JP2017037136A - 液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、かつ下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の酸誘導体に由来する部分構造を有する重合体[P]を液晶配向剤に含有させる。
(A1は芳香族環基、脂環式基又は複素環基であり、環部分に置換基を有していてもよい。R1は窒素含有複素環を有するn価の有機基であり、R2は1価の有機基であり、X1は水酸基又はハロゲン原子である。nは1又は2である。)
【選択図】なし
Description
<2> ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、かつ下記式(3)で表される部分構造、下記式(4)で表される部分構造、下記式(5)で表される部分構造、及び下記式(6)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体[P]を含有する、液晶配向剤。
<3> 上記<1>又は上記<2>に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<4> 上記<3>に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
「テトラカルボン酸ジエステル」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシル基のうちの2個がエステル化された化合物を意味する。「テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシル基のうちの2個がエステル化され、残りの2個がハロゲン化された化合物を意味する。また、「ジカルボン酸モノエステル」とは、ジカルボン酸が有する2個のカルボキシル基のうちの1個がエステル化された化合物を意味する。「ジカルボン酸モノエステルモノハロゲン化物」とは、ジカルボン酸が有する2個のカルボキシル基のうちの1個がエステル化され、残りの1個がハロゲン化された化合物を意味する。
本開示の液晶配向剤は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、かつ下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の酸誘導体(以下、「特定酸誘導体」ともいう。)に由来する部分構造を有する重合体[P]を含有する。
上記式(1)で表される化合物(以下、「特定酸無水物」ともいう。)は、n=2の場合にはテトラカルボン酸二無水物であり、n=1の場合にはジカルボン酸無水物である。上記式(1)中のA1としては、例えば、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香族環、シクロペンタン環やシクロヘキサン環等の脂肪族環、又はピリジン環等の複素環の環部分から3個の水素原子を取り除いた基が挙げられる。A1の環部分には、置換基が導入されていてもよい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルコキシ基、シアノ基等が挙げられる。
R3の2価の炭化水素基は、炭素数1〜5のアルキル基、2価の芳香族環基、又は2価の脂環式基であることが好ましい。R3において、2価の芳香族環基及び脂環式基としては、例えばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロへキシレン基、これらの基の環部分に置換基を有する基などが挙げられる。なお、置換基の例示は、A1で例示した基などが挙げられる。R3の複素環基としては、例えば、R1で例示した窒素含有複素環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基などが挙げられる。
R3は、より好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基又は2価の芳香族環基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基である。
特定ジカルボン酸無水物としては、式(b−3)〜式(b−5)、式(b−8)、及び式(b−9)のそれぞれで表される化合物が好ましく、より好ましくは、式(b−3)、式(b−5)、及び式(b−9)のそれぞれで表される化合物である。
上記式(2)で表される化合物は、好ましくは、上記式(1−1)で表される化合物の誘導体であり、好ましい具体例としては、上記式(a−1)〜式(a−20)のそれぞれで表される化合物のジエステル化合物及びジエステルジハロゲン化物、並びに、上記式(b−1)〜式(b−9)のそれぞれで表される化合物のモノエステル化合物及びモノエステルものハロゲン化物が挙げられる。
重合体[P]としてのポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸[P]」ともいう。)は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて末端封止剤とともに反応させることによって得ることができる。このポリアミック酸[P]の合成に際しては、特定酸無水物を使用する。特定酸無水物としては、特定テトラカルボン酸二無水物のみを用いてもよく、特定ジカルボン酸無水物のみを用いてもよく、特定テトラカルボン酸二無水物と特定ジカルボン酸無水物とを併用してもよい。
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメート、1,4−ブチレングリコールビスアンヒドロトリメート、ジエチレングリコールビスアンヒドロトリメート、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)などを、挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。なお、その他のテトラカルボン酸二無水物は、これらの1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
特定酸無水物として特定ジカルボン酸無水物のみを用いる場合、その使用割合は、ポリアミック酸[P]の合成に際して使用するテトラカルボン酸二無水物の合計量に対して、1〜25モル%とすることが好ましく、2〜20モル%とすることがより好ましく、5〜20モル%とすることがさらに好ましい。
また、特定酸無水物として特定テトラカルボン酸二無水物と特定ジカルボン酸無水物とを併用する場合、その合計の使用割合は、ポリアミック酸[P]の合成に際して使用するテトラカルボン酸二無水物の合計量に対して、5モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、20モル%以上とすることがさらに好ましい。
ポリアミック酸[P]の合成に使用するジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどが挙げられる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸などの側鎖非導入型のジアミン、などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。ジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
側鎖導入型のジアミンを使用する場合、その配合量は、十分に高いプレチルト角特性を発現させる観点において、合成に使用する全ジアミンに対して、3モル%以上とすることが好ましく、5〜70モル%とすることがより好ましい。
で表される基を基本骨格として含有する構造、等が挙げられる。
光配向性構造を有する重合体[P]は、例えば光配向性構造を有するテトラカルボン酸二無水物、及び光配向性構造を有するジアミンの少なくともいずれかをモノマー組成に含む重合により得ることができる。この場合、光配向性構造を有するモノマーの使用割合は、光反応性の観点から、重合体の合成に使用するモノマーの全体量に対して20モル%以上とすることが好ましく、30〜80モル%とすることがより好ましい。
ポリアミック酸[P]の合成に際しては、末端封止剤として、特定ジカルボン酸無水物及びその他のジカルボン酸無水物のほか、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを使用することができる。これらの具体例としては、モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミン等を;モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等を、それぞれ挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミック酸[P]は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて末端封止剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。末端封止剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
重合体[P]としてのポリアミック酸エステル(以下、「ポリアミック酸エステル[P]」ともいう。)は、以下の方法[I]〜[III]、
[I]ポリアミック酸[P]とエステル化剤とを反応させる方法、
[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを、必要に応じてジカルボン酸モノエステルとともに反応させる方法、
[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを、必要に応じてジカルボン酸モノエステルモノハロゲン化物とともに反応させる方法、などによって得ることができる。
ポリアミック酸とエステル化剤との反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このとき、反応温度を−20℃〜200℃、反応時間を0.1〜24時間とすることが好ましい。有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に使用する溶媒などが挙げられる。
方法[II]の反応は、有機溶媒中において、適当な脱水触媒及び塩基の存在下で行うことが好ましい。脱水触媒としては、例えば4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムハライド、カルボニルイミダゾール、リン系縮合剤などが挙げられる。塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン等の3級アミンを好ましく使用できる。このとき、反応温度を−20℃〜150℃、反応時間を0.1〜24時間とすることが好ましい。
方法[III]の反応は、好ましくは塩基の存在下、有機溶媒中にて行われる。塩基としては、例えばピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン、水素化ナトリウムや水素化カリウム等のアルカリ金属類を好ましく使用できる。また、反応温度を−30℃〜150℃、反応時間を0.1〜24時間とすることが好ましい。
なお、ポリアミック酸エステル[P]は、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
重合体[P]としてのポリイミド(以下、「ポリイミド[P]」ともいう。)は、例えば、上記のように合成されたポリアミック酸[P]を、さらに脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
重合体[P]において、上記式(3)〜式(6)のそれぞれで表される部分構造の含有割合は、合成に際して使用する上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物の量に応じて調整することができる。重合体[P]は、上記式(3)で表される部分構造及び上記式(4)で表される部分構造よりなる群から選ばれる一種以上を少なくとも有していることが好ましい。これら好ましい部分構造の含有割合(2種以上有する場合にはそれらの合計量)は、重合体[P]が有する、単量体に由来する構造単位の全体に対して、2〜50モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることがより好ましく、10〜50モル%であることがさらに好ましい。
本開示の液晶配向剤は、重合体成分として重合体[P]を含有するが、重合体[P]以外のその他の重合体を含有していてもよい。かかるその他の重合体としては、例えば、特定酸誘導体に由来する部分構造を有さないポリアミック酸及びそのイミド化重合体、特定酸誘導体に由来する部分構造を有さないポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。液晶配向剤中にその他の重合体を含有させる場合、その含有割合は、液晶配向剤に含有される重合体成分の全量に対して、20重量%以下とすることが好ましく、10重量%以下とすることがより好ましい。
本開示の液晶配向剤は、上記の重合体[P]、及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶剤中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本開示の液晶表示素子は、上記の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶表示素子を適用する駆動モードは特に限定されず、TN型、STN型、IPS型、FFS型、VA型、MVA型、PSA型などの種々の駆動モードに適用することができる。
先ず、基板上に本開示の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−1)TN型、STN型、VA型、MVA型又はPSA型の液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、それぞれの基板における透明性導電膜の形成面上に、液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。ここで、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2O3−SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後にフォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性を更に良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与される。配向能付与処理としては、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで塗膜を一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。一方、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。
塗膜に照射する光は、偏光又は非偏光の放射線とすることができる。放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
(3−1)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、従来から知られている方法である。この方法では先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように、間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置する。次いで、2枚の基板の周辺部を、シール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造する。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。この方法では、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布する。次いで、液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、液晶を基板の全面に押し広げる。その後、基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化させることにより、液晶セルを製造する。
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
[重合体のイミド化率]
ポリイミドを含有する溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で1H−NMRを測定した。得られた1H−NMRスペクトルから、下記数式(1)を用いてイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1−A1/A2×α)×100 …(1)
(数式(1)中、A1は化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、A2はその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調整した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[合成例1]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物50モル部及び上記式(a−3)で表される化合物を50モル部、並びにジアミンとして4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート100モル部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、30℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸(以下、「重合体(PA−1)」とする。)を15重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液の粘度を測定したところ481mPa・sであった。
上記合成例1において、反応に使用するテトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸一無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1の通り変更した以外は、合成例1と同様にしてポリアミック酸を得た。なお、表1中の数値は、テトラカルボン酸二無水物及びジカルボン酸一無水物については、反応に使用したテトラカルボン酸二無水物及びジカルボン酸一無水物の合計量に対する各化合物の使用割合(モル%)を示し、ジアミンについては、反応に使用したジアミンの全体量に対する各化合物の使用割合(モル%)を示す。
(テトラカルボン酸二無水物)
a−3; 上記式(a−3)で表される化合物
a−8; 上記式(a−8)で表される化合物
a−11; 上記式(a−11)で表される化合物
a−16; 上記式(a−16)で表される化合物
a−20; 上記式(a−20)で表される化合物
A−1; 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
A−2; ピロメリット酸二無水物
A−3; 2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
A−4; エチレンジアミン四酢酸二無水物
A−5; 下記式(A−5)で表される化合物
b−3; 上記式(b−3)で表される化合物
B−1; 無水マレイン酸
(ジアミン)
C−1; 下記式(C−1)で表される化合物
C−2; 4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート
C−3; 4,4’−ジアミノジフェニルメタン
C−4; 2,4−ジアミノ−N,N−ジアリルアニリン
C−5; 4,4’−ジアミノジフェニルアミン
C−6; 3,5−ジアミノ安息香酸
C−7; 3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル
C−8; 4−(テトラデシルオキシ)ベンゼン−1,3−ジアミン
テトラカルボン酸二無水物として上記式(a−3)で表される化合物10モル部及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物90モル部、並びにジアミンとして4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート80モル部及び3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル20モル部をNMPに溶解し、室温で6時間反応を行った。次いで、NMPを追加してポリアミック酸濃度20重量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸をテトラカルボン酸二無水物の全使用量に対してそれぞれ1.0倍モルずつ添加して、80℃で5時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約50%のポリイミド(以下、「重合体(PI−1)」とする。)を15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液の粘度を測定したところ793mPa・sであった。
[実施例1:FFS型液晶表示素子]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として合成例1で得た重合体(PA−1)100重量部を、γ−ブチロラクトン(GBL)、NMP及びブチルセロソルブ(BC)からなる混合溶媒(GBL:NMP:BC=40:40:20(重量比))に溶解し、固形分濃度が3.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤を調製した。
図1に示すFFS型液晶表示素子を作製した。先ず、パターンを有さないボトム電極15、絶縁層14としての窒化ケイ素膜、及び櫛歯状にパターニングされたトップ電極13がこの順で形成された2系統の電極対を片面に有するガラス基板11aと、電極を設けていない対向ガラス基板11bを一対とし、ガラス基板11aの透明電極を有する面と対向ガラス基板11bの一面に、それぞれ上記(1)で調製した液晶配向剤を、スピンナーを用いて塗布して塗膜を形成した。次いで、この塗膜を80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中で230℃にて15分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。
次いで、ガラス基板上に形成した塗膜の各表面にコットンにてラビング処理を実施し、液晶配向膜12を得た。これらの基板を、互いの基板11a,11bのラビング方向が逆平行となるように直径3.5μmのスペーサーを介して貼り合せ、液晶MLC−6221(メルク社製)を注入し、液晶層16を形成した。さらに、基板11a,11bの外側両面に、偏光板(図示略)を2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより液晶表示素子10を作製した。
上記で製造したFFS型液晶表示素子につき、交流5Vの電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察した。表示領域中に異常ドメインが観察されなかった場合を液晶配向性「良好」、表示領域中に異常ドメインがひとつでも観察された場合を液晶配向性「不良」として評価した。その結果、この実施例では液晶配向性「良好」の評価であった。
(4)信頼性の評価
上記で製造したFFS型液晶表示素子につき、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定し、その値を初期VHR(VHR1)とした。次いで、初期VHR測定後の液晶表示素子につき、カーボンアークを光源とするウェザーメータを用いて5,000時間の光照射を行った後、上記同様にして電圧保持率(VHR2)を測定した。このときのVHRの変化率(ΔVHR)を下記数式(2)により算出し、ΔVHRによって液晶表示素子の信頼性を評価した。
ΔVHR[%]=(VHR1−VHR2)/(VHR1)×100 …(2)
評価は、ΔVHRが4.0%未満であった場合を信頼性「良好」、4.0%以上であった場合を信頼性「不良」として行った。その結果、実施例1では、ΔVHR=2.3%であり、信頼性「良好」であった。なお、測定装置としては、(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
重合体として下記表2に示す種類のものをそれぞれ使用したほかは、実施例1と同様にして液晶配向剤を調製するとともに、FFS型液晶表示素子を製造して液晶配向性及び信頼性の評価を行った。評価結果は下記表2に示した。表2には、初期VHRについても併せて示した。
重合体として合成例8で得た重合体(PA−8)を使用したこと、及びラビング処理に代えて光配向処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして液晶配向剤を調製するとともに、FFS型液晶表示素子を製造して液晶配向性及び信頼性の評価を行った。光配向処理は次のように行った。まず、プレベーク後の塗膜表面に、Hg−Xeランプを用いて、254nm及び313nmの輝線を含む偏光の紫外線を700mJ/cm2の照射量で基板法線方向から照射した後、230℃のクリーンオーブンで1時間加熱(ポストべーク)することにより液晶配向能を付与した。
上記で製造した光FFS型液晶表示素子につき、上記実施例1と同様にして液晶配向性を評価した結果「良好」であった。また、光照射前後の電圧保持率の変化率により信頼性を評価した結果、VHR1は98.5%、また、ΔVHRは2.3%であり、信頼性「良好」と判断された。
(1)液晶配向剤の調製
重合体として合成例9で得た重合体(PA−9)100重量部をNMP及びBCの混合溶媒(NMP:BC=50:50(重量比))に溶解し、固形分濃度6.5重量%の溶液とした。この溶液を十分に撹拌した後、孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
上記(1)で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.06μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数500rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。また、上記の操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化型接着剤で液晶注入口を封止することにより、TN型液晶セルを製造した。
上記(2)で製造したTN型液晶セルにつき、上記実施例1と同様にして液晶配向性を評価した結果「良好」であった。また、光照射前後の電圧保持率の変化率により信頼性を評価した結果、VHR1は99.5%、また、ΔVHRは1.7%であり、信頼性「良好」と判断された。
(1)液晶配向剤の調製
重合体として合成例10で得た重合体(PI−1)100重量部をNMP及びBCを加えて、固形分濃度6.5重量%、溶媒の混合比がNMP:BC=50:50(重量比)の溶液とした。この溶液を十分に撹拌した後、孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤を調製した。
上記で調製した液晶配向剤を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板(厚さ1mm)の透明電極面上に、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)し、さらに200℃のホットプレート上で60分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、透明導電膜上に液晶配向膜を有するガラス基板を一対(2枚)得た。次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することによりVA型液晶セルを製造した。
上記(2)で製造したVA型液晶セルにつき、上記実施例1と同様にして液晶配向性を評価した結果「良好」であった。また、光照射前後の電圧保持率の変化率により信頼性を評価した結果、VHR1は99.2%、また、ΔVHRは1.8%であり、信頼性「良好」と判断された。
Claims (4)
- ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、かつ下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の酸誘導体に由来する部分構造を有する重合体[P]を含有する、液晶配向剤。
- 請求項1又は2に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
- 請求項3に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
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