以下、図1〜図14を用いて、実施形態に係るモーター制御装置1を含む画像形成装置を説明する。画像形成装置として、プリンター100を例に挙げて説明する。但し、各実施の形態に記載される構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず単なる説明例にすぎない。
(画像形成装置の概略構成)
まず、図1、図2を用い、実施形態に係るプリンター100を説明する。図1、図2は、実施形態に係るプリンター100の一例を示す図である。
図1に示すように、実施形態に係るプリンター100は、主制御部2とエンジン制御部3を含む。また、図2に示すように、本実施形態のプリンター100には、右側面に操作パネル4が取り付けられる。また、図1、図2に示すように、プリンター100は、印刷部5を含む。印刷部5には、給紙部5a、第1搬送部5b、画像形成部5c、定着部5d、第2搬送部5eが含まれる。
主制御部2は、装置の各部を制御する。主制御部2は、CPU21や、画像処理部22や、その他の電子回路や素子を含む。又、主制御部2は、記憶部23と接続される。CPU21は、記憶部23に記憶された制御用のプログラムやデータに基づき、演算やプリンター100の各部の制御のような処理を行う。記憶部23は、ROM、フラッシュROM、HDDのような不揮発性の記憶装置と、RAMのような揮発性の記憶装置を含む。記憶部23は、プリンター100の制御用プログラムのほか、制御用データを記憶する。
又、主制御部2は、印刷部5を実際に制御するエンジン制御部3と通信可能に接続される。エンジン制御部3は、CPUやICやメモリーなどを含む基板である。主制御部2は、印刷枚数や印刷に用いる用紙のサイズなどのような印刷ジョブの内容を含む印刷実行指示をエンジン制御部3に与える。エンジン制御部3は、主制御部2からの印刷実行指示に基づき、給紙部5a、第1搬送部5b、画像形成部5c、定着部5d、第2搬送部5eの動作を実際に制御する。
エンジン制御部3は、給紙や用紙搬送のために回転させるモーターを制御する制御回路としても機能する。エンジン制御部3は、用紙搬送の他、適切に印刷が行われるように、トナー像形成、転写、定着などを制御する。
プリンター100の内部下方に、給紙部5aが配される(図2参照)。給紙部5aは、複数のカセット51を含む。図2では、上方のものに51a、下方のものに51bと符号を付している。各カセット51に給紙ローラー52が設けられる。図2では、上方のものに52a、下方のものに52bと符号を付している。印刷ジョブのとき、エンジン制御部3は、何れか一方の給紙ローラー52を回転させ、第1搬送部5bに用紙を送り出す。
そして、エンジン制御部3は、給紙部5aから送り出された用紙を画像形成部5cに向けて第1搬送部5bに搬送させる。第1搬送部5bには、搬送ローラー対53、54とレジストローラー対55が設けられる。レジストローラー対55は、搬送ローラー対53、54により搬送されてくる用紙を画像形成部5cの手前で待機させ、トナー像の転写タイミングにあわせて用紙を画像形成部5cに向けて送り出す。
エンジン制御部3は、形成すべき画像の画像データに基づき、トナー像を画像形成部5cに形成させる。エンジン制御部3は、用紙に転写されたトナー像の加熱・加圧を定着部5dに行わせる。その結果、トナー像は用紙に定着する。定着後の用紙は、定着部5dの上方に設けられた第2搬送部5eに向かう。また、エンジン制御部3は、排出トレイ5fに向けて、定着部5dから排出された用紙を第2搬送部5eの排出用ローラー対56、57、58、59に搬送させる。その結果、印刷済の用紙は排出トレイ5fに排出される。
又、主制御部2は、操作パネル4と通信可能に接続される。そして、主制御部2は、操作パネル4の表示を制御する。又、主制御部2は、操作パネル4でなされた設定内容を認識する。
又、主制御部2には、通信部24が接続される。通信部24は、PCやサーバーのようなコンピューター200とネットワークやケーブルを介して通信を行う。通信部24は、コンピューター200からページ記述言語で書かれたデータや、画像データや、印刷設定データを含む印刷用データを受信する。主制御部2は印刷用データに基づき、画像処理部22に画像データを処理させる。主制御部2は、画像処理後の画像データに基づき、エンジン制御部3、印刷部5に印刷させる。
(モーター制御装置1)
次に、図3を用いて、実施形態に係るモーター制御装置1を説明する。図3は、実施形態に係るモーター制御装置1の一例を示す図である。
実施形態に係るモーター制御装置1は、エンジン制御部3、パルス信号生成部30、ドライバーIC66(ドライバー回路に相当)、ステッピングモーター7を含む。
図3に示すように、本実施形態のプリンター100は、給紙のような用紙搬送や、機内での用紙を搬送するための回転体を回転させるステッピングモーター7を含む。本実施形態のプリンター100では、ステッピングモーター7は、給紙部5aや第1搬送部5bや第2搬送部5eに設けられる(別の場所に設けられてもよい)。給紙部5aのステッピングモーター7は、給紙ローラー52を回転させる。第1搬送部5bのステッピングモーター7は、搬送ローラー対53、54を回転させる(レジストローラー対55を回転させてもよい)。第2搬送部5eのステッピングモーター7は、排出用ローラー対56、57、58、59を回転させる。なお、モーター制御装置1に含まれるステッピングモーター7は、1つでもよい。
エンジン制御部3は、各ドライバーIC6に供給するクロック信号のようなパルス信号psを生成するパルス信号生成部30を含む。言い換えると、パルス信号生成部30は、ステッピングモーター7を回転させるためのパルス信号psを生成、供給する。なお、パルス信号生成部30は、各ドライバーIC6内に設けてもよい。
パルス信号生成部30は、生成するパルス信号psの周波数を変化させ得る。ステッピングモーター7を加速するとき、パルス信号生成部30は、生成するパルス信号psの周波数を次第に高くする。ステッピングモーター7を一定速度で回転させるとき、パルス信号生成部30は、生成するパルス信号psの周波数を維持する。ステッピングモーター7を減速するとき、パルス信号生成部30は、生成するパルス信号psの周波数を次第に低くする。
1つのステッピングモーター7に対し、1つのドライバーIC6が設けられる。ドライバーIC6は、複数の励磁方式に対応する。また、ドライバーIC6は、2相励磁方式、1−2相励磁方式、W1−2相方式、2W1−2相方式のような複数の励磁方式でステッピングモーター7を回転させることができる。ドライバーIC6は、エンジン制御部3に指示された励磁方式でステッピングモーター7内のコイル91を励磁する。
各ドライバーIC6は、ステッピングモーター7の回転、停止、回転速度を制御する。各ドライバーIC6は、指示された励磁方式で、ステッピングモーター7を回転させる。ドライバーIC6は、パルス信号psが入力されるごとに、励磁するステッピングモーター7の相(コイル91)を切り替えたり、各コイル91に流す電流量を変化させる。言い換えると、各ドライバーIC6は、1パルスごとにコイル91の励磁状態を切り替える。そのため、ドライバーIC6は、コイル91への電流のON/OFFだけでなく、コイル91に流す電流の大きさを調整する機能も有する。これにより、ドライバーIC6は、パルス信号psが入力されるごとに、ステッピングモーター7のローター8を一定角度ずつ回転させる。
(ステッピングモーター7)
図4、図5に基づき、実施形態に係るステッピングモーター7の一例を説明する。図4は、実施形態に係るステッピングモーター7の構造の一例を示す図である。図5は、励磁する相の変化の一例を示す図である。
図4のうち、中央の円型の図は、ローター8を示す。永久磁石のような磁極数が2つのローター8を用いることができる。実施形態に係るステッピングモーター7として、A相、B相、/A相、/B相を有する、2相式のものを用いることができる。ローター8の周囲に、A相、B相、/A相、/B相の各コイル91が配される。各コイル91はステータ9に含まれる。
図5は、2相励磁方式での各ステップでの各コイル91への電圧印加(電流供給)のパターンを示す。2相励磁方式は、常時、2つの相に電流を流す方式である。そして、2相式のステッピングモーター7では、2相励磁方式でローター8を回転させるとき、4ステップ(4パルス)でローター8が1周する。つまり、界磁位置(位相、磁力が最も大きい位置、電気角)は、1パルスにつき、90度移動する。
ここで、本実施形態のモーター制御装置1では、コイル91の励磁状態(位相、界磁位置、電気角)について、A相に電流を100%流し、B相の電流が0%のときの位置を0度と定義する。そして、A相→B相方向を正方向、B相→A相方向を逆方向と定義する。
また、ローター8の角度については、A相に電流を100%流し、B相の電流が0%のとき、A相のコイル91(電磁石)の極性と、ローター8の磁極のうち逆極性の磁極がA相のコイル91と相対している(角度差がゼロである)ときのローター8の角度を0度と定義する。例えば、A相に電流を100%流し、かつ、A相のコイル91のうちローター8側がN極であるとき、ローター8の磁極のうち、S極がA相のコイル91に正対しているときのローター8の回転角度を0度とする。以下の説明での「ローター8の磁極」は、励磁しているコイル91のうち、ローター8側に現れる極性と逆極性(コイル91の磁界にすいよせられる方)の磁極である。
各ドライバーIC6は、第1ステップ(初期ステップ)のとき、A相とB相に電流を流す。この第1ステップのコイル91の励磁状態は、45度となる。言い換えると、ローター8の回転角度の45度に対応する。ドライバーIC6は、第2ステップのとき、B相と/A相に電流を流す。この第1ステップのコイル91の励磁状態は、135度となる。ドライバーIC6は、第3ステップのとき、/A相と/B相に電流を流す。この第3ステップのコイル91の励磁状態は、225度となる。ドライバーIC6は、第4ステップのとき、/B相とA相に電流を流す。この第4ステップのコイル91の励磁状態は、315度となる。第4ステップの次のステップの励磁状態は、第1ステップと同じとなる。このように、2相式のステッピングモーター7の2相励磁方式では、4ステップでパターンが一巡する。
(相合わせ)
次に、図6〜図10を用いて、実施形態に係るモーター制御装置1での相合わせを説明する。図6は、ローター8とステータ9の相が合っている状態の一例を示す。図7は、ローター8とステータ9の相が合っていない状態の一例を示す。図8は、実施形態に係るモーター制御装置1での相合わせ処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9〜図11は、実施形態に係るモーター制御装置1での相合わせを説明するための図である。
以下では、2相式のステッピングモーター7を用い、2相励磁方式でステッピングモーター7を回転させる場合を説明する。また、第1搬送部5bのステッピングモーター7とドライバーIC6を対象として説明する。なお、以下の説明は、給紙部5aや第2搬送部5eに設けられたステッピングモーター7と対応するドライバーIC6にも同様に適用できる。
コイル91の励磁状態に対応するローター8の角度(位置、ステータ9の位相、コイル91からの磁力が最も大きくなる位置、界磁位置)をローター8の回転方向に移動させる(界磁を移動させる)ことにより、ローター8が回転する。そのため、図6に示すように、コイル91の励磁状態に対応するローター8の角度とローター8の実際の角度(磁極の位置)を合わせる必要がある。
図6では、A相、B相を励磁した状態を示している。図5の第1ステップに対応している。コイル91の励磁状態に対応するローター8の角度は、45度である。言い換えると、ローター8の角度(機械角)が45度ときのステータ9の励磁状態を示す。以下の図では、コイル91(ステータ9)の励磁状態に対応するローター8の角度を黒丸印で示す。また、以下の図では、ローター8の角度を実線矢印で示す。そして、図6は、ローター8の角度(磁極の位置)も45度であることを示している。つまり、図6は、励磁状態に対応するローター8の角度とローター8の実際の角度が一致していることを示している。
脱調を防ぐため、図6に示すように、相があった状態からステッピングモーター7の回転を開始することが望ましい。そして、ステッピングモーター7の回転開始後(印刷中)、励磁状態に対応するローター8の角度とローター8の実際の角度のズレが大きくなりすぎると脱調状態となる。
プリンター100の主電源のOFFや、省電力モードへの移行があったとき、パルス信号生成部30、ドライバーIC6、ステッピングモーター7への電力供給が停止される。そして、主電源ONや省電力モードの解除によって、ドライバーIC6やステッピングモーター7への電力供給が開始されると、ドライバーIC6はリセットされる。そして、電力供給開始後、ステータ9の各コイル91のうち、ドライバーIC6が励磁するコイル91は、予め定められる。本実施形態のモーター制御装置1では、電力供給開始後、ドライバーIC6が励磁するコイル91は、A相とB相であると定められている。言い換えると、初期状態(初期状態)の界磁位置は、45度である。
ステッピングモーター7の回転停止時、機械角45度の位置でローター8が停止するとは限らない。ドライバーIC6やステッピングモーター7への電力供給が停止されると、ローター8を保持する力は弱くなり、振動などによって、ローター8が回転することがある。また、用紙のジャムが生じたときの用紙の除去によって搬送用の回転体が回転して、ローター8の角度が動くことがある。
これらのような理由により、図7に示すように、コイル91の励磁状態に対応するローター8の角度と、ローター8の実際の角度がずれることがある。このようなずれた状態からステッピングモーター7の回転を開始してもローター8が回転しないことがある(起動時脱調)。図7では、コイル91の励磁状態に対応するローター8の角度が45度であるのに、ローター8の実際の角度が135度(実線で図示)、225度(破線で図示)、315度(2点鎖線で図示)というようにずれている状態を示している。
そこで、本実施形態のモーター制御装置1のドライバーIC6、パルス信号生成部30は、ステッピングモーター7の回転を開始する前に相合わせを行う。そこで、図8のフローチャートと図9〜図11を用い、実施形態に係るモーター制御装置1での相合わせの流れの一例を説明する。なお、以下の説明では、2相励磁で相合わせを行う例を説明する。
図8のスタートは、相合わせ実行条件が満たされたことにより、相合わせを開始する時点である。主電源の投入や省電力モードの解除によって、エンジン制御部3(パルス信号生成部30)、各ドライバーIC6、各ステッピングモーター7への電力供給が開始されたことを相合わせ実行条件としてもよい。また、コンピューター200から印刷用データを受信したこと(印刷指示を受けたこと)を相合わせ実行条件としてもよい。この場合、相合わせは、印刷ジョブのための予備動作として行われる。
相合わせ開始時、エンジン制御部3は、相合わせの開始に関する信号をドライバーIC6に入力する(ステップ♯1)。エンジン制御部3は、相合わせの開始を指示する信号をドライバーIC6に送信してもよい。また、エンジン制御部3は、複数種の励磁方式のうちローター8の1回転のステップ数が最も少ない励磁方式(本実施形態では2相励磁)を用いる旨の信号をドライバーIC6に送信してもよい。また、エンジン制御部3は、初期状態での励磁を行う旨の信号をドライバーIC6に送信してもよい。
相合わせの開始に関する信号の受信に伴い、ドライバーIC6は、複数種あるステッピングモーター7の励磁方式のうち、ローター8の1回転のステップ数が最も少ない励磁方式を適用する(ステップ♯2)。相合わせのとき、ドライバーIC6は、励磁モードとして2相励磁方式を適用する。
続いて、ドライバーIC6は、初期状態(45度)での励磁を行う(ステップ♯3)。具体的に、本実施形態のドライバーIC6は、ステータ9のコイル91のうち、A相とB相に電流を流す。これにより、ローター8の磁極を引き寄せる。ローター8の磁極を引き寄せるため、ドライバーIC6は、初期状態の励磁を予め定められたひきよせ時間、継続する(ステップ♯4)。ひきよせ時間は、ローター8が90度移動するのに必要な時間であり、適宜定めることができる。
図9を用いて、このステップ♯3の状態を説明する。図9は、相合わせのため、ドライバーIC6がA相とB相に同じ大きさの電流を流した状態(初期状態)を示している。この状態は、図5での第1ステップに対応する。この励磁状態に対応するローター8の角度は45度である(図9では、45度の位置に黒丸を図示)。
そして、励磁を行うことにより、ローター8の磁極をひきよせることができる範囲内にローター8の磁極が存在しているとき、励磁の角度(電気角、界磁位置)とローター8の実際の角度(機械角)を一致させることができる。つまり、相を合わせることができる。
本実施形態のモーター制御装置1では、励磁状態に対応するローター8の角度(電気角、界磁位置)を中心(基準)として、正回転方向で90度と逆回転方向で90度の範囲(計180度の範囲)で、ローター8の磁極をひきよせることができる。言い換えると、ドライバーIC6は、励磁状態に対応するローター8の角度を中心として、正回転方向で90度と逆回転方向で90度の範囲で磁極をひきよせることができる大きさの電流を各コイル91に流す。
なお、ローター8を引き寄せることができる角度(励磁状態に対応するローター8の角度を0度として、磁極をひきよせることができる正回転側の角度と、逆回転側の角度のそれぞれの絶対値)を以下の説明では、「移動角」と称する。
ここで、本実施形態のモーター制御装置1では、相合わせのとき、ドライバーIC6は、移動角θ1が、現在の励磁モードでの1パルス当たりのローター8の回転角度以上となる大きさの電流を各コイル91に流す。2相励磁方式では、4ステップでローター8が1周するので、1パルスあたりのローター8の回転角度は90度となる。ドライバーIC6は、移動角θ1が90度、又は、90度以上となるようにコイル91に電流を流す(例えば、1−2相励磁であれば45度以上、W1−2相であれば22.5度以上)。なお、予め実験をしておくことにより移動角θ1が90度となる電流値を把握することができる。相合わせのとき、ドライバーIC6は、その把握した値、または、それ以上の電流を、各コイル91に流す。
図9〜図11は、移動角θ1が90度である場合の例を示している。そして、図9において、相合わせ開始時の励磁(初期状態の励磁)によって、ローター8の磁極を引き寄せることにより相合わせ可能な範囲を網掛けで図示している。図9では、45度を中心として、315度(45度−90度)〜135(45度+90度)の範囲が相合わせ可能な範囲となる。
2相励磁方式で移動角θ1が90度のとき、図9に示すように、135度を超え、315度未満の範囲にローター8の磁極が位置している場合、相合わせすることはできない。
そこで、パルス信号生成部30は、A相とB相(初期状態)への励磁の後、所定時間が経過すると(ステップ♯4の後)、1パルスをドライバーIC6に入力する(ステップ♯5)。これにより、ドライバーIC6は、次のステップに励磁状態を切り替える(ステップ♯6)。そして、ローター8の磁極を引き寄せるため、ドライバーIC6は、この励磁状態をひきよせ時間、継続する(ステップ♯7)。その結果、ドライバーIC6は、A相のコイル91への電流供給を停止し、B相と/A相のコイル91に電流を流す。励磁状態に対応するローター8の角度は、135度(45度+90度)となる。
図10を用いて、このステップ♯6の状態を説明する。図10は、相合わせのため、ドライバーIC6がB相と/A相に同じ大きさであって、移動角θ1が90度となる電流を流している状態を示している。この状態は、図5での第2ステップに対応する。この励磁状態に対応するローター8の角度(界磁位置)は135度であるので、図10では、135度の位置に黒丸を図示している。
135度の位置で励磁を行うことにより、移動角θ1の範囲内にローター8の磁極が存在していれば、ローター8の磁極をひきよせることができる。具体的に、ローター8の磁極が、45度(135度−90度)〜225度(135度+90度)の範囲内にローター8の磁極が存在していれば、励磁の位相(電気角)とローター8の角度(機械角)を合わせることができる。
また、図10では、相合わせの開始から1パルス入力後までの相合わせ可能な合計範囲を網掛けで図示している。1パルスによって、界磁位置は90度移動する。そのため、図10に示すように、相合わせの開始から現時点まで、315度(45度−90度)〜225度(135度+90度)の範囲が、相合わせ可能な範囲となる。
しかし、2相励磁方式で移動角θ1が90度のとき、図10に示すように、225度を超え、315度未満の範囲にローター8の磁極が位置している場合、1パルス入力後でも相合わせすることはできない。
そこで、エンジン制御部3は、今までのパルスの入力により、360度の全範囲が相合わせ可能な範囲となったか否かを確認する(ステップ♯8)。2相励磁方式で移動角θ1が90度のとき、1パルス入力後の状態では、ステップ♯8はNoとなる。ステップ♯8でNoのとき、フローは、ステップ♯5に戻る。
2相励磁方式で移動角θ1が90度のとき、フローがステップ♯5に戻ることにより、2パルス目がドライバーIC6に入力された状態を、図11に示す。図11は、相合わせのため、ドライバーIC6が/A相と/B相に同じ大きさであって、移動角θ1が90度となる電流を流している状態を示している。この状態は、図5での第3ステップに対応する。この励磁状態に対応するローター8の角度は225度であるので、図10では、225度の位置に黒丸を図示している。
225度の位置で励磁を行うことにより、移動角θ1の範囲内にローター8の磁極が存在していれば、ローター8の磁極をひきよせることができる。具体的に、135度(225度−90度)〜315度(225度+90度)の範囲内にローター8の磁極が存在していれば、励磁の位相(電気角)とローター8の角度(機械角)を合わせることができる。
また、相合わせの開始から現時点までの相合わせ可能な合計範囲を網掛けで図示している。1パルスによって、界磁は90度移動する。そのため、図11に示すように、2相励磁方式で移動角θ1が90度のとき、相合わせの開始から2パルスで、ローター8の角度が何度であっても、相合わせすることができる。そのため、図11では、360度全範囲に網掛けが施されている。
2相励磁方式で移動角θ1が90度のとき、ループによりステップ♯8に到ったのが2回目のとき、エンジン制御部3は、ステップ♯8をYesと判断する。ステップ♯8がYesのとき、相合わせは完了しているので、本フローは終了する(エンド)。ステッピングモーター7の回転を開始するとき、ステップ♯8がYesとなった角度(位相)から加速を開始する。これにより、界磁を1周させることなく相合わせを完了させることができる。
(変形例1)
次に、図12、図13を用いて、変形例を説明する。図12、図13は、変形例1に係るモーター制御装置1での相合わせを説明するための図である。
上記の例では、励磁状態に対応するローター8の角度を0度として、磁極をひきよせることができる角度範囲を±90度(移動角θ1)として説明した。しかし、ドライバーIC6の電流供給能力や、ステータ9のコイル91の性能により、±90度以上の範囲で磁極をひきよせることができるようにしてもよい。変形例1では、磁極をひきよせることができる範囲を±135度(移動角θ2=135度)として説明する。
変形例1では、相合わせのとき、ドライバーIC6は、移動角が現在の励磁モードでの1パルス当たりのローター8の回転角度以上となる大きさであって、移動角が135度となる電流を各コイル91に流すようにする。図12、図13での「移動角θ2」は、135度である。
図12を用いて、2相励磁方式で移動角θ2が135度であるときの初期状態を説明する。図12は、ドライバーIC6が相合わせのため、移動角θ2が135度となるように、A相とB相に同じ大きさの電流を流した状態(初期状態)を示している。この状態は、図5での第1ステップに対応する。この励磁状態に対応するローター8の角度は45度である(図12では、45度の位置に黒丸を図示)。
45度の位置であって、135度の移動角θ2となるように励磁を行うことにより、移動角θ2の範囲内にローター8の磁極が存在していれば、励磁の位相(電気角)とローター8の角度(機械角)を合わせることができる。具体的に、ローター8の磁極が、270度(45度−135度)〜180度(45+135度)の範囲内にローター8の磁極が存在していれば、相を合わせることができる。
しかし、図12に示すように、2相励磁方式で移動角θ2が135度のとき、180度を超え、270度未満の範囲にローター8の磁極が位置している場合、相合わせすることはできない。
そこで、本実施形態のモーター制御装置1のパルス信号生成部30は、A相とB相への励磁(初期状態の励磁)の後、所定時間が経過すると、1パルスをドライバーIC6に入力する(図8のステップ♯5に対応)。これにより、ドライバーIC6は、次のステップに励磁状態を切り替える(図8のステップ♯6に対応)。
図13を用いて、2相励磁方式で移動角θ2が135度であって、相合わせ開始後、1パルスをドライバーIC6に入力した状態を説明する。図13は、相合わせのため、ドライバーIC6がB相と/A相に同じ大きさであって、移動角θ2が135度となる電流を流している状態を示している。この状態は、図5での第2ステップに対応する。この励磁状態に対応するローター8の角度は135度であるので、図13では、135度の位置に黒丸を図示している。
135度の位置で励磁を行うことにより、移動角θ2の範囲内にローター8の磁極が存在していれば、ローター8の磁極をひきよせることができる。具体的に、ローター8の磁極が、0度(135度−135度)〜270度(135度+135度)の範囲内にローター8の磁極が存在していれば、励磁の位相(電気角)とローター8の角度(機械角)を合わせることができる。
また、図13では、相合わせの開始から現時点までの励磁状態の変化によって、相合わせ可能な合計の角度範囲を網掛けで図示している。1パルスによって、界磁は90度移動する。そのため、図13に示すように、2相励磁方式で移動角θ2が135度のとき、相合わせの開始から1パルスで、ローター8の角度が何度であっても、相合わせすることができる。そのため、図13では、360度全範囲に網掛けが施されている。
(入力パルス数の定め方)
次に、図14を用いて、実施形態に係る入力パルス数の定め方を説明する。図14は、相合わせのときの入力パルス数の一例を示す。
上記の実施形態及び変形例1では、2相励磁方式で相合わせを行う例を説明した。搭載するドライバーIC6により、利用できる励磁方式は異なる。ドライバーIC6によっては、2相励磁方式よりも、ローター8の1周に必要なステップ数が多い励磁方式しか利用できないものもあり得る。
主な励磁方式としては、2相励磁、1−2相励磁、W1−2相励磁、2W1−2相励磁がある。図14の上部の表では、2相式(A相、B相、/A相、/B相)のステッピングモーター7を用いるときの各励磁方式での1パルスあたりのローター8の角度と、ローター8を1回転するのに必要なパルス数を示している。
図11に示すように、移動角が90度の場合、ローター8がどのような角度でも、界磁の位置を初期状態(45度)から225度までに移動させれば、相合わせを行うことができる。
そして、図14の上部の表の右端には、2相式のステッピングモーター7であって、移動角が90度のとき、相合わせの開始から完了までにドライバーIC6に入力すべきパルス信号psの個数を示している。移動角が90度のとき、相合わせの開始から完了までに入力すべきパルス信号psの個数は、励磁方式を問わず、ローター8を1周させる場合に比べ、少なくなる。
例えば、以下のような演算を行うことにより、エンジン制御部3は、相合わせの開始から完了までに入力すべきパルス信号psの個数を求めることができる。そして、相合わせの開始から、求めた個数のパルス信号psを入力したとき、エンジン制御部3(ドライバーIC6)は、ステップ♯8をYesと判定する。
初期状態の角度=α、移動角の絶対値=β、目標角度=γ(相合わせ終了時の界磁の位置)、1パルス当たりの角度δ、入力すべきパルス信号psの個数nとすると、
目標角度γ=(α−β)−(β)=α−2β
個数n=(γ−α)÷δ
(例)2相励磁、初期状態45度、移動角90度の場合
α=45度、β=90度、δ=90度となる。
目標角度γ=α−2β=45−2(90)=225
個数n=(γ−α)÷δ=(225−45)÷90=180÷90=2
従って、例1の条件では、相合わせのとき初期状態の後、パルス信号生成部30は、2パルスを入力する。
(例2)1−2相励磁、初期状態45度、移動角135度の場合
α=45度、β=135度、δ=45度となる。
目標角度γ=α−2β=45−2(135)=135
個数n=(γ−α)÷δ=(135−45)÷45=90÷45=2
従って、例1の条件では、相合わせのとき初期状態の後、パルス信号生成部30は、2パルスを入力する。
(例3)W1−2相励磁、初期状態45度、移動角75度の場合
α=45度、β=75度、δ=22.5度となる。
目標角度γ=α−2β=45−2(75)=255
個数n=(γ−α)÷δ=(255−45)÷22.5=210÷22.5=9.33
パルスは正の整数しかとらない。
ローター8の磁極の位置がどのような位置でも相合わせを行うため、エンジン制御部3は、個数nの値が少数点以下の値を含むとき、求められた値以上で最も小さい正の整数を個数nとする。従って、例3の条件では、相合わせのとき初期状態の後、パルス信号生成部30は、10パルスの入力をする。
このようにして、実施形態に係るモーター制御装置1は、パルス信号psを供給するパルス信号生成部30と、パルス信号psに基づき駆動するステッピングモーター7と、複数種の励磁方式でステッピングモーター7を駆動でき、パルス信号psに応じて電流を流すステータ9のコイル91及び電流量を切り替えてステッピングモーター7のローター8を回転させるドライバー回路(ドライバーIC6)と、を含む。ローター8の実際の角度と、コイル91の励磁状態に対応するローター8の角度とを一致させる相合わせのとき、ドライバー回路は、ローター8を引き寄せることができる角度である移動角が、現在の励磁方式での1パルス当たりのローター8の回転角度以上となる大きさの電流をコイル91に流す。パルス信号生成部30は、ローター8を一回転させるのに必要なパルスよりも少ないパルス信号psをドライバー回路に供給する。
これにより、ローター8を1回転させることなく、ローター8(磁極)の実際の回転角度と、コイル91の励磁状態に対応するローター8の角度(電気角、位相、コイル91からの磁力が最も高くなる位置、界磁位置)を合わせることができる。従って、相合わせに要する時間を短くすることができる。また、入力パルス数を減らすことができるので、相合わせでの騒音や振動の発生量も抑えることができる。
また、ドライバー回路(ドライバーIC6)は、複数種の励磁方式のうち、ローター8の1回転のステップ数が最も少ない励磁方式で相合わせを行う。これにより、複数種の励磁方式のうち、相合わせで入力するパルス数が最少となる励磁方式で相合わせが行われる。従って、相合わせの所要時間を最短化することができる。
また、ステッピングモーター7は、2相式である。相合わせのとき、ドライバー回路(ドライバーIC6)は、励磁方式として2相励磁方式を適用し、移動角が90度となるようにコイル91を励磁する。パルス信号生成部30は、相合わせのとき、2パルスを供給する。
2相式ステッピングモーター7の2相励磁方式での1パルス当たりの回転角度は90度である。そのため、コイル91の励磁状態に対応するローター8の角度(位相、コイル91からの磁力が最も高くなる位置)を中心として、少なくとも左右に90度(計180度)の範囲でローター8を引き寄せることができるので、2パルスを供給すれば、相合わせを完了させることができる。従って、騒音や振動が大きくならないうちに短時間で相合わせを終えることができる。
また、画像形成装置(プリンター100)は、上述の記載のモーター制御装置1を含む。これにより、相合わせに要する時間を短いので、ジョブの開始の指示に応じて直ちにジョブを開始できる(反応速度が速い)画像形成装置を提供することができる。また、ステッピングモーター7からの騒音や振動が少ない画像形成装置を提供することができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲は、これに限定されるものでは、なく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。