JP2017041511A - 基板処理方法および基板処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】パーティクルの発生を抑制または防止しながら、基板の上面を乾燥できる基板処理方法および基板処理装置を提供すること。【解決手段】基板処理装置1は、スピンチャック5と、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に水/EG混合液を供給する混合液供給ユニット8とを含む。混合液供給ユニット8による水/EG混合液の供給により、基板Wの上面を覆う水/EG混合液の液膜が形成される。次いで、水/EG混合液の液膜に気体が吹き付けられて、液膜除去領域が形成される。その後、液膜除去領域が基板Wの外周に向けて拡大させられる。【選択図】図2

Description

本発明は、処理液を用いて基板の表面を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板の例には、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ等の基板の表面に処理液を供給して、その基板の表面が処理液を用いて処理される。
たとえば、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックによって回転される基板の上面に処理液を供給するためのノズルとを備えている。たとえば、スピンチャックに保持された基板に対して薬液が供給され、その後に水が供給されることにより、基板上の薬液が水に置換される。その後、基板の上面上から水を排除するための乾燥処理が行われる。
基板の表面に微細なパターンが形成されている場合に、スピンドライ工程では、パターンの内部に入り込んだリンス液を除去できないおそれがあり、それによって、乾燥不良が生じるおそれがある。そこで、リンス液による処理後の基板の表面に、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)等の有機溶剤を供給して、基板の表面のパターンの隙間に入り込んだリンス液を有機溶剤に置換することによって基板の表面を乾燥させる手法が提案されている。
特開2009−212301号公報
しかしながら、リンス処理は薬液処理後に実行されるから水の液膜にパーティクルが含まれることがあり、このような乾燥方法では、水の液膜に含まれるパーティクルが基板の上面に再付着し、その結果、乾燥後の基板の表面(処理対象面)にパーティクルが発生するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、パーティクルの発生を抑制または防止しながら、基板の表面を乾燥できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、基板の表面を、処理液を用いて処理する基板処理方法であって、前記基板の表面に付着している処理液を、第1の液体と、前記第1の液体よりも沸点が高くかつ前記第1の液体よりも低い表面張力を有する第2の液体との混合液で置換する混合液置換工程と、前記混合液置換工程の後、前記基板の表面から前記混合液を除去する混合液除去工程とを含む、基板処理方法を提供する。
この方法によれば、基板の表面の処理液が混合液に置換され、基板の表面に混合液が接液する。基板の表面では、混合液の気固液界面において混合液が蒸発しながら、液除去領域が拡大する。気固液界面では、沸点の比較的低い第1の液体が主として蒸発し、その結果、沸点が比較的高く、かつ低表面張力を有する第2の液体の濃度が上昇する。そのため、混合液における、気固液界面の付近の部分(以下、この項において「界面付近部分」という)では、気固液界面に近づくに従って第2の液体の濃度が高くなるような濃度勾配が形成される。第2の液体の濃度差に起因して、混合液の界面付近部分の内部に、気固液界面から離反する方向に流れるマランゴニ対流が発生する。
これにより、混合液の界面付近部分に含まれているパーティクルは、マランゴニ対流を受けて、気固液界面から離反する方向に向けて移動する。そのため、パーティクルが混合液のバルクに取り込まれる。そして、混合液に含まれているパーティクルは、混合液のバルクに取り込まれたまま、気固液界面に出現することなく混合液と共に基板の表面からから排出される。これにより、基板の乾燥後において、基板の表面にパーティクルが残存することがない。ゆえに、パーティクルの発生を抑制または防止しながら、基板の表面の全域を乾燥できる。
請求項2に記載の発明は、前記基板を水平に保持する基板保持工程をさらに含み、前記混合液置換工程は、前記基板の上面を覆う前記混合液の液膜を形成する液膜形成工程を含み、前記混合液除去工程は、前記混合液の前記液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程とを含む、請求項1に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、水平姿勢に保持された基板の上面に混合液の液膜が形成される。この混合液の液膜に液膜除去領域が形成され、さらに、この液膜除去領域が基板全域を覆うまで拡大される。
基板の上面では、混合液の液膜の気固液界面で混合液が蒸発しながら、液膜除去領域が拡大する。気固液界面では、沸点の比較的低い第1の液体が主として蒸発し、その結果、沸点が比較的高く、かつ低表面張力を有する第2の液体の濃度が上昇する。そのため、混合液の液膜の界面付近部分では、気固液界面に近づくに従って第2の液体の濃度が高くなるような濃度勾配が形成される。このような第2の液体の濃度差に起因して、混合液の液膜の界面付近部分の内部に、気固液界面から離反する方向に流れるマランゴニ対流が発生する。マランゴニ対流は、液膜除去領域の形成後、当該液膜除去領域が基板全域を覆うまで発生し続けている。
これにより、混合液の液膜の界面付近部分に含まれているパーティクルは、マランゴニ対流を受けて、気固液界面から離反する方向に向けて移動する。そのため、パーティクルが混合液の液膜に取り込まれる。液膜除去領域の拡大に伴って、基板の径方向外方に向けて気固液界面が移動するが、パーティクルが混合液の液膜のバルクに取り込まれたまま、液膜除去領域が拡大する。そして、パーティクルは、液膜除去領域に出現することなく混合液の液膜と共に基板の上面から排出される。これにより、基板の乾燥後において、基板の上面にパーティクルが残存することがない。ゆえに、パーティクルの発生を抑制または防止しながら、基板の上面の全域を乾燥できる。
請求項3に記載の発明は、前記液膜形成工程に並行して、前記基板を静止状態とさせまたは前記回転軸線回りにパドル速度で前記基板を回転させるパドル工程をさらに含む、請求項2に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、液膜形成工程に並行してパドル工程を実行するから、基板の上面に形成される混合液の液膜の界面付近部分の厚みを、分厚く保つことができる。混合液の液膜の界面付近部分の厚みが大きいので、当該界面付近部分にマランゴニ対流を安定して発生させることができる。
請求項4に記載の発明は、前記液膜除去領域形成工程は、前記基板の上面に気体を吹き付ける気体吹き付け工程を含む、請求項2または3に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、混合液の液膜に気体を吹き付けることにより、混合液の液膜に含まれる混合液が部分的に吹き飛ばされて除去される。これにより、液膜除去領域を簡単に形成できる。
請求項5に記載の発明は、前記気体は、常温よりも高温の高温気体を含む、請求項4に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、高温気体を基板の上面に供給することにより、混合液の液膜の気固液界面における第1の液体の蒸発を促進させることができる。これにより、混合液の液膜の界面付近部分の第2の液体の濃度勾配を急激とすることができ、ゆえに、混合液の液膜の界面付近部分に発生するマランゴニ対流をより一層強めることができる。
請求項6に記載の発明は、前記液膜除去領域大工程は、前記基板を前記液膜形成工程時よりも高速度で回転させる高速回転工程を含む、請求項2〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、基板を高速回転させることにより発生する強い遠心力により、液膜除去領域を拡大させることができる。
請求項7に記載の発明は、前記第1の液は水を含み、前記第2の液はエチレングリコールを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、基板の表面の処理液が混合液に置換され、基板の表面に混合液が接液する。基板の表面では、混合液の気固液界面において混合液が蒸発しながら、液除去領域が拡大する。気固液界面では、沸点の比較的低い水が主として蒸発し、その結果、沸点が比較的高く、かつ低表面張力を有するエチレングリコール(以下、「EG」という)の濃度が上昇する。そのため、混合液における、気固液界面の付近の部分(以下、この項において「界面付近部分」という)では、気固液界面に近づくに従ってEGの濃度が高くなるような濃度勾配が形成される。このようなEGの濃度差に起因して、混合液の界面付近部分の内部に、気固液界面から離反する方向に流れるマランゴニ対流が発生する。
これにより、混合液の界面付近部分に含まれているパーティクルは、マランゴニ対流を受けて、気固液界面から離反する方向に向けて移動する。そのため、パーティクルが混合液のバルクに取り込まれる。そして、混合液に含まれているパーティクルは、混合液のバルクに取り込まれたまま、気固液界面に出現することなく混合液と共に基板の表面からから排出される。これにより、基板の乾燥後において、基板の表面にパーティクルが残存することがない。ゆえに、パーティクルの発生を抑制または防止しながら、基板の表面の全域を乾燥できる。
前記の目的を達成するための請求項8に記載の発明は、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、第1の液体と、前記第1の液体よりも沸点が高くかつ前記第1の液体よりも低い表面張力を有する第2の液体との混合液を、前記基板の上面に供給する混合液供給ユニットと、少なくとも混合液供給ユニットを制御する制御ユニットとを含み、前記制御ユニットは、前記基板の上面を覆う前記混合液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記混合液の前記液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程とを実行する、基板処理装置を提供する。
この構成によれば、請求項2に関連して記載した作用効果と同等の作用効果を奏する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。 図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。 図3は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。 図4は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。 図5A〜5Cは、混合液パドル工程(図4のS5)、および乾燥工程(図4のS6)の液膜除去領域形成工程の様子を説明するための図解的な断面図である。 図5D〜5Fは、乾燥工程(図4のS6)の液膜除去領域拡大工程の様子を説明するための図解的な断面図である。 図6は、液膜除去領域拡大工程中における、混合液の液膜の状態を拡大して示す断面図である。 図7は、混合液の液膜の内周部分の内部における、マランゴニ対流の発生メカニズムを説明するための図である。 図8A,8Bは、液膜除去領域の拡大中における、混合液の液膜の内周部分の状態を示す平面図である。 図9は、参考形態に係る、基板の上面上の水の液膜における、気液固界面における流れ分布モデルを示す図である。 図10は、参考形態に係る、水の液膜の内周部分に含まれる微細パーティクルの移動を示す模式的な断面図である。 図11は、参考形態に係る、水の液膜の内周部分に含まれる微細パーティクルの移動を示す模式的な平面図である。 図12A,12Bは、参考形態に係る、液膜除去領域の拡大中における、水の液膜の内周部分の状態を示す平面図である。 図13は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を説明するための模式図である。 図14は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置における引き上げ乾燥の様子を示す模式図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御ユニット3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
処理ユニット2は、箱形の処理チャンバ4と、処理チャンバ4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に薬液(処理液)を供給するための薬液供給ユニット6と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に水(処理液)を供給するための水供給ユニット7と、基板Wの上面(表面)に、水(第1の液体)とエチレングリコール(以下、「EG」という。第2の液体)との混合液(以下「水/EG混合液」という)を供給する混合液供給ユニット8と、スピンチャック5を取り囲む筒状の処理カップ9とを含む。
処理チャンバ4は、箱状の隔壁10と、隔壁10の上部から隔壁10内(処理チャンバ4内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)11と、隔壁10の下部から処理チャンバ4内の気体を排出する排気装置(図示しない)とを含む。
FFU11は隔壁10の上方に配置されており、隔壁10の天井に取り付けられている。FFU11は、隔壁10の天井から処理チャンバ4内に清浄空気を送る。排気装置は、処理カップ9内に接続された排気ダクト13を介して処理カップ9の底部に接続されており、処理カップ9の底部から処理カップ9の内部を吸引する。FFU11および排気装置により、処理チャンバ4内にダウンフロー(下降流)が形成される。
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、スピンモータ14と、このスピンモータ14の駆動軸と一体化されたスピン軸15と、スピン軸15の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース16とを含む。
スピンベース16は、基板Wの外径よりも大きな外径を有する水平な円形の上面16aを含む。上面16aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材17が配置されている。複数個の挟持部材17は、スピンベース16の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けてたとえば等間隔に配置されている。
薬液供給ユニット6は、薬液ノズル18を含む。薬液ノズル18は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。薬液ノズル18には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液配管19が接続されている。薬液配管19の途中部には、薬液ノズル18からの薬液の供給/供給停止を切り換えるための薬液バルブ20が介装されている。薬液バルブ20が開かれると、薬液配管19から薬液ノズル18に供給された連続流の薬液が、薬液ノズル18の下端に設定された吐出口から吐出される。また、薬液バルブ20が閉じられると、薬液配管19から薬液ノズル18への薬液の供給が停止される。
薬液の具体例は、エッチング液および洗浄液である。さらに具体的には、薬液は、フッ酸、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、フッ化アンモニウム、バッファードフッ酸(フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などであってもよい。
水供給ユニット7は、第1の水ノズル21を含む。第1の水ノズル21は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。第1の水ノズル21には、水供給源からの水が供給される第1の水配管22が接続されている。第1の水配管22の途中部には、第1の水ノズル21からの水の供給/供給停止を切り換えるための第1の水バルブ23が介装されている。第1の水バルブ23が開かれると、第1の水配管22から第1の水ノズル21に供給された連続流の水が、第1の水ノズル21の下端に設定された吐出口から吐出される。また、第1の水バルブ23が閉じられると、第1の水配管22から第1の水ノズル21への水の供給が停止される。水は、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
なお、薬液ノズル18および第1の水ノズル21は、それぞれ、スピンチャック5に対して固定的に配置されている必要はなく、たとえば、スピンチャック5の上方において水平面内で揺動可能なアームに取り付けられて、このアームの揺動により基板Wの上面における処理液(薬液または水)の着液位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。
混合液供給ユニット8は、水/EG混合液を吐出するための混合液ノズル24と、混合液ノズル24が先端部に取り付けられた第1のノズルアーム25と、第1のノズルアーム25を移動させることにより、混合液ノズル24を移動させる第1のノズル移動ユニット26とを含む。混合液ノズル24は、たとえば、連続流の状態で水/EG混合液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口をたとえば下方に向けた状態で、水平方向に延びる第1のノズルアーム25に取り付けられている。
また、混合液供給ユニット8は、水とEGとを混合させるための混合部27と、混合部27に接続されて、水供給源からの水を混合部27に供給する第2の水配管28と、第2の水配管28に介装された第2の水バルブ29および第1の流量調整バルブ30と、混合部27に接続されて、EG供給源からのEGを混合部27に供給するEG配管31と、EG配管31に介装されたEGバルブ32および第2の流量調整バルブ33と、混合部27からの水/EG混合液を混合液ノズル24に供給する混合液配管34とを含む。水は、水供給ユニット7と同様、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。水(DIW)の沸点および表面張力は、常温で、それぞれ100℃および72.75である。EGの沸点および表面張力は、常温で、それぞれ197.5℃および47.3である。すなわち、EGは、水よりも沸点が高くかつ水よりも低い表面張力を有する液体である。
第2の水バルブ29は、第2の水配管28を開閉する。第1の流量調整バルブ30は、第2の水配管28の開度を調節して、混合部27に供給される水の流量を調整する。EGバルブ32は、EG配管31を開閉する。第2の流量調整バルブ33は、EG配管31の開度を調節して、混合部27に供給される水の流量を調整する。第1および第2の流量調整バルブ30,33は、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。他の流量調整バルブについても同様である。
第2の水バルブ29およびEGバルブ32が開かれると、第2の水配管28からの水およびEG配管31からのEGが混合部27へと供給され、水およびEGは混合部27で十分に混合(攪拌)され、水/EG混合液が生成される。混合部27で生成された水/EG混合液は混合液ノズル24に供給され、混合液ノズル24の吐出口からたとえば下方に向けて吐出される。水/EG混合液における、水とEGとの混合比は、第1および第2の流量調整バルブ30,33による開度調整により調整される。
図2に示すように、処理カップ9は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。処理カップ9は、スピンベース16を取り囲んでいる。スピンチャック5が基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wの周囲に振り切られる。処理液が基板Wに供給されるとき、上向きに開いた処理カップ9の上端部9aは、スピンベース16よりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された薬液や水などの処理液は、処理カップ9によって受け止められる。そして、処理カップ9に受け止められた処理液は、図示しない回収装置または廃液装置に送られる。
処理ユニット2は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に気体を供給するための気体ユニット37をさらに含む。
気体ユニット37は、不活性ガスの一例としての窒素ガスを基板Wの上面に向けて吐出する気体ノズル35と、気体ノズル35が先端部に取り付けられた第2のノズルアーム36と、第2のノズルアーム36を移動させることにより、気体ノズル35を移動させる第2のノズル移動ユニット38とを含む。気体ノズル35は、その吐出口をたとえば下方に向けた状態で、水平方向に延びる第2のノズルアーム36に取り付けられている。
気体ノズル35には、不活性ガス供給源からの高温(常温よりも高温。たとえば30〜300℃)の不活性ガスが供給される気体配管39が接続されている。気体配管39の途中部には、気体ノズル35からの不活性ガスの供給/供給停止を切り換えるための気体バルブ40と、気体配管39の開度を調節して、気体ノズル35から吐出される不活性ガスの流量を調整するための第3の流量調整バルブ41とが介装されている。気体バルブ40が開かれると、気体配管39から気体ノズル35に供給された不活性ガスが、吐出口から吐出される。また、気体バルブ40が閉じられると、気体配管39から気体ノズル35への不活性ガスの供給が停止される。不活性ガスは、窒素ガスに限らず、CDA(低湿度の清浄空気)であってもよい。
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御ユニット3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ14、第1および第2のノズル移動ユニット26,38等の動作を制御する。さらに、制御ユニット3は、薬液バルブ20、第1および第2の水バルブ23,29、EGバルブ32、気体バルブ40、第1、第2および第3の流量調整バルブ30,33,41等の開閉動作等を制御する。
図4は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。図5A〜5Fは、混合液パドル工程、液膜除去領域形成工程および液膜除去領域拡大工程を説明するための図解的な図である。図1〜図5Fを参照しながら基板処理について説明する。
未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、処理チャンバ4内に搬入され、基板Wがその表面(処理対象面。この実施形態ではパターン形成面)を上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡され、スピンチャック5に基板Wが保持される(S1:基板搬入工程(基板保持工程))。基板Wの搬入に先立って、混合液ノズル24および気体ノズル35は、スピンチャック5の側方に設定されたホーム位置に退避させられている。
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、制御ユニット3は、薬液工程(ステップS2)を実行する。具体的には、制御ユニット3は、スピンモータ14を駆動してスピンベース16を所定の液処理回転速度(たとえば約800rpm)で回転させる。また、制御ユニット3は、薬液バルブ20を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、薬液ノズル18から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの全面に行き渡り、基板Wに薬液を用いた薬液処理が施される。薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、薬液バルブ20を閉じて、薬液ノズル18からの薬液の吐出を停止する。
次いで、制御ユニット3は、水リンス工程(ステップS3)を実行する。水リンス工程(S3)は、基板W上の薬液を水に置換して基板W上から薬液を排除する工程である。具体的には、制御ユニット3は、第1の水バルブ23を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第1の水ノズル21から水が供給される。供給された水は遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。この水によって、基板W上に付着している薬液が洗い流される。
次いで、制御ユニット3は、水/EG混合液置換工程(ステップS4)を実行する。水/EG混合液置換工程(S4)は、基板W上の水を、水/EG混合液に置換する工程である。制御ユニット3は、第1のノズル移動ユニット26を制御して、混合液ノズル24を、スピンチャック5の側方のホーム位置から。基板Wの上方に移動させる。上面中央部に上方に移動させる。そして、制御ユニット3は、第2の水バルブ29およびEGバルブ32を開いて、基板Wの上面(表面)の中央部に水/EG混合液を供給する。供給された水/EG混合液は遠心力によって基板Wの全面に行き渡り、基板W上の水を置換する(混合液置換工程)。このとき供給される水/EG混合液のEGの濃度は、たとえば1重量%以上20重量%未満の範囲の所定の濃度に設定されている。
水/EG混合液の供給開始から予め定める期間が経過すると、基板Wの上面全域が水/EG混合液に覆われている状態で、制御ユニット3は、スピンモータ14を制御して、基板Wの回転速度を液処理速度からパドル速度(零または約40rpm以下の低回転速度。たとえば約10rpm)まで段階的に減速させる。その後、基板Wの回転速度をパドル速度に維持する。これにより、図5Aに示すように、基板Wの上面に、基板Wの上面全域を覆う水/EG混合液の液膜(以下、混合液の液膜)50がパドル状に支持される(S5:混合液パドル工程(液膜形成工程、パドル工程))。この状態では、基板Wの上面の混合液の液膜50に作用する遠心力が、水/EG混合液と基板Wの上面との間で作用する表面張力よりも小さいか、あるいは前記の遠心力と前記の表面張力とがほぼ拮抗している。基板Wの減速により、基板W上の水/EG混合液に作用する遠心力が弱まり、基板W上から排出される水/EG混合液の量が減少する。基板Wの上面から薬液によりパーティクルを取り除く薬液工程に次いでリンス工程が実行されるから、混合液の液膜50にパーティクルが含まれることがある。また、混合液パドル工程(S5)において、パドル状の混合液の液膜50の後も基板Wへの水/EG混合液の供給が続行されてもよい。
混合液パドル工程(S5)の終了に先立って、制御ユニット3は、混合液ノズル24をホーム位置に退避させ、かつ第2のノズル移動ユニット38を制御して、図5Bに示すように、気体ノズル35をスピンチャック5の側方のホーム位置から、基板Wの上方に配置する。
基板Wのパドル速度への減速から予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、乾燥工程(ステップS6)を実行する。乾燥工程(S6)では、液膜除去領域形成工程と、液膜除去領域拡大工程とがこの順で実行される。液膜除去領域形成工程は、混合液の液膜50の中央部に、混合液が除去された液膜除去領域55を形成する工程である。液膜除去領域拡大工程は、液膜除去領域55を基板Wの上面全域まで拡大させる工程である。
液膜除去領域形成工程では、制御ユニット3は、気体バルブ40を開いて、気体ノズル35から基板Wの上面中央部に向けて不活性ガスを吐出すると共に(気体吹き付け工程)、スピンモータ14を制御して基板Wを所定の穴開け速度(たとえば約50rpm)まで加速させる(高速回転工程)。基板Wの上面の混合液の液膜50の中央部に不活性ガスが吹き付けられることにより、混合液の液膜50の中央部にある水/EG混合液が、吹き付け圧力(ガス圧)によって当該基板Wの上面の中央部から吹き飛ばされて除去される。また、基板Wの回転速度が前記の穴開け速度(たとえば約50rpm)に達することにより、基板W上の混合液の液膜50に比較的強い遠心力が作用する。これらにより、図5Cに示すように、基板Wの上面中央部に円形の液膜除去領域55が形成される。穴開け速度は、約50rpmとしたが、それ以上の回転速度であってもよい。液膜除去領域形成工程に次いで液膜除去領域拡大工程が実行される。
液膜除去領域拡大工程では、制御ユニット3は、スピンモータ14を制御して、基板Wの回転速度を、所定の第1の乾燥速度(たとえば1000rpm)まで上昇させる。この基板Wの回転速度の上昇に伴って、図5D,5Eに示すように液膜除去領域55が拡大する。液膜除去領域55の拡大により、混合液の液膜50の、液膜除去領域55および基板W上面との気固液界面60が基板Wの径方向外方に向けて移動する。そして、図5Fに示すように、液膜除去領域55が基板Wの全域に拡大させられることにより、混合液の液膜50が全て基板W外に排出される。
液膜除去領域55が基板Wの上面の全域に拡大した後、液膜除去領域拡大工程が終了する。液膜除去領域拡大工程の終了に伴い、制御ユニット3は、気体バルブ40を閉じて、気体ノズル35からの不活性ガスの吐出を停止させる。
その後、制御ユニット3は、基板Wの回転速度を約1500rpmまで上昇させる。これにより、基板Wの上面への、より一層の乾燥が図られる。
スピンドライ工程(S6)の開始から予め定める期間が経過すると、制御ユニット3は、スピンモータ14を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、処理済みの基板Wを処理ユニット2外へと搬出する(ステップS7)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
図6は、液膜除去領域拡大工程中における、混合液の液膜50の状態を拡大して示す断面図である。
気体ノズル35から下方に向けて吐出される。基板処理装置1により基板Wに対して処理を行う際には、気体ノズル35の吐出口35aが基板Wの上面と所定の間隔を空けて対向する下位置に配置される。この状態で、気体バルブ40が開かれると、吐出口35aから吐出された不活性ガスが、基板Wの上面に吹き付けられる。これにより、混合液の液膜50の中央部の水が、吹き付け圧力(ガス圧)で物理的に押し拡げられ、当該基板Wの上面の中央部から水が吹き飛ばされて除去される。その結果、基板Wの上面中央部に液膜除去領域55が形成される。
液膜除去領域55の形成後において、混合液の液膜の内周部分(界面付近部分)70の内部に、気固液界面60での水の蒸発に起因してEGの濃度勾配が形成され、これにより、気固液界面60からバルク(液塊)72側に向かって流れるマランゴニ対流65が発生する。
また、液膜除去領域55の形成後には、吐出口35aから吐出された不活性ガスは、基板Wの上面に沿って、放射状かつ水平方向に流れる。
図7は、混合液の液膜の内周部分70の内部における、マランゴニ対流65の発生メカニズムを説明するための図である。
基板Wが回転し、かつ混合液の液膜50に液膜除去領域55(図6参照)が形成された状態において、混合液の液膜50の気固液界面60で混合液が蒸発する。また、液膜除去領域形成工程では、混合液の液膜50の気固液界面60で混合液が蒸発しながら、液膜除去領域55が拡大する。気固液界面60では、沸点の比較的低い水が主として蒸発し、その結果、沸点が比較的高く、かつ低表面張力を有するEGの濃度が上昇する。そのため、混合液の液膜の内周部分70では、気固液界面60に近づくに従ってEGの濃度が高くなるような濃度勾配が形成される。その結果、界面近傍領域71からバルク72に向けて流れるマランゴニ対流65が発生する。このマランゴニ対流65は、後述する第2の部分70B(図9参照)に発生する熱対流176(図9参照)を打ち消すだけでなく、マランゴニ対流65によって、当該第2の部分70B(図9参照)に、界面近傍領域71からバルク72に向けて流れる新たな流れを作る。マランゴニ対流65は、液膜除去領域55の形成後、当該液膜除去領域55が基板W全域を覆うまで発生し続けている。
したがって、混合液の液膜の内周部分70(具体的には、図9に示す第2の部分70B)に微細パーティクルP2が含まれている場合において、図7に示すように、微細パーティクルP2に、マランゴニ対流65を受けて界面近傍領域71からバルク72に向かう方向、すなわち、気固液界面60から離反する方向の強い力が作用する。これにより、界面近傍領域71に含まれている微細パーティクルP2は、径方向外方(気固液界面60から離反する方向)に向けて移動する。
図8A,8Bは、液膜除去領域55の拡大中における、混合液の液膜の内周部分70の状態を示 図8Aでは、混合液の液膜の内周部分70(具体的には、図9に示す第2の部分170B)に微細パーティクルP2が含まれている状態である。微細パーティクルP2は気固液界面60のラインに沿って並んでいる。
この場合、混合液の液膜の内周部分70(第2の部分70B)に含まれる微細パーティクルP2は、気固液界面60から離反する方向に流れるマランゴニ対流65(図6参照)を受けて、径方向外方(気固液界面60から離反する方向)に向けて移動して、その結果、混合液の液膜50のバルク72に取り込まれる。そして、液膜除去領域55の拡大に伴って、基板Wの径方向外方(バルク72に向かう方向)に向けて気固液界面60が移動するが、微細パーティクルP2がバルク72に取り込まれたまま、液膜除去領域55が拡大する。すなわち、液膜除去領域55の拡大に伴って気固液界面60が基板Wの径方向外方に向けて移動すると、これに併せて、図8Bに示すように、微細パーティクルP2も径方向外方に向けて移動する。
そして、液膜除去領域55が基板Wの全域に拡大させられ、混合液の液膜50が基板Wの上面から完全に排出される(図5Fに示す状態)ことにより、基板Wの上面の全域が乾燥される。混合液の液膜50のバルク72中に含まれる微細パーティクルP2は、液膜除去領域55に出現することなく、混合液の液膜50と共に基板Wの上面から除去される。
以上により、この実施形態によれば、水平姿勢に保持された基板Wの上面に混合液の液膜50が形成される。この混合液の液膜50に液膜除去領域55が形成され、さらに、この液膜除去領域55が基板W全域を覆うまで拡大される。
基板Wの上面では、混合液の液膜50の気固液界面60で混合液が蒸発しながら、液膜除去領域55が拡大する。気固液界面60では、沸点の比較的低い水が主として蒸発し、その結果、沸点が比較的高いEGの濃度が上昇する。そのため、混合液の液膜の内周部分170では、気固液界面60に近づくに従ってEGの濃度が高くなるような濃度勾配が形成される。EGの濃度差に起因して、混合液の液膜の内周部分170の内部に、気固液界面60から離反する方向に流れるマランゴニ対流65が発生する。マランゴニ対流65は、液膜除去領域55の形成後、当該液膜除去領域55が基板W全域を覆うまで発生し続けている。
これにより、混合液の液膜の内周部分170に含まれている微細パーティクルP2は、マランゴニ対流65を受けて、気固液界面60から離反する方向に向けて移動する。そのため、微細パーティクルP2が混合液の液膜50に取り込まれる。液膜除去領域55の拡大に伴って、基板Wの径方向外方に向けて気固液界面60が移動するが、微細パーティクルP2が混合液の液膜50のバルク72に取り込まれたまま、液膜除去領域55が拡大する。そして、微細パーティクルP2は、液膜除去領域55に出現することなく混合液の液膜50と共に基板Wの上面から排出される。これにより、基板Wの乾燥後において、基板Wの上面に微細パーティクルP2が残存することがない。ゆえに、微細パーティクルP2の発生を抑制または防止しながら、基板Wの上面の全域を乾燥できる。
また、混合液の液膜50の気固液界面60で、水よりも低表面張力を有するEGの濃度が高めることができる。そのため、乾燥時における基板Wの表面のパターン倒れを抑制できる。
また、混合液パドル工程では、基板Wに大きな遠心力が作用しないから、基板Wの上面に形成される混合液の液膜50の厚みを、分厚く保つことができる。混合液の液膜50の内周部分70の厚みが大きいので、当該内周部分70にマランゴニ対流65を安定して発生させることができる。
また、高温の不活性ガスを基板Wの上面に供給することにより、混合液の液膜50の気固液界面60における水の蒸発を促進させることができる。これにより、混合液の液膜の内周部分70におけるEGの濃度勾配を急激とすることができ、ゆえに、混合液の液膜の内周部分70に発生するマランゴニ対流65をより一層強めることができる。
また、液膜除去領域拡大工程時に、基板Wを高速度で回転させるので、基板Wに強い遠心力が作用し、この遠心力により、混合液の液膜の内周部分170における膜厚の差異をより一層顕著にできる。これにより、混合液の液膜の内周部分170中に生じるEGの濃度勾配を大きく保つことができ、ゆえに、混合液の液膜の内周部分170中に発生するマランゴニ対流65をさらに一層強めることができる。
次に、乾燥工程に伴うパーティクル発生のメカニズムについて説明する。
図9は、参考形態に係る、基板Wの上面上の水の液膜150における、気液固界面における流れ分布モデルを示す図である。
この参考形態では、前述の実施形態に係る処理例とは異なり、パドル状の水の液膜150を形成する。その状態で、前述の実施形態に係る処理例と同様に、液膜除去領域形成工程および液膜除去領域拡大工程を実行する。
この場合、図9に示すように、液膜除去領域拡大工程において、水の液膜の内周部分170の内部には、熱対流176が発生する。水の液膜の内周部分170中の熱対流176は、バルク172側に位置する第1の領域170Aでは、気固液界面60側から離反する方向に向かって流れるが、図9に示すように、界面近傍領域171を含む、気固液界面160側の第2の部分170Bでは、バルク172側から気固液界面160側に向けて流れている。したがって、内周部分170の第2の部分170Bに微細パーティクルP2(図10〜図12A等参照)が含まれている場合、この微細パーティクルP2は、気固液界面160側に引き寄せられ、界面近傍領域171に凝集するようになる。このような微細パーティクルP2の凝集は、前述の熱対流176だけでなく、隣接する微細パーティクルP2同士のファンデルワールス力やクーロン力にも起因しているものと考えられる。
図10は、参考形態に係る、水の液膜の内周部分170に含まれる微細パーティクルP2の移動を示す模式的な断面図である。図11は、参考形態に係る、水の液膜の内周部分170に含まれる微細パーティクルP2の移動を示す模式的な平面図である。
図10に示すように、水の液膜の内周部分170は、基板W上面との境界付近に形成される境界層(Boundary layer)173と、境界層173に対し基板W上面と反対側に形成される流れ層(Flowing layer)174とを含む。水の液膜の内周部分170に微細パーティクルP2が含まれる場合、流れ層174では、パーティクルPは、その粒径の大小によらずに、流れの影響を強く受ける。そのため、流れ層174にあるパーティクルPは、流れに沿う方向に沿って移動可能である。
一方、境界層173では、大きなパーティクルP1は流れの影響を受けるが、微細パーティクルP2は、流れの影響をほとんど受けない。すなわち、境界層173にある大きなパーティクルP1は、境界層173内を流れに沿う方向に沿って移動可能であるが、微細パーティクルP2は、境界層173内を流れに沿う方向F(図11参照)に移動しない。しかし、微細パーティクルP2は基板Wの上面に付着しているわけではなく、基板Wの上面に微小間隔を空けて設けられている。
図9に示す界面近傍領域171においては、水の液膜の内周部分170の大部分が、図10に示す境界層173である。そして、図9において、界面近傍領域71からバルク72側に向うに従って、流れ層174(図10参照)の割合が増大する。したがって、界面近傍領域71にある微細パーティクルP2は、別の大きな力が作用しない限り、流れに沿う方向に移動しない。
図11に示すように、界面近傍領域171では、水の液膜50の厚み差により肉眼視で干渉縞175が見られる。干渉縞175は、等高線になっている。
微細パーティクルP2は、前述のように、流れに沿う方向F(図11参照)に移動しないのであるが、干渉縞175の接線方向D1,D2には移動可能である。微細パーティクルP2は、界面近傍領域171において、干渉縞175の接線方向D1,D2に沿って列をなすように並ぶ。換言すると、微細パーティクルP2は気固液界面160のラインに沿って並んでいる。微細パーティクルP2は、パーティクルP自身の大きさ毎に列をなす。比較的大径を有する微細パーティクルP21は、比較的小径を有する微細パーティクルP22よりも径方向外方に配置されている。
図12A,12Bは、参考形態に係る、液膜除去領域55の拡大中における、水の液膜の内周部分170の状態を示す平面図である。
図12Aでは、水の液膜の内周部分170(具体的には、図10に示す第2の部分170B)に微細パーティクルP2が含まれている状態である。微細パーティクルP2は気固液界面160のラインに沿って並んでいる。
図12Bに示すように、液膜除去領域55の拡大に伴って、基板Wの径方向外方(バルク172に向かう方向)に向けて気固液界面160が移動すると、界面近傍領域171では、バルク172側から気固液界面160側に向けて流れる熱対流176(図9参照)が生じているために、微細パーティクルP2に径方向内方に押す力が作用する。液膜除去領域55の拡大に伴って、基板Wの径方向外方(バルク172に向かう方向)に向けて気固液界面160が移動する。しかし、微細パーティクルP2が径方向(流れに沿う方向)に移動できないので、気固液界面160が移動しても微細パーティクルP2は移動しない。そのため、界面近傍領域71に含まれる微細パーティクルP2が気固液界面60から液膜除去領域55に移動し、液膜除去領域55上に析出する。そして、水の液膜150が除去された後の基板Wの上面に、微細パーティクルP2が残存する。
本発明は、バッチ式の基板処理装置に適用することもできる。
図13は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置201の概略構成を説明するための模式図である。 図14は、基板処理装置201における引き上げ乾燥の様子を示す模式図である。
基板処理装置201は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の基板処理装置である。基板処理装置201は、薬液を貯留する薬液貯留槽202と、水を貯留する水貯留槽203と、水/EG混合液を貯留する水/EG混合液貯留槽204と、水/EG混合液貯留槽204に貯留されている水/EG混合液に基板Wを浸漬させるリフタ205と、リフタ205を昇降させるためのリフタ昇降ユニット206とを含む。このとき、水/EG混合液貯留槽204に貯留されている水/EG混合液のEGの濃度は、たとえば1重量%以上20重量%未満の範囲の所定の濃度に設定されている。
リフタ205は、複数枚の基板Wの各々を、鉛直な姿勢で支持する。リフタ昇降ユニット206は、リフタ205に保持されている基板Wが水/EG混合液貯留槽204内に位置する処理位置(図13に実線で示す位置)と、リフタ205に保持されている基板Wが水/EG混合液貯留槽204の上方に位置する退避位置(図13に二点鎖線で示す位置)との間でリフタ205を昇降させる。
基板処理装置201における一連の処理では、基板処理装置201の処理ユニットに搬入された複数枚の基板Wは、薬液貯留槽202に貯留されている薬液に浸漬される。これにより、薬液処理(洗浄処理やエッチング処理)が各基板Wに施される。薬液への浸漬開始から予め定める期間が経過すると、複数枚の基板Wは薬液貯留槽202から引き上げられ、水貯留槽203へと移される。次いで、複数枚の基板Wは、水貯留槽203に貯留されている水に浸漬される。これにより、リンス処理が基板Wに施される。水への浸漬開始から予め定める期間が経過すると、基板Wは水貯留槽203から引き上げられ、水/EG混合液貯留槽204へと移される。
そして、リフタ昇降ユニット206が制御されて、リフタ205が退避位置から処理位置に移動させられることにより、リフタ205に保持されている複数枚の基板Wが水/EG混合液に浸漬される。これにより、基板Wの表面(処理対象面。この実施形態ではパターン形成面)Waに水/EG混合液が供給され、基板Wの表面Waに付着している水が水/EG混合液に置換される(混合液置換工程)。水/EG混合液への基板Wの浸漬開始から予め定める期間が経過すると、リフタ昇降ユニット206が制御されて、リフタ205が処理位置から退避位置に移動させる。これにより、水/EG混合液に浸漬されている複数枚の基板Wが水/EG混合液から引き上げられる。
水/EG混合液からの基板Wの引上げ時には引上げ乾燥(混合液除去工程)が実施される。引上げ乾燥は、図14に示すように、水/EG混合液貯留槽204から引き上げられた基板Wの表面Waに不活性ガス(たとえば窒素ガス)を吹き付けながら、かつ比較的遅い速度(たとえば数mm/秒)で基板Wを引き上げることにより行う。
基板Wが水/EG混合液に浸漬されている状態で、基板Wの一部を水/EG混合液から引き上げると、基板Wの表面Waが雰囲気に露出する。これにより、基板Wの表面Waに、水/EG混合液が除去された液除去領域255が形成される。この状態から、基板Wをさらに引き上げることにより、液除去領域255が拡大する。液除去領域255の拡大により、水/EG混合液の、液除去領域255および基板Wの表面Waとの気固液界面260が下方に向けて移動する。そして、基板Wが、水/EG混合液から完全に引き上げられた状態では、液除去領域255が基板Wの全域に拡大している。液除去領域255の形成後において、水/EG混合液の界面付近部分270の内部に、気固液界面260での水の蒸発に起因してEGの濃度勾配が形成され、これにより、気固液界面260から下方に向かって流れるマランゴニ対流が発生する。
したがって、水/EG混合液に含まれている微細パーティクルは、マランゴニ対流を受けて、気固液界面260から離反する方向(すなわち下方)に向けて移動する。そのため、微細パーティクルは、水/EG混合液貯留槽204に貯留されている水/EG混合液に取り込まれる。そして、微細パーティクルが液除去領域255に出現することなく、基板Wが全て水/EG混合液から引き上げられ、基板Wの表面Waの全域が乾燥させられる。ゆえに、微細パーティクルの発生を抑制または防止しながら、基板Wの上面の全域を乾燥できる。
また、引き上げ乾燥時において、気固液界面60においてEGの濃度を高く維持できる。EGの表面張力が水よりも低いので、乾燥後における基板Wの表面のパターン倒れを抑制できる。
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、第1の実施形態において、基板Wの回転速度をパドル速度に維持することにより基板W上面にパドル状の混合液の液膜50を形成し、このパドル状の混合液の液膜50に液膜除去領域55を設ける構成について説明したが、混合液の液膜50はパドル状に限られず、パドル速度よりも高速で回転されている水の液膜に液膜除去領域55を設けるようにしてもよい。
また、基板Wの上面に供給する気体(吐出口35aから吐出される気体)として、不活性ガスを用いる場合を例に挙げて説明したが、上面に供給する気体(吐出口35aから吐出される気体)として、水より低い表面張力を有する有機溶剤(たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)やHFE(ハイドロフルオロエーテル))の蒸気を採用することもできる。
また、第1の実施形態において、基板Wの上面に供給する気体(吐出口35aから吐出される気体)として、不活性ガスと有機溶剤の蒸気との混合気体(たとえばNと有機溶剤蒸気との混合気体)を採用することもできる。
また、第1の実施形態において、基板Wの上面に供給する気体として、高温気体を用いるとして説明したが、常温気体を用いるようにしてもよい。
また、第1の実施形態において、基板Wの回転速度を上昇させ、かつ基板Wの上面に気体を供給することの双方により、混合液の液膜50に液膜除去領域55を形成した。しかしながら、基板Wの回転速度を上昇させることなく、基板Wの上面への気体の吹き付けのみにより液膜除去領域55を形成してもよいし、逆に、基板Wの回転速度を上昇させることのみによって液膜除去領域55を形成してもよい。
さらに、第1の実施形態では、液膜除去領域拡大工程において、液膜除去領域55を基板Wの全域に拡げるために、基板Wの回転を第1の乾燥速度まで加速させるようにしたが、基板Wの回転の加速に代えて、または基板Wの回転の加速に併せて、基板Wの上面への気体の吹き付け流量を増大させることにより、液膜除去領域55を拡げるようにしてもよい。
また、気体ユニット37が、スピンチャック5に保持された基板Wの上面(表面)に対向する対向部材を、気体ノズルと一体移動可能に含む構成であってもよい。この対向部材は、気体ノズル35の吐出口35aを基板Wの上面に接近させた状態で、基板Wの表面に近接対向する対向面を有していてもよい。この場合、下向きの吐出口35aを有する気体ノズル35に、横向きの環状の吐出口が別途設けられていてもよい。
また、基板Wの上面に気体を供給しない場合には、気体ユニット37を廃止することもできる。
また、前述の各実施形態では、第1の液体と、第1の液体よりも沸点が高くかつ第1の液体よりも低い表面張力を有する第2の液体との組合せとして、水とEGとの組合せを例示したが、その他の組合せとして、IPAとHFEとの組合せや、水とPGMEA(propyleneglycol monomethyl ether acetate)との組合せを例示することもできる。
また、前述の各実施形態では、基板処理装置1,201が円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1,201が、液晶表示装置用ガラス基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
また、本願発明者らは、パーティクルを含む水/EG混合液をシリコン基板上に塗布し、その後の基板の上面における水/EG混合液の乾燥過程を光学顕微鏡で観察した。水/EG混合液として、2重量%のEG濃度を有する水/EG混合液と、20重量%のEG濃度を有する水/EG混合液とを用いて試験をし、それぞれについて観察を行った。この場合、水としてDIWを用いた。
塗布直後には、いずれの場合もコンタクトラインにパーティクルが集まってくるが、2重量%のEG濃度を有する水/EG混合液では、その後やがてコンタクトラインから離反する方向にパーティクルが移動した。これに対し、20重量%のEG濃度を有する水/EG混合液では、その後も、パーティクルがコンタクトラインに集まったままであった。
また、2重量%のEG濃度を有する水/EG混合液では、IPA蒸気の雰囲気下で同等の実験を行ったが、その場合も、コンタクトラインに集まったパーティクルが、その後コンタクトラインから離反する方向に移動するのが観察された。
また、本願発明者らは、パーティクルを含む水、パーティクルを含む、IPAと水との混合液(以下、「IPA/水混合液」という)、およびパーティクルを含む水/EG混合液をそれぞれ酸化シリコン膜(厚さ78nm)のチップ上に塗布し、それぞれのチップをスピンコートで回転させて、その後のパーティクルの量を調べた。この場合、事前に与えられているパーティクルの量は互いに等しい。また、水としてDIWを用い、水/EG混合液のEG濃度は10重量%であった。また、IPA/水混合液におけるIPAの濃度は、たとえば5重量%である。
パーティクルを含む水では、汚染範囲が1.087%であったのに対し、IPA/水混合液では、汚染範囲が2.235%であり、水/EG混合液では、汚染範囲が0.007%であった。
この理由は、IPA/水混合液では、気固液界面でIPAが主として蒸発した結果、気固液界面に向かうマランゴニ対流が発生し、これによりパーティクルがより一層気固液界面へと促されたものと考えられる。その結果、パーティクル性能が悪化している。
一方、水/EG混合液では、気固液界面で水が主として蒸発した結果、気固液界面から離れる方向に向かうマランゴニ対流が発生し、これにより、パーティクルのチップ表面への析出が抑制されたものと考えられる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。
1 基板処理装置
3 制御ユニット
5 スピンチャック(基板保持ユニット)
8 混合液供給ユニット
14 スピンモータ(基板回転ユニット)
201 基板処理装置
W 基板

Claims (8)

  1. 基板の表面を、処理液を用いて処理する基板処理方法であって、
    前記基板の表面に付着している処理液を、第1の液体と、前記第1の液体よりも沸点が高くかつ前記第1の液体よりも低い表面張力を有する第2の液体との混合液で置換する混合液置換工程と、
    前記混合液置換工程の後、前記基板の表面から前記混合液を除去する混合液除去工程とを含む、基板処理方法。
  2. 前記基板を水平に保持する基板保持工程をさらに含み、
    前記混合液置換工程は、前記基板の上面を覆う前記混合液の液膜を形成する液膜形成工程を含み、
    前記混合液除去工程は、
    前記混合液の前記液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、
    前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程とを含む、請求項1に記載の基板処理方法。
  3. 前記液膜形成工程に並行して、前記基板を静止状態とさせまたは前記回転軸線回りにパドル速度で前記基板を回転させるパドル工程をさらに含む、請求項2に記載の基板処理方法。
  4. 前記液膜除去領域形成工程は、前記基板の上面に気体を吹き付ける気体吹き付け工程を含む、請求項2または3に記載の基板処理方法。
  5. 前記気体は、常温よりも高温の高温気体を含む、請求項4に記載の基板処理方法。
  6. 前記液膜除去領域大工程は、前記基板を前記液膜形成工程時よりも高速度で回転させる高速回転工程を含む、請求項2〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  7. 前記第1の液は水を含み、
    前記第2の液はエチレングリコールを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  8. 基板を水平に保持する基板保持ユニットと、
    第1の液体と、前記第1の液体よりも沸点が高くかつ前記第1の液体よりも低い表面張力を有する第2の液体との混合液を、前記基板の上面に供給する混合液供給ユニットと、
    少なくとも混合液供給ユニットを制御する制御ユニットとを含み、
    前記制御ユニットは、前記基板の上面を覆う前記混合液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記混合液の前記液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程とを実行する、基板処理装置。
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