JP2017049894A - 無線タグシステムおよび無線タグ - Google Patents
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Abstract
【課題】高速で移動するリーダに対して確実に電気設備の劣化の兆候を通知する機能を有する一方、電気設備の劣化が進んでいない場合は送信周期を長期化させて消費電力低減を図り、小型かつ安価な構成で長時間稼働可能な無線タグシステムを提供する。【解決手段】無線タグシステムは、設備の状態を計測するセンサ14と、計測情報を蓄積した測定データと設定情報とを記憶する記憶部13と、測定データを送信し、設定情報を受信する通信部11と、電力量を検出する蓄電部16と、起動時刻が到来したことを制御部に通知する計時部15と、順次送信動作のうち順次送信処理を実行する制御部12と、を有する無線タグ1と、移動体の速度を検知する速度情報取得部と、測定データを受信し、設定情報を送信する通信部と、設定情報と測定データとを保持する記憶部と、無線タグから測定データを順次取得する処理を実行する制御部と、を有するリーダ3とを備える。【選択図】図2
Description
本発明は、道路、鉄道、モノレール、案内軌条式鉄道、新交通システムを走行する移動体を含む輸送システムに適用される無線タグシステムおよび無線タグに関する。
従来、き電線圧縮部、張力調整装置、柱上変圧器を含む鉄道沿線に設置される鉄道電気設備の状態を点検する作業について、事業者は、検査員、巡回員を各所に派遣して、人手でおこなっている。これらの鉄道電気設備の故障は、列車の運行に深刻な影響を与える。このため、鉄道電気設備の定期的な点検作業が重要である。しかし、鉄道電気設備の敷設範囲が広域であるため、多大な労力とコストを必要としていた。
そこで近年、鉄道電気設備の点検作業を軽減するために、列車で鉄道電気設備の状態を収集するシステムが提案されている。具体的には、特許文献1は、鉄道電気設備上に当該設備の状態を検出する各種センサを備えたIDタグを設置し、列車に搭載されたIDタグリーダがIDタグに書き込まれたセンサ監視情報を読み取るシステムを開示する。
特許文献2は、センサの近傍に設置された無線で通信する小型の路側ユニットが道路設備の状態を検知するセンサの測定情報を収集し、高速で走行する点検車両が路側ユニットから測定情報を自動収集する方法を開示する。
特許文献3は、列車に複数台の受信装置を設置することにより大容量のデータ通信を行い、さらに受信装置の設置間隔を送信装置に通知することで送信装置が受信装置と通信を実施できない時間の通信動作を抑制し、送信装置の消費電力を抑える方法を開示する。
無線タグは、き電線を含む高所へ設置されるため、無線タグの小型化・軽量化が求められる。しかし、無線タグは、商用電源の供給が困難な箇所に設置される。このため、無線タグは、電池、コンデンサ、太陽電池および環境発電を組み合わせて動作する。このため、無線タグの電源部は、無線通信を行う部分に比べ相対的に大きく、高価となる。この電源部の小型化・低価格化のため、無線タグ本体の省電力化も要求されている。
監視対象物の状態を測定するセンサを備えた無線タグは、測定データの送受信時の消費電力が大部分を占めている。このため、無線タグは、不要な送受信動作を避けて省電力を図ることが好ましい。一方、無線タグは、高速で移動するリーダが受信できるよう頻繁に送信・受信動作を行うと消費電力がさらに増え、長時間の稼働が困難となる。そのため、無線タグは、高速で移動するリーダに対して送信・受信可能であり、なおかつ長時間の稼働を両立する無線タグシステムが要求されている。
無線タグがセンサから取得する測定情報は、大部分が監視対象物に異常がないことを示すものであり、一部の測定情報が欠損しても直ちに深刻な影響はない。一方、監視対象物に異常が存在する場合、無線タグが迅速かつ確実にリーダへ測定情報を伝達する無線タグシステムが要求されている。
本発明は、上記課題を解決するために行われた発明であって、輸送システムに適用される無線タグシステムにおいて、商用電源の供給を受けられない無線タグにおいて、省電力で動作して小型かつ安価な構成を可能とする無線タグシステムを提供する。また、高速走行する車両に搭載されたリーダと電気設備側の無線タグ間で長時間の稼働を可能とする無線タグシステムを提供する。さらに、電気設備の劣化により異常が発生した場合は、迅速かつ確実にリーダへ測定情報を伝達可能な無線タグシステムを提供する。
上述した課題は、設備の状態を計測するセンサと、センサによる計測情報を蓄積した測定データとリーダから送信された設定情報とを記憶する第1の記憶部と、移動体に搭載されたリーダと通信を行い、測定データを送信し、設定情報を受信する第1の通信部と、受信した設定情報に基づいて、測定データをリーダに送信する送信処理を実行する第1の制御部と、現在時刻を検出し、事前に設定された起動時刻が到来したことを第1の制御部に通知する計時部と、を備える無線タグと、移動体の速度を検知する速度情報取得部と、無線タグから測定データを受信し、設定情報を送信する第2の通信部と、設定情報と通信部から受信した測定データとを保持する第2の記憶部と、無線タグから測定データを取得する処理を実行する第2の制御部と、を備えるリーダと、を備える無線タグシステムにおいて、第1の制御部は、計時部から通知を受け付けたとき、省電力モードにある第1の通信部と第1の記憶部とセンサとの動作を再開させる無線タグシステムにより、解決できる。
また、設備の状態を計測するセンサと、センサによる計測情報を蓄積した測定データとリーダから送信された設定情報とを記憶する記憶部と、移動体に搭載されたリーダと通信を行い、測定データを送信し、設定情報を受信する通信部と、受信した設定情報に基づいて、測定データをリーダに送信する送信処理を実行する制御部と、現在時刻を検出し、事前に設定された起動時刻が到来したことを制御部に通知する計時部と、を備え、制御部は、計時部から通知を受け付けたとき、省電力モードにある通信部と記憶部とセンサとの動作を再開させる無線タグにより、解決できる。
本発明によれば、輸送システムに適用される無線タグシステムにおいて、高速で移動するリーダに対して確実に電気設備の劣化の兆候を通知し、電気設備の劣化が進んでいない場合は送信周期を長期化させて消費電力低減を図る無線タグと、リーダと、を含む無線タグシステムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では移動体として鉄道車両を説明する。しかし、移動体は、鉄道車両に限定されるものではない。また、鉄道設備として、き電線接続部を説明するが、鉄道設備は、張力調整装置を含み、それらに限られない。
図1を参照して、無線タグシステムの構成を説明する。図1において、無線タグシステム100は、無線タグ1と、車両2と、リーダ3と、線路4と、鉄道設備5と、サーバ6と、広域網7と、を含む。
無線タグ(RFID tag)1は、鉄道設備5(き電線)の接続部状態を計測する。無線タグ1は、所定の間隔で鉄道設備5上に設置されている。車両2は、リーダ3を搭載する。車両2は、線路4上を移動する。リーダ3は、無線タグ1から送信されるセンサ情報を高速で移動しながら、できる限り確実に受信する。リーダ3の移動速度が速くなれば、リーダ3は、無線タグ1から送信されるセンサ情報を受信可能な時間が短くなる。鉄道設備5は、架線を介して、車両2に給電する。車両2は、パンタグラフで受電する。
図1を参照して、無線タグシステムの構成を説明する。図1において、無線タグシステム100は、無線タグ1と、車両2と、リーダ3と、線路4と、鉄道設備5と、サーバ6と、広域網7と、を含む。
無線タグ(RFID tag)1は、鉄道設備5(き電線)の接続部状態を計測する。無線タグ1は、所定の間隔で鉄道設備5上に設置されている。車両2は、リーダ3を搭載する。車両2は、線路4上を移動する。リーダ3は、無線タグ1から送信されるセンサ情報を高速で移動しながら、できる限り確実に受信する。リーダ3の移動速度が速くなれば、リーダ3は、無線タグ1から送信されるセンサ情報を受信可能な時間が短くなる。鉄道設備5は、架線を介して、車両2に給電する。車両2は、パンタグラフで受電する。
なお、リーダ3は、高速で移動する鉄道車両に限定して搭載されるわけではない。リーダ3は、点検および運用上の理由により歩行する点検者に携帯されてもよい。また、リーダ3は、線路に近接する固定の収納設備に設置されていてもよい。さらに、リーダ3は、車両2に乗車する点検者が携帯してもよい。なお、本明細書において、搭載とは、携帯の意味を含む。
リーダ3が受信したセンサ情報は、広域網7を経由してサーバ6へ送信される。センサ情報は、鉄道設備5の劣化状況を把握するために利用される。車両2は、移動するため、リーダ3が受信する信号レベルは、大きく変動し、通信途中で通信不可能となる場合がある。
無線タグ1は、鉄道設備5に多数設置されることから、できる限り安価な通信部を採用する必要がある。これらの条件から、無線タグ1とリーダ3間の通信速度を大きくすることは困難である。したがって、無線タグ1から送信されるセンサ情報の情報量は、少なく抑えることが本システムを実現するための前提条件である。
無線タグ1とリーダ3とは、2.4GHzのZigBee(登録商標)で通信する。ZigBeeは、転送距離が短く転送速度も低速である代わりに、安価で消費電力が少ない特徴がある。リーダ3と広域網7とは、携帯基地局または無線LAN基地局を介して通信する。なお、携帯型リーダの場合、有線LANまたはメモリデバイスを介してサーバ6と接続してもよい。
図2を参照して、無線タグとリーダの構成を説明する。図2において、無線タグ1は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、センサ14と、計時部15と、蓄電部16と、発電部17と、アンテナ18と、を備える。通信部11は、アンテナ18を通じてリーダ3と通信を行う。通信部11は、制御部12からの送信要求に応じてセンサ情報をリーダ3に送信する。また、通信部11は、リーダ3からの制御要求を受信し、制御部12への伝送も行う。
制御部12は、通信部11、記憶部13、センサ14、計時部15、蓄電部16を制御する。制御部12は、通信部11がリーダ3に対しセンサ14から得られたセンサ情報を送信する送信情報を決定し、送信周期毎に通信部11に送信要求を出す。制御部12は、送信するセンサ情報を記憶部13から読み出し、通信部11へ伝送する。さらに、制御部12は、センサ14の計測周期を決定し、計測周期毎にセンサ14に計測要求を出す。制御部12は、センサ14から伝送された計測情報と、計時部15から伝送された時刻情報と、記憶部13から伝送された設定情報と、蓄電部16から伝送された蓄電量情報とからセンサ情報を生成して、記憶部13に記憶する。
また、無線タグ1は、一意に割り振られた識別情報を有する。制御部12は、その識別番号を記憶し、参照する。制御部12は、後述する間欠動作の終了時に次回の起動時刻を算出して、計時部15に設定した後、主要機能を停止して通信部11、記憶部13およびセンサ14とともに省電力モードに入る。制御部12は、計時部15から起動信号を受信すると、省電力モードから復帰して、通信部11、記憶部13およびセンサ14とともに動作を再開する。
記憶部13は、過去のセンサ情報を記憶する。制御部12が最新のセンサ情報をリーダ3に伝送した後リーダ3から伝送が成功した旨を通知されると、記憶部13は、制御部12に伝送した最新のセンサ情報を削除する。後述するセンサ情報の伝送シーケンスにおいて、記憶部13は、新しいセンサ情報から順次制御部12に伝送する。記憶部13は、リーダ3に伝送が成功したセンサ情報を削除する。この動作により、無線タグ1は、高速で移動するリーダ3に、最新のセンサ情報のみ伝送する。一方、無線タグ1は、設備点検時に低速で移動または停止状態のリーダ3を用いて過去のセンサ情報も確実に収集したいという要求に対しても対応する。
なお、センサ情報で記憶部13の領域が満杯になった場合、無線タグ1は、最も古いセンサ情報を消去し、最新のセンサ情報を記憶する。また、記憶部13は、過去のセンサ情報の他に無線タグ1の設定情報を保持する。記憶部13は、制御部12が送信周期を導出する際に当該設定情報について、制御部12に伝送する。
センサ14は、鉄道設備5の状態を計測する。センサ14は、制御部12からの計測要求に応じて設備の状態を計測し、計測した情報を制御部12に伝送する。センサの種類は、特許文献1に示されたものに限らず、温度、変位、加重、振動を含む鉄道設備の状態を検知する必要に応じて選択できる。
計時部15は、現在時刻を保持するリアルタイマクロックにより構成する。計時部15は、リーダ3から通知された現在時刻を保持し、時間経過を管理する。計時部15は、制御部12から設定された次回起動時刻を保持し、当該起動時刻になると制御部12に専用の起動信号を用いて制御部12を省電力モードから復帰させる。また、計時部15は、制御部12からの要求に応じて現在時刻情報を制御部12に伝送する。
蓄電部16は、発電部17によって得られた電力を一時的に蓄える。蓄えた電力は、無線タグ1の各動作の必要に応じて消費される。蓄電部16は、蓄えた電力量を検出する。蓄電部16は、制御部12の要求に応じて蓄えた電力量を制御部12に通知する。
発電部17は、環境発電により無線タグ1の動作に必要な電力を生成する。発電部17は、生成した電力を蓄電部16に送電する。ここで、環境発電は、光、熱、振動、電波のエネルギーを電気エネルギーに変換する技術である。
リーダ3は、通信部31と、制御部32と、記憶部33と、電源部36と、アンテナ38と、速度情報取得部39と、を備えている。通信部31は、アンテナ38を通じて無線タグ1と通信を行う。通信部31は、制御部32からの送信要求に応じてあらかじめ記憶部33に格納された無線タグの設定情報をリーダ3に送信する。通信部31は、無線タグ1から送信されたセンサ情報を受信する。通信部31は、無線タグ1から受信したセンサ情報に対して制御部32が生成した確認応答信号を無線タグ1に伝送する。
制御部32は、通信部31、記憶部33、速度情報取得部39を制御する。制御部32は、通信部31が無線タグ1に対応して送信すべき無線タグの設定情報を決定する。制御部32は、無線タグ1から起動信号を受信すると当該無線タグ1に送信する設定情報を通信部31に伝送する。さらに、制御部32は、速度情報取得部39に要求して速度情報取得部39から車両2の移動速度を取得し、無線タグ1に送信すべき確認応答信号に当該移動速度を付与して無線タグ1に送信すべく通信部31に伝送する。制御部32は、無線タグ1から送信されたセンサ情報を通信部31を通じて取得し、当該センサ情報を記憶部33に格納する。リーダ3は、一意に割り振られた識別番号を有する。制御部31は、その識別番号を記憶し、参照する。
記憶部33は、無線タグ1に伝送すべき設定情報を記憶する。記憶部33は、制御部32が要求した際に、当該無線タグ1に対応する設定情報を制御部32に伝送する。また、記憶部33は、無線タグ1から送信されたセンサ情報を制御部32の制御に従って記憶する。さらに、記憶部33は、鉄道設備5の点検時に、センサ情報を読み出して点検者に通知する。
電源部36は、車両2から提供される電源仕様をリーダ3が動作可能な電圧を含む諸条件に従う電源仕様に変換し、リーダ3内の各部に分配する。また、車両2の提供する電源仕様に瞬断を含む不安定要素が含まれる場合、電源部36は、当該要素を補償する。
速度情報取得部39は、車両2の制御システム系との通信またはGPS(Global Positioning System)により車両2の移動速度を常時把握する。速度情報取得部39は、制御32の要求に応じてその時点の車両2の移動速度を制御部32に通知する。
図3を参照して、無線タグがリーダにセンサ情報を伝送するシーケンスを説明する。図3において、リーダ3の下の縦線の破線部は、リーダ3が無線タグ1と通信できない位置を移動していることを意味する。
無線タグ1は、起動信号を送信周期毎に無線タグ1近傍に送信する(S30)。このとき無線タグ1近傍にリーダ3が存在しなければ、起動信号は、受信されることはなく応答も無線タグ1に返らない。無線タグ1近傍にリーダ3が接近していた場合、起動信号は、リーダ3に受信される(S31)。当該起動信号に対してリーダ3は、確認応答信号およびセンサ情報要求を無線タグ1に送信する(S32)。ここで確認応答信号とセンサ情報要求は、無線タグ1およびリーダ3の対応する無線通信規格に従い、単一のパケットとなってもよいし複数のパケットに分割されて送信されてもよい。しかし、消費電力の観点から極力短時間で小さい情報量で送信されることが好ましく、今後の説明では確認応答信号およびセンサ情報要求は、単一のパケットで構成されるものとして説明を進める。
確認応答信号およびセンサ情報要求を受信した無線タグ1は、最新のセンサ情報をリーダ3に送信する(S33)。最新のセンサ情報を受信したリーダ3は、確認応答信号と同時に過去のセンサ情報を要求すべくセンサ情報要求を無線タグ1に送信する(S34)。無線タグ1は、記憶部13に格納された測定情報を参照して次に新しいセンサ情報をリーダ3に送信する(S35)。センサ情報を受信したリーダ3は、同様に確認応答信号およびセンサ情報要求を無線タグに送信する(S36)。以後、リーダ3が無線タグ1近傍に存在し、記憶部13に過去の測定情報が残っている限り同様のシーケンスが継続する。このシーケンスにより、車両2に搭載され移動するリーダ3は無線タグ1から最新の測定情報を可能な限り受信する。なお、点検動作によりリーダ3が低速または静止状態になる場合、リーダ3は、無線タグ1が記憶している全てのセンサ情報を同一のシーケンスにより受信する(S37、S38)。
車両2に搭載されて移動するリーダ3が当該シーケンス中に無線タグ1と通信可能な範囲から離れていった場合、無線タグ1は、センサ情報を送信しても(S39)、確認応答信号を受信することはない。一定時間(具体的には送信周期に等しい時間)確認応答信号を受信しなかった無線タグ1は、センサ情報について、リーダ3に受信されなかったものと判定して、起動信号を周期的に送信する動作に遷移する。
図4を参照して、リーダが無線タグに設定情報を伝送するシーケンスを説明する。図4において、リーダ3は、無線タグ1に接近する前に予めサーバ6と通信を行う。リーダ3は、サーバ6から、各無線タグに設定する設定情報を受信する(S40)。
リーダ3が受信した設定情報について、点検または無線タグの運用方法の調整の必要がある場合、リーダ3は、無線タグ1に送信する。無線タグ1は、事前に設定された送信周期に従って、起動信号を送信する(S41、S42)。ただし、リーダ3が無線タグ1の近傍にないとき、リーダ3は、起動信号を受信することはない。一方、シーケンス42で、起動信号を受信したリーダ3は、起動信号に含まれるタグIDを読み取り、当該無線タグ1に送信すべき設定情報が記憶部33に記憶されていることを確認すると、確認応答信号とともに設定モード移行要求信号を無線タグ1に向けて送信する(S43)。設定モード移行要求を受信した無線タグ1は、設定モードに移行し、リーダ3に向けて確認応答信号を送信する(S44)。この確認応答信号には、設定情報が分割されていることを想定して、受信バイト数またはシーケンス番号により設定情報をどこまで受信しているかを示す信号を含めてもよい。確認応答信号を受信したリーダ3は、無線タグ1が設定モードに移行したことを把握し、当該無線タグ1に対して設定情報を伝送する(S45)。設定信号を受信した無線タグ1は、確認応答信号をリーダ3に送信する(S46)。
無線タグ1に送信すべき設定情報が設定信号の1回で送信しきれない場合、リーダ3は、続けて設定情報を無線タグ1に送信してもよい。設定情報を受信した無線タグ1は、リーダ3に確認応答を送信する。これらのシーケンスを設定情報の伝送が完了するまで繰り返す。無線タグ1に送信すべき設定情報が全て無線タグ1に伝送完了しなかった場合、無線タグ1は、途中まで受信した設定情報を記憶部13に保持しておき、再度リーダ3が接近してくるときに設定情報を途中から受信するよう動作してもよい。また、途中まで送信された設定情報が一定時間(具体的には1週間)経過しても受信完了しない場合、無線タグ1は、その設定情報を削除してもよい。
リーダ3は、サーバ6との通信エリアに入ったとき、複数の無線タグから収集したセンサ情報をサーバ6に転送する(S47)。
リーダ3は、サーバ6との通信エリアに入ったとき、複数の無線タグから収集したセンサ情報をサーバ6に転送する(S47)。
図5を参照して、無線タグおよびリーダ3送信するフレームフォーマットを説明する。図5(a)において、無線タグ1が送信するフレーム50は、種別51と、タグID52と、宛先ID53と、ACK54と、センサ情報55と、により構成される。なお、フレーム50は、必要があれば続けて他の情報を含めてもよいし、各構成要素の有無や順序も図5(a)に限定されない。種別51とタグID52と宛先ID53とは、フレーム50のヘッダを構成する。ACK54とセンサ情報55とは、フレーム50のペイロードを構成する。
種別51は、フレーム50を送信する送信装置が無線タグ1かリーダ3かを区別するために付与され、フレーム50が無線タグ1から送信されたことを示す。複数の無線タグ1が近接して設置されている場合、リーダ3は、この種別51を参照して受信すべきか無視すべきか判断してもよい。また、無線タグ1から送信されたフレームについて、リーダ3は、マルチホップ技術を用いて遠方の受信局まで転送するために種別51を利用してもよい。
タグID52は、フレーム50を送信する無線タグ1を識別するために一意に無線タグ1に設定された識別情報である。センサ情報55は、タグID52とともに管理され、鉄道設備の状態監視に利用する。宛先ID53は、フレーム50の送信先を示しており、特に宛先を明示する場合に用いられる。フレーム50が不特定の受信装置に宛てたものだった場合(具体的には起動信号)、宛先ID53は、ブロードキャストを示す固有値とする。また、無線タグ1が設置される場所またはネットワークを区別する目的でタグID52および宛先ID53にネットワーク識別情報や位置情報、路線識別情報を含めても良い。
ACK54は、フレーム50が確認応答信号であるかを示す情報である。ACK54は、先だってリーダ3から送信されたフレームが正常に受信されたことをリーダ3に通知するために利用される。センサ情報55は、無線タグ1がセンサ14を用いて計測した鉄道設備の状態を示す情報。計測した時刻情報、蓄電部16が保持する電力量、無線タグ1の状態に関する情報が含まれる。なお、センサ情報55の具体的な構成は、図6(b)を用いて説明する。
図5(b)において、リーダ3が送信するフレーム60は、種別61と、リーダID62と、宛先ID63と、ACK64と、メッセージデータ65と、により構成される。なお、フレーム60は、必要があれば続けて他の情報を含めてもよい。また、フレーム60は、各構成要素の有無や順序も図5(b)に限定されない。種別61とリーダ62と宛先ID63とは、フレーム60のヘッダを構成する。ACK64とメッセージデータ65とは、フレーム60のペイロードを構成する。
種別61は、フレーム60がリーダ3から送信されたことを示す。リーダID62は、フレーム60の送信するリーダ3を識別するために一意にリーダ3に設定された識別情報である。宛先ID63は、フレーム60の送信先を示しており、特に宛先を明示する場合に用いられる。先だって無線タグ1から起動信号を受信したリーダ3は、起動信号に含まれるタグID52を読み取って宛先ID63に指定する。タグID52および宛先ID53と同様に、無線タグ1が設置される場所およびネットワークを区別する目的でリーダ62または宛先ID63にネットワーク識別情報、位置情報、路線識別情報を含めてもよい。
ACK64は、フレーム60が確認応答信号であるかを示す情報である。ACK64は、先だって無線タグ1から送信されたフレームが正常に受信されたことを無線タグ1に通知する。メッセージデータ65は、リーダ3が無線タグ1に伝送すべき設定情報、センサ情報要求コマンド、設定モード移行要求コマンドを収容する。
図6を参照して、無線タグの記憶部13に記憶される設定情報とセンサ情報を説明する。図6(a)において、設定情報70は、装置種別71と、センサ種別72と、タグID73と、計測周期74と、送信周期75と、休止時間76と、記憶部空き容量77と、転送回数78と、リーダ速度79と、により構成される。なお、設定情報70は、必要があれば他の設定情報も含まれて良い。設定情報70は、各構成要素の有無、順序も図6(a)に限定されない。さらに記憶部13の内部は、図6の設定情報70、センサ情報80に限定されず、必要な情報があれば適宜追加されてもよい。
装置種別71は、無線タグであるかリーダであるかを識別する情報である。装置種別71は、無線タグ1に対応して無線タグであることを示す情報が記憶される。センサ種別72は、無線タグ1が備えるセンサ14の計測可能な鉄道設備の状態を示す情報である。センサ種別72は、具体的には温度、変位、加重、振動を示す値が記録される。無線タグ1が備えるセンサ14が複数存在する場合。その数に応じてセンサ種別72は、拡張され、各々のセンサ14の計測情報を管理する。
タグID73は、無線タグ1を識別するために一意に設定された値である。サーバ6は、タグID73に関連付けられた位置情報または鉄道設備識別情報を照合して、無線タグ1から集めたセンサ情報がどの鉄道設備に関するものかを識別する。計測周期74は、無線タグ1が後述する計測モードに移行する周期を示している。計測周期74により指示された間隔で無線タグ1は、センサ14に計測要求を出して鉄道設備の状態を計測する。
送信周期75は、無線タグ1が起動信号を送信する周期を示している。無線タグ1は、リーダ3が近接しておらず、さらに計測周期でもない場合、この周期で開局して起動信号を送信する。無線タグ1は、一定時間(具体的には0.1秒)リーダ3からの応答があるか受信可能状態で待機した後に省電力モードに移行することを繰り返す。送信周期75を短くすれば、省電力モードの間に無線タグ1の通信可能範囲を通過する車両2の移動距離は短くなり、無線タグ1がリーダ3にセンサ情報を伝送できる可能性が高まる。しかし、省電力モードにある時間の割合が短くなり1日あたりに消費する電力は多くなる。したがって、この送信周期75が本実施例で着目する課題を解決する重要な構成要素である。本実施例では後述するように無線タグの蓄電部状態、記憶部空き容量、測定データを参照して計測周期を自律的に調整する。
休止時間76は、無線タグ1が送信周期75または計測周期74に関わらず起動信号の送信および鉄道設備の計測を停止する時間である。休止時間76の時間帯において無線タグ1は、省電力モードに移行する。リーダ3が無線タグ1に接近する時間帯が事前に分かっている場合または監視対象となる鉄道設備の特性上、鉄道設備の計測を停止して問題ないと判断される場合、当該時間帯を休止時間76に指定することで無用な送信動作および計測動作を抑制できる。その結果、無線タグ1の稼働時間を長くし、長期的な運用が可能となる。記憶部空き容量77は、記憶部13の空き容量を示す。鉄道設備の計測によって記憶すべきセンサ情報が増加した場合、記憶部空き容量77は、減少する。また、リーダ3にセンサ情報の伝送が成功すると、成功したセンサ情報を削除するので、記憶部空き容量77は、増加する。点検時に静止したリーダ3で過去のセンサ情報80を一度に収集する運用方法が多く実施される場合、記憶部空き容量77が多い場合は点検によりセンサ情報80が収集されることを期待して起動信号の送信周期75を自律的に長くして消費電力の低減を図る。一方で記憶部空き容量77が少なくなってくると、センサ情報80が喪失する可能性が出てくるため高速で移動する車両2に搭載されたリーダ3にも送信可能とすべく起動信号の送信周期75を短く設定する。この制御により、センサ情報の喪失を抑止しながら点検後の無線タグ1の消費電力を抑制できる。
転送回数78は、無線タグ1の通信可能範囲をリーダ3が通過する時間内に何回起動信号を送信するかを保持する。転送回数78は、無線タグ1の蓄電部状態86、記憶部空き容量77、測定データ83の一つ以上を参照して決定される。リーダ速度79および転送回数78を用いて送信周期75を導出する方法については後述する。リーダ速度79は、過去に無線タグ1の近傍を通過したリーダ3の最高速度を示す。リーダ速度79は、リーダ3が速度情報取得部39により取得した移動速度の最大値が記憶される。具体的には、無線タグ1の周辺の線路4がカーブを描いていた場合、車両2の速度は低く制限される。このため、無線タグ1は、頻繁に起動信号を送信する必要はなくなる。無線タグ1は、この傾向を自律的に把握し、起動信号の送信周期75を長くして消費電力の低減を図るためリーダ速度79を利用する。リーダ速度108km/hは、30m/秒である。
図6(b)において、センサ情報80は、センサID81と、計測番号82と、測定データ83と、測定時刻84と、タグ状態85と、蓄電部状態86と、転送状態87と、により構成されている。なお、センサ情報80は、必要があれば他のセンサ情報も含まれてよい。また、センサ情報80は、各構成要素の有無および順序も図6(b)に限定されない。
センサID81は、センサ情報80が無線タグ1のどのセンサ14の測定データ83を用いて生成されたか示す。センサID81は、センサ14に一意に付与された識別情報が記憶される。計測番号82は、センサ14の測定情報を用いて生成された個々のセンサ情報を識別する。無線タグ1は、計測動作を行うたびに異なる計測番号82を付与されたセンサ情報80を生成する。測定データ83は、センサ14により計測された鉄道設備の状態を表す値を保持する。測定データ83を参照することにより無線タグ1は、鉄道設備が良好な状態であるか判断する。測定データ83を参照することにより無線タグ1は、消費電力の低減を行うか、センサ情報80を確実にリーダ3に伝送することを優先するかを自律的に判断する。測定時刻84は、センサ14が鉄道設備の計測を行い、センサ情報80が生成された時刻である。測定時刻84は、サーバ6が鉄道設備の状態を把握するために利用する。測定時刻84は、無線タグ1が転送回数78を導出するためにも用いられる。
タグ状態85は、無線タグ1の故障有無を示す。具体的には、センサ14が異常な値を返す、または蓄電部状態86が5%未満の値となり無線タグ1が間もなく動作しなくなる兆候が現れた場合、タグ状態85に無線タグ1が異常である情報が記憶される。タグ状態85が異常であることを把握した点検者は、無線タグ1を交換することができる。蓄電部状態86は、蓄電部16に保持された電力量(フル蓄電(100%)に対するパーセンテージ)を示す。無線タグ1は、蓄電部状態86を参照して、十分な電力量がない場合には自律的に送信周期75を長く設定して消費電力の低減を図る。
転送状態87は、センサ情報80がリーダ3に伝送されたか示す。無線タグ1がリーダ3にセンサ情報80を送信した後リーダ3から確認応答信号が返ってくるまで転送状態87は、未転送を表す状態を示す。無線タグ1は、リーダ3から確認応答信号が返ってくると転送状態87を転送済みの状態に書き換える。
記憶部13の実装によっては記憶されたデータを削除(イレース)する単位が大きく、さらに時間がかかる。このため、無線タグ1は、センサ情報80が転送された後であり削除してもよいかを転送状態87によって管理する。まとまった量のセンサ情報が転送状態となった後にまとめて削除すると、無線タグ1は、センサ情報80が伝送された後に都度削除する場合を比較して削除動作にかかる動作時間を節約でき消費電力の低減を図ることができる。
図7ないし図9を参照して、無線タグの動作を説明する。図7において、省電力モードにある無線タグ1は、制御部12、通信部11、記憶部13、センサ14の動作を停止させて消費電力を低減しており、計時部15に設定された動作時刻になるまで待機している(S91でNo)。動作時刻になると(S91でYes)、計時部15は、制御部12の動作を再開させ、アクティブモードへと移行する(S92)。制御部12は、計時部15が提供する現在時刻、計測周期74、計測時刻84を参照して測定時刻でないか判断する(S93)。測定時刻でない場合(S93でYes)、制御部12は、通信部11を用いて起動信号を送信する(S94)。制御部12は、起動信号を送信して一定時間(具体的には0.1秒間)リーダ3から送信されるべき確認応答信号を受信すべく待機する(S95)。確認応答信号が受信できない場合(S95でYes)、制御部12は、計時部15に次回起動時刻を設定する。
ここで、設定する次回起動時刻は、現在時刻に送信周期75を加えて一定時間(確認応答信号を受信するための待機時間0.1秒)を引いた時刻αか、最新の測定データ80の測定時刻84に計測周期74を加えて一定時間(確認応答信号を受信するための待機時間0.1秒)を引いた時刻βのうち現在時刻に近い時刻とする。ただし、この時刻が休止時間76の範囲内に入る場合、制御部12は、次回起動時刻について休止時間76の終了時刻とする。
計時部15に次回起動時刻を設定完了した制御部12は、通信部11、記憶部13、センサ14の動作を停止させた後に制御部12自身の動作を停止させて省電力モードへ移行して(S96)、ステップ91に遷移する。
ステップ95で確認応答信号をリーダ3から受信した場合(S95でNo)、制御部12は、センサ情報要求32を受信したか確認する(S99)。センサ情報要求32を受信した場合(S99でYes)、制御部12は、記憶部13に記憶されているセンサ情報のうち転送状態87が未転送になっているセンサ情報80を記憶部13から取得し、通信部11に要求して当該センサ情報80をリーダ3に向けて送信して(S100)、ステップ95に遷移する。
ステップ99でセンサ情報要求を受信せずに設定モード移行要求を受信した場合(S99でNo)、無線タグ1は、設定モードへ移行して(S101)、ステップ91に遷移する。ステップ93で現在時刻が測定時刻であると判断された場合(S93でNo)、無線タグ1は、測定モードへ移行して(S98)、ステップ91に遷移する。
図8を参照して、設定モードへの移行処理を説明する。図8において、無線タグ1は、確認応答信号をリーダ3に送信する(S111)。無線タグ1は、その後一定時間(具体的には0.1秒間)リーダ3から送信されるべき設定情報が受信できたか確認する(S112)。受信できなかった場合(S112でNo)、無線タグ1は、上述したステップ96の手順により省電力モードへ移行して(S117)、リターンする。
ステップ112で設定情報45を受信した場合(S112でYes)、無線タグ1は、記憶部13にある設定情報70を更新する(S113)。無線タグ1は、設定情報70のリーダ速度79、記憶部空き容量77、最新のセンサ情報80の蓄電部状態86、測定データ83、測定時刻84を用いて転送回数78、計測周期74、送信周期75を導出する(S114)。無線タグ1は、送信周期75および計測周期74を更新する(S115)。転送回数78、送信周期75、計測周期74の更新方法については後述する。
無線タグ1は、通信部11に要求して確認応答信号を送信する(S116)。無線タグ1は、上述したステップ96の手順により省電力モードへ移行して(S117)、リターンする。
図9を参照して、測定モードへの移行処理を説明する。図9において、無線タグ1が測定モードに入ると、制御部12は、センサ14に要求して鉄道設備5の計測を行う(S121)。制御部12は、センサ14から取得したセンサID81、測定データ83と、計時部15から取得した測定時刻84と、蓄電部16から取得した蓄電部状態86と、記憶部13に記憶された最新のセンサ情報と、を用いて計測番号82を収集する。制御部12は、タグ状態85を判定した後、転送状態87を未転送としてセンサ情報80を生成する。生成したセンサ情報80について、制御部12は、記憶部13に格納する(S122)。制御部12は、設定情報70のリーダ速度79、記憶部空き容量77と、最新のセンサ情報80の蓄電部状態86、測定データ83、測定時刻84と、を用いて転送回数78、計測周期74、送信周期75を導出する(S123)。制御部12は、送信周期75および計測周期74を更新する(S124)。転送回数78、送信周期75、計測周期74の更新方法については後述する。制御部12は、ステップ96と同様の手順で次回動作時刻を計時部15に設定して省電力モードに移行して(S125)、リターンする。
なお、鉄道設備5の状況変化が緩慢である理由により、最新のセンサ情報80が受信できれば過去の測定データはそれほど必要ではない場合がある。上述したフローの場合、ステップ100で1回以上センサ情報をリーダ3に伝送すると、次の計測時刻に再度リーダ3が近接した場合に送信されるセンサ情報は過去のものであり冗長である。この場合は、1回以上センサ情報を送信した後に設定される次回起動時刻は最新の測定データ80の測定時刻84に計測周期74を加えて一定時間(確認応答信号を受信するための待機時間0.1秒)を引いた時刻βとしてよい。ただし、この時刻が休止時間76の範囲内に入る場合、制御部12は、次回起動時刻について、休止時間76の終了時刻後に到来する計測時刻とする。この動作を行うことにより、過去のセンサ情報80を高速で移動するリーダ3に送信する動作を抑制して消費電力を低減しつつ、点検時に停止してセンサ情報80を収集したいという点検者の要求にも対応できる。
図10を参照して、無線タグの通信可能範囲と、リーダ速度と、を利用した送信周期の導出方法を説明する。無線タグ1は、周期的に開局して起動信号を送信する無線局である。無線タグ1は、法的に定められた送信出力の範囲内でリーダ3との通信を試みる。送信出力および無線周波数帯により通信可能な領域は、予測可能である。通信可能な領域にマージンを持たせた距離を通信可能範囲Lとして定める。また、線路4上を走行する車両2が取りうる走行速度は、線路4の敷設状態により制限される。無線タグ1の直下を移動するリーダ3の速度について、過去の車両の移動速度の最高値をリーダ速度として保持しておけば、未知の速度vで移動するリーダ3に対しても十分対応できる。具体的には、L=120m、リーダ速度(最高値)=毎秒30m、転送回数=1回の場合、送信周期=L/(リーダ速度*転送回数)=4.0秒と求められる。v=毎秒25mで無線タグ1の直下を移動するリーダ3は、送信周期の時間で100m移動するため、通信可能範囲を通過する間に必ず1回以上の通信可能なタイミングが存在する。
無線タグ1が蓄電部16およびセンサ情報80を参照して自律的に転送回数を求めるように動作を定めれば、通信可能範囲Lおよびリーダ速度vは、無線タグ1の採用する無線規格および設置位置により、ほぼ固定の値をとるため、送信周期も直ちに求められる。
図11を参照して、無線タグの蓄電部状態を用いた転送回数の導出方法を説明する。図11において、上の図は、各時刻における蓄電部16の蓄電量の推移Aを示す。一方、下の図は、各時刻における転送回数の推移Bを示す。発電部17に太陽光発電を採用した場合、蓄電量Aは、太陽の高度が高い時間帯は多くなり、日の出直後付近の時間帯で少なくなる周期的な変動を示す。時刻t1は、太陽の高度が高い時間帯の計測時刻を示しており、以降計測時刻をt2、t3…と表現する。転送回数78は、計測時刻が到来するたびに更新される。休止時間76の開始時刻をTs、終了時刻をTw、日の出時刻をtdと表現する。
さらに蓄電部16が保持できる電力量の最大値をVmax、無線タグ1が動作を維持できる最低現の電力量をVminとする。このとき、太陽の高度が高いt1時点では蓄電量は最大値Vmaxに到達することもあり、この時点では消費電力を低減する必要性は低い。このため、転送回数78は、高く(具体的には3.0回/min)設定される。時間が経過するにつれて太陽の高度は下がり、発電部17の発電量では高く設定された転送回数の状態における消費電力を賄うことはできない。したがって、蓄電量は、低下を始める。
次に到来する計測時刻t2では、転送回数78をより低い値に設定して消費電力の低減を図る。このときの転送回数の導出にあたり、蓄電部16の蓄電可能な容量は、経年劣化により変化する。また、発電部17の発電量も、天候により大きく変動する。このことから、t2時点の蓄電量のみに対応して転送回数78を決定するのは好ましくない。t1からt2までの時間に消費した蓄電量と、蓄電量Aが一般的に最低値を示す時間帯までに消費可能な蓄電量を比較して、転送回数が調整されることが好ましい。
具体的に時刻t2時点で設定されるべき転送回数p(t2)は、時刻t1時点の蓄電量V(t1)、時刻t2時点の蓄電量V(t2)、一般的に最低値を示す時間帯をtd+Cとする。なお、ここでCは、マージンを表す時間である。Cは、具体的には1時間などの時間を採用できる。ここで、t2時点で設定されるべき転送回数p(t2)は、式1により転送回数78を求めることができる。式1は、時刻td+Cまでに消費可能な蓄電量V(t2)−Vminを、時刻t1から時刻t2の間に1回の転送動作で消費する蓄電量(V(t1)−V(t2))/(p(t1)*(t2−t1))で除し、さらに蓄電量が最低となる時刻までの動作時間td+C−t2−(Tw−Ts)で除したものである。
p(t2)
=p(t1)*(t2-t1)*(V(t2)-Vmin)/(V(t1)-V(t2))/(td+C-t2-(Tw-Ts))…(式1)
なお、転送回数78の導出方法は、式1に限られない。
=p(t1)*(t2-t1)*(V(t2)-Vmin)/(V(t1)-V(t2))/(td+C-t2-(Tw-Ts))…(式1)
なお、転送回数78の導出方法は、式1に限られない。
日の出時刻tdは、無線タグ1の設置される場所の各日における日の出時刻データ一覧を記憶部13に保持しておく方法、冬至付近の最も日の出の遅い日の日の出時刻をtdとして保持しておく方法、無線タグ1の設置される場所の緯度・経度情報から三角関数を用いて求める方法がある。
また、日の出後の蓄電量が最低となる時刻までを基準に転送回数を求めたが、この基準時刻は、絶対的なものである必要はなく、24時間後といった相対的な時刻でもよい。また、発電部17の実装により蓄電量Aに一般的に最低となるような時刻が存在する場合、当該時刻を基準にしてもよい。
図12を参照して、無線タグの記憶部の空き容量を用いた転送回数の導出方法を説明する。図12において、上図は、各時刻における記憶部空き容量77の推移Cを示す。下図は、各時刻における転送回数の推移Dを示す。計測時刻が到来するたびに測定データ80が生成され、記憶部13に記憶される。このため、記憶部空き容量77は、減少する。また無線タグ1がリーダ3に測定データの伝送に成功すると記憶部空き容量77は、増加する。この2つの動作のバランスにより空き容量は、変動する。無線タグ1の点検が行われ、測定データがまとめて収集される場合、高速で走行する車両2に搭載されたリーダ3への送信はあまり行わず、点検時にまとめて測定データ80の送信を行うほうが消費電力の観点から効率がよい。
そのため、図12に示すように空き容量が大きい場合、無線タグ1は、転送回数について、小さく設定して高速で移動するリーダ3への送信を抑制する。空き容量Cが小さくなると、無線タグ1は、転送回数を高くする。すなわち、無線タグ1は、適応的に動作する。その結果、消費電力の低減とできるだけ多くの測定データを受信したいという点検者の要求に対応できる。具体的には記憶部空き容量が事前に定めたしきい値Sthに到達した時点で転送回数pmaxを設定する。また、時刻tにおける空き容量s(t)を用いて転送回数p(t)を式2で求めることができる。
p(t)=pmax*(Smax−s(t))/(Smax−Sth)…(式2)
なお、転送回数78の導出方法は、式2に限られない。ただし、移動するリーダ3に一度に伝送できる測定データ(センサ情報80)にも限度があるため、転送回数Dには上限Pmax(ここでは、3.0回/min)が設けられることが好ましい。
なお、転送回数78の導出方法は、式2に限られない。ただし、移動するリーダ3に一度に伝送できる測定データ(センサ情報80)にも限度があるため、転送回数Dには上限Pmax(ここでは、3.0回/min)が設けられることが好ましい。
図13を参照して、無線タグが収集した測定データ値を用いた転送回数の導出方法を説明する。図13において、上図は、各時刻における最新の測定データ83の推移Eを示す。また、下図は、各時刻における転送回数の推移Fを示す。測定データは、鉄道設備5の状態により上下する。測定データは、経年劣化または初期故障のため事前に定めたしきい値を超過する場合がある。この場合、無線タグ1は、当該測定データ80を迅速かつ確実にリーダ3へ伝送する必要がある。そのため、これ以降、無線タグ1は、事前に定めた転送回数の上限(具体的には、3.0回/min)を転送回数78に設定して迅速かつ確実にリーダ3へ伝送する動作を行う。同時に、無線タグ1は、計測周期74も事前に定めた値(具体的には、600秒)に設定して、よりリアルタイムな計測動作を行う。なお、測定データがしきい値を超過する前について、無線タグ1は、図11または図12で説明した方法により転送回数を自律的に変更する。
図11、図12、図13を用いて転送回数78の導出方法を説明したが、これらの単一の方法だけに限らず、点検者の目的によって部分的に組み合わせてもよい。また、時間帯または鉄道設備2の状況、無線タグ1のある構成要素の種類によって使い分けてもよい。
以上説明したように構成すれば、無線タグ1は、高速で移動するリーダに対して確実に電気設備の劣化の兆候を通知できる。一方、無線タグ1は、電気設備の劣化が進んでいない場合、送信周期を長期化させて消費電力低減を図り、小型かつ安価な構成で長時間稼働可能な動作を実現する。
1…無線タグ、2…車両、3…リーダ、4…線路、5…鉄道設備、11…通信部、12…制御部、13…記憶部、14…センサ、15…計時部、16…蓄電部、17…発電部、18…アンテナ、31…通信部、32…制御部、33…記憶部、36…電源部、38…アンテナ、39…速度情報取得部、50…無線タグの送信フレームフォーマット、60…リーダの送信フレームフォーマット、70…設定情報、80…センサ情報、100…無線タグシステム。
Claims (8)
- 設備の状態を計測するセンサと、
前記センサによる計測情報を蓄積した測定データとリーダから送信された設定情報とを記憶する第1の記憶部と、
移動体に搭載された前記リーダと通信を行い、前記測定データを送信し、前記設定情報を受信する第1の通信部と、
受信した前記設定情報に基づいて、前記測定データを前記リーダに送信する送信処理を実行する第1の制御部と、
現在時刻を検出し、事前に設定された起動時刻が到来したことを前記第1の制御部に通知する計時部と、を備える無線タグと、
前記移動体の速度を検知する速度情報取得部と、
前記無線タグから前記測定データを受信し、前記設定情報を送信する第2の通信部と、
前記設定情報と前記通信部から受信した測定データとを保持する第2の記憶部と、
前記無線タグから前記測定データを取得する処理を実行する第2の制御部と、を備えるリーダと、
を備える無線タグシステムにおいて、
前記第1の制御部は、前記計時部から通知を受け付けたとき、省電力モードにある前記前記第1の通信部と前記第1の記憶部と前記センサとの動作を再開させることを特徴とする無線タグシステム。 - 請求項1に記載の無線タグシステムであって、
前記無線タグは、さらに、保持している電力量を検出する蓄電部を備え、この蓄電部が保持する電力量を定期的に監視して、前記電力量に対応して前記測定データの転送回数を調整することを特徴とする無線タグシステム。 - 請求項2に記載の無線タグシステムであって、
前記無線タグは、前記蓄電部が保持する電力量が最低となる時刻を保持し、前記時刻に動作可能な最低限の電力量を維持するように、前記電力量の推移を用いて推定し、前記測定データの転送回数を調整することを特徴とする無線タグシステム。 - 請求項2に記載の無線タグシステムであって、
前記無線タグは、前記蓄電部が保持する電力量が、現在時刻から相対的に一定時間後において動作可能な最低限の前記電力量を維持するように、前記電力量の推移を用いて推定し、前記測定データの転送回数を調整することを特徴とする無線タグシステム。 - 請求項1に記載の無線タグシステムであって、
前記無線タグは、前記第1の記憶部の空き容量を定期的に監視し、前記空き容量に対応して前記測定データの転送回数を調整することを特徴とする無線タグシステム。 - 請求項1に記載の無線タグシステムであって、
前記無線タグは、前記センサが計測した設備の状態に対応して前記測定データの転送回数を調整することを特徴とする無線タグシステム。 - 請求項6に記載の無線タグシステムであって、
前記無線タグは、前記センサが計測した設備の状態を事前に設定されたしきい値と比較して異常か否かを判定し、異常であるとき、前記測定データの転送回数を増やし、異常ではないとき、前記測定データの転送回数を減らすことを特徴とする無線タグシステム。 - 設備の状態を計測するセンサと、
前記センサによる計測情報を蓄積した測定データとリーダから送信された設定情報とを記憶する記憶部と、
移動体に搭載された前記リーダと通信を行い、前記測定データを送信し、前記設定情報を受信する通信部と、
受信した前記設定情報に基づいて、前記測定データを前記リーダに送信する送信処理を実行する制御部と、
現在時刻を検出し、事前に設定された起動時刻が到来したことを前記制御部に通知する計時部と、を備え、
前記制御部は、前記計時部から通知を受け付けたとき、省電力モードにある前記前記通信部と前記記憶部と前記センサとの動作を再開させることを特徴とする無線タグ。
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---|---|---|---|---|
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CN114829881A (zh) * | 2019-10-02 | 2022-07-29 | 纳博特斯克有限公司 | 传感器装置、管理系统、管理服务器、验收检查装置、传感器装置执行的方法以及标牌 |
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