JP2017053012A - 金属材料の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】周期表第4族(Ti等)、5族、6族の金属・合金の窒化を短時間で行う方法の提供。
【解決手段】(i)炭素粉末、あるいは(ii)炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末を、該処理対象の金属とは非接触の状態で配置して、窒素を含む雰囲気中で加熱処理を行う窒化法。粉末は酸素分圧を下げ、クリーンな窒素雰囲気を形成する窒化法。加熱処理温度800〜1200℃、好ましくは800〜1100℃で窒化処理を行う金属の表面処理方法。
【選択図】図2
【解決手段】(i)炭素粉末、あるいは(ii)炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末を、該処理対象の金属とは非接触の状態で配置して、窒素を含む雰囲気中で加熱処理を行う窒化法。粉末は酸素分圧を下げ、クリーンな窒素雰囲気を形成する窒化法。加熱処理温度800〜1200℃、好ましくは800〜1100℃で窒化処理を行う金属の表面処理方法。
【選択図】図2
Description
本発明は、金属の表面処理方法に関する。
チタンは、高い比強度と優れた耐食性を有する素材であるが、鉄鋼材料と比較して耐摩耗性に劣ることから、産業機械部品等への利用が制限されている。このため、その表面に硬化層を付与して耐摩耗性の改善を図る表面改質について数多くの研究がなされており、ガス窒化、プラズマ窒化、プラズマ浸炭といった様々な方法が報告されている。しかしながら、例えばガス窒化では、TiNを主体とした表面層の形成・成長に長時間を要し、一方、プラズマ窒化では、特殊な装置を必要とし、また処理工程が複雑になり易い等の問題を有している。
従来のチタン等の表面処理方法として、(非特許文献1)には、チタンを窒素フロー中で加熱・保持することで窒化する方法が開示されており、最表面に生じるTiNを主体とした化合物層の厚さは、850℃に16時間保持した場合に約3μmとなる旨が記載されている。また、(非特許文献2)には、高周波誘導プラズマ発生装置を使って、窒素と水素の混合プラズマ中でTi−6Al−4V合金を窒化する方法が開示されており、TiNを主体とする窒化層の厚さは、997℃、60分の処理で約20μmであり、窒素中に水素を導入することで窒化が促進されたことが記載されている。さらに、(特許文献1)には、金属材料の表面に黒鉛を配置し、窒素雰囲気下で加熱処理することにより、該金属材料表面に炭窒化物層を形成することを特徴とする金属材料表面に対する炭窒化物層形成方法が開示されている。
これに対し、本発明者らは、(特許文献2)において、表面処理を行う処理対象の金属を、炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末と、を含む炭素源粉末中に埋没させた状態で、窒素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、該処理対象の金属の表面を少なくとも窒化又は窒素吸収させて改質する金属の表面処理法を提供した。この方法によれば、極めて簡単な設備だけで、簡便にかつ低コストで、処理対象の金属の表面硬度や耐摩耗性等の表面性質を改善することができる。また、この方法は、ステンレス鋼のように、安定な酸化皮膜を持つ素材の表面改質にも有効である。
日本金属学会誌, Vol. 24, No. 9, pp. 565-569 (1960)
軽金属, Vol. 42, No. 11, pp. 650-656 (1992)
上記(特許文献2)に示す表面処理方法は、処理工程が従来法に比べて非常に簡便であり、かつ改質効果が優れる一方で、鉄粉や炭素粉を用いることから、窒素とともに炭素の拡散が起こり、被処理材に窒素を主体的に拡散させることが難しく、また、鉄が拡散することがあり、被処理材そのものの性質が変化する可能性があるという問題点があった。さらに、粉末中に被処理材を埋め込んで熱処理を行うため、処理後に粉末が被処理材にこびり付くことがあり、それを取り除く作業が必要となって煩雑であるといった問題点も有していた。
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、窒素を主に拡散(窒化又は窒素吸収)させることができる、チタン等の金属の表面処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意研究を行った結果、窒素を含む雰囲気中で金属を加熱処理するに当たり、炭素粉末等を、処理対象の金属とは非接触状態として配置することにより、窒素を拡散し得ることを見出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)表面処理を行う処理対象の金属を、窒素を含む雰囲気中で加熱処理することにより、該処理対象の金属の表面に窒素を拡散させる金属の表面処理方法であって、(i)炭素粉末、あるいは(ii)炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末を、該処理対象の金属とは非接触の状態で配置して加熱処理を行う前記表面処理方法。
(2)処理対象の金属が、元素周期表の4族、5族、6族の金属又はこれらを含む合金である上記(1)に記載の金属の表面処理方法。
(3)処理対象の金属が、チタン又はチタン合金である上記(1)又は(2)に記載の金属の表面処理方法。
(4)加熱処理の温度が、800〜1200℃である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属の表面処理方法。
(5)加熱処理の温度が、800〜1100℃である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属の表面処理方法。
(2)処理対象の金属が、元素周期表の4族、5族、6族の金属又はこれらを含む合金である上記(1)に記載の金属の表面処理方法。
(3)処理対象の金属が、チタン又はチタン合金である上記(1)又は(2)に記載の金属の表面処理方法。
(4)加熱処理の温度が、800〜1200℃である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属の表面処理方法。
(5)加熱処理の温度が、800〜1100℃である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属の表面処理方法。
本発明の金属の表面処理方法によれば、例えばチタンに対するβ安定化元素として知られる鉄を拡散させることなく、窒素を拡散させることができ、耐摩耗性の改善等、チタン等の金属の表面改質を効率的に行うことができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の金属の表面処理方法は、表面処理を行う処理対象の金属を、窒素を含む雰囲気中で加熱処理することにより、その処理対象の金属の表面に窒素を拡散させる方法である。加熱処理を行う際に、(i)炭素粉末、あるいは(ii)炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末を、処理対象の金属とは非接触の状態で配置することを特徴とする。本発明に係る金属の表面処理方法は、種々の産業用部品、生体材料、構造材、生活用品等として利用される金属材料の表面硬さや耐摩耗性等を向上させる一種のドライプロセスによる表面改質法である。
本発明の金属の表面処理方法は、表面処理を行う処理対象の金属を、窒素を含む雰囲気中で加熱処理することにより、その処理対象の金属の表面に窒素を拡散させる方法である。加熱処理を行う際に、(i)炭素粉末、あるいは(ii)炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末を、処理対象の金属とは非接触の状態で配置することを特徴とする。本発明に係る金属の表面処理方法は、種々の産業用部品、生体材料、構造材、生活用品等として利用される金属材料の表面硬さや耐摩耗性等を向上させる一種のドライプロセスによる表面改質法である。
図1及び図2は、本発明の金属の表面処理方法を実施するための装置の一例を示しており、図2は、図1における加熱炉10内に挿入された坩堝Aの拡大断面図である。坩堝A内には、上部に(i)炭素粉末、あるいは(ii)炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末(以下、「炭素粉末等1」という)が配置され、その下部には、炭素粉末等1とは非接触の状態で、表面処理を行う処理対象の金属2が配置される。次いで、ガスボンベ20から加熱炉10内に窒素を含むガスを流しながら、加熱炉10内を加熱する。なお、図1の装置では、炉内雰囲気を効率良く窒素置換するため、加熱炉10に真空ポンプ30が接続されている。図1の装置により、金属の表面に窒素を拡散させて硬質な表面改質層を形成することができる。加熱処理による昇温時に一酸化炭素又は二酸化炭素が発生するが、それにより坩堝A内の酸素分圧が低下し、それに伴って処理対象の金属表面の酸化皮膜が分解・消失し、加熱炉10内に導入されたガス中の窒素が拡散浸透し易い環境が作られるためと考えられる。
処理対象の金属2としては、純金属、合金、純金属や合金同士又は純金属や合金と非金属とを一体的に組み合わせた複合材料等、窒化又は窒素吸収により表面改質され得る金属材料であれば適用可能であり、好ましくは、元素周期表の4族(チタン、ジルコニウム、ハフニウム等)、5族(バナジウム、ニオブ、タンタル等)、6族(クロム、モリブデン、タングステン等)の金属又はこれらを含む合金である。具体的には、純チタン、チタンにアルミニウム、モリブデン、銅、マンガン等の元素を添加して形成されたチタン合金、鉄にクロム、ニッケル等を添加して作られたステンレス鋼、元素周期表の4族、5族、6族の金属又はこれらを含む合金とステンレス鋼とから形成された複合材料、等が挙げられる。処理対象の金属2がチタン又はチタン合金からなるチタン製品である場合には、チタン製品の表面層に窒素を拡散させることにより窒化チタンの表面改質層が形成される。また、処理対象の金属2がステンレス鋼の場合には、表面層に窒素を拡散吸収させることによりステンレス鋼中の鉄やクロムが窒化あるいは窒素吸収された表面改質層が形成される。また、処理対象の金属2が元素周期表の4族、5族、6族の金属又はこれらを含む合金の場合には、チタンと同じように窒化物を形成し易いことから、チタンと同じように表面層に窒素を拡散させることにより窒化物の表面改質層が形成される。また、処理対象の金属2が複合材料の場合には、例えば、表面の元素周期表の4族、5族、6族の金属あるいはステンレス鋼の一方又はその両方の表面に窒素を拡散させた表面改質層が形成される。その他、図2においては、処理対象の金属2の形状は板状に成形されているが、これに限定されず、処理対象の金属2は、例えば、自動車・自動二輪車、宇宙・航空機、船舶等の各部品、バイト等の材料加工用の工具、人工関節等の生体材料、板材、柱等の土木・建築物の構造材、化学反応容器、生活用品等、その他種々の利用目的に応じた形状、大きさに成形されているものを適用することができる。
炭素粉末等1は、加熱時に酸素と反応し易い炭素を供給する炭素供給源である。通常、処理対象の金属は加熱されると周辺の酸素と反応して表面が酸化され易い。しかしながら、金属2と非接触の状態で炭素粉末等1を配置して加熱を行うことにより、加熱炉10内や窒素を含むガスに含まれる微量の酸素が炭素粉末等1と反応して一酸化炭素又は二酸化炭素を生成する。このCOあるいはCO2ガスが坩堝A外へ排出されることで、炭素粉末等1の下部に、酸素分圧が低いクリーンな窒素雰囲気が形成され、その結果、金属2の表面への窒素の拡散(窒化又は窒素吸収)が促進されることとなる。このことは、加熱炉10外に排出される窒素を含むガス中にCOあるいはCO2が検出されることから確認することができる。また、炭素粉末等1と処理対象の金属2は非接触状態とするため、金属2の表面への炭素や鉄の拡散は低く抑えられ、窒素を主体的に拡散させることができる。
炭素粉末等1としては、(i)炭素粉末、あるいは(ii)炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末を用いることができる。炭素粉末は、例えば、活性炭粉末、グラファイト粉末、木炭粉末等の炭素を主成分とする炭素材料からなる。鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金としては、例えば、鉄に炭素を含有した炭素鋼、炭素鋼よりも炭素含有量が多い鋳鉄、その他炭素を含有した鉄基合金、鉄・炭素以外にクロム、ニッケル等が含有されたステンレス鋼等、その他の任意の合金元素が含有された特殊鋼(合金鋼)が挙げられる。炭素を含む鉄合金は、例えば、炭素が0.1〜6.7重量%、好ましくは、0.1〜4重量%程度含むものが良い。なお、炭素粉末等1には、必要に応じて、例えば、炭化ケイ素等の炭素化合物の粉末等、その他加熱時に炭素を供給して処理対象の金属表面に還元又は酸化抑制作用を与え得る物質の粉末を混合しても良い。炭素粉末等1においては、加熱時に焼結して粉末を入れる容器に付着することを避けるため、例えば、酸化アルミニウム粉末等の焼結防止剤を混合しても良い。
好適には、炭素粉末等1として、炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末を用いると良い。後述の実施例に示すように、炭素粉末等1として炭素粉末のみを使用した場合に比べ、混合粉末を用いた方が、処理対象の金属表面の改質効果が高くなることが実験的に分かっている。その理由は詳しくは判明していないが、加熱時には鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末から離脱した炭素の反応性が高く、高温でも比較的安定性がある炭素粉末を単独で用いたものよりも、粉末全体として炭素と酸素とが反応し易くなるためと考えられる。その結果、金属表面の還元や酸化抑制及び窒素拡散をより促進させると考えられる。さらに、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末だけでは加熱時に焼結し易く、粉末を入れる容器に付着して好ましくないため、焼結しにくい炭素粉末を混合することで過度の焼結を防ぐことができる。炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末との混合比は適宜設定することができるが、例えば、体積比で2:8〜8:2の範囲で混合することが好ましい。
炭素粉末等1の平均粒径は、粉末の組成によっても異なるが、例えば、数μm〜数百μm程度であることが好ましい。炭素粉末等1の粒径が極端に小さいと、加熱時に粉末が焼結し易くなり、気体等(窒素や一酸化炭素、二酸化炭素)が粉末中を通過し難くなって、金属表面に対する還元や酸化抑制及び窒素拡散が促進されず、処理効率が低下する。また、炭素粉末等1の粒径が大き過ぎても、炭素粉末等1による効果が発揮されず、処理効率が悪くなる。なお、炭素粉末等1として2種以上の粉末を混合して用いる場合には、粒径を揃えると良い。
加熱処理を行う雰囲気は、窒素を含む雰囲気であれば適用可能である。通常は、雰囲気中の窒素ガスの純度は高い方が良く、例えば99vol%以上であることが好ましいが、より低い純度とすることもでき、例えば大気中で加熱処理を行うことができる。特に、炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末が坩堝Aの上部を全て覆う場合のように、多量の炭素粉末等1を使用する場合には、雰囲気中の窒素濃度が空気レベルであっても十分な効率で表面処理を行うことができる。
加熱炉10や坩堝Aの構造、坩堝A内の炭素粉末等1や処理対象の金属2の位置は、図1及び図2の例に限定されるものではなく、(a)雰囲気に含まれる酸素がCO又はCO2ガスとして坩堝Aの外へ排出可能であり、また、(b)金属2の周囲に、酸素分圧が低い窒素雰囲気が形成されるような構造、位置であれば採用することができる。例えば、図2では、炭素粉末等1を金属2の上部に配置しているが、炭素粉末等1を金属2の下部に配置したり、金属2を取り囲むように非接触状態で炭素粉末等1を配置しても良い。あるいは、炭素粉末等1と金属2とをセパレータを介して接触させて配置することもできる。また、図2の例では、炭素粉末等1は一つの容器中に一段に配置されているが、これに限定されず、二段もしくは三段又はそれ以上積み重ねたトレー状の容器に炭素粉末等1を入れることもできる。本発明における窒素拡散の機構を考慮すると、炭素粉末等1の量は多い方が好ましく、また炭素粉末等1と金属2との距離は近い方が好ましい。実際の距離は、炭素粉末等1の量や金属2の形状等によっても異なり特に限定されるものではないが、例えば、0.01mm〜1cm程度とすることにより良好な改質効果を得ることができる。
また、図2では、坩堝Aは、例えば、蓋A1で閉蓋されているが、閉蓋した状態でも坩堝Aに窒素ガスが入るようになっている。この蓋A1は、加熱炉10内を窒素置換する前に真空ポンプで真空引きする際に、炭素粉末等1が飛散したり、真空ポンプ内に吸引されるのを防止するためのものである。蓋A1は、例えば、耐熱性のある磁器からなるが、加熱時には焼失して坩堝Aを開口させ得る紙等で形成しても良い。なお、蓋A1は必ずしも必要とはしない。
窒素を含む雰囲気は、図1に示すように、加熱炉10内を窒素を含むガスで満たすことにより形成される。窒素を含む雰囲気は、処理対象の金属2の表面に窒素を拡散させるための窒素源を供給する窒素供給源手段と、金属2の酸化防止手段とを兼用する。加熱炉10は、例えば、図示しない開閉扉が設けられており、処理対象の金属2等を配置した坩堝Aを出し入れすることができる。本実施形態では、窒素を含む雰囲気は、ガスボンベ20から供給管を介して窒素を含むガスを加熱炉10内に一端側から所定の流速で流入させつつ、加熱炉10の他端側から排気管を介して流出させながら保持されている。窒素を含むガスの流量は適宜設定することができるが、流量が多いと、金属2の近傍に形成されたクリーンな窒素(酸素分圧が低い窒素)雰囲気が除かれ易くなるため、流量は比較的少ない方が好ましい。装置の規模にもよるが、例えば毎分0.1〜1Lとすることができる。加熱炉10内に窒素を含む雰囲気を形成する際には、例えば、まず加熱炉10内の空気(酸素)を真空ポンプ30によって除いた後、ガスボンベ20から窒素を含むガスを加熱炉10内に導入することにより、窒素の濃度が高い雰囲気を形成する。窒素を含む雰囲気を形成しても、酸素を完全に除くことは困難であり、炭素粉末等1の炭素と反応させることで、一酸化炭素又は二酸化炭素を生成させて系外に除去する。図1においては、真空ポンプ30は、例えば、窒素を含むガスの供給管に切替えバルブを介して接続されている。バルブを切替えて、真空ポンプ30による加熱炉10内の真空引きとガスボンベ20から加熱炉10内への窒素を含むガスの供給を適宜切替えることができる。
加熱炉10は、例えば、加熱処理室の周りに発熱体が配置され、該処理室内を長時間安定して高温状態に保持できる電気炉等により実現されている。加熱温度は、例えば、500℃〜処理対象の金属の融点未満の温度とすることができ、昇温時のCOガスの発生が600〜700℃付近でピークを迎えることを考慮すると、800〜1200℃の範囲内とすることが好ましい。特に、炭素粉末と鉄粉末との混合粉末を用いる場合には、この混合粉末は1150℃付近で溶融してしまう(共晶反応による溶融)ため、炭素粉末等1を入れる容器を繰り返し使用することを考慮すると、800〜1100℃が適正温度である。加熱温度があまりに低いと、炭素粉末等1による処理対象の金属2の表面の還元や酸化抑制、及び窒素拡散がほとんど起こらない。一方、加熱温度が高いほど短時間で金属2の表面をより硬く改質することができる。しかしながら、加熱温度が高過ぎると、処理対象の金属そのものの組織や機械的性質にダメージを与えるため、金属が劣化し製品価値を下げてしまうおそれがある。したがって、加熱温度は、表面改質できる加熱温度の範囲において設定されることが望まれる。また、加熱時間は任意であり、加熱時間が長いほど処理対象の金属表面の改質層が厚く形成される。例えば、処理対象の金属2の大きさ等によっても異なるが、加熱時間は、例えば1時間〜4時間とすることができる。
上記のように、本発明に係る金属の表面処理方法では、処理対象の金属を炭素粉末等と非接触の状態として窒素を含む雰囲気中で加熱処理することにより、炭素粉末等に由来する炭素を酸化させて系外に排出しながら、金属表面への窒素の拡散を促進させる。これにより、金属表面には、窒素が拡散吸収された表面改質層が形成される。例えば、処理対象の金属がチタンであれば、チタン表面には窒素が侵入して窒化チタン層(TiN層)が形成され、該チタン製品の表面自体を改質して表面硬度、耐磨耗性が改善される。また、処理対象の金属がステンレス鋼製品であれば、ステンレス鋼の表面に窒素が侵入して鉄又はクロムが窒化あるいは窒素吸収されてステンレス鋼製品の表面自体を改質することができる。特に、例えば、鉄とクロムとからなるステンレス鋼(SUS430等のフェライト系ステンレス鋼)であれば、高価なニッケルを添加することなく、窒素が導入され、このような材料は高窒素ステンレス鋼、窒素含有Niフリーステンレス鋼等と呼ばれ、生体材料として用いることができる。このように、特殊な装置を用いることなく、加熱炉等の極めて簡単な設備や装置だけで、簡便に金属の表面処理を行うことができる。さらに、低コストで価値の高い金属製品を提供でき、広い分野に実用することができる。
また自動車等に使われるチタン部品においては、従来、酸化処理(高温中でチタンに酸素を固溶させ、表面硬化させる)が行われている。この酸化処理には、表面に形成された酸化皮膜によって疲労強度が低下するという問題点があった。表面の酸化皮膜は、本発明の表面処理方法によって分解・消滅させることができるため、酸化処理後の「後熱処理」としても本発明を利用することができる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)チタンの表面処理
図1及び図2に示す装置を用いて、チタン板の表面処理を行った。チタンの試料厚さは1mm、上面の面積は100mm2とした。また、炭素粉末等として、炭素粉末(グラファイト粉)のみ、あるいはグラファイト粉と鉄粉との混合粉末を、その組成比(体積比)を変化させて用いた。この炭素粉末等の使用量は約0.7mlであり、炭素粉末等を入れた容器の底部と試料(チタン板)との距離は約10mmに設定した。この状態で、窒素ガスの流量を毎分0.5Lとし、電気炉により1000℃で1時間の加熱処理を行った。
図1及び図2に示す装置を用いて、チタン板の表面処理を行った。チタンの試料厚さは1mm、上面の面積は100mm2とした。また、炭素粉末等として、炭素粉末(グラファイト粉)のみ、あるいはグラファイト粉と鉄粉との混合粉末を、その組成比(体積比)を変化させて用いた。この炭素粉末等の使用量は約0.7mlであり、炭素粉末等を入れた容器の底部と試料(チタン板)との距離は約10mmに設定した。この状態で、窒素ガスの流量を毎分0.5Lとし、電気炉により1000℃で1時間の加熱処理を行った。
図3は、表面処理前後の試料外観の写真である。処理前(a)は、試料の表面は金属光沢を示しているが、鉄粉:グラファイト粉=5:5(体積比)の混合粉末を用い、窒素フロー中、1000℃で1時間の加熱処理を行った後(b)には、表面はきつね色(Golden brown)を呈した。通常、窒化チタン(TiN)は黄金色といわれているため、窒化チタンに近い化合物が表面に形成されていることが示唆された。
図4は、上記の加熱処理を行い、炉冷した試料に対してX線回折測定を行った結果である。鉄粉とグラファイト粉とを含む混合粉末を配置した場合には、いずれの組成比(5:5、及び2:8)においてもTiNがメインピークとして観察された。また、Ti2Nの生成も確認された。グラファイト粉のみを配置した場合にもTiN及びTi2Nは認められた。次に、表面処理後のチタン断面を光学顕微鏡により観察した。図5は、チタン断面の光学顕微鏡写真であり、(a)は鉄粉:グラファイト粉=5:5(体積比)の場合、(b)は鉄粉:グラファイト粉=0:10(体積比)の場合である。図5に示すように、表面の窒化物層は、鉄粉及びグラファイト粉を含む混合粉末を用いた方が、グラファイト粉のみを用いた場合に比べて厚く形成されることが明らかとなった。
図6は、混合粉末の組成と、表面の窒化層の厚さ及び表面硬さとの関係を示すグラフである。窒化層の厚さ及び表面硬さは、試料の上面(ガスに接した面)と下面(坩堝に接した面)とで区別して評価した。図6の結果から、鉄粉とグラファイト粉の最適な混合比は4:6(体積比)であることが分かった。また、グラファイト粉のみを使用する場合に比べて、鉄粉を混合した方が窒化層の厚さや表面硬さが増加する傾向が見られた。さらに、試料の上面及び下面では、窒化層の厚さはいずれも4μm程度であり、著しい差はなかったが、表面硬さは下面の方が高かった。これは、酸素分圧が低い窒素雰囲気が坩堝の底部に近いほど形成され易いためと考えられる。
(実施例2)クロムめっき鉄板の表面処理
チタン板に代えて、クロムめっきした鉄板(低炭素鋼板)を試料とした以外は、上記実施例1と同様にして試料表面の表面処理を行った。試料厚さは1mmであり、加熱処理の条件は1000℃で1時間、窒素フローは毎分0.5Lである。
チタン板に代えて、クロムめっきした鉄板(低炭素鋼板)を試料とした以外は、上記実施例1と同様にして試料表面の表面処理を行った。試料厚さは1mmであり、加熱処理の条件は1000℃で1時間、窒素フローは毎分0.5Lである。
図7は、表面処理前後の試料のX線回折測定を行った結果である。図7に示すように、加熱処理によって窒化クロム(CrN、Cr2N)のピークが観察され、表面が窒化されていることが明らかとなった。
1 炭素粉末等
2 金属
10 加熱炉
20 ガスボンベ
30 真空ポンプ
A 坩堝
A1 蓋
2 金属
10 加熱炉
20 ガスボンベ
30 真空ポンプ
A 坩堝
A1 蓋
Claims (5)
- 表面処理を行う処理対象の金属を、窒素を含む雰囲気中で加熱処理することにより、該処理対象の金属の表面に窒素を拡散させる金属の表面処理方法であって、(i)炭素粉末、あるいは(ii)炭素粉末と、鉄又は鉄を主成分とし炭素を含有した鉄合金の粉末とを含む混合粉末を、該処理対象の金属とは非接触の状態で配置して加熱処理を行う前記表面処理方法。
- 処理対象の金属が、元素周期表の4族、5族、6族の金属又はこれらを含む合金である請求項1に記載の金属の表面処理方法。
- 処理対象の金属が、チタン又はチタン合金である請求項1又は2に記載の金属の表面処理方法。
- 加熱処理の温度が、800〜1200℃である請求項1〜3のいずれかに記載の金属の表面処理方法。
- 加熱処理の温度が、800〜1100℃である請求項1〜4のいずれかに記載の金属の表面処理方法。
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