JP2005057872A - 誘導発電機の過渡安定度解析方法 - Google Patents

誘導発電機の過渡安定度解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 三相地絡故障時における誘導発電機の過渡安定度解析時間を短縮する。
【解決手段】 ステップS1で、入力トルクTmechを与える(故障発生時間tf=0)。その後、ステップS2でt=0,ステップS3でt=t+Δtの処理を行なった後、ステップS4で出力トルクTemを求めた後、求めた出力トルクTemと入力トルクTmechとを、ステップS5において、Tem≦Tmechかを判別する。判別の結果、肯定(入力トルクが大きいか等しい)ならステップS6で臨界故障除去時間CCTとし、否定(出力トルクが小さい)ならステップS3の処理に戻る。このようにして求めたCCTが、故障除去後誘導発電機が安定な動作を維持するために必要な臨界故障除去時間である。
【選択図】 図10

Description

この発明は、誘導発電機の過渡安定度解析方法に関するものである。
近年環境問題に対する意識の高揚により風力エネルギーなどの自然エネルギーの有効利用が推進されており、我が国においても、1999年11月に北海道苫前町で民間大規模ウィンドパーク(容量20MW,1MW×20機)が運転開始するなど、風力発電が、環境に優しいエネルギー源として注目されている。
風力エネルギーは、自然エネルギーの中でもエネルギー密度は希薄であるが、化石燃料を使用しないクリーンなエネルギーであることから良風地域では将来有望なエネルギーとして期待されている。
また、風力エネルギーは、純国産エネルギーであることからエネルギー資源の大半を海外に依存している我が国においては、エネルギーセキュリティーの観点からも重要である。
風力エネルギーを利用した風力発電装置は、一般に、構造が簡単、堅牢であるため、保守が容易であり、その上価格が安く、さらに系統並列時に位相調整の必要がないなどの利点から、かご形誘導発電機が多く用いられる。
しかし誘導発電機は、励磁源を持たないため、系統並列時には発電機定格電流の6〜7倍の突入電流が流れる。風力発電システムは、風況の強い地域に設置されることから、配電線亘長が長い線路の末端に設置されることが多く、この場合には突入電流によって瞬時的に系統電圧が大きく低下することがある。
また、誘導発電機が系統に連系されて運転している際に短絡故障や地絡故障等が生じた場合、その故障回復後、発電機を系統に再投入する際にも突入電流が流れる(例えば、非特許文献1参照。)。
千住智信、末吉儀秀、上里勝美、藤田秀紀「風力発電における誘導発電機の故障電流解析」、電気学会論文誌B、123巻、5号、PP608−615、平成15年
上述した背景から、風力発電機を系統並入した時の過渡現象等に関する解析や、送電線故障時における誘導発電機の過渡現象また過渡安定度に関する解析は重要な課題となっている。
しかしながら、従来の短絡故障や地絡故障などの送電線故障時における発電機の過渡安定度解析には、数値シミュレーションを用いた試行錯誤手法が多く用いられてきた。従って、従来の手法は、多数のシミュレーションを実行するため、過渡安定度解析には多大な時間を必要とする問題があった。
そこで、これまでに発明者らは、三相地絡故障時における誘導発電機の故障電流及び各出力に関する解析式を導出し、これらの解析式を用いて過渡時における誘導発電機の挙動について解析を行ってきた。
しかしながら、誘導発電機の各出力方程式は、非線形性を有しており、送電線故障時における速度−時間特性もまた非線形方程式によって表される。従って、これまでの過渡現象解析は、故障期間中の発電機速度を一定と仮定した条件下での解析であった。
このため、誘導発電機の性質に対して工学的見地から解析式を近似・簡単化し故障期間中の発電機速度−時間特性を近似的に表現する速度解析式を導出することと、上記解析式を用いて三相地絡故障時における誘導発電機の過渡安定度解析を行なうことが望まれている。
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、過渡安定度解析の実行にあたって、送電線故障時における誘導発電機の安定限界(臨界故障除去時間)を、時間領域で表現したトルク特性から容易に算出できるようにするとともに、三相地絡故障時における誘導発電機の過渡安定度解析時間を短縮することができるようにした誘導発電機の過渡安定度解析方法を提供することを課題とする。
この発明は、上記の課題を達成するために、誘導発電機の出力トルク−時間特性を用いて、故障期間中の発電機出力トルクを算出した後、その出力トルクが発電機入力トルクに等しくなったことから臨界故障除去時間を算出することを特徴とするものである。
また、誘導発電機の出力トルク−時間特性を求めるには、誘導発電機の出力トルク−すべり特性から求め、さらに、誘導発電機の出力トルク−すべり特性から上記誘導発電機の出力トルク−時間特性を求めるには、故障期間中の誘導発電機の回転子角速度を、近似式を用いて誘導発電機の定数から求めることを特徴とするものである。
さらにまた、臨界故障除去時間と予め設定された遮断時間とを比較して発電機動作の安定判別を行なうことを特徴とするものである。
上記の他、この発明は、誘導発電機の出力トルク−時間特性を用いて、予め設定された遮断時間に対して発電機出力トルクを算出した後、その発電機出力トルクと発電機入力トルクとを比較して発電機動作の安定判別を行なうことを特徴とするものである。
また、入力変数のうちひとつをパラメータとして臨界故障除去時間の算出を繰り返し、パラメータ解析を行なうことを特徴とし、さらに、入力変数のうちひとつをパラメータとして発電機動作の安定判別を繰り返し、パラメータ解析を行なうことを特徴とするものである。
この発明は、さらにまた、誘導発電機の出力トルク−すべり特性を用いて出力トルクが発電機トルクと等しくなるすべりを求め、故障期間中の発電機すべりが、上記出力トルクが発電機トルクと等しくなるすべりと等しくなったことから臨界故障除去時間を算出することを特徴とするものである。
以上述べたように、この発明によれば、出力トルク特性に基づく安定限界式から数値積分などを必要とせずに臨界故障除去時間を算出することができるとともに、三相地絡故障時における誘導発電機の過渡安定度解析時間を短縮することができる。
以下この発明の実施の形態を図面に基づいて説明するに当たり、まず、誘導発電機のトルク−すべり特性を用いた三相地絡故障時における誘導発電機の出力トルク及び速度に関する解析式の導出について述べる。
解析に用いるトルク−すべり特性を図1に示す。ここで、図1は一般的によく用いられる誘導発電機の定常特性であり、図中の記号Tmech,Temはそれぞれ発電機入力トルク及び定格電圧印加時の電気的出力トルクである。
誘導発電機が定常運転中(Sf)に地絡故障や短絡故障などの送電線故障が生じ、発電機端子電圧が低下した場合、例えば、定格電圧の1/2に電圧が低下した場合には、対応するトルク特性T'emは図1の破線で示すようになる。
このとき、入出力トルクは不平衡(Tmech>T'em)を生じ、故障期間中の発電機は機械的入力トルクによって加速される。したがって、故障期間中の発電機動作点は健全時の安定平衡点(Sf)から離れることになる。
このとき、比較的早く(S<Slim)故障が除去されると発電機は故障除去後減速され、再び安定な動作を継続することができる。しかしながら、発電機への入力トルクが出力トルクより大きくなった時点(S>Slim)で故障が除去された場合には、発電機は故障除去後も加速され、不安定状態に陥る。Sはすべりである。
従って、発電機入力トルクTmechと出力トルクTemが等しいか、入力トルクが出力トルクより多少大きくなる動作点、つまり、Tmech≧Temとなるすべりが故障除去後発電機が安定な動作を維持するための安定限界であり、ここでは、これらの動作点Sf,Slimを安定平衡点、不安定平衡点と定義する。
次に、出力方程式について述べる。図2は電力系統モデル説明図で、この電力系統モデル説明図において、一機無限大母線系統は、無限大母線1に接続された送電線路2と、この送電線路2に接続された負荷側母線3に接続されたかご形誘導発電機4とで構成されている。
なお、図2において、Fは送電線路2に発生した三相地絡故障点、Rlは線路抵抗、Xlは線路リアクタンス、R1l,R2lは線路抵抗、L1,L2は線路インダクタンス、CB1,CB2は遮断器である。また、表1はシステムパラメータである。
Figure 2005057872
ここで、かご形誘導発電機4を用いた一機無限大母線系統において、その二回線送電の一方の送電線路2上で三相地絡故障Fが生じた場合の過渡安定度解析を行う。なお、送電線路長は10kmとし、簡単のため故障は発電機母線側での三相地絡故障を想定した。
次に、故障期間中の発電機速度−時間特性を表現する速度解析式の導出を行なう。速度解析式の導出には、出力トルク方程式及び回転子の運動方程式が必要である。しかしながら、発電機の各出力は非線形性を有しているため、トルク方程式もまた非線形方程式によって表される。
従って、速度解析式の導出には、故障期間中の発電機速度を一定と仮定した条件下で導出したトルク方程式を用いる。ここで、上述の条件下での速度解析式の導出は、厳密な意味で正確な解析式を与えるとはいえないが、仮定した条件が、この形態で導出する各解析式に与える影響は軽微であるため、このような、仮定は近似的な解析式を与え、さらには誘導発電機の過渡安定度解析に関する有益な結果を与える。
なお、仮定した条件が速度解析式に与える影響については各解析式の導出の際に説明する。
以下、過渡電流解析式(回転速度一定)の導出について述べる。
まず、故障期間中の発電機速度一定と仮定した条件下で誘導発電機の過渡電流方程式を導出する。
誘導発電機の解析は、回転機の解析に良く用いられているd−q座標系で行なう。d−q座標系における誘導発電機の等価回路を図3に示す。ここで、定常状態におけるq軸固定子電圧Vqs、電流iqs及び回転子電流i'qrを次式とする。
Vqs=Vmεja(a:(ωt+θv))、iqs=Imsεjb(b:(ωt+θis))、
i'qr=Imrεjc(c:(ωt+θir))
また、故障期間中の同出力を次式とすれば、三相地絡故障時における誘導発電機の過渡電流解析式は、以下に示す(1)式〜(4)式のように表現できる。
Vqs=V'mεja(a:(ωt+θ'v))、iqs=I'msεjb(b:(ωt+θ'is))、
i'qr=I'mrεjc(c:(ωt+θ'ir))
Figure 2005057872
ただし、t'sは三相地絡故障発生時刻をゼロと考えた場合の経過時間であり、また、ids,i'dr,iqs及びi'qrはd,q軸固定子及び回転子電流、ids0,i'dr0,iqs0及びi'qr0は各電流の初期値である。
ここで、上式に示すように実施の形態で仮定した条件(故障期間中の回転子角速度ωr一定)が過渡電流解析式に与える影響は、各々の解析式右辺第3項に現れる正弦・余弦項のみである。これは、同解析式を導出する際にωrを含む項を近似によって無視したためである。なお、上述の近似は誘導機に対して一般的に成立する条件である。
次に、解析式の妥当性を数値計算プログラム(以下商品名である「MATLAB/SIMULINK」と称す)を用いたシミュレーション結果と比較することにより検証する。MATLAB/SIMULINKのシミュレーションモデルは、誘導発電機の持つ非線形性を考慮したシステム方程式を用いて構成されている。
解析式及びMATLAB/SIMULINKを用いたシミュレーション結果を図4に示す。ここで、図4は定格運転時のシミュレーション結果であり、解析式の妥当性を確認するため線路ブレーカーの開閉等は行っていない。
図4より、解析式はMATLAB/SIMULINKを用いたシミュレーション結果とよく一致し、導出の際に用いた近似が与える影響は微小であることが確認できる。なお、発電機の動作点を変更した場合においても同様に良好な結果が得られている。
なお、ここで用いた変数を表2に示す。
Figure 2005057872
次に出力トルク方程式(回転速度一定)について述べる。
ここでは、前述の過渡電流解析式を用いて三相地絡故障時における誘導発電機の出力トルク方程式を導出する。前述のようにして導出した過渡電流解析式を用いると誘導発電機の出力トルクは次式で表現できる。
Figure 2005057872
(1)〜(4)式を(5)式に代入して、整理すると次式となる。
Figure 2005057872
上記(6)式を用いたシミュレーション結果を図5に示す。シミュレーション結果より、解析式はMATLAB/SIMULINKを用いた解析結果と良く一致していることが確認できる。
次に速度解析式について述べる。
ここでは、前述した出力トルク方程式及び回転子の運動方程式を用いて速度解析式の導出を行う。回転子の運動方程式は次式で表される。
Figure 2005057872
ただし、J:発電機慣性定数、ωf:故障期間中の回転子角速度、Tmech:機械的入力トルク、Tdamp:制動トルクである。
ここで、故障期間中の発電機入カトルク及び制動トルクをそれぞれTmech=一定、Tdamp=0とし、さらに簡単ため(6)式右辺の括弧内の振動を無視し、指数的な減衰のみを考慮すれば、故障期間中誘導発電機の回転子角速度ωfは(6)、(7)式より以下のように表現できる。
Figure 2005057872
ここで、ωf(0)は故障発生直前の回転子角速度である。上式に示すように(6)式右辺の振動項を無視することで故障期間中の回転速度変化は単調増加(図6参照)となり、同現象を近似的に簡単に表現することができる。なお、振動項を除去することの妥当性は後述する。
シミュレーショシ結果
前述のように導出した速度解析式ならびに速度解析式を用いて得られる誘導発電機の過渡安定度解析結果の妥当性を、MATLAB/SIMULINKを用いたシミュレーション結果と比較することにより検証する。
まず、速度解析式に関するシミュレーション結果について述べる。
ここでは、前述のようにして導出した速度解析式の妥当性を検証する。対象とする故障シーケンスは、誘導発電機が定常運転中二回線送電の一方の線路上で三相地絡故障が発生(tf=4.0sec)した場合を想定しており、速度解析式の妥当性を確認するために、故障発生後線路ブレーカーの開閉等は行なっていない。
発電機への機械的入力トルクTmech=1.0p.u.一定時における速度解析式ならびにMATLAB/SIMULINKにより得られた回転速度のシミュレーション結果を図6に示す。
図6より、速度解析式を用いたシミュレーション結果は、同解析式を導出する際に用いた近似(振動成分無視)の影響により故障発生直後に若干誤差を生じているが、MATLAB/SIMULINKによるシミュレーション結果とよく一致していることが確認できる。
ここで、図5に示したように出力トルクTemは、故障発生初期には大きく振動しているが、発電機速度の変化に与える影響は、軽微であることが確認できる。
これは、発電機と風車の合成慣性が大きく機械的時定数が電気的時定数よりもかなり大きいので、Temの振動成分が回転速度へ与える影響は小さくなるためである。
さらに、t=4.0〜4.3sec間のTemの積分値がTmechの積分値の7%程度であることからも実質的な加速トルクはTmechによる影響が大きく、Temの振動成分が回転速度の変化に与える影響は小さいといえる。
次に誘導発電機への機械的入力トルクの変化に対する速度解析式の妥当性を検討する。図7は、各機械的入力トルクおいて故障発生から15サイクル後(0.3秒後)の速度解析式から得られた回転速度とMATLAB/SIMULINKシミュレーションにより得られた回転速度間の速度誤差を示している。
ただし、定格運転時の発電機速度を基準速度とする。図7より、速度解析式は、全ての機械的入力トルクに対して妥当な解析結果を与えていることが確認できる。
次に臨界故障除去時間に関するシミュレーション結果について述べる。
ここでは、故障除去後誘導発電機が安定な動作を維持するために必要な故障除去時間を前述のようにして導出した速度解析式を用いて解析する。また、その解析結果を試行錯誤(MATLAB/SIMULINK)により求めた結果と比較することで、その妥当性を検証する。
また、故障除去後誘導発電機が安定動作を維持するために必要な故障発生から除去までの時間の最大値を臨界故障除去時間(Critical Clearing Time:CCT)とし、次式で定義する。
CCT=tcl−tf (9)
ただし、tf,tclはそれぞれ故障発生時間及び故障除去時間である。
ここで対象とする故障条件は、二回線送電の一方の線路上で三相地絡故障が発生(tf=4.0sec)し、その後、故障回線を解列することによって故障除去とした。
図1に示す誘導機のトルク特性を、時間領域において表現すると図8となる。ここで、図8はトルク特性を、速度解析式を用いて時間領域に射影した特性、つまり、すべり−速度の関係を示す方程式(S=(ω−ωf)/ω)を用いて、図1の特性を時間領域で描いた特性であり、図中の記号tf、tlimは、それぞれ図1の安定平衡点及び不安定平衡点に対応している。
また、速度解析式は動作状態によって異なる初期値及び加速度を持つため、図8は各初期動作点ごとに異なる時間軸を持つ。図8において、故障発生後発電機への入力トルクと出力トルクが等しくなる時間が、故障除去後誘導発電機が安定な動作を維持するために必要な時間、つまりCCTである。
したがって、時間領域において表現したトルク特性を用いることで、三相地絡故障時における誘導発電機の過渡安定度判別ならびに過渡安定度余裕を容易に求めることができる。
上述の特性を用いた解析結果及びMATLAB/SIMULINKを用いて試行錯誤により求めた過渡安定度解析結果を図9に示す。図9より、この手法を用いた解析結果は、試行錯誤により求めた解析結果とよく一致していることが確認できた。
ここで、同図における微小な誤差は、速度解析式を導出する際に用いた近似(振動成分を無視)に起因する誤差であると考えられる。つまり、高トルク領域では、振動成分が完全に減衰する前に不安定平衡点に達するため、この手法と試行錯誤手法との間に誤差が生じたと考えられる。
しかし、図6からも分かるように、上述の振動成分は故障発生から2サイクル(0.04sec)後には十分減衰するため、通常用いられる誘導発電機の動作範囲では微小な誤差は生じるが有効な解析結果を与えることができる。
ただし、上記の手法は、故障期間中の発電機への機械的入力トルク、つまり風速が一定という条件下での解析である。したがって、送電線故障発生後風速が急変した場合には、例えば、突風により風速が大きくなった場合に、風速が低い条件でCCTを算出すると過大評価となり、反対に風速が急激に小さくなった場合に風速が大きい条件でCCTを算出すると控えめな評価結果を与えることになる。
さらに、風車ピッチ角時定数は、大型風車の場合には、通常数秒程度であるため、故障発生後に風速が急変しない限り過渡安定度への影響は軽微であり、上記の手法を有効に利用できる。
次に、上述した理論式((6)式と(8)式)を用いて臨界故障除去時間を求めたり、安定判別やパラメータ解析をしたりする、この発明の実施の形態について述べる。
[第1実施の形態]
図10は第1実施の形態を示す臨界故障除去時間CCTを求めるフローチャートで、図10において、まず、ステップS1で、入力トルクTmechを与える(故障発生時間tf=0)。その後、ステップS2でt=0,ステップS3でt=t+Δtの処理を行なった後、ステップS4で(6)式にて振動項を無視して、出力トルクTemを求める。
次に、求めた出力トルクTemと入力トルクTmechとを、ステップS5において、Tem≦Tmechかを判別し、肯定(入力トルクが大きいか等しい)ならステップS6で臨界故障除去時間CCTとし、否定(出力トルクが小さい)ならステップS3の処理に戻る。このようにして求めたCCTが、図8で説明した故障除去後誘導発電機が安定な動作を維持するために必要な臨界故障除去時間である。
[第2実施の形態]
図11は第2実施の形態を示す故障除去後誘導発電機が安定な動作を維持するための安定、不安定判別のフローチャートで、図10のフローチャートと同じ処理には同一ステップ符号を付して説明を省略する。
図11において、ステップS11で、入力トルクTmechを与える(故障発生時間tf=0)とともに、事故発生から遮断するまでの時間topenを与える。その後、ステップS2〜ステップS6までの処理を行なって、遮断時間topenが臨界故障除去時間CCTより小さいかをステップS7で判別する。
ステップS7の判別の結果、肯定(小さい)なら発電機が安定な動作、否定(大きい)ならそれが不安定な動作であるとする。
[第3実施の形態]
図12は第3実施の形態を示す臨界故障除去時間を求めないで発電機の安定な動作、不安定動作を判別するフローチャートで、図12において、ステップS11で、入力トルクTmechを与える(故障発生時間tf=0)とともに、事故発生から遮断するまでの時間topenを与える。次に、ステップS12で(6)式にて振動項を無視して、t=topenに対する出力トルクTemを求める。出力トルクTemを求めた後、ステップS13で、出力トルクTem>入力トルクTmechを判別し、判別の結果Tem>Tmechなら肯定であるとして安定な動作と判定し、否定なら不安定な動作と判定する。
[第4実施の形態]
図13は第4実施の形態を示すパラメータを変更したとき入力トルクが出力トルクに与えるパラメータを求めるフローチャートで、図13において、ステップS21で入力トルクTmech=1p.u(p.u:per unit)、ΔTmech=0.1p.uとする。そして、ステップS22でTmech=Tmech−ΔTmechの処理を行なう。
ステップS22の処理の後、ステップS23で図10に示した処理でCCTを求める。この処理で、Tmech=0.1になるまでステップS24で判別し、Tmech=0.1なったらステップS25でパラメータ解析を終了する。
上記図13のように処理することにより、入力変数のうちひとつをパラメータとして臨界故障除去時間の算出または安定判別を繰り返して、そのパラメータが臨界故障除去時間に与える影響を解析すること、すなわち、パラメータ解析を行うことができる。
[第5実施の形態]
図14は第5実施の形態を示す臨界故障除去時間CCTを求めるフローチャートで、図14において、まずステップS31で入力トルクTmechを与え、誘導発電機の出力トルク−すべり特性を用いて出力トルクが発電機トルクと等しくなるすべりSlim(不安定平衡点)を求める。(故障発生時間tf=0)。
その後、ステップS2でt=0,ステップS3でt=t+Δtの処理を行なった後、ステップS34で(8)式により故障期間中の回転速度ωfを求める。
次に、求めたωfとωlim(=ω(1−Slim))とをステップS35において、ωf≧ωlimかを判別し、肯定(回転速度が不安定平衡点に大きいか等しい)ならステップS6で臨界故障除去時間CCTとし、否定(回転速度が不安定平衡点より小さい)ならステップS3の処理に戻る。このようにして求めたCCTが図8で説明した臨界故障除去時間である。
この発明は、三相地絡故障時における誘導発電機の過渡安定度解析に関する手法であり、この手法は工学的な見地から故障期間中の速度−時間特性を表す速度解析式を簡易的に表現し、一般的によく用いられている発電機トルク−すべり特性を時間領域に射影することによって、三相地絡故障時における誘導発電機の過渡安定度判別ならびに過渡安定度余裕を容易に求めることができる利点がある。
また、この手法による過渡安定度解析結果は、MATLAB/SIMULINKを用いて試行錯誤により求めた解析結果とよく一致し、妥当な解析結果を与えていることを確認した。これらのことからこの発明では、風力エネルギーを利用する際に、誘導発電機が活用できる。
誘導発電機のトルク−すべり特性図。 電力系統モデル説明図。 (a)誘導発電機のd軸等価回路図、(b)誘導発電機のq軸等価回路図。 三相地絡故障電流シミュレーション結果を示す波形図で、(a)はq軸固定子電流波形図、(b)はq軸回転子電流波形図、(c)はd軸固定子電流波形図、(d)はd軸回転子電流波形図。 三相地絡故障時の誘導発電機の出力トルク波形図。 三相地絡故障時の発電機速度の変化を示す特性図。 機械的入力トルクに対する誤差に変化を示す特性図。 トルク−時間特性図。 臨界故障除去時間の解析結果と試行錯誤による特性図。 この発明の第1実施の形態を示す臨界故障除去時間CCTを求めるフローチャート。 この発明の第2実施の形態を示す故障除去後誘導発電機が安定な動作を維持するための安定、不安定判別のフローチャート。 この発明の第3実施の形態を示す臨界故障除去時間を求めないで発電機の安定な動作、不安定動作を判別するフローチャート。 この発明の第4実施の形態を示すパラメータを変更したとき入力トルクが出力トルクに与えるパラメータを求めるフローチャート。 この発明の第5実施の形態を示す臨界故障除去時間CCTを求めるフローチャート。
符号の説明
1…無限大母線
2…送電線路
3…負荷側母線
4…誘導発電機
F…三相地絡故障点
Tmech…入力トルク
Tem…出力トルク

Claims (8)

  1. 誘導発電機の出力トルク−時間特性を用いて、故障期間中の発電機出力トルクを算出した後、その出力トルクが発電機入力トルクに等しくなったことから臨界故障除去時間を算出することを特徴とする誘導発電機の過渡安定度解析方法。
  2. 請求項1に記載の誘導発電機の過渡安定度解析方法において、
    誘導発電機の出力トルク−時間特性を求めるには、誘導発電機の出力トルク−すべり特性から求めることを特徴とする誘導発電機の過渡安定度解析方法。
  3. 請求項2に記載の誘導発電機の過渡安定度解析方法において、
    誘導発電機の出力トルク−すべり特性から上記誘導発電機の出力トルク−時間特性を求めるには、故障期間中の誘導発電機の回転子角速度を、近似式を用いて誘導発電機の定数から求めることを特徴とする誘導発電機の過渡安定度解析方法。
  4. 請求項1に記載の誘導発電機の過渡安定度解析方法において、
    前記臨界故障除去時間と予め設定された遮断時間とを比較して発電機動作の安定判別を行なうことを特徴とする誘導発電機の過渡安定度解析方法。
  5. 誘導発電機の出力トルク−時間特性を用いて、予め設定された遮断時間に対して発電機出力トルクを算出した後、その発電機出力トルクと発電機入力トルクとを比較して発電機動作の安定判別を行なうことを特徴とする誘導発電機の過渡安定度解析方法。
  6. 請求項1に記載の誘導発電機の過渡安定度解析方法において、入力変数のうちひとつをパラメータとして臨界故障除去時間の算出を繰り返し、パラメータ解析を行なうことを特徴とする誘導発電機の過渡安定度解析方法。
  7. 請求項4又は請求項5に記載の誘導発電機の過渡安定度解析方法において、入力変数のうちひとつをパラメータとして発電機動作の安定判別を繰り返し、パラメータ解析を行なうことを特徴とする誘導発電機の過渡安定度解析方法。
  8. 請求項2又は請求項3に記載の誘導発電機の過渡安定度解析方法において、誘導発電機の出力トルク−すべり特性を用いて出力トルクが発電機トルクと等しくなるすべりを求め、故障期間中の発電機すべりが、上記出力トルクが発電機トルクと等しくなるすべりと等しくなったことから臨界故障除去時間を算出することを特徴とする誘導発電機の過渡安定度解析方法。
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