JP2017053428A - クラッチディスク - Google Patents

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篠原 豊喜
Toyoki Shinohara
豊喜 篠原
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【課題】プリダンパからメインダンパへの移行時、異音の発生を十分に抑制することが可能なクラッチディスクを提供する。【解決手段】クラッチディスク1は、第1、第2ディスクプレート41,42、クラッチハブ31、ハブプレート32、小径コイルスプリング43(プリダンパ)、大径コイルスプリング44(メインダンパ)、第2ディスクプレート42とハブプレート32との間に押し荷重を発生させる皿ばね56等を備える。ハブプレート32は、ねじ機構により結合可能な本体プレート321および分割プレート322の2つに分割された構成になっており、第1、第2ディスクプレート41,42が、ハブプレート32に対して捩じり角の正側に回転された場合に、分割プレート322がねじ機構により本体プレート321に対して軸方向に移動することで、皿ばね56が圧縮するように構成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、クラッチディスクに関する。
自動車等に搭載されるエンジンとトランスミッションとの間の動力伝達に用いられるクラッチディスクとして、比較的小さいトルク変動を減衰させるプリダンパと、比較的大きいトルク変動を減衰させるメインダンパとを有するものが知られている。このようなクラッチディスクでは、プリダンパからメインダンパへの移行時(切り替え時)、ダンパ特性(ダンパ剛性)が急激に変化するため、異音が発生することが懸念される。
従来では、プリダンパとメインダンパとの間の移行を滑らかに行うことを目的として、クラッチハブとディスクプレートとの間に、低摩擦部材および高摩擦部材を有する円盤状の摩擦部材を配置する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このクラッチディスクでは、低摩擦部材から高摩擦部材に切り替わる領域において、高摩擦部材の円周方向幅が徐変するように設けられており、プリダンパとメインダンパとのダンパ特性の急激な変化が抑制される。しかしながら、摩擦部材における低摩擦部材と高摩擦部材との境界は不連続になっているため、プリダンパからメインダンパへの移行時、ダンパ特性にステップ状の段差が生じる可能性があり、この段差に起因する異音の発生が懸念される。
特開平09−042312号公報
本発明は上述したような実情を考慮してなされたものであって、プリダンパからメインダンパへの移行時、異音の発生を十分に抑制することが可能なクラッチディスクを提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、エンジントルクが入力されるディスクプレートと、前記エンジントルクをトランスミッションへ出力するクラッチハブおよびハブプレートと、前記クラッチハブと前記ハブプレートとの間に設けられ、比較的小さいトルク変動を減衰させるプリダンパと、前記ハブプレートと前記ディスクプレートとの間に設けられ、比較的大きいトルク変動を減衰させるメインダンパと、前記ディスクプレートと前記ハブプレートとの間に押し荷重を発生させる皿ばねとを備えたクラッチディスクであって、前記ハブプレートは、ねじ機構により結合可能な本体プレートおよび分割プレートの2つに分割された構成になっており、前記本体プレートは、前記クラッチハブの外径側に当該クラッチハブに対して所定角度だけ相対回転可能となるように設けられ、前記分割プレートは、前記ディスクプレートに接触されており、前記ディスクプレートが、前記ハブプレートに対して捩じり角の正側に回転された場合に、前記分割プレートが前記ねじ機構により前記本体プレートに対して軸方向に移動することで、前記皿ばねが圧縮するように構成されていることを特徴としている。
上記構成によれば、ディスクプレートがハブプレートに対して捩じり角の正側に回転された場合、分割プレートの軸方向への移動に伴って、皿ばねの押し付け荷重が変化して、ダンパ特性(ダンパ剛性)が変化する。具体的には、上記捩じり角が大きくなるほど、分割プレートの軸方向の移動量が大きくなり、皿ばねの押し付け荷重が比例的に大きくなる。したがって、分割プレートを設けない場合に比べて、より効果的にダンパ剛性を増大させることができる。これにより、加速時の歯打ち音(いわゆるジャラ音)を低減するのに必要なダンパ剛性を容易に確保することができる。
これに加え、捩じり角の正側の所定角度において、プリダンパによるダンパ剛性と、メインダンパによるダンパ剛性との段差を低減することができる。これにより、プリダンパによるダンパ機能と、メインダンパによるダンパ機能との移行(切り替え)を滑らかに行うことができ、アイドル時の歯打ち音(いわゆるガー音)を低減することができる。
本発明のクラッチディスクによれば、プリダンパからメインダンパへの移行時、異音の発生を十分に抑制することが可能になる。
本発明の実施形態に係るクラッチディスクの概略構成を示す図である。 図1のA1−A1線断面の矢視図である。 図2の一部を模式的に示す図である 図3の状態から、本体プレートに対し分割プレートが軸方向に移動した状態を模式的に示す図である。 図1のクラッチディスクの捩じり角度と捩じりトルクとの関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係るクラッチディスクは、自動車等に搭載されるエンジンとトランスミッションとの間に介在されるもので、エンジンのクランクシャフトに固定されたフライホイールから、トランスミッションのインプットシャフトにトルク伝達を行うために設けられる。クラッチディスクは、クラッチ機能およびダンパ機能を有する。クラッチ機能は、フライホイールに対し連結および離反することによってトルクの伝達および遮断を行う機能であり、ダンパ機能は、エンジン側から入力されるトルク変動等を減衰する機能である。
図1、図2に示すように、クラッチディスク1は、トルクの入力部2と出力部3とがダンパ4を介して連結された構成になっている。入力部2は、クッショニングプレート21の両側面に第1フェーシング22と第2フェーシング23とを重ね合わせて、これらをリベット24により固定した構成になっている。第1、第2フェーシング22,23が、エンジンのフライホイール(図示省略)と、当該フライホイールにボルト固定されたクラッチカバーのプレッシャプレート(図示省略)とによって挟まれることにより、エンジンのトルクが入力部2に入力される。
出力部3は、トランスミッションのインプットシャフト(図示省略)にスプライン嵌合するクラッチハブ31の外径側に、ハブプレート32が所定角度だけ相対回転可能となるように取り付けられた構成になっている。クラッチハブ31は、円筒形に形成されており、その中心孔の内周面には、トランスミッションのインプットシャフトに設けられた外周スプラインにスプライン嵌合する内周スプライン(図示省略)が設けられている。ハブプレート32は、環状板とされており、その円周等間隔の数ヶ所(例えば4ヶ所)には、径方向外向きに突出する突片32cが設けられている。
ハブプレート32は、クラッチハブ31の外径側に配置されている。クラッチハブ31の外周面には、径方向外向きに突出する外歯31aが円周等間隔の数ヶ所に一体に設けられている。ハブプレート32の内周面には、径方向内向きに突出する内歯32aが円周等間隔の数ヶ所に一体に設けられている。クラッチハブ31の外歯31aがハブプレート32の内歯32a内に円周方向に所定角度の遊びを持つ状態で配置されており、その所定角度の遊び分だけクラッチハブ31とハブプレート32との相対回転が可能になっている。詳しくは、ハブプレート32がクラッチハブ31に対して相対回転角度がゼロの状態から所定角度に達した時点で内歯32aが外歯31aに当接し相対回転が規制される。なお、ハブプレート32は、2つの部材に分割された構成になっているが、この点については後述する。
入力部2のクッショニングプレート21から第1、第2ディスクプレート41,42に伝達されるトルクが、ハブプレート32およびダンパ4を介してクラッチハブ31に伝達される。ダンパ4は、第1、第2ディスクプレート41,42、2つの小径コイルスプリング43、4つの大径コイルスプリング44、後述する摩擦発生部5等を備えている。ダンパ4は、小径コイルスプリング43、大径コイルスプリング44、および摩擦発生部5により、例えば、図5に示すようなダンパ特性(捩じり特性)を発揮する。ここで、エンジンから入力部2へのトルク入力方向は、図1の矢印X1方向(時計方向)となる。この捩じり特性の正側(加速側)では、入力部2が出力部3よりも矢印X1方向に先行する側に捩じられる状態になり、捩じり特性の負側(減速側)では、その反対側に捩じられる状態になる。なお、小径コイルスプリング43や、大径コイルスプリング44の数は、特に限定されるものではない。
第1ディスクプレート41の外周は、入力部2のクッショニングプレート21の内周にリベット46により連結されている。第1ディスクプレート41に第2ディスクプレート42が軸方向に離隔して対向する状態で配置されており、それらの外径側の円周等間隔の数ヶ所がリベット46によって連結されている。これにより、第1、第2ディスクプレート41,42が一体回転する。
小径コイルスプリング43は、円筒形の圧縮コイルバネとされており、クラッチハブ31の切り欠き31bとハブプレート32の切り欠き32bとの間で180度対向する2ヶ所に配置されており、その両端にはそれぞれスプリングシート47a,47bが組み付けられている。
小径コイルスプリング43は、その中心軸線が、クラッチディスク1の中心軸線とクラッチディスク1の径方向とに対してそれぞれ直交するような姿勢で配置されている。小径コイルスプリング43は、ハブプレート32がクラッチハブ31に対して相対回転すると、圧縮されることになり、その弾性力によってクラッチハブ31を回転させる。小径コイルスプリング43は、エンジンの燃焼等に起因する比較的小さなトルク変動を減衰するプリダンパとして機能する。
第1、第2ディスクプレート41,42は、共に環状板に形成され、それぞれの円周等間隔の数ヶ所(例えば4ヶ所)には、軸方向に貫通する長孔からなる窓41a,42aが設けられている。これら窓41a,42aには、大径コイルスプリング44が組み込まれている。大径コイルスプリング44のばね定数は、小径コイルスプリング43のばね定数よりも大きな値に設定されている。
大径コイルスプリング44は、円筒形の圧縮コイルバネとされており、その中心軸線が、クラッチディスク1の中心軸線とクラッチディスク1の径方向とに対してそれぞれ直交するような姿勢で配置されている。大径コイルスプリング44の両端には、それぞれスプリングシート48a,48bが組み付けられており、大径コイルスプリング44の内周には、浮動クッション49が挿入されている。スプリングシート48a,48bは、第1、第2ディスクプレート41,42の両窓41a,42a内に収容されている。各スプリングシート48a,48bの凹部48c,48d内には、ハブプレート32の突片32cの凸部32dが嵌め入れられている。大径コイルスプリング44が組み入れられる窓41a,42aの縁は、大径コイルスプリング44の抜け出しを阻止するために、斜め外向きに屈曲されるようになっている。浮動クッション49は、大径コイルスプリング44の座屈を防止するために設けられているとともに、ハブプレート32と第1、第2ディスクプレート41,42とが相対回転してスプリングシート48a,48bが当接した時点で、それ以上の相対回転を許容しないようにするために設けられている。
これにより、第1、第2ディスクプレート41,42が回転すると、大径コイルスプリング44が圧縮されることになり、その弾性力によってハブプレート32が回転される。一方、ハブプレート32が回転すると、大径コイルスプリング44が圧縮されることになり、その弾性力によって第1、第2ディスクプレート41,42が回転される。大径コイルスプリング44は、車両の変速時やアクセルのオン、オフ等に起因する比較的大きなトルク変動を減衰するメインダンパとして機能する。
第1、第2ディスクプレート41,42は、共に同じ外形形状とされており、クラッチハブ31およびハブプレート32に摩擦発生部5を介して取り付けられている。摩擦発生部5は、第1、第2ディスクプレート41,42とクラッチハブ31およびハブプレート32とのトルク変動をより効果的に減衰させるために、摩擦抵抗を利用してヒステリシストルクを発生するもので、第1、第2インナースラストリング51,52、第1、第2アウタースラストリング53,54、皿ばね55、皿ばね56等を備えている。
第1、第2インナースラストリング51,52および第1、第2アウタースラストリング53,54は、クラッチハブ31およびハブプレート32の両側に配置されている。第1、第2インナースラストリング51,52は、クラッチハブ31のボス部の外径側に当該クラッチハブ31を挟むような状態で相対回転可能に嵌め合わされている。これら第1、第2インナースラストリング51,52は、第1、第2ディスクプレート41,42に一体回転可能に取り付けられているため、第1、第2ディスクプレート41,42がクラッチハブ31に対して相対回転可能になっている。
具体的に、第2インナースラストリング52の外周には、回り止め用凸部52aが多数設けられており、回り止め用凸部52aは、第2ディスクプレート42の内周に設けられる多数の回り止め用凹部42bに嵌合されている。この嵌合により、第2インナースラストリング52が第2ディスクプレート42と一体に回転するようになっている。第2インナースラストリング52の内側面は、クラッチハブ31のフランジ部に当接され、また、外側面は皿ばね55を介して第2ディスクプレート42に当接されている。
第1インナースラストリング51についても、第2インナースラストリング52と同様の形態で第1ディスクプレート41に一体に回転するようになっている。なお、第1インナースラストリング51の回り止め用凸部および第1ディスクプレート41の回り止め用凹部の図示は省略している。第1インナースラストリング51の内側面は、クラッチハブ31のフランジ部に当接され、また、外側面は第1ディスクプレート41に当接されている。
皿ばね55は、第2インナースラストリング52と第2ディスクプレート42との間に介装されており、第2インナースラストリング52をクラッチハブ31側へ付勢する。第1ディスクプレート41と第2ディスクプレート42とがリベット46で締結されているため、皿ばね55の弾性力により、クラッチハブ31と第1、第2インナースラストリング51,52との間に一定の押し付け力(押し付け荷重)が発生する構造になっている。
そして、クラッチハブ31と第1、第2インナースラストリング51,52との相互関係で決まる摩擦係数と、皿ばね55の押し付け荷重との関係から、クラッチハブ31と第1、第2ディスクプレート41,42との相対回転時の回転方向の最大静摩擦トルク値および動摩擦トルク値が決まる。エンジンの燃焼等に起因する比較的小さいトルク変動が第1、第2フェーシング22,23を介して第1、第2ディスクプレート41,42に入力され、そのトルクがクラッチハブ31に伝達される際、そのトルク変動の絶対値が最大静摩擦トルク値よりも小さい場合には、第1、第2インナースラストリング51,52とクラッチハブ31との間で回転方向の滑りは生じず、小さいトルク変動はダイレクトにトランスミッションのインプットシャフトに伝達される。この場合、トルク変動は十分小さいため、車両内部には振動や騒音がほとんど発生しない。最大静摩擦トルク値よりも大きい絶対値のトルク変動が入力された場合には、第1、第2インナースラストリング51,52とクラッチハブ31との間で回転方向の滑りが生じ、小径コイルスプリング43が弾性的に圧縮することで、第1、第2インナースラストリング51,52とクラッチハブ31との間のトルク変動が吸収され、トランスミッションのインプットシャフトに伝達されるトルク変動が抑えられる。
第1、第2アウタースラストリング53,54は、ハブプレート32の両側に当該ハブプレート32を挟むような状態で相対回転可能に配置されている。これら第1、第2アウタースラストリング53,54は、第1、第2ディスクプレート41,42に一体回転可能に取り付けられているため、第1、第2ディスクプレート41,42がハブプレート32に対して相対回転可能になっている。
具体的に、第1アウタースラストリング53には軸方向一方に突出する突起53aが多数設けられており、多数の突起53aは、第1ディスクプレート41に設けられる多数の回り止め孔41bに嵌合されている。この嵌合により、第1アウタースラストリング53が第1ディスクプレート41と一体に回転するようになっている。第1アウタースラストリング53の内側面は、ハブプレート32に当接され、また、外側面は第1ディスクプレート41に当接されている。
第2アウタースラストリング54には軸方向一方に突出する突起54aが多数設けられており、多数の突起54aは、第2ディスクプレート42に設けられる多数の回り止め孔42cに嵌合されている。この嵌合により、第2アウタースラストリング54が第2ディスクプレート42と一体に回転するようになっている。第2アウタースラストリング54の内側面は、ハブプレート32に当接され、また、外側面は皿ばね56を介して第2ディスクプレート42に当接されている。
皿ばね56は、第2ディスクプレート42と一体的に設けられた第2アウタースラストリング54と、第2ディスクプレート42との間に介装されており、第2アウタースラストリング54をハブプレート32側へ付勢する。第1ディスクプレート41と第2ディスクプレート42とがリベット46で締結されているため、皿ばね56の弾性力により、ハブプレート32と第1、第2アウタースラストリング53,54との間に押し付け力(押し付け荷重)が発生する構造になっている。
そして、ハブプレート32と第1、第2アウタースラストリング53,54との相互関係で決まる摩擦係数と、皿ばね56の押し付け荷重との関係から、ハブプレート32と第1、第2ディスクプレート41,42との相対回転時の回転方向の最大静摩擦トルク値および動摩擦トルク値が決まる。車両の変速時やアクセルペダルのオン、オフ等に起因する比較的大きいトルク変動が第1、第2フェーシング22,23を介して第1、第2ディスクプレート41,42に入力されると、そのトルクがクラッチハブ31に伝達されることになって、クラッチハブ31とハブプレート32とが相対回転する。それに伴い、クラッチハブ31の外歯31aとハブプレート32の内歯32aとが当接すると、クラッチハブ31とハブプレート32とが一体回転を開始することになる。その際に、トルク変動の絶対値が最大静摩擦トルク値よりも小さい場合には、第1、第2アウタースラストリング53,54とハブプレート32との間で回転方向の滑りは生じず、そのトルク変動はダイレクトにトランスミッションのインプットシャフトに伝達されることになる。最大静摩擦トルク値よりも大きい絶対値のトルク変動が入力された場合には、第1、第2アウタースラストリング53,54とハブプレート32との間で回転方向の滑りが生じ、大径コイルスプリング44が弾性的に圧縮することで、第1、第2アウタースラストリング53,54とハブプレート32との間のトルク変動が、クラッチディスク1により吸収され、トランスミッションのインプットシャフトに伝達されるトルク変動が抑えられる。
上記構成のクラッチディスク1では、クラッチ操作により、クラッチカバーのプレッシャプレートが第2フェーシング23をフライホイール側に押圧すると、第1フェーシング22がフライホイールに圧接される。この圧接により、フライホイールのトルクが第1、第2フェーシング22,23およびクッショニングプレート21に入力される。このトルクは、クッショニングプレート21から第1、第2ディスクプレート41,42に伝達され、さらにこのトルクは、ダンパ4を介してハブプレート32およびクラッチハブ31からトランスミッションのインプットシャフトへと出力される。
この際、フライホイールのトルクが第1、第2フェーシング22,23およびクッショニングプレート21から第1、第2ディスクプレート41,42に入力されると、大径コイルスプリング44(メインダンパ)は直ちに圧縮せず、小径コイルスプリング43(プリダンパ)のみが圧縮し始めることになって、第1、第2ディスクプレート41,42およびハブプレート32が、クラッチハブ31に対して相対回転し始めることになる。この相対回転により第1、第2ディスクプレート41,42とハブプレート32との捩じり角度(捩じり角)が中立状態θ0から所定角度θ1までの角度範囲α0(図5参照)においては、小径コイルスプリング43(プリダンパ)のみが圧縮して、ハブプレート32がクラッチハブ31に対して相対回転することになるので、入力されるトルクはクラッチハブ31に伝達されない。
そして、ハブプレート32とクラッチハブ31との相対回転が進んで、捩じり角度が所定角度θ1になると、ハブプレート32の内歯32aがクラッチハブ31の外歯31aに当接するようになるが、この当接によりハブプレート32とクラッチハブ31とが一体回転し始めることになる。これにより、エンジンのトルクがクラッチハブ31からトランスミッションのインプットシャフトに伝達され始める。この後、捩じり角度が所定角度θ1から所定角度θ2になるまでの角度範囲α1(図5参照)では、第1、第2フェーシング22,23および第1、第2ディスクプレート41,42が、ハブプレート32およびクラッチハブ31に対して相対回転しながら、大径コイルスプリング44(メインダンパ)を圧縮し始めることになる。このとき、大径コイルスプリング44の圧縮に伴う弾性力は、トルク入力方向(図1の矢印X1方向)と同方向になる。
この実施形態では、上記構成のクラッチディスク1において、ハブプレート32が2つに分割された構造になっており、一方のハブプレート(本体プレート)321に対し、他方のハブプレート(分割プレート)322が軸方向に移動可能に設けられている。そして、分割プレート322の軸方向への移動に伴って、皿ばね56の押し付け荷重が変化して、ダンパ4の捩じり特性が変化するようになっている。以下、この点について、図2〜図5を参照して説明する。
ハブプレート32は、本体プレート321および分割プレート322が、ねじ機構により結合された構造になっている。具体的には、分割プレート322は、円筒形に形成されており、内周面に雌ねじ322aが形成されている。本体プレート321は、クラッチハブ31の外径側に、当該クラッチハブ31に対して所定角度だけ相対回転可能となるように設けられている。本体プレート321の内径側の部分には、分割プレート322を収容可能な円筒形の凹部321aが形成されている。本体プレート321において、凹部321aは、クラッチハブ31を収容する中心孔と同心円状に形成されている。また、本体プレート321において、凹部321aは、小径コイルスプリング43を収容する切り欠き32bよりも外径側の部分に設けられている。
凹部321aの内壁面には、分割プレート322の雌ねじ322aに螺合可能な雄ねじ321bが形成されている。凹部321aの軸方向の幅(深さ)は、分割プレート322の軸方向の幅と略同じになっている。凹部321aの径方向の幅は、分割プレート322の径方向の幅と略同じになっている。雄ねじ321bおよび雌ねじ322aの向きは、本体プレート321に対し、分割プレート322が矢印X1方向(図1参照)に回転したとき、分割プレート322が軸方向の一方側(図3、図4の右方)に移動する向きに設定されている。
分割プレート322の一側面(軸方向の一方の側面)322bは、上述した第2アウタースラストリング54に当接されており、第2アウタースラストリング54と第2ディスクプレート42との間に設けられた皿ばね56の弾性力が分割プレート322に作用している。一方、本体プレート321の一側面(軸方向の一方の側面)321cは、第2アウタースラストリング54に当接していない。このため、本体プレート321には、皿ばね56の弾性力が直接的には作用しないようになっている。
本体プレート321の雄ねじ321bが分割プレート322の雌ねじ322aに最大限に締め付けられた状態では、本体プレート321と分割プレート322とが一体的に結合される。この状態では、図3に示すように、本体プレート321の凹部321aの内底面321dに分割プレート322の他側面(軸方向の他方の側面)322cが当接する。このとき、本体プレート321の一側面321cと、分割プレート322の一側面322bとが同一平面上に位置している。また、このとき、皿ばね56の押し付け荷重が最小になる。
図3に示す状態から、本体プレート321に対し、分割プレート322が矢印X1方向(図1参照)に回転することによって、雄ねじ321bと雌ねじ322aとの締め付けが緩み、本体プレート321に対し、分割プレート322が軸方向の一方側(図3、図4の右方)に移動する。これにより、図4に示すように、本体プレート321の一側面321cに対し、分割プレート322の一側面322bが、軸方向の一方(図4の右方)に突出する。また、本体プレート321の凹部321aの内底面321dと、分割プレート322の他側面322cとの間には隙間C1が生じる。そして、このような分割プレート322の軸方向の一方側への移動によって、分割プレート322に当接する第2アウタースラストリング54も同じ方向に移動し、皿ばね56が軸方向に圧縮される。分割プレート322が軸方向の一方側へ移動するほど、本体プレート321の一側面321cに対する、分割プレート322の一側面322bの突出量Y1が大きくなり、皿ばね56の押し付け荷重が大きくなる。なお、突出量Y1には上限値が設定されており、図4では、突出量Y1が最大となる状態、言い換えれば、雄ねじ321bと雌ねじ322aとの締め付けが最大限に緩んだ状態であって、皿ばね56の押し付け荷重が最大となった状態を示している。
一方、図4に示す状態から、本体プレート321に対し、分割プレート322が矢印X2方向(図1参照)に回転することによって、雄ねじ321bと雌ねじ322aとが締め付けられ、本体プレート321に対し、分割プレート322が軸方向の他方側(図4の左方)に移動する。これにより、本体プレート321の一側面321cに対する、分割プレート322の一側面322bの突出量Y1が減少する。このような分割プレート322の軸方向の他方側への移動によって、第2アウタースラストリング54も同じ方向に移動し、皿ばね56が軸方向に伸張される。分割プレート322が軸方向の他方側へ移動するほど、本体プレート321の一側面321cに対する、分割プレート322の一側面322bの突出量Y1が小さくなり、皿ばね56の押し付け荷重が小さくなる。
ここで、上述のような分割プレート322の軸方向の移動は、本体プレート321に対して分割プレート322が回転する際に、分割プレート322と第2アウタースラストリング54との間に発生する摩擦力の作用によって行われる。具体的には、第2アウタースラストリング54と一体に回転する第2ディスクプレート42が、ハブプレート32(本体プレート321)に対して相対回転することによって、分割プレート322と第2アウタースラストリング54との間に摩擦力が発生する。この摩擦力が、雄ねじ321bと雌ねじ322aとの間に発生する摩擦力と、本体プレート321の凹部321aの内底面321dと分割プレート322の他側面322cとの間に発生する摩擦力との合計よりも大きい場合、分割プレート322が、本体プレート321に対して回転する。なお、本体プレート321の凹部321aの内底面321dと分割プレート322の他側面322cとの間の摩擦力は、内底面321dと他側面322cとが当接している場合にのみ発生する(図3参照)。
この実施形態では、上述したように、本体プレート321に対し、分割プレート322が軸方向に移動することに伴って、皿ばね56の押し付け荷重が変化するので、図5に示すように、ダンパ4の捩じり特性(ダンパ特性)が変化する。
図5に示すように、ダンパ4は、正側(加速側)および負側(減速側)において、低剛性および高剛性の2段階の特性を示す。捩じり特性の正側(加速側)においては、第1、第2ディスクプレート41,42とハブプレート32との捩じり角度が中立状態θ0から所定角度θ1までの角度範囲α0で、小径コイルスプリング43による低剛性の特性を示し、続いて、捩じり角度が所定角度θ1から所定角度θ2までの角度範囲α1で、大径コイルスプリング44による高剛性の特性を示す。同様に、捩じり特性の負側(減速側)においても、小径コイルスプリング43による低剛性の特性および大径コイルスプリング44による高剛性の特性を示す。
この実施形態では、捩じり特性の正側において、上述したように、分割プレート322の軸方向の移動により、ハブプレート32と第1、第2ディスクプレート41,42との間に発生する皿ばね56の押し付け荷重が変化する。具体的には、第2ディスクプレート42がハブプレート32に対して矢印X1方向(図1参照)に回転することによって、分割プレート322が本体プレート321に対して同じ方向に回転し、ねじ機構(雄ねじ321bおよび雌ねじ322a)を介して、分割プレート322が軸方向の一方に移動する(図4参照)。これにより、捩じり角度が大きくなるほど、分割プレート322が軸方向の一方側へ移動し、皿ばね56の押し付け荷重が比例的に(線形的に)大きくなる。したがって、捩じり特性の正側の角度範囲α1において、分割プレート322を設けない場合に比べて(図5の破線を参照)、より効果的にダンパ剛性(ヒステリシストルク)を増大させることができる。これにより、加速時の歯打ち音(いわゆるジャラ音)を低減するのに必要なダンパ剛性を容易に確保することができる。
これに加え、捩じり特性の正側の所定角度θ1において、小径コイルスプリング43によるダンパ剛性と、大径コイルスプリング44によるダンパ剛性との段差(ヒステリシス差)を低減することができる。具体的には、小径コイルスプリング43によるダンパ剛性と、大径コイルスプリング44によるダンパ剛性とを略連続的に変化させることができる。これにより、小径コイルスプリング43によるダンパ機能と、大径コイルスプリング44によるダンパ機能との移行(切り替え)を滑らかに行うことができ、アイドル時の歯打ち音(いわゆるガー音)を低減することができる。
また、捩じり特性の負側においては、上述したように、分割プレート322が本体プレート321と一体に回転するので(図3参照)、捩じり特性の正側とは異なり、皿ばね56の押し付け荷重は一定に保たれる。したがって、捩じり特性の負側において、ダンパ剛性が過度に増大することを抑制できる。
上記実施形態では、本体プレート321に雄ねじ321bが設けられ、分割プレート322に雌ねじ322aが設けられた場合について説明したが、本体プレート321に雌ねじを設け、分割プレート322に雄ねじを設ける構成としてもよい。
今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
本発明は、比較的小さいトルク変動を減衰させるプリダンパと、比較的大きいトルク変動を減衰させるメインダンパとを備えたクラッチディスクに利用可能である。
1 クラッチディスク
31 クラッチハブ
32 ハブプレート
321 本体プレート
321b 雄ねじ
322 分割プレート
322a 雌ねじ
4 ダンパ
41 第1ディスクプレート
42 第2ディスクプレート
43 小径コイルスプリング(プリダンパ)
44 大径コイルスプリング(メインダンパ)
5 摩擦発生部
54 第2アウタースラストリング
56 皿ばね

Claims (1)

  1. エンジントルクが入力されるディスクプレートと、
    前記エンジントルクをトランスミッションへ出力するクラッチハブおよびハブプレートと、
    前記クラッチハブと前記ハブプレートとの間に設けられ、比較的小さいトルク変動を減衰させるプリダンパと、
    前記ハブプレートと前記ディスクプレートとの間に設けられ、比較的大きいトルク変動を減衰させるメインダンパと、
    前記ディスクプレートと前記ハブプレートとの間に押し荷重を発生させる皿ばねとを備えたクラッチディスクであって、
    前記ハブプレートは、ねじ機構により結合可能な本体プレートおよび分割プレートの2つに分割された構成になっており、
    前記本体プレートは、前記クラッチハブの外径側に当該クラッチハブに対して所定角度だけ相対回転可能となるように設けられ、
    前記分割プレートは、前記ディスクプレートに接触されており、
    前記ディスクプレートが、前記ハブプレートに対して捩じり角の正側に回転された場合に、前記分割プレートが前記ねじ機構により前記本体プレートに対して軸方向に移動することで、前記皿ばねが圧縮するように構成されていることを特徴とするクラッチディスク。
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