JP2017033980A - 磁石の製造方法及び磁石 - Google Patents

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巧美 三尾
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雄輔 木元
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Abstract

【課題】磁気特性を高めると共に、生産効率を向上する磁石の製造方法及び磁石を提供する。
【解決手段】磁粉を加圧成形して一次成形体を得る加圧成形工程を有する磁石の製造方法であって、一次成形体が、該一次成形体を分割した圧粉体を積層してなり、加圧成形工程が、加圧型内に充填された磁粉を加圧して圧粉体を成形する第1加圧成形工程S8と、(A)式に従って繰り返し行う、加圧型内に充填された先の圧粉体の露出表面に当接するように更に磁粉を積層充填する積層充填工程R1と、積層充填された磁粉と先の圧粉体とを更に共に加圧して積層圧粉体を成形する第2加圧成形工程R2と、を備える。Th=(Ps×Dm)/Ct…(A)式、Ps:成形面圧、Dm:磁粉の平均粒子径、Ct:厚み係数、Ct≧300、Th:圧粉体の厚さ
【選択図】図1

Description

本発明は、磁石の製造方法及び磁石に関するものである。
高いエネルギー積を有する磁気特性に優れた磁性材料を用いた高性能磁石への期待が高まっている。代表的な磁性材料として、希土類金属とFe等の金属間化合物を主組成分とするもの等が知られている。磁気特性に優れたポテンシャルを有する磁性材料を探求することは、期待に応える一つの方法である。その一方で、磁性材料の成形技術を工夫することで磁気特性に優れた磁石成形体を得る方法もある。例えば、長尺状の磁石の製造方法に工夫を重ねた技術が知られている。
特許文献1、2には、長い円筒状の磁石成形体をプレス成形する製造工程において、十分な強度の配向磁界を印加するために、又は深いキャビティ内に磁粉を効率的に充填するために、「粉末充填→配向圧縮」のサイクルを複数回繰り返して行う、多段充填法による製造技術が開示されている(例えば特許文献1の[0055]等)。
特許文献3には、長尺状の成形体を長尺方向に沿って一軸加圧成形する場合において、長尺になるほど、又はパンチから成形体までの距離が遠くなるほど、成形体に加わる圧縮力が小さくなり、長尺状磁石の密度が不均一となることを問題視している。そこで、圧粉体を相対的に軸線方向の長さの短い圧粉体素片に分割し、圧粉体素片ごとに磁性材料よりなる原料の充填及び加圧成形を繰り返し行う製法技術が開示されている。
特開2002−239791号公報 特開2001−135539号公報 特開2007−228699号公報
しかしながら、特許文献1に開示される磁石の製造方法は、磁粉を多段充填することによって磁粉の圧縮率を高め、積極的に成形体の密度を大きくすることで磁気特性の向上を図る技術ではない。長尺なリング磁石成形体を、ラジアル方向により強く配向する技術に関する([0013]等参照)。
具体的には、リング磁石を成形する円筒状のキャビティを有する金型には、キャビティ中央部に磁石の中空部に対応する円柱状のコアが配置される。ラジアル方向に磁場配向する際に磁路の一部を形成する高透磁率のコアは、機械的強度が比較的低い特殊材料よりなる。磁粉の圧縮成形時にコアと磁粉とが長ストロークで摩擦することによって、コアの損傷が早まることを抑制するために、磁粉を多段に充填しながら圧縮成形する技術である。所定の装置で磁粉を多段に充填する製法によってコアを保護する一定の効果を有するが、強く圧縮成形するとコアの損傷を免れない虞があるため、好適な成形時の圧縮加圧力は10〜200MPaの範囲に止まる、との趣旨の記載がある([0074]等参照)。好適な圧縮圧力範囲に応じて、得られる成形体の密度は3.9〜5.0g/cmの範囲に止まる([0073]等参照)ものと推察される技術である。
なお、特許文献2で開示される磁石の製造方法も、基本的には、特許文献1に係る製法と同様である。
特許文献3に開示される磁石の製造方法は、磁粉を多段充填することによって磁粉の圧縮率を高め、密度が高くかつ均一な長尺の成形体を得ることで磁気特性の向上を図る技術である。但し、多段階に分割した磁粉の圧粉体素片を成形するに際して、圧粉体素片の界面の形状を非平面とする。圧粉体素片間の界面に物理的なアンカー効果を付与して界面強度を増加させる。おそらくは、圧粉体素片の集合体である成形体を焼結するにあたって磁石素片が界面で破断するおそれを軽減するために、予め界面強度を高める必要があると推察される。そして、界面の形状を非平面である例えば段差状に形成するために、パンチを分割型とするのが好ましいとの記載がある。不可避的に分割型を操作することになり、生産効率を犠牲にしている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、磁性材料よりなる磁粉を緻密に配置することで残留磁束密度を高めることにより磁気特性を高めると共に、生産効率を向上する磁石の製造方法及び磁石を提供することを目的とする。
本発明の磁石の製造方法は、磁粉を加圧成形して一次成形体を得る加圧成形工程と、結合材を介して前記磁粉の粒子同士を接合し、前記一次成形体を固化する工程と、を有する。
前記一次成形体が、該一次成形体を分割した圧粉体を積層してなり、前記加圧成形工程が、金型内に充填された前記磁粉を加圧して前記圧粉体を成形する第1加圧成形工程と、前記金型内に充填された先の圧粉体の露出表面に当接するように更に前記磁粉を積層充填する積層充填工程と、前記積層充填された磁粉と前記先の圧粉体とを更に共に加圧して積層圧粉体を成形する第2加圧成形工程と、を備え、前記加圧成形工程が、下記(A)式に従って、前記積層充填工程及び前記第2加圧成形工程を順に繰り返し行う工程である。
Th=(Ps×Dm)/Ct …(A)
但し、Ps:成形面圧〔MP〕
Dm:磁粉の平均粒子径〔D50,μm〕
Ct:厚み係数、Ct≧300
Th:圧粉体の厚さ〔mm〕
上記の磁石の製造方法によれば、(A)式に従って製造することで、長尺状であっても生産効率よく一定以上の密度を有する一次成形体を製作することができる。よって、磁石成形品として残留磁束密度をよりよく向上させ、磁気特性向上させることに寄与できる。
第1実施形態の磁石の製造方法の各工程を示した図である。 図1の混合粉の製造工程の初期状態を示す模式図である。 図1の混合粉の製造工程の終了状態を示す模式図である。 第1実施形態の磁粉と結着材とが混合した状態を模式的に示す断面図である。 厚み係数(Ct)と一次成形体の密度比との関係を示すグラフである。 図1の第1加圧成形工程を示す模式図である。 図1の積層充填及び第2加圧成形工程を示す模式図である。 第1実施形態の一次成形体の高密度化効果を示すグラフである。 第1実施形態の一次成形体の模式的な断面図ある。 長尺状の一次成形体の模式的な断面図ある。 第1実施形態の一次成形体の磁粉粒子の配列状態を模式的に示す拡大図である。 第1実施形態の磁石の構成を模式的に示す拡大図である。 第2実施形態の磁石の製造方法の各工程を示した図である。 第2実施形態の第1加圧成形、積層充填及び第2加圧成形の各工程を示す模式図である。
<第1実施形態>
本発明の磁石の製造方法について、図1〜図9を参照しながら、第1実施形態として具体的に説明する。図1は、第1実施形態の磁石の製造方法の各工程を示した図である。
(ステップS1:磁粉の準備)
図1のステップS1に示すように、磁石の素材としての磁粉11を準備する。
磁粉11は、磁性材料の粒子の集合体である粉末が用いられる。磁粉11の磁性材料は、限定されるものではないが、硬磁性体よりなることが好ましい。硬磁性体としては、例えば、フェライト磁石、Al−Ni−Co系磁石、希土類元素を含む希土類磁石、窒化鉄磁石を挙げることができる。
硬磁性体の磁粉11としては、Fe−N系化合物、R−Fe−N系化合物(R:希土類元素)の一種以上よりなる化合物を用いることが好ましい。なお、Rで示される希土類元素としては、いわゆる希土類元素として知られている元素(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Ac,Th,Pa,U,Np,Pu,Am,Cm,Bk,Cf,Es,Fm,Md,No,Lr)であればよく、Dy以外の希土類元素(R:Dyを除く希土類元素)であることがより好ましい。これらのうち、特に軽希土類元素が更に好ましく、その中でもSmが最も好適である。ここでいう軽希土類元素は、ランタノイドの中で、Gdよりも原子量が小さい元素、すなわちLa〜Euである。Fe−N系化合物は、窒化鉄磁石に含まれる。R−Fe−N系化合物は、希土類磁石に含まれる。
磁粉11は、Fe−N系化合物、R−Fe−N系化合物であれば具体的な組成は限定されない。磁粉11は、SmFe17、又はFe16の粉末が最も好ましい。
磁粉11は、その粒子径(平均粒径)が限定されるものではない。平均粒径(D50)が2〜5μm程度であることが好ましい。また、磁粉11には、粒子表面の全てに酸化膜が形成されていないものを用いる。
(ステップS2:潤滑剤の準備)
図1のステップS2に示すように、潤滑剤21を準備する。潤滑剤21は、通常の条件下(大気雰囲気下、常温)で固体の物質(固体潤滑剤)を好適に用いることができる。第1実施形態では、潤滑剤21には、粉末状の潤滑剤を用いる。
潤滑剤21には、金属石けん系の潤滑剤(固体潤滑剤粉末)を用いる。潤滑剤21として、例えば、ステアリン酸亜鉛などのステアリン酸系金属の粉末を用いる。潤滑剤21の粉末の平均粒径(D50)は、10μm程度である。ここで、潤滑剤21の平均粒径は、磁粉11の平均粒径より大きいことが好ましい。潤滑剤21の比重は、磁粉11の比重より小さい。そのため、潤滑剤21の初期状態の大きさをある程度大きくすることで、潤滑剤21の1粒あたりの質量を大きくすることができ、後述のステップS3の工程で混合する際に潤滑剤21が舞い散ることを抑制できる。
磁粉11と潤滑剤21の混合割合は、任意に設定できる。磁粉11と潤滑剤21の混合割合は、体積割合で、磁粉11:80〜90体積%、潤滑剤21:5〜15体積%とすることが好ましい。なお、潤滑剤は固体物質に限られない。例えば後述する結着材としての熱硬化型シリコーン組成物を潤滑剤及び結着材として併用することもできる。また、磁粉11と潤滑剤21以外に、添加剤を添加しても良い。添加剤としては、その後の磁粉11が酸化しない温度以下の加熱により消失する有機溶剤等の添加剤を挙げることができる。
(ステップS3:混合粉の製造)
図1のステップS3に示すように、先の2つの工程で準備した磁粉11と潤滑剤21を混合して混合粉を得る。
磁粉11と潤滑剤21の混合は、両粉末11,21をすり潰しながら混合して行う。混合粉末を形成する方法は、図2Aに示したように、混合用容器31にて、磁粉11と潤滑剤21をすり潰しながら混合する。すり潰しながら混合することにより、図2Bに示したように、結合強度の低い潤滑剤21が細分化され、潤滑剤21の粒径が全体的に小さくなる。本工程の終了時には、粒子の大きさが異なる潤滑剤21が存在している。
更に、混合粉11,21は、磁粉11だけによる塊状の部分を少なくすること(磁粉11の二次粒子を解砕すること)ができ、潤滑剤21の大きさを小さくできる。つまり、磁粉11の各粒子に近接した位置に、細かくされた潤滑剤21を存在させることができる。
(ステップS4:吸着膜の生成)
続いて、図1のステップS4に示すように、混合粉11,21を加熱して磁粉11の表面に吸着膜22を形成する。
先の工程(ステップS3)で混合した磁粉11と潤滑剤21の混合粉11,21を、加熱温度Tで加熱して、磁粉11の表面に潤滑剤21の吸着膜22を形成する。このときの混合粉11,21の加熱温度Tは、磁粉11の分解温度T未満であって、潤滑剤21の融点T以上の温度である(T≦T<T(図8参照))。
混合粉11,21を、加熱温度Tで加熱すると、磁粉11が分解することなく、潤滑剤21が溶融する。溶融した潤滑剤21は、磁粉11の粒子の表面に沿って流動し、磁粉11の表面を被覆する。そして、磁粉11の表面に吸着膜22を形成(生成)する。吸着膜22は、磁粉11の原子と相互作用を生じて結合する。磁粉11の原子と結合してできる吸着膜22でなく、磁粉11の表面に潤滑剤21からなり、膜厚さを持つ吸着膜22を形成しても良い。この場合、吸着膜22の形成後に混合粉11,21が融点Tより低い温度に冷却されると、吸着膜22が固化して磁粉11の表面から脱離することなく固定される。吸着膜22が形成された状態の磁粉11を、以下「被膜磁粉」とも称す。
加熱温度Tでの加熱時間は、混合粉11,21に付与される熱量によるため、限定されるものではない。つまり、加熱温度Tが高温になれば、混合粉11,21に与えられる時間あたりの熱量が増加するため、加熱時間を短くできる。また、加熱温度Tが比較的低い温度である場合には、加熱時間を長くすることが好ましい。
加熱温度Tと加熱時間について、混合粉11,21に付与される熱量が大きくなるほど、磁粉11の表面に凝集した吸着膜22を生成でき、後述する第1及び第2の各加圧成形工程(ステップS8,R2)で被膜切れを生じなくなる。そうすると、第1及び第2の各加圧成形工程において、成形体の内部に充填された磁粉の間の摩擦を小さくでき、加圧力を内部にまで伝えるのに寄与する。
(ステップS5:結着材の混合)
続いて、図1のステップS5に示すように、被膜磁粉の表面に、例えば、シリコーン組成物よりなる未硬化の結着材41を配する。
この結着材41は、室温でゲル状〜液体状であり、流動性を持つ。結着材41を被膜磁粉と混合することで、結着材41が被膜磁粉(の粒子)の表面に配される。この状態では、図5に断面を模式図で示したように、隣接する被膜磁粉の粒子同士の間に結着材41が介在する。この結着材41が介在した状態の被覆磁粉12を、以下「加工用磁粉」とも称し、符号13を付す(図5参照)。
結着材41のシリコーン組成物としては、シロキサン結合による主骨格を持つ組成物を用いることができる。より具体的には、シリコーン組成物としてシリコーン樹脂を用いる。シリコーン組成物は、被膜磁粉の表面に配されるときは未硬化(ゲル状〜液体状)で、その後の工程(本形態ではステップS10の熱処理の工程)で硬化する。熱硬化型のシリコーン組成物は、硬化温度(硬化開始温度)Tが、磁粉11の分解温度T未満である。なお、シリコーン組成物中の硬化開始剤を所定の化合物とすることにより、シリコーン組成物の硬化開始温度Tを適宜調整することができる。
結着材41の混合割合は、任意に設定できる。例えば、被覆磁粉12の体積を100vol%としたときに、5〜15vol%とすることができ、8〜12vol%とすることがより好ましい。なお、結着材41を硬化する方法は限定されない。例えば、加熱、紫外線の照射、水等の反応開始剤を接触させて硬化を開始する等の方法でも構わない。
(ステップS6:充填回数;nの算出)
続いて、金型の中に加工用磁粉13を充填して一軸加圧成形を行い一次成形体を形成する。本発明は、一次成形体を形成する加圧成形工程が、金型内に充填された磁粉を加圧して圧粉体を成形する第1加圧成形工程と、金型内に充填された先の圧粉体の露出表面に当接するように更に磁粉を積層充填する積層充填工程と、積層充填された磁粉と先の圧粉体とを更に共に加圧して積層圧粉体を成形する第2加圧成形工程と、を備え、加圧成形工程が、後述する(A)式に従って、積層充填工程及び第2加圧成形工程を順に繰り返し行う工程である、ことを特徴とする。ステップS6では、第1加圧成形工程と、繰り返し行う第2加圧成形工程とで、金型の中に加工用磁粉13を充填する合計回数を求める。
ところで、一例として、上下両方向から図6等に示したような一軸加圧成形を行い、得られた長尺円柱状の一次成形体100における不均一な密度分布を模式的に図9に示した。図示のとおり、長尺状の成形体の密度分布は、上下の端面100eから内部に向けて、高密度領域100hが中央寄りに円錐状に集中する一方で、両端面100e周辺を除く成形体内部において、低密度領域100lが広がり、不均一となり得る。パンチから一次成形体100に及ぼす加圧力が、不均一に伝播することに起因すると考えられる。つまり、加圧力は、パンチと当接する成形体端面100eに集中して伝わり易く、金型の内壁面と摩擦する成形体側周面100sにおいて伝わりにくい。
一般的に、充填時の磁粉の粒子間には隙間が在るので、パンチによる加圧力は、先ずは、パンチと成形体との当接面周辺に在る粒子同士の隙間を小さくするように伝播し易い。この部位の磁粉粒子の移動(再配列)が促進され、粒子同士が凝集して率先して硬化し得る。更に成形体の両端面の周縁部においても、磁粉と金型内壁面との摩擦によって、磁粉の凝着、乃至硬化を招き易い。結果、極端に硬化した一定の厚みを有する蓋状の高密度領域が、成形体の両端面周辺において金型内壁面に対して突っ張るように形成され得る。すると、パンチの加圧力が、その一定の厚みを超えて更に内方の低密度領域にまで広がりにくくなり得る。上記した極端な高密度領域が一旦形成されてしまうと、成形体全体の密度はそれ以上大きくなりにくい。よって、成形装置の高度化や生産効率を考慮すると、現実的には全体的に均一に大きな密度の長尺状の成形体を製作することは、困難に陥り易い。
よって、長尺状の成形体全体としての密度をより大きく確保するには、軸線方向に沿って一次成形体を一定の厚みに分割した短尺状の圧粉体を、積層しながら繰り返し成形する「分割成形」方法が有利になり得る。そこで、本発明者らは、生産効率を維持しながら適当な高密度の成形体を得るために、「分割成形」を前提として、圧粉体の軸線方向に沿った適切な「圧粉体の厚さ(分割厚み)」を求めるための指標となる一般式を見出した。下記(A)式に示すように、成形面圧をPs〔MPa〕、磁粉の平均粒子径をDm〔D50,μm〕としたときに、圧粉体の厚さ:Th〔mm〕は、300より大きい厚み係数Ctで除して求めることができる。
Th=(Ps×Dm)/Ct …(A)
成形体を高密度化するためには、パンチが磁粉を加圧する(押付ける)力をパンチと磁粉との当接面の面積で除した成形面圧:Psが大きければ、好ましいと考えた。また、金型内への均一な充填性、微細形状であるか、乃至は個々に粒状をなすか、或いは嵩密度、等々の磁粉の粉体としての特性が成形体の高密度化に寄与すると考えた。現実的に入手可能な磁粉においては、平均粒子径:Dmが大きければ、概して好ましいとの知見を得た。換言すると、高密度な成形体を得るために適当な圧粉体の厚さ:Thは、成形面圧:Ps及び平均粒子径:Dmをパラメータとして、成形面圧:Psと平均粒子径:Dmとの積に所定の比例定数を乗じて求めることができるという見解を得た。よって、係る比例定数の逆数を「厚み係数:Ct」とし、実験結果から適切な厚み係数:Ctを求めることとした。その一例を図4に示した。
具体的には、磁粉の充填回数を1回とし、例えば成形面圧をPs=1400〔MPa〕、例えば加圧プレス回数を20回、で一軸加圧成形を行って所定の圧粉体(直径10〔mm〕)を一定数成形した。更に得られた各圧粉体の厚さ:Th〔mm〕と用いた磁粉の平均粒子径:Dm(D50)から、(A)式を用いて厚み係数:Ctを逆算した。また、各圧粉体の密度を測定して、成形体の厚みを1〔mm〕で成形した際の密度比を「1」とした場合との密度比を求めた。これらの試験結果のデータベースから適当なデータを選択してプロットし、図4のグラフを得た。図4の太い二点鎖線で示した曲線は、磁粉に潤滑剤を添加して加圧成形した場合の試験データに基づく。なお、潤滑剤の有無にかかわらず、厚み係数が大きくなればなる程、圧粉体の密度比が1に近づく。
図4の縦実線で示したとおり、厚み係数:Ctが300〜450の間で、成形体の密度比が大きくなる閾値が認められた。よって、厚み係数の下限値は、300程度が好ましいことが解った。また、厚み係数の上限値は特に限定されないが、生産性の観点から定めるのが好ましい。厚み係数が大きくなれば圧粉体の厚みが極めて小さくなり得るので、生産性を損なうおそれがあり、上限値としては、5000程度が好ましいことが解った。
なお、上記の試験データより得られた厚み係数:Ctの好ましい範囲(300≦Ct≦5000)は、潤滑剤無しの場合に得られた試験データからも、同様の厚み係数:Ctの好ましい範囲が得られた。厚み係数:Ctの好ましい範囲(300≦Ct≦5000)は、特に圧粉体の成形条件に左右されるものではないが、好ましい成形条件として、例えば以下を挙げることができる。
面圧(PS):300〜2000〔MPa〕
平均粒子径(D50,Dm):1〜4〔μm〕
パンチ回数:3〜50〔回〕
成形温度:常温〜150〔℃〕
次に、上述した(A)式に従って一次成形体を得る製造工程について説明する。密度から密度比を算出し、図4において、密度比から厚み係数を求めると共に、厚み係数が300〜5000の範囲内にあるのを確認する。図1のステップS6に示す一成形体の充填回数:nを算出する。加圧成形工程の成形条件から(A)式より一次成形体の分割厚さに相当する圧粉体の厚さ:Thを求める。次に、一次成形体の軸線方向の全長:Lを圧粉体の厚さThで除して充填回数:nを算出する。より具体的には、(例1)と、参考例としての(例2)を、以下に挙げる。
(例1)
成形面圧:P=1500〔MPa〕
磁粉の平均粒子径(D50):Dm=3〔μm〕
厚み係数:Ct=900
成形体の全長:L=15〔mm〕
・圧粉体の厚さ:Thを求める。
Th=(1500〔MPa〕×3〔μm〕)/900 …(A−1)
Th=5〔mm〕
・充填回数:nを算出する。
n=(L/Th)=15〔mm〕/5〔mm〕=3〔回〕…(A−2)
以上のとおり、3回充填して3層の積層体よりなる成形体を得ればよいことが解る。
(例2)
成形面圧:P=1400〔MPa〕
磁粉の平均粒子径(D50):Dm=3〔μm〕
厚み係数:Ct=300
成形体の全長:L=15〔mm〕
・同様に圧粉体の厚さ:Thを求める。
Th=14〔mm〕 …(B−1)
・同様に充填回数:nを算出する。
n≒1.1〔回〕 …(B−2)
算出値「n≒1.1」に基づいて充填回数を1回とする場合は、圧粉体の厚さ:Th´を15〔mm〕として逆算すれば、厚み係数:Ctが280となり、本実施形態の範囲外となる。充填回数を2回とする場合は、例えば圧粉体の厚さ:Thを7.5〔mm〕(L/2回)として逆算すれば、厚み係数が560となり、本実施形態の範囲内となる。このように、(A)式に従う限り、(A)式を用いて適宜に充填回数を求めることができる。
(ステップS7:充填)
ステップS7では、加圧型70に加工用磁粉13を充填する充填工程である。後述する圧粉体の厚さThに相当する加工用磁粉13が加圧型70に供給される。
(ステップS8:第1加圧成形)
次に、図1のステップS8に示すように、第1加圧成形工程を行う。第1加圧成形工程は、金型内に充填された磁粉を加圧して最初の1層目の圧粉体を成形する工程である。
引き続き上述した(例1)を適宜に引用して、更に図5を用いて説明する。図1のステップS8の「i=1」は、第1加圧成形において「1層目」の圧粉体を成形することを表す。また、加圧成形によって磁粉11が再配置する過程を解り易くするために、図5、図6において、加工用磁粉13を、模式的に球形で表した。また、圧粉体の密度が不均一であることが解り易くなるように、相対的に高密度状態の加工用磁粉13を、より濃い色彩で模式的に表した。
上述した(例1)では、全3積層する一次成形体のうち、1層目〜3層目までの各圧粉体の厚さ:Thはそれぞれ等しく5〔mm〕である(図6中の(9)参照)。他の実施形態として上述した図4のグラフから、厚み係数Ct=900の一次成形体の密度比を読み取り、密度の目安値を算出することもできる。また、密度の目安値と一次成形体の体積より、加圧型70に充填する第1層の加工用粉体13の重量を算出することができる。そして、図5の左端の(1)に示すように、加圧型70(加圧下型71(金型))のキャビティ内に、加工用磁粉13と残余の潤滑剤21の混合粉を秤量して充填する(配置する)。加圧型70は、非磁性の超硬合金よりなる。加圧成形工程は、磁粉11に磁力線が透過する条件下(磁場配向する条件下)で行われる。
続いて、図5の(2)で示すように、加圧下型71に加圧上型72(金型)を組み付け、それぞれを近接する方向に移動させることにより、加圧型70(71,72)により加工用磁粉13を上下両方向から加圧する(加圧成形する)。第1加圧成形工程において、加圧型70(71,72)を例えば外側面からヒータ(図示せず)などにより加熱することにより、加圧型70(71,72)内の加工用磁粉13を加熱する。このときの加工用磁粉13の温度Tは、潤滑剤21の融点T以上の温度とする(T≦T)。例えば、ステップS4の吸着膜の形成工程で説明した混合粉11,21の加熱温度Tと同程度の温度に設定できる。
また、温度Tは、結着材41の硬化温度T未満であり、磁粉11の分解温度T未満でもある(T<T<T)。したがって、加熱が行われても磁粉11は分解されないだけでなく、結着材41も硬化しない。
なお、本形態の第1又は第2の各加圧成形工程における加熱方法は、加圧型70を加熱する方法に限られない。所定の方法により加工用磁粉13そのものを温めても、加圧型70及び加工用磁粉13の両方を温めても構わない。加圧型70を加熱すれば熱伝導により加工用磁粉13も加熱されるが、加圧型70と加工用磁粉13の両方を加熱すれば、生産効率がより高められる。具体的には、加圧成形を行う温度Tは、潤滑剤21が例えばステアリン酸亜鉛であれば、その融点以上の130〜150℃とすることができる。この場合、後述する結着材41であるシリコーン組成物の硬化温度Tを150〜160℃に調整することができる。
第1加圧成形時の加圧型70(71,72)による加圧力は、加工用磁粉13(中の磁粉11)が破壊する破壊圧力以下の圧力である。本形態では、1000〔MPa〕以下であれば好ましい。そして、加圧型70(71,72)による加圧は、複数回(2回以上)行う。加圧上型72(又は下型71)に加圧力を付加した後に、加圧上型72(又は下型71)に付加する加圧力を緩めて、再び加圧上型72(又は下型71)に加圧力を付加する。そして、この動作を繰り返す。なお、加圧上型72(又は下型71)に付加する加圧力を緩める際には、加圧上型72を上側(又は下型71を下側)へ移動させても良いし、加圧上型72を上側(又は下型71を下側)へ移動させずに加圧力のみを低減させるようにしても良い。
加圧型70(71,72)による加圧回数は、成形体51の密度の向上効果が飽和する回数とすることができる。例えば、2〜30回行うことができる。好ましくは、10回〜20回程度連続的にパンチで加圧する(パンチで連打する)形態を挙げることができる。加圧型70での加圧を繰り返すことによって、前回加圧時における磁粉11の粒子の配列状態に対して、磁粉11の粒子が再配列され、磁粉11の粒子間の隙間が小さくなる。
磁粉11の粒子の再配列では、隣接する磁粉11の粒子同士の間の当接表面(摺接表面)に潤滑剤21の吸着膜22が介在することによって、磁粉11の粒子同士が非常に滑らかに移動する。この磁粉11の粒子の再配列と吸着膜22による滑りの相乗作用によって、成形体51において磁粉11の粒子の隙間が小さくなる。
また、磁粉11の粒子の間には、結着材41が未硬化の状態で介在している。未硬化の状態の結着材41は、シリコーンオイルの特性を発揮し、潤滑性も発揮する。つまり、隣接する磁粉11の粒子の間に未硬化の結着材41が介在することによって、磁粉11の粒子の移動(再配列)を促進する。この作用にもより、圧粉体51aにおいて磁粉11の粒子の隙間が小さくなる。
そして、図5の右端(3)に示すように、磁粉11の粒子の隙間が適当に小さい圧粉体51aが得られる。この時、加圧上型及び下型71,72のパンチ近傍の圧粉体51aの上下両端面の磁粉11eの粒子間では、上述したように、加圧力が伝わり易く、隙間が小さく密に詰まる。パンチによる加圧力が圧粉体51aの上下両端面51e、51e(パンチとの当接面)においてより大きく作用する結果、磁粉11eの粒子間の隙間が小さくなり、高密度に詰まる状態となる。対して、加圧型70の内壁面に近接するほど、及び両端面51e、51eから軸線方向の内方に向けて離間するほど、磁粉11cの再配列が進まず、粒子間の隙間がそのまま残り易くなっている。よって、模式的には、上下両端面を底面として、軸線方向に沿った内部に向けて縮径し頂部同士が対向する一対の高密度領域51hが形成され得る。また、一対の高密度領域51h間に高密度領域51hに比べて相対的に低密度となる低密度領域51lが形成される。つまり、圧粉体51aには、密度分布が均一でない部分が残っている。なお、この高密度領域51hの境界面を仮想して、縦断面に表れるその境界線に符号をSfを付して図5の(3)に二点鎖線で示した。
(ステップS9:)
スッテプS9は、一次成形体を分割成形するための第2層目以降を成形する工程であり、積層圧粉体を成形する。
具体的には、ステップR1の積層充填工程とステップR2の第2加圧成形工程とを順次繰り返し行う。上記の(例1)では、充填回数:nは3回であり、積層圧粉体を成形する操作を2回繰り返す。先ずは、i=2の場合の2層状の積層圧粉体51b(中間体)を形成する工程について説明する。
(ステップR1:積層充填)
ステップR1では、積層充填工程を行う。積層充填工程は、加圧型70内に既に充填されている先の圧粉体51aの露出表面(端面51e)に当接するように更に加工用磁粉13を積層充填する工程である。
(例1)では、一次成形体を3等分割して各層の圧粉体を割り当てる例を示している。この場合、第1加圧成形工程で得られた1層目の圧粉体51aを成形した際と同量の加工用磁粉13を準備する。図6(4)に示すように、加圧型70のキャビティ内の圧粉体51aの上端面51eに、追加の加工用磁粉13を積層充填する(積層配置する)。積層充填される加工用磁粉13が接する先の圧粉体51aの上端面51eには、第1加圧成形工程で形成された高密度領域51hが在る。
なお、追加する加工用磁粉13を圧粉体51aの上面に当接するように積層充填する例を示したが、下面に積層充填しても、又は、上下両面に積層充填しても構わない。また、図6の模式図では、「先の圧粉体」に相当する既にキャビティに充填されている圧粉体51aを形成する加工用磁粉13を濃い色で表した。
(ステップR2:第2加圧成形)
次に、ステップR2では、第2加圧成形工程を行う。第2加圧成形工程は、積層充填された加工用磁粉13と先の圧粉体51aとを更に共に加圧して積層圧粉体51bを成形する工程である。
図6の中上の(5)に示すように、加圧上型72を組み付け、加圧上型及び下型72、71それぞれを近接する方向に移動させることにより、上下両方向から加圧することができる。また、その他の温度管理や、加圧型70(71,72)による加圧回数、加圧方法等の成形条件も、ステップS8の第1加圧成形工程と同様に行うことができる。
ここで、加圧型70での加圧を繰り返すことによって、第1加圧成形時と同様に、磁粉11の粒子が再配列され、磁粉11の粒子間の隙間を小さくすることができる。第2加圧成形時には、加圧上型72は、ステップR1で積層充填された加工用磁粉13と当接する。よって、第1加圧成形時に形成された先の圧粉体51aの上端面51eと同様に、加圧上型72による加圧力は、積層圧粉体51bの上端面51eに集中的に伝わり得る。すると、第1加圧成形時と同様に、上端面51e近傍の磁粉11eの粒子の移動(再配列)が効果的に促進し、磁粉11eの粒子の隙間が小さくなる。一方、加圧下型71は、先の圧粉体51aの下端面51eと当接する。先の圧粉体51aの下端面51e近傍には、高密度領域51hが形成されている。よって、加圧下型71による加圧力は、積層圧粉体51bの下端面51e(先の1層目の圧粉体51aの下端面51eと同じ端面を指す)を超えて、2層目の積層充填に係る加工用磁粉13、すなわち2層目の圧粉体に伝わりにくくなっている。
図6の右端(6)を用いて、2回の積層に係る積層圧粉体51bの模式的な密度分布を説明する。積層圧粉体51bの底方、すなわち先の1層目が配置する部分には、先の圧粉体51aが残存すると考える。上記したとおり、先の1層目の圧粉体51aに係る高密度領域51hを超えて、2層目の積層充填した加工用磁粉13にまで加圧力が伝わりにくくなっており、高密度領域51hがその周辺において加圧型70の内壁面に対して突っ張るためと考えられる。つまり、加圧下型71による加圧力が、積層圧粉体51bの磁粉11の配列に及ぼす影響は小さく、実際には加圧上型72による片方加圧状態になっていると考えられる。
対して積層圧粉体51bの上方、すなわち2層目が配置する部分には、先の圧粉体51aと同様に、積層圧粉体51bの上の端面51eに高密度領域51hが形成されると考える。高密度領域51hは、1層目の高密度領域51hの略相似大形の領域を占めると考え得る。具体的には、高密度領域51hは、円錐状の高密度領域51hの高さよりも少し高く、圧粉体の厚みThに至る程度の高さの領域を有すると考える。1層目と2層目は、密度がほぼ同じであるが、高密度領域51h、51hの形状、大きさが異なる。
(ステップS9:)
次に、図1のステップS9に示すように、i=3の場合の3層状であって最終積層の積層圧粉体51c(一次成形体)を成形する工程について説明する。
(ステップR1:積層充填、 ステップR2:第2加圧成形)
積層圧粉体51bを成形したのと同様に、積層圧粉体51cを形成できる。ステップR1では、加圧型70内に既に充填されている先の1、2層目の積層圧粉体51bの露出表面(端面51e)に当接するように更に加工用磁粉13を積層充填する。第1加圧成形工程で得られた圧粉体51aを成形した際と略同量の加工用磁粉13を準備できる。図6の(7)に示すように、加圧型70のキャビティ内の圧粉体51bの上端面51eに、3層目の加工用磁粉13を積層充填する(積層配置する)。
次に、ステップR2では、図6の(8)〜(9)に示すように、i=2の場合の2層状の積層圧粉体51bを成形したのと同様に、第2加圧成形工程を行うことができる。図6の右下端(9)に示す積層圧粉体51c(一次成形体)を得る。積層圧粉体51cの底方、すなわち先の1層目が配置する部分には、先の積層圧粉体51bが残存する。また、積層圧粉体51cの上方、すなわち第3層が配置する部分には、上述した積層圧粉体51bに係る高密度領域51hと同様の領域が形成され、高密度領域51hとして示した。また、相対的に低密度となる低密度領域51lを同様に示した。つまり、積層圧粉体51cは、下方から順に高密度領域51h、高密度領域51h、高密度領域51hの領域を有し、不均一な密度構成を有するものの、積層圧粉体51cに対応する形状の一次成形体100を図9に示すように一体成形する場合と比較すると、密度が不均一になる程度(粗密の差)が小さくなっていると考えられる。2層目と3層目は、密度、高密度領域51h、51hの形状、大きさがほぼ同じである。
図7に、(A)式に従って積層して加圧成形した図8の一次成形体50と、分割せずに加圧成形した同形状の図9の一次成形体100との密度比を比較した結果を示した。密度比は、図4で示したのと同じように、厚み係数を無限大に近づけたときの密度比を「1」として比を求めた。主な成形条件は、一次成形体50、100の両方共に、成形面圧:P=1400〔MPa〕、プレス回数20回、磁粉の平均粒子径(D50):Dm=3〔μm〕、一次成形体の全長:L×直径=15〔mm〕×10〔mm〕、で行った。一次成形体50では、厚み係数:Ct=840として(A)式に従って、積層厚さTh=5〔mm〕を得た。よって、充填回数を全3回として1回目〜3回目まで同じ積層厚みで積層した。
図示のとおり、(A)式に従って分割成形した一次成形体50の方が、図9の一次成形体100よりも密度比で1.01倍以上の結果が得られた。成形体の密度比がこの程度大きくなれば、磁石の体積として換算した場合により明確な差異として表れ、優れた効果と認められる。また、(A)式に従って簡易に積層回数を求める方法によって、生産効率的に優れ、高密度な一次成形体を得ることができた。
図9に示す従来のとおり、一次成形体100では、高密度領域100hが上方及び下方の両端面100e、100eの2か所において、離間して形成され得る。対して、図6に示す発明の実施形態のとおり、一次成形体50では、密度を不均一とし得る高密度領域50hが形成されるものの、図6の(9)で示した一次成形体51同様に、軸線方向に沿って(模式図では3〜4か所に)分散され得る。よって両者を比較すると一次成形体50の方がより密度が均一化され、上記の効果が奏されたと考えられる。また、図10には、一次成形体50の磁粉の粒子間の状態を模式的に拡大して図示した。磁粉11の粒子が圧接されて粒子同士が密着して結合しいている。これは、磁粉11の粒子の隙間が小さくなるように移動し、再配列され、密に詰まったためである。
(ステップS10:熱処理)
続いて、図1のステップS10に示すように、一次成形体を加熱して、結着材41を硬化する熱処理を行う。成形体の加熱温度は、熱硬化型のシリコーン組成物の硬化温度T(硬化開始温度)とする。但し、磁粉11の分解温度T未満で行う。例えば本工程の加熱は、先の加圧工程(ステップS9)の加圧型70で成形された一次成形体51(51c)(図6の(9)参照)を、加圧型70から取り出さずに加圧型70の温度を硬化温度Tとして行うことができる。硬化温度Tでの加熱は、結着材41が硬化完了するまでの時間とする。以上の各工程を施すことで、本形態の磁石81が製造できる。
(磁石)
本形態の磁石81は、その構成を図11に模式図で示したように、硬化した結着材42が磁粉11の粒子同士を結着する。硬化した結着材42は、磁粉11の粒子の当接部近傍のみに介在する。すなわち、磁粉11の粒子の表面の一部が露出している。また、粒子間に微細な空隙が残存していてもよい。この場合、磁粉11の表面には、吸着膜22が残存していると推察される。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の磁石の製造方法ついて、図12及び図13を用いて説明する。第2実施形態の磁石の製造方法では、第1加圧成形工程によって成形された圧粉体の厚みが、第2加圧成形工程によって成形された圧粉体の厚みよりも大きく成形される点と、結合材が、磁粉の表面に生成される酸化膜である点で、第1実施形態と異なっている。以下、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明を行う。なお、対応する同一部分には同じ符号を付す。
図12は、第2実施形態の磁石の製造方法の各工程を示した図である。第2実施形態では、結合材として、磁粉の表面に生成される酸化膜を用いる。よって、第2加圧成形を行った後に、ステップS9の結合材生成熱処理工程を行う。結合材生成熱処理工程としては、例えば本出願人による先の出願に係る特開2015−008200号公報の段落[0029]〜[0034]に記載されている熱酸化による方法を挙げることができるが、以下簡単に説明する。
酸化性雰囲気にて一次成形体を熱処理(加熱)することで、磁粉11の粒子の露出面が酸素と反応し、磁粉11の表面に酸化膜が生成される。この酸化膜が隣接する磁粉11の粒子の表面同士を接合する。つまり、酸化膜は磁粉11において隙間に露出している部分に形成され、磁粉11において隙間に露出していない部分(粒子が圧接した界面)は母材そのものとなる。したがって、磁粉1の全ての表面に酸化膜が形成されることはない。
熱処理工程は、マイクロ波による加熱炉、電気炉、プラズマ加熱炉、高周波焼入炉、赤外線ヒータによる加熱炉などの中に一次成形体を配置して行うことができる。熱処理のための加熱温度は、磁粉11の分解温度未満に設定される。例えば、磁粉11としてSmFe17やFe16を用いる場合には、分解温度Tが500℃程度であるため、加熱温度を500℃未満に設定する。例えば、200〜300℃程度とすることができる。また、酸化性雰囲気の酸素濃度及び雰囲気圧力は、磁粉11を酸化することができればよく、大気中の酸素濃度程度及び大気圧程度であれば十分である。したがって、大気雰囲気で加熱できる。
続いて、ステップS10において、ステップS9の結合材生成熱処理工程にて形成された二次成形体の表面をコーティング膜により囲う工程を行い、三次成形体を形成できる。三次成形体のコーティング膜は、Cr,Zn,Ni,Ag,Cuなどの電気めっきにより形成されためっき被膜、無電解めっきにより形成されためっき被膜、樹脂コーティングにより形成された樹脂被膜、ガラスコーティングにより形成されたガラス被膜、Ti,ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などによる被膜等を挙げることができ。公知の方法によって行える。これにより、三次成形体に形成されたコーティング膜は、卵の殻のように機能する。そのため、三次成形体は、酸化膜とコーティング膜とが接合力を発揮することにより、抗折強度を高くすることができる。特に、無電解めっきを施すことにより、表面硬度、密着性を高くすることができ、磁粉1の接合力をより強固にすることができる。また、例えば、無電解ニッケルリンめっきなどは、耐食性も良好となる。
図13は、第2実施形態の加圧成形工程を模式的に示した図である。第2実施形態の加圧成形工程では、第1加圧成形工程によって成形された圧粉体の厚み(Th21)が、第2加圧成形工程によって成形された圧粉体の厚み(Th22、Th23)よりも大きく成形される点でのみ異なっている。第1実施形態の段落[0044]で用いた(例1)を再び引用してこの差異点について説明する。
つまり、第1実施形態の(例1)では、圧粉体の厚さ:Th=5〔mm〕が求まり、成形体の全長L=15〔mm〕に対して3分割したが、ここで、Th=5とする目安を得たうえで、例えば、第1加圧成形工程の1層目の圧粉体の厚みへの割り当てを7〔mm〕とし(Th21=7〔mm〕)、全長L=15〔mm〕から逆算して、第2加圧成形工程の2、3層目の圧粉体の厚みへの割り当てを4〔mm〕(Th22=Th23=4〔mm〕)とすることができる。(例1)と同様に、Ps=1400、Dm=3の条件で(A)式から逆算すると、Th21=7に対する厚み係数はCt=643であり、Th22=Th23=4に対する厚み係数はCt=1125であり、厚み係数:Ctの好ましい範囲(300≦Ct≦5000)にある。
第1実施形態で説明したとおり、一軸加圧成形で軸線方向に沿って両側から加圧した場合には、1層目では、上下両方向からの加圧力を圧粉体に伝えることができるが、2層目以降では、片方からの加圧力を圧粉体に伝えるに止まる。また、第2実施形態では、1層目の圧粉体51aと、2層目以降の圧粉体51aとの密度を比較すれば、1層目の圧粉体51a方が厚み係数が小さい分だけ、密度が小さくなり得ると推察できる。
上記した例では、1層目の圧粉体の厚みTh21=7に対する厚み係数:Ct=643であり、2、3層目の圧粉体の厚みTh22=Th23=4に対する厚み係数:Ct=1125であるのだから、厚み係数:Ctの好ましい範囲(300≦Ct≦5000)にあることを根拠に、両方とも適当に高密度の領域が形成されると推察できる。であれば、1層目の圧粉体52aの厚みへの割当てを7〔mm〕とし、2、3層目の圧粉体52a、52aの厚みへの割当てを4〔mm〕とすることで、よりよく積層圧粉体52c中の高密度領域の均一分散化を図り、一次成形体全体52としての密度を向上でき得ると推察できる。図4のグラフで説明した方法で求めた図9の1次成形体100の密度比を「1」とすると、1次成形体100の密度比「1」に対する1層目の圧粉体52aの密度比は「1.01」、同様に2、3層目の圧粉体52a、52aの密度比は「1.02」となり、1層目、2、3層目の圧粉体ともに密度比の比で1.01倍以上の結果が得られた。
図13に、1層目の圧粉体の厚みへの割当てを大きくし、2、3層目の圧粉体の厚みへの割当てを少なくした場合の加圧成形工程の模式図を示した。(1)は第1加圧成形工程を行った圧粉体52aであって、第1実施形態の圧粉体51aと比較すると、圧粉体52aの厚みTh21が大きくなった分だけ、第2実施形態の高密度領域52hの方がよりよく圧粉体52a全体の中で分散され、密度の均一化が図られている状態を示した。
図13の(2)(3)は第2加圧成形工程を行った積層圧粉体52b、52cを示す。第1実施形態の積層圧粉体51b、51cと比較すると、第2実施形態の高密度領域52h、52hの方が厚みTh22、Th23が小さくなった分だけ、密度の均一化が図られた状態を示した。よって、一次成形体52全体としての密度を向上でき得ると考えられる。
(本形態の効果)
(第1の効果)
(A)式に従って製造することで、所定の長尺状の磁石であっても生産効率よく一定以上の成形密度を有する一次成形体51、52を得ることができ、残留磁束密度がよりよく向上し、磁気特性向上に寄与できる。
(第2の効果)
シリコーン組成物を結着材41(硬化後は結着材42)として用いることによって、好適に固化できる。
(第3の効果)
酸化性雰囲気にて一次成形体を熱処理(加熱)することで磁粉の表面に生成する酸化膜を結着材として用いることによって、好適に固化できる。
(第4の効果)
本形態の製造方法によると、硬磁性体の磁粉11としてFe−N系化合物、R−Fe−N系化合物(R:希土類元素)の一種以上よりなる化合物を用いる。この構成によると、安価に磁石を製造できる。その上で、本形態の製造方法では、Rにジスプロシウム(Dy)を用いないようにできる。すなわち、安価に磁石を製造できる。また、分解温度が焼結温度よりも低く、焼結によって一次成形体を成形することができず、いわゆるボンド磁石として成形する以外は、固化してバルク体を得る技術が現段階で確立しているといい難いFe−N系、R−Fe−N系化合物において、高密度成形体を得るために好適な製造方法となる。
(第5の効果)
本形態の磁石81は、上記の製造方法により製造されてなる。この構成によると、上記した第1〜第4の効果を備えた磁石となる。
11:磁粉、21:潤滑剤、22:吸着膜、31:混合用容器、41:結着材、50、51:一次成形体、70:加圧型、81:磁石

Claims (5)

  1. 磁粉を加圧成形して一次成形体を得る加圧成形工程と、
    結合材を介して前記磁粉の粒子同士を接合し、前記一次成形体を固化する工程と、を有する磁石の製造方法であって、
    前記一次成形体が、該一次成形体を分割した圧粉体を積層してなり、
    前記加圧成形工程が、
    金型内に充填された前記磁粉を加圧して前記圧粉体を成形する第1加圧成形工程と、
    前記金型内に充填された先の圧粉体の露出表面に当接するように更に前記磁粉を積層充填する積層充填工程と、
    前記積層充填された磁粉と前記先の圧粉体とを更に共に加圧して積層圧粉体を成形する第2加圧成形工程と、を備え、
    前記加圧成形工程が、下記(A)式に従って、前記積層充填工程及び前記第2加圧成形工程を順に繰り返し行う工程である、磁石の製造方法。

    Th=(Ps×Dm)/Ct …(A)

    但し、Ps:成形面圧〔MP〕
    Dm:磁粉の平均粒子径〔D50,μm〕
    Ct:厚み係数、Ct≧300
    Th:圧粉体の厚さ〔mm〕
  2. 前記結合材が、前記磁粉に配されたバインダである、請求項1に記載の磁石の製造方法。
  3. 前記結合材が、前記磁粉の表面に生成される酸化膜である請求項1に記載の磁石の製造方法。
  4. 前記磁粉が、Fe−N系化合物、R−Fe−N系化合物(R:希土類元素)の一種以上よりなる硬磁性体の粉末を含有する、請求項1−3の何れか一項に記載の磁石の製造方法。
  5. 請求項1−4の何れか一項に記載の磁石の製造方法により製造された、磁石。
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