以下、電圧検出センサおよび測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、図1に示す測定装置としての測定装置1の構成について、図面を参照して説明する。
この測定装置1は、図1に示すように、一例として、電圧検出センサとしての電圧検出センサ2,3と、各電圧検出センサ2,3が接続された測定装置本体4とを備え、電圧検出センサ2,3でクリップ(挟持)した測定対象導体の一例としての2つの電路5,6間の電位差(線間電圧)Vlvを測定可能な電圧測定装置として構成されている。
各電圧検出センサ2,3は、図1,2に示すように、同一の構成を備えて、クリップした測定対象導体(電路5や電路6)と結合容量(容量Caや容量Cb)を介して容量結合すると共に、測定対象導体の測定対象電圧(電路5の電圧V1aや電路6の電圧V1b。各電圧V1a,V1bを区別しないときには、「電圧V1」ともいう)を検出して、この電圧V1の電圧値に比例した電圧値の後述の電圧測定用検出信号S6を後述の接続コネクタ13を介して測定装置本体4に出力するという同じ機能を有している。このため、各電圧検出センサ2,3の構成について、一例として電圧検出センサ2を例に挙げて説明する。
電圧検出センサ2は、一例として、図1に示すように、クリップ部11、中継ボックス12および接続コネクタ13を備え、接続コネクタ13を測定装置本体4のパネル面などに配設されている後述の入力コネクタ52に連結することで、測定装置本体4に接続可能に構成されている。このクリップ部11および中継ボックス12は、全体としてケーシングを構成し、一例として多芯ケーブル14で接続されている。また、中継ボックス12および接続コネクタ13は一例として他の多芯ケーブル15で接続されている。なお、中継ボックス12内に配設された後述の各構成要素をクリップ部11内に収容する構成を採用することもできる。この構成では、中継ボックス12を省くことができ、接続コネクタ13は、多芯ケーブルを介してクリップ部11に接続される。
クリップ部11は、図1に示す模式図で表されるように、合成樹脂材などの電気的絶縁性を有する材料で形成された一対のクリップ片21,31を備え、クリップ片21,31間で測定対象導体をクリップ可能に構成されている。
具体的には、クリップ片21は、一例として、一端部が挟み部22に形成されると共に他端部が摘み部23に形成され、クリップ片31は、一例として、一端部が挟み部32に形成されると共に他端部が摘み部33に形成されている。また、各クリップ片21,31は、互いの挟み部22,32同士が対向し、かつ互いの摘み部23,33同士が対向した状態で互いの中央部分に規定された回動軸Aを中心として回動自在に連結されている。また、各クリップ片21,31内には、不図示の捩りバネが配設されて、挟み部22,32同士が接近する方向に、各クリップ片21,31を常時付勢している。この構成により、クリップ部11は、クリップ片21の挟み部22とクリップ片31の挟み部32との間で測定対象導体(この例では電路5または電路6)をクリップすることが可能に構成されている。
また、クリップ片21における挟み部22(他方の挟み部)内には、ガード電極(第2ガード電極)26が配設されている。このガード電極26は、一例として平板状の金属板で構成されて、図2に示すように、多芯ケーブル14を介して中継ボックス12内の後述する第1スイッチ41dに接続されている。
また、クリップ片31における挟み部32(一方の挟み部)内には、検出電極34が配設されている。この検出電極34は、一例として平板状の金属板で構成されると共に、一対の挟み部22,32間でクリップされた測定対象導体との容量結合が良好な状態で行われるように、挟み部32における挟み部22との対向面(測定対象導体との接触面。図1中の上面)の近傍に配設されている。
また、検出電極34が配設されたこのクリップ片31内には、不図示の基板に実装された複数の不図示の電子部品で構成される電圧検出部35が配設されている。また、このクリップ片31内には、検出電極34および電圧検出部35と、クリップ片31におけるクリップ片21との非対向面(図1中の下面)との間にガード電極(第1ガード電極)36が配設されている。ガード電極36は、一例として平板状の金属板で構成されて、クリップ片31を上記の非対向面側から見たときに、検出電極34および電圧検出部35全体を覆う広さに形成されている。また、ガード電極36は、図2に示すように、多芯ケーブル14を介して中継ボックス12内の後述する昇圧回路41b(昇圧回路41bにおける後述する印加電圧V4のための不図示の出力端子)に接続されている。
なお、ガード電極36は、本例のように、検出電極34および電圧検出部35の全体を覆う広さに形成されているのが好ましいが、少なくとも検出電極34を覆うように形成されていればよく、電圧検出部35を覆わない構成とすることもできる。また、電圧検出部35を構成する電子部品が実装されている基板が多層基板であるときには、この電子部品に供給される後述の作動用電源(正電圧Vf+および負電圧Vf−)についての基準電圧Gが印加される基板のグランド層をガード電極として使用してもよい。
このように構成されたクリップ部11では、検出電極34は、一対の挟み部22,32間で測定対象導体をクリップしているときには、この測定対象導体と良好な状態で容量結合する。一方、検出電極34は、一対の挟み部22,32間で測定対象導体をクリップしていないとき(つまり、挟み部22,32が互いに当接した状態のとき)であって、ガード電極26がガード電極36から切り離されているときには、対向して位置するガード電極26と容量結合する。
電圧検出部35は、一例として、図2に示すように、電流電圧変換回路35a、積分回路35bおよびアイソレータ(絶縁回路)35cを備え、中継ボックス12から多芯ケーブル14を介して供給される正電圧Vf+および負電圧Vf−(いずれも印加電圧V4を基準電圧Gとするフローティング電圧であって電圧検出部35にとっての作動用電源(フローティング電源))で作動する。この電圧検出部35において基準電圧Gとなる印加電圧V4は、中継ボックス12内の昇圧回路41bから出力される電圧であって、上記したように、多芯ケーブル14を介してクリップ片31内のガード電極36に印加される。このクリップ部11では、図1に示すように各挟み部22,32間で測定対象導体(同図では電路5)を挟持している状態において、検出電極34は、図1,2に示すように、挟み部22内のガード電極26と挟み部32内のガード電極36との間で挟まれた状態となる。この構成により、ガード電極26がガード電極36と接続されているときには、検出電極34がこの測定対象導体(電路5)以外の他の導体との間で容量結合するという事態の発生を各ガード電極26,36によって大幅に低減することが可能になっている。
電流電圧変換回路35aは、図2に示すように、一方の入力端子としての反転入力端子が検出電極34に接続され、他方の入力端子としての非反転入力端子が基準電圧G(印加電圧V4でもある)に規定され(具体的には、直接または抵抗を介してガード電極36に接続されることで基準電圧Gに規定され)、かつ反転入力端子と出力端子との間に帰還抵抗が接続された演算増幅器(オペアンプ)を有して構成されている。よって、検出電極34は基準電圧Gと同電圧に規定される。この構成により、電流電圧変換回路35aは、図2に示すように、測定対象導体としての電路5の電圧(交流電圧)V1aと検出電極34の電圧(つまり、基準電圧G)との間の電位差Vdiに起因して、電路5と検出電極34との間の結合容量Caを介して電路5と検出電極34との間に流れる電流I1aを検出すると共に電圧信号S1に変換して出力する。
積分回路35bは、この電圧信号S1を積分することにより、上記の電位差Vdiに応じて電圧値が変化する検出信号S2を出力する。アイソレータ35cは、この検出信号S2を入力すると共に検出信号S2と電気的に絶縁された新たな検出信号S3(一例として、振幅が検出信号S2の振幅に比例し、かつ検出信号S2と同位相の電圧信号。つまり、検出信号S2と同じように電位差Vdiに応じて電圧値が変化する電圧信号)に変換し、この検出信号S3を多芯ケーブル14を介して中継ボックス12に出力する。
以上の構成により、電圧検出センサ2のクリップ部11は、その検出電極34を測定対象導体としての電路5の金属部分(例えば、電路5が被覆電線で構成されているときにはその芯線)と電気的に接触させることなく非接触の状態(つまり、金属非接触の状態)で、上記の電路5の電圧V1aを検出して、電位差Vdiに応じて電圧値が変化する検出信号S3を中継ボックス12に出力可能となっている。
中継ボックス12は、図2に示すように、一例として、電圧生成部41、電圧出力部42およびDC/DCコンバータ(以下、単に「コンバータ」ともいう)43を備え、これらの各構成要素が合成樹脂材などの電気的絶縁性を有する材料で形成されたボックス本体44(図1,2参照)内に収容されて構成されている。この中継ボックス12内に配設された電圧生成部41などの各構成要素は、測定装置本体4から多芯ケーブル15を介して供給される正電圧Vc+および負電圧Vc−(いずれも基準電圧G1を基準とする電圧)で作動する。この基準電圧G1は、測定装置本体4内の基準電圧であり、測定装置本体4が接地されているときには大地の電圧(グランド電圧)に規定される。
具体的には、電圧生成部41は、処理回路41a、昇圧回路41b、基準電圧生成回路41c、第1スイッチ41d、第2スイッチ41eおよび第3スイッチ41f(接断スイッチ)を備えている。
処理回路41aは、一例としてCPU、A/D変換器およびD/A変換器など(いずれも図示せず)を備えて構成されて、昇圧回路41eを駆動する駆動信号Sd1をクリップ部11から出力される検出信号S3の電圧値に応じて振幅(電圧値)を変更して生成する信号生成処理、基準電圧生成回路41cを駆動する駆動信号Sd2を必要に応じて振幅(電圧値)を変更して生成する基準信号生成処理、第1スイッチ41d、第2スイッチ41eおよび第3スイッチ41fを独立して接断する(接続状態および切断状態の任意の一方に切り替える)切替処理、電圧出力部42の後述する増幅回路42bのゲイン(増幅率)を設定(または調整)するゲイン設定処理、並びに電圧出力部42から出力される分圧電圧V5の電圧値に基づいて印加電圧V4および基準交流電圧V6の各電圧値の測定や電圧出力部42から出力される電圧測定用検出信号S6の電圧値の測定を行う電圧測定処理を実行する。
昇圧回路41bは、入力している駆動信号Sd1を昇圧(予め規定された一定の昇圧率で昇圧)して印加電圧V4を生成し、生成した印加電圧V4を第1スイッチ41dに出力する。基準電圧生成回路41cは、入力している駆動信号Sd2を昇圧(予め規定された一定の昇圧率で昇圧)して基準交流電圧V6(予め規定された基準振幅の交流電圧)を生成し、生成した基準交流電圧V6を第2スイッチ41eに出力する。この構成により、処理回路41aは、上記した信号生成処理において駆動信号Sd1の振幅(電圧値)を変更することにより、昇圧回路41bから出力される印加電圧V4の振幅(電圧値)を変更することが可能になっている。また、処理回路41aは、上記した基準信号生成処理において駆動信号Sd2の振幅(電圧値)を調整することにより、基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6の基準振幅(電圧値)を調整することが可能になっている。
第1スイッチ41dは、一端が昇圧回路41bにおける印加電圧V4の出力端子(図示せず)に接続されると共に、他端が多芯ケーブル14を介してクリップ部11のガード電極36に接続されている。この構成により、第1スイッチ41dは、処理回路41aによって接続状態に切り替えられたときには、昇圧回路41bから出力される印加電圧V4を、多芯ケーブル14を介してガード電極36に印加し、処理回路41aによって切断状態に切り替えられたときには、この印加電圧V4の多芯ケーブル14への出力を停止する。
第2スイッチ41eは、一端が基準電圧生成回路41cにおける基準交流電圧V6の出力端子(図示せず)に接続されると共に、他端が多芯ケーブル14を介してクリップ部11のガード電極26に接続されている。この構成により、第2スイッチ41eは、処理回路41aによって接続状態に切り替えられたときには、基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6を、多芯ケーブル14を介してガード電極26にガード電圧Vgとして印加し、処理回路41aによって切断状態に切り替えられたときには、この基準交流電圧V6の多芯ケーブル14への出力を停止する。
第3スイッチ41fは、一端が第1スイッチ41dの他端に接続されると共に、他端が第2スイッチ41eの他端に接続されている。この構成により、第3スイッチ41fは、多芯ケーブル14を介してクリップ部11の各ガード電極26,36を接断可能となっている。具体的には、第3スイッチ41fは、処理回路41aによって接続状態に切り替えられたときには、多芯ケーブル14を介してクリップ部11の各ガード電極26,36を電気的に接続し、処理回路41aによって切断状態に切り替えられたときには、各ガード電極26,36の電気的な接続状態を解除する(電気的に分離する(切り離す))。
また、本例の電圧生成部41では、処理回路41aは、以下の3つの動作モード(第1動作モード、第2動作モードおよび第3動作モード)で動作可能に構成されている。また、処理回路41aの動作モードは、処理回路41aに入力されるモード切替信号Smで切り替え可能に構成されている。なお、このモード切替信号Smについては、モード切替信号Smを出力するモード切替用のスイッチを中継ボックス12に配設して、このスイッチから処理回路41aに出力させる構成や、このモード切替用のスイッチをクリップ部11に配設して、このスイッチから多芯ケーブル14を介して処理回路41aに出力させる構成や、このモード切替用のスイッチを測定装置本体4に配設して、このスイッチから多芯ケーブル15を介して処理回路41aに出力させる構成のいずれかを採用することができる。
まず、第1動作モードは、一対の挟み部22,32間でクリップしている電路5の電圧V1aを検出する計測動作を電圧検出センサ2に実行させるための動作モードである。この第1動作モードでは、処理回路41aは、切替処理を実行して、第1スイッチ41dおよび第3スイッチ41fを接続状態に切り替えると共に、第2スイッチ41eを切断状態に切り替える。つまり、処理回路41aは、クリップ部11のガード電極26を基準電圧生成回路41cから切り離すと共に、昇圧回路41bから出力される印加電圧V4を、クリップ部11のガード電極36に印加し、かつクリップ部11のガード電極26にガード電圧Vgとして印加し得る状態に切り替える。
また、この第1動作モードでは、処理回路41aは、この切替状態において、クリップ部11から出力される検出信号S3の電圧値を検出すると共に、この検出した電圧値に基づいて駆動信号Sd1を生成しつつ、検出信号S3の電圧値が零に近づくように駆動信号Sd1の電圧値を制御する信号生成処理を実行する。したがって、この第1動作モードでは、電圧生成部41は、検出信号S3の電圧値(すなわち、上記の電位差Vdi)が零に近づくように印加電圧V4の電圧値を制御する動作、つまり、印加電圧V4の電圧値を測定対象導体の電圧(この例では、電路5の電圧V1a)に一致させる動作を実行する。これにより、処理回路41aが第1動作モードで動作している状態において電圧出力部42から出力される電圧測定用検出信号S6は、その電圧値が印加電圧V4の電圧値(つまり、電路5の電圧V1aの電圧値)に比例した電圧値の信号として出力される状態になり、測定装置本体4側においてこの電圧測定用検出信号S6に基づいて電圧V1aの電圧値を計測可能となる。
また、第2動作モードは、電圧検出センサ2が上記の基準振幅(基準交流電圧V6の振幅と同じ振幅)の交流電圧を発生させている導体のこの交流電圧を検出しているときに、電圧検出センサ2から予め規定された基準出力振幅で電圧測定用検出信号S6が出力されるように電圧出力部42でのこの電圧測定用検出信号S6についてのゲインを設定させるゲイン設定処理を電圧検出センサ2に実行させるための動作モードである。
この第2動作モードは、一対の挟み部22,32間で測定対象導体(電路5)をクリップしていない状態、つまり、挟み部32内の検出電極34が挟み部22内のガード電極26と容量結合可能な状態(検出電極34にとって、ガード電極26が擬似的な測定対象導体となり得る状態)において実行される。この第2動作モードでは、処理回路41aは、まず、切替処理を実行して、第1スイッチ41dおよび第2スイッチ41eを接続状態に切り替えると共に、第3スイッチ41fを切断状態に切り替える。つまり、処理回路41aは、クリップ部11のガード電極26をガード電極36から切り離し、昇圧回路41bから出力される印加電圧V4はガード電極36にのみ印加され、基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6はガード電極26にのみガード電圧Vgとして印加される状態に切り替える。
次いで、この第2動作モードでは、処理回路41aは、基準信号生成処理を実行して駆動信号Sd2を生成して基準電圧生成回路41cに出力することで、基準電圧生成回路41cから基準振幅の基準交流電圧V6を出力させてガード電極26にガード電圧Vgとして印加させる。また、処理回路41aは、この基準信号生成処理と共に、クリップ部11から出力される検出信号S3の電圧値を検出すると共に、この検出した電圧値に基づいて駆動信号Sd1を生成しつつ、検出信号S3の電圧値が零に近づくように駆動信号Sd1の電圧値を制御する信号生成処理を実行する。なお、上記した第1動作モードでの電位差Vdiは、この第2動作モードでは、印加電圧V4と基準交流電圧V6との間の電位差となる。このため、第2動作モードでの電位差Vdiは印加電圧V4と基準交流電圧V6との間の電位差とする。
したがって、この第2動作モードでは、電圧生成部41は、この信号生成処理を実行することにより、検出信号S3の電圧値(すなわち、上記の電位差Vdi)が零に近づくように印加電圧V4の電圧値を制御する動作(第1動作モードのときと同じように印加電圧V4の電圧値を制御する動作)、つまり、擬似的な測定対象導体として機能しているガード電極26に印加されている基準交流電圧V6の電圧値に印加電圧V4の電圧値を一致させる動作を実行する。
また、この第2動作モードでは、処理回路41aは、この状態(上記したように第1動作モードのときと同じ動作を実行して、印加電圧V4の電圧値を基準交流電圧V6の電圧値に一致させている状態)において、電圧測定処理を実行して、電圧出力部42(具体的には、電圧出力部42の後述する第3増幅回路42b)から出力される電圧測定用検出信号S6の電圧値(振幅)を測定しつつ、ゲイン設定処理を実行して、この測定している電圧測定用検出信号S6の振幅が予め規定された基準出力振幅になるように増幅回路42bの後述するゲインを設定(調整)する。
また、第3動作モードは、基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6の振幅を予め規定された基準振幅に自動調整する動作を電圧検出センサ2に実行させるための動作モードである。この第3動作モードでは、処理回路41aは、切替処理を実行して、第1スイッチ41dを切断状態に切り替えると共に、第2スイッチ41eおよび第3スイッチ41fを接続状態に切り替える。これにより、電圧出力部42は、印加電圧V4に代えて基準交流電圧V6を検出する状態に移行する。
また、第3動作モードでは、処理回路41aは、基準信号生成処理を実行して駆動信号Sd2を生成して基準電圧生成回路41cに出力することで、基準電圧生成回路41cから基準振幅(初期設定での基準振幅)の基準交流電圧V6を出力させる。この状態において、処理回路41aは、電圧測定処理を実行して電圧出力部42(具体的には、電圧出力部42の後述する分圧回路42a)から出力される分圧電圧V5の電圧値(振幅)を測定すると共にこの測定した分圧電圧V5の電圧値に基づいて基準交流電圧V6の振幅を測定しつつ、測定している基準交流電圧V6の振幅が本来の基準振幅からずれているときには、生成している駆動信号Sd2の振幅を調整して、基準交流電圧V6の振幅を予め規定された基準振幅(本来の基準振幅)に一致させる。
これにより、処理回路41aが、基準電圧生成回路41cから基準振幅の基準交流電圧V6を出力させるための駆動信号Sd2を初期設定の振幅(電圧値)で生成したときに、例えば、処理回路41a内のD/A変換器や基準電圧生成回路41cを構成する電子部品のバラツキなどに起因して、基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6の振幅が本来の基準振幅からずれている場合であっても、この第3動作モードでの動作により、基準電圧生成回路41cから本来の基準振幅で基準交流電圧V6を出力させることが可能になる。以上のことから、まず、第3動作モードで処理回路41aを動作させて基準交流電圧V6の振幅を基準振幅に正確に一致させた後に、第2動作モードで処理回路41aを動作させて電圧出力部42でのゲインを設定するのが好ましい。
電圧出力部42は、一例として、図2に示すように、分圧回路42aおよび増幅回路42bを備え、第1動作モードおよび第2動作モードのときには、印加電圧V4を検出すると共にこの印加電圧V4の電圧値に比例した電圧値の電圧測定用検出信号S6を生成して外部(本例では、多芯ケーブル15および接続コネクタ13を介して測定装置本体4)に出力する。一方、電圧出力部42は、第3動作モードのときには、印加電圧V4に代えて基準交流電圧V6を検出すると共にこの基準交流電圧V6の電圧値に比例した電圧値の電圧測定用検出信号S6を生成して外部に出力する
分圧回路42aは、例えば複数の抵抗が直列接続されて構成されると共に、その一端は第3スイッチ41fの一端に接続され(第1スイッチ41dの他端にも接続され)、かつその他端が基準電圧G1に規定されている。この構成により、分圧回路42aは、基準電圧G1を基準として生成される印加電圧V4、および基準電圧G1を基準として生成される基準交流電圧V6のうちの各スイッチ41d〜41fの接断状態によって選択される一方の電圧を予め規定された比率で分圧することにより、分圧電圧V5を出力する。増幅回路42bは、入力している分圧電圧V5を処理回路41aによって設定されたゲインで増幅して電圧測定用検出信号S6として多芯ケーブル15に出力する。
コンバータ43は、一例として互いに電気的に絶縁された一次巻線および二次巻線を有する絶縁型のトランスと、正電圧Vc+および負電圧Vc−に基づいて作動してこのトランスの一次巻線を駆動する駆動回路と、トランスの二次巻線に誘起される交流電圧を整流平滑する直流変換部(いずれも図示せず)とを備えて、一次側の基準電圧G1や正電圧Vc+および負電圧Vc−から電気的に絶縁された二次側から、印加電圧V4を基準とするフローティング電圧としての正電圧Vf+および負電圧Vf−を出力する絶縁型電源として構成されている。なお、正電圧Vf+および負電圧Vf−は、絶対値がほぼ同一で、極性が互いに異なる直流電圧であり、多芯ケーブル14を介してクリップ部11に供給される。
測定装置本体4は、一例として、図1に示すように、ケーシング51、ケーシング51の不図示のパネル面に配設された複数の入力コネクタ(本例では一例として、2つの入力コネクタ52a,52b。以下、特に区別しないときには、入力コネクタ52ともいう)、ケーシング51内に配設された電源部53および処理部54、並びにケーシング51のパネル面に配設された表示部(例えば、液晶ディスプレイ装置など)55を備えている。
各入力コネクタ52は、複数のコンタクトを備え、そのうちの一部のコンタクトがグランド用コンタクトとして、測定装置本体4内の基準電圧G1に接続され、そのうちの他の一部が正電源用コンタクトとして、電源部53から出力される後述の正電圧Vc+および負電圧Vc−のうちの正電圧Vc+が印加され、そのうちの他の一部が負電源用コンタクトとして負電圧Vc−が印加され、そのうちの他の一部が検出電圧用コンタクトとして、電圧測定用検出信号S6が入力される。
電源部53は、例えばバッテリおよびコンバータなどで構成されて、測定装置本体4内の各構成要素のための作動用電圧(本例では一例として、測定装置本体4内の基準電圧G1を基準として、絶対値がほぼ同一で、極性が互いに異なる直流電圧である正電圧Vc+および負電圧Vc−の作動用電源。なお、各構成要素の仕様によっては、正電圧Vc+だけの場合もある)を生成する。また、この作動用電圧(本例では正電圧Vc+および負電圧Vc−)と基準電圧G1は、上記のように各入力コネクタ52における規定のコンタクトに印加される。
処理部54は、一例として、A/D変換器およびコンピュータを備えて構成されて、各入力コネクタ52から入力される電圧測定用検出信号S6をその瞬時値を示すデジタルデータに変換し、このデジタルデータに基づいて、各入力コネクタ52に接続されている電圧検出センサ2,3でクリップしている各電路5,6の電圧V1a,V1bを測定する測定処理を実行する。また、処理部54は、この測定処理において、この測定した両電圧V1a,V1bに基づいて電路5,6間の電位差(線間電圧)Vlvを測定して、この電圧V1a,V1bおよび電位差Vlvのうちの少なくとも電位差Vlvを表示部55に出力する。
次いで、測定装置1の動作について、各電圧検出センサ2,3の動作と共に説明する。最初に、2つの電路5,6間の電位差Vlv(以下、線間電圧Vlvともいう)を測定するときの動作について説明する。
まず、図1に示すように、測定装置本体4の各入力コネクタ52に電圧検出センサ2,3の各接続コネクタ13を接続する。この測定装置本体4への接続により、電圧検出センサ2,3には、測定装置本体4から多芯ケーブル15を介して基準電圧G1を基準とする作動用電圧(正電圧Vc+および負電圧Vc−)が供給され、電圧検出センサ2,3の各中継ボックス12内の電圧生成部41、電圧出力部42およびコンバータ43が動作を開始する。また、このようにして動作を開始したコンバータ43が出力する正電圧Vf+および負電圧Vf−(いずれも印加電圧V4を基準電圧Gとするフローティング電源)が、多芯ケーブル14を介して電圧検出センサ2,3の各クリップ部11に供給されて、各クリップ部11内の電圧検出部35が動作を開始する。
この状態において、各電圧検出センサ2,3のクリップ部11で対応する電路5,6をクリップする前に、まず、操作者が、モード切替用のスイッチを操作して、電圧検出センサ2,3の各中継ボックス12内の電圧生成部41の処理回路41aに対して第3動作モードで動作するためのモード切替信号Smを入力させる。この際には、各電圧検出センサ2,3は、電圧生成部41の基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6の振幅を基準振幅に正確に一致させる動作を開始する。
具体的には、電圧検出センサ2,3では、処理回路41aが上記した第3動作モードでの動作を実行して、基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6を電圧出力部42で検出し得るように、第1スイッチ41dを切断状態に切り替えると共に、第2スイッチ41eおよび第3スイッチ41fを接続状態に切り替える切替処理を実行する。また、処理回路41aは、この状態において、基準信号生成処理を実行して駆動信号Sd2を基準電圧生成回路41cに出力することで、基準電圧生成回路41cから基準振幅の基準交流電圧V6を出力させるようにする。この状態において、処理回路41aは、電圧測定処理を実行して電圧出力部42の分圧回路42aから出力される分圧電圧V5の電圧値(振幅)を測定すると共にこの測定した分圧電圧V5の電圧値に基づいて基準交流電圧V6の振幅を測定しつつ、測定している基準交流電圧V6の振幅が基準振幅からずれているときには、生成している駆動信号Sd2の振幅を調整して、基準交流電圧V6の振幅を予め規定された基準振幅(本来の基準振幅)に一致させる。
また、次いで、各電圧検出センサ2,3のクリップ部11で対応する電路5,6をクリップする前に、操作者は、モード切替用のスイッチを操作して、電圧検出センサ2,3の各中継ボックス12内の電圧生成部41の処理回路41aに対して第2動作モードで動作するためのモード切替信号Smを入力させる。この際には、各電圧検出センサ2,3は、電圧生成部41の基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6の振幅を基準振幅に正確に一致させる動作を開始する。
具体的には、電圧検出センサ2,3では、処理回路41aが上記した第2動作モードでの動作を実行して、クリップ部11のガード電極26をガード電極36から切り離し、昇圧回路41bから出力される印加電圧V4はガード電極36にのみ印加され、基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6はガード電極26にのみガード電圧Vgとして印加される状態となるように、第1スイッチ41dおよび第2スイッチ41eを接続状態に切り替えると共に、第3スイッチ41fを切断状態に切り替える切替処理を実行する。
また、処理回路41aは、この状態において、基準信号生成処理を実行して駆動信号Sd2を生成して基準電圧生成回路41cに出力することで、基準電圧生成回路41cから基準振幅の基準交流電圧V6を出力させてガード電極26にガード電圧Vgとして印加させる。また、処理回路41aは、クリップ部11から出力される検出信号S3の電圧値を検出すると共に、この検出した電圧値に基づいて駆動信号Sd1を生成しつつ、検出信号S3の電圧値が零に近づくように駆動信号Sd1の電圧値を制御する信号生成処理を実行する。この信号生成処理により、印加電圧V4の電圧値は、擬似的な測定対象導体として機能しているガード電極26の基準交流電圧V6の電圧値に一致させられる。
また、処理回路41aは、このようにして印加電圧V4の電圧値を基準交流電圧V6の電圧値に一致させている状態において、電圧測定処理を実行して、電圧出力部42から出力される電圧測定用検出信号S6の電圧値(振幅)を測定しつつ、ゲイン設定処理を実行して、この測定している電圧測定用検出信号S6の振幅が予め規定された基準出力振幅になるように増幅回路42bのゲインを設定(調整)する。これにより、電圧検出センサ2,3は、基準振幅の交流電圧が印加されている測定対象導体のこの交流電圧を検出した際に出力される電圧測定用検出信号S6の振幅が基準出力振幅になるように自動調整される。
続いて、操作者は、電圧検出センサ2のクリップ部11で電路5をクリップし、電圧検出センサ3のクリップ部11で電路6をクリップし、かつモード切替用のスイッチを操作して、電圧検出センサ2,3の各中継ボックス12内の電圧生成部41の処理回路41aに対して第1動作モードで動作するためのモード切替信号Smを入力させる。この際には、各電圧検出センサ2,3は、それぞれがクリップしている電路5,6の電圧V1a,V1bを検出する計測動作を開始する。
具体的には、電圧検出センサ2,3では、処理回路41aが上記した第1動作モードでの動作を実行して、クリップ部11のガード電極26を基準電圧生成回路41cから切り離すと共に、昇圧回路41bから出力される印加電圧V4をクリップ部11のガード電極36に印加し、かつこの印加電圧V4をクリップ部11のガード電極26にガード電圧Vgとして印加し得る状態となるように、第1スイッチ41dおよび第3スイッチ41fを接続状態に切り替えると共に、第2スイッチ41eを切断状態に切り替える切替処理を実行する。
これにより、電圧検出センサ2では、クリップ部11内の検出電極34が電路5と容量結合して、クリップ部11内の電圧検出部35が、電路5の電圧V1aと検出電極34の電圧(つまり、基準電圧G)との間の電位差Vdiに応じて電圧値が変化する検出信号S3を生成して中継ボックス12に出力する。また、電圧検出センサ3でも、クリップ部11内の検出電極34が電路6と容量結合して、クリップ部11内の電圧検出部35が、電路6の電圧V1bと検出電極34の電圧(つまり、基準電圧G)との間の電位差Vdiに応じて電圧値が変化する検出信号S3を生成して中継ボックス12に出力する。
この状態において、電圧検出センサ2では、中継ボックス12内の処理回路41aが、クリップ部11から出力される検出信号S3の電圧値を検出すると共に、この検出した電圧値に基づいて駆動信号Sd1を生成しつつ、検出信号S3の電圧値(すなわち、上記の電位差Vdi)が零に近づくように駆動信号Sd1の電圧値を制御する信号生成処理を実行する。これにより、処理回路41aが第1動作モードで動作している状態において、昇圧回路41bから出力されている印加電圧V4の電圧値は電路5の電圧V1aの電圧値に一致させられる。また、電圧検出センサ2では、中継ボックス12内の電圧出力部42が、この印加電圧V4を検出すると共にこの印加電圧V4の電圧値(つまり、電路5の電圧V1aの電圧値)に比例した電圧値の電圧測定用検出信号S6を生成して、多芯ケーブル15および接続コネクタ13を介して測定装置本体4に出力する。
また、電圧検出センサ3でも、処理回路41aが上記した電圧検出センサ2の処理回路41aと同じ動作を実行することから、昇圧回路41bから出力されている印加電圧V4の電圧値は電路6の電圧V1bの電圧値に一致させられる。また、電圧検出センサ3でも、中継ボックス12内の電圧出力部42が、この印加電圧V4を検出すると共にこの印加電圧V4の電圧値(つまり、電路6の電圧V1bの電圧値)に比例した電圧値の電圧測定用検出信号S6を生成して、多芯ケーブル15および接続コネクタ13を介して測定装置本体4に出力する。
測定装置本体4では、処理部54が測定処理を実行して、電圧検出センサ2からの電圧測定用検出信号S6に基づいて基準電圧G1を基準とした電路5の電圧V1aを測定し、また電圧検出センサ3からの電圧測定用検出信号S6に基づいて基準電圧G1を基準とした電路6の電圧V1bを測定する。また、処理部54は、この測定した電圧V1a,V1bに基づいて電路5,6間の電位差(線間電圧)Vlvを測定すると共に表示部55に出力して表示させる。これにより、電路5,6間の電位差(線間電圧)Vlvの測定が完了する。なお、本例では、基準電圧G1は大地の電圧(グランド電圧)に規定されることから、この測定処理において測定された電圧V1a,V1bは、大地の電圧を基準とした各電路5,6の電圧を表している。このため、測定した電位差(線間電圧)Vlvと共に、電路5,6の各電圧としてこの電圧V1a,V1bを表示部55に出力して表示させてもよい。一方、基準電圧G1が大地の電圧に対してフローティング状態のときには、処理部54は、電圧V1a,V1bから算出される電路5,6間の電位差(線間電圧)Vlvのみを表示させる。
また、各電圧検出センサ2,3は、処理回路41aが上記した第2動作モードおよび第3動作モードのいずれの動作モードで動作している状態においても、電圧出力部42で検出している電圧(印加電圧V4または基準交流電圧V6)の電圧値に比例した振幅の電圧測定用検出信号S6を測定装置本体4に出力する。
具体的には、処理回路41aが上記した第3動作モードで動作している状態においては、電圧出力部42は、基準交流電圧V6を検出して、その電圧値に比例した振幅の電圧測定用検出信号S6を測定装置本体4に出力する。この場合、電圧検出センサ2,3(具体的には、その基準電圧生成回路41c)が正常に動作しているときには、電圧測定用検出信号S6の振幅は、基準交流電圧V6の基準振幅に比例した基準出力振幅となる。したがって、測定装置本体4の処理部54は、この電圧測定用検出信号S6についての電気的パラメータ(例えば、振幅、平均値および実効値のうちの少なくとも1つ)を測定して、測定する電気的パラメータに対応して予め記憶されている閾値と比較することで、電圧検出センサ2,3が第3動作モードで正常に動作しているか否かの動作チェックを行う。
一般的に、電圧検出センサ2,3が正常に動作しているときに測定される電気的パラメータに対して、動作に異常があるときに測定される電気的パラメータは低くなる。このため、正常に動作しているときに測定される電気的パラメータの最小値を閾値としておくことにより、処理部54は、測定した電気的パラメータと閾値とに基づいて、電圧検出センサ2,3が第3動作モードで正常に動作しているか否かの動作チェックが可能となる。
処理部54は、このようにして行った電圧検出センサ2,3に対する動作チェックの結果を表示部55に出力する。これにより、操作者は、表示部55に表示されるチェック結果に基づいて、電圧検出センサ2,3が第3動作モードで正常に動作し得るか否かを確認することが可能になっている。
また、処理回路41aが上記した第2動作モードで動作している状態においては、電圧出力部42は、上記したように基準交流電圧V6の電圧値と同じ電圧値に一致している状態の印加電圧V4を検出して、その電圧値に比例した振幅の電圧測定用検出信号S6を測定装置本体4に出力する。このため、電圧検出センサ2,3が正常に動作しているときには、電圧測定用検出信号S6の振幅は、基準交流電圧V6の基準振幅に比例した基準出力振幅となる。したがって、測定装置本体4の処理部54が上記した第3動作モードのときと同様に動作するように構成しておくことにより、操作者は、表示部55に表示されるチェック結果に基づいて、電圧検出センサ2,3が第2動作モード(上記したように第1動作モードでの動作と同じ動作を含む動作モード)で正常に動作し得るか否かを確認することが可能になっている。
このように、この電圧検出センサ2,3では、電圧生成部41は、印加電圧V4を出力可能な昇圧回路41b、基準振幅の交流電圧を生成して基準交流電圧V6として出力可能な基準電圧生成回路41c、およびガード電極26とガード電極36とを接断する第3スイッチ41fを有すると共に、上記した第1動作モードおよび第2動作モードのうちから選択された一方の動作モードで動作可能に構成されている。
したがって、この電圧検出センサ2,3によれば(具体的には、電圧検出センサ2,3が接続された測定装置本体4、つまり測定装置1によれば)、各電圧検出センサ2,3の電圧生成部41は、第1動作モードのときには、基準電圧生成回路41cでの基準交流電圧V6の生成(基準電圧生成回路41cからの基準交流電圧V6の出力)を停止すると共に第3スイッチ41fを接続状態に移行して各ガード電極26,36を接続した状態において、検出信号S3に基づいて印加電圧V4を生成して各ガード電極26,36に印加しつつ検出信号S3の電圧値(上記の電位差Vdi)が零に近づくように印加電圧V4の電圧値を制御するように動作することにより、電圧検出センサ2では電路5の電圧V1aの電圧値、また電圧検出センサ3では電路6の電圧V1bの電圧値に比例した電圧値の電圧測定用検出信号S6をそれぞれ生成して、多芯ケーブル15および接続コネクタ13を介して測定装置本体4に出力することができる。
また、この電圧検出センサ2,3によれば(具体的には、電圧検出センサ2,3が接続された測定装置本体4、つまり測定装置1によれば)、各電圧検出センサ2,3の電圧生成部41は、第2動作モードのときには、第3スイッチ41fを切断状態に切り替えて各ガード電極26,36を切り離すと共に基準電圧生成回路41cでの基準交流電圧V6の生成(基準電圧生成回路41cからの基準交流電圧V6の出力)を開始してガード電極26に出力し、かつ検出信号S3に基づいて印加電圧V4を生成してガード電極36に印加しつつ検出信号S3の電圧値(上記の第2動作モードにおける電位差Vdi)が零に近づくように印加電圧V4の電圧値を制御する動作、つまり、擬似的な測定対象導体として機能しているガード電極26の基準交流電圧V6の電圧値に印加電圧V4の電圧値を一致させる動作を実行して、基準交流電圧V6の基準振幅に比例した振幅(基準出力振幅)の電圧測定用検出信号S6を測定装置本体4に出力することができる。
また、この際に、この電圧検出センサ2,3が接続された測定装置本体4には、第2動作モードで動作する電圧検出センサ2,3から出力される基準出力振幅の電圧測定用検出信号S6に基づいて測定装置本体4内の処理部54が実行した電圧検出センサ2,3についての動作チェック結果が表示されるため、操作者は、信号発生装置などを別途用意することなく、電圧検出センサ2,3および測定装置本体4だけで、電圧検出センサ2,3が第2動作モード(第1動作モードでの動作と同じ動作を含む動作モード)で正常に動作しているか否かをこのチェック結果に基づいてチェックすることができる。したがって、この電圧検出センサ2,3およびこの電圧検出センサ2,3を備えた測定装置1によれば、電圧検出センサ2,3の動作チェックに際して、信号発生装置などを別途用意する必要が無いことから、動作チェックに掛かる手間およびコストを十分に低減することができる。
また、この電圧検出センサ2,3では、電圧生成部41は、上記した第2動作モードのときに、電圧測定用検出信号S6の振幅を検出しつつこの振幅が予め規定された基準出力振幅となるように電圧出力部42内の増幅回路42bのゲインを設定する。したがって、この電圧検出センサ2,3によれば(具体的には、電圧検出センサ2,3が接続された測定装置本体4、つまり測定装置1によれば)、信号発生装置などを別途用意することなく、自身の電圧測定用検出信号S6についての振幅の調整(具体的には、増幅回路42bのゲイン(増幅率)についての調整)を自動的に実行することができる。つまり、電圧検出センサ2,3から出力される電圧測定用検出信号S6についての自動調整を可能にすることができる。
また、この電圧検出センサ2,3では、電圧生成部41は、第1動作モードおよび第2動作モードに加えて第3動作モードで動作可能に構成されて、この第3動作モードのときには、印加電圧V4の生成(出力)を停止し、第3スイッチ41fを接続状態に移行し、かつ基準電圧生成回路41cでの基準交流電圧V6の生成(出力)を開始して各ガード電極26,36に出力しつつ、印加電圧V4に代えて基準交流電圧V6を検出している電圧出力部42から出力される分圧電圧V5の電圧値に基づいて測定される基準交流電圧V6の振幅を基準振幅に一致するように調整する。
したがって、この電圧検出センサ2,3によれば(具体的には、電圧検出センサ2,3が接続された測定装置本体4、つまり測定装置1によれば)、第2動作モードのときに基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6の振幅を基準振幅に正確に一致させることができるため、電圧検出センサ2,3の第2動作モードでの動作チェックをより正確に実施することができる。
なお、上記の例では、電圧検出センサ2,3は、第2動作モードでの動作のときに、印加電圧V4の電圧値を基準交流電圧V6の電圧値に一致させる動作と共に、印加電圧V4の電圧値を基準交流電圧V6の電圧値に一致させている状態において、電圧測定用検出信号S6の振幅が基準出力振幅となるように電圧出力部42内の増幅回路42bのゲインを設定する動作を実行する構成を採用しているが、例えば、増幅回路42bのゲインが製造時の調整作業において正確に設定可能であるときのようにその後のゲイン調整が不要なときには、第2動作モードでの電圧出力部42についてのゲイン設定動作の実行を省略することができる。
また、上記の例では、電圧検出センサ2,3は、第1および第2動作モードに加えて、第3動作モードで動作可能に構成されているが、基準電圧生成回路41cから出力される基準交流電圧V6の振幅が初期の設定のままで十分に基準振幅に近いものであるときには、第3動作モードでの動作を行わない構成とすることもできる。
また、このように、電圧出力部42についてのゲイン設定動作の実行や、第3動作モードでの動作を省略した構成においても、測定装置本体4内の処理部54が、第2動作モードで動作する電圧検出センサ2,3から出力される電圧測定用検出信号S6に基づいて電圧検出センサ2,3についての動作チェックを実行してその結果を表示させることができるため、操作者は、信号発生装置などを別途用意することなく、電圧検出センサ2,3および測定装置本体4だけで、電圧検出センサ2,3が正常に動作しているか否かをチェックすることができる。
また、上記の例では、測定装置1は、測定装置本体4に2つの電圧検出センサ2,3を接続して2つの電路5,6間の電位差(線間電圧)Vlvを測定する電圧測定装置として構成されているが、測定装置本体4に1つの電圧検出センサ(電圧検出センサ2または電圧検出センサ3)を接続した構成においても、この1つの電圧検出センサを上記した第1動作モードに加えて、第2動作モードおよび第3動作モードで動作させることができるため、上記した第2動作モードおよび第3動作モードでの動作において実施し得る動作チェックや、基準交流電圧V6の基準振幅の設定や、電圧出力部42のゲイン設定などを自動的に実行させることができる。
また、上記の電圧検出センサ2,3では、中継ボックス12内にコンバータ43を設ける構成を採用しているが、これに限定されるものではなく、クリップ部11内にコンバータ43を設ける構成を採用することもできる。この構成においては、クリップ部11内のコンバータ43は、中継ボックス12から多芯ケーブル14を介して、基準電圧G1を基準とする正電圧Vc+および負電圧Vc−に基づいて作動して、その二次側から印加電圧V4を基準とするフローティング電圧としての正電圧Vf+および負電圧Vf−を出力して、クリップ部11内の各構成要素に供給する。
また、この測定装置1は、電圧測定機能以外に電流測定機能を備える構成であってもよく、さらには、測定した電圧値および電流値に基づいて抵抗を測定する抵抗測定機能や電力を測定する電力測定機能などの他の測定機能を備える構成であってもよい。