JP2017031359A - 発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物および成形体 - Google Patents

発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】均一微細な発泡セルを有し、延展性が良好で、成形品の表面外観が改善された発泡成形体を得るためのポリプロピレン樹脂組成物を提供し、それを用いた発泡シート、さらにそれを用いて熱成形した成形製品を提供する。【解決手段】ポリプロピレン(X)10〜99重量%およびプロピレン系ブロック共重合体(Y)1〜90重量%を含有し、230℃で測定した溶融張力(MT)が1g以上であり、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が50個/m2以下である発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物とする。【選択図】なし

Description

本発明は、発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物に関するものであり、詳しくは、単位面積あたりに含まれるゲルの個数がきわめて少ないフィルムを与え、独立気泡率が高く、緻密で、サイズの揃った発泡セルを形成することができる発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物に関するものであり、更には、その樹脂組成物を用いて製造した発泡成形体もしくは発泡シート、並びに、その発泡成形体もしくは発泡シートを熱成形した成形製品に関する。
ポリプロピレンの重要な成形加工法の一つに発泡成形がある。押出発泡成形や射出発泡成形で得られた各種の成形体は、断熱性や遮音性、クッション性、エネルギー吸収特性などの優れた特性を有しており、幅広い用途で使用されている。特に近年は、環境問題の観点から、材料の軽量化と環境負荷の低減が重要な開発要素となってきており、原料である樹脂に対しても、発泡特性の更なる向上が望まれている。
一般的に、ポリプロピレンは、線状の分子構造と標準的な分子量分布を持つことから、溶融張力が低く、発泡成形を行うことが難しい。その欠点を補うために、ポリプロピレンの溶融張力を向上させる方法として、過去に様々な技術開発がなされてきた。
代表的な方法の1つにラジカルを発生させて長鎖分岐(long chain branch)を導入する方法がある。長鎖分岐とは、主鎖炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言い、溶融張力を向上させる効果があると考えられている。具体的な方法としては、高エネルギーイオン化放射線を用いる方法(特許文献1参照。)や有機過酸化物を用いる方法(特許文献2参照。)などが開示されている。
しかしながら、高エネルギーイオン化放射線を用いる方法は、放射線を用いるための特殊な設備が必要であり、どうしても製造コストが高くなる。また、高エネルギーイオン化放射線により生成したラジカルが残留するために、黄変などの外観の問題が発生したり、時間の経過と共に物性が変化して、安定しなかったり、といった品質上の問題を抱えている。また、有機過酸化物を用いる方法では、有機過酸化物の分解生成物による汚染、臭気、黄変、といった品質上の問題があり、さらに、有機化酸化物が不安定であるために、製造時の安全性の観点で大きな課題を抱えている。
ポリプロピレンの溶融張力を向上させる他の方法として、極めて分子量の高い成分を導入する方法がある。具体的な方法としては、多段重合により超高分子量成分を製造する方法(特許文献3、4参照。)や予備重合で超高分子量ポリエチレン成分を製造する方法(特許文献5参照。)などが知られている。
しかしながら、この様な方法で製造されたポリプロピレンは、長鎖分岐を有するポリプロピレンと較べて溶融張力が随分と低く、従って、その発泡特性は、満足できるものではなく、適用可能な範囲が限られるといった問題を抱えている。
この様な課題や問題を解決するために、ラジカルを発生させることなく、長鎖分岐を形成する技術の開発が進められてきた(特許文献6〜9参照。)。特定の構造を有するメタロセン触媒を用いてモノマーを重合することにより末端不飽和結合を有するマクロモノマーを製造し、それをプロピレンと共重合することによって、長鎖分岐を形成する技術である。これらの方法によって、ラジカル発生に伴う臭気等の課題を解決することができたが、一方で、長鎖分岐の形成量が少なく、溶融張力が不充分となり、発泡特性が悪かったり、溶融張力を高くできた場合でも、発泡時のセル形成は良好であっても延展性が低いためにシート形成時にセルが破泡したり、シート表面の外観が悪くなったり、あるいは、流動性が低くなって押出レートを高くすることができず、生産性が悪くなったり、といった問題が発生している。特に、押出レートが高く成形スピードが速い条件下で、発泡セルの形成と延展時のセル破壊の防止を両立することができていない点が、大きな問題である。
発泡成形に適した樹脂組成物の開発という観点では、複数のポリプロピレンをブレンドする方法(特許文献10〜14参照。)が開示されている。
しかしながら、上記特許文献10〜14では、種々のポリプロピレンのブレンドを開示しているものの、充分な発泡特性が得られているとは言い難い。特に、マクロモノマーを用いて長鎖分岐を導入する際に生じる溶融張力不足、流動性不足、外観不良、といった問題に対しては、何ら改良するものではなく、単に高価な長鎖分岐を有するポリプロピレンを希釈してコストを低下させる程度のものである。
このような状況下、本発明者らにはさらに、ポリプロピレン樹脂を発泡成形した際、発泡成形体の表面の凹凸が著しいと、その成形体表面に発泡成形直後あるいは後加工によってフィルムを貼り合せようとしても接着性に難があったり、フィルムの剥がれ(=デラミネーション)が生じたりする問題があること、製品の表面に直接印刷しようとしても印刷の乗りが悪く、意匠性が低下するので、それらの欠点の改善を強く求める声が寄せられていた。
特開昭62−121704号公報 特表2001−524565号公報 WO99/07752号公報 特開2001−335666号公報 WO97/14725号公報 特表2001−525460号公報 特開2009−275207号公報 特開2009−293020号公報 特開2009−299029号公報 特開2001−226510号公報 特開2002−356573号公報 特開2010−121054号公報 特開2009−275210号公報 特開2011−068819号公報
本発明の目的は、従来技術の現状に鑑み、各種の成形に好適に用いることができ、得られる製品の物性に優れた、高溶融張力を有するポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。特に発泡成形の分野において、均一微細な発泡セルを有し、延展性が良好で、成形品の表面外観が改善された発泡成形体を得るためのポリプロピレン樹脂組成物を提供し、それを用いた発泡シート、さらにそれを用いて熱成形した成形製品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、所定の条件下において計測した特定の大きさのゲルの個数を一定値以下に抑制することにより、そのような発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いて作成した発泡成形体の表面外観が良好に保たれることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
なお、発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物において所定の条件下において計測した特定の大きさのゲルの個数とその発泡成形体の表面外観との関係については、公知の文献には、全く記載や示唆もされていないことを明記しておきたい。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] ポリプロピレン(X)10〜99重量%およびプロピレン系ブロック共重合体(Y)1〜90重量%を含有し、230℃で測定した溶融張力(MT)が1g以上であり、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が50個/m以下である発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
[2] 厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.4mm以上0.5mm未満のゲルの個数が400個/m以下である[1]に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
[3] 厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.4mm以上0.5mm未満のゲルの個数が400個/m以下であり、長径0.3mm以上0.4mm未満のゲルの個数が2000個/m以下である[1]に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
[4] 230℃で測定した溶融張力(MT)が3g以上である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
[5] ポリプロピレン(X)の230℃で測定した溶融張力(X)が3g以上である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
[6] ポリプロピレン(X)が下記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たす[1]〜[4]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
特性(X−i):長鎖分岐を有する。
特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3〜25gである。
特性(X−iii):メルトフローレート(MFR)が0.9g/10分を超え、15g/10分以下である。
特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン(X)全量に対し5wt%未満である。
[7] プロピレン系ブロック共重合体(Y)が10重量%以下のコモノマーを含んでもよいプロピレン(共)重合体(Y−1)およびエチレン含量が11.0〜38.0重量%であるプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)からなり、プロピレン系ブロック共重合体(Y)全量を100重量%としたとき(Y−1)が50〜99重量%、(Y−2)が1〜50重量%である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
[8] プロピレン系ブロック共重合体(Y)が逐次重合によって製造されたものである[7]に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
[9] 溶融張力(230℃)が3g以上であり、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が10個/m以下であるポリプロピレン(X)からなる発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
[10] 厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.2mm以上0.5mm未満のゲルの個数が50個/m以下である[9]に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
[11] 厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.2mm以上0.5mm未満のゲルの個数が50個/m以下であり、長径0.1mm以上0.2mm未満のゲルの個数が100個/m以下である[9]に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
[12] ポリプロピレン(X)が下記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たす[9]〜[11]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
特性(X−i):長鎖分岐を有する。
特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3〜25gである。
特性(X−iii):メルトフローレート(MFR)が0.9g/10分を超え、15g/10分以下である。
特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン(X)全量に対し5wt%未満である。
[13] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物または[9]〜[12]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、発泡剤を0.05〜6.0重量部含有するポリプロピレン樹脂発泡成形材料。
[14] [13]に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を押出成形してなるポリプロピレン樹脂発泡成形体。
[15] [14]に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出してなるポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。
[16] 前記熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、50重量部以下の無機充填剤を含む[15]に記載のポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。
[17] [14]〜[16]のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体または積層発泡成形体を、熱成形してなる成形品。
[18] [13]に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を射出成形、熱成形、ブロー成形またはビーズ発泡成形のいずれかの成形法に供することにより得られる成形品。
[19] シートである[14]〜[16]のいずれか一項に記載の成形体。
[20] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物または[9]〜[12]のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂の、発泡シートの製造のための使用。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、押出レートが高く成形スピードが速い条件下でも、発泡成形時のセルの形成が非常に均一であり、高い独立気泡率で、緻密でサイズの揃ったセルを有する発泡成形体を製造することができる。また、流動性、並びに、延展性が非常に高く、高い押出レートで外観の綺麗な発泡シートを製造することが可能となる。また、この様な高い発泡特性を有しながら、耐ドローダウン性も優れており、熱成形性も良好である。
この様にして得られた発泡成形体は、外観、熱成形性、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性等に優れていることより、トレー、皿、カップなどの食品容器や自動車ドアトリム、自動車トランクマットなどの車両内装材、包装、文具、建材などに好適に利用することができる。
CFC−FT−IRの概念図を説明する図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物(以下、樹脂組成物と記載することもある。)は、ポリプロピレン(X)10〜99wt%と、プロピレン系ブロック共重合体(Y) 1〜90wt%とを含有することを特徴とする。ポリプロピレン(X)及びプロピレン系ブロック共重合体(Y)は特定の要件および特定の物性を満足することが好ましい。
以下で、ポリプロピレン(X)、プロピレン系ブロック共重合体(Y)及びそれらが満たすことが好ましい特性などについて、項目毎に、詳細に述べる。
I.ポリプロピレン(X)
本発明で用いられるポリプロピレン(X)は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン共重合体であってもよい。プロピレン共重合体である場合、コモノマーは、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであり、ポリプロピレン(X)中のコモノマーの含量は、3wt%以下である。本発明のポリプロピレン(X)は、プロピレン単独重合体である方が、耐熱性や剛性が高く好ましい。
好ましくは、本発明におけるポリプロピレン(X)は、下記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たすものである。
特性(X−i):長鎖分岐を有する。
特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3〜25gである。
特性(X−iii):メルトフローレート(MFR)が0.9g/10分を超え、15g/10分以下である。
特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン(X)全量に対し5wt%未満である。
この様なポリプロピレン(X)の中でも、下記の特性(X−v)を満たすものがより好ましく、さらに、下記の特性(X−vi)を満たすものが最も好ましい。
特性(X−v):絶対分子量Mabsが100万における分岐指数gが0.3以上、1.0未満である。
特性(X−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5〜15である。
以下、順に詳説する。
I−1.特性(X−i):長鎖分岐
好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、長鎖分岐を有するものである。長鎖分岐とは、主鎖炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言い、1−ブテンなどのα−オレフィンと共重合を行うことにより形成される炭素数が数個の短鎖分岐とは区別される。
ポリプロピレン中に長鎖分岐があるかどうかを調べる方法は、幾つかあるが、特徴(X−ii)(X−vi)に示す様な樹脂のレオロジー特性によるものが簡便に用いられる。より厳密な同定方法としては、特徴(X−v)に示す様に、分子量と粘度との関係を用いる方法や、13C−NMRを用いる方法などがある。後者については、前記特許文献7やMacromol.Chem.Phys.2003,vol.204,1738に詳細な説明があるので、参照されたい。
I−2.特性(X−ii):溶融張力(MT)
好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、前記の特性(X−ii)に示す通り、その溶融張力(MT)が3〜25gである。本発明における溶融張力(MT)は、以下の条件で測定した値とする。
[MT測定条件]
測定装置:(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダー径:9.55mm
ピストン押出速度:20mm/分
引き取り速度:4.0m/分(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)
温度:230℃
溶融張力(MT)は、発泡成形に重要な因子と認識されており、特許文献の中でも、MTを規定したものは多い。
例えば、前記特許文献7では、MTとスウェルが高く成形加工性に優れたプロピレン重合体が開示されている。MTに関しては、その段落[0078]に好ましい範囲の記載があり、高ければ高い程良く、最も好ましいのは15g以上と言及されている。従って、特許文献7には、本発明において好ましい特定のMTの値を示唆する記述は、一切なく、長鎖分岐を有するポリプロピレンとしては、MTが比較的低い3g以上からが好ましいとする本発明とは、発明の技術思想が根本的に異なる。
また、前記特許文献8、9には、それぞれ押出発泡成形用樹脂組成物、ポリプロピレン系発泡シートが開示されている。MTに関する記述は、それぞれ段落[0074]、[0076]にあるが、特許文献7と同様の記載内容となっており、本発明において好ましい特定のMTの値を示唆する記述は、一切ない。
また、前記特許文献10には、長鎖分岐を有する高MTのポリプロピレンと低MTのポリプロピレンの混合物を用いて、押出発泡することにより製造したポリプロピレン系樹脂発泡体が開示されている。この場合も、その段落[0014]に詳細な記載があるが、MTは、高い方が好ましくと、記載され、本発明において好ましい特定のMTの値を示唆する記述は、一切ない。
また、前記特許文献11には、高MTのポリプロピレン樹脂と低MTのポリプロピレン樹脂の混合物を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂押出泡シートが開示されている。高MTのポリプロピレン樹脂の例示は、その段落[0015]に記載があり、長鎖分岐や架橋を有するものであるが、その特許請求の範囲の請求項1の規定の通り、MTは10cN以上と高い方が好ましい記載となっており(1g=0.98cN)、本発明において好ましい特定のMTの値を示唆する記述は、一切ない。
また、前記特許文献12には、低MFRのポリプロピレン、特定の規定のプロピレン・エチレンブロック共重合体、極めて高い固有粘度を有するオレフィン重合体を含むポリプロピレン、スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物等の熱可塑性樹脂、からなるポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。極めて高い固有粘度を有するオレフィン重合体を含むポリプロピレンが高MTのポリプロピレンに相当するが、この特許文献12には、本発明において好ましい特定のMTの値を有する長鎖分岐ポリプロピレンに関して示唆する記載は、一切ない。なお、特許文献12で開示されている極めて高い固有粘度を有するオレフィン重合体を含むポリプロピレンは、極めて高い固有粘度を有するオレフィン重合体の分散が難しく、輝点が悪く成形体の外観が悪くなり易いといった問題も、含んでいる。
さらに、前記特許文献13には、長鎖分岐を有するポリプロピレンとプロピレン系重合体、発泡剤からなるプロピレン樹脂組成物を少なくとも一方向に延伸させることによって得られたポリプロピレン系発泡延伸フィルムが開示されている。この場合も、その段落[0072]に記載の通り、MTは、高い方が好ましく、本発明において好ましい特定のMTの値を示唆する記述は、一切ない。
好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、MTが3〜25gである。MTの下限については、MTが3g以上であることが好ましい。それにより、発泡セル形成の際に破泡することのない張力を維持し、連続気泡率の上昇を抑制し、セル径を小さく保ち、セルサイズを均一にすることができる。MTの上限については、MTが24g以下であることが好ましく、更に好ましくはMTが20g以下、最も好ましくは15g以下である。それにより、押出成形の際の延展性を改善し、シート、フィルム、成形体などの外観を改善し、延展不良による破泡を防ぎ、連続気泡率の上昇を抑制することができる。
MTを上記の範囲に制御する具体的な手法としては、触媒製造法(特に錯体の担持比率)を調整することで、長鎖分岐の数を変える方法や、特性(X−iii)の範囲内でMFRを調整する方法がある。長鎖分岐の数を増やしたり、MFRを低くしたりすると、MTは高くなる。一方、MTを低くするには、逆方向に調整すればよい。
I−3.特性(X−iii):MFR
好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、前記の特性(X−iii)に示す通り、MFRが0.9g/10分を超え、15g/10分以下である。
本発明におけるMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値である。
MFRは、ポリプロピレンの成形加工において最も基本的な因子である。発泡成形や押出成形の場合、一般的には、比較的低い値が好ましいと言われている。
例えば、前記特許文献7では、MFRに関してはその段落[0037]に好ましい範囲の記載があり、押出発泡成形の場合には、比較的低い値が好ましいと記載されており、最も好ましい範囲は1.0〜3.0g/10分と、記載されている。従って、前記特許文献7には、本発明において好ましい特定のMFRの値を示唆する記述は、一切なく、0.9g/10分を超え、15g/10分以下が好ましいとする本発明とは異なる。
また、前記特許文献8、9では、MFRに関する記述は、それぞれ段落[0035]、[0037]にあるが、前記特許文献7と同様に、比較的低い値が好ましいと記載されており、最も好ましい範囲は2〜5g/10分と記載されている。従って、両特許文献には、本発明において好ましい特定のMFRの値を示唆する記述は一切ない。
また、前記特許文献10では、詳細な説明にMFRに関する記載はないが、実施例の値(MI)は、1.8、3.0g/10分であり(段落[0030])、本発明において好ましい特定のMFRの値を示唆する記述はない。
また、前記特許文献11では、高MTのポリプロピレン樹脂と低MTのポリプロピレン樹脂のMFR比についての記載があるが、MFRの値自体に関しては、詳細な記載がない。実施例のMFRの値は、3.2g/10分であり(段落[0052])、本発明において好ましい特定のMFRの値を示唆する記述はない。
また、前記特許文献12では、極めて高い固有粘度を有するオレフィン重合体を含むポリプロピレンが高MTのポリプロピレンに相当するが、そのMFRに関する詳細な説明は、その段落[0047]にあり、最も好ましい範囲は0.2〜5.0g/10分と記載されている。この特許文献には、本発明において好ましい特定のMFRの値を有する長鎖分岐ポリプロピレンに関して示唆する記載は一切ない。
さらに、前記特許文献13の場合も、その段落[0034]に記載の通り、MFRは低い方が好ましく、最も好ましい範囲は2〜5g/10分と記載されている。本発明において好ましい特定のMFRの値を示唆する記述は一切ない。
好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、MFRが0.9g/10分を超え、15g/10分以下である。MFRの下限に関しては、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは1.2g/10分以上、最も好ましくは1.5g/10分以上である。それにより、押出成形の際の延展性を改善し、シート、フィルム、成形体などの外観を改善し、延展不良による破泡を防ぎ、連続気泡率の上昇を抑制することができる。MFRの上限に関しては、好ましくは14g/10分以下、より好ましくは13g/10分以下、更に好ましくは12g/10分以下、最も好ましくは10g/10分以下である。それにより、発泡セル形成の際に過剰に引き伸ばされる部分の発生を抑え、破泡による連続気泡率の上昇を防ぎ、セル径を小さく保ち、セルサイズを均一にすることができる。
MFRを上記の範囲に調整する具体的な方法として、重合時に添加する水素の量を変更する方法を挙げることができる。水素は、プロピレンの重合において、連鎖移動剤として作用するため、水素の添加量を増やせば、MFRが上がり、逆に、添加量を下げれば、MFRを下げることができる。重合槽内部の水素濃度に対するMFRの値は、使用する触媒や他の重合条件によって異なるが、触媒種やその他の重合条件に応じて事前に水素濃度とMFRの関係を把握し、望みのMFRの値となるよう水素濃度を調整することは、当業者にとって極めて容易なことである。
I−4.特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)
好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、前記の特性(X−iv)に示す通り、25℃キシレン可溶成分量(CXS)が5wt%未満である(但し、ポリプロピレン(X)全量を100wt%とする)。本発明におけるCXSは、以下の手順で測定した値である。
[CXS測定手順]
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
CXSは、低結晶性のポリマー成分を表す一般的な指標であり、この値を所定値未満に設定することにより、ポリプロピレン(X)中の低結晶性成分の含量が高くなり、成形時や製品自体に問題が生じるのを抑制することができる。例えば、押出発泡成形時に目やにや発煙の問題が生じたり、シート、フィルム、製品の表面がべたついたりする問題が生じたりするのを抑制することができる。好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、CXSが5wt%未満である。CXSは、好ましくは3wt%未満、より好ましくは1wt%未満、最も好ましくは0.5wt%未満であることが望ましい。CXSの下限値については、特に制限はないが、好ましくは0.01wt%以上、より好ましくは0.05wt%以上あると、添加剤の効果が発現し易くなる。
CXSを上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンのCXSを決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中から、CXSを満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は後述する。
I−5.特性(X−v):分岐指数g
好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、特性(X−i)〜(X−iv)を満たすものであるが、更に、以下の特性(X−v)を満たすことが好ましい。
特性(X−v):絶対分子量Mabsが100万における分岐指数gが0.3以上、1.0未満である。
分岐指数gは、長鎖分岐に関する、より直接的な指標として知られている。「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に詳細な説明があるが、分岐指数gの定義は、以下の通りである。
分岐指数g=[η]br/[η]lin
[η]br:長鎖分岐構造を有するポリマー(br)の固有粘度
[η]lin:ポリマー(br)と同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度
上記定義から明らかな通り、長鎖分岐構造が存在すると、分岐指数gは、1よりも小さな値を取り、長鎖分岐構造が増えるほど分岐指数gの値は、小さくなっていく。ポリプロピレンは、一般に分子量分布を有しているため、かなり分子量の大きい成分に長鎖分岐構造が存在すれば、効率よく絡み合いを促進し、発泡特性を高めることに寄与することができる。故に、本発明に係るポリプロピレン(X)のうち、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数gの値が特定の範囲に入っているものが特に好ましい。
絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数gの値を知るためには、絶対分子量Mabsの関数として分岐指数gの値を得なくてはならない。この点については、本発明においては、以下の測定方法、解析方法、算出方法を用いるものとする。
[測定方法]
GPC:Alliance GPCV2000(Waters社)
検出器:接続順に記載
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS):DAWN−E(Wyatt Technology社)
示差屈折計(RI):GPC付属
粘度検出器(Viscometer):GPC付属
移動相溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)
移動相流量:1mL/分
カラム:東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結
試料注入部温度:140℃
カラム温度:140℃
検出器温度:全て140℃
試料濃度:1mg/mL
注入量(サンプルループ容量):0.2175mL
[解析方法]
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)から得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)、および、Viscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
[分岐指数g’の算出方法]
分岐指数g’は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標) グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は、分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であり、[η]linは、低分子量側や高分子量側に、適宜外挿して数値を得ることとする。
本発明に係るポリプロピレン(X)は、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数gの値が0.3以上、1.0未満であることが好ましい。より好ましくは0.55以上、0.98以下、更に好ましくは0.75以上、0.96以下、最も好ましくは0.78以上、0.95以下である。
分岐指数g’が上記の範囲にあると、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さくなるため、生産工程における材料リサイクルの際に物性や成形性の低下が小さくなり好ましい。
分岐指数g’を上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンの分岐指数g’を決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中から分岐指数g’を満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
I−6.特性(X−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)
好ましくは、本発明に係るポリプロピレン(X)は、前記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たすものであり、特性(X−v)を満たすことが好ましいが、加えて、以下の特性(X−vi)を満たすことが好ましい。
特性(X−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5〜15である。
本発明におけるλmaxの算出においては、以下の条件で測定した伸張粘度の値を使用する。
装置:Rheometorics社製Ares
冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
測定温度:180℃
歪み速度:0.1/sec
試験片の作成方法:プレス成型
試験片の形状:18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシート
次に、得られた伸張粘度の値から、λmaxを算出する方法を説明する。
まず、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(Pa・秒)を両対数グラフでプロットし、その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。具体的には、まず伸張粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては伸張粘度の測定データは離散的であることを考慮し、隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法を用いる。
伸張粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり、次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には、一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸張粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは、低歪み領域では時間と共に減少傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸張粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。そこで歪み量が0.1〜2.5程度の範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めて、その点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmax(0.1)と定義する。
歪硬化度(λmax)も、発泡成形に重要な因子と認識されており、特許文献の中でも歪硬化度を規定したものは多い。
例えば、前記特許文献7では、歪硬化度(λmax)に関しては、特許請求の範囲の請求項1の他に、その段落[0066]に好ましい範囲の記載があり、高ければ高い程良く、最も好ましいのは15.0以上と言及されている。従って、前記特許文献7には、本発明において好ましい特定の歪硬化度(λmax)の値を示唆する記述は、一切なく、長鎖分岐を有するポリプロピレンとして比較的低い5〜15が好ましいとする本発明とは、発明の技術思想が根本的に異なる。
また、前記特許文献8、9では、歪硬化度(λmax)に関する記述は、それぞれ段落[0061][0063]にあるが、特許文献7と同様の記載となっており、本発明において好ましい特定の歪硬化度(λmax)の値を示唆する記述は、一切ない。
また、前記特許文献12には、本発明において好ましい特定の歪硬化度(λmax)の値を有する長鎖分岐ポリプロピレンに関して示唆する記載は、一切ない。
さらに、前記特許文献13の場合も、その段落[0059]に記載の通り、歪硬化度(λmax)は高い方が好ましく、本発明において好ましい特定の歪硬化度(λmax)の値を示唆する記述は、一切ない。
なお、前記特許文献10、11には、歪硬化度(λmax)に関する記述自体がない。
本発明に係るポリプロピレン(X)は、歪硬化度(λmax)が5〜15であることが好ましい。より好ましくは、歪硬化度(λmax)が6〜14.5であり、更に好ましくは、7〜14である。本発明に係るポリプロピレン(X)のうち、歪硬化度(λmax)の値がこの範囲内にあるものは、延展性と発泡時のセル形成のバランスが特に良好となり一層好ましい。
歪硬化度(λmax)を上記の範囲に制御する具体的な手法としては、触媒製造法(特に錯体の担持比率)を調整することで長鎖分岐の数を変える方法や、特性(X−iii)の範囲内でMFRを調整する方法がある。長鎖分岐の数を増やしたり、MFRを低くしたりすると、歪硬化度(λmax)は高くなる。歪硬化度(λmax)を低くするには、逆方向に調整すればよい。
I−7.その他の特性(X−vii):mm分率
本発明に係るポリプロピレン(X)の特性については、上述の通りであるが、その他に、下記の特性(X−vii)を満たすものを用いると、より一層好ましい。
特性(X−vii):13C−NMRにより求めたアイソタクチックトライアッド分率(mm分率)が95%以上である。
ここで、mm分率は、プロピレン単位3連鎖において隣接するメチル基の立体関係がメソとなるものが2つ連続したものの存在率を示し、本発明における定義は、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]の記載に従うものとする。13C−NMRの測定条件も、特開2009−275207号公報に従う。
mm分率は、立体規則性の指標であり、数値が高い程ポリマー鎖中でプロピレン単位が規則正しく並んでいることを意味し、結晶化度が高くなりやすい。従って、mm分率が高い程、耐熱性や剛性が高くなるので好ましい。本発明において、mm分率は95%以上が好ましく、より好ましくは96%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。
mm分率を上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンのmm分率を決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中からmm分率を満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
II.ポリプロピレン(X)の製造方法
本発明におけるポリプロピレン(X)は、上記した(X−i)〜(X−iv)の特性を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、高い立体規則性、低い低結晶性成分量、比較的広い分子量分布、分岐指数g’の範囲、高い溶融張力等の全ての条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば、特開2009−57542号公報に開示される方法が挙げられる。
この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の触媒成分と、高分子量でマクロマー共重合能力を有する特定の構造の触媒成分とを組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法であり、これによれば、バルク重合や気相重合といった工業的に有効な方法で、特に実用的な圧力温度条件下の単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレンの製造が可能である。
また、従来は、立体規則性の低いポリプロピレン成分を使用して結晶性を落とすことによって、分岐生成効率を高めなければならなかったが、上記の方法では、充分に立体規則性の高いポリプロピレン成分を、側鎖に簡便な方法で、導入することが可能であり、本発明に用いるポリプロピレン樹脂(X)として好ましい、高い立体規則性と低い低結晶性成分量に係る(X−iv)及び(X−v)の特性を満足するのに好適である。
また、上記手法を用いれば、重合特性の大きく異なる二種の触媒を使用することで、分子量分布を広くでき、本発明に用いる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(X)に必要な(X−i)〜(X−iii)の特性を同時に満たすことが可能であり、好ましい。
以下、この方法をポリプロピレン(X)の製造方法の具体例として選び、詳細に説明する。
II−1.触媒
下記の触媒成分(A)、(B)および(C)からなる触媒を用いることが好ましい。
触媒成分(A):下記一般式(a1)で表される化合物である成分[A−1]から少なくとも1種類、および下記一般式(a2)で表される化合物である成分[A−2]から少なくとも1種類を選んだ2種以上の周期表4族の遷移金属化合物。
成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
成分[A−2]:一般式(a2)で表される化合物
触媒成分(B):イオン交換性層状珪酸塩
触媒成分(C):有機アルミニウム化合物
以下、触媒成分(A)、(B)および(C)について、詳細に説明する。
(1)触媒成分(A)
(i)成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
Figure 2017031359
[一般式(a1)中、各々R11およびR12は、独立して、炭素数4〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基を表す。各々R13およびR14は、独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基、または炭素数6〜16の窒素、酸素若しくは硫黄を含有する複素環基を表す。各々X11およびY11は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、または炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を表す。Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基若しくはゲルミレン基を表す。]
上記R11およびR12の、炭素数4〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基としては、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基であり、より好ましくは、置換された2−フリル基である。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14の、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン、又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基等を置換基として有していてもよい。
13およびR14としては、好ましくは、少なくとも1つが、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、4−フェニル−フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、又はフェナンスリル基であり、より好ましくはフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基である。また、R13およびR14が互いに同一である場合が好ましい。
一般式(a1)中、X11およびY11は、補助配位子であり、触媒成分(B)と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X11およびY11は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、または炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を示す。
一般式(a1)中、Q11は、二つの共役五員環を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、又は炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基若しくはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基がより好ましい。
上記一般式(a1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、更に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
また、さらに好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
(ii)成分[A−2]:一般式(a2)で表される化合物
Figure 2017031359
[一般式(a2)中、各々R21およびR22は、独立して、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。各々R23およびR24は、独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基である。X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基若しくはゲルミレン基を表す。M21は、ジルコニウムまたはハフニウムである。]
上記R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
上記R23およびR24は、それぞれ独立して、炭素数6〜16の、好ましくは炭素数6〜12の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。好ましい例としてはフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
上記X21およびY21は、補助配位子であり、触媒成分(B)と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X21およびY21は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を示す。
上記Q21は、二つの共役五員環を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、又は炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基若しくはゲルミレン基を示す。シリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。好ましくは置換シリレン基あるいは置換ゲルミレン基である。
ケイ素、ゲルマニウムに結合する置換基は、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、二つの置換基が連結していてもよい。具体的な例としては、メチレン、ジメチルメチレン、エチレン−1,2−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレン、メチルフェニルゲルミレン等が挙げられる。
さらに、上記M21は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
上記一般式(a2)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として下記のものを挙げることが出来る。
ただし、以下は煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載しており、本発明はこれら化合物に限定し解釈されるものではなく、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
また中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、ジルコニウムに代替した化合物も同様に本願明細書に開示されたものとして取り扱われる。
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、より好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
また、さらに好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
(2)触媒成分(B)
ポリプロピレン樹脂(X)を製造するのに好ましく使用される触媒成分(B)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の種類
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある。)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、触媒成分(B)に含まれる。
本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよく、また、それらを含んでもよい。
珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
すなわち、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等である。
珪酸塩は、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。層間カチオンの種類は、特に限定されないが、工業原料として比較的容易に且つ安価に入手し得る観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を層間カチオンの主成分とする珪酸塩が好ましい。
(ii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
本発明に係る触媒成分(B)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここでイオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができ、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
<酸処理>:
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
処理に用いる塩類(次項で説明する)および酸は、2種以上であってもよい。塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は、室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
なお、以下の酸類、塩類を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。また、これら酸類、塩類の組み合わせであってもよい。
<塩類処理>:
塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な金属陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、有機陽イオン、無機陽イオンおよび金属イオンからなる群から選ばれた少なくとも一種の陽イオンと、有機陰イオン及び無機陰イオンからなる群から選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから構成される塩類が、例示される。例えば、周期表第1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン陰イオン、並びに、無機酸および有機酸由来の陰イオンから成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物が好ましい例として挙げられる。ここで、酸由来の陰イオンとは、酸から少なくとも1個の水素陽イオンが脱離した陰イオンのことである。例えば、HNOの様な1価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、NO であり、HPOの様な3価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、HPO 、HPO 2−、PO 3−、の3種類が存在する。有機酸由来の陰イオンの場合も同様である。更に好ましくは、陽イオンが金属イオン、陰イオンが無機酸由来の陰イオンやハロゲン陰イオンとから成る化合物である。
このような塩類の具体例としては、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、Li(CHCOO)、LiCO、LiHCO、Li、LiClO、LiPO、CaCl、CaSO、CaC、Ca(NO、MgCl、MgBr、MgSO、Mg(PO、Mg(ClO、MgC、Mg(NO、Mg(CHCOO)等が挙げられる。
また、Ti(CHCOO)、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、Zr(CHCOO)、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、Hf(CHCOO)、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfF、HfCl、V(CHCOCHCOCH、VOCl、VCl、VCl、VBr等が、挙げられる。
また、Cr(CHCOCHCOCH、Cr(NO、Cr(ClO、CrPO、Cr(SO、CrF、CrCl、CrBr、CrI、Mn(CHCOO)、Mn(CHCOCHCOCH、MnCO、Mn(NO、MnO、Mn(ClO、MnF、MnCl、Fe(CHCOO)、Fe(CHCOCHCOCH、FeCO、Fe(NO、Fe(ClO、FePO、FeSO、Fe(SO、FeF、FeCl等が、挙げられる。
また、Co(CHCOO)、Co(CHCOCHCOCH、CoCO、Co(NO、CoC、Co(ClO、Co(PO、CoSO、CoF、CoCl、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等が、挙げられる。
さらに、Zn(CHCOO)、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、GeBr、GeI等が、挙げられる。
<アルカリ処理>:
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される。
<有機物処理>:
また、有機物処理に用いられる有機処理剤の例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
また、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの処理剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について、組み合わせて用いてもよい。また化学処理は、同一または異なる処理剤を用いて複数回行うことも可能である。
これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれる。これらの吸着水および層間水を除去して触媒成分(B)として使用するのが好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は、特に制限されないが、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の触媒成分(B)の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、であることが好ましい。
以上のように、触媒成分(B)として、特に好ましいものは、塩類処理および/または酸処理を行って得られた、水分含有率が3重量%以下の、イオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩は、触媒形成または触媒として使用する前に、後述する有機アルミニウム化合物の触媒成分(C)で処理を行うことが可能で、好ましい。イオン交換性層状珪酸塩1gに対する触媒成分(C)の使用量に制限は無いが、通常20mmol以下、好ましくは0.5mmol以上、10mmol以下で行う。処理温度や時間の制限は無く、処理温度は、通常0℃以上、70℃以下、処理時間は10分以上、3時間以下で行う。処理後に洗浄することも可能で、好ましい。溶媒は、後述する予備重合やスラリー重合で使用する溶媒と同様の炭化水素溶媒を使用する。
また、触媒成分(B)は、平均粒径が5μm以上の球状粒子を用いるのが好ましい。粒子の形状が球状であれば、天然物あるいは市販品をそのまま使用してもよいし、造粒、分粒、分別等により粒子の形状および粒径を制御したものを用いてもよい。
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ−を用いてもよい。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
(3)触媒成分(C)
触媒成分(C)は、有機アルミニウム化合物である。触媒成分(C)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR31 3−qで示される化合物が適当である。この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができる。この式中、R31は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは1〜3の、pは1〜2の整数を各々表す。R31としては、アルキル基が好ましく、またZは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、p=1、q=3のトリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R31が炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
(4)触媒の形成・予備重合について
触媒は、上記の各触媒成分(A)〜(C)を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃から150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させる前に、触媒成分(A)と、あるいは触媒成分(B)と、または触媒成分(A)および触媒成分(B)の両方に触媒成分(C)を接触させること、または、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させるのと同時に触媒成分(C)を接触させること、または、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させた後に触媒成分(C)を接触させることが可能であるが、好ましくは、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させる前に、触媒成分(C)といずれかに接触させる方法である。
また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
触媒成分(A)、(B)および(C)の使用量は任意である。例えば、触媒成分(B)に対する触媒成分(A)の使用量は、触媒成分(B)1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。また触媒成分(A)に対する触媒成分(C)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×10、特に好ましくは0.1〜1×10、の範囲内が好ましい。
本発明で使用する前記成分[A−1](一般式(a1)で表される化合物)と前記成分
[A−2](一般式(a1)で表される化合物)の割合は、プロピレン系重合体の前記特
性を満たす範囲において任意であるが、各成分[A−1]と[A−2]の合計量に対する
[A−1]の遷移金属のモル比で、好ましくは0.30以上、0.99以下である。
この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能で
ある。つまり、成分[A−1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分
[A−2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。したがって、成
分[A−1]の割合を変化させることで、生成する重合体の平均分子量、分子量分布、分
子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御
することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を
制御することができる。
より高い歪硬化のプロピレン系重合体を製造するために、0.30以上が必要であり、
好ましくは0.40以上であり、更に好ましくは0.5以上である。また、上限に関して
は0.99以下であり、高い触媒活性で効率的にポリプロピレン樹脂(X)を得るために
は、好ましくは0.95以下であり、更に好ましくは0.90以下の範囲である。
また、上記範囲で成分[A−1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量
と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
本発明に係る触媒は、これにオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備
重合処理に付される。予備重合処理を行うことにより、本重合を行った際に、ゲルの生成
を防止できる。その理由としては、本重合を行った際の重合体粒子間で長鎖分岐が均一に
分布させることができるためと考えられ、また、そのことにより溶融物性を向上すること
ができる。
予備重合時に使用するオレフィンは、特に限定はないが、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができる。オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。
予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が触媒成分(B)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。また、予備重合時に触媒成分(C)を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
また、上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
II−2.重合方法
(1)触媒の使用/プロピレン重合について
重合様式は、前記触媒成分(A)、触媒成分(B)および触媒成分(C)を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー重合法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク重合法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
スラリー重合法の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
また、重合温度は、0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合法を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は80℃以下が好ましく、更に好ましくは75℃以下である。
さらに、気相重合法を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。特に、バルク重合法を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.7MPa以上である。また上限は2.5MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.3MPa以下である。
さらに、分子量調節剤として、また活性向上効果のために、補助的に水素をプロピレンに対してモル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、MFR、歪硬化度、溶融張力MT、溶融延展性といった、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを特徴付ける溶融物性を制御することができる。
そこで水素は、プロピレンに対するモル比で、1.0×10−6以上で用いるのがよく、好ましくは1.0×10−5以上であり、さらに好ましくは1.0×10−4以上用いるのがよい。また上限に関しては、1.0×10−2以下で用いるのがよく、好ましくは0.9×10−2以下であり、更に好ましくは0.8×10−2以下である。
また、プロピレンモノマー以外に、用途に応じて、プロピレンを除く炭素数2〜20の
α−オレフィンコモノマー、例えば、エチレンおよび/又は1−ブテンをコモノマーとし
て使用する共重合をおこなってもよい。
そこで、本発明に用いるポリプロピレン(X)として、触媒活性と溶融物性のバランスのよいものを得るためには、エチレンおよび/又は1−ブテンを、プロピレンに対して15モル%以下で使用することが好ましく、より好ましくは10.0モル%以下であり、更に好ましくは7.0モル%以下である。
ここで例示した触媒、重合法を用いてプロピレンを重合すると、触媒成分[A−1]由来の活性種から、β−メチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応により、ポリマー片末端が主としてプロペニル構造を示し、所謂マクロマーが生成する。このマクロマーは、より高分子量を生成することができ、より共重合性がよい触媒成分[A−2]由来の活性種に取り込まれ、マクロマー共重合が進行すると考えられる。したがって、生成する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の分岐構造としては、櫛型鎖が主であると、考えられる。
III.ゲルの個数
本願発明に係る発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が50個/m以下である。好ましくは、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が50個/m以下であり、長径0.4mm以上0.5mm未満のゲルの個数が400個/m以下である。より好ましくは、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が50個/m以下であり、長径0.4mm以上0.5mm未満のゲルの個数が400個/m以下であり、長径0.3mm以上0.4mm未満のゲルの個数が2000個/m以下である。
本願発明に係る発泡成形用ポリプロピレン樹脂は、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が10個/m以下である。好ましくは、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が10個/m以下であり、長径0.2mm以上0.5mm未満のゲルの個数が50個/m以下である。より好ましくは、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が10個/m以下であり、長径0.2mm以上0.5mm未満のゲルの個数が50個/m以下であり、長径0.1mm以上0.2mm未満のゲルの個数が100個/m以下である。
無延伸フィルムは、発泡成形用ポリプロピレン樹脂、発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物その他の試料を用い、慣用のフィルム成形装置で作製することができる。例えば、試料を、Tダイを取り付けた慣用の押出機に投入し、適当な条件下に押出し加工を行い、慣用のフィルム引取機で引き取ることにより作製することができる。作製した無延伸フィルムのゲルの個数は、慣用の欠点検出器によりカウントすることができる。ゲルの個数のカウントは、引取機と巻き取り機の間、フィルムの中央部で行うのが便利である。検査幅、検査長及び検査回数を適宜設定し、サイズ区分毎に得られた値の平均値を単位面積換算して算出することが推奨される。詳細は下記の実施例において説明する。
IV.ポリプロピレン(X)からなる発泡成形用ポリプロピレン樹脂
上記のとおり、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂は、溶融張力(230℃)が3g以上であり、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に所定範囲の長径のゲルの個数が単位面積当たり所定個数以下のポリプロピレン(X)からなる。そして好ましくは、ポリプロピレン(X)は、上記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たすものである。添加剤、発泡剤、押出発泡成形、発泡シート、多層発泡シート、熱成形性、成形体、用途等については、下記の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物についての説明の項で併せて説明する。
V.プロピレン系ブロック共重合体(Y)
上記した長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(X)とともに配合される成分(Y)としては、特に限定されないが、プロピレン(共)重合体(Y−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)からなるプロピレン系ブロック共重合体(Y)を用いることが好ましい。より好ましくは、従来公知の逐次重合法によって多段階の重合を行って製造されたものである。
ここで用いるブロック共重合体という語は、各段階で重合された成分同士が化学結合によって結合された、いわゆる(リアル)ブロック共重合体あるいはグラフト共重合体とは異なるものである。多段階重合それぞれの工程で製造された成分は、化学的には結合していないため、一般に、それぞれの成分に結晶性や分子量、または溶媒への溶解度等の差を利用して、結晶性分別や分子量分別、あるいは溶解度分別等の手法によって、各工程で製造された成分それぞれを、分離することが可能である。
また、従来公知の逐次重合法によるブロック共重合体(Y)には、前記ポリプロピレン(X)のような化学結合による長鎖分岐構造は、分析可能な精度では存在が認められない。
1.プロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造方法、重合触媒
プロピレン系ブロック共重合体(Y)を製造するための触媒は、任意のものを用いることができるが、下記する特性(Y−i)〜(Y−v)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を構成成分として製造する場合には、チーグラー・ナッタ触媒を用いる方が好ましい。チーグラー・ナッタ触媒を用いる場合、具体的な触媒の製造法は、特に限定されるものではないが、一例として特開2007−254671号公報に開示された触媒を例示することができる。
具体的には、本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の代表的な例として、以下の構成成分、
(ZN−1)チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分として含有する固体成分、
(ZN−2)有機アルミニウム化合物、
(ZN−3)電子供与体、
からなる触媒を挙げることができる。
(1)固体成分(ZN−1)
本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である固体成分(ZN−1)は、チタン(ZN−1a)、マグネシウム(ZN−1b)、ハロゲン(ZN−1c)を必須成分として含有するものであり、任意成分として、電子供与体(ZN−1d)を用いることができる。ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の三成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を任意の形態で含んでもよいということを示すものである。以下に詳述する。
(ZN−1a)チタン
チタン源となるチタン化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、4価のチタン化合物を用いることが望ましい。
(ZN−1b)マグネシウム
マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、金属マグネシウム、ブチルマグネシウムクロライドが用いられる場合が多い。
(ZN−1c)ハロゲン
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、及びそれらの混合物を用いることができる。この中で塩素が特に好ましい。
(ZN−1d)電子供与体
固体成分(ZN−1)は、任意成分として電子供与体を含有してもよい。電子供与体(ZN−1d)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、有機酸及び無機酸、並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが望ましい。
これらの中で好ましいのは、フタル酸ジブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などである。
(2)有機アルミニウム化合物(ZN−2)
有機アルミニウム化合物(ZN−2)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(5)にて表される化合物を用いることが望ましい。
cAlXd(OR10)e …(5)
(一般式(5)中、Rは、炭化水素基を表す。Xは、ハロゲン又は水素原子を表す。R10は、炭化水素基またはAlによる架橋基を表す。c≧1、0≦d≦2、0≦e≦2、c+d+e=3である。)
具体的な例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることができる。
(3)電子供与体(ZN−3)
電子供与体(ZN−3)として、アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(ZN−3a)、又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(ZN−3b)を例示することができる。
(ZN−3a)アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分であるアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(ZN−3a)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(3)にて表される化合物を用いることが望ましい。
aSi(OR)b …(3)
(一般式(3)中、Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは、炭化水素基を表す。0≦a≦2,1≦b≦3,a+b=3である。)
具体的な例として、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)、などを挙げることができる。
(ZN−3b)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(ZN−3b)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(4)にて表される化合物を用いることが望ましい。
O−C(R−C(R−C(R−OR …(4)
(一般式(4)中、R及びRは、水素原子、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
具体的な例として、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、などを挙げることができる。
(4)予備重合
上記に例示した触媒は、本重合で使用する前に予備重合されていてもよい。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
上記に例示した触媒と上記のモノマーとの反応条件は、特に制限されるものではないが、一般的には以下の範囲内が好ましい。
固体成分(ZN−1)1gあたりの基準で、予備重合量は0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、更に好ましくは0.5〜10gの範囲内が望ましい。予備重合時の反応温度は−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は本重合のときの重合温度よりも低くする事が望ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
(5)逐次重合
次に、本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造方法について詳述する。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)は、好ましくはプロピレン(共)重合体(Y−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)とからなるプロピレン−エチレン共重合体であり、そのようなプロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造に際しては、プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の2つの重合体成分を製造する必要がある。相対的に分子量が高く粘度やMFRが低いプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)をプロピレン(共)重合体(Y−1)中にきれいに分散させてプロピレン系ブロック共重合体(Y)本来の性能を発現させるという観点から、当該両成分を、逐次重合により製造することが必要である。
具体的には、第1工程において、プロピレン(共)重合体(Y−1)を重合した後で、第2工程において、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を重合することが望ましい。製造順を逆にすることも可能ではあるが、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)は、(Y−iv)の規定から共重合体中のエチレン含有量が11.0重量%以上60.0重量%未満の範囲にあり、結晶性が低い重合体であるため、第1工程で製造すると重合槽内部で付着したり、移送配管を閉塞したりするなどの製造トラブルを起こす可能性が高く、あまり好ましくない。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から、連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより単一の重合反応器を用いてプロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の重合反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には、プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を個別に重合する必要から2個以上の重合反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要がある。プロピレン(共)重合体(Y−1)を製造する第1工程に対応する重合反応器とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を製造する第2工程に対応する重合反応器については、直列の関係になくてはならないが、第1工程、第2工程のそれぞれについて複数の重合反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
(6)重合プロセス
重合プロセスは、任意のものを用いることができる。
反応相については、液体の媒体を用いる手法であってもよいし、気体の媒体を用いる手法であってもよい。具体的な例として、スラリー法、バルク法、気相法を挙げることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は、当業界の慣例に従ってバルク法と呼ぶことにする。また、バッチ法の場合に、第1工程をバルク法で行い、第2工程を気相法で行うこともあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶことにする。この様に反応相は、特に限定されるものではないが、スラリー法は、ヘキサンやヘプタンといった有機溶媒を用いるために付属設備が多く、一般的に生産コストが高くなるという問題がある。従って、バルク法か気相法を用いる方が一層望ましい。
また、バルク法と気相法については、それぞれ種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において本発明は、特段プロセス種を限定することはない。
(7)一般的な重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させても問題はない。
また、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を製造する第2工程においては、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加することもできる。この様な重合抑制剤を用いると、第2工程における重合量の制御が容易であるだけでなく、重合体粒子の性状を改良することもできる。
逐次重合の前段で製造する(Y−1)は、プロピレン単独重合体か、あるいは本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、少量のコモノマーを共重合させたプロピレンランダム共重合体である。コモノマーとしては、エチレン、ブテン、ヘキセンといった炭素数が3を除く10程度までのα−オレフィンが通常用いられる。
上記コモノマーの含量に特に制限はないが、10wt%以下であることが好ましく、より好ましくは3wt%以下、特に好ましくは1wt%以下である。コモノマー含量の制御は、重合槽に供給するモノマーの量比(例:プロピレンに対するエチレンの量比)を適宜調整することによって行うのが通例である。用いる触媒の共重合特性を事前に調べておいて、重合槽のガス組成が望みのコモノマー含量に対応する値になるようモノマーの供給量比を調整すればよい。
2.プロピレン系ブロック共重合体(Y)の特性
本発明者らは、多くの実験検討の結果、ポリプロピレン樹脂(X)に配合されるプロピレン系ブロック共重合体(Y)が、以下の(Y−i)〜(Y−v)の特性を有する場合に、前記の長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(X)が剪断流動下で形成する構造の形成を抑制できることを見出した。それを以下に、詳細に述べる。
2−1.特性(Y−i):(Y−1)と(Y−2)の量比
本発明において推奨される(Y−1)と(Y−2)の重量割合は、(Y−1)が50〜99wt%、好ましくは55〜97wt%、更に好ましくは60〜95wt%である。これに対応して、(Y−2)が1〜50wt%、好ましくは3〜45wt%、更に好ましくは5〜40wt%である。
(但し、(Y−1)、(Y−2)の重量割合については、プロピレン系ブロック共重合体
(Y)全量を100wt%とする)
このプロピレン系ブロック共重合体(Y)を、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(X)に配合することにより、良好な延展性が付与され、(X)成分単独で使用する場合に比べて、各種の成形法での成形加工可能な温度範囲が広くなる、外観が良好になる、衝撃特性等の力学物性が良好になる等のメリットが得られる。(Y−2)成分の量を上記範囲の下限以上に設定すると、これらのメリットが得られやすくなり、一方、上記範囲の上限以下に設定することにより、結晶性成分(Y−1)の量を高く維持し、組成物の耐熱性や剛性を良好に保つことができる。
プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量割合は、プロピレン(共)重合体(Y−1)を製造する第1工程における製造量とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を製造する第2工程における製造量によって制御する。例えば、プロピレン(共)重合体(Y−1)の量を増やしてプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の量を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第2工程の製造量を減らせばよく、それは、第2工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすればよい。また、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加したり、元々添加している場合には、その添加量を増やしたりすることでも制御することができる。その逆も又同様である。
2−2.特性(Y−ii):MFR
本発明で使用するプロピレン系ブロック共重合体(Y)の推奨されるMFRの範囲は、0.1〜200g/10分の範囲であり、好ましくは0.2〜190g/10分、更に好ましくは0.5〜180g/10分、特に好ましくは2.1〜170g/10分の範囲である。
これは、各種の成形に供する樹脂のMFRの範囲として、常用の範囲であって、この範囲の下限以上に設定することにより、押出機の負荷を適正に、樹脂の流動を安定に保つことができ、上限以下に設定することにより、押出成形時のネックインを小さく、シート引き取りを容易にすることができる。
なお、MFRの測定法は、前述のポリプロピレン(X)における測定方法と同じである。
次に、プロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRの制御方法について説明する。プロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFR(Y)については、プロピレン(共)重合体(Y−1)のMFR(Y−1)及びプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)のMFR(Y−2)との間で、以下の関係式が成立する。
loge[MFR(Y)]=W(Y−1)×loge[MFR(Y−1)]+W(Y−2)×loge[MFR(Y−2)]
(ここで、logeは、eを底とする対数である。また、W(Y−1)とW(Y−2)は、それぞれプロピレン系ブロック共重合体(Y)におけるプロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量比であり、W(Y−1)+W(Y−2)=1の関係が成立する。)
この関係式は、粘度の対数加成則と呼ばれる経験式であり、当業界で日常的に使われるものである。つまり、プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量比、MFR(Y)、MFR(Y−1)、MFR(Y−2)は、独立ではない。故に、MFR(Y)を制御するには、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量比、MFR(Y−1)、MFR(Y−2)の3つの因子を制御すればよい。例えば、MFR(Y)を高くするためには、MFR(Y−1)を高くしてもよいし、MFR(Y−2)を高くしてもよい。また、MFR(Y−2)がMFR(Y−1)より低い場合には、W(Y−1)を大きくしてW(Y−2)を小さくしても、MFR(Y)を高くすることができることも容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
このうちどの方法がより好ましいかを述べると、後述の(Y−v)の規定からMFR(Y−2)は、ある程度低い値に制御する必要があり、MFR(Y)を制御する際には、MFR(Y−1)及び/又は(Y−1)と(Y−2)の重量比を制御する方法を用いることが望ましい。更に言えば、(Y−1)と(Y−2)の重量比は、上述の(Y−i)の制限があるので、MFR(Y−1)を制御する方法を用いるのが最も好ましい。
MFR(Y−1)やMFR(Y−2)を制御する方法としては、水素を連鎖移動剤として用いる方法が最も簡便である。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くするとプロピレン(共)重合体(Y−1)のMFR(Y−1)が高くなる。逆も又同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすれば良く、当業者にとって調整は極めて容易である。MFR(Y−2)の制御も同様である。
2−3.特性(Y−iii):融点
本発明で使用するプロピレン系ブロック共重合体(Y)の融点は、シートの耐熱性の維持の観点から、155℃を超えるものであることが好ましく、157℃以上であるとより好ましい。融点の上限値は、特に制限する必要は無いが、事実上、融点が170℃を超えるものを製造することは困難である。
なお、融点は、示差操作熱量測定(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度とする。
プロピレン系ブロック共重合体(Y)の融点は、主にプロピレン(共)重合体(Y−1)の融点で決まるので、プロピレン系ブロック共重合体(Y)の融点を制御する際には、プロピレン(共)重合体(Y−1)の融点を制御するのが良い。プロピレン系ブロック共重合体(Y)の融点は、プロピレン(共)重合体(Y−1)のMFR(Y−1)とコモノマー含量によって決まる。MFR(Y−1)を高くすると(Y−1)の融点は低くなり、コモノマー含量を高くしても(Y−1)の融点は低くなる。事前にMFR(Y−1)やコモノマー含量と融点との関係を調べておき、望みの融点となる様にMFR(Y−1)やコモノマー含量を調整することは当業者にとって容易なことである。
2−4.特性(Y−iv):プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)中のエチレン含量
本発明において、プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)中のエチレン含量が11〜38重量%であることが好ましい(ただし、成分(Y−2)を構成するモノマーの全量を100wt%とする。)。プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)中のエチレン含量のより好ましい範囲としては、16〜36wt%、更に好ましくは18〜35wt%である。
プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)中のエチレン含量の制御は、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比を適宜調整することによって行うのが通例である。用いる触媒の共重合特性を事前に調べておいて、重合槽のガス組成が望みのエチレン含量に対応する値になるようモノマーの供給量比を調整すればよい。
エチレン含量が上記の範囲のものを使用すると、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(X)が剪断流動下で形成する構造の形成を抑制する効果が現れ、これを外れる場合には、抑制効果が小さくなる。その理由については、本発明者らは、以下のように推測している。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体(Y)は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(X)が剪断下で特異な構造を形成するのを抑制する働きを有する。その構造とは、いわゆるシシ−ケバブ構造(或いはその前駆体)であるから、なるべく結晶性の低い成分、かつ、構造が成長するのを抑制するために、なるべく運動性が低い、すなわち分子量の高い成分が好ましいと考えられる。しかるに、エチレン含量がこの規定範囲を下回るものであっては、(Y−2)そのものが結晶性を有することとなり、シシ−ケバブ構造の形成を抑制することができなくなる。一方、(Y−2)のエチレン含量が高すぎる場合には、(Y−2)成分は、(Y−1)成分と海島構造を形成してしまい、全く別の相として、存在してしまうために、シシ−ケバブ構造形成に対して、作用することができなくなる。すなわち、(Y−2)中のエチレン含量としては、ある程度結晶性プロピレン成分と相溶性を保ちつつ、結晶性をあまり有さない範囲であることが必要である。
2−5.特性(Y−v):プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)の固有粘度
ポリプロピレン(X)に配合されるプロピレン系ブロック共重合体(Y)を構成するプロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)の135℃デカリンを溶媒として測定される固有粘度値は、5.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは6.0dl/g以上、更に好ましくは7.0dl/g以上、最も好ましくは7.5dl/g以上である。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体(Y)は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(X)が剪断場で特異な構造を形成するのを抑制する働きを有する。その構造とは、いわゆるシシ−ケバブ構造(或いはその前駆体)であるから、なるべく結晶性の低い成分、かつ、構造が成長するのを抑制するためになるべく運動性が低い、すなわち分子量の高い成分が好ましいと考えられる。固有粘度値をこの範囲の下限以上に設定することにより、シシ−ケバブ構造形成の抑制する効果を増すことができる。
上限値は、特に規定する必要は無いが、上限以下に設定するとゲルの発生を抑制できるため、15.0dl/g以下、好ましくは14.0dl/g以下、更に好ましくは13.0dl/g以下、最も好ましくは12.0dl/g以下である。
ここでの固有粘度は、温度135℃、溶媒にデカリンを用い、ウベローデ型毛管粘度計を用いて測定した値とする。(Y−2)の固有粘度を求めるためには、前述のCXSの記載と同じ手法を用いて、(Y−2)成分を25℃パラキシレン可溶成分として回収し、これの固有粘度測定を行うものとする。ただし、(Y−2)成分のエチレン含量が15重量%を下回ると、CXSの手法によっては十分に(Y−2)成分を分離することが難しくなる。このような場合には、逐次重合途中の(Y−1)成分を少量抜き取って、固有粘度測定を行い、さらに、逐次重合終了後の(Y)全体の固有粘度を測定し、以下の式によって求めるものとする。
(Y−2)成分の固有粘度=[(Y)全体の固有粘度−{(Y−1)成分の固有粘度
×(Y−1)成分の重量分率/100}]/{(Y−2)成分の重量分率/100}
固有粘度[η]は、分子量に対応する量であり、固有粘度[η]の制御は、MFRと同様に、水素を連鎖移動剤として用いる方法が最も簡便である。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くすると、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の固有粘度[η]が小さくなる。逆も又同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすれば良く、当業者にとって調整は極めて容易である。
ここで、成分(Y)中の、(Y−1)と(Y−2)の比率や、(Y−2)中のエチレン含量の決定手法としては、従来公知のIRやNMR、あるいは溶解度分別法とIR法を組み合わせた分析手法等によって、決定することができる。
本発明においては、主に成分(Y)の各種のインデックスは、以下に記載のクロス分別法とFT−IR法の組み合わせの手法により決定した。
(1)使用する分析装置
(i)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは、光路長1mm、光路幅5mmのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段のGPCカラムは、昭和電工製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
(2)CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位 重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1mL/分
(3)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
CFC−FT−IRの概念図を図1に示した。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm−1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
(4)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は、各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。具体的な手法は、上に記載したものと同じである。
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、GPC−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレン−ラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して、予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
(5)プロピレン−エチレン共重合体含有量
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体(Y)の推奨されるプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)(以下、EPと記載)含有量は、下記式(I)で定義され、以下のような手順で求められる。
EP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100+W140×A140/B140 (I)
W40、W100、W140は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位 重量%)であり、A40、A100、A140は、W40、W100、W140に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位 重量%)であり、B40、B100、B140は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量(単位 重量%)である。
A40、A100、A140、B40、B100、B140の求め方は後述する。
(I)式の意味は、以下の通りである。(I)式右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるEPの量を算出する項である。フラクション1がEPのみを含み、PPを含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のEP含有量に寄与するが、フラクション1には、EP由来の成分のほかに少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこで、W40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、EP成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるEPのエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はEP由来、残りの1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からEPの寄与を算出することを意味する。右辺第二項以後も同様であり、各々のフラクションについて、EPの寄与を算出して加え合わせたものがEP含有量となる。
(i)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜3に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100、A140とする(単位はいずれも重量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
(ii)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2および3については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では、B100=B140=100と定義する。B40、B100、B140は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由は、フラクションに混在するPPとEPを完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100、B140は、エチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるEPの量がフラクション1に含まれるEPの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、ともに100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=B140=100として、解析を行うこととしている。
(iii)以下の式に従い、EP含有量を求める。
EP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100+W140×A140/100 (II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たないEP含有量(重量%)を示し、第二項と第三項の和であるW100×A100/100+W140×A140/100は、結晶性を持つEP含有量(重量%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1〜3の平均エチレン含有量A40、A100、A140は、次のようにして求める。
結晶分布の違いによって分別されたフラクション1をCFC分析装置の一部を構成するGPCカラムで分子量分布を測定した曲線、および、当該GPCカラムの後ろに接続されたFT−IRによって、分子量分布曲線に対応して測定されるエチレン含有量の分布曲線を求める。微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。
また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和が、平均エチレン含有量A40となる。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は、次の通りである。
本発明のCFC分析においては、40℃とは、結晶性を持たないポリマー(例えば、EPの大部分、もしくはプロピレン重合体成分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。また、100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば、EP中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。さらに、140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高い成分、およびEP中の極端に分子量が高くかつエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140に含まれるEP成分は、極めて少量であり、実質的には無視できる。
EP中のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100+W140×A140)/[EP] (III)
但し、[EP]は、先に求めたEP含有量(重量%)である。
EPのうち、結晶性を持たない部分のエチレン含有量(E)(重量%)は、ゴム部分の溶出がほとんど40℃以下で完了することから、B40の値をもって近似する。
しかしながら、上述のクロス分別法とFT−IRの組み合わせによる分析方法では、(Y−2)のエチレン含量が15wt%を下回り、(Y−1)との結晶性に大きな差がなくなり、温度による分別が充分に行うことができないような場合では、正確な分析が難しくなる。このような場合は、逐次重合の途中で(Y−1)成分を抜き取っておき、その分子量(コモノマーを共重合する場合には、コモノマー含量も測定する)を測定し、さらに、マテリアルバランスによる計算によって、(Y−1)と(Y−2)成分の量比を決定し、さらに、逐次重合終了時の成分(Y)全体のコモノマー含量を測定することで、以下の重量の単純な加成則を使用することで、(Y−2)成分のコモノマー含量を求めることが好ましい。コモノマーとして、エチレンを使用する場合、以下の式によって(Y−2)のエチレン含量を求めるものとする。
(Y−2)成分のエチレン含量=[(Y)全体のエチレン含量−{(Y−1)成分のエチレン含量×(Y−1)成分の重量分率/100}]/{(Y−2)成分の重量分率/100}
(Y−1)成分と(Y−2)成分の量比を求める他の手法については、(Y−1)成分と(Y−2)成分の平均分子量がある程度異なるものを製造する場合には、逐次重合終了後の(Y)全体のGPC測定を行って、得られる多峰性の分子量分布曲線を市販のデータ解析ソフトウェア等を用いてピーク分離し、その重量比を計算することで、求めることも可能である。
なお、上記と同等の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体とその他のプロピレン重合体と発泡剤とからなる射出発泡成形用のポリプロピレン樹脂組成物が、特開2010−150509号公報に開示されているが、その実施例を精査すると、該その他のポリプロピレン重合体には、MFRが30g/10分のプロピレン−エチレンブロック共重合体を使用しており、本発明で開示する長鎖分岐構造を有するポリプロピレンに特有の問題を解消するという課題に関して、なんらの技術的示唆がなされるものではない。
また、特開2010−121054号公報には、やはり上記と同等の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分B)と、特定MFRの結晶性ポリプロピレン(成分A)と、特定の固有粘度の範囲を満たすオレフィン重合体とポリプロピレンからなるポリプロピレン重合体(成分C)と、スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム、エチレン重合体樹脂のいずれからか選ばれる一種の熱可塑性樹脂とのポリプロピレン系樹脂組成物が発泡ブロー成形に好適な組成物として開示されているが、これにおいても、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンに特有の問題を解消するという課題に関して、なんら技術的示唆もなされておらず、本発明とは別の技術範疇であると、解するべきである。
さらに、前記特許文献10には、MFRが10〜1000g/10分のプロピレン単独重合体またはプロピレン以外のα−オレフィンが1重量%未満のプロピレン−αオレフィン共重合体50〜90重量%、重量平均分子量が50万〜1000万、プロピレン以外のα−オレフィンの含量が1〜15重量%のプロピレン−αオレフィン共重合体10〜50重量%からなり、特定のMFR、MFR−MTバランス、最長緩和時間を有するプロピレン系樹脂組成部からなる発泡シートが開示されているが、これにおいても、特定の超高分子量プロピレン−エチレン共重合体成分によって、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンに特有の問題を解消するという課題に関して、なんら技術的示唆もなされていない。また、実施例を精査すると、高分子量を有する成分のα−オレフィン含量としては、3〜10重量%のエチレンが開示されているのみであり、本発明で規定する(Y−2)成分のエチレン含量とは、異なっている。後に実施例で具体的に述べるが、(Y−2)成分のエチレン含量がこの程度の値であっては、本発明が目的とする、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(X)が剪断下で形成するシシ−ケバブ構造(或いはその前駆体)の抑制の効果は、見られない。
VI.ポリプロピレン樹脂組成物
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン(X)10〜99重量%およびプロピレン系ブロック共重合体(Y)1〜90重量%を含有し、230℃で測定した溶融張力(MT)が1g以上であり、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が50個/m以下のものである
ポリプロピレン(X)については上に説明したので、その他の事項について以下に順に詳説する。
VI−1.樹脂組成物の製造方法
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂及び発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法は、公知のものを用いることができる。例えば、ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)、および、後述する任意の添加剤の各々所定量を、ドライブレンド、ヘンシェルミキサー等で混合することにより樹脂組成物を調製することができる。また、これらを単軸押出機、二軸混練機、ニーダ等によって、溶融混練してもよい。
このとき、押出成形に用いるためには、溶融混練し、樹脂組成物は、ペレット化されていることが好ましい。樹脂組成物のペレット化の方法としては、
a.ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤を混合したものを溶融混練しペレット化する。
b.ポリプロピレン(X)と任意の添加剤を混合したものを溶融混練しペレット化し、プロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤にポリプロピレン(X)組成物ペレットをさらに混合してから、溶融混練しペレット化する。
b’.プロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤を混合したものを溶融混練しペレット化し、ポリプロピレン(X)と任意の添加剤にさらに混合してから溶融混練する。
c.ポリプロピレン(X)と任意の添加剤を混合したものと、プロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤を混合したものを各々溶融混練し、各々のペレットを得て、得られた各々のペレットを混合する。
d.ポリプロピレン(X)と任意の添加剤を混合したものと、プロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤を混合したものを各々溶融混練し、各々のペレットを得て、得られた各々のペレットを混合し、さらにこれを溶融混練しペレット化する。
といった方法を用いることができる。
ここで、樹脂組成物のペレット化の方法として上記のb、c及びdに記載された「ポリプロピレン(X)と任意の添加剤を混合したものを溶融混練しペレット化する。」ことによって、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂を調製することができる。
ここで、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、230℃で測定した溶融張力(MT)が1g以上であり、好ましくは3g以上のものであるが、それはポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)を溶融混練したものを用いて測定した値である。従って、これらを単純に混合して用いる場合や、cのようにポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)を混合(ドライブレンド)し、両者を溶融混練せずに押出発泡用樹脂組成物として用いる場合には、ポリプロピレン(X)、プロピレン系ブロック共重合体(Y)、任意成分に関して同一の配合を用いて別途溶融混練を実施し、得られたペレットを用いてMTの測定を実施し、こうして得られた値を押出発泡用ポリプロピレン樹脂組成物のMTの値と定める。この場合、後述の実施例に記載の方法を用いて溶融混練を実施することとする。
VI−2.ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の含量
本発明のポリプロピレン樹脂組成物におけるポリプロピレン(X)の含量は、10〜99wt%である。より好ましい範囲を例示すると、より好ましくはポリプロピレン(X)の含量が10〜90wt%、更に好ましくは15〜80wt%である。これに対応して、ポリプロピレン樹脂組成物におけるプロピレン系ブロック共重合体(Y)の含量は、1〜90wt%、好ましくは10〜90wt%、更に好ましくは20〜85wt%である(ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の合計を100wt%とする)。
長鎖分岐を有するポリプロピレン(X)の含量を上記範囲の下限以上に設定することにより、発泡成形体の連続気泡率の上昇が抑えられ、熱成形の際に、ドローダウンを小さくすることができる。ポリプロピレン(X)の含量を上記範囲の上限以下に設定することにより、延展性を高く維持しシートやフィルムの外観を改善し、押出量を増やして生産性を改善することができる。ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の含量は、樹脂組成物を作る際のブレンド量比を調整すれば、望みの含量に調整できる。
VI−3.MFR
好ましくは、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、MFRが0.1〜20g/10分である。より好ましい範囲を例示すると、より好ましくはMFRが1〜15g/10分、更に好ましくは2〜10g/10分、最も好ましくは3〜8g/10分である。MFRをこの範囲の下限以上に設定することにより、延展性を高めシートやフィルムの外観を改善し、押出量を増やして生産性を改善することができる。MFRをこの範囲の上限以下に設定することにより、発泡成形体の連続気泡率の上昇を抑え、気泡の大きさを均一に保ち、熱成形の際のドローダウンを抑制することができる。
MFRを上記の範囲内に調整する方法は、幾つかある。例えば、ポリプロピレン(X)やプロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRを調整することで、ポリプロピレン樹脂組成物のMFRを調整できる。また、ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRが異なる場合、両者の配合量を変更することでもポリプロピレン樹脂組成物のMFRを調整できる。例えば、ポリプロピレン(X)のMFRがプロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRよりも高い場合、ポリプロピレン(X)の配合量を高くすると、ポリプロピレン樹脂組成物のMFRは、高くなる。
VI−4.溶融張力(MT)
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、230℃で測定した溶融張力(MT)が1g以上でなくてはならない。好ましくは1.5g以上、より好ましくは2g以上、最も好ましくは3g以上であり、好ましくは20g以下、より好ましくは15g以下、最も好ましくは10g以下である。ここで、ポリプロピレン樹脂組成物のMTは、ポリプロピレン(X)の特性(X−ii)の溶融張力(MT)と同じ測定方法を用いて得られる値である。MTを上記の値の下限以上に設定することにより、発泡時のセルの形成や成長を良好に保ち連続気泡率の上昇を抑制し、セルの大きさを均一にすることができる。MTを上記の値の上限以下に設定することにより、延展性を高め、シートやフィルムの外観を改善し、押出量を増やして生産性を改善することができる。
MTを上記の範囲内に調整する方法は、幾つかある。例えば、ポリプロピレン(X)のMTを変更することでもよいし、ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の配合量を変更することでも調整できる。一般に、ポリプロピレン(X)の含量を高くすると、樹脂組成物のMTを高くすることができる。
VI−5.プロピレン(共)重合体(H)
特に、発泡成形などの高い溶融張力を求められる分野においては、製品の物性と経済性の両立の観点から、溶融張力の高い樹脂組成物を、さらに他の樹脂で薄めて使用することが求められる場合が、数多く存在する。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、その構成成分であるポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)が、各々に発泡性能を向上させる役割を担っており、これらを阻害する樹脂での希釈は、本発明の効果を阻害してしまう。
したがって、希釈用の他の樹脂は、本発明の効果を著しく阻害することがない範囲で用いることが好ましい。本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)とが有機的に影響し合って、発泡性能に関して高い効果を発現しており、希釈用の他の樹脂で薄めても、高い効果が維持されやすい。
本発明において発泡性能を維持しながら経済性を向上させるための希釈に用いられる好ましい樹脂としては、プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体(H)であり、プロピレン(共)重合体(H)が共重合体の場合には、プロピレン(共)重合体(H)中のエチレン及びα−オレフィンの含量が0を超え、3wt%以下であるプロピレン(共)重合体(H)が好適である。
これは、本発明の構成要件であるプロピレン系ブロック共重合体(Y)に含まれるプロピレン(共)重合体(Y−1)と同様の性能を有するプロピレン(共)重合体(H)を希釈材として用いるのであれば、希釈後の樹脂組成物中におけるポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の含量を、本発明の樹脂組成物の範囲内に維持できる場合において、発泡特性を悪化させることが無いことに基づいている。
一方で、本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体(Y)の要件を満たさない他のプロピレン系ブロック共重合体やポリエチレン系樹脂を希釈材として用いた場合、それらがプロピレン系ブロック共重合体(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の改良効果を阻害し、本発明の効果を著しく阻害することがあるため、希釈材の選択には注意を要する。
なお、本発明の効果を著しく阻害しているかどうかは、希釈材を用いた場合と希釈材を用いない場合と比較して、例えば、連続気泡率が3倍程度の値を示すかどうかを目安にすることができる。
プロピレン(共)重合体(H)の配合量は、ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは0.1〜1000重量部、より好ましくは1〜500重量部、更に好ましくは10〜300重量部である。希釈後の樹脂組成物中におけるポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の含量をポリプロピレン樹脂組成物の規定の範囲内に維持できる範囲が好ましく、ポリプロピレン樹脂組成物中における、(Y−2)の割合が、X、Y及びHの合計量に対して、好ましくは0.01〜47.5wt%、より好ましくは1〜36wt%、さらに好ましくは4〜25.5wt%となるように、プロピレン(共)重合体(H)の配合量を定めることが好ましい。
VI−6.添加剤
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、各種添加剤を任意成分として配合することができる。詳しくは、従来公知のポリオレフィン樹脂用配合剤として使用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、安定剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤のような各種添加剤を、本発明の効果を損ねない範囲で加えることができる。これら添加剤の配合量は、樹脂組成物100wt%中で、一般に0.0001〜3wt%、好ましくは0.001〜1wt%である。
まず、酸化防止剤から説明する。
ポリオレフィンの酸化劣化は、熱、光、機械力、金属イオン等と酸素との作用により生ずるパーオキサイドラジカルやハイドロパーオキサイド化合物を経由したラジカル連鎖反応であり、一般的に自動酸化と呼ばれている。この自動酸化を抑制する為に用いられるのが酸化防止剤であり、連鎖反応のどこに作用するかによって、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、の3種に大別されるのが一般的である。
フェノール系酸化防止剤は、ラジカル補足剤であり、パーオキサイドラジカルなどと反応して生じるラジカルが比較的安定であることから系中のラジカル濃度を下げることができる。一般的には、置換フェノール化合物、特に、オルト位に嵩高い置換基を有する置換フェノール化合物を用いる。
以下、フェノール系酸化防止剤として、代表的な化合物を例示する。
モノフェノール型の化合物では、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(通称:BHT)、トコフェロール(ビタミンE)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:Irganox1076、スミライザーBP−76)を例示することができる。
ビスフェノール型の化合物では、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP−S)、1,1−ビス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:スミライザーBBM−S、アデカスタブAO−40)、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名:スミライザーGA−80、アデカスタブAO−80)を例示することができる。
トリフェノール型の化合物では、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブAO−30)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:Irganox1330、アデカスタブAO−330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商品名:Irganox3114、アデカスタブAO−20)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:スミライザーBP−179、Cyanox1790)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−イソシアヌレート(商品名:ケミノックス314)を例示することができる。
テトラフェノール型の化合物では、テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(商品名:Irganox1010)を例示することができる。
リン系酸化防止剤は、ハイドロパーオキサイド化合物を還元する作用があり、ハイドロパーオキサイド分解剤とも呼ばれる。単独でも酸化防止効果があるが、上記のフェノール系酸化防止剤と併用すると、相乗効果が発生して、更に酸化防止効果が高まるため、通常は、両者を併用して用いることが多い。この相乗効果は、フェノール系酸化防止剤と自動酸化に関わるラジカル種との反応で発生したフェノキシラジカル種をリン系酸化防止剤が還元することにより、フェノール系酸化防止剤が再生するために、生じると考えられている。
以下、リン系酸化防止剤として、代表的な化合物を例示する。
ホスファイト型の化合物では、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:Irgafos168、スミライザーP−16、アデカスタブ2112)、トリスノニルフェニルホスファイト(商品名:スミライザーTNP、アデカスタブ1178)、トリス(ミックスド,モノ−ジノニルフェニルホスファイト)(商品名:アデカスタブ329K)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(通称:P−EPQ)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニルフォスファイト)(商品名:アデカスタブPEP−36)を例示することができる。
硫黄系酸化防止剤も、リン系酸化防止剤と同様に、ハイドロパーオキサイド化合物を還元する作用があり、ハイドロパーオキサイド分解剤とも呼ばれる。こちらもリン系酸化防止剤と同様に、フェノール系酸化防止剤との併用による相乗効果があると言われている。
以下、硫黄系酸化防止剤として、代表的な化合物を例示する。
スルフィド型の化合物では、ジラウリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DLTDP)、ジ−ミリスチル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DMTDP)、ジステアリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DSTDP)、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリルチオ−プロピオネート)(商品名:スミライザーTP−D、アデカスタブAO−412S)を例示することができる。
次に、紫外線吸収剤と光安定剤について説明する。
光劣化を抑制するための添加剤が紫外線吸収剤と光安定剤である。ポリプロピレンに紫外線が当たると、ラジカルが生成して自動酸化が起こる。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収することにより、ラジカルの生成を抑制する作用があり、光安定剤は、紫外線により生成したラジカルを捕捉・不活性化する作用がある。
紫外線吸収剤は、紫外線領域に吸収帯を持つ化合物であり、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、無機微粒子系、などが知られている。この中で最も汎用的に用いられているのは、トリアゾール系である。
以下、紫外線吸収剤として代表的な化合物を例示する。
トリアゾール系の化合物では、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ200、TinuvinP)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ340、Tinuvin399)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ320、Tinuvin320)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ350、Tinuvin328)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ300、Tinuvin326)を例示することができる。
ベンゾフェノン系の化合物では、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ110)、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ130)を例示することができる。
サリシレート系の化合物では、4−t−ブチルフェニルサリシレート(商品名:シーソーブ202)を例示することができる。シアノアクリレート系の化合物では、エチル(3,3−ジフェニル)シアノアクリレート(商品名:シーソーブ501)を例示することができる。ニッケルキレート系の化合物では、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(商品名:アンチゲンNBC)を例示することができる。無機微粒子系の化合物では、TiO、ZnO、CeOを例示することができる。
光安定剤は、ヒンダードアミン系の化合物を用いることが一般的であり、HALSと呼ばれる。HALSは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を持ち、紫外線を吸収することはできないが、多種多様な機能により光劣化を抑制する。主な機能は、ラジカルの捕捉、ハイドロキシパーオキサイド化合物の分解、ハイドロキシパーオキサイドの分解を加速する重金属の捕捉、の3つと言われている。
以下、HALSとして代表的な化合物を例示する。
セバケート型の化合物では、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:アデカスタブLA−77、Tinuvin770)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:Tinuvin765)を例示することができる。
ブタンテトラカルボキシレート型の化合物では、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−57)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−52)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−62)を例示することができる。
コハク酸ポリエステル型の化合物では、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合重合体を例示することができる。
トリアジン型の化合物では、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名:Chimassorb199)、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944)、ポリ(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb3346)を例示することができる。
その他の添加剤についても、幾つか例示しておく。
滑剤は、成形性や流動性を高めるために用いる添加剤であり、成形機や押出機の中でポリマー分子間の摩擦力やポリマーと成形機内壁との間の摩擦力を低減する作用を持つ。滑剤として用いられる化合物は、パラフィンやワックスなどの炭化水素化合物、ステアリルアルコールやプロピレングリコールなどのアルコール、n−ブチルステアレートなどの高級脂肪酸エステル、オレイン酸アミドやステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸塩、ステアリン酸モノグリセリドなどの多価アルコールの部分エステル、シリコンオイルなどがある。
このうち、高級脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルシン酸アミド、ベヘン酸アミド、を挙げることができる。脂肪酸アミド化合物は、アルキル鎖上やN上に置換基を有していてもよい。置換基を有する脂肪酸アミド化合物の例としては、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルエルシン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、を挙げることができる。
安定剤は、そもそもポリ塩化ビニル(PVC)向けの添加剤であり、PVCから塩酸(HCl)が脱離して劣化することを防ぐ目的で使用される。各種安定剤のうち幾つかの化合物は、中和剤としての機能も有していることから、ポリオレフィンの添加剤としても用いられることがある。
中和剤は、ポリオレフィンの製造に用いられるチーグラー触媒に由来する塩素成分を中和するのに用いられる化合物である。中和剤としては、中和能力があるカルボン酸塩を用いることが多いが、塩素イオンの捕捉能力がある無機化合物も用いることができる。両者とも安定剤として用いられる化合物である。基本的に塩素原子を含まないメタロセン触媒を用いる場合には、本来必要のない添加剤であるが、塩素原子は、容易にコンタミする化学種であるため、安定生産の観点から、保険的に用いられる場合が多い。
以下、中和剤として代表的な化合物を例示する。
カルボン酸塩型の化合物では、ステアリン酸カルシウムとステアリン酸亜鉛を例示することができる。無機化合物では、ハイドロタルサイト、並びに、水酸化アルミニウムと炭酸リチウムの包摂物(商品名:ミズカラック)を例示することができる。
VII.押出発泡成形、ポリプロピレン系発泡シート、熱成形体
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂及び発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、押出成形、射出成形、熱成形、カレンダー成形、プレス成形等に供することができるが、気泡の保持性に優れ、かつ、溶融張力が適度であるため延展性が良いために、各種の押出発泡成形に、特に適したものである。どの様な押出発泡成形を用いるかは、特に制限するものではない。
代表的な押出発泡成形として、発泡シート成形、発泡フィルム成形、発泡ブロー成形、ビーズ発泡成形などによる発泡成形がある。発泡シート成形の場合、公知の押出機とダイスの組み合わせを用いることができる。
押出機は、単軸であっても二軸であってもよい。ダイはTダイでもよいし、円形(サーキュラー)であってもよい。発泡フィルム成形の場合も、同様である。発泡フィルム成形の場合には、更に延伸を行ってもよい。延伸方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。例えば、チューブラー法、テンター式延伸法、ロール延伸法、パンタグラフ式バッチ延伸法、などを例示することができる。発泡ブロー成形の場合も、公知の方法を用いればよい。具体例として、ダイレクトブロー成形機やアキューム式ブロー成形機を挙げることができる。
以下、順に詳説する。
VII−1.発泡剤
本発明のポリプロピレン樹脂組成物を用いて、押出発泡成形を行う際には、発泡剤を使用する必要がある。この際、発泡剤の種類には、特に制限がなく、プラスチックやゴム等に使用されている公知の発泡剤を使用することができる。発泡剤の種類にも、特に制限はなく、物理発泡剤、分解性発泡剤(化学発泡剤)、熱膨張剤を含有させたマイクロカプセル等、いずれの種類を用いてもよい。
物理発泡剤の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素、水、炭酸ガス、窒素などの無機ガス、などを例示することができる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、複数の化合物を併用してもよい。
中でも、プロパン、ブタン、ペンタンのような脂肪族炭化水素および炭酸ガスが、安価かつポリプロピレン樹脂(X)への溶解性が高いという点から好ましい。特に、炭酸ガスを用いる場合には、7.4MPa以上、31℃以上の超臨界条件とすると、重合体への拡散、溶解性に優れた状態となるので一層好ましい。
物理発泡剤を用いる場合には、必要に応じて、気泡調整剤を使用することができる。気泡調整剤としては、炭酸アンモニウム、重曹、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系分解性発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル及びジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N′−ジニトロソペンタンメチレンテトラミン及びN,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p′−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート等の分解性発泡剤、タルク、シリカ等の無機粉末、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重曹との反応混合物等を例示することができる。これらの気泡調整剤は、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
気泡調整剤を使用する際には、気泡調節剤の配合量は、ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の合計100重量部に対して、純分で0.01〜5重量部の範囲とすることが好ましい。
分解性発泡剤(化学発泡剤)の具体例としては、重炭酸ソーダとクエン酸などの有機酸の混合物、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウムなどのアゾ系発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ系発泡剤、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどのスルホヒドラジド系発泡剤、トリヒドラジノトリアジンなどが挙げられる。
発泡剤の配合量は、ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の合計100重量部に対し、好ましくは0.05〜6.0重量部の範囲であり、より好ましくは0.05〜3.0重量部、さらに好ましくは0.5〜2.5重量部、特に好ましくは1.0〜2.0重量部である。
VII−2.ポリプロピレン樹脂発泡成形体
本発明のポリプロピレン樹脂発泡成形体は、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂及び発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いて、製造したものである。本発明においては、ポリプロピレン樹脂発泡成形体の形状や成形方法を制限するものではない。本発明のポリプロピレン樹脂発泡成形体は好ましくはシートであるが、その発泡シートの厚みは、0.3mm〜10mm程度が好ましい。より好ましくは0.5mm〜5mmである。
ポリプロピレン系発泡シートは、熱成形により二次加工され、各種容器等を中心に広く産業上用いられている。そして、ポリプロピレン系発泡シートは、軽量であることを利点に、各種用途での利用が広がっている。
ここでポリプロピレン系発泡シートは、シート中に多くの気泡(セル)を含んでいるため、セルが粗かったり不揃いであったりすると、これらがシート表面に現れ、表面外観を悪化させ、商品価値が低下してしまう。さらに、熱成形を行う際には、金型を転写するために十分に加熱して行う必要があるが、発泡シートにおいては、加熱時にセルも膨張する。その結果、発泡セルが粗いと、表面が悪化しやすく、また、不揃いであるとシートが加熱中に破れてしまうといった問題がある。
これらの問題を解決するには、独立気泡率が高く、緻密でサイズの揃った発泡セルを形成することが必要であると考えられるが、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂又は発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いることで、これらが実現し、発泡シートとしては、外観に優れ、また、熱成形適性が高いシートを得ることができる。
VII−3.ポリプロピレン樹脂多層発泡シート
ポリプロピレン樹脂発泡シートを製造する際には、多層発泡シートとすることもできる。
具体的には、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂又は発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いる発泡層と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出成形すればよい。この際、複数の押出機を用いたフィードブロックやマルチダイなどによる公知の共押出方法を用いることができる。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂又は発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を発泡層に用いるポリプロピレン樹脂多層発泡シートに用いられる非発泡層は、発泡層のいずれの面に設けられていてもよく、また、発泡層を非発泡層の間に存在させた構成(サンドイッチ構造)とすることもできる。
ポリプロピレン樹脂多層発泡シートの厚みは、特に限定しないが、0.3mm〜10mm程度が好ましい。更に好ましくは0.5mm〜5mmである。
また、ポリプロピレン系多層発泡シートにおける非発泡層の厚さは、発泡層の気泡の成長を妨げないように、得られるポリプロピレン系多層発泡シートの全厚みの1〜50%、より好ましくは5〜20%になるように形成することが望ましい。
非発泡層が設けられたポリプロピレン樹脂多層発泡シートは、強度において優れたものとなり、少なくとも該発泡層の外側に、非発泡層が設けられることにより、表面平滑性や外観においても、優れたものとなる。更に、非発泡層に機能性の熱可塑性樹脂を使用することにより、抗菌性、ソフト感、耐受傷性等の付加的機能をポリプロピレン系多層発泡シートに兼備させることが容易にできる点からも、好ましい。
非発泡層に用いられる熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンコポリマー、ポリ−4−メチル−ペンテン−1等のポリオレフィン、エチレン−プロピレンエラストマー等のオレフィン系エラストマー、またはこれらと共重合可能な他の単量体、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体および混合物等を選択することができる。
中でも、リサイクル性、接着性、耐熱性、耐油性、剛性などの点から、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンコポリマーが好適である。プロピレン−α−オレフィンコポリマーとしては、プロピレン(共)重合体とエチレン−プロピレンランダム共重合体を複数あるいは単槽の重合槽を使用して、多段階重合して得られた、プロピレン系ブロック共重合体を含む。
これらのうち、プロピレン系ブロック共重合体は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れるため、より好ましく、プロピレン系ブロック共重合体(Y)が満たすべき要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体(ただし、(Y)と同一であってもよいし、異なっていてもよい)を含むポリプロピレン樹脂組成物を非発泡表面層に用いた場合には、得られたシートは、表面外観が良く、かつ、熱成形時のセルの保持性が高いといった特徴を有するため、最も好適である。この際、非発泡表面層に用いるポリプロピレン樹脂組成物中のプロピレン系ブロック共重合体の含量は、0.1〜100重量%であることが好ましい。
また、特に熱成形体として用いる場合に、成形体の剛性は、非常に重要であるが、特にこれを向上させるためには、表面層に非発泡層を設け、非発泡層に無機充填剤を配合することが好ましい。非発泡層として用いられる熱可塑性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂100重量部に対し、無機充填剤50重量部以下を配合することが望ましい。50重量部を超えると、ダイス出口でのメヤニを発生しシートの外観を損ないやすい。
無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが例示できる。
VII−4.熱成形性
本発明におけるポリプロピレン系発泡シート及びポリプロピレン系多層発泡シートは、熱成形適性が高いものであるが、これらは垂れ試験を行うことで評価ができる。垂れ試験は、熱成形と同様にシートをヒーターで加熱し、その時のシートの挙動を観察する試験法である。垂れ試験におけるシートの挙動は以下のようになっている。
まず、シートが加熱されると、軟化・膨張し、シートは一旦垂れ下がる。この間は、まだ結晶融解が充分ではなく、熱成形時には延展性が不足し、金型形状を十分に転写することができない。加熱が進み、結晶融解が充分となると、一旦垂れ下がったシートは、シート成形時の残留応力が緩和することにより、収縮し、加熱時の位置あたりまで張り戻る。このとき結晶は、十分に融解し、また、残留応力も解放されることで、熱成形時には、金型を充分転写した成形体を得ることができる。更に加熱が進むと、シート温度の上昇に伴い粘度が低下し、自重やセルの膨張により垂れ下がりはじめ、いずれは穴が開き始める。穴が開くと、当然熱成形して成形体を得ることはできないし、穴が開かないにしても垂れ下がりが大きいと、金型に接触し、成形体を得ることができなくなる。
上記挙動において、熱成形が可能な範囲は、シートが張り戻った時間T1から穴が開くまで時間T2の範囲内であり、この時間幅が広いほど成形可能範囲は広いため、垂れ試験の結果から、T2−T1を求め、これを熱成形性の評価に用いることができる。この時、本時間範囲において、垂れが小さい方が熱成形は行いやすく、また、より大きな成形体の成形が可能であるため、T2における垂れ量D(T2)を(T2−T1)で除して成形可能範囲における平均的な垂れ速度VD[mm/s]と定義し、これも、熱成形性の評価に用いることができる。
発泡セルの状態については、セルの大きさが小さく緻密で、大きさが揃っていて、独立性の高い状態が好ましい。具体的には、発泡層気泡径が500μm以下であることが好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下が更に好ましい。発泡層気泡径が500μmを大きく超えると、ポリプロピレン系発泡シートや該シートを熱成形する際に、熱成形体に対し、穴明き等の外観不良が発生する場合があるため好ましくない。なお、発泡層気泡径は実施例に記載の方法により光学顕微鏡を用いて求めた値とする。
また、セルの独立性に関しては、連続気泡率で判断することができる。連続気泡率は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下である。連続気泡率が30%を超えると、熱成形する際に、発泡シート内の発泡セルの膨張が生じないため、熱成形体の厚みが減ってしまう場合があるため、好ましくない。また、熱成形体の断熱性能の低下にも、繋がる場合があるので好ましくない。
なお、連続気泡率は、実施例に記載の方法によりエアピクノメター(東京サイエンス(株)製)を用いて求めた値とする。
VII−5.熱成形体
本発明の熱成形体は、上記のポリプロピレン樹脂発泡シート又はポリプロピレン樹脂多層発泡シートを熱成形したものである。
熱成形法は、特に制限されるものではなく、例えば、プラグ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト・リバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形などの方法を例示することができる。
VII−6.用途
本発明のポリプロピレン樹脂発泡成形体、発泡シートおよび熱成形体は、均一微細な発泡セルを有し、外観、熱成形性、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性等に優れていることより、トレー、皿、カップなどの食品容器や自動車ドアトリム、自動車トランクマットなどの車両内装材、包装、文具、建材などに好適に利用できる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
1.諸物性の測定方法
ポリプロピレン(X)、ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体からなるポリプロピレン樹脂組成物の特性は以下の方法で測定した。
1.1.メルトフローレート(MFR)
JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。単位はg/10分である。
1.2.溶融張力(MT)
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・ピストン押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。単位はグラムである。
1.3.25℃のキシレン可溶な成分の割合(CXS)
以下の方法を用いてCXSの値を得た。
2gの試料を300mLのp−キシレン(0.5mg/mLのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
1.4.分岐指数g’
示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCを用いて、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’を求めた。具体的な測定方法、解析方法、算出方法は、上述の通りである。
1.5.歪硬化度(λmax)
Rheometorics社製Aresを用いて伸張粘度の測定を行い、その結果から歪硬化度(λmax)を求めた。具体的な測定方法、算出方法は、上述の通りである。
1.6.アイソタクチックトライアッド分率(mm分率)、長鎖分岐の有無
日本電子社製、GSX−400、FT−NMRを用い、上述の通り、特開平2009−275207号公報の段落[0025]〜[0065]に記載の方法で測定した。mm分率の単位は%である。
1.7.融点:
示差操作熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。
1.8.分子量分布Mw/MnおよびMz/Mn:
以下のGPC測定により求めた。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本直列)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
1.9.プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の比率、Y−2中のエチレン含有率
明細書中に記載のクロス分別法とFT−IR法の組み合わせの手法により決定した。
1.10.プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の固有粘度
上記1.3.に記載の方法により得られたプロピレン系ブロック共重合体(Y)のCXS成分を用いて、固有粘度の測定を行った。固有粘度の測定はウベローデ型毛管粘度計を用い、温度135℃、デカリン溶媒の条件で行った。
1.11.発泡シートの特性評価
発泡シートの特性評価は以下の方法で実施した。
1.11.1.密度
実施例および比較例により得られた発泡シートから試験片を切出し、試験片重量(g)を、該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で割って求めた。JIS K7222に準じて測定し、密度を求めた。
1.12.発泡倍率
ポリプロピレン樹脂の密度0.9g/cmを上記の発泡シート試験片の密度で割った値を発泡倍率とした。
1.13.シートの外観評価
発泡シートの外観評価は、各実施例及び比較例で得られたポリプロピレン系樹脂発泡シートを以下の基準で評価した。
◎:厚み斑が非常に少なく平滑。表面に局所的な凹凸は無く美麗。気泡形状が微細。
○:厚み斑が少ない。表面に局所的な凹凸は殆どない。気泡形状が均一。
△:厚み斑がある。気泡形状は均一だが局所的な凹凸が見られる。
×:厚み斑が多い。気泡の合一が見られ、局所的な凹部(ヒケ)がある。
1.14.発泡層気泡径
実施例および比較例において得られた発泡シートから、25mm角のサンプルを切り出した。実体顕微鏡(ニコン製:SMZ−1000−2型)を用いて発泡層断面を拡大投影し、断面中の気泡数と気泡径より、押出方向断面及びその垂直方向の断面の気泡径をそれぞれ算出、その平均値を発泡層の発泡層気泡径とした。
1.15.連続気泡率
実施例および比較例により得られた発泡シートから試験片を切出し、エアピクノメター(東京サイエンス(株)製)を用いて、ASTM D2856に記載の方法に準じて測定した。
2.使用材料
2.1.ポリプロピレン(X)
下記の製造例1〜3で得られたポリプロピレン:X1〜X3、およびBorealis社製ホモポリプロピレンDaploy(TM)WB140HMS:X4をポリプロピレン(X)として用いた。
[製造例1:ポリプロピレン(X1)の製造]
<触媒成分[A−1]の合成>
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−1](錯体1)の合成):
(i)4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、4−i−プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4−ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
(ii)2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に4−(4−i−プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO 200mlを加え、ここにN−ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p−トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
(iii)2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−メチルフラン6.7g(82m1mol)、DME100mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1
.59mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン19.8g(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。
放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
(iv)ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、THF200mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに、1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
(v)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についての1H−NMRによる同定値を以下に記す。
H−NMR(C)同定結果
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
<触媒成分[A−2]の合成>
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−1](錯体2)の合成):
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11−240909号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、実施した。
<触媒成分(B)の合成>
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)400gを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーに蒸留水4,000gを加えた後に、ろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4Lを加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、直径53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
<予備重合触媒1の調製>
i)触媒調製及び予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記の触媒成分(B)で得られた化学処理スメクタイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[A−1]の合成で得られたrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(180μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[A−2]の合成で得られたrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(120μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
上記の化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後更にトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒60.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.00g/g−触媒であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
<重合>
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40kgを導入した。
これに水素6.8NL(0.61g)、トリイソブチルアルミニウム(0.12mol:濃度50g/Lのヘプタン溶液を0.47L)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。
2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、16.9kgの重合体PP−1を得た。触媒活性は7.0kg−PP/g−触媒であった。
<造粒>
上記の重合で得られたポリプロピレン重合体PP−1の100重量部に対し、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.10重量部、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944、BASFジャパン株式会社製)0.03重量部、ステアリン酸アミド0.09重量部、を配合し充分に撹拌した後、2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)を用いて220℃で溶融混練し、押出されたストランドを切断しペレット化し、ポリプロピレン(X1)を得た。
得られたポリプロピレンX1を分析した結果を表1に示す。13C−NMR測定の結果、このポリプロピレンX1に長鎖分岐があることを確認した。また分岐指数g’が0.88であり、1よりも小さな値であることも、このポリプロピレンX1に長鎖分岐が存在することを示している。
[製造例2:ポリプロピレン(X2)の製造]
<重合>
水素量を8.2NL(0.73g)とした以外は、上記製造例1と同様の方法で重合操作を行ない、19.9kgの重合体PP−2を得た。触媒活性は8.3kg−PP/g−触媒であった。
<造粒>
上記の重合で得られた重合体PP−2を用いて製造例1と同様にして造粒を行ない、ポリプロピレンX2を得た。
得られたポリプロピレンX2を分析した結果を表1に示す。
[製造例3:ポリプロピレン(X3)の製造]
<重合>
水素量を9.7NL(0.87g)とした以外は、上記製造例1と同様の方法で重合操作を行ない、23.1kgの重合体PP−3を得た。触媒活性は9.6kg−PP/g−触媒であった。
<造粒>
上記の重合で得られた重合体PP−3を用いて製造例1と同様にして造粒を行ない、ポリプロピレンX3を得た。
得られたポリプロピレンX3を分析した結果を表1に示す。
Figure 2017031359
2.2.プロピレン系ブロック共重合体(Y)
下記の製造例4、5で得られたY1、Y2をポリプロピレン系ブロック共重合体(Y)として用いた。表2にその性状をまとめた。
[製造例4:プロピレン系ブロック共重合体(Y1)の製造]
1.固体触媒成分の製造
撹拌装置を備えた容量10リットルのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエンを2リットル導入した。ここに、室温で、ジエトキシマグネシウムMg(OEt)を200g、四塩化チタンを1リットル添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。
次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温で四塩化チタンを1リットル添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体触媒成分のスラリーを得た。
このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体触媒成分のチタン含有量は2.7重量%、マグネシウム含有量は18重量%であった。また、固体触媒成分の平均粒径は33μmであった。
次に、攪拌装置を備えた容量20リットルのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体触媒成分のスラリーを固体触媒成分として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒成分の濃度が25g/リットルとなるように調整した。四塩化珪素SiClを50mL加え、90℃で1時間反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4リットルに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、t−ブチルメチルジメトキシシラン(t−C)(CH)Si(OCHを30ml、トリエチルアルミニウムEtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして80g添加し、40℃で2時間反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分には、チタンが1.2重量%、(t−C)(CH)Si(OCHが8.8重量%含まれていた。
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。
上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/リットルとなるように調整した。スラリーを10℃に冷却した後、トリエチルアルミニウムEtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4時間かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30分間反応を継続した。
次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(触媒1)を得た。この固体触媒成分(触媒1)は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、固体触媒成分(触媒1)のポリプロピレンを除いた部分には、チタンが1.0重量%、(t−C)(CH)Si(OCHが8.2重量%含まれていた。
2.プロピレン系ブロック共重合体の製造
内容積2000リットルの流動床式反応器を二個連結してなる連続反応装置を用いて、重合を行った。
まず、第一反応器で、重合温65℃、プロピレン分圧1.8MPa(絶対圧)、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.015となるように、連続的に供給するとともに、トリエチルアルミニウムを4.0g/hrで、上記の触媒1をモノマーの重合速度が16kg/hrになるように供給した。第一反応器で重合したパウダー(結晶性プロピレン重合体)を、反応器内のパウダー保有量が40kgとなるように16kg/hrの抜出し速度で連続的に抜き出し、第二反応器に連続的に移送した(第一段目重合工程)。
次に、第二反応器で、重合温度70℃で、モノマー圧力1.5MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.29となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.0008となるように、連続的に供給すると共に、エチルアルコールを、第一反応器に供給するトリエチルアルミニウムに対して1.17倍モルになるように、供給した。
第二反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように連続的にベッセルに抜き出し、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン−エチレンブロック共重合体を得た(第二段目重合工程)。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体のパウダー100重量部に対して、酸化防止剤として「IRGASTAB FS 301 FF」(BASF社製)0.2重量部、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−ターシャルブチルベンゾイル)イソシアネート(ソンウォン社製、商品名:SONGNOX1790)0.1重量部、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製、商品名:アデカスタブPEP−36)0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム0.03重量部を添加し、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)で5分間混合した。
得られたブレンド物を用いて、以下の装置、条件下で水中カット造粒法により、プロピレン系ブロック共重合体(Y1)を得た。
・2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)
・口径30mm、L/D=25(アイ・ケー・ジー社製PMS30−25)
・スクリュ:フルフライトCR2.0、Feed部溝深さ4mm+ダルメージ
・スクリュ回転数:60rpm
・設定温度:ホッパー下水冷、C1〜C4各220、200、200、200℃
・ダイ:ストランドダイ
・造粒体の処理レート:200kg/hr
・冷却水温度:43℃
・スクリーンメッシュ:BMT140ZZ(石川金網(株)より入手、特殊綾畳織)
[製造例5:プロピレン系ブロック共重合体(Y2)の製造]
1.固体触媒成分の製造
製造例4の固体触媒成分製造法の、(t−C)(CH)Si(OCHの代わりに、(i−Pr)Si(OCHを用いた以外は、製造例4に準じて実施した。
2.プロピレン系ブロック共重合体の製造
上記で調製した触媒を用いて、上記製造例4のプロピレン・エチレンブロック共重合体の製造手順に従って、第1段目重合における水素/プロピレンのモル比を0.016に変更し、また、第2段重合における水素/プロピレンのモル比を0.00015に、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.26となるように、エチルアルコールの投入量を第一反応器に供給するトリエチルアルミニウムに対して1.19倍モルとして、プロピレン・エチレンブロック共重合体を製造し、製造例4と同様の造粒を行うことで、プロピレン系ブロック共重合体(Y2)を得た。
Figure 2017031359
2.3.ポリプロピレン樹脂組成物
ポリプロピレン(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)のブレンド物である。表3にまとめた。
[製造例6]
ポリプロピレンX3とプロピレン系ブロック共重合体Y1を90:10(重量比)でブレンドし充分に撹拌した後、単軸押出機を用いて以下の条件で溶融混練し、押し出したストランドをファンカッターで切断してペレット化しポリプロピレン樹脂組成物Aを得た。
・押出機:口径30mm、L/D=25(IKG社製PMS30−25)
・スクリュ:フルフライト CR=2.0、フィード部溝深さ4mm+ダルメージ
・スクリュ回転数:60rpm
・設定温度:ホッパー下水冷、C1/C2/C3/C4=220/200/200/200℃
・ダイ:1mm口径ストランドダイ
[製造例7]
ポリプロピレンX3とプロピレン系ブロック共重合体Y1を70:30(重量比)とした以外は製造例6と同様の方法でポリプロピレン樹脂組成物Bを得た。
[製造例8]
ポリプロピレンX3とプロピレン系ブロック共重合体Y1を10:90(重量比)とした以外は製造例6と同様の方法でポリプロピレン樹脂組成物Cを得た。
[製造例9]
プロピレン系ブロック共重合体をY2とした以外は製造例7と同様の方法でポリプロピレン樹脂組成物Dを得た。
Figure 2017031359
3.無延伸フィルムの作製とゲルの個数のカウント
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂組成物Aを用い、クリエイトプラスチック社製CF−350型フィルム成形装置で厚さ25μmのフィルムを作製し、そのフィルムのゲルの個数を長瀬産業社製CCD式欠点検出器(SCANTEC7000)によりカウントした。以下にその詳細を示す。
フルフライトメタリング型スクリュを有し、先端に幅350mmのストレートマニホールド型Tダイ(350型フィルムダイ)を取り付けたCR45−25型押出機(口径40mm、L/D=25)にポリプロピレン樹脂組成物Aを投入する。押出機の設定条件は表4に示す条件(3)とし、スクリュ回転数は55rpmとした。Tダイから出た溶融樹脂は冷却ロール温度を40℃に設定したダブルチルロール型フィルム引取機(CR−400型)で引き取り無延伸フィルムとした。
ゲルの個数のカウントは上記の欠点検出器を用い、引取機と巻き取り機の間、フィルムの中央部で行った。その検査幅及び検査長はそれぞれ10mm幅、5m長(検査面積0.05m)、検査回数は600回とし、サイズ区分毎に得られた値の平均値を単位面積換算して算出した。結果を表5に示す。
[実施例2]
ポリプロピレン樹脂組成物としてBを用いた以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを作製し、ゲルの個数を算出した。結果を表5に示す。
[実施例3]
ポリプロピレン樹脂組成物としてCを用い、押出機の設定条件を表4に示す条件(2)とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを作製し、ゲルの個数を算出した。結果を表5に示す。
[比較例1]
ポリプロピレン樹脂組成物としてDを用いた以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを作製し、ゲルの個数を算出した。結果を表5に示す。
Figure 2017031359
Figure 2017031359
[実施例4]
ポリプロピレン樹脂組成物の代わりにポリプロピレンX1を用い、押出機の設定条件を表4に示す条件(1)とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを作製し、ゲルの個数を算出した。結果を表6に示す。
[実施例5]
ポリプロピレンX2を用い、押出機の設定条件を表4に示す条件(2)とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを作製し、ゲルの個数を算出した。結果を表6に示す。
[実施例6]
ポリプロピレンX3を用い、押出機の設定条件を表4に示す条件(3)とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを作製し、ゲルの個数を算出した。結果を表6に示す。
[比較例2]
ポリプロピレンX4を用いた以外は、実施例4と同様の方法でフィルムを作製した。ゲル起因でフィルムに穴が空くなどして、0.05mの検査面積が確保できなかったため連続測定できた最大の検査面積(0.015m)での値を用いてゲルの個数を算出した。結果を表6に示す。
Figure 2017031359
4.Tダイを用いた発泡シートの製造と評価
[実施例7]
ポリプロピレン樹脂組成物A100重量部と、気泡調整剤として化学発泡剤(商品名:ハイドロセロールCF40E−J、日本ベーリンガーインゲルハイム社製)0.5重量部をリボンブレンダーにより均一に攪拌混合し、バレルの途中に物理発泡剤注入用のバレル孔を有する単軸押出機に投入した。押出機の前段で加熱溶融して可塑化するとともに気泡調整剤を分解させながら、該混合物100重量部に対して、0.35重量部の液化二酸化炭素を高圧ポンプで注入混練してポリプロピレン樹脂発泡成形材料とした後、押出機の後段でそのポリプロピレン樹脂発泡成形材料を速やかに冷却し、フィードブロックを介して幅750mm、リップ幅0.4mmのTダイから押し出した。
この時、単軸押出機2台を用いて、プロピレン系ブロック共重合体樹脂(日本ポリプロ(株)製、グレード名「BC3BRF」、MFR=12g/10分)を加熱溶融押し出しをして両表面層に積層し、非発泡層−発泡層−非発泡層からなる2種3層構成の多層発泡シートとした。押し出された多層発泡シートは、ダイ直近に設置された直径80mmのロールでまず片面が冷却され、その後に設置された直径100mmのロール3本で両面を冷却し、ピンチロールにより一定速度で引き取った。
各押出機の運転条件は以下の通りである。
・押出機(発泡層)
口径:65mm、L/D=50、物理発泡剤注入口:L/D=20の位置
スクリュ回転数:75rpm
設定温度:C1/C2−C4/C5/C6〜C9=180/240/190/175℃
吐出量:約70kg/h
・押出機(非発泡層)
口径:40mm、L/D=28
スクリュ回転数:50rpm
設定温度:C1/C2/C3/C4=180/230/190/180℃
・フィードブロック温度:175℃
・ダイ温度:175℃
・冷却ロール温度:15℃
・引取速度:4.5m/min
得られた該多層発泡シートは、非発泡層:発泡層:非発泡層の厚み比率が4:92:4の層構成を有し、密度が0.30g/cm、発泡層気泡径80μm、連続気泡率が8%の緻密な気泡構造を有する外観良好なものであった。発泡シートの評価結果を表7に示す。
[実施例8]
ポリプロピレン樹脂組成物をBとした以外は実施例7と同様の方法で発泡シートを製造した。
得られた該多層発泡シートは、非発泡層:発泡層:非発泡層の厚み比率が4:92:4の層構成を有し、密度が0.30g/cm、発泡層気泡径90μm、連続気泡率が5%の緻密な気泡構造を有する外観良好なものであった。発泡シートの評価結果を表7に示す。
[実施例9]
ポリプロピレン樹脂組成物をCとした以外は実施例7と同様の方法で発泡シートを製造した。
得られた該多層発泡シートは、非発泡層:発泡層:非発泡層の厚み比率が4:92:4の層構成を有し、密度が0.31g/cm、発泡層気泡径120μm、連続気泡率が7%の緻密な気泡構造を有する外観良好なものであった。発泡シートの評価結果を表7に示す。
[実施例10]
非発泡層の共押出をせずに発泡層単層のシートとした以外は、実施例8と同様の方法で発泡シートを製造した。得られた該単層発泡シートは、密度が0.29g/cm、発泡層気泡径120μm、連続気泡率が14%の緻密な気泡構造を有する外観良好なものであった。発泡シートの評価結果を表7に示す。
[比較例3]
ポリプロピレン樹脂組成物をDとした以外は、実施例7と同様の方法で発泡シートを製造した。得られた該多層発泡シートは、密度が0.37g/cmと発泡倍率が低く、連続気泡率も30%であった。発泡シートの外観は発泡層のゲル起因と思われる局所的な凹凸が確認された。発泡シートの評価結果を表7に示す。
[比較例4]
ポリプロピレン樹脂組成物をDとした以外は、実施例10と同様の方法で単層発泡シートを製造した。得られた該単層発泡シートは、密度が0.41g/cmと発泡倍率が低く、連続気泡率も44%であった。発泡シートの外観は発泡層のゲル起因と思われる荒れが全面で確認された。発泡シートの評価結果を表7に示す。
Figure 2017031359
5.サーキュラーダイを用いた発泡シートの製造と評価
[実施例11]
ポリプロピレンX1を100重量部と、気泡調整剤として化学発泡剤(商品名:ハイドロセロールCF40E−J、日本ベーリンガーインゲルハイム社製)0.5重量部をリボンブレンダーにより均一に攪拌混合し、スクリュ径がそれぞれ40mm、50mmのタンデム型押出機に投入した。一段目押出機のシリンダー設定温度を230℃として樹脂を加熱溶融して可塑化するとともに、気泡調整剤を分解させながら、該混合物100重量部に対して、0.99重量部のイソブタンを高圧ポンプで注入混練してポリプロピレン樹脂発泡成形材料とした後、2段目押出機の設定温度を190℃として速やかに冷却を実施し、押出機先端に取付けられたサーキュラーダイ(設定温度175℃、口径50mm、ギャップ=0.75mm)よりそのポリプロピレン樹脂発泡成形材料を大気中に押出して発泡させた。なお、1段目押出機の回転数は90rpm、2段目押出機の回転数は10rpmとした。
ダイから押し出された該発泡体を水温10℃の通水をした外径120mmの冷却マンドレルに通して内面を冷却すると同時に、ダイ直近に取りつけたエアリングから空気を吹き付けて外面を冷却した。その後、ローターカッターにより切り開いてシートとした後、引取ロールの速度で厚みを調製し、ピンチロール及び巻取ロールによってシートの巻取を行った。得られた発泡シートは、密度が0.16g/cm、発泡層気泡径100μm、連続気泡率が10%で、コルゲートの発生は少なく、外観良好なものであった。得られた発泡シートの評価結果を表8に示す。
[実施例12]
ポリプロピレンをX2、2段目押出機の設定温度を180℃とした以外は実施例11と同様の方法で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、密度が0.16g/cm、発泡層気泡径120μm、連続気泡率が7%で、コルゲートの発生は少なく、外観良好なものであった。得られた発泡シートの評価結果を表8に示す。
[実施例13]
ポリプロピレンをX3、イソブタンの注入量をポリプロピレン樹脂発泡成形材料に対して0.80重量部、2段目押出機の設定温度を175℃とした以外は実施例11と同様の方法で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、密度が0.20g/cm、発泡層気泡径120μm、連続気泡率が10%で、コルゲートの発生が無く、外観良好なものであった。得られた発泡シートの評価結果を表8に示す。
[比較例5]
ポリプロピレンをDとした以外は、実施例11と同様の方法で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、密度が0.20g/cm、発泡層気泡径100μm、連続気泡率が10%で、コルゲートの発生はなかったが、ゲル起因による局所的な凹凸が見られた。得られた発泡シートは得られた発泡シートの評価結果を表8に示す。
Figure 2017031359
実施例と比較例の対比により、本発明に係る発泡成形用ポリプロピレン樹脂及び発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物が、発泡特性に優れ、発泡シートの熱成形適性が高く、得られた容器の外観に優れることは明らかである。
本発明に係る発泡成形用ポリプロピレン樹脂及び発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、発泡特性に優れ、発泡シートの熱成形適性が高く、得られた容器の外観に優れていることから、トレー、皿、カップなどの食品容器や自動車ドアトリム、自動車トランクマットなどの車両内装材、包装、文具、建材などに好適に利用でき、工業的価値は極めて高い。

Claims (20)

  1. ポリプロピレン(X)10〜99重量%およびプロピレン系ブロック共重合体(Y)1〜90重量%を含有し、230℃で測定した溶融張力(MT)が1g以上であり、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が50個/m以下である発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
  2. 厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.4mm以上0.5mm未満のゲルの個数が400個/m以下である請求項1に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
  3. 厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.4mm以上0.5mm未満のゲルの個数が400個/m以下であり、長径0.3mm以上0.4mm未満のゲルの個数が2000個/m以下である請求項1に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
  4. 230℃で測定した溶融張力(MT)が3g以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
  5. ポリプロピレン(X)の230℃で測定した溶融張力(X)が3g以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
  6. ポリプロピレン(X)が下記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たす請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
    特性(X−i):長鎖分岐を有する。
    特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3〜25gである。
    特性(X−iii):メルトフローレート(MFR)が0.9g/10分を超え、15g/10分以下である。
    特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン(X)全量に対し5wt%未満である。
  7. プロピレン系ブロック共重合体(Y)が10重量%以下のコモノマーを含んでもよいプロピレン(共)重合体(Y−1)およびエチレン含量が11.0〜38.0重量%であるプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)からなり、プロピレン系ブロック共重合体(Y)全量を100重量%としたとき(Y−1)が50〜99重量%、(Y−2)が1〜50重量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
  8. プロピレン系ブロック共重合体(Y)が逐次重合によって製造されたものである請求項7に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
  9. 溶融張力(230℃)が3g以上であり、厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.5mm以上のゲルの個数が10個/m以下であるポリプロピレン(X)からなる発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
  10. 厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.2mm以上0.5mm未満のゲルの個数が50個/m以下である請求項9に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
  11. 厚み25μmの無延伸フィルムとした場合に長径0.2mm以上0.5mm未満のゲルの個数が50個/m以下であり、長径0.1mm以上0.2mm未満のゲルの個数が100個/m以下である請求項9に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
  12. ポリプロピレン(X)が下記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たす請求項9〜11のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
    特性(X−i):長鎖分岐を有する。
    特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3〜25gである。
    特性(X−iii):メルトフローレート(MFR)が0.9g/10分を超え、15g/10分以下である。
    特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン(X)全量に対し5wt%未満である。
  13. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物または請求項9〜12のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、発泡剤を0.05〜6.0重量部含有するポリプロピレン樹脂発泡成形材料。
  14. 請求項13に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を押出成形してなるポリプロピレン樹脂発泡成形体。
  15. 請求項14に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出してなるポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。
  16. 前記熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、50重量部以下の無機充填剤を含む請求項15に記載のポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。
  17. 請求項14〜16のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体または積層発泡成形体を、熱成形してなる成形品。
  18. 請求項13に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を射出成形、熱成形、ブロー成形またはビーズ発泡成形のいずれかの成形法に供することにより得られる成形品。
  19. シート状である請求項14〜16のいずれか一項に記載の成形体。
  20. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物または請求項9〜12のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂の、発泡シートの製造のための使用。
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