[1.本開示の実施形態の概要]
本開示は、以下の項目に記載の発光素子、発光装置および投影装置を含む。
[項目1]
励起光源と、
励起光源からの励起光の光路上に配置された発光素子と、
発光素子から出射された光の光路上に配置された第1の集光レンズと、を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限
する、発光装置。
[項目2]
励起光源と、
励起光源からの励起光の光路上に配置された発光素子と、
発光素子から出射された光の光路上に配置された第1の集光レンズと、を備え、
発光素子は、
透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
表面構造に近接して配置され、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、発光装置。
[項目3]
励起光源と、
励起光源からの励起光の光路上に配置された発光素子と、
発光素子から出射された光の光路上に配置された第1の集光レンズと、を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層よりも高い屈折率を有する透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、発光装置。
[項目4]
励起光源と、
励起光源からの励起光の光路上に配置された発光素子と、
発光素子から出射された光の光路上に配置された第1の集光レンズと、を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、発光装置。
[項目5]
表面構造は、少なくとも1つの周期構造を有し、
少なくとも1つの周期構造の周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ、項目1から4のいずれかに記載の発光装置。
[項目6]
発光素子と第1の集光レンズとの間に配置されたコリメートレンズを有する、項目1から5のいずれかに記載の発光装置。
[項目7]
第1の集光レンズから出射された光が入射する位置に光ファイバの接続部を有する、項目1から6のいずれかに記載の発光装置。
[項目8]
励起光源と発光素子との間に配置された第2の集光レンズを有する、項目1から7のいずれかに記載の発光装置。
[項目9]
励起光源と発光素子との間に配置されたコリメートレンズを有する、項目1から7のいずれかに記載の発光装置。
[項目10]
励起光源と第2の集光レンズとの間に配置されたコリメートレンズを有する、項目8に記載の発光装置。
[項目11]
発光素子と、
発光素子を支持する支持体と、
を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
支持体は、発光素子の一部が露出するように、発光素子の他の部分に接触して発光素子を支持する、
発光装置。
[項目12]
支持体は、フォトルミネッセンス層に接触し、
支持体の熱伝導率は、フォトルミネッセンス層の熱伝導率よりも高い、
項目11に記載の発光装置。
[項目13]
支持体は、フォトルミネッセンス層の周囲を取り囲んでいる、項目11または12に記載の発光装置。
[項目14]
励起光を出射する励起光源をさらに備え、
励起光源は、励起光が発光素子において露出した部分に入射するように配置され、励起光はフォトルミネッセンス層の法線方向に対して傾斜した角度でフォトルミネッセンス層に入射する、
項目11から13のいずれかに記載の発光装置。
[項目15]
支持体は、
発光素子に接する支持部と、
支持部から励起光源の側に広がる開口部であって、フォトルミネッセンス層の法線方向に対して傾斜した側面を有する開口部と、
を有する、項目14に記載の発光装置。
[項目16]
励起光源は、励起光が開口部の側面に沿って発光素子に入射するように配置されている、項目15に記載の発光装置。
[項目17]
支持体は、
発光素子に接する支持部と、
支持部から励起光の光路に沿って延びる開口部と、
を有する、項目11から14のいずれかに記載の発光装置。
[項目18]
空気中の波長がλaの光に対する透光層の屈折率nt-aは、光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率nwav-aよりも小さい、項目11から17のいずれかに記載の発光装置。
[項目19]
空気中の波長がλaの光は、表面構造によって予め決められた第1の方向において強度が最大になる、項目11から18のいずれかに記載の発光装置。
[項目20]
表面構造は、空気中の波長がλaの光の、第1の方向を基準とする指向角を15°未満に制限する、項目19に記載の発光装置。
[項目21]
表面構造は、空気中の波長がλaの光がフォトルミネッセンス層の法線方向に最も強く出射され、波長λexの励起光がフォトルミネッセンス層の内部を伝播する場合に励起光がフォトルミネッセンス層の法線方向から角度θoutの方向に最も強く出射されるように構成され、
励起光源は、励起光が発光素子に入射角θoutで入射するように配置されている、
項目11から20のいずれかに記載の発光装置。
[項目22]
発光素子と、
発光素子を支持する支持体と、
を備え、
発光素子は、
透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
表面構造に近接して配置され、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
支持体は、発光素子の一部が露出するように、発光素子の他の部分に接触して発光素子を支持する、
発光装置。
[項目23]
発光素子と、
発光素子を支持する支持体と、
を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層よりも高い屈折率を有する透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
支持体は、発光素子の一部が露出するように、発光素子の他の部分に接触して発光素子を支持する、
発光装置。
[項目24]
発光素子と、
発光素子を支持する支持体と、
を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
支持体は、発光素子の一部が露出するように、発光素子の他の部分に接触して発光素子を支持する、
発光装置。
[項目25]
励起光源と、
発光素子と、
励起光源から出射された励起光の光路上に設けられ、励起光を反射して発光素子に導くリフレクターと、を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光装置。
[項目26]
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を、15°未満に制限する、項目1から3、25のいずれかに記載の発光装置。
[項目27]
表面構造は、フォトルミネッセンス層から出射される空気中の波長がλaの光の強度を、表面構造によって予め決められた第1の方向において最大にする擬似導波モードを、フォトルミネッセンス層の内部に形成する、項目25または26に記載の発光装置。
[項目28]
リフレクターは、励起光が、フォトルミネッセンス層の主面に垂直な方向に対して傾斜した角度でフォトルミネッセンス層に入射するように励起光を反射する、項目25から27のいずれかに記載の発光装置。
[項目29]
発光素子を支持する支持体をさらに備え、
リフレクターは、支持体の一部に設けられている、
項目25から28のいずれかに記載の発光装置。
[項目30]
支持体は、さらに、励起光源を支持する、項目29に記載の発光装置。
[項目31]
リフレクターは、励起光の反射角を変化させる角度調整機構を有する、項目25から30のいずれかに記載の発光装置。
[項目32]
励起光源と、
励起光源から出射された励起光の光路上に配置された発光素子と、を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光装置。
[項目33]
励起光源および発光素子を支持する支持体をさらに備える、項目32に記載の発光装置。
[項目34]
励起光源と発光素子との間の光路上に配置されたコリメートレンズをさらに備える、項目25から33のいずれかに記載の発光装置。
[項目35]
表面構造における隣接する2つの凸部間または隣接する2つの凹部間の距離をDintとし、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<Dint<λaの関係が成り立つ、項目1から3、11から21、25から34のいずれかに記載の発光装置。
[項目36]
表面構造は、少なくとも1つの周期構造を有し、
空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとし、少なくとも1つの周期構造の周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ、項目11から21、25から35のいずれかに記載の発光装置。
[項目37]
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光素子。
[項目38]
励起光源と、
発光素子と、
励起光源から出射された励起光の光路上に設けられ、励起光を反射して発光素子に導くリフレクターと、を備え、
発光素子は、
透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
表面構造に近接して配置され、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光装置。
[項目39]
励起光源と、
発光素子と、
励起光源から出射された励起光の光路上に設けられ、励起光を反射して発光素子に導くリフレクターと、を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層よりも高い屈折率を有する透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光装置。
[項目40]
励起光源と、
発光素子と、
励起光源から出射された励起光の光路上に設けられ、励起光を反射して発光素子に導くリフレクターと、を備え、
発光素子は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光装置。
[項目41]
透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
表面構造に近接して配置され、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光素子。
[項目42]
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層よりも高い屈折率を有する透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光素子。
[項目43]
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、
発光素子。
[項目44]
項目41から43のいずれかに記載の発光素子と、
発光素子におけるフォトルミネッセンス層に導入される励起光を出射する励起光源と、
を備える発光装置。
[項目45]
表面構造における隣接する2つの凸部間または隣接する2つの凹部間の距離をDintとし、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<Dint<λaの関係が成り立つ、項目44に記載の発光装置。
[項目46]
表面構造は、少なくとも1つの周期構造を有し、
空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとし、少なくとも1つの周期構造の周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ、項目45に記載の発光装置。
[項目47]
空気中の波長がλaの第1の光と、空気中の波長がλbの第2の光とを含む光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造であって、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの第1の光の指向角を制限し、第1の光の強度を、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方によって予め決められた第1の方向において最大にし、第2の光の強度を、第1の方向と異なる第2の方向において最大にする表面構造と、
第1の光と第2の光とを合成する光学系と、
を備える発光装置。
[項目48]
光学系は、第1の方向に出射された第1の光と第2の方向に出射された第2の光とを合成する、項目47に記載の発光装置。
[項目49]
光学系によって合成された光を一端から取り込み、他端から出射させる光ファイバーをさらに備える、項目47または48に記載の発光装置。
[項目50]
フォトルミネッセンス層におけるフォトルミネッセンス材料を励起して第1の光および第2の光を発生させる励起光を含む第3の光をフォトルミネッセンス層に入射させる光源をさらに備える、項目47から49のいずれかに記載の発光装置。
[項目51]
光学系は、光源から出射され、フォトルミネッセンス層を透過した第3の光の一部と、第1の光と、第2の光とを合成する、項目50に記載の発光装置。
[項目52]
空気中の波長がλaの第1の光と、空気中の波長がλbの第2の光とを含む光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造であって、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの第1の光の指向角を制限し、第1の光の強度を、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方によって予め決められた第1の方向において最大にし、第2の光の強度を、第1の光の方向と異なる第2の方向において最大にする表面構造と、
第1の光を第1の光ファイバーに導入する第1の光学系と、
第2の光を第2の光ファイバーに導入する第2の光学系と、
を備える発光装置。
[項目53]
第1の光学系は、第1の方向に出射された第1の光を第1の光ファイバーに導入し、
第2の光学系は、第2の方向に出射された第2の光を第2の光ファイバーに導入する、
項目52に記載の発光装置。
[項目54]
第1の光ファイバーと、第2の光ファイバーとをさらに備え、
第1の光ファイバーおよび第2の光ファイバーは、連結され、連結点において第1の光と第2の光とを合成する、
項目52または53に記載の発光装置。
[項目55]
フォトルミネッセンス層におけるフォトルミネッセンス材料を励起して第1の光および第2の光を発生させる励起光を含む第3の光をフォトルミネッセンス層に入射させる光源をさらに備える、項目52から54のいずれかに記載の発光装置。
[項目56]
光源から出射され、フォトルミネッセンス層を透過した第3の光の一部を第3の光ファイバーに導入する第3の光学系をさらに備える、項目55に記載の発光装置。
[項目57]
第1から第3の光ファイバーをさらに備え、
第1から第3の光ファイバーは、連結され、連結点において第1から第3の光を合成する、項目56に記載の発光装置。
[項目58]
表面構造における隣接する2つの凸部の中心間または隣接する2つの凹部の中心間の距離をDintとし、空気中の波長がλaの第1の光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<Dint<λaの関係が成り立つ、項目47から57のいずれかに記載の発光装置。
[項目59]
第1表面構造は、少なくとも1つの周期構造を有し、
空気中の波長がλaの光に対する第1フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとし、少なくとも1つの周期構造の周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ、項目47から58のいずれかに記載の発光装置。
[項目60]
前記フォトルミネッセンス層と前記透光層とが互いに接している、項目1から3、11から23、25から39、41、42、47から59のいずれかに記載の発光装置。
[項目61]
透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
表面構造に近接して配置され、空気中の波長がλaの第1の光と、空気中の波長がλbの第2の光とを含む光を発するフォトルミネッセンス層と、
第1の光と第2の光とを合成する光学系と、
を備え、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの第1の光の指向角を制限し、第1の光の強度を、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方によって予め決められた第1の方向において最大にし、第2の光の強度を、第1の光の方向と異なる第2の方向において最大にする、
発光装置。
[項目62]
空気中の波長がλaの第1の光と、空気中の波長がλbの第2の光とを含む光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層よりも高い屈折率を有する透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造であって、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、第1の光の強度を、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方によって予め決められた第1の方向において最大にし、第2の光の強度を、第1の光の方向と異なる第2の方向において最大にする表面構造と、
第1の光と第2の光とを合成する光学系と、
を備える、
発光装置。
[項目63]
空気中の波長がλaの第1の光と、空気中の波長がλbの第2の光とを含む光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造であって、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、第1の光の強度を、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方によって予め決められた第1の方向において最大にし、第2の光の強度を、第1の光の方向と異なる第2の方向において最大にする表面構造と、
第1の光と第2の光とを合成する光学系と、
を備える、
発光装置。
[項目64]
第1光源と、
第2光源と、
を備え、
第1光源は、
空気中の波長がλaの光を含む第1の光を発する第1フォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された第1透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の第1凸部および複数の第1凹部の少なくとも一方を含む第1表面構造であって、第1フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する第1表面構造と、
を備え、
第2光源は、空気中の波長がλbの光を含む第2の光を出射し、
第1光源から出射された第1の光と第2光源から出射された第2の光とが合成される、
発光装置。
[項目65]
第1表面構造における隣接する2つの第1凸部の中心間または隣接する2つの第1凹部の中心間の距離をDint-aとし、空気中の波長がλaの光に対する第1フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<Dint-a<λaの関係が成り立つ、項目64に記載の発光装置。
[項目66]
第1表面構造は、少なくとも1つの第1周期構造を有し、
空気中の波長がλaの光に対する第1フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとし、少なくとも1つの第1周期構造の周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ、項目64または65に記載の発光装置。
[項目67]
第1光源から出射される空気中の波長がλaの光の強度は、複数の第1凸部および複数の第1凹部の少なくとも一方によって予め決められた第1の方向において最大である、項目64から66のいずれかに記載の発光装置。
[項目68]
第2光源は、
空気中の波長がλbの光を含む第2の光を発する第2フォトルミネッセンス層と、
第2フォトルミネッセンス層に近接して配置された第2透光層と、
第2フォトルミネッセンス層および第2透光層の少なくとも一方の表面に形成された複数の第2凸部および複数の第2凹部の少なくとも一方を含む第2表面構造であって、第2フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλbの光の指向角を制限する第2表面構造と、
を有する、
項目64から67のいずれかに記載の発光装置。
[項目69]
第2表面構造における隣接する2つの第2凸部の中心間または隣接する2つの第2凹部の中心間の距離をDint-bとし、空気中の波長がλbの光に対する第2フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-bとすると、λb/nwav-b<Dint-b<λbの関係が成り立つ、項目68に記載の発光装置。
[項目70]
第2表面構造は、少なくとも1つの第2周期構造を有し、
空気中の波長がλbの光に対する第2フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-bとし、少なくとも1つの第2周期構造の周期をpbとすると、λb/nwav-b<pb<λbの関係が成り立つ、項目68または69に記載の発光装置。
[項目71]
第2光源から出射される空気中の波長がλbの光の強度は、複数の第2凸部および複数の第2凹部の少なくとも一方によって予め決められた第2の方向において最大である、項目68から70のいずれかに記載の発光装置。
[項目72]
第1光源から出射された第1の光と第2光源から出射された第2の光とが合成されて白色光が生成される、項目64から71のいずれかに記載の発光装置。
[項目73]
第3光源をさらに備え、
第3光源は、
空気中の波長がλcの光を含む第3の光を発する第3フォトルミネッセンス層と、
第3フォトルミネッセンス層に近接して配置された第3透光層と、
第3フォトルミネッセンス層および第3透光層の少なくとも一方の表面に形成された複数の第3凸部および複数の第3凹部の少なくとも一方を含む第3表面構造であって、第3フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλcの光の指向角を制限する第3表面構造と、
を有し、
第1光源から出射された第1の光と、第2光源から出射された第2の光と、第3光源から出射された第3の光とが合成される、
項目64から72のいずれかに記載の発光装置。
[項目74]
第3表面構造における隣接する2つの第3凸部の中心間または隣接する2つの第3凹部の中心間の距離をDint-cとし、空気中の波長がλcの光に対する第3フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-cとすると、λc/nwav-c<Dint-c<λcの関係が成り立つ、項目73に記載の発光装置。
[項目75]
第3表面構造は、少なくとも1つの第3周期構造を有し、
空気中の波長がλcの光に対する第3フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-cとし、少なくとも1つの第3周期構造の周期をpcとすると、λc/nwav-c<pc<λcの関係が成り立つ、項目73または74に記載の発光装置。
[項目76]
第3光源から出射される空気中の波長がλcの光の強度は、複数の第3凸部および複数の第3凹部の少なくとも一方によって予め決められた第3の方向において最大である、項目73から75のいずれかに記載の発光装置。
[項目77]
第1光源から出射された第1の光と、第2光源から出射された第2の光と、第3光源から出射された第3の光とが合成されて白色光が生成される、項目73から76のいずれかに記載の発光装置。
[項目78]
第1光源から出射された第1の光を一端から取り込み、他端から出射させる光ファイバーをさらに備える、項目64から77のいずれかに記載の発光装置。
[項目79]
第2光源は、第2の光が第1光源を通過するように配置され、
第1光源から出射された第1の光と、第1光源を通過した第2の光とが合成される、項目64から78のいずれかに記載の発光装置。
[項目80]
第1の光と第2の光とが第1光源の内部で合成される、項目64から78のいずれかに記載の発光装置。
[項目81]
第1の光と第2の光とを第1光源の外部で合成させる光学系をさらに備える、項目64から78のいずれかに記載の発光装置。
[項目82]
光学系は、第1の光と第2の光とを合成して光ファイバーに入射させる、項目81に記載の発光装置。
[項目83]
第2光源から出射される第2の光は、第1フォトルミネッセンス層内の発光材料を励起して発光させる励起光を含み、
第2光源は、第2の光を第1フォトルミネッセンス層に入射させ、
光学系は、第1発光素子から出射した第1の光と、第2光源から出射して第1光源を透過した第2の光とを合成して光ファイバーに入射させる、項目82に記載の発光装置。
[項目84]
第1光源から出射された第1の光を一端から取り込む第1光ファイバーと、
第2光源から出射された第2の光を一端から取り込む第2光ファイバーと、
をさらに備え、
第1光ファイバーおよび第2光ファイバーは、連結され、連結点において第1の光と第2の光とを合成する、
項目64から77のいずれかに記載の発光装置。
[項目85]
第1フォトルミネッセンス層と第1透光層とが互いに接している、項目64から84のいずれかに記載の発光装置。
[項目86]
第1光源と、
第2光源と、
を備え、
第1光源は、
透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
表面構造に近接して配置され、空気中の波長がλaの光を含む第1の光を発するフォトルミネッセンス層と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
第2光源は、空気中の波長がλbの光を含む第2の光を出射し、
第1光源から出射された第1の光と第2光源から出射された第2の光とが合成される、
発光装置。
[項目87]
第1光源と、
第2光源と、
を備え、
第1光源は、
空気中の波長がλaの光を含む第1の光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層よりも高い屈折率を有する透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
第2光源は、空気中の波長がλbの光を含む第2の光を出射し、
第1光源から出射された第1の光と第2光源から出射された第2の光とが合成される、
発光装置。
[項目88]
第1光源と、
第2光源と、
を備え、
第1光源は、
空気中の波長がλaの光を含む第1の光を発するフォトルミネッセンス層と、 フォトルミネッセンス層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
第2光源は、空気中の波長がλbの光を含む第2の光を出射し、
第1光源から出射された第1の光と第2光源から出射された第2の光とが合成される、
発光装置。
[項目89]
光源部と、
光変調素子を有する画像形成部と、
光源部からの光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーと、
を備え、
光源部は、
励起光源と、
励起光源からの励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、投影装置。
[項目90]
励起光源を有する光源部と、
画像形成部と、
励起光源からの励起光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーと、
を備え、
画像形成部は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光を受ける光変調素子と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、投影装置。
[項目91]
光源部と、
光変調素子を有する画像形成部と、
光源部からの光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーと、
を備え、
光源部は、
励起光源と、
透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
表面構造に近接して配置され、励起光源からの励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、投影装置。
[項目92]
励起光源を有する光源部と、
画像形成部と、
励起光源からの励起光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーと、
を備え、
画像形成部は、
透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
表面構造に近接して配置され、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光を受ける光変調素子と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、投影装置。
[項目93]
光源部と、
光変調素子を有する画像形成部と、
光源部からの光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーと、
を備え、
光源部は、
励起光源と、
励起光源からの励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層よりも高い屈折率を有する透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、投影装置。
[項目94]
励起光源を有する光源部と、
画像形成部と、
励起光源からの励起光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーと、
を備え、
画像形成部は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層よりも高い屈折率を有する透光層と、
透光層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光を受ける光変調素子と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、投影装置。
[項目95]
フォトルミネッセンス層と透光層とが互いに接している、項目89から94のいずれかに記載の投影装置。
[項目96]
光源部と、
光変調素子を有する画像形成部と、
光源部からの光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーと、
を備え、
光源部は、
励起光源と、
励起光源からの励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、投影装置。
[項目97]
励起光源を有する光源部と、
画像形成部と、
励起光源からの励起光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーと、
を備え、
画像形成部は、
励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、
フォトルミネッセンス層の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造と、
フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光を受ける光変調素子と、を有し、
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する、投影装置。
[項目98]
表面構造は、フォトルミネッセンス層から出射される空気中の波長がλaの光の強度を、表面構造によって予め決められた第1の方向において最大にする擬似導波モードを、フォトルミネッセンス層の内部に形成する、項目89から97のいずれかに記載の投影装置。
[項目99]
空気中の波長がλaの光は、表面構造によって予め決められた第1の方向において強度が最大になる、項目89から97のいずれかに記載の投影装置。
[項目100]
空気中の波長がλaの光の第1の方向を基準としたときの指向角は、15°未満である、項目89から99のいずれかに記載の投影装置。
[項目101]
表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を、15°未満に制限する、項目89から100のいずれかに記載の投影装置。
[項目102]
表面構造における隣接する2つの凸部間または隣接する2つの凹部間の距離をDintとし、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<Dint<λaの関係が成り立つ、項目89から101のいずれかに記載の投影装置。
[項目103]
表面構造は、少なくとも1つの周期構造を有し、
少なくとも1つの周期構造の周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ、項目89から102のいずれかに記載の投影装置。
本開示のある実施形態による発光装置は、励起光源と、励起光源からの励起光の光路上に配置された発光素子と、発光素子から出射された光の光路上に配置された集光レンズとを有する。発光素子は、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層を含む。後に詳しく説明するように、本開示の発光装置における発光素子は、フォトルミネッセンス材料の発光効率、指向性、または偏光特性を制御することが可能な新規な構造を有する。本開示のある実施形態によれば、フォトルミネッセンス材料を利用する新規な構造を有する発光装置を提供することができる。以下では、まず、本開示の発光装置に適用し得る発光素子の例を説明する。発光装置の全体的な構成の詳細は、後述する。
本開示のある実施形態による発光素子は、フォトルミネッセンス層と、フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造とを有する。この表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する、空気中の波長がλaの光の指向角を制限する。表面構造は、フォトルミネッセンス層または透光層の面内に広がるサブミクロン構造であり得る。サブミクロン構造は、例えば、凸部または凹部の少なくとも一方を含む周期構造であってもよい。サブミクロン構造は、例えば、複数の凸部または複数の凹部を含む。フォトルミネッセンス層が発する光は、空気中の波長がλaの第1の光を含み、隣接する凸部間または凹部間の距離をDint、第1の光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<Dint<λaの関係が成り立つ。あるいは、周期構造における周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ。波長λaは、例えば、可視光の波長範囲内(例えば、380nm以上780nm以下)にある。赤外線を利用する用途では、波長λaは、780nmを超える場合もあり得る。一方、紫外線を利用する用途では、波長λaは、380nm未満の場合もあり得る。本開示では、赤外線および紫外線を含めた電磁波全般を、便宜上「光」と表現する。
フォトルミネッセンス層は、フォトルミネッセンス材料を含む。フォトルミネッセンス材料は、励起光を受けて発光する材料を意味する。フォトルミネッセンス材料は、狭義の蛍光材料および燐光材料を包含し、無機材料だけなく、有機材料(例えば色素)を包含し、さらには、量子ドット(即ち、半導体微粒子)を包含する。フォトルミネッセンス層は、フォトルミネッセンス材料に加えて、マトリクス材料(即ち、ホスト材料)を含んでもよい。マトリクス材料は、例えば、ガラスや酸化物などの無機材料や樹脂である。
フォトルミネッセンス層に近接して配置される透光層は、フォトルミネッセンス層が発する光に対して透過率が高い材料、例えば、無機材料や樹脂で形成される。透光層は、例えば誘電体(特に、光の吸収が少ない絶縁体)で形成され得る。透光層は、例えば、フォトルミネッセンス層を支持する基板であってよい。フォトルミネッセンス層の空気側の表面がサブミクロン構造を有する場合、空気層が透光層となり得る。
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面には、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造が形成される。ここで「表面」とは、他の物質と接している部分(即ち界面)を意味する。透光層が空気等の気体の層である場合は、その気体の層と他の物質(例えばフォトルミネッセンス層)との間の界面が、透光層の表面である。この表面構造は、「凹凸構造」と称することもできる。表面構造は、典型的には、複数の凸部または複数の凹部が一次元または二次元に周期的に配列された部分を含む。そのような表面構造は、「周期構造」と称することができる。複数の凸部および複数の凹部は、互いに接する2つの屈折率の異なる部材(または媒質)の境界に形成される。したがって、「周期構造」は、ある方向に屈折率が周期的に変動する部分を含む構造といえる。ここで「周期的」とは、厳密に周期的である態様に限定されず、近似的に周期的であるといえる態様を含む。本明細書において、連続する複数の凸部または凹部のうち、隣接する2つの中心間の距離(以下、「中心間隔」と称することがある。)が、いずれの2つの隣接する凸部または凹部についても、ある値pの±15%以内の範囲に収まっているとき、その部分は、周期pを有する周期構造であると考える。
本明細書において「凸部」は、基準の高さの部分に対して盛り上がった部分を意味する。「凹部」は、基準の高さの部分に対して窪んだ部分を意味する。凸部および凹部の形状、サイズ、分布によっては、いずれが凸部でいずれが凹部かが容易に判断できない場合があり得る。例えば、図107に示す断面図では、部材610が凹部を有し、部材620が凸部を有していると解釈することもできれば、その逆の解釈も可能である。どのように解釈したとしても、部材610および部材620の各々が、複数の凸部および凹部の少なくとも一方を有するといえることには変わりはない。
表面構造における隣接する2つの凸部または隣接する2つの凹部の中心間の距離(周期構造においては周期p)は、典型的にはフォトルミネッセンス層が発する光の空気中における波長λaよりも短い。フォトルミネッセンス層から発せられる光が可視光、短波長の近赤外線、または紫外線の場合、その距離はマイクロメートルのオーダー(即ちミクロンオーダー)よりも短い。よって、そのような表面構造を、「サブミクロン構造」と称することがある。「サブミクロン構造」が一部に1マイクロメートル(μm)を超える中心間隔または周期を有する部分を含んでいてもよい。以下の説明では、可視光を発するフォトルミネッセンス層を主に想定し、表面構造を意味する用語として「サブミクロン構造」の用語を用いることがある。しかしながら、サブミクロンオーダーを超える微細構造(例えば、赤外線を利用する用途で使用されるミクロンオーダーの微細構造)を有する表面構造についても、以下の議論は全く同様に成立する。
本開示の実施形態においては、後に計算結果および実験結果を参照して詳述するように、フォトルミネッセンス層および透光層の内部に、ユニークな電場分布を形成する。これは、導波光がサブミクロン構造(即ち表面構造)と相互作用して形成される。このような電場分布を形成する光のモードを「擬似導波モード」と表現することができる。この擬似導波モードを活用することによって、以下で説明するように、フォトルミネッセンスの発光効率の増大、指向性の向上、偏光の選択性の効果を得ることができる。なお、以下の説明において、擬似導波モードという用語を使って、本発明者らが見出した、新規な構成および/または新規なメカニズムを説明することがある。その説明は、1つの例示的な説明に過ぎず、本開示をいかなる意味においても限定するものではない。
サブミクロン構造は、例えば複数の凸部を含み、隣接する凸部間の中心間距離をDintとすると、λa/nwav-a<Dint<λaの関係を満足し得る。サブミクロン構造は、複数の凸部に代えて複数の凹部を含んでもよい。以下では、簡単のために、サブミクロン構造が複数の凸部を有するとして説明する。λは光の波長を表し、下付きの「a」を有するλaは、空気中での光の波長であることを表現する。nwavはフォトルミネッセンス層の屈折率である。フォトルミネッセンス層が複数の材料を混合した媒質である場合、各材料の屈折率をそれぞれの体積比率で重み付けした平均屈折率をnwavとする。一般に屈折率nは波長に依存するので、λaの光に対する屈折率であることをnwav-aと明示することが望ましいが、簡単のために省略することがある。nwavは基本的にフォトルミネッセンス層の屈折率であるが、フォトルミネッセンス層に隣接する層の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率よりも大きい場合、当該屈折率が大きい層の屈折率およびフォトルミネッセンス層の屈折率をそれぞれの体積比率で重み付けした平均屈折率をnwavとする。この場合は、光学的には、フォトルミネッセンス層が複数の異なる材料の層で構成されている場合と等価であるからである。
擬似導波モードの光に対する媒質の有効屈折率をneffとすると、na<neff<nwavを満たす。ここで、naは空気の屈折率である。擬似導波モードの光を、フォトルミネッセンス層の内部を入射角θで全反射しながら伝搬する光であると考えると、有効屈折率neffは、neff=nwavsinθと書ける。また、有効屈折率neffは、擬似導波モードの電場が分布する領域に存在する媒質の屈折率によって決まるので、例えば、サブミクロン構造が透光層に形成されている場合、フォトルミネッセンス層の屈折率だけでなく、透光層の屈折率にも依存する。また、擬似導波モードの偏光方向(TEモードとTMモード)によって電場の分布は異なるので、有効屈折率neffはTEモードとTMモードとの間で異なり得る。
サブミクロン構造は、フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方に形成される。フォトルミネッセンス層と透光層とが互いに接するとき、フォトルミネッセンス層と透光層との界面にサブミクロン構造が形成されてもよい。このとき、フォトルミネッセンス層および透光層がサブミクロン構造を有する。フォトルミネッセンス層はサブミクロン構造を有しなくてもよい。このとき、サブミクロン構造を有する透光層がフォトルミネッセンス層に近接して配置される。ここで、透光層(またはそのサブミクロン構造)がフォトルミネッセンス層に近接するとは、典型的には、これらの間の距離が、波長λaの半分以下であることをいう。これにより、導波モードの電場がサブミクロン構造に到達し、擬似導波モードが形成される。ただし、透光層の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率よりも大きいときには上記の関係を満足しなくても透光層まで光が到達するので、透光層のサブミクロン構造とフォトルミネッセンス層との間の距離は、波長λaの半分超であってもよい。本明細書では、フォトルミネッセンス層と透光層とが、導波モードの電場がサブミクロン構造に到達し、擬似導波モードが形成されるような配置関係にあるとき、両者が互いに関連付けられていると表現することがある。
サブミクロン構造が、上記のように、λa/nwav-a<Dint<λaの関係を満足するとき、可視光を利用する用途では、表面構造はサブミクロンオーダーの大きさで特徴づけられる。サブミクロン構造は、例えば、以下に詳細に説明する実施形態の発光装置の発光素子におけるように、少なくとも1つの周期構造を含み得る。少なくとも1つの周期構造は、周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係を満たし得る。すなわち、サブミクロン構造は、隣接する凸部間の距離Dintがpaで一定の周期構造を含み得る。サブミクロン構造がこのような周期構造を含むと、擬似導波モードの光は、伝搬しながら周期構造と相互作用を繰り返すことにより、サブミクロン構造によって回折される。これは、自由空間を伝播する光が周期構造により回折する現象とは異なり、光が導波しながら(即ち、全反射を繰り返しながら)周期構造と作用する現象である。したがって、周期構造による位相シフトが小さくても(即ち、周期構造の高さが小さくても)効率よく光の回折を起こすことができる。
以上のようなメカニズムを利用すれば、擬似導波モードにより電場が増強される効果によって、フォトルミネッセンスの発光効率が増大するとともに、発生した光が擬似導波モードに結合する。擬似導波モードの光は、周期構造で規定される回折角度だけ進行角度が曲げられる。これを利用することによって、特定の波長の光を特定の方向に出射することができる。すなわち、周期構造が存在しない場合と比較して、指向性が顕著に向上する。さらに、TEモードとTMモードとで有効屈折率neff(=nwavsinθ)が異なるので、高い偏光の選択性を同時に得ることもできる。例えば、後に実験例を示すように、特定の波長(例えば610nm)の直線偏光(例えばTMモード)を正面方向に強く出射する発光素子を得ることができる。このとき、正面方向に出射する光の指向角は例えば15°未満である。ここで「指向角」とは、出射する特定の波長の直線偏光について、強度が最大である方向と、強度が最大強度の50%になる方向との間の角度と定義される。すなわち、指向角は強度が最大である方向を0°とした場合の片側の角度である。このように、本開示の実施形態における周期構造(即ち表面構造)は、特定の波長λaの光の指向角を制限する。言い換えれば、当該波長λaの光の配光を、周期構造がない場合と比較して狭角にする。このような、周期構造が存在しない場合と比較して指向角が低減された配光を、「狭角配光」と称することがある。本開示の実施形態における周期構造は、波長λaの光の指向角を制限するが、波長λaの光の全てを狭角に出射するのではない。例えば後述する図29に示す例では、強度が最大になる方向から離れた角度(例えば20°〜70°)の方向にも波長λaの光が僅かに出射する。しかしながら、全体的には、波長λaの出射光が0°〜20°の範囲に集中しており、指向角が制限されている。
なお、本開示の典型的な実施形態における周期構造は、一般的な回折格子とは異なり、光の波長λaよりも短い周期を有する。一般的な回折格子は、光の波長λaよりも十分に長い周期を有し、その結果、特定の波長の光を0次光(即ち透過光)、±1次回折光などの複数の回折光に分けて出射させる。そのような回折格子は、高次の回折光が0次光の両側に発生する。回折格子における、0次光の両側に発生する高次の回折光は、狭角配光の実現を困難にする。言い換えれば、従来の回折格子は、光の指向角を所定の角度(例えば15°程度)に制限するという本開示の実施形態に特有の効果を奏しない。この点で、本開示の実施形態における周期構造は、従来の回折格子とは顕著に異なる性質を有する。
サブミクロン構造の周期性が低くなると、指向性、発光効率、偏光度および波長選択性が弱くなる。必要に応じて、サブミクロン構造の周期性を調整すればよい。周期構造は、偏光の選択性が高い1次元周期構造であってもよいし、偏光度を小さくできる2次元周期構造であってもよい。
サブミクロン構造は、複数の周期構造を含み得る。複数の周期構造は、例えば、周期(ピッチ)が互いに異なる。あるいは、複数の周期構造は、例えば、周期性を有する方向(軸)が互いに異なる。複数の周期構造は、同一面内に形成されてもよいし、積層されてもよい。もちろん、発光素子は、複数のフォトルミネッセンス層と複数の透光層とを有し得る。これらが複数のサブミクロン構造を有してもよい。
サブミクロン構造は、フォトルミネッセンス層が発する光を制御するためだけでなく、励起光を効率よくフォトルミネッセンス層に導くためにも用いることができる。すなわち、励起光がサブミクロン構造により回折されフォトルミネッセンス層および透光層を導波する擬似導波モードに結合することで、効率よくフォトルミネッセンス層を励起することができる。フォトルミネッセンス材料を励起する光の空気中における波長をλexとし、この励起光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-exとすると、λex/nwav-ex<Dint<λexの関係が成り立つサブミクロン構造を用いればよい。nwav-exはフォトルミネッセンス材料の励起波長における屈折率である。周期をpexとすると、λex/nwav-ex<pex<λexの関係が成り立つ周期構造を有するサブミクロン構造を用いてもよい。励起光の波長λexは、例えば、450nmであるが、可視光よりも短波長であってもよい。励起光の波長が可視光の範囲内にある場合、フォトルミネッセンス層が発する光とともに、励起光を出射するようにしてもよい。
[2.本開示の基礎となった知見]
本開示の具体的な実施形態を説明する前に、まず、本開示の基礎となった知見を説明し、続けて、フォトルミネッセンス層を有する発光素子の例示的な構成を説明する。上述のように、蛍光灯、白色LEDなどで使われるフォトルミネッセンス材料は等方的に発光する。フォトルミネッセンス材料を用い、特定の方向を光で照らすためには、一般に、リフレクターやレンズなどの光学部品が必要である。しかしながら、もしフォトルミネッセンス層自身が指向性をもって発光すれば、例えばレンズを小さくできるので、これにより、光学デバイスや器具の大きさを大幅に小さくすることができる。本発明者らは、このような着想に基づき、指向性発光を得るために、フォトルミネッセンス層の構成を詳細に検討した。
本発明者らは、まず、フォトルミネッセンス層からの光が特定の方向に偏るようにするため、発光自体に特定の方向性をもたせることを考えた。発光を特徴付ける指標である発光レートΓは、フェルミの黄金則により、以下の式(1)で表される。
式(1)において、rは位置を表すベクトル、λは光の波長、dは双極子ベクトル、Eは電場ベクトル、ρは状態密度である。一部の結晶性物質を除く多くの物質では、双極子ベクトルdはランダムな方向性を有している。また、フォトルミネッセンス層のサイズと厚さが光の波長よりも十分に大きい場合、電場Eの大きさも向きに依らずほとんど一定である。よって、ほとんどの場合、<(d・E(r))>2の値は方向に依らない。即ち、発光レートΓは方向に依らず一定である。このため、ほとんどの場合においてフォトルミネッセンス層は等方的に発光する。
一方、式(1)から、異方的な発光を得るためには、双極子ベクトルdを特定の方向に揃えるか、電場ベクトルの特定方向の成分を増強するかのいずれかの工夫が必要であることがわかる。これらのいずれかの工夫を行うことで、指向性発光を実現できる。本開示の実施形態では、フォトルミネッセンス層へ光を閉じ込める効果により、特定方向の電場成分が増強された擬似導波モードを利用する。そのための構成について検討し、詳細に分析した結果を以下に説明する。
[3.特定の方向の電場のみを強くする構成]
本発明者らは、電場が強い導波モードを用いて、発光の制御を行うことを考えた。導波構造自体がフォトルミネッセンス材料を含む構成とすることで、発生した光を導波モードに結合させることができる。しかしながら、ただ単にフォトルミネッセンス材料を用いて導波構造を形成しただけでは、発せられた光が導波モードとなるため、正面方向へはほとんど光は出てこない。そこで、本発明者らは、フォトルミネッセンス材料を含む導波路と周期構造とを組み合わせることを考えた。導波路に周期構造が近接し、光の電場が周期構造と重なりながら導波する場合、周期構造の作用により擬似導波モードが形成される。つまり、この擬似導波モードは、周期構造により制限された導波モードであり、電場振幅の腹が周期構造の周期と同じ周期で発生することを特徴とする。このモードは、光が導波構造に閉じ込められることにより特定方向への電場が強められたモードである。さらに、このモードは周期構造と相互作用することにより、回折効果により特定方向の伝播光へと変換される。そのため、導波路外部へと光を出射することができる。さらに、擬似導波モード以外の光は導波路内に閉じ込められる効果が小さいため、電場は増強されない。よって、発光のほとんどは大きな電場成分を有する擬似導波モードへと結合する。
つまり、本発明者らは、周期構造が近接して設けられた導波路を、フォトルミネッセンス材料を含むフォトルミネッセンス層(あるいはフォトルミネッセンス層を有する導波層)によって構成することで、発生した光を、特定方向の伝播光に変換される擬似導波モードに結合させ、指向性のある光源を実現することを考えた。
導波構造の簡便な構成として、スラブ型導波路に着目した。スラブ型導波路とは、光の導波部分が平板構造を有する導波路のことである。図30は、スラブ型導波路の一例を模式的に示す斜視図である。図30に示す導波路110Sの屈折率が、導波路110Sを支持する基板140の屈折率よりも高いとき、導波路110S内を伝播する光のモードが存在する。このようなスラブ型導波路をフォトルミネッセンス層を含む構成とすることで、発光点から生じた光の電場が導波モードの電場と大きく重なるので、フォトルミネッセンス層で生じた光の大部分を導波モードに結合させることができる。さらに、フォトルミネッセンス層の厚さを光の波長程度とすることにより、電場振幅の大きい導波モードのみが存在する状況を作り出すことができる。
さらに、フォトルミネッセンス層に周期構造が近接する場合には、導波モードの電場が周期構造と相互作用することによって擬似導波モードが形成される。フォトルミネッセンス層が複数の層で構成されている場合でも、導波モードの電場が周期構造に達していれば、擬似導波モードが形成され得る。フォトルミネッセンス層の全てがフォトルミネッセンス材料である必要はなく、その少なくとも一部の領域が、発光する機能を有していればよい。
周期構造を金属で形成した場合には、導波モードとプラズモン共鳴の効果とによるモードが形成される。このモードは、上で述べた擬似導波モードとは異なる性質を有する。また、このモードは金属による吸収が大きいためにロスが大きくなり、発光増強の効果は小さくなる。したがって、周期構造としては、吸収の少ない誘電体を用いると有益である。
本発明者らは、まずこのような導波路の表面に周期構造を形成することによって、特定の角度方向の伝播光として出射することのできる擬似導波モードに、発生した光を結合させることを検討した。図1Aは、そのような導波路(例えば、フォトルミネッセンス層)110と周期構造(例えば、透光層の一部)120とを有する発光素子100の一例を模式的に示す斜視図である。以下、透光層が周期構造を有している場合(即ち、透光層に周期的なサブミクロン構造が形成されている場合)、表面構造120を透光層120ということがある。この例では、表面構造120は、各々がy方向に延びるストライプ状の複数の凸部がx方向に等間隔に並んだ1次元周期構造である。図1Bは、この発光素子100をxz面に平行な平面で切断したときの断面図である。導波路110に接するように周期pの周期構造を設けると、面内方向の波数k
wavをもつ擬似導波モードは、導波路外の伝播光へと変換され、その波数k
outは以下の式(2)で表すことができる。
式(2)におけるmは整数であり、回折の次数を表す。
ここで、簡単のため、導波路内を導波する光を、近似的に、角度θ
wavで伝播する光線であると考え、以下の式(3)および(4)が成立するとする。
これらの式において、λ
0は光の空気中の波長、n
wavは導波路の屈折率、n
outは出射側の媒質の屈折率、θ
outは光が導波路外の基板または空気に出射するときの出射角度である。式(2)〜(4)から、出射角θ
outは、以下の式(5)で表すことができる。
式(5)より、nwavsinθwav=mλ0/pが成立するとき、θout=0となり、導波路の面に垂直な方向(即ち、正面)に光を出射させ得ることがわかる。
以上のような原理に基づけば、発生した光を特定の擬似導波モードに結合させ、さらに周期構造を利用して特定の出射角度の光に変換することにより、その方向に強い光を出射させることができると考えられる。
上記のような状況を実現するためには、いくつかの制約条件がある。まず、擬似導波モードが存在するためには、導波路内で伝播する光が全反射することが必要である。このための条件は、以下の式(6)で表される。
この擬似導波モードを周期構造によって回折させて導波路外に光を出射させるためには、式(5)において−1<sinθ
out<1である必要がある。よって、以下の式(7)を満足する必要がある。
これに対し、式(6)を考慮すると、以下の式(8)が成立すればよいことがわかる。
さらに、導波路110から出射される光の方向を正面方向(θ
out=0)にするためには、式(5)から、以下の式(9)が必要であることがわかる。
式(9)および式(6)から、必要な条件は、以下の式(10)であることがわかる。
なお、図1Aおよび図1Bに示すような周期構造を設けた場合には、mが2以上の高次の回折効率は低いので、m=1である1次の回折光を主眼に設計すると良い。このため、本開示の典型的な実施形態における周期構造では、m=1として、式(10)を変形した以下の式(11)を満足するように周期pが決定される。
図1Aおよび図1Bに示すように、導波路(例えばフォトルミネッセンス層)110が透明基板に接していない場合には、n
outは空気の屈折率(約1.0)となるので、以下の式(12)を満足するように周期pを決定すればよい。
一方、図1Cおよび図1Dに例示するような、基板140上に導波路110としてのフォトルミネッセンス層および表面構造120を形成した構造を採用してもよい。基板140としては、典型的には透明基板が用いられる。以下、基板140を透明基板140と呼ぶことがある。
透明基板140上に導波路110および表面構造120を形成した場合には、基板の屈折率n
sが空気の屈折率よりも大きいことから、式(11)においてn
out=n
sとした次式(13)を満足するように周期pを決定すればよい。
なお、式(12)、(13)では、式(10)においてm=1の場合を想定したが、m≧2であってもよい。すなわち、図1Aおよび図1Bに示すように発光素子100の両面が空気層に接している場合には、mを1以上の整数として、以下の式(14)を満足するように周期pが設定されればよい。
同様に、図1Cおよび図1Dに示す発光素子100aのように導波路110としてのフォトルミネッセンス層が透明基板140上に形成されている場合には、以下の式(15)を満足するように周期pが設定されればよい。
以上の不等式を満足するように周期構造の周期pを決定することにより、フォトルミネッセンス層から発生した光を正面方向に出射させることができ、指向性を有する発光装置を実現できる。なお、以下では、導波路110をフォトルミネッセンス層110と呼ぶことがある。
[4.計算による検証]
[4−1.周期、波長依存性]
本発明者らは、以上のような特定方向への光の出射が実際に可能であるかを光学解析によって検証した。光学解析は、サイバネット社のDiffractMODを用いた計算によって行った。これらの計算では、発光素子に対して外部から垂直に光を入射したときに、フォトルミネッセンス層における光の吸収の増減を計算することによって、外部へ垂直に出射する光の増強度を求めた。外部から入射した光が擬似導波モードに結合しフォトルミネッセンス層で吸収されるという過程は、フォトルミネッセンス層における発光が擬似導波モードへと結合し、外部へ垂直に出射する伝播光へと変換される過程と逆の過程を計算していることに対応する。また、擬似導波モードの電場分布の計算においても、同様に外部から光を入射した場合における電場を計算した。
フォトルミネッセンス層の厚さを1μm、フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav=1.8、周期構造の高さを50nm、周期構造の屈折率を1.5とし、発光波長および周期構造の周期をそれぞれ変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を図2に示す。計算モデルは、図1Aに示すように、y方向には均一な1次元周期構造とし、光の偏光はy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるとして計算を行った。図2の結果から、増強度のピークが、ある特定の波長と周期との組み合わせにおいて存在することがわかる。なお、図2において、増強度の大きさは色の濃淡で表されており、濃い(即ち黒い)方が増強度が大きく、淡い(即ち白い)方が増強度が小さい。
上記の計算において、周期構造の断面は、図1Bに示すような矩形であるとしている。式(10)におけるm=1およびm=3の条件を図示したグラフを図3に示す。図2と図3とを比較すると、図2におけるピーク位置はm=1とm=3に対応するところに存在することがわかる。m=1の方が強度が強いのは、3次以上の高次の回折光よりも1次の回折光の回折効率の方が高いからである。m=2のピークが存在しないのは、周期構造における回折効率が低いためである。
図3で示したm=1およびm=3のそれぞれに対応する領域内において、図2では複数のラインが存在することが確認できる。これは、擬似導波モードが複数存在するからであると考えられる。
[4−2.厚さ依存性]
図4は、フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav=1.8、周期構造の周期を400nm、高さを50nm、屈折率を1.5とし、発光波長およびフォトルミネッセンス層の厚さtを変えて、正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を示す。フォトルミネッセンス層の厚さtが特定の値であるときに光の増強度がピークに達することがわかる。
図4においてピークが存在する、波長が600nm、厚さtが238nm、539nmのときに、x方向に導波するモードの電場分布を計算した結果を図5Aおよび図5Bにそれぞれ示す。比較のために、ピークが存在しないt=300nmの場合について同様の計算を行った結果を図5Cに示す。計算モデルは、上記と同様、y方向に均一な1次元周期構造であるとした。各図において、黒い領域ほど電場強度が高く、白い領域ほど電場強度が低いことを表している。t=238nm、539nmの場合には、高い電場強度の分布があることに対して、t=300nmでは全体的に電場強度が低い。これは、t=238nm、539nmの場合には、導波モードが存在し、光が強く閉じ込められているからである。さらに、凸部または凸部の直下に電場が最も強い部分(腹)が必ず存在しており、表面構造120(この例では周期構造)と相関のある電場が発生している。つまり、表面構造120の配置に従って、導波するモードが得られていることがわかる。また、t=238nmの場合とt=539nmの場合とを比較すると、これらがz方向の電場の節(白い部分)の数が1つだけ異なるモードであることがわかる。
[4−3.偏光依存性]
次に偏光依存性を確認するために、図2の計算と同じ条件で、光の偏光がy方向に垂直な電場成分を有するTEモードである場合について光の増強度の計算を行った。本計算の結果を図6に示す。TMモードのとき(図2)に比べ、ピーク位置は多少変化しているものの、図3で示した領域内にピーク位置が納まっている。よって、本実施形態の構成は、TMモード、TEモードのいずれの偏光についても有効であることが確認できた。
[4−4.2次元周期構造]
さらに、2次元の周期構造による効果の検討を行った。図7Aは、x方向およびy方向の両方向に凹部および凸部が配列された2次元の表面構造120’の一部を示す平面図である。図中の黒い領域が凸部、白い領域が凹部を示している。このような2次元周期構造では、x方向とy方向の両方の回折を考慮する必要がある。x方向のみ、あるいはy方向のみの回折に関しては1次元の場合と同様であるが、x、y両方の成分を有する方向(例えば、斜め45°方向)の回折も存在するため、1次元の場合とは異なる結果が得られることが期待できる。このような2次元周期構造に関して光の増強度を計算した結果を図7Bに示す。周期構造以外の計算条件は図2の条件と同じである。図7Bに示すように、図2に示すTMモードのピーク位置に加えて、図6に示すTEモードにおけるピーク位置と一致するピーク位置も観測された。この結果は、2次元周期構造により、TEモードも、回折により変換されて出力されていることを示している。また、2次元周期構造については、x方向およびy方向の両方について、同時に1次の回折条件を満足する回折も考慮する必要がある。このような回折光は、周期pの√2倍(即ち、21/2倍)の周期に対応する角度の方向に出射する。よって、1次元周期構造の場合のピークに加えて、周期pの√2倍の周期についてもピークが発生すると考えられる。図7Bでは、このようなピークも確認できる。
2次元周期構造としては、図7Aに示すようなx方向およびy方向の周期が等しい正方格子の構造に限らず、図18Aおよび図18Bのような六角形や三角形を並べた格子構造であってもよい。また、方位方向によって(例えば、正方格子の場合x方向およびy方向)周期が異なる構造であってもよい。
以上のように、本実施形態では、周期構造とフォトルミネッセンス層とによって形成される特徴的な擬似導波モードの光を、周期構造による回折現象を利用して、正面方向にのみ選択的に出射できることが確認できた。このような構成のもとで、フォトルミネッセンス層を紫外線や青色光などの励起光で励起させることにより、指向性を有する発光が得られる。
[5.周期構造およびフォトルミネッセンス層の構成の検討]
次に、周期構造およびフォトルミネッセンス層の構成や屈折率などの各種条件を変えたときの効果について説明する。
[5−1.周期構造の屈折率]
まず、周期構造の屈折率に関して検討を行った。フォトルミネッセンス層の厚さを200nm、フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav=1.8、表面構造は図1Aに示すようなy方向に均一な1次元周期構造とし、高さを50nm、周期を400nmとし、光の偏光はy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるものとして計算を行った。発光波長および周期構造の屈折率を変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を図8に示す。また、同様の条件でフォトルミネッセンス層の厚さを1000nmにした場合の結果を図9に示す。
まず、フォトルミネッセンス層の厚さに着目すると、厚さが200nmの場合(図8)に比べ、厚さが1000nmの場合(図9)のほうが、周期構造の屈折率の変化に対する、光強度がピークとなる波長(ピーク波長と称する。)のシフトが小さいことがわかる。これは、フォトルミネッセンス層の厚さが小さいほど、擬似導波モードが周期構造の屈折率の影響を受けやすいからである。即ち、周期構造の屈折率が高いほど、有効屈折率が大きくなり、その分ピーク波長が長波長側にシフトするが、この影響は、フォトルミネッセンス層の厚さが小さいほど顕著になる。なお、有効屈折率は、擬似導波モードの電場が分布する領域に存在する媒質の屈折率によって決まる。
次に、周期構造の屈折率の変化に対するピークの変化に着目すると、屈折率が高いほどピークが広がり強度が下がっていることがわかる。これは、周期構造の屈折率が高いほど擬似導波モードの光を外部に放出するレートが高いため、光を閉じ込める効果が減少する、すなわちQ値が低くなることが原因である。ピーク強度を高く保つためには、光を閉じ込める効果が高い(即ちQ値が高い)擬似導波モードを利用して、適度に光を外部に放出する構成にすればよい。これを実現するためには、屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率に比べて大き過ぎない材料を周期構造に用いる方が有利であることがわかる。したがって、ピーク強度およびQ値をある程度高くするためには、周期構造を構成する誘電体(即ち、透光層)の屈折率を、フォトルミネッセンス層の屈折率と同等以下にすればよい。フォトルミネッセンス層がフォトルミネッセンス材料以外の材料を含むときも同様である。
[5−2.周期構造の高さ]
次に、周期構造の高さに関して検討を行った。フォトルミネッセンス層の厚さを1000nm、フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav=1.8、表面構造は図1Aに示すようなy方向に均一な1次元周期構造で屈折率をnp=1.5、周期を400nmとし、光の偏光はy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるとして計算を行った。発光波長および周期構造の高さを変えて、正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を図10に示す。同様の条件で、周期構造の屈折率をnp=2.0とした場合の計算結果を図11に示す。図10に示す結果では、ある程度以上の高さではピーク強度やQ値(即ち、ピークの線幅)が変化していないのに対して、図11に示す結果では、周期構造の高さが大きいほどピーク強度およびQ値が低下していることがわかる。これは、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavが周期構造の屈折率npよりも高い場合(図10)には、光が全反射するので、擬似導波モードの電場の染み出し(エバネッセント)部分のみが周期構造と相互作用することに起因する。電場のエバネッセント部分と周期構造との相互作用の影響は、周期構造の高さが十分大きい場合には、それ以上高さが変化しても一定である。一方、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavが周期構造の屈折率npよりも低い場合(図11)は、全反射せずに周期構造の表面にまで光が到達するので、周期構造の高さが大きいほどその影響を受ける。図11を見る限り、高さは100nm程度あれば十分であり、150nmを超える領域ではピーク強度およびQ値が低下していることがわかる。したがって、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavが周期構造の屈折率npよりも低い場合に、ピーク強度およびQ値をある程度高くするには、周期構造の高さを150nm以下に設定すればよい。
[5−3.偏光方向]
次に、偏光方向に関して検討を行った。図9に示す計算と同じ条件で、光の偏光がy方向に垂直な電場成分を有するTEモードであるものとして計算した結果を図12に示す。TEモードでは、擬似導波モードの電場の染み出しがTMモードに比べて大きいため、周期構造による影響を受けやすい。よって、周期構造の屈折率npがフォトルミネッセンス層の屈折率nwavよりも大きい領域では、ピーク強度およびQ値の低下がTMモードよりも著しい。
[5−4.フォトルミネッセンス層の屈折率]
次に、フォトルミネッセンス層の屈折率に関して検討を行った。図9に示す計算と同様の条件で、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavを1.5に変更した場合の結果を図13に示す。フォトルミネッセンス層の屈折率nwavが1.5の場合においても概ね図9と同様の効果が得られていることがわかる。ただし、波長が600nm以上の光は正面方向に出射していないことがわかる。これは、式(10)より、λ0<nwav×p/m=1.5×400nm/1=600nmとなるからである。
以上の分析から、周期構造の屈折率はフォトルミネッセンス層の屈折率と同等以下にするか、周期構造の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率以上の場合には、高さを150nm以下にすれば、ピーク強度およびQ値を高くできることがわかる。
[6.変形例]
以下、発光素子の実施形態の変形例を説明する。
[6−1.基板を有する構成]
発光素子は、図1Cおよび図1Dに示すように、透明基板140の上にフォトルミネッセンス層110および表面構造120が形成された構造を有していてもよい。このような発光素子100aを作製するには、まず、透明基板140上に、フォトルミネッセンス層110を構成するフォトルミネッセンス材料(必要に応じて、マトリクス材料を含む、以下同じ。)で薄膜を形成し、その上に表面構造120を形成する方法が考えられる。このような構成において、フォトルミネッセンス層110と表面構造120とにより、光を特定の方向に出射する機能をもたせるためには、透明基板140の屈折率nsはフォトルミネッセンス層の屈折率nwav以下にする必要がある。透明基板140をフォトルミネッセンス層110に接するように設けた場合、式(10)における出射媒質の屈折率noutをnsとした式(15)を満足するように周期pを設定すればよい。
このことを確認するために、屈折率が1.5の透明基板140の上に、図2に示す計算と同じ条件のフォトルミネッセンス層110および表面構造120を設けた場合の計算を行った。本計算の結果を図14に示す。図2の結果と同様、波長ごとに特定の周期において光強度のピークが現れることが確認できるが、ピークが現れる周期の範囲が図2の結果とは異なることがわかる。これに対して、式(10)の条件をnout=nsとした式(15)の条件を図15に示す。図14において、図15に示される範囲に対応する領域内に、光強度のピークが現れていることがわかる。
したがって、透明基板140上にフォトルミネッセンス層110と表面構造120とを設けた発光素子100aでは、式(15)を満足する周期pの範囲において効果が得られ、式(13)を満足する周期pの範囲において特に顕著な効果が得られる。
[6−2.励起光源を有する発光装置]
図16は、図1A、1Bに示す発光素子100と、励起光をフォトルミネッセンス層110に入射させる光源180とを備える発光装置200の構成例を示す図である。上述のように、本開示の構成では、フォトルミネッセンス層を紫外線や青色光などの励起光で励起させることにより、指向性をもつ発光が得られる。そのような励起光を出射するように構成された光源180を設けることにより、指向性をもつ発光装置200を実現できる。光源180から出射される励起光の波長は、典型的には紫外または青色領域の波長であるが、これらに限らず、フォトルミネッセンス層110を構成するフォトルミネッセンス材料に応じて適宜決定される。なお、図16では、光源180がフォトルミネッセンス層110の下面から励起光を入射させるように配置されているが、このような例に限定されず、例えば、フォトルミネッセンス層110の上面から励起光を入射させてもよい。励起光は、フォトルミネッセンス層110の主面(即ち、上面または下面)に垂直な方向に対して傾斜した方向から(即ち、斜めに)入射させてもよい。励起光を、フォトルミネッセンス層110内で全反射が生じる角度で斜めに入射させることにより、フォトルミネッセンス層110をより効率的に発光させることができる。
励起光を擬似導波モードに結合させることで、効率よく光を出射させる方法もある。図17Aから図17Dは、そのような方法を説明するための図である。この例では、図1C、1Dに示す構成と同様、透明基板140上にフォトルミネッセンス層110および表面構造120が形成されている。まず、図17Aに示すように、発光増強のためにx方向の周期p
xを決定し、続いて、図17Bに示すように、励起光を擬似導波モードに結合させるためにy方向の周期p
yを決定する。周期p
xは、式(10)においてpをp
xに置き換えた条件を満足するように決定される。一方、周期p
yは、mを1以上の整数、励起光の波長をλ
ex、フォトルミネッセンス層110に接する媒質のうち表面構造120を除く最も屈折率の高い媒質の屈折率をn
outとして、以下の式(16)を満足するように決定される。
ここで、noutは、図17Bの例では透明基板140のnsであるが、図16のように透明基板140を設けない構成では、空気の屈折率(約1.0)である。
特に、m=1として、次の式(17)を満足するように周期p
yを決定すれば、励起光を擬似導波モードに変換する効果をより高くすることができる。
このように、式(16)の条件(特に式(17)の条件)を満足するように周期pyを設定することで、励起光を擬似導波モードに変換することができる。その結果、フォトルミネッセンス層110に効率的に波長λexの励起光を吸収させることができる。
図17Cおよび図17Dは、それぞれ、図17Aおよび図17Bに示す構造に対して光を入射したときに光が吸収される割合を波長ごとに計算した結果を示す図である。この計算では、px=365nm、py=265nmとし、フォトルミネッセンス層110からの発光波長λを約600nm、励起光の波長λexを約450nm、フォトルミネッセンス層110の消衰係数を0.003としている。図17Dに示すように、フォトルミネッセンス層110から生じた光だけでなく、励起光である約450nmの光に対して高い吸収率を示している。これは、入射した光が効果的に擬似導波モードに変換されることで、フォトルミネッセンス層に吸収される割合を増大させることができているためである。また、発光波長である約600nmに対しても吸収率が増大しているが、これは、もし約600nmの波長の光をこの構造に入射した場合には、同様に効果的に擬似導波モードに変換されるということである。
図17Bに示す表面構造120は、x方向およびy方向のそれぞれに周期の異なる構造(周期成分と称する。)を有する2次元周期構造である。このように、複数の周期成分を有する2次元周期構造を用いることにより、励起効率を高めつつ、出射強度を高めることが可能になる。なお、図17A、17Bでは励起光を基板140側から入射させているが、表面構造120側から入射させても同じ効果が得られる。
さらに、複数の周期成分を有する2次元周期構造としては、図18Aまたは図18Bに示すような構成を採用してもよい。図18Aに示すように六角形の平面形状を有する複数の凸部または凹部を周期的に並べた構成や、図18Bに示すように三角形の平面形状を有する複数の凸部または凹部を周期的に並べた構成とすることにより、周期とみなすことのできる複数の主軸(図の例では軸1〜3)を定めることができる。このため、それぞれの軸方向について異なる周期を割り当てることができる。これらの周期の各々を、複数の波長の光の指向性を高めるために設定してもよいし、励起光を効率よく吸収させるために設定してもよい。いずれの場合も、式(10)に相当する条件を満足するように各周期が設定される。
[6−3.透明基板上の周期構造]
図19Aおよび図19Bに示すように、透明基板140上に表面構造120aを形成し、その上にフォトルミネッセンス層110を設けてもよい。図19Aの構成例では、基板140上の凹凸からなる表面構造120aに追従するようにフォトルミネッセンス層110が形成されている。その結果、フォトルミネッセンス層110の表面にも同じ周期の表面構造120bが形成されている。一方、図19Bの構成例では、フォトルミネッセンス層110の表面が平坦化されている。これらの構成例においても、表面構造120aの周期pを式(15)を満足するように設定することにより、指向性発光を実現できる。
この効果を検証するため、図19Aの構成において、発光波長および周期構造の周期を変えて、正面方向に出力する光の増強度を計算した。ここで、フォトルミネッセンス層110の厚さを1000nm、フォトルミネッセンス層110の屈折率をnwav=1.8、表面構造120aはy方向に均一な1次元周期構造であって、その高さを50nm、屈折率をnp=1.5、周期を400nmとし、光の偏光はy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるとした。本計算の結果を図19Cに示す。本計算においても、式(15)の条件を満足する周期で光強度のピークが観測された。
[6−4.粉体]
以上に説明したような実施形態によれば、周期構造の周期、フォトルミネッセンス層の厚さなどを調整することによって任意の波長の発光を強調することができる。例えば、広い帯域で発光するフォトルミネッセンス材料を用いて図1A、図1Bのような構成にすれば、ある波長の光のみを強調することが可能である。よって、図1A、図1Bのような発光素子100の構成を粉末状にして、蛍光材料として利用してもよい。また、図1A、図1Bのような発光素子100を樹脂やガラスなどに埋め込んで利用してもよい。
図1A、図1Bのような単体の構成では、ある特定の波長しか特定の方向に出射できないので、例えば広い波長域のスペクトルを持つ白色などの発光を実現することは難しい。そこで、図20に示すように周期構造の周期、フォトルミネッセンス層の厚さなどの条件の異なる複数の粉末状の発光素子100を混ぜた混合体を用いることにより、広い波長域のスペクトルを持つ発光装置を実現できる。この場合、個々の発光素子100の一方向のサイズは、例えば数μm〜数mm程度であり、その中に例えば数周期〜数百周期の1次元または2次元の周期構造を含み得る。
[6−5.周期の異なる構造を配列]
図21は、フォトルミネッセンス層の上に周期の異なる複数の周期構造を2次元に配列した例を示す平面図である。図21に例示する発光素子100cでは、3種類の表面構造120a、120b、120cが隙間なく配列されている。表面構造120a、120b、120cは、例えば、赤、緑、青の波長域の光をそれぞれ正面に出射するように周期が設定されている。このように、フォトルミネッセンス層の上に周期の異なる複数の構造を並べることによっても広い波長域のスペクトルに対し指向性を発揮させることができる。なお、複数の周期構造の構成は、上記に限定されず、任意に設定してよい。
[6−6.積層構造]
図22は、表面に凹凸構造が形成された複数のフォトルミネッセンス層110が積層された構造を有する発光素子の一例を示している。複数のフォトルミネッセンス層110の間には、透明基板140が設けられ、各層のフォトルミネッセンス層110の表面に形成された凹凸構造が上記の周期構造またはサブミクロン構造に相当する。図22に示す例では、3層の周期の異なる周期構造が形成されており、それぞれ、赤、青、緑の波長域の光を正面に出射するように周期が設定されている。また、各周期構造の周期に対応する色の光を発するように各層のフォトルミネッセンス層110の材料が選択されている。このように、周期の異なる複数の周期構造を積層することによっても、広い波長域のスペクトルに対し指向性を発揮させることができる。
なお、層数や各層のフォトルミネッセンス層110および周期構造の構成は上記に限定されず、任意に設定してよい。例えば2層の構成では、透光性の基板を介して第1のフォトルミネッセンス層と第2のフォトルミネッセンス層とが対向するように形成され、第1および第2のフォトルミネッセンス層の表面に、それぞれ第1および第2の周期構造が形成される。この場合、第1のフォトルミネッセンス層および第1の周期構造の対と、第2のフォトルミネッセンス層および第2の周期構造の対のそれぞれについて、式(15)に相当する条件を満足していればよい。3層以上の構成においても同様に、各層におけるフォトルミネッセンス層および周期構造について、式(15)に相当する条件を満足していればよい。フォトルミネッセンス層と周期構造との位置関係が図22に示す例とは逆転していてもよい。図22に示す例では、各層の周期が異なっているが、これらを全て同じ周期にしてもよい。その場合、スペクトルを広くすることはできないが、発光強度を大きくすることができる。
[6−7.保護層を有する構成]
図23は、フォトルミネッセンス層110と表面構造120との間に保護層150を設けた構成例を示す断面図である。このように、フォトルミネッセンス層110を保護するための保護層150を設けてもよい。ただし、保護層150の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率よりも低い場合は、保護層150の内部に波長の半分程度しか光の電場が染み出さない。よって、保護層150の厚さが波長よりも大きい場合には、表面構造120に光が届かない。このため、擬似導波モードが存在せず、光を特定方向に放出する機能を得ることができない。保護層150の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率と同程度あるいはそれ以上の場合には、保護層150の内部にまで光が到達する。よって、保護層150に厚さの制約は無い。ただし、その場合でも、光が導波する部分(以下、この部分を「導波層」と呼ぶ。)の大部分をフォトルミネッセンス材料で形成したほうが大きな光の出力が得られる。よって、この場合でも保護層150は薄いほうが有利である。なお、保護層150を表面構造(あるいは透光層)120と同じ材料を用いて形成してもよい。このとき、周期構造を有する透光層が保護層を兼ねる。透光層120の屈折率はフォトルミネッセンス層110よりも小さいと有益である。
[7.材料]
以上のような条件を満たす材料でフォトルミネッセンス層(あるいは導波層)および表面構造を構成すれば、指向性発光を実現できる。表面構造には任意の材料を用いることができる。しかしながら、フォトルミネッセンス層(あるいは導波層)や表面構造を形成する媒質の光吸収性が高いと、光を閉じ込める効果が低下し、ピーク強度およびQ値が低下する。よって、フォトルミネッセンス層(あるいは導波層)および表面構造を形成する媒質として、光吸収性の比較的低い材料が用いられ得る。
表面構造の材料としては、例えば、光吸収性の低い誘電体が使用され得る。周期構造の材料の候補としては、例えば、MgF2(フッ化マグネシウム)、LiF(フッ化リチウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SiO2(石英)、ガラス、樹脂、MgO(酸化マグネシウム)、ITO(酸化インジウム錫)、TiO2(酸化チタン)、SiN(窒化シリコン)、Ta2O5(五酸化タンタル)、ZrO2(ジルコニア)、ZnSe(セレン化亜鉛)、ZnS(硫化亜鉛)などが挙げられる。ただし、前述のとおり表面構造の屈折率をフォトルミネッセンス層の屈折率よりも低くする場合、屈折率が1.3〜1.5程度であるMgF2、LiF、CaF2、SiO2、ガラス、樹脂を用いることができる。
フォトルミネッセンス材料は、狭義の蛍光材料および燐光材料を包含し、無機材料だけなく、有機材料(例えば色素)を包含し、さらには、量子ドット(例えば半導体微粒子)を包含する。一般に、無機材料をホストとする蛍光材料は屈折率が高い傾向にある。青色に発光する蛍光材料としては、例えば、M10(PO4)6Cl2:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、BaMgAl10O17:Eu2+、M3MgSi2O8:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、M5SiO4Cl6:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を用いることができる。緑色に発光する蛍光材料としては、例えば、M2MgSi2O7:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、SrSi5AlO2N7:Eu2+、SrSi2O2N2:Eu2+、BaAl2O4:Eu2+、BaZrSi3O9:Eu2+、M2SiO4:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、BaSi3O4N2:Eu2+Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu2+、Ca3SiO4Cl2:Eu2+、CaSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Ce3+、β−SiAlON:Eu2+を用いることができる。赤色に発光する蛍光材料としては、例えば、CaAlSiN3:Eu2+、SrAlSi4O7:Eu2+、M2Si5N8:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、MSiN2:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、MSi2O2N2:Yb2+(M=SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、Y2O2S:Eu3+,Sm3+、La2O2S:Eu3+,Sm3+、CaWO4:Li1+,Eu3+,Sm3+、M2SiS4:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、M3SiO5:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を用いることができる。黄色に発光する蛍光材料としては、例えば、Y3Al5O12:Ce3+、CaSi2O2N2:Eu2+、Ca3Sc2Si3O12:Ce3+、CaSc2O4:Ce3+、α−SiAlON:Eu2+、MSi2O2N2:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、M7(SiO3)6Cl2:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を用いることができる。
量子ドットについては、例えば、CdS、CdSe、コア・シェル型CdSe/ZnS、合金型CdSSe/ZnSなどの材料を用いることができ、材質によって様々な発光波長を得ることができる。量子ドットのマトリクスとしては、例えば、ガラスや樹脂を用いることができる。
図1C、図1Dなどに示す基板140は、フォトルミネッセンス層110の屈折率よりも低い透光性材料によって構成される。そのような材料として、例えば、MgF2(フッ化マグネシウム)、LiF(フッ化リチウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SiO2(石英)、ガラス、樹脂が挙げられる。なお、基板140を介さずにフォトルミネッセンス層110に励起光を入射させるような構成においては、基板140が透明であることは必須ではない。基板140は、例えば、BaF2、SrF2、MgO、MgAl2O4、サファイア(Al2O3)、SrTiO3、LaAlO3、TiO2、Gd3Ga5O12、LaSrAlO4、LaSrGaO4、LaTaO3、SrO、YSZ(ZrO2・Y2O3)、YAG、Tb3Ga5O12を用いて形成されてもよい。
[8.製造方法]
続いて、発光素子の製造方法の一例を説明する。
図1C、図1Dに示す構成を実現する方法として、例えば、透明基板140上に蛍光材料を蒸着、スパッタリング、塗布などによって堆積することによりフォトルミネッセンス層110の薄膜を形成し、その後、誘電体を成膜し、フォトリソグラフィなどの方法によってパターニングすることによって表面構造120を形成する方法がある。上記方法の代わりに、ナノインプリントによって表面構造120を形成してもよい。また、図24に示すように、フォトルミネッセンス層110の一部を加工することによって表面構造120を形成してもよい。その場合、表面構造120がフォトルミネッセンス層110と同じ材料で形成される。
図1A、図1Bに示す発光素子100は、例えば、図1C、図1Dに示す発光素子100aを作製した後、基板140からフォトルミネッセンス層110および表面構造120の部分を剥がす工程を行うことで実現可能である。
図19Aに示す構成は、例えば、透明基板140上に半導体プロセスやナノインプリントなどの方法で表面構造120aを形成した後、その上にフォトルミネッセンス層110を構成する材料を蒸着やスパッタリングなどの方法で形成することによって実現可能である。あるいは、塗布などの方法を用いて表面構造120aの凹部をフォトルミネッセンス層110で埋め込むことによって図19Bに示す構成を実現することもできる。
なお、上記の製造方法は一例であり、本開示の発光素子は上記の製造方法に限定されない。
[9.実験例]
以下に、本開示の実施形態による発光装置に適用し得る発光素子を作製した例を説明する。
図19Aと同様の構成を有する発光素子のサンプルを試作し、特性を評価した。発光素子は以下の様にして作製した。
ガラス基板に、周期400nm、高さ40nmの1次元周期構造(ストライプ状の凸部)を設け、その上からフォトルミネッセンス材料であるYAG:Ceを堆積し、厚さ210nmの膜を形成した。この断面図のTEM像を図25に示し、これを450nmのLEDで励起することによってYAG:Ceを発光させたときの、正面方向のスペクトルを測定した結果を図26に示す。図26には、周期構造がない場合の測定結果(ref)と、1次元周期構造に対して平行な偏光成分を持つTMモードに関する測定結果と、垂直な偏光成分を持つTEモードに関する測定結果とを示した。周期構造がある場合は、周期構造がない場合と比較して、特定の波長の光が著しく増加している。また、1次元周期構造に対して平行な偏光成分を持つTMモードの方が、光の増強効果が大きいことがわかる。
さらに、同じサンプルにおいて、出射光強度の角度依存性を測定した結果および計算結果を図27A〜図27Fおよび図28A〜図28Fに示す。図27Aは、TMモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と平行な軸を回転軸として回転させている状況を示している。図27Bおよび図27Cは、このように回転させた場合についての測定結果および計算結果をそれぞれ示している。一方、図27Dは、TEモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と平行な軸を回転軸として回転させている状況を示している。図27Eおよび図27Fは、この場合の測定結果および計算結果をそれぞれ示している。図28Aは、TEモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向に垂直な軸を回転軸として回転させている状況を示している。図28Bおよび図28Cは、この場合の測定結果および計算結果をそれぞれ示している。一方、図28Dは、TMモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と垂直な軸を回転軸として回転させている状況を示している。図28Eおよび図28Fは、この場合の測定結果および計算結果をそれぞれ示している。
図27A〜図27Fおよび図28A〜図28Fから明らかなように、TMモードの方が増強される効果が高い。また、増強される光の波長は角度によってシフトすることがわかる。例えば、波長610nmの光については、TMモードでかつ正面方向にしか光が存在しないため、指向性が高くかつ偏光発光していることがわかる。また、図27Bと図27C、図27Eと図27F、図28Bと図28C、図28Eと図28Fのそれぞれの測定結果と計算結果とが整合していることから、上述の計算の妥当性が実験によって裏付けられた。
図29は、波長610nmの光について、図28Dに示すように、ライン方向に対して垂直な方向を回転軸として回転させた場合の強度の角度依存性を示している。正面方向に強い発光増強が起きており、そのほかの角度に対しては、ほとんど光が増強されないことがわかる。また、正面方向に出射される光の指向角が15°未満であることがわかる。なお、指向角は、前述のように、強度が最大強度の50%となる角度であり、最大強度の方向を中心に片側の角度で表す。図29に示す結果から、指向性発光が実現していることがわかる。さらに、出射される光は全てTMモードの成分であるため、同時に偏光発光も実現していることがわかる。
以上の検証のための実験は、広帯域の波長帯で発光するYAG:Ceを使って行った。狭帯域の光を発するフォトルミネッセンス材料を用いて同様の構成で実験を行ったとしても、その波長の光に対して高い指向性および偏光発光を実現することができる。さらに、そのようなフォトルミネッセンス材料を用いた場合、他の波長の光が発生しないために他の方向や他の偏光状態の光は発生しない光源を実現することができる。
[10.他の変形例]
上述したように、本開示の発光素子が有するサブミクロン構造によって、発光増強効果を受ける光の波長および出射方向は、サブミクロン構造の構成に依存する。図31に示す、フォトルミネッセンス層110上に表面構造120を有する発光素子を考える。ここでは、表面構造120がフォトルミネッセンス層110と同じ材料で形成されており、図1Aに示した1次元周期構造を有する場合を例示する。1次元周期構造によって発光増強を受ける光は、1次元周期構造の周期をp(nm)、フォトルミネッセンス層110の屈折率をnwav、光が出射される外部の媒質の屈折率をnoutとし、1次元周期構造への入射角をθwav、1次元周期構造から外部の媒質への出射角をθoutとすると、p×nwav×sinθwav−p×nout×sinθout=mλの関係を満足する(上記の式(5)参照)。ここで、λは空気中における光の波長であり、mは整数である。
上記式から、θout=arcsin[(nwav×sinθwav−mλ/p)/nout]が得られる。したがって、一般に、波長λが異なると、発光増強を受けた光の出射角θoutが異なる。その結果、図31に模式的に示すように、観察する方向によって、見える光の色が異なる。
この視角依存性を低減させるためには、(nwav×sinθwav−mλ/p)/noutが、波長λによらず一定となるように、nwavおよびnoutを選べばよい。物質の屈折率は、波長分散(波長依存性)を有しているので、(nwav×sinθwav−mλ/p)/noutが波長λに依存しないような、nwavおよびnoutの波長分散性を有する材料を選択すればよい。例えば、外部の媒質が空気の場合、noutは、波長によらずほぼ1.0なので、フォトルミネッセンス層110および1次元周期構造を形成する材料として、屈折率nwavの波長分散が小さい材料を選択すればよい。さらに、屈折率nwavがより短い波長の光に対して屈折率が低くなるような逆分散の材料を用いてもよい。
また、図32Aに示すように、互いに発光増強効果を示す波長が異なる複数の周期構造を配列することによって、白色光を出射できるようにできる。図32Aに示す例では、赤色光(R)を増強できる表面構造120rと、緑色光(G)を増強できる表面構造120gと、青色光(B)を増強できる表面構造120bとがマトリクス状に配列されている。表面構造120r、120gおよび120bは、例えば、1次元周期構造で、それぞれの凸部が互いに平行に配列されている。したがって、この例では、偏光特性は、赤、緑、青の全ての色の光について同じである。表面構造120r、120gおよび120bによって、発光増強を受けた三原色の光が出射され、混色される結果、白色光、かつ、直線偏光が得られる。
マトリクス状に配列された各表面構造120r、120gおよび120bを単位周期構造(または画素)と呼ぶと、単位周期構造の大きさ(即ち、一辺の長さ)は、例えば、周期の3倍以上である。また、混色の効果を得るためには人間の目で単位周期構造が認識されないと有益であり、例えば、一辺の長さは1mmよりも小さい。ここでは、各単位周期構造を正方形に描いているが、これに限られず、例えば、互いに隣接する表面構造120r、120gおよび120bが長方形、三角形、六角形などの正方形以外の形状でもよい。
また、表面構造120r、120gおよび120bの下に設けられているフォトルミネッセンス層は、表面構造120r、120gおよび120bに共通であってもよいし、それぞれの色の光に対応して、異なるフォトルミネッセンス材料を有するフォトルミネッセンス層を設けてもよい。
図32Bに示すように、1次元周期構造の凸部が延びる方位が異なる複数の周期構造(表面構造120h、120iおよび120jを含む)を配列してもよい。複数の周期構造が発光増強する光の波長は、同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、同じ周期構造を図32Bのように配列すると、偏光していない光を得ることができる。また、図32Aにおける表面構造120r、120gおよび120bのそれぞれについて、図32Bの配列を適用すると、全体として、非偏光の白色光を得ることができる。
もちろん、タイリングに適用する周期構造は、1次元周期構造に限らず、図32Cに示すように、例えば複数の2次元周期構造(表面構造120k、120mおよび120nを含む)を配列してもよい。このとき、表面構造120k、120mおよび120nの周期や方位は、上述したように、同じでもよいし、異なってもよく、必要に応じて適宜設定され得る。
図33に示すように、例えば、発光素子の光の出射側にマイクロレンズ130のアレイを配置してもよい。マイクロレンズ130のアレイにより、斜め方向に出射される光を法線方向に曲げることによって、混色の効果を得ることができる。
図33に示した発光素子は、図32Aにおける表面構造120r、120gおよび120bをそれぞれ有する領域R1、R2およびR3を有する。領域R1においては、表面構造120rによって、赤色光Rが法線方向に出射され、例えば緑色光Gは斜め方向に出射される。マイクロレンズ130の屈折作用によって、斜め方向に出射された緑色光Gは法線方向に曲げられる。その結果、法線方向においては、赤色光Rと緑色光Gとが混色されて観察される。このように、マイクロレンズ130を設けることによって、出射される光の波長が角度によって異なるという現象が抑制される。ここでは、複数の周期構造に対応する複数のマイクロレンズを一体化したマイクロレンズアレイを例示しているが、これに限られない。もちろん、タイリングする周期構造は上記の例に限られず、同じ周期構造をタイリングした場合にも適用できるし、図32Bまたは図32Cに示した構成にも適用できる。
斜め方向に出射される光を曲げる作用を有する光学素子は、マイクロレンズアレイに代えてレンチキュラーレンズであってもよい。また、レンズだけでなく、プリズムを用いることもできる。プリズムのアレイを用いてもよい。周期構造に対応して個々にプリズムを配置してもよい。プリズムの形状は、特に制限されない。例えば、三角プリズムまたはピラミッド型プリズムを用いることができる。
白色光(あるいは、広いスペクトル幅を有する光)を得る方法は、上述の周期構造による方法の他、例えば、図34Aおよび図34Bを参照して説明するように、2以上のフォトルミネッセンス層による方法もある。図34Aに示すように、発光波長が異なる複数のフォトルミネッセンス層110b、110g、110rを積層することによって、白色光を得ることができる。積層順は図示の例に限らない。また、図34Bに示すように、青色の光を発するフォトルミネッセンス層110bの上に、黄色の光を発するフォトルミネッセンス層110yを積層してもよい。フォトルミネッセンス層110yは、例えばYAGを用いて形成することができる。
この他、蛍光色素などマトリクス(ホスト)材料に混合して用いられるフォトルミネッセンス材料を用いる場合には、発光波長が異なる複数のフォトルミネッセンス材料をマトリクス材料に混合し、単一のフォトルミネッセンス層で、白色光を発光するようにできる。この様な白色光を発光できるフォトルミネッセンス層は、図32A〜図32Cを参照して説明した、単位周期構造をタイリングした構成に用いることができる。
[11.集光レンズを有する発光装置]
以下、本開示の実施形態による発光装置の例示的な構成を説明する。図35は、本開示の実施形態による発光装置の例示的な構成を模式的に示す。図35に示す発光装置210Aは、概略的には、図16を参照して説明した発光装置200と、発光装置200から出射された光を受ける集光レンズ202とを有する。つまり、発光装置210Aは、励起光源180と、発光素子100と、集光レンズ202とを含んでいる。
発光素子100は、励起光源180から出射された励起光が進行する光路上に配置されている。発光素子100が励起光の光路上に配置されることにより、励起光源180から出射された励起光が発光素子100のフォトルミネッセンス層110に入射する。フォトルミネッセンス層110中のフォトルミネッセンス材料は、励起光を受けて発光する。フォトルミネッセンス層110が発した光は、表面構造120を介して発光素子100の外部に出射する(例えば図16参照)。既に説明したように、発光素子100は、光を特定の方向に出射することが可能である。この例では、光が発光素子100の正面方向に出射している。もちろん、発光素子100に代えて、図1Cおよび図1Dに示す発光素子100aを適用してもよい。
発光素子100から出射した光は、表面構造120に対向する集光レンズ202に入射する。図35に例示する構成では、集光レンズ202は、ハウジング300によって支持されることにより、発光素子100から出射された光の光路上に配置されている。ハウジング300は、発光素子100および集光レンズ202を、これらが位置決めされた状態で保持していてもよい。
図35に例示する構成において、発光装置210Aには、光ファイバー250が接続されている。この例では、ハウジング300は、集光レンズ202から出射された光が入射する位置に設けられた開口部300aを有しており、光ファイバー250は、開口部300aにその一端が挿入されることにより、発光装置210Aに固定されている。
発光装置210Aに光ファイバー250が接続された状態において、光ファイバー250の一端は、集光レンズ202から出射された光が入射する位置にある。したがって、集光レンズ202から出射された光の少なくとも一部が、光ファイバー250に入射する。すなわち、光ファイバー250は、発光装置210Aに接続されることにより、発光装置210Aに光学的に結合される。このように、図35に例示する構成において、開口部300aは、光ファイバー250の接続部としての機能を有する。なお、この例では、集光レンズ202の光軸と、光ファイバー250の軸とは、一致している。
光ファイバの接続のための構成は、光ファイバの入射部を受け入れ可能な構成であればよく、図35に示す構成に限定されない。開口部300aに、集光レンズ202から出射された光を透過可能な、透明な部材が配置されていてもよい。開口部300aに配置される透明な部材は、反射防止コーティングを有し得る。発光装置210Aは、集光レンズ202から出射された光が入射する位置に、光コネクタ、ソケット、スロット、プラグなどを光ファイバの接続部として有していてもよい。
既に説明したように、発光素子100は、出射される光の指向性を制御可能な新規な構造を有するので、例えば、フォトルミネッセンス層110から発生した光を正面方向に選択的に出射させることが可能である。したがって、図36に模式的に示すように、コリメートレンズなどを用いることなく出射光束のほぼ全てを集光レンズ202に入射させ得る。このように、発光素子100が指向性の高い光を出射可能であるので、本開示の実施形態によれば、大型の集光レンズを用いることなく、光の利用効率を向上させ得る。したがって、より小型の発光装置または光学デバイスを提供し得る。
図37は、発光素子100に代えて従来の蛍光体512を有する発光装置510を比較例として示す。なお、図37および前述の図36においては、図35に示すハウジング300の図示を省略している。以下においても、ハウジング300の図示を省略することがある。
発光装置510では、蛍光体512が等方的に発光する。そのため、蛍光体512からの出射光束は、集光レンズ202に入射させることが原理的に不可能な光束を含んでいる。つまり、蛍光体512において発生した光を有効に利用することができない。例えば、図37に模式的に示すように、蛍光体512から集光レンズ202に入射する出射光束の割合は、20%程度であり得る。蛍光体512からの出射光束の残りの80%は、損失である。
例えば、図36および図37に示すように、光源(ここでは発光素子100または蛍光体512)から出射された光を光ファイバー250に入射させる光学系を想定する。光学系においては、拡散などがなければ、エテンデュ(Etendue)と呼ばれる量が保存されることが知られている。例えば光源のエテンデュは、光源における発光面積と、その光源から発散していく光の立体角との積によって定義される。エテンデュは、光源から光を受ける照射面についても定義することができ、受光側のエテンデュは、受光側における光の取り込みの能力の大きさを表す。受光側のエテンデュが光源のエテンデュよりも小さいと、光源から発せられた光の全てを取り込むことはできずに損失が生じる。つまり、光源側のエテンデュと照射対象である光ファイバのエテンデュとが等しいとき、光の利用効率が最大であるといえる。光ファイバー250のエテンデュは、光ファイバー250の開口数によって決まる。光源側のエテンデュが光ファイバのエテンデュよりも大きければ、損失が生じる。
図36に示す発光装置210Aでは、光ファイバー250の開口数に応じて、適切な大きさの焦点距離を有する集光レンズ202を用い、かつ、集光レンズ202と光ファイバー250の端面との間の距離を適切に調整すれば、集光レンズ202から出射される光のほぼ全てを光ファイバー250に入射させ得る。発光装置210Aに光ファイバの接続部を設けると、発光装置210Aと光ファイバー250との間の配置を固定できるので、発光装置210Aと光ファイバー250との間で高い結合効率を実現しやすく、有益である。
これに対し、発光素子100に代えて従来の蛍光体512を用いた構成(図37参照)では、蛍光体512が等方的に発光するために、一般に、光ファイバのエテンデュよりも蛍光体512のエテンデュの方が大きく、したがって蛍光体512と光ファイバー250との間において高い結合効率が得られない。図37に示す例では、蛍光体512と光ファイバー250との間の結合効率は、20%に過ぎない。なお、受光側のエテンデュの大きさが一定であれば、光源(ここでは蛍光体512)の発光面積を拡大しても、光ファイバー250内部に導入できる光の量は増えない。上述したように、光ファイバー250のエテンデュは、光ファイバー250の開口数によって決まるので、集光レンズ202に入射する光束を増加させようとして、より大きな径を有するレンズを単純に適用しても、光ファイバー250の開口数が同じであれば、光ファイバー250に入射する光束を増やすことにはならない。
発光装置210Aでは、発光素子100からの出射光束のほぼ全てを集光レンズ202に入射させ得る(図36参照)。すなわち、発光素子100からの出射された光のほぼ全てを光ファイバー250に入射させ得る。このように、本開示の実施形態によれば、発光素子100からの光の出射方向を、集光レンズ202を通ることによって光ファイバー250に入射するような方向に制御することが可能であるので、発光素子100と光ファイバー250との間の結合効率を向上させ得る。
本開示の実施形態によれば、発光素子100と光ファイバー250との間において高い結合効率を実現し得るので、光ファイバー250から同じ出力(光束といってもよい)を得るために必要な投入エネルギ量を低減することが可能である。例えば、励起光源180として、電力変換効率が40%のレーザーダイオードを用いて光ファイバー250から2.3Wの出力が得られたとする。蛍光体における変換効率を55%とすると、このときに励起光源180に投入される単位時間当たりのエネルギ量は、図37に示す比較例の発光装置510ではおよそ53.9Wであることに対し、図36に示す発光装置210Aではおよそ10.7Wである。すなわち、発光装置の省エネルギ化を達成し得る。
なお、図35〜図37では、集光レンズ202が両凸レンズとして図示されている。しかしながら、集光レンズ202は、両凸レンズに限定されず、平凸レンズ、フレネルレンズ、または、軸に沿って変化する屈折率を有するグリンレンズなどであってもよい。集光レンズ202は、光ファイバの端面に結合されたレンズであってもよい。
[11−1.集光レンズを有する発光装置の変形例]
図38は、本開示の実施形態による発光装置の他の変形例を示す。図38に示す発光装置210Bは、発光素子100と集光レンズ202との間に、コリメートレンズ204を有する。発光素子100から出射される光の指向角が比較的小さいので、コリメートレンズ208として、小さな径を有するレンズを用いながらも、高い光の利用効率が得られる。また、このような構成によれば、発光素子100から光ファイバー250の接続部までの距離を拡大し得るので、光学系の設計の自由度が向上する。
図39は、本開示の実施形態による発光装置のさらに他の変形例を示す。図39に示す発光装置210Cは、励起光源180と発光素子100との間に、コリメートレンズ208を有する。このような構成によれば、発光素子100に対してコリメートされた励起光を照射し得る。したがって、フォトルミネッセンス層110を均一に励起し得る。
図40は、本開示の実施形態による発光装置のさらに他の変形例を示す。図40に示す発光装置210Dは、励起光源180と発光素子100との間に、コリメートレンズ208を有し、さらに、コリメートレンズ208と発光素子100との間に、集光レンズ206を有する。このような構成によれば、励起光を収束させることが可能であるので、発光素子100を小型化し得る。したがって、光学系を小型化し得る。また、励起光源180から発光素子100までの距離を拡大し得るので、光学系の設計の自由度が向上する。
図41は、本開示の実施形態による発光装置のさらに他の変形例を示す。図41に示す発光装置210Eは、図38に示す発光装置210Bと同様に、発光素子100と集光レンズ202との間に、コリメートレンズ204を有する。また、図40に示す発光装置210Dと同様に、励起光源180と発光素子100との間に、コリメートレンズ208および集光レンズ206を有する。図41に示すように、コリメートレンズ208および集光レンズ206は、励起光源180から発光素子100に向かってこの順に配置されている。図41に例示するように、励起光源180と、発光素子100との間、および、発光素子100と、発光装置から出射される光を受ける光学部品(ここでは光ファイバー250)との間のそれぞれに、コリメートレンズおよび集光レンズを配置してもよい。これにより、図38に示す発光装置210Bおよび図40に示す発光装置210Dと同様の効果が得られる。
このように、本開示の発光装置における光学系は、多様に設計が可能である。図38〜図41に例示する構成のほか、例えば、図40に示す発光装置210Dまたは図41に示す発光装置210Eからコリメートレンズ208を省略したような構成も可能である。つまり、励起光源180と発光素子100の間にコリメートレンズが配置されない構成も可能である。なお、図35〜図41においては、集光レンズ(集光レンズ202、206)が単一の両凸レンズとして図示されている。しかしながら、これはあくまで説明の便宜のためであり、本開示の発光装置における集光レンズは、複数のレンズの組み合わせであってもよい。コリメートレンズ(コリメートレンズ204、208)についても同様である。もちろん、コリメートレンズ(コリメートレンズ204、208)は、両凸レンズに限定されない。
上述したように、本開示の発光素子およびそれを備える発光装置は、種々の利点を有しているので、種々の光学デバイスに適用することによって、有利な効果を奏し得る。例えば、以下に述べるような応用が可能である。
本開示の発光素子は、特定の方向に指向性の高い光を出射することができる。この高い指向性は、例えば、液晶表示装置の導光板を利用するエッジライト型のバックライトとして好適に用いられる。例えば、従来の指向性の低い光源を用いた場合には、光源から出射した光を反射板および/または拡散材により、導光板へ光を導入していた。特定方向の指向性が高い光源の場合、これらの光学部品を省略しても効率よく導光板へ光を導入し得る。
また、例えば図35に示す発光装置210Aを複数台使用し、発光装置210Aに光学的に結合された光ファイバー250の光出射側の端面を平面的に敷き詰めれば、発光装置210Aの集合を表示装置として機能させ得る。発光装置210Aに代えて、図38〜図41を参照して説明した発光装置210B〜210Eのいずれかを適用してもよい。
従来の照明器具は、等方的に発せられた光を所望の方向に導くために、例えば反射板を含む光学部品が用いられる。これに対して、本開示の実施形態によれば、発光素子と光ファイバーとを高い結合効率で光学的に結合することが可能であるので、反射板を省略することが可能となる。あるいは、等方的な光に対する複雑な設計を、指向性の高い光に対する単純な設計に置き換えることができる。その結果、照明器具を小型化、あるいは、設計工程を簡略化することができる。
本開示の発光素子は、特定の波長の光だけを増強することができる。したがって、必要とされる波長だけを出射する光源を容易に実現できる。また、フォトルミネッセンス層の材料を変えずに、周期構造を変更することによって、出射される光の波長を変えることができる。さらに、周期構造に対する角度によって、異なる波長の光を出射させることもできる。このような波長選択性は、例えば、狭帯域イメージング(narrow band imaging:NBI、登録商標)という技術に好適に用いられ得る。また、可視光通信にも好適に用いることができる。
また、照明の分野では、彩光色照明および美光色照明という技術が開発されている。これらは、照明の対象の色を美しく見せるもので、彩光色照明は例えば野菜などの食品をよりおいしそうに見せる効果があり、美光色照明は、肌をより美しく見せる効果がある。これらは、いずれも光源のスペクトル(即ち、発光する光の波長の強度分布)を対象物に応じて制御することによって行われる。従来は、光学フィルタを用いて光源から出射された光を選択透過させることによって、照明に用いる光のスペクトルを制御していた。すなわち、不要な光を光学フィルタによって吸収させていたので、光の利用効率を低下させていた。これに対し、本開示の発光素子は、特定の波長の光を増強できるので、光学フィルタを必要とせず、その結果、光の利用効率を向上させることができる。
本開示の発光素子は、偏光(直線偏光)を出射することができる。従来、直線偏光は、光源から出射された非偏光を構成する直交する2つの直線偏光の内の一方を偏光フィルタ(「偏光板」ともいわれる。)を用いて吸収させることによって作られていた。したがって、光の利用効率は50%以下であった。本開示の発光素子を偏光光源として用いれば、偏光フィルタを用いる必要がないので、光の利用効率を向上させることができる。偏光照明は、例えば、ショーウィンドウや展望レストランの窓ガラスなど、反射光を低減させたい場合に用いられる。また、皮膚表面の反射特性が偏光に依存することを利用した、洗面・化粧用の照明、さらには、内視鏡による病変部の観察を容易にするために用いられ得る。
偏光光源は、液晶表示装置のバックライトとして好適に用いられる他、液晶プロジェクターの光源にも好適に用いられる。液晶プロジェクターの光源として用いる場合には、上述の波長選択性と組み合わせて、3原色の偏光を出射できる光源を構成することができる。例えば、赤色の直線偏光を出射する発光素子と、緑色の直線偏光を出射する発光素子と、青色の直線偏光を出射する発光素子とをつなぎあわせて円盤を形成し、この円盤に励起光を照射しながら、円盤を回転させることによって、時系列に赤、緑、青の三原色の偏光を出射する光源とすることができる。
本開示の発光素子の応用例は上記に限られず、種々の光学デバイスに適用され得る。例えば、以下に述べるように、本開示の発光素子を用いて、より小型の投影装置を実現し得る。
[12.投影装置]
以下、本開示の発光素子が適用された投影装置の例示的な構成を説明する。本開示のある例示的な態様による投影装置は、光源部と、光変調素子を有する画像形成部と、光源部からの光を一端から取り込み、画像形成部に導く光ファイバーとを有する。換言すれば、光源部と画像形成部とは、光ファイバーを介して接続される。後に詳しく説明するように、光変調素子は、例えば、光ファイバーからの出射光線の進行方向を画像信号に応じて変えることにより、スクリーン、壁面などの投影の対象上に画像を形成する。
本開示のある態様において、光源部は、励起光源と、励起光源からの励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成され、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造とを有する。フォトルミネッセンス層、透光層および表面構造としては、上述したような構成を適用することができる。つまり、フォトルミネッセンス層から高い指向性の光を取り出すことが可能であり、リフレクター、レンズなどの光学部品を不要としながら(あるいは小型としながら)、特定の方向を光で照らすことが可能である。したがって、投影装置の大きさを従来と比較して大幅に小さくすることができる。
光ファイバーを介して光源部から画像形成部に導かれる光は、励起光源からの励起光であり得る。本開示の他のある態様では、フォトルミネッセンス層、透光層および表面構造が、画像形成部の内部に配置される。この場合、光変調素子は、フォトルミネッセンス層が発する、空気中の波長がλaの光を受ける。
[12−1.励起光源を光源部に有する投影装置]
図42は、本開示のある態様による投影装置の外観の一例を示す。図42に例示する構成において、投影装置2300は、本体ユニット2350と、投光ユニット2310とを有する。本体ユニット2350は、例えば室内の天井に取り付け可能に構成される。図示するように、投影装置2300は、本体ユニット2350と投光ユニット2310とを接続する光ファイバー2250を有する。投影装置2300においては、本体ユニット2350内において光が生成され、生成された光が光ファイバー2250を介して投光ユニット2310に送られる。
投光ユニット2310は、画像(動画または静止画)を形成するための光をスクリーン、壁などに向けて出射する。図42に例示する構成において、投光ユニット2310には開口部2330が設けられており、画像を形成するための光は、開口部2330を介して投光ユニット2310の外部に向けて出射される。投光ユニット2310は、ヒンジなどのジョイントによって本体ユニット2350に接続されており、光の出射方向を変更可能に構成されている。
図43は、図42に示す投影装置2300における光学系の一例を示す。投影装置2300における光学系は、概略的には、光源部2360Aと、画像形成部2320Aと、これらを光学的に結合する光ファイバー2250とを含む。光源部2360Aおよび画像形成部2320Aは、それぞれ、上述の本体ユニット2350内および投光ユニット2310内に配置される。
図43に例示する構成において、光源部2360Aは、励起光源180と、円盤状の発光素子100wとを含む。発光素子100wは、円盤状の円周方向に沿って複数の領域に分割されており、複数の領域の各々は、上述の発光素子100または100aと同様の構造を有する。すなわち、発光素子100wにおける複数の領域の各々は、フォトルミネッセンス層および表面構造を含む。この例では、発光素子100wにおける複数の領域の各々は、図43において模式的に示すように、図19Aを参照して説明した発光素子と同様の構造を有している。ここでは、基板140(ここでは透明基板)上にフォトルミネッセンス層110が形成された発光素子100aを適用した例を説明するが、発光素子100aに代えて、上述の発光素子100を用いてももちろん構わない。
発光素子100wは、励起光源180からの励起光の光路上に配置される。励起光源180の例は、LED、レーザダイオードである。この例では、基板140が励起光源180に対向するようにして発光素子100wが上述の本体ユニット2350内に配置されており、励起光源180から出射された励起光は、基板140を介して発光素子100wのフォトルミネッセンス層110に入射する。既に説明したように、発光素子100wにおける表面構造(ここでは周期構造120aおよび/または120b)は、フォトルミネッセンス層110が発する特定の光の指向角を制限する機能を有する。したがって、発光素子100wからは、特定の方向(例えば正面方向)に向けて特定の波長の光が強く出射される。
発光素子100wは、投光ユニット2310内において回転可能に支持されており、投影装置2300の動作時、駆動装置(例えばモータ、図43において不図示)によって回転させられる。励起光源180から出射された励起光は、発光素子100wの回転角度に応じて発光素子100wにおける複数の領域のいずれかに入射する。
典型的には、発光素子100wは、複数の領域ごとに互いに異なる周期構造を有する。つまり、発光素子100wから特定の方向に向けて強く出射される光の波長は、発光素子100wにおける複数の領域ごとに異なる。そのため、発光素子100wは、複数の領域のいずれに励起光が入射するかに応じて異なった波長の光を出射する。発光素子100wを指向性発光カラーホイールと呼んでもよい。
発光素子100wから出射された光の光路上に、光ファイバー2250の一端が配置される。発光素子100wから出射された光の光路上に光ファイバー2250の一端が配置されることにより、発光素子100wに光ファイバー2250が光学的に結合される。既に説明したように、本開示の発光素子は、出射される光の指向性を制御可能な新規な構造を有する。そのため、発光素子100wと光ファイバー2250との間で高い結合効率を実現し得る。光ファイバー2250と発光素子100wとの間に集光レンズなどが配置されてもよい。
光ファイバー2250は、本体ユニット2350における光源部2360Aからの光を取り込み、取り込まれた光を投光ユニット2310に導く(図42参照)。このように、光源部2360Aにおいて生成された光は、光ファイバー2250を介して、投光ユニット2310内に配置された画像形成部2320Aに送られる。
画像形成部2320Aは、光ファイバー2250から出射された光を受けるMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー2322Aを含む。光ファイバー2250の一端から取り込まれた光源部2360Aからの光は、光ファイバー2250の他端からMEMSミラー2322Aに向けて出射される。なお、光ファイバー2250から出射される光は、光ファイバー2250の開口数に応じて広がる。そのため、典型的には、光ファイバー2250とMEMSミラー2322Aとの間に、平行光を得るためのコリメートレンズ2260が配置される。MEMSミラー2322Aは、光ファイバー2250から出射された光が直接的または間接的に入射する位置に配置されていればよく、MEMSミラー2322Aと光ファイバー2250との間には、コリメートレンズ2260などの他の光学部品が介在し得る。
MEMSミラー2322Aに入射した光は、MEMSミラー2322Aにおける可動ミラー2323の傾きに応じた角度に反射される。可動ミラー2323において反射された光は、開口部2330を介して投光ユニット2310の外部に向けて出射され、画像を形成する。
図44は、図42に示す投影装置2300の構成の一例の概略を示す。上述したように、本体ユニット2350は、励起光源180を含む光源部2360Aを有する。この例では、本体ユニット2350内に配置された光源部2360Aが、発光素子100wを含んでいる。図示するように、本体ユニット2350は、さらに、発光素子100wの駆動装置2352、励起光源180のドライバ2354、制御回路2356および入出力インタフェース2358を有し得る。
入出力インタフェース2358は、外部装置(例えばコンピュータ、取り外し可能なメモリなど)と電気信号の授受が可能な構成を有し、有線または無線により、外部装置(例えば、ネットワークに接続されたサーバーまたは端末装置など)から画像データ、制御信号などを受け取る。制御回路2356は、例えば、メモリおよびCPUと、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)などの画像処理回路とを含み、入出力インタフェース2358を介して入力された画像データ(または信号)に基づいて画像信号を生成する。また、制御回路2356は、入出力インタフェース2358からの入力に基づき、投影装置2300における各部の動作の制御を行う。制御回路2356は、例えば、ドライバ2354に制御信号を送出することによって励起光源180における点灯および消灯を制御する。光ファイバー2250と励起光源180との間にシャッターを設け、このシャッターの動作をドライバ2354によって制御することによって、光ファイバー2250への励起光の入射および遮断を切り替えてもよい。シャッターは、励起光源180から、後述する光変調素子2322に至るまでのいずれかの位置に配置されればよい。制御回路2356は、また、発光素子100wを回転させるための駆動装置2352(典型的にはモーター)を制御し、励起光源180からの励起光が発光素子100wにおける複数の領域のいずれの領域に入射するかを切り替える。
この例では、投光ユニット2310は、画像形成部2320Aの光変調素子2322を駆動するためのドライバ2324を有する。上述のMEMSミラー2322Aは、光変調素子2322の一例である。図44に例示する構成において、制御回路2356は、ドライバ2324の制御を実行する。
[12−2.画像の形成]
次に、MEMSミラー2322Aを用いた画像の形成方法を説明する。
図45Aは、MEMSミラー2322Aで反射された光によって画像が形成される様子を模式的に示す。MEMSミラー2322Aは、例えば、微小な梁で支持された可動ミラーと、可動ミラーの傾きを変化させる駆動機構(静電気アクチュエータ)とを含む。図45Aに例示する構成において、MEMSミラー2322Aは、直交する2つの軸(ここではα軸およびβ軸)周りにそれぞれ回転可能に可動ミラーが支持された二次元MEMSミラーである。駆動信号として、適切な大きさの電圧を適切な時間、MEMSミラー2322Aに印加することにより、所望の方向に可動ミラーを傾けることができる。可動ミラーの傾きを制御することにより、入射光をスクリーンなどの投影対象の所望の位置に向けて反射させることができる。α軸およびβ軸に関して駆動周波数を互いに異ならせることにより、MEMSミラー2322Aで反射された光ビームを水平方向および垂直方向に走査することができる。
図43を参照して説明したように、MEMSミラー2322Aには、発光素子100wから出射され、光ファイバー2250によって伝送された光が直接的または間接的に入射する。上述したように、発光素子100wは、特定の方向(例えば発光素子100wの法線方向)に向けて強く出射される光の波長が異なる複数の領域を含んでいる。例えば、発光素子100wにおけるある領域は、赤色光に対応した波長の光を増強するような周期構造を有し、他のある領域は、緑色光に対応した波長の光を増強するような周期構造を有する。また、さらに他のある領域は、青色光に対応した波長の光を増強するような周期構造を有する。このように、発光素子100wの法線方向に出射される光のピーク波長は、領域ごとに異なり得る。
したがって、発光素子100wを回転させ、発光素子100wにおいて励起光が入射する領域を切り替えることにより、光ファイバー2250に結合される光の波長を切り替えることができる。即ち、MEMSミラー2322Aに入射する光の波長をタイムシーケンシャルに切り替えることができる。したがって、投影対象上における光ビームの走査に同期させて発光素子100wの回転を制御することにより、図45Aに模式的に示すように、投影対象上に例えばR光、G光およびB光のスポットを形成することが可能である。例えばR光、G光およびB光のビームを走査することにより、投影装置2300に供給された画像信号に基づいて、所望のカラー画像を表示することができる。黒を表現したいときには、例えば、MEMSミラー2322Aに入射した光を投光ユニット2310内に配置された吸光体に向けて反射させればよい。なお、発光素子100wの複数の領域の間で周期構造を共通とし、かつ、複数の領域の間で、発光波長が異なるフォトルミネッセンス材料を用いてもよい。
光ファイバー2250から光変調素子2322に向けて所望の波長の光を出射させるための構成は、図43に例示した構成に限定されない。図45Bに例示するように、各々が、互いに異なる波長の光を強く出射する発光素子に光学的に結合された複数の光ファイバーと、上述の光ファイバー2250とを光ファイバカプラ2252を介して接続することにより、所望の波長の光を生成してもよい。
図45Bに例示する構成において、励起光源180と光ファイバー2250rとの間、励起光源180と光ファイバー2250gとの間、および、励起光源180と光ファイバー2250bとの間に、それぞれ、発光素子100r、100gおよび100bが配置されている。図示する例では、励起光源180と発光素子100r、100gおよび100bのそれぞれとの間には、コリメートレンズ2270が配置されている。発光素子100r、100gおよび100bは、それぞれ、例えば、赤、緑および青の波長域の光を正面に強く出射するように周期が設定された周期構造を有する。したがって、光ファイバー2250r、2250gおよび2250rのそれぞれの一端には、赤、緑および青の波長域の光がそれぞれ入射する。発光素子100r、100gおよび100bは、発光波長が互いに異なるフォトルミネッセンス層を有することにより、互いに異なる波長域の光を強く出射するように設計されていてもよい。図示するように、発光素子100rと光ファイバー2250rとの間、発光素子100gと光ファイバー2250gとの間、および、発光素子100bと光ファイバー2250bとの間に集光レンズ2272を配置してもよい。
光ファイバー2250r、2250gおよび2250bの他端は、光ファイバカプラ2252を介して、一端が光変調素子2322に向けられた光ファイバー2250の他端に接続されている。光ファイバカプラ2252は、例えば、溶融により複数の光ファイバーが結合された構造、あるいは、導波路を利用した構造を有する。光ファイバー2250rによって伝送された赤色光、光ファイバー2250gによって伝送された緑色光、および、光ファイバー2250bによって伝送された青色光は、光ファイバカプラ2252において合成され、合成された光が、光ファイバー2250の他端から出射される。このとき、各励起光源180の出力を調整することにより、所望の色(すなわち、スペクトル)の光を光ファイバー2250の他端から出射させることが可能である。これにより、投影対象に向かって進行する光ビームの色を任意に変更することができる。各励起光源180から出射される励起光における強度は、励起光源180にそれぞれ接続されたドライバ2354r、ドライバ2354gおよびドライバ2354bによって制御され得る。これらのドライバ2354r、ドライバ2354gおよびドライバ2354bは、例えば、上述の制御回路2356の制御に基づいて動作する。
あるいは、例えば、発光素子100rと光ファイバー2250rとの間、発光素子100gと光ファイバー2250gとの間、および、発光素子100bと光ファイバー2250bとの間に絞りを設け、ドライバ2354r、ドライバ2354gおよびドライバ2354bにより、各色に対応して設けられた絞りの開き具合を制御してもよい。絞りの開き具合を調整すれば、合成される光の強度比を調整することが可能であり、任意の色の合成光が得られる。なお、ここでは、赤色光、緑色光および青色光を合成する例を説明したが、合成される光の波長域、および、用いる発光素子の数などは任意に設定してよい。
[12−3.投影装置の変形例]
図46は、投影装置2300における光学系の他の一例を示す。図47は、図46に示す光学系に対応した構成の一例の概略を示す。
図46および図47に例示する構成において、投影装置2300は、励起光源180を含む光源部2360Bと、MEMSミラー2322Aを含む画像形成部2320Bと、これらを光学的に結合する光ファイバー2250とを有する。この例では、画像形成部2320Bが、発光素子100wを含んでいる。すなわち、この例では、図47に模式的に示すように、光変調素子2322および発光素子100wが、投光ユニット2310内に配置されている。なお、発光素子100wの駆動装置2352も投光ユニット2310内に配置される。励起光源180が本体ユニット2350内に配置される点は、図43および図44を参照して説明した例と共通である。
図46および図47に例示する構成において、光ファイバー2250の一端は、励起光源180からの励起光の光路上に配置されている。光ファイバー2250は、励起光源180からの励起光を取り込み、画像形成部2320Bに励起光を導く。光ファイバー2250から出射した励起光が入射する位置には、画像形成部2320Bの発光素子100wが配置されている。すなわち、光ファイバー2250は、取り込んだ励起光を他端から発光素子100wに向けて出射する。光ファイバー2250と発光素子100wとの間にコリメートレンズなどが配置されてもよい。
励起光を受けた発光素子100wは、特定の波長の光を特定の方向(例えば発光素子100wの法線方向)に強く出射する。画像形成部2320B中のMEMSミラー2322Aは、発光素子100wによって増強された光を受ける。即ち、MEMSミラー2322Aは、発光素子100wから出射された光が入射する位置に配置される。MEMSミラー2322Aは、発光素子100wによって増強された光が直接的または間接的に入射する位置に配置されていればよく、発光素子100wとMEMSミラー2322Aとの間に集光レンズなどが配置されてもよい。MEMSミラー2322Aは、入射した光の進行方向を駆動信号に応じて変化させる。
このように、光源部2360Bにおいて生成された励起光を光ファイバー2250を介して画像形成部2320Bに伝送してもよい。このような構成によっても、所望の画像をスクリーンなどの上に表示させることが可能である。
[12−4.発光素子と光ファイバーとの間の光学的結合]
図48は、光源と光ファイバーとの間における光学的結合を説明するための模式図である。図48は、光源2280から発せられた光を、集光レンズ2290を介して光ファイバー2250内部に導入する様子を模式的に示している。
上述したように、光学系においては、拡散などがなければ、エテンデュが保存される。図48に示す例では、光源2280の中心、集光レンズ2290の光軸および光ファイバー2250の軸Lが一致しており、光源2280から発散していく光線と軸Lとのなす最大角をθとし、光源2280の発光面積をSとすれば、光源2280のエテンデュEsは、Ssin2θと表される。なお、ここでは、空気の屈折率を1としている。
上述したように、受光側における光の取り込みの能力の大きさを表す受光側のエテンデュが光源のエテンデュよりも小さいと、光源から発せられた光の全てを取り込むことはできずに損失が生じる。図48中の濃い網掛けは、光ファイバー2250に導入される光を模式的に示し、一方、薄い網掛けは、光源2280のエテンデュが大きい場合に、光ファイバー2250に導入できない光を模式的に示している。
受光側である光ファイバー2250のエテンデュEfは、光ファイバー2250の開口数NAを用いて表すことができる。光ファイバー2250の開口数NAは、光ファイバー2250が取り込み可能な光線と軸Lとのなす最大角θfを用いて表され、この角θfの大きさは、光ファイバー2250内部で全反射が起きる条件によって決まる。すなわち、光ファイバー2250内に光を導入する場合、受光側のエテンデュの大きさは、どのような光ファイバー2250を使用するかによって決まっている。
受光側のエテンデュの大きさが一定であれば、光源2280の発光面積を拡大しても、光ファイバー2250内部に導入できる光の量は増えない。このことは、光源2280と光ファイバー2250との間に配置された集光レンズ2290の径を拡大しても同様である。
図49は、光源2280の発光面積Sと、光ファイバー2250に導入される光の量Aとの間の関係を模式的に示す。図49中の破線は、光源2280における発光が等方的であり、光源2280のエテンデュEsが比較的大きい場合を示している。このときの光源2280と光ファイバー2250との間の結合効率は、例えば20%程度であり得る。図49中の一点鎖線は、光源2280が指向性を有し、エテンデュEsが比較的小さい場合を示している。図49中の実線は、光源2280が完全な指向性を有し、エテンデュEsがほぼ0である場合を示している。このとき、ほぼ100%の結合効率を達成し得る。このように、ある程度の発光面積を有する光源と光ファイバーとの間の光学的結合においては、光源が高い指向性を有すると有利である。
発光素子100wにおける表面構造(ここでは周期構造120aおよび/または120b)は、フォトルミネッセンス層110から出射される特定の波長の光の強度を、特定の方向(例えば正面方向)において最大にする擬似導波モードを、フォトルミネッセンス層110の内部に形成する。発光素子100wにおける表面構造は、例えば、フォトルミネッセンス層110が発する波長λaの光の指向角を、15°未満に制限する。これにより、狭角配光が実現される。このように、発光素子100wは、出射される光の指向性を制御可能な構造を有するので、発光素子100wと光ファイバー2250との間で高い結合効率が得られる。したがって、発光素子100wから出射された光の光ファイバー2250を介した伝送(例えば図43を参照)を高効率で行い得る。そのため、発光素子100wと光変調素子2322(ここではMEMSミラー2322A)との間に光ファイバー2250を介在させても、明るい表示を実現し得る。また、発光素子100wと光ファイバー2250との間で高い結合効率が得られるので、消費電力の低減された投影装置を提供し得る。
なお、本開示の発光素子によれば、図42に例示するように、本体ユニット2350と投光ユニット2310とを光ファイバー2250によって光学的に結合することが可能であるので、画像形成用の光学系の全ての光学部品を投光ユニット2310内に収容する必要がない。そのため、投光ユニットの小型化が容易であり、投光ユニットのデザインの自由度も向上する。
図50は、画像形成用の光学系の全ての光学部品が収容された投光ユニットを有する投影装置の外観の一例を比較例として示す。図50に示す投影装置2500は、本体ユニット2550に投光ユニット2510が接続された構成を有する。投光ユニット2510は、開口部2530を有し、開口部2530内に結像レンズ2332が配置されている。
図51は、図50に示す投影装置2500の投光ユニット2510の内部に配置された、画像形成のための構成を示す。投影装置2500は、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device:DMD)を用いたDLP(Digital Light Processing)方式の投影装置である。図示するように、投光ユニット2510の内部には、白色光を出射する光源2580と、カラーホイール2520と、カラーホイール2520を通過した光を受けるデジタルマイクロミラーデバイス2322B(以下、「DMD2322B」と呼ぶ。)と、結像レンズ2332とが収容されている。カラーホイール2520は、円盤形状を有し、円周方向に沿って配列された複数の領域を含む。複数の領域の各々は、互いに異なる色のカラーフィルタであり、例えば、赤色光(R)を透過させる領域、緑色光(G)を透過させる領域、青色光(B)を透過させる領域、および、光源2580から出射された白色光(W)をそのまま透過させる領域を含む。カラーホイール2520は、投光ユニット2510内において回転可能に支持されており、不図示の駆動装置(例えばモータ)によって回転させられる。カラーホイール2520が回転することにより、DMD2322Bに入射する光の色が切り替えられる。DMD2322Bは、基板2326と、基板2326上に配置された多数の微小なミラー2325とを有し、各ミラー2325に入射した光を所定の方向に反射することにより、画像を形成する。図51では、簡単のため、例えば数千行、数千列のマトリクス状に配置されるミラー2325のうちの2つを図示している。DMD2322Bの構成および動作の詳細は、後述する。
図50および図51に例示するように、投光ユニット2510内に光源2580を配置する構成では、比較的大きなヒートシンク、ファンなど(図51において不図示)の、光源2580の冷却のための部材が投光ユニット2510内に配置される。そのため、投光ユニット2510を小型化することは困難である。図50に示すような概略円筒形状の投光ユニット2510において、その直径および軸に沿った長さは、それぞれ、例えば20cmおよび30cm程度であり得る。また、大型のヒートシンクを用いることにより、投光ユニット2510の重量も増加する。投光ユニット2510の重量は、例えば、3kg程度であり得る。
これに対し、本開示の発光素子が適用された投影装置によれば、光源部と画像形成部とを光ファイバーによって光学的に結合することが可能であるので、励起光源180と光変調素子2322とを、本体ユニット2350と投光ユニット2310との間で分離して配置することが容易である。そのため、投光ユニット2310の内部に発熱の大きい部品を配置する必要がなく、投光ユニット2310の内部にヒートシンクなどを配置する必要がない。このように、投光ユニット2310の内部からヒートシンクなどを省略可能であるので、より小型かつ軽量な投光ユニット2310を実現し得る。投光ユニット2310の重量は、例えば0.3kg程度であり得る。上述した態様によれば、投光ユニット2310の小型化および軽量化が比較的容易であるので、住居、店舗、オフィスなどにおけるスポットライト、ダウンライトを投光ユニット2310に置き換えるといった利用方法も可能である。
なお、従来、スクリーン上に画像を表示するための光としてレーザ光が用いられることがある。例えば、図51に示す光学系において、光源2580としてレーザダイオード(LD)が用いられることがある。これに対し、本開示の投影装置では、発光素子100wから出射された光を用いて画像を表示する。このような構成によれば、励起光を受けて発光素子100wから発せられた光が投影の対象に向けて出射されるので、より安全性の高い投影装置を提供することが可能である。また、画像を表示するための光としてレーザ光を用いる構成では、スペックルノイズを低減するための対策が必要である。これに対し、本開示の投影装置では、画像を表示するための光がレーザ光ではないので、スペックルノイズを低減するための特別な機構を省略し得る。
[12−5.投影装置の他の変形例]
図52および図53は、投影装置2300における光学系のさらに他の一例を示す。図52および図53に例示するように、図51を参照して説明したDMD2322Bを光変調素子2322として用いてもよい。
図52に例示する構成において、投影装置2300は、上述の光源部2360Aと、DMD2322Bを含む画像形成部2320Cと、これらを光学的に結合する光ファイバー2250とを有する。光源部2360Aおよび画像形成部2320Cは、それぞれ、本体ユニット2350内および投光ユニット2310内(図42参照)に配置される。
光源部2360Aで生成された光は、光ファイバー2250を介して画像形成部2320Cに送られる。光ファイバー2250から出射した光が直接的または間接的に入射する位置に、DMD2322Bが配置されている。この例では、光ファイバー2250とDMD2322Bとの間にレンズ系2340が配置されている。レンズ系2340は、光ファイバー2250から出射された光から、拡大された光ビームを形成する。DMD2322Bは、レンズ系2340によって拡大された光ビームで一様に照射される。
上述したように、DMD2322Bは、基板2326上に配置された多数の微小なミラー2325を有する。ミラー2325の各々は、不図示のアクチュエータによって傾きを変更可能に基板2326上に支持されている。ミラー2325の各々における傾きは、例えば、ドライバ2324(図44参照)からのデジタル入力信号に応じて約10°程度変化させられる。各ミラー2325は、その傾きに応じて、入射した光を結像レンズ2332または投光ユニット2310内の吸光体のいずれかに向けて反射させる。既に説明したように、発光素子100wを回転させることにより、光ファイバー2250を介してDMD2322Bに入射する光の波長を切り替えることが可能である。そのため、発光素子100wの回転に同期させて各ミラー2325における傾きを独立して変化させることにより(例えば毎秒数千回程度)、所望のカラー画像をスクリーン上に映し出すことが可能である。
このように、光変調素子2322としてDMDを用い、光ファイバー2250を介して、DMDに発光素子100wを光学的に結合するような構成も可能である。本開示の実施形態によれば、発光素子100wと光ファイバー2250との間で高い結合効率が得られるので、光学的損失の少ない光学系を実現し得る。したがって、明るい表示を行い得る。また、励起光源180を本体ユニット2350内に配置できるので、図43および図46を参照して説明した構成と同様の効果が得られる。
図46を参照して説明した構成と同様に、投光ユニット2310側に発光素子100wを配置してもよい。図53は、投光ユニット2310側に発光素子100wが配置された構成例を示している。図53に例示する構成において、投光ユニット2310の画像形成部2320Dは、DMD2322Bと、発光素子100wとを含んでいる。このような構成においても、励起光源180が本体ユニット2350内に配置されるので、図43および図46を参照して説明した構成と同様の効果が得られる。
上述した態様のほか、本開示の技術は、種々の改変が可能である。例えば、光変調素子2322として例えばLCOS(Liquid Crystal on Silicon)を用いてもよい。光変調素子2322は、入射した光を反射または透過させて画像を形成する素子であればよい。上述した態様では、発光素子100wにおける複数の領域のいずれに励起光が入射するかを切り替えることにより、光変調素子2322に入射する光の波長を切り替えている。しかしながら、この例に限定されず、カラー画像の形成に使用する波長域(例えば、赤色、緑色および青色)ごとに独立して発光素子を配置してもよい。
[13.フォトルミネッセンス層の支持体を有する発光装置]
以下、本開示の発光装置のさらに他の変形例を説明する。
図54Aは、発光素子100’と、発光素子100’を支持する支持体3540とを備える発光装置の例を模式的に示す断面図である。図54Bは、この発光装置を図54Aにおける上方向から見た平面図である。これらの図では、発光素子100’における表面構造120が極端に大きく描かれているが、実際には表面構造120は多数の微細な凸部または凹部を有し得る。この点は、本開示の他の図でも同様である。図54Aおよび図54Bに示す発光装置では、発光素子100’の周囲を取り囲むように発光素子100’を支持する支持体3540が設けられている。
支持体3540は、発光素子100’の側部に接触し、発光素子100’を固定する。このような支持体3540を設けることにより、発光素子100’の周囲を保護するとともに、持ちやすくなるという利点がある。支持体3540は、例えばフォトルミネッセンス層110よりも高い熱伝導率をもつ材料から構成され得る。これにより、支持体3540を、フォトルミネッセンス層110で発生した熱を外部に放出する熱浴またはヒートシンクとしても機能させることができる。
放熱のための熱浴がない場合、高出力時にフォトルミネッセンス層110が高温になって発光効率が低下する可能性がある。熱伝導率の高い支持体3540をフォトルミネッセンス層110に接触させることにより、放熱を促進し、発光効率の低下を抑制することができる。支持体3540は、例えばアルミニウム、真鍮、銅といった熱伝導率の比較的高い材料で構成され得る。ただしこのような材料に限定されない。単に発光素子100’を衝撃から保護する目的で支持体3540を設ける場合には、フォトルミネッセンス層110よりも熱伝導率の低い材料で支持体3540を構成してもよい。
発光素子100’は、既に説明した本開示のいずれかの発光素子と同様の構成を備え得る。図54Aは、一例として、基板140上に透光層3520とフォトルミネッセンス層110とが形成された発光素子100’の構成を示している。透光層3520とフォトルミネッセンス層との間、およびフォトルミネッセンス層110と空気層との間に表面構造(典型的には周期構造)120が形成されている。このような構成は、特に、基板140の材料に安価なソーダガラスや硼珪酸ガラスなどの透明な材料を用いる場合に有効である。ただし、上記の安価なガラスを用いると、発光素子100’を製造する際のフォトルミネッセンス材料を焼結させる工程で、基板140が損傷するおそれがある。これを回避するために、低コストの基板140の上に耐熱性の高い材料(例えば、SiO2、Al2O3、MgO、SiN、Ta2O3、TiO2等)で、表面構造120を有する透光層3520を形成することが有効である。これにより、フォトルミネッセンス層110側からレーザー光などで短時間加熱する際に、焼結時の熱を透光層3520で遮断し、基板140へのダメージを防ぐことができる。発光素子100’は、図54Aに示す構成に限らず、後述するように多様な変形が可能である。
図示される例では、発光装置は、さらに励起光源3510を備える。励起光源3510は、発光素子100’の底面(すなわち、基板140と空気との界面)に向けて斜めに励起光を照射する。励起光の入射角は0°よりも大きく、好ましくは光の取り込み構造を設け、フォトルミネッセンス層110内で励起光が全反射する条件を満たすように設定される。光の取り込み構造は、例えば図54Cに示すように、基板140の励起光源3510側の表面に設けられた三角柱の形状を有する三角プリズムであり得る。光の取り込み構造3590(この例では三角プリズム)は、半球、ピラミッド、回折格子、ブレーズド回折格子などの他の構造を有していてもよい。このような構造体を設けることにより、基板140の表面での反射を抑制し、フォトルミネッセンス層110内に効率よく励起光を導入することができる。このような構造体は、詳しくは出願人による特願2015−031515に導光構造体として説明されている。参考のために、特願2015−031515の開示内容全体を本明細書に援用する。そのような入射角を実現するように励起光源3510の位置および向きが調整される。その結果、フォトルミネッセンス層110の法線方向に対して傾斜した角度で励起光がフォトルミネッセンス層110に入射し、フォトルミネッセンス層110内を伝搬する。これにより、励起光がフォトルミネッセンス層110に垂直に入射する場合と比較して、発光効率を向上させることができる。
表面構造120は、特定の波長の光を特定の方向に強く出射させる。このため、表面構造120は、励起光も特定の方向に最も強く出射させる構造であるといえる。その出射角をθoutとすると、励起光源は、励起光が発光素子100’にθoutと同じ入射角で入射するように配置され得る。これにより、励起光を効率よくフォトルミネッセンス層110内に導入することができ、発光効率を高くすることができる。
励起光を発光素子100’に斜めに入射させるために、図54A〜図54Cに示す構成例における支持体3540は、励起光源3510の側が大きく開放された構造を有し得る。その開放された部分を開口部と呼ぶと、開口部は、フォトルミネッセンス層110の法線方向に対して傾斜した側面3540aを有する。図示されるように、この開口部は、発光素子100’に接触する部分(「支持部」と呼ぶ。)3540bから励起光源3510の側に向かって徐々に広がっている。言い換えれば、開口部の側面はテーパー状の構造を有する。このような構造により、励起光は、開口部の側面3540aに沿って発光素子100’に斜めに入射することができる。図54A〜図54Cに例示する開口部の形状は底面が正方形の四角錐台であるが、励起光の光路を妨げない限り、任意の形状であってよい。例えば、側面3540aをテーパー状にする代わりに、段差を設けてもよい。
図54A〜図54Cに例示する発光装置は、既に述べた他の実施形態と同様、特定の波長の光の指向角を制限する表面構造120を有している。このため、特定の波長の光の指向性を向上させることができる。さらに、発光素子100’は、励起光が入射する部分(ここでは基板140の底面)が露出するように、支持体3540に固定されている。これにより、発光素子100’を保護しながら励起光を所望の角度で入射させることができる。フォトルミネッセンス層110よりも熱伝導率の高い材料で支持体3540を構成すれば、放熱性に優れた、発光効率が低下しにくい発光装置を実現できる。
図55Aおよび図55Bは、上記の例とは異なる構造の発光素子100’を用いた例を示す図である。この発光素子100’は、図54Aおよび図54Bに示す構成から透光層3520およびその表面の表面構造120を除いた構成を有する。即ち、この発光素子100’は、基板140と、その上のフォトルミネッセンス層110と、その表面の表面構造120とを備える。発光素子100’以外の構成は、図54Aおよび図54Bに示す構成と同様である。図55Aおよび図55Bに示す例では、表面構造120がフォトルミネッセンス層110の上部にのみ設けられているので、製造工程を簡略化できる。この構成は、特に基板140が耐熱性の高い石英ガラスから構成される場合に有効である。石英ガラスは耐熱性が高いため、フォトルミネッセンス材料の焼結時でも損傷のおそれが低い。よって、基板140の上に直接フォトルミネッセンス層110を形成し、表面構造120を形成することができる。
図56Aおよび図56Bは、さらに異なる構造の発光素子100’を用いた例を示す図である。この発光素子100’は、図54Aおよび図54Bに示す構成からフォトルミネッセンス層110の表面の表面構造120を除いた構成を有する。即ち、この発光素子100’は、基板140と、その上の透光層3520と、その表面の表面構造120と、その上のフォトルミネッセンス層110とを備える。表面構造120はフォトルミネッセンス層110と透光層3520との界面にのみ設けられている。このような構造によっても製造工程を簡略化できる。
図57Aおよび図57Bは、図54Aおよび図54Bに示す例とは異なる構造の支持体3540を備える例を示す図である。この支持体3540は、図57Bに示すように、フォトルミネッセンス層に垂直な方向から見た支持体3540の側面3540aの外周部および内周部の形状が四角形ではなく円形である。言い換えれば、開口部の形状が四角錐台ではなく円錐台である。この点を除けば、図54Aおよび図54Bの構造と同様である。このような構造であっても、図54Aおよび図54Bに示す構成と同様の効果が得られる。
図58Aおよび図58Bは、図55Aおよび図55Bに示す発光装置における支持体3540を、図57Aおよび図57Bに示す支持体に置換した構成例を示す図である。このような構成でも、支持体の開口部の側面の形状が異なるだけなので、図55Aおよび図55Bに示す構成と同様の効果が得られる。
図59Aおよび図59Bは、図56Aおよび図56Bに示す発光装置における支持体3540を、図57Aおよび図57Bに示す支持体に置換した構成例を示す図である。このような構成でも、支持体の開口部の側面の形状が異なるだけなので、図56Aおよび図56Bに示す構成と同様の効果が得られる。
図60Aおよび図60Bは、発光素子100’の側面にのみ支持体3540が設けられている発光装置の例を示す図である。この例では、支持体3540の周辺部が励起光源3510の側に突出していない、即ち、励起光源3510の側に広がった開口部を有していない。この点を除けば、図54Aおよび図54Bに示す構成と同様である。この例では、簡便な構造で耐衝撃性または放熱性に優れた指向性発光装置を実現できる。
図61Aおよび図61Bは、図60Aおよび図60Bに示す構成において発光素子100’を、図55Aおよび図55Bに示す発光素子に置換した発光装置の例を示す図である。この例でも、簡便な構造で放熱性に優れた指向性発光装置を実現できる。
図62Aおよび図62Bは、図60Aおよび図60Bに示す構成において発光素子100’を、図56Aおよび図56Bに示す発光素子に置換した発光装置の例を示す図である。この例でも、同様に簡便な構造で放熱性に優れた指向性発光装置を実現できる。
図63Aおよび図63Bは、図54Aおよび図54Bに示す発光装置において、支持体3540の構造を、さらに異なる構造に置換した例を示す図である。この例における支持体3540は、発光素子100’に接する支持部3540bから励起光の光路に沿って延びる開口部3540cを有する。この開口部3540cは、励起光を発光素子100’に導く導光路として機能する。励起光源3510から出射された励起光は、開口部3540cに沿って伝播し、発光素子100’の底面に斜めに入射する。このような構造によっても、耐衝撃性または放熱性に優れた指向性発光装置を実現できる。
図64Aおよび図64Bは、図63Aおよび図63Bに示す構成において発光素子100’を、図55Aおよび図55Bに示す発光素子に置換した発光装置の例を示す図である。図65Aおよび図65Bは、図63Aおよび図63Bに示す構成において発光素子100’を、図56Aおよび図56Bに示す発光素子に置換した発光装置の例を示す図である。これらの例でも、発光素子100’の構造が異なるだけであるので、図63Aおよび図63Bに示す構成と同様の効果が得られる。
図66Aおよび図66Bは、導光路の途中に励起光を反射する反射ミラー(リフレクター)3530が設けられた構成例を示している。発光素子100’の構成は、図54Aおよび図54Bに示す構成と同様であり得る。この例では、支持体3540の開口部3540c(即ち導光路)が、途中で屈曲しており、屈曲する箇所にリフレクター3530が配置されている。このリフレクター3530は、励起光の波長域に反射特性を有する。リフレクター3530は、通常のミラーに限らず、ダイクロイックミラーでもよい。リフレクター3530によって反射された励起光は、発光素子100’の底面に入射する。導光路内にリフレクター3530を設けることで、励起光源3510の配置の制約が低減される。これにより、より小型の発光装置を実現し得る。
図67Aおよび図67Bは、図66Aおよび図66Bに示す発光装置における発光素子100’を、図55Aおよび図55Bに示す発光素子に置換した構成例を示す図である。図68Aおよび図68Bは、図66Aおよび図66Bに示す発光装置における発光素子100’を、図56Aおよび図56Bに示す発光素子に置換した構成例を示す図である。これらの例でも、発光素子100’の構造が異なるだけであるので、図66Aおよび図66Bに示す構成と同様の効果が得られる。
図69A〜図71Bは、フォトルミネッセンス層110の側面から励起光が入射する構成例を示す図である。図69Aおよび図69Bは、図54Aおよび図54Bに示す発光素子100’を有する例を示している。図70Aおよび図70Bは、図55Aおよび図55Bに示す発光素子100’を有する例を示している。図71Aおよび図71Bは、図56Aおよび図56Bに示す発光素子100’を有する例を示している。図69A〜図71Bに示す例では、支持体3540は、フォトルミネッセンス層110の側面(即ち主面ではない面)から励起光源3510に向かって延びる開口部(即ち導光路)3540cを有している。この開口部3540cに沿って励起光が伝搬し、フォトルミネッセンス層110の側面に斜めに入射する。このように、励起光は直接フォトルミネッセンス層110に入射する。このような構成により、特に縦方向(即ち、フォトルミネッセンス層に垂直な方向)について小型の指向性発光装置を実現できる。
図72A〜図75Bは、支持体3540に加えて複数の放熱フィン3560をさらに備えた発光装置の例を示す図である。図72Aおよび図72Bは、図55Aおよび図55Bに示す発光装置に放熱フィン3560が付加された構成を示している。図73Aおよび図73Bは、図64Aおよび図64Bに示す発光装置に放熱フィン3560が付加された構成を示している。図74Aおよび図74Bは、図67Aおよび図67Bに示す発光装置に放熱フィン3560が付加された構成を示している。図75Aおよび図75Bは、図70Aおよび図70Bに示す発光装置に放熱フィン3560が付加された構成を示している。これらの例では、発光素子100’として、図55Aおよび図55Bに示されている発光素子が用いられているが、発光素子100’は既に説明した他の構造を有していてもよい。
図72A〜図75Bに示す各例では、発光素子100’の周囲の支持体3540の外周部に、複数の放熱フィン3560が等間隔に接続されている。支持体3540および放熱フィン3560は、フォトルミネッセンス層110よりも高い熱伝導率の材料(例えば、アルミ、真鍮、または銅)で構成される。放熱フィン3560および支持体3540の材料は同じでもよいし異なっていてもよい。フォトルミネッセンス層110で発生した熱は、支持体3540を介して複数の放熱フィン3560によって外部に放出される。これにより、さらに放熱性に優れた指向性発光装置を実現できる。なお、複数の放熱フィン3560の形状および配置は、図示される例に限定されず、効率よく放熱できる構造であればよい。
以上の例では、支持体3540は、連続した単一の構造体であり、発光素子100’の周囲の全体を取り囲んでいるが、支持体3540は必ずしもこのような構造である必要はない。例えば、図76Aに示すように、発光素子100’の周囲において支持体3540の一部が切断されており、その部分でフォトルミネッセンス層110の一部が露出していてもよい。また、図76Bに示すように、支持体3540が2つの部分に分かれ、それらが発光素子100’を挟むように固定してもよい。このように、支持体3540は、必ずしも連結された単一の構造体である必要はない。励起光の光路を妨げないように、一部が開放され、発光素子100’における励起光が入射する部分が露出するように、発光素子100’を固定する構造であればよい。例えば、支持体3540は、フォトルミネッセンス層110の一部のみに接していてもよい。
[14.リフレクターを有する光源ユニット]
図77は、リフレクター(即ち反射部材)を有する光源ユニット(即ち発光装置)の概略構成を示す図である。図77に示す光源ユニット4500は、励起光源4510と、発光素子100aと、リフレクター4530と、コリメートレンズ4520とを備える。発光素子100aは、図1Cに示す発光素子100aと同じ構造を有する。発光素子100aに代えて、既に説明した他の構造を有する発光素子を用いてもよい。図77では、発光素子100aの表面構造120が極端に大きく描かれているが、実際には表面構造120は多数の微細な凸部または凹部を有し得る。
リフレクター4530は、励起光の波長域に反射特性を有する反射部材である。リフレクター4530は、例えば複数の金属の合金からなる一般的なミラー、または誘電体多層膜から形成されるダイクロイックミラーであり得る。リフレクター4530は、励起光源4510から出射した励起光の光路上に配置され、励起光を反射して発光素子100aに導く。この際、励起光が、フォトルミネッセンス層110の内部で全反射しながら伝播するように、励起光源4510およびリフレクター4530の位置および向きが調整されている。
コリメートレンズ4520は、励起光源4510とリフレクター4530との間に配置される。励起光源4510が例えばレーザーダイオード等の光源であるとき、励起光は、一般的に、拡がりをもった光束として出射される。コリメートレンズ4520は、その拡がった光束を平行光に変換してリフレクター4530に入射させる。図77では、コリメートレンズ4520は、単一のレンズとして描かれているが、複数のレンズの組み合わせであってもよい。また、その形状も、必要な性能に応じて適宜設計され得る。
発光素子100aは、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層110と、基板140(典型的には透明基板)と、フォトルミネッセンス層110の表面に形成された表面構造120(典型的には周期構造)とを有する。表面構造120は、既に説明したいずれかの表面構造と同様の構造であり得る。表面構造120は、フォトルミネッセンス層110が発する波長λaの光の指向角を、例えば15°未満に制限する。これにより、狭角配光が実現される。
図77に示す光源ユニット4500においては、励起光がリフレクター4530で反射されてからフォトルミネッセンス層110に入射する。即ち、励起光の光路が折りたたまれるようにしてフォトルミネッセンス層110に入射する。このため、励起光源4510と発光素子100aとの配置関係の自由度を向上させることができる。その結果、光源ユニット4500を小型化することができる。
図78は、比較のため、リフレクター4530が設けられていない光源ユニットの例を示している。図78に示す光源ユニット4500cでは、励起光を斜めに入射させるために、励起光源4510が発光素子100aから離れた場所に配置されている。その結果、図77の構成と比較して、発光素子100aの各層に平行な方向における装置のサイズが大きくなる。
図79は、他の構成例を示す図である。この例では、励起光源4510の位置および向き、ならびにリフレクター4530の向きが、図77に示す例とは異なっている。この例における励起光源4510は、フォトルミネッセンス層110の主面にほぼ垂直な方向に励起光を出射する。リフレクター4530は、その励起光を反射し、フォトルミネッセンス層110に斜めに入射させる。このような構成によっても、図77と同様、装置のサイズを小型にできる。
図80は、さらに他の構成例を示す図である。この例では、発光装置は、発光素子100aを支持する部材(支持体と称する。)4540を備えている。支持体4540は、発光素子100aの周囲を囲むように発光素子100aを支持する。図80では支持体4540が2つの部分に分離しているように見えるが、実際には連結された単一の構造体であり得る。支持体4540を設けることにより、発光素子100aの周囲を保護するとともに、持ちやすくなるという利点がある。
支持体4540の一部は、励起光を反射する材料で形成されたリフレクター4530である。リフレクター4530は、励起光を反射してフォトルミネッセンス層110に導く。これにより、図79に示す構成と同様の機能が実現される。この例では、支持体4540とリフレクター4530とが一体化されているため、耐衝撃性を向上させることができる。支持体4540を熱伝導率の高い材料で構成すれば、支持体4540を、発光素子100aが発する熱を効率よく外部に放出するヒートシンクとして機能させることもできる。
図81は、図80の変形例を示している。この例の発光装置では、支持体4540の構造が図80に示す例とは異なっている。支持体4540は、発光素子100aに加えて、励起光源4510およびコリメートレンズ4520を内部に収納して保持する。発光素子100aを保持する部分の近傍における傾斜した部分は、リフレクター4530として機能する。この構成例では、励起光源4510、コリメートレンズ4520、リフレクター4530、および発光素子100aが所定の配置関係を保って支持される。このような構造により、衝撃によって励起光の光路がずれることを抑制できる。すなわち、耐衝撃性をさらに向上させることができる。
図82は、他の変形例を示す図である。この例における発光装置は、発光素子100aと、レーザーモジュール4580と、安全フィルター4560と、レンズ4550と、リフレクター4530と、これらを支持する支持体4540とを備える。レーザーモジュール4580は、レーザーダイオードを含む励起光源4510とコリメートレンズ4520とを有する。励起光源4510から出射した励起光は、コリメートレンズ4520を介してリフレクター4530で反射され、発光素子100aに最適な角度で入射する。
励起光源4510としてレーザーダイオードを用いる場合、発光素子100aで変換されなかった一部の励起光が発光素子100aを通過する。この通過したレーザー光はコヒーレント性を有しており、人体、特に目に損傷を与える可能性がある。このレーザー光の漏洩を防止するために励起光源4510の波長の光をカットする安全フィルター4560が設けられている。レンズ4550は、安全フィルター4560を透過した光を集光し、例えば光ファイバーに導入する。
この例におけるリフレクター4530は、角度調整機構として機能する回転軸4570を有する。リフレクター4530を、回転軸4570のまわりに手動で回転させることができる。このような構造により、発光素子100aへの励起光の入射角度を自由に調整できる。この調整は、例えば製品出荷前に手動で行われ得る。角度調整機構としては、他にも、モーターと、モーターを駆動する制御回路との組み合わせによって自動で角度調整が行われるような機構を導入してもよい。リフレクター4530が角度調整機構を有する代わりに励起光源4510の側に角度調整機構が設けられていてもよい。そのような角度調整機構は、例えば、励起光源4510をある回転軸の周りに回転させる機構によって実現され得る。
図82に示す例では、支持体4540がレンズ4550、安全フィルター4560、発光素子100a、リフレクター4530、およびレーザーモジュール4580を保持する。このため、衝撃が生じたとしても各部品の相対的な位置関係がずれることがなく、安定に動作する発光装置を実現できる。
以上のように、リフレクター4530を設けることにより、励起光源4510から出射された励起光の光路を曲げてフォトルミネッセンス層110に入射させることができる。このため、励起光源4510と発光素子との配置関係の自由度が向上し、装置全体をよりコンパクトにすることができる。
図83は、支持体4540を有する発光装置の他の変形例を示す図である。この発光装置は、励起光源4510と、コリメートレンズ4520と、発光素子100aと、これらを支持する支持体4540とを備える。この例ではリフレクターは設けられていない。励起光源4510から出射された励起光は、コリメートレンズ4520を介して発光素子100aのフォトルミネッセンス層に所望の角度で入射する。励起光源4510と、コリメートレンズ4520と、発光素子100aとが支持体4540を介して一体化されていることにより、耐衝撃性が向上する。
続いて、リフレクター4530を有する光源ユニットによる小型化の効果の具体例を説明する。
図84A〜図84Cは、リフレクター4530を設けることによる効果の一例を示す図である。図84Aは、高い指向性を有しない従来の発光素子700cを用いた光源ユニットの構成例を示している。図84Bは、本開示の実施形態による発光素子を有し、リフレクターを有しない光源ユニットの構成例を示している。図84Cは、本開示の実施形態による発光素子およびリフレクターを有する光源ユニットの構成例を示している。
これらの構成例において、励起光源4510としてレーザーダイオード(LD)が用いられている。各光源ユニットは、照明装置の部品として用いられ得る。例えば8畳(約13m2)の部屋に適した照明装置では、約5000lmの光束を出射することが必要である。各LDの光出力を約4.3Wとし、各光源ユニットから正面方向に出射される光束を500ルーメン(lm)とすると、10個程度の発光モジュールを集積する必要がある。このため、各発光モジュールを小型化することが要求される。
図84Aに示す光源ユニットでは、指向性の低い従来の発光素子700cが用いられている。このため、正面方向に500lmの光束を出射させるためには、多数の励起光源4510が必要である。したがって、個々の光源ユニットのサイズが大きくなり、多数の光源ユニットを集積した照明装置のサイズも大きくなる。
図84Bに示す光源ユニットでは、本開示の実施形態における指向性の高い発光素子100aが用いられている。このため、例えば1個の励起光源4510で500lmの光束を正面方向に出射させることができる。個々の光源ユニットのサイズを小さくすることができるので、照明装置のサイズを小さくすることができる。図84Aに示す光源ユニットの体積を100とすると、図84Bに示す光源ユニットの体積は、例えば62.5に低減させることができる。
図84Cに示す光源ユニットは、リフレクター4530によって励起光の光束を曲げて発光素子100aに入射させる。このため、個々の光源ユニットのサイズをさらに小さくすることができる。結果として、照明装置のサイズを大幅に小さくすることができる。図84Aに示す光源ユニットの体積を100とすると、図84Cに示す光源ユニットの体積は、例えば36に低減させることができる。
[15.追加光源を有する発光装置]
以下に説明する態様は、複数の光源からの光を合成することによって所望の色(即ちスペクトル)の光を得る発光装置に関する。ここで説明される態様における発光装置は、前述のいずれかの態様における発光素子(以下、「指向性発光素子」または「指向性光源」と称することがある。)に加えて、他の光源(以下、「追加光源」と称することがある。)を有する。追加光源は、指向性光源が発する光のスペクトルとは異なるスペクトルの光を出射する。指向性光源から出射された光および追加光源から出射された光は、指向性光源の内部または外部で合成される。合成された光は、例えば光ファイバーケーブル(以下、単に「光ファイバー」と称する。)に導入され得る。そのような発光装置は、例えば光ファイバー照明に利用され得る。
ここで光の「合成」とは、スペクトルの異なる複数の光束が交わり、混合された状態になることを意味する。必ずしも、合成された後の各光束の伝播方向および拡がり角度が同じである必要はない。指向性光源から出射された第1の光および追加光源から出射された第2の光は、指向性光源の内部または外部で合成される。第2の光が指向性光源を通過する態様では、第1および第2の光が指向性光源の内部で合成され得る。第1の光および第2の光は、光学系またはライトガイド等によって指向性光源の外部で合成されてもよい。
指向性光源から出射される光のスペクトルは、実際の利用シーンで要求される光のスペクトルと比べて、一部の波長成分が欠落している場合がある。追加光源を用いることにより、不足する波長成分を補うことができる。さらに、各光源が発する光のスペクトルおよび強度を調整することにより、照明光の色および明るさを調整することもできる。
図85は、このような発光装置の一例を概略的に示す図である。この発光装置は、発光素子100’と、励起光源180と、追加光源5500と、光学系5520と、光ファイバー5530とを備える。光学系5520は、コリメートレンズ5520aと、集光レンズ5520bとを含む。図示する例では、発光素子100’は、図1Cに示す発光素子100aと同様の構造を有しているが、図1A等の他の構造を有していてもよい。
追加光源5500は、例えばレーザーダイオードまたは他の指向性発光素子を用いた光源であり得る。追加光源5500は、発光素子100’から出射される光のスペクトルとは異なるスペクトルの光を出射する。追加光源5500が出射する光は、発光素子100’から出射される光において不足するスペクトル成分の光である。例えば、白色光が所望の光である場合において、発光素子100’が黄色(赤および緑)の波長域の光を出射する場合には、追加光源5500は青の波長域の光を出射するように構成され得る。追加光源5500からの光は、フォトルミネッセンス層内の導波モードに共鳴的に結合する特定の角度で入射した場合を除き、ほとんど吸収も散乱もされない。したがって、図85に示すように発光素子100’におけるフォトルミネッセンス層に垂直に追加光源5500からの光を入射させた場合には、ほとんどの光が発光素子100’を透過する。
励起光源180は、追加光源5500とは別に設けられ、発光素子100’内のフォトルミネッセンス材料を励起して発光させる。励起光源180は、例えば発光素子100’のフォトルミネッセンス層の法線方向に対して傾斜した方向から励起光を入射させる。
発光素子100’に励起光が入射することによって生じた第1の光、および追加光源5500から出射され発光素子100’に入射した第2の光は、発光素子100’の内部で合成される。より詳細には、第2の光が発光素子100’内のフォトルミネッセンス層内のある点に集束され、その点で第1の光が発生した瞬間に合成される。合成された第1および第2の光は、混合された状態で発光素子100’の外部を伝播する。この合成光は、コリメートレンズ5520aで平行光に変換され、集光レンズ5520bで集束される。集束された光は、光ファイバー5530に入射する。このように、レンズ5520a、5520bを含む光学系5520は、第1の光と第2の光とを合成(あるいは合波)して光ファイバー5530に導入する。光ファイバー5530は、導入された光を先端部から出射させる。これにより、発光素子100’および追加光源5500を有する光源部から離れた位置に所望の色の光を出射させることができる。なお、図85に示す光ファイバー5530は比較的短い形状をもつ要素として描かれているが、用途によっては数メートルから数百メートルといった長い光ファイバー5530が用いられ得る。
図86は、発光装置のさらに詳細な構成例を示す図である。この発光装置5400は、前述の発光素子100’、追加光源5500、励起光源180、光学系5520に加え、励起光源180および追加光源5500を制御する制御回路5570と、光ファイバー5530を接続するためのコネクター5580とを備えている。この例では、光ファイバー5530は発光装置5400の外部の要素である。
制御回路5570は、例えば励起光源180および追加光源5500に接続されたマイクロコントローラ(マイコン)等の、プロセッサを含む集積回路であり得る。制御回路5570は、例えばユーザーからの入力に応じて、励起光源180および追加光源5500に、出射光の強度を変化させるように指示する。これにより、発光素子100’から出射される第1の光と追加光源5500から出射される第2の光との強度比が調整される。その結果、合成される光の強度および色を変化させることができる。このような制御以外にも、例えば光学系5520と発光素子100’との間に配置された絞り5540の大きさを変化させることによって第1の光と第2の光との強度比を調整してもよい。
励起光源180は、例えばレーザー光源であり、発光素子100’におけるフォトルミネッセンス層内で全反射が生じる角度で励起光を発光素子100’に入射させる。これにより、発光素子100’内で効率よく発光を生じさせることができる。
コネクター5580は、光ファイバー5530を接続するための端子であり、発光装置5400の筐体に設けられている。コネクター5580に光ファイバー5530を挿抜することができる。これにより、例えば光ファイバー5530が建物内に敷設された長いケーブルである場合において、発光装置5400が故障した場合や、異なる発光特性の発光装置5400に交換したい場合でも、発光装置5400を容易に交換できる。
以上のように、図85および図86に例示する発光装置は、指向性光源である第1光源と、追加光源である第2光源とを備える。第1光源は、空気中の波長がλaの光を含む第1の光を発するフォトルミネッセンス層と、フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成された表面構造とを有する。表面構造は、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含み、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する。例えば、表面構造における隣接する2つの凸部の中心間または隣接する2つの凹部の中心間の距離をDint-aとし、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<Dint-a<λaの関係が成り立つ。あるいは、表面構造は、少なくとも1つの周期構造を有し、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとし、少なくとも1つの周期構造の周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ。その結果、第1光源から出射される空気中の波長がλaの光は、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方によって予め決められた第1の方向において強度が最大になる。一方、第2光源は、空気中の波長がλb(≠λa)の光を含む第2の光を出射する。第1光源から出射された第1の光と第2光源から出射された第2の光とが合成される。合成された光は、例えば光ファイバーの一端に取り込まれ、他端から出射される。
このような構成により、指向性光源である第1光源だけでは不足するスペクトルを第2光源で補い、所望のスペクトルの光を得ることができる。第1光源および第2光源の強度比を調整することによって最終的に得られる光のスペクトルを調整することもできる。これにより、色および明るさを調整できる光ファイバー照明を実現できる。なお、光ファイバーに代えて、第1および第2の光が合成される位置に光拡散板を配置してもよい。光拡散板によって拡散される光を照明として利用することができる。後述する他の例においても同様に、光ファイバー5530に代えて光拡散板を配置してもよい。
図87は、追加光源5500が励起光としても機能する構成の例を示す図である。この例では、追加光源5500が出射する第2の光が、励起光として機能する光の成分を含む。第2の光の一部は発光素子100’を透過し、発光素子100’から出射される第1の光とともに光学系5520によって合成される。追加光源5500は、励起光が発光素子100’に対して特定の入射角θで入射するように配置されている。
フォトルミネッセンス材料を共鳴的に励起する場合、特定の斜めの角度θで励起光を入射することで効率よく励起することができる。一般的に、励起光の波長は発光素子100’からの狭角配光の光の波長よりも短いため、狭角配光の光は角度θよりも小さい角度で出射する。そこで、この態様では、正面(角度0度)から角度θまでの光を取り込むために、開口数(NAlens)がsinθ以上のレンズ5520aが用いられる。そのようなレンズ5520aを用いることによって、狭角配光の光と励起光の両方を光学系5520に取り込むことができる。
さらに、レンズ5520bの構成がレンズ5520aと同じ構成である場合、開口数(NAfiber)がsinθ以上であるような光ファイバー5530を選択することにより、光学系5520で取り込んだ光の大部分(理想的には全て)を光ファイバー5530に導入することができる。なお、レンズ5520bがレンズ5520aとは異なる構成を有する場合には、レンズ5520bが集光する光束の光ファイバー5530への入射角をθ'(≠θ)として、NAfiber>sinθ'を満たす光ファイバー5530を用いればよい。
図87に示す例では、追加光源5500が励起光源の機能を兼ねるため、光源の数を少なくすることができる。このため、コストおよび装置のサイズを小さくすることができる。
図88は、発光装置のさらに他の構成例を示す図である。この発光装置は、光学系5520の構成と、追加光源5500の位置が前述の例とは異なっている。この例における光学系5520は、レンズ5520aとレンズ5520bとの間に配置されたダイクロイックミラー5520cを有している。追加光源5500は、発光素子100’の背面側(図の左側)ではなく正面側(図の右側)に配置されている。追加光源5500は、ダイクロイックミラー5520cに第2の光を入射させるように配置されている。なお、図88では、励起光を発光素子100’に入射させる励起光源の図示は省略されている。以降の図でも同様に励起光源の図示を省略することがある。
ダイクロイックミラー5520cは、発光素子100’から出射される第1の光の波長域において高い透過率を有し、追加光源5500から出射される第2の光の波長域において高い反射率を有するように設計されている。追加光源5500は、第2の光が発光素子100’からの第1の光に交差(図88の例では直交)するように配置されている。第1の光と第2の光とが交差する位置にダイクロイックミラー5520cが配置されている。ダイクロイックミラー5520cの角度は、第1の光の透過光と、第2の光の反射光とが同じ方向に伝搬するように調整されている。ダイクロイックミラー5520cによって第1および第2の光が合成され、レンズ5520bで集光されて光ファイバー5530に導入される。このような構成によっても、前述した他の例と同様、所望のスペクトルの光を得ることができる。
図89は、発光装置のさらに他の構成例を示す図である。この発光装置は、光学系5520ではなく光ファイバー5530によって第1の光と第2の光とが合成される点で、前述の例とは異なっている。この例における発光装置は、途中で2方向に分岐した光ファイバー5530を備えている。以下、分岐した一方の部分5530aを第1光ファイバーと呼び、他方の部分5530bを第2光ファイバーと呼ぶことにする。第1光ファイバー5530aと第2光ファイバー5530bとは、連結点5530cにおいて連結されている。発光素子100’からの第1の光は、光学系5520を介して第1光ファイバー5530aに入射する。一方、追加光源5500からの第2の光は、第2光ファイバー5530bに入射する。これらの光は、光ファイバーの連結点5530cにおいて合成される。
このような構成によっても所望の光を光ファイバー5530から出射することができる。なお、図89に示す光ファイバー5530の連結点5530cに相当する箇所に、光を分岐・結合する機器を設けてもよい。その場合、複数本の光ファイバーを当該機器に接続することによって同様の構成を実現できる。
図90は、発光装置のさらに他の変形例を示す図である。この例では、追加光源5500が、発光素子100’と同様の指向性発光素子によって構成されている。追加光源5500は、発光素子100’と同様、フォトルミネッセンス層と、透光層と、表面構造とを有している。発光素子100’における表面構造が波長λaの光の指向角を制限するのに対し、追加光源5500は波長λb(≠λa)の光の指向角を制限する。発光素子100’と追加光源5500とは、積層された単一の構造体であってもよい。この例においても、発光素子100’からの第1の光と追加光源5500からの第2の光とが光学系5520によって合成され、光ファイバー5530に導入される。
図91は、複数の指向性発光素子のタイリングによって実現される発光装置の一部を示す図である。この発光装置は、赤色の波長域の光を出射する複数の発光素子(第1光源)100rと、緑色の波長域の光を出射する複数の発光素子(第2光源)100gと、青色の波長域の光を出射する複数の発光素子(第3光源)100bとが1次元または2次元的に配列された構造を有する。図91には5つの発光素子が描かれているが、実際にはさらに多数の発光素子が配列され得る。これらの発光素子100r、100g、100bから出射された光は、レンズ5520dによって集光され、光ファイバー5530に導入される。これにより、光ファイバー5530から白色光を出射させることができる。この例では、赤、緑、青の3色の光源が用いられるが、第1光源、第2光源、および第3光源の各々から出射される光の色(即ちスペクトル)は、任意に設定してよい。この例のように、3種類の指向性光源を組み合わせることにより、より柔軟に出射光の色を調整することができる。この例では3種類の光源を用いているが、4種類以上の光源を組み合わせてもよい。また、第2光源および第3光源は指向性発光素子に限らず、例えばレーザー光源等の他の光源でもよい。
図92は、発光装置のさらに他の例を示す図である。この例における発光装置は、励起光源の機能を兼ねる追加光源5500を有し、かつ、光ファイバー5530によって第1の光と第2の光とが合成される。図示されるように、発光素子100’からの第1の光は、レンズ5520aおよびレンズ5520eによって集光され、光ファイバー5530の分岐した2つの部分の一方である第1光ファイバー5530aに導入される。一方、追加光源5500からの第2の光は発光素子100’を通過した後、レンズ5520aおよびレンズ5520fによって集光され、光ファイバー5530の分岐した2つの部分の他方である第2光ファイバー5530bに導入される。これにより、第1および第2の光が連結点5530cにおいて合成され、光ファイバー5530から出射される。
図93は、発光装置のさらに他の例を示す図である。この例は、図87に示す構成に類似しているが、レンズの数が異なる。レンズ5520aと発光素子100’との間に他のレンズ5520gが配置されている。レンズ5520gは発光素子100’に近い位置に配置されているので、追加光源5500からの第2の光の入射角が大きくても発光素子100’を透過した第2の光を取り込むことができる。レンズ5520aは、レンズ5520gによって曲げられた第2の光の光路の曲げ足りない分を補う。その結果、発光素子100’からの第1の光の光軸と、追加光源5500からの第2の光の光軸とがほぼ平行に調整される。これらの光は、レンズ5520bで集光され、光ファイバー5530に導入される。この例では3つのレンズが用いられるが、レンズの数は任意である。また、各レンズの形状、サイズ、および位置についても図示される例に限らず、適宜設計してよい。例えば、図94に示すように、光学系におけるレンズの数が1枚(図示する例ではレンズ5520a)であってもよい。この例では、レンズの数が少ないため、低いコストで発光装置を構成できる。
図95は、発光装置のさらに他の構成例を示す図である。この例における発光装置は、発光素子100’と、発光素子100’の一方の側に配置されたレンズ5520aと、他方の側に配置されたミラー(リフレクター)5560と、2つに分岐した光ファイバー5530と、追加光源5500とを備えている。追加光源5500は、光ファイバー5530の分岐した部分の一方に励起光を導入する。その励起光は、レンズ5520aを通過し、発光素子100’に入射する。発光素子100’に入射した励起光の一部はフォトルミネッセンス層で吸収されて第1の光に変換される。励起光の他の一部は、発光素子100’を通過してミラー5560で反射され、再び発光素子100’を通過する。発光素子100’から出射された第1の光と、発光素子100’を通過した励起光(第2の光)は、レンズ5520aによって集光され、光ファイバー5530に導入される。これにより、第1の光と第2の光とが合成されて光ファイバー5530から出射される。このように、ミラー5560を用いて、反射された励起光を活用してもよい。
以上のように、追加光源を有する発光装置は、多様な変形が可能である。いずれの変形例においても、指向性光源である第1光源から出射される第1の光と、第2光源から出射される第2の光とが合成され、所望のスペクトルの光を得ることができる。
図96は、家庭用ファイバー照明システムへの応用例を示す図である。このファイバー照明システムは、発光装置(光源ユニットともいう)5400と、複数の光ファイバー5530とを備える。光源ユニット5400は住宅の所定の場所に設置され、光源ユニット5400から各部屋の照明取り付け位置まで複数の光ファイバー5530が敷設される。なお、図96において1本の光ファイバーのように描かれている部分は、実際には複数の光ファイバーを束ねたものであり得る。光源ユニット5400の構成は、図86を参照して説明した構成に限定されない。図96に示す光源ユニット5400は、上述の図85〜図96のいずれかの発光装置と同様の構成を有し、少なくとも1つの指向性光源を含む複数の光源からの光を合成して複数の光ファイバー5530に導入する。これにより、各照明取り付け位置に所望の光が送られ、照明光として利用できる。状況に応じて複数の光源の出力を変えることにより、照明光の色および明るさを変えることができる。このようなファイバー照明システムは、家庭内に限らず、オフィスビル、地下街、スタジアム等の様々な施設で利用され得る。
スペクトルを容易に調整できる機能は、例えば上述の美光色照明および彩光色照明と呼ばれる技術に適用できる。これらは、光源のスペクトル(即ち、発光する光の波長の強度分布)を制御することによって照明の対象を美しく見せる技術である。例えば、肌のくすみが目立つ原因となる570nm〜580nm前後の波長の光を減らすことで、肌をより美しく見せることができる。本開示の発光装置を用い、例えば570nm以下の青色〜緑色の波長域の光と、580nm以上の赤色の波長域の光とを合成することにより、このような美光色照明を実現することが可能である。
また、例えば、580nm前後の波長の成分を抑え、長波長側の赤色成分を強くすることにより、食品の赤い色をより鮮やかに見えるようにすることができる。これにより、例えば肉や魚の赤身、および赤い果物や野菜をより鮮やかに見せることができる。本開示の発光装置を用い、例えば570nm以下の青色〜緑色の波長域の光と、590nm以上の赤色の波長域の光とを合成することにより、このような彩光色照明を実現することが可能である。同様の波長制御は、赤い花や紅葉などの景色をより鮮やかに見せる用途にも利用できる。
上述したような、出射光のスペクトルの調節が可能な態様による発光装置は、食品の鮮度を判別する用途に利用することもできる。多くの食品は、鮮度が低下すると反射光のスペクトルが変化する。例えば、牛肉であれば、鮮度の低下に応じて600nm〜700nm前後の波長域の成分が低下する。そこで、鮮度に応じて反射率が大きく変化する波長域の光のみを食品に照射し、その反射光の強度を観測することによって、食品の鮮度を容易に判別することができる。食品によっては複数の異なる波長域において反射率の変化が大きい場合がある。そのような場合であっても、複数の光源からの異なるスペクトルの光を合成する発光装置を用いれば、所望の複数の波長域の光を容易に得ることができる。
[16.互いに異なる方向に出射された光を合成する発光装置]
次に述べる態様は、1つの発光素子から出射される異なる波長域の光を合成して利用する発光装置に関する。前述のように、本開示の発光素子は、特定の波長の光を特定の方向に強く出射し、他の波長の光を他の方向に強く出射する。この特性を利用し、異なる方向に出射された異なる波長域の複数の光束を、光学系またはライトガイド等を用いて合成して活用することができる。複数の波長域の光を合成することにより、一方の光束で不足するスペクトル成分を他方の光束で補い、所望のスペクトルの光に近づけることができる。合成された光は、例えば光ファイバーに導入され得る。そのような発光装置も、例えば光ファイバー照明に利用可能である。
図97は、発光素子から異なる方向に出射される複数の波長域の光を合成する発光装置の一例を概略的に示す図である。この発光装置は、発光素子100’と、光学系6520と、光ファイバー6530とを備える。光学系6520は、コリメートレンズ6520aと、集光レンズ6520bとを含む。図97では、発光素子100’として、図1Aに示す発光素子100と同様の構造を図示しているが、図1C等を参照して説明した他の構造を有する発光素子を用いてもよい。なお、図97は、各構成要素を簡略化して表しているため、実際の構造とは必ずしも一致しいない。他の図においても同様である。図97では省略されているが、実際には発光素子100’に励起光を入射させる励起光源が設けられ得る。
ここでは、フォトルミネッセンス層におけるフォトルミネッセンス材料として、ブロードな発光スペクトルを示す材料が用いられる。フォトルミネッセンス材料から発せられるある波長λaの光は特定の出射角度の方向に指向性をもち、別の波長λbの光は別の出射角度の方向に指向性をもつ。光学系6520は、波長λaの第1の光を含む光束と波長λbの第2の光を含む光束とを合成(あるいは合波)して光ファイバー6530に導入する。光ファイバー6530は、導入された光を先端部から出射させる。これにより、発光素子100’を有する光源部から離れた位置に所望のスペクトルの光を出射させる光ファイバー照明を実現することができる。なお、図97に示す光ファイバー6530は比較的短い形状をもつ要素として描かれているが、用途によっては数メートルから数百メートルといった長い光ファイバー6530が用いられ得る。
図98は、発光装置の構成例の詳細を示す図である。この発光装置6400は、前述の発光素子100’および光学系6520に加え、励起光源180と、励起光源180を制御する制御回路6570と、光ファイバー6530を接続するためのコネクター6580とを備えている。この例では、光ファイバー6530は発光装置6400の外部の要素である。
制御回路6570は、例えば励起光源180に接続されたマイクロコントローラ(マイコン)等の、プロセッサを含む集積回路であり得る。制御回路6570は、例えばユーザーからの入力に応じて、励起光源180に、出射光の強度を変化させるように指示する。これにより、発光素子100’から出射される第1の光および第2の光の強度を変化させることができる。このような制御に加えて、光学系6520と発光素子100’との間に配置された絞り6540の大きさを変化させることによって第1の光と第2の光との強度比を変化させることもできる。これにより、合成される光のスペクトルを調整することができる。
励起光源180は、例えばレーザー光源であり、発光素子100’におけるフォトルミネッセンス層内で全反射が生じる角度で励起光を発光素子100’に入射させる。これにより、発光素子100’内で効率よく発光を生じさせることができる。
コネクター6580は、光ファイバー6530を接続するための端子であり、発光装置6400の筐体に設けられている。コネクター6580に光ファイバー6530を挿抜することができる。これにより、例えば光ファイバー6530が建物内に敷設された長いケーブルである場合において、発光装置6400が故障した場合や、異なる発光特性の発光装置6400に交換したい場合でも、発光装置6400を容易に交換できる。
以上のように、図97および図98に例示する発光装置は、空気中の波長がλaの第1の光と空気中の波長がλbの第2の光とを含む光を発するフォトルミネッセンス層と、フォトルミネッセンス層に近接して配置された透光層と、フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面に形成された表面構造と、第1の光と第2の光とを合成する光学系とを備える。表面構造は、複数の凸部および複数の凹部を有し、第1の光の指向角を制限する。例えば、表面構造における隣接する2つの凸部の中心間または隣接する2つの凹部の中心間の距離をDintとし、空気中の波長がλaの第1の光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<Dint-a<λaの関係が成り立つ。あるいは、表面構造は、少なくとも1つの周期構造を有し、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとし、少なくとも1つの周期構造の周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ。その結果、第1の光は、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方によって予め決められた第1の方向において強度が最大になり、第2の光は、第1の光の方向と異なる第2の方向において強度が最大になる。光学系は、第1の方向に出射された第1の光を含む光束と、第2の方向に出射された第2の光を含む光束とを合成する。合成された光は、例えば光ファイバーの一端に取り込まれ、他端から出射される。
このような構成により、1つの方向に出射される第1の光だけでは不足するスペクトル成分を第2の光で補うことができる。前述のように、絞り6540の大きさを調整する等の制御により、第1の光および第2の光の強度比を調整することができる。これにより、色および明るさを調整できる光ファイバー照明を実現できる。ここで説明する態様によれば、複数の光源からの光を合成する場合と比較して、装置を小型化できるという利点もある。1つの発光素子から出射される2種類以上の波長または色の光を合成することで、スペクトルを制御できる小型の発光装置を実現できる。なお、光ファイバーに代えて、第1および第2の光が合成される位置に光拡散板を配置してもよい。光拡散板によって拡散される光を照明として利用することができる。後述する他の例においても同様に、光ファイバー6530に代えて光拡散板を配置してもよい。
図99は、特定の3波長の光を合成することで白色光を得る発光装置の例を示す図である。この例では、発光素子100’は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長域の光を異なる方向に出射する。光学系6520は、これらの3色の光を合成して光ファイバー6530に導入する。これにより、光ファイバー6530から白色光を出射させることができる。なお、この例では赤、緑、青の光を用いて白色光を得ているが、色の組み合わせは任意に設定してよい。
図100は、発光素子100’から第1の方向に出射される第1の光と、第2の方向に出射される第2の光とが、異なる光ファイバー6530a、6530bに導入される例を示している。この例における発光装置は、レンズ6520a、6520bを含む第1の光学系と、レンズ6520c、6520dを含む第2の光学系とを有する。第1の光学系は第1の光を第1の光ファイバー6530aに導入し、第2の光学系は第2の光を第2の光ファイバー6530bに導入するように配置されている。第1の光ファイバー6530aと第2の光ファイバー6530bとは、合成器6640によって1本の光ファイバー6530dに連結されている。第1の光と第2の光とは、2つの光ファイバー6530a、6530bの連結点である合成器6640によって合成される。このような構成でも、上記の例と同様の効果が得られる。
図101は、複数の光ファイバーを連結した発光装置の他の例を示す図である。この発光装置は、発光素子100’と、レンズ6520aと、レンズアレイ6610と、複数の光変調器6582と、複数の光ファイバー6530と、合成器6640とを備える。この発光装置は、発光素子100’から異なる方向に出射した赤(R)、緑(G)、青(B)の光をレンズ6520aで平行光にし、レンズアレイ6610で集光して、複数の光変調器6582を介して複数の光ファイバー6530に導入する。各光変調器6582は、その位置に応じて赤、緑、青のいずれかの光を受け、対応する光ファイバー6530に出力する。光変調器6582は、光ファイバー6530への不要な光を弱めたり遮断したりすることができる。複数の光ファイバー6530中を伝播した光は、合成器6640によって合成され、1本の光ファイバーから出射される。
このような構成により、任意のスペクトルの光を生成することができる。この例では、赤、緑、青の3原色の光を個別に出力することができるため、照明だけでなくディスプレイやプロジェクター等の表示機器に利用することもできる。
図102は、図101の構成における発光素子100’の代わりに、複数の発光素子100r、100g、100bがタイリングされた構造を用いた例を示す図である。発光素子100r、100g、100bは、それぞれ、赤、緑、青の波長域の光を狭角に出射する指向性発光素子である。複数の発光素子100r、100g、100bが、1次元または2次元的に配列されている。図102には5つの発光素子が描かれているが、実際にはさらに多数の発光素子が配列され得る。これらの発光素子100r、100g、100bから出射された光は、レンズ6520aによって集光され、レンズアレイ6610および複数の光変調器6582を介して複数の光ファイバー6530に導入される。このような構成によっても、図101の構成と同様の効果が得られる。
図101および図102の例では、赤、緑、青の光を組み合わせているが、この組み合わせに限らず、他の色の組み合わせを用いてもよい。また、組み合わせる色の種類の数は3種類に限らず、2種類または4種類以上でもよい。
図103は、図97に示す構成において、さらに励起光源180から出射される光の一部を利用する例を示す図である。この例では、励起光源180が、発光素子100’に、フォトルミネッセンス層の法線方向に対して傾斜した方向から(入射角θで)励起光を含む第3の光(例えば青色光)を入射させるように配置されている。第3の光の一部は発光に利用され、他の一部は発光素子100’を透過する。光学系6520は、発光素子100’から出射した第1の光および第2の光に加えて、発光素子100’を透過した第3の光を光ファイバー6530に導入する。このような構成により、発光素子100’から出射される光だけでは所望のスペクトルを生成することができない場合に、不足するスペクトル成分を補うことができる。
上述したように、フォトルミネッセンス材料を共鳴的に励起する場合、特定の斜めの角度θで励起光を入射することで効率よく励起することができる。また、一般的に、励起光の波長は発光素子100’からの狭角配光の光の波長よりも短く、狭角配光の光は角度θよりも小さい角度で出射する。図87を参照して説明したように、開口数(NAlens)がsinθ以上であるようなレンズ6520aを用いることにより、正面(角度0度)から角度θまでの光を取り込み、狭角配光の光と励起光の両方を光学系6520に取り込むことができる。
レンズ6520bの構成がレンズ6520aと同じ構成である場合、開口数(NAfiber)がsinθ以上であるような光ファイバー6530を選択することにより、光学系6520で取り込んだ光の大部分(理想的には全て)を光ファイバー6530に導入することができる。レンズ6520bがレンズ6520aとは異なる構成を有する場合には、レンズ6520bが集光する光束の光ファイバー6530への入射角をθ'(≠θ)として、NAfiber>sinθ'を満たす光ファイバー6530を用いればよい。
図104は、図103における励起光源180の位置を変えた例を示す図である。この例では、励起光源180は発光素子100’に垂直に、励起光を含む第3の光を入射させるように配置されている。このような構成では、第3の光の多くが発光素子100’を透過するため、第3の光の成分を強くすることができる。一方、フォトルミネッセンス層における発光効率が低下するため、別途励起光源を補ってもよい。別途励起光源を補う場合には、励起光源180に代えて、励起光とは異なる波長域の光を出射する光源を用いてもよい。
図105は、図100に示す構成において、さらに励起光源180から出射される光の一部を利用する例を示す図である。この例における発光装置は、励起光源180から出射され、フォトルミネッセンス層を透過した第3の光の一部を第3の光ファイバー6530cに導入する第3の光学系(レンズ)6520eをさらに備える。第1から第3の光ファイバー6530a、6530b、6530cは、連結され、連結点である合成器6640において、発光素子100’から出射した第1および第2の光と、発光素子100’を透過した第3の光とを合成する。このような構成においても、励起光源180からの光を活用して、所望のスペクトルの光を生成することができる。
以上のように、発光素子から異なる方向に出射される複数の波長域の光を合成するように構成された発光装置は、多様な変形が可能である。いずれの変形例においても、発光素子から出射される第1の光と第2の光とが合成され、所望のスペクトルの光を得ることができる。
図106は、家庭用ファイバー照明システムへの応用例を示す図である。このファイバー照明システムは、発光装置(光源ユニットともいう)6400と、複数の光ファイバー6530とを備える。光源ユニット6400は住宅の所定の場所に設置され、光源ユニット6400から各部屋の照明取り付け位置まで複数の光ファイバー6530が敷設される。なお、図105において1本の光ファイバーのように描かれている部分は、実際には複数の光ファイバーを束ねたものであり得る。光源ユニット6400の構成は、図98を参照して説明した構成に限定されない。図106に示す光源ユニット6400は、上述の図97〜図105のいずれかの発光装置と同様の構成を有し、複数の波長域の光を合成して光ファイバー6530に導入する。これにより、図96を参照して説明した応用例と同様に、各照明取り付け位置に所望の光が送られ、照明光として利用できる。状況に応じて複数の波長域の光の合成比率を変えることにより、照明光の色および明るさを変えることができる。
図97〜図106を参照しながらここで説明した態様によれば、スペクトルを容易に調整し得る。したがって、ここで説明した態様は、図85〜図96を参照して説明した態様と同様に、美光色照明および彩光色照明と呼ばれる技術に適用可能である。また、例えば、彩光色照明によって、肉や野菜などの食品をよりおいしそうに見せたり、赤い花や紅葉などの景色をより鮮やかに見せたり、あるいは、食品の鮮度を判別する用途に利用したりすることもできる。
既に説明したように、従来、光のスペクトルの制御においては、光学フィルタを用いて、光源から出射された光のうち、不要な波長域の成分を除去することが行われている。このため、光の利用効率が低い。これに対し、本開示の発光装置は、特定の波長の光を増強して出射できるので、光学フィルタを必要としない。したがって、従来の発光装置と比較して、光の利用効率を向上させることができる。