JP2007053836A - 臨界故障除去時間算出方法、臨界故障除去時間算出プログラム、及び記録媒体 - Google Patents

臨界故障除去時間算出方法、臨界故障除去時間算出プログラム、及び記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】制御対象が故障後に回復可能となる時間と、故障後に回復不可能となる時間との臨界となる臨界故障除去時間を精度良く迅速に求める。
【解決手段】制御対象の臨界状態を示す関数fに用いられる、臨界故障除去時間の関数である多次元状態変数xと、関数fをゼロとする多次元状態変数xm+1と、多次元状態変数xとxm+1との間で離散される複数の多次元状態変数x(1≦k≦m:kは整数)と、x乃至xm+1の中で相互に隣接する多次元状態変数x及びxk+1の間のユークリッド距離εとを、
Figure 2007053836

が最小となる値に決定し、多次元状態変数xから臨界故障除去時間を求めてなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、制御対象が故障後に回復可能となる時間と、この制御対象が故障後に回復不可能となる時間と、の臨界となる臨界故障除去時間を求める臨界故障除去時間算出方法、及びこの臨界故障除去時間算出方法を情報処理装置に実施させる臨界故障除去時間算出プログラム、並びにこの臨界故障除去時間算出プログラムを記録した記録媒体に関する。
過渡安定度解析は、一般に、制御対象の非線形現象の過渡安定度を解析するのに有用な周知の方法である。この制御対象が例えば電力系統の場合、過渡安定度解析は、電力系統の運用において安全性を維持するために重要な役割を果たす。
電力系統の故障に起因する擾乱に対してこの電力系統が如何なる動的な応答をするかを調べる方法として、例えば、電力系統の初期状態から該当の状態までを数値積分により逐次計算するシミュレーション法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
一方、前述した非特許文献1に開示されるように、電力系統のいわゆる過渡エネルギーに基づいて、この電力系統の安定度を評価するエネルギー関数法が知られている。このエネルギー関数法により、多数存在する上記擾乱に対して安定度評価ができる。また、前述した非特許文献1に開示されるように、様々なエネルギー関数法の中で、上記安定度判別の基になる電力系統のいわゆる臨界エネルギーを算出する方法が提案されており、BCU法と称されている。このBCU法により、後述する支配的不安定平衡点(CUEP:controlling unstable equilibrium point)における臨界エネルギーが算出される。
図6を参照しつつ、前述したシミュレーション法及びエネルギー関数法による過渡安定度解析の対象となり得る電力系統の動的挙動の一例について説明する。同図は、制動無しの1機無限大母線系統の非線形現象を位相平面における軌跡で表わした模式図である。同図に例示されるように、上記1機の発電機の位相角δ及び角速度ωの軌跡(電力系統の状態を示す軌跡)には、故障軌跡1における異なる3つの点PB、PC、PDをそれぞれ起点とする3種類がある。ここで、故障軌跡1とは、例えば母線近傍に短絡事故が発生した場合の電力系統の状態を示す軌跡を意味し、電力系統が安定状態にある安定平衡点PAを起点とする例えば放物線形状をなすものである。
故障が除去された後に安定状態に戻ることが可能な電力系統の状態を示す軌跡2は、安定平衡点PAの周りで閉じる例えばループ形状をなし、これは発電機の位相角δ及び角速度ωがそれぞれ所定範囲内で振動しながらやがては安定点に落ち着くことに対応する。また、故障が除去された後に安定状態に戻ることが不可能な電力系統の状態を示す軌跡4は、発電機の位相角δ及び角速度ωがともに発散するような形状をなし、これは発電機の同期が保たれなくなり脱調することに対応する。つまり、電力系統の状態は、安定平衡点PAから故障軌跡1に沿って時間変化している際に、その故障が点PBで相対的に早く除去された場合、軌跡2に乗り移ることにより安定状態への回復が可能となる一方、上記故障が点PDで相対的に遅く除去された場合、軌跡4に乗り移ることにより安定状態への回復が不可能となる。
軌跡2及び軌跡4の間の臨界軌跡3は、その数理論上の特異点としての支配的不安定平衡点PEを有するものである。この支配的不安定平衡点PEは数理論上の仮想的な点である。即ち、電力系統の状態は、安定平衡点PAから故障軌跡1に沿って時間変化している際に、その故障が点PCで除去された場合、臨界軌跡3に沿って数理論上無限大の時間をかけて支配的不安定平衡点PEに到達するとされている。
もし前述した安定平衡点PAから点PCまでの時間より短い時間で故障が除去されれば、電力系統の状態は、安定状態に回復可能となる。この安定平衡点PAから点PCまでの時間は、臨界故障除去時間と称されており、前述したシミュレーション法及びエネルギー関数法を用いた過渡安定度解析の1つは、この臨界故障除去時間を電力系統のモデルに基づいて算出することにある。前述した非特許文献1に開示されるように、過渡安定度解析では、臨界軌跡3が数値的に求められて、支配的不安定平衡点PEにおける発電機の位相角δ及び角速度ωとともに、臨界故障除去時間が算出される。
例えば、臨界故障除去時間の算出に前述したシミュレーション法を用いる場合、電力系統のモデルに対して予め臨界故障除去時間を設定し、これにより算出された電力系統の状態が最終的に安定状態に回復するか否かを判別し、この判別結果が前述した臨界状態に対応するものとなるまで上記設定、算出、及び判別を繰り返し実施する。一方、臨界故障除去時間の算出に前述したエネルギー関数法の中の例えばBCU法を用いる場合、電力系統のモデルから得られるエネルギー曲面上で、前述した点PC及び点PE間に対応する位相角δの経路を見いだすべくこの曲面の勾配を算出する。更に、このBCU法では、前述した非特許文献1に開示されるように、この経路の探索をより効率的に実施可能とするShadowing法(BCU-Shaadowing法)が提案されている。また更に、このBCU法では、前述した非特許文献1に開示されるように、前述した点PCから点PEまでの臨界軌跡における電力系統の離散的な状態を示す多次元状態変数を一括して求める方法が、本出願人により提案されている。
餘利野直人、斉藤岳志、亀井敬史、及び佐々木博司著、「過渡安定性評価のための新しい解析手法の提案」、電気学会論文誌B、124巻12号、2004年、pp.1425−1430
しかしながら、制御対象の臨界故障除去時間を算出する場合、前述したシミュレーション法は、制御対象の状態の時間変化を忠実に再現するが故に計算時間がかかるため、例えば故障時における実時間(リアルタイム)解析には向いていない。また、前述したBCU-Shadowing法を含めたエネルギー関数法においても、前述した臨界エネルギーを算出することや、前述したエネルギー曲面上での位相角δの経路を精度良く探索すること等は困難であるとされている。よって、シミュレーション並みの精度を保ちつつリアルタイム解析をすることはやはり困難である。
一方、前述した離散的な多次元状態変数を一括して求める方法は、例えばリミッタ等を制御対象のモデルに含めることができないために、その適用可能なモデルが限定されるという問題点がある。よって、例えば電力系統以外の制御対象の非線形現象の過渡安定度解析に対してこの方法を適用することはできず、これは制御対象の適用範囲を狭めることになる。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制御対象の臨界故障除去時間を精度良く迅速に算出する故障除去時間算出方法を提供することにある。
前記課題を解決するための発明は、制御対象が故障後に回復可能となる時間と、前記制御対象が前記故障後に回復不可能となる時間と、の臨界となる臨界故障除去時間を求める臨界故障除去時間算出方法であって、前記故障後に回復可能となる前記制御対象の状態と、前記故障後に回復不可能となる前記制御対象の状態と、の臨界となる前記制御対象の臨界状態を示す関数fに用いられる、前記臨界故障除去時間の関数である多次元状態変数xと、前記関数fをゼロとする多次元状態変数xm+1と、前記多次元状態変数xとxm+1との間で離散される複数の多次元状態変数x(1≦k≦m:kは整数)と、前記多次元状態変数x乃至xm+1の中で相互に隣接する多次元状態変数x及びxk+1の間のユークリッド距離εと、を、
Figure 2007053836
が最小となる値に決定し、前記多次元状態変数xから前記臨界故障除去時間を求めてなる。
上式(以下、2乗総和式と称する)における2乗総和の対象を誤差ベクトルμと称する場合、多次元状態変数x乃至xm+1及びユークリッド距離εを、2乗総和式が最小となる値に決定することは、μを略ゼロとする(m+1)個の多元連立方程式の解を求めることに等しい。例えば数値計算を実施して、μを厳密にゼロとする(m+1)個の多元連立方程式の解を求める場合、0からmまでのkについて、μを厳密にゼロとする等式からxを逐次求めることになる。しかし、数値計算の場合、kが大きくなるにつれてその誤差が累積して大きくなり、臨界状態を特徴付ける多次元状態変数であるxm+1において最大の計算誤差が生じる虞がある。一方、μを略ゼロとする(m+1)個の多元連立方程式の解を求めるべく、2乗総和式が最小となる値にx乃至xm+1及びεを決定すれば、前述した計算誤差を、x乃至xm+1にわたって分散させることができる。よって、μを厳密にゼロとする(m+1)個の多元連立方程式を直接解く場合に比べて、2乗総和式が最小となる値にx乃至xm+1及びεを決定することは、臨界状態に対するより高精度の計算結果を与えることになり、結果的にこれはxから求められる臨界故障除去時間の精度の向上につながる。
また、2乗総和式を最小にする場合、以下述べる理由により、例えば制御対象の臨界状態に対する所定の制約条件を示す関数g(x)がゼロより大きい等の不等式を考慮することが可能である一方、μを厳密にゼロとする(m+1)個の多元連立方程式の解を求める場合にはこの不等式を考慮できない。つまり、上記多元連立方程式は冗長性を有するものであるため、その変数であるx乃至xm+1及びεの実質的な個数は、方程式の個数(m+1)よりも少ない。一般に、変数の個数が方程式の個数よりも少ない場合、多元連立方程式では唯一解が求まらない。そこで、上記μを厳密にゼロとする(m+1)個の多元連立方程式に対する唯一解ではない解を求めるためには、最小二乗公式が適用される。しかし、この最小二乗公式においては、不等式を考慮できないとされている。よって、上記μを厳密にゼロとする(m+1)個の多元連立方程式の解を求める場合にはこの不等式を考慮できない。
この所定の制約条件は、広く一般の制御対象の臨界状態に対して付加され得るものである。よって、2乗総和式が最小となる値にx乃至xm+1及びεを決定することにより、例えば電力系統以外の一般の制御対象の臨界故障除去時間を算出できる。
また、かかる臨界故障除去時間算出方法において、前記制御対象は、電力系統であり、前記多次元状態変数x(0≦k≦m+1:kは整数)は、前記電力系統における発電機の位相角度を成分とする変数ベクトルであり、前記関数fは、前記多次元状態変数xに対して、当該多次元状態変数の時間微分dx/dtを与える関数ベクトルである、こととしてもよい。
また、かかる臨界故障除去時間算出方法において、前記多次元状態変数xは、前記臨界故障除去時間のn次式(n≧1:nは整数)を含み、前記電力系統の臨界状態における故障除去時の状態を示す変数ベクトルである、こととしてもよい。
また、かかる臨界故障除去時間算出方法において、前記多次元状態変数xm+1は、前記関数fの支配的不安定平衡点である特異点を示す変数ベクトルである、こととしてもよい。
また、前記課題を解決するための発明は、制御対象が故障後に回復可能となる時間と、前記制御対象が前記故障後に回復不可能となる時間と、の臨界となる臨界故障除去時間を求める臨界故障除去時間算出方法を情報処理装置に実施させる臨界故障除去時間算出プログラムであって、前記故障後に回復可能となる前記制御対象の状態と、前記故障後に回復不可能となる前記制御対象の状態と、の臨界となる前記制御対象の臨界状態を示す関数fに用いられる、前記臨界故障除去時間の関数である多次元状態変数xと、前記関数fをゼロとする多次元状態変数xm+1と、前記多次元状態変数xとxm+1との間で離散される複数の多次元状態変数x(1≦k≦m:kは整数)と、前記多次元状態変数x乃至xm+1の中で相互に隣接する多次元状態変数x及びxk+1の間のユークリッド距離εと、を、
Figure 2007053836
が最小となる値に決定し、前記多次元状態変数xから前記臨界故障除去時間を求めてなる。
また、前記課題を解決するための発明は、制御対象が故障後に回復可能となる時間と、前記制御対象が前記故障後に回復不可能となる時間と、の臨界となる臨界故障除去時間を求める臨界故障除去時間算出方法を実施するための臨界故障除去時間算出プログラムを記録した、情報処理装置により読み取り可能な記録媒体であって、前記臨界故障除去時間算出プログラムは、前記故障後に回復可能となる前記制御対象の状態と、前記故障後に回復不可能となる前記制御対象の状態と、の臨界となる前記制御対象の臨界状態を示す関数fに用いられる、前記臨界故障除去時間の関数である多次元状態変数xと、前記関数fをゼロとする多次元状態変数xm+1と、前記多次元状態変数xとxm+1との間で離散される複数の多次元状態変数x(1≦k≦m:kは整数)と、前記多次元状態変数x乃至xm+1の中で相互に隣接する多次元状態変数x及びxk+1の間のユークリッド距離εと、を、
Figure 2007053836
が最小となる値に決定し、前記多次元状態変数xから前記臨界故障除去時間を求めるプログラムである。
制御対象の臨界故障除去時間を精度良く迅速に算出できる。
図1を参照しつつ、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法について説明する。同図は、本実施の形態の制御対象の状態を示す離散化された多次元状態変数を表示する模式図である。尚、本実施の形態の制御対象の非線形現象は、この制御対象の状態を示す多次元状態変数x及び多次元非線形関数fに適用される後記の「式1」の非線型方程式により記述されるものとする。
つまり、本実施の形態では、制御対象の臨界軌跡を「式1」の非線形方程式の解として求め、この解に基づいて臨界故障除去時間を算出する。
Figure 2007053836
「式1」の方程式は時刻に依存する方程式であるため、離散的な時刻tにおける離散的な解をx(図1)とすると、いわゆる台形公式の近似により、後記の「式2」の等式が成立する。但し、kは、上記離散的な時刻の経過とともに制御対象の状態が断続的に移行する際の移行番号を示す整数である。
Figure 2007053836
ここで、「式1」の方程式に基づき、f(x)はxの時間微分dx/dtに等しいものとする。本実施の形態の離散的なxは、「式1」の方程式における連続的な多次元状態変数xに対応する離散的なベクトルを表わし、離散的な関数f(x)は、「式1」の方程式における連続的な多次元関数f(x)に対応する離散的な関数ベクトルを表わす。尚、以後、xを変数ベクトルと称することとする。
図1に例示されるように、x(k=0)を、臨界故障除去時間(CCT:critical clearing time)に対応する変数ベクトルとし、x(=xm+1、但しmは整数)を支配的不安定平衡点CUEPにおける変数ベクトルとすれば、「式2」の等式におけるx(0≦k≦m+1)は、臨界故障除去時から、制御対象の状態が支配的不安定平衡状態に至るまでの臨界軌跡を構成するものとなる。尚、上記xは、例えば図6に例示された故障軌跡1と臨界軌跡3との交点PCに対応するものである。
但し、支配的不安定平衡点CUEPに近づくにつれて「式2」の等式の右辺の時間差分(tk+1−t)は無限に大きくなるため、本実施の形態では、上記無限大を回避するために、図1に例示された隣接する2つの変数ベクトル間のユークリッド距離εを後記の「式3」の等式に基づいて定義しておく。
Figure 2007053836
「式3」の等式に基づいて、上記無限大となる時間の項の代わりに等間隔のユークリッド距離εを用いることにより、「式2」の等式は後記の「式4」の等式に変換される。このユークリッド距離εは、支配的不安定平衡点CUEPに近づいても無限大になることなく常に一定である。
Figure 2007053836
ここで、「式4」の等式の右辺の0はゼロベクトルを意味し、よってこの等式は(m+1)個の多次元(ベクトルの次元)の連立方程式を意味することになる。つまり、「式4」の多元連立方程式の解を求めることは、無限大の時間を直接取り扱うことなく制御対象の臨界軌跡を構成する等間隔の点(図1)を求めることと等価となる。
本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法では、「式4」の多元連立方程式の解を求めるために、この「式4」における左辺を誤差ベクトルとして、この誤差ベクトルの大きさ(ノルム)の総和を最小とするx(0≦k≦m+1)及びεを決定する後記「式5」の操作を実施する。
Figure 2007053836
但し、「式5」の操作は、変数ベクトルxが臨界故障除去時間τに基づくことを示す後記の「式6」の等式と、変数ベクトルxm+1における関数f(即ち、dxm+1/dt)は支配的不安定平衡点CUEPに対応するゼロベクトルであることを示す後記の「式7」の等式と、からなる束縛条件の下に実施される。
Figure 2007053836
本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法では、上記操作により得られたxに「式6」の等式を適用することにより、臨界故障除去時間τが算出される。尚、上記操作にあたって、関数fにはいわゆる臨界状態に対応するエネルギーが与えられているものとする(臨界状態を示す関数)。
「式4」の多元連立方程式に基づけば、(m+1)個の誤差ベクトルは全てゼロとなることが理想的であるが、実際には、前述した台形公式の近似に起因する数値誤差が生じ、これが「式5」に例示される誤差ベクトルを形成する。そこで、本実施の形態では、「式5」の操作、即ち誤差ベクトルの大きさ(ノルム)の総和を最小とするx(0≦k≦m+1)及びεを求めることにより、臨界故障除去時から、制御対象の状態が支配的不安定平衡状態に至るまでの臨界軌跡に沿って誤差を分散させている。一方、もし、「式4」の多元連立方程式を、臨界故障除去時から、制御対象の状態が支配的不安定平衡状態に至るまで逐次解く場合、前述した誤差が逐次累積して支配的不安定平衡点CUEPにおいて最大の誤差が生じる虞がある。よって、「式4」の多元連立方程式を直接解く場合に比べて、「式5」の操作を実施することは、臨界軌跡に対するより高精度の計算結果を与えることになり、結果的にこれは「式6」の等式により求められる臨界故障除去時間τの精度の向上につながる。
また、「式5」の操作を実施する場合、後記の「式8」の不等式による制約条件を更なる束縛条件として付加することが可能であるのに対し、「式4」の多元連立方程式を直接解くことにより前述した離散的な多次元状態変数を一括して求める方法では、このような束縛条件を考慮できない。
Figure 2007053836
ここで、上記f(x)が例えば電力系統のモデルに対応する関数である場合には、g(x)は、このモデルに付加される発電機のリミッタ等を意味する関数である。
以下、「式4」の多元連立方程式を直接解く場合、「式8」の不等式による束縛条件を考慮できない理由を述べる。「式4」の多元連立方程式は冗長性を有するものであるため、その変数であるx〜x及びεの実質的な個数は、「式4」の多元連立方程式の個数(m+1)よりも少ない。一般に、変数の個数が方程式の個数よりも少ない場合、多元連立方程式では唯一解が求まらない。そこで、「式4」の多元連立方程式に対する唯一解ではない解を求めるためには、最小二乗公式が適用される。しかし、この最小二乗公式においては、不等式を考慮できないとされている。よって、「式4」の多元連立方程式を直接解く場合、「式8」の不等式による束縛条件を考慮できない。
以上から、「式6」及び「式7」の等式及び「式8」の不等式による束縛条件下で「式5」の操作を実施することは、広く電力系統以外の制御対象の非線形現象の過渡安定度解析に対しても適用可能となる。
===1機無限大母線系統===
前述した臨界故障除去時間算出方法を、1機無限大母線系統のモデルの非線形現象へ適用する適用例について説明する。
図2に例示されるように、本実施の形態の1機無限大母線系統10のモデルは、自動電圧調整器(AVR:Automatic Voltage Regulator)100、ガバナ200、及び制動を伴った同期発電機300をそれぞれ示すモデルを備えて構成されている。同図は、本実施の形態の1機無限大母線系統のモデルを示す概念図である。このモデルによれば、前述した「式1」の方程式における変数ベクトル(多次元状態変数)xの各成分は、後記の「式9」〜「式12」における内部位相角δ、角速度ω、過渡リアクタンス背後電圧E、及び機械入力Pとなる。
Figure 2007053836
ここで、「式9」〜「式12」の各等式の右辺が前述した関数fに相当する。また、ωは基準角速度を示し、Mは慣性定数を示し、Vは無限大母線電圧を示し、dは制動係数を示し、T(TAVR、TGOV)は時定数を示し、K(KAVR、KGOV)はゲインを示し、Vは端子電圧を示し、Vrefは基準端子電圧を示し、PMrefは基準機械入力を示し、Xは過渡リアクタンス及び線路リアクタンスの合計を示すものである。
本実施の形態のモデルでは、時刻t=0において3相地絡故障のモデル(3LG)400を想定し、時刻t=τにおいて2つの送電線500、600のうちの1つを開放することにより故障を除去するものとする。また、本実施の形態のモデルに対して、前述したシミュレーション法等を適用することにより、前述した故障軌跡が予め求められて、「式6」の束縛条件における変数ベクトルxは、例えばτの2次関数(n次式)で記述され得るものとする。更に、「式9」〜「式12」の各等式における右辺を0とし、「式7」の束縛条件に基づいて、x(=xm+1)に相当する内部位相角δ、角速度ω、過渡リアクタンス背後電圧E、及び機械入力Pが予め求められているものとする。
本実施の形態では、「式9」〜「式12」に示される関数f及び変数ベクトルxがx〜xに離散化され、予め求められたx及びxを代入した誤差ベクトルについて、「式5」の操作が実施された。前述したように、xはτの関数であるため、最小化のために最適化されるパラメータはxの代わりにτとされる一方、xは予め求められたベクトルに固定された。つまり、最小化に際して、τ、x〜x、及びεが最適化された。尚、最小化には、いわゆるニュートン法が適用された。即ち、τ、x〜x、及びεの初期値から前述した誤差ベクトルの大きさ(ノルム)の総和が算出され、この総和が所定値に収束するまで、所定の繰り返し操作が実施された。また、前述した整数mを1から100まで変化させつつ、同様の最小化の操作が実施された。例えばこのmをより大きくすることは、前述した臨界軌跡の分割数をより多くして計算精度を向上させることを意味する。但し、mが大きくなれば計算時間はより長くなる。
表1において、異なる整数m毎に、上記最小化のために最適化されたτ(臨界故障除去時間)(秒)と、上記繰り返し回数と、後述する所定の情報処理装置による計算時間(秒)と、を示す。一方、表2において、前述したシミュレーション法により算出された臨界故障除去時間(秒)及び後述する所定の情報処理装置による計算時間(秒)を、このシミュレーション法における数値積分の刻み毎に示す。例えばこの刻みをより小さくすることは、シミュレーション法の計算精度を向上させることを意味する。
Figure 2007053836
表1に示される臨界故障除去時間は、比較的小さなmについても、表2に示される最も精度の高い臨界故障除去時間1.3795-1.3800秒を0.01秒程度の誤差で再現していることがわかった。しかも、その計算時間は、シミュレーション法による計算時間に対するおよそ10分の1であることがわかった。つまり、1機無限大母線系統に適用する場合、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、シミュレーション法並みの精度を保ちつつリアルタイム解析が可能な程度まで高速であると言える。
===AF9及びIEEE30===
前述した臨界故障除去時間算出方法を、Anderson & Fouadの3機9母線系統(AF9)のモデル(図3参照)及びIEEE6機30母線系統(IEEE30)のモデル(図4参照)の非線形現象へ適用する適用例について説明する。尚、図3は本実施の形態のAF9のモデルを示す概念図であり、図4は本実施の形態のIEEE30のモデルを示す概念図である。
一般に、n機の発電機を備えた電力系統のモデルによれば、前述した「式1」の方程式における変数ベクトル(多次元状態変数)xの成分は、後記の「式13」における内部位相角δ(1≦i≦n)となる。尚、このiは、n機の発電機のうちの第i番目にあたる第i発電機を示す整数である。
Figure 2007053836
ここで、「式13」のn個の等式の右辺が前述した関数fに相当する。また、Pm(i)は第i発電機の機械入力を示し、Pe(i)は第i発電機の電気入力を示し、Mは第i発電機の慣性定数を示し、MはMの総和を示すものである。但し、Pe(i)は第i発電機の位相角δから後記の「式14」の等式に基づいて一義的に決定されるものである。
Figure 2007053836
ここで、Yijは第i発電機及び第j発電機のアドミタンス行列の各要素を示し、E及びEはそれぞれ第i発電機及び第j発電機の端子電圧を示し、αijは第i発電機及び第j発電機に特有の定数を示すものである。
ところで、「式13」のn個の等式の右辺は、本実施の形態の電力系統のモデルに対するポテンシャルエネルギーVp(δ)を各発電機の位相角度δにより偏微分して得たn次元ベクトルに相当するものである。
本実施の形態のモデルでは、時刻t=0において複数の母線のうちの所定の母線近傍の3相地絡故障を想定し、時刻t=τにおいて2つの送電線のうちの1つを開放することにより故障を除去するものとする。また、前述したポテンシャルエネルギーVp(δ)の曲面上の第1極大点が予め求められ、「式6」の束縛条件における変数ベクトルxは、この第1極大点から推定されるものとする。更に、「式13」のn個の等式における右辺を0とし、「式7」の束縛条件は、x(=xm+1)に相当する第i発電機の内部位相角δ に関する後記の「式15」の等式により表わされる。
Figure 2007053836
本実施の形態では、「式13」に示される関数f及び変数ベクトルxがx〜xに離散化され、「式15」の等式の条件下で、前述した誤差ベクトルについて「式5」の操作が実施された。つまり、最小化に際して、x〜x及びεが最適化された。尚、最小化には、いわゆるニュートン法が適用された。即ち、前述したx及びxの初期値に加えて、x〜x及びεの初期値から前述した誤差ベクトルの大きさ(ノルム)の総和が算出され、この総和が所定値に収束するまで、所定の繰り返し操作が実施された。
<<<Anderson & Fouadの3機9母線系統(AF9)>>>
表3において、Anderson & Fouadの3機9母線系統(AF9)のモデルにおける異なる故障点毎に、前述した従来のBCU-Shadowing法により算出された臨界故障除去時間(秒)と、上記最小化のために最適化されたxから求められたτ(臨界故障除去時間)(秒)と、上記繰り返し回数と、を示す。
Figure 2007053836
表3によれば、例えば、第1母線のA点(図3)で3相地絡故障が発生した場合、第1〜第4母線に対応する(各2本のうちの1本の)送電線を開放することにより故障を除去する臨界故障除去時間は0.33秒と算出された。この結果は、従来のBCU-Shadowing法により得られた結果と同じである。同様に、故障地点がB点〜F点、H点、及びI点(図3)である場合にも、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法により算出された臨界故障除去時間は、従来のBCU-Shadowing法により算出された臨界故障除去時間と一致している。尚、以上の本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、前述した臨界軌跡の分割数を与えるmを2に設定して実施されたものである。
また、表3によれば、第7母線のG点(図3)で3相地絡故障が発生した場合、第7及び第8母線に対応する(各2本のうちの1本の)送電線を開放することにより故障を除去する臨界故障除去時間は0.23秒と算出される一方、従来のBCU-Shadowing法では、支配的不安定平衡点CUEPの探索に失敗し、よって臨界故障除去時間が算出できなかった。尚、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、前述した臨界軌跡の分割数を与えるmを18に設定して実施されたものである。
以上から、G点における結果に関しては、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、計算精度の点では、従来のBCU-Shadowing法よりも優れていると言える。
図5(a)は、前述したAF9のモデルにおいて第2母線のB点で3相地絡故障が発生した場合の前述したポテンシャルエネルギーVp(δ、δ、δ)をδ−δ面上の等高線として示した模式図である。同図に例示されるように、従来のBCU-Shadowing法では、前述した第1極大点から支配的不安定平衡点CUEPまでの経路(図中の蛇行線)の探索に成功している。つまり、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法で得られた経路(図中の曲線)とは途中経路は異なるが、その端点である支配的不安定平衡点CUEPは一致している。
一方、図5(b)は、前述したAF9のモデルにおいて第7母線のG点で3相地絡故障が発生した場合の前述したポテンシャルエネルギーVp(δ、δ、δ)をδ−δ面上の等高線として示した模式図である。同図に例示されるように、従来のBCU-Shadowing法では、前述した第1極大点から支配的不安定平衡点CUEPまでの経路(図中の蛇行線)の探索に失敗している。
以上のように、支配的不安定平衡点CUEPにおいてポテンシャルエネルギーVp(δ、δ、δ)の等高線が明確に鞍点の形状をなしている場合(図5(a))には、従来のBCU-Shadowing法でも支配的不安定平衡点CUEPが求められるが、この等高線が鞍点ではなく複雑な形状をなしている場合(図5(b))には、従来のBCU-Shadowing法では支配的不安定平衡点CUEPが求められないが、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法によれば支配的不安定平衡点CUEPが求められることがわかった。つまり、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、複雑な形状をなすポテンシャルエネルギーVp(δ)を有する電力系統モデルに関しては、従来のBCU-Shadowing法よりも優れている(高精度である)と言える。
<<<IEEE6機30母線系統(IEEE30)>>>
表4において、IEEE6機30母線系統(IEEE30)のモデルにおける異なる故障点毎に、前述した従来のBCU-Shadowing法により算出された臨界故障除去時間(秒)と、上記最小化のために最適化されたxから求められたτ(臨界故障除去時間)(秒)と、上記繰り返し回数と、を示す。
Figure 2007053836
表4によれば、例えば、第2母線の近傍(図4)で3相地絡故障が発生した場合、第2〜第4母線に対応する(各2本のうちの1本の)送電線を開放することにより故障を除去する臨界故障除去時間は0.75秒と算出された。この結果は、従来のBCU-Shadowing法により得られた結果と同じである。同様に、故障地点が第5、第11、及び第13母線の近傍(図4)である場合にも、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法により算出された臨界故障除去時間は、従来のBCU-Shadowing法により算出された臨界故障除去時間と一致している。尚、以上の本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、前述した臨界軌跡の分割数を与えるmを2に設定して実施されたものである。
また、表4によれば、第1及び第8母線の近傍(図3)で3相地絡故障が発生した場合、臨界故障除去時間は0.82秒及び0.84秒とそれぞれ算出される一方、従来のBCU-Shadowing法では、支配的不安定平衡点CUEPの探索に失敗し、よって臨界故障除去時間が算出できなかった。尚、以上の本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、前述した臨界軌跡の分割数を与えるmを2に設定して実施されたものである。
以上から、本実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、前述した第1及び第8母線の近傍における結果に関しては、従来のBCU-Shadowing法よりも優れている(高精度である)と言える。
===情報処理装置及びプログラム===
前述した実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、所定のCPU及び記憶部を備える情報処理装置を用いて実施される。この記憶部には、例えば「式9」〜「式12」、又は、「式13」及び「式14」に示される関数fの情報を、電力系統データとして記憶するための容量が必要である。また、この記憶部には、前述した変数ベクトルx〜xや誤差ベクトル等の情報を、作業用データとして記憶するための容量も必要である。更に、この記憶部は、例えば、前述したニュートン法のプログラムや、このニュートン法を用いてx〜x及びεの最適化を実施するプログラム等からなるプログラム又はプログラム群(臨界故障除去時間算出プログラム)を記憶している必要がある。尚、この記憶部は、本実施の形態の情報処理装置の内部又は外部に備えられるものである。ここで、外部に備えるとは、この情報処理装置と記憶部とが接続可能であることを意味するものである。また、上記プログラム又はプログラム群は、例えば、DVDやCD等の光ディスク、或いは、MOやフロッピーディスク等の磁気ディスクといった、情報処理装置により読み取り可能な記録媒体に記録されたものであってもよい。
本実施の形態の情報処理装置は、例えば電力系統の運用に携わる作業者が前述した初期値等を入力するためのキーボード及びマウスや、図5に例示される等高線図等を閲覧するためのディスプレイ等を更に備えていてもよい。
また、本実施の形態の情報処理装置は、例えば電力系統を安定化する系統安定化装置に組み込まれたものであってもよいし、或いは、独立したパーソナルコンピュータやワークステーション等であってもよい。尚、系統安定化装置は、例えば特開平10−28326号公報に開示された周知の装置である。
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されるとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
前述した実施の形態の臨界故障除去時間算出方法は、電力系統の過渡安定度解析として用いられるものであったが、これに限定されるものではない。この臨界故障除去時間算出方法は、電力系統に限らず、一般に制御対象の非線形現象の過渡安定度を解析するのにも有用である。本発明によれば、一般の制御対象の臨界故障除去時間についても、精度良く迅速に算出できる。
本実施の形態の離散化された多次元状態変数を表示する模式図である。 本実施の形態の1機無限大母線系統のモデルを示す概念図である。 本実施の形態のAF9のモデルを示す概念図である。 本実施の形態のIEEE30のモデルを示す概念図である。 本実施の形態の電力系統のモデルにおいて故障が発生した場合のポテンシャルエネルギーVp(δ、δ、δ)をδ−δ面上の等高線として示した模式図である。 制動無しの1機無限大母線系統の非線形現象を位相平面における軌跡で表わした模式図である。
符号の説明
1 故障軌跡
2 故障が除去された後に安定状態に戻ることが可能な電力系統の状態を示す軌跡
3 臨界軌跡
4 故障が除去された後に安定状態に戻ることが不可能な電力系統の状態を示す軌跡
10 1機無限大母線系統
100 自動電圧調整器(AVR)
200 ガバナ
300 同期発電機
400 3相地絡故障のモデル
500、600 送電線

Claims (12)

  1. 制御対象が故障後に回復可能となる時間と、前記制御対象が前記故障後に回復不可能となる時間と、の臨界となる臨界故障除去時間を求める臨界故障除去時間算出方法であって、
    前記故障後に回復可能となる前記制御対象の状態と、前記故障後に回復不可能となる前記制御対象の状態と、の臨界となる前記制御対象の臨界状態を示す関数fに用いられる、
    前記臨界故障除去時間の関数である多次元状態変数xと、
    前記関数fをゼロとする多次元状態変数xm+1と、
    前記多次元状態変数xとxm+1との間で離散される複数の多次元状態変数x(1≦k≦m:kは整数)と、
    前記多次元状態変数x乃至xm+1の中で相互に隣接する多次元状態変数x及びxk+1の間のユークリッド距離εと、を、
    Figure 2007053836
    が最小となる値に決定し、前記多次元状態変数xから前記臨界故障除去時間を求めることを特徴とする臨界故障除去時間算出方法。
  2. 前記制御対象は、電力系統であり、
    前記多次元状態変数x(0≦k≦m+1:kは整数)は、前記電力系統における発電機の位相角度を成分とする変数ベクトルであり、
    前記関数fは、前記多次元状態変数xに対して、当該多次元状態変数の時間微分dx/dtを与える関数ベクトルである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の臨界故障除去時間算出方法。
  3. 前記多次元状態変数xは、前記臨界故障除去時間のn次式(n≧1:nは整数)を含み、前記電力系統の臨界状態における故障除去時の状態を示す変数ベクトルである、ことを特徴とする請求項2に記載の臨界故障除去時間算出方法。
  4. 前記多次元状態変数xm+1は、前記関数fの支配的不安定平衡点である特異点を示す変数ベクトルである、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の臨界故障除去時間算出方法。
  5. 制御対象が故障後に回復可能となる時間と、前記制御対象が前記故障後に回復不可能となる時間と、の臨界となる臨界故障除去時間を求める臨界故障除去時間算出方法を情報処理装置に実施させる臨界故障除去時間算出プログラムであって、
    前記故障後に回復可能となる前記制御対象の状態と、前記故障後に回復不可能となる前記制御対象の状態と、の臨界となる前記制御対象の臨界状態を示す関数fに用いられる、
    前記臨界故障除去時間の関数である多次元状態変数xと、
    前記関数fをゼロとする多次元状態変数xm+1と、
    前記多次元状態変数xとxm+1との間で離散される複数の多次元状態変数x(1≦k≦m:kは整数)と、
    前記多次元状態変数x乃至xm+1の中で相互に隣接する多次元状態変数x及びxk+1の間のユークリッド距離εと、を、
    Figure 2007053836
    が最小となる値に決定し、前記多次元状態変数xから前記臨界故障除去時間を求めることを特徴とする臨界故障除去時間算出プログラム。
  6. 前記制御対象は、電力系統であり、
    前記多次元状態変数x(0≦k≦m+1:kは整数)は、前記電力系統における発電機の位相角度を成分とする変数ベクトルであり、
    前記関数fは、前記多次元状態変数xに対して、当該多次元状態変数の時間微分dx/dtを与える関数ベクトルである、
    ことを特徴とする請求項5に記載の臨界故障除去時間算出プログラム。
  7. 前記多次元状態変数xは、前記臨界故障除去時間のn次式(n≧1:nは整数)を含み、前記電力系統の臨界状態における故障除去時の状態を示す変数ベクトルである、ことを特徴とする請求項6に記載の臨界故障除去時間算出プログラム。
  8. 前記多次元状態変数xm+1は、前記関数fの支配的不安定平衡点である特異点を示す変数ベクトルである、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の臨界故障除去時間算出プログラム。
  9. 制御対象が故障後に回復可能となる時間と、前記制御対象が前記故障後に回復不可能となる時間と、の臨界となる臨界故障除去時間を求める臨界故障除去時間算出方法を実施するための臨界故障除去時間算出プログラムを記録した、情報処理装置により読み取り可能な記録媒体であって、
    前記臨界故障除去時間算出プログラムは、
    前記故障後に回復可能となる前記制御対象の状態と、前記故障後に回復不可能となる前記制御対象の状態と、の臨界となる前記制御対象の臨界状態を示す関数fに用いられる、
    前記臨界故障除去時間の関数である多次元状態変数xと、
    前記関数fをゼロとする多次元状態変数xm+1と、
    前記多次元状態変数xとxm+1との間で離散される複数の多次元状態変数x(1≦k≦m:kは整数)と、
    前記多次元状態変数x乃至xm+1の中で相互に隣接する多次元状態変数x及びxk+1の間のユークリッド距離εと、を、
    Figure 2007053836
    が最小となる値に決定し、前記多次元状態変数xから前記臨界故障除去時間を求めるプログラムである、
    ことを特徴とする記録媒体。
  10. 前記制御対象は、電力系統であり、
    前記多次元状態変数x(0≦k≦m+1:kは整数)は、前記電力系統における発電機の位相角度を成分とする変数ベクトルであり、
    前記関数fは、前記多次元状態変数xに対して、当該多次元状態変数の時間微分dx/dtを与える関数ベクトルである、
    ことを特徴とする請求項9に記載の記録媒体。
  11. 前記多次元状態変数xは、前記臨界故障除去時間のn次式(n≧1:nは整数)を含み、前記電力系統の臨界状態における故障除去時の状態を示す変数ベクトルである、ことを特徴とする請求項10に記載の記録媒体。
  12. 前記多次元状態変数xm+1は、前記関数fの支配的不安定平衡点である特異点を示す変数ベクトルである、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の記録媒体。

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