JP2017062676A - 軸流ファンの通風解析方法,通風解析装置及び通風解析プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】熱流動場解析の精度を向上させる。【解決手段】MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において、ファンの実回転数に対応する通過風速と等価な計算上の通過風速を発生させる演算上の仮想回転数Nvを算出する処理をコンピュータに実行させる方法である。ファン回転数Nfを入力値とするCFD解析によりファンの圧損P,風量Qを計算する解析ステップ(T20,22)と、圧損補正係数ηPを算出して圧損Pを圧損補正係数ηPで補正する補正ステップ(T36,38)と、補正後の圧損値P′と風量Qとを計算上のPQ点として設定する設定ステップ(T40)と、PQ点とファン所定回転数NaでのPQカーブとのずれ量Gが所定値Gthを超えたら入力値Nfを変更して解析ステップ,補正ステップ及び設定ステップを再実施させ、ずれ量Gが所定値Gth以下なら入力値Nfを仮想回転数Nvとして算出するステップ(T50,54)とを備える。【選択図】図5
Description
本発明は、数値流体力学(CFD)解析の手法を用いた軸流ファンの通風解析方法,通風解析装置及び通風解析プログラムに関する。
近年、自動車製品の性能向上に伴い、エンジンルーム内の熱管理に対する要求が高まる傾向にある。このため開発現場では、開発初期の段階から積極的に数値流体力学(CFD;Computational Fluid Dynamics)解析ソフトウェアを活用し、エンジンルーム内の空気の流れ場や温度場をコンピュータシミュレーションにより予測することで設計検討の効率化を図っている。エンジンルーム内の空気の流れは、ラジエータに付設された冷却ファンによって生成されるとともに走行風の影響を受けることから、CFD解析では、冷却ファンを含んだ解析モデルが設定され、車速の影響も考慮してシミュレーションが実施される。なお、ファンを含んだモデルをシミュレーションする流体解析方法としては、例えば特許文献1に記載のものが存在する。
ところで、流体解析において回転問題を解くための方法(モデル)の一つとしてMRF(Multiple Reference Flame)モデルが知られている。すなわち、解析対象領域内に座標系の異なる回転領域と静止領域とを設定し、回転領域内に固定された回転部材の周囲に生じる流体の運動量を静止領域に与えることで、回転部材の回転による静止領域への影響の度合いを推定するものである。軸流ファンの回転による流れ場を解析する場合、回転領域内にファンのブレード形状がモデル化され、このファンの回転数が静止領域に対する運動量ソースとなる入力値として使用される。MRFモデルでは、ブレード形状をモデル化することで実際のブレード形状に沿った流れ場が再現されるため、ファンの旋回成分の流れ場が比較的精度よく計算される。
しかしながら、上記の演算手法はブレードを固定した状態でブレードの周囲の流体に回転ソースを与える方法であることから、流体とブレードとの旋回方向の相対速度が過大評価される。このため、ファンの圧損が実際のものよりも大きくなり、ファンを通過する流体の速度(軸流方向の風速,以下「通過風速」という)が実際の値よりも低く計算される。すなわち、ファンの軸流成分の計算に関しては高い精度が得られず、特に低車速域ほど計算精度が低下するという課題があった。
この対策としては、ファンを所定回転数で作動させたときの実際の通過風速を予め測定しておき、その実測値とシミュレーションで得られた計算値とが略一致するように、シミュレーションの入力値(すなわちファンの回転数)を調整する方法が考えられる。すなわち、実測値と略同一の値の通過風速が計算されるように入力値を調整し、実測値と計算値とが略一致したときの入力値を、所定回転数に対応する値(モデル上の回転数)として決めておく方法である。ファンが配置される空間(例えばエンジンルーム)内の流れ場や温度場の解析(以下「熱流動場解析」という)では、実際のファンの回転数ではなく、その回転数に対応する入力値を与えることで通過風速が低く計算されることが防止され、高い解析精度が得られるようになる。
しかし、この方法は通過風速の実測値が必要となるため、解析の準備段階での負担が大きいという欠点がある。また、車両の設計段階において、エンジンルームの内部構造やレイアウト,ファン形状などが確定していない場合には、通過風速の実測値を取得することができない。したがって、この方法を用いることができず、ファンが配置される空間内の熱流動場解析の精度も低くなってしまう。
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、通過風速の実測値を用いることなく、過大評価される圧損を補正し、熱流動場解析の精度を向上させることができるようにした、軸流ファンの通風解析方法,通風解析装置及び通風解析プログラムを提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示する軸流ファンの通風解析方法は、MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において、前記軸流ファンの実回転数に対応する通過風速と等価な計算上の通過風速を発生させる演算上の仮想回転数を算出する処理をコンピュータに実行させる通風解析方法であって、コンピュータソフトウェアによる軸流ファンの通風解析方法である。この通風解析方法は、解析ステップと、補正ステップと、設定ステップと、算出ステップとを備える。
前記解析ステップでは、前記軸流ファンの回転数を入力値とする前記CFD解析(数値流体力学解析)により前記軸流ファンの圧損及び風量を計算する。前記補正ステップでは、前記圧損に対する前記軸流ファンの作動時における実圧損の比率を表す圧損補正係数を算出して、前記圧損を前記圧損補正係数で補正する。前記設定ステップでは、補正後の圧損値と前記風量とを前記軸流ファンのPQ特性マップ上における計算上のPQ点として設定する。前記算出ステップでは、前記PQ点と前記軸流ファンの所定回転数におけるPQカーブとのずれ量が所定値を超える場合に前記入力値を変更して前記解析ステップ,前記補正ステップ及び前記設定ステップを再実施させ、前記ずれ量が前記所定値以下である場合に前記入力値を前記仮想回転数として算出する。
すなわち、前記算出ステップでは、前記ずれ量が前記所定値以下となるまで前記回転数を調整し、調整後の前記入力値を用いて前記解析ステップ,前記補正ステップ及び前記設定ステップを再実施させ、前記ずれ量が前記所定値以下となったときの前記入力値を前記仮想回転数として算出する。前記算出ステップで用いられる前記PQカーブは、前記解析ステップで使用された前記入力値に対応するPQカーブであることが好ましく、前記所定回転数が前記入力値に応じて設定されることが好ましい。前記所定回転数は、例えば前記入力値と同一値であることが好ましい。ただし、前記解析ステップ,前記補正ステップ,前記設定ステップ,前記算出ステップを繰り返し実施する場合には、前記解析ステップで使用された最初の前記入力値(すなわち初期値)を前記所定回転数とすることが好ましい。
(2)前記補正ステップでは、前記圧損を軸流成分と旋回成分とに分解した各成分の補正係数をモデル計算により算出し、二つの前記補正係数と所定の圧損配分とに基づいて前記圧損補正係数を算出することが好ましい。
(3)前記解析ステップでは、前記ブレードを含むファン領域でのスワール比を計算し、前記補正ステップでは、前記スワール比と前記軸流ファンの形状データとに基づいて前記二つの補正係数を算出することが好ましい。
(3)前記解析ステップでは、前記ブレードを含むファン領域でのスワール比を計算し、前記補正ステップでは、前記スワール比と前記軸流ファンの形状データとに基づいて前記二つの補正係数を算出することが好ましい。
(4)前記補正ステップでは、前記スワール比の関数で表現される前記ブレードの軸流投影面積比を用いて軸流成分の前記補正係数を算出することが好ましい。
(5)前記補正ステップでは、前記ブレードと旋回方向の流体粒子との衝突頻度を前記スワール比で線形近似することで旋回成分の前記補正係数を算出することが好ましい。
(5)前記補正ステップでは、前記ブレードと旋回方向の流体粒子との衝突頻度を前記スワール比で線形近似することで旋回成分の前記補正係数を算出することが好ましい。
(6)前記補正ステップでは、前記圧損に対する、前記軸流ファンの停止時における圧損の実測値の比率を、前記圧力配分として算出することが好ましい。
(7)前記算出ステップでは、前記ずれ量が前記所定値を超える場合に、前記PQカーブと、直近の二つの前記PQ点と、当該二つのPQ点を設定するために前記解析ステップで用いられた二つの前記入力値とに基づいて、前記入力値を変更することが好ましい。
(7)前記算出ステップでは、前記ずれ量が前記所定値を超える場合に、前記PQカーブと、直近の二つの前記PQ点と、当該二つのPQ点を設定するために前記解析ステップで用いられた二つの前記入力値とに基づいて、前記入力値を変更することが好ましい。
(8)ここで開示する軸流ファンの通風解析装置は、MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において、前記軸流ファンの実回転数に対応する通過風速と等価な計算上の通過風速を発生させる、演算上の仮想回転数を算出する処理を実行する装置である。本装置は、前記軸流ファンの回転数を入力値として前記CFD解析(数値流体力学解析)により前記軸流ファンの圧損及び風量を計算する解析部と、前記圧損に対する前記軸流ファンの作動時における実圧損の比率を表す圧損補正係数を算出して、前記圧損を前記圧損補正係数で補正する補正部と、補正後の圧損値と前記解析部で計算された前記風量とを前記軸流ファンのPQ特性マップ上における計算上のPQ点として設定する設定部と、前記PQ点と前記軸流ファンの所定回転数におけるPQカーブとのずれ量が所定値を超える場合に前記入力値を変更して前記解析部,前記補正部及び前記設定部の処理を再実施させ、前記ずれ量が前記所定値以下である場合に前記入力値を前記仮想回転数として算出する算出部と、を備える。すなわち、前記算出部は、前記ずれ量が前記所定値以下となるまで前記入力値を調整し、調整後の前記入力値を用いて前記解析部,前記補正部及び前記設定部の処理を再実施させ、前記ずれ量が前記所定値以下となったときの前記入力値を前記仮想回転数として算出する。
(9)前記補正部は、前記圧損を軸流成分と旋回成分とに分解した各成分の補正係数をモデル計算により算出し、二つの前記補正係数と所定の圧損配分とに基づいて前記圧損補正係数を算出することが好ましい。
(10)前記解析部は、前記ブレードを含むファン領域でのスワール比を計算し、前記補正部は、前記スワール比と予め設定された前記軸流ファンの形状データとに基づいて、前記二つの補正係数を算出することが好ましい。
(10)前記解析部は、前記ブレードを含むファン領域でのスワール比を計算し、前記補正部は、前記スワール比と予め設定された前記軸流ファンの形状データとに基づいて、前記二つの補正係数を算出することが好ましい。
(11)前記補正部は、前記スワール比の関数で表現される前記ブレードの軸流投影面積比を用いて軸流成分の前記補正係数を算出することが好ましい。
(12)前記補正部は、前記ブレードと旋回方向の流体粒子との衝突頻度を前記スワール比で線形近似することで旋回成分の前記補正係数を算出することが好ましい。
(12)前記補正部は、前記ブレードと旋回方向の流体粒子との衝突頻度を前記スワール比で線形近似することで旋回成分の前記補正係数を算出することが好ましい。
(13)前記補正部は、前記圧損に対する、予め設定された前記軸流ファンの停止時における軸流方向の圧損の実測値の比率を、前記圧力配分として算出することが好ましい。
(14)前記算出部は、前記ずれ量が前記所定値を超える場合に、前記PQカーブと、直近の二つの前記PQ点と、当該二つのPQ点を設定するために前記解析部で用いられた二つの前記入力値とに基づいて、前記入力値を変更することが好ましい。
(14)前記算出部は、前記ずれ量が前記所定値を超える場合に、前記PQカーブと、直近の二つの前記PQ点と、当該二つのPQ点を設定するために前記解析部で用いられた二つの前記入力値とに基づいて、前記入力値を変更することが好ましい。
(15)ここで開示する軸流ファンの通風解析プログラムは、MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において、前記軸流ファンの実回転数に対応する通過風速と等価な計算上の通過風速を発生させる演算上の仮想回転数を算出する処理を実行する通風解析プログラムであって、解析ステップと、補正ステップと、設定ステップと、算出ステップとをコンピュータに実行させるプログラムである。前記解析ステップでは、前記軸流ファンの回転数を入力値とする前記CFD解析(数値流体力学解析)により前記軸流ファンの圧損及び風量を計算する。前記補正ステップでは、前記圧損に対する前記軸流ファンの作動時における実圧損の比率を表す圧損補正係数を算出して、前記圧損を前記圧損補正係数で補正する。前記設定ステップでは、補正後の圧損値と計算された前記風量とを前記軸流ファンのPQ特性マップ上における計算上のPQ点として設定する。前記算出ステップでは、前記PQ点と前記軸流ファンの所定回転数におけるPQカーブとのずれ量が所定値を超える場合に前記入力値を変更して前記解析ステップ,前記補正ステップ及び前記設定ステップを再実施させ、前記ずれ量が前記所定値以下である場合に前記入力値を前記仮想回転数として算出する。
MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において、通過風速の実測値を用いることなく、過大評価される圧損を補正することができる。これにより、仮想回転数を入力値として与えて軸流ファンの通過風速を計算したときの結果(計算上の通過風速)を、所定回転数で軸流ファンを回転させたときの実現象(実際のファンの通過風速)に近付けることができる。したがって、軸流ファンが配置される空間内の熱流動場解析の精度を向上させることができる。
図面を参照して、実施形態としての軸流ファン(以下「ファン」という)の通風解析方法,通風解析装置及び通風解析プログラムについて説明する。以下に示す各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の各実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
[1.概要,解析モデル]
本実施形態に係るファンの通風解析方法,装置,プログラムは、MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において過大評価されるファンの圧損Pを補正するとともに、補正後の圧損値P′及び風量Q(体積流量)で決定されるPQ点がファンの所定回転数NaでのPQカーブに略一致するような、CFD解析の入力値を算出するものである。
本実施形態に係るファンの通風解析方法,装置,プログラムは、MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において過大評価されるファンの圧損Pを補正するとともに、補正後の圧損値P′及び風量Q(体積流量)で決定されるPQ点がファンの所定回転数NaでのPQカーブに略一致するような、CFD解析の入力値を算出するものである。
ここで算出される入力値(PQ点とPQカーブとが略一致したときの入力値)は、その後の熱流動場解析において、所定回転数Naに対応する通過風速をシミュレートするための入力値として、所定回転数Naの代わりに用いられる。つまり、ファンの通風解析は、本処理である熱流動場解析に先立って実施される前処理であり、CFD解析で計算されるファンの通過風速(計算値)を実際のファンの通過風速(実現象)に近付ける(計算値と実現象とのギャップを補正する)ために実施される。ここで、軸流ファンの実回転数に対応する通過風速と等価な計算上の通過風速を発生させる演算上の回転数のことを「仮想回転数」と呼ぶ。
通風解析では、MRFモデルを用いたCFD解析(第一工程)と、CFD解析で計算された圧損Pを補正するための補正計算(MRF補正計算,第二工程)と、CFD解析及びMRF補正計算で得られた結果を用いて仮想回転数または次回のCFD解析の入力値を算出するための計算(第三工程)とが実施される。
一方、熱流動場解析では、通風解析で算出された入力値、あるいはこの入力値に基づき計算されたファンの通過風速のほか、車速や温度情報等が初期条件,境界条件として設定され、熱流体解析が実施される。なお、熱流動場解析は、従来と同様の手法で実施されるため、詳細な説明を省略する。
一方、熱流動場解析では、通風解析で算出された入力値、あるいはこの入力値に基づき計算されたファンの通過風速のほか、車速や温度情報等が初期条件,境界条件として設定され、熱流体解析が実施される。なお、熱流動場解析は、従来と同様の手法で実施されるため、詳細な説明を省略する。
通風解析では、PQ点とPQカーブとのずれ量Gが所定値Gth以下(G≦Gth)のときに「PQ点とPQカーブとが略一致した」とみなされるものとする。ここでいう「ずれ量G」とは、ファンの圧損Pと風量Qとの関係を表すPQ特性マップ上における距離に相当する。本実施形態の通風解析では、PQ点とPQカーブとのずれ量Gが所定値Gth以下になるまでCFD解析の入力値が調整され、新たな入力値が与えられてCFD解析が実施される。そして、ずれ量Gが所定値Gth以下となる入力値が求められる。
MRFモデルを用いたCFD解析の入力値には、好ましくはファンの回転数Nf(またはこれに相当するパラメータ,例えばファンの駆動電流,駆動電圧,駆動周波数など)が用いられる。すなわち、本実施形態の通風解析では、G>Gthであるときにファンの回転数Nfが調整され、G≦Gthとなる回転数Nfが求められる。G≦Gthとなったときの回転数Nf(入力値)は、CFD解析の結果として得られる通過風速が、実際にファンを所定回転数Naで作動させたときの通過風速と略一致するときの回転数となる。以下、G≦Gthとなったときの回転数Nfのことを「仮想回転数Nv」と呼ぶ。例えば、所定回転数Naが2000[rpm]であるときのファンの通過風速と同一の通過風速を発生させる演算上の回転数が2450[rpm]であるとき、「2000[rpm]に対応する仮想回転数Nvは2450[rpm]である」という。別言すれば、仮想回転数Nvとは、CFD解析を含む通風解析を通じてG≦Gthが確認されたときに、そのCFD解析で入力値として用いられていた回転数Nfと同一の値に設定される。なお、所定回転数Naと仮想回転数Nvとの関係は、一対一に対応づけられるものとする。
仮想回転数Nvは、所定回転数Naに対応する計算上の回転数であり、通風解析後に実施される熱流動場解析において、所定回転数Naの代わりに入力値として用いられる。所定回転数Naは、例えば熱流動場解析で使用する通過風速を生成できるファンの実回転数に相当する値(例えば2000[rpm])に設定される。所定回転数Naは、一回の通風解析において一つの値が設定され、この所定回転数Naに対応する仮想回転数Nvが算出される。そのため、複数の所定回転数Naのそれぞれに対応する仮想回転数Nvを算出する場合には、所定回転数Na毎に通風解析を実施すればよい。つまり、熱流動場解析でシミュレートしたい通過風速が複数存在する場合には、それらの通過風速に対応する複数の所定回転数Naのそれぞれについて、仮想回転数Nvを求めておけばよい。
本実施形態の通風解析では、ラジエータのファン装置に組み込まれた軸流ファンを解析対象とする。このラジエータは車両のエンジンルーム内に配置されるものとする。つまり、熱流動場解析では、エンジンルーム内の流れ場や温度場が解析される。図1に、本実施形態の解析対象となる軸流ファン2(以下「ファン2」という)を備えたファン装置1を示す。
本実施形態のファン装置1は、同一の構成を有する二つのファン2がケーシング3に組み付けられて構成される。ファン2は、ハブ2Aの周面に取り付けられた複数のブレード2Bを備えた電動の羽根車であり、図示しない制御装置により制御される。ケーシング3は、厚みの小さい直方体状の外形を有し、ファン2が配置される二つの円筒状の貫通部4と、ファン2を支持するための支持部5とを備える。貫通部4は、ケーシング3を厚み方向に貫通した孔であり、ケーシング3の長手方向に並設される。支持部5は、ケーシング3と一体で形成された部位であり、ファン2のハブ2Aが軸支される円形部と、円形部から放射状に延設された複数のロッド部とを有する。なお、二つのファン2は同一の構成でなくてもよく、例えばファン径やブレード枚数が異なっていてもよい。
通風解析では、まず、解析対象となる物体の形状を再現したCADモデルが作成される。本実施形態のCFD解析ではMRFモデルが用いられることから、ファン2を含む領域(すなわち貫通部4)がファン領域として設定され、ファン領域の周囲の領域が周辺領域として設定される。ファン領域(回転領域)では、ファン2の周りの流れ場の計算を実施するために回転座標系が設定されるとともに、ファン2のハブ2A及びブレード2Bの形状がモデル化される。また、周辺領域(静止領域)では静止座標系が設定されるとともに、ケーシング3の形状がモデル化される。
次いで、モデル化された物体の形状及び周囲の空間(ファン領域の内部)のメッシュ(計算格子,セル)が作成され、物体の形状及び周囲の空間が離散化される。メッシュの形状,大きさ,個数(分割数),分割位置等は、コンピュータの解析処理能力や所望の解析精度などに応じて適宜設定される。複数のメッシュのそれぞれには様々な数値データが設定される。例えば、ブレード2Bに対応するメッシュには、メッシュの大きさや形状等を規定するためのパラメータが設定される。また、ファン領域の内部に対応するメッシュには、メッシュの大きさや形状等を規定するパラメータに加えて、回転速度及び回転方向(回転ソース)が設定される。すなわち、ブレード2Bは固定した状態とし、ブレード2Bの周辺の空気には回転ソースを与える。
[2.装置構成]
本実施形態の通風解析装置は、通風解析用のコンピュータプログラム17(通風解析プログラム)を実行可能な汎用のコンピュータによって実現される。図2は、コンピュータ10を用いて通風解析装置を構成する場合の概略構成図である。
本実施形態の通風解析装置は、通風解析用のコンピュータプログラム17(通風解析プログラム)を実行可能な汎用のコンピュータによって実現される。図2は、コンピュータ10を用いて通風解析装置を構成する場合の概略構成図である。
図2に示すように、コンピュータ10(通風解析装置)は、CPU11(Central Processing Unit),メモリ12〔Read Only Memory(ROM),Random Access Memory(RAM)等〕,外部記憶装置13〔Hard Disk Drive(HDD),Solid State Drive(SSD),光学ドライブ,フラッシュメモリ・リーダライター等〕,入力装置14(キーボード,マウス等),出力装置15(ディスプレイ,プリンター装置等)及び通信装置16(無線または有線の送受信装置)を備える。これらは、コンピュータ10の内部に設けられたバス18(制御バス,データバス等)を介して互いに通信可能に接続される。コンピュータプログラム17は、外部記憶装置13にインストールされる。
なお、光学ドライブ,フラッシュメモリ・リーダライター等で読み取り可能な記録媒体19にコンピュータプログラム17を記録しておいてもよい。あるいは、コンピュータ10が接続可能なネットワーク上のオンラインストレージにコンピュータプログラム17を記録しておいてもよい。いずれにしても、コンピュータプログラム17をコンピュータ10のHDD,SSD等にダウンロードすることで、あるいはCPU11,メモリ12に読み込むことで実行可能となる。
本実施形態のCPU11は、外部記憶装置13にインストールされたプログラムをメモリ12上に読み込んで実行し、計算結果を出力装置15に出力する。解析モデルとなるファン2を備えたファン装置1の形状は、例えば汎用の三次元CAD(Computer Aided Design)ソフトウェアで作成されたデータをコンピュータプログラム17に流用することによって、あるいは入力装置14からの入力によって設定される。また、通風解析に必要なデータは、入力装置14からの入力に基づいて、あるいは予め与えられた値として設定される。
通風解析に必要なデータには、ファン2の形状データ,ファン2のPQカーブが規定されたPQ特性マップ,ファン2の停止時における圧損の実測値(以下「実測圧損値Paoff」という),ファン2の初期回転数Nf1及び第二回転数Nf2,車速等が含まれる。形状データとしては、ファン領域の軸流方向投影面積AF,ブレード2Bの軸流方向投影面積Ab,ファン2の半径R,ファン領域の厚みd,ブレード2Bの枚数Mb,ファン2の個数Mfが挙げられる。ファン領域の軸流方向投影面積AFは、ファン領域をファン2の回転軸に沿う方向(軸流方向)に投影したときの面積であり、ブレード2Bの軸流方向投影面積Abは、ブレード2Bを同じく軸流方向に投影したときの面積である。ファン2の半径Rは、ファン2の回転軸中心からブレード2Bの外周縁までの長さであり、ファン領域の厚みdは、ファン領域における回転軸方向の長さである。また、ブレード2Bの枚数Mb,ファン2の個数Mfは、図1に示すファン装置1ではそれぞれがMb=7,Mf=2となる。なお、二つのファン2の構成が異なる場合には、ファン2毎に通風解析に必要なデータが設定される。
ファン2のPQカーブは、ファン2が有する「静圧(圧損)−風量特性」を表す線図(曲線)であり、回転数毎に異なる特性が予め与えられている。また、PQ特性マップとは、回転数毎に圧損(P)と風量(Q)との関係を曲線グラフで表現したものである。通風解析では、少なくとも所定回転数NaでのPQカーブが予め設定されたPQ特性マップが用いられる。また、実測圧損値Paoffは、ファン2をオフにした(回転を拘束した)状態で、ファン2の上流側から下流側へと風を強制的に流通させたときの圧損を実際に測定した値であり、容易に取得することができる。
ファン2の初期回転数Nf1は、通風解析で与える回転数Nf(入力値)の初期値であって、所定回転数Naと同一の値に設定される。ファン2の第二回転数Nf2は、初期回転数Nf1に所定値(例えば200[rpm])を加算した値に設定される。また、車速は、熱流動場解析で入力値として用いられる値に設定される。
通風解析を実施するコンピュータプログラム17の機能を図2中に模式的に示す。このコンピュータプログラム17には、解析部17a,補正部17b,設定部17c及び算出部17dが設けられる。なお、これらの各要素は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
解析部17aは、上述した解析モデルを設定するとともに、MRFモデルを用いたCFD解析を実施することでファン2の圧損P及び風量Qを計算するものである。具体的には、解析部17aは、図1のファン装置1に対してファン領域及び周辺領域を設定するとともに、各領域の物体形状及び周囲の空間のメッシュを作成することで解析モデルを設定する。次いで、複数のメッシュのそれぞれに対して様々な数値データを設定し、ファン2の回転数Nfを入力値として与えてCFD解析を繰り返し実施する。本実施形態の解析部17aは、一回目及び二回目のCFD解析では、予め設定された初期回転数Nf1及び第二回転数Nf2を入力値として用い、三回目以降のCFD解析では、後述の算出部17dから伝達される回転数Nfを入力値として用いる。このようにして、ファン2を回転数Nfで回転させたときの、計算上の圧損P及び風量Qが得られる。
解析部17aは、計算した風量Q(単位時間あたりの体積流量)をファン領域の軸流方向投影面積AFで除することで軸流方向の速度(軸流速度VA)を計算し、軸流速度VAに対する旋回速度VRの比率で表されるスワール比S(=VR/VA)を計算する。旋回速度VRは、ファン2の半径Rとファン2の角速度ωとの積で算出される。すなわち、解析部17aは、以下の式1に従ってファン領域でのスワール比Sを計算する。なお、ファン2の角速度ωは、回転数Nfに2πを乗ずることで計算される(ω=2π×Nf)。解析部17aは、計算した圧損P及び風量Qを設定部17cに伝達するとともに、計算したスワール比Sを補正部17bに伝達する。
補正部17bは、解析部17aで計算された圧損Pを補正するための圧損補正係数ηPを算出して、圧損Pを圧損補正係数ηPで補正するものである。MRFモデルを用いたCFD解析は、ブレード2Bを固定した状態で周囲の流体に回転ソースを与える計算方法であるため、流体とブレード2Bとの旋回方向の相対速度が過大評価され、計算される圧損Pも過大評価される。圧損補正係数ηPは、この過大評価された圧損Pを補正して、実際の圧損(実圧損)に近付けるための係数である。補正部17bは、圧損Pに圧損補正係数ηPを乗じることで圧損Pを補正し、補正後の圧損値P′(=ηP×P,以下「補正圧損値P′」という)を設定部17cに伝達する。
圧損補正係数ηPは、解析部17aで計算された圧損Pに対する、ファン2の作動時における実圧損の比率を意味する。したがって、ファン2が実際に作動したときの実圧損が既知であれば、圧損補正係数ηPを求めることができる。一方、本解析は実圧損が未知である場合にも実施されうる。そこで、補正部17bは、ファン2の作動時の実圧損を用いる代わりに、モデル計算によって圧力補正係数ηPを算出する。
本実施形態の補正部17bは、全体の圧損Pを軸流成分(軸流圧損PA)と旋回成分(旋回圧損PR)とに分解して、軸流成分の補正係数ξA(軸流補正係数ξA)及び旋回成分の補正係数ζR(旋回補正係数ζR)のそれぞれをモデル計算により算出する。そして、式2に示すように、二つの補正係数ξA,ζRと所定の圧損配分λAとに基づき、圧損補正係数ηPを算出する。
軸流補正係数ξAは、「補正前のCFD解析で得られた軸流圧損PA」に対する、「ファン2の作動時における実測された圧損Pの軸流成分」の比率を表す。一方、旋回補正係数ζRは、「ファン2の作動時における実測された圧損Pの旋回成分」に対する、「補正前のCFD解析で得られた旋回圧損PR」の比率を表す。
二つの補正係数ξA,ζRの算出方法について説明する。補正部17bは、スワール比Sとファン2の形状データとに基づいて軸流補正係数ξA及び旋回補正係数ζRを算出する。具体的には、補正部17bは、スワール比Sの関数で表現されるブレード2Bの軸流投影面積比を用いて軸流補正係数ξAを算出する。また、ブレード2Bと旋回方向の流体粒子との衝突頻度をスワール比Sで線形近似することで、旋回補正係数ζRを算出する。軸流補正係数ξA,旋回補正係数ζRの算出式のそれぞれを式3,式4に示す。何れの補正係数ξA,ζRも1以上の値となるように、算出された値が1を下回る場合には1でクリップされる。
次に、圧損配分λAの算出方法について説明する。圧損配分λAは、二つの補正係数ξA,ζRをどの程度の割合で圧損補正係数ηPに反映させるのか(圧損補正係数ηPに対する度合い)を決めるための係数である。圧損配分λAは、式5に示すように、全体の圧損Pに対する軸流圧損PAの比率を表す。一方、軸流圧損PAは、低車速域においてファンオフ時の圧損特性と一致する傾向にあるため、本実施形態では実測圧損値Paoffで近似する(PA≒Paoff)。また、圧損Pに対する実測圧損値Paoffの比率が1.0を超える場合には1.0でクリップする。すなわち補正部17bは、式6に示すように、解析部17aで計算された圧損Pに対する実測圧損値Paoffの比率を、圧損配分λAとして算出する。
設定部17cは、補正圧損値P′及び風量QをPQ特性マップ上における計算上のPQ点として設定するものである。このPQ点は、CFD解析により計算された圧損P及び風量Qの関係を示す点に関し、特に、圧損Pのみを圧損補正係数ηPで補正することで得られた補正圧損値P′及び風量Qの関係を示す点である。本実施形態の設定部17cは、図3(a)に示すように、横軸に風量,縦軸に圧損をとり、所定回転数NaにおけるPQカーブが設定されたPQ特性マップ上に、設定したPQ点〔すなわち座標(Q,P′)〕をプロットしてPQマップを作成する。設定部17cは、CFD解析が実施される毎にPQ点を設定する。このため、PQマップにはCFD解析の実施回数と同じ個数のPQ点がプロットされる。
図3(a)は、四つのPQ点(PQ1〜PQ4)がプロットされたPQマップの例である。PQの下付き添え字は、そのPQ点が何回目のCFD解析の結果に基づいて設定されたものであるのかを示す数であり、CFD解析の実施回数に対応する。例えば図中の「PQ1」は、一回目のCFD解析(すなわち初期回転数Nf1を入力値としたCFD解析)の結果に基づいて設定されたPQ点を示す。また、図中の破線で示す矢印はPQ点の変化を示すものである。
算出部17dは、設定部17cで設定されたPQ点と所定回転数NaにおけるPQカーブとのずれ量Gが所定値Gth以下となるような回転数Nf(入力値)を「仮想回転数Nv」として算出するものである。すなわち、算出部17dは、G≦Gthとなるまで回転数Nfを調整して、調整後の回転数Nfを次回の入力値として解析部17aに伝達することで、CFD解析を繰り返し実施させる(CFD解析,圧損補正,PQ点の設定を再実施させる)。そして、G≦Gthとなったときの回転数Nfを、仮想回転数Nvとして算出する。ずれ量Gは、PQ点からPQカーブまでの最短距離(G≧0)とされる。また、所定値Gthは、通風解析の精度及び時間(回数)を考慮して適宜設定される。例えば、「通風解析の精度」を「解析に要する時間(仮想回転数Nvが得られるまでの時間)」よりも重視する場合には、所定値Gthを0に近い小さな値にすればよい。
算出部17dは、設定部17cで作成されたPQマップを用いて、ずれ量Gが所定値Gth以下であるか否かを判定する。そして、G>Gthであれば次回のCFD解析で用いる回転数Nfを算出して解析部17aにその値を伝達し、G≦Gthであれば「そのときのPQ点の設定に用いられた回転数Nfが仮想回転数Nvである」と決定する。
本実施形態の算出部17dは、図3(b)に示すように、PQカーブの上方及び下方のそれぞれに所定値GthだけPQカーブを平行移動させた二本の判定線(図中一点鎖線)を設け、PQ点が二本の判定線の内側にあればG≦Gthであると判定し、外側にあればG>Gthであると判定する。図3(b)に示す例では、三回目のCFD解析で得られたPQ点(PQ3)が二本の判定線の外側に位置することから、算出部17dはこのPQ点(PQ3)の設定に用いられた回転数Nfを調整して次回のCFD解析で用いる回転数Nf(調整後の回転数)を算出する。一方、四回目のCFD解析で得られたPQ点(PQ4)は二本の判定線の内側にあることから、算出部17dは今回(四回目)のCFD解析で用いられた回転数Nfを仮想回転数Nvとして算出する。
G>Gthである場合の演算内容に関して、算出部17dは、PQカーブと、直近の二つのPQ点と、これら二つのPQ点を設定するために解析部17aで用いられた二つの回転数Nfとに基づいて、次回のCFD解析で用いる回転数Nf(調整後の回転数)を算出する。ここでいう「直近の二つのPQ点」とは、複数のPQ点がプロットされている場合に、直近の二回のCFD解析で得られたPQ点を意味する。すなわち、現在設定中のPQ点(以下「現在のPQ点」という)と、前回設定されたPQ点(以下「前回のPQ点」という)とが「直近の二つのPQ点」となる。
具体的には図4に示すように、算出部17dは、現在のPQ点(PQi)からPQカーブに対して水平線(X軸に平行な直線)及び垂直線(Y軸に平行な直線)を引き、これらの水平線,垂直線とPQカーブとの交点同士を直線で結ぶことでPQカーブを直線近似する。次いで、現在のPQ点(PQi)からこの直線に下ろした垂線の長さLと、直近の二つのPQ点(PQi,PQi-1)の座標に基づき、現在のPQ点と前回のPQ点との距離Dとを算出する。そして、距離Dに対する長さLの比率に、二つの回転数Nf(Nfi,Nfi-1)の差の絶対値を乗じることで、回転数Nfの調整量ΔNfを求める。
さらに、現在のPQ点(PQi)の位置が、PQカーブ(あるいはPQカーブを直線近似した直線)よりも下側か上側かを判断する。そして、解析部17aで用いられた今回の入力値(回転数Nfi)に対して、PQ点が下側であれば調整量ΔNfを加算し、PQ点が上側であれば調整量ΔNfを減算する。このようにして、算出部17dは次回のCFD解析で用いる入力値(回転数Nfi+1)を求める。調整後の回転数Nfの算出方法を数式で表すと、式7,8の通りとなる。式7はPQ点が下側にあるときの数式であり、式8はPQ点が上側にあるときの数式である。
つまり、現在のPQ点がPQカーブよりも下側にあれば(例えば図3中のPQ1,PQ2では)、次回の回転数Nfが増大方向に調整され、反対に、現在のPQ点がPQカーブよりも上側にあれば(例えば図3中のPQ3では)、次回の回転数Nfが減少方向に調整される。これにより、PQ点が徐々にPQカーブに近づいていく。PQ点がPQカーブの曲線上に対して十分に近づいたときの回転数Nfは、CFD解析において、所定回転数Naに対応する実際の通過風速がシミュレートされうる回転数となる。算出部17dはこの回転数を「所定回転数Naに対応する仮想回転数Nv」として算出し、その後の熱流動場解析で利用可能なデータとしてこれを外部記憶装置13内に記録する。
[3.フローチャート]
図5は、上記のコンピュータ10がコンピュータプログラム17を実行する際の手順(通風解析方法)を示すフローチャートである。
ステップT10は、初期設定のステップである。すなわち、ステップT10では、解析モデルとなるファン2を備えたファン装置1の元データと、通風解析に必要なデータとが用意され、あるいは外部記憶装置13や入力装置14等から入力される。例えば、ファン2の形状データ,所定回転数NaでのPQカーブが規定されたPQ特性マップ,ファン2の実測圧損値Paoff,初期回転数Nf1,第二回転数Nf2,車速等の値が作業者によって設定される。
図5は、上記のコンピュータ10がコンピュータプログラム17を実行する際の手順(通風解析方法)を示すフローチャートである。
ステップT10は、初期設定のステップである。すなわち、ステップT10では、解析モデルとなるファン2を備えたファン装置1の元データと、通風解析に必要なデータとが用意され、あるいは外部記憶装置13や入力装置14等から入力される。例えば、ファン2の形状データ,所定回転数NaでのPQカーブが規定されたPQ特性マップ,ファン2の実測圧損値Paoff,初期回転数Nf1,第二回転数Nf2,車速等の値が作業者によって設定される。
ステップT20,T22は、解析部17aにおいて実施される処理(解析ステップ)である。ステップT20では、前ステップで用意された元データに基づき、ファン装置1を模した解析モデルが設定される。続くステップT22では、回転数Nfを入力値としたCFD解析が実施され、ファン2の圧損P及び風量Qが計算されるとともに、風量Qからファン領域でのスワール比Sが計算される。なお、一回目及び二回目のCFD解析では、ステップT10で設定された初期回転数Nf1及び第二回転数Nf2のそれぞれが入力値として用いられる。図5に示すように、以上の三つの処理(ステップT10〜T22)が、通風解析における上述した第一工程(MRFモデルを用いたCFD解析)である。
ステップT30〜T38は、補正部17bにおいて実施される処理(補正ステップ)である。ステップT30では、スワール比Sで表現されるブレード2Bの軸流投影面積比を用いて軸流補正係数ξAが算出される。すなわち、ステップT20で計算されたスワール比SとステップT10で設定された形状データとが上記の式3に代入され、軸流補正係数ξAが算出される。続くステップT32では、ブレード2Bと旋回方向の流体粒子との衝突頻度をスワール比Sで線形近似することで旋回補正係数ζRが算出される。すなわち、ステップT20で計算されたスワール比SとステップT10で設定された形状データとが上記の式4に代入され、旋回補正係数ζRが算出される。
ステップT34では、ステップT22で計算された圧損PとステップT10で設定された実測圧損値Paoffとが上記の式6に代入され、圧損配分λAが算出される。続くステップT36では、ステップT30及び32で算出された二つの補正係数ξA,ζRとステップT34で算出された圧損配分λAとが上記の式2に代入され、圧損補正係数ηPが算出される。ステップT38では、前ステップで算出された圧損補正係数ηPとステップT22で計算された圧損Pとが乗算されて、補正圧損値P′が算出される。以上の五つの処理(ステップT30〜T38)が、通風解析における上述した第二工程(MRF補正計算)である。
ステップT40,T42は、設定部17cにおいて実施される処理(設定ステップ)である。ステップT40では、ステップT22で計算された風量Qと前ステップで算出された補正圧損値P′とが計算上のPQ点として設定される。これにより、例えば一回目のCFD解析では、図3(a)中における一番目のPQ点(PQ1)が算出される。続くステップT42では、ステップT10で設定されたPQ特性マップ上に、前ステップで設定されたPQ点がプロットされてPQマップが作成される。なお、PQカーブは所定回転数Naが変更されない限り同一であるため、再びステップT42が実行されたときは新たなPQ点のプロットのみが行われる。
ステップT50〜T54は、算出部17dにおいて実施される処理(算出ステップ)である。ステップT50では、PQ点とPQカーブとのずれ量Gが所定値Gth以下であるか否かが判定される。G>Gthであれば、ステップT52において次のCFD解析で用いられる回転数Nfが算出される。なお、二回目のCFD解析の入力値は第二回転数Nf2として設定されるため、初めてステップT52に進んだときは、ステップT10で設定された第二回転数Nf2が次回の回転数Nfに決定される。
二回目以降にステップT52に進んだときは、PQカーブと、直近の二つのPQ点と、これら二つのPQ点を設定するためにステップT22で用いられた二つの回転数Nfとに基づき、次回の回転数Nf(調整後の回転数)が算出される。そして、ステップT52からステップT22へ戻り、ステップT22からの処理が再び実施される。すなわち、ステップT52で算出された回転数Nfが次のCFD解析の入力値として解析部17aに伝達され、CFD解析が繰り返される。
ステップT50においてG≦Gthであると判定されると、ステップT54において、直前のステップT22で用いられた回転数Nfが仮想回転数Nvであると算出,決定され、仮想回転数Nvが外部記憶装置13に記録されるとともに、出力装置15から出力される。すなわち、G≦Gthとなった時点での回転数Nfが仮想回転数Nvとして算出,決定されるとともに出力されて、このフローを終了する。以上の五つの処理(ステップT40〜T54)が、通風解析における上述した第三工程である。
なお、熱流動場解析で複数の入力値が必要な場合には、ステップT10において新たな所定回転数NaでのPQカーブや初期回転数Nf1,第二回転数Nf2等が設定され、上述と同様の処理(ステップT20〜T54)が再び実施される。これにより、その後の熱流動場解析で利用可能な、複数の所定回転数Naに対応する仮想回転数Nvのデータが取得される。
[4.作用,効果]
図6は、ラジエータを通過する風速を計算(シミュレーション)したときの精度を車速毎に比較して示すグラフである。縦軸の精度は、ラジエータの通過風速を実際に測定した実測値に対する、実測値と計算値との差の割合を表すものであり、実測値と計算値とが一致したとき(すなわち0[%])が最も精度が高い。シミュレーションは、アイドリング状態,低車速状態,中車速状態の三つの状態について実施した。
図6は、ラジエータを通過する風速を計算(シミュレーション)したときの精度を車速毎に比較して示すグラフである。縦軸の精度は、ラジエータの通過風速を実際に測定した実測値に対する、実測値と計算値との差の割合を表すものであり、実測値と計算値とが一致したとき(すなわち0[%])が最も精度が高い。シミュレーションは、アイドリング状態,低車速状態,中車速状態の三つの状態について実施した。
図中の各車速状態における三種類の棒グラフのうち、右側の棒グラフ(MRF補正計算後)は、上述の通風解析により取得した仮想回転数Nvを入力値として求めた通過風速の精度である。一方、左側の棒グラフ(従来技術)は、ファン2の通過風速の実測値を用いた従来の手法により取得した回転数を入力値として求めた通過風速の精度である。また、中央の棒グラフ(MRF補正計算前)は、上述の解析部17aで計算された風速Qから求めた通過風速(すなわち軸流速度VA)の精度である。
図6に示すように、上述の通風解析により取得した仮想回転数Nvを入力値とすることで、ラジエータの通過風速の計算精度が向上する。特に、アイドリング状態及び低車速状態では、中央の棒グラフと比較すると、上述の通風解析を実施することで計算精度が格段に向上していることがわかる。これは、CFD解析において過大評価される圧損Pが適切に補正されていることを意味する。また、上述の通風解析を実施することで、ファン2の通過風速の実測値を用いなくても、従来の手法と同程度の計算精度が得られる。
(1)上述の通風解析方法,通風解析装置10及び通風解析プログラム17によれば、通過風速の実測値の代わりにPQカーブを用いることで、過大評価される圧損Pを補正することができる。また、圧損補正係数ηPの値が圧損Pに対するファン2の作動時における実圧損の比率として算出されるため、MRFモデルを用いたCFD解析で過大評価された圧損Pの大きさを適正化するための係数を精度よく求めることができる。これにより、仮想回転数Nvを入力値としてファン2の通過風速を計算したときの結果(計算上の通過風速)を、所定回転数Naでファン2を回転させたときの実現象(実際の通過風速)に近付けることができる。このため、ファン2が配置される空間内(例えばエンジンルーム内)の熱流動場解析において、所定回転数Naの代わりに仮想回転数Nvを用いれば、所定回転数Naでファン2を回転させたときの通過風速と同程度の通過風速を与えたことになるため、熱流動場解析の精度を向上させることができる。
また、算出部17dでは、ずれ量Gが所定値Gth以下となるまで回転数Nfを調整し、調整後の回転数Nfを解析部17aへと伝達してCFD解析からやり直させる。そして、ずれ量Gが所定値Gth以下となったときの回転数Nfを仮想回転数Nvとして算出する。このように、回転数Nfを調整しながらCFD解析を繰り返すことで、PQカーブに対してPQ点を着実に近づけていくことができる。これにより、通過風速の実測値を用いることなく、所定回転数Naに対応する仮想回転数Nvを求めることができ、熱流動場解析の精度を高めることができる。
(2)補正部17bでは、圧損Pを二つの成分に分け、各成分の補正係数ξA,ζRがモデル計算により算出される。そして、これらの補正係数ξA,ζRと圧損配分λAとに基づき圧損補正係数ηPが算出され、圧損Pが補正される。これにより、圧損補正係数ηPの算出精度が向上することになり、圧損Pの補正精度を高めることができ、ひいては熱流動場解析の精度を向上させることができる。
(3)さらに、二つの補正係数ξA,ζRは、スワール比S(=旋回速度VR/軸流速度VA)とファン2の形状データとに基づいて算出されることから、ファン2の作動状態に応じた圧損補正係数ηPを算出することができる。これにより、圧損Pの補正精度をより高めることができ、ひいては熱流動場解析の精度をより向上させることができる。
(3)さらに、二つの補正係数ξA,ζRは、スワール比S(=旋回速度VR/軸流速度VA)とファン2の形状データとに基づいて算出されることから、ファン2の作動状態に応じた圧損補正係数ηPを算出することができる。これにより、圧損Pの補正精度をより高めることができ、ひいては熱流動場解析の精度をより向上させることができる。
(4)MRFモデルを用いたCFD解析では、実際には回転するファン2のブレード2Bを固定した状態で計算することから、軸流方向の投影面積比に違いが生じ、計算上の軸流圧損が過小評価されうる。これに対し、上述の通風解析では、スワール比Sの関数で表現されるブレード2Bの軸流投影面積比に、ブレード2Bが回転することによる掃引面積の影響を加味して軸流補正係数ξAをモデル化した。このため、流体だけでなくブレード2Bの回転効果も簡易的に計算できるとともに、ファン2の作動状態に応じた圧損補正係数ηPを簡単に算出することができる。これにより、圧損Pの補正精度をより高めることができ、ひいては熱流動場解析の精度をより向上させることができる。
(5)また、MRFモデルを用いたCFD解析では、実際には回転するファン2のブレード2Bを固定した状態で計算することから、旋回方向のブレード2Bと流体との間における衝突頻度に違いが生じ、計算上の旋回圧損が過大評価されうる。これに対し、上述の通風解析では、ブレード2Bと旋回方向の流体粒子との衝突頻度にブレード2Bが回転することによる低減効果を加味し、衝突頻度をスワール比Sで線形近似した旋回補正係数ζRをモデル化した。このため、流体だけでなくブレード2Bの回転効果も簡易的に計算できるとともに、ファン2の作動状態に応じた圧損補正係数ηPを簡単に算出することができる。これにより、圧損Pの補正精度をより高めることができ、ひいては熱流動場解析の精度をより向上させることができる。
(6)補正部17bでは、圧損Pに対する実測圧損値Paoff(ファンオフ時の圧損の実測値)の比率が圧損配分λAとして算出される。実測圧損値Paoffは、ファン2の実際の通過風速を測定する場合と比較して容易に測定,取得できることから、圧損配分λAを簡単に算出することができる。これにより、ファン2をオフにした状態で実測された実測圧損値Paoffが反映された圧損補正係数ηPを用いて圧損Pを補正することが可能となり、圧損Pの補正を高い精度で簡単に実施することができる。
(7)調整後の回転数Nfは、PQカーブと、直近の二つのPQ点と、これら二つのPQ点を設定するためにCFD解析で用いられた二つの入力値(回転数Nf)とに基づいて算出される。このように、直近の情報に基づき次回のCFD解析の入力値となる回転数Nfを算出することで、PQ点をPQカーブに速やかに近づけていくことができ、通風解析の収束性を高めることができる。
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の通風解析では、圧損補正係数ηPを、二つの補正係数ξA,ζRと圧損配分λAとから求めているが、圧損補正係数ηP,二つの補正係数ξA,ζRと,圧損配分λAのそれぞれの求め方は上述した方法に限られない。例えば何れかの係数を予め設定された固定値としてもよいし、スワール比S以外の関数で表現される数式を用いて二つの補正係数ξA,ζRをモデル化(算出)してもよい。
なお、上述の実施形態では、解析対象としてファン2を例示したが、解析対象は軸流ファンであればよく、エンジンルーム内に配置されるラジエータのファン装置1に限られない。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の通風解析では、圧損補正係数ηPを、二つの補正係数ξA,ζRと圧損配分λAとから求めているが、圧損補正係数ηP,二つの補正係数ξA,ζRと,圧損配分λAのそれぞれの求め方は上述した方法に限られない。例えば何れかの係数を予め設定された固定値としてもよいし、スワール比S以外の関数で表現される数式を用いて二つの補正係数ξA,ζRをモデル化(算出)してもよい。
なお、上述の実施形態では、解析対象としてファン2を例示したが、解析対象は軸流ファンであればよく、エンジンルーム内に配置されるラジエータのファン装置1に限られない。
1 ファン装置
2 ファン(軸流ファン)
2B ブレード
10 コンピュータ(通風解析装置)
17 コンピュータプログラム(通風解析プログラム)
17a 解析部
17b 補正部
17c 設定部
17d 算出部
ηP 圧損補正係数
ξA 軸流補正係数(軸流成分の補正係数)
ζR 旋回補正係数(旋回成分の補正係数)
λA 圧損配分
P 圧損
PA 軸流圧損(軸流成分の圧損)
PR 旋回圧損(旋回成分の圧損)
Paoff 実測圧損値
P′ 補正圧損値(補正後の圧損値)
Q 風量
S スワール比
Na 所定回転数
Nf ファンの回転数,入力値
Nv 仮想回転数
2 ファン(軸流ファン)
2B ブレード
10 コンピュータ(通風解析装置)
17 コンピュータプログラム(通風解析プログラム)
17a 解析部
17b 補正部
17c 設定部
17d 算出部
ηP 圧損補正係数
ξA 軸流補正係数(軸流成分の補正係数)
ζR 旋回補正係数(旋回成分の補正係数)
λA 圧損配分
P 圧損
PA 軸流圧損(軸流成分の圧損)
PR 旋回圧損(旋回成分の圧損)
Paoff 実測圧損値
P′ 補正圧損値(補正後の圧損値)
Q 風量
S スワール比
Na 所定回転数
Nf ファンの回転数,入力値
Nv 仮想回転数
Claims (15)
- MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において、前記軸流ファンの実回転数に対応する通過風速と等価な計算上の通過風速を発生させる演算上の仮想回転数を算出する処理をコンピュータに実行させる通風解析方法であって、
前記軸流ファンの回転数を入力値とする前記CFD解析により前記軸流ファンの圧損及び風量を計算する解析ステップと、
前記圧損に対する前記軸流ファンの作動時における実圧損の比率を表す圧損補正係数を算出して、前記圧損を前記圧損補正係数で補正する補正ステップと、
補正後の圧損値と前記風量とを前記軸流ファンのPQ特性マップ上における計算上のPQ点として設定する設定ステップと、
前記PQ点と前記軸流ファンの所定回転数におけるPQカーブとのずれ量が所定値を超える場合に前記入力値を変更して前記解析ステップ,前記補正ステップ及び前記設定ステップを再実施させ、前記ずれ量が前記所定値以下である場合に前記入力値を前記仮想回転数として算出する算出ステップと、
を備えたことを特徴とする、軸流ファンの通風解析方法。 - 前記補正ステップでは、前記圧損を軸流成分と旋回成分とに分解した各成分の補正係数をモデル計算により算出し、二つの前記補正係数と所定の圧損配分とに基づいて前記圧損補正係数を算出する
ことを特徴とする、請求項1記載の軸流ファンの通風解析方法。 - 前記解析ステップでは、前記ブレードを含むファン領域でのスワール比を計算し、
前記補正ステップでは、前記スワール比と前記軸流ファンの形状データとに基づいて前記二つの補正係数を算出する
ことを特徴とする、請求項2記載の軸流ファンの通風解析方法。 - 前記補正ステップでは、前記スワール比の関数で表現される前記ブレードの軸流投影面積比を用いて軸流成分の前記補正係数を算出する
ことを特徴とする、請求項3記載の軸流ファンの通風解析方法。 - 前記補正ステップでは、前記ブレードと旋回方向の流体粒子との衝突頻度を前記スワール比で線形近似することで旋回成分の前記補正係数を算出する
ことを特徴とする、請求項3又は4記載の軸流ファンの通風解析方法。 - 前記補正ステップでは、前記圧損に対する、前記軸流ファンの停止時における圧損の実測値の比率を、前記圧力配分として算出する
ことを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載の軸流ファンの通風解析方法。 - 前記算出ステップでは、前記ずれ量が前記所定値を超える場合に、前記PQカーブと、直近の二つの前記PQ点と、当該二つのPQ点を設定するために前記解析ステップで用いられた二つの前記入力値とに基づいて、前記入力値を変更する
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の軸流ファンの通風解析方法。 - MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において、前記軸流ファンの実回転数に対応する通過風速と等価な計算上の通過風速を発生させる、演算上の仮想回転数を算出する処理を実行する通風解析装置であって、
前記軸流ファンの回転数を入力値として前記CFD解析により前記軸流ファンの圧損及び風量を計算する解析部と、
前記圧損に対する前記軸流ファンの作動時における実圧損の比率を表す圧損補正係数を算出して、前記圧損を前記圧損補正係数で補正する補正部と、
補正後の圧損値と前記解析部で計算された前記風量とを前記軸流ファンのPQ特性マップ上における計算上のPQ点として設定する設定部と、
前記PQ点と前記軸流ファンの所定回転数におけるPQカーブとのずれ量が所定値を超える場合に前記入力値を変更して前記解析部,前記補正部及び前記設定部の処理を再実施させ、前記ずれ量が前記所定値以下である場合に前記入力値を前記仮想回転数として算出する算出部と、
を備えたことを特徴とする、軸流ファンの通風解析装置。 - 前記補正部は、前記圧損を軸流成分と旋回成分とに分解した各成分の補正係数をモデル計算により算出し、二つの前記補正係数と所定の圧損配分とに基づいて前記圧損補正係数を算出する
ことを特徴とする、請求項8記載の軸流ファンの通風解析装置。 - 前記解析部は、前記ブレードを含むファン領域でのスワール比を計算し、
前記補正部は、前記スワール比と予め設定された前記軸流ファンの形状データとに基づいて、前記二つの補正係数を算出する
ことを特徴とする、請求項9記載の軸流ファンの通風解析装置。 - 前記補正部は、前記スワール比の関数で表現される前記ブレードの軸流投影面積比を用いて軸流成分の前記補正係数を算出する
ことを特徴とする、請求項10記載の軸流ファンの通風解析装置。 - 前記補正部は、前記ブレードと旋回方向の流体粒子との衝突頻度を前記スワール比で線形近似することで旋回成分の前記補正係数を算出する
ことを特徴とする、請求項10又は11記載の軸流ファンの通風解析装置。 - 前記補正部は、前記圧損に対する、予め設定された前記軸流ファンの停止時における軸流方向の圧損の実測値の比率を、前記圧力配分として算出する
ことを特徴とする、請求項9〜12の何れか1項に記載の軸流ファンの通風解析装置。 - 前記算出部は、前記ずれ量が前記所定値を超える場合に、前記PQカーブと、直近の二つの前記PQ点と、当該二つのPQ点を設定するために前記解析部で用いられた二つの前記入力値とに基づいて、前記入力値を変更する
ことを特徴とする、請求項9〜13の何れか1項に記載の軸流ファンの通風解析装置。 - MRFモデルをファンモデルとした軸流ファンのCFD解析において、前記軸流ファンの実回転数に対応する通過風速と等価な計算上の通過風速を発生させる演算上の仮想回転数を算出する処理を実行する通風解析プログラムであって、
前記軸流ファンの回転数を入力値とする前記CFD解析により前記軸流ファンの圧損及び風量を計算する解析ステップと、
前記圧損に対する前記軸流ファンの作動時における実圧損の比率を表す圧損補正係数を算出して、前記圧損を前記圧損補正係数で補正する補正ステップと、
補正後の圧損値と計算された前記風量とを前記軸流ファンのPQ特性マップ上における計算上のPQ点として設定する設定ステップと、
前記PQ点と前記軸流ファンの所定回転数におけるPQカーブとのずれ量が所定値を超える場合に前記入力値を変更して前記解析ステップ,前記補正ステップ及び前記設定ステップを再実施させ、前記ずれ量が前記所定値以下である場合に前記入力値を前記仮想回転数として算出する算出ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする、軸流ファンの通風解析プログラム。
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- 2015-09-25 JP JP2015187972A patent/JP2017062676A/ja active Pending
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