JP2017052138A - 粉末積層造形物用の密度向上剤とその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】密度の高められた立体形状物の製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る立体形状物の製造方法は、次の工程:粉末積層造形方式の3次元造形装置により、第1の焼結性無機材料と結合剤とを用いて粉末積層造形物を造形すること;上記第1の焼結性無機材料よりも平均粒径が小さな第2の焼結性無機材料と、上記第2の焼結性無機材料を上記粉末積層造形物に付着させるための付着剤と、を含む密度向上剤を用意すること;上記粉末積層造形物に上記密度向上剤を付与すること;および、上記密度向上剤を付与した上記粉末積層造形物を、上記第1の焼結性無機材料が焼結可能な温度域で焼成すること;を包含する。【選択図】図1
Description
本発明は、粉末積層造形物用の密度向上剤およびこれを用いた立体形状物の製造方法、ならびに密度向上剤を含む立体形状物造形用のキットに関する。
従来から、立体的な造形物を作成するための3次元造形装置が知られている。3次元造形装置では、得んとする3次元造形物を所定の厚みでスライスしたデータを作成し、このスライスしたデータに対応する断面形状を順次形成、積層していくことで、所望の3次元造形物を造形する。3次元造形装置の造形方式としては、熱溶解積層造形、光造形、粉末造形などが知られている。例えば特許文献1には、粉末材料を所定の厚みで固めて高さ方向に積層する粉末積層造形方式を用いた3次元造形装置が開示されている。
このような装置で造形された粉末積層造形物には、必要に応じて表面改質剤やワックスなどが付与され、表面を滑らかにしたり粉っぽさを解消したりする仕上げ処理が施される。また、例えば粉末材料がセラミックなどの焼結性材料を主とする場合には、粉末積層造形物を上記焼結性材料の焼結可能な温度域で焼成することがある。かかる焼成では、結合剤や溶媒などの有機物を除去すると共に、焼結性材料を焼結させる。これにより、焼結後の粉末積層造形物の機能性(例えば硬度)や耐久性を高めることができる。
ところで、粉末積層造形物は、その造形手法に起因して粉末材料以外(典型的には結合剤や溶媒)の含有割合が高くなっている。また、粉末材料としては通常、粒径が1μm以上の比較的大きなものが用いられる。このため、粉末積層造形物では、例えば一般的な焼成前セラミック成形体などに比べて、容積中に占める粉末材料の割合が低く、空隙率が高くなる傾向にある。したがって、焼結後の粉末積層造形物(立体形状物)では概して密度が低くなりがちであり、例えば耐久性を要求されるような用途においては、より緻密性の高められた立体形状物を得ることが求められていた。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、立体形状物の密度を向上することができる密度向上剤とこれを含む立体形状物造形用のキットを提供することである。また、他の目的は、かかる密度向上剤を用いた立体形状物の製造方法を提供することである。
本発明者は、粉末積層造形物を形成している粉末材料の隙間(空隙部分)を埋めて、立体形状物の密度を向上することを考えた。そして、鋭意検討の末に本発明を完成させた。
本発明に係る立体形状物の製造方法は、次の工程:粉末積層造形方式の3次元造形装置により、第1の焼結性無機材料と結合剤とを用いて粉末積層造形物を造形すること;上記第1の焼結性無機材料よりも平均粒径が小さな第2の焼結性無機材料と、上記第2の焼結性無機材料を上記粉末積層造形物に付着させるための付着剤と、を含む密度向上剤を用意すること;上記粉末積層造形物に上記密度向上剤を付与すること;および、上記密度向上剤を付与した上記粉末積層造形物を、上記第1の焼結性無機材料が焼結可能な温度域で焼成すること;を包含する。
上記製造方法では、相対的に粒径の大きな第1の焼結性無機材料を含んだ粉末積層造形物に対して、相対的に粒径の小さな第2の焼結性無機材料を付着させる。これにより、第1の焼結性無機材料の隙間に第2の焼結性無機材料が詰められる。この状態で焼成を行うことにより、両材料の粒子同士が結合して一体的に焼き締められる。その結果、密度の高められた緻密な立体形状物を得ることができる。
本発明に係る密度向上剤は、第1の焼結性無機材料を含む粉末積層造形物に使用するために用いられる。かかる密度向上剤は、以下の成分:上記第1の焼結性無機材料よりも平均粒径が小さな第2の焼結性無機材料;上記第2の焼結性無機材料を上記粉末積層造形物に付着させるための付着剤;を含んでいる。この密度向上剤によれば、粉末積層造形物の密度を効果的に高めることができる。
本発明に係る立体形状物造形用のキットは、上記第1の焼結性無機材料を含んだ粉末積層造形用の粉末材料と、上記密度向上剤と、を含んでいる。このキットによれば、第1の焼結性無機材料と密度向上剤とを別々に用意する場合に比べて、緻密な立体形状物を安定的に得ることができる。
本発明によれば、立体形状物の密度を向上することができる密度向上剤、および当該密度向上剤を用いた立体形状物の製造方法、ならびに立体形状物造形用のキットを提供することができる。これにより、密度の高められた緻密な立体形状物を好適に得ることができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば密度向上剤の組成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば粉末積層造形物の造形や焼成などの製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<立体形状物の製造方法>
図1は、一実施形態に係る製造方法のフローチャートである。図1に示す製造方法は、(S10)粉末積層造形物の造形;(S20)密度向上剤の用意;(S30)密度向上剤の付与;(S40)粉末積層造形物の焼成;を包含する。かかる製造方法は、特には上記(S20)によって特徴づけられる。したがって、その他の工程については特に限定されず、種々の基準に照らして任意に決定し得る。また、これら工程に加えて、任意の段階で他の工程を含むことは妨げない。以下、各工程について順に説明する。
図1は、一実施形態に係る製造方法のフローチャートである。図1に示す製造方法は、(S10)粉末積層造形物の造形;(S20)密度向上剤の用意;(S30)密度向上剤の付与;(S40)粉末積層造形物の焼成;を包含する。かかる製造方法は、特には上記(S20)によって特徴づけられる。したがって、その他の工程については特に限定されず、種々の基準に照らして任意に決定し得る。また、これら工程に加えて、任意の段階で他の工程を含むことは妨げない。以下、各工程について順に説明する。
(S10:粉末積層造形物の造形)
本工程では、第1の焼結性無機材料と、結合剤と、粉末積層造形方式の3次元造形装置とを用いて、粉末積層造形物を造形する。3次元造形装置としては、市販のものを適宜使用することができる。
本工程では、第1の焼結性無機材料と、結合剤と、粉末積層造形方式の3次元造形装置とを用いて、粉末積層造形物を造形する。3次元造形装置としては、市販のものを適宜使用することができる。
第1の焼結性無機材料としては、焼成によって焼結し得る成分を含んだ粉末状の無機材料を特に限定なく用いることができる。かかる焼結性無機材料としては、例えば、セラミック、石膏、金属などが挙げられる。セラミックとしては、金属又は半金属元素(典型的には、Al、Zr、Mg、Ca、ZnおよびSi)の酸化物、窒化物、水酸化物、炭化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられる。これら化合物は、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上(例えば2種、3種または4種)を組み合わせて用いても良い。
第1の焼結性無機材料の具体例としては、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、二酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)、酸化カルシウム(カルシア:CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(チタニア:TiO2)、酸化セリウム(セリア:CeO2)、酸化イットリウム(イットリア:Y2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、窒化ケイ素(シリコンナイトライド:Si3N4)、窒化アルミニウム(アルミナイトライド:AlN)、炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)、ハイドロキシアパタイトなどが例示される。また、例えば、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、サイアロン(Si3N4・Al2O3)、ジルコン(ZrO2・SiO2)、フェライト(M2O・Fe2O3)、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)、カオリナイト(Al4Si4O10(OH)8)、シャモット、ケイ砂、陶石、カリ長石(K2O・Al2O2・6SiO2)、ソーダ長石(Na2O・Al2O2・6SiO2)、球石、珪灰石(CaO・SiO2)、蛙目粘土、中国粘土、粘土鉱物、シラスなどの酸化物を含む天然鉱物(酸化鉱物)や、高炉スラグ、フライアッシュなどを用いることもできる。
例えば、得んとする立体形状物に化学的安定性や機械的強度、耐熱性などが要求される場合には、第1の焼結性無機材料として酸化物セラミックを好ましく用いることができる。なお、本明細書において「酸化物セラミック」とは、酸素元素を含むセラミック全般を指す用語であり、当然ながらに複合酸化物セラミックや酸化鉱物などをも包含する用語である。なかでも、入手容易性やコストの点などからは、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛を好ましく用いることができる。また、例えば透明度の高い立体形状物を得る目的では、酸化アルミニウムや二酸化ジルコニウムを好ましく用いることができる。また、環境負荷を低減する点からは、酸化鉱物を好ましく用いることができる。
第1の焼結性無機材料の性状は特に限定されないが、造形精度(寸法精度)に優れた粉末積層造形物を造形するためには、平均粒径が概ね数百ミクロン以下、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下であるとよい。また、一般には、焼結性無機材料の粒径が小さいほど比表面積が増して、多くの結合剤が必要となる。したがって、比較的少ない量の結合剤で焼結性無機材料を固化させる点からは、平均粒径が概ねミクロンオーダー、例えば1μm以上、好ましくは10μm以上であるとよい。これにより、粉末の取扱性を向上することができる。なお、本明細書において「平均粒径」とは、レーザー回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒子径の小さい方から累積50%に相当する粒子径D50値(メジアン径)をいう。
なお、第1の焼結性無機材料を構成する焼結性無機粒子の表面には、粒子間の結着を開始、促進あるいは補助するような材料が予め付されていてもよい。一例として、各種結着剤や硬化剤、重合開始剤などが挙げられる。例えば、後述する結合剤と同種または異種の高分子化合物、具体的には水溶性の樹脂(OH基を含む樹脂)などを使用することができる。
結合剤としては、第1の焼結性無機材料の粒子間を固着させることができるものであれば特に限定されない。具体例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ロジン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレンオキサイド、天然高分子などの有機高分子化合物や、ゴム類などが挙げられる。なお、結合剤は、例えば溶媒中に樹脂エマルジョンとして含有されていてもよく、あるいは、粉末状であってもよい。粉末状の結合剤を使用する場合には、従来公知の溶媒や添加剤などを用いて、安定的に噴霧可能なように適宜調製するとよい。例えば水溶性の樹脂(OH基を含む樹脂)を用いる場合には、水系の溶媒を使用するとよい。
本工程の一例では、造形テーブルと、バインダ供給ヘッドとを備えた粉末積層造形方式の3次元造形装置を用意する。そしてまず、得んとする粉末積層造形物の3次元的な空間データを3次元造形装置の制御部(例えばコンピュータ)に入力する。すると、当該3次元的な空間データを所定の厚さでスライスしたスライスデータが作成される。造形テーブルは、上下方向に昇降移動可能なように構成されている。バインダ供給ヘッドは、造形テーブルに対して適宜に相対移動可能なように構成されている。造形テーブルには、ディスペンサから第1の焼結性無機材料が供給され、当該第1の焼結性無機材料がスライスデータに対応する断面厚さで均質に敷き詰められる。バインダ供給ヘッドには、上記結合剤が充填される。
この状態で3次元造形装置を駆動すると、バインダ供給ヘッドは、スライスデータに基づいて造形テーブル上に結合剤を噴霧する。結合剤の噴霧された箇所では、第1の焼結性無機材料が選択的に固化される。これにより、スライスデータに対応した第1の焼結性無機材料からなる層(無機材料層)が形成される。1の無機材料層が形成されると、造形テーブルが高さ方向に下降する。下降幅は、スライスデータの断面厚さに基づいて予め定められている。造形テーブルの下降によって生じた空間には、ディスペンサから第1の焼結性無機材料が供給され、均質に敷き詰められる。このような作業の繰り返しによって、造形テーブルの高さ方向に無機材料層が積層され、ほぼ自動的に所望の形状の粉末積層造形物が造形される。
(S20:密度向上剤の用意)
本工程では、密度向上剤を用意する。かかる密度向上剤には、少なくとも第2の焼結性無機材料と付着剤とを含ませる。密度向上剤は、例えば使用する材料の種類や後述する密度向上剤の付与方法などに応じて、任意の形態に調製することができる。例えばS30で湿式法によって密度向上剤を付与する場合には、第2の焼結性無機材料と付着剤とを溶媒に分散または溶解させて、スラリー状に調製することができる。
本工程では、密度向上剤を用意する。かかる密度向上剤には、少なくとも第2の焼結性無機材料と付着剤とを含ませる。密度向上剤は、例えば使用する材料の種類や後述する密度向上剤の付与方法などに応じて、任意の形態に調製することができる。例えばS30で湿式法によって密度向上剤を付与する場合には、第2の焼結性無機材料と付着剤とを溶媒に分散または溶解させて、スラリー状に調製することができる。
第2の焼結性無機材料としては、上記第1の焼結性無機材料よりも平均粒径が小さいこと以外は特に限定されない。例えば、第1の焼結性無機材料として例示した化合物の中から、1種を単独で、または2種以上(例えば2種、3種または4種)を組み合わせて用いることができる。かかる化合物は、第1の焼結性無機材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。なお、第2の焼結性無機材料は、例えば溶媒中に分散させた状態で含有されていてもよく、あるいは、粉末状であってもよい。
第2の焼結性無機材料の平均粒径は、上記第1の焼結性無機材料よりも小さく、概ね第1の焼結性無機材料の1/10以下、典型的には1/100以下、例えば1/100〜1/10000程度の大きさであることが好ましい。これにより、第2の焼結性無機材料が、第1の焼結性無機材料の粒子間に充分に充填され、より良く充填密度が高められる。また、本願発明の効果を高いレベルで発揮する点から、第2の焼結性無機材料の平均粒径は、概ねナノメートルオーダー、例えば100nm以下、好ましくは50nm以下であるとよい。また、一般には粒径が小さいほど粒子の表面安定性が低下して、凝集し易くなる傾向にある。そのため、第2の焼結性無機材料の平均粒径は、概ね1nm以上、例えば5nm以上、好ましくは10nm以上であるとよい。これにより、粉末の表面安定性が向上し、密度向上剤の取扱性や保存性を向上することができる。
第2の焼結性無機材料の形状は特に限定されず、球状、楕円状、破砕状、鱗片状、繊維状などであり得る。充填性や均質性を向上する点からは、例えば平均アスペクト比(長径/短径比)が凡そ1〜1.5(例えば1〜1.3)の球状、楕円状、もしくは破砕状の粒子が好ましい。これにより、スラリーの粘度を低くすることができ、取扱い性や作業性を向上することができる。
なお、第2の焼結性無機材料は、第1の焼結性無機材料と比べて、相対的に平均粒径が小さく比表面積が大きい。このため、第2の焼結性無機材料は凝集を生じ易い傾向にある。したがって、第2の焼結性無機材料を構成する焼結性無機粒子の表面には、凝集を抑制するための処理が施されていることがある。一例として、焼結性無機粒子の表面は脂肪酸(例えばカルボン酸)などが表面修飾された状態であり得る。これにより、例えばスラリー状の密度向上剤を調製する場合には、スラリーの分散安定性や均質性をも高める効果がある。
第2の焼結性無機材料の融点は特に限定されない。上述の通り、第2の焼結性無機材料は、第1の焼結性無機材料と比べて、相対的に平均粒径が小さい。このため、例えば第1の焼結性無機材料と第2の焼結性無機材料とで同種の化合物を使用する場合などには、粒径の大小に起因して、第1の焼結性無機材料よりも第2の焼結性無機材料の融点が低くなり得る。かかる場合、後述する焼成工程において、第1の焼結性無機材料と第2の焼結性無機材料とが共存した状態から温度を上げていくと、まず第2の焼結性無機材料が溶融する。そして、第1の焼結性無機材料の粒子間の距離がより良く接近した状態で、焼結化がなされる。したがって、本発明の効果を高いレベルで発揮することができる。
密度向上剤における第2の焼結性無機微粒子の含有割合は特に限定されないが、概ね1質量%以上、典型的には5〜80質量%、例えば10〜50質量%、特には10〜30質量%程度とするとよい。含有割合を所定値以上とすることで、粉末積層造形物に第2の焼結性無機材料をより多く付着させて、立体形状物の充填密度を向上させることができる。したがって、本願発明の効果をより良く発揮することができる。さらに好ましくは、第2の焼結性無機微粒子によって第1の焼結性無機微粒子が強固に一体化され、立体形状物の機械的強度をも向上し得る。また、第2の焼結性無機微粒子の含有割合を所定値以下とすることで、スラリーの分散安定性や均質性、取扱性を高めることができる。
付着剤としては、上記第2の焼結性無機材料を上記粉末積層造形物に付着させることが可能なものであれば特に限定されない。具体例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ビニル樹脂、ロジン樹脂などの有機高分子化合物が挙げられる。これら化合物は、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上(例えば2種、3種または4種)を組み合わせて用いても良い。付着剤は、粉末積層造形物の構成成分(典型的には第1の焼結性無機材料や結合剤の種類)などに応じて決定するとよい。付着剤は、S10で結合剤として使用した化合物を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
なかでも、1つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を有する化合物(いわゆるカップリング剤)を好ましく用いることができる。例えば、上記結合剤と結合可能な官能基と、上記第2の焼結性無機微粒子と結合可能な官能基とを有する化合物を好ましく用いることができる。かかる化合物を用いることで、付着剤がいわゆる接着助剤としての機能を発揮し得る。そして、粉末積層造形物の第1の焼結性無機材料の部分と比べて、結合剤の部分に対して、優先的に第2の焼結性無機材料を付着させることができる。その結果、第1の焼結性無機材料の隙間に第2の焼結性無機微粒子を効果的に付着させることができる。上述の通り、粉末積層造形物は一般的な焼成前セラミック成形体に比べて結合剤の割合が多いため、カップリング剤の使用がとりわけ効果的である。
カップリング剤としては、従来そのような用途で使用し得ることが知られている化合物を、特に限定なく用いることができる。具体例としては、Si元素を有するシラン系カップリング剤、Ti元素を有するチタン系カップリング剤、Al元素を有するアルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。かかるカップリング剤は、上記粉末積層造形物に含まれる結合剤(有機成分)と結合可能な官能基として、例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基、アクリル基、イソシアネート基、スルフィド基などの有機官能基を有しているとよい。特には、幅広い結合剤に対して適性の高いアミノ基を有しているとよい。また、カップリング剤は、上記第2の焼結性無機微粒子(無機成分)と結合可能な官能基として、例えば、メトキシ基(−OCH3)、エトキシ基(−OC2H5)などのアルコキシ基や、アセチル基(−OCOCH3)などのアルコキシアセチル基を有しているとよい。アルコキシ基やアルコキシアセチル基の炭素数は、立体障害を低減する点から、炭素数が概ね5以下であるとよい。
例えば第2の焼結性無機微粒子として酸化物セラミック、特には、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、粘土、粘土鉱物などを用いる場合には、シラン系カップリング剤を好ましく用いることができる。シラン系カップリング剤の使用により、シラノール基同士が縮合反応して、粉末積層造形物の表面に強固なシロキサン結合(−Si−O−Si−)が形成される。これによって、第1の焼結性無機材料と第2の焼結性無機材料とを、より良く一体結合することができる。特に第2の焼結性無機微粒子として二酸化ケイ素を用いる場合は、このような効果が顕著に発揮され、立体形状物の機能性や耐久性(例えば機械的強度)を一層高めることができる。
シラン系カップリング剤の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。
密度向上剤における付着剤の含有割合は特に限定されないが、概ね1質量%以上とするとよく、一例では第2の焼結性無機材料よりも含有割合が多いことが好ましく、典型的には密度向上剤全体の10〜90質量%、例えば50質量%以上、特には50〜70質量%とするとよい。含有割合を所定値以上とすることで、本願発明の効果がより良く発揮される。また、付着剤の含有割合を所定値以下とすることで、スラリーの分散安定性や均質性を高めることができる。
密度向上剤における第2の焼結性無機材料と付着剤の配合比は特に限定されないが、例えば付着剤としていわゆるカップリング剤を用いる場合は、第2の焼結性無機材料に対するカップリング剤の質量比(カップリング剤/第2の焼結性無機材料)を概ね0.1〜50、例えば1〜10とするとよい。これにより、カップリング剤の効果が安定的により良く発揮され得る。
溶媒としては、第2の焼結性無機材料と付着剤とを均質に分散または溶解し得るものであればよく、例えば水や各種有機溶剤を使用することができる。有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。一好適例として、市販のナノ粒子ディスパージョン(ナノ微粒子を含む組成物)に用いられる溶媒、例えばアクリル系のモノマーなどの有機溶剤や水が例示される。有機溶剤の具体例としては、メトキシプロパノール、メトキシプロピルアセテ−ト、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。これにより、スラリーの分散安定性や均質性をより良く高めることができる。
スラリー状の密度向上剤を調製する場合、溶媒の含有割合は特に限定されないが、概ね1質量%以上、典型的には5〜50質量%、例えば10〜30質量%程度とするとよい。含有割合を所定値以上とすることで、スラリーの分散安定性や均質性、取扱性を高めることができる。また、溶媒の含有割合を所定値以下とすることで、本願発明の効果をより良く発揮させることができる。さらにコストや環境負荷を低減することもできる。
なお、密度向上剤には上記した第2の焼結性無機微粒子と付着剤の他、必要に応じて種々の任意成分を添加することができる。これら任意成分としては、例えば立体形成物の諸特性を改善するためのものや、スラリーを付与に適した性状(粘度など)に調整するためのもの、スラリーの保存性を向上するためのものなどを考慮することができる。一例として、界面活性剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、顔料などが挙げられる。これらの添加成分は、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上(例えば2種、3種または4種)を組み合わせて用いても良い。
密度向上剤における添加成分の含有割合は特に限定されないが、概ね10質量%以下、典型的には5質量%以下、例えば1質量%以下とし得る。
また他の一例として、例えば乾式法によって密度向上剤を付与する場合には、第2の焼結性無機材料と、付着剤と、その他任意の添加成分とを混合造粒して、造粒粉状に調製することもできる。第2の焼結性無機材料や付着剤、その他の添加成分については、上記湿式法で例示したものと同様でよい。造粒粉は、例えば、転動造粒法、スプレードライ法、流動層造粒法、撹拌造粒法、圧縮造粒法、押出造粒法、破砕造粒法など従来公知の方法で作製することができる。
(S30:密度向上剤の付与)
本工程では、S10で造形した粉末積層造形物に、S20で用意した密度向上剤を付着させる。密度向上剤を付着させる手法は、特に限定されない。例えば、スラリー状に調製した密度向上剤に粉末積層造形物を浸漬させて、湿式法により密度向上剤を付着させることができる。湿式法としては、ディップコーティング法、印刷法、キャスト法、スピンコート法、電気泳動法、スプレー法、インクジェット法など従来公知の方法を用いることができる。湿式法によれば、密度向上剤を均質に付着させることができ、精度の高い処理を行うことができる。
本工程では、S10で造形した粉末積層造形物に、S20で用意した密度向上剤を付着させる。密度向上剤を付着させる手法は、特に限定されない。例えば、スラリー状に調製した密度向上剤に粉末積層造形物を浸漬させて、湿式法により密度向上剤を付着させることができる。湿式法としては、ディップコーティング法、印刷法、キャスト法、スピンコート法、電気泳動法、スプレー法、インクジェット法など従来公知の方法を用いることができる。湿式法によれば、密度向上剤を均質に付着させることができ、精度の高い処理を行うことができる。
あるいは、S20で造粒粉状に調製した密度向上剤を粉末積層造形物に振りかけて、乾式法により密度向上剤を付着させることもできる。乾式法によれば、溶媒を用いる必要がないため、コストや環境負荷を低減することができる。また、短時間で生産性の高い処理を行うことができる。
粉末積層造形物に密度向上剤を付着させる際には、例えば粉末積層造形物の内部への密度向上剤の含浸を促進するような操作や、付着剤の特性をより良く発揮させるような操作を行うことができる。かかる操作として、例えば加温、減圧、加圧、超音波の照射などが挙げられる。一例として、粉末積層造形物をオーブンで所定の温度まで温めた後、当該温められた状態の粉末積層造形物をスラリー状の密度向上剤中に浸漬させるとよい。粉末積層造形物の加熱温度は、例えば付着剤の耐熱温度を考慮して決定するとよい。一好適例では、カップリング剤の分解温度より低く設定するとよく、例えばカップリング剤の官能基の種類などによっても異なるが、概ね50〜150℃、例えば80〜100℃とすることができる。これにより、粉末積層造形物の空隙に密度向上剤が充分に押し込まれて、充填密度がより良く向上し得る。したがって、立体形状物の緻密化を促進することができ、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
粉末積層造形物に対する密度向上剤の付着量は、例えば粉末積層造形物の空隙率や当該粉末積層造形物を構成する第1の焼結性無機材料の性状等によっても異なり得るため、特に限定されない。一例では、粉末積層造形物1gに対する第2の焼結性無機材料の付着量を、概ね0.001〜0.5g、典型的には0.005〜0.1g、例えば0.01〜0.1g、好ましくは0.04g以上に調整するとよい。一例では、粉末積層造形物1gに対する付着剤の付着量を、概ね0.01〜0.5g、典型的には0.05〜0.5g、好ましくは0.1g以上に調整するとよい。これら付着量の範囲に調整することにより、立体形状物の密度を向上するという本願発明の効果が安定的により良く発揮され得る。また、例えば付着剤としていわゆるカップリング剤を用いる場合は、第2の焼結性無機材料の付着量に対するカップリング剤の付着量の質量比(カップリング剤/第2の焼結性無機材料)を概ね0.1〜50、典型的には1以上、例えば1〜10とするとよい。これにより、カップリング剤の効果が安定的により良く発揮され得る。
(S40:粉末積層造形物の焼成)
本工程では、密度向上剤の付着した上記粉末積層造形物を焼成処理する。焼成温度(典型的には最高到達温度)は、少なくとも第1の焼結性無機材料が焼結可能な温度域に設定する。好ましくは、焼成温度を第1および第2の焼結性無機材料が焼結可能な温度域に設定する。換言すれば、焼成温度は、第1および第2の焼結性無機材料の融点よりも低い温度に設定するとよい。焼成温度は、例えば焼結性無機材料の種類や性状(特には粒径)によって異なり得る。一般には粒径が小さいものほど融点が低くなる傾向がある。したがって、焼成温度の設定にあたっては、まず第1および第2の焼結性無機材料の融点を測定するとよい。融点の測定は、市販の熱分析装置(例えば熱重量−示差熱測定装置)によって行うことができる。あるいは、文献値やカタログ値などを採用してもよい。焼成温度は、一概には言えないが、例えば1000℃〜1500℃程度の範囲に設定することができる。
本工程では、密度向上剤の付着した上記粉末積層造形物を焼成処理する。焼成温度(典型的には最高到達温度)は、少なくとも第1の焼結性無機材料が焼結可能な温度域に設定する。好ましくは、焼成温度を第1および第2の焼結性無機材料が焼結可能な温度域に設定する。換言すれば、焼成温度は、第1および第2の焼結性無機材料の融点よりも低い温度に設定するとよい。焼成温度は、例えば焼結性無機材料の種類や性状(特には粒径)によって異なり得る。一般には粒径が小さいものほど融点が低くなる傾向がある。したがって、焼成温度の設定にあたっては、まず第1および第2の焼結性無機材料の融点を測定するとよい。融点の測定は、市販の熱分析装置(例えば熱重量−示差熱測定装置)によって行うことができる。あるいは、文献値やカタログ値などを採用してもよい。焼成温度は、一概には言えないが、例えば1000℃〜1500℃程度の範囲に設定することができる。
焼成雰囲気は適宜選択することができ、大気雰囲気、酸化性雰囲気、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなど)、還元性雰囲気あるいはこれらの混合雰囲気とすることができる。昇温速度は、生産性を考慮して、概ね0.1℃/min以上、例えば1℃/min以上、好ましくは2℃/min以上とするとよい。また、昇温速度があまりに早いと、表面と内部との温度差や収縮差によって、立体形状物にクラックや破損を生じることがあり得る。そのため、昇温速度は、概ね10℃/min以下、例えば5℃/min以下とするとよい。
好適な一態様では、焼成処理に先立って、粉末積層造形物に脱脂処理を施す。これにより、まずは粉末積層造形物から水分や結合剤などの有機成分を除去する。脱脂処理は、焼成温度よりも低温で行うことができる。例えば先ず、粉末積層造形物を予め設定された脱脂温度域(例えば100〜700℃)まで昇温して所定の時間保持することにより、脱脂処理を行う。次いで、予め設定された焼成温度(最高焼成温度)まで昇温して所定の時間保持することにより、焼成処理を行う。脱脂温度と焼成温度とは、概ね500℃以上、典型的には750℃以上、例えば1000℃以上の温度差があることが好ましい。このような多段階の連続的な処理により、安定して立体形状物を焼成することができる。
以上の工程を実施することにより、所望する立体形状物を製造することができる。かかる製造方法で得られた立体形状物は、例えばS10で得られた粉末積層造形物をそのまま(密度向上剤を付着させない状態で)焼成した場合と比べて、緻密性が高められている。そのため、高耐久な立体形状物を実現することができる。好ましくは、緻密化の効果によって、機械的強度、硬度、耐摩耗性、化学的安定性、耐熱性のうち少なくとも1つの特性をも向上することができる。
<密度向上剤・キット>
また、上記S20で調製した密度向上剤は、上述した第2の焼結性無機材料と付着剤とを含み、粉末積層造形物の密度を高めるために効果的である。さらに、粉末積層造形物を形成するために用いられる第1の焼結性無機材料を含んだ「粉末積層造形用の粉末材料」と、上記密度向上剤とを含んだキットによれば、高密度な立体形状物を安定的に得ることができる。したがって、ユーザーの利便性を向上することができる。
また、上記S20で調製した密度向上剤は、上述した第2の焼結性無機材料と付着剤とを含み、粉末積層造形物の密度を高めるために効果的である。さらに、粉末積層造形物を形成するために用いられる第1の焼結性無機材料を含んだ「粉末積層造形用の粉末材料」と、上記密度向上剤とを含んだキットによれば、高密度な立体形状物を安定的に得ることができる。したがって、ユーザーの利便性を向上することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
<I.第2の焼結性無機微粒子として二酸化ケイ素を用いる場合>
以下の手順で立体形状物を作製した。まず、第1の焼結性無機微粒子と結合剤とを用いて、粉末積層造形方式の3次元造形装置で、酸化アルミニウムを主体とする粉末積層造形物(30mm×20mm×5mm、凡そ4.5g)を作製した(S10)。第1の焼結性無機微粒子としては、酸化アルミニウム(平均粒径30μm)の表面に水溶性樹脂が付着したものを使用した。次に、第2の焼結性無機微粒子としての二酸化ケイ素(平均粒径20nm)と、付着剤としての3−アミノプロピルトリエトキシシラン(C9H23NO3Si;シラン系カップリング剤)と、溶媒としてのヘキサンジオールジアクリレートとを用意して、これらを下記の表1に示す割合で混合し、スラリー状の密度向上剤を調製した(S20)。
以下の手順で立体形状物を作製した。まず、第1の焼結性無機微粒子と結合剤とを用いて、粉末積層造形方式の3次元造形装置で、酸化アルミニウムを主体とする粉末積層造形物(30mm×20mm×5mm、凡そ4.5g)を作製した(S10)。第1の焼結性無機微粒子としては、酸化アルミニウム(平均粒径30μm)の表面に水溶性樹脂が付着したものを使用した。次に、第2の焼結性無機微粒子としての二酸化ケイ素(平均粒径20nm)と、付着剤としての3−アミノプロピルトリエトキシシラン(C9H23NO3Si;シラン系カップリング剤)と、溶媒としてのヘキサンジオールジアクリレートとを用意して、これらを下記の表1に示す割合で混合し、スラリー状の密度向上剤を調製した(S20)。
次に、上記作製した粉末積層造形物をオーブン(300W、5分程度)で温めて100℃前後まで加熱した後、上記スラリーに浸漬させた(S30)。スラリーに浸漬させる前後の質量の差分(浸漬後−浸漬前)を粉末積層造形物の質量で除して、粉末積層造形物1gに対するスラリーの付着量(g/1g)を計算した。結果を表1の「付着量」の欄に示す。なお、成分毎の付着量は、付着量と密度向上剤中における含有割合とを掛けあわせて算出した。そして、スラリーの付着した粉末積層造形物をオーブンに入れ、大気雰囲気中で、室温から500℃まで2℃/分で昇温した後、500℃で2時間保持し、次に1450℃まで2℃/分で昇温した後、1450℃で2時間保持し、徐冷した(S40)。以上の工程により、例1,2、参考例1の立体形状物を得た。また、参考用として、粉末積層造形物をそのまま素焼きして、参考例2の立体形状物を得た。
(焼結後密度)
焼結後の立体形状物の重量と見かけの体積(縦×横×高さ)から、密度を算出した。得られた結果を表1の「密度」の欄に示す。
焼結後の立体形状物の重量と見かけの体積(縦×横×高さ)から、密度を算出した。得られた結果を表1の「密度」の欄に示す。
(焼結後強度)
焼結後の立体形状物(試験片)について3点曲げ強度を評価した。具体的には、縦30mm×横20mm×厚み5mmの試験片を、支点間距離が20mmのV字ブロック(20mm×20mm)上に設置して、支点間の略中央部分に上方から荷重を加えた。曲げ荷重10kgのときのたわみ量から曲げ応力σを算出して、3点曲げ強度を評価した。得られた結果を表1の「機械的強度」の欄に示す。
焼結後の立体形状物(試験片)について3点曲げ強度を評価した。具体的には、縦30mm×横20mm×厚み5mmの試験片を、支点間距離が20mmのV字ブロック(20mm×20mm)上に設置して、支点間の略中央部分に上方から荷重を加えた。曲げ荷重10kgのときのたわみ量から曲げ応力σを算出して、3点曲げ強度を評価した。得られた結果を表1の「機械的強度」の欄に示す。
例1,2では、粉末積層造形物を素焼きした参考例2や、密度向上剤としてシラン系カップリング剤を単独で用いた参考例1に比べて、焼結後の立体形状物の密度が大きく向上した。これは、第2の焼結性無機微粒子が粉末積層造形物の空隙に充填され、両者が一体的に焼結された結果であると考えられる。加えて、例2では、参考例1と比較して凡そ2割も機械的強度を向上することができた。これは、密度向上剤中の第2の焼結性無機微粒子の割合を凡そ21質量%にまで高めたことや、粉末積層造形物1gに対する第2の焼結性無機微粒子の付着量を0.061gまで増したことで、本願発明の効果が高いレベルで発揮された結果であると考えられる。
<II.第2の焼結性無機微粒子として酸化アルミニウムを用いる場合>
密度向上剤の調製時に、第2の焼結性無機微粒子として酸化アルミニウム(平均粒径40nm)を用いたことと、下記の表2に示す割合で材料を混合したこと以外は上記I.と同様にして、例3の立体形状物を得た。そして、上記I.と同様に、焼結後の密度と機械的強度を評価した。得られた結果を表2の「密度」と「機械的強度」の欄に示す。
密度向上剤の調製時に、第2の焼結性無機微粒子として酸化アルミニウム(平均粒径40nm)を用いたことと、下記の表2に示す割合で材料を混合したこと以外は上記I.と同様にして、例3の立体形状物を得た。そして、上記I.と同様に、焼結後の密度と機械的強度を評価した。得られた結果を表2の「密度」と「機械的強度」の欄に示す。
例3は、第2の焼結性無機微粒子として粉末積層造形物の造形に使用したものと同種のセラミック(酸化アルミニウム)を使用した例である。例3では、粉末積層造形物を素焼きした参考例2や、密度向上剤としてシラン系カップリング剤を単独で用いた参考例1に比べて、焼結後の立体形状物の密度や機械的強度が大きく向上した。これは、本願発明の効果が高いレベルで発揮された結果である。
なお、立体形状物を高密度化する手法としては、例えば第1の焼結性無機微粒子として、より粒径の細かいものを使用する方法や、造形過程あるいは造形後において粉末積層造形物を加圧圧縮する方法なども考えられる。しかしながら、第1の焼結性無機微粒子があまりに細かすぎると大気中へ飛散し易くなり、取扱性や作業性が低下することがある。また、加圧圧縮する方法では、装置が大型化したり、高さ方向(Z軸方向)に変形し易くなったりすることがある。ここで開示される方法、すなわち密度向上剤を使用する方法は、従来とは全く異なる手法で焼結後の立体形状物の密度や機械的強度を大きく向上するものである。
以上、本発明を詳細に説明した。しかし、上記実施形態は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
S10 粉末積層造形物の造形
S20 密度向上剤の用意
S30 密度向上剤の付与
S40 粉末積層造形物の焼成
S20 密度向上剤の用意
S30 密度向上剤の付与
S40 粉末積層造形物の焼成
Claims (11)
- 立体形状物の製造方法であって、
粉末積層造形方式の3次元造形装置により、第1の焼結性無機材料と結合剤とを用いて粉末積層造形物を造形すること;
前記第1の焼結性無機材料よりも平均粒径が小さな第2の焼結性無機材料と、前記第2の焼結性無機材料を前記粉末積層造形物に付着させるための付着剤と、を含む密度向上剤を用意すること;
前記粉末積層造形物に前記密度向上剤を付着させること;および、
前記密度向上剤の付着した前記粉末積層造形物を、前記第1の焼結性無機材料が焼結可能な温度域で焼成すること;
を包含する、立体形状物の製造方法。 - 前記第2の焼結性無機材料として、前記第1の焼結性無機材料の平均粒径の1/100以下のものを用いる、請求項1に記載の立体形状物の製造方法。
- 前記密度向上剤を付着させるときに、前記粉末積層造形物1gに対する前記第2の焼結性無機材料の付着量を0.1〜0.3gに調整する、請求項1または2に記載の立体形状物の製造方法。
- 前記第1の焼結性無機材料および前記第2の焼結性無機材料として、酸化物セラミックを用いる、請求項1から3のいずれか一項に記載の立体形状物の製造方法。
- 前記付着剤として、前記粉末積層造形物に含まれる前記結合剤と結合可能な官能基と、前記第2の焼結性無機材料と結合可能な官能基と、を有する化合物を用いる、請求項1から4のいずれか一項に記載の立体形状物の製造方法。
- 第1の焼結性無機材料を含む粉末積層造形物に使用するための密度向上剤であって、以下の成分:
前記第1の焼結性無機材料よりも平均粒径が小さな第2の焼結性無機材料;
前記第2の焼結性無機材料を前記粉末積層造形物に付着させるための付着剤;
を含む密度向上剤。 - 前記第1の焼結性無機材料の平均粒径に対して、前記第2の焼結性無機材料の平均粒径が1/100以下である、請求項6に記載の密度向上剤。
- 前記第2の焼結性無機材料が10〜30質量%、前記付着剤が50〜70質量%である、請求項6または7に記載の密度向上剤。
- 前記第1の焼結性無機材料および前記第2の焼結性無機材料が、酸化物セラミックである、請求項6から8のいずれか一項に記載の密度向上剤。
- 前記付着剤が、前記粉末積層造形物に含まれる前記結合剤と結合可能な官能基と、前記第2の焼結性無機材料と結合可能な官能基と、を有する化合物を含む、請求項6から9のいずれか一項に記載の密度向上剤。
- 前記第1の焼結性無機材料を含んだ粉末積層造形用の粉末材料と、
請求項6から10のいずれか一項に記載の密度向上剤と、
を収容した、立体形状物造形用のキット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015176463A JP2017052138A (ja) | 2015-09-08 | 2015-09-08 | 粉末積層造形物用の密度向上剤とその利用 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018031050A (ja) * | 2016-08-24 | 2018-03-01 | 株式会社ノリタケカンパニーリミテド | 積層造形焼成体、積層造形焼成体の製造方法および積層造形焼成体製造用キット |
JP2019001686A (ja) * | 2017-06-15 | 2019-01-10 | 株式会社ノリタケカンパニーリミテド | 積層造形物コーティング用スラリーおよび立体形状物 |
CN114250049A (zh) * | 2021-06-16 | 2022-03-29 | 北京恒创增材制造技术研究院有限公司 | 一种用于金属3dp打印工艺超低粘度粘结剂及其制备方法 |
-
2015
- 2015-09-08 JP JP2015176463A patent/JP2017052138A/ja active Pending
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