JP2017042981A - フォトクロミック積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】フォトクロミック材料を含有するフォトクロミック層において、夏場のような強い太陽光などの熱線が照射される環境下でも高い発色濃度を示すことが可能なフォトクロミック積層体の提供。
【解決手段】フォトクロミック材料を含有するフォトクロミック層、及び熱線遮断層を有するフォトクロミック積層体であって、フォトクロミック層の光照射面上に熱線遮蔽層を有する積層体であり、特に熱線遮蔽層が無機微粒子およびポリマーを含有する無機微粒子含有層であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、フォトクロミック積層体に関する。詳しくは、フォトクロミック積層体において、夏場のような太陽光の熱線が照射される環境下においても高い発色濃度を示すことが可能なフォトクロミック積層体に関する。
ハロゲン化銀、酸化タングステン、クロメン化合物、フルギド化合物、スピロオキサジン化合物等に代表されるフォトクロミック化合物は、太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻るという特性(フォトクロミック性)を有しており、この特性を活かして、種々の用途、特に光学材料の用途に使用されている。
例えば、眼鏡レンズについては、太陽光のような紫外線を含む光が照射される屋外では速やかに着色してサングラスとして機能し、そのような光の照射がない屋内においては退色して透明な通常の眼鏡として機能するものであり、近年その需要は増大している。
光学材料にフォトクロミック性を付与するためには、一般に、フォトクロミック化合物はプラスチック材料と併用されるが、具体的には、次のような手段が知られている。
(a)重合性モノマーにフォトクロミック化合物を溶解させ、それを重合させることにより、直接、レンズ等の光学材料を成形する方法。
この方法は、練り込み法と呼ばれている。
(b)レンズ等のプラスチック成形品の表面に、フォトクロミック化合物が分散された樹脂層を、コーティング或いは注型重合により設ける方法(特許文献1参照)。
この方法は、積層法と呼ばれている。
(c)2枚の光学シートを、フォトクロミック化合物が分散された接着材樹脂により形成された接着層により接合すること。
この方法は、バインダー法と呼ばれている。
一方、フォトクロミック化合物は紫外線照射により励起され発色構造に変化した後、紫外線照射が無くなった後は、徐々に元の構造に戻るため、可逆的に色変化(退色)するが、特にフォトクロミック眼鏡レンズ等に用いられるフォトクロミック化合物は、高温になるほど退色速度が早く発色濃度が小さくなる傾向がある。
このため、特に太陽光エネルギーが強い夏場には、冬場に比べて発色濃度が薄くなるため、より日差しを受けやすくまぶしくなるといった問題点がある。
上記課題に関して、いくつかの検討がなされている。例えばフォトクロミック化合物自体の温度依存性を小さくするための分子設計(特許文献2参照)、或いは室温以下で紫外光/可視光をフィルターにかけることが出来、かつ室温より高い温度で紫外光/可視光をフィルターにかけにくくしうる、可逆性のサーモクロミック物質を用いる(特許文献3参照)といった検討がなされている。しかしながら、特許文献2の方法では高温時の発色濃度改善効果が未だ十分ではなく、また特許文献3では室温での着色が大きく、また高温での濃さも十分でないといった問題があり、いずれの方法も満足できるものではなかった。
WO2007/072754号 WO2004/085568号 特表2012−521429号公報
従って、本発明の目的は、夏場のような太陽光の強い熱線が照射される環境下においても高い発色濃度を示すことが可能なフォトクロミック材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。フォトクロミック化合物は、紫外線により発色し、可視光にて退色する性質を有するとともに、熱により退色する性質を有することから、太陽光の照射時におけるフォトクロミック層の温度上昇を抑制することで、熱による退色を抑制し、高い発色濃度が発現できるものと推測し、検討をすすめた結果、フォトクロミック層と熱線遮蔽層を組み合わせることで、高い発色濃度が発現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、フォトクロミック材料を含有するフォトクロミック層、及び熱線遮断層を有するフォトクロミック積層体であって、フォトクロミック層の光照射面上に熱線遮蔽層を有するフォトクロミック積層体が提供される。
また、本発明によれば、光学基材の少なくとも一方に積層されたフォトクロミックコーティング層の光照射面上に熱線遮蔽層を有するフォトクロミック積層体が提供される。
上記フォトクロミック積層体において、熱線遮蔽層が無機微粒子およびポリマーを含有する無機微粒子含有層であることが好ましい。
本発明のフォトクロミック積層体を用いることにより、後述する実施例でも示されているように、夏場の太陽光など強烈な熱線が照射される環境下においても高い発色濃度を発現することができる。
上記本発明のフォトクロミック積層体が熱線照射下でも高い発色濃度を示す理由は明らかでないが、本発明者らは、以下のように推測している。すなわち、フォトクロミック層に太陽光が照射されると太陽光中の赤外線によりフォトクロミック層の温度が上昇する。特に赤外光の中でも、特に近赤外領域(波長780〜2500nm)のエネルギーが強く、光の照射強度の強い夏場においては、特に上記フォトクロミック層の温度上昇が高く、フォトクロミック化合物の発色濃度に影響を及ぼすものと推測される。本発明では、フォトクロミック層の光照射面上に近赤外光を反射、吸収する熱線遮断層を積層させることで、熱線遮蔽層にて熱エネルギーを効率よくカットし断熱効果を発現させることでフォトクロミック層に伝わる熱量を低減することにより、フォトクロミック層、さらにはフォトクロミック化合物の温度上昇を押さえることが出来る。このことにより、フォトクロミック化合物がより低い温度環境に置かれるため、より高い発色濃度を示すことが出来るものと推測される。
本発明のフォトクロミック積層体は、フォトクロミック層の光照射面上に熱線遮蔽層を有する積層体である。以下、本発明のフォトクロミック積層体を構成する各層について詳細に説明する。
<光学基材>
本発明で使用するレンズ基材としては、光透過性を有する基材であれば特に限定されず、ガラス及びプラスチックレンズ、家屋や自動車の窓ガラス等公知のレンズ基材が挙げられるが、プラスチックレンズを用いるのが特に好適である。
本発明のプラスチックレンズとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂レンズ; 多官能(メタ)アクリル樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂およびチオエポキシ系樹脂等の架橋性樹脂レンズ等、現在プラスチックレンズとして使用されている公知のものが使用できる。
<フォトクロミック層>
フォトクロミック層としては、フォトクロミック化合物を分散しうるものであれば、いかなる材料及び形態も用いることが出来る。フォトクロミック層を形成するマトリックスとしては、フォトクロミック化合物を分散しうるものであれば特に制限はないが、例えば低分子成分、オリゴマー、ポリマー等の材料及びこれらの混合物を挙げることが出来る。
これらのマトリックスの中で、フォトクロミック層の強度を保ちやすい点からポリマーが好ましい。またポリマー自体をフォトクロミック化合物と直接混合するのではなく、フォトクロミック化合物をあらかじめポリマーを形成しうるモノマーおよび/またはオリゴマー組成物を、必要に応じて重合硬化剤を用いて硬化することによってポリマー組成物を得てもよい。
本発明に用いることが出来るポリマーとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、尿素樹脂・メラミン樹脂・フェノール樹脂、エポキシやオキセタン等の開環重合性モノマーを含む組成物から得られる樹脂等を挙げることが出来る。これらの樹脂のうち好適なものとしては、光学特性並びにフォトクロミック特性の点から、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリウレタンを挙げることが出来る。アクリル樹脂としては、単官能および/または多官能(メタ)アクリレートモノマーを含む組成物から得られるアクリル樹脂が好ましい。
これらマトリックスからなるフォトクロミック層の製造法は、公知の方法を用いることが出来る。例えば、溶剤にポリマー及びフォトクロミック化合物を溶解させた後に溶剤を留去する方法、熱可塑性のポリマーとフォトクロミック化合物とを加熱し溶解させたものを射出成形等で成形する方法、あるいはフォトクロミック化合物を含むモノマー組成物を熱、光、化学重合等の手法で硬化させる方法等の手法を用いることが出来る。
重合硬化を利用しての練り込み法によりフォトクロミック性を発現させる場合には、エストラマーガスケット又はスペーサーで保持されているガラスモールド間に、上記のフォトクロミック化合物を含むモノマー組成物を注入し、重合性モノマーや重合硬化促進剤の種類に応じて、空気炉中での加熱や紫外線等の活性エネルギー線照射によっての注型重合によって、レンズ等の光学材料の形態に成形されたフォトクロミック層を得ることができる。かかる方法によれば、直接、フォトクロミック性が付与された眼鏡レンズ等が得られる。
積層法によりフォトクロミック性を発現させる場合には、フォトクロミック組成物を適宜有機溶剤に溶解させて塗布液を調製し、スピンコートやディッピング等により、レンズ基材等の上記光学基材の表面に塗布液を塗布し、乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、窒素などの不活性ガス中でのUV照射や加熱等により重合硬化を行うことにより、光学基材の表面にフォトクロミック硬化体からなるフォトクロミックコーティング層が形成される(コーティング法)。
また、レンズ基材等の光学基板を所定の空隙が形成されるようにガラスモールドに対面して配置し、この空隙にフォトクロミック組成物を注入し、この状態で、UV照射や加熱等により重合硬化を行うインナーモールドによる注型重合によっても、光学基材の表面にフォトクロミック硬化体からなるフォトクロミック層を形成することができる(注型重合法)。
上記のような積層法(コーティング法及び注型重合法)によりフォトクロミック層を光学基材の表面に形成する場合には、予め光学基材の表面に、アルカリ溶液、酸溶液などによる化学的処理、コロナ放電、プラズマ放電、研磨などによる物理的処理を行っておくことにより、フォトクロミック層と光学基材との密着性を高めることもできる。勿論、光学基材の表面に透明な接着樹脂層を設けておくことも可能である。
さらに、バインダー法によりフォトクロミック性を発現する場合には、フォトクロミック組成物を用いてのシート成形によりフォトクロミックシートを作製し、これを2枚の透明なシート(光学シート)で挟んで、前述した重合硬化を行うことにより、フォトクロミック層を接着層とするフォトクロミック積層体が得られる。
この場合、フォトクロミックシートの作成には、フォトクロミック組成物を有機溶剤に溶解させた塗布液を用いてのコーティングという手段も採用することができる。
フォトクロミック層の厚さは特に制限はなく1μm〜2cm等、用途によって選択すればよい。これらのフォトクロミック付与方法の中でも、様々な光学基材の上に容易にフォトクロミック性を付与できることから、コーティング方法が特に好ましい。
フォトクロミック化合物としては、酸化タングステン(WO)、ハロゲン化銀(例えばAgBr)等の無機物、スピロオキサジン、スピロピラン、フルギド、クロメン、ジアリールエテン化合物等の有機化合物を用いることが出来るが、これらの中でも熱線遮蔽による発色状態からの熱退色を抑える効果が高いことから熱退色型のフォトクロミック化合物が好ましい。熱退色型のフォトクロミック化合物としては、スピロオキサジン、スピロピラン、フルギド、クロメン化合物等を挙げることが出来、フォトクロミック性に優れていることから特にスピロオキサジン、クロメン化合物が好ましい。
フォトクロミック性を示すフォトクロミック化合物としては、それ自体公知のものを使用することができ、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
このようなフォトクロミック化合物としては、例えば、特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレット等、多くの文献に開示されている。
本発明においては、公知のフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色性、耐久性、退色速度などのフォトクロミック性の観点から、インデノ〔2,1−f〕ナフト〔1,2−b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を用いることがより好ましく、特に分子量が540以上のクロメン化合物が、発色濃度及び退色速度に特に優れるため好適に使用される。
以下に示すクロメン化合物は、本発明において特に好適に使用されるクロメン化合物の例である。
Figure 2017042981
Figure 2017042981
本発明のフォトクロミック層には、目的に応じたフォトクロミック性を示す量のフォトクロミック化合物を使用すればよいが、通常、フォトクロミック層を形成するポリマー成分100質量部当り、0.0001〜20質量部の量でフォトクロミック化合物が使用すればよい。
フォトクロミック層には、重合開始剤、溶剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、レベリング剤等の添加剤を目的に応じて用いることが出来る。
<熱線遮蔽層>
本発明において熱線とは、太陽光に50%程度含まれる近赤外線(780nm〜2500nm)のことを示す。
本発明において熱線遮蔽層とは、可視光線の高い透過率と近赤外線反射能力を併せ持つ熱線遮蔽材料を含有する層からなり、太陽光に含まれる近赤外線のエネルギーを効率良くカットし、明るさを保ちながらフォトクロミック材料の温度上昇を効果的に抑制できる層のことである。
ここで熱線遮蔽材料としては、近赤外線を反射する性質を有する材料であれば制限なく用いることが出来るが、波長選択的に近赤外線反射能を有する、金属酸化物粒子および/または金属粒子といった無機微粒子を含有する材料、近赤外線反射能を有する積層膜、重合性液晶化合物等分子の配向材料、等を用いることが出来る。
太陽光に含まれる熱線である赤外線の中でも、特に短波長の近赤外線(波長780〜1200nm)のエネルギーが強く、熱線による温度上昇効果が高い。従って、フォトクロミック層の温度上昇を抑え濃い発色濃度を発現させるという観点から、この領域の近赤外光を効率的に遮蔽することが効果的である。このため、熱線遮蔽材料における近赤外線反射率の最も高い波長が780〜1200nmにあることが好ましい。
本発明において熱線遮蔽層単体においては、光学用途としての観点から、可視光線透過率は、50%以上好ましくは70%以上であることが好ましい。さらに、780nmから2,000nmまで測定した各波長の反射率の平均である近赤外線反射率は、高い方がより積層体の温度上昇を防げることから、10%以上好ましくは15%以上であることが好ましい。可視光線透過率は、380nm〜780nmまで測定した各波長の透過率を、各波長の分光視感度により補正することにより求められ、また近赤外線反射率は、JIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」に基づき求めることができる。
<無機微粒子を含有する材料>
近赤外線反射能を有する無機微粒子としては、粒子中の自由電子が光の振動電場に対して集団的に共鳴する現象である局在プラズモン共鳴により、可視光に対しては透明かつ近赤外線に対しては不透明になる性質を有する無機微粒子が好ましく、例えばアンチモンドープ酸化スズ(以下、ATOとも言う)、スズドープ酸化インジウム(以下、ITOとも言う)等の金属酸化物粒子、銀、金、アルミニウム等の金属粒子を用いることが出来る。
本発明の金属酸化物粒子としては、平均粒子径は透明性の観点から100nm以下が好ましい。上記金属酸化物粒子としては、熱線遮蔽性能が優れていることからATO及びITOが好ましい。
ATO及びITOはいかなる方法で調製されたものでも用いることができる。ATOの調製方法としては、例えば、アンチモン及び錫を含む塩の水溶液をアルカリにより中和し、得られた沈殿物をろ過、洗浄し、密閉式反応容器を用いて高温高圧下、水中にて反応させて目的のATO微粒子の水分散体を得、次いで、この水分散体にアミン化合物またはアミン化合物の誘導体を作用させて凝集沈殿物を得、これを脱水した後、アミン化合物またはアミン化合物誘導体の分解温度以下の十分低い温度で乾燥し、粉砕する方法(例えば、特開平2−105875号公報等)が挙げられる。
ITOの調製方法としては、例えば、錫塩及びインジウム塩を含む水溶液の温度を30℃以下に保持しながら、この水溶液にアルカリ溶液を添加して酸化錫及び酸化インジウムの水和物を含む溶液とし、この溶液を加熱処理、好ましくは水素ガス等の還元性雰囲気中にて加熱処理して錫ドープ酸化インジウム微粒子を生成する方法(例えば、特開平6−227815号公報等)が挙げられる。
金属粒子としては、少なくとも1種の金属粒子を含有すればよいが、特に金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子(以下、金属平板粒子とも言う。)を60個数%以上有し、前記金属平板粒子の主平面が、金属粒子を含有する層の一方の表面に対して平均0 °〜±30 °の範囲で面配向していることが好ましい。
金属平板粒子の合成方法としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形〜三角形状の金属粒子を合成後、例えば、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理などを行うことにより、六角形〜三角形状の金属粒子の角を鈍らせて、金属平板粒子を得てもよい。
前記金属平板粒子の合成方法としては、前記の他、予めフィルム、ガラスなどの透明基材の表面に種晶を固定後、平板状に例えば銀等の金属粒子を結晶成長させてもよい。
金属平板粒子としては、赤外線反射能及び製造しやすさから特に銀粒子が好ましい。銀平板粒子はアスペクト比(円相当径/厚み)によって共鳴波長を赤外光に調整することが出来、かつ反射波長のピークを800〜1200nmの範囲にするためにはアスペクト比が8〜17であることが好ましく、更には10〜14が好ましい。このアスペクト比の範囲として、円相当径は50〜300nm、厚みは5〜30nmであることが好ましい。また銀平板粒子のマトリックス中の分布としては、厚み方向に散らばって分布するよりも、同一平面上に分布する方がプラズモン共鳴が複数の微粒子にまたがる大きな領域の電磁場振動となりそれによって光の電磁波を外に放出しやすくなることから、光の反射率が高くなるためより好ましい。
これら無機微粒子を用いて熱線遮蔽層を形成するマトリックスとしては、無機微粒子を分散しうるものであれば特に制限はないが、例えば低分子〜オリゴマー成分、ポリマー等の材料及びこれらの混合物を挙げることが出来、これらの中でも他の層と組み合わせて成形しやすい点から、ポリマーが好ましい。
これらのマトリックスの中で、無機微粒子の配列を制御しやすく、さらには熱線遮蔽層の強度を保ちやすい点からポリマーが好ましい。またポリマー自体を無機微粒子と直接混合するのではなく、無機微粒子をあらかじめポリマーを形成しうるモノマーおよび/またはオリゴマー組成物を硬化することによってポリマーを得てもよい。本発明において上記ポリマーと無機微粒子を含有する層を無機微粒子含有層ともいう。
上記ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリノルボルネン等のオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシやオキセタン等の開環重合性モノマーを含む組成物から得られる樹脂等を挙げることが出来る。これらの樹脂のうち好適なものとしては、光学特性並びにフォトクロミック特性の点から、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂を挙げることが出来る。
アクリル樹脂としては、単官能および/または多官能(メタ)アクリレートモノマーを含む組成物から得られるアクリル樹脂が好ましい。ポリマー自体を無機微粒子と直接混合するのではなく、無機微粒子をあらかじめポリマーを形成しうるモノマーおよび/またはオリゴマー組成物を硬化することによってポリマー組成物を得てもよい。
上記無機微粒子は、乾性油,合成樹脂溶剤,樹脂エマルジョン,合成ラテックス等の塗膜成分と、水及び/または有機溶剤とからなるコーティングビヒクル中に微分散させUV硬化型、熱硬化型、水性型、エマルジョン型のコーティング液として用いることが出来る。また上記コーティング液を、アクリル、ポリエステル、ポリカーボネート、ガラス、ポリ塩化ビニル等の透明材料に塗布することにより、ポリマーを含有する無機微粒子含有層を有する熱線遮断層を得ることが出来る。
例えば、金属平板粒子を界面活性剤の共存下、ポリエステルラテックス水分散液と分散液状態で混合し、ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布することにより、該フィルム上に無機微粒子含有層が積層された熱線遮断層を得ることが出来る。
無機微粒子として金属平板粒子を用いる場合には、物質移動による金属平板粒子の酸化等の変性を防止し、耐擦傷性を付与するため、金属平板粒子が露出している方の金属粒子を含有する層の表面に密接するオーバーコート層を有していてもよい。
本発明においては、無機微粒子含有層に所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよく、例えば高屈折率シェル層の形成、分散剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することなどが挙げられる。
<積層膜>
上記近赤外線反射能を有する積層膜としては、ポリマー、ガラス質または有機無機ハイブリッド材料等の基材上に、通常、金や銀等の金属薄膜と、二酸化チタンや二酸化ジルコニウム等の高屈折率薄膜、酸化ケイ素等の低屈折率薄膜を多層積層して構成される。上記金属薄膜を形成する材料は、例えば、金、銀、銅又はそれらの合金等が用いられる。上記金属薄膜の厚みは、可視光線透過率と赤外線反射率が共に高くなるように、好ましくは5nm〜1000nmの範囲で、調整され得る。上記高屈折率簿膜は、好ましくは1.8〜2.7の転囲の屈折率を有するものである。上記高屈折率薄膜を形成する材料は、インジウム錫酸化物,酸化チタン、酸化ジルコニウム,酸化スズ ,酸化インジウム等が用いられる。上記高屈折率薄膜の厚みは、好ましくは20nm〜80nmの範囲で調整され得る。
上記の金属薄膜、高屈折率薄膜、低屈折率薄膜の成形方法としては、例えば、スパッタ法や真空蒸着法、プラズマCVD法等の気相法、ゾル−ゲル法等の液相法が挙げられる。
本発明の積層膜の基板として用いられる基板は、可視光線透過率が80%以上あるものである。前記基板の厚みは、特に制限はないが、通常10μm〜2mmである。
上記透明基板を形成する材料は、通常ガラス板やポリマーであり、該基板の最上層がフォトクロミック層であってもよい。積層膜の成形温度が高くなる場合が多いため、基板としてポリマーを用いる場合は、耐熱性に優れたものが好ましく使用される。上記ポリマーフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエ− テルケトン、ポリカーボネート等が挙げられる。
上記熱線遮蔽層の中では、一層という単純な構成で容易に製造でき、かつ優れた熱線遮蔽効果を示すことから、無機微粒子およびポリマーを含んでなる無機微粒子含有層である事が好ましく、さらに紫外線吸収が少ないため下層のフォトクロミック層中のフォトクロミック化合物が高い発色濃度を示し、かつ高い熱線遮蔽効果を示すことから金属粒子およびポリマーを含有する金属粒子含有層であることがより好ましい。
<フォトクロミック積層体の製造方法>
本発明のフォトクロミック積層体は、フォトクロミック層の光照射面上に熱線遮蔽層を有しており、フォトクロミック層の光照射面上に熱線遮断層を積層させることで製造することができる。
上記フォトクロミック層の光照射面上に熱線遮蔽層を積層させる方法としては特に制限はなく、接着、粘着、蒸着、熱圧着、接合する一層を溶剤に溶かした状態で塗布し溶剤留去することにより2層を接合する方法、モノマー組成物の状態で塗布し硬化接着する方法等を採用することが出来る。
本発明のフォトクロミック積層体は、さらにその他の層として、保護層、粘着層、接着層、ハードコート層、オーバーコート層、紫外線吸収剤層、帯電防止層、酸素遮断層、反射防止処理層やその他の機能を有する層を上部あるいは下部、またはフォトクロミック層と熱線遮蔽層との間に積層することにより、より高い機能を付与させることも出来る。
<フォトクロミック積層体>
上述した本発明のフォトクロミック積層体は、特に夏場などの強い太陽光照射下でも高い発色濃度を示す。一方で上記熱線遮断層は可視光の透過性が高いことから、紫外線照射が無くなった後の退色速度にも優れ、高いフォトクロミック性を発現させることができる。しかも、機械的強度等の特性を低減させることもないことから、フォトクロミック性が付与された光学基材、建物や乗り物等の窓、植物等を入れる透明ケース、冷凍もしくは冷蔵のショーケースに貼着し、冷暖房効果の向上や急激な温度変化を防ぐために、好ましく使用することが出来る。
(実施例)
次に、製造例、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
<製造例1>フォトクロミック層1の製造
下記処方により、各成分を十分に混合し、フォトクロミック組成物を調製した。
・ラジカル重合性モノマー:
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン 40質量部
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量532) 15質量部
トリメチロールプロパントリメタクリレート 25質量部
ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセルユーシービー社、EB−1830)/グリシジルメタクリレート 10質量部
このラジカル重合性単量体の混合物100重量部に対して
・フォトクロミック化合物
下記式
Figure 2017042981
で示される構造を持つフォトクロミック化合物(PC1) ラジカル重合性モノマー100質量部に対して2.0質量部
上記成分を十分に混合した後に、重合開始剤であるCGI1800{1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比3:1)}を0.5質量部、安定剤であるビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル) セバケートを5質量部、シランカップリング剤であるγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを7質量部、及び東レ・ダウコーニング株式会社製レベリング剤(シリコーン系界面活性剤)『L−7001』を0.1質量部添加し、十分に混合しフォトクロミック組成物を調製した。次いで、上記のフォトクロミック組成物を用い、積層法によりフォトクロミック層1を得た。重合方法を以下に示す。
まず、光学基材として中心厚が2mmで屈折率が1.60の平板状のチオウレタン系プラスチックレンズを用意した。なお、このチオウレタン系プラスチックレンズは、事前に10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃で5分間のアルカリエッチングを行い、その後十分に蒸留水で洗浄を実施した。
スピンコーター(1H−DX2、MIKASA製)を用いて、上記のプラスチックレンズの表面に、湿気硬化型プライマー(製品名;TR−SC−P、(株)トクヤマ製)を回転数70rpmで15秒、続いて1000rpmで10秒スピンコートし、膜厚7μmのプライマー層を積層した。その後、プライマー層上に、上記で得られたフォトクロミック組成物 約2gを、回転数60rpmで40秒、続いて600rpmで10〜20秒かけて、フォトクロミック層の膜厚が40μmになるようにスピンコートした。
このようにフォトクロミック組成物が表面に塗布されているレンズを、窒素ガス雰囲気中で出力200mW/cmのメタルハライドランプを用いて、90秒間光を照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに110℃で1時間加熱して、フォトクロミック層1を作製した。
<製造例2> フォトクロミック層2の製造
フォトクロミック化合物(PC1)の代わりに下記式
Figure 2017042981
で示される構造を持つフォトクロミック化合物(PC2)を用いた以外は、製造例1と同様な方法でフォトクロミック層2を得た。
<製造例3> フォトクロミック層3の製造
グリシジルメタクリレート1質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート8 質量部、テトラエチレングリコールジアクリレート5質量部、テトラエチレングリコールジメタクリレート32質量部、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(エチレグリコール鎖の平均鎖長が、2.6)49質量部、α−メチルスチレン9質量部、α−メチルスチレンダイマー2質量部、からなる重合性単量体100質量部に、PC1を0.04質量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート0.1質量部、重合開始剤としてパーブチルND 1質量部、パーオクタO 0.1質量部を添加し十分に混合した。この混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合により上記単量体組成物の実質的全量を重合した。重合は空気炉を用い、30℃〜90℃まで18時間かけ徐々に温度を上げていき、90℃で2時間保持した。重合終了後、鋳型のガラス型から取り外し、フォトクロミック層3(厚み2mm)を得た。
<フォトクロミック層1〜3の発色濃度測定>
上記製造例1〜3得られたフォトクロミック層について、以下の方法にて発色濃度を測定した。結果を表1に示す。
得られたフォトクロコーティング層を有するレンズに、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を紫外線透過フィルターUV22及び熱線吸収フィルターHA50(共にHOYA株式会社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm,245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、このときの最大吸収波長を 株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD3000)により求めた。この、最大吸収波長における吸光度{ε(120)}と、光照射していない状態の硬化体の該波長における吸光度{ε(0)}との差{ε(120)−ε(0)}を求めこれを発色濃度とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。さらに測定時の温度を10℃、30℃、40℃に変えて発色濃度を測定した。
Figure 2017042981
いずれの場合も、測定温度と発色濃度とは測定範囲内において直線関係があり、一次の回帰式で示されることが判った。即ち、フォトクロミック層1では、Y(吸光度/Abs)=―0.0416X(温度/℃)+2.356、フォトクロミック層2では、Y=―0.0242X+1.468、フォトクロミック層3では、Y=―0.0416X+2.367であった。
<製造例4> 熱線遮蔽層1の製造
1)銀平板粒子分散液1の調製
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液100mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を5mL添加し、38℃まで加熱した。この溶液に10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液を6mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液100mLを25mL/ 分で攪拌しながら添加した。この溶液を1時間攪拌し、種溶液を作製した。
次に、前記種溶液500mLに10mMのアスコルビン酸水溶液を4mL添加し、38℃まで加熱した。この溶液に0.5mMの硝酸銀水溶液160mLを15mL/分で攪拌しながら添加した。
さらに、前記溶液を1時間攪拌した後、0.35Mのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を142mL添加し、7質量% ゼラチン(数平均分子量20万以上)水溶液を400g添加した。この溶液に、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液214mLと0.47Mの硝酸銀水溶液214mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加した。銀が十分に還元されるまで攪拌し、0.17Mの水酸化ナトリウム水溶液144mLを添加した。このようにして銀平板粒子分散液を得た。
得られた銀平板粒子分散液中には、FE−SEM(XL30SFEG、フィリップ社製)により、平均円相当径210nmの銀の六角平板粒子( 以下、銀平板粒子ともいう。)が生成していることを確認した。また、原子間力顕微鏡(NanocuteII 、セイコーインスツル社製) で、銀平板粒子の厚みを測定したところ、平均8nmであり、アスペクト比が12の平板粒子であることが分かった。
前記銀平板粒子分散液24mLに1N水酸化ナトリウムを1mL添加し、イオン交換水36mL添加し遠心分離を行い、銀平板粒子を沈殿させた。遠心分離後の上澄み液を捨て、水を4mL添加し、沈殿した銀平板粒子を再分散させ、銀平板粒子分散液1を得た。
2)塗布液1の調製
下記に示す組成の塗布液1を調製した。
塗布液1の組成:
・ポリエステルラテックス水分散液:ファインテックスES−650(DIC社製、固形分濃度30質量%) 35.3質量部
・界面活性剤A:ラピゾールA−90(日本油脂(株)製、固形分1質量%) 15.6質量部
・界面活性剤B:アロナクティーCL−95(三洋化成工業(株)製、固形分1質量%) 19.4質量部
・銀平板粒子分散液:上記方法により製造した分散液1 250質量部
・水 1000質量部
3)金属粒子含有層の形成
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面上に、塗布液1を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の平均厚みが0.08μm(80nm)になるように塗布した。その後、150 ℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、金属粒子含有層を形成し、熱線遮蔽層1を得た。
なお、前記金属粒子含有層の乾燥後の平均厚みは、レーザー顕微鏡(VK−9700 、キーエンス社製)を用いて上記塗布液1を塗布前のPETフィルムの厚みと、上記塗布液1をPETフィルムに塗布し、加熱、乾燥、固化後の厚みとの差を厚みとして測定することにより、80nmであることが判った。
<製造例5> 熱線遮蔽層2の製造
製造例4において、塗布液1のポリエステルラテックス水分散液の添加量を52.7質量部に変え、乾燥後の平均厚みが0.18μm(180nm)になるように塗布したこと以外は製造例4と同様にして、熱線遮蔽層2を作製した。
<製造例6> 熱線遮蔽層3の製造
製造例4において、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液の代わりに1.6mMのクエン酸ナトリウム水溶液を用いたこと、10mMのアスコルビン酸水溶液の代わりに6mMのアスコルビン酸水溶液を用いた以外は、製造例4と同様にして銀平板粒子を調製、さらに金属粒子含有層を形成し、熱線遮蔽層3を得た。
得られた銀平板粒子分散液中には、平均円相当径220nmの銀平板粒子が生成していることを確認した。また原子間力顕微鏡で銀平板粒子の厚みを測定したところ、平均20nmであり、アスペクト比が7の平板粒子であることが分かった。また得られた金属粒子含有層の乾燥後の平均厚みは、80nmであることが判った。
<製造例7> 熱線遮蔽層4の製造
錫ドープ酸化インジウム微粒子(比表面積:42m/g、富士チタン工業(株)社製)50質量部と、トルエン46質量部と、リン酸エステル系分散剤4質量部とを混合し、ガラスビーズを用いてサンドミル処理を8時間行い、錫ドープ酸化インジウム微粒子の分散液を作製した。
この分散液における分散粒子の分散粒子径(d50値)をFE−SEM(XL30SFEG、フィリップ社製)により、測定したところ、68nmであった。次いで、この錫ドープ酸化インジウム微粒子の分散液53質量部と、ジペンタエリスリトールポリアクリレート( 新中村化学社製)26質量部と、光重合開始剤Irugacure907(CIBA社製)0.5質量部と、1−プロパノール8質量部と、トルエン12.5質量部とを混合し、熱線遮蔽膜形成用塗料を調整した。
次いで、この熱線遮蔽膜形成用塗料を厚み50μmのPETフィルムの表面にバーコーターを用いて全光線透過率が82±1%となるように塗布し、塗膜を形成した。次いで、この塗膜を80℃の大気雰囲気中にて乾燥し、さらに、この乾燥した塗膜に紫外線を照射量200mJ/cmにて照射し、熱線遮蔽層4を作製した。
<製造例8> 熱線遮蔽層5の製造
アンチモンドープ酸化錫微粒子(比表面積:72m/g、石原産業(株)社製)50質量部と、トルエン46質量部と、リン酸エステル系分散剤4質量部とを混合し、ガラスビーズを用いてサンドミル処理を4時間行い、アンチモンドープ酸化錫微粒子の分散液を作製した。この分散液における分散粒子の分散粒子径(d50値)を測定したところ、72nmであった。次いで、この分散液53質量部を用いた他は、製造例7と同様な方法で熱線遮蔽層5を調製した。
<製造例9> 熱線遮蔽層6の製造
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、DCマグネトロンスパッタ法により、厚さ50nmのSiOx膜と、厚さ35nmのインジウム錫酸化物(以下、ITO)膜、厚さ13nmのAg−Au合金(AuWt%)膜、厚さ35nmのITO膜、厚さ200nmのSiOx膜を順次積層し、赤外線反射層を形成した。
この赤外線反射層の表面に、シクロオクタンに溶解したポリノルボルネン(日本ゼオン社製 商品名「ZEONOR」)溶液を塗布し、乾操して厚み5.2μmのポリノルボルネン層からなる保護層を形成した。このように作製した熱線遮蔽層6(総厚み約105μm)は、可視光線透過率72%であった。
<製造例10> 熱線遮蔽層7の製造
保護層として、厚み40μmのポリノルボルネン層を用いた以外は、製造例9と同様の方法で、熱線遮蔽層7を作製した。
<熱線遮断層1〜7の性能測定>
製造例4〜10で得られた熱線遮蔽材料1〜7について、下記性能を評価した。結果を表2に示した。
・可視光透過率
作製した各熱線遮蔽材料について、380nm〜780nmまで測定した各波長の透過率を、各波長の分光視感度により補正した値を可視光透過率とした。
・遮熱性能評価
作製した各熱線遮蔽層について、780nmから2,000nmまで測定した各波長の反射率の平均である近赤外線反射率はJIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」に基づき求めた。
「評価基準」
○:反射率15%以上
△:反射率10%以上15%未満
×:反射率10%未満
Figure 2017042981
(実施例1)
スピンコーター(1H−DX2、MIKASA製)を用いて、製造例1で調製したフォトクロミック層1の表面に、湿気硬化型プライマー(製品名;TR−SC−P、(株)トクヤマ製)を回転数70rpmで15秒、続いて1000rpmで10秒スピンコートし、膜厚7μmのプライマー層を積層した。次いで、プライマー層上に製造例4で製造した熱線遮蔽層1を貼付し、さらに110℃で1時間加熱して、フォトクロミック層1上に熱線遮蔽層1が積層されたフォトクロミック積層体を得た。
得られたフォトクロミック積層体について、気温約35℃の晴れた屋外にて3分間太陽光に照射した後のフォトクロミック積層体の表面温度を表面温度計(堀場製作所製、ハンディ放射温度計IT−540)にて評価した。評価した結果を、表3に示した。
(実施例2〜12)
表3に示すフォトクロミック層、及び熱線遮断層を用い、実施例1と同様の方法にてフォトクロミック層上に熱線遮断層を積層し、フォトクロミック積層体を得た。得られたフォトクロミック積層体について、実施例1と同様な方法にて性能を評価した。結果を表3に示した。
(比較例1〜3)
熱線遮断層の代わりに厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、実施例1と同様の方法にて表3に示すフォトクロミック層上に積層し、熱線遮断層のないフォトクロミック積層体を得た。得られたフォトクロミック積層体について、実施例1と同様な方法にて性能を評価した。結果を表3に示した。
Figure 2017042981
各実施例について、同一のフォトクロ層を有する比較例における表面温度との温度差を求めた。さらに上記フォトクロミック層の発色濃度の測定結果より算出した回帰式にて各温度でのフォトクロミック積層体の吸光度を算出し、各実施例における発色濃度とした。熱線遮蔽層を有するフォトクロミック積層体は熱線遮断層を有さないフォトクロミック積層体と比べて同一条件における太陽光照射下での表面温度の上昇が抑制されており、その分高い発色濃度を示していることが分かる。また、遮熱性能の高い熱線遮断層を用いたフォトクロミック積層体ほど表面温度の上昇を抑制しており、高い発色濃度を示していることが分かる。

Claims (3)

  1. フォトクロミック材料を含有するフォトクロミック層、及び熱線遮断層を有するフォトクロミック積層体であって、フォトクロミック層の光照射面上に熱線遮蔽層を有する積層体。
  2. 光学基材の少なくとも一方に積層されたフォトクロミックコーティング層の光照射面上に熱線遮蔽層を有するフォトクロミック積層体。
  3. 熱線遮蔽層が無機微粒子およびポリマーを含有する無機微粒子含有層であることを特徴とする請求項1乃至請求項2記載のフォトクロミック積層体
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