以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のエンジンシステムの概略構成図である。図1を用いてエンジンシステムを先に概説する。
エンジン1はガソリンエンジンで、図示しない車両に搭載されている。エンジン1には、吸気通路4、排気通路11を備える。上記の吸気通路4は、吸気管4a、吸気コレクタ4b、吸気マニホールド4cで構成される。
吸気コレクタ4bのすぐ上流の吸気管4aにはアクセルペダルの踏込量に応動する電子制御のスロットル装置5を備える。スロットル装置5は、スロットルボディ6、スロットルボディ6内部に配置される弁体、弁体を駆動するためのアクチュエータ8で構成される。スロットルボディ6の内部には例えば弁体としてのバタフライ弁7が配置される。スロットルボディ6の外周にアクチュエータとしてのモータ(回転電機)8が取り付けられている。
吸入空気は吸気管4aを経てスロットル装置5によって調量される。調量された空気は吸気コレクタ4bに蓄えられ、この吸気コレクタ4bから吸気マニホールド4cを介して各気筒のシリンダ9(燃焼室)に分配供給される。実施形態は電子制御のスロットル装置の場合であるが、スロットルバルブとアクセルペダルとがワイヤーにより連結されたものであってよい。
燃料噴射弁47が吸気マニホールド4cに、点火プラグ48がシリンダ9に直接臨んでそれぞれ設けられ、燃料噴射弁47から燃料が吸気マニホールド4c(吸気ポート)に噴射される。噴射された燃料は、スロットル装置5によって調量された空気と混合してガスとなり、このガスを点火プラグ48で着火して燃焼させる。燃焼するガスはピストン10を押し下げる仕事をした後、排気通路11に排出される。燃料噴射弁47を設ける位置は吸気マニホールドに限らない。シリンダ9に直接臨ませて燃料噴射弁を設けるものであってよい。
排気通路11は、各気筒のシリンダ9からの排気が流入する排気マニホールド11a、この排気マニホールド11aの集合部に接続される排気管11bで構成される。排気中にはHC、CO、NOxの有害三成分を含むので、これらを全て浄化するため排気管11bにマニホールド触媒12を、それよりも下流の排気管11bにメイン触媒13を備えている。メイン触媒13は例えば車両の床下に設けられる。これら各触媒12,13は例えば三元触媒で構成される。排気管11bの末端にはマフラー29を備えている。
エンジン1には、さらにターボ過給機21を備える。ターボ過給機21は、排気管11bに設けられるタービン22、吸気管4aに設けられるコンプレッサ25、これらタービン22,コンプレッサ25を接続する軸28で構成される。タービン22は、主にタービンハウジング23、タービンホイール24から構成され、タービンハウジング23の内部にタービンホイール24が配置されている。一方、コンプレッサ25は、主にコンプレッサハウジング26、コンプレッサホイール27から構成され、コンプレッサハウジング26の内部にコンプレッサホイール27が配置されている。
上記タービン22は排気管11bを流れる排気のエネルギにより回転し、タービン22と同軸のコンプレッサ25を駆動する。コンプレッサ25はエアクリーナ47を介して吸入される吸入空気を圧縮する。圧縮されて大気圧を超える加圧空気は、吸気コレクタ4bへと送られる。ターボ過給機21を働かせることで、目標過給圧を得ることができる。
ターボ過給機21には、タービン22をバイパスするバイパス通路41と、このバイパス通路41を開閉する常閉のウェイストゲートバルブ42を備える。ウェイストゲートバルブ42はハウジングとしての本体43、本体43内部に配置される弁体、弁体を駆動するためのアクチュエータで構成される。本体の内部には例えば弁体としてのスイングバルブ44が配置される。本体43の外周にアクチュエータとしてのモータ(回転電機)45が取り付けられている。
例えば、過給圧センサにより検出される実過給圧が目標過給圧より高くなったときには、モータ45を駆動することによりウェイストゲートバルブ42を開いてタービン22に流入する排気の一部を、タービン22をバイパスさせて流す。これによって、タービン回転速度がウェイストゲートバルブ42を開く前より低下し、タービン22と同軸のコンプレッサ回転速度も低下する。コンプレッサ回転速度が低下すると実過給圧が低下してゆき目標過給圧と一致する。実過給圧が目標過給圧と一致するタイミングでウェイストゲートバルブ42の開度を保持させる。
吸気コレクタ4bには、水冷式のインタークーラ51を備える。インタークーラ51はコンプレッサ25により圧縮された空気を、冷却水通路を流れる冷却水によって冷却するためのものである。詳細には、インタークーラ51は冷却水通路、その外周に設けられる空気通路から構成される。インタークーラ51の冷却水通路と空冷のサブラジエータ52とが冷却水通路53,54で接続されている。サブラジエータ52は、例えば、エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータと直列に配置され、走行風が通過するようになっている。冷却水通路53には、冷却水を循環させるためのポンプ55を備える。
サブラジエータ52では、インタークーラ51から運ばれてくる冷却水を走行風で冷却する。サブラジエータ52で冷やされた冷却水は、インタークーラ51に導かれる。インタークーラ51では、コンプレッサ25による空気圧縮によって温度上昇した空気と冷却水通路を流れる冷却水との間で熱交換を行い、空気を冷却する。コンプレッサ25による空気圧縮によって温度上昇した空気がインタークーラ51によって冷却されることで、過給効率を高めることができる。
ターボ過給機21を備えているエンジン1においても、過給域におけるノッキングの抑制のため、ロープレッシャループEGR装置(以下「低圧のEGR装置」という。)14を備える。低圧のEGR装置14は、EGR通路15、EGR通路15に介装されるEGRクーラ16、EGR通路15を開閉するEGR弁17で構成される。
EGR弁17は、ハウジングとしての本体18、本体18内部に配置される常閉の弁体、弁体を駆動するためのアクチュエータで構成される。本体18の内部には例えば弁体としてのバタフライ弁19が配置される。本体18の外周にアクチュエータとしてのモータ(回転電機)20が取り付けられている。
上記のEGR通路15は、タービン22下流の排気管、具体的にはマニホールド触媒12とメイン触媒13の間の排気管11bから分岐され、コンプレッサ23上流の吸気管4aに合流している。
EGR弁17が開かれる運転域がEGR領域として予め設定されており、エンジンの運転点がEGR領域に入ると、EGR弁17が開かれる。これによって、EGR通路15を介してタービン22下流の排気管11bとコンプレッサ25上流の吸気管4aとを連通する。このとき、タービン下流の排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との差圧でガス(排気の一部)がEGR弁17を流れる。タービン下流の排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との差圧は例えば1kPa程度ときわめて小さいので、低圧のEGR装置と呼ばれる。
排気管11bからEGR通路15に分岐して流れる排気の一部を「EGRガス」という。また、排気管11bからEGRガスをEGR通路15に取り出すので、EGR通路15の排気管11bへの開口端を「EGRガス取出し口」という。EGRガス取出し口には符号Aを付す。EGR通路15からEGRガスを吸気管4aに吐出するので、EGR通路15の吸気管4aへの開口端を「EGRガス吐出口」という。EGRガス吐出口には符号Bを付す。
上記のEGRクーラ16は水冷式で、EGR弁17上流のEGR通路15に設けられる。水冷式のEGRクーラ16はEGRガスを冷却水で冷却するものである。このため、EGR領域では冷却されたEGRガスがEGR弁17を流れる。EGRクーラ16の冷却対象がEGRガスであるのに対して、上記インタークーラ51の冷却対象がEGRガスを含んだ空気である点で相違するものの、構成そのものは、EGRクーラ16とインタークーラ51の両者でそれほど変わらない。このため、EGRクーラ16についての詳細な説明は省略する。
低圧のEGR装置14では、EGR領域のうち特に低負荷側の領域でEGR弁17の前後差圧が小さくなり、EGRガス吐出口BからEGRガスを吸気管4aに十分に吐出することができない。これに対処するため、EGRガス吐出口Bよりも上流の吸気管4aに差圧デバイス50を備える。差圧デバイス50はハウジングとしての本体51、本体51内部に配置される常開の弁体、弁体を駆動するためのアクチュエータで構成される。本体51の内部には例えば弁体としてのバタフライ弁52が配置される。本体51の外周にアクチュエータとしてのモータ(回転電機)53が取り付けられている。
EGR領域のうち低負荷側の領域が差圧デバイス作動域として予め設定されており、エンジンの運転点が差圧デバイス作動域に入ると、差圧デバイス50が全開位置より所定の開度へと閉じられる。これによって、EGRガス吐出口Bの吸入空気の圧力が、差圧デバイス50が全開位置にあるときより減少する。その減少分だけEGR弁17の前後差圧が大きくなってEGRガス吐出口Bから吐出されるEGRガス量が増える。これは、EGRガス吐出口Bから吐出されるEGRガス量は、EGR弁17の開口面積とEGR弁17の前後差圧に比例するので、EGR弁17の前後差圧が大きくなると、その分、EGRガス吐出口Bから吐出されるEGRガス量が増えるためである。このように、EGR領域のうち低負荷側の領域において差圧デバイス50を作動させることによって、EGR弁17の前後差圧が確保される。
さらに、コンプレッサ23をバイパスするバイパス通路31を備える。バイパス通路31には、リサーキュレーションバルブ32が設けられている。リサーキュレーションバルブ32はハウジングとしての本体33、本体33内部に配置される弁体、弁体を駆動するためのアクチュエータで構成される。本体33の内部には例えば弁体としてのバタフライ弁34が配置される。本体33の外周にアクチュエータとしてのモータ(回転電機)35が取り付けられている。
このバルブ32は、車両減速のためスロットル装置5が閉じられた際に、スロットル装置5からコンプレッサ25までの吸気管4aに閉じ込められた加圧空気をコンプレッサ25上流側に再循環(リサーキュレーション)させるためのものである。一方、車両減速時以外の運転域でターボ過給機21により過給が行われている場合には、バルブ32が基本的に全閉保持され、コンプレッサ25の上流側の空気(EGRガスを含む)の全てがコンプレッサ25に導かれる。
上記のエンジン1は車両に横置きされる、いわゆる横置きエンジンである。つまり、車両の前後方向に対してクランク軸が直角方向に位置するようにエンジン1が搭載されている。かつ、車両は前輪駆動車であるため、車両の前方にエンジン1が搭載されている。これでエンジンシステムの概説を終了する。
図2は上記の横置きエンジン1を上から見た全体図、図3は上記の横置きエンジン1を車両後方側から見た全体図である。ただし、図2,図3には図1に示した各エンジン部品のうちから、本発明に関係しないエンジン部品の記載を省略している。
逆に言うと、図2,図3にはエアクリーナ47からコンプレッサ25まで、吸気コレクタ4b、吸気マニホールド4cの吸気系部品、排気マニホールド11aからマニホールド触媒12までの排気系部品が記載されている。これらの他に記載されている部品は、低圧のEGR装置14、ターボ過給機21、差圧デバイス50である。そして、本発明の要部は、これら部品のレイアウト(配置)にある。
ここで、排気が内部を通る部品を「排気系部品」で定義すると、排気系部品には、排気マニホールド11a、排気管11b、マニホールド触媒12のほか、低圧のEGR装置14が含まれる。この場合、低圧のEGR装置14を除く他の排気系部品は排気熱が多くなるほど温度が上昇していく特性であるが、水冷式のEGRクーラ16は内部を冷却水が流れるため、排気熱が多くなるほど温度が上昇していくものの、ある温度以上に上昇することがない。言い換えると、水冷式のEGRクーラ16は内部の循環冷却水による吸熱作用を有している。EGRクーラ16の下流側に隣接するEGR弁17も、熱的にはEGRクーラ16と同様である。そこで、本実施形態では、低圧のEGR装置14は排気系部品に含めないものとする。また、熱的に大きなマスを占めるのは、排気マニホールド11a、排気管11b、マニホールド触媒12であるので、以下では、排気系部品といえば主にこれら3つ(11a,11b,12)を意味しているものとする。なお、触媒12を設けてあることは必ずしも必須でない。触媒12を設けていない場合に熱的に大きなマスを占めるのは、排気マニホールド11a及び排気管11b(つまり排気通路11)である。
説明を簡単にするため、図2,図3に示す横置きエンジン1はほぼ直立しているものとする。エンジン1はたとえば直列4気筒エンジンである。図2には透視したシリンダの位置を破線で示し、各シリンダに気筒番号を付しているが、各シリンダが直接見えているわけでない。直列エンジンであるので、4つの気筒が一列に並んでいる。
シリンダブロック、シリンダブロックの上部に設けられるシリンダヘッド、シリンダヘッドの上部に設けられる動弁機構などの全体を「エンジンブロック」で定義する。そして、エンジンブロック61を簡略化して直方体で記載している。ここで、シリンダヘッドの最上部に設けられるシリンダヘッドカバーは、シリンダヘッドに含まれているものとする。見栄えと静粛性を向上させるため、シリンダヘッドカバーのさらに上部にエンジンカバーが設けられることがある。エンジンカバーが設けられるときには、このエンジンカバーもシリンダヘッドに含まれているものとする。要は、エンジンカバーが設けられていないときにはシリンダヘッドカバーがエンジンブロック61の上面61dとなり、エンジンカバーが設けられているときにはエンジンカバーがエンジンブロックの上面61dとなるものとする。図2では左右方向がエンジンブロック61の気筒列方向となり、気筒列方向の右側が横置きエンジン1の前側、気筒列方向の左側が横置きエンジン1の後ろ側となる。
横置きエンジン1を上から見たとき、エンジンブロック61の気筒列を中心にして、車両前方側(気筒列方向に直交する方向の一方の側)の側面61aに吸気系部品が、車両後方側(気筒列方向に直交する方向の他方の側)の側面61bに排気系部品が配置される。以下、エンジンブロック61の車両前方側の側面を、単に「車両前方側面」という。 エンジンブロック61の車両後方側の側面を、単に「車両後方側面」という。すなわち、横置きエンジン1を上から見たとき、図2に示したように吸気コレクタ4b及び吸気マニホールド4cが車両前方側面61aに、排気マニホールド11aが車両後方側面61bにそれぞれ取り付けられている。排気マニホールド11aは、横置きエンジン1を車両後方側から見たときには図3に示したように車両後方側面61bの上方において水平方向に位置している。
このように、横置きエンジン1において車両前方側に吸気系部品を、車両後方側に排気系部品をそれぞれ配置するレイアウトは、「前方吸気・後方排気レイアウト」といわれる。一方、横置きエンジン1において車両後方側に吸気系部品を、車両前方側に排気系部品を配置するレイアウトは、「前方排気・後方吸気レイアウト」といわれる。本実施形態では、前方吸気・後方排気レイアウトの場合で説明するが、前方排気・後方吸気レイアウトの場合にも本発明の適用がある。トランスミッション62はエンジンブロック61の後面61cに接続されている。
横置きエンジン1を車両後方側から見たとき、車両後方側面61bの、排気マニホールド11aより下方にターボチャージャ21が設けられる。この場合、エアクリーナ47とコンプレッサ25をエンジンブロック61の気筒列方向の反対側に配置するため、コンプレッサ25を気筒列方向のエンジン前方側に、タービン22を気筒列方向のエンジン後方側に配置する。
横置きエンジン1を車両後方側から見たとき、タービン22の気筒列方向のエンジン後方側の隣にマニホールド触媒12を設け、タービン22の出口とマニホールド触媒12の入口を排気管11bで接続する。マニホールド触媒12が円柱状であるときには、横置きエンジン1を車両後方側から見たとき、図3に示したように水平方向に設ける。
気筒列方向のエンジン前方側にあるコンプレッサ25の入口には吸気管4aを接続する。横置きエンジン1を車両後方側から見たとき、図3に示したようにコンプレッサ25の入口に接続した吸気管4aを、上方に向かってまっすぐ立ち上がらせた後に折り曲げる。折り曲げた後には、エンジンブロックの上面61dよりも上側を気筒列方向のエンジン後方側に向かって延びるように吸気管4aを設ける。吸気管4aの上流端を、エンジンブロック61の後面61cを少し出るところまで延ばし、吸気管4aの上流端にエアクリーナ47を設ける。これによって、エアクリーナ47からコンプレッサ25までの吸気管距離を確保する。
エアクリーナ47とコンプレッサ25をエンジンブロック61の気筒列方向の反対側に配置する理由は次の通りである。すなわち、EGRガス吐出口Bの位置がコンプレッサ25に近すぎるときには、温度の高いEGRガスがコンプレッサ25までの吸気管4a内で十分に拡散しないままにコンプレッサ25に流入する。これによって、コンプレッサハウジング26の熱膨張の不均等(不均一)が発生する。すると、コンプレッサホイール27とコンプレッサハウジング26とのクリアランスが不均等になるためにコンプレッサ25の効率が低下してしまう。その一方で、EGRガス吐出口Bの位置が差圧デバイス50に近いときには、エンジン停止時のEGRガスの吹き返しで差圧デバイス50が汚れることが懸念される。こうした事態を回避するには、EGRガス吐出口Bから吐出されたEGRガスが吸気管4a内で吸入空気(新気)中に十分に拡散してからコンプレッサ25に流入するように、EGRガス吐出口Bからコンプレッサ25までの間の吸気管4aの管距離を長くすることである。また、エンジンの停止時にEGRガスの吹返しで差圧デバイス50が汚れるのを防ぐため、差圧デバイス50からEGRガス吐出口Bまでの間の吸気管4aの管距離を長くすることである。そこで、差圧デバイス50からコンプレッサ25までの吸気管の管距離が確保されるように、エアクリーナ47とコンプレッサ25をエンジンブロック61の気筒列方向の反対側に配置するのである。
かつ、エアクリーナ47とコンプレッサ25を接続する吸気管4aは、横置きエンジン1を上から見たとき、エンジンブロック61の上面61dより上部であって排気系部品側に配置する。すなわち、エンジンブロックの上面61dより上側であって、排気系部品が取り付けられている部位から所定のスペースを置いた上側を気筒列方向のエンジン後方側に向かって延びるように、エアクリーナ47とコンプレッサ25を接続する吸気管4aを設ける。エアクリーナ47とコンプレッサ25を接続する吸気管を、以下「コンプレッサ上流側吸気管」という。そして、図3に示したようにコンプレッサ上流側吸気管4aのうち、排気系部品との間に所定のスペースを持たせたほぼ真上の位置に差圧デバイス50を設けると共に、上記のスペースにEGRクーラ16を設ける。
ここで、図2において、コンプレッサ上流側吸気管4aを記載すると、当該吸気管4aの下方に配置される排気系部品との位置関係が不明となってしまう。このため、図2においてコンプレッサ上流側吸気管4aは仮想線(破線)で記載し、排気系部品(11a,11b,12)との位置関係が明確になるようにしている。すなわち、車両後方側面61bに排気マニホールド11aが取り付けられている。また、排気マニホールド11aから車両後方側に飛び出すようにしてターボ過給機21と排気管11bとマニホールド触媒12がほぼ一列にかつエンジンブロック61の気筒列と平行に設けられている。そして、排気マニホールド11aと排気管11bとマニホールド触媒12の全体のほぼ中央の上方に、エアクリーナ47とコンプレッサ25を接続する吸気管4aを位置させている(図2の破線参照)。差圧デバイス50は、図2では排気マニホールド11aの中央の一部とマニホールド触媒12の一部の両方にかかる位置の上部に存在する。差圧デバイス50の下方にはEGRクーラ16とEGR弁17の見えており、EGRクーラ16が差圧デバイス50との排気系部品(11a,11b,12)との間の上下方向の空間に配置されていることがわかる。
コンプレッサ上流側吸気管4aのうち、排気系部品との間に所定のスペースを持たせたほぼ真上の位置に差圧デバイス50を設けると共に、上記のスペースにEGRクーラ16を設ける理由は次の通りである。すなわち、低圧のEGR装置14の場合、EGRガス吐出口Bはコンプレッサ25と差圧デバイス50の間の吸気管4aに設けられるため、エンジンのキーオフ時にはEGR弁17の隙間からの排気中の水蒸気雰囲気によって差圧デバイス50が結露にさらされる。この結露によって外気温が低い地域でバタフライ弁52や回動軸54の可動部分で氷結が生じる。そのため、差圧デバイス50を吸気系部品の上方やトランスミッション62の上方に配置するときには、外気温が低い地域でエンジンの暖機完了後もバタフライ弁52や回動軸54の可動部分で氷結が解消されない。バタフライ弁52や回動軸54の可動部分で氷結が解消されるまでのしばらくの間、低圧のEGR装置14の作動を開始できないのである。その一方で、排気系部品の近傍に差圧デバイス50を設けたのでは、エンジンの高負荷時に差圧デバイス50が過剰な高温雰囲気に晒されてしまう。従って、エンジンの冷間始動時には差圧デバイス50の早期暖機を行って、バタフライ弁52や回動軸54の可動部分での氷結を解消してやる必要がある。このため、差圧デバイス凍結防止用に温水配管システムを採用するのでは、コストが上昇してしまう。また、エンジンの高負荷時には排気の輻射熱の影響を緩和してやる必要がある。
一方、排気系部品(11a,11b,12)と差圧デバイス50の間の上下方向のスペースにEGRクーラ16を設けることで、エンジンの冷間始動時にはEGRクーラ16及び排気系部品に排気が流れるため、EGRクーラ16及び排気系部品の温度が上昇する。EGRクーラ16及び排気系部品の温度が上昇すると、EGRクーラ16及び排気系部品から排気の輻射熱が四方に放出される。この場合、EGRクーラ16や排気系部品から上方に向かう排気の輻射熱により、差圧デバイス50が早期に暖機される。この差圧デバイス50の早期の暖機によって、バタフライ弁52や回動軸54の可動部分での氷結が解消される。
一方、エンジンの高負荷時には排気系部品からの排気の輻射熱が多量となり、この多量の輻射熱に差圧デバイス50を晒したのでは、差圧デバイス50の性能に影響が出かねない。このため、EGRクーラ16と排気系部品との間に遮熱部材を設けることが考え得るが、遮熱部材を設けるのではコストが上昇してしまう。
一方、本実施形態では、排気系部品(11a,11b,12)と差圧デバイス50の間の上下方向のスペースに設けたEGRクーラ16が高負荷時における遮熱部材として機能する。すなわち、EGRクーラ16が差圧デバイス50と排気系部品との間に介在するので、EGRクーラ16が、差圧デバイス50に対する排気系部品からの多量の輻射熱を遮断する。EGRクーラ16によって、排気系部品からの排気の輻射熱を遮ることで差圧デバイス50の過熱を回避できるのである。この場合、EGRクーラ16が排気系部品(11a,11b,12)と同じに排気の熱の吸収量に応じて温度上昇するだけの部品であれば、高負荷時におけるEGRクーラ16からの排気の輻射熱で差圧デバイス50が過熱状態となり得る。しかしながら、実際にはそうならない。すなわち、EGRクーラ16の外部が高負荷時に排気の輻射熱で高温となっても、この高温の熱は内部のEGRガスに伝わり、EGRガスが高温化する。すると、EGRクーラ16では高温となったEGRガスとの間で冷却水が熱交換を行うので、高温となったEGRガスの温度を下げる。つまり、冷却水によってEGRクーラ16の全体の温度が下がる。EGRクーラ16内部の循環冷却水による吸熱作用により、差圧デバイス50の雰囲気温度の上昇を抑えるのである。こうして、高負荷時には水冷式のEGRクーラ16が遮熱部材として機能するので、エンジン高負荷時の差圧デバイス50の過熱を回避することができる。このように、排気系部品との間にスペースを持たせたほぼ真上に差圧デバイス50を設けると共に上記スペースにEGRクーラ16を設けたのは、冷間始動時の差圧デバイスの早期暖機と、高負荷時の差圧デバイスの過熱回避とを両立するためである。
図3では、EGRクーラ16の全体が細長い円柱状に形成されている場合を示しているが、EGRクーラ16の全体の形状がこの形状に限定されるものでない。EGRクーラ16は様々な形状を取り得るので、様々な形状のEGRクーラ16を差圧デバイス50と排気系部品との間のスペースを通る(遮る)ように設けてやればよい。
次に、EGRクーラ16に隣接させてEGR弁17を設ける。上記のようにEGRクーラ16内部の循環冷却水による吸熱作用により、差圧デバイス50の雰囲気温度の上昇を抑えるので、EGR弁17をもEGRクーラ16に隣接させて設けることで、EGR弁17の作動が保証されるのである。
さて、横置きエンジン1を車両後方側から見たとき、図3に示したように差圧デバイス50はエンジンブロックの上面61dより上方に、マニホールド触媒12は車両後方側面61aの下方に設けられている。このため、EGRガス吐出口BがEGRガス取出し口Aより上方に位置している。この場合に、横置きエンジン1を車両後方側から見たとき、EGRクーラ16の下流側端16aが、EGRクーラ16の上流側端16bよりも上方に位置するように、EGRクーラ16を傾斜させて設ける。図3に示したように、円柱状のEGRクーラ16の中心を通る線(一点鎖線で示す)と気筒列方向に引いた水平線(一点鎖線で示す)とのなす角度である鋭角が所定値α(0°<α<90°)となるようにするのである。
EGR通路15が、EGRクーラ16より上流側のEGRガス入口管15a、EGR弁17より下流側のEGRガス出口管15bで構成されるとする。このようにEGR通路15を上流側と下流側で区別すると、EGRガス入口管15aは、マニホールド触媒12の下流端12aとEGRクーラ16の上流側端16bとを接続するため、折り曲げて形成する。一方、EGRガス出口管15bは、EGR弁17の下流側端17aと、差圧デバイス50下流の吸気管4aとを接続するため、折り曲げて形成する。このように横置きエンジン1を車両後方側から見たとき、図3に示したようにEGRクーラ16を傾斜させて設けた理由は、EGRガス入口管15aとEGRガス出口管15bの管長さをより短く抑えるためである。
図4は、差圧デバイス50及びその下流側の吸気管4aの吸入空気の流れに沿う縦断面図である。図5は流れの下流側から差圧デバイス50のバタフライ弁52を見た吸入空気の流れに直交する断面図である。ここでは、図5に示したように吸入空気の流れに直交する断面で見たとき、バタフライ弁52の回動軸54が水平方向に配置されているものとする。かつ、図4に示したように吸入空気の流れに沿う断面で見たとき、バタフライ弁52が全開位置から所定の開度(部分開度)βにまで閉じられているものとする。
EGRガスは吸入空気に比べて高温であるため、EGRガス吐出口Bから吸気管4aに吐出して吸気管4a内で吸入空気とすぐに混ざらないときには、EGRガスと接する部位の吸気管4aの内壁が部分的に高温に晒される。これに対処するため、EGRガス吐出口B付近の吸気管4aを高温対応材料にするのでは、高温対応材料が高額なためコストが上昇する。
そこで本実施形態では、EGRガス吐出口Bから吐出されたEGRガスを吸気管内4aの空間に早期に拡散(分散)させるため、部分開度βのバタフライ弁52の下流に発生する剥離渦を利用する。これについて説明する。バタフライ弁52を図4に示した部分開度βまで閉じることによって、バタフライ弁52の外周52aと、円筒状の本体51の内周51aとの間の隙間を通って吸入空気が上流側(図4で左側)から下流側(図4で右側)へと流れる。このとき、回動軸54近くの隙間領域R1ではバタフライ弁52の外周52aと本体内周51aとの間の隙間を通過する吸入空気に剥離渦Vが多数発生し、発生した多数の剥離渦Vが渦の状態を保存しつつ吸入空気の流れに乗って下流側へと移動していく。剥離渦Vはバタフライ弁52の外周52aと本体内周51aとの間の隙間で発生して直ぐに消滅するものでなく、渦の状態で保存されつつ、吸入空気の流れに乗って下流側にある距離を流れた後に消滅するのである。一方、回動軸54からある程度離れた隙間領域R2ではバタフライ弁52の外周52aと本体内周51aとの間の隙間を通過する吸入空気に剥離渦Vがもはや発生せず、渦のない整流された状態で吸入空気が移動してゆく(図4の長い矢印参照)。以下、流れの下流側からバタフライ弁52を見たとき、図5に示したように回動軸54を中心にしてバタフライ弁52の外周52aと本体内周51aとの間の隙間を通過する吸入空気に剥離渦が発生する隙間領域R1を「剥離渦主発生領域」という。バタフライ弁52の外周52aと本体内周51aとの間の隙間を通過する吸入空気に剥離渦が発生しない隙間領域R2を「主流領域」という。
部分開度βのバタフライ弁52の下流では、主流領域R2と剥離渦主発生領域R1が円筒状の本体51の周方向に分布して生じる。この場合、流れの下流側から見たとき、図5に示したように主流領域R2と剥離渦主発生領域R1が左右対称な位置に生じる。詳細には、図5に示したように、右半分の領域では水平方向に位置する回動軸54を中心にして、上下に所定の角度γ/2ずつの範囲が剥離渦主発生領域R1、上下に残る範囲が主流領域R2の右半分となる。同様に、左半分の領域では水平方向に位置する回動軸54を中心にして、上下に所定の角度γ/2ずつの範囲が剥離渦主発生領域R1、上下に残る範囲が主流領域R2の左半分となる。
この場合、回動軸54から下流側に所定距離だけ離れた断面で見たときには、2つの領域R1,R2の範囲がそれぞれ角度γ、δと必ずしも一致しているわけでない。しかしながら、回動軸54の近辺で生じた2つの領域R1,R2の範囲が、流れに沿う方向の下流側に回動軸54より所定の長さL0の範囲でそのまま保存されるとみなすことができる。つまり、2つの領域の境界R1,R2が回動軸54より所定の長さL0の範囲でそのまま保存されるわけである。
このように流れに直交する断面及び流れに沿う断面で2つの領域R1,R2に区別したとき、主流領域R2と剥離渦主発生領域R1の境界付近であって回動軸54より所定の長さL1離れた下流側の吸気管4aにEGRガス吐出口Bを設ける。すなわち、図5に示したように流れの下流側からバタフライ弁52を見たとき、流れの断面中心Cから周方向に鋭角である所定の角度(=γ/2)傾けた方向にEGRガス吐出口Bを設ける。これは、EGRガス吐出口Bから吐出されるEGRガスと吸入空気の攪拌にこの剥離渦Vを利用することで、EGRガスと吸入空気を速やかに混ぜるごとができるためである。これによって、吸気管4aを高額な高温対応材料にすることを避けることができる。
EGRガス吐出口Bを回動軸54より所定の長さL1離れた下流側の吸気管4aに設ける理由は次の通りである。すなわち、EGRガス吐出口Bがバタフライ弁52の直ぐ下流にあると、エンジンの停止時にEGRガスが上流側に向かって逆流することがある。このとき、EGRガス中の成分がバタフライ弁52に付着してバタフライ弁52を汚すことが考えられる。そこで、2つの領域R1,R2の範囲が回動軸54より下流側にそのまま保存される吸気管4aの範囲に、つまり吸入空気の流れに沿う断面で見たとき図4に示したように回動軸54より所定の長さL1離れた下流側の吸気管4aにEGRガス吐出口Bを設けるのである。ここで、所定の長さL1は、2つの領域の境界R1,R2が下流側にそのまま保存される、回動軸54よりの所定の長さL0以下になっている。
これによって、エンジンの停止時にEGRガスがEGRガス吐出口Bから上流側に向かって逆流することがあっても、逆流するEGRガスは所定の距離L1を流れる間に流れを停止し、バタフライ弁52に到達することがない。エンジンの停止時に差圧デバイス50が汚れることを防止できるのである。このように、バタフライ弁52より下流側に所定の距離L1だけ離れた吸気管4aにEGRガス吐出口Bを設けることで、EGRガスによる吸気管4aの過熱回避と、エンジン停止時の差圧デバイス50の汚れ防止を図ることができる。
ここで、剥離渦Vを利用しないとすれば、EGRガス吐出口Bから吐出されたEGRガスが吸入空気に拡散し終わるまでの回動軸54よりの吸気管長さは、上記所定の長さL1よりも長いものとなる。言い換えると、部分開度βの差圧デバイス50で発生する剥離渦VをEGRガス吐出口Bから吐出したEGRガスの撹拌に利用することで、剥離渦Vを利用しない場合に比べて差圧デバイス50からEGRガス吐出口Bまでの間の吸気管距離を短縮できるのである。
図5では2つの領域R1,R2の境界のうち、右上にある境界にEGRガス吐出口Bを設けたが、この位置に限定されるものでない。図5に示したように、2つの領域R1,R2の境界は、右上、右下、左上、左下の4つの位置があるので、EGRガス出口管15bの管長さが長くならないように4つの位置のいずれかを採用すればよい。
なお、流れに直交する断面及び流れに沿う断面での2つの領域R1,R2の境界の位置は、本体51の口径が定まれば、吸入空気の流れの速度やバタフライ弁52の部分角度βに依存して異なったものとなり得る。そこで、最終的には適合によりEGRガス吐出口Bの位置と所定の長さL1を定める。
ここで、本実施形態の作用効果を、課題、要求を含めて説明する。
EGRガス吐出口Bより上流側の吸気管4aに設けられる差圧デバイス50に対しては、次の2つの課題1,2がある。すなわち、
課題1:エンジンの冷間始動時に差圧デバイス50を早期に暖機すること(氷結を解除 すること)、
課題2:エンジンの高負荷時に差圧デバイス50の過熱を回避すること、
の2つである。
上記課題1,2に対する要求1,2は次の通りとなる。すなわち、
要求1:差圧デバイス50の暖機途中に排気の輻射熱を受け易いよう、差圧デバイス5 0を排気系部品(11a,11b,12)に近付けたい、
要求2:エンジン高負荷時には排気系部品(11a,11b,12)からの差圧デバイ ス50への排気の輻射熱の影響を緩和したい、
というものである。
上記2つの要求1,2に応えるため、本実施形態では、前提として、吸気系部品と、排気系部品と、ターボ過給機21と、低圧のEGR装置14(EGR装置)と、差圧デバイス50と、を備えている。上記吸気系部品は気筒列を有するエンジンブロック61に導入する吸入空気が流れる吸気管4a、吸気管4aに接続され吸入空気を分配する吸気マニホールド4c、吸気管4aの上流端に設けられるエアクリーナ47から構成される。上記排気系部品はエンジンブロック61から排出されるガスが流れる排気管11bから構成される。上記ターボ過給機21は排気管11bに設けられるタービン22、吸気管4aに設けられるコンプレッサ25から構成される。上記低圧のEGR装置15はEGR通路15、EGR弁17、水冷式のEGRクーラ16を有する。上記EGR通路15はタービン22下流の排気管11bとコンプレッサ25上流の吸気管4aを連通する。上記EGR弁17はEGR通路15を開閉する。上記水冷式のEGRクーラ16はEGR弁17より上流側でEGRガスを冷却する。上記差圧デバイス50はEGRガス吐出口(EGRガスの吐出口)より上流の吸気管4aに設けられる。本実施形態では、エンジンブロック61を上から見たとき、エンジンブロック61の気筒列を中心にして車両前方側に吸気マニホールド4cを、車両後方側に排気系部品(11b)及びターボ過給機21を配置している。また、本実施形態では、排気系部品との間に所定のスペースを持たせた上方に差圧デバイス50を設け、排気系部品(11b)と差圧デバイス50との間のスペースを通るようにEGRクーラ16を設けている。エンジンの冷間始動時には水冷式のEGRクーラ16が排気系部品として機能するため、EGRクーラ16からの排気の輻射熱により、差圧デバイス50を早期に暖機できる。エンジンの冷間始動時にエンジンの暖機が完了するまでに作動デバイス50のバタフライ弁52や回動軸54の可動部分での氷結が解消されるので、エンジンの暖機完了後すぐに低圧のEGR装置14を作動することができる。バタフライ弁52や回動軸54の可動部分での氷結により、エンジンの暖機完了後すぐに低圧のEGR装置14を作動することができない場合と比較して、燃費改善を行うことができるのである。また、部品のレイアウトの変更によって差圧デバイス50の早期暖機が可能になっているので、差圧デバイス凍結防止用の温水配管システムも廃止できる。また、前方吸気・後方排気レイアウトであるため、差圧デバイス50に走行風が当たりにくいことから、バタフライ弁52や回動軸54の可動部分での氷結をより早く解消することができる。
一方、エンジンの高負荷時にはエンジンの冷間始動直後よりも排気系部品(11b)からの排気の輻射熱が大きくなる。このため、排気系部品からの排気の輻射熱が直接差圧デバイス50に当たるのでは、差圧デバイス50が高温に晒される。この場合に、水冷式のEGRクーラ16が差圧デバイス50と排気系部品との間に介在するので、EGRクーラ16が、差圧デバイス50に対する排気系部品からの輻射熱を遮断する。EGRクーラ16に衝突する排気系部品からの排気の輻射熱の分は、差圧デバイス50に届かないのである。このように、EGRクーラ16によって、排気系部品からの排気の輻射熱を遮ることで差圧デバイス50の過熱を回避することができる。また、EGRクーラ16内部の循環冷却水による吸熱作用により、EGRクーラ16全体の温度が排気系部品より低い温度に保たれる。これによって、差圧デバイス50の雰囲気温度の上昇を抑えるので、エンジン高負荷時に排気の輻射熱の影響を緩和することができる。また、遮熱部材を簡素化できる。このように、本実施形態では、エンジン冷間始動時の差圧デバイス50の早期暖機と、エンジン高負荷時の差圧デバイス50の過熱回避とを両立することができる。
なお、EGRクーラ16が、差圧デバイス50と排気系部品の間のスペースの全部を通って(遮って)いる場合に、最大の効果が得られるが、差圧デバイス50と排気系部品の間のスペースの少なくとも一部を通っていればよい。
本実施形態では、差圧デバイス50をエンジンブロック61の上部であって排気系部品側に配置している。
これによって、差圧デバイス50が排気系部品に近付く分、EGRクーラ16と排気系部品からの排気の輻射熱を受け易くなり、差圧デバイス50の早期暖機を一層促進することができる。
本実施形態では、EGRガス吐出口BをEGRガス取出し口Aより上方に配置すると共に、EGRクーラ16の下流側端16aが、EGRクーラ16の上流側端16bよりも上方に位置するように、EGRクーラ16を傾斜させて設けている。これによって、EGRガス入口管15aとEGRガス出口管15bの管長さを、EGRクーラ16を平行に設ける場合よりも短く抑えることができる。
さらに、上記課題1,2の下で、次の2つのサブ課題1,2がある。すなわち、
サブ課題1:EGRガス吐出口Bから吐出されたEGRガスが拡散されないままにコン プレッサ25に流入することによるコンプレッサ25の効率の低下を回避す ること、
サブ課題2:エンジンの停止時にEGRガスが吹返すことによる差圧デバイス50の汚 れを回避すること、
の2つである。
上記サブ課題1,2に対する要求3,4は次の通りとなる。すなわち、
要求3:EGRガス吐出口Bから吐出したEGRガスが吸入空気中に十分拡散してから コンプレッサ25に流入するように、EGRガス吐出口Bからコンプレッサ25 までの間の吸気管距離を確保したい、
要求4:エンジンの停止時にEGRガスの吹返しで差圧デバイス50が汚れるのを防ぐ ため、差圧デバイス50からEGRガス吐出口Bまでの間の吸気管距離を確保し たい、
というものである。
上記2つの要求3,4に応えるため、本実施形態では、エアクリーナ47とコンプレッサ25をエンジンブロック61の気筒列方向の反対側に配置している。すなわち、コンプレッサ上流側吸気管4aを、コンプレッサ25の入口より上方に向かって立ち上がった後に折れ曲がり、エンジンブロック61の上面61dより上部であって排気系部品側を水平方向にかつエンジン後方側に向かって延びるように設ける。そして、コンプレッサ上流側吸気管4aの上流端にエアクリーナ47を設けている。これによって、コンプレッサ上流側吸気管4aの気筒列方向の長さが長くなる。コンプレッサ上流側吸気管4aの気筒列方向の長さを長くすることができる分、EGRガス吐出口Bからコンプレッサ25までの間の吸気管距離及び差圧デバイス50からEGRガス吐出口Bまでの間の吸気管距離をより長く確保できる。
さらに、上記サブ課題1,2の下で、次のサブ課題3,4がある。すなわち、
サブ課題3:EGRガス吐出口Bから吐出したEGRガスを早期に吸入空気に拡散させ ることによってEGRガス吐出口B下流の吸気管4aの過熱を回避すること 、
サブ課題4:エンジンの停止時にEGRガスの吹き返しによって差圧デバイス50が汚 れることを防止すること、
である。
上記サブ課題3,4に対する要求5,6は次の通りとなる。すなわち、
要求5:部分開度βの差圧デバイスのバタフライ弁52で発生する剥離渦をEGRガス 吐出口Bから吐出したEGRガスの撹拌に利用するため、差圧デバイス50から EGRガス吐出口Bまでの間の吸気管距離を短縮したい、
要求6:エンジンの停止時にEGRガスの吹き返しで差圧デバイス50が汚れるのを防 ぐため、差圧デバイス50からEGRガス吐出口Bまでの間の吸気管距離を確保 したい、
というものである。
上記要求5で剥離渦Vを利用するのは次の理由による。すなわち、EGRガス吐出口B下流の吸気管の過熱を回避するためには、EGRガス吐出口Bで吸入空気と急速に攪拌させる必要がある。急速に攪拌させるには、部分開度βの差圧デバイスのバタフライ弁52で発生する剥離渦による撹拌効果を用いるのが有効であるためである。
上記2つの要求5,6に応えるため、本実施形態では、部分開度βの差圧デバイスのバタフライ弁52の下流に周方向に分布して生じる主流領域R2と剥離渦主発生領域R1の境界付近の吸気管4aにEGRガス吐出口を設けている。すなわち、流れの下流側からバタフライ弁52を見たとき、流れの断面中心Cより周方向に所定の角度(γ/2)傾けた方向にEGRガス吐出口Bを設ける。これは、部分開度βのバタフライ弁52の下流では、主流領域R2と剥離渦主発生領域R1が円筒状の本体51及び下流側の吸気管4aの周方向に分布し、2つの領域R1,R2の境界付近が、剥離渦Vによる撹拌効果が最も下流まで得られる位置であるためである。これにより、差圧デバイス50より下流側に離れた位置で剥離渦Vの撹拌効果を活用してEGRガスと吸入空気を素早く混ぜることができる。よって、高額な高温対応材料を採用することなくEGRガス吐出口B下流の吸気管4aを設計することができる。このように、差圧デバイス50からEGRガス吐出口Bまでの間の吸気管距離を確保しながらも、差圧デバイス50で発生する剥離渦が流れに乗って下流にまで到達し易い位置でEGRガスが吐出されることになり、剥離渦を撹拌に有効に利用することができる。
実施形態では、EGRクーラ16が冷却水でEGRガスを冷却する水冷式の場合で説明したが、これに限られるものでなく、冷却液でEGRガスを冷却する液冷式の場合であればよい。
実施形態では、横置きエンジン1はほぼ直立しているものとして説明した。本発明はこの場合に限定されるものでない。例えば、横置きエンジン1が車両前方側や車両後方側にあるいはエンジン前方側やエンジン後方側に所定の角度傾けて搭載されることがある。この場合にも本発明の適用がある。
実施形態では、EGRガス冷却装置として、EGRガスと冷却水との間で熱交換を行う水冷式のEGRクーラ16を挙げたが、EGRガス冷却装置が水冷式など液冷式の冷却装置である場合に限定されるものでない。EGRガスとの熱交換を行う冷媒が、液状ではない気体状で流れる場合であっても、EGRガスを冷却することができるためである。