JP2017048924A - 自転車用歯付ベルト駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】歯付ベルトと駆動プーリに異物が付着する環境下にあっても、駆動プーリにおける異音を抑制できると共に、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部との円滑な噛み合いを維持できる自転車用歯付ベルト駆動装置を提供する。【解決手段】歯付ベルト4は、ベルト長手方向の両側面が平坦状または外側に膨らんだ湾曲状に形成された複数のベルト歯部10を有する。駆動プーリ2の外周部に形成されてベルト歯部10と噛み合うプーリ溝部20は、互いに対向する面が外側に膨らんだ湾曲状に形成されており、その隙間にベルト歯部10が係合される2つのピン部23と、駆動プーリ2の回転中心Crを取り囲むように配置されて、ベルト歯部10と接触しない溝底面30aの一部とによって形成される。2つのピン部23のCrから最も離れた位置を通る円周と、溝底面30aとの間の空間の少なくとも一部は、Cr方向の少なくとも一方向に開放されている。【選択図】図4

Description

本発明は、ベルト駆動式自転車に用いられる自転車用歯付ベルト駆動装置に関する。
従来、自転車のペダルの回転を後輪に伝達するための装置として、クランクを介してペダルに連結される駆動プーリと、後輪の回転軸に連結される従動プーリと、これら2つのプーリに巻き掛けられた歯付ベルトとを備えた歯付ベルト駆動装置が知られている(例えば特許文献1、2参照)。歯付ベルトの内周面には、凸状のベルト歯部がベルト長手方向に沿って所定のピッチで形成されている。自転車用歯付ベルト駆動装置に用いられるプーリには、一般的なタイミングプーリが用いられる。プーリの材質は、材質は金属や樹脂素材など様々である。駆動プーリおよび従動プーリの外周面には、ベルト歯部と噛み合うプーリ溝部が形成されている。プーリ溝部はベルト歯部と円滑に噛み合うようにベルト歯部とほぼ相似形に形成されている。また、例えば特許文献1に開示されているように、一般的なタイミングプーリのプーリ溝部のベルト幅方向両端はフランジ部に接続されている。
雨天走行時には、砂と水の混合物がプーリ溝部とベルト歯部との間に入り込む場合がある。従動プーリは、駆動プーリよりも外径が小さいため、プーリ溝部1つあたりにかかかるベルト張力は駆動プーリよりも大きくなる。そのため、砂と水の混合物などの異物が従動プーリのプーリ溝部とベルト歯部との間に噛み込まれると、ベルトのジャンピング(歯飛び)が生じやすい。特許文献2には、このような異物の噛み込みによるベルトのジャンピングを抑制する自転車用歯付ベルト駆動装置が開示されている。従動プーリのプーリ溝部とベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面との隙間を大きく確保することで、異物の噛み込みを抑制すると共に、入り込んだ異物を排出させやすくしている。一方、駆動プーリは、異物を噛み込んでもベルトのジャンピングはほとんど生じない。そのため、プーリ溝部とベルト歯部のベルト走行方向の面との隙間は大きく確保する必要がなく、隙間を大きくし過ぎると、動力伝達効率の低下、振動や異音の発生、摩耗による歯付きベルトの耐久性の低下などの問題が生じる旨が特許文献2に開示されている。
特許第4048536号公報 特開2015−48870号公報
しかしながら、特許文献1、2のような、一般的なタイミングプーリを用いた自転車用歯付ベルト駆動装置は、特に、異物が付着する環境下で長期間使用した場合に、駆動プーリにおいて異音の問題が生じる。
駆動状態において、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部が噛み合い始めてから完全に噛み合うまでの間、ベルト歯部の走行方向と反対側の面はプーリ溝部の側面に接触しながら移動する。そのため、プーリ溝部とベルト歯部との接触による摩擦音(ギシギシ音)が生じる。砂と水の混合物などの異物が付着する環境下で長期間使用した場合には、プーリ溝部とベルト歯部との間に異物が噛み込まれることで摩擦力が大きくなり、より大きな摩擦音が生じる。
また、一般的なタイミングプーリは、溝底面の両端がフランジ部に接続されているため、プーリ溝部とベルト歯部が噛み合う際、フランジ部とプーリ溝部とベルト歯部とに囲まれた空間の空気が圧縮される。この圧縮された空気が、任意の隙間(例えば、フランジ部とベルトとの微小な隙間)から外部に抜け出る際に、破裂音が生じる場合がある。
さらに、ベルト歯部の先端が、プーリ溝部の溝底面に接触するような態様で噛み合う場合は、ベルト歯部の先端が溝底面を叩く際に叩き音が生じる。
駆動プーリで生じる異音は、特に摩擦音が問題となる。摩擦音を低減するために、ベルト歯部とプーリ溝部の材質を工夫して、ベルト歯部とプーリ溝部の摩擦係数を低減させることが考えられる。しかしながら、ベルト歯部とプーリ溝部の摩擦係数を低減させても、ベルト歯部とプーリ溝部との間に、砂と水との混合物などの異物が噛み込まれると、摩擦音を低減できない。また、異物の噛み込みにより摩擦力が増すと、摩擦音が増大するだけでなく、円滑な噛み合いに悪影響を及ぼす場合がある。また、噛み込まれる異物が多すぎると、円滑な噛み合いが出来なくなる恐れがある。
そこで、本発明は、たとえ、歯付ベルトと駆動プーリに砂と水の混合物などの異物が付着する環境下にあっても、駆動プーリにおける異音を抑制できると共に、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部との円滑な噛み合いを維持できる自転車用歯付ベルト駆動装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段及び発明の効果
第1の発明の自転車用歯付ベルト駆動装置は、ベルト長手方向に沿って抗張体が埋設されたゴム状弾性体で形成され、ベルト長手方向に所定の歯ピッチで配置され、ベルト長手方向の両側面が平坦状または外側に膨らんだ湾曲状に形成された複数のベルト歯部を有する歯付ベルトと、前記複数のベルト歯部とそれぞれ噛み合う複数のプーリ溝部が外周部に形成され、前記歯付ベルトを走行させる駆動プーリと、を備える自転車用歯付ベルト駆動装置であって、前記駆動プーリの前記プーリ溝部は、前記駆動プーリの回転中心を中心とした円周に沿って隙間を空けて配置され、互いに対向する面が外側に膨らんだ湾曲状に形成されており、前記隙間に前記ベルト歯部が係合される2つのピン部と、前記2つのピン部よりも前記駆動プーリの前記回転中心に近い位置に前記回転中心を取り囲むように配置されて、前記ベルト歯部と接触しない溝底面の一部とによって形成されており、前記2つのピン部の前記駆動プーリの前記回転中心から最も離れた位置を通る円周と、前記溝底面との間の空間の少なくとも一部が、前記駆動プーリの前記回転中心方向の少なくとも一方向に開放されており、前記2つのピン部の前記駆動プーリの前記回転中心から最も離れた位置を通る円周の半径から前記ベルト歯部の歯高さの半分の値を差し引いた長さを半径として、前記駆動プーリの前記回転中心を中心とする円周を、第1基準円周とし、前記駆動プーリの前記回転中心を中心として、前記2つのピン部の最小隙間を通る円周を、第2基準円周とすると、駆動状態において、前記ピン部と、前記ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面との接触部分が、前記第1基準円周から前記ベルト歯部の歯元側の範囲内であって、駆動状態において、前記ピン部と、前記ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面との前記第2基準円周上の間隔が、前記ベルト歯部の歯ピッチの0%以上2%以下であって、駆動状態において、前記ピン部と、前記ベルト歯部のべルト走行方向側の面との前記第2基準円周上の間隔が、前記ベルト歯部の歯ピッチの2%以上20%以下であることを特徴とする。
この構成によると、駆動状態において、歯付ベルトのベルト歯部と駆動プーリのプーリ溝部が噛み合う際、ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面が、プーリ溝部のピン部に接触する。ベルト歯部は、プーリ溝部の溝底面は接触しない。駆動状態において、ピン部と、ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面との接触部分は、第1基準円周からベルト歯部の歯元側の範囲内であって、ピン部と、ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面との第2基準円周上の間隔は、ベルト歯部の歯ピッチの0%以上2%以下であって、ピン部と、ベルト歯部のべルト走行方向側の面との第2基準円周上の間隔は、ベルト歯部の歯ピッチの2%以上20%以下である。これにより、動力伝達効率の低下、振動の発生、異音の増大、摩耗による歯付きベルトの耐久性(寿命)の低下、プーリ溝部(ピン部)の強度不足などの問題が生じることなく、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部との円滑な噛み合いを実現できる。
ベルト歯部のベルト長手方向の両側面は、平坦状または外側に膨らんだ湾曲状に形成されている。また、プーリ溝を形成する2つのピン部は、互いに対向する面が外側に膨らんだ湾曲状に形成されている。そのため、ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面と、ピン部とは、ほぼ線状に接触する。一方、従来の自転車用歯付ベルト駆動装置に用いられる一般的なタイミングプーリのプーリ溝部は、ベルト歯部とほぼ相似形に形成されている。そのため、ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面と、従来の駆動プーリのプーリ溝部とは、面接触する。したがって、本発明の自転車用歯付ベルト駆動装置は、ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面とプーリ溝部との接触面積を、従来よりも大幅に低減できる。接触面積が小さくなることで、接触面圧は大きくなる。しかし、本発明では、上述したようにベルト歯部とプーリ溝部との噛み合いが円滑になされるため、接触面圧の増加を最小限に抑えることができる。接触面圧の増加を抑えつつ、接触面積を大幅に低減できるため、ベルト歯部とプーリ溝部との接触による摩擦音を抑制できる。
また、ベルト歯部とプーリ溝との接触面積が狭いことにより、ベルト歯部とプーリ溝との間に、砂と水との混合物などの異物が入り込んでも、異物が噛み込まれにくく、また、噛み込まれても抜け出やすい。そのため、異物の噛み込みによる摩擦音の増大を抑制できる。
さらに、2つのピン部の駆動プーリの回転中心から最も離れた位置を通る円周と、プーリ溝部の溝底面との間の空間の少なくとも一部が、駆動プーリの回転中心方向の少なくとも一方向に開放されている。そのため、プーリ溝部とベルト歯部との間に入り込んだ異物を、外部に開放された空間から外部に容易に排出することができる。それにより、ベルト歯部とプーリ溝との間に異物が噛み込まれるのをより確実に抑制でき、異物の噛み込みによる摩擦音の増大をより確実に抑制できる。
さらに、プーリ溝部に異物が堆積するのを防止できるため、異物によってベルト歯部とプーリ溝とが円滑に噛み合わなくなるのを防止できる。
また、溝底面のピン部側の空間の少なくとも一部が外部に開放されていることにより、プーリ溝部とベルト歯部との間で空気が圧縮されるのを防止できる。したがって、圧縮された空気が外部に抜け出る際に生じる破裂音を防止できる。
また、ベルト歯部の先端はプーリ溝部の溝底面に接触しない。そのため、ベルト歯部の先端が溝底面に接触する際に生じる叩き音を防止できる。
以上のように、本発明の自転車用歯付ベルト駆動装置は、たとえ、歯付ベルトと駆動プーリに砂と水の混合物などの異物が付着する環境下にあっても、駆動プーリにおける異音を抑制できると共に、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部との円滑な噛み合いを維持できる。
第2の発明の自転車用歯付ベルト駆動装置は、前記第1の発明において、前記ピン部は、前記駆動プーリの前記回転中心と平行に延びる円柱状または円筒状に形成され、前記円柱状または前記円筒状の中心軸回りに回転可能であることを特徴とする。
この構成によると、ベルト歯部がピン部と噛み合うときに、ピン部が回転することで、ベルト歯部とピン部との接触部分の摩擦が実質的に無くなる。したがって、ベルト歯部とピン部とが直接接触することによる摩擦音を防止できる。そのため、ピン部が回転不能な場合に比べて、駆動プーリにおける異音をより抑制できると共に、プーリ溝とベルト歯部がより円滑に噛み合うことができる。
また、ベルト歯部とピン部との間に異物が噛み込まれた場合に、ピン部の回転により、ピン部のベルト歯部と接触する位置が変更される。これにより、異物が噛み込まれた状態から容易に抜け出ることができる。したがって、異物の噛み込みによる摩擦音をより抑制できると共に、異物の噛み込みによってプーリ溝とベルト歯部との円滑な噛み合いが阻害されるのをより確実に防止できる。
また、摩擦が実質的に無いことで、ピン部とベルト歯部との接触部分における双方の偏摩耗を抑制することができる。よって、プーリ溝部とベルト歯部との円滑な噛み合いを長期間にわたって維持できる。
第3の発明の自転車用歯付ベルト駆動装置は、前記第2の発明において、前記ピン部は、前記駆動プーリの前記回転中心と平行に延びる円筒状に形成されており、前記駆動プーリは、前記ピン部の内側に挿通されており、前記ピン部を回転可能に支持する支持軸を有することを特徴とする。
この構成によると、ピン部の両端部が軸受によって回転可能に支持される構成に比べて、駆動プーリを簡素化且つ軽量化できる。
第4の発明の自転車用歯付ベルト駆動装置は、前記第1〜第3のいずれかの発明において、前記駆動プーリは、前記駆動プーリの前記回転中心方向の少なくとも一方向に前記自転車用歯付ベルト駆動装置を見たときに、前記溝底面の視線方向の手前側の端部の少なくとも一部が外部に露出するように構成されていることを特徴とする。
この構成によると、駆動プーリの回転軸方向に見て、溝底面の視線方向の手前側の端部の少なくとも一部が外部に露出しているため、プーリ溝部に入り込んで溝底面に付着した異物を当該手間側の端部から外部に容易に排出することができる。したがって、異物の噛み込みによる摩擦音をより抑制できると共に、異物の噛み込みによってプーリ溝とベルト歯部との円滑な噛み合いが阻害されるのをより確実に防止できる。
第5の発明の自転車用歯付ベルト駆動装置は、前記第4の発明において、前記駆動プーリの前記溝底面の少なくとも一部は、前記駆動プーリの前記回転中心方向の前記少なくとも一方向に前記自転車用歯付ベルト駆動装置を見たときに、視線方向の手前側の端部から視線方向の奥側に向かうにつれて、前記駆動プーリの前記回転中心から離れるように、前記回転中心に対して傾斜していることを特徴とする。
この構成によると、駆動プーリの回転軸方向に見て、溝底面の視線方向の手前側の端部の少なくとも一部が外部に露出していると共に、溝底面の少なくとも一部が、視線方向の手前側の端部から奥側に向かうにつれて駆動プーリの回転中心から離れるように、回転中心に対して傾斜している。そのため、プーリ溝部に入り込んで溝底面に付着した異物を、溝底面の傾斜に沿って移動させて外部に排出させることができる。また、溝底面上において、外部に開放された空間の高さ(駆動プーリの径方向長さ)をより広く確保することができる。それにより、異物が外部により排出されやすくなる。したがって、異物の噛み込みによる摩擦音をより抑制できると共に、異物の噛み込みによってプーリ溝とベルト歯部との円滑な噛み合いが阻害されるのをより確実に防止できる。
第6の発明の自転車用歯付ベルト駆動装置は、前記第1〜第5のいずれかの発明において、前記駆動プーリの前記プーリ溝部の溝深さが、前記ベルト歯部の歯高さよりも大きく、その差が前記ベルト歯部の歯高さの5%以上であることを特徴とする。
この構成によると、駆動プーリのプーリ溝部の溝底面とベルト歯部の先端との間に異物が噛み込まれるのをより確実に防止できる。
第1実施形態に係る自転車用歯付ベルト駆動装置の構成を示す模式図である。 図1の駆動プーリの斜視図である。 図1の駆動プーリの分解斜視図である。 図1の駆動プーリの正面図である。 (a)は図4のA−A線断面図であって、(b)は図4のB−B線断面図である。 図5のVI−VI線断面図である。 ベルト歯部がプーリ溝部に噛み合う過程を示す断面図である。 第2実施形態に係る自転車用歯付ベルト駆動装置の駆動プーリの斜視図である。 図8の駆動プーリの断面図である。 変更例に係る自転車用歯付ベルト駆動装置において、ベルト歯部がプーリ溝部に噛み合う過程を示す断面図である。 変更例に係る自転車用歯付ベルト駆動装置の駆動プーリの断面図である。 変更例に係る自転車用歯付ベルト駆動装置の駆動プーリの断面図である。 発音性試験を行う本発明の実施例に係る自転車用歯付ベルト駆動装置を示す模式図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置1は、クランク(図示省略)を介してペダル(図示省略)に連結される駆動プーリ2と、自転車の後輪(図示省略)の回転軸(図示省略)に連結される従動プーリ3と、駆動プーリ2および従動プーリ3に巻き掛けられる無端状の歯付ベルト4とを備える。自転車のライダーがペダルを踏んでペダルを回転させると、駆動プーリ2が回転し、その回転運動が歯付ベルト4を介して従動プーリ3に伝達されることで、後輪が回転する。つまり、駆動プーリ2が歯付ベルト4を走行させる。本実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置1は、歯付ベルト4の張力を調整する張力調整機構を有しないが、張力調整機構を有していてもよい。
図6に示すように、歯付ベルト4の内周面には、凸状のベルト歯部10が、ベルト長手方向に沿って一定の歯ピッチPtで配置されている。隣り合う2つのベルト歯部10の間には、ピッチラインPLと平行な歯底面11が形成されている。なお、ピッチラインPLとは、ベルトが曲げられても同じ長さを保つベルト中のベルト長手方向の基準線のことである。歯ピッチPtは、ピッチラインPL上のベルト歯部10の配置間隔である。ベルト歯部10の歯高さHtは、ベルト歯部10の先端と歯底面11とのベルト厚さ方向の離間距離である。
図5に示すように、歯付ベルト4は、ピッチラインPL上に抗張体12が埋設されたゴム状弾性体からなる。ゴム状弾性体は、ゴム、エラストマー、または合成樹脂等で構成されている。ゴム状弾性体は、熱硬化性ウレタンエラストマーを含んでいることが好ましい。また、ゴム状弾性体のJISA硬度は、90以上が好ましい。抗張体12には、高弾性で高強度のコードが用いられる。抗張体12は、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等で形成されている。なお、抗張体12には、ゴム状弾性体との接着性を高める目的で接着処理が施されていてもよい。また、歯付ベルト4の内周面は、歯布で被覆されていてもよい。
図6に示すように、ベルト長手方向に沿った断面において、ベルト歯部10は、ベルト厚み方向の直線に対して対称に形成されている。図7(a)に示すように、ベルト長手方向に沿った断面において、ベルト歯部10の輪郭は、歯先部10aと、2つの歯側部10bと、2つの歯元部10cで構成されている。歯元部10cは、歯底面11の端部に接続されており、単一の円弧状(任意の一点を中心とする円弧状)に形成されている。歯先部10aは、ベルト歯部3の先端(歯頂)を含む部分である。本実施形態の歯先部10aは、ベルト長さ方向に延びる直線状に形成されている。なお、歯先部10aは、単一の円弧状に形成されていてもよい。歯側部10bは、歯先部10aと歯元部10cとの間の部分である。歯側部10bは、外側に膨らんだ湾曲状に形成されている。つまり、ベルト歯部10のベルト長手方向の両側面は、外側に膨らんだ湾曲状に形成されている。歯側部10bは、複数の円弧をなめらかに繋げた形状である。
駆動プーリ2の外周部には、ベルト歯部10と噛み合うプーリ溝部20が形成されている。図2〜図5に示すように、駆動プーリ2は、ベース部21と、カバー部22と、複数のピン部23とを備える。ここで、駆動プーリ2の回転中心Crの延在方向と平行な方向をCr方向という。Cr方向は、自転車の車幅方向と一致する。ベース部21とカバー部22は、Cr方向に並んで配置される。ベース部21は、カバー部22よりも自転車の車幅方向中央側に配置される。以下の駆動プーリ2の説明において、Cr方向のうち、自転車の幅方向中央に向かう方向をIN方向とし、IN方向と逆方向をOUT方向とする。
図3および図5に示すように、ベース部21は、略円筒状の円筒部30と、内フランジ部31と、クランク取付部32で構成されている。クランク取付部32は、円環板状であって、円筒部30の内周面に接続されている。クランク取付部32には、周方向に並んだ6つのクランク取付孔32aが形成されている。クランク取付部32のOUT方向側には、ペダルと連結されたクランク(図示せず)が配置される。クランクは、クランク取付孔32aに挿通されるボルト等(図示せず)によってクランク取付部32に固定される。クランクは、円筒部30の中心に配置されるクランク軸を支持している。クランク軸の中心軸が、駆動プーリ2の回転中心Crである。
内フランジ部31は、円環板状であって、円筒部30の外周面30aのIN方向端部に接続されている。内フランジ部31のOUT方向側の面には、複数の挿入孔31aが形成されている。複数の挿入孔31aは、駆動プーリ2の回転中心Crを中心とした円周に沿って等間隔に形成されている。図5に示すように、挿入孔31aは、円形の凹部である。
図5(a)および図5(b)に示すように、円筒部30の外周面30aは、Cr方向(駆動プーリ2の回転軸方向)に対して傾斜している。詳細には、円筒部30の外周面30aは、OUT方向側の端部からIN方向に向かうにつれて、直径が大きくなるように(回転中心Crから離れるように)、傾斜している。以下の説明において、円筒部30の外周面30aを溝底面30aと称する。溝底面30aは、駆動プーリ2の回転中心Crを取り囲むように配置されている。また、円筒部30のOUT方向側の端面には、周方向に並んだ6つのカバー部取付孔30cが形成されている。
カバー部22は、円環板状の外フランジ部40と、6つの突出部41によって構成されている。突出部41は、外フランジ部40の内周端から径方向内向きに突出している。図3および図5(a)に示すように、各突出部41には、貫通孔41aが形成されている。図5(b)に示すように、外フランジ部40の内径は、円筒部30の外径(即ち、溝底面30aの直径)よりも大きい。外フランジ部40の外径は、内フランジ部31の外径とほぼ同じである。カバー部22は、突出部41が円筒部30のOUT方向側の端面30bに接するように配置される。突出部41の貫通孔41aを貫通して、円筒部30のカバー部取付孔30cに挿入されるボルト25によって、カバー部22はベース部21に固定される。
円筒部30のOUT方向側の端面30bの一部(周方向の一部)は、外フランジ部40の内側において、外部に露出している。したがって、自転車用歯付ベルト駆動装置1をIN方向に見たときに、溝底面30aのOUT方向側の端部(視線方向の手前側の端部)の少なくとも一部が外部に露出している。また、2つのピン部23の回転中心Crから最も離れた位置を通る円周と、溝底面30aとの間の空間の一部が、OUT方向に開放されている。より詳細には、溝底面30aから駆動プーリ2の径方向外側の空間の一部が、OUT方向に露出されている。
また、図5に示すように、外フランジ部40のIN方向側の面には、複数の挿入孔40aが形成されている。複数の挿入孔40aは、内フランジ部31に形成された複数の挿入孔31aとそれぞれ対向している。
複数のピン部23は、ベース部21とカバー部22の間に配置される。図5に示すように、ピン部23は、円柱状の部材であって、一端が内フランジ部31の挿入孔31aに挿入され、他端がカバー部22の挿入孔40aに挿入されている。ピン部23は、駆動プーリ2の回転中心Cr方向と平行に延びている。複数のピン部23は、溝底面30aの外周側に配置される。言い換えると、複数のピン部23は、溝底面30aより駆動プーリ2の回転中心Crから遠い位置に配置される。ピン部23は、ベース部21およびカバー部22に対して相対回転不能となっている。
図6に示すように、駆動プーリ2のプーリ溝部20は、隣り合う2つのピン部23と、溝底面30aの一部によって形成される。ベルト歯部10は、隣り合う2つのピン部23の隙間に係合される。ベルト歯部10は、溝底面30aには接触しない。隣り合う2つのベルト歯部10の隙間には、1つのピン部23が係合する。
図4に示すように、複数のピン部23の回転中心Crから最も離れた位置を通る円周の半径をRとする。半径Rは、駆動プーリ2の歯付ベルト4が巻き掛けられる部分の最大半径である。図6に示すように、プーリ溝部20の溝深さHgは、半径Rから溝底面30aの半径を差し引いた値である。図5(b)に示すように、溝底面30aはCr方向に対して傾斜しており、プーリ溝部20の溝深さHgは、OUT方向側端部において最大溝深さHgMAXとなり、IN方向側端部において最小溝深さHgMINとなる。
プーリ溝部20の溝深さHgは、ベルト歯部10の歯高さHtよりも大きい。プーリ溝部20の溝深さHgと、ベルト歯部10の歯高さHtとの差は、ベルト歯部10の歯高さHtの5%以上であることが好ましい。
図6に示すように、半径Rからベルト歯部10の歯高さHtの半分の値を差し引いた長さを半径とする駆動プーリ2の回転中心Crを中心とした円周を、第1基準円周L1とする。また、駆動プーリ2の回転中心Crを中心とし、隣り合う2つのピン部23の最小隙間d1を通る円周を、第2基準円周L2とする。本実施形態の第2基準円周L2は、ピン部23の中心よりも若干内側(回転中心Cr側)を通る。
図7(d)に示すように、駆動状態において、駆動プーリ2のピン部23と、ベルト歯部10のベルト走行方向(図7中の白抜きの矢印方向)と反対側の面と接触する部分との接触部分A1は、第1基準円周L1からベルト歯部10の歯元側の範囲内である。なお、接触部分A1は、ベルト歯部10がプーリ溝部20に噛み合い始めた状態(図7(b))から、プーリ溝部20から抜け出す間に、接触する部分のことである。また、駆動状態とは、従動プーリ3の回転に負荷が付与されて、駆動プーリ2が回転している状態をいう。
駆動状態において、ピン部23と、ベルト歯部10のベルト走行方向と反対側の面との第2基準円周L2上の間隔D1を、動力伝達側のバックラッシD1という。動力伝達側のバックラッシD1は、ベルト歯部10の歯ピッチPtの0%以上2%以下である。
駆動状態において、ピン部23と、ベルト歯部10のべルト走行方向側の面との第2基準円周L2上の間隔D2を、非動力伝達側のバックラッシD2という。非動力伝達側のバックラッシD2は、ベルト歯部10の歯ピッチPtの2%以上20%以下である。
ピン部23は、その小さい断面積にかかる荷重(特には、せん断荷重)に耐える相応の強度が必要である。そのため、ピン部23の材質は、合成樹脂よりも金属(鋼材)の方が望ましい。例えば、機械構造用炭素鋼(S45Cなど)や硬鋼線材(SWRH60Cなど)等の高炭素鋼、あるいはステンレス鋼(SUS303など)が望ましい。なお、炭素鋼の場合は、硬質クロムメッキ、無電解ニッケルメッキなど防食性、耐摩耗性等が見込める適切な表面処理を施すことが好ましい。
駆動プーリ2のベース部21およびカバー部22は、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、フェノール系樹脂等の合成樹脂、または、金属で形成される。合成樹脂の場合は、材料中に、ガラス繊維や炭素繊維等を適量添加して強度を高めてもよい。金属の場合は、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの一般的な金属でよい。金属の場合、防食加工を施すことが好ましい。具体的には、炭素鋼の場合には、亜鉛メッキ処理等を施し、アルミニウム合金の場合にはアルマイト加工を施すことが好ましい。
図1に示すように、従動プーリ3の外周面には、ベルト歯部10と噛み合うプーリ溝部が形成されている。従動プーリ3の外径は、駆動プーリ2の外径よりも小さい。従動プーリ3のプーリ溝部の溝数は、一般的な自転車用歯付ベルト駆動装置1の範囲内であって、例えば22〜29である。従動プーリ3と駆動プーリ2の外径比(溝数比)は、一般的な自転車用歯付ベルト駆動装置1の範囲内であって、例えば1.7〜3.2である。
従動プーリ3は、公知のプーリの構造が採用される。従動プーリ3は、特許文献2(特開2015−48870号公報)に記載の従動プーリを用いることが好ましい。特許文献2の従動プーリを用いることにより、水と砂の混合物などの異物が付着する環境下にあっても、従動プーリにおけるベルトのジャンピングの発生を抑制し、円滑な動力伝達性能を維持できる。従動プーリ3の材質は、駆動プーリ2のベース部21およびカバー部22に用いられる材質と同様である。
以上説明した本実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置1は、以下の特徴を有する。
駆動状態において、歯付ベルト4のベルト歯部10と駆動プーリ2のプーリ溝部20が噛み合う際、ベルト歯部10のベルト走行方向と反対側の面が、プーリ溝部20のピン部23に接触する。ベルト歯部10は、プーリ溝部20の溝底面30aには接触しない。駆動状態において、ピン部23と、ベルト歯部10のベルト走行方向と反対側の面との接触部分は、第1基準円周L1からベルト歯部10の歯元側の範囲内であって、ピン部23と、ベルト歯部10のベルト走行方向と反対側の面との第2基準円周L2上の間隔は、ベルト歯部10の歯ピッチの0%以上2%以下であって、ピン部23と、ベルト歯部10のべルト走行方向側の面との第2基準円周L2上の間隔は、ベルト歯部10の歯ピッチの2%以上20%以下である。これにより、動力伝達効率の低下、振動の発生、異音の増大、摩耗による歯付きベルトの耐久性(寿命)の低下、プーリ溝部20(ピン部23)の強度不足などの問題が生じることなく、駆動プーリ2のプーリ溝部20とベルト歯部10との円滑な噛み合いを実現できる。
ベルト歯部10のベルト長手方向の両側面は、平坦状または外側に膨らんだ湾曲状に形成されている。また、プーリ溝部20を形成する2つのピン部23は、互いに対向する面が外側に膨らんだ湾曲状に形成されている。そのため、ベルト歯部10のベルト走行方向と反対側の面と、ピン部23とは、ほぼ線状に接触する。一方、従来の自転車用歯付ベルト駆動装置に用いられる一般的なタイミングプーリのプーリ溝部は、ベルト歯部とほぼ相似形に形成されている。そのため、ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面と、従来の駆動プーリのプーリ溝部とは、面接触する。したがって、本実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置1は、ベルト歯部10のベルト走行方向と反対側の面とプーリ溝部20との接触面積を、従来よりも大幅に低減できる。接触面積が小さくなることで、接触面圧は大きくなる。しかし、本実施形態では、上述したようにベルト歯部10とプーリ溝部20との噛み合いが円滑になされるため、接触面圧の増加を最小限に抑えることができる。接触面圧の増加を抑えつつ、接触面積を大幅に低減できるため、ベルト歯部10とプーリ溝部20との接触による摩擦音を抑制できる。
また、ベルト歯部10とプーリ溝部20との接触面積が狭いことにより、ベルト歯部10とプーリ溝部20との間に、砂と水との混合物などの異物が入り込んでも、異物が噛み込まれにくく、また、噛み込まれても抜け出やすい。そのため、異物の噛み込みによる摩擦音の増大を抑制できる。
さらに、2つのピン部23の駆動プーリ2の回転中心Crから最も離れた位置を通る円周(半径Rの円周)と、溝底面30aとの間の空間の少なくとも一部が、駆動プーリ2のCr方向の少なくとも一方向に開放されている。そのため、プーリ溝部20とベルト歯部10との間に入り込んだ異物を、外部に開放された空間から外部に容易に排出することができる。それにより、ベルト歯部10とプーリ溝部20との間に異物が噛み込まれるのをより確実に抑制でき、異物の噛み込みによる摩擦音の増大をより確実に抑制できる。
さらに、プーリ溝部20に異物が堆積するのを防止できるため、異物によってベルト歯部10とプーリ溝部20とが円滑に噛み合わなくなるのを防止できる。
また、溝底面30aのピン部23側の空間の少なくとも一部が外部に開放されていることにより、プーリ溝部20とベルト歯部10との間で空気が圧縮されるのを防止できる。したがって、圧縮された空気が外部に抜け出る際に生じる破裂音を防止できる。
また、ベルト歯部10の先端はプーリ溝部20の溝底面30aに接触しない。そのため、ベルト歯部10の先端が溝底面30aに接触する際に生じる叩き音を防止できる。
以上のように、本実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置1は、たとえ、歯付ベルト4と駆動プーリ2に砂と水の混合物などの異物が付着する環境下にあっても、駆動プーリ2における異音を抑制できると共に、駆動プーリ2のプーリ溝部20とベルト歯部10との円滑な噛み合いを維持できる。
Cr方向の一方向(IN方向)に見て、溝底面30aの視線方向の手前側の端部の少なくとも一部は外部に露出している。そのため、プーリ溝部20に入り込んで溝底面30aに付着した異物を当該手間側の端部から外部に容易に排出することができる。したがって、異物の噛み込みによる摩擦音をより抑制できると共に、異物の噛み込みによってプーリ溝部20とベルト歯部10との円滑な噛み合いが阻害されるのをより確実に防止できる。
また、Cr方向の一方向(IN方向)に見て、溝底面30aの視線方向の手前側の端部の少なくとも一部は外部に露出していると共に、溝底面30aの少なくとも一部は、視線方向の手前側の端部から奥側に向かうにつれて回転中心Crから離れるように、回転中心Crに対して傾斜している。そのため、プーリ溝部20に入り込んで溝底面30aに付着した異物を、溝底面30aの傾斜に沿って移動させて外部に排出させることができる。また、溝底面30a上において、外部に開放された空間の高さ(駆動プーリ2の径方向長さ)をより広く確保することができる。それにより、異物が外部により排出されやすくなる。したがって、異物の噛み込みによる摩擦音をより抑制できると共に、異物の噛み込みによってプーリ溝部20とベルト歯部10との円滑な噛み合いが阻害されるのをより確実に防止できる。
駆動プーリ2のプーリ溝部20の溝深さHgは、ベルト歯部10の歯高さHtよりも大きく、その差が歯高さHtの5%以上である。この構成によると、駆動プーリ2のプーリ溝部20の溝底面30aとベルト歯部10の先端との間に異物が噛み込まれるのをより確実に防止できる。
上述したように、従動プーリ3と駆動プーリ2の外径比(溝数比)は、一般的な自転車用歯付ベルト駆動装置1の範囲内であって、例えば1.7〜3.2である。そのため、一般的な自転車用歯付ベルト駆動装置1の場合は、駆動プーリ2においてベルト歯部10が受ける応力(1歯あたりの応力)は、従動プーリ3においてベルト歯部10が受ける応力と比べて概ね3分の1から半分程度の小さいものとなる。
また、上述したように、駆動プーリ2のプーリ溝部20とベルト歯部10とはほぼ線状に接触するものの、プーリ溝部20とベルト歯部10とが円滑に噛み合うため、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部とが略相似形であって接触面積が大きい従来の構成(例えば、特許文献2)と比べても、接触面圧の増加は最小限に抑えられる。
したがって、本実施形態の駆動プーリ2を用いても、従来の駆動プーリ(例えば、特許文献2)と同様に、歯付ベルト4に、摩耗や歯欠け等に起因する耐久性(寿命)の低下などの問題はほとんど生じない。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。本実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置は、第1実施形態の駆動プーリ2と異なる駆動プーリ102を有する。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
図8および図9に示すように、駆動プーリ102は、ベース部121と、カバー部122と、複数のピン部123と、複数の支持軸124とを備える。
ベース部121の内フランジ部131のOUT方向側の面には、複数の挿入孔131aが形成されている。挿入孔131aの直径は、挿入孔31aの直径よりも小さい。複数の挿入孔131aは、複数の挿入孔31aと同じ位置に形成されている。ベース部121のその他の構成は、第1実施形態のベース部21と同じである。
カバー部122の外フランジ部140のIN方向側の面には、複数の挿入孔140aが形成されている。挿入孔140aの直径は、挿入孔40aの直径よりも小さい。複数の挿入孔140aは、複数の挿入孔40aと同じ位置に形成されている。カバー部122のその他の構成は、第1実施形態のカバー部22と同じである。
ピン部123は、円筒状の部材であって、その外径は、ピン部23の外径と同じである。ピン部123の内側には、円柱状の支持軸124が挿通されている。支持軸124は、一端が内フランジ部131の挿入孔131aに挿入され、他端がカバー部122の挿入孔140aに挿入されている。支持軸124およびピン部123は、Cr方向と平行に延びている。支持軸124は、ピン部123を回転可能に支持する。ピン部123は、その中心軸回りに回転可能である。
第1実施形態と同様に、駆動プーリ102の外周部には、ベルト歯部10と噛み合うプーリ溝部20が形成されている。プーリ溝部20は、隣り合う2つのピン部123と、溝底面30aの一部によって形成される。
ピン部123の材質は、支持軸124との摺動性の高い材質が好ましい。金属の場合は、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などでよいが、耐焼付性を考慮した材質(たとえば、SUS303など)とするか、または摺動性の良い表面処理を施すのが望ましい。合成樹脂の場合、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、フェノール系樹脂等の合成樹脂でよい。合成樹脂の場合、固体潤滑剤等の添加により摺動性を発現させてもよい。支持軸124の材質は、第1実施形態のピン部23の材質と同じでよい。駆動プーリ102のベース部121およびカバー部122の材質は、第1実施形態の駆動プーリ2と同じである。
本実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置は、第1実施形態で述べた特徴に加えて以下の特徴を有する。
ピン部123は、回転中心Crと平行に延びる円筒状であって、その中心軸回りに回転可能となっている。そのため、ベルト歯部10がピン部123と噛み合うときに、ピン部123が回転することで、ベルト歯部10とピン部123との接触部分の摩擦が実質的に無くなる。したがって、ベルト歯部10とピン部123とが直接接触することによる摩擦音を防止できる。そのため、ピン部123が回転不能な場合に比べて、駆動プーリ102における異音をより抑制できると共に、プーリ溝部20とベルト歯部10がより円滑に噛み合うことができる。
また、ベルト歯部10とピン部123との間に異物が噛み込まれた場合に、ピン部123の回転により、ピン部123のベルト歯部10と接触する位置が変更される。これにより、異物が噛み込まれた状態から容易に抜け出ることができる。したがって、異物の噛み込みによる摩擦音をより抑制できると共に、異物の噛み込みによってプーリ溝部20とベルト歯部10との円滑な噛み合いが阻害されるのをより確実に防止できる。
また、摩擦が実質的に無いことで、ピン部123とベルト歯部10との接触部分における双方の偏摩耗を抑制することができる。よって、プーリ溝部20とベルト歯部10との円滑な噛み合いを長期間にわたって維持できる。
ピン部123は、ピン部123の内側に挿通された支持軸124によって回転可能に支持されている。この構成によると、ピン部の両端部が軸受によって回転可能に支持される構成に比べて、駆動プーリ102を簡素化且つ軽量化できる。
以上、本実施形態の好適な実施の形態について説明したが、本実施形態は上述の第1おおよび第2実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
上記第1および第2実施形態のベルト歯部10の両側面は、外側に膨らんだ湾曲状に形成されているが、両側面が平坦状であってもよい。
上記第2実施形態では、ピン部123は、その内側に挿通された支持軸124に回転可能に支持されているが、ピン部を回転可能に設ける構成はこれに限定されない。例えば、ピン部の両端部を軸受(例えば、ボールベアリング)で支持することでピン部が回転可能となっていてもよい。この場合、軸受は、軸受内への異物侵入やグリースの漏れ出しを抑制することができるシール付のタイプが望ましい。また、この場合、ピン部は円柱状であってもよい。
また、上記第2実施形態の変更例として、ピン部123と支持軸124との間にブッシュ(滑り軸受)を装着して、このブッシュ(滑り軸受)を介してピン部123は支持軸124に回転可能に支持されていてもよい。ブッシュ(滑り軸受)は、耐摩耗性が良く自己潤滑性に優れるポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂で形成することが好ましい。ブッシュ(滑り軸受)は、円筒状でよいが、C字状断面として、若干拡径又は縮径された状態で支持軸124又はピン部123に装着して自己弾性復元力によって支持軸124の外周面又はピン部123の内周面に密着させてもよい。これにより、ピン部123と支持軸124との間にブッシュ(滑り軸受)を装着しない場合と比べて、ピン部123と支持軸124との間で起こり得る、焼付、摩擦音、異物噛み等をより抑制できる。
第1実施形態のようにピン部23が回転不能の場合、ピン部の断面形状は円形状に限らない。隣り合う2つのピン部の互いに対向する面が、外側に膨らんだ湾曲状に形成されていればよい。例えば図10に示すように、ピン部223の断面形状が長円形状であってもよい。駆動状態において、ピン部223と、ベルト歯部10のベルト走行方向(図10中の白抜きの矢印方向)と反対側の面と接触する部分との接触部分A2は、第1基準円周L1からベルト歯部10の歯元側の範囲内とする。第2基準円周L3は、隣り合う2つのピン部223の最小隙間d2を通る。第1および第2実施形態と同様に、第2基準円周L3上の動力伝達側のバックラッシD3は、ベルト歯部10の歯ピッチPtの0%以上2%以下とし、第2基準円周L3上の非動力伝達側のバックラッシD4は、ベルト歯部10の歯ピッチPtの2%以上20%以下とする。この構成により、図10の変形例は、第1実施形態で述べた効果と同様の効果を奏する。
上記第1および第2実施形態では、隣り合う2つのベルト歯部10の間に、1つのピン部23、123が係合しているが、2つ以上のピン部が係合してもよい。
上記第1および第2実施形態では、溝底面30aの断面形状は、回転中心Crを中心とした円形状に形成されている。しかし、溝底面30aは、ベルト歯部10と接することがなく、且つ、回転中心Crを取り囲むように形成されていれば、その形状は特に限定されない。例えば、溝底面30aの断面形状が、8角形などの多角形状であってよい。また、例えば、溝底面30aは、1つまたは複数の凸部または凹部を有する形状であってもよい。また、溝底面30aの中心位置は、回転中心Crと一致しなくてもよい。
上記第1および第2実施形態の駆動プーリ2、102は、Cr方向の一方向(IN方向)に見たときに、溝底面30aの視線方向の手前側の端部の一部が外部に露出するように構成されているが、溝底面30aの視線方向の手前側の端部の全部が外部に露出するように構成されていてもよい。
上記第1および第2実施形態では、溝底面30aの全体が、Cr方向に対して傾斜しているが、溝底面30a全体が、Cr方向と平行に形成されていてもよい。また、溝底面30aの一部分(例えばCr方向の一部分)だけがCr方向に対して傾斜し、残りの部分がCr方向と平行であってもよい。
上記第1および第2実施形態の駆動プーリ2、102は、IN方向に見たときに、溝底面30aの視線方向の手前側の端部(OUT方向側の端部)の一部が外部に露出するように構成されているが、OUT方向に見たときに、溝底面30aの視線方向の手前側の端部(IN方向側の端部)の少なくとも一部が外部に露出するように構成されていてもよい。この場合、溝底面30aのCr方向に対する傾斜の方向は逆方向とする。
例えば図11に示す駆動プーリ302のように、Cr方向のいずれの方向に見たときも、溝底面330aの視線方向の手前側の端部の少なくとも一部が外部に露出するように構成されていてもよい。図11では、駆動プーリ302のベース部321の内フランジ部331に、溝底面330aのIN方向側端部を外部に露出させる開口331bが形成されている。
この変更例では、溝底面のOUT方向側の領域の少なくとも一部を、OUT方向側の端部からIN方向に向かうにつれて、回転中心Crから離れるようにCr方向に対して傾斜させると共に、溝底面のIN方向側の領域の少なくとも一部を、IN方向側の端部からOUT方向に向かうにつれて、回転中心Crから離れるようにCr方向に対して傾斜させてもよい。具体的には、例えば図11に示す溝底面330aのように、駆動プーリ302の周方向に直交する断面形状が三角形状であってもよい。
複数のピン部23(123)の回転中心Crから最も離れた位置を通る円周(半径Rの円周)と、溝底面30aとの間の空間の少なくとも一部が、Cr方向の少なくとも一方向に開放されていれば、Cr方向に見て溝底面30aのCr方向の端部が外部に露出していなくてもよい。例えば、図12に示すように、駆動プーリ402のカバー部422が、溝底面30aのOUT方向側端部の直径より小さい内径を有する円環板状であって、且つ、溝底面30aのOUT方向側端部よりも回転中心Crから離れた位置に、2つのピン部23の回転中心Crから最も離れた位置を通る円周と、溝底面30aとの間の空間の少なくとも一部を外部に開放させる開口422bを有する構成であってもよい。
本発明の具体例な実施例と、本発明と比較するための比較例とを用いて、本発明の効果を検証するための試験を行った。
[実施例1]
実施例1の自転車用歯付ベルト駆動装置は、図1〜図6に示す第1実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置と同じ構成とした。
実施例1の駆動プーリ(2)の円柱状のピン部(23)は、カバー部(22)の挿入孔(40a)に嵌入されて固定されている。ピン部(23)の材質は、ステンレス鋼(SUS303)とし、ベース部(21)およびカバー部(22)の材質は、亜鉛メッキ処理が施された炭素鋼(S25C)とした。駆動プーリ(2)の各部の寸法は、以下の通りである。
・プーリ溝部(20)の数:55
・ピン部(23)の径:3mm
・挿入孔(31a、40a)の径:3mm
・プーリ溝部(20)の溝深さ(Hg):5.8mm(HgMIN)〜9.5mm(HgMAX
・動力伝達側のバックラッシ(D1):歯ピッチ(Pt)の1.6%
・非動力伝達側のバックラッシ(D2):歯ピッチ(Pt)の5.9%
実施例1の従動プーリ(3)は、本願と出願人が同一の特許文献2の実施例2の従動プーリと同じ構成のものを用いた。従動プーリ(3)のプーリ溝部の数は、25であった。したがって、従動プーリ(3)と駆動プーリ(2)の溝数比(外径比)は、2.2(=55/25)であった。
実施例1の歯付ベルト(4)は、特許文献2の実施例2の歯付ベルトと同じ構成のものを用いた。歯付ベルト(4)の各部の寸法は、以下の通りである。プーリ溝部(20)の溝深さ(Hg)とベルト歯部(10)の歯高さ(Ht)との差は、歯高さ(Ht)の約70%〜約180%であった。なお、特許文献2には、歯元部の曲率半径は記載されていない。
・ベルト幅:15mm
・歯ピッチ:8mm
・歯高さ(Ht):3.4mm
・ベルト周長(ピッチライン上の長さ):1200mm
・歯数:150
・歯元部(10c)の曲率半径:0.7mm
[実施例2]
実施例2の自転車用歯付ベルト駆動装置は、図8および図9に示す第2実施形態の自転車用歯付ベルト駆動装置とほぼ同じ構成とした。
実施例2の駆動プーリ(102)は、上述の第2実施形態の変更例と同じく、円筒状のピン部(123)と円柱状の支持軸(124)との間にブッシュ(滑り軸受)が装着されており、このブッシュ(滑り軸受)を介してピン部123が支持軸(124)に回転可能に支持された構成とした。この構成以外、実施例2の駆動プーリ(102)は、実施例1の駆動プーリ(2)と同じ構成である。ブッシュは、円筒状であって、その筒軸方向の長さは、プーリ溝部(20)の幅(即ち、内フランジ部(131)と外フランジ部(140)との間の距離)とほぼ同じとした。
ピン部(123)の材質は、実施例1と同じく、ステンレス鋼(SUS303)とした。支持軸(124)の材質は、ピン部(123)の材質と同じとした。ブッシュは、摩擦低減剤としてオイルが添加されたポリアセタール樹脂組成物で形成されている。ベース部(121)およびカバー部(122)の材質は、実施例1と同じく、亜鉛メッキ処理が施された炭素鋼(S25C)とした。
駆動プーリ(102)の実施例1と異なる構成の各部の寸法は、以下の通りである。
・ピン部(123):外径3mm、内径2.4mm
・支持軸(124)の径:2mm
・ブッシュ:厚さ0.2mm、内径2mm、外径2.4mm
・挿入孔(131a、140a)の径:2mm
実施例2の従動プーリ(3)および歯付ベルト(4)は、実施例1と同じである。また、従動プーリ(3)と駆動プーリ(102)の溝数比(外径比)は、実施例1と同じである。
[実施例3]
実施例3の自転車用歯付ベルト駆動装置は、駆動プーリのピン部の径および挿入孔の径以外、実施例1と同じ構成とした。
駆動プーリ(2)のピン部(23)の径は、歯付ベルトとの噛み合い性およびピン部の強度(せん断強度)を正常に維持し得る最小寸法、即ち、歯付ベルトの歯元部の曲率半径(0.7mm)の2倍の寸法とした。挿入孔(31a、40a)の径は、ピン部(23)の径と同じく、1.4mmとした。動力伝達側のバックラッシ(D1)は、歯ピッチ(Pt)の0.6%であった。非動力伝達側のバックラッシ(D2)は、歯ピッチ(Pt)の20.0%であり、非動力伝達側のバックラッシ(D2)の許容範囲(歯ピッチPtの2%以上20%以下)の上限値に相当する。
[比較例1]
比較例1の自転車用歯付ベルト駆動装置は、駆動プーリが、特許文献2の実施例2の駆動プーリとほぼ同じであって、その他の構成は、本発明の実施例1と同じとした。比較例1の駆動プーリのプーリ溝部は、ベルト歯部と略相似形である。
比較例1の駆動プーリの材質は、亜鉛メッキ処理が施された炭素鋼(S25C)とした。この点以外は、比較例1の駆動プーリは、特許文献2の実施例2の駆動プーリと同じとした。駆動プーリの各部の寸法は以下の通りである。
・プーリ溝部の数:55(実施例1と同じ)
・プーリ溝部の溝深さ:3.45mm
・動力伝達側のバックラッシ:歯ピッチの0.3%
・非動力伝達側のバックラッシ:歯ピッチの4.5%
なお、比較例1における駆動プーリのバックラッシの定義は、実施例1〜3における駆動プーリのバックラッシの定義とは異なる。比較例1において、動力伝達側のバックラッシとは、駆動状態において、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面との第1基準円周上の間隔である。この第1基準円周の定義は、上述の実施形態で述べた第1基準円周の定義と同じである。また、比較例1において、非動力伝達側のバックラッシとは、駆動状態において、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部のべルト走行方向側の面との最短距離の最大値である。
上述の実施例1〜3および比較例1の自転車用歯付ベルト駆動装置について、異物(水と砂の混合物)が付着する状態と、異物(水・砂)の無い状態とで、それぞれ、発音性試験を実施して、駆動プーリの噛み合い一次の周波数成分の音圧を測定して静音性を比較評価すると共に、駆動プーリの噛み合い性および砂噛みの程度を評価した。なお、噛み合い一次の周波数とは、単位時間当たりのプーリ溝部とベルト歯部の噛み合い回数に対応する。
歯付ベルトは、事前に、2軸走行試験機によって予備走行させた。予備走行中に、プーリ間において歯付ベルトの上下動が目視で認められないことが確認された歯付ベルトを、当試験に使用した。
(1)異物(水・砂)が無い状態の発音性評価試験
ベルト張力が300Nになるように駆動プーリと従動プーリの軸間距離を調整した後、負荷トルク10Nmを従動プーリの回転軸に掛けた状態で、駆動プーリを回転させて、歯付ベルトを走行させた。試験中の雰囲気温度は、室温(25±3℃)とした。駆動プーリの回転速度は、一般の自転車(実用車)に乗る人がペダルを回す速さ(1分間のクランク回転数)のおおよその目安である50〜60rpmに略一致する60rpmとした。駆動プーリの回転方向は、図13に示す矢印方向(反時計周り)とした。なお、図13中の符号は、便宜上、上述の第1実施形態と同じ符号を用いており、符号2は、駆動プーリ、符号3は、従動プーリ、符号4は、歯付ベルトを表す。
図13に示すように、歯付ベルトの駆動プーリに巻き付き始める位置の近傍に、騒音計Xを配置した。負荷トルクが所定の数値(10Nm)で安定した後、騒音計Xで、噛み合い一次の周波数成分のA特性音圧レベル[dBA]を測定した。A特性音圧レベルとは、A特性による補正を施して測定された音圧レベルである。A特性とは、騒音計による測定に使われる、人間の聴覚を考慮した周波数重み付け特性であって、JIS C 1502−1990「普通騒音計」に定められている。駆動プーリの回転開始から1時間後、駆動プーリの回転を停止させて、試験を終了させた。駆動プーリの噛み合い性は、試験終了直前に、プーリ間(詳細には駆動プーリに巻き付く手前の部分)における歯付ベルトの上下動の度合いを目視で観察することにより評価した。
(2)異物(水・砂)が有る状態の発音性評価試験
異物が無い状態での発音性試験と同様に、ベルト張力が300Nになるように軸間距離を調整した。次に、歯付ベルトの駆動プーリから離れた直後の位置から、従動プーリに巻き付く手前の位置までの内周面全体(図13に示すAの範囲)に、水と砂を1:1の容積比で混合した混合物(異物)を、歯元部が見えなくなる程度まで堆積させた。その後、負荷トルク10Nmを従動プーリの回転軸に掛けた状態で、駆動プーリを60rpmで回転させて、歯付ベルトを走行させた。砂は、珪砂6号(粒径0.2〜0.4mm)を用いた。
噛み合い一次の音圧の測定は、異物が無い状態での発音性試験と同じ要領で行った。駆動プーリの回転開始から1時間後、駆動プーリの回転を停止させた。次に、その状態のまま、24時間休止時間(異物の乾燥時間に相当)を設けてから、再度、駆動プーリを同じ速度で回転させて、ベルト走行を1時間繰り返した後、駆動プーリの回転を停止させて、試験を終了させた。駆動プーリの噛み合い性は、試験終了直前に、プーリ間(詳細には駆動プーリに巻き付く手前の部分)における歯付ベルトの上下動の度合いを目視で観察することにより評価した。また、試験終了後、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部との噛み合い部分の、砂噛みの程度を目視で観察した。
音圧レベルの測定結果を、比較例1の異物(水・砂)無しの場合の測定結果を100(基準値)として、指数化した。その結果を表1に示す。また、この基準値の評価を△とし、基準値よりも音圧レベルが低い場合(即ち、静音性に優れる)場合には、評価○とした。音圧レベルが最も低い(最も静音性に優れる)ものは、評価○ではなく、評価◎とした。また、基準値よりも音圧レベルが高い(即ち、静音性に劣る)場合には、評価×とした。この評価結果も表1に示した。
噛み合い性の評価は、上述したように、プーリ間における歯付ベルトの上下動の大きさを目視で確認することで行った。上下動が認められず、噛み合い伝動が優れている場合には、評価◎とした。上下動が微かであって、噛み合い伝動が良好である場合には、評価○とした。上下動が明らかにあるものの小さく、噛み合い伝動が許容範囲内である場合には、評価△とした。上下動が大きく、噛み合い伝動が困難な場合には、評価×とした。この評価結果も表1に示した。
砂噛みの程度の評価は、上述したように、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部との噛み合い部分を目視で確認することで行った。砂噛みが無く、砂の固着も無い場合には、評価○とした。顕著な砂噛みは認められないが、砂の固着がある場合には、評価△とした。また、顕著な砂噛みが有る場合には、評価×とした。この評価結果も表1に示した。
Figure 2017048924
試験の結果、実施例1〜3では、駆動プーリにおいて、異物がプーリ溝部に入った場合でも、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部との円滑な噛み合いを実現できることがわかった。
駆動プーリにおいて、駆動状態でプーリ溝部とベルト歯部とが円滑に噛み合う構成とし(接触面圧の増加を最小限に抑えつつ)、噛み合うときのプーリ溝部とベルト歯部との接触面積が小さい実施例1は、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部とが略相似形であって、噛み合いが面接触で、接触面積が大きい比較例1と比べて、摩擦による発音そのものを低減できることが確認できた。
駆動プーリのピン部が回転できる実施例2は、ピン部が回転不能な実施例1と比べて、ベルト歯部とピン部との接触部分の摩擦が実質的に無くなることで、ベルト歯部とピン部とが直接接触することによる摩擦音を低減できるとともに、異物が有る状態での噛み合いがよりスムーズになることが確認できた。
駆動プーリにおいて、ベルト歯部の先端がプーリ溝部の溝底面に接触せず、かつ、溝底面のピン部側の空間の少なくとも一部が外部に開放されている実施例1〜3では、異物がプーリ溝部に入った場合でも、異物の外部への排出がスムーズに行われるため、駆動プーリのプーリ溝部とベルト歯部とが略相似形である比較例1に比べて、プーリ溝部とベルト歯部との間に入り込んだ異物の固着を抑制できることがわかった。この構成によっても、上記摩擦音のみならず破裂音や叩き音が抑制され、上記発音の抑制に寄与できたと考えられる。
1 自転車用歯付ベルト駆動装置
2、102、302、402 駆動プーリ
3 従動プーリ
4 歯付ベルト
10 ベルト歯部
20 プーリ溝部
30a、330a 溝底面
23、123 ピン部
124 支持軸
Cr 駆動プーリの回転中心
d1、d2 最小隙間
D1、D3 駆動プーリの動力伝達側のバックラッシ
D2、D4 駆動プーリの非動力伝達側のバックラッシ
Ht 歯高さ
Hg 溝深さ
L1 第1基準円周
L2、L3 第2基準円周
Pt 歯ピッチ

Claims (6)

  1. ベルト長手方向に沿って抗張体が埋設されたゴム状弾性体で形成され、ベルト長手方向に所定の歯ピッチで配置され、ベルト長手方向の両側面が平坦状または外側に膨らんだ湾曲状に形成された複数のベルト歯部を有する歯付ベルトと、
    前記複数のベルト歯部とそれぞれ噛み合う複数のプーリ溝部が外周部に形成され、前記歯付ベルトを走行させる駆動プーリと、を備える自転車用歯付ベルト駆動装置であって、
    前記駆動プーリの前記プーリ溝部は、
    前記駆動プーリの回転中心を中心とした円周に沿って隙間を空けて配置され、互いに対向する面が外側に膨らんだ湾曲状に形成されており、前記隙間に前記ベルト歯部が係合される2つのピン部と、
    前記2つのピン部よりも前記駆動プーリの前記回転中心に近い位置に前記回転中心を取り囲むように配置されて、前記ベルト歯部と接触しない溝底面の一部とによって形成されており、
    前記2つのピン部の前記駆動プーリの前記回転中心から最も離れた位置を通る円周と、前記溝底面との間の空間の少なくとも一部が、前記駆動プーリの前記回転中心方向の少なくとも一方向に開放されており、
    前記2つのピン部の前記駆動プーリの前記回転中心から最も離れた位置を通る円周の半径から前記ベルト歯部の歯高さの半分の値を差し引いた長さを半径として、前記駆動プーリの前記回転中心を中心とする円周を、第1基準円周とし、
    前記駆動プーリの前記回転中心を中心として、前記2つのピン部の最小隙間を通る円周を、第2基準円周とすると、
    駆動状態において、前記ピン部と、前記ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面との接触部分が、前記第1基準円周から前記ベルト歯部の歯元側の範囲内であって、
    駆動状態において、前記ピン部と、前記ベルト歯部のベルト走行方向と反対側の面との前記第2基準円周上の間隔が、前記ベルト歯部の歯ピッチの0%以上2%以下であって、
    駆動状態において、前記ピン部と、前記ベルト歯部のべルト走行方向側の面との前記第2基準円周上の間隔が、前記ベルト歯部の歯ピッチの2%以上20%以下であることを特徴とする自転車用歯付ベルト駆動装置。
  2. 前記ピン部は、前記駆動プーリの前記回転中心と平行に延びる円柱状または円筒状に形成され、前記円柱状または前記円筒状の中心軸回りに回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の自転車用歯付ベルト駆動装置。
  3. 前記ピン部は、前記駆動プーリの前記回転中心と平行に延びる円筒状に形成されており、
    前記駆動プーリは、
    前記ピン部の内側に挿通されており、前記ピン部を回転可能に支持する支持軸を有することを特徴とする請求項2に記載の自転車用歯付ベルト駆動装置。
  4. 前記駆動プーリは、前記駆動プーリの前記回転中心方向の少なくとも一方向に前記自転車用歯付ベルト駆動装置を見たときに、前記溝底面の視線方向の手前側の端部の少なくとも一部が外部に露出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自転車用歯付ベルト駆動装置。
  5. 前記駆動プーリの前記溝底面の少なくとも一部は、前記駆動プーリの前記回転中心方向の前記少なくとも一方向に前記自転車用歯付ベルト駆動装置を見たときに、視線方向の手前側の端部から視線方向の奥側に向かうにつれて、前記駆動プーリの前記回転中心から離れるように、前記回転中心に対して傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の自転車用歯付ベルト駆動装置。
  6. 前記駆動プーリの前記プーリ溝部の溝深さが、前記ベルト歯部の歯高さよりも大きく、その差が前記ベルト歯部の歯高さの5%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自転車用歯付ベルト駆動装置。
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