JP2017051068A - 電力系統の電圧安定性評価方法およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】 P−Vカーブによって、電力系統におけるモータのストール現象を適切に説明できる電圧安定性評価方法を提供する。
【解決手段】 電力系統を、1つのモータと1つの定インピーダンスが並列接続された負荷を有する一負荷系統に縮約して、電圧安定性を評価する電圧安定性評価方法であって、数値データの入力を受け付けるデータ入力過程と、負荷母線電圧を求める負荷母線電圧計算過程と、モータの電気入力トルク、モータの機械出力トルクおよび定インピーダンスの消費電力を求めるトルク・消費電力計算過程と、電力−電圧平面上において、モータの電気入力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線と、モータの機械出力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線が、不安定平衡点を有する場合に不安定、有しない場合に安定であると評価する安定性評価過程と、からなる。
【選択図】 図5
【解決手段】 電力系統を、1つのモータと1つの定インピーダンスが並列接続された負荷を有する一負荷系統に縮約して、電圧安定性を評価する電圧安定性評価方法であって、数値データの入力を受け付けるデータ入力過程と、負荷母線電圧を求める負荷母線電圧計算過程と、モータの電気入力トルク、モータの機械出力トルクおよび定インピーダンスの消費電力を求めるトルク・消費電力計算過程と、電力−電圧平面上において、モータの電気入力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線と、モータの機械出力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線が、不安定平衡点を有する場合に不安定、有しない場合に安定であると評価する安定性評価過程と、からなる。
【選択図】 図5
Description
本発明は、電力系統における、モータ(誘導電動機)を考慮した電圧安定性評価方法およびプログラムに関する。
近年、電力系統の電圧安定性解析において、モータ負荷を考慮することの重要性が認識されるようになっており、そのために、モータのストール現象を説明できることが必要とされている。従来、特許文献1に示すように、モータのストール現象は、トルク−速度曲線(T−ωカーブ)によって適切に説明できることが知られている。すなわち、特許文献1の図2に示すT−ωカーブにおいて、A点およびC点が安定平衡点、B点が不安定平衡点であるが、2つの安定平衡点のうち、正常時の動作点はA点であり、C点においては、回転速度および内部抵抗が異常に低いため、モータの有効電力消費が少なく、無効電力消費が非常に大きな状態で安定しており、モータがストールした状態である。
ところで、一般に、電力系統の電圧安定性解析には、P−Vカーブが用いられているが、従来、P−Vカーブはモータのストール現象によって生じる電圧不安定現象の説明には向いていないとされていた。しかしながら、電圧安定性解析に広く用いられているP−Vカーブによって、モータのストール現象も説明することができれば、当業者にとってはより利便性が高い。
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、P−Vカーブによって、電力系統におけるモータのストール現象を適切に説明できる電圧安定性評価方法およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明のうち請求項1の発明は、複数の負荷を有する電力系統を、1つの模擬的なモータと1つの模擬的な定インピーダンスが並列接続された負荷を有する一負荷系統に縮約し、該一負荷系統の電圧安定性を縮約前の系統の電圧安定性とみなす電力系統の電圧安定性評価方法であって、データ入力手段が前記一負荷系統を構成する要素の数値データの入力を受け付けるデータ入力過程と、負荷母線電圧計算手段が記憶装置に保存された計算式を読み込み、前記数値データを代入して負荷母線電圧を求める負荷母線電圧計算過程と、トルク・消費電力計算手段が記憶装置に保存された計算式を読み込み、前記数値データを代入してモータの電気入力トルク、モータの機械出力トルクおよび定インピーダンスの消費電力を求めるトルク・消費電力計算過程と、安定性評価手段が、電力−電圧平面上において、モータの電気入力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線と、モータの機械出力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線が、不安定平衡点を有する場合に前記一負荷系統を不安定であると評価し、不安定平衡点を有しない場合に安定であると評価する安定性評価過程と、からなることを特徴とする。
本発明のうち請求項2の発明は、複数の負荷を有する電力系統を、1つの模擬的なモータと1つの模擬的な定インピーダンスが並列接続された負荷を有する一負荷系統に縮約し、該一負荷系統の電圧安定性を縮約前の系統の電圧安定性とみなす電力系統の電圧安定性評価プログラムであって、前記一負荷系統を構成する要素の数値データの入力を受け付けるデータ入力ステップと、記憶装置に保存された計算式を読み込み、前記数値データを代入して負荷母線電圧を求める負荷母線電圧計算ステップと、記憶装置に保存された計算式を読み込み、前記数値データを代入してモータの電気入力トルク、モータの機械出力トルクおよび定インピーダンスの消費電力を求めるトルク・消費電力計算ステップと、電力−電圧平面上において、モータの電気入力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線と、モータの機械出力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線が、不安定平衡点を有する場合に前記一負荷系統を不安定であると評価し、不安定平衡点を有しない場合に安定であると評価する安定性評価ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明によれば、従来、電圧安定性解析に広く用いられている、電力−電圧平面上の電気入力トルクおよび機械出力トルクに相当する曲線(P−Vカーブ)によって、モータのストール現象も説明することができるので、当業者にとってはより利便性が高い。
本発明は、複数の負荷を有する電力系統を、モータ101と定インピーダンス102が並列接続された1つの負荷を有する一負荷系統に縮約し、この一負荷系統についての電圧安定性を評価するものであって、図1に、その系統モデルを示す。無限大母線103から系統リアクタンス104を介して負荷母線105に送電されており、モータ101は一次抵抗と励磁アドミタンスを無視したすべりモデルであって、定リアクタンス101aと可変コンダクダンス101bからなり、さらに調相用設備に相当するサセプタンス106を有する。
そしてまず、この系統モデルに基づいて、故障発生時の数値解析シミュレーションを行う。ここでは、系統リアクタンスの負荷側で三相地絡故障(故障継続時間100ms)を与え、故障リアクタンスをXf=0,j0.1とした2ケースでシミュレーションした。なお、系統定数およびパラメータは表1に示すとおりである。
このシミュレーションの結果を示したのが図2のグラフであり、故障リアクタンスがXf=j0.1のケース(故障の規模が小さい場合)では、瞬低後、電圧(Vr)が回復しているが、Xf=0のケース(故障の規模が大きい場合)では、瞬低後、電圧が回復しない。モータのストール現象によって、電圧不安定現象が生じているためである。
そして、本発明の電圧安定性評価方法によれば、上記のような数値解析シミュレーションによることなく、モータのストール現象を説明できる。以下において、その具体的な手順について説明する。まず、モータの電気入力トルクおよび機械出力トルクを求める式を導出する。図1において、VS、XS、Vr、PZ、Pm、Xmおよびモータ二次抵抗R2を与えると、以下の各値が求められる。
無限大母線と負荷母線の相差角δは、以下の式(1)で表される。
無限大母線における無効電力QSは、以下の式(2)で表される。
負荷母線における無効電力Qrは、以下の式(3)で表される。
モータによって消費される無効電力Qmは、以下の式(4)で表される。
調相用設備から供給される無効電力QZは、以下の式(5)で表される。
定インピーダンス負荷のコンダクタンスGZは、以下の式(6)で表される。
調相用設備のサセプタンスBZは、以下の式(7)で表される。
モータ消費電力初期値Pm0は、以下の式(8)で表される。ただし、s0はすべりの初期値である(s0=1−ω0)。
さらに、式(8)より、式(9)が導かれる。ただし、2解のうち有効な方を解とする。
モータ内部抵抗初期値Rm0は、以下の式(10)で表される。
続いて、P−Vカーブを描くにあたり、負荷母線電圧Vr(ω)およびモータ消費電力Pm(ω)を導出する。(ω)はωの関数であることを示す。モータ内部抵抗Rm(ω)を式(11)とおいて、モータのインピーダンスZm(ω)[ベクトル量]は、式(12)で表される。ただし、sはモータのすべりである。
モータ、定インピーダンス負荷、調相用設備込のアドミタンスYr(ω)[ベクトル量]は、以下の式(13)で表される。
アドミタンスに系統リアクタンスを含んだインピーダンスZS(ω)[ベクトル量]は、以下の式(14)で表される。
系統リアクタンスを流れる電流IS(ω)[ベクトル量]は、以下の式(15)で表される。
負荷母線電圧Vr(ω)[ベクトル量]およびその絶対値Vr(ω)は、以下の式(16)および式(17)で表される。
モータ消費電力Pm(ω)は、以下の式(18)で表される。
さらに、モータ消費電力Pm(ω)は、モータの電気入力トルクTe(ω)に等しいことを示す。モータの二次入力電力P2(ω)は、二次電流をI2(ω)とすると、以下の式(19)で表される。
モータの二次軸出力電力P2S(ω)は、以下の式(20)で表される。
式(19)および式(20)より、電気入力トルクTe(ω)、二次軸出力電力P2S(ω)および二次入力電力P2(ω)の関係は、以下の式(21)で表される。ただし、ω=1−sである。
式(21)より、電気入力トルクTe(ω)は、二次入力電力P2(ω)に等しいことがわかる。さらに、一次抵抗と励磁リアクタンスを無視すると、モータ消費電力Pm(ω)は、二次入力電力P2(ω)に等しくなる。すなわち、以下の式(22)が導出される。
また、機械出力トルクTm(ω)は、モータ回転速度初期値をω0として、以下の式(23)で表される。
以上の式(1)〜(18)、(22)、(23)から、図3に示すように、トルク−速度曲線(T−ωカーブ)を描くことができる。このT−ωカーブによってモータのストール現象を説明できることは、前記のとおり、従来知られている。ここで、この図3のグラフ上において、負荷母線電圧Vr(ω)を併せて描く。ただし、見易さを考慮して、0.4倍して表示する。これによれば、回転速度ωが増大すると、負荷母線電圧Vr(ω)も増大することがわかる。したがって、回転速度ωの代わりに負荷母線電圧Vr(ω)を横軸にとって表現することも可能である。そして、縦軸(トルク)と横軸(電圧)を入れ替えれば、図4に示すように、T−ωカーブを等価変換したP−Vカーブが得られる。T−ωカーブはモータだけに着目したものであるから、図4のP−Vカーブもモータだけに着目したものである。
そこで、次にモータと定インピーダンス負荷を合わせたP−Vカーブを描く。定インピーダンス消費電力PZ(ω)は、以下の式(24)で表される。
電気入力トルクTe(ω)を表す式(18)、(22)と、機械出力トルクTm(ω)を表す式(23)に、式(24)を加えて、それぞれTe+PZ、Tm+PZとすることで、モータと定インピーダンス負荷を合わせたP−Vカーブを描くことができる。
図5および図6に示したのは、この手法により描いたP−Vカーブであり、図5は、系統定数およびパラメータを、前記の図2に示したシミュレーションと同じ条件にした場合、図6は、系統リアクタンスXS=0.5とした場合(その他の系統定数およびパラメータは図5の場合と同じ)である。図5においては、電気入力トルクを示す曲線(Te+PZ)と機械出力トルクを示す曲線(Tm+PZ)が3点で交わっており、図6においては、電気入力トルクを示す曲線(Te+PZ)と機械出力トルクを示す曲線(Tm+PZ)が1点で交わっている。両曲線の交点は、入力と出力が釣り合う平衡点であり、この平衡点に基づいて電力系統の電圧安定性を評価できる。
まず、図5に示すように、3個の平衡点を有する場合において、各平衡点を電圧が大きい側からA点、B点、C点とする。A点とB点の間では、電気入力トルクTe(+PZ)が機械出力トルクTm(+PZ)を上回るので、モータは加速し、電圧は上昇する。一方、B点とC点の間では、電気入力トルクTe(+PZ)が機械出力トルクTm(+PZ)を下回るので、モータは減速し、電圧は低下する。よって、B点から電圧が少し上昇(すなわちモータが少し加速)すると、加速領域に入って電圧はさらに上昇し、B点から電圧が少し低下(すなわちモータが少し減速)すると、減速領域に入って電圧はさらに低下する。したがって、B点は不安定平衡点である。そして、A点およびC点では逆の挙動になるので、A点とC点は安定平衡点である。2つの安定平衡点のうち、A点は、モータが定格回転速度付近で動作する正常動作点である。一方、C点は、回転速度および内部抵抗が異常に低いため、モータの有効電力消費が少なく、無効電力消費が非常に大きな状態で安定しており、モータがストールした状態である。
このような、電力−電圧平面上で電気入力トルクTe(+PZ)と機械出力トルクTm(+PZ)の交点が3つとなる(すなわち、2つの安定平衡点の間に1つの不安定平衡点を有する)電力系統において、正常動作中(A点の状態)に故障が発生した場合、故障の規模が小さければ、動作点はA点に戻るが、故障の規模が大きいと、動作点はA点からB点を超えてC点に移ってしまい、A点には戻らない。すなわち、故障により低下した系統の電圧が復帰せず、電圧不安定現象が発生することになる。よって、このように電力−電圧平面上の電気入力トルクと機械出力トルクを示す曲線(P−Vカーブ)が不安定平衡点を有する場合、変動によりその点を超えると元の動作点に戻らなくなるので、その電力系統は、モータのストール現象によって電圧不安定になる可能性があると評価される。
なお、この評価結果は、図2に示したシミュレーションの結果と一致する。すなわち、故障リアクタンスXf=j0.1のケースが、故障の規模が小さい場合であり、このケースでは、瞬低後、電圧が回復している(動作点がA点に戻っている)。一方、Xf=0のケースが、故障の規模が大きい場合であり、このケースでは、瞬低後、モータがストールしており、電圧が回復しない(動作点がB点を超えてC点に移っている)。
また、図6に示すように、1個の平衡点(A点)を有する場合においては、その点が安定平衡点となり、不安定平衡点は存在しない。この場合、故障により電圧が変動しても、速やかに元の動作点に復帰する。よって、このように電力−電圧平面上の電気入力トルクと機械出力トルクを示す曲線(P−Vカーブ)が不安定平衡点を有しない場合、変動が生じても常に元の動作点に戻るので、その電力系統は安定であると評価される。
以上のように、本発明の電圧安定性評価方法によれば、電気入力トルクと機械出力トルクについて、T−ωカーブを等価変換したP−Vカーブを描き、それが不安定平衡点を有する場合、その電力系統は不安定であると評価され、不安定平衡点を有しない場合、その電力系統は安定であると評価される。そして、電圧安定性解析に広く用いられているP−Vカーブによって、モータのストール現象も説明することができるので、当業者にとってはより利便性が高い。
実際に本発明の電圧安定性評価方法を実施するには、以下に示す電圧安定性評価プログラムを利用する。本発明の電圧安定性評価プログラムは、キーボードやマウスなどからなる入力装置、ディスプレイなどからなる出力装置、本プログラムの命令を順番に実行するCPU、本プログラムならびに本プログラムの実行に必要なデータおよび計算結果などを保存する記憶装置を構成要素とする標準的なコンピュータにより実行される。本プログラムを実行することにより、コンピュータが電圧安定性評価装置として機能する。
本プログラムをコンピュータに実行させると、コンピュータが各種の手段(データ入力手段、負荷母線電圧計算手段、トルク・消費電力計算手段、グラフ表示手段、安定性評価手段)として機能する。そして、CPUからの指令によって、図7に示すように、データ入力手段がデータ入力ステップS1を実行し、負荷母線電圧計算手段が負荷母線電圧計算ステップS2を実行し、トルク・消費電力計算手段がトルク・消費電力計算ステップS3を実行し、グラフ表示手段がグラフ表示ステップS4を実行し、安定性評価手段が安定性評価ステップS5を実行する。
本プログラムを実行すると、まずデータ入力手段が機能して、データ入力ステップS1が実行される。データ入力ステップS1では、記憶装置に保存されているテーブル状の入出力フォームのデータを読み込み、図8に示すような入出力フォーム11を出力装置に表示する。入出力フォーム11は、データを入力するための入力部12と、結果を出力するための出力部(定数表示部13a、関数表示部13b、判定表示部13c)と、T−ωカーブおよびP−Vカーブを表示するグラフ表示部14から構成される。
入力部12は、VS:無限大母線電圧、XS:系統リアクタンス、Vr:負荷母線電圧、PZ:定インピーダンス消費電力、Pm:モータ消費電力、Xm:モータリアクタンス、R2:モータ二次抵抗、からなる見出しが横一列に記載され、その下にそれぞれの値の入力欄が設けられている。
出力部のうち、定数表示部13aは、入力部12の下側に設けられており、δ:無限大母線と負荷母線の相差角、QS:無限大母線における無効電力、Qr:負荷母線における無効電力、QZ:調相用設備から供給される無効電力、Qm:モータによって消費される無効電力、GZ:定インピーダンス負荷のコンダクタンス、BZ:調相用設備のサセプタンス、s0:モータのすべり初期値、Rm0:モータの内部抵抗初期値、からなる見出しが横一列に記載され、その下にそれぞれの値の出力欄が設けられている。また、関数表示部13bは、ω:回転速度、Vr:負荷母線電圧、Te:電気入力トルク、Tm:機械出力トルク、PZ:定インピーダンス消費電力、Te+PZ、Tm+PZ、Te−Tm、その他、前記の計算過程で算出される値の見出しが横一列に記載され、ωの下には0<ω<1の値が所定の刻み(1の近傍は変化量が大きいので細かく刻んである)で記載されており、その他の見出しの下には、それぞれ同じ行のωの値に対応する出力欄が設けられている。さらに、判定表示部13cは、入力部12の右側に設けられており、電力系統の安定性評価の結果を「安定」または「不安定」と表示する(図8の例では「不安定」)。
グラフ表示部14は、縦軸に電気入力トルクTeおよび機械出力トルクTmをとり、横軸に回転速度ωをとった、T−ωカーブを記載するグラフと、縦軸に負荷母線電圧Vrをとり、横軸に負荷消費電力(Te+PZ,Tm+PZ)をとったP−Vカーブを記載するグラフが設けられている。
使用者は、系統を構成する要素の数値データを、図8に示すように、各欄に入力装置から入力する。各入力データは記憶装置に保存されると共に、そのまま入力部12に表示される。
そして、入力された前記数値データを記憶装置から読み込み、前記の各式に代入して、モータのすべり初期値s0、モータの内部抵抗初期値Rm0、定インピーダンス負荷のコンダクタンスGZ、調相用設備のサセプタンスBZなどの各定数の値を計算する。各計算結果は記憶装置に保存されると共に、定数表示部13aの各欄に表示される。
次に、負荷母線電圧計算手段が機能して、負荷母線電圧計算ステップS2が実行される。負荷母線電圧計算ステップS2では、入力された前記数値データおよびωの値を記憶装置から読み込み、前記の各式に代入して各ωの値に対する負荷母線電圧Vrの値を計算する。各計算結果は記憶装置に保存されると共に、関数表示部13bのωの値に対応する欄に表示される。
次に、トルク・消費電力計算手段が機能して、トルク・消費電力計算ステップS3が実行される。トルク・消費電力計算ステップS3では、入力された前記数値データおよびωの値を記憶装置から読み込み、前記の各式に代入して各ωの値に対する電気入力トルクTe、機械出力トルクTmおよび定インピーダンス消費電力PZの値を計算する。各計算結果は記憶装置に保存されると共に、関数表示部13bのωの値に対応する欄に表示される。
次に、グラフ表示手段が機能して、グラフ表示ステップS4が実行される。グラフ表示ステップS4では、各ωの値とそれに対応するTe、Tmの値を記憶装置から読み込み、グラフ表示部14のトルク−速度平面上に各点をプロットしたものを表示すると共に、記憶装置に保存する。また、各ωの値に対応するVr(ω)の値と、それに対応するTe+PZ、Tm+PZの値を記憶装置から読み込み、グラフ表示部14の電力−電圧平面上に各点をプロットしたものを表示すると共に、記憶装置に保存する。この際、グラフ補間手段が機能してグラフ補間ステップが実行され、各点を線形補間やスプライン補間などの手法により補間してその曲線を表示するように本プログラムを構成すると、使用者がグラフをより見やすくなり望ましい。
次に、安定性評価手段が機能して、安定性評価ステップS5が実行される。安定性評価ステップS5は、各ω(負荷母線電圧Vr)の値に対する電気入力トルクTeおよび機械出力トルクTmの値を記憶装置から読み込み、Te−Tm(=(Te+PZ)−(Tm+PZ))の値を求めて、その正負を確認する。ここで、不安定平衡点とは、その点よりも高電圧の領域ではTe+PZ>Tm+PZとなり、その点よりも低電圧の領域ではTe+PZ<Tm+PZとなる交点であるから、高電圧側から走査してTe−Tmの値が正から負に転じる部分があれば、そこに不安定平衡点を有することになり、正から負に転じる部分がなければ、不安定平衡点を有しないことになる(Te−Tmの欄の隣にフラグの欄を設け、Te−Tmの値が正から負に転じる部分はフラグ欄を1とし、そうでない部分はフラグ欄を0として、フラグ欄の中に1があれば不安定平衡点を有し、1がなければ不安定平衡点を有しないと判断する)。そして、不安定平衡点を有する場合には、電力系統は不安定であると判定し、不安定平衡点を有しない場合には、電力系統は安定であると判定する。不安定か安定かの判定結果は、判定表示部13cに表示されると共に、記憶装置に保存される。なお、使用者は、グラフ表示部14に表示されたグラフにより、安定平衡点および不安定平衡点を視覚的に確認することができる。
なお、上記各ステップにおいて、負荷母線電圧計算ステップS2とトルク・消費電力計算ステップS3は、一部の順序が入れ替わったり、同時並行的に実行されたりしても構わない。また、グラフ表示ステップS4は、安定性評価ステップS5の後に実行されるものであっても構わない。さらに、安定性評価ステップS5において、不安定平衡点の条件を満たす交点が存在するか否かの判断方法については、上記の方法に限られず、どのようなものであってもよい。
また、本発明の電圧安定性評価プログラムは、専用のソフトウェアとして実行されるものであっても、汎用の表計算ソフトウェアなどの上で実行されるものであってもよい。さらに、実際の系統を構成する要素の数値データを測定する計器と接続されたコンピュータ上で作動するプログラムであって、測定された数値データを読み込み、常時系統の安定性を評価するものであってもよい。
S1 データ入力ステップ
S2 負荷母線電圧計算ステップ
S3 トルク・消費電力計算ステップ
S4 グラフ表示ステップ
S5 安定性評価ステップ
S2 負荷母線電圧計算ステップ
S3 トルク・消費電力計算ステップ
S4 グラフ表示ステップ
S5 安定性評価ステップ
Claims (2)
- 複数の負荷を有する電力系統を、1つの模擬的なモータと1つの模擬的な定インピーダンスが並列接続された負荷を有する一負荷系統に縮約し、該一負荷系統の電圧安定性を縮約前の系統の電圧安定性とみなす電力系統の電圧安定性評価方法であって、
データ入力手段が前記一負荷系統を構成する要素の数値データの入力を受け付けるデータ入力過程と、
負荷母線電圧計算手段が記憶装置に保存された計算式を読み込み、前記数値データを代入して負荷母線電圧を求める負荷母線電圧計算過程と、
トルク・消費電力計算手段が記憶装置に保存された計算式を読み込み、前記数値データを代入してモータの電気入力トルク、モータの機械出力トルクおよび定インピーダンスの消費電力を求めるトルク・消費電力計算過程と、
安定性評価手段が、電力−電圧平面上において、モータの電気入力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線と、モータの機械出力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線が、不安定平衡点を有する場合に前記一負荷系統を不安定であると評価し、不安定平衡点を有しない場合に安定であると評価する安定性評価過程と、
からなることを特徴とする電力系統の電圧安定性評価方法。 - 複数の負荷を有する電力系統を、1つの模擬的なモータと1つの模擬的な定インピーダンスが並列接続された負荷を有する一負荷系統に縮約し、該一負荷系統の電圧安定性を縮約前の系統の電圧安定性とみなす電力系統の電圧安定性評価プログラムであって、
前記一負荷系統を構成する要素の数値データの入力を受け付けるデータ入力ステップ(S1)と、
記憶装置に保存された計算式を読み込み、前記数値データを代入して負荷母線電圧を求める負荷母線電圧計算ステップ(S2)と、
記憶装置に保存された計算式を読み込み、前記数値データを代入してモータの電気入力トルク、モータの機械出力トルクおよび定インピーダンスの消費電力を求めるトルク・消費電力計算ステップ(S3)と、
電力−電圧平面上において、モータの電気入力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線と、モータの機械出力トルクと定インピーダンスの消費電力の和を示す曲線が、不安定平衡点を有する場合に前記一負荷系統を不安定であると評価し、不安定平衡点を有しない場合に安定であると評価する安定性評価ステップ(S5)と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする電力系統の電圧安定性評価プログラム。
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