JP2017043581A - 神経細胞死抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】神経細胞死の抑制剤を提供することを課題とする。
【解決手段】スダチチンを有効成分とする神経細胞死抑制剤。
【選択図】図1

Description

本発明は、神経細胞死抑制剤に関する。
スダチチンは、スダチの皮に多く含まれるスダチ特有の成分のひとつである。これまでにスダチチンの生理作用として抗肥満作用、抗糖尿病作用などが知られている。
特許文献1には、スダチチンを有効成分とするエネルギー代謝改善剤が記載されている。特許文献2には、スダチチンを有効成分とするメタボリックシンドロームの改善治療剤が記載されている。
特許文献3にはスダチ果汁の搾汁後の果皮にマイクロ波を照射しながら水または有機溶媒で抽出する方法が記載されている。スダチチンは、抗潰瘍剤や消臭剤の成分として有用なノビレチンの前躯体としても利用されている。しかし前記以外の用途には殆ど利用されていないのが現状である。
一方、神経細胞死抑制剤について、近年新たな探索方法が提案され、これを応用した方法によって新たな神経細胞死抑制剤が提案されている。特許文献4にはミトコンドリアを含む懸濁液を用いて、この懸濁液中のカルシウム2価イオンの濃度変化を指標として、神経細胞死を抑制する物質をスクリーニングする方法が記載されている。この方法によりビスインドリル誘導体が神経細胞死抑制剤となりうることが記載されている。
特許文献5にはアミロイドβの凝集体の示す神経細胞死を指標として、これを抑制する物質をスクリーニングする方法が記載されている。このような神経細胞死を抑制する物質として、ゲニスティン、ダムナカンタール、4−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−7−(t−ブチル)ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、又は4−アミノ−5−(4−メチルフェニル)−7−(t−ブチル)ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンが有効であったことが記載されている。そしてこれらの化合物は、アルツハイマー病などの神経細胞死に由来する疾患に効果を有していることが記載されている。
アミロイドβは、神経細胞死の原因として知られており、アミロイドβによる神経細胞死の進行は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ピック病(Pick’s disease)、レビー小体型認知症(Lewy body dementia)、ダウン症候群(Down’s syndrome)、脳アミロイドアンギオパシー(Cerebral amyloid angiopathy)の疾患の主な原因であると考えられている。
その他いくつかの物質が神経細胞死に有効であるとして、神経細胞死抑制剤の提案がなされているが、必ずしも満足できるものではない。
特開2013−173718号公報 特開2013−173719号公報 特開2008−208064号公報 特開2002−247999号公報 特開2001−255318号公報
本発明は、スダチチンを有効活用することを目的とする。
本発明者らは、スダチチンの生理作用を研究する過程で、スダチチンがアミロイド蛋白質の凝集体(アミロイドβオリゴマー、以下、Aβオリゴマーという)による神経細胞死を抑制することを見いだし、本発明をなしたものである。
すなわち、本発明の構成は以下のとおりである。
(1)スダチチンを有効成分とする神経細胞死抑制剤。
(2)スダチチンを有効成分とするアミロイドβオリゴマーによる神経細胞死抑制剤。
(3)スダチチンを有効成分とする酸化ストレスによる神経細胞死抑制剤。
(4)スダチチンを有効成分とする神経細胞死の進行抑制剤。
(5)神経細胞死がアルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ピック病(Pick’s disease)、レビー小体型認知症(Lewy body dementia)、ダウン症候群(Down’s syndrome)、脳アミロイドアンギオパシー(Cerebral amyloid angiopathy)のいずれかに伴って発生するものである(4)に記載の神経細胞死の進行抑制剤。
(6)神経細胞死がパーキンソン病に伴って発生するものである(4)に記載の神経細胞死の進行抑制剤。
本発明により、スダチチンを有効成分とする神経細胞死抑制剤、Aβオリゴマーによる神経細胞死抑制剤、酸化ストレスによる神経細胞死抑制剤、神経細胞死の進行抑制剤が提供される。
また、本発明により、Aβオリゴマーによる神経細胞死が抑制され、その結果、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ピック病(Pick’s disease)、レビー小体型認知症(Lewy body dementia)、ダウン症候群(Down’s syndrome)、脳アミロイドアンギオパシー(Cerebral amyloid angiopathy)の疾患の進行が抑制される。さらに、パーキンソン病の進行が抑制できる。
Aβオリゴマー誘発神経細胞死を、スダチチンが濃度依存的に抑制することを示すグラフである。 Aβオリゴマー誘発神経細胞死を、スダチチンが抑制する効果を比較するグラフである。 6−ヒドロキシドーパミン(6−hydroxydopamine または 6−OHDA)誘発神経細胞死を、スダチチン及びスダチチン類似構造を有する化合物の抑制する効果を示すグラフである。
本願は、スダチチンを有効成分とする神経細胞死抑制剤にかかる発明である。
スダチチンは、下記の化学式(1)に示すように、ノビレチン(2)と同じ母核構造であり、ノビレチンの4’,5,7位のトリデメチル体である。
Figure 2017043581
Figure 2017043581
スダチチンは、ノビレチンの前駆物質である。ノビレチンは香料などの用途に用いられており、認知機能改善、コリン作動性神経変性抑制、アミロイド蓄積抑制、神経栄養因子作用などが知られている。
本発明に用いるスダチチンは、特許第5119397号公報に開示されているように、スダチを、マイクロ波を照射しながら水および有機溶剤のうちのいずれか一方または双方で抽出処理し、スダチチンを含有する抽出液を得るか、または、スダチを、マイクロ波を照射しながらアルコールで抽出処理し、得られる抽出液をヘキサンで抽出処理し、得られる水層をエーテルで抽出処理して、スダチチンを含有する抽出液を得ることができる。そしてこのエーテルを除去することで高純度のスダチチンを得ることができる。
スダチチンは、スダチの果皮に多く含有されており、その他の柑橘類の果皮にも含有されている、安全性の高い物質である。前記の特許第5119397号公報に開示された方法よって生産されたものを利用することができる。
スダチチンを有効成分とする神経細胞死抑制剤にかかる本発明は、スダチチンをそのまま、あるいは慣用の医薬用製剤担体とともに医薬用組成物して動物及びヒトに投与することができる。医薬用組成物の剤形としては特に制限されるものではなく、必要に応じて適宜選択すればよい。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などの経口剤や、注射剤、坐薬などの非経口剤が挙げられる。投与量は、通常成人でスダチチンの重量で1〜1000mgを1日数回に分けて服用するのが適当である。
本発明において錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などの経口剤は、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類などの賦形剤を用いて常法に従って製造される。これらの製剤中のスダチチンの配合量は特に限定されるものでなく適宜設計できる。この種の製剤には本発明の賦活剤の他に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを適宜使用できる。
結合剤としてデンプン、デキストリン、アラビアガム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶性セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールなどが例示できる。崩壊剤としてはデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどを例としてあげることができる。界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどをあげることができる。滑沢剤として、タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールなどを例示できる。流動性促進剤では軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどを例としてあげることができる。
また注射剤などの非経口剤は、成人でスダチチンを一日あたり1〜100mgを静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射などの剤形で投与することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
スダチチンを用いた試験例を挙げて本発明を具体的に説明する。
<試験例1.スダチチンによるAβオリゴマー誘発神経細胞死抑制作用試験>
(1)試験方法
アルツハイマー病における神経細胞死の原因である、Aβオリゴマー添加により誘発される神経細胞死に対するスダチチンの効果について、以下の方法で試験した。
Aβ protein Human 1−42 (ペプチド研)を、250 μMとなるように 1, 1, 1, 3, 3, 3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールに溶解し、20μlずつ分注して遠心濃縮機にて乾固後、‐80℃にて使用前日まで保存した。
ヒト神経芽細胞腫株SH−SY5Y(ATCCより入手)を10% FBS(Sigma)、1% 非必須アミノ酸溶液(Gibco)、1% ペニシリン−ストレプトマイシンを含むDMEM−F12培地(Gibco)で7.5×105cells/mlの濃度になるように懸濁し、96ウエルプレート(Corning)に100μlずつ播種した。播種後、37℃、5% COの条件下で24時間培養した。
次いで、前記の‐80℃で保存しておいたAβをDMSO 5μlで溶解後、F−12培地45μlを添加し、4℃で24時間オリゴマー形成反応を行った。
Aβオリゴマー(終濃度:5 nM)とスダチチン(1, 3, 10 μM)(和光純薬)を同時添加し、48時間培養した。
次いで、全量の培地を除去後、1% FBSを含むDMEM−F12培地に置換し、さらに24時間培養した。
培養上清100μlを回収し、LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ)を用い、添付の説明書に従って、培養上清中のLDH量をSPECTRA MAX190を用いて測定した。吸光度の上昇により示される細胞外LDH活性を細胞死の指標とした。
(2)結果
結果を図1に示す。Aβオリゴマー(Aβ)を添加するとLDHは約3倍に増加し、神経細胞死が誘発される。しかしスダチチンを添加すると、スダチチン添加量に依存して神経細胞死が抑制された。
<試験例2.類似物質とスダチチンのAβオリゴマー誘発神経細胞死抑制作用比較試験>
試験例1と同様の条件で、神経細胞死に有効であると言われている化合物のフェルラ酸(FA)、ヘリピロンA(HEL)、スダチチンの類似物質であるヘプタメトキシフラボン(HMF)、ノビレチン(NOB)を用いて比較試験を行った。
(1)試験方法
試験例1と同様の方法で試験を行った。なお試験試料は、全て最終濃度が10μMになるように濃度を調整し添加した。
結果を図2に示す。スダチチンのみが、細胞死抑制効果を示した。
以上の試験例1、2の結果から、スダチチンはAβオリゴマー誘発性神経細胞死を抑制し、この作用は類似化合物では見られないことが明らかとなった。したがってAβオリゴマーの蓄積によって発症するアルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ピック病(Pick’s disease)、レビー小体型認知症(Lewy body dementia)、ダウン症候群(Down’s syndrome)、脳アミロイドアンギオパシー(Cerebral amyloid angiopathy)の進行を抑制できる作用を有するものと考えられる。
<試験例3.酸化ストレス誘発性神経細胞死の抑制試験>
パーキンソン病などの神経疾患においても神経細胞死が発生する。この神経細胞死は酸化ストレスによるものと考えられている。パーキンソン病動物モデルの作成に用いられる6−hydroxydopamine(6−OHDA)に誘発される神経細胞死に対する効果を確認した。
(1)試験方法:
ヒト神経芽細胞腫株SH−SY5Y(ATCCより入手)を10% FBS(Sigma)、1% 非必須アミノ酸溶液(Gibco)、1% ペニシリン−ストレプトマイシンを含むDMEM−F12培地(Gibco)で2.0×105cells/mlの濃度になるように懸濁し、96ウエルプレート(Corning)に100μlずつ播種した。播種後、37℃、5% COの条件下で24時間培養した。
次いでスダチチン(和光純薬工業)を最終濃度1, 3, 10 μMになるように添加し、37℃で5時間培養した。
その後6−OHDA(SIGMA)を最終濃度40μMになるように添加し37℃で24時間培養した。
次いで、全量の培地を除去後、1% FBSを含むDMEM−F12培地に置換し、さらに4時間培養した。
培養上清100μlを回収し、LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ)を用い添付の説明書に従って、培養上清中のLDH量をSPECTRA MAX190を用いて測定た。吸光度の上昇により示される細胞外LDH活性を細胞死の指標とした。
(2)結果
結果を図3に示す。スダチチンは、添加量に依存して神経細胞死を抑制する。
スダチチンは、Aβオリゴマーによる神経細胞死に加えて酸化ストレスによる神経細胞死も抑制することが確認できた。

Claims (6)

  1. スダチチンを有効成分とする神経細胞死抑制剤。
  2. スダチチンを有効成分とするアミロイドβオリゴマーによる神経細胞死抑制剤。
  3. スダチチンを有効成分とする酸化ストレスによる神経細胞死抑制剤。
  4. スダチチンを有効成分とする神経細胞死の進行抑制剤。
  5. 神経細胞死がアルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ピック病(Pick’s disease)、レビー小体型認知症(Lewy body dementia)、ダウン症候群(Down’s syndrome)、脳アミロイドアンギオパシー(Cerebral amyloid angiopathy)のいずれかに伴って発生するものである請求項4に記載の神経細胞死の進行抑制剤。
  6. 神経細胞死がパーキンソン病に伴って発生するものである請求項4に記載の神経細胞死の進行抑制剤。
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