本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
≪第一の実施例≫
図1(a)、および図1(b)は、本発明の第一実施例に係わるプローブの構成図である。
図1(a)、および図1(b)に係るプローブは、後述するようにばね部材の配置が異なっている。まず図1(a)に関し、プローブの構成を具体的に説明する。本実施形態のプローブは、プローブシャフトと、そのプローブシャフトに設けられた接触部と、プローブシャフトに設けられた動吸振器とを備えたプローブである。そして、前記動吸振器は、ばね要素と磁気式のダンパ要素と補助質量体を、プローブシャフトの外周に備えているプローブである。
プローブ10は主要な構成要素として、プローブシャフト11と接触部としてのスタイラス12、および本実施形態に特徴的な動吸振器を備えている。動吸振器は後述するように、ばね要素と磁気式のダンパ要素と補助質量体から成る。動吸振器は磁気式のダンパ要素を備えているため、摩擦材や粘性流体を使ったダンパ要素と異なり、プローブシャフト11の長手方向に対するプローブの微小な振動(微小な力)に対しても敏感にダンピング機能を発揮することできる。
プローブシャフト11の先端にはスタイラス12が取り付けられている。また、後端にはターゲットミラー13が取り付いている。ターゲットミラーや接触部としてのスタイラスはプローブシャフトに一体に形成されていてもよい。プローブは、先端のスタイラスを被測定面に接触させつつ走査するとともに、後端のターゲットミラーの位置情報を取得することで被測定面の形状データを取得するように使用される。
プローブ10は、後述する形状測定装置のプローブステージ30に、板ばね14a、14bとプローブハウジング15を介して取り付けられる。
図8を参照して磁気式のダンパ要素について説明する。導体を磁界内で動かすと、渦状の誘導電流(渦電流)が流れ抵抗力が発生する現象が知られている。この現象を利用し、図8に描かれているように、筒状導体に対してその空孔の内部に磁極の方向を筒状導体の長手方向になるように磁石が配置された構成を考える。例えば位置を固定した筒状導体の空孔内にこの磁石を移動させる、あるいは位置を固定した磁石に対して筒状導体を移動させるなど、筒状導体と磁石の相対位置を変化させると、導体の周囲に渦電流が生じる。さらに、この渦電流と磁界との作用で生じるローレンツ力によって磁石および導体は抵抗力を受け、この抵抗力がダンパ要素として機能を発揮する。
プローブシャフト11の先端と後端の相対的な位置が、形状測定の最中に変化すると測定誤差の要因になる。そのため、高精度な形状測定を実行するためには、プローブシャフト11の先端と後端の相対的な位置の変化を小さくすることが求められる。つまり、先端と後端をつなぐプローブシャフトが、十分に高い剛性を備えていることが求められる。
また、プローブシャフト自体が重いと、形状測定の最中に振動しやすくなる。プローブシャフトの振動は、測定誤差の要因になるので、プローブシャフトは、十分に軽量であることが求められる。プローブシャフトを、高剛性で軽量に構成するためには、中空または中実の棒状の形状にするのが好ましい。ただし、中空であっても、プローブシャフトの壁は十分な剛性を保てるほど厚くしておく必要がある。プローブシャフトの材料として、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼、繊維強化プラスチックなどの比剛性の高い材料を採用すると良い。なお、後述する磁石ユニットが発する磁場への影響を小さくするために、プローブシャフトの材料は非磁性体を用いると良い。
スタイラスの先端は、ダイヤモンドやルビー、セラミック等でできており、その形状は球面に加工されている。また、ターゲットミラー13の表面は、測長器のレーザー光を反射するために鏡面に仕上げられている。
プローブシャフトは、2枚の板ばね14a、14bを介してプローブハウジング15に取り付けられている。2枚の板ばねは、図1中に描かれているようにプローブシャフトの長手方向(軸方向A)に動きやすく、軸方向Aに交差する方向や倒れる方向には動きにくい軸受機構として働く。また、プローブシャフトとプローブハウジングとの軸方向Aの相対変位に応じた力が発生するばね機構として働く。なお、軸受機構として、空気軸受や転がり軸受など他の機構を採用しても良い。ばね機構として、コイルばねや磁気ばねなど他の機構を採用しても良い。
プローブ10を構成するプローブシャフトの外周には動吸振器が設けられている。
動吸振器は、磁石の磁極の方向がプローブシャフトの長手方向に沿うようにプローブシャフトの外周に設けられた磁石ユニットを備えている。さらにその動吸振器は、プロ―シャフトに一端が支持されたばね要素と、磁石ユニットの外周に、ばね要素を介して、前記長手方向に沿うようにプローブシャフトに対して移動可能に配置された導体かつ非磁性体からなる補助質量体、を備えている。
動吸振器は、筒状の磁石ユニット101を備えている。本実施例において磁石ユニットは、1つの筒状の永久磁石であり、この磁石ユニットの磁極の方向が軸方向Aに沿った方向となるようにプローブシャフトに対して配置した構成になっている。後述するように、磁石ユニットは2つ、あるいは複数の筒状の永久磁石から構成されても良い。
このような構成にすると、実装スペースの制約があっても、プローブシャフトに沿って、磁極間の距離を比較的長く設計することができる。そのため、永久磁石の反磁場(永久磁石の内部に磁石の磁化方向と反対方向に生じる磁場)の影響を緩和し、高い磁束密度の磁場を展開することができる。なお、使用される永久磁石の種類は、ネオジム磁石やフェライト磁石などが挙げられるが特に制限は無い。特に、ネオジム磁石は、高い磁束密度が得られるので好ましい。
磁石ユニットの外周に、筒状の補助質量体102がばね部材104とばね押さえ105を介してプローブシャフトに対して移動可能に配置されている。なお、補助質量体102は、電気抵抗率が小さい導体であり、かつ磁場に吸引しない非磁性体で形成する。
非磁性体の目安として、透磁率が1.3×10−6H/m以下であれば問題なく使用できる。この条件を満たす導体であって、かつ非磁性の材料の素材としては、銅、アルミニウム、マグネシウム、黄銅、亜鉛、銀、金、ベリリウムなどが挙げられる。
磁石ユニットの軸方向Aの両端に筒状のガイド103a、103bが取り付けられている。ガイド103a、103bはプローブシャフトまたは磁石ユニットに対して固定されている。ガイドは、筒状の補助質量体がプローブシャフトの長手方向(軸方向A)に交差する方向に動くことを制限するように配置されている。このガイドによって、補助質量体が軸方向Aに沿った方向以外に大きく動くのを制限するとともに、軸方向Aに沿ってスムーズに移動可能に配置されていることになる。
なお、補助質量体がプローブシャフトの長手方向に交差する方向に移動することを制限する機能を備えていれば、さまざまな形状のガイドを採用して良い。例えば、磁石ユニットの軸方向Aの両端に取り付ける他に、磁石ユニットの外周に取り付けても良い。あるいは、補助質量体の軸方向Aの両端や、内周に取り付けても良い。
一方で、図1で例示するように、ガイドを部材として設ける構成は必須ではなく、磁石ユニットの表面、あるいは補助質量体の表面にコーティングをして、コーティング材をガイドとして機能させても良い。あるいは摺動材を設けてもよい。つまり、磁石ユニットと補助質量体の各々の表面に対して、少なくとも一方にコーティングあるいは摺動材が設けるとよい。
また、磁石ユニットの表面あるいは補助質量体の表面が十分な平滑性を備えていれば、ガイドとして機能させてもよい。
ガイド103a、103bについてさらに詳しく説明すると、ガイドの外径を、磁石ユニットの外径より少し大きくし、ガイドと補助質量体とを摺動させる構成にすることで、磁石ユニットと補助質量体との隙間をおよそ一定に保つことができる。あるいは、ガイドを補助質量体に取り付けて、ガイドの内径を、補助質量体の内径より少し小さくし、ガイドと磁石ユニットとを摺動させる構成にしても、同様である。磁石ユニットの表面、あるいは補助質量体の表面にコーティングをする構成であっても、同様である。磁石ユニットによって生じる磁場の磁束密度は、磁石ユニットに近いほど高い。そのため、磁石ユニットと補助質量体との隙間を、できるだけ狭くする方が好ましい。ガイドや磁石ユニットの外周、および補助質量体の内周は、機械加工で精度良く製作することができる。また、ガイドの表面をコーティングをすれば、コーティング厚さを数十μmと薄くすることができる。これにより、例えば、0.1mmと言った狭い隙間で磁石ユニットと補助質量体を配するように構成することも可能である。 なお、“筒状”の形状は、円筒に限らず、多角形であっても良い。
また、ガイドは、筒状の補助質量体の軸方向Aの動きをできるだけ妨げないように、低摩擦な特性を有するようにする。そのためには、ガイドの高さを低くしたり、切れ目を入れたりして、補助質量体との接触面積を小さくすると良い。ガイドを摩擦係数の小さい材料で製作するとなお良い。または、摩擦係数の小さい材料を貼り合わせたり、表面にコーティングをしたりすると良い。ガイドだけでなく、補助質量体も摩擦係数の小さい材料を貼り合わせたり、表面にコーティングをしたりするとなお良い。
磁石ユニットの表面、補助質量体の表面にコーティングをして、コーティング材をガイドとする場合も、摩擦係数の小さい材料でコーティングをすれば低摩擦なガイドにできる。
なお、ガイドと補助質量体とは、電気的に絶縁された状態とする。つまり、ガイドを電気の通しにくい絶縁材料で製作する。
摩擦係数の小さい材料で、かつ電気を通しにくい絶縁材料として、フッ素樹脂などのプラスチック材が挙げられる。ガイドにおける摺動する箇所のみをフッ素樹脂などのプラスチック材で形成してもよい。このようにガイドの一部または全部が絶縁材料より構成され、ガイドと補助質量体が電気的に絶縁された状態に構成されているとよい。
ガイドと補助質量体との垂直抗力を小さく保つと良い。そのために、補助質量体には、室温で強磁性を示す磁性体(例えば鉄(Fe)など)を取り付けないようにする。このように構成することで、補助質量体は磁石ユニットの磁場の作用で磁力ユニットに吸引されることはない。つまり、ガイドと補助質量体との間の垂直抗力を小さく保つことができ、結果としてガイドと補助質量体の互いに働く摩擦力が小さい構成とすることができる。
なお、同じく低い摩擦特性という観点から、後述するばね部材104は、軸方向Aに力を加えるが、軸方向Aに交差する方向への力は小さい構成とするとよい。
以上のように、接触面積や摩擦係数、垂直抗力を小さくすることで、低摩擦な特性を有するようにできる。つまり、軽量な補助質量体であっても低摩擦なガイドに沿ってスムーズに動くことができる。
プローブシャフトと補助質量体は、軸方向Aに伸縮するばね部材104を介して連結されている。プローブシャフトにはばね押さえ105が固定されており、ばね部材104は、このばね押さえを介してプローブシャフトの軸方向Aに沿って伸縮可能に支持されている。軸方向Aがおよそ鉛直である場合、ばね部材を補助質量体の重力下側に配置すれば、重力の作用で補助質量体がばね部材に押し込まれる。この場合、ばね部材に加わる予圧は補助質量体にかかる重力(重さ)である。補助質量体は比較的軽いので、ばね部材に加わる予圧も小さいため以下の観点でこの構成は有利である。
図1(a)および後述する図1(b)において、ばね部材は軸方向Aに平行に補助質量体を支持しているように描かれているが、現実には、完全に平行に支持しているわけではない。すなわち、補助質量体を少し斜め方向に支持しており、軸方向Aに対して垂直する方向の力成分が存在する。この軸方向Aに対して垂直な方向の力成分が、上述した垂直抗力として作用し、ガイドの外周と補助質量体の内周の接触する箇所における摩擦力を生じさせる。したがって、ばねにかかる予圧が小さいほど、前述したガイドにかかる垂直抗力も小さく保つことができるため摩擦力の低減の観点から有利である。なお、ばね部材を補助質量体の重力上側に配置して引っ張り方向で使う構成にしても同様である。
ばね部材を片側から支持する構成について説明したが、図1(b)に示す通りばね部材を両側に配置して両側から支持することもできる。図1(b)において、プローブシャフトに支持されたばね押さえ105aに対してばね部材104aが配されており、同じくプローブシャフトに支持されたばね押さえ105bに対してばね部材104bが配されている。
この場合、ばね部材の自然長からの押し込み量、あるいは引っ張り量を小さくすれば、予圧を小さくできる。
なお、ばね部材を引っ張り方向で使う構成の場合、ばね押さえや補助質量体に固定したり、接着したり、引っかけたりする必要がある。一方で、ばね部材を圧縮方向で使う構成は、複雑な構成を必要とせず、簡易に実現できる。
ばね部材の形は、弾性体の復元力を利用したものであれば、様々な形であっても良い。特に、線状の弾性体をらせん状に形作ったコイルばねは、長尺のプローブシャフトに沿って配置できるため好ましい。
なお、コイルばねの座屈を防ぐために、コイルばねの内側または外側に、不図示のばねガイドを備えても良い。ばね要素としては、コイルばねの他に、板ばねやねじりばね等でも構成することができる。
また、磁石ユニットが発する磁場への影響を小さくするために、ばね要素は非磁性体とすると良い。弾性体かつ非磁性体の素材として、非磁性ステンレス鋼、リン青銅、ベリリウム銅、チタン等がよく使われる。
磁石ユニット101が備わっているプローブシャフト11と、導体からなる補助質量体102の位置が軸方向Aに相対的に変化すると、その相対的な速度に応じた渦電流が補助質量体102に流れ、位置の変化を打ち消すような方向に力が生じる。すなわち、動吸振器を構成するダンパ要素(振動を減衰させる機構)として機能する。
このような磁気ダンパは非接触で力が生じる。したがって従来の技術である摩擦材を使ったダンパを用いた動吸振器と異なり、大きな静止摩擦を生じない。また、従来の技術である粘性流体を使ったダンパを用いた動吸振器と異なり、中間材を必要としない。よって、主質量体としてのプローブシャフトと補助質量体とのナノメートルオーダーの微小な変位に対して、それに応じた力を生じさせることができる。
また、図1(a)や図1(b)に示したとおり、筒状の磁石の外周に、筒状の導体(補助質量体102)を配置する構成である。補助質量体が磁石ユニットに対して変位する際に、渦電流が筒状の補助質量体の円周方向に流れる。渦電流が補助質量体の円周方向に流れる構成であるので、渦電流が流れる距離を長くできる。さらに、渦電流が流れている箇所は、磁石ユニットの近傍であるので、高い磁束密度の磁場が広がっている空間である。よって、強いローレンツ力が生じるので、高効率な磁気ダンパにすることができる。
ばね部材104には、プローブシャフト11と補助質量体102の相対変位に応じた復元力が生じる。すなわち、動吸振器を構成するばね要素(復元力を発生する機構)として機能する。
弾性体の復元力を利用したばねであるので、プローブシャフトと補助質量体とのナノメートルオーダーの微小な相対位置の変動であっても、それに応じた力を生じさせることができる。
本実施形態では図1(a)についていえば、プローブシャフト11、スタイラス12、ターゲットミラー13磁石ユニット101、ガイド103a、103b、ばね押さえ105が一体として制振対象である主質量体として機能する。そして、他方で補助質量体102が、動吸振器の補助質量体として機能する。
このように、本実施形態のプローブは、主質量体と補助質量体とが、磁気ダンパとばねで連結された動吸振器を構成している。この動吸振器の構成によって、補助質量体が主質量体の振動を打ち消すように働き、主質量体の振動を低減することができる。すなわち、プローブシャフトの振動を低減することができる。
本発明によれば、プローブシャフトの内部に物体を組み込む必要がない。そのため、プローブシャフトを軽量にしても、補助質量体の大きさ、あるいは磁気ダンパ(磁石ユニットや導体)の大きさによらず、十分な剛性を保つことができる。そして、十分に高剛性なプローブシャフトの形状を定めた上で、磁気ダンパの構成を定めることができる。すなわち、プローブシャフトの剛性と磁気ダンパの質量を独立に考えることができる。
さらに、磁気ダンパは、非接触に振動を減衰するので、大きな静止摩擦を生じない。また、大きな質量の中間材を必要としない。そのため、軽量な補助質量体の微小な慣性力であっても反応しやすくなる。
以上のように、軽量なプローブシャフトながら、プローブシャフトの剛性を保ち、さらに、軽量な補助質量体の微小な慣性力にも反応することができる。よって、プローブシャフトの振動をより一層低減できる動吸振器型のプローブを実現できる。磁石ユニットの外周に導体を配置する構成にしているので、必要なダンパ定数を発揮する磁気ダンパを軽量に実現できる。つまり動吸振器を構成するダンパ要素に関して高い減衰特性と軽量の両方の要件を満たすことができる。これにより、動吸振器型のプローブを、さらに軽量に構成できるので、プローブシャフトの振動をより一層低減することができる。
≪第二の実施例≫
図2(a)は、本発明の第二実施例に係わるプローブの構成図である。
第一実施例に係わるプローブとは、動吸振器を構成する磁気式のダンパ要素の構造が異なる。第一実施例に係わるプローブと共通な要素には共通の番号を付し、説明を省略する。第一実施例と同じく、ばね部材を片側から支持する構成と、ばね部材を両側に配置して両側から支持する構成のどちらを選んでもよい。以下では片側から支持する構成を中心に説明する。
図2(b)には第二実施例にかかる磁石ユニットの周辺の斜視図を示した。
磁石ユニット201は、筒状の内ヨーク201c(第一のヨーク)を介して、2つの筒状の永久磁石201a、201bを同じ磁極が対向するように配置する。すなわち磁石ユニットは複数の筒状の永久磁石の同じ磁極同士を互いに対向させて配置することによって構成されている。
なお、図2(a)においては、2つの筒状の永久磁石のN極同士が対向するように配置されているがS極同士を対向させて配置しても良い。このように配置すると、2つの永久磁石の磁場が互いに反発し合うことで、筒状の内ヨーク201cの外周に高い磁束密度の磁場を出やすくなる。これにより、小さな磁石ユニットであっても高い磁束密度を得ることができる。つまり単位質量あたりに高い磁束密度の磁場を発生させることができるので、さらに軽量な磁石ユニットを構成できる。
また、永久磁石201a、201bが互いに対面する面については、内側から外側に向かって開口が大きくなるように段差またはテーパーを付けても良い。開口に嵌合するように、内ヨークの内側の高さを外側の高さよりも小さくし、永久磁石の内側の高さを外側の高さよりも大きくする。このように構成すると、磁場が外周に出やすくなるので、高い磁束密度を得ることができる。磁束密度を高くできるので、さらに軽量な磁石ユニットを構成できる。
なお、内ヨークの内径を永久磁石の内径より大きくしても磁気ダンパの性能を極端に低下させることはないので、内ヨークの内径を永久磁石の内径よりも少し大きくしておくと、プローブシャフトに取り付ける際のガタを生じ難くすることができる。
2つの永久磁石の同じ磁極同士を対向する構成について説明したが、3つ以上の筒状の永久磁石を、プローブシャフトに沿って装着し、互いの磁極同士が対向する構成としても良い。
たとえばS−N、N−S、S−Nというように構成すると良い。この場合は、複数の筒状の永久磁石のうち、少なくとも2つの同じ磁極同士を互いに対向して構成された永久磁石の間に内ヨーク(第一のヨーク)が配される。
補助質量体102の外周に、さらに外ヨーク206(第二のヨーク)を配置する。外ヨークは、ハウジング205を介して、プローブシャフトと一体に構成されている。なお、磁石ユニットはプローブシャフトに備わっており、外ヨークは磁石ユニットから生じる磁場の一部を覆うように構成されている。
外ヨークが備わることで、磁石ユニットから生じる磁場が遠方まで広がるのを防ぎ、高い磁束密度の磁場となる。磁束密度を高くできるので、さらに軽量な磁石ユニットを構成できる。
なお、ハウジングは、ばね押さえ105の機能を兼ねると良い。
外ヨークの軸方向Aの長さは、軽量で十分な効果が得られる長さに調整すると良い。また、ハウジングの材料として、プラスチック材などの軽量な材料を採用すれば、全体の質量増加を抑えることができる。
ここで、外ヨークが、補助質量体と一体となるような構成にはしない。外ヨークと補助質量体とが一体に構成されると、磁石ユニットが補助質量体を強く吸引してしまう。こうなると、ガイドと補助質量体との垂直抗力が大きくなり、静止摩擦が大きくなる。静止摩擦が大きくなると、軽量な補助質量体がくっついて動かなくなってしまう。
また、本実施例では、磁石ユニットと外ヨークとが一体となり、補助質量体(導体)がその間に挟まれる構成になっている。つまり、磁石ユニット、外ヨーク、プローブシャフトが主質量体となり、補助質量体(導体)と相対的な変位が可能に構成されている。
以上のように構成された第二実施例では、比較的質量の大きい磁石ユニットを軽量にできる。一方で外ヨークやハウジングの質量増加を抑えている。これにより、動吸振器型のプローブを、さらに軽量に構成できるので、プローブシャフトの振動をより一層低減することができる。
また、外ヨークは、外部に漏れる磁場を小さくしているので、プローブの近傍に磁性体が近づいても、プローブシャフトが受ける力を低減することができる。そのため、安定した減衰特性が得られるという効果もある。
≪第三の実施例≫
図3は、本発明のプローブのコイルばねの構成図である(磁石ユニット等は省略して描かれている)。
図3(a)では、プローブシャフトと補助質量体302とを、軸方向Aに支持する円錐コイルばね304を備える構成としている。図3(a)に示したように、円錐コイルばねはプローブシャフト11に固定されたばね押さえ105に対して破線で示したように末広がりに設けられている。
一般的な動吸振器では、ばね部材の質量が問題になることは少ない。しかし、本発明のプローブでは、補助質量体が軽量であるので、ばね部材の質量を無視できなくなる。そのため、ばね部材をさらに軽量にすることが望ましい。
前述の実施例では、ばね部材の一例として、コイルばねを挙げた。円錐コイルばねとの区別を明瞭にするために、コイル直径が両端で等しいコイルばねを、特に円筒コイルばねと呼ぶことにする。コイル直径が両端で異なるコイルばねを円錐コイルばねと呼ぶことにする。
同じ線径のばね線であれば、コイル直径が小さいほどばね定数が高くなる。つまり、コイル直径を小さくすれば、同じばね定数を得るためのばね線の線径を小さくできる。ばね線の線径が小さくなれば、コイルばねを軽量にできる。また、コイル直径が小さければばね線の長さも短くなるので、コイルばねを軽量にできる。
円錐コイルばねは、一端を補助質量体の径とおよそ同じにして補助質量体を支持しつつ、もう一端を補助質量体の径よりも小さくすることができる。例えば、プローブシャフトの外径とおよそ同じにする。こうすれば、両端を補助質量体の径とおよそ同じにした円筒コイルばねに比べて、さらに軽量にできる。
円錐コイルばねは、円筒コイルばねと比較して座屈しにくいという特徴がある。そのため、円筒コイルばねを使う際にばねガイドを使っていたとしても、円錐コイルばねを使うことで、省くことができる。ばねガイドを省くと、プローブを全体としてさらに軽量にできるため、プローブシャフトの振動をより一層低減することができる。
図3(b)では、導体であって、かつ非磁性体の部材402aとコイルばね404との間にスペーサ402bを挟み、補助質量体402としている。または、402aと402bを一体に製作しても良い。そして、コイルばねのコイル径を、プローブシャフトよりも大きくし、補助質量体よりも小さくする。このように構成すると、補助質量体の径とおよそ同じにしたコイルばねに比べて、コイル径を小さくできるので、さらに軽量にできる。スペーサの材料として、プラスチック材などの軽量な材料を採用すれば、補助質量体の質量増加を抑えることができる。
また、プローブシャフト自体をばねガイドとして機能させることもできるので、追加のばねガイドを省くことで、さらに軽量にできる。
以上のように、ばね部材をさらに軽量にできる。よって、動吸振器型のプローブを、さらに軽量に構成できるので、プローブシャフトの振動をより一層低減することができる。
図3(c)では、補助質量体502の外側にフランジが設けられており、フランジでコイルばねを支持する構成としている。
コイルばねは少なくとも2巻きから3巻きのらせん状に形作られる。コイルばねの長さを短くし過ぎるとコイルばねのばね線が互いに密着してばねとして働かなくなってしまう。そのため、ある程度の長さが必要になる。一方で、プローブシャフトは短いほど軽量になるが、コイルばねの長さは、プローブシャフトを短くする際の制約になる。フランジでコイルばねを支持する構成とすることで、コイルばねを補助質量体に組み付けた際の全体の長さを短くできる。これにより、プローブシャフトを短くする際の制約が緩和される。
以上のように、プローブシャフトを軽量にできる。よって、動吸振器型のプローブを、さらに軽量に構成できるので、プローブシャフトの振動をより一層低減することができる。
図4は、本発明のプローブの補助質量体の構成図である。
補助質量体は、その円周を渦電流が流れるので、磁石ユニットの外周を一周する筒状の形状でなければならない。しかし、補助質量体をさらに軽量にしていくと、補助質量体が薄くなり過ぎて、必要な強度を保てない可能性が生じる。必要な強度とは、渦電流によって生じる力やばね部材の伸縮によって生じる力、あるいは外部からの力で変形しないほどの強度である。
そこで、補助質量体602を、内側に銅602a、外側にアルミニウム602bの二体構造にする。
銅は、重いが、電気抵抗率が小さいという特徴がある。電気抵抗率は小さいほど渦電流が流れやすく、高効率な磁気ダンパにできる。アルミニウムは、銅に比べて電気抵抗率が大きいが、比剛性が良好である。そのため、軽量のまま、必要な強度を保つことができる。
磁束密度の高い空間に位置する補助質量体の内側に銅を使い、渦電流を流れやすくする。外側にアルミニウムを使うことで、軽量のまま必要な強度を保つ。銅は接着剤で貼り合わせたり、メッキ処理でくっつけたりすることができる。このように補助質量体の一部が銅あるいはアルミニウムで構成されてもよい。
以上のように、渦電流が流れやすく、かつ、軽量で必要な強度を保つことができる補助質量体とすることができる。よって、動吸振器型のプローブを、さらに軽量に構成できるので、プローブシャフトの振動をより一層低減することができる。
図5は、本発明の形状測定装置の構成図である。
本発明の形状測定装置は、被測定面にプローブを接触させて走査するとともに、前記プローブの位置を計測することで前記被測定面の形状を計測する。そのプローブが前述した各実施形態にて例示されたプローブである。
プローブ10の先端を、被測定物20の被測定面20aに接触させる。被測定物は、ワークステージ21に搭載されている。ワークステージは、除振台等に載せて、床面からの振動を低減すると良い。
プローブシャフトを板ばねで吊っているプローブハウジングを、プローブステージ30に取り付ける。プローブステージは、Z方向に駆動する。ここでは、プローブシャフトの軸方向Aと、プローブステージのZ方向をおよそ等しくなるように取り付ける。プローブステージは、走査ステージ31に取り付いており、XY方向の2軸、もしくはどちらか1軸に駆動する。
プローブシャフトの後端のZ方向の位置情報と、プローブステージのZ方向の位置情報は、レーザー測長器などで測定され、演算器32に取り込まれる。演算器は、プローブシャフトの挙動に基づいて、被測定面の形状を表した測定データを計算し、不図示の記憶器に記憶する。記憶器は、装置に備え付けられていても良いし、コンピュータネットワークでつながった外部にあっても良い。また、必要に応じて、測定データをモニタに表示したり、紙に印字したりする。
さらに、演算器は、プローブシャフトのZ方向の位置情報と、プローブステージのZ方向の位置情報との偏差を計算し、偏差が一定になるように、プローブステージに駆動信号を送る。プローブステージは、駆動信号に基づいてZ方向に駆動する。ここで「一定になるように」とは「指定の目標値に逐次近づけるように」の意味である。すなわち、プローブステージは、プローブシャフトとプローブステージとのZ方向の偏差を目標値に近づけるように制御されている。この偏差が一定に保たれれば、プローブの板ばね14a、14bのたわみ量も一定になり、ひいては一定の測定力がプローブシャフトに加わることになる。
しかしながら、実際には、プローブステージは、プローブに比べて重く、動作性能が劣るため、比較的大きな振動が生じることがある。ただし、板ばねのばね定数を十分に小さく設定しておけば、プローブシャフトとプローブステージのとのZ方向の偏差が多少大きくなっても測定力の変化は小さいままである。測定中に測定力が大きく変化しないので、高精度な測定を行うことができる。
プローブシャフト11の形状としては棒状の形状について説明した。この他に、2本の棒状のシャフトを直角に接続して、L字状の形状とすることもできる。この場合は、後端側のシャフトに回転軸受機構を備え、回転軸受機構を中心に回転するように構成する。回転量に応じた力が発生するようにばね機構を備える。後端の回転角から、プローブシャフト先端の揺動を推定し、被測定面の形状を表した測定データを作成する。
動吸振器を被測定面に接触する先端側のシャフトに備えれば、棒状のプローブシャフトと同様に働き、振動を低減することができる。
上述の各実施形態にて例示された動吸振器が持つべき特性を以下に順を追って詳しく説明する。
まず、動吸振器の同調周波数を定める。プローブで被測定面を走査すると、プローブシャフトのたわみ等が原因になり、特定の周波数が主因となって振動する。この主因となる周波数を共振周波数と呼ぶ。共振周波数は、被測定面の傾斜角に応じて変わる。プローブの構成によって差異はあるが、被測定面の傾斜角が70度付近で約180Hzの共振周波数である場合には、動吸振器の同調周波数を180Hzに定める。
次に、プローブの可動部(板ばねで吊っている部分)の質量を3gとして、「補助質量体の質量」/「主質量体の質量」の比を0.12と仮決めする。この場合、主質量体が2.7g、補助質量体が0.3gになる。
動吸振器のばね定数、ダンパ定数を所望の値に仮決めする。
続いて、ばね部材を設計する。ばね部材としてコイルばねを使う場合、ばね線の材料、ばね線の線径、コイル径、巻数を変えて、所望のばね定数に調整する。
磁気ダンパを設計する。磁気ダンパの設計は、有限要素法で、磁石ユニット、導体、外ヨークの形や配置を変えて、所望のダンパ定数に調整する。
例えば、プローブシャフトの外径がΦ2.6mmの場合を考える。磁石ユニットは、内ヨークを介して2つのネオジム磁石を同じ磁極が対向するように接着する。有限要素法で計算すると、磁束密度が導体の中央付近で約0.7Tとなった。
この時、磁石ユニットの質量は0.3g、補助質量体(導体)の質量は0.3gと軽量な磁気ダンパを構成できる。
プローブシャフトの内部に磁気ダンパを組み込む方法では、プローブシャフトの剛性と磁気ダンパの減衰特性とがトレードオフの関係にあり、プローブシャフトの剛性を保ったまま、軽量な磁気ダンパを構成することが難しかった。本発明の構成により、一例として、プローブシャフトの外径をΦ2.6mmとして、十分に剛性を保ったまま、可動部の質量が3gと軽量な構成で、磁気ダンパを使った動吸振器型のプローブを実現することができた。
図6は、本発明のプローブの減衰係数を示す図である。
前述したようにプローブシャフトの主因の振動の共振周波数は、被測定面の傾斜角に応じて変わる。そこで、共振周波数を変えて、それぞれの共振周波数におけるプローブシャフトの挙動をシミュレーションで計算した。そして、プローブシャフトの挙動から、磁気ダンパを使った動吸振器型のプローブの減衰係数を計算した。減衰係数は、速度に比例した抵抗力の係数を表し、単位はNs/mである。減衰係数が高いほど、減衰特性が良好であることを示している。横軸に共振周波数、縦軸に減衰係数として、計算した値を結んだ減衰係数曲線C1をプロットする。
動吸振器の同調周波数を一例として180Hzとして設計した。180Hz付近で最大の減衰係数0.79Ns/mが得られた。180Hzは、70度付近の共振周波数であるので、70度付近を走査する際の振動を低減しやすいことを示している。180Hzよりも周波数を高くすると、減衰係数は低下するが、600Hz付近で減衰係数0.17Ns/mが得られた。これは、10度付近を走査する際にも振動を低減する効果があることを示している。
ここで、被測定面20aの測定最小横幅を0.1mmと仮定する。プローブを1mm/sで走査すると、0.1mmを走査するのに0.1sかかる。0.1sは、10Hzに相当する。図6によると、100Hz以下の減衰係数は0.03Ns/m以下である。これは、100Hz以下の振動を低減する特性が小さいことを示している。つまり、10Hz以下の被測定面の形状にはよく追従することを示しており、1mm/sで走査した場合、横幅0.1mmのうねり形状によく追従することができる。
このように、被測定面の形状に追従するために低い周波数の振動には反応せずに、測定誤差となる高い周波数の振動のみを減衰するのは、本実施形態にそれぞれ例示された動吸振器の大きな特徴である。
一方で、プローブシャフトとプローブハウジングとの間にダンパを取り付けるような従来の構成は、低い周波数の振動も減衰してしまうので、被測定面の形状への追従性を損ねてしまうという問題を内包している。以上より、本実施形態に例示される動吸振器の特性は、プローブの構成要素として好ましい特性であると言える。
図7は、本発明のプローブの効果を実験で示した図である。
図7(a)は、動吸振器を取り付けていないプローブの振動波形Vaを示している。図7(b)は、本発明の構成による動吸振器型のプローブの振動波形Vbを示している。どちらも、プローブをばね部材に取り付けてインパルス加振した際の減衰振動の振動波形をプロットした。共振周波数はおよそ200Hzとしている。
図7(a)によると、多少減衰しているものの、振動が十分に収束するまでには長い時間がかかることがわかる。。この場合の減衰係数は、0.03Ns/m以下である。
図7(b)によると、インパルス加振後、急峻に減衰し、時刻14ミリ秒で振幅が10%(約10nm)になった。この場合の減衰係数は、0.69Ns/mである。
このように、本発明の構成による動吸振器型のプローブは、動吸振器を取り付けていないプローブに比べて、高い減衰特性を有している。また、補助質量体の質量が0.3gと非常に軽量であるにも関わらず、振幅10nm以下まで急峻に減衰していることから、軽量な補助質量体の微小な慣性力にも反応することが示された。
以上で説明した動吸振器は、ダイナミックダンパや質量ダンパ(マスダンパ)と呼ばれることもある。プローブは、スタイラスや触針子、フィーラーと呼ばれることもある。