JP2017026445A - 転がり軸受の状態監視装置及び転がり軸受の異常判定しきい値の設定方法 - Google Patents

転がり軸受の状態監視装置及び転がり軸受の異常判定しきい値の設定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】転がり軸受の損傷状況を把握して軸受交換時期を適切に判定可能な転がり軸受の状態監視装置を提供する。
【解決手段】転がり軸受10の状態監視装置100は、変位センサ102と、判定部106とを含む。変位センサ102は、転がり軸受10の内外輪間のラジアル方向の相対変位を検出する。判定部106は、内外輪間の相対変位が予め設定されたしきい値を超えると、転がり軸受10に異常が生じたものと判定する。上記しきい値は、転がり軸受10の負荷域の中央を通過中の転動体18が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体18が荷重を受けているとした場合の相対変位を示す基準変位に基づいて設定される。
【選択図】図1

Description

この発明は、転がり軸受の状態監視装置及び転がり軸受の異常判定しきい値の設定方法に関し、特に、風力発電装置の主軸や増速機等に用いられ得る転がり軸受の状態監視技術に関する。
特開2010−159710号公報(特許文献1)は、風力発電装置の主軸軸受(転がり軸受)の状態を監視する監視装置を開示する。この監視装置は、荷重検出手段と、判定手段とを備える。荷重検出手段は、主軸軸受に作用する負荷荷重を検出する。判定手段は、荷重検出手段の検出信号を判定情報の一つとして用いて、上記主軸軸受に関する所定の判定、たとえばメンテナンス必要時期の判定を行なう。
この監視装置によれば、風力発電装置における主軸軸受のメンテナンス必要時期の予測等の判定を精度良く行なうことができる(特許文献1参照)。
特開2010−159710号公報
風力発電装置の主軸軸受のように、交換が容易ではなく、かつ、比較的低速条件で使用される軸受(転がり軸受)は、損傷が発生しても継続使用されることが多い。そのために、このような軸受については、損傷の進展に応じた軸受交換時期の明確化が課題となっている。
低速条件で使用される転がり軸受については、損傷が進展しても、装置の構成部品(たとえば、風力発電装置において主軸に連結される増速機など)が損壊する程までには振動は増大しない。しかしながら、損傷が進展することにより内外輪間の相対変位(固定輪に対する回転輪のぶれを示す。)が増大すると、軸受が支持している部品の変位による弊害が生じ、軸受が支持している部品とそれに隣接する部品との異常接触や、歯車の噛み合い不良等を生じ得る。たとえば、風力発電装置の場合には、主軸軸受の損傷による内外輪間の相対変位の増大は、主軸に連結される増速機の歯車の噛み合い不良等を生じ得る。したがって、風力発電装置の主軸軸受のような低速条件で使用される転がり軸受については、内外輪間の相対変位に基づいて軸受の交換時期を決定するのが望ましい。
なお、このような低速条件で使用される転がり軸受としては、風力発電装置用の軸受のほか、たとえば、潮力発電装置用の軸受や、大型の圧延ローラやガイドローラ用の軸受等が想定される。
軸受の交換時期の根拠とする内外輪間の相対変位の許容量については、軸受が支持する部品に基づいて決定し得るが、この場合は、軸受が支持する部品の寸法精度に加えて、部品の組立精度や温度分布等も考慮する必要があり、軸受が支持する部品から内外輪間の相対変位の許容量を決定するのは容易ではない。
上記特許文献1に記載の監視装置は、風力発電装置における主軸軸受のメンテナンス必要時期の判定を精度良く行なうことができる一手法を提供するものとして有用であるけれども、損傷が生じつつも継続使用される軸受の交換時期の明確化については、精度改善の余地がある。
本願発明者らは、軸受交換時期を明確化して適切な交換時期を実現するにあたり、転がり軸受の損傷の進展について種々の検討及び実験を行なった結果、静止輪に対する転動体の総通過回数(転がり軸受の総回転回数に比例する。)の増加に応じて内外輪間の相対変位が段階的に増大し、所定の段階から相対変位が軸受支持部品に影響を与え得るほど急激に増大することの知見を得た。そして、本願発明者らは、さらに検討を深めた結果、転がり軸受の損傷について、段階的に増大する相対変位の各段階における損傷状況と損傷の進展メカニズムについて知見を得るに至った。
それゆえに、この発明の主たる目的は、転がり軸受の損傷状況を把握して軸受交換時期を適切に判定可能な転がり軸受の状態監視装置を提供することである。
また、この発明の別の目的は、転がり軸受の損傷状況を把握して軸受交換時期を適切に判定するための異常判定しきい値の設定方法を提供することである。
この発明によれば、転がり軸受の状態監視装置は、ラジアル荷重を受けて使用される転がり軸受の状態監視装置であって、変位検出部と、判定部とを備える。変位検出部は、転がり軸受の内外輪間のラジアル方向の相対変位を検出する。判定部は、変位検出部によって検出される相対変位が予め設定されたしきい値を超えると、転がり軸受に異常が生じたものと判定する。ここで、上記しきい値は、転がり軸受の負荷域の中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けているとした場合の相対変位を示す基準変位に基づいて設定される。
ラジアル荷重を受けて使用される転がり軸受においては、損傷は、転動体と静止輪の軌道面との接触面圧が最大となる負荷域中央において最初に発生する確率が高い。負荷域中央において初期損傷が発生し、初期損傷が拡大することにより負荷域中央を通過中の転動体がほとんど荷重を受けない状態となっても、損傷が一個所程度であれば、このような状態は一定期間安定的に継続する。
負荷域中央に生じた初期損傷は、その後、軌道面の周方向(主に転動体の移動下流方向)に拡大していく。そして、隣接する2つの転動体(負荷域中央を通過中の転動体と、回転下流側において隣接する転動体)が同時に損傷部を通過できるまでに損傷が軌道面周方向に拡大すると、荷重を受ける転動体数がさらに減少することによって転動体荷重が増大し、その結果、損傷の進展速度が上昇する。
或いは、負荷域中央における初期損傷の発生後、初期損傷部から離れた位置に、損傷の剥離片の噛み込みにより軌道面に生じた圧痕が起点となって新たなフレーキングが発生し得る。そして、この新たなフレーキングによる損傷が拡大することによって、新たなフレーキングに起因する損傷部と初期損傷部とを複数の転動体が同時に通過する状況が発生し得る。このような場合にも、荷重を受ける転動体数が複数減少することによって転動体荷重が増大し、その結果、損傷の進展速度が上昇する。
なお、各転動体が受ける荷重の増大は、転動体が損傷部に進入する際に静止輪に対して回転輪が変動することによる慣性力も増大させるので、この点も損傷の進展速度の上昇に寄与する。
このように、負荷域中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けている状態は、一定期間安定的に継続し、この間は軸受を継続使用可能である。しかしながら、上述のように、複数の転動体が同時に損傷部を通過するまでに損傷が進展すると、その後は、連鎖的かつ加速的に損傷が発生し、その結果、内外輪間の相対変位も、軸受が支持する部品に影響を与え得るほど急激に増大する。
そこで、この状態監視装置においては、負荷域中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けているとした場合の相対変位(基準変位)に基づいて、転がり軸受に異常が生じたものと判定するためのしきい値が設定される。したがって、この発明によれば、転がり軸受の損傷状況を把握して軸受交換時期を適切に判定することができる。
好ましくは、上記しきい値は、基準変位よりも大きい第1のしきい値を含む。判定部は、変位検出部によって検出される相対変位が第1のしきい値を超えると、転がり軸受を交換すべきものと判定する。
さらに好ましくは、第1のしきい値は、基準変位と、負荷域中央を通過中の転動体に隣接する転動体のいずれか一方がさらに荷重を受けないとした場合の相対変位との間の値に設定される。
また、好ましくは、上記しきい値は、基準変位よりも小さい非零の第2のしきい値を含む。判定部は、変位検出部によって検出される相対変位が第2のしきい値を超えると、転がり軸受の静止輪の軌道面において、負荷域中央に損傷(初期損傷)が生じたものと判定する。
また、この発明によれば、設定方法は、ラジアル荷重を受けて使用される転がり軸受の異常を判定する異常判定しきい値の設定方法であって、転がり軸受の負荷域の中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けているとした場合の、転がり軸受の内外輪間のラジアル方向の相対変位を示す基準変位を算出するステップと、基準変位に基づいて異常判定しきい値を設定するステップとを含む。
好ましくは、異常判定しきい値は、基準変位よりも大きく、相対変位が異常判定しきい値を超える場合に転がり軸受を交換すべきものと判定するためのしきい値である。
この発明によれば、転がり軸受の損傷状況を把握して軸受交換時期を適切に判定することができる。
この発明の実施の形態による状態監視装置によって監視される転がり軸受の断面図と、状態監視装置のブロック図とを併せて示した図である。 負荷域中央に初期損傷が発生した直後の状態を示した図である(ステージ1)。 負荷域中央に発生した初期損傷が軌道面の幅方向全域に拡大した状態を示した図である(ステージ2)。 負荷域中央に発生した損傷が軌道面の周方向にさらに拡大した状態を示した図である(ステージ3)。 初期損傷部から離れた位置に新たなフレーキングが発生した様子を示した図である。 無負荷の転動体数と内外輪間の相対変位との関係を示した図である。 一定のラジアル荷重の下で、複数の転動体から内輪が受ける総負荷回数と、内外輪間の相対変位との関係を調べた実験結果の一例を示す図である。 一定のラジアル荷重の下で、総負荷回数と、内外輪間の相対変位との関係を調べた実験結果の他の例を示す図である。 一定のラジアル荷重の下で、総負荷回数と、内外輪間の相対変位との関係を調べた実験結果のさらに他の例を示す図である。 転がり軸受に異常が生じたものと判定するためのしきい値を設定する処理の手順を説明するフローチャートである。 判定部により実行される転がり軸受の異常判定処理の手順を説明するフローチャートである。 この実施の形態に従う転がり軸受の状態監視装置が適用される風力発電装置の構成を概略的に示した図である。 玉軸受について、一定のラジアル荷重の下で、複数の転動体から内輪が受ける総負荷回数と、内外輪間の相対変位との関係を調べた実験結果を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、同一又は対応する要素には同一の符号を付して、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
(転がり軸受及び状態監視装置の構成)
図1は、この発明の実施の形態による状態監視装置によって監視される転がり軸受の断面図と、状態監視装置のブロック図とを併せて示した図である。なお、この実施の形態では、外輪が回転輪のころ軸受によって転がり軸受が構成される場合について代表的に説明されるが、この発明の適用範囲は、このような軸受の状態監視装置に限定されるものではなく、監視対象の転がり軸受は、内輪が回転輪のものであってもよいし、玉軸受等であってもよい。
図1を参照して、転がり軸受10は、内輪12と、外輪16と、複数の転動体18とを含む。内輪12は、非回転の軸体14に外嵌される。外輪16は、内輪12の外周側に設けられ、図示しない回転体と一体的に回転する。複数の転動体18の各々は、円柱形の「ころ」であり、図示されない保持器によって隣接の転動体と等間隔に保持されつつ内輪12と外輪16との間に介在する。
内輪12は、複数の転動体18のうち負荷域を通過中のものからラジアル荷重を受ける。なお、この実施の形態では、静止輪である内輪12において、その中心軸よりも鉛直方向上側に負荷域が形成される。そして、内輪12は、軌道面(内輪12の外周面)に損傷が発生していない正常状態においては、複数の転動体18のうち、内輪中心軸の鉛直上方向に位置する負荷域中央を通過している転動体から最大の荷重を受ける。
転がり軸受10の状態を監視する状態監視装置100は、変位センサ102と、回転センサ104と、判定部106とを含む。変位センサ102は、内輪12と外輪16とのラジアル方向の相対変位δを検出するためのセンサである。変位センサ102は、軸体14又は軸体14に対して変位しない堅牢な構造物に固設され、内輪12(静止輪)に対する外輪16(回転輪)の鉛直方向Xの変位を検出して判定部106へ出力する。回転センサ104は、転がり軸受10の回転速度dNを検出し、その検出値を判定部106へ出力する。なお、回転センサ104が転がり軸受10の回転位置を検出し、その検出値に基づいて判定部106が回転速度dNを算出してもよい。
判定部106は、変位センサ102及び回転センサ104の各検出値に基づいて、転がり軸受10に異常が生じたか否かを判定する。具体的には、判定部106は、変位センサ102の検出値に基づいて、内輪12と外輪16との間のラジアル方向の最大変位δx(図1におけるX方向の変位)を検出する。なお、変位センサ102によって検出される内外輪間の相対変位δは、複数の転動体18の公転に伴なって微小変動を繰り返すところ、ここでの最大変位δxとは、短期的(たとえば、外輪16の1回転又は複数の転動体18の1公転等)な相対変位δの最大値である。以下では、この最大変位δxを、単に「内外輪間の相対変位δx」と称する。
また、判定部106は、回転センサ104の検出値に基づいて、内輪12(静止輪)が複数の転動体18から受ける総負荷回数を算出する。総負荷回数とは、内輪12の軌道面における周方向の任意の箇所(たとえば負荷域中央)において、複数の転動体18の各々が通過する毎に軌道面が受ける負荷回数の、転がり軸受10の使用が開始されてからの総数である。総負荷回数は、言い換えれば、内輪12に対する複数の転動体18の総通過回数であり、総負荷回数TLは、転がり軸受10の総回転回数TR(転がり軸受10の使用が開始されてからの外輪16(回転輪)の回転回数の総数を示す。)に基づいて、次式にて算出することができる。
TL=TR×Nc/dN×転動体数 …(1)
ここで、Ncは、転動体中心の公転回転速度を示し、転動体18の直径及びピッチ円径が分かればdNから算出可能である。
そして、判定部106は、変位センサ102によって検出される内外輪間の相対変位δxが予め設定されたしきい値を超えると、転がり軸受10に異常が生じたものと判定する。ここで、しきい値は、転がり軸受10の負荷域中央を通過中の転動体18が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体18が荷重を受けているとした場合の相対変位δx(以下「基準変位」とも称する。)に基づいて設定される。これにより、転がり軸受10の損傷状況を把握して軸受交換時期を適切に判定することが可能となる。以下、このようにしきい値を設定する考え方について詳しく説明する。
本願発明者らは、転がり軸受の損傷の進展について種々の検討及び実験を行なった結果、複数の転動体18から内輪12(静止輪)が受ける総負荷回数(複数の転動体18の総通過回数に相当し、軸受の総回転回数に比例する。)の増加に応じて内外輪間の相対変位δxが段階的に増大し、ある段階から相対変位δxが軸受支持部品に影響を与え得るほど急激に増大することの知見を得た。そこで以下では、まず、総負荷回数の増加に応じて相対変位δxが段階的に増大する理由、及び、ある段階から相対変位δxが急激に増大する理由について説明する。その後、相対変位δxの段階的な増大パターンと、転がり軸受10に異常が生じたものと判定するための上記しきい値との関係について説明することとする。
(相対変位δxが段階的に増大することの説明)
図2から図4は、転がり軸受10において、負荷域中央に発生した損傷が進展する様子を示した図である。なお、これらの図では、転がり軸受10の負荷域中央付近が拡大して示されている。
図2は、負荷域中央に初期損傷が発生した直後の状態を示した図である。初期損傷とは、内輪12(静止輪)の軌道面に最初に生じる損傷のことである。この初期損傷は、転動体18と内輪12(静止輪)の軌道面との接触面圧が最大となる負荷域中央において発生する確率が高く、図2から図4でも、負荷域中央において初期損傷が発生した場合について示されている。
図2を参照して、転動体18と内輪12の軌道面との接触面圧が最大となる負荷域中央において、内輪12の軌道面に初期損傷(D1−1)が発生している。以下では、負荷域中央に初期損傷が発生する以前の状態を「ステージ0」と称し、負荷域中央に初期損傷が発生した状態(図2)を「ステージ1」と称する。
図3は、負荷域中央に発生した初期損傷が軌道面の幅方向全域に拡大した状態を示した図である。図3を参照して、初期損傷が発生した負荷域中央において、損傷(D1−2)が軌道面の周方向に拡大しつつ幅方向全域に拡大すると、負荷域中央を通過中の転動体18は、荷重をほとんど受けない状態(或いは、隣接する転動体に比べて接触面圧が十分に小さい状態であり、以下では、概略的に「無負荷」状態とも称する。)となる。以下では、負荷域中央において初期損傷部が軌道面幅方向全域に拡大することにより(図3)、負荷域中央を通過中の転動体18が「無負荷」となる状態を「ステージ2」と称する。
図4は、負荷域中央に発生した損傷が軌道面の周方向にさらに拡大した状態を示した図である。図4を参照して、負荷域中央において軌道面の幅方向全域に拡大した損傷は、さらに軌道面の周方向(主に転動体18の移動下流方向)へと拡大する(D1−3)。そして、軌道面の周方向への損傷が進展すると、隣接する2つの転動体18が損傷部に同時に入り込む状況が発生する。以下では、軌道面の周方向へ損傷が進展し、複数の転動体18が損傷部に同時に入り込むことにより複数の転動体18が「無負荷」となる状態を「ステージ3」と称する。
以上のような損傷の進展により、内外輪間の相対変位δxは段階的に増大する。すなわち、負荷域中央において初期損傷が発生してから、その初期損傷が拡大して負荷域中央を通過中の転動体18が「無負荷」状態になるまで、初期損傷の拡大に伴なって相対変位δxは増大する(ステージ1)。
負荷域中央を通過中の転動体18が「無負荷」となる状態(ステージ2)では、内外輪間の相対変位δxは、初期損傷が生じていることによりステージ0に比べて大きい。しかしながら、隣接する2つの転動体18が損傷部に同時に入り込むまでに損傷が軌道面周方向に拡大するまでは、相対変位δxは、ステージ0と同様に総負荷回数の増加に応じて増大傾向を示さない。
そして、隣接する2つの転動体18が損傷部に同時に入り込むまでに損傷が軌道面周方向に拡大し、複数の転動体18が同時に「無負荷」となる状態が発生すると(ステージ3)、荷重を受ける転動体数が減少することにより内外輪間の相対変位δxはさらに増大する。
さらに、複数の転動体18が同時に「無負荷」状態になると(ステージ3)、内外輪間の相対変位δxは急激に増大する。この理由は、以下のとおりと考えられる。すなわち、同時に「無負荷」状態となる転動体18が発生すると、荷重を受ける転動体数がさらに減少することによって各転動体18が受ける荷重が増大し、その結果、損傷の進展速度が上昇する。これにより、内外輪間の相対変位δxが急激に増大する。
なお、複数の転動体18が同時に「無負荷」となる状態は、隣接する2つの転動体18が損傷部に同時に入り込むまでに損傷が軌道面周方向に拡大する場合に限られず、以下のような場合にも生じ得る。
図5は、初期損傷部から離れた位置に新たなフレーキングが発生した様子を示した図である。図5を参照して、初期損傷の発生後、初期損傷部(D1)から離れた位置に、損傷の剥離片の噛み込みにより軌道面に生じた圧痕が起点となって新たなフレーキングが発生し得る(D2)。そして、この新たなフレーキングによる損傷が軌道面幅方向に拡大すると、新たなフレーキングに起因する損傷部と初期損傷部とに複数の転動体18が同時に進入する状況が発生し得る。この場合にも、荷重を受ける転動体数が複数減少することによって各転動体18が受ける荷重が増大し、その結果、損傷の進展速度が上昇する。
なお、各転動体18が受ける荷重の増大は、転動体18が損傷部に進入する際に、静止輪(内輪12)に対して回転輪(外輪16)が変動することによる慣性力も増大させるので、この点からも損傷の進展速度の上昇に寄与する。以上のような理由により、複数の転動体18が同時に「無負荷」となる状態になると(ステージ3)、内外輪間の相対変位δxは急激に増大する。
なお、ステージ3においても、理論的には、2つの転動体18が「無負荷」状態となってから、さらに損傷が拡大することにより、又は新たなフレーキングが発生することにより、3つめの転動体18が「無負荷」状態となるまで、総負荷回数の増加に応じて相対変位δxが増大傾向を示さない状態が発生し得る。しかしながら、このような状態になると、多数の無負荷の転動体18が発生することによってその他の転動体18が受ける荷重が相当増大し、かつ、複数の転動体18が損傷部を同時に通過するときに生じる慣性力も相当なものとなり、損傷が連鎖的かつ加速的に進展する。その結果、転動体18が損傷部を通過する際に同時に無負荷となる転動体数が加速的に増加し、内外輪間の相対変位δxも加速的に増大することとなる。
図6は、無負荷の転動体数と内外輪間の相対変位δxとの関係を示した図である。なお、ラジアル荷重は一定としている。図6を参照して、横軸は、損傷が進展することによって転動体18が損傷部を通過時に同時に「無負荷」状態となる転動体の数を示す。縦軸は、内外輪間の相対変位δxを示す。
図示されるように、無負荷の転動体数が増加するに従って、内外輪間の相対変位δxは加速的に増大する。そして、上述のように、同時に「無負荷」状態となる転動体数が複数になると、損傷の進展速度が上昇することによって「無負荷」状態となる転動体数が加速的に増加し、その結果、相対変位δxは加速的に増大する。すなわち、ステージ3における相対変位δxの増大速度は非常に速い。
そこで、この実施の形態に従う状態監視装置では、転がり軸受10の損傷が、ステージ3に達する前のステージ2にあるときの相対変位δx、すなわち、転がり軸受10の負荷域中央を通過中の転動体18が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体18が荷重を受けているとした場合の相対変位δx(以下、基準変位δ(STG2)と称する。)に基づいて、転がり軸受10の異常を判定するためのしきい値を設定することとしたものである。
(異常判定しきい値の設定方法)
図7は、一定のラジアル荷重の下で、複数の転動体18から内輪12が受ける総負荷回数と、内外輪間の相対変位δxとの関係を調べた実験結果の一例を示す図である。この図7は、負荷域中央に発生した初期損傷が徐々に拡大して、複数の転動体18が同時に損傷部を通過できる状態、すなわち、複数の転動体18が同時に「無負荷」状態となる場合の実験結果を示したものである。なお、実験条件としては、転がり軸受10は、内径120mm、外径215mm、幅40m、動定格荷重260kNの単列円筒ころ軸受とし、この転がり軸受10に対して、ラジアル荷重90kN、回転速度500回/分を付与した。
図7を参照して、この図では、軸受の負荷域中央に初期損傷が発生してからの総負荷回数と相対変位δxとの関係が示されており、初期損傷が発生する以前のデータは省略されている。すなわち、総負荷回数がN10に達するまでは、転がり軸受10に損傷は生じておらず、内外輪間の相対変位δxも十分に小さい。また、相対変位δxは、総負荷回数の増加に応じて増大傾向を示さない(ステージ0、図示せず)。
総負荷回数がN10に達した時点で、内輪12(静止輪)の軌道面において、それまで転動体18との最大接触面圧が最大であった負荷域中央にてフレーキングによる初期損傷が発生し、総負荷回数の増大に応じて相対変位δxが増大し始める(ステージ1(STG1)へ移行)。
その後、総負荷回数がN11を経過すると、相対変位δxが総負荷回数の増加に応じて増大傾向を示さなくなる(ステージ2(STG2)へ移行)。このステージ2の状態は、相対変位δxについては安定的であり、ステージ2の状態はしばらく継続する。
ステージ2の状態がしばらく続いた後、総負荷回数がN12に達する頃に、負荷域中央から軌道面周方向に拡大した損傷の一部が、負荷域中央から転動体18のピッチだけ離れた位置に到達する。その後、負荷域中央から転動体18のピッチだけ離れた位置において損傷が軌道面幅方向全域に拡大すると、隣接する2つの転動体18が同時に「無負荷」状態となり、総負荷回数の増大に応じて相対変位δxが急激に増大し始める(ステージ3(STG3)へ移行)。
このように、損傷の段階がステージ3に移行すると、内外輪間の相対変位δxが急激に増大し、転がり軸受10が支持している部品に影響を与えてしまう。そこで、この実施の形態に従う状態監視装置100では、転がり軸受10の損傷がステージ2にあるときの相対変位δxを示す基準変位δ(STG2)に基づいて、転がり軸受10に異常が生じたものと判定するためのしきい値δth1が設定される。
このしきい値δth1は、転がり軸受10を交換すべきものと判定するためのしきい値である。しきい値δth1は、基準変位δ(STG2)よりも大きい値に設定され、たとえば、基準変位δ(STG2)の2倍の値や、基準変位δ(STG2)よりも所定量大きい値などに設定され得る。
なお、転がり軸受10に異常が生じたものと判定するしきい値として、この実施の形態に従う状態監視装置100では、基準変位δ(STG2)に基づいて、軌道面の負荷域中央に初期損傷が生じたものと判定するためのしきい値δth2も設定される。しきい値δth2は、基準変位δ(STG2)よりも小さい値に設定され、たとえば、基準変位δ(STG2)に対して10%〜50%の値に設定し得る。
図8は、一定のラジアル荷重の下で、複数の転動体18から内輪12が受ける総負荷回数と、内外輪間の相対変位δxとの関係を調べた実験結果の他の例を示す図である。この図8は、初期損傷部から離れた位置に、損傷の剥離片の噛み込みにより軌道面に生じた圧痕が起点となって新たなフレーキングが発生し、その新たなフレーキングに起因する損傷部と初期損傷部とに複数の転動体18が同時に進入する状態となる場合の実験結果を示したものである。なお、実験条件は、図7に示した実験時の条件と同じである。
図8を参照して、ステージ2(STG2)へ至るまでの状況は、図7に示した結果と同じである。ステージ2の状態がしばらく続いた後、総負荷回数がN22に達する頃に、初期損傷部から離れた位置に、損傷の剥離片の噛み込みにより軌道面に生じた圧痕が起点となって新たなフレーキングが発生し、相対変位δxが増加し始める。その後、この新たなフレーキングによる損傷が軌道面周方向に拡大しつつ幅方向全域に拡大すると、隣接する2つの転動体が同時に「無負荷」状態となり、総負荷回数の増大に応じて相対変位δxが急激に増大し始める(ステージ3(STG3)へ移行)。
なお、損傷がステージ2にあるときの相対変位δxを示す基準変位δ(STG2)、並びに基準変位δ(STG2)に基づいて設定されるしきい値δth1,δth2については、図7で説明したとおりである。
図9は、一定のラジアル荷重の下で、複数の転動体18から内輪12が受ける総負荷回数と、内外輪間の相対変位δxとの関係を調べた実験結果のさらに他の例を示す図である。この図9では、初期損傷部から離れた位置に、損傷の剥離片の噛み込みにより軌道面に生じた圧痕が起点となって新たなフレーキングが発生したものの、そのフレーキングに起因する損傷はそれ程拡大せず、負荷域中央に発生した初期損傷が軌道面周方向に拡大することによって複数の転動体18が同時に「無負荷」状態となった場合の結果が示される。なお、実験条件は、図7に示した実験時の条件と同じである。
図9を参照して、ステージ2(STG2)へ至るまでの状況は、図7に示した結果と同じである。ステージ2の状態がしばらく続いた後、総負荷回数がN32に達する頃に、初期損傷部から離れた位置に、損傷の剥離片の噛み込みにより軌道面に生じた圧痕が起点となって新たなフレーキングが発生し、相対変位δxが増加し始める。しかしながら、このフレーキングに起因する損傷はそれ程拡大せず、相対変位δxの上昇は一旦落ち着き始めている。
その後、総負荷回数がN33に達する頃に、負荷域中央から軌道面周方向に拡大した損傷が負荷域中央から転動体18のピッチだけ離れた位置に到達し、隣接する2つの転動体18が同時に「無負荷」状態となることによって、総負荷回数の増大に応じて相対変位δxが急激に増大し始める(ステージ3(STG3)へ移行)。
このように、総負荷回数の増大に応じて相対変位δxが増大するパターンは、図7から図9に示したようにいくつか存在するが、いずれのケースも、相対変位δxについて安定的なステージ2が存在し、ステージ2の状態がしばらく続いた後、総負荷回数の増大に応じて相対変位δxが急激に増大するステージ3へと移行する。そして、この実施の形態に従う状態監視装置100では、相対変位δxについて安定的なステージ2のときの相対変位δxを示す基準変位δ(STG2)に基づいて、転がり軸受10に異常が生じたものと判定するためのしきい値δth1,δth2を設定することとしたものである。
図10は、転がり軸受10に異常が生じたものと判定するためのしきい値を設定する処理の手順を説明するフローチャートである。なお、この処理は、監視対象の転がり軸受10のスペック及び運転条件に基づいて事前に実行され、判定部106が行なってもよいし、オフラインで他の計算機上で行なってもよい。以下では、判定部106によって当該処理が実行されるものとして説明する。
図10を参照して、判定部106に、監視対象の転がり軸受10の諸元データ及び運転条件に関するデータが入力される(ステップS10)。なお、判定部106へのデータ入力は、図示されない入力装置を介して行ない得る。入力装置は、たとえば、外部から送信されてくる上記データを受信して判定部106へ与える通信装置や、Webインターフェースを用いた入力手段等であり得る。
次いで、判定部106は、ステップS10において入力されたデータに基づいて、負荷域中央を通過中の転動体18が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体18が荷重を受けているとした場合(ステージ2に相当)の相対変位δxを示す基準変位δ(STG2)を算出する(ステップS20)。このような相対変位δx(基準変位δ(STG2))は、たとえば、転動体18と軌道面との接触部のみを弾性接触とし、軌道輪及び転動体18を剛体として、所謂ヘルツの接触理論を用いて算出することができる。
そして、判定部106は、ステップS20において算出された基準変位δ(STG2)(ステージ2における相対変位δx)に基づいて、転がり軸受10を交換すべきものと判定するためのしきい値δth1を設定する(ステップS30)。具体的には、判定部106は、しきい値δth1を基準変位δ(STG2)よりも大きい値に設定し、たとえば、基準変位δ(STG2)の2倍の値や、基準変位δ(STG2)よりも所定量大きい値に設定し得る。
さらに、判定部106は、ステップS20において算出された基準変位δ(STG2)に基づいて、軌道面の負荷域中央に初期損傷が生じたものと判定するためのしきい値δth2を設定する(ステップS40)。具体的には、判定部106は、しきい値δth2を基準変位δ(STG2)よりも小さい値に設定し、たとえば、基準変位δ(STG2)に対して10%〜50%の値にしきい値δth2を設定する。
なお、上記では、基準変位δ(STG2)は、ヘルツの接触理論を用いて算出するものとしているが、これ以外の手法によって基準変位δ(STG2)を算出してもよい。たとえば、有限要素法(FEM)を用いて全ての部分を弾性体や弾塑性体とする方法によって基準変位δ(STG2)を算出してもよいし、動力学解析によって動的な影響を考慮した方法によって基準変位δ(STG2)を算出してもよい。なお、動力学解析とは、転がり軸受10の構成要素(内輪12、外輪16及び転動体18)毎に運動方程式を立て、連立常微分方程式を時間軸に沿って成分していく手法である。或いは、理論モード解析を用いて軸受全体のモード情報を求め、当該モード情報を動力学解析に導入して振動特性を考慮することによって、基準変位δ(STG2)を算出してもよい。理論モード解析とは、構造体(弾性体)がどのような振動モード(固有値情報)を有しているかを数理的に求めるものである。
(転がり軸受10の異常判定処理)
図11は、判定部106により実行される転がり軸受10の異常判定処理の手順を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、所定時間毎又は所定条件の成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。
図11を参照して、判定部106は、変位センサ102(図1)の検出値に基づいて、転がり軸受10の内外輪間の相対変位δxを測定する(ステップS110)。なお、相対変位δxは、ラジアル荷重の影響を受けるので、相対変位δxは、ラジアル荷重が一定範囲内(複数のレベルに層別してもよい。)にあるときに測定される。そして、以下に示される処理は、一定範囲内(或いは、ラジアル荷重が複数のレベルに層別されている場合には層毎)のラジアル荷重に対して実行される。
次いで、判定部106は、ステップS110において測定された相対変位δxが、初期損傷検出用のしきい値δth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS120)。そして、相対変位δxがしきい値δth2よりも大きいと判定されると(ステップS120においてYES)、判定部106は、負荷域中央において初期損傷が発生したことを報知する(ステップS130)。或いは、判定部106は、損傷の段階がステージ1であることを報知してもよい。
ステップS120において、相対変位δxがしきい値δth2以下であると判定されると(ステップS120においてNO)、判定部106は、ステップS140へ処理を移行する。
続いて、判定部106は、測定された相対変位δxが、軸受交換判定用のしきい値δth1よりも大きいか否かを判定する(ステップS140)。そして、相対変位δxがしきい値δth1よりも大きいと判定されると(ステップS140においてYES)、判定部106は、転がり軸受10を交換すべき旨を報知する(ステップS150)。或いは、判定部106は、損傷の段階がステージ3であることを報知してもよい。
ステップS140において、相対変位δxがしきい値δth1以下であると判定されると(ステップS140においてNO)、判定部106は、ステップS160へ処理を移行する。
このように、ステージ2における相対変位δxに相当する基準変位δ(STG2)に基づいてしきい値δth1,δth2が設定され、しきい値δth1,δth2に基づいて転がり軸受10の異常を適切なタイミングで判定することができる。
上述した転がり軸受の状態監視装置100は、様々な機械装置に適用可能であるが、特に、風力発電装置の主軸軸受の状態監視に好適である。すなわち、風力発電装置の主軸軸受は、交換が容易ではなく、かつ、比較的低速条件で使用され、さらに、軸受に損傷が発生しても継続使用されることが多い。このような風力発電装置の主軸軸受については、損傷による軸受交換時期の明確化が課題である。また、風力発電装置においては、主軸軸受の損傷による内外輪間の相対変位の増大は、主軸に連結される増速機の歯車の噛み合い不良を生じ得る。
本実施の形態に従う状態監視装置100は、内外輪間の相対変位δxに基づいて軸受の状態を監視し、軸受の損傷がステージ2にあるときの相対変位δx(基準変位δ(STG2))に基づいて、軸受の異常を判定するためのしきい値が設定される。これにより、軸受の損傷状況を把握して軸受交換時期を適切に判定することができる。
(風力発電装置の構成)
図12は、この実施の形態に従う転がり軸受の状態監視装置100が適用される風力発電装置の構成を概略的に示した図である。図12を参照して、風力発電装置210は、主軸220と、ブレード230と、増速機240と、発電機250と、主軸軸受(以下、単に「軸受」と称する。)260と、変位センサ270と、データ処理装置280とを備える。増速機240、発電機250、軸受260、変位センサ270及びデータ処理装置280は、ナセル290に格納され、ナセル290は、タワー300によって支持される。
主軸220は、ナセル290内に進入して増速機240の入力軸に接続され、軸受260によって回転自在に支持される。そして、主軸220は、風力を受けたブレード230により発生する回転トルクを増速機240の入力軸へ伝達する。ブレード230は、主軸220の先端に設けられ、風力を回転トルクに変換して主軸220に伝達する。
増速機240は、主軸220と発電機250との間に設けられ、主軸220の回転速度を増速して発電機250へ出力する。一例として、増速機240は、遊星ギヤや中間軸、高速軸等を含む歯車増速機構によって構成される。なお、特に図示しないが、この増速機240内にも、複数の軸を回転自在に支持する複数の軸受が設けられている。発電機250は、増速機240の出力軸に接続され、増速機240から受ける回転トルクによって発電する。発電機250は、たとえば誘導発電機によって構成されるが、発電機250の種類はこれに限定されるものではない。なお、この発電機250内にも、ロータを回転自在に支持する軸受が設けられている。
軸受260は、ナセル290内において固設され、主軸220を回転自在に支持する。軸受260は、転がり軸受であり、この実施の形態に従う状態監視装置100の監視対象となる軸受である。なお、この軸受260は、内輪が回転輪であり、外輪が静止輪である点で、図1以下に説明した転がり軸受10と異なるが、上記の実施の形態に従う状態監視装置100は、このような軸受260にも適用可能である。なお、外輪が静止輪の場合、負荷域は、外輪においてその中心軸よりも鉛直方向下側に形成され、初期損傷は、外輪内周面の軌道面に生じる。
変位センサ270は、軸受260の内外輪間の相対変位δxを検出するためのセンサである。変位センサ270は、たとえば軸受260のハウジングに固設され、外輪(静止輪)に対する内輪(回転輪)の鉛直方向の変位δを検出してデータ処理装置280へ出力する。
データ処理装置280は、ナセル290内に設けられ、変位センサ270から検出値を受ける。そして、データ処理装置280は、予め設定されたプログラムに従って、軸受260の状態を監視する。具体的には、データ処理装置280は、変位センサ270から検出値に基づいて、軸受260の内外輪間の相対変位δxを検出する。そして、データ処理装置280は、軸受260について、変位センサ270によって検出される内外輪間の相対変位δxが予め設定されたしきい値(δth1,δth2)を超えると、軸受260に異常が生じたものと判定する。ここで、しきい値(δth1,δth2)は、軸受260の負荷域の中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けているとした場合の相対変位δx(基準変位δ(STG2))に基づいて設定される。
なお、このデータ処理装置280は、上述した判定部106(図1)の機能を実現するものである。また、データ処理装置280、変位センサ270、及び主軸260の回転速度を検出する回転センサ(図示せず)は、上述の状態監視装置100(図1)を構成するものである。
以上のように、この実施の形態においては、負荷域中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けているとした場合の相対変位δx(基準変位δ(STG2))に基づいて、軸受に異常が生じたものと判定するしきい値(δth1,δth2)が設定される。これにより、軸受の損傷状況を把握して軸受交換時期を適切に判定することができる。
なお、上記の実施の形態においては、転がり軸受10はころ軸受としたが、この発明は、玉軸受についても同様に適用可能である。
図13は、玉軸受について、一定のラジアル荷重の下で、複数の転動体から内輪が受ける総負荷回数と、内外輪間の相対変位δxとの関係を調べた実験結果を示す図である。実験条件として、転がり軸受は、内径120mm、外径215mm、幅40m、動定格荷重155kNの深溝玉軸受とし、この転がり軸受に対して、ラジアル荷重90kN、回転速度500回/分を付与した。
図13を参照して、この図でも、軸受の負荷域中央に初期損傷が発生してからの総負荷回数と相対変位δxとの関係が示されており、初期損傷が発生する以前のデータは省略されている。
図示されるように、玉軸受の場合も、ころ軸受と同様に、総負荷回数の増大に応じて相対変位δxが段階的に増大する。そして、このような相対変位δxの増大パターンに基づいて、玉軸受の損傷がステージ2にあるときの相対変位δx、すなわち、玉軸受の負荷域の中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けているとした場合の相対変位δx(基準変位δ(STG2))に基づいて、玉軸受の異常を判定するためのしきい値を設定することができる。
また、上記の実施の形態においては、内外輪間の相対変位δxは、変位センサ102(70)によって測定するものとしたが、転がり軸受10(軸受260)の加速度、速度、軸受から生じる音、及び軸受に生じる応力のうちの少なくとも1つの測定値と、相対変位δxとの予め準備された関係を用いて、上記の測定値に基づいて相対変位δxを間接的に検出してもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 転がり軸受、12 内輪、14 軸体、16 外輪、18 転動体、100 状態監視装置、102,270 変位センサ、104 回転センサ、106 判定部、210 風力発電装置、220 主軸、230 ブレード、240 増速機、250 発電機、260 主軸軸受、280 データ処理装置、290 ナセル、300 タワー。

Claims (6)

  1. ラジアル荷重を受けて使用される転がり軸受の状態監視装置であって、
    前記転がり軸受の内外輪間のラジアル方向の相対変位を検出するための変位検出部と、
    前記変位検出部によって検出される相対変位が予め設定されたしきい値を超えると、前記転がり軸受に異常が生じたものと判定する判定部とを備え、
    前記しきい値は、前記転がり軸受の負荷域の中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、前記負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けているとした場合の前記相対変位を示す基準変位に基づいて設定される、転がり軸受の状態監視装置。
  2. 前記しきい値は、前記基準変位よりも大きい第1のしきい値を含み、
    前記判定部は、前記変位検出部によって検出される相対変位が前記第1のしきい値を超えると、前記転がり軸受を交換すべきものと判定する、請求項1に記載の転がり軸受の状態監視装置。
  3. 前記第1のしきい値は、前記基準変位と、前記負荷域の中央を通過中の転動体に隣接する転動体のいずれか一方がさらに荷重を受けないとした場合の前記相対変位との間の値に設定される、請求項2に記載の転がり軸受の状態監視装置。
  4. 前記しきい値は、前記基準変位よりも小さい非零の第2のしきい値を含み、
    前記判定部は、前記変位検出部によって検出される相対変位が前記第2のしきい値を超えると、前記転がり軸受の静止輪の軌道面において、前記負荷域の中央に損傷が生じたものと判定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受の状態監視装置。
  5. ラジアル荷重を受けて使用される転がり軸受の異常を判定する異常判定しきい値の設定方法であって、
    前記転がり軸受の負荷域の中央を通過中の転動体が荷重を受けず、かつ、前記負荷域を通過中の残余の転動体が荷重を受けているとした場合の、前記転がり軸受の内外輪間のラジアル方向の相対変位を示す基準変位を算出するステップと、
    前記基準変位に基づいて前記異常判定しきい値を設定するステップとを含む、転がり軸受の異常判定しきい値の設定方法。
  6. 前記異常判定しきい値は、前記基準変位よりも大きく、前記相対変位が前記異常判定しきい値を超える場合に前記転がり軸受を交換すべきものと判定するためのしきい値である、請求項5に記載の転がり軸受の異常判定しきい値の設定方法。
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