JP2017052891A - オリゴマー再生物 - Google Patents

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Abstract

【課題】大掛かりな装置やコストをかけることなく、ポリエステル系樹脂を含む被処理物から新たなポリエステル系樹脂の原料を得ることを目的とする。【解決手段】ポリエステル系樹脂を含む被処理物を分解して得られるオリゴマー再生物であって、重量平均分子量(Mw)が200〜5000であり、カサ密度が0.2〜1.5g/cm3であるオリゴマー再生物とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリエステル系樹脂を含む被処理物を分解して得られるオリゴマー再生物に関する。
ポリエステル系樹脂は、その優れた特性から様々な用途に広く用いられている。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)は、化学的安定性が優れていることから、繊維やフィルム、樹脂等の生活関連資材として、特に飲料水や炭酸飲料用のボトル等として食品分野においても大量に生産され使用されている。しかしながら、生産量や使用量の増大に伴って大量に発生する繊維やフィルム、樹脂製品の廃棄物、規格外品の成形品等の処理は、現在大きな社会問題になりつつあり、また、資源の有効利用の観点からもこれらのポリエステル系樹脂成形品を有効にリサイクルする方法が求められている。
そのようなリサイクル方法としては、マテリアルリサイクル法やケミカルリサイクル法等の各種方法が提案されている。
マテリアルリサイクル法は、ポリエステル系樹脂を分解することなく、高温で溶融して再利用するものであるため、その熱履歴によりリサイクル品の品質はリサイクル前のポリエステル系樹脂と比べて徐々に低下するという問題点がある。また、ポリエステル系樹脂以外の成分(不純物)が含まれていると、該不純物を完全に除去するのが難しいため、さらに品質が低下するという問題点もある。そのため、リサイクル前のポリエステル系樹脂と同等品質のものを得ることは、射出成型時に発生するランナを粉砕後そのまま使用する等の一部の場合を除き、困難であるという問題を抱えている。
一方、ケミカルリサイクル法としては一般的に、(1)原料化、(2)還元剤化、(3)ガス・油化、(4)サーマルリサイクルの4種類に分類できる。この中で原料化は、リサイクル前のポリエステル系樹脂と同等品質のものを得ることができるため、有利な方法であるとして注目されている。
特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートの原料化の例として、ポリエチレンテレフタレートを、エチレングリコール分解/メタノール処理により、テレフタル酸ジメチル、さらにはテレフタル酸にまで分解し、再度エチレングリコールと縮重合させて「ボトルtoボトル」にする方法が開示されている。
また、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートに加水分解触媒としてのテレフタル酸を添加し、300℃の熱水中で加水分解すると、約10分でテレフタル酸が100%の収率で得られることが報告されている。
さらに、特許文献3には、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を、処理温度における飽和水蒸気圧の圧力で満たされた水蒸気雰囲気内に曝露させ、その処理温度で発生した飽和水蒸気によって前記被処理物中に含まれるポリエチレンテレフタレートを加水分解し、エチレングリコールを気体又は液状成分として、テレフタル酸を固形成分として分別回収する方法が開示されている。
特開2003−119316号公報 特開2007−332361号公報 特開2008−308416号公報
ポリエステル系樹脂は、限りある石油資源から得られる合成樹脂であるので、その供給を持続可能とする社会を構築するためには、ポリエステル系樹脂の廃棄物をケミカルリサイクルする技術の確立は喫緊の課題である。特にポリエチレンテレフタレートは、耐薬品性、耐熱性に優れ、食品に対して使用する場合はその安全性も良好であるため、各種分野において汎用されており、そのリサイクルは重要な課題となっている。
特許文献1の方法は、作業が煩雑でコストがかかることや設備投資額が大きくなる等の課題を有し、特許文献2の方法ではジカルボン酸を添加せずに150〜350℃の高温水中にてポリエステルを加水分解する場合には、充分に加水分解ができないことが示されており、高温水中での加水分解においては加水分解触媒としてのジカルボン酸が不可欠であることが示唆される。
また、特許文献3の方法は内部に攪拌手段を備えた耐圧性の処理チャンバーや、エチレングリコールを回収するための冷却塔を準備しなければならず、装置が大掛かりとなってしまい改善の余地があった。また、ポリエチレンテレフタレートが不純物を含む場合には、加水分解処理によって回収されたテレフタル酸及びエチレングリコールの品質が低下するという問題点がある。
特許文献1〜3に代表される従来技術は、被処理物であるポリエステル系樹脂をモノマー単位まで分解して原料化し、再利用するものである。よって、従来技術で得られるようなリサイクルされたテレフタル酸を用いてポリエステル系樹脂を得るには、通常のポリエステル系樹脂の合成と同様の合成工程を経る必要があり、コストも時間もかかってしまう。
そこで、本発明は、大掛かりな装置やコストをかけることなく、ポリエステル系樹脂を含む被処理物から新たなポリエステル系樹脂の原料を得ることを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル系樹脂の分解をオリゴマー生成の段階で停止させ、得られたオリゴマー再生物を原料として用いてポリエステル系樹脂の再合成を行えば、モノマー単位まで分解して原料化する従来技術に比べて、原料化のためのコストだけでなくポリエステル系樹脂の合成に係るコストを低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(9)によって達成される。
(1)ポリエステル系樹脂を含む被処理物を分解して得られるオリゴマー再生物であって、重量平均分子量(Mw)が200〜5000であり、カサ密度が0.2〜1.5g/cmであることを特徴とするオリゴマー再生物。
(2)重量平均分子量(Mw)が1000を超えて5000以下であることを特徴とする前記(1)に記載のオリゴマー再生物。
(3)前記オリゴマー再生物を溶融した溶融液を分光測色計で測定したとき、前記溶融液のb値が15以下であることを特徴とする前記(2)に記載のオリゴマー再生物。
(4)重量平均分子量(Mw)が200〜1000であり、カサ密度が0.5〜1.5g/cmであることを特徴とする前記(1)に記載のオリゴマー再生物。
(5)前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のオリゴマー再生物。
(6)前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする前記(5)に記載のオリゴマー再生物。
(7)前記ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸成分のモノマーの含有量が35質量%以下であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のオリゴマー再生物。
(8)前記ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートであり、前記ポリカルボン酸成分のモノマーがテレフタル酸であることを特徴とする前記(7)に記載のオリゴマー再生物。
(9)オリゴマー再生物の製造方法であって、ポリエステル系樹脂を含む被処理物を、水蒸気雰囲気に曝露して加水分解し、重量平均分子量(Mw)が200〜5000であり、カサ密度が0.2〜1.5g/cmであるオリゴマー再生物を得ることを特徴とするオリゴマー再生物の製造方法。
本発明のオリゴマー再生物によれば、取り扱いが容易であり、該オリゴマー再生物を用いてポリエステル系樹脂を作製することによりモノマー単位の原料を用いてポリエステル系樹脂を作製する場合と比べて、合成時間もコストも著しく低減することができる。
また、重量平均分子量が1000を超えて5000以下であるオリゴマー再生物は、ポリエステル系樹脂由来の不純物の存在による着色が抑制されているので、このオリゴマー再生物を用いて再合成したポリエステル系樹脂の着色が抑制され、結果、ポリエステル系樹脂を含む被処理物の商品価値の低下を防止することができる。
また、重量平均分子量が200〜1000であり、カサ密度が0.5〜1.5g/cmであるオリゴマー再生物は、単位質量あたりの体積が小さくできるので保管スペースを小さくでき、輸送コストを低減することができる。
本発明のオリゴマー再生物の製造方法を説明するための製造工程図である。 耐圧性容器内に収容したポリエステル系樹脂を含む被処理物を加水分解し、オリゴマー再生物を得る具体的な装置の一例を説明するための図である。 実施例におけるオリゴマー再生物の溶融液の外観観察の評価基準を示す写真図である。
以下、本発明のオリゴマー再生物について、詳細に説明する。
なお、本発明において、オリゴマーとは重量平均分子量(Mw)が10000以下であり、何らかの繰り返し単位を有する重合体を指すものとする。
<オリゴマー再生物>
本発明のオリゴマー再生物は、ポリエステル系樹脂を含む被処理物を分解して得られるオリゴマーであって、その重量平均分子量(Mw)が200〜5000であり、カサ密度が0.2〜1.5g/cmであることを特徴とする。
ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリオール成分とポリカルボン酸成分とを重合触媒の存在下で反応(重縮合)させて得られるエステル結合部位を有する樹脂が挙げられ、具体的には熱可塑性樹脂が挙げられる。
このポリエステル系樹脂を含む被処理物をケミカルリサイクル法によって処理することにより、ポリオール成分とポリカルボン酸成分の構成ユニットを含むオリゴマー再生物が得られる。
本発明において、オリゴマー再生物の重量平均分子量(Mw)は200〜5000である。重量平均分子量(Mw)が200以上であると、ポリエステル系樹脂がモノマー単位にまで分解されることがなく、また、重量平均分子量(Mw)が5000以下であると、不純物の除去がしやすく取り扱い性に優れたオリゴマー再生物を得ることができる。
なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算による平均分子量として測定することができる。また、重量平均分子量が低い場合(例えば、重量平均分子量が500以下の場合)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定してもよい。
また、本発明のオリゴマー再生物は、カサ密度が0.2〜1.5g/cmである。カサ密度が0.2g/cm以上であると、保管スペース及び輸送コストを減少することができ、カサ密度が1.5g/cm以下であると、不純物が少なく、ポリエステル系樹脂の再合成の際に樹脂への着色を抑制することができる。
本発明者らの検討によれば、オリゴマー再生物の重量平均分子量について、上記範囲の中でも特定範囲において、さらなる効果が高まる知見を得た。
具体的には、オリゴマー再生物の重量平均分子量(Mw)が1000を超えて5000以下である場合は、精製により不純物を十分に除去できるため、オリゴマー再生物の着色が防止され、該オリゴマー再生物を用いて再合成したポリエステル系樹脂の成形品の着色をさらに抑制することができる。重量平均分子量が1000を超える場合、溶融時の濁りを抑えるという観点から、その上限は4700であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂を含む被処理物を分解して得られるオリゴマー再生物には、ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられた重合触媒や、金属元素、顔料、染料等の不純物が含まれる場合がある。本発明において、重量平均分子量(Mw)が1000を超えて5000以下のオリゴマー再生物は、精製処理によりその中に含有される不純物を除去しやすくなる。オリゴマー再生物を溶融した溶融液を分光測色計で測定したとき、溶融液のb値(黄変度)が15以下であることが好ましく、14以下がより好ましい。溶融液のb値が15以下であると、ポリエステル樹脂として問題なく使用できると評価できる。
なお、分光測色計としては、例えば、コニカミノルタ株式会社製「CM−5」等が挙げられる。
また、オリゴマー再生物の重量平均分子量(Mw)が200〜1000である場合は、より高カサ密度のオリゴマー再生物を提供でき、その保管スペース及び輸送コストをさらに減少することができる。オリゴマー再生物の重量平均分子量(Mw)が200〜1000である場合のカサ密度は0.5〜1.5g/cmであることが好ましく、0.7〜1.5g/cmであることがより好ましく、1.0〜1.5g/cmであることがより好ましい。
本発明のオリゴマー再生物によれば、取り扱いが容易であり、該オリゴマー再生物を用いてポリエステル系樹脂を作製することによりモノマー単位の原料を用いてポリエステル系樹脂を作製する場合と比べて、合成時間もコストも著しく低減することができる。また、重量平均分子量(Mw)が200〜1000のオリゴマー再生物は、よりカサ密度が高くなるため、単位質量あたりの体積をより小さくでき、重量平均分子量(Mw)が1000を超えて5000以下のオリゴマー再生物は、精製が容易にできるため不純物の含有量を低減させることができ、ポリエステル樹脂の着色を抑制できる。
以下、本発明のオリゴマー再生物を得るポリエステル系樹脂及びポリエステル系樹脂を含む被処理物について説明する。
上記したように、ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリオール成分とポリカルボン酸成分とを重合させて得られる。
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、1,18−オクタデカンジオール、ダイマージオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、キシリレンジオール、ナフタレンジオール等の芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテルグリコールなどのジオール成分などが挙げられる。なお、ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオールや、ポリエステルポリオールなどのポリマー形態のポリオール成分であってもよい。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらを共重合させたコポリエーテル等のポリエーテルジオールなどが挙げられる。さらに、ポリオール成分としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールであってもよい。ポリオール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸などのジカルボン酸成分などが挙げられる。さらに、ポリカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸であってもよい。なお、ポリカルボン酸成分としては、これらのカルボン酸の酸無水物や低級アルキルエステルであってもよい。ポリカルボン酸成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリカロプラクトン(PCL)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)などの生分解性プラスチックもポリエステル系樹脂として使用できる。
またポリエステル系樹脂は、各種架橋剤により架橋されているものであってもよい。
本発明において、汎用性及びコストの観点から、好適に使用されるポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられ、中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ポリエステル系樹脂を用いて得られる被処理物の形態としては、特に制限されるものではなく、各種成形品、典型的には使用済であって再処理すべき各種成形品の廃棄物を使用することができ、例えば、繊維、フィルム、シート、飲料水や炭酸飲料用のボトル、粘着テープ、食品用トレイ等を挙げることができる。
また、上記被処理物としての各種成形品には、使用形態によってポリエステル系樹脂以外の各種添加剤等の原材料が配合されていることが多いが、本発明においては、これらの原材料の種類について制限されるものではない。
このような被処理物としての各種成形品に添加されていてもよい添加剤としては、例えば公知の難燃剤や可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、収縮防止剤、流動性改質剤、表面処理剤等が挙げられる。
また、上記被処理物は、ポリエステル系樹脂のみからなる成形品だけでなく、他の材料との複合品でもあってもよい。すなわち、ポリエステル系樹脂からなる層と、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を含む層との積層体のような複合品であってもよい。
具体的には、例えば被処理物が粘着テープである場合には、背面処理されたポリエステル系樹脂フィルムと、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等からなる粘着剤層との積層体や、さらにシリコーン系樹脂等からなる剥離剤を片面に有する剥離シートを粘着剤層表面に設けた積層体が挙げられるが、本発明ではこのような積層体であっても処理することが可能である。
なお、本発明のオリゴマー再生物の回収効率の観点からは、被処理物中のポリエステル系樹脂の含有割合は、例えば40質量%以上、好ましくは60質量%以上であるのがよい。
<オリゴマー再生物の製造方法>
次に、本発明のオリゴマー再生物の製造方法について説明する。
本発明のオリゴマー再生物は、ポリエステル系樹脂を含む被処理物を原料化するケミカルリサイクル法により得ることができ、好ましくは、水蒸気雰囲気下で分解することで得られる。
具体的には、本発明のオリゴマー再生物の製造方法は、(A)ポリエステル系樹脂を含む被処理物を、水蒸気雰囲気に曝露して加水分解し、粗オリゴマーを得る工程、(B)粗オリゴマーを溶媒に接触させ、溶媒中に不純物を溶出させる工程、及び(C)不純物が溶出した溶媒とオリゴマー再生物とを分離する工程を含む。
図1は、本発明のオリゴマー再生物の製造方法を説明するための製造工程図である。
図1に示したように、まず、ポリエチレン樹脂を含む被処理物を準備し、効率よく加水分解物(オリゴマー再生物)に分解され得るように、必要に応じて被処理物を適当なサイズに破砕もしくは裁断し、表面に付着する異物等を洗浄除去する(ステップS10,S11)。
本発明で使用されるポリエステル系樹脂を含む被処理物(ポリエステル系樹脂成形品)は、その種類や、その中に含まれるポリエステル系樹脂以外の原料について、特に制限されず、従来から公知又は公用の各種被処理物であることができる。
本発明において、被処理物はそのままの形状であってもよいが、効率よく加水分解物に分解され得るように、適当なサイズに破砕又は裁断し、さらに洗浄処理によって表面に付着している異物を除去しておくことが好ましい。
被処理物の破砕方法としては公知の方法を用いて行うことができ、例えば、必要に応じて裁断機で裁断し、その後に破砕する方法が挙げられる。破砕機としては、例えば、二軸回転せん断式破砕機、一軸回転せん断式破砕機等のせん断式破砕機、ハンマーミル、インパクトクラッシャー等の衝撃式破砕機、シュレッダー等を用いることができる。破砕物の大きさは特に制限はされず、加水分解時間や加水分解時の温度等に応じて適宜設定すればよい。下記で説明する工程(B)において、特定孔径の孔部を有する分離手段を用いることから、被処理物は、該孔径よりも大きいものとすればよい。
被処理物の洗浄方法としては、例えば、破砕物の上から散水洗浄する方法、破砕物を水中に搬送しながら洗浄する方法等が挙げられる。
(工程(A))
工程(A)では、ポリエステル系樹脂を含む被処理物を、水蒸気雰囲気に曝露して加水分解し、粗オリゴマーを得る(ステップS12)。
加水分解とは、よく知られているように、一つの結合がイオン的に開裂し、HO1分子がHとOHに分かれて、開裂位置に付加する分解反応である。
本発明において、工程(A)にて被処理物を水蒸気雰囲気下に曝露することにより、加水分解物とそれ以外の物質を分離させる。加水分解物にはポリエステル系樹脂のエステル結合が切断されて生成する粗オリゴマーを含む。
工程(A)において、ポリエステル系樹脂を含む被処理物を水蒸気雰囲気下に曝露する際の温度(以下、「水蒸気雰囲気温度」ともいう)は、ポリエステル系樹脂の種類に依存して適宜決定すればよいが、例えば100〜260℃であることが好ましく、より好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは140〜260℃である。前記温度の範囲内で処理することにより、ポリエステル系樹脂を水蒸気雰囲気下で効果的に加水分解できる。特に、ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートを含む場合は、加水分解反応時間の短縮と融点(ポリエチレンテレフタレートの融点:約260℃)の観点から、水蒸気雰囲気温度は、ポリエチレンテレフタレートの融点以下、例えば150〜260℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは180〜260℃、さらに好ましくは200〜260℃である。
加水分解時間は、例えば1分〜20時間であることが好ましく、より好ましくは5分〜10時間である。前記範囲内の時間で加水分解処理を行うことにより、粗オリゴマーが得られるとともに、副生成物の生成を抑制することができる。特に、ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートを含む場合は、粗オリゴマーが得られるという観点と副生成物抑制の観点から、加水分解時間は、例えば5分〜10時間の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは10分〜5時間である。
また、工程(A)では、常圧から加圧条件下である飽和水蒸気圧下で加水分解処理を行うのが好ましい。加圧条件下としては上記水蒸気雰囲気温度での飽和水蒸気圧が好ましく、飽和水蒸気圧としては、例えば0.4〜5MPaであることが好ましく、1〜5MPaであることがより好ましい。前記範囲内で加水分解処理を行うことにより、短時間で効率よく粗オリゴマーを得ることができる。
なお、工程(A)における水蒸気圧は、飽和水蒸気圧曲線に沿って上昇させるのが好ましく、このようなステップを採用することによって、被処理物としてのポリエステル系樹脂が熱分解を起こして炭化又は変性するのを防止することができる。水蒸気の供給は、公知の各種手段を採用することができ、例えば、加水分解処理を行う密閉容器内に水を貯留しておき、該水を加熱する方法、水蒸気発生装置により発生させた水蒸気を密閉容器内に導入する方法等が挙げられる。
また、本発明における工程(A)において、ポリエステル系樹脂を含む被処理物が水と接触しないような水蒸気雰囲気下に曝露された状態で、加水分解を開始することが好ましい。水と接触しないようにして水蒸気雰囲気下に曝露することで、被処理物が内部から分解されるので、効率良く分解処理することができる。
工程(A)において、ポリエステル系樹脂のエステル結合が切断され、粗オリゴマーが得られる。
本発明において、オリゴマー再生物の重量平均分子量は、例えば水蒸気雰囲気温度及び飽和水蒸気圧を特定値に設定した場合に、加水分解時間を適切に設定することにより、所望の範囲に調整することができる。なお、オリゴマー再生物のカサ密度は、オリゴマー再生物の重量平均分子量に相関する。
具体的には、オリゴマー再生物の重量平均分子量を200〜1000の範囲に調整するには、水蒸気雰囲気温度を195〜260℃、飽和水蒸気圧を1〜5MPa、加水分解時間を15〜600分の範囲に設定することができる。
また、オリゴマー再生物の重量平均分子量を1000を超えて5000以下の範囲に調整するには、水蒸気雰囲気温度を195〜260℃、飽和水蒸気圧を1〜5MPa、加水分解時間を3〜300分の範囲に設定することができる。
本発明において、工程(A)で得られる粗オリゴマーは、加水分解の進行度を調整することによって固体もしくは粘度を有する流動物として得られる。得られた粗オリゴマーをそのまま用いてもよいが、被処理物が加水分解により溶融しない物質を含む場合は、これらを分離することが好ましい。分離方法としては、例えば、流動化した粗オリゴマーが通り抜け可能な孔部を有する容器に粗オリゴマーとそれ以外の物質を含む混合物を移し、ろ過し、孔部を通過した粗オリゴマーを回収する方法や、被処理物を孔部を有する容器に収容して工程(A)の加水分解処理を行い、加水分解処理と同時に、得られた粗オリゴマーを容器の孔部から順次流下させて、別の容器で回収する方法等が挙げられる。被処理物を載置する容器の少なくとも底部に加水分解物取り出し用の孔部を設けておけば、その孔部から粗オリゴマーのみを流下させることができるため好ましい。この場合には粗オリゴマーは、流動化しないそれ以外の物質を分離することができる程度に溶融粘度を調整することが好ましい。
本発明において、ポリエステル系樹脂を含む被処理物は、密閉容器(耐圧性容器)内に設置された、被処理物を通過させず、かつ粗オリゴマーを通過させ得る孔部を備えている容器に載置し、この容器中で水蒸気による加水分解処理を行うことが好ましい。
該容器の材質は、粗オリゴマーを得る加水分解反応に影響を及ぼさない限り特に限定されないが、例えば、耐腐食性の金属材料やセラミックスなどからなる容器を用いることができる。
該容器の孔部は、被処理物を通過させずかつ粗オリゴマーを通過させることができれば、形状やサイズは特に限定されない。形状は、円形、多角形、不定形等が挙げられ、例えば容器は公知のパンチングメタルやメタルメッシュ等を利用することができる。サイズ(孔隙の最大長さ)は、上記した粗オリゴマーの溶融粘度に応じて適宜設定することが好ましい。
図2は、耐圧性容器内に収容したポリエステル系樹脂を含む被処理物を加水分解し、粗オリゴマーを得る具体的な装置の一例を説明するための図である。
図2(a)に示すように、ヒータ(図示せず)を備えた密閉容器(耐圧性容器)20内に、耐圧性容器20の上方に第1容器21が、該第1容器21の下部に第2容器22がそれぞれ設置されている。第1容器21は、被処理物Sを通過させずかつ粗オリゴマーH1を通過させ得る複数の孔部Aを備え、第1容器21内には、被処理物Sが収容されている。耐圧性容器20の底部には、ポリエステル系樹脂の加水分解処理に用いる水蒸気を発生するための水W2が貯留されている。なお水蒸気は、水W2を用いずに外部に設けた水蒸気発生装置(図示せず)により、耐圧性容器20内に供給されてもよい。
図2(b)に示すように、加水分解処理が実施されると、被処理物Sが加水分解される。加水分解の進行度を調整することによって、被処理物Sは流動化した粗オリゴマーH1となり、矢印で示すように第1容器21の孔部Aから落下する。落下した粗オリゴマーH1は、図2(c)に示すように、第2容器22に受け入れられ、放冷又は冷却手段を用いて冷却することにより固体化し、容易に回収することができる。また、加水分解により溶融しない物質S1は第1容器21内に残留する。
これにより、被処理物が加水分解により溶融しない物質を含む場合は、溶融しない物質が孔部Aから落下しないので、粗オリゴマーとそれ以外の物質を分離することができる。
本発明においては、上記のようにして得られた粗オリゴマーをオリゴマー再生物としてそのまま用いてもよいが、必要に応じて公知の精製方法により精製してもよい。
(工程(B))
工程(B)では、得られた粗オリゴマーを溶媒に接触させ、溶媒中に不純物を溶出させる(ステップS14,S15)。
粗オリゴマーには、上記したように不純物が含まれている場合があり、工程(B)ではこれらの不純物を溶媒中に溶出させ、工程(C)で不純物を分離しやすくする。
工程(B)において、粗オリゴマーと溶媒との接触方法としては、例えば、溶媒中に粗オリゴマーを浸漬する方法、粗オリゴマーをカラムに充填して溶媒を給液する方法等が挙げられるが、粗オリゴマーと溶媒を十分に接触させるという観点から、溶媒に粗オリゴマーを浸漬する方法が好ましい。
溶媒としては、不純物を溶解可能なものであれば特に制限されず、例えば、アルキレングリコール等の有機溶媒、水等が挙げられる。
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の炭素数2〜10のアルキレングリコールが挙げられ、中でもエチレングリコールが特に好ましい。
水としては、例えば、水道水、精製水、蒸留水、超純水、イオン交換水等が挙げられる。
溶媒として有機溶媒を用いる場合、有機溶媒は粗オリゴマーとの接触時に120℃以上に加熱することが好ましい。粗オリゴマーと有機溶媒とを120℃以上の温度で接触させることにより、不純物が有機溶媒中に溶出しやすくなり、抽出時間をコントロールしやすいため好ましい。有機溶媒の加熱温度(接触温度)は、沸点と不純物の溶解性の観点から選択すればよくエチレングリコールの場合、100〜195℃がより好ましく、120〜190℃がさらに好ましい。
なお、昇温速度は特に制限されないが、1〜30℃/分が好ましく、2〜10℃/分がより好ましい。
所望の加熱温度に昇温した後の粗オリゴマーと有機溶媒との接触時間(保持時間)は、不純物が溶媒中に溶出する十分な時間とすればよく、作業性を考慮して適宜調整すればよいが、所望の接触温度に昇温してから0〜3時間程度の時間を粗オリゴマーが有機溶媒に接触するようにすればよい。作業性の観点から、保持時間は0〜2時間がより好ましく、0〜1時間がさらに好ましい。なお、保持時間が0時間というのは、所望の温度に到達した直後に加熱が停止されることを意味する。
溶媒として水を用いる場合は、水と接触させる前に粗オリゴマーを粉砕するのが好ましい。粗オリゴマーを粉砕することにより、粗オリゴマーの表面付近だけではなく内部に存在する不純物も水中に溶出しやすくなり、オリゴマー再生物中の不純物を容易に低減することができる。
粉砕後の粗オリゴマーは、平均粒子径が0.1〜500μmであることが好ましく、0.3〜200μmであることがより好ましく、0.5〜50μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が500μm以下であれば十分に不純物を洗浄することができ、0.1μm以上であれば工程(B)の作業時間を長くかけることなく処理することができる。
粗オリゴマーの粉砕方法としては、例えば、乳鉢やハンマーミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等の通常の粉砕機を用いることができる。
なお、本発明において平均粒子径とは、レーザー式粒度分布測定装置(例えば、「マイクロトラック」(商品名、日機装株式会社製))を用いて湿式レーザー法で測定した体積基準の累積百分率50%相当粒子径(d50)である。
粗オリゴマーと水との接触温度は、特に限定されないが、20〜200℃であることが好ましい。粗オリゴマーと水とを20℃以上の温度で接触させることにより、不純物が有機溶媒中に溶出しやすくなり、抽出時間をコントロールしやすいため好ましく、200℃以下の温度で接触させることにより、加水分解を抑えることができ好ましい。接触温度は、不純物除去能力と加水分解を抑えるとの観点から、30〜195℃であることがより好ましく、40〜190℃がさらに好ましい。
なお、水を加熱する場合、昇温速度は特に制限されないが、1〜30℃/分が好ましく、2〜10℃/分がより好ましい。
所望の接触温度に昇温した後の粗オリゴマーと水との接触時間(保持時間)は、不純物が溶媒中に溶出する十分な時間とすればよく、作業性を考慮して適宜調整すればよいが、所望の接触温度に昇温してから0〜5時間程度の時間を粗オリゴマーが水に接触するようにすればよい。作業性の観点から、保持時間は0〜3時間がより好ましく、0〜1時間がさらに好ましい。
溶媒の添加量は、粗オリゴマー100質量部に対し、50〜5000質量部が好ましい。粗オリゴマーに対し溶媒を50質量部以上用いることで十分に粗オリゴマーを含浸することができるため好ましく、5000質量部以下であれば加熱する溶媒の量を少なくすることができるため好ましい。溶媒の添加量は、不純物除去能力と作業性の観点から、粗オリゴマーに対し、100〜3000質量部がより好ましく、100〜2000質量部が更に好ましい。
本発明において、溶媒として有機溶媒を用いる場合においても粗オリゴマーを所望の大きさに粉砕して用いてもよい。粗オリゴマーを粉砕することで有機溶媒に接触する表面積が大きくなり、不純物が溶け易くなるため処理時間を短縮することができる。
また、溶媒の加熱手段としては特に限定されず、ヒータ等の公知の加熱手段を用いて行うことができる。
(工程(C))
工程(C)では、不純物が溶出した溶媒と精製オリゴマーとを分離する(ステップS16)。
不純物が溶出した溶媒と精製オリゴマーとを分離する方法としては、公知の手段により行うことができ、例えば、膜分離、遠心分離、デカンテーション、蒸留、吸着等が挙げられ、中でも、作業の簡便性やランニングコストの観点から、膜分離により行うのが好ましい。
本発明において、工程(B)及び工程(C)は複数回行ってもよい。工程(B)と工程(C)を繰り返すことで、精製オリゴマー中の不純物をより低減することができる。
なお、得られたオリゴマー再生物は、必要に応じて公知の精製方法によりさらに精製してもよい。公知の精製方法としては、例えば、蒸留、吸着法、再沈殿法、抽出法、再結晶法、晶析法等が挙げられる。これらの精製法は組み合わせて行ってもよい。
以上のようにして得られたオリゴマー再生物は、つまり、工程(A)で得られた粗オリゴマー及び工程(B)、(C)で精製した精製オリゴマーは、いずれも本発明のオリゴマー再生物として用いることができる。
また、本発明において、オリゴマー再生物には、ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸成分のモノマーが50質量%以下であるのが好ましい。この形態によれば、再重合時に取扱いやすいという効果を奏することができる。さらに好ましい上記ポリカルボン酸成分のモノマー量は、35質量%以下である。なお、上記ポリカルボン酸成分のモノマー量を50質量%以下にするには、水蒸気雰囲気温度を195〜260℃、飽和水蒸気圧を1〜5MPa、加水分解時間を15〜600分とすることにより調整できる。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
(実施例1)
図2に示すような装置を用い、被処理物として厚みが10〜1000μmの範囲に粉砕された、フレーク状のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。該PETの重量平均分子量は、約40000である。
まず、図2(a)に示したように、ヒータ(図示せず)、第1容器21及び第2容器22を備えた耐圧性容器20を準備した。
第1容器21の内容積は5Lであり、その中に上記フレーク状のPETを100g投入した。耐圧性容器20の底部には、水蒸気を発生するための水W2が貯留され、ヒータによって加水分解処理に必要な量の水蒸気を発生させることができる。
第1容器21は、被処理物を通過させず、かつ工程(A)で生じる粗オリゴマーを通過させ得る大きさの孔部Aを備えている。孔部Aはステンレス製のパンチングメタルにより形成され、孔部Aのサイズは1mm角に設定した。
続いて、図2(b)および(c)に示したように、耐圧性容器20の水蒸気雰囲気温度を205℃、水W2を加熱した熱水の温度を215℃、飽和水蒸気圧(圧力1.8MPa)の条件下、上記フレーク状のPETを45分加水分解した(工程(A))。その後放冷し第1容器21に残る、固体状の粗オリゴマー98gを得た。
得られた粗オリゴマーについて、以下の方法により、重量平均分子量、数平均分子量、カサ密度及びテレフタル酸の含有量を測定した。
次に、得られた固体状の粗オリゴマーを別の容器に入れ、粗オリゴマー100質量部に対してエチレングリコールを300質量部の割合で添加し5℃/分の昇温速度でエチレングリコールを190℃まで加熱し、その温度を1時間保持した(工程(B))。
その後、容器中の溶媒を室温まで放冷し、オリゴマー再生物を溶媒中に析出させ、膜ろ過することにより精製オリゴマーを回収した(工程(C))。
得られたオリゴマー再生物について、以下の方法により、溶融色目について評価した。
粗オリゴマーの重量平均分子量、数平均分子量、カサ密度及びテレフタル酸の含有量、並びに精製後の精製オリゴマーの溶融色目の評価の結果を表1に示す。
〔重量平均分子量、数平均分子量の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づいて算出した。
装置:HPLC8220(商品名、東ソー株式会社製)
カラム:TSKgelsuper(商品名、東ソー株式会社製)
溶離液:ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)
流量:0.15mL/min
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計(RI)
標準物質:ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
〔カサ密度〕
JIS1628−1997に基づき、タップカサ密度を測定した。
計量容器は1Lのものを使用した。
〔テレフタル酸の含有量の測定〕
オリゴマー再生物に含まれるテレフタル酸含量を、以下の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により測定した。
分析装置:UltiMate3000(商品名、Thermo Fisher Scientific社製)
カラム:CAPCELLPAK(登録商標)(商品名、4.6mmφ×150mm、5μm、株式会社資生堂製)
溶離液組成:ギ酸水溶液/メタノールグラジエント条件
流量:1mL/min
検出器:DAD(ダイオードアレイ検出器、190nm〜800nm、242nm抽出)
カラム温度:40℃
注入量:5μL
〔溶融色目の評価〕
得られた精製オリゴマーを270℃で溶解後、目視にて外観を観察するとともに測色計でb値を測定した。
<外観評価>
以下に示す評価基準に従い、溶融液の外観を「〇」、「△」、「▲」、「×」の4段階で評価した。なお、参考として、各評価における溶融色目の評価基準を、図3に示す。
○:ポリエチレンテレフタレートが溶解し、透明である。
△:ポリエチレンテレフタレートが溶解し、少し白濁が観察された。
▲:ポリエチレンテレフタレートは溶解するが、ひどく白濁が観察された。
×:ポリエチレンテレフタレートが溶解しない。
<b値>
溶融液の黄変度(b値)を、分光測色計(「CM−5」(商品名、コニカミノルタ株式会社製))により測定した。
測定方式は、透過色測定方式(di:0°,de:0°)である。
b値が15以下であると、ポリエステル樹脂として問題なく使用できると評価できる。なお、ひどく白濁しているため400〜700nmの吸光度が1を超えた場合は「測定不能」と評価した。
(実施例2〜3及び比較例1〜2)
加水分解条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
得られた粗オリゴマーについて、重量平均分子量、数平均分子量、カサ密度及びテレフタル酸の含有量を測定し、また、得られた精製オリゴマーの溶融色目について評価した。結果を表1に示す。
(実施例4〜8及び比較例3)
被処理物として厚みが10〜1000μmの範囲に粉砕された、フレーク状のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。該PETの重量平均分子量は、約40000である。
実施例1と同様の耐圧性容器20を用い、図2(b)および(c)に示したように、耐圧性容器20の水蒸気雰囲気温度を205℃、水W2を加熱した熱水の温度は215℃、飽和水蒸気圧(圧力1.8MPa)の条件下、上記フレーク状のPETを表1に示す所定の時間加水分解した(工程(A))。孔部Aから落下した粗オリゴマーH1を第2容器22で受け入れ、放冷することにより、固体状の粗オリゴマーを得た。
得られた固体状の粗オリゴマーを、実施例1と同様にして精製した。つまり、粗オリゴマー100質量部に対してエチレングリコールを300質量部の割合で添加し5℃/分の昇温速度でエチレングリコールを190℃まで加熱し、その温度を1時間保持した後、容器中の溶媒を室温まで放冷し、オリゴマー再生物を溶媒中に析出させ、膜ろ過することにより精製オリゴマーを回収した。
得られた粗オリゴマーについて、重量平均分子量、数平均分子量、カサ密度及びテレフタル酸の含有量を測定し、また、得られた精製オリゴマーの溶融色目について評価した。なお、実施例4〜8、比較例3については、重量平均分子量、数平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により測定した。
実施例4〜8、比較例3で用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析条件は以下の通りである。
分析装置:UltiMate3000(商品名、Thermo Fisher Scientific社製)
カラム:CAPCELLPAK(登録商標)(商品名、4.6mmφ×150mm、5μm、株式会社資生堂製)
溶離液組成:ギ酸水溶液/メタノールグラジエント条件
流量:1mL/min
検出器:DAD(ダイオードアレイ検出器、190nm〜800nm、242nm抽出)
カラム温度:40℃
注入量:5μL
(実施例9)
被処理物として厚みが38μmのPETフィルム(三菱樹脂株式会社製「ダイアホイルT100G」)を用いた。該PETの重量平均分子量は、約20000である。
上記被処理物に対して、表1に記載の加水分解条件で、実施例1と同様の操作を繰り返した。
得られた粗オリゴマーについて、重量平均分子量、数平均分子量、カサ密度及びテレフタル酸の含有量を測定し、また、得られた精製オリゴマーの溶融色目について評価した。結果を表1に示す。
(実施例10〜11)
加水分解条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例9を繰り返した。
得られた粗オリゴマーについて、重量平均分子量、数平均分子量、カサ密度及びテレフタル酸の含有量を測定し、また、得られた精製オリゴマーの溶融色目について評価した。結果を表1に示す。
表1の結果から、実施例1〜11で得られた各オリゴマー再生物は、カサ密度も高く、溶融色目の結果も実用上十分であり、オリゴマー再生物を用いて再合成したポリエステル系樹脂の成形品は、着色が防止されることがわかった。中でも、実施例1〜3、9〜11は、溶融色目の結果が特に良好であり、図3からもわかるとおり、溶融物が透明であった。また、実施例4〜8はカサ密度も十分に高いため、単位質量あたりの体積が小さくできることがわかった。
一方、比較例1〜2は、オリゴマー再生物の重量平均分子量が200〜5000の範囲外であり溶融物に濁りが見られた。
本発明におけるオリゴマー再生物は、保管スペース及び輸送コストを減少でき、また該オリゴマー再生物を用いて再合成したポリエステル系樹脂の成形品は、着色が抑制される。したがって、本発明におけるオリゴマー再生物は、ケミカルリサイクル技術によって、限りある石油資源の供給を持続可能とする社会を構築の一助となり得る。
20 耐圧性容器
21 第1容器
22 第2容器
A 孔部
H1 粗オリゴマー
S 被処理物
S1 加水分解により溶融しない物質
W2 水

Claims (9)

  1. ポリエステル系樹脂を含む被処理物を分解して得られるオリゴマー再生物であって、重量平均分子量(Mw)が200〜5000であり、カサ密度が0.2〜1.5g/cmであることを特徴とするオリゴマー再生物。
  2. 重量平均分子量(Mw)が1000を超えて5000以下であることを特徴とする請求項1に記載のオリゴマー再生物。
  3. 前記オリゴマー再生物を溶融した溶融液を分光測色計で測定したとき、前記溶融液のb値が15以下であることを特徴とする請求項2に記載のオリゴマー再生物。
  4. 重量平均分子量(Mw)が200〜1000であり、カサ密度が0.5〜1.5g/cmであることを特徴とする請求項1に記載のオリゴマー再生物。
  5. 前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴマー再生物。
  6. 前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項5に記載のオリゴマー再生物。
  7. 前記ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸成分のモノマーの含有量が35質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のオリゴマー再生物。
  8. 前記ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートであり、前記ポリカルボン酸成分のモノマーがテレフタル酸であることを特徴とする請求項7に記載のオリゴマー再生物。
  9. オリゴマー再生物の製造方法であって、ポリエステル系樹脂を含む被処理物を、水蒸気雰囲気に曝露して加水分解し、重量平均分子量(Mw)が200〜5000であり、カサ密度が0.2〜1.5g/cmであるオリゴマー再生物を得ることを特徴とするオリゴマー再生物の製造方法。
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