JP2017057169A - 漢方医薬組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
上記黄連解毒湯は、前記4種の生薬を特定の配合比で混合して粉砕した粉末、又は煎じたものを服用すると古典には記されているが、現代では保管しやすく手軽に携帯できる漢方エキス製剤が利用されている。
漢方エキス製剤は、通例、適当な大きさにした生薬を、適当量の常水や含水アルコールで抽出し、抽出液を必要に応じて濃縮もしくは濃縮後乾燥し、賦形剤を加え、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤等の剤形に製する。
また、上記漢方エキス製剤は、携帯性等に優れるという利点から多くのものは剤形を固形とされるが、服用時には湯に溶かす等して本来の漢方湯液に近い剤形である液状に戻した方が良い効果が期待できると考えられている。そして、黄連解毒湯は、熱や炎症を抑える方剤である清熱剤であるから、服用時には冷水を用いることが推奨されているが、構成生薬のオウレン、オウバクに含有される苦味成分によって強い苦みを呈するため、服薬の中止など服薬コンプライアンス低下の原因になるという問題が発生してしまう。
なお、上記服用上の問題を解決する手段として服薬補助ゼリーの使用が挙げられるが、該服薬補助ゼリーが使用可能なものは、剤形が固形のものに限られ、液状のものについては何等解決に至っていない。
まとめると、上記従来の黄連解毒湯を有効成分とする漢方製剤については、構成生薬に由来する成分が原因となって種々の問題が発生している。構成生薬に由来する澱粉質や粘液質等は、軟稠エキスの流動性を著しく損なわせるとともに、水や温湯への分散性を悪化させるので、濃縮機や乾燥機からの漢方エキス製剤の取り出しを困難にする。構成生薬に由来する苦味成分は、強い苦みによって漢方製剤を服用しづらいものにする。
本発明は、上記従来の問題点を解決し、黄連解毒湯を有効成分として、生薬由来の澱粉質、粘液質等を原因とする軟稠エキスの流動性の低下や、水もしくは温湯への分散性の悪化を抑制し、また強い苦みによる服薬コンプライアンス低下を抑制することができる漢方医薬組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の漢方医薬組成物の製造方法の発明において、上記糖質は、単糖類、二糖類、単糖類の糖アルコール、二糖類の糖アルコール、及び、二糖又は三糖のオリゴ糖からなる群から選択される少なくとも1種であることを要旨とする。
請求項3に記載の漢方医薬組成物の発明は、請求項1又は請求項2に記載の漢方医薬組成物の製造方法によって製剤され、液状であることを要旨とする。
なお、請求項3に係る漢方医薬組成物の発明は、物の発明であるが、当該請求項には、「請求項1又は請求項2に記載の漢方医薬組成物の製造方法によって製剤され」という、その物の製造方法が記載されている。ここで、本発明の漢方医薬組成物は、その剤形が液体(濃縮煎剤)であることを一の特徴としており、剤形を液体とするには、生薬由来の澱粉質、粘液質等の濃縮時の凝集による流動性の悪化や水もしくは温湯への分散性の悪化を防止する必要がある。そこで、本発明の漢方医薬組成物は、生薬由来の澱粉質、粘液質等の濃縮時の凝集を阻害するという観点から、その製造時の性状改善工程において該澱粉質、該粘液質等を糖質と結びつけているのであり、本発明の漢方医薬組成物をその構造又は特性により直接特定することは、非実際的事情が存在する。
本発明の漢方医薬組成物は、黄連解毒湯を主成分とする漢方原薬が配合されてなる。
黄連解毒湯は、オウレン、オウゴン、オウバク、サンシシの4種の生薬からなるものであり、漢方原薬には、黄連解毒湯の抽出液が使用される。
上記漢方原薬としては、上記黄連解毒湯の抽出液を含むものであれば、液状、軟稠エキス状、乾燥エキス状のいずれの形態のものであっても使用することができる。
即ち、上記黄連解毒湯の抽出液は、澱粉質や粘液質等を含んでおり、こうした澱粉質や粘液質等は、濃縮が進む程凝集することで、軟稠エキスの流動性を低下させたり、水や温湯への分散性を悪化させたりする。従って、該抽出液を濃縮あるいは乾燥すると、該抽出液は、濃縮あるいは乾燥の途中で粘性を有する糊状となり(糊化現象)、その状態から濃縮あるいは乾燥が進行しなくなるばかりか、機器や容器等からの取り出しもできなくなり、非常に扱いづらくなるため、通常は抽出液をそのまま、あるいは糊状とならない程度に濃縮あるいは乾燥した抽出液を賦形剤に吸着させ、剤形を固形とした漢方医薬組成物を得ている。
なお、黄連解毒湯を有効成分として含む製品としては、剤形を液体としたものも提供されているが、これは、漢方医薬組成物を得る段階、あるいは漢方医薬組成物から製品を得る段階で、一旦は剤形を固形とし、その上で水やアルコール等に溶かすことで、剤形を液体としている。
本発明の漢方医薬組成物の製造方法は、抽出工程、性状改善工程、及び、濃縮工程の3工程を備えて為る。
上記抽出工程は、黄連解毒湯から水あるいは含水アルコールを用いて抽出液を得る行程である。該抽出工程における抽出は、沸騰抽出又は低温抽出の何れで行ってもよいが、抽出液に有効成分を十分に移行することができるとともに、該抽出工程に続く性状改善工程で性状改善の効果が良好であるという観点から、沸騰抽出で行うことが好ましい。
上記性状改善工程は、上記抽出工程で得られた抽出液に濃縮助剤を加えることで、性状改善を行う工程である。当該性状改善により、上記生薬由来の澱粉質、粘液質等を原因とする不具合が改善される。また、上記抽出工程で沸騰抽出を行った場合において、該性状改善工程は、濃縮助剤が溶けやすく、性状改善の効果が高いという観点から、抽出から時間を置かずに、抽出工程の直後の抽出液が所定以上の温度(70℃以上)を保持している間に濃縮助剤を加えることが好ましい。また、濃縮助剤は、所定以上の温度(70℃以上)を保持している抽出液にそのまま加えてもよく、あるいは抽出液が冷めないように、例えば熱湯等の温湯に濃縮助剤を一旦溶かして、その濃縮助剤を溶かした温湯を抽出液に加えてもよい。
上記濃縮工程は、性状改善された上記抽出液を濃縮し、均質な軟稠エキスを得る工程である。通常であれば、上記したように黄連解毒湯から得られた抽出液を、剤形が液体の状態を保持しつつ濃縮することは困難であるが、本発明では性状改善された抽出液を用いることで、剤形が液体の状態を保持しながらの濃縮を可能としている。なお、該濃縮工程において、通常であれば固形分比で20〜30質量%程度までしか濃縮できないが、本発明では固形分比で60〜70質量%程度までの濃縮が可能である。
また、上記糖質として好ましくは、単糖類、二糖類、単糖類の糖アルコール、二糖類の糖アルコール、及び、二糖又は三糖のオリゴ糖からなる群から選択される少なくとも1種である。
添加する糖質の配合量は、出来上がり軟エキス重量のそれぞれ5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。
上記糖質の具体例としては、ブドウ糖、麦芽糖、ショ糖、ラクトスクロース、エリスリトール、キシリトールなどを挙げることができる。これらは、単独でも2種類以上組み合わせても用いることができる。このうちエリスリトール、キシリトールは、齲蝕(いわゆる虫歯)の原因にならず、特にキシリトールは甘味度がショ糖と同等であるため矯味の点で有利である。
また、抽出液中には、生薬由来の苦味成分が含まれており、該苦味成分によって通常の漢方医薬組成物は、強い苦みを呈する。対して、本発明の漢方医薬組成物において、苦味成分は、上記糖質による甘みによって緩和される。
つまり、上記糖質は、濃縮助剤として澱粉質、粘液質等の凝集を阻害する効果に加え、該糖質の本来の機能である甘みにより、苦味成分による強い苦みを緩和する効果を発揮する。そして、該糖質を用いる上記性状改善工程では、生薬由来の澱粉質や粘液質等による不具合が改善されるのみならず、生薬由来の強い苦みまでも改善される。
従って、該性状改善工程を経て得られた漢方原薬は、澱粉質や粘液質等による影響が可能な限り抑えられているとともに、服用性が改善されており、該漢方原薬から得られる漢方医薬組成物は、流動性、水もしくは温湯への分散性および服用感に優れるものとなる。
本発明における漢方医薬組成物にあっては、上記漢方原薬の他に、これらの効能を損なわない程度に、甘味剤、増粘剤、乳化剤、保存料、防腐剤、食用色素、香料や調味料や酵素や酸化防止剤等の食品添加物、ビタミン類などといった工業的に生産された成分を混和してもよい。
服用感の向上をはかる甘味剤としては、スクラロース、アスパルテーム、グリシン、アセスルファムカリウム、サッカリンなど、医薬品に配合できる甘味剤から任意に選んでよく、配合量は基準に定める量の範囲で、任意の量を選択できる。
防腐剤は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、エタノール、クエン酸など、医薬品に配合できる防腐剤から任意に選んでよく、配合量は基準に定める量の範囲で任意の量を選択できる。
また、香料も医薬品の基準の範囲内で添加することができる。
本発明の漢方医薬組成物の充填量は、特に限定されないが、例えば服用し易いスティックに1包あたり1回あたりの投与量1〜20gを充填し、服用者に正しく服用させることができる。
〔黄連解毒湯の軟エキスの調製〕
(1)抽出工程
黄連解毒湯として、オウレンとオウバクを各3kg、オウゴンを6kg、およびサンシシを4kgとった。この黄連解毒湯に常水160Lを加えて、沸騰後30分間抽出し、ろ過し、黄連解毒湯の抽出液120kgを得た。
(2)性状改善工程
黄連解毒湯の抽出液120kgを40kgずつ透明な袋に分けてエキスA,B,Cとし、それぞれについて下記の操作を行った。
エキスA:キシリトール(単糖の糖アルコール)2kgを加えた。
エキスB:デキストリン(多糖類)2kgを加えた。
エキスC:何も加えず、そのままとした。
(3)濃縮工程
上記エキスA,B,Cの3つをそれぞれ透明な袋に収容したままの状態で、水分約45%になるように減圧濃縮した。その結果、エキスA,Bは各5.0kgとなり、エキスCは1.3kgとなった。
上記エキスA,B,Cの3つについて、作製時の性状を比較した。この作製時の性状は、袋からエキスを絞り出せるか否かを以下に示す取出率(%)で規定し、該取出率(%)が高いものほど性状が良好であるとして評価した。また、エキスA,B,Cについて、それぞれ取出し前と取出し後の袋の状態を目視で観察し、その結果を図1〜図3の写真に示す。
取出率(%)=〔1−{(取出し後の各エキスの重さ(kg))÷(取出し前の各エキスの重さ(kg))}〕×100
作製時の性状を比較した結果、取出率(%)は、エキスA:92%、エキスB:34%、エキスC:0%であった。性状改善工程で糖質を加えたエキスAとエキスBは、糖質を加えなかったエキスCに比べて明らかに性状が改善され、袋からの取出しが可能となっていた。特に、単糖の糖アルコールを添加したエキスAは、ほぼ全量を袋から取り出せるまでに性状が改善された。
上記エキスA,B,Cの3つを用い、常法に従って表1に示す組成で漢方医薬組成物を調製した。そして、エキスAのものを実施例1の試料とし、エキスBのものを実施例2の試料とし、エキスCのものを比較例1の試料とした。
実施例1,2と比較例1の漢方医薬組成物に水を加えた時の分散性、および服用感を比較した。その結果を、図4に示す。
上記の結果、実施例1は、水に均質に分散していたことから、分散性に優れており、苦みと甘みが調和していることから、服用感が優れていた。
実施例2は、実施例1には劣るものの、水に分散していたことから、分散性を有しており、また苦みは残っているものの服用に支障をきたす程ではなく、服用感が改善されていた。
比較例1は、水に全く分散せず、分散性を有しておらず、非常に強い苦みを有していた。
以上の結果より、抽出液に糖質を加えることで、分散性と服用感とが改善されることが示された。また、実施例1と実施例2とを比較した結果、糖質として多糖類よりも単糖類を使用することで、分散性と服用感とが更に改善されることが示された。
Claims (3)
- 黄連解毒湯から水あるいは含水アルコールを用いて抽出液を得る抽出工程と、
上記抽出液に濃縮助剤として糖質を加えて性状改善を行う性状改善工程と、
性状改善された上記抽出液を濃縮して軟稠エキスを得る濃縮工程と、
を有し、
上記糖質は、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、及びそれらの糖アルコールからなる群から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする漢方医薬組成物の製造方法。 - 上記糖質は、単糖類、二糖類、単糖類の糖アルコール、二糖類の糖アルコール、及び、二糖又は三糖のオリゴ糖からなる群から選択される少なくとも1種である
請求項1に記載の漢方医薬組成物の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の漢方医薬組成物の製造方法によって製剤され、液状である
ことを特徴とする漢方医薬組成物。
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