JP2017035674A - 中空糸膜モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】製造時の設計精度や組み立て精度を緩和するとともに、芯管を使用済みの中空糸膜束と分離できるため芯管を廃棄せずに済み、製造時間及び製造コストの削減並びに省資源化を図ることができる中空糸膜モジュールを提供すること。【解決手段】中空糸膜モジュール10は、中空糸膜束30と、該中空糸膜束30にの両端部を固定する一対の管板50,51と、該中空糸膜束30及び該管板50,51を収容する容器11とを備える。中空糸膜束30は、その内部に中空糸膜20に囲まれた空洞部31を有し、少なくとも1つの管板51には空洞部31と連通する貫通孔53が設けられており、容器11は、貫通孔53を通じて空洞部31に着脱可能に挿入される芯管70を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、混合流体中の特定の物質の分離に好適に用いられる中空糸膜モジュールに関する。
中空糸膜モジュールは、選択的透過性を有する多数本の中空糸膜を束ねた中空糸束を容器内に収納して形成されている。通常、この容器は、少なくとも混合流体導入口、透過流体排出口、非透過流体排出口を備えている。容器内における中空糸膜束の配置は、容器外部と中空糸膜の内部空間との間の流通経路と、容器外部と中空糸膜の外部空間との流通経路とが隔絶するようになされている。
このような中空糸膜モジュールは、小型で有効膜面積を大きくできるため、混合流体から特定成分を高効率で分離・濃縮する有用な技術であり、ガスや液体などの分離(酸素分離、窒素分離、水素分離、水蒸気分離、二酸化炭素分離、有機蒸気分離等)等の種々の用途に利用されている。このため中空糸膜モジュールは分離膜モジュールと呼ばれることもある。中空糸膜モジュールに関する従来の技術として、中空糸膜束の略中央部に芯管と呼ばれる中空の管を配置した構造のものも知られている。芯管は、周面に多数の貫通孔を有している。例えば、特許文献1及び2には芯管を原料ガス導入口又は非透過ガス排出口として用いることが記載され、特許文献3及び4には、芯管を除湿用のパージガスの導入口として用いることが記載されている。
従来の芯管を有する中空糸膜モジュールの組み立て方法としては、まず芯管に中空糸膜束をロール状に巻回する等して芯管付きの中空糸膜束を形成した後、これを容器内に収納することで中空糸膜モジュールが組みあげられていた。容器には芯管と連結するための孔や管等の部材が設けられ、芯管付きの中空糸膜束を容器内に収納する際に、容器における上記の管や孔を芯管と連結させていた。
特開平2−59016号公報 特開平5−212253号公報 特開平3−110号公報 特開2000−51639号公報
しかしながら、従来技術のように、芯管付き中空糸膜束を容器に収容する方法では、中空糸膜モジュールの組み立て時に芯管を容器の孔や管と安定且つ気密に連結するために、製造精度(例えば、中空糸膜束、管板、芯管、容器等の部品の中心性、垂直性、表面粗さなどの寸法精度、金型の寸法精度、部品の組み込み精度などを考慮した設計精度等)として高いものが要求とされていた。このため、従来の中空糸膜モジュールは製造コストが大きいという問題があった。また従来、芯管付き中空糸膜束は交換可能な部品、すなわちカートリッジとして廃棄され、容器のみが再利用されていたところ、中空糸膜束に比べて耐久時間が長い芯管を中空糸膜束と共に廃棄することは、省資源の観点から好ましいものではなかった。
本発明は、一方向に延びるように配置された複数の中空糸膜の集合体からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束の長手方向の両端部を固定する一対の管板と、該中空糸膜束及び該管板を収容する容器とを備えた中空糸膜モジュールであって、
前記中空糸膜束は、前記中空糸膜に囲まれた空洞部を有し、該空洞部は、該中空糸膜束の横断面方向の中心域に位置し、且つ前記中空糸膜の延びる方向と同方向に延びる形状をしており、
少なくとも1つの前記管板に、前記空洞部と連通する貫通孔が設けられており、前記容器は、前記貫通孔を通じて前記空洞部に着脱可能に挿入される芯管を一体的に有する、中空糸膜モジュールを提供することにより、前記の課題を解決したものである。
本発明によれば、気密性や安定性等の性能を維持しつつ製造時の設計精度や組み立て精度の緩和が可能であるとともに、芯管をカートリッジである中空糸膜束と一体的に設けないため中空糸膜束と共に芯管を廃棄する必要がなく、製造時間及び製造コストの削減や省資源化を図ることができる中空糸膜モジュールを提供することができる。
図1は、本発明の中空糸膜モジュールの第1の実施形態の構造を示す断面図である。 図2は、図1に示す中空糸膜モジュールの分解図である。 図3は、本発明の中空糸膜モジュールの第2の実施形態の構造を示す断面図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の中空糸膜モジュールの第1実施形態が示されている。同図に示す中空糸膜モジュール10は、2種以上のガスや液体などからなる混合流体の分離に用いられるものである。中空糸膜モジュール10は、中空糸膜束30と、該中空糸膜束30における両端部を固定する管板50,51と、中空糸膜束30及び管板50,51を収容する容器11とを備えている。
中空糸膜束30は、複数本の中空糸膜20の集合体から構成されている。本実施形態では中空糸膜20は、一方向に向けて配列するように束ねられている。尤も場合によっては中空糸膜20を互いに交差するように配置してもよい。あるいは中空糸膜20を織物状にしてシート状エレメントを構成し、このシート状エレメントを複数枚積層して用いたり、又はシート状エレメントをロール状に捲回して用いたりすることもできる。シート状エレメントは、緯糸及び経糸の少なくとも2種類の糸を織って形成されており、緯糸及び経糸の少なくとも一方に中空糸膜20を用いればよい。中空糸膜束30は、数百本ないし数万本の中空糸膜20から構成されている。中空糸膜束30は、略円柱状や略角柱状を始めとする柱状の外形をしており、本実施形態では略円柱状の外形をしている。
中空糸膜束30は、中空糸膜20の延びる方向に沿って長手方向Yを有し、かつ長手方向Yと直交する方向である幅方向Xを有する。本実施形態では中空糸膜20の長手方向は中空糸膜束30の長手方向と同方向である。本実施形態では、幅方向Xに沿う中空糸膜束30の断面の外形は例えば略円形である。場合によっては、中空糸膜束30の断面の外形を他の形状、例えば略矩形状とすることもできる。
図2に示すように、中空糸膜束30は、内部に中空糸膜20に囲まれた空洞部31を有する。空洞部31は中空糸膜束30中の中空糸膜20が配されていない部分であり、中空糸膜束30の長手方向Yに沿って延びる形状をしている。すなわち空洞部31は、中空糸膜の延びる方向と同方向に延びた形状をしている。空洞部31は、中空糸膜束30における長手方向Yの両端部の少なくとも一方に開口している。図1及び図2に示す例では空洞部31は中空糸膜束30をY方向に貫通する形状をしており、空洞部31は、長手方向Yの両端部に開口して開口部32、33を形成している。後述するように、一方の開口部32は、管板50に閉塞されている。しかしながら空洞部31は、開口部32及び33のうち、芯管70が挿入する側の開口部33のみを有し他方の開口部32を有していなくてもよい。本実施形態において、空洞部31は、略円柱状や略角柱状等の柱状に形成されている。
本実施形態において、空洞部31のX方向に沿う断面の形状は、後述する芯管70における、その長手方向に直交する断面の形状と略同形状に形成されている。しかし空洞部31のX方向に沿う断面の形状は、これに限定されず芯管70が挿入可能な形状であればよい。空洞部31は、中空糸膜束30の横断面、すなわち本実施形態でいう幅方向Xに沿う断面の中心域に位置する。本実施形態では、空洞部31の柱状の中心軸が、中空糸膜束30の外形の柱状の中心軸と略一致している。また空洞部31における長手方向Yの長さは、芯管70の長さに対応して適宜定められる。本実施形態では空洞部31のY方向長さは中空糸膜束30のY方向長さのほぼ全体に亘って形成されている。
上述した管板50,51は、中空糸膜20の延びる方向であるY方向の両端部の位置において、中空糸膜束30を固定している。この管板50,51は、中空糸膜束30を、容器11における後述するケーシング40の内壁に固定するものである。管板50,51の外形は、ケーシング40のX方向の断面形状に対応した形状に形成され、本実施形態では略円形状に形成されている。管板50,51はポッティング剤から構成されている。ポッティング剤としては、当該技術分野においてこれまで用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えばポッティング剤として各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、及びポリアミドなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やウレタン樹脂などが挙げられる。管板50,51は、中空糸膜束30を構成する複数本の中空糸膜20どうしを一体に固着する役割を果たす。本実施形態において管板50,51と、ケーシング40の内面との間は固着されておらず、Oリング85により密封されている。このため本実施形態では、モジュール10の分解時に、カートリッジである管板50,51及び中空糸膜束30を、ケーシング40と分離できる。Oリング85の材質としては、後述するOリング80の材質と同様のものを用いることができる。ケーシング40の内面と管板50,51との間は、Oリング以外のシーリング手段を用いて密封されていてもよく、後述する他の実施形態のように、固着されていてもよい。
図2に示すように、管板50,51のうちの一つの管板51に貫通孔53が形成されている。貫通孔53は、管板51を長手方向Yに沿って貫通して形成した孔である。貫通孔53は中空糸膜束30の空洞部31と連通する。具体的には、貫通孔53が中空糸膜束30の空洞部31の開口部33と略一致する位置に設けられている。貫通孔53は、その長手方向Yに沿う中心軸が、空洞部31の中心軸及び/又は中空糸膜束31の中心軸と略一致することが好ましい。貫通孔53をY方向から側面視したときの形状は芯管70のX方向に沿う断面の外形と略同じであることが好ましい。図2に示すとおり、空洞部31と同様、貫通孔53は、中空糸膜20に囲まれ、且つ、中空糸膜20が配されていない中空の部分である。
本実施形態においては、他方の管板50において貫通孔53と同様の貫通孔は設けられていない。貫通孔53と反対側に位置する空洞部31の開口部32は、管板50により閉塞されている。しかしながら、貫通孔53は、管板50,51の両方に形成されていてもよい。図1及び図2に示す例では、管板50は、管板51側に開口した凹部55を有している。この凹部55は空洞部31に挿入される芯管70の先端部73と嵌合可能に設けられている。
中空糸膜束30及び管板50,51を収容する容器11はケーシング40と、蓋体60,61とを有する。ケーシング40は一方向に長い中空部45を有する。ケーシング40の中空部45は、中空糸膜束30の外形の形状と略相補形状となっている。ケーシング40の中空部45は、該中空部45の長手方向に沿うケーシング40の前後端部において開口して開口部41を形成している。ケーシング40の外形、及びケーシング40における中空部45の数や配置は限定されない。例えば本実施形態では、ケーシング40は中空部45を一つのみ有し、またケーシング40の外形は、中空部45の長手方向と一致する長手方向を有する筒状、具体的には略円筒状等に形成されている。しかしながら、ケーシング40の外形は立方体状等任意の形状であってよく、また中空部45を複数有することができる。なおケーシング40が中空部45を複数有する場合、複数存在する中空部45の長手方向は通常一致している。
先に述べた中空糸膜束30及び管板50,51は、開口部41を通じてケーシング40の中空部45に収容される。中空糸膜束30は、その収容状態において、該中空糸膜束30を構成する各中空糸膜20の各端部が、各開口部41において開口するように、ケーシング40内に収容される。また中空糸膜束30は、その長手方向Yにケーシング40の中空部45の長手方向が一致するように、ケーシングに収容される。また、中空糸膜束30は管板51の貫通孔53がケーシング40の開口部41において開口するように該ケーシング40に収容される。
蓋体60,61はケーシング40の各開口部41を着脱可能に閉塞するものである。本実施形態では、貫通孔53が開口した開口部41を閉塞する蓋体61に、芯管70を設けている。芯管70は、蓋体61の内面側から突出して、蓋体61がケーシング40の開口部41を閉塞した状態において貫通孔53に挿入可能に形成されている。容器11、具体的には蓋体61は、芯管70を一体的に有している。「一体的に有している」とは、芯管70と蓋体61とが、連結及び接合加工を伴わずに一つの部品で構成されている場合が含まれる。しかしながら、「一体的に有している」とはそのような一部品として形成されている形態のみならず、芯管70と蓋体61とが互いに位置関係が固定した形で連結又は接合され、一方を移動させることにより、他方も共に移動する関係であることを含む。
図1に示すように、芯管70は、蓋体61がケーシング40の開口部41を閉塞した状態において、蓋体61におけるケーシング40の開口部41と対向する板面65から、ケーシング40の長手方向Yに延びるように突出している。芯管70は、中空糸膜モジュール10を長手方向Yに沿って側面視したときに、貫通孔53と重なる位置に設けられている。図2に示すように中空糸膜モジュール10を組み立てる際には、中空糸膜束30を収容したケーシング40の開口部41,41を蓋体60,61で閉塞する。この際には、開口部41に近接するようにY方向に沿って蓋体60,61を移動させる(あるいは、蓋体60,61にそれぞれ近接するようにY方向に沿ってケーシング40を移動させる)。この移動により、芯管70は、その長手方向が、ケーシング40及び中空糸膜束30の長手方向であるY方向に一致した状態で、開口部41における管板51の貫通孔53に挿入され、貫通孔53を通じて空洞部31に着脱可能に挿入される。芯管70は、Y方向における挿入方向の先端側とは反対側の端部74側において、蓋体61の板面65を貫通している。この端部74は中空糸膜モジュール10の外部に露出している。
以上のようにして、芯管70を容器11、具体的には蓋体61に設けたことにより、芯管を中空糸膜束と一体に設けた場合に比べて、中空糸膜モジュールの組み立て時に、中空糸膜束に固定された芯管を、容器、具体的には蓋体と連結させる必要がない。中空糸膜モジュール10における、容器11(蓋体61)に固定された芯管70が貫通孔53へ挿入した状態における芯管70と管板51との間の気密性の調整は、通常、中空糸膜束に固定された芯管を、蓋体と連結させる際の気密性の調整よりも容易である。従って、中空糸膜モジュール10によれば、製造精度、具体的には中空糸膜束、管板、芯管、容器等の部品の中心性、垂直性、表面粗さなどの寸法精度、金型の寸法精度、部品の組み込み精度等を緩和しても、高い気密性や安定性等の性能の高い中空糸膜モジュール10を製造しやすい。このため中空糸膜モジュール10によれば、製造時間や製造コストを低減することができる。また芯管70を中空糸膜束30と共に廃棄する必要がなく、省資源化を図ることもできる。図1に示すように、芯管70は、容器11、具体的には蓋体61と、連結及び接合加工を伴わない一つの部品として形成されていることが、中空糸膜モジュール10の製造精度の緩和がより一層容易であるため好ましい。
貫通孔53の内周面には、少なくともそのY方向の一部に、Oリング80が設けられていることが好ましい。これにより、芯管70と貫通孔53との間の気密性をより保持しやすいものとする。芯管70と貫通孔53との摺動性及び気密性の保持を高いものとする観点から、Oリング80の材質としては、例えばNBR(ニトリルゴム)、フッ素ゴム(例えば、デュポン社製の“バイトン”(登録商標))、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、デュポン社製の“テフロン”(登録商標))等をあげることができる。Oリング80を貫通孔53に取り付ける代わりに、芯管70における貫通孔53との接続部位に設けているのでもよい。Oリング80が貫通孔53又は芯管70に取り付けられている場合、貫通孔53又は芯管70に対して着脱可能に設けられていてもよく、着脱不能に固定されていてもよい。例えばOリング80が、貫通孔53の内周面に着脱不能に固定されている形態の例としては、Oリング80の外周面側の一部が貫通孔53の内周面を構成する管板51内に埋設されている形態が挙げられる。また図1に示す例では、Oリング80は、貫通孔53における、管板51の外面側端部に設けられている。しかし、これに限られず、管板51の内面側の端部に設けられていてもよく、これら外面側端部と内面側端部との間のY方向の略中央の位置に設けられていてもよい。
図1及び図2に示す例では、芯管70は例えば有底中空の筒状体(例えば略円筒状体)からなるが、底部を有しない筒状体からなるものであってもよい。芯管70が有底中空の筒状体からなる場合、該芯管70の2つの端部のうち、有底の端部73が芯管70における貫通孔53に挿入する側に位置している。
図1及び図2に示す例では、芯管70は、空洞部31のY方向の略全長に亘って挿入されているが、これに限定されない。芯管70は、管板50に当接する長さを有していても有していなくても良い。図に示す例では、芯管70が管板50に当接する長さを有しており、芯管70の端部73は管板50の凹部55に挿入されている。
中空糸膜束30に芯管70を固定させずに、中空糸膜束30に芯管70と対応する形状の貫通孔53及び空洞部31を設ける方法は、特に制限されず、従来公知の方法が用いられる。
中空糸膜モジュール10において、芯管70と中空糸膜束30との間は密接した状態であってもなくてもよく、芯管70と中空糸膜束30との間は、流体の流通が確保されることを前提に、介在物が存在していてもよく、存在していなくても良い。そのような介在物としては、例えばメッシュや多孔フィルムを挙げることができる。
なお、本発明の効果を確実に得るために、中空糸膜モジュール10は、中空糸膜束に固定された芯管、具体的にはポッティング剤等で接着されることにより中空糸膜束と着脱不能となった芯管を有していないことが好ましい。また同様の観点から、本発明の中空糸膜モジュール10は、中空糸膜束30を構成する中空糸膜20と芯管70との間に、中空糸膜束30の支持体となる管状物を有しないことが好ましい。特に、金属、プラスチック又はガラス繊維複合材料等からなる管状物を有しないことが好ましい。
芯管70における空洞部31に挿入される部分の周面には、周面を貫通する複数の孔部71が設けられている。本実施形態では、芯管70の孔部71は容器11内における中空糸膜20外部の流体の流れる方向と、該中空糸膜20内部における流体の流れる方向とが向流となる位置に設けられている。具体的には芯管70における孔部71は、モジュール10内部の管板50側に位置する。またモジュール内における中空糸膜外の空間と連通する排出口42はケーシング40における管板51側に位置する。そしてモジュール10では流体A(図1における灰色の矢印)が芯管70における孔部71から中空糸膜モジュール10内に導入され、長手方向Yにおける管板50側から、管板51側に設けられた排出口42に向かって流れる。一方、モジュール10における管板51側における蓋体61には中空糸膜内部と連通する導入口63が設けられていると共に、管板50側における蓋体60には、中空糸膜内部と連通する排出口62が設けられている。そして、流体B(図1における黒色の矢印)が、この導入口63から導入されて中空糸膜内を、長手方向Yにおいて管板51側から管板50側の排出口62に向かって流れる。このため本実施形態では中空糸膜内の流れに対して、中空糸膜外の流れが向流となる。流体A及びBの具体的な組みあわせの例としては、加湿用ガス及び被加湿ガス(又は被加湿ガス及び加湿用ガス)、除湿用ガス及び被除湿ガス(又は被除湿ガス及び除湿用ガス)等を挙げることができる。例えば、流体A及びBが加湿用ガス及び被加湿ガス(又は被加湿ガス及び加湿用ガス)であった場合、中空糸膜モジュールを加湿モジュールとして使用できる。
以上のように、孔部71を、容器11内における中空糸膜20外部の流体の流れる方向と、該中空糸膜20内部における流体の流れる方向とが逆向きとなる位置に設けることで、中空糸膜20内外における選択的透過が効率良く行われるため好ましい。なお、中空糸膜20内外における流体の向きを逆向き(向流)とするための孔の位置や各導入口及び排出口の位置といった構成が本実施形態に限定されないことはいうまでもない。
本実施形態において、流体Aは分離対象となる原料混合物である。従って、芯管70は、分離対象となる原料混合物を空洞部31に導入する機能を持っている。これにより、中空糸膜モジュール10の外部から芯管70を通じて原料混合物を、容器11内における、中空糸膜20が収納されている空間へ導くことができる。また、蓋体60における排出口62は透過流体排出口62となり、ケーシング40における排出口は非透過流体排出口42となる。分離対象となる原料混合物は、芯管70の孔部71から中空糸膜モジュール10内に導入される。導入された原料混合物のうち、中空糸膜20を透過した流体は、透過流体排出口62からモジュール外に排出される。一方、中空糸膜20を透過しなかった未透過流体は、非透過流体排出口42からモジュール外に排出される。このように、芯管70に、分離対象となる原料混合物を導入する機能を持たせることは、本発明において、原料混合物の漏れを防止しながら、製造精度を緩和できる観点から好ましい。なお、芯管70に、分離対象となる原料混合物を導入する機能を持たせる代わりに、分離された成分(未透過流体又は透過済みの流体)を空洞部31から排出する機能を持たせる場合も同様に、分離された成分の漏れを防止しながら、製造精度を緩和できる観点から好ましい。
中空糸膜20としては、従来公知のものを特に制限なく用いることができ、ガスや液体などの流体の分離性能を有するものであればどのような素材のものでもよい。例えば高分子材料を用いることができる。特にポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネートなどの常温(23℃)でガラス状の高分子材料からなる中空糸膜は、ガス分離性能が良好であるので好適に用いられる。中空糸膜20として無機材料を用いることもできる。そのような無機材料としては、例えば炭素、セラミックス及びガラスなどが挙げられる。中空糸膜20は、均質性のものでもよく、あるいは複合膜や非対称膜などの不均質性のものでもよい。更に中空糸膜20は、多孔性のものでもよく、あるいは非多孔性のものでもよい。中空糸膜20の膜厚は例えば10μm以上500μm以下であることが好ましく、外径は例えば50μm以上2000μm以下であることが好ましい。
ケーシング40は、中空糸膜モジュール10の使用時に高温流体あるいは低温流体や高圧流体あるいは減圧条件にさらされるものであるから、十分な強度と使用条件下での安定性が必要である。この観点から、ケーシング40及び蓋体60,61の材質は、金属、プラスチックやガラス繊維複合材料であることが好ましい。同様に、芯管70は、例えば金属、プラスチック又はガラス繊維複合材料などから構成される。
以上の構成を有する本実施形態の中空糸膜モジュール10を用いた分離対象となる混合流体としては、例えば酸素、窒素、水素、二酸化炭素、水、水蒸気、アルコール類、アルコール類の蒸気、エステル類、ケトン類、アミン類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ハロゲン化合物などの少なくとも2種以上からなる気体又は液体が挙げられる。混合流体がガスである場合には、いわゆるガス分離法が適用でき、液体である場合には、膜に液体が接触するが膜を透過した成分は蒸気状態で分離される、いわゆるパーベーパレーション法が適用できる。
次に、図3に基づき本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、先に述べた第1実施形態と異なる点のみを説明し、同じ点は説明を省略する。第2実施形態中、第1実施形態と対応する又は同じ構成には第1実施形態と同じ符号を付している。
本実施形態の中空糸膜モジュール10’においては、管板50,51が、容器11(ケーシング40)と中空糸膜束30との間を密封しており、管板50,51と容器11(ケーシング40)との間は固着されている。また、ケーシング40と中空糸膜束30との間には保護カバー90が設けられている。この保護カバー90は通気性を有する素材で形成されているか、網・多孔等の通気性を有する構造を有している。なお、保護カバー90が網・多孔等の通気性を有する構造を有する場合、プラスチックや金属等の通気性をほとんど有しない素材からなるものであってもよい。保護カバー90を設けることは、着脱可能なカートリッジとして、取扱い時の中空糸膜の保護の点から好ましい。保護カバー90は、例えば、中空糸膜束30の外周を覆った状態で中空糸膜束30と共に管板50,51に固定されている。保護カバーの厚みは例えば10μm以上10mm以下である。
本実施形態では、芯管70は、蓋体61の連結部75において、蓋体61と着脱可能に連結されていることにより、蓋体61の内面側から突出している。ここでいう「着脱可能に連結」とは、蓋体61を開口部41から取り外した時に、蓋体61との連結から芯管70が外れてしまうものは除く。従って第1実施形態と同様、本実施形態でも、蓋体61を開口部41から取り外した時に、芯管70は中空糸膜束30から分離される。このように蓋体61と芯管70とを「着脱可能に連結」する手段としては、蓋体61と共に芯管70とを気密に連結するものであることが好ましく、例えば、フランジ、オネジ・メネジ、ハメアイ等が挙げられる。図3に示す例では、連結部75は、蓋体61の内面側に位置しているが、外面側に位置していてもよい。
本実施形態では、芯管70の孔部71は容器11内における中空糸膜20外部の流体の流れる方向と、該中空糸膜20内部における流体の流れる方向とが交差する、好ましくは略十字となる位置に設けられている。具体的にはモジュール10’では流体A(図3における灰色の矢印)が芯管70の孔部71から中空糸膜モジュール10内に導入されて、ケーシング40に設けられモジュール内の中空糸膜外部の空間と連通する排出口48に向かって流れる。一方、蓋体61に設けられた中空糸膜内と連通する導入口63からは、流体B(図3における黒色の矢印)が導入されて中空糸膜内に通り、中空糸膜内と連通する排出口64に向かって流れる。そして孔部71は、孔部71と排出口48との対向方向が、Y方向と交差する、好ましくは、略十字となる位置に多数設けられている。このため本実施形態では中空糸膜内の流れに対して、中空糸膜外の流れが交差する。流体A及びBの具体的な組みあわせの例としては、加湿用ガス及び被加湿ガス(又は被加湿ガス及び加湿用ガス)、除湿用ガス及び被除湿ガス(又は被除湿ガス及び除湿用ガス)等を挙げることができる。例えば、流体A及びBが加湿用ガス及び被加湿ガス(又は被加湿ガス及び加湿用ガス)であった場合、中空糸膜モジュールを加湿モジュールとして使用できる。
以上、本発明をその好ましい各実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記の第1実施形態における構成と、第2実施形態における構成とを適宜組み合わせたものが本発明に含まれることはいうまでもない。
また例えば前記第1実施形態においては、芯管70は中空糸膜束30の空洞部31に原料混合物を供給するものであったが、それに代えて、分離後の成分が空洞部31から芯管70に排出されるのでもよい。
また、或は、芯管は、キャリアガスやパージ用ガスを空洞部に導入するために用いるのであってもかまわないし、中空糸膜を透過した成分を排出するために用いるのであってもかまわない。
また、中空糸膜内及び中空糸膜外における流体の向きや芯管70における孔部の位置は、本実施形態に限定されず、任意のものが採用される。孔部71は、容器11内における中空糸膜外部の流体の流れる方向と、該中空糸膜内部における流体の流れる方向とが同じ向きとなる位置に設けられていてもよい。
或は、芯管70の孔部71は、長手方向Yにおける、貫通孔53側に設けたり、管板50,51に挟まれる中心部位に設けたりしても良い。芯管70の孔部71は、空洞部31に挿入される部分における芯管70の周面の一部に集中して形成されていなくてもよく、例えば、空洞部31に挿入される部分における周面の全体に多数形成されていてもよい。各流体の導入口及び排出口の位置や構成は、芯管の機能の変更や求める中空糸膜外の流体の向き及び/又は中空糸膜内の流体の向きの変更に応じて、適宜変更される。従って当然、上記の実施形態以外にも、空洞部31への原料混合物、加湿ガス、除湿ガス、キャリアガス又はパージガス等の供給、或いは分離後の成分の空洞部31からの排出といった各種の目的で芯管70を用いる場合に、中空糸膜内の流れに対して、中空糸膜外の流れが逆向き又は交差する向きとする任意の構成を採用できる。
また、芯管70は空洞部31における貫通孔53側の一部にのみ挿入される程度の長さを有するものであってもよく、両端が開口していてもよい。
また芯管70は、容器の蓋体以外の部位に接続されるのであってもよい。
10 中空糸膜モジュール
11 容器
20 中空糸膜
30 中空糸膜束
40 ケーシング
41 開口部
50,51 管板
60,61 蓋体
70 芯管

Claims (4)

  1. 一方向に延びるように配置された複数の中空糸膜の集合体からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束の長手方向の両端部を固定する一対の管板と、該中空糸膜束及び該管板を収容する容器とを備えた中空糸膜モジュールであって、
    前記中空糸膜束は、前記中空糸膜に囲まれた空洞部を有し、該空洞部は、該中空糸膜束の横断面方向の中心域に位置し、且つ前記中空糸膜の延びる方向と同方向に延びる形状をしており、
    少なくとも1つの前記管板に、前記空洞部と連通する貫通孔が設けられており、
    前記容器は、前記貫通孔を通じて前記空洞部に着脱可能に挿入される芯管を一体的に有する、中空糸膜モジュール。
  2. 前記容器は、端部に開口部を有して前記中空糸膜束及び前記管板を収容するケーシングと、該ケーシングの該開口部を着脱可能に閉塞する蓋体とを有し、
    前記ケーシングの前記開口部において、前記管板の前記貫通孔が開口しており、
    前記芯管は、前記蓋体の内面側から突出して、前記貫通孔に挿入可能に形成されている、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  3. 前記芯管を通じて、前記中空糸膜束の前記空洞部に原料混合物が供給されるか、又は、前記中空糸膜を透過した成分若しくは未透過の成分が該空洞部から該芯管に排出される、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
  4. 前記芯管は、該芯管内部と前記容器内部とを連通する孔部を有しており、
    前記孔部は、前記容器内における前記中空糸膜外部の流体の流れる方向と、該中空糸膜内部における流体の流れる方向とが逆向き又は交差する向きとなる位置に設けられている、請求項1〜3の何れか1項に記載の中空糸膜モジュール。
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