(送信手順の概要)
まず、本実施形態の画像通信装置1(図2)を用いて画像を送信するときの手順の一例の概要を説明する。
図1(a)は、本実施形態の画像通信装置1によって画像が送信される原稿101の一例を示している。
なお、画像通信装置1が送信するのは、画像自体ではなく、画像に基づいて生成された画像データであるが、便宜上、画像を送信すると表現することがあるものとする。また、画像データの元となった画像と、画像データによって再現可能な、又は再現された画像とは、その画像の内容は基本的には同一であることから、便宜上、区別しないことがある。画像に含まれる(画像の一部である)、後述するマークについても同様である。
原稿101は、例えば、メディア(例えば紙などのシート状のもの)の表面に画像103が形成されたものである。画像103は、ユーザが送信を希望する画像であるメイン画像105と、送信先を示すためのマーク107とを有している。
ユーザは、この原稿101を画像通信装置1の読取部に配置し、次に、画像の送信を指示する操作を画像通信装置1に対して行う。送信を指示された画像通信装置1は、画像103を読み取る。この際、画像103に含まれるマーク107も読み取られる。一方、画像通信装置1は、予め、種々のマーク107と種々の宛先情報とを対応付けて保持している。宛先情報は、例えば、FAX番号、IPアドレス又はメールアドレスなど、宛先としての通信端末又はアカウントなどを示す情報である。そして、画像通信装置1は、読み取ったマーク107に対応付けられている宛先情報を特定し、その宛先情報が示す宛先へ画像を送信する。
従って、原稿101に対してマーク107を付することによって画像通信装置1に対して宛先が指定されることになり、宛先を指定するための操作を画像通信装置1に対して行う必要はない。すなわち、操作性乃至は利便性が向上する。また、マーク107は、宛先情報自体を含む2次元コードに比較して、簡素な記号乃至は図形等にすることが可能である。従って、例えば、マーク107を付すことが容易であり、また、送信先を一見して確認することができる。
なお、画像通信装置1は、従来と同様の機能も有していてよい。例えば、画像通信装置1は、操作部を介して直接に入力された宛先情報が示す宛先へ画像を送信する機能、及び、いわゆる短縮機能を有していてよい。
以下、上記のような操作手順を実現するための画像通信装置1等の構成の詳細について述べる。
(原稿)
原稿101は、マーク107を除いては、一般的なFAX又は複合機等の画像通信装置に利用可能なものと同様でよい。例えば、原稿101(メディア)の寸法は、画像通信装置1が許容する範囲で任意であり、メディアは、一般に紙又はこれに類するシート状のものである。画像103(メイン画像105及びマーク107のそれぞれ)は、印刷により形成されてもよいし、手によって描かれて形成されてもよいし、画像が形成された別のメディア(例えば、紙又はシール)が貼り付けられることによって形成されていてもよい。メイン画像105の内容は、当然ながら任意である。
なお、一般的な画像通信装置においては、原稿101のうちの画像が形成された領域だけでなく、原稿101全体が読み込まれ、画像として扱われる。例えば、原稿101の紙のうち一部にのみ画像が形成され、他は白地(インクなどが付着しておらず、紙自体の色の部分。通常は概ね白色)となっていても、画像通信装置は、原稿101の全体をスキャニングする。そこで、本実施形態の説明で参照する画像103は、白地を含む原稿101の全体であるものとし、原稿101及び画像103の外縁及び寸法等について特に区別しないことがある。なお、厳密には、通常、原稿101の外周部は読み取り乃至は印刷が不可能な領域となるが、本実施形態においては当該領域の存在は無視しても問題ない。
(マークの形成)
マーク107は、メイン画像105の形成とともに形成されてもよいし、メイン画像105とは別個に形成されてもよい。マーク107は、既に述べたように、印刷、手書き、貼り付けなど、適宜な方法によって形成されてよい。マーク107が、原稿101に印刷される場合、又は、原稿101に貼り付けられるメディアに印刷される場合、印刷は、画像通信装置1によってなされてもよいし、画像通信装置1とは別の機器によってなされてもよい。
(マークが付される原稿)
画像通信装置1は、一般的なFAXのように、複数枚の原稿101を連続的に読み取って送信可能であってよい。この場合、マーク107は、例えば、複数枚の原稿101の一部(例えば読み取りの最初の1枚及び/又は最後の1枚)に付されればよいものとされてもよいし、全てに付されることが必須とされてもよい。
例えば、画像通信装置1は、読み取った複数枚の原稿101のうち所定の一部(例えば最初の1枚及び/又は最後の1枚)においてのみ、マーク107を探索し、宛先を特定する。この態様では、ユーザは、複数枚の原稿101のうち一部のみにマーク107を付せば、その複数枚の原稿101の画像103をマーク107で指定した宛先に送信できる。
また、例えば、画像通信装置1は、複数枚の原稿101についてマーク107が見つかるまで順次マーク107を探索してもよい。この態様では、例えば、汚れや皺などによって一の原稿101のマーク107が適切に読み取られなくても、他の原稿101のマーク107が適切に読み取られることによって、確実に意図した宛先に画像が送信される。
また、例えば、画像通信装置1は、複数枚の原稿101についてマーク107を探索し、マーク107が付されていない原稿101が存在したり、複数の原稿101間でマーク107が異なっていたりすると、エラーを報知して送信しないように動作してもよい。この態様では、例えば、送信対象でない原稿101が複数の原稿101に混ざって送信されてしまうおそれが低減される。
また、例えば、画像通信装置1は、複数枚の原稿101の画像103を連続的に読み取りつつ、読み取った複数の画像103を互いに異なる宛先に分配可能であってもよい。例えば、上記のような最初の1枚及び/又は最後の1枚にマーク107を付した複数枚の原稿101を1組の原稿101としたときに、ユーザは、宛先(マーク107)が互いに異なる複数組の原稿101を重ねて画像通信装置1の読取部に配置する。画像通信装置1は、複数組の原稿101を連続的に読み込みつつ、全ての原稿101についてマーク107の探索を行い、新たなマーク107を認識する度に、送信先をその新たなマーク107が示す宛先に変更する。
(マークの位置)
マーク107が付される位置は、原稿101(画像103)内において(画像103の外縁を基準として)、任意の位置とされてもよいし、予め定められた領域内(以下、「第1領域R1」という。図1(a)に点線で一例を示す。)に限定されてもよい。換言すれば、画像通信装置1は、画像103のいずれの位置にあるマークを、宛先を示すマーク107として認識してもよいし、第1領域R1内にあるマークのみを、宛先を示すマーク107として認識してもよい。なお、マーク107が付される位置を任意の位置とするか、第1領域R1内に限定するかを、ユーザが画像通信装置に対する操作によって設定可能であってもよい。本実施形態では、主として、マーク107が付される位置が第1領域R1内に限定される場合を例にとって説明する。
第1領域R1の位置及び/又は面積等は、画像通信装置1の製造者によって予め画像通信装置1に対して設定されて不変であってもよいし、ユーザの画像通信装置に対する操作によって設定(変更)可能であってもよい。
第1領域R1の位置は、メイン画像105の視認性の観点から、画像103の外周側に設定されることが好ましい。より好適には、第1領域R1の位置は、画像103(一般に矩形)の4隅のいずれか1つ(後述するように、2つ、3つ又は全てでもよい。)に設定される。なお、第1領域R1が隅に位置しているというとき、例えば、矩形の画像103の寸法を1×1(縦×横)としたときに、第1領域R1の全体は、画像103の1つの頂点から内側の範囲であって、1/4×1/4(より好適には1/8×1/8)の大きさの範囲内に位置している。
第1領域R1の広さは、画像103の大きさに対して相対的に規定されてもよいし、画像103の大きさとは無関係に絶対的な大きさ(例えばmm)で規定されてもよい。また、ユーザが第1領域R1の大きさを可変である場合に、相対的な大きさ及び絶対的な大きさの一方の大きさによって、第1領域R1の上限値及び/又は下限値が設定され、その範囲内で他方の大きさによって第1領域R1を設定可能であってもよい。
また、第1領域R1の広さは、マーク107の大きさよりも広いものとして規定されてもよいし、マーク107の大きさと同等のものとして規定されてもよい。後者は、換言すれば、第1領域R1内の全ての画像がマーク107として画像通信装置1に認識されてもよい。なお、本実施形態では、主として、前者の場合を例にとって説明する。
第1領域R1は、複数設定されてもよい。例えば、画像103の4隅の2つ、3つ又は全てに設定されてよい。この場合、例えば、画像通信装置1は、複数の第1領域R1のいずれにマークが位置していても、そのマークを、宛先を示すマーク107として認識する。これにより、例えば、ユーザは、メイン画像105の内容に応じて、複数の第1領域R1から、メイン画像105の視認性に影響を及ぼさない第1領域R1を選択してマーク107を付すことができる。
(マークの数)
1つの画像103において、適宜な数のマーク107が有効とされ、許可され、又は義務付けられてよい。
例えば、画像通信装置1は、画像103から1つのマーク107(ただし、宛先を特定するものとして有効なもの)を認識したら、マーク107の探索を終了し、そのマーク107が示す宛先へ画像を送信する。この態様では、画像通信装置1は、ユーザが同一種類のマーク107(1つ又は複数)を付すことを前提として使用されることになる。そして、例えば、複数の同一種類のマーク107が互いに離れた位置(例えば複数の第1領域R1内)に付されたときは、汚れや皺などによって一のマーク107が適切に読み取られなくても、他のマーク107が適切に読み取られることによって、意図した宛先に確実に画像が送信される。
また、例えば、画像通信装置1は、画像103から全てのマーク107を認識する。そして、画像通信装置1は、複数のマーク107を認識した場合、その複数のマーク107が示す宛先へ画像を送信する。この態様では、例えば、ユーザは、互いに異なる種類の複数のマーク107を原稿101に付すことによって、複数の宛先に画像を送信することができる。
なお、この態様において、画像通信装置1は、マーク107の種類が同一か否かを問わないように動作してもよい。この場合、同一種類の複数のマーク107が原稿101に付されていた場合、そのマーク107が示す宛先に、そのマーク107の数と同一の部数の画像が送信される。従って、例えば、ユーザは、画像の送信先での印刷を意図しているときに、マーク107の数によって印刷の部数を設定できる。
また、逆に、上記の複数の宛先へ画像を送信する態様において、画像通信装置1は、同一種類の複数のマーク107を認識したときに、そのマーク107が示す宛先に1部のみ画像を送信するように動作してもよい。この場合、ユーザは、皺や汚れなどによってマーク107が適切に認識されない場合に備えて、同一種類の複数のマーク107を付すことになる。この場合、同一種類の複数のマーク107は、複数の互いに離れた位置(例えば複数の第1領域R1)に配置されることが好ましい。
また、例えば、画像通信装置1は、画像103から全てのマーク107を認識し、複数種類のマーク107を認識した場合、エラーを報知して、画像の送信を行わないように動作してもよい。この態様では、例えば、ユーザが1種類のマーク107を付すことを前提として、メイン画像105の一部が、意図していないマーク107として誤認されて画像が送信されるおそれが低減される。なお、同一種類の複数のマーク107を認識したときの動作は、上述した、マーク107の数と同一の部数の画像を送信するものであってもよいし、1部のみ画像を送信するものであってもよい。
また、例えば、画像通信装置1は、同一種類のマーク107を2つ以上の所定数(例えば2つ)認識したときのみ、そのマーク107が示す画像を送信するように動作してもよい。この態様では、例えば、メイン画像105の一部が、意図していないマーク107として誤認されて画像が送信されるおそれが低減される。なお、さらに、同一種類の所定数のマーク107が所定数の第1領域R1から認識されたことを条件として画像を送信するようにしてもよい。
(マークを示すパターン)
図1(b)は、マーク107(及びその周辺部)の一例(マーク107Aということがある。)を示す図である。図1(c)は、マーク107の他の例(マーク107Bということがある。)を示す図である。
これらの例では、いずれのマーク107も、2重の矩形(その辺。以下、「指定パターン109」という。)に囲まれている。この指定パターン109は、当該指定パターン109が示す第2領域R2(本実施形態では指定パターン109に囲まれた領域)内のマークが、宛先を示すマーク107であることを示すためのものである。すなわち、画像通信装置1は、第2領域R2内に位置するマークのみを宛先を示すマーク107として認識する。なお、以下の説明では、便宜上、第2領域R2と、指定パターン109及び第2領域R2全体の領域とを厳密に区別しないことがある。
このように、マーク107の位置は、複数種類のマーク107に対して共通に予め設定された指定パターン109によって示されてよい。もちろん、画像通信装置1は、指定パターン109に関する処理を一切行わないものとされてもよい。本実施形態では、主として、指定パターン109を利用する態様を例に挙げて説明する。
指定パターン109は、複数種類のマーク107に対して共通していればよく、2重の矩形は一例に過ぎない。例えば、指定パターン109は、1重又は3重以上の線から構成されてもよいし、第2領域R2を囲む円形乃至は多角形であってもよいし、矩形の第2領域R2の4隅又は3隅に配置された複数の比較的小さな図形(例えば、L字、矩形、三角形又は円形など)であってもよい。別の観点では、第2領域R2の形状は、矩形に限定されず、円形などであってもよい。指定パターン109は、その形状に加えて、濃淡及び/又は色も指定パターン109であるか否かを決定する要素とされていてもよい。
また、指定パターン109は、単体で第2領域R2を規定していなくてもよい。例えば、マーク107の位置が画像103の4隅に限定され、かつ第2領域R2の2辺が画像103の2辺によって規定されているのであれば、その2辺がなす角に対向する、第2領域R2の角(頂点)に指定パターン109としての比較的小さな図形を形成してもよい。
指定パターン109(第2領域R2)の大きさについては、任意の大きさが有効とされてもよいし(許容されてもよいし)、所定の大きさに制限されてもよい。すなわち、画像通信装置1は、指定パターン109の大きさを、指定パターン109を認識するときの要素としなくてもよいし、要素としてもよい。なお、第1領域R1と組み合わされる場合においては、第2領域R2は、例えば、第1領域R1よりも小さく設定される。指定パターン109の大きさが規定される場合、その大きさは、第1領域R1と同様に、画像103の大きさに対して相対的に規定されてもよいし、画像103の大きさとは無関係に絶対的な大きさ(例えばmm)で規定されてもよい。
指定パターン109の大きさが任意の大きさでよければ、例えば、種々の大きさの指定パターン109(乃至はマーク107)を原稿101に付すことが可能となり、利便性が向上する。一方、指定パターン109の大きさが制限されれば、例えば、画像通信装置1におけるパターン認識の処理の負担が軽減されたり、誤認識のおそれが低減されたりする。
指定パターン109は、1つのマーク107に対して1つであることが好ましい。この場合、指定パターン109によって第2領域R2を示すだけでなく、第2領域R2内の画像全体を、マーク107を過不足なく構成する要素として扱うことによって、マーク107の多様性を許容しつつ、マーク107のパターン認識のための処理の負担を軽減したり、誤認識のおそれを低減できる。
なお、指定パターン109の利用の有無及び形状、並びに第2領域R2の広さの制限の有無及び広さ等の各種の条件は、例えば、画像通信装置1の製造者によって予め規定されている。ただし、これらの少なくとも一部を、ユーザの画像通信装置1に対する操作によって変更可能であってもよい。
(マーク自体の態様)
図1(b)に例示するマーク107Aは、2重丸と当該2重丸を囲む矩形とによって構成されている。図1(c)に例示するマーク107Bは、第2領域R2内における複数のブロック(複数の画素を含む概念であるものとする。)間で白黒、濃淡及び/又は色を異ならせることによって構成されている。
図1(b)のマーク107A及び図1(c)のマーク107Bを比較すると、例えば、前者は、目視による識別が容易なマーク、簡素なマーク、線のみからなるマーク、線(輪郭線含む)によって区別できるマーク、及び/又は、2値画像からなるマークであるということができる。本実施形態の画像通信装置1では、マーク107Aのようなもののみが利用可能とされてもよいし、マーク107Bのようなもののみが利用可能とされてもよいし、両者が利用可能とされてもよい。なお、一般には、マーク107Aのようなものに限定すれば、画像通信装置1におけるパターン認識の処理の負担は軽減される。
マーク107の大きさについては、任意の大きさが有効とされてもよいし(許容されてもよいし)、所定の大きさに制限されてもよい。すなわち、画像通信装置1は、マーク107の大きさを、マーク107を認識するときの要素としなくてもよいし、要素としてもよい。なお、第1領域R1及び/又は第2領域R2と組み合わされる場合においては、マーク107は、例えば、第1領域R1及び/又は第2領域R2の大きさ以下であることが要件とされる。マーク107の大きさが規定される場合、その大きさは、画像103、第1領域R1又は第2領域R2の大きさに対して相対的に規定されてもよいし、画像103、第1領域R1又は第2領域R2の大きさとは無関係に絶対的な大きさ(例えばmm)で規定されてもよい。
指定パターン109と同様に、マーク107の大きさが任意の大きさでよければ、例えば、種々の大きさのマーク107を原稿101に付すことが可能となり、利便性が向上する。一方、マーク107の大きさが制限されれば、例えば、画像通信装置1におけるパターン認識の処理の負担が軽減されたり、誤認識のおそれが低減されたりする。
なお、指定パターン109が利用される態様においては、指定パターン109(第2領域R2)の大きさが任意とされ、マーク107の大きさが指定パターン109の大きさに対して相対的に規定されることが好ましい。この場合、例えば、指定パターン109及びマーク107を種々の大きさにすることができ、利便性が向上する。その一方で、例えば、指定パターン109に対するマーク107の相対的な大きさをパターン認識の要素とすることによって、マーク107のパターン認識の処理の負担を軽減したり、誤認識のおそれを低減したりすることができる。
(画像通信装置を含む通信システム)
図2は、画像通信装置1を含む通信システム51の信号処理系の構成を示すブロック図である。
通信システム51は、ネットワーク3と、ネットワーク3に接続された1又は複数の画像通信装置1(図2では1つのみ図示)及び複数の通信端末5(図2では1つのみ図示)とを有している。画像通信装置1が送信した画像データは、例えば、ネットワーク3を介して複数の通信端末5のいずれかによって受信される。
画像通信装置1は、例えば、少なくとも、原稿101の画像103から画像データを生成する機能(例えばスキャナ機能)と、生成した画像データを送信する画像送信機能とを有し、好ましくは更に印刷機能を有する。画像通信装置1は、例えば、FAX又は複合機である。なお、画像通信装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)にスキャナを接続して構成されていてもよいし、更にPCにプリンタが接続されて構成されていてもよい。また、画像通信装置1は、撮像機能付き携帯電話機によって構成されていてもよい。以下では、主として、FAX又は複合機を想定して説明する。
通信端末5は、例えば、少なくとも、画像データを受信する画像受信機能と、受信した画像データに基づく画像を印刷する画像印刷機能及び前記画像を表示する画像表示機能の少なくとも一方とを有する。通信端末5は、公知の種々の通信端末とされてよく、例えば、FAX、複合機、(表示装置を含む広義の)PC、当該PCにプリンタが接続されたもの、表示装置付きの携帯電話機、又は、ネットワークプリンタである。なお、通信端末5は、本実施形態の画像通信装置1とされてもよい。
ネットワーク3は、画像通信装置1と通信端末5との間で画像データに基づく信号を伝送する。上記の画像通信装置1及び通信端末5の例示から理解されるように、ネットワーク3は、例えば、電話回線、インターネット回線又はこれらの組み合わせから構成され、また、例えば、有線回線、無線回線又はこれらの組み合わせから構成されている。
マーク107による宛先の指定を除き、FAX番号、IPアドレス又はメールアドレスに基づく画像通信装置1からの画像データの送信方法、通信端末5における画像データの受信方法、通信端末5における画像データを受信したときの動作は、基本的に、公知の種々のものと同様とされてよい。
例えば、画像通信装置1は、FAX番号に基づいて、電話回線を介して、複数の通信端末5のいずれかと選択的に通信を確立し、画像データを送信する。画像データを受信した通信端末5(例えばFAX又は複合機)は、受信した画像データを印刷する。
また、例えば、画像通信装置1は、IPアドレスに基づいて、インターネット回線を介して、複数の通信端末5のいずれかと選択的に通信を確立し、画像データを送信する。なお、IPアドレスは、例えば、固定かつグローバルのIPアドレスである。また、固定かつグローバルのIPアドレスにプロトコル及びポート番号を加えたもの(静的IPマスカレードに利用される情報)もここではIPアドレスであるものとする。画像データを受信した通信端末5(例えば複合機又はネットワークプリンタ)は、受信した画像データを印刷する。
なお、上記の2つの例において、通信端末5は、受信した画像データを記憶装置に一旦保存して、当該通信端末5に対するユーザの操作に応じて印刷してもよい。また、FAX番号又はIPアドレスに基づいて、ネットワーク3上の不図示のサーバに画像データが送信されて保存されてもよい。この場合、通信端末5は、当該通信端末5に対するユーザの操作に応じて、サーバにアクセスし、画像データの取得又は削除を行ってもよい。
また、例えば、画像通信装置1は、メールアドレスと画像データとを含むメールをメールサーバに送信する。メールを受信したメールサーバは、例えば、自動的にメールアドレスに対応する通信端末5(例えばPC又は携帯電話機)にメールを送信し(プッシュ式)、又は、任意の通信端末5から要求があったときに、メールアドレスに関する認証がなされることを条件として、メールを送信する(フェッチ式)。メールを受信した通信端末5は、当該通信端末5に対するユーザの操作に応じて、画像データの表示又は印刷を行う。
(画像通信装置の構成)
画像通信装置1は、原稿101の画像103を読み取る読取部7と、読取部7により読み取った画像103を送信する送信部9と、マーク107と宛先情報とを対応付けて保持可能な記憶部11と、これらを制御する制御部13とを有している。
制御部13によって、読取部7で読み取られた画像103に含まれるマーク107に対応する宛先情報が記憶部11から取得され、その宛先情報が示す宛先に送信部9が画像103の画像データを送信することによって、図1(a)を参照して説明した送信手順が実現される。
また、画像通信装置1は、ユーザの操作を受け付ける操作部15と、ユーザに報知を行う報知部17と、画像を印刷する印刷部19とを有している。
上述の各部の構成は、記憶部11の記憶内容、及び、制御部13の制御内容を除いては、公知の画像通信装置の各部の構成と同様とされてよい。公知の構成と同様でよい構成については、適宜に説明を省略することがある。
読取部7は、例えば、原稿101の画像103を画像データに変換するものである。例えば、読取部7は、不図示の撮像素子に対して原稿101を移動させたり、又は、原稿101が載置された原稿台に沿って撮像素子を移動させたりして、原稿101の画像103をスキャニングして画像データを生成する。すなわち、読取部7は、光電変換によって画像データを生成している。既に言及したように、読取部7は、複数の原稿101を連続的に読み取る機能を有するものであってもよい。
なお、例えば、画像通信装置1が撮像機能付き携帯電話機のようなものである場合においては、画像通信装置1は、原稿101を撮像したり、あるいは、適宜なメディアに付されたマーク107が撮像範囲に含まれるような形で風景を撮像したりして、画像データを生成してもよい。このような撮像も、FAXや複合機におけるスキャニングと同様に、光電変換によって画像データを生成している。
記憶部11は、例えば、不揮発性の記憶装置によって構成されている。例えば、記憶部11は、画像通信装置1に含まれるコンピュータの外部記憶装置(ハードディスク)によって構成されている。USBメモリやCDなどの画像通信装置1の本体に着脱される記憶媒体(リムーバブルメディア)によって構成されていてもよい。
記憶部11は、第1領域R1を特定するための第1領域データ21と、指定パターン109の画像データである指定パターンデータ23とを記憶している。また、記憶部11は、複数種類のマーク107と、複数種類の宛先情報とを対応付けて保持しているテーブル25を記憶している。
制御部13は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含んで構成されており、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより、各種の制御動作を実行する制御部として構築される。制御部13の具体的な動作については、後にフローチャートを用いて説明する。
操作部15は、例えば、複数の押圧式又は接触式のスイッチ(タッチパネルによって構成されてもよい)を含んで構成されており、ユーザの操作を受け付け、その操作に応じた信号を制御部13に出力する。操作部15は、例えば、原稿101の読取り及び送信の指示、及び、テーブル25を作成する際の宛先情報の入力等に供される。
なお、本実施形態の画像通信装置1は、画像103に含まれるマーク107から宛先を特定可能であることから、例えば、従来の宛先情報を直接に入力して送信する機能等を排し、また、テーブル25の作成を他の機器で行う態様にすれば、宛先情報の入力に必要な押圧式スイッチを省略することができる。例えば、送信を指示するスイッチだけを有する操作部15にすることが可能である。また、例えば、読取部7における原稿101の有無を検出するセンサを設け、読取部7に原稿が配置されたら自動的に読み取り及び送信を行うようにすれば、操作部15を省略可能である。
報知部17は、例えば、適宜な画像を表示する表示装置、及び/又は、適宜な音響(音声)を出力するスピーカによって構成されており、制御部13からの制御信号に基づいて動作する。なお、報知部17の表示装置は、タッチパネルによって構成され、操作部15に兼用されていてもよい。
印刷部19は、インクジェットプリンタやレーザープリンタなどの適宜な形式のプリンタによって構成されており、制御部13からの制御信号に基づいてメディア(例えば紙)に画像を印刷する。なお、印刷部19は、メディアとして、シールを用いることができるものであることが好ましい。
(第1領域データ)
第1領域データ21は、例えば、テキストデータによって構成されており、第1領域R1の位置及び大きさを示す情報を保持している。
(指定パターンデータ)
指定パターンデータ23は、ラスタ形式であってもよいし、ベクタ形式であってもよい。ラスタ形式であれば、例えば、ユーザが手で描いたパターンを読取部7で読み込んで指定パターン109として利用することが容易である。また、ベクタ形式であれば、例えば、指定パターン109の大きさの変化が許容されている場合(指定パターン109の大きさが指定パターン109のパターン認識の要素とされていない場合)、原稿101の指定パターン109の大きさが変わっても、指定パターン109を誤認識するおそれが低減される。
(テーブルの構成)
既述のようにテーブル25は、複数種類のマーク107と複数の宛先情報とを対応付けて記憶している。別の観点では、テーブル25は、マーク107と宛先情報とを対応付けたデータD1〜Dn(以下、これらを区別せずに、「データD」ということがある。)を有している。なお、テーブル25は、あくまで概念図である。従って、実際には、例えば、マーク107の画像データが保存されている記憶領域のアドレスと、宛先情報が保存されている記憶領域のアドレスとが対応付けられているなどしてよい。
宛先情報は、例えば、画像通信装置1が利用可能なネットワーク3に応じた形式の適宜なものであってよい。例えば、画像通信装置1がFAX機能を有していれば、宛先情報はFAX番号であってよい(データD1)。また、例えば、画像通信装置1が画像103を添付したメールを送信可能であれば、宛先情報はメールアドレス(データD2)であってよい。また、例えば、画像通信装置1がIPアドレスを用いるインターネットFAX機能を有していれば、宛先情報はIPアドレスであってよい(データD3)。また、例えば、画像通信装置1が、上記の2以上の機能を有している場合、テーブル25は、上記の2種以上の宛先情報を保持していてよい(図2の例)。
記憶部11においては、複数のテーブルが相互に関連付けられて、全体として、マーク107と宛先情報とを対応付けるテーブルが構成されていてもよい。例えば、データD4において「Aさん」と例示されているように、マーク107に直接に対応付けられているのは、そのままでは画像通信装置1が宛先として使用不可能な情報であってもよい。そして、記憶部11は、「Aさん」と、画像通信装置1が宛先として直接的に使用可能な情報(FAX番号、メールアドレス又はIPアドレスなど)とを対応付けたテーブルを別に有していてもよい。なお、「Aさん」自体が宛先情報とみなされてもよいし、「Aさん」に対応付けられて、最終的に使用される情報が宛先情報とみなされてもよい。
図2に示すテーブル25(データD)では、マーク107と宛先情報とが1対1で対応付けられている。しかし、例えば、マーク107に対して複数の宛先情報が対応付けられていてもよい。すなわち、1つのマーク107を原稿101に付すことによって、複数の宛先に画像103を送信してもよい。
また、上記の「Aさん」に類似する態様として、図1に示すテーブル25(データD)においては、1つのマーク107に対して1つのグループ(例えば「社内営業部」など)を対応付け、別のテーブルにおいて、そのグループと、複数の最終的な宛先情報(営業部に所属する複数の社員の宛先情報)とを対応付けてもよい。この場合、複数の宛先情報に対する記憶部11の整理が容易化される。
記憶部11が宛先情報と対応付けて保持しているマーク107の画像データは、ラスタ形式であってもよいし、ベクタ形式であってもよい。ラスタ形式であれば、例えば、ユーザが手で描いたマークを読取部7で読み込んで、テーブル25に保持させるマーク107として利用することが容易である。また、ベクタ形式であれば、例えば、印刷部19によってマーク107を印刷するときに、その縮尺を変えてもマーク107の精度が維持される。
(画像通信装置の動作手順)
以下、画像通信装置の動作手順(制御部13が実行する処理の手順の一例)を説明する。なお、以下では、基本的に、最も典型的な態様(1枚の原稿101、1つのマーク107、1つの宛先情報、第1領域R1の利用及び指定パターン109の利用など)の動作手順について説明する。上述したそれ以外の態様の動作手順については、これまでの説明及び以下に説明する動作手順から容易に類推可能であり、説明は省略する。
(メイン処理)
図3は、制御部13が実行するメイン処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、画像通信装置1に電源が投入されてから電源が落とされるまで継続的に実行される。
まず、ステップS1では、制御部13は、操作部15からの信号に基づいて(例えば信号の有無及び/又は内容に基づいて。以下、同様。)、新たなマーク107及び宛先情報の登録などのテーブル25の更新を指示する操作が操作部15に対してなされたか否か判定する。制御部13は、指示する操作がなされたと判定したときは、ステップS2に進み、なされていないと判定したときは、ステップS2をスキップする。
ステップS2では、例えば、制御部13は、ユーザの操作部15に対する操作内容(すなわち操作部15からの信号の内容。以下同様。)等に応じて、新たなデータD1の追加、既存のデータD1の削除、及び/又は、既存のデータD1のマーク107又は宛先情報の変更を行うように、記憶部11の内容を書き換える。
新たなデータD1の追加等において、マーク107の画像データは、例えば、マーク107が読取部7によって読み取られることにより生成されてよい。また、マーク107は、ユーザによって描画ソフトを用いて生成されてもよい。この態様では、例えば、ユーザにとって好みのマーク107を使用することができる。なお、制御部13は、生成されたマーク107と、既に登録されているマーク107との類似性が所定の基準を超えて高いときは、その生成されたマーク107を新たに登録しないようにしてもよい。
また、例えば、マーク107の画像データは、ユーザの操作部15に対する操作によって、画像通信装置1の製造者によって予め画像通信装置1に記憶されているマーク107の複数の候補の画像データから選択されてもよい。マーク107のテーブル25への登録をこの態様に限定する場合、例えば、マーク107の種類を、誤認のおそれが比較的低いものに予め限定しておくことができる。なお、当該態様は、上述のユーザが生成したマーク107が登録される態様と組み合わされてもよい。
新たなデータD1の追加等において、宛先情報は、例えば、公知のFAX又は複合機等において宛先情報を入力するのと同様に、操作部15に対する操作によって入力されてよい。
ステップS3では、制御部13は、操作部15からの信号に基づいて、記憶部11が宛先情報と対応付けて保持しているマーク107の印刷を指示する操作が操作部15に対してなされたか否か判定する。制御部13は、指示する操作がなされたと判定したときは、ステップS4に進み、なされていないと判定したときは、ステップS4をスキップする。
ステップS4では、制御部13は、記憶部11が宛先情報と対応付けて保持しているマーク107を印刷するように印刷部19を制御する。制御部13は、ユーザの操作部15に対する操作に応じて、印刷するマーク107を選択する。なお、指定パターン109が利用される態様では、マーク107とともに、指定パターン109も印刷される。
ここで印刷されたマーク107(及び指定パターン109)は、例えば、切り取られてメイン画像105が形成された原稿101に貼り付けられる。この態様では、例えば、制御部13は、一のメディアに複数のマーク107を並べて印刷する。制御部13は、ユーザの操作部15に対する操作に応じて、一のメディアに印刷する複数のマーク107の数及び大きさ等(ただし、大きさについては変えることが許可されている場合)を適宜に設定可能であってもよい。
また、ステップS4の印刷は、例えば、原稿101となる予定の複数のメディアに対してマーク107(及び指定パターン109)を印刷するものであってもよい。マーク107が印刷された複数のメディアは、プリンタなどの機器(画像通信装置1であってもよい)に供給され、メイン画像105が形成される。この態様では、例えば、制御部13は、ユーザの操作部15に対する操作に応じて、マーク107を印刷するメディアの数、マーク107の位置及び大きさ等(位置及び大きさについては変えることが許可されている場合)を適宜に設定可能であってもよい。
なお、画像通信装置1は、ステップS4において、ユーザの操作部15に対する操作に応じて、上述した、切り貼り用の印刷と、メイン画像105が形成されるメディアの準備用の印刷とを、選択的に実行可能であってもよい。
ステップS5では、制御部13は、操作部15からの信号に基づいて、原稿101の画像103の読み取り及び読み取った画像103(画像データ)の送信を指示する操作が操作部15に対してなされたか否か判定する。なお、この操作は、例えば、読み取り及び送信の双方を指示する一の操作(例えば一のスイッチの押圧)であって別個の操作ではない。制御部13は、指示する操作がなされたと判定したときは、ステップS6に進み、なされていないと判定したときは、ステップS6をスキップする(ステップS1に戻る)。
なお、画像通信装置1が、ユーザが宛先情報を入力してから送信開始を指示することによって送信が開始される、従来と同様の画像送信機能を有している態様において、マーク107に基づく送信のための操作(ステップS5)は、従来と同様の画像送信機能のための操作と適宜に区別されてよい。例えば、マーク107に基づく送信のための操作は、宛先情報を入力せずに、従来機能の送信指示のためのスイッチを押すものであってもよいし、従来機能の送信指示のためのスイッチとは別のスイッチを押すものであってもよい。
ステップS6では、制御部13は、原稿101の画像103を読み取り、読み取った画像103に含まれるマーク107が示す宛先へ画像103の画像データを送信する。具体的には、以下のとおりである。
(読取送信処理)
図4は、図3のステップS6における読取送信処理の手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS11では、制御部13は、原稿101の画像103を読み取るように読取部7を制御する。これにより、原稿101の画像103の画像データが生成され、制御部13のRAM又は外部記憶装置に記憶される。なお、この動作は、公知のFAXや複合機における動作と同様でよい。制御部13は、原稿101が読取部7に配置されていない場合に、エラーを報知するように報知部17を制御し、その後のステップ(S12〜S14)をスキップするなどしてもよい。
ステップS12では、制御部13は、読み取られた画像103の画像データに基づいて、画像103に含まれていたマーク107を抽出する。なお、複数のマーク107が抽出されてもよいこと等は、既に述べたとおりである。
ステップS13では、制御部13は、記憶部11を参照して、抽出したマーク107に対応する宛先情報を検索する。なお、検索によって1つのマーク107に対して複数の宛先情報が抽出されてもよいこと等は、既に述べたとおりである。
図4の例では、便宜上、マーク107の抽出と、宛先情報の抽出とを別のステップとして示している。ただし、後述するように、実際の画像処理においては、両者は一体的に行われてもよい。
ステップS14では、制御部13は、抽出した宛先情報が示す宛先にステップS11で読み取った画像103の画像データを送信する。
(マークに基づく宛先特定のための処理)
図5は、図4のステップS12及びS13の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。ステップS21〜S24(及びS28)はステップS12に相当し、ステップS25〜S27(及びS28)はステップS13に相当する。
ステップS21では、制御部13は、記憶部11の第1領域データ21を読み出して、ステップS11で読み取った画像103(厳密にはステップS11で生成した画像データに基づく画像)における第1領域R1を特定する。ここでいう特定では、例えば、制御部13は、第1領域R1の4隅の座標(4隅の座標に相当する情報を含むものとする)を、後に容易に使用可能に、RAMの適宜な記憶領域に記憶させる。
ステップS22では、制御部13は、記憶部11の指定パターンデータ23を読み出して、ステップS21で特定した第1領域R1において、指定パターン109を探索する。すなわち、指定パターン109に一致する画像を第1領域R1において探索する。なお、ここでいう一致は、両画像の類似性が一定の基準を超えて高いことをいい、厳密な意味で完全に一致することは意味しない。制御部13は、指定パターン109に一致する画像を見つけると、例えば、その座標(別の観点では第2領域R2の座標)を特定する。ここでいう特定は、例えば、上記の第1領域R1の座標の特定と同様である。
指定パターンデータ23に基づく指定パターン109と第1領域R1内の画像との一致の判定には、公知の種々の方法が適用されてよい。例えば、一致の判定は、画像自体の比較によってなされてもよいし、特徴量の比較によってなされてもよい。一致すると判定するときの閾値も適宜に設定されてよい。また、例えば、指定パターンデータ23をテンプレートとして、比較される第1領域R1内の画像データの位置を少しずつ(例えば1画素ずつ)ずらしながら一致するか否かの判定をしてもよいし、第1領域R1内を領域抽出によって複数の領域に分けることなどにより、指定パターン109である可能性がある画像を1以上抽出し、その抽出した画像が指定パターンデータ23に基づく指定パターン109と一致するか否か判定してもよい。また、ノイズを除去するための適宜な画像処理がなされてもよい。
なお、第1領域R1を利用しない態様においては、指定パターン109の探索は、例えば、画像103全体を対象として行われる。
ステップS23では、制御部13は、ステップS22において、指定パターン109が第1領域R1において見つかったか否か判定し、見つかったと判定したときは、ステップS24に進み、見つからなかったと判定したときは、ステップS28に進む。
ステップS24では、制御部13は、ステップS22において見つけた指定パターン109によって示された第2領域R2からマーク107(の画像データ)を取得する。なお、ここでいう取得は、例えば、制御部13がそのRAM又は外部記憶装置に記憶されている画像103の画像データからマーク107の画像データをRAM(別の記憶領域)にコピーすることであってもよいし、単に画像103の画像データ内においてマーク107の画像データに相当する部分のメモリアドレスを特定することであってもよい。
第2領域R2内の全ての画像がマーク107として利用されるように規定されているときは、例えば、制御部13は、第2領域R2内の全ての画像をマーク107として取得する。なお、この態様においては、制御部13の実際の処理としては、ステップS22とS24とは同一又は一体のステップとなる。第2領域R2内の全ての画像をマーク107として取得する態様は、例えば、第2領域R2の大きさとマーク107の大きさとの差が小さくなるように規定されているときや、第2領域R2とマーク107とが1対1になるように規定されているときにも適用されてよい。
また、例えば、制御部13は、領域抽出によって第2領域R2を複数の領域に分けることによって、第2領域R2からマーク107である可能性がある画像を1以上特定して取得してもよい。なお、この態様において、制御部13は、マーク107である可能性がある画像を抽出できなかったときは、ステップS25には進まずに、ステップS28に進む。
なお、第1領域R1及び第2領域R2を利用しない態様においては、マーク107の探索及び取得(例えば領域抽出による)は、画像103全体を対象として行われ、第1領域R1を利用して第2領域R2を利用しない態様においては、マーク107の探索及び取得(例えば領域抽出による)は、第1領域R1を対象として行われる。
ステップS25では、制御部13は、ステップS24で取得したマーク107(の画像データ)と、テーブル25に保持されている複数のマーク107の1つ(後述するように順次選択される。)とが互いに一致するか否か判定する。そして、制御部13は、一致すると判定したときはステップS26に進み、一致しないと判定したときは、ステップS27に進む。なお、ここでいう一致は、ステップS22と同様に、両画像の類似性が一定の基準を超えて高いことをいい、厳密な意味で完全に一致することは意味しない。
読み取られたマーク107とテーブル25のマーク107との一致の判定には、ステップS22と同様に、公知の種々の方法が適用されてよい。例えば、一致の判定は、画像自体の比較によってなされてもよいし、特徴量の比較によってなされてもよい。一致すると判定するときの閾値も適宜に設定されてよい。また、ノイズを除去するための適宜な画像処理がなされてもよい。図5で示す例では、原稿101から読み取られたマーク107は、ステップS24等によって画像103から抽出されたものであるから、テンプレートマッチングのように座標をずらす必要性は低いが、必要に応じて、読み取られたマーク107とテーブル25のマーク107との座標をずらしながら一致の判定をしてもよい。
ステップS26では、制御部13は、ステップS25において、読み取られたマーク107に一致するとされたテーブル25のマーク107と対応付けられている宛先情報をテーブル25から取得する。なお、ここでいう取得は、例えば、制御部13がテーブル25(外部記憶装置)に記憶されている宛先情報を、後に容易に使用可能に、RAM(別の記憶領域)にコピーすることをいう。そして、制御部13は、既述のステップS14に進む。
ステップS27では、すなわち、ステップS25で一致しないと判定したときは、制御部13は、テーブル25の全てのマーク107(テンプレート)について、読み取られたマーク107との一致の判定が終了したか否か判定する。そして、制御部13は、終了していないと判定したときは、ステップS25に戻り、まだ比較をしていないテーブル25のマーク107について、読み取られたマーク107との一致の判定を行う。一方、制御部13は、テーブル25の全てのマーク107について一致の判定が終了したと判定したときは、ステップS28に進む。
ステップS28では、すなわち、読み取られた画像103から指定パターン109が見つからなかったとき、又は、読み取られたマーク107に一致するマーク107がテーブル25に保持されていなかったとき等においては、制御部13は、エラーを報知するように報知部17を制御する。そして、制御部13は、ステップS1に戻る。
なお、図5では、マーク107の取得(ステップS24)と、その取得されたマーク107とテーブル25のマーク107との一致の判定(ステップS25)とを別個に示しているが、これらは同一乃至は一体の処理であってもよい。
例えば、第1領域R1及び第2領域R2を利用しない態様においては、テーブル25の複数のマーク107から1つのマーク107をテンプレートとして順次選択し、その選択したテンプレートと一致する画像を、画像103の全体を対象として探索してよい。この場合、読み取られた画像103からのマーク107の抽出とテーブル25の検索とは同時に行われる。
同様に、例えば、第2領域R2を用いず、かつ第1領域R1がマーク107よりも大きいことが許容されている態様では、第1領域R1を対象に探索が行われてよい。第2領域R2がマーク107よりも大きいことが許容されている態様では、第2領域R2を対象に探索が行われてよい。
(送信処理)
図6は、図4の送信処理(ステップS14)の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS31では、制御部13は、ステップS13(S26)で取得した宛先情報が示す宛先へ、ステップS11で読み取った画像103を送信してよいか否か確認するための報知を行うように報知部17を制御する。なお、ここでは、制御部13は、単に送信の可否を問うだけではなく、画像通信装置1のユーザが宛先を認識できるテキスト情報(例えば、宛先となる通信端末5のユーザ名、宛先となるアカウントのユーザ名、又は、宛先情報自体)も報知する。
例えば、報知部17が表示装置を含む場合は、「○○さんへ送信してもよいですか?」のような表示を行う。また、例えば、報知部17がスピーカを含む場合は、上記のようなテキスト情報を音声で出力する。「○○さん」に代えて、宛先情報自体を用いて、「03−3502−…へ送信してもよいですか?」のような表示又は音声出力がなされてもよい。
「○○さん」のような宛先を示す(宛先情報以外の)テキスト情報は、例えば、特に図示しないが、テーブル25の各データDにおいて、マーク107及び宛先情報と対応付けて予め登録されている。この登録は、例えば、ユーザの操作部15に対する操作によって行われ、テキスト情報の内容はユーザの任意である。なお、この場合、テキスト情報の内容は、ユーザのみが宛先を認識できる内容であることもある。また、登録は、ステップS6の以前に、画像通信装置1が通信端末5等から画像などのデータを受信したときに、そのデータに含まれる送信元の情報に基づいて画像通信装置1が自動的に行ってもよい。また、宛先を示すテキスト情報は、ステップS26からステップS31までの間に、画像通信装置1が宛先情報に基づいてネットワーク3上のサーバ又は通信端末5から取得してもよい。総じて言えば、宛先を示すテキスト情報は、画像通信装置1、ネットワーク3(サーバ)及び通信端末5のいずれかにおいて、宛先に対応付けられたものである。
ステップS32では、制御部13は、操作部15に対して送信を許可する操作(許可操作)がなされたか否か判定し、なされたと判定したときは、ステップS33に進み、なされていないと判定したときは、ステップS34に進む。
ステップS33では、制御部13は、画像103からマーク107及び指定パターン109を削除するように画像103の画像データを修正する。例えば、制御部13は、指定パターン109及びその内部領域(第2領域R2)を白地にするように画像データを修正する。あるいは、例えば、制御部13は、指定パターン109の周囲の画素の濃淡及び/又は色を補間する新たな画像を指定パターン109及びその内部領域に形成するように画像データを修正する。なお、ステップS33のような処理は組み込まれなくてもよい。
ステップS34では、制御部13は、ステップS33で修正した画像データをステップS13(S26)で取得した宛先情報が示す宛先へ送信する。なお、この送信方法は、図2を参照して既に説明したように、公知の種々の方法と同様でよい。
ステップS35では、すなわち、ステップS32で許可操作が検知されなかったときは、制御部13は、送信の中止を指示する操作(不許可操作)がなされたか否か判定する。そして、制御部13は、不許可操作がなされたと判定したときは、ステップS33及びS34をスキップして図6の処理を終了する。一方、制御部13は、不許可操作がなされていないと判定したときは、ステップS36に進む。
ステップS36では、制御部13は、確認報知(ステップS31)を行ってから所定の待ち時間が経過したか否かを判定する。所定の待ち時間は、画像通信装置1の製造者において予め画像通信装置1に対して設定されていてもよいし、ユーザの操作部15に対する操作によって設定可能であってもよい。
制御部13は、待ち時間が経過していないと判定したときは、ステップS32に戻る。一方、待ち時間が経過したと判定したときは、制御部13はステップS33に進む。これにより、確認報知(ステップS31)がなされてから、許可操作及び不許可操作のいずれもなされないときは、画像103の送信が行われることになる。
以上のとおり、本実施形態では、画像通信装置1は、光電変換によって画像データを生成する読取部7と、画像データを送信する送信部9と、複数のマーク107と複数の宛先情報とを対応付けて記憶する記憶部11と、画像データに基づく画像に含まれているマーク107に対応付けられている宛先情報を記憶部11から取得し、その取得した宛先情報が示している宛先へ画像データを送信部9に送信させる制御部13と、を有している。
従って、図1(a)を参照して説明したように、原稿101に対してマーク107を付すだけで、その原稿101の画像103を送信すべき宛先を画像通信装置1に認識させることができ、操作性乃至は利便性が向上する。
また、本実施形態では、画像通信装置1は、ユーザの操作を受け付ける操作部15を有しており、制御部13は、操作部15に対する操作に応じてマーク107及び宛先情報を互いに対応付けて記憶部11に記憶させる(ステップS2)。
すなわち、マーク107と宛先情報との対応付けは、画像通信装置1のユーザの任意である。従って、例えば、ユーザにとって分りやすいマーク107を適宜に宛先情報に対応付けることができ、利便性が向上する。
また、本実施形態では、画像通信装置1は、印刷部19を有しており、制御部13は、宛先情報と対応付けて記憶されているマーク107を記憶部11から読み出し、読み出したマーク107を印刷部19に印刷させる(ステップS4)。
従って、例えば、原稿101に対して手書きでマーク107を形成する場合に比較して、原稿101のマーク107と、記憶部11に記憶されているマーク107との類似性が高くなる。その結果、誤送信のおそれが低減される。また、例えば、簡便に、原稿101に貼り付けられるマーク107、又はマーク107が形成された用紙を大量に用意することができ、ユーザの作業負担が軽減される。
また、本実施形態では、制御部13は、画像データに基づく画像の外縁を基準にその位置及び範囲が予め規定されている第1領域R1に含まれているマーク107のみを、記憶部11にてマーク107に対応付けられている宛先情報の取得に用いる(ステップS21及びS24)。
すなわち、制御部13は、第1領域R1に含まれている画像のみを、宛先情報を示すマーク107として認識する。従って、例えば、メイン画像105に、記憶部11に保持されているマーク107と類似する画像が含まれていたとしても、当該画像が第1領域R1に含まれていなければ、マーク107として認識されないから、誤送信のおそれが低減される。また、例えば、第1領域R1においてのみ、マーク107(実施形態では直接には指定パターン109)の探索を行えばよいから、制御部13におけるパターン認識の処理の負担が低減される。
また、本実施形態では、制御部13は、画像データに基づく画像に含まれている指定パターン109によってその位置及び範囲が規定されている第2領域R2に含まれているマーク107のみを、記憶部11にてマーク107に対応付けられている宛先情報の取得に用いる(ステップS22〜S24)。
すなわち、制御部13は、第2領域R2に含まれている画像のみを、宛先情報を示すマーク107として認識する。従って、例えば、メイン画像105に、記憶部11に保持されているマーク107と類似する画像が含まれていたとしても、当該画像が第2領域R2に含まれていなければ、マーク107として認識されないから、誤送信のおそれが低減される。また、指定パターン109は、ユーザが任意に設定できるマーク107に比較して、簡素なものとしたり、適切なデータ形式(例えばベクタ形式)にしたりすることができるから、画像103(本実施形態では第1領域R1)においてマーク107を直接に探索する場合に比較して、誤認識のおそれ及び処理負担を低減できる。
また、本実施形態では、制御部13は、画像データに基づく画像に含まれているマーク107を画像から消去するように画像データを修正し、その修正された画像データを、前記の取得した宛先情報が示している宛先へ送信部9に送信させる(ステップS33及びS34)。
従って、例えば、画像通信装置1のユーザがどのようなマーク107を宛先に対応付けているかを、宛先のユーザに知られることを避けることができる。これにより、例えば、画像通信装置1のユーザは、意図しないトラブルを心配することなく、自由に種々のマーク107を宛先に対応付けることができる。また、メイン画像105の内容によっては、マーク107を削除するだけで、マーク107を付す前のメイン画像105が再現される。
また、本実施形態では、画像通信装置1は、ユーザに報知を行う報知部17と、ユーザの操作を受け付ける操作部15と、を有している。制御部13は、取得した宛先情報が示している宛先を示しているテキスト情報(「○○さん」又は宛先情報)を報知部17に報知させ(ステップS31)、その報知後、操作部15に対して所定の不許可操作がなされたときは、取得した宛先情報が示している宛先へ画像データを送信しないように(ステップS35)送信部9を制御する。
従って、例えば、画像通信装置1のユーザが、マーク107と宛先情報との対応付けを誤っているとき、又は、画像通信装置1によるマーク107のパターン認識が誤っているときなどに、誤送信されるおそれが低減される。
制御部13は、テキスト情報を報知してから不許可操作がなされずに所定時間が経過したとき、取得した宛先情報が示している宛先へ画像データを送信部9に送信させる(ステップS36及びS34)。
従って、例えば、ユーザは、テキスト情報を見て宛先に誤りがないときは、新たに操作を行う必要はなく、利便性が向上する。なお、操作部15に対して所定の許可操作がなされたときは、取得した宛先情報が示している宛先へ画像データが送信され(ステップS32及びS34)、許可操作及び不許可操作のいずれもがなされずに所定時間が経過したときに送信される態様においては、例えば、所定時間を比較的長く設定して宛先の確認に十分な時間を確保しつつ、ユーザが急いでいるときに早期に送信することができる。
なお、以上の実施形態において、読取部7は、画像データ生成部の一例であり、指定パターン109は、所定のパターンの一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
実施形態の説明では、典型的な動作に加えて、適宜に複数の動作を説明した。この複数の動作には、同時に行うことができないものもあるが、そのような動作は、ユーザの操作部に対するモード選択の操作によって、一の画像通信装置において選択的に実行されてもよい。
実施形態では、マークの位置が画像の外縁によって規定される態様では、マーク(その全体)が第1領域に含まれることを要件とし、マークの位置が指定パターンによって規定される態様では、マーク(その全体)が第2領域に含まれることを要件とした。しかし、およその位置が画像の外縁又は指定パターンによって規定されるだけであってもよい。例えば、指定パターンは、マークの右上に隣接するものとして規定されるなどしてもよい。ただし、パターン認識における誤認のおそれの低減及び処理の負担の低減の観点からは、実施形態のように、マーク全体が含まれる領域で規定されることが好ましい。
実施形態では、第1領域及び/又は第2領域を利用する場合に、これらの領域内で、指定パターン又はマークを探索した。しかし、逆に、原稿の画像全体から指定パターン又はマークの可能性がある画像を抽出し、その抽出した画像が第1領域又は第2領域内にあるか否か判定してもよい。
実施形態では、許可操作がなされたか否か判定したが(ステップS32)、そのような判定をせず、確認報知(ステップS31)から所定時間内に不許可操作がなされないときに送信してもよい。逆に、許可操作がなされることを送信のための必須の要件とし、その一方で、所定時間が経過したか否かの判定(ステップS36)をなくしてもよい。もちろん、ステップS31、S32、S35及びS36等を行わないようにしてもよい。