JP2017031484A - 高強度二相鋼及びその製造方法 - Google Patents

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真宏 塚原
剣吾 深沢
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剣吾 深沢
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佳孝 三阪
伸生 中田
Nobuo Nakada
伸生 中田
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Abstract

【課題】本件発明は、局部延性に優れた高強度二相鋼及びその製造方法の提供を目的とする。【解決手段】この目的を達成するため、本件発明は、焼戻マルテンサイト組織からなる母相と、硬質第二相を備えた高強度二相鋼において、組織全体における当該硬質第二相の体積分率が5%〜30%であり、かつ、当該硬質第二相は円相当での平均粒径が3μm以下、その最大粒径が10μm以下で前記母相中に分散して存在することを特徴とする高強度二相鋼を採用する。【選択図】図1

Description

本件出願に係る発明は、特に局部延性に優れた高強度二相鋼及びその製造方法に関するものである。
自動車や産業機械等に用いられる鋼材は、軽量化を実現するために、強度の向上が要求される。しかし、鋼材の強度を高めると、延性が低下するため複雑な形状への加工が困難となる。そこで、従来では、強度と加工性に優れた材料として、フェライトとマルテンサイト等の母相と硬質第二相を備えた高強度二相鋼が広く利用されている。ここで、硬質相と軟質相との強度の差が大きいと、局部変形域において、硬質相と軟質相の界面や硬質相内部においてボイドが形成されやすい。当該ボイドを有する高強度二相鋼は、変形時において当該ボイドが破壊の起点となるため、単相鋼と比較して局部延性が低い傾向にある。よって、従来では、高強度二相鋼の強度と局部延性とのバランスを向上させる方法として、母相と硬質第二相の強度差を低減させる方法や、硬質第二相の分散制御などが行われていた。
例えば、特許文献1では、低降伏比を有し、強度−伸び及び強度−伸びフランジ性のバランスの向上、且つ、焼付硬化性を向上させることを目的として、質量%で、C:0.01%〜0.20%、Si:0.5%以下、Mn:0.5%〜3%、sol.Al:0.06%以下(0%)を含む、P:0.15%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含む)を含有し、且つ、母相組織は、焼戻マルテンサイト;焼戻マルテンサイト及びフェライト;焼戻ベイナイト;または焼戻ベイナイト及びフェライトを含有し、第2相組織は、マルテンサイトが全組織に対して占積率で3%〜30%である複合組織鋼板を採用している。特許文献1では、熱延後にMs点以下又はMs点以上Bs点以下まで急冷して焼戻マルテンサイトや焼戻ベイナイト等のラス状組織を得た後、二相域加熱を行うことで第2相組織を母相中に分散させている。
特開2003−247045号公報
田村今男、「鋼のオーステナイト化過程と塑性加工の効果」、材料、日本材料学会、1983、p1〜5
しかしながら、特許文献1に示すような炭素鋼では、非特許文献1に記載されているように、ラス状組織からの逆変態時に、旧オーステナイト粒界において優先的にオーステナイトが核として生成し、第2相であるフレッシュマルテンサイトが不均一に分布することが知られている。不均一に分散したフレッシュマルテンサイト同士が連結すると、破壊の起点となりやすい粗大なマルテンサイトを形成する。
ここで、加工が施される鋼材に要求される局部延性は、組織内部のボイドの形成や連結の進展度合いに大きく影響する。よって、硬質第二相が連結して粗大なマルテンサイト組織となっている場合には、連結部分においてくびれが生じ、そのくびれ部を起点としてボイドの形成が促進される。当該ボイドは上述したように変形時において破壊の起点となるため、粗大なマルテンサイト組織が形成される鋼板は、局部延性が低下する問題がある。
以上のことから、市場からは、高い強度を維持しつつ、局部延性に優れた高強度二相鋼の開発が望まれていた。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、本件発明に係る局部延性に優れた高強度二相鋼及びその製造方法を提供することを可能とした。
すなわち、本件発明に係る高強度二相鋼は、焼戻マルテンサイト組織からなる母相と、硬質第二相を備えた高強度二相鋼であって、組織全体における当該硬質第二相の体積分率が5%〜30%であり、かつ、当該硬質第二相は、円相当での平均粒径が3μm以下、最大粒径が10μm以下で前記母相中に分散して存在することを特徴とする。
また、本件発明に係る高強度二相鋼は、前記硬質第二相の平均粒子間距離が5μm以下であることが好ましい。
本件発明に係る高強度二相鋼の製造方法は、上述のいずれかに記載の高強度二相鋼の製造方法であって、少なくとも以下の工程A〜工程Cを備えることを特徴とする。
工程A:鋼材をA点以上の温度まで加熱した後、Ms点以下まで20℃/秒以上の冷却速度で冷却して焼入れる。
工程B:工程Aで焼入れた鋼材を、減面率20%〜90%の範囲で減面処理する。
工程C:工程Bで減面処理した鋼材を、Ac1点〜Ac3点までの温度に50℃/秒以上の昇温速度で加熱した後、60秒以下の時間、放冷又は保定した後、20℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する。
本件発明に係る高強度二相鋼の製造方法は、前記工程Aで焼入れた後、100℃〜700℃の温度で焼戻しを行うことが好ましい。
また、本件発明に係る高強度二相鋼の製造方法は、前記工程Cの後、必要に応じて100℃〜600℃の温度で焼戻しを行い、強度や伸び等の調整を行っても良い。
本件発明に係る高強度二相鋼は、焼戻マルテンサイト組織からなる母相と、硬質第二相を備えた高強度二相鋼であって、組織全体における当該硬質第二相の体積分率が5%〜30%であり、かつ、当該硬質第二相は、円相当での平均粒径が3μm以下、その最大粒径が10μm以下で前記母相中に分散して存在するので、母相と硬質第二相との界面や、硬質第二相内においてボイドが形成されにくい。よって、ボイドを起点とする破壊が生じ難くなり、高い強度を維持しつつ、高歪域での局所歪みを緩和することができる。従って、高強度、高延性、高局部変形能に優れたバランスの良い高強度二相鋼を実現することができる。
本件発明における工程A〜工程Cの熱処理の概念を示すためのイメージ図である。 実施例及び比較例の各試験片の金属組織写真(1000倍)である。 引張試験に用いた試験片の概略図である。
以下に、本件発明に係る「高強度二相鋼」及び「当該高強度二相鋼の製造方法」の形態について詳述する。
1.高強度二相鋼
本件発明に係る高強度二相鋼は、焼戻マルテンサイト組織からなる母相と、硬質第二相を備えた高強度二相鋼であって、組織全体における当該硬質第二相の体積分率が5%〜30%であり、かつ、当該硬質第二相は、円相当での平均粒径が3μm以下、その最大粒径が10μm以下で前記母相中に分散して存在することを特徴とする。
本件発明における高強度二相鋼は、母相がラス状組織である焼戻マルテンサイト組織である。当該焼戻マルテンサイト組織は、通常のフェライト組織と比較して、組織が微細で炭化物も均一に分散している。よって、母相が焼戻マルテンサイト組織である本件発明は、当該母相がフェライト組織である二相鋼と比べて、容易に高強度化を実現することができる。
本件発明では、冷間塑性加工による減面処理によって、焼入れ又は焼戻マルテンサイト組織中に存在するオーステナイト核生成サイトを増加させ、その後、急速加熱によってオーステナイト相が均一微細に分布し、急速冷却を行うことでオーステナイト化した部分が粗大化することなく、微細な硬質第二相として母相中に均一に分散したものである。
具体的に、本件発明における硬質第二相は、組織全体における体積分率が、5%〜30%の範囲で母相中に分散して存在する。当該硬質第二相の組織全体における体積分率が5%を下回ると、高強度化を図ることができないため好ましくない。また、当該硬質第二相の組織全体における体積分率が30%を上回ると、母相である焼戻マルテンサイト組織中に分散して存在するはずの硬質第二相同士が連結しやすくなる。連結した硬質第二相は連結部分がくびれているため、そのくびれ部分を起点としたボイドの形成が促進されて、変形時において破壊の起点となり、局部延性の低下の要因となるからである。
本件発明において、硬質第二相は、円相当径の平均粒径が3μm以下、その最大粒径が10μm以下である。ここで、円相当径とは、当該高強度二相鋼の金属組織写真を画像解析することによって組織中における硬質第二相の大きさに着目し、当該硬質第二相の面積が等しくなるように想定した円の直径を求めたものである。本件発明において、当該硬質第二相は、円相当での平均粒径が3μm以下であり、かつ、その最大粒径が10μm以下であるため、母相中において粗大な硬質第二相が存在せず、当該硬質第二相と母相との界面や、当該硬質第二相内においてボイドが生じ難くなる。よって、当該ボイドが破壊の起点となる不都合を抑制することができる。
また、本件発明において、母相中に分散して存在する硬質第二相同士の平均粒子間距離は、5μm以下であることが好ましい。当該硬質第二相同士の平均粒子間距離が5μm以下とすることにより、母相を構成する焼戻マルテンサイト組織中に孤立した状態で存在する硬質第二相の分散性が向上する。
よって、本件発明の高強度二相鋼は、焼戻マルテンサイト組織からなる母相中に、硬質第二相が、微細な状態で連結することなく分散して存在することにより、組織中にボイドが生じにくくなる。よって、本件発明の高強度二相鋼は、高い強度を維持しつつ、局部延性に優れているため、強度と加工性が要求される構造部品に適したバランスの良い高強度二相鋼を実現することができる。
次に、本件発明に係る高強度二相鋼の成分組成について説明する。本件発明の高強度二相鋼の成分組成は、自動車用鋼板や産業機械用鋼板として、通常含まれている合金成分組成を備えるものであれば良い。例えば、炭素が0.13質量%〜0.18質量%、ケイ素が0.15質量%〜0.35質量%、マンガンが0.60質量%〜0.90質量%、リンが0.030質量%以下、硫黄が0.030質量%以下、銅が0.30質量%以下、ニッケルが0.25質量%以下、クロムが0.90質量%〜1.20質量%、モリブデンが0.15質量%〜0.25質量%であり、残部が鉄及び不可避的不純物からなる化学組成を備える鋼を用いることができる。当該化学組成を備えた鋼の一例として、SCM415(JIS G4053)を挙げることができる。ただし、本件発明の高強度二相鋼の成分組成は、これに限定されるものではない。
2.熱処理方法
次に、本件発明に係る高強度二相鋼の製造方法について述べる。本件発明に係る高強度二相鋼の製造方法は、上述した高強度二相鋼の製造方法であって、少なくとも以下の工程A〜工程Cを備えることを特徴とする。以下、各工程A〜工程Cについてそれぞれ説明する。図1は、本件発明における工程A〜工程Cの熱処理の概念を示すためのイメージ図を示す。
(1)工程A
当該工程Aは、鋼材をA点以上の温度まで加熱した後、Ms点以下まで20℃/秒以上の冷却速度で冷却して焼入れる工程である。本件発明において用いる鋼材は、自動車用鋼板や産業機械用鋼板として、通常含まれている合金成分を備えるものであれば良く、上述したように、一例としてSCM415を用いることができる。
まず、当該工程Aにおいて、鋼材をA点以上の温度まで加熱した後、Ms点以下まで20℃/秒以上の冷却速度で冷却して焼入れて、母相となるラス状組織を有する焼入マルテンサイト単相組織を得る。ここで、Ms点以下までの冷却速度は20℃/秒以上とする。これにより、フェライト変態やパーライト変態を回避しながら、所望の焼入マルテンサイト組織を得ることができる。このような工程を行い、ラス状の微細組織を生成することにより、後段の工程Bにおいて、より多くのオーステナイトの核生成サイトを形成することができる。
当該工程Aでは、必要に応じて、焼入れた鋼材を、100℃〜700℃の温度で焼戻しを行って、母相を焼戻マルテンサイト組織としても良い。焼入れた後の鋼材を焼戻しすることにより、次の工程Bにおける冷間塑性加工による減面処理の際に、鋼材の割れを防止することができると共に、変形抵抗を減じることができる。焼戻温度としては、700℃を超える場合には、母相が一部再結晶化して著しく軟化するおそれがあるため、100℃〜700℃の焼戻し温度で処理することが好ましい。
(2)工程B
当該工程Bは、工程Aにおいて焼入れ又は焼入焼戻しを行った鋼材を、減面率20%〜90%の範囲で減面処理する。工程Aにおいて調整されたラス状の焼入れ又は焼戻マルテンサイト組織を減面処理を経ることなく、工程Cにおいて急速加熱を行うと、旧オーステナイト粒界に優先的にオーステナイトが核生成して、不均一に硬質第二相が生成された組織となってしまう。そこで、本件発明では、当該工程Bにおいて、工程Aで焼入れ又は焼入焼戻しを行った鋼材について、冷間塑性加工により減面処理を行う。このときの減面率は、20%〜90%とすることが好ましい。また、当該冷間塑性加工による減面加工は、圧延や伸線、引抜、鍛造等を挙げることができる。但し、これに限定されない。これにより、工程Aにおいて処理された後のラス状の微細組織中に存在するオーステナイトの核生成サイトがさらに増加して、組織全体に均一に分散して存在させることができる。
ここで、減面率とは、圧延や伸線、引抜、鍛造等の冷間塑性加工における加工率を表すものであり、例えば、減面加工前の棒材の断面積をA、減面加工後の棒材の断面積をBとしたとき、(A−B)/A×100(%)で表されるものである。本件発明において、当該工程Bにおける減面率が20%未満であると、ラス状の微細組織中におけるオーステナイトの核生成サイトが少なくなり、工程Cを経た後に得られる硬質第二相の分布状態が不均一となるため、好ましくない。一方、当該工程Bにおける減面率が90%を超える場合には、鋼材自体が割れる危険性が高くなるため好ましくない。なお、本件発明において減面処理は、冷間加工により鋼材の減面処理を行うことができる方法であれば、従前から行われている方法を採用することができ、ここに挙げられている方法に限られない。また、当該減面処理は、一度に加工するものであっても、複数段階に分けて、加工するものであっても良い。
(3)工程C
当該工程Cは、工程Bで減面処理した鋼材を、Ac1点〜Ac3点までの温度に50℃/秒以上の昇温速度で加熱した後、60秒以下の時間、放冷又は保定した後、20℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する。本件発明に係る高強度二相鋼の製造方法では、前処理により組織全体を焼入れ又は焼戻マルテンサイト組織とし、減面処理した後の鋼材の熱処理方法は、高周波誘導加熱法や、直接通電加熱法等を挙げることができる。但し、これに限定されるものではない。当該工程Cでは、必要に応じて、100℃〜600℃の温度で焼戻しを行っても良い。当該焼戻しを行うことにより、強度や伸び等を調整することができる。但し、600℃より高い温度で焼戻しを行うと、母相と硬質第二相の強度差が少なくなり、高強度化が見込めなくなる。
当該工程Cにおける加熱処理は、加熱中における母相の再結晶化を抑制するために、Ac1点〜Ac3点までの温度に50℃/秒以上の昇温速度で加熱する必要がある。昇温中に母相である焼入マルテンサイト組織や焼戻マルテンサイト組織が再結晶化してしまうと、高強度化を図ることができないからである。特に、本件発明における工程Cの鋼材は、工程Bにおいて減面処理を行っているため、再結晶化しやすい。ゆえに、当該加熱処理は、短時間で迅速に行う必要がある。よって、本件発明において、当該工程Cにおける昇温速度の上限値は特に限定しない。
そして、当該工程Cにおける加熱処理では、Ac1点〜Ac3点までの温度に50℃/秒以上の昇温速度で加熱した後、60秒以下の時間、放冷又は保定する。当該放冷又は保定時間を60秒以下とすることにより、母相の再結晶化を回避することができる。
その後、工程Cにおいて加熱処理した後の鋼材を20℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する。当該冷却速度は、20℃/秒以上とする必要がある。20℃/秒未満の冷却速度では、オーステナイト化した部分のマルテンサイト変態が生じない不都合や硬質第二相の粗大化が生じる可能性が高まり好ましくないからである。工程Cにおいて加熱処理した後の鋼材を20℃/秒以上の冷却速度で冷却することにより、組織中におけるオーステナイト化した部分を支障なくマルテンサイト変態させることができる。
ここで、工程Cにおいて用いられる鋼材は、工程Aにおいて焼入れ又は焼戻マルテンサイト組織に調整され、工程Bにおいて減面処理することにより、母相中にオーステナイト核生成サイトが増加して分散した状態で存在する鋼材である。よって、当該工程Cにおいて急速加熱・急速冷却された鋼材は、ラス状組織を有する焼戻マルテンサイト組織中に、硬質なマルテンサイト組織が均一微細に分散した状態で存在する。
具体的には、上述した高強度二相鋼の製造方法により得られる高強度二相鋼は、上述した本件発明に係る高強度二相鋼のように、組織全体における当該硬質第二相の体積分率が5%〜30%であり、かつ、当該硬質第二相は、円相当での平均粒径が3μm以下、その最大粒径が10μm以下で前記母相中に分散して存在する。よって、当該高強度二相鋼は、母相である焼戻マルテンサイト組織と硬質第二相との界面や、当該硬質第二相内においてボイドが形成されにくい。ゆえに、ボイドを起点とする破壊が生じ難くなり、高い強度を維持しつつ、高歪域での局所歪みを緩和することができる。従って、高強度、高延性、高局部変形能に優れたバランスの良い高強度二相鋼を実現することができる。
次に、本発明に係る高強度二相鋼の実施例及び比較例について述べる。
実施例1の高強度二相鋼は、鋼材(供試材)としてSCM415Hからなる直径10mmの丸棒により作製した。当該鋼材の化学成分を以下の表1に示す。
実施例1では、まずはじめに、周波数50kHzの高周波誘導加熱により、当該鋼材を6.5秒で当該鋼材のA点以上の温度である1153℃まで昇温させた後、直ちに、水冷により当該鋼材のMs点以下温度である室温まで約100℃/秒の冷却速度で急速冷却して焼入れた。次いで、周波数50kHzの高周波誘導加熱により5秒で674℃まで昇温させた後、空冷を行うことで、焼戻しを行い、調質処理した。
その後、当該焼戻した後の鋼材について、冷間塑性加工を行った。実施例1では、冷間塑性加工として、引抜加工により直径10mmの丸棒を直径7mmまで減面処理した。当該減面率は、50%であった。実施例1では、当該減面処理した鋼材を用いて、機械加工により、直径6mm、長さ50mmの熱処理試験片を作製した。
そして、周波数50kHzの高周波誘導加熱により、実施例1の熱処理試験片を963℃/秒の昇温速度で、当該鋼材のAc1点〜Ac3点までの温度である790℃に加熱した。当該加熱時間は0.8秒であった。当該加熱後、当該鋼材を、0.9秒放冷した。そして、約100℃/秒の冷却速度で室温まで当該鋼材を冷却して、実施例1としての高強度二相鋼を得た。当該熱処理試験片の加熱条件について後述する実施例2及び各比較例と共に表2に示す。
実施例2は、上述した実施例1と同様の鋼材を供試材として用いて同様に熱処理試験片を作製した。実施例2は、実施例1と熱処理試験片の加熱条件のみが異なり、それ以外は同様の条件で高強度二相鋼を得た。具体的には、実施例2は、熱処理試験片を高周波誘導加熱により、500℃/秒の昇温速度で、当該鋼材のAc1点〜Ac3点までの温度である770℃に加熱した。加熱時間は1.5秒であった。その後、当該鋼材を0.8秒放冷した。そして、約100℃/秒の冷却速度で室温まで当該鋼材を冷却して、実施例2としての高強度二相鋼を得た。
比較例
比較例1及び比較例2は、上述した実施例1と同様の鋼材を供試材として用いて同様に熱処理試験片を作製した。比較例1及び比較例2は、実施例2と同様に、熱処理試験片の加熱条件のみが異なり、それ以外は同様の条件で高強度二相鋼を得た。具体的には、比較例1は、熱処理試験片を炉加熱により、2.5℃/秒の昇温速度で、770℃に加熱した。加熱時間は300秒であった。その後、さらに300秒保定した。そして、約50℃/秒の冷却速度で室温まで当該鋼材を冷却して、比較例1としての高強度二相鋼を得た。比較例2は、熱処理試験片を0.1℃/秒の昇温速度で、770℃に加熱した。加熱時間は7200秒であった。その後、さらに300秒保定した。そして、約50℃/秒の冷却速度で室温まで当該鋼材を冷却して、比較例2としての高強度二相鋼を得た。
[評価]
上述した各実施例及び比較例の高強度二相鋼について、光学顕微鏡で撮影した金属組織写真を用いて、組織観察を行い、組織全体における硬質第二相の体積分率、円相当での平均粒径、最大粒径、平均粒子間距離を測定した。また、各実施例及び比較例の高強度二相鋼について、引張強度を測定した。以下、それぞれの評価方法及び評価結果を述べる。
組織観察: 各実施例及び比較例の高強度二相鋼について、熱処理後の試験片の断面を研磨した後、ナイタール腐食液で腐食を行い、表面から直径1/4部分と中心部分を、光学顕微鏡にて1000倍で撮影した。図1に、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の金属組織写真を示す。図1に示すように、本件発明に係る実施例1及び実施例2は、母相が焼戻マルテンサイトであり、硬質第二相であるフレッシュマルテンサイトが当該母相中に、均一に分散していることが分かる。これに対し、比較例1及び比較例2は、母相がフェライトであり、フェライト粒界に硬質第二相であるフレッシュマルテンサイトが不均一な状態で分散していることが確認できる。
体積分率、円相当での平均粒径、最大粒径、平均粒子間距離: 各実施例及び比較例の高強度二相鋼について、上述の組織観察に用いた金属組織写真を用いて画像解析によって硬質第二相(フレッシュマルテンサイト組織)の体積分率、円相当での平均粒径、最大粒径、平均粒子間距離を測定した。ここで、硬質第二相の平均粒径及び最大粒径を表す円相当径は、金属組織写真を画像解析することによって組織中における硬質第二相の大きさに着目し、当該硬質第二相の面積が等しくなるように想定した円の直径を求めたものである。よって、連結して母相中に存在する硬質第二相の円相当径は、粒径は大きな値として表される。表3に、それぞれの高強度二相鋼について6視野ずつ撮影し、各値の平均値をまとめて示す。
減面処理した後、高周波誘導加熱により短時間で加熱し急冷した実施例1及び実施例2と、減面処理した後、炉加熱により長時間をかけて加熱し、ゆっくりと冷却した比較例1及び比較例2の高強度二相鋼は、組織全体における硬質第二相の体積分率は、20%〜30%であり、大きな相違は見られなかった。しかし、実施例1及び実施例2と、比較例1とは、平均粒径や平均粒子間距離が同程度の値であったが、比較例1は、最大粒径が12.7μmと10μmを超えているのに対し、本願発明に係る実施例1及び実施例2は、何れも最大粒径が8μm以下であり、10μmを超える大きな円相当径の硬質第二相は確認されなかった。比較例2に至っては、最大粒径が20μmを超えており、さらに、平均粒子間距離も6μmを超えていた。
以上のことから、比較例1や比較例2のように、減面処理した後、炉加熱により長時間かけて加熱した場合、組織全体における硬質第二相の体積分率を30%以下に抑えることができるものの、硬質第二相の最大粒径や平均粒子間距離が大きくなって、不均一な状態で母相中に硬質第二相が形成されることがいえる。これに対して、実施例1や実施例2のように、減面処理した後、高周波誘導加熱により短時間加熱及び急冷を行った場合、組織全体における硬質第二相の体積分率を30%以下に抑えつつ、当該硬質第二相を10μm以下の円相当径で均一に母相中に分散して存在させることが可能となったといえる。
引張強度:ここで、各実施例及び比較例について行った引張試験は、以下のようにして行った。各実施例及び比較例の高強度二相鋼を機械加工することにより、図2に示す形状の試験片を作製した。当該試験片の平行部分は、直径3mm、長さ10mmとした。引張試験は、室温の大気中において、インストロン型引張試験機を用い、クロスヘッド速度を1.0×10−5m/sとした。当該引張試験により得られた荷重−変位曲線を公称応力−公称ひずみ曲線に変換し、0.2%耐力と引張強度(TS)を求めた。また、公称応力−公称ひずみ曲線から真応力−真ひずみ曲線と加工硬化率−真ひずみ曲線を取得した後、それぞれの交点から均一伸び(UEL)を求めた。さらに、破断した試験片を突き合わせて全伸び(EL)を測定し、当該全伸び(EL)から均一伸び(UEL)を差し引くことで局部伸び(LEL)を算出した。また、試験片の破断部の最小直径をマイクロメーターで測定し、円形としての断面積を算出し、原断面積からの変化量を原断面積で除して絞りを百分率で表した。各実施例及び比較例の0.2%耐力、引張強度(TS)、均一伸び(UEL)、全伸び(EL)、局部伸び(LEL)、絞りを以下の表4に示す。さらに、表4には、引張強度と全伸びのバランス(TS×EL)と、引張強度と局部伸びのバランス(TS×LEL)についてもあわせて示す。
表4に示すように、実施例1、実施例2と、比較例1、比較例2とを比較すると、実施例1及び実施例2は、各比較例と比べて、均一伸び(UEL)と全伸び(EL)は、低いが、局部伸び(LEL)や絞りは、高い値を示した。当該結果から、引張強度と全伸びのバランス(TS×EL)は、各実施例と各比較例との間で殆ど差が見られないが、引張強度と局部伸びのバランス(TS×LEL)は、各実施例の方が各比較例よりも約1.5倍となっていることが分かる。
以上のことから、実施例1や実施例2のように、減面処理した後、高周波誘導加熱により短時間加熱及び急冷を行った場合、比較例1や比較例2のように、減面処理した後、炉加熱により長時間かけて加熱し、ゆっくりと冷却した場合と比べて、引張強度と局部伸びのバランス(TS×LEL)が高く、局部延性に優れているといえる。当該理由としては、上述したように、本件発明を適用した各実施例の高強度二相鋼は、各硬質第二相が連結して粗大なマルテンサイト組織を形成することなく、母相中に硬質第二相が均一に分散して存在しているため、破壊の起点となるボイドが形成され難いことが考えられる。
本件発明に係る高強度二相鋼は、特に局部延性に優れた高強度二相鋼であるため、強度と加工性が必要となる自動車や産業機械等の構造部品として用いる場合に特に有用である。

Claims (5)

  1. 焼戻マルテンサイト組織からなる母相と、硬質第二相を備えた高強度二相鋼であって、
    組織全体における当該硬質第二相の体積分率が5%〜30%であり、かつ、
    当該硬質第二相は、円相当での平均粒径が3μm以下、当該最大粒径が10μm以下で前記母相中に分散して存在することを特徴とする高強度二相鋼。
  2. 前記硬質第二相の平均粒子間距離が5μm以下である請求項1に記載の高強度二相鋼。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の高強度二相鋼の製造方法であって、
    少なくとも以下の工程A〜工程Cを備えることを特徴とする高強度二相鋼の製造方法。
    工程A:鋼材をA点以上の温度まで加熱した後、Ms点以下まで20℃/秒以上の冷却速度で冷却して焼入れる。
    工程B:工程Aで焼入れた鋼材を、減面率20%〜90%の範囲で減面処理する。
    工程C:工程Bで減面処理した鋼材を、Ac1点〜Ac3点までの温度に50℃/秒以上の昇温速度で加熱した後、60秒以下の時間、放冷又は保定した後、20℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する。
  4. 前記工程Aで焼入れた後、100℃〜700℃の温度で焼戻しを行う請求項3に記載の高強度二相鋼の製造方法。
  5. 前記工程Cの後、100℃〜600℃の温度で焼戻しを行う請求項3に記載の高強度二相鋼の製造方法。
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