんだ用ペーストの保存安定性が低下するという不具合を生じる場合がある。この他、はんだ用フラックスには、粘度安定剤を添加しても良い。粘度安定剤としては、溶剤に溶解可能なポリフェノール類、リン酸系化合物、硫黄系化合物、トコフェノール、トコフェノールの誘導体、アルコルビン酸、アルコルビン酸の誘導体等が挙げられる。粘度安定剤は、多すぎるとはんだ粉末の溶融性が低下する等の不具合が生じる場合があるため、10質量%以下とするのが好ましい。
はんだ用ペーストを調製する際のはんだ用フラックスの混合量は、調製後のペースト100質量%中に占める該フラックスの割合が5〜30質量%になる量にするのが好ましい。下限値未満ではフラックス不足でペースト化が困難になり、一方、上限値を越えるとペースト中のフラックスの含有割合が多すぎて金属の含有割合が少なくなってしまい、はんだ溶融時に所望のサイズのはんだバンプを得るのが困難になるからである。
このはんだ用ペーストは、上記本発明のはんだ粉末を材料としているため、リフロー時の溶融が速く、溶融性に優れる。このため、本発明のはんだ用ペーストは、特に高温雰囲気に晒される電子部品等の実装に好適に用いることができる。
〔はんだ用ペーストを用いた電子部品の実装方法と接合体〕
上記方法で調製されたはんだ用ペーストを用いてシリコンチップ、LEDチップ等の電子部品を各種放熱基板、FR4(Flame Retardant Type 4)基板、コバール等の基板に実装するには、ピン転写法にて上記基板の所定位置にはんだ用ペーストを転写するか、又は印刷法により所定位置にはんだ用ペーストを印刷する。次いで、転写又は印刷されたペースト上に電子部品であるチップ素子を搭載する。この状態で、リフロー炉にて窒素雰囲気中、300〜400℃の温度で、5〜30分間保持して、チップ素子を接合する。場合によっては、チップ素子と基板とを加圧しながら接合してもよい。これにより、チップ素子と基板とを接合させて接合体を得て、電子部品を基板に実装する。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、水100mlにチオ硫酸ナトリウムを0.02モル、亜硫酸ナトリウムを0.02モル、塩化アンモニウムを0.02モルをそれぞれ加え、スターラを用いて300rpmの回転速度で5分間攪拌し、溶解液を調製した。この溶解液に平均粒径7.5μmのSn粉末0.20gを添加した後、分散剤として平均分子量が500のポリビニルアルコールを0.1g加え、更に300rpmの回転速度で10分間攪拌し、Sn粉末分散液を得た。次いで、水50mlに塩化金酸ナトリウム0.0025モルを加え、スターラを用いて300rpmの回転速度で5分間攪拌し、Auイオン溶液を調製した。次に、水50mlにアスコルビン酸ナトリウム0.025モルを加え、スターラを用いて300rpmの回転速度で5分間攪拌し、還元剤水溶液を調製した。攪拌しているSn粉末分散液にAuイオン溶液及び還元剤水溶液を5ml/分の速度で同時に添加した。全量を添加した後、液を12時間静置して金属粉末スラリーを得た。得られたスラリーを吸引ろ過し、固形分を水洗した。これを真空乾燥機で乾燥することにより、粉末表面にAuで被覆された平均粒径10.7μmのAu−Snはんだ粉末を得た。
<実施例2>
平均粒径30.1μmのSn粉末を0.20g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径40.2μmのAu−Snはんだ粉末を得た。
<実施例3>
平均粒径1.7μmのSn粉末を0.20g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径2.3μmのAu−Snはんだ粉末を得た。
<実施例4>
平均粒径7.5μmのSn粉末を0.25g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径11.3μmのAu−Snはんだ粉末を得た。
<実施例5>
平均粒径7.5μmのSn粉末を0.15g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径10.6μmのAu−Snはんだ粉末を得た。
<実施例6>
平均粒径6.5μmのGe粉末を0.12g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径9.4μmのAu−Geはんだ粉末を得た。
<実施例7>
平均粒径25μmのGe粉末を0.12g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径38.1μmのAu−Geはんだ粉末を得た。
<実施例8>
平均粒径1.8μmのGe粉末を0.12g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径2.6μmのAu−Geはんだ粉末を得た。
<実施例9>
平均粒径6.5μmのGe粉末を0.15g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径11.0μmのAu−Geはんだ粉末を得た。
<実施例10>
平均粒径6.5μmのGe粉末を0.09g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径10.6μmのAu−Geはんだ粉末を得た。
<実施例11>
平均粒径7.0μmのSi粉末を0.03g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径11.7μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<実施例12>
平均粒径25μmのSi粉末を0.03g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径42.1μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<実施例13>
平均粒径1.5μmのSi粉末を0.03g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径2.6μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<実施例14>
平均粒径6.5μmのSi粉末を0.02g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径10.2μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<実施例15>
平均粒径6.5μmのSi粉末を0.05g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径10.7μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<比較例1>
平均粒径7.5μmのSn粉末を0.30g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径11.1μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<比較例2>
平均粒径7.5μmのSn粉末を0.10g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径10.1μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<比較例3>
平均粒径6.5μmのGe粉末を0.18g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径10.6μmのAu−Geはんだ粉末を得た。
<比較例4>
平均粒径6.5μmのGe粉末を0.06g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径11.3μmのAu−Geはんだ粉末を得た。
<比較例5>
平均粒径6.5μmのSi粉末を0.001g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径10.0μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<比較例6>
平均粒径6.5μmのSi粉末を0.07g添加した以外は、実施例1と同様にして、粉末表面にAuで被覆された平均粒径11.5μmのAu−Siはんだ粉末を得た。
<比較例7>
平均粒径10.2μmのAuSnアトマイズ合金粉末を比較例13のはんだ粉末とした。
<比較例8>
平均粒径10.7μmのAuGeアトマイズ合金粉末を比較例14のはんだ粉末とした。
<比較例9>
平均粒径9.5μmのAuSiアトマイズ合金粉末を比較例15のはんだ粉末とした。
<比較試験及び評価>
実施例1〜15及び比較例1〜9で得られたはんだ粉末について、次に述べる方法により、はんだ粉末の組成分析、得られたはんだ粉末を用いて作製したはんだ用ペーストの濡れ性を調べた。はんだ用ペーストは溶融しないと下地に濡れないため、濡れ性を調べることで、溶融性を評価した。これらの結果を以下の表1に示す。
(1) はんだ粉末の組成:誘導結合プラズマ発光分光分析(島津製作所社製 ICP発光分析装置:ICPS−7510)により金属元素含有量を測定した。
(2) はんだ用ペーストの濡れ性:実施例1〜15及び比較例1〜9で得られたはんだ粉末93質量%とフラックス中の活性成分7質量%を含むフラックス7質量%とを混合してはんだ用ペーストを調製した。このはんだ用ペーストの濡れ性をJISZ3284に記されている「ぬれ効力及びディウエッティング試験」に準じて行った。評価についても同様に濡れ広がり度合いを1〜4に区分した。はんだ用ペーストの濡れ性は、ペースト調製直後と、ペースト調製してから3ヶ月経過後と、ペースト調製してから6ヶ月経過後のペーストの濡れ広がりの度合いをそれぞれ判定した。ここで、はんだ用ペーストの調製直後及び保管中の温度は25℃に維持した。なお、表1において、「1」が濡れ広がり度合いが最も濡れ性に優れることを示し、「4」が最も濡れ性が悪いことを示す。
Figure 2017064725
表1から明らかなように、実施例1〜15と比較例1〜9とを比較すると次のことが分かった。Au−Snについて実施例1〜5と比較例1、2を、Au−Geについて実施例6〜10と比較例3、4を、Au−Siについて実施例11〜15と比較例5、6をそれぞれ比較すると、比較例1〜6の共晶組成から外れた粉末を用いたはんだ用ペーストは、リフロー時に全く溶融せず、また濡れ広がりの度合いは「3」と悪かった。これはペースト調製直後、1ヶ月後、6ヶ月後でも同じであった。これに対してはんだ粉末の組成が所定の範囲の内、好ましい範囲内にある実施例1〜3、6〜8、11〜13の共晶組成である粉末を用いたはんだ用ペーストは、リフロー時に溶融し、濡れ広がりの度合いは「1」であった。上記好ましい範囲から外れたもののはんだ粉末の組成が所定の範囲内にある実施例4、5、9、10、14、15のはんだ用ペーストの濡れ広がりの度合いは「2」であった。アトマイズ粉末を用いた比較例7〜9のはんだ用ペーストは、ペースト調製直後は、濡れ広がりの度合いは「1」であったが、1ヶ月後は「2」と悪化し、6ヶ月後は「3」と更に悪化した。以上のことから、実施例1〜15のはんだ用ペーストは、比較例1〜9と比べて、実施例1〜15で用いたはんだ粉末が粉末表面がAuで被覆されているため、粉末表面の酸化を防止する効果があり、これにより経時安定性が向上していること、及びこれらのはんだ粉末がSn、Ge又はSiを所定量含むため、濡れ性に優れていることが分かった。
本発明は、長期間保管することがあるはんだ粉末に好適に利用できる。また電子部品の実装、特に高温雰囲気に晒される電子部品の実装に好適に利用できる。
10、20、30 Au系はんだ粉末
11、21、31 中心核
12、22、32 被覆層

Claims (3)

  1. 中心核がSn、Ge又はSiからなり、被覆層がAuであって、
    中心核がSnであるとき、粉末100質量%中、Snを15〜25質量%含み、残りがAuであり、
    中心核がGeであるとき、粉末100質量%中、Geを8〜16質量%含み、残りがAuであり、
    中心核がSiであるとき、粉末100質量%中、Siを1〜5質量%含み、残りがAuである
    ことを特徴とするAu系はんだ粉末。
  2. 請求項1記載のAu系はんだ粉末とはんだ用フラックスとを含むはんだ用ペースト。
  3. 請求項2記載のはんだ用ペーストを用いて電子部品を実装する方法。
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