最初に、図1を参照し、本発明の実施例に係る建設機械としてのショベル(掘削機)について説明する。なお、図1は、本発明の実施例に係るショベルの側面図である。図1に示すショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられる。作業要素としてのブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成する。なお、アタッチメントは、床堀アタッチメント、均しアタッチメント、浚渫アタッチメント等の他のアタッチメントであってもよい。また、ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3にはキャビン10が設けられ、エンジン11等の動力源が搭載される。また、上部旋回体3には通信装置M1、測位装置M2、及び姿勢検出装置M3が取り付けられる。
通信装置M1は、ショベルと外部との間の通信を制御する装置である。本実施例では、通信装置M1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)測量システムとショベルとの間の無線通信を制御する。具体的には、通信装置M1は、例えば1日1回の頻度で、ショベルの作業を開始する際に作業現場の地形情報を取得する。GNSS測量システムは、例えばネットワーク型RTK−GNSS測位方式を採用する。
測位装置M2は、ショベルの位置及び向きを測定する装置である。本実施例では、測位装置M2は、電子コンパスを組み込んだGNSS受信機であり、ショベルの存在位置の緯度、経度、高度を測定し、且つ、ショベルの向きを測定する。
姿勢検出装置M3は、アタッチメントの姿勢を検出する装置である。本実施例では、姿勢検出装置M3は、掘削アタッチメントの姿勢を検出する装置である。
図2は、図1のショベルに搭載される姿勢検出装置M3を構成する各種センサの出力内容の一例を示すショベルの側面図である。具体的には、姿勢検出装置M3は、ブーム角度センサM3a、アーム角度センサM3b、バケット角度センサM3c、及び車体傾斜センサM3dを含む。
ブーム角度センサM3aは、ブーム角度を取得するセンサであり、例えば、ブームフートピンの回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量を検出するストロークセンサ、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。ブーム角度センサM3aは、例えば、ブーム角度としてブーム角度θ1及びブーム角度αを取得する。ブーム角度θ1は、XZ平面において、ブームフートピン位置P1とアーム連結ピン位置P2とを結ぶ線分P1−P2の水平線に対する角度である。また、ブーム角度αは、線分P1−P2のブーム基準線L1に対する角度である。ブーム基準線L1は、ブームシリンダ7を収縮側ストロークエンドまで収縮させたときの線分P1−P2に対応する線分である。
アーム角度センサM3bは、アーム角度を取得するセンサであり、例えば、アーム連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、アームシリンダ8のストローク量を検出するストロークセンサ、アーム5の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。アーム角度センサM3bは、例えば、アーム角度としてアーム角度θ2及びアーム角度βを取得する。アーム角度θ2は、XZ平面において、アーム連結ピン位置P2とバケット連結ピン位置P3とを結ぶ線分P2−P3の水平線に対する角度である。また、アーム角度βは、線分P2−P3のアーム基準線L2に対する角度である。アーム基準線L2は、アームシリンダ8を伸張側ストロークエンドまで伸張させたときの線分P2−P3に対応する線分である。
バケット角度センサM3cは、バケット角度を取得するセンサであり、例えば、バケット連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、バケットシリンダ9のストローク量を検出するストロークセンサ、バケット6の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。バケット角度センサM3cは、例えば、バケット角度としてバケット角度θ3を取得する。バケット角度θ3は、XZ平面において、バケット連結ピン位置P3とバケット爪先位置P4とを結ぶ線分P3−P4の水平線に対する角度である。
車体傾斜センサM3dは、ショベルのY軸回りの傾斜角θ4、及び、ショベルのX軸回りの傾斜角θ5(図示せず。)を取得するセンサであり、例えば2軸傾斜(加速度)センサ等を含む。なお、図2のXY平面は水平面である。
次に、図3を参照してショベルの基本システムについて説明する。ショベルの基本システムは、主に、エンジン11、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、コントローラ30、及びエンジン制御装置(ECU)74等を含む。
エンジン11はショベルの駆動源であり、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸はメインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に接続される。
メインポンプ14は、高圧油圧ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給する油圧ポンプであり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。メインポンプ14は、斜板の角度(傾転角)を変更することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量、すなわち、ポンプ出力を変化させることができる。メインポンプ14の斜板は、レギュレータ14aにより制御される。レギュレータ14aは、電磁比例弁(不図示)に対する制御電流の変化に応じて斜板の傾転角を変化させる。例えば、制御電流の増加に応じ、レギュレータ14aは、斜板の傾転角を大きくして、メインポンプ14の吐出流量を多くする。また、制御電流の減少に応じ、レギュレータ14aは、斜板の傾転角を小さくして、メインポンプ14の吐出流量を少なくする。
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して各種油圧制御機器に作動油を供給するための油圧ポンプであり、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、油圧システムを制御する油圧制御バルブである。コントロールバルブ17は、後述するレバー又はペダル26A〜26Cの操作方向及び操作量に対応する圧力の変化に応じ、例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aのうちの一又は複数のものに対し、メインポンプ14から高圧油圧ライン16を通じて供給された作動油を選択的に供給する。なお、以下の説明では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aを集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、パイロットライン25を介してパイロットポンプ15から作動油の供給を受ける。そして、パイロットライン25aを通じて、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁のパイロットポートにその作動油を供給する。なお、パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応するレバー又はペダル26A〜26Cの操作方向及び操作量に対応する圧力とされる。
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置であり、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータで構成される。コントローラ30のCPUは、ショベルの動作や機能に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし且つ実行することで、それらプログラムのそれぞれに対応する処理を実行させる。
具体的には、コントローラ30は、メインポンプ14の吐出流量の制御を行う。例えば、ネガコン弁(不図示)のネガコン圧に応じて上記制御電流を変化させ、レギュレータ14aを介してメインポンプ14の吐出流量を制御する。
エンジン制御装置(ECU)74は、エンジン11を制御する装置である。エンジン制御装置(ECU)74は、例えば、コントローラ30からの指令に基づき、エンジン回転数調整ダイヤル75により操作者が設定したエンジン回転数(モード)に応じてエンジン11の回転数を制御するための燃料噴射量等をエンジン11に出力する。
エンジン回転数調整ダイヤル75は、キャビン10内に設けられる、エンジン回転数を調整するためのダイヤルであり、本実施例では、Rmax、R4、R3、R2及びR1の5段階でエンジン回転数を切り換えることができる。なお、図4は、エンジン回転数調整ダイヤル75でR4が選択された状態を示す。
Rmaxは、エンジン11の最高回転数であり、作業量を優先したい場合に選択される。R4は、二番目に高いエンジン回転数であり、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される。R3及びR2は、三番目及び四番目に高いエンジン回転数であり、燃費を優先させながら低騒音でショベルを稼働させたい場合に選択される。R1は、最も低いエンジン回転数(アイドリング回転数)であり、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択されるアイドリングモードにおけるエンジン回転数である。例えば、Rmax(最高回転数)を2000rpm、R1(アイドリング回転数)を1000rpmとし、その間を250rpm毎に、R4(1750rpm)、R3(1500rpm)、R2(1250rpm)と多段階に設定してよい。そして、エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定されたエンジン回転数で一定に回転数制御される。なお、ここでは、エンジン回転数調整ダイヤル75による5段階でのエンジン回転数調整の事例を示したが、5段階には限られず何段階であってもよい。
また、ショベルには、操作者による操作を補助するために画像表示装置40をキャビン10の運転席の近傍に配置する。操作者は画像表示装置40の入力部42を利用して情報や指令をコントローラ30に入力できる。また、ショベルの運転状況や制御情報を画像表示装置40の画像表示部41に表示させることで、操作者に情報を提供できる。
画像表示装置40は、画像表示部41及び入力部42を含む。画像表示装置40は、運転席内のコンソールに固定される。一般的に、運転席に着座した操作者からみて右側にブーム4が配置されており、操作者はブーム4の先端に取り付けられたアーム5、バケット6を視認しながらショベルを操作することが多い。キャビン10の右側前方のフレームは操作者の視界の妨げとなる部分であるが、本実施例では、この部分を利用して画像表示装置40を設けている。これにより、もともと視界の妨げとなっていた部分に画像表示装置40が配置されるので、画像表示装置40自体が操作者の視界を大きく妨げることは無い。フレームの幅にもよるが、画像表示装置40全体がフレームの幅に入るように、画像表示装置40は、画像表示部41が縦長となるように構成されてもよい。
本実施例では、画像表示装置40は、CAN、LIN等の通信ネットワークを介してコントローラ30に接続される。なお、画像表示装置40は、専用線を介してコントローラ30に接続されてもよい。
また、画像表示装置40は、画像表示部41上に表示する画像を生成する変換処理部40aを含む。本実施例では、変換処理部40aは、ショベルに取り付けられた撮像装置M5の出力に基づいて画像表示部41上に表示するカメラ画像を生成する。そのため、撮像装置M5は、例えば専用線を介して画像表示装置40に接続される。また、変換処理部40aは、コントローラ30の出力に基づいて画像表示部41上に表示する画像を生成する。
なお、変換処理部40aは、画像表示装置40が有する機能としてではなく、コントローラ30が有する機能として実現されてもよい。この場合、撮像装置M5は、画像表示装置40ではなく、コントローラ30に接続される。
また、画像表示装置40は、入力部42としてのスイッチパネルを含む。スイッチパネルは、各種ハードウェアスイッチを含むパネルである。本実施例では、スイッチパネルは、ハードウェアボタンとしてのライトスイッチ42a、ワイパースイッチ42b、及びウインドウォッシャスイッチ42cを含む。ライトスイッチ42aは、キャビン10の外部に取り付けられるライトの点灯・消灯を切り換えるためのスイッチである。ワイパースイッチ42bは、ワイパーの作動・停止を切り換えるためのスイッチである。また、ウインドウォッシャスイッチ42cは、ウインドウォッシャ液を噴射するためのスイッチである。
また、画像表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。蓄電池70はオルタネータ11a(発電機)で発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30及び画像表示装置40以外のショベルの電装品72等にも供給される。また、エンジン11のスタータ11bは、蓄電池70からの電力で駆動され、エンジン11を始動する。
エンジン11は、上述のとおり、エンジン制御装置(ECU)74により制御される。ECU74からは、エンジン11の状態を示す各種データ(例えば、水温センサ11cで検出される冷却水温(物理量)を示すデータ)がコントローラ30に常時送信される。したがって、コントローラ30は一時記憶部(メモリ)30aにこのデータを蓄積しておき、必要なときに画像表示装置40に送信できる。
また、コントローラ30には以下のように各種のデータが供給され、コントローラ30の一時記憶部30aに格納される。
まず、レギュレータ14aから斜板の傾転角を示すデータがコントローラ30に供給される。また、メインポンプ14の吐出圧力を示すデータが、吐出圧力センサ14bからコントローラ30に送られる。これらのデータ(物理量を表すデータ)は一時記憶部30aに格納される。また、メインポンプ14が吸入する作動油が貯蔵されたタンクとメインポンプ14との間の管路には、油温センサ14cが設けられており、その管路を流れる作動油の温度を表すデータが、油温センサ14cからコントローラ30に供給される。
また、レバー又はペダル26A〜26Cを操作した際に、パイロットライン25aを通じてコントロールバルブ17に送られるパイロット圧が、油圧センサ15a、15bで検出され、検出したパイロット圧を示すデータがコントローラ30に供給される。
また、エンジン回転数調整ダイヤル75からは、エンジン回転数の設定状態を示すデータがコントローラ30に常時送信される。
外部演算装置30Eは、通信装置M1、測位装置M2、姿勢検出装置M3、撮像装置M5等の出力に基づいて各種演算を行い、演算結果をコントローラ30に対して出力する制御装置である。本実施例では、外部演算装置30Eは蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。
図4は、図1のショベルに搭載される駆動系の構成例を示す図であり、機械的動力伝達ライン、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御ラインをそれぞれ二重線、実線、破線、及び点線で示す。
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、メインポンプ14L、14R、吐出量調整装置14aL、14aR、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、操作内容検出装置29、コントローラ30、外部演算装置30E、及びパイロット圧調整装置50を含む。
コントロールバルブ17は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れを制御する流量制御弁171〜176を含む。そして、コントロールバルブ17は、流量制御弁171〜176を通じ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aのうちの1又は複数のものに対しメインポンプ14L、14Rが吐出する作動油を選択的に供給する。
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施例では、操作装置26は、パイロットライン25を通じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁のパイロットポートに供給する。
操作内容検出装置29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する装置である。本実施例では、操作内容検出装置29は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。なお、操作装置26の操作内容は、ポテンショメータ等、圧力センサ以外の他のセンサの出力を用いて導き出されてもよい。
エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rは、センターバイパス管路40L、40Rのそれぞれを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁171、173、及び175を通る高圧油圧ラインであり、センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁172、174、及び176を通る高圧油圧ラインである。
流量制御弁171、172、173は、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、旋回用油圧モータ2Aに流出入する作動油の流量及び流れ方向を制御するスプール弁である。
また、流量制御弁174、175、176は、バケットシリンダ9、アームシリンダ8、ブームシリンダ7に流出入する作動油の流量及び流れ方向を制御するスプール弁である。
吐出量調整装置14aL、14aRは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を調整する機能要素である。本実施例では、吐出量調整装置14aLはレギュレータであり、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14Lの斜板傾転角を増減させてメインポンプ14Lの押し退け容積を増減させることでメインポンプ14Lの吐出量を調整する。具体的には、吐出量調整装置14aLは、コントローラ30が出力する制御電流が大きくなるにつれて斜板傾転角を増大させて押し退け容積を増大させることでメインポンプ14Lの吐出量を増大させる。吐出量調整装置14aRによるメインポンプ14Rの吐出量の調整についても同様である。
パイロット圧調整装置50は、流量制御弁171〜176のそれぞれのパイロットポートに供給されるパイロット圧を調整する機能要素である。本実施例では、パイロット圧調整装置50は、コントローラ30が出力する制御電流に応じ、操作装置26が生成するパイロット圧を増減させる減圧弁である。この構成により、パイロット圧調整装置50は、操作者によるレバー又はペダルの操作量を強制的に増減させることができる。
次に、図5を参照して外部演算装置30Eの機能について説明する。なお、図5は、外部演算装置30Eの構成例を示す機能ブロック図である。本実施例では、外部演算装置30Eは、通信装置M1、測位装置M2、姿勢検出装置M3の出力を受けて各種演算を実行し、その演算結果をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、例えば、その演算結果に応じた制御指令を動作制限部E1に対して出力する。
動作制限部E1はアタッチメントの動きを制限するための機能要素であり、例えば、パイロット圧調整装置50、吐出量調整装置14aL、14aR、流量制御弁171〜176等を含む。流量制御弁171〜176が電気信号に応じて動作する構成である場合、コントローラ30は、流量制御弁171〜176に電気信号を直接的に送信する。
また、動作制限部E1は、ショベルの操作者に対して警告を出力する警告出力装置を含んでいてもよい。警告出力装置は、例えば、音声出力装置、警告ランプ等を含む。
具体的には、外部演算装置30Eは、主に、地形データベース更新部31、位置座標更新部32、地面形状情報取得部33、及び作業反力導出部34を含む。
地形データベース更新部31は、作業現場の地形情報を参照可能に体系的に記憶する地形データベースを更新する機能要素である。本実施例では、地形データベース更新部31は、例えばショベルの起動時に通信装置M1を通じて作業現場の地形情報を取得して地形データベースを更新する。地形データベースは不揮発性メモリ等に記憶される。また、作業現場の地形情報は、例えば世界測位系に基づく3次元地形モデルで記述される。
位置座標更新部32は、ショベルの現在位置を表す座標及び向きを更新する機能要素である。本実施例では、位置座標更新部32は、測位装置M2の出力に基づいて世界測位系におけるショベルの位置座標及び向きを取得し、不揮発性メモリ等に記憶されるショベルの現在位置を表す座標及び向きに関するデータを更新する。
地面形状情報取得部33は、作業対象の地面の現在の形状に関する情報を取得する機能要素である。本実施例では、地面形状情報取得部33は、地形データベース更新部31が更新した地形情報と、位置座標更新部32が更新したショベルの現在位置を表す座標及び向きと、姿勢検出装置M3が検出した掘削アタッチメントの姿勢の過去の推移とに基づいて掘削対象地面の現在の形状に関する情報を取得する。
ここで、図6を参照し、地面形状情報取得部33が掘削動作後の地面形状に関する情報を取得する処理について説明する。図6は、掘削動作後の地面形状に関する情報の概念図である。なお、図6の破線で示す複数のバケット形状は、前回の掘削動作の際のバケット6の軌跡を表す。バケット6の軌跡は、姿勢検出装置M3が過去に検出した掘削アタッチメントの姿勢の推移から導き出される。また、図6の太実線は、地面形状情報取得部33が把握している掘削対象地面の現在の断面形状を表し、太点線は、地面形状情報取得部33が把握している前回の掘削動作が行われる前の掘削対象地面の断面形状を表す。すなわち、地面形状情報取得部33は、前回の掘削動作が行われる前の掘削対象地面の形状から、前回の掘削動作の際にバケット6が通過した空間に対応する部分を取り除くことで掘削対象地面の現在の形状を導き出す。このようにして、地面形状情報取得部33は、掘削動作後の地面形状を推定できる。また、図6の一点鎖線で示すZ軸方向に伸びる各ブロックは3次元地形モデルの各要素を表す。各要素は例えばXY平面に平行な単位面積の上面と−Z方向に無限大の長さを有するモデルで表現される。なお、3次元地形モデルは3次元メッシュモデルで表現されてもよい。
作業反力導出部34は作業反力を導き出す機能要素である。作業反力導出部34は、例えば、掘削アタッチメントの姿勢と作業対象地面の現在の形状に関する情報とに基づいて掘削反力を導き出す。掘削アタッチメントの姿勢は姿勢検出装置M3によって検出され、作業対象地面の現在の形状に関する情報は地面形状情報取得部33によって取得される。掘削反力は、バケット6の先端で土砂を掘削する際にバケット6の先端に作用する反力ばかりでなく、バケット6の背面で土砂を押し退ける際にバケット6の背面に作用する反力も含む。
本実施例では、作業反力導出部34は、バケット6と地面とが接触しているか否かを判定し、接触していないと判定した場合の掘削反力を所定の非接触時掘削反力値(例えば、値ゼロ)とし、接触していると判定した場合の掘削反力を非接触時掘削反力値より大きい所定の接触時掘削反力値とする。
また、作業反力導出部34は、接触していると判定した場合にはその接触状態に基づいて掘削反力を導き出してもよい。例えば、掘削反力導出部34は、所定の計算式を用いて掘削反力を導き出してもよい。この場合、作業反力導出部34は、例えば、掘削深さが深いほど、すなわち、ショベルの接地面とバケット爪先位置P4(図2参照。)との鉛直距離が大きいほど掘削反力が大きくなるようにする。また、作業反力導出部34は、例えば、バケット6の爪先の掘削対象地面に対する挿入深さが大きいほど掘削反力が大きくなるようにする。また、作業反力導出部34は、土砂密度等の土砂特性を考慮して掘削反力を導き出してもよい。土砂特性は、車載入力装置(図示せず。)を通じて操作者が入力する値であってもよく、油圧シリンダにおける作動油の圧力を検出する圧力センサ等の各種センサの出力に基づいて自動的に算出される値であってもよい。
コントローラ30は、アタッチメントを駆動している油圧シリンダのストローク量が所定範囲内にあると判定した場合、作業負荷を伴わない作業が行われているか否かの判定結果に基づいてアタッチメントの動作速度を制御する。具体的には、作業負荷を伴わない作業が行われていると判定した場合にアタッチメントの動作速度を徐々に低下させながらアタッチメントの動作を停止させる。以下では、アタッチメントの動作速度を徐々に低下させながらアタッチメントの動作を停止させる制御を「減速・停止制御」と称する。
コントローラ30は、例えば、アーム角度センサの出力に基づいてアームシリンダ8のストローク量が収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内にあるか否かを判定する。収縮側ストロークエンドに達したときのストローク量を0%とし、伸張側ストロークエンドに達したときのストローク量を100%とすると、収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内のストローク量は、例えば、所定の閾値(例えば10%)以下である。なお、所定の閾値は、予め登録されていてもよく、ストローク量の変化速度が大きいほど大きくなるように動的に設定されてもよく、アーム操作レバーの(開き)操作量が大きいほど大きくなるように動的に設定されてもよい。
また、上述の説明は、アーム5を開く場合の説明であるが、アーム5を閉じる場合には、アームシリンダ8のストローク量が伸張側ストロークエンド付近の所定範囲内にあるか否かが判定される。伸張側ストロークエンド付近の所定範囲内のストローク量は、例えば、所定の閾値(例えば90%)以上である。そして、この閾値も、アーム5を開く場合と同様、予め登録されていてもよく、ストローク量の変化速度が大きいほど小さくなるように動的に設定されてもよく、アーム操作レバーの(閉じ)操作量が大きいほど小さくなるように動的に設定されてもよい。
アーム5を開く方向に駆動するアームシリンダ8のストローク量が収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内にあると判定した場合、コントローラ30は、作業反力導出部34が導出した掘削反力に基づき、作業負荷を伴わない作業が行われているか否かを判定する。
そして、掘削反力が所定値未満の場合に、作業負荷が所定値未満である、すなわち、作業負荷(作業反力)を伴わない作業が行われていると判定し、動作制限部E1に対して制御指令を出力する。そして、アームシリンダ8のストローク量が0%に近づくにつれてアーム5の動作速度を徐々に低下させ、アームシリンダ8のストローク量が0%に達する直前でアーム5の動作を停止させる。
コントローラ30は、例えば、吐出量調整装置14aL、14aRに対して制御指令を出力し、メインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を低減させて吐出量を低減させることでアーム5(アームシリンダ8)の動作を徐々に鈍化させながら停止させる。また、コントローラ30は、パイロット圧調整装置50に対して制御指令を出力し、アーム操作レバーの操作量に対応するパイロット圧を低減させて流量制御弁175を中立位置の方向に戻すことでアーム5の動作を徐々に鈍化させながら停止させてもよい。或いは、コントローラ30は、アームシリンダ8に流入する作動油の流量を調整可能な可変絞り8b(図4参照。)の開度を小さくすることでアーム5の動作を徐々に鈍化させながら停止させてもよい。また、コントローラ30は、これらの複数の手段を組み合わせてアーム5の動作を徐々に鈍化させながら停止させてもよい。ブーム4(ブームシリンダ7)又はバケット6(バケットシリンダ9)の動作を徐々に鈍化させながら停止させる場合も同様である。
次に、図7を参照し、減速・停止制御を実行するか否かを判定する処理(以下、「アタッチメント減速・停止処理」とする。)の流れについて説明する。図7はアタッチメント減速・停止処理の流れを示すフローチャートである。コントローラ30は、所定の制御周期で繰り返しこのアタッチメント減速・停止処理を実行する。また、本実施例では、ショベルの操作者は、アーム操作レバーを開き方向にフルレバー操作量で操作している。フルレバー操作量は所定操作量以上の操作量を意味し、所定操作量は、例えば、中立状態を0%とし、最大操作量を100%としたときの80%以上の操作量である。
最初に、コントローラ30は、アタッチメントを駆動している油圧シリンダのストローク量が所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS1)。本実施例では、アーム角度センサの出力に基づいてアームシリンダ8のストローク量が収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内(例えば0%〜10%の範囲内)にあるか否かを判定する。具体的には、アーム角度βが閾値βTHに達したときに、アームシリンダ8のストローク量が所定範囲内になったと判定する。
ストローク量が所定範囲内にないと判定した場合(ステップS1のNO)、コントローラ30は、今回のアタッチメント減速・停止処理を終了させ、通常制御の実行を継続する。すなわち、アーム操作レバーのレバー操作量に応じたアーム5の駆動を継続する。
一方、ストローク量が所定範囲内にあると判定した場合(ステップS1のYES)、コントローラ30は、作業反力が閾値TH1未満であるか否かを判定する(ステップS2)。作業反力を伴わない作業が行われているか否かを判定し、作業反力を伴わない作業が行われていると判定した場合には、油圧シリンダのピストンがストロークエンドに近づくにつれて油圧シリンダの動作を徐々に鈍化させながら停止させるためである。
本実施例では、コントローラ30は、アームシリンダ8のストローク量が収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内にあると判定した場合、作業反力導出部34が導出した作業反力が閾値TH1未満であるか否かを判定する。
そして、作業反力が閾値TH1以上であると判定した場合(ステップS2のNO)、コントローラ30は、今回のアタッチメント減速・停止処理を終了させ、通常制御の実行を継続する。作業反力を伴う作業が行われているにもかかわらずアタッチメントの動きが制限されてしまうのを防止するためである。
一方、作業反力が閾値TH1未満であると判定した場合(ステップS2のYES)、コントローラ30は、減速・停止制御を実行する(ステップS3)。本実施例では、コントローラ30は、動作制限部E1に対して制御指令を出力し、アームシリンダ8の収縮速度を徐々に低下させ、アームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達する直前でその収縮を停止させる。作業反力を伴わない作業が行われているにもかかわらず、アームシリンダ8の動作速度を制限することなく、ピストンが収縮側ストロークエンドに達するまでアームシリンダ8を動作させてしまうのを防止するためである。この制御により、コントローラ30は、アーム5(アームシリンダ8)の動きが止まるときに発生するショックを緩和できる。
次に、図8を参照し、図7のアタッチメント減速・停止処理が行われるときの各種物理量の時間的推移について説明する。図8は図7のアタッチメント減速・停止処理が行われるときの各種物理量の時間的推移を示す図であり、作業反力を伴う作業が行われる場合の推移を実線で示し、作業反力を伴わない作業が行われる場合の推移を破線で示す。なお、作業反力を伴う作業はアーム5を開きながらバケット6の背面で土砂を押し退ける作業であり、作業反力を伴わない作業は空中でアーム5を開く作業である。また、ショベルの操作者は、図8(D)の実線及び破線で示すように、作業反力の有無にかかわらず、アーム操作レバーを開き方向にフルレバー操作量AMAXで継続的に操作している。
最初に、作業反力を伴う作業が行われる場合の推移について説明する。作業反力を伴う作業が行われる場合、アーム角度βは、図8(A)の実線で示すように、一定の割合で増大し、時刻t1において閾値βTHに達する。また、アーム開き速度は、図8(B)の実線で示すように、一定レベルで推移する。アーム角度βが閾値βTHに達すると、コントローラ30は、アームシリンダ8のストローク量が収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内になったと判定し、作業反力を伴わない作業が行われているか否かを判定する。
この場合、図8(C)の実線で示すように作業反力が閾値TH1より大きい値FHであるため、コントローラ30は、作業反力を伴う作業が行われていると判定し、減速・停止制御を実行しない。
その結果、アーム角度βは、図8(A)の実線で示すように時刻t1後もそのまま増大し続け、時刻t2においてアームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達したところで最大値βMAXに達する。アーム開き速度は、図8(B)の実線で示すように時刻t1後もそのまま推移し、時刻t2においてアームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達したところで急減してゼロとなる。
このようにして、コントローラ30は、作業反力を伴う作業が行われる場合には、アームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに近づいたときにもアーム開き速度を低下させることなくその作業を継続できる。
次に、作業反力を伴わない作業が行われる場合の推移について説明する。作業反力を伴わない作業が行われる場合、アーム角度βは、図8(A)の破線で示すように、一定の割合で増大し、時刻t1において閾値βTHに達する。また、アーム開き速度は、図8(B)の破線で示すように、一定レベルで推移する。アーム角度βが閾値βTHに達すると、コントローラ30は、アームシリンダ8のストローク量が収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内になったと判定し、作業反力を伴わない作業が行われているか否かを判定する。
この場合、図8(C)の破線で示すように作業反力が閾値TH1より小さい値FLであるため、コントローラ30は、作業反力を伴わない作業が行われていると判定し、減速・停止制御を実行する。
その結果、アーム角度βは、図8(A)の破線で示すように時刻t1後にその増大率を徐々に小さくしながらも増大し続け、時刻t3においてアームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達したところで最大値βMAXに達する。アーム開き速度は、図8(B)の破線で示すように時刻t1後に徐々に低下し、時刻t3においてアームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達するところでゼロとなる。
このようにして、コントローラ30は、作業反力を伴わない作業が行われる場合には、アームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに近づくにつれてアーム開き速度を徐々に低下させながらゼロにする。その結果、アーム5の急停止を回避でき、ショベルの安定性の確保、操作性の改善、作業効率の向上等を実現できる。また、急停止に起因するアームシリンダ8及びその周辺機器の損傷、機体の振動、操作性の悪化、作業効率の低下等を防止できる。
次に、図9〜図11を参照し、作業反力導出部34が導出する作業反力以外の情報に基づいて作業負荷を伴わない作業が行われているか否かを判定するアタッチメント減速・停止処理の別の例について説明する。
図9は、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)に基づいて作業負荷を伴わない作業が行われているか否かを判定するアタッチメント減速・停止処理の流れを示すフローチャートである。
図9のアタッチメント減速・停止処理は、ブーム操作レバーが下げ方向に操作されているときの処理である点で、アーム操作レバーが開き方向に操作されているときの処理である図7のアタッチメント減速・停止処理と異なる。そのため、図9のステップS1における「ストローク量」はブームシリンダ7のストローク量を意味する。
また、図9のアタッチメント減速・停止処理は、ステップS2の代わりにステップS2Aを実行する点で図7のアタッチメント減速・停止処理と異なるがその他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
図9のアタッチメント減速・停止処理では、作業負荷を伴わない作業が行われているか否かを判定するため、コントローラ30は、ブームボトム圧が閾値TH2以上であるか否かを判定する(ステップS2A)。
本実施例では、コントローラ30は、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油の圧力を検出する圧力センサ7a(図4参照。)が出力するブームボトム圧が閾値TH2以上の場合に作業負荷を伴わない作業が行われていると判定する。この判定結果は、例えば、ブーム下げ動作時においてバケット6が地面に接触していない場合に導き出される。単にブーム下げ動作を行っている場合等、作業負荷を伴わない作業が行われる場合には、作業負荷を伴う作業(例えばバケット6を地面に接触させながらの作業)が行われる場合に比べてブームボトム圧が大きくなるためである。そして、この状況でブームシリンダ7のピストンが収縮側ストロークエンドに当接すると車体が大きく振動してしまう。従って減速・停止制御を行う必要がある。
図10は、アームシリンダ8のボトム側油室の作動油の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)又はロッド側油室の作動油の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)に基づいて作業負荷(作業反力)を伴わない作業が行われているか否かを判定するアタッチメント減速・停止処理の流れを示すフローチャートである。
図10のアタッチメント減速・停止処理は、アーム操作レバーが閉じ方向又は開き方向に操作されているときの処理である点で、アーム操作レバーが開き方向に操作されているときの処理である図7のアタッチメント減速・停止処理と異なる。
また、図10のアタッチメント減速・停止処理は、ステップS2、S2Aの代わりにステップS21〜S24を実行する点で図7、図9のアタッチメント減速・停止処理と異なるがその他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
図10のアタッチメント減速・停止処理では、作業反力を伴わない作業が行われているか否かを判定するため、コントローラ30は、アーム閉じ操作が行われている場合にはアームボトム圧が閾値TH3A未満であるか否かを判定し(ステップS22)、アーム開き操作が行われている場合にはアームロッド圧が閾値TH3B未満であるか否かを判定する(ステップS24)。
本実施例では、コントローラ30は、アーム閉じ操作が行われている場合にはアームシリンダ8のボトム側油室の作動油の圧力を検出する圧力センサ8a1(図4参照。)が出力するアームボトム圧が閾値TH3A未満の場合に作業反力を伴わない作業が行われていると判定する。アーム閉じ操作によって作業反力を伴わない作業が行われる場合、作業反力を伴う作業(例えば掘削作業)が行われる場合に比べてアームボトム圧が小さくなるためである。同様に、コントローラ30は、アーム開き操作が行われている場合にはアームシリンダ8のロッド側油室の作動油の圧力を検出する圧力センサ8a2(図4参照。)が出力するアームロッド圧が閾値TH3B未満の場合に作業反力を伴わない作業が行われていると判定する。アーム開き操作によって作業反力を伴わない作業が行われる場合、作業反力を伴う作業(例えば掘削作業)が行われる場合に比べてアームロッド圧が小さくなるためである。なお、アーム開き操作が行われている場合の閾値TH3Aは、アーム閉じ操作が行われている場合の閾値TH3Bと同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
図11は、アタッチメントの動作速度から作業負荷(作業反力)の大きさを導き出し、その作業負荷(作業反力)の大きさに基づいて作業負荷(作業反力)を伴わない作業が行われているか否かを判定するアタッチメント減速・停止処理の流れを示すフローチャートである。
図11のアタッチメント減速・停止処理は、ステップS2、S2A、S21〜S24の代わりにステップS2Cを実行する点で図7、図9、図10のアタッチメント減速・停止処理と異なるがその他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
図11のアタッチメント減速・停止処理では、作業反力を伴わない作業が行われているか否かを判定するため、コントローラ30は、アタッチメントの動作速度が閾値TH4以上であるか否かを判定する(ステップS2C)。
本実施例では、コントローラ30は、アーム角度センサM3b(図2参照。)が出力するアーム角度βに基づいて算出されるアーム開き速度(例えば、アーム操作レバーをフルレバー操作量で開き方向に操作したときの単位時間当たりのアーム角度βの変化量)が閾値TH4以上の場合に作業反力を伴わない作業が行われていると判定する。作業反力を伴わない作業が行われる場合、作業反力を伴う作業(例えば掘削作業)が行われる場合に比べてアーム開き速度が大きくなるためである。
次に、図12を参照し、図11のアタッチメント減速・停止処理が行われるときの各種物理量の時間的推移について説明する。図12は図11のアタッチメント減速・停止処理が行われるときの各種物理量の時間的推移を示す図であり、作業反力を伴う作業が行われる場合の推移を実線で示し、作業反力を伴わない作業が行われる場合の推移を破線で示す。また、ショベルの操作者は、図12(D)の実線及び破線で示すように、作業反力の有無にかかわらず、アーム操作レバーを開き方向にフルレバー操作量AMAXで継続的に操作している。
最初に、作業反力を伴う作業が行われる場合の推移について説明する。作業反力を伴う作業が行われる場合、アーム角度βは、図12(A)の実線で示すように、一定の割合で増大し、時刻t1において閾値βTHに達する。また、アーム開き速度は、図12(B)の実線で示すように値V1で推移する。アーム角度βが閾値βTHに達すると、コントローラ30は、アームシリンダ8のストローク量が収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内になったと判定し、作業反力を伴わない作業が行われているか否かを判定する。
この場合、図12(B)の実線で示すようにアーム開き速度が閾値TH4より小さい値V1であるため、コントローラ30は、作業反力を伴う作業が行われていると判定し、減速・停止制御を実行しない。
その結果、アーム角度βは、図12(A)の実線で示すように時刻t1後もそのまま増大し続け、時刻t2においてアームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達したところで最大値βMAXに達する。アーム開き速度は、図12(B)の実線で示すように時刻t1後も値V1のまま推移し、時刻t2においてアームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達したところで急減してゼロとなる。
このようにして、コントローラ30は、作業反力を伴う作業が行われる場合には、アームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに近づいたときにもアーム開き速度を低下させることなくその作業を継続できる。
次に、作業反力を伴わない作業が行われる場合の推移について説明する。作業反力を伴わない作業が行われる場合、アーム角度βは、図12(A)の破線で示すように、一定の割合で増大し、時刻t1において閾値βTHに達する。また、アーム開き速度は、図12(B)の破線で示すように値V2で推移する。アーム角度βが閾値βTHに達すると、コントローラ30は、アームシリンダ8のストローク量が収縮側ストロークエンド付近の所定範囲内になったと判定し、作業反力を伴わない作業が行われているか否かを判定する。
この場合、図12(C)の破線で示すようにアーム開き角度が閾値TH4より大きい値V2であるため、コントローラ30は、作業反力を伴わない作業が行われていると判定し、減速・停止制御を実行する。
その結果、アーム角度βは、図12(A)の破線で示すように時刻t1後にその増大率を徐々に小さくしながらも増大し続け、時刻t3においてアームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達したところで最大値βMAXに達する。アーム開き速度は、図12(B)の破線で示すように時刻t1後に徐々に低下し、時刻t3においてアームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに達するところでゼロとなる。
このようにして、コントローラ30は、作業反力を伴わない作業が行われる場合には、アームシリンダ8のピストンが収縮側ストロークエンドに近づくにつれてアーム開き速度を徐々に低下させてゼロにする。その結果、アーム5の急停止を回避でき、ショベルの安定性の確保、操作性の改善、作業効率の向上等を実現できる。また、急停止に起因するアームシリンダ8及び周辺機器の損傷、機体の振動、操作性の悪化、作業効率の低下等を防止できる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例では、コントローラ30は、ショベルの操作者がアーム操作レバーを開き方向にフルレバー操作量AMAXで継続的に操作している場合に減速・停止制御を実行するか否かを判定する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。コントローラ30は、例えば、ショベルの操作者がアーム操作レバーを徐々に中立位置に戻す場合も同様に減速・停止制御を実行するか否かを判定してもよい。
また、上述の実施例では、外部演算装置30Eはコントローラ30の外部にある別の演算装置として説明されたが、コントローラ30に一体的に統合されてもよい。また、コントローラ30の代わりに外部演算装置30Eが動作制限部E1を直接的に制御してもよい。
また、上述の実施例では、地形データベース更新部31は、ショベルの起動時に通信装置M1を通じて作業現場の地形情報を取得して地形データベースを更新する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、地形データベース更新部31は、アタッチメントの姿勢の推移に関する情報を用いることなく、撮像装置M5が撮像したショベル周辺の画像に基づいて作業現場の地形情報を取得して地形データベースを更新してもよい。