JP2017016110A - エレクトロクロミック素子及びその駆動方法、並びに光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置及び窓材 - Google Patents

エレクトロクロミック素子及びその駆動方法、並びに光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置及び窓材 Download PDF

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Abstract

【課題】発生し得る電荷のインバランスを補正することができ、色残りが抑制されたエレクトロクロミック素子を提供する。【解決手段】第一の電極1と、第二の電極2と、第三の電極3と、を有し、第一の電極1と第二の電極2との少なくともいずれか一方が透明であり、第一の電極1と第二の電極2との間に、電解質4と、アノード性の有機エレクトロクロミック化合物又はアノード性の有機エレクトロクロミック化合物と、を有し、第三の電極3が、電解質4を介して第一の電極1と第二の電極2との少なくともいずれか一方と電気的に接続可能であり、第三の電極3が、酸化還元物質を有することを特徴とする。尚、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体が、前記アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の還元体よりも酸化されやすい。また第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体が、前記アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の還元体よりも酸化されやすい。【選択図】図2

Description

本発明は、エレクトロクロミック素子およびその駆動方法、並びにこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置および窓材に関する。
電気化学的な酸化還元反応により、物質の光学吸収の性質(吸収波長、吸光度)が変化するエレクトロクロミック(以降、「EC」と略する場合がある)材料を利用したEC素子は、表示装置、可変反射率ミラー、可変透過窓等に応用されている。EC材料の中でも、有機エレクトロクロミック化合物は、吸収波長を設計して変化させることが可能であり、高い着消色のコントラストを実現可能なため、積極的な開発が行われている。
このようなEC素子において、時間の経過に伴う光学特性の変化抑制は、最も大きな課題の一つである。特許文献1には、EC材料が電解質に溶解した相補型のEC素子において、非EC性の、アノード性のEC材料よりも酸化されやすい材料及びカソード性のEC材料よりも還元されやすい材料を用いることが開示されている。尚、これらの材料を以降「レドックスバッファー」と呼ぶことにする。
特許文献1のEC素子においては、着色体であるアノード性のEC材料の酸化体、カソード性EC材料の還元体よりも、それぞれレドックスバッファーの酸化体又は還元体が安定である。そのため、消色動作時に、電荷のインバランスが発生した場合においても、レドックスバッファーの電荷量でカバーできる範囲においては、EC材料の着色体が残存するより、それぞれ対応するレドックスバッファーの酸化体又は還元体が生成する。そして、このレドックスバッファーは、非EC性であるために、これらの酸化体又は還元体が生成しても、その酸化還元反応は光の透過率に影響を及ぼさない。言い換えれば、このレドックスバッファーは、EC素子の電荷のインバランスが消色不良に直結しないように、非変動色の電荷のバランス領域を付与している。
米国特許第6188505号明細書
しかし、特許文献1において、レドックスバッファーは、アノード性のEC材料よりも酸化されやすい又はカソード性のEC材料よりも還元されやすいため、EC材料よりも電位的に反応しやすい。そのため、通常のEC素子の着色動作において、EC材料に先んじて(少なくとも同等以上に)反応する。その結果、レドックスバッファーを用いない場合と比較して、着色に寄与しない無駄な電流が流れ、消費電力が増大し、応答速度が低下するという課題があった。
また特許文献1の様に、レドックスバッファーを用いても、表示電極間における電荷のインバランスが解消されるわけではない。即ち、EC材料の着色体を減少させる(=代わりに着消色しないレドックスバッファーの酸化/還元体が生成する)だけで、表示電極間における電荷のバランスに影響を与えるわけではない。相補型のEC素子で電荷のインバランスが発生すると、アノード性のEC材料/カソード性のEC材料の着色体の比は変化することになる。具体的には、電荷インバランスによって残存している材料の反対極性の材料の着色の比が、電荷インバランスによって残存している材料の着色の比より小さくなることが起こる。例として挙げると、カソード性のEC材料の着色体が残存している電荷インバランスの状態からEC素子を着色した場合では、電荷インバランスが発生していない状態と比較して、アノード材料に起因する着色の比が、カソード材料に起因する着色の比より小さくなる。その結果、設計時に想定していた吸収スペクトルから、実際の吸収スペクトルが変化することになり、EC素子の吸収色の変色として現れるために好ましくない。特許文献1では、電荷インバランスにより消色動作時に、残存するアノード材料の酸化体、またはカソード材料の還元体の電荷をレドックスバッファーが引き受けることにより、アノード、カソードのうちの一方の極性の着色が残存することを抑制する。しかし表示電極間における電荷のインバランス自体を修正しているわけではないため、このアノード性EC材料/カソード性EC材料の着色体の比のシフトは修正されない。別の表現を用いると、表示電極間における電荷インバランスを生じても消色動作時に色が見えることを抑制するだけで、着色動作時には電荷インバランスによりアノード材料、カソード材料の比が、当初とは変化した着色状態が出現してしまうことになる。
本発明は、上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、発生し得る電荷のインバランスを補正することができ、消色時の消色不良(色残り)が抑制され、かつ着色動作時のスペクトルの再現性に優れたエレクトロクロミック素子を提供することにある。
本発明のエレクトロクロミック素子の第一の態様は、第一の電極と、第二の電極と、第三の電極と、を有し、前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方が透明であり、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック化合物と、カソード性の酸化還元物質と、を有するエレクトロクロミック素子であって、
前記第三の電極が、前記電解質を介して前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方と電気的に接続可能であり、
前記第三の電極が、さらに酸化還元物質を有し、
前記第三の電極が有する酸化還元物質の還元体が、前記アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の還元体よりも酸化されやすいことを特徴とする。
本発明のエレクトロクロミック素子の第二の態様は、第一の電極と、第二の電極と、第三の電極と、を有し、前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方が透明であり、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、カソード性の有機エレクトロクロミック化合物と、アノード性の酸化還元物質と、を有するエレクトロクロミック素子であって、
前記第三の電極が、前記電解質を介して前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方と電気的に接続可能であり、
前記第三の電極が、さらに酸化還元物質を有し、
前記第三の電極が有する酸化還元物質の酸化体が、前記カソード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化体よりも還元されやすいことを特徴とする。
本発明のエレクトロクロミック素子の第三の態様は、第一の電極と、第二の電極と、第三の電極と、を有し、前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方が透明であり、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック化合物と、を有するエレクトロクロミック素子であって、
前記第三の電極が、前記電解質を介して前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方と電気的に接続可能であり、
前記第三の電極が、酸化還元物質を有し、
前記第三の電極が有する酸化還元物質の還元体が、前記アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の還元体よりも酸化されやすく、
前記第三の電極が有する酸化還元物質の酸化体が、前記カソード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化体よりも還元されやすいことを特徴とする。
本発明によれば、発生し得る電荷のインバランスを補正することができ、消色時の消色不良(色残り)が抑制され、かつ着色動作時のスペクトルの再現性に優れたエレクトロクロミック素子を提供することができる。
電荷のバランス/インバランスの概念を説明する図である。 本発明のEC素子における実施形態の例を示す断面模式図である。 本発明のEC素子の上面模式図である。 本発明のEC素子の制御回路の例を示す模式図である。 (a)は、本発明に該当しないEC素子の吸収スペクトルを示す図であり、(b)は、本発明のEC素子の吸収スペクトルを示す図である。 本発明の撮像装置における実施形態の例を示す模式図である。 本発明の窓材における実施形態の例を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のX−X’断面図である。 実施例1で作製したEC素子を示す模式図である。 実施例2で作製したEC素子を示す模式図である。 実施例3で作製したEC素子を示す模式図である。
本発明のエレクトロクロミック素子(EC素子)は、第一の電極と、第二の電極と、第三の電極と、を有している。本発明において、第一の電極と第二の電極との少なくともいずれか一方が透明である。本発明において、第一の電極と第二の電極との間には、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック化合物又はカソード性の有機エレクトロクロミック化合物と、を有している。尚、本発明において、第一の電極と第二の電極との間には、少なくとも二種類の酸化還元物質(有機エレクトロクロミック化合物を含む。)を有している。ここで、第一の電極と第二の電極との間に含まれる二種類の酸化還元物質とは、具体的には、下記(i)乃至(iii)に示される組み合わせのいずれかである。
(i)アノード性の有機エレクトロクロミック化合物とカソード性の酸化還元物質
(ii)カソード性の有機エレクトロクロミック化合物とアノード性の酸化還元物質
(iii)アノード性の有機エレクトロクロミック化合物とカソード性の有機エレクトロクロミック化合物
本発明において、第三の電極は、電解質を介して第一の電極と第二の電極との少なくともいずれか一方と電気的に接続可能である。本発明において、第三の電極は、酸化還元物質を有している。第一の電極と第二の電極との間にアノード性の有機エレクトロクロミック化合物(EC材料)が含まれる場合、第三の電極が有する酸化還元物質の還元体は、当該アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の還元体よりも酸化されやすい。一方、第一の電極と第二の電極との間にカソード性の有機エレクトロクロミック化合物(EC材料)が含まれる場合、第三の電極が有する酸化還元物質の酸化体は、カソード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化体よりも還元されやすい。
本発明では、アノード性の酸化還元物質とカソード性の酸化還元物質とを使用し、これら酸化還元物質のうちの少なくとも一つがEC材料である相補型と呼ばれるEC素子の電荷のインバランスによる着消色不良の改善を行う。尚、電荷のバランス/インバランスの概念については、後述する。
1.酸化還元物質
本発明において、酸化還元物質とは、所定の電位範囲において、繰り返し酸化還元反応を起こすことが可能な化合物である。酸化還元物質には、無機化合物も有機化合物も含まれるが、本発明においては特に制限なく両者を使用することができる。中でも用いられるEC材料の使用環境との適合性から、有機化合物の酸化還元物質が好ましく用いられる。
尚、以下の説明において、酸化還元物質については、例えば、「アノード性の酸化還元物質」、「カソード性の酸化還元物質」と記述する場合がある。ここでアノード性の酸化還元物質とは、通常、素子を駆動させていない状態では還元状態であるが、素子を駆動(特に着色)させた状態では酸化状態となる物質をいう。また、カソード性の酸化還元物質とは、通常、素子を駆動させていない状態では酸化状態であるが、素子を駆動(特に着色)させた状態では還元状態となる物質をいう。
2.有機エレクトロクロミック(EC)材料
本発明において、有機エレクトロクロミック(EC)材料とは、酸化還元物質の一種であり、酸化還元反応により、素子の対象とする光波長領域において光吸収特性が変化する物質である。尚、エレクトロクロミック材料には、有機化合物も無機化合物も含まれるが、以下の説明において、有機エレクトロクロミック材料を「EC材料」と呼ぶとする。また、ここでいう光吸収特性とは、代表的には、光吸収状態と光透過状態とであり、EC材料は、光吸収状態と光透過状態とが切り替わる材料である。
ところで、以下の説明において、EC材料については、「アノード性のEC材料」、「カソード性のEC材料」と記述する場合がある。ここでアノード性のEC材料とは、素子の対象とする光波長領域において、EC材料から電子が取り去られる酸化反応によって光透過状態から光吸収状態に変化する材料をいう。また、カソード性のEC材料とは、素子の対象とする光波長領域において、EC材料に電子が授与される還元反応によって光透過状態から光吸収状態に変化する材料をいう。
3.酸化体、還元体
酸化還元物質及びEC材料に対して用いられる用語である酸化体、還元体について以下に説明する。以下の説明において、酸化還元物質やEC材料の酸化体とは、対応する還元反応が可逆的に進行する場合において、電極における一電子以上の還元反応によって還元体へと還元されるものをいう。一方、酸化還元物質やEC材料の還元体とは、対応する酸化反応が可逆的に進行する場合において、電極における一電子以上の酸化反応によって、酸化体へと酸化されるものをいう。
尚、文献によっては、酸化還元物質及びEC材料の状態を示す表現として、酸化体から中性体を経て還元体(又はその逆)という表現もある。しかし、以下の説明においては、基本的には、酸化体を還元してときに生成されるのが還元体であり、還元体を酸化したときに生成されるのが酸化体という認識の下で、酸化体及び還元体という表現を採用する。例えば、二価の鉄を有するフェロセン(分子全体としては中性体)は、フェロセンがアノード性の酸化還元物質として機能する場合には、フェロセン(アノード性の酸化還元物質)の還元体である。この還元体が酸化されて鉄が三価の状態となったものはフェロセン(アノード性の酸化還元物質)の酸化体である。またビオロゲンのジカチオン塩がカソード性のEC材料として機能する場合には、当該ジカチオン塩はカソード性のEC材料の酸化体である。また当該ジカチオン塩が一電子還元されたモノカチオン塩はカソード性のEC材料の還元体である。
4.電解質
本発明において、電解質には、電解質そのものに限らず、電解質を溶媒に溶解させて調製した電解液の概念も含まれる。尚、本発明において、電解質には、塩化合物を溶媒に溶解させて得た溶液、イオン性液体、ゲル電解質、ポリマー電解質等も含まれる。
5.第三の電極が有する酸化還元物質
本発明のEC素子を構成する第三の電極は、酸化還元物質を有している。ここで、第三の電極が酸化還元物質を有するとは、酸化還元物質が直接又は間接的に第三の電極に固定化されていることを意味する。ここで、酸化還元物質が第三の電極に直接固定化されている場合、酸化還元物質は、他の物質を介さずに物理的又は化学的な要因により第三の電極に固定化されている状態になっている。一方、酸化還元物質が間接的に第三の電極に固定化されている場合、酸化還元物質は、例えば、膜状の物質を介して第三の電極に物理的又は化学的に固定化されている状態になっている。
いずれの場合においても、第三の電極に含まれる酸化還元物質は、第三の電極との間で電荷の授受が可能な状態であることが好ましい。本発明において、第三の電極は、電解質中に含まれるEC材料との間での電荷の授受を行うことができ、また外部回路に対して電荷の授受を行える電極である。
6.電荷のバランス/インバランス
以下、図面を参照しながら、電荷のバランス/インバランスの概念について説明する。図1は、電荷のバランス/インバランスの概念を説明する図である。尚、図1は、相補型EC素子が対象となっている。図1には、アノードである第一の電極1と、カソードである第二の電極2が示されている。また図1において、Aは、アノード性のEC材料の還元体(消色状態)であり、A+は、アノード性のEC材料の酸化体(着色状態)である。さらに図1において、Cは、カソード性のEC材料の酸化体(消色状態)であり、C-は、カソード性のEC材料の還元体(着色状態)である。
図1(a)は、EC素子の着色過程を示す図である。アノード(第一の電極1)とカソード(第二の電極2)との間に着色電圧を印加すると、第一の電極1では、下記(α)に示されるアノード性EC材料の酸化反応が進行し、第二の電極2では、下記(β)に示されるカソード性EC材料の還元反応が進行する。
A→A++e- (α)
C+e-→C- (β)
これらの反応が進行することにより、ECセルは、着色状態となる。
図1(b)は、着色過程とは反対の過程である消色過程を示す図である。ECセルを消色する場合には、第一の電極1と第二の電極2との間に、消色電圧(例えば、第一の電極1、第二の電極2間を短絡する0V)を印加することで、図1(b)中の円弧状の矢印で示すように、図1(a)に示される反応の逆反応が進行する。これによりアノード性EC材料は還元状態A、カソード性EC材料は酸化状態Cとなり、着色状態のEC材料を消色状態に戻すことができる。
図1(a)、(b)に示される反応が繰り返されている場合には、EC素子の電荷のバランスは正常で、素子は正常に着消色を繰り返すことになる。
一方、EC素子を駆動していくと、この正常な着色/消色の工程以外の工程が一部で行われることで電荷のバランスが崩れる場合がある。この原因にはいくつかの種類があるが、ここでは例としてアノード性のEC材料の酸化体(A+)の劣化を取り上げて、図1(c)にて説明する。正常な着色工程を経て着色したアノード性のEC材料の酸化体A+が劣化して、第一の電極1において反応をすることができなくなった場合、第二の電極2においても、カソード性のEC材料の還元体C-がその電子の受け手を失うことになり、反応できなくなってしまう。尚、以下の説明では、このような現象を電荷のバランスが崩れること、即ち、電荷のインバランスと呼ぶ。電荷のインバランスが生じた結果、このEC素子は、カソードのEC材料は正常であるにもかかわらず、カソード性のEC材料の着色体C-が残存する消色不良を呈することとなる。
電荷のインバランスが生じる原因としては、当該酸化還元反応を構成した基質の不可逆的な電子移動反応(特に、電極反応)が挙げられる。具体的には、不純物(EC材料由来、環境不純物(酸素、水等)、シール剤由来)やラジカル同士の化学反応等が挙げられる。例としては、不純物として侵入してきた酸素の不可逆的な還元反応によりアノード材料の着色体が残存すること、シール剤含有成分の不可逆的な酸化反応によりカソード材料の着色体が残存することが挙げられる。
7.EC素子
図2は、本発明のEC素子における実施形態の例を示す断面模式図である。図2のEC素子10は、第一の電極1と、第三の電極3と、を有する基板(第一の基板7)と、第二の電極2と、第三の電極3と、を有する基板(第二の基板8)と、を有している。図2のEC素子10において、第一の電極1と第二の電極2との間には、電解質4が配置されており、この電解質4は、第一の電極1、第二の電極2及び第三の電極3に接している。尚、電解質4は、シール材5によって外部と隔離されて保持されていることが好ましい。また本発明においては、第一の電極1及び第二の電極2と、第三の電極3との間の物質輸送を制限する目的で、必要に応じて図2に示される隔壁6を、第一の電極1及び第二の電極2と、第三の電極3との間に設けてもよい。また本発明のEC素子には、第一の電極1及び第二の電極2との間にアノード性の酸化還元物質及びカソード性の酸化還元物質を有している。第一の電極1及び第二の電極2との間に含まれるアノード性の酸化還元物質及びカソード性の酸化還元物質は、それぞれ電解質4に溶解されていてもよいし、第一の電極1又は第二の電極2に固定化されていてもよい。また、第一の電極1及び第二の電極2との間に含まれるアノード性の酸化還元物質及びカソード性の酸化還元物質の少なくともいずれかがEC材料である。
以下、本発明のエレクトロクロミック素子が有する構成要素について、それぞれ説明する。
(1)基板7,8/電極1,2,3
(1−1)基板7,8
EC素子10を構成する基板(7,8)としては、ガラス、高分子化合物等の透明な基板が挙げられる。
(1−2)第一の電極1、第二の電極2
第一の電極1、第二の電極2のうち少なくとも一方は、透明電極である。ここで、「透明」とは、該当する電極が光を透過することを意味し、光の透過率が、50%以上100%以下であることが好ましい。第一の電極1、第二の電極2のうち少なくとも一方が透明電極であることによって、EC素子の外部より効率的に光を取り込み、EC材料の分子と相互作用させて、EC分子の光学的特性を出射光に反映させることができるからである。また、ここでいう「光」とは、EC素子の対象とする波長領域における光のことである。例えば、EC素子を可視光領域の撮像装置のフィルタとして使用するのであれば、可視光領域の光が対象となり、赤外線領域の撮像装置のフィルタとして使用するのであれば、赤外線領域の光が対象となる。
透明電極としては、上述した基板(7,8)に透明導電性酸化物や、分散されたカーボンナノチューブ等の導電層が形成されたものや、透明な基板(7,8)上に部分的に金属線が配置された透明電極、またこれらの組み合わせを用いることができる。
透明導電性酸化物として、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオビウムドープ酸化チタン(TNO)等が挙げられる。これらの中でも、FTOは、耐熱性(多孔質電極を形成する際の焼成工程への対応の観点から)、耐還元性と導電性の観点から好ましく、ITOは、導電性、透明性の観点から好ましく用いられる。透明導電性酸化物で電極を形成する場合、その膜厚は、好ましくは、10nm乃至10000nmである。特に、膜厚が10nm乃至10000nmであってFTO又はITOの層である透明導電性酸化物の層が好ましい。これにより、高透過性と化学的安定性を両立することが可能となるからである。
尚、上記透明導電性酸化物の層は、透明導電性酸化物のサブレイヤーが積み重なった構成をなしていてもよい。これにより、高導電性と高透明性を実現しやすくなる。
基板(7,8)上に配置され得る金属線としては、特に限定されるものではないが、Ag,Au,Pt,Ti等の、電気化学的に安定な金属材料の線が好ましく用いられる。また、金属線の配置パターンとしては、グリッド状のものが好ましく用いられる。金属線を有する電極は、代表的には平面電極であるが、必要に応じて湾曲したものも使用することができる。
第一の電極1、第二の電極2のうち、上述の透明電極以外の電極としては、EC素子の用途に応じて好ましいものが選択される。例えば、図2のEC素子10を透過型のEC素子とする場合には、第一の電極1も第二の電極2も上述の透明電極であることが好ましい。一方、図2のEC素子10を反射型のEC素子とする場合には、第一の電極1、第二の電極2のうち、一方を上述の透明電極とし、他方を入射光を反射する電極とする。一方で、電極間に反射層又は散乱層を形成することで、上述の透明電極以外の電極の光学特性の自由度を向上させることができる。例えば、電極間に反射層又は散乱層を導入した場合には、その後方の電極として、不透明な電極や、光を吸収する電極も出射光に影響を与えることなく用いることができる。
本発明のEC素子が、いずれの形態の素子であっても、第一の電極1、第二の電極2の構成材料としては、EC素子の動作環境において安定に存在し、外部からの電圧の印加に応じて速やかに酸化還元反応を進行させることのできる材料が好ましく用いられる。
本発明において、第一の電極1と第二の電極2との間の距離(電極間距離)は、1μm以上500μm以下であることが好ましい。電極間距離が大きい場合、EC素子として有効に機能させるために十分な量のEC材料を配置することができる点で有利である。一方、電極間距離が短い場合、速い応答速度を達成することができる点で有利である。
(1−3)第三の電極3
本発明のEC素子は、第一の電極1及び第二の電極2に加えて、第三の電極3を有している。「電荷のバランス/インバランス」で説明したように、アノード性の酸化還元物質及び/又はカソード性の酸化還元物質を同時に使用し、これら酸化還元物質のうちのいずれかがEC材料である相補型のEC素子では、電荷のインバランス状態が発生したときに、それがアノード性、カソード性いずれの電荷インバランスであっても消色不良として感知される可能性がある。このような場合に、第一の電極1と第二の電極2との間に印加する電圧を、着色時と反対方向の極性の電圧とし、この消色不良(消え残り)を抑制しようとしても、反対極性のEC材料が着色する又は反対極性の酸化還元物質が反応するだけで有効な抑制策とはならない。ここでいう「反対極性のEC材料」とは、消え残りの対象がアノード性のEC材料であればカソード性のEC材料であり、消え残りの対象がカソード性のEC材料であればアノード性のEC材料である。また「反対極性の酸化還元物質」とは、消え残りの対象がアノード性のEC材料であればカソード性の酸化還元物質であり、消え残りの対象がカソード性のEC材料であればアノード性の酸化還元物質である。
そこで、本発明では、酸化還元物質を有する第三の電極3を用いて、第一の電極1と第二の電極2との間に設けられるEC層内で着消色時に生じる酸化還元反応の際に両電極(1,2)を通過する酸化還元反応で用いられる電荷の量の調整を行うこととした。尚、この電荷の量の調整は電荷のバランスの調整、即ち、電荷のリバランスと呼ばれるものである。
本発明において、第三の電極3としては、電荷のリバランスを行うために必要な酸化還元物質を有する電極が用いられる。第三の電極3が有する酸化還元物質としては、所望の電位範囲において、酸化還元反応が繰り返し行うことができる化合物であれば、無機化合物も有機化合物も特に制限なく使用することができる。中でも併用するEC材料の使用環境との適合性から、有機化合物が好ましく用いられる。また本発明において、第三の電極3が有する酸化還元物質は、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。
第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化還元状態を、酸化体/還元体が混在する状態としておくことが好ましく行われる。これは、以下のように説明することができる。第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化還元状態が酸化体のみ、還元体のみである場合には、その酸化還元物質は、アノード性/カソード性いずれかの電荷インバランスを生じている極性の電荷を補正することができる。この場合は、酸化還元物質の総量が同じであれば、片側の極性の電荷インバランスを大きな程度で補正することが可能な点で好ましい。一方、酸化体/還元体が混在する状態である場合には、その酸化還元物質は、アノード性/カソード性どちらの電荷インバランスを生じている極性の電荷であっても補正することができる点で好ましい。酸化体/還元体が混在する状態の形成方法としては、以下の手法を用いることができる。尚、以下のいずれの場合においても、当初より酸化体/還元体が混在する状態の酸化還元物質を担体に固定する手法と、酸化体または還元体の酸化還元物質を一度担体に固定してから、それぞれ部分的に還元または酸化することで形成することが可能である。
1.複数の酸化還元物質として、アノード性/カソード性の酸化還元物質を用いる。この場合は、それぞれアノード性のEC材料に対応した酸化還元物質、カソード性のEC材料に対応した酸化還元物質を準備できる点で好ましい。
2.一種類の酸化還元物質の酸化体/還元体が混在する状態とする。この場合は、準備する酸化還元物質の種類が少ない点で好ましい。
第三の電極3が有する酸化還元物質としては、EC性の酸化還元物質でもよいし、非EC性の酸化還元物質であってもよい。仮に、第三の電極3がEC素子10に入射される光の光路中に存在する場合には、酸化還元物質による光の吸収の影響を低減するために、非EC性の酸化還元物質を用いることが好ましい。一方、第三の電極3がEC素子10に入射される光の光路外に配置される場合、EC性の酸化還元物質を用いると、当該酸化還元物質が有するEC性による着色の程度により、電荷のリバランスの程度を検知することが可能となるので、好ましい。
第三の電極3が有する酸化還元物質として、例えば、金属錯体化合物を挙げることができる。具体的には、金属イオンが、Os、Fe、Ru、Co、Cu、Ni、V、Mo、Cr、Mn、Pt、Rh、Pd、Ir等である金属錯体を挙げることができる。より具体的には、メタロセン化合物、複素環化合物を配位子とした金属錯体、プルシアンブルー等を挙げることができる。上記金属錯体の配位子となる複素環化合物として、例えば、ビピリジン、ターピリジン、フェナントロリン等を挙げることができる。また第三の電極3が有する酸化還元物質として、EC性の材料、特に後述するEC材料を好ましく使用することができる。
第三の電極3が有する酸化還元物質と第一の電極1と第二の電極2との間に含まれるEC材料との関係は、以下のように説明することができる。アノード性のEC材料が含まれる場合、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体は、そのアノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすい。またカソード性のEC材料が含まれる場合、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体は、そのカソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすい。またアノード性のEC材料もカソード性のEC材料も含まれる場合は、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体は、アノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすく、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体は、カソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすい。
この関係が重要な理由を以下に説明する。EC素子の電荷のバランスが崩れる場合、基本的には、アノード側又はカソード側のいずれかに崩れることとなる。電荷のバランスがアノード側に崩れる(素子を通常の消色状態としてもアノード性のEC材料が着色して残存する)場合は、アノード性のEC材料の着色体である酸化体に電子を供給して電荷のリバランスを行うこととなる。この場合、第三の電極3が有する酸化還元物質によって電荷のリバランスを行わせるには、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体は、そのアノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすいという関係が必要になる。一方、電荷のバランスがカソード側に崩れる(素子を通常の消色状態としてもカソード性のEC材料が着色して残存する)場合は、カソード性のEC材料の着色体である還元体から電子を取り去って電荷のリバランスを行うこととなる。この場合、第三の電極3が有する酸化還元物質によって電荷のリバランスを行わせるには、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体は、カソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすいという関係が必要になる。
また、第三の電極3が有する酸化還元物質を、電解質4中に溶解させる(電解質4と共に第一の電極1と第二の電極2との間に含ませる)状態ではなく、第三の電極3が有する(固定化する)状態にすることで、以下の効果を奏する。第三の電極3が有する(固定化する)ことで、通常、EC素子の駆動、即ち、EC材料の電極における電気化学反応を進行させる第一の電極1又は第二の電極2には当該酸化還元物質が到達することがない。このため、本来EC材料の反応に用いられるはずの電荷をその酸化還元物質が消費することがない。ただし、このことは、当該酸化還元物質の還元体がアノード性のEC材料の還元体より酸化されやすいこと及び/又は当該酸化還元物質の酸化体がカソード性のEC材料の酸化体より還元されやすいという、本発明で要求される条件が前提となる。なぜなら、上記の条件は、言い換えれば、アノード性のEC材料及び/又はカソード性のEC材料を着色反応させようとした際に、当該酸化還元物質の還元体及び/又は酸化体がそれぞれのEC材料よりも反応しやすいことを意味するためである。即ち、第三の電極3が有する酸化還元物質が他の電極(1,2)に到達すれば、EC材料の消色体よりも当該酸化還元物質の還元体又は酸化体の方が反応しやすいために、容易にEC材料の反応に用いられるはずの電荷を消費することになるためである。このことは、着色に寄与しない電荷の増大により、EC素子の着消色コントラストの低下、駆動に必要とする電荷量(電力)の増大、EC素子の応答速度の低下を招くため、好ましくない。また当該酸化還元物質が、EC材料の着色体と直接電子移動して消色させるものである場合、当該酸化還元物質が電解質4中に溶解していると、電解質4中の移動によりEC材料の着色体と当該酸化還元物質との衝突確率が増大する。その結果、EC材料の着色濃度の低下を招くことになる。このことは同様に、素子の着消色コントラストの低下、電荷量(電力)の増大、応答速度の低下を招くため、好ましくない。さらに、当該酸化還元物質の中には、EC性を持つ材料も多く含まれる。これらEC性の酸化還元物質が電解質4中に溶解している場合には、酸化還元物質の酸化還元反応によって、EC素子へ入射された光吸収特性が変化することで、EC素子の色、透過率等に影響を与えるため、好ましくない。これは、第三の電極3が酸化還元物質を有し、第三の電極3がEC素子を透過する光の光路から外れるように配置することによって防ぐことができる。
本発明において、EC素子10にアノード性のEC材料が含まれる場合、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体は、アノード性のEC材料の還元体より酸化されやすい。また、EC素子10にカソード性のEC材料が含まれる場合、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体は、カソード性のEC材料の酸化体より還元されやすい。このことを判定する方法を以下に説明する。
(1−3a)直接電子移動反応による方法
以下に説明する方法は、アノード性のEC材料の酸化体又はカソード性のEC材料の還元体を、対応する酸化還元物質と直接接触させる方法である。具体的には、アノード性のEC材料の酸化体又はカソード性のEC材料の還元体を溶解させた電解質の中に、対応する酸化還元物質を投入する。このとき、電解質中にアノード性のEC材料が含まれる場合は酸化還元物質の還元体を、電解質中にカソード性のEC材料が含まれる場合は酸還元物質の酸化体を少なくとも投入する。酸化還元物質を投入した結果、着色体、即ち、アノード性のEC材料の酸化体又はカソード性のEC材料の還元体が消色すれば、以下の事項が判明する。即ち、アノード性のEC材料が消色した場合は、酸化還元物質の還元体からEC材料の酸化体への電子移動がおこり、アノード性のEC材料が還元体になることが示される。これは、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体が、アノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすいことを意味する。カソード性のEC材料が消色した場合は、EC材料の還元体から酸化還元物質の酸化体への電子移動が起こり、カソード性のEC材料は酸化体となることが示される。これは、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体は、カソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすいことを意味する。また、第三の電極3が有する酸化還元物質がEC性の場合は、EC材料の消色及び色変化が確認することができる。ここでいうEC材料の消色とは、第三の電極3が有していない方のEC材料の消色である。また、EC材料の色変化とは、第三の電極3が有するEC性の酸化還元物質の吸収変化である。
(1−3b)電子移動反応による方法(直接的なもの、第三の電極3を介したもの)
以下に説明する方法は、アノード性のEC材料の酸化体又はカソード性のEC材料の還元体を含む電解質を、酸化還元物質を有する第三の電極と接触させる方法である。具体的には、アノード性のEC材料の酸化体又はカソード性のEC材料の還元体を溶解させた電解質を、対応する酸化還元物質を有する第三の電極に接触させる。この結果、着色体、即ち、アノード性のEC材料の酸化体又はカソード性のEC材料の還元体が消色すれば、(1−3a)で説明した直接電子移動反応に加えて、以下に説明する電極を介した電子移動反応が進行したといえる。具体的には、アノード性のEC材料の場合は、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体から第三の電極3への電子移動が起こり、アノード性のEC材料は第三の電極3から電子を受け取ることにより、酸化体(着色状態)から還元体(消色状態)に変化する。この反応の発生は、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体がアノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすいことを意味する。一方、カソード性のEC材料の場合は、第三の電極3から第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体へ電子移動、及びカソード性のEC材料から第三の電極3への電子移動が生じる。その結果、カソード性のEC材料は、還元体(着色状態)から酸化体(消色状態)に変化する。この反応の発生は、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体がカソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすいことを意味する。尚、第三の電極3が有する酸化還元物質がEC性を有する場合は、(1−3a)と同様にEC材料の消色及び色変化が確認することができる。
(1−3c)酸化還元電位の計測による方法
以下に説明する方法は、EC材料や酸化還元物質の電極反応における酸化還元電位によって酸化又は還元のしやすさを比較する方法である。ここで酸化還元電位は、電気化学的な測定によって決定することができる。例えば、EC材料、酸化還元物質、それぞれのサイクリックボルタンモグラム測定を行うことで評価できる。
この測定において、アノード性のEC材料が可逆的に着色する酸化反応に対応する酸化還元反応の半波電位よりも、第三の電極3が有する酸化還元物質の可逆的な酸化還元反応の半波電位が負側であることは以下のことを意味する。即ち、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体がアノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすいことを意味する。また、この場合、アノード性のEC材料の酸化還元電位EEC(A)と第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化還元電位EROとの間に、下記式(I)が満たされるのが好ましい。
RO<EEC(A) (I)
カソード性のEC材料が可逆的に着色する還元反応に対応する酸化還元反応の半波電位よりも、第三の電極3が有する酸化還元物質の可逆的な酸化還元反応の半波電位が正側であることは、以下のことを意味する。即ち、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体がカソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすいことを意味する。また、この場合、カソード性のEC材料の酸化還元電位EEC(C)と第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化還元電位EROとの間に、下記式(II)が満たされるのが好ましい。
RO>EEC(C) (II)
またEC素子にアノード性のEC材料及びカソード性のEC材料が含まれる場合、式(I)及び式(II)が満たされるのが特に好ましい。即ち、アノード性のEC材料の酸化還元電位EEC(A)と、カソード性のEC材料の酸化還元電位EEC(C)と、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化還元電位EROとの間に、下記式(III)が満たされるのが特に好ましい。
EC(C)<ERO<EEC(A) (III)
サイクリックボルタンモグラム測定を行う際に用いられる電極を以下に説明する。作用電極としては、EC素子で用いられる電極と同様のものが使用することができ、例えば、EC素子の電極がITOであればITOを用いることができる。対向電極としては、十分な面積を有する白金電極を用いることが好ましい。本発明のEC素子を構成する第三の電極はそのまま用いることができる。またサイクリックボルタンモグラム測定を行う際に用いられる溶媒や支持質としては、EC素子に用いる溶媒を用いることが好ましい。ボルタンモグラムの走引速度は、20mVs-1乃至200mVs-1とするのが好ましい。
上述の3種類のいずれの方法によっても酸化又は還元のしやすさが測定・評価ができるが、特に、(1−3b)の方法(電極を介した電子移動反応による方法)が簡便で、直接効果を観測できる点で最も好ましい。
第三の電極3が有する酸化還元物質と、第一の電極1と第二の電極2との間に含まれるアノード性の酸化還元物質(EC材料を含む)、カソード性の酸化還元物質(EC材料を含む)との関係は、以下の関係であることが望ましい。
アノード性のEC材料と、EC性又は非EC性のカソード性の酸化還元物質とを使用する場合、第三の電極3が有する酸化還元物質としては、その酸化体がカソード性の酸化還元物質の酸化体よりも還元されやすいのが好ましい。またカソード性のEC材料と、EC性又は非EC性のアノード性の酸化還元物質とを使用する場合、第三の電極3が有する酸化還元物質としては、その還元体がアノード性の酸化還元物質の還元体よりも酸化されやすいのが好ましい。
これに対して、カソード性の酸化還元物質及び第三の電極3が有する酸化還元物質を使用し、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体がカソード性の酸化還元物質の還元体よりも酸化されやすい場合を考える。この場合、EC素子中にカソード性の酸化還元物質の酸化体が生成した場合には、第三の電極3が有する酸化還元物質からカソード性の酸化還元物質への電子移動が起こり、電荷のインバランスが増大してしまう。また、アノード性の酸化還元物質及び第三の電極3が有する酸化還元物質を使用し、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体がアノード性の酸化還元物質の酸化体よりも還元されやすい場合を考える。この場合、EC素子中にアノード性の酸化還元物質の還元体が生成した場合には、アノード性の酸化還元物質から第三の電極3が有する酸化還元物質への電子移動が起こり、電荷のインバランスが増大してしまう。
アノード性の酸化還元物質/カソード性の酸化還元物質と、第三の電極3が有する酸化還元物質との酸化又は還元のされやすさを判定する方法は、上記のEC材料と同様に考えることができる。非EC性の酸化還元物質の場合、対象の波長領域においてEC性がなかったとしても、その対象から外れた波長領域において吸収特性は変化する。このため、当該吸収特性の変化を測定・評価することにより、上記(1−3c)だけでなく上記(1−3a)又は(1−3b)の手法を用いて測定・評価することは可能である。
本発明のEC素子において、電荷のリバランスが可能な範囲は、第三の電極3が有する酸化還元物質の量に比例する。即ち、当該酸化還元物質の量が増大すれば電荷のリバランスが可能な範囲も増大する。このため、第三の電極3が有する酸化還元物質の量は、素子の実用上問題のない範囲内において基本的には多い方が好ましい。第三の電極3に固定化される(含まれる)酸化還元物質の量を増大させる有力な手法としては、電極の表面積を増大させることが挙げられる。実際の構成に適した素子サイズで、第三の電極3の表面積の増大を実現するためには、第三の電極3が多孔質構造を有することが好ましい。多孔質構造の例としては、投影面積に対する実効面積(ラフネスファクター)が10倍以上、好ましくは、100倍以上の構造をもつものが挙げられる。
本発明において、第三の電極3の構成材料としては、特に限定されるものではない。多孔質構造を有する材料としては、導電性酸化物であるスズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオビウムドープ酸化チタン(TNO)、酸化チタン、多孔性炭素材料、多孔性金属やこれらの組み合わせからなる膜等を使用することができる。また第三の電極3をEC素子が取り入れる光路から外れて配置させる場合には、先述の透明導電性酸化物以外の光を散乱する導電性電極や、透明でない多孔性導電体、炭素材料、白金、チタン等の金属等を使用することもできる。第三の電極3が有する多孔質構造は、大きな実効面積を小さな投影面積で実現すること、作製上の観点よりナノメートルスケールの微細構造をもつことが好ましい。この多孔質構造の形状及び製法については制限は無く、連通孔を有するナノ粒子膜、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノチューブ等のナノ構造体等を用いることができる。中でも体積当たりの比表面積が大きく、作製が容易な粒子膜が好適に使用される。この粒子膜を形成する際に用いられる粒子のサイズとしては、平均粒径が300nm以下のものが望ましく、好ましくは、50nm以下の粒子が用いられる。
本発明において、第三の電極3の厚さは、100nm以上が望ましく、好ましくは、1μm以上である。
以上説明した三種類の電極(1,2,3)の配置について以下に説明する。本発明のEC素子は、三種類の電極(1,2,3)を有するが、このうち、第一の電極1及び第二の電極2については、EC素子の電極配置として一般的に知られている配置方式を用いることができる。代表的な例としては、基板(7,8)上にそれぞれ形成された第一の電極1と第二の電極2とが対向し、1μm乃至500μm程度の電極間距離を設けた配置方式がある。尚、第三の電極3の配置については、後述する。
本発明のEC素子に光を導入する際に、その具体的な方法は、EC素子の用途によって自由に選択することができるが、代表的な例を以下に説明する。第一の電極1と第二の電極2とが対向している透過型のEC素子の場合、入射光は、第一の電極1又は第二の電極2を透過する。ここで、EC素子に含まれるEC材料が着色状態であれば、その光の少なくとも一部がEC材料に吸収され、他方の電極を透過して出射される。一方、第一の電極1と第二の電極2とが対向している反射型のEC素子の場合、入射光は、第一の電極1又は第二の電極2を透過する。ここで、EC素子に含まれるEC材料が着色状態であれば、その光の少なくとも一部がEC材料に吸収され、反射体、散乱体等で折り返されて入射時に透過した電極を透過して出射される。このときの反射体、散乱体等は、第一の電極1と第二の電極2との間に配置されることが多いが、光が入射する際に透過する電極と反対の電極の外側に配置されている構成も選択され得る。
EC素子は、一般に広く普及している吸光デバイスの液晶素子と比較して、最大透過率が高いことが一つの大きな特長である。この高い透過率を活かすためには、ECセルに入射された光が出射までの光路に、着色時のEC材料の吸収以外の透過率を低減させる要素はできるだけないことが望ましい。本発明のEC素子を構成する第三の電極3をこの光路中に配置すると、この第三の電極3もEC素子の透過率を低減させる要素となる可能性がある。具体的には以下に説明する通りである。第三の電極3は、第一の電極1及び第二の電極2よりも実効面積が大きいものであり、この大きな実効面積を、小さな投影面積で実現しようとした場合には、第三の電極3を多孔質構造とすることが望ましい。しかし、多孔質構造を持つ電極の構成材料が金属や炭素等バルクとしての(可視光の)透過率の低い材料であると、この電極によって透過率が著しく低減される可能性がある。またバルクとしての透過率の高い材料を用いた場合でも電解質4との間の屈折率差がある場合には、散乱等により透過率を低減させることになる。これらのことから、本発明においては、第三の電極3は、第一の電極1又は第二の電極2の少なくとも一方を透過する光の光路外に配置されているのがより好ましい。ここでいう「光路外」とは、上記の観点より光吸収素子としてのEC素子を用いる用途にとって必要な光の光路から外れているという意味である。例えば、EC素子を撮像装置の透過型フィルタとして用いる場合、EC素子を透過する全ての光のうち、受光素子(例えばCCDセンサー、CMOSセンサ−)の全領域の中で、必要な撮像に用いられる領域に到達する光についての光路がここでいう光路である。反対に、同ケースで、EC素子を透過する光であっても、受光素子の必要な撮像に用いられる領域以外に到達する光についての光路は、ここでいう光路外に含まれる。本発明においては、第三の電極3をこの光路外に配置することにより、上述のように第三の電極3の構成材料を高い自由度で選択することができる。また第三の電極3が有する酸化還元物質がEC性の場合にも問題なく使用できるようになる。
次に、本発明における第三の電極3の配置位置について説明する。消色不良を抑制するために、残存するEC材料の着色体を第一の電極1かつ/又は第二の電極2上で減少させる場合、その反応は、同電極上で均一に行えることが望ましい。この観点から、第三の電極3は、例えば、図3に示されるように、第一の電極1かつ/又は第二の電極2に周囲の少なくとも一部に配置されるのが好ましい。図3は、本発明のEC素子の例を示す上面図である。尚、図3において、第一の電極1、第二の電極2は重なって見えている。第三の電極3は、図3(a)の様に第一の電極1、第二の電極2の四方を囲むように配置してもよいし、図3(b)の様に第一の電極1、第二の電極2の三方を囲むように配置してもよい。また図3(c)の様に第一の電極1、第二の電極2の二方を囲むように配置してもよい。
第三の電極3は、例えば、以下の工程を経て形成することができる。
(A)第一の電極1又は第二の電極2を形成する導電膜を有する導電性基板の一部をエッチング等により加工して、当該導電膜を第一の電極1又は第二の電極2と電気的に独立した領域を含む複数の領域に分割する工程。
(B)上記電気的に独立した領域に設けられる導電膜に、多孔質電極である第三の電極3を形成する工程。
(C)第三の電極3に酸化還元物質を固定化する工程。
上記(A)、(B)及び(C)の工程はどれを先に行ってもよい。また、第三の電極3は、第一の電極1又は第二の電極2が配置される基板のいずれか一方に形成されていればよいが、第一の電極1が配置される基板及び第二の電極2が配置される基板の両方に形成されていてもよい。ただし、第三の電極3を形成する際は、第一の電極1及び第二の電極2と電気的に独立しているようにする。
(2)隔壁6
本発明において、第三の電極3は、EC素子10に消色不良が生じた際に、第一の電極1かつ/又は第二の電極2上において、着色体として残存しているEC材料を電気化学的に消色反応させるための電荷の保留場所として機能するということができる。このため、(着色時等に)正常に着色しているEC材料は、第三の電極3に到達させない方が望ましい。EC材料が第一の電極1上又は第二の電極2上に固定化されている場合には考慮する必要はないが、EC材料が電解質4中に溶解している等、自由に拡散が可能な場合には、第三の電極3の到達によって、着色体が消色体に転換されることが起こる可能性がある。これを抑制するためには、着色が行われる第一の電極1かつ/又は第二の電極2と、第三の電極3との間の物質輸送を低減することが効果的である。具体的な手法として、例えば、第一の電極1かつ/又は第二の電極2との距離をとること、第一の電極1、第二の電極2と、第三の電極3との間に物質輸送を低減する構造物を配置すること、が挙げられる。前者は、例えば、第一の電極1かつ/又は第二の電極2と第三の電極3との間の距離を、第一の電極1と第二の電極2との間の距離よりも大きくすることが挙げられる。一方、後者としては、図2に示されるように、第一の電極1かつ/又は第二の電極2と第三の電極3との間に、開口部6aを持つ隔壁6を形成する方法が挙げられる。尚、この隔壁6は、壁自体が多孔質構造のものが好ましい。図2の様に隔壁6を設ける際に、開口部6aを持つ必要があるのは、第三の電極3を有効に機能させるには、第一の電極1かつ/又は第二の電極2と第三の電極3との間において電解質4を介した電気的な接続を確保する必要があるためである。逆に第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3間の電解質4による電気的な接続が有効な電荷バランスに必要な程度確保されている限りにおいて、第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3間の物質輸送は低減されていることが好ましい。
(3)シール材5
EC素子を構成する基板(7,8)は、第一の電極1の電極面と第二の電極2の電極面とを対向させた配置でシール材5によって接合されていることが好ましい。シール材5としては、そのシール後の特性が電解質4に対して安定で侵されることがなく、電気化学的に安定でEC素子の動作時に電気化学反応を起こすことがなく、気体及び液体を透過しにくく、EC材料の酸化還元反応を阻害しない材料であることが好ましい。例えば、ガラスフリット等の無機材料、エポキシ系、アクリル系樹脂等の有機材料、金属等を用いることができる。そのシール後の特性が電解質4に対して不安定な場合には、溶出したシール材で電極が汚染される等の懸念がある。また、シール材5の成分が電気化学的に不安定である場合には、電極反応により電荷バランスを生じる原因となる可能性がある。また、気体および液体(特に酸素と水分)を透過しやすい場合には、それらの電極反応により電荷バランスを生じる原因となる可能性があるので注意が必要である。尚、シール材5は、スペーサー材料を含有する等して第一の電極1と第二の電極2との間の距離を保持する機能を有していてもよい。シール材5が第一の電極1と第二の電極2との間の距離を規定する機能を有していない場合は、別途スペーサーを配置して両電極間の距離を保持してもよい。スペーサー5の素材としては、シリカビーズ、ガラスファイバー等の無機材料や、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジビニルベンゼン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等の有機材料を用いることができる。尚、このスペーサー5により、EC素子10を構成する第一の電極1と第二の電極2との間の距離を規定、保持することが可能である。
(4)電解質4
本発明のEC素子は、第一の電極1と第二の電極2との間に、電解質4と、アノード性の有機EC材料かつ/又はカソード性の有機EC材料とを有する。尚、本発明において、アノード性の有機EC材料及びカソード性の有機EC材料は、電解質4に溶解されていてもよいし、第一の電極1又は第二の電極2に固定化されていてもよい。
アノード性の有機EC材料、カソード性の有機EC材料が電解質に溶解している場合には、以下の二点で、電極に固定化する場合と比較して有利である。
(A)固定化する電極の表面積という制限要因がないために、電解質中に存在させることのできるEC材料の量が多い点。
(B)固定化を行う場合には、固定するEC材料、固定化担体となる電極の双方に構造的な工夫、製造上の工程が必要になることが多いが、これらがない点。
また、アノード性の有機EC材料、カソード性の有機EC材料が電極に固定されている場合には、EC材料が電極に拘束されているために、以下の点で溶解している場合と比較して有利である。
(C)隔壁6等の構造を作製する必要がない点。
(D)EC材料が電極に到達するまでの物質輸送による応答速度の低下がない点。
本発明において電解質4には、電解質自体、電解質を溶媒に溶解させた電解液双方の概念が含まれる。電解質4として、例えば、塩化合物を溶媒に溶解させたものや塩化合物自体が溶媒を兼ねるイオン性液体等を使用することができる。
電解質を構成する溶媒としては、EC分子を始めとする溶質の溶解性、蒸気圧、粘性、電位窓等を考慮して、用途に応じて選択されるが、極性を有する溶媒であることが好ましくい。具体的には、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジオキソラン等の有機極性溶媒や水、およびそれらの混合物が挙げられる。なかでも環状エステル化合物、ニトリル化合物が好ましく用いられ、その中でもプロピレンカーボネートが最も好ましく用いられる。
さらに、上記溶媒にポリマーやゲル化剤を含有させて、粘稠性が高いものやゲル状としたものとしてもよい。このようなポリマーとしては、特に限定さるものではないが、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ナフィオン(商品名)、糖類化合物等を挙げることができる。このポリマーやゲル化剤には、その特性を向上させるために官能基を付与することが好ましく行われる。官能基としては、具体的には、シアノ基、水酸基、エステル、エーテル、アミド、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基等を挙げることができる。
この電解質に用いられる塩化合物としては、イオン解離性の塩であり、かつ溶媒に対して良好な溶解性、固体電解質においては高い相溶性を示すもので、エレクトロクロミック素子の動作電位において安定な物質あれば特に限定されない。各種陽イオン、陰イオンから好適なものを組み合わせて使用することができる。陽イオンの例としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等の金属イオン、4級アンモニウムイオン等の有機イオン等が挙げられる。具体的には、Li,Na,K,Ca,Ba,テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の各イオンを挙げることができる。陰イオンの例としては、各種のフッ素化合物の陰イオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。具体的にはClO4 -、SCN-、BF4 -、AsF6 -、CF3SO3 -、CF3SO2NSO2CF3 -、PF6 -、I-、Br-、Cl-等が挙げられる。また、塩化合物でもあるEC材料を使用することで、EC材料の溶液と電解質溶液とを兼ねることも可能である。塩化合物でもあるEC材料の例としては、ビオロゲン誘導体塩等を挙げることができる。
本発明のEC素子を作製する際に、EC素子内に電解質4を導入する際には、例えば、対向している電極(1,2)又はシール材5の一部に開口部を形成しながら基板(7,8)を接合して形成したセルに電解質4を注入するという方法がある。尚、この方法は電解質4に後述するEC材料が溶解している場合でも適用できる。また電解質4をセルに導入する具体的な方法としては、真空注入法、大気注入法、メニスカス法等が挙げられる。ところで、上記セルに電解質4等を注入した後は、開口部を封止する。また注入口を持たない滴下貼り合わせ法も好ましく用いられる。
(5)EC材料
本発明のEC素子に使用されるEC材料は、有機化合物である。この有機化合物には低分子有機化合物も高分子有機化合物も含まれるが、いずれの材料も、外部から電気的な刺激を与えることによって着色するタイプの材料である。このタイプの高分子有機化合物としては、ピリジニウム塩を含む高分子化合物が挙げられるが、その具体例としては、ビオロゲン系の高分子化合物が挙げられる。本発明において、EC材料として、好ましくは、分子量が2000以下の低分子有機化合物であり、電極における酸化反応又は還元反応により、消色体から着色体に変化する化合物である。本発明のEC素子においては、アノード性のEC材料又はカソード性のEC材料のいずれかは必ず用いられる。
ここで、アノード性のEC材料とは、材料から電子が取り去られる酸化反応によって着色する材料のことである。一方、カソード性EC材料とは、これとは逆に、材料に電子が与えられる還元反応によって着色する材料のことである。
アノード性のEC材料として、例えば、チオフェン誘導体、芳香環を有するアミン類(例えば、フェナジン誘導体、トリアリルアミン誘導体)、ピロール誘導体、チアジン誘導体、トリアリルメタン誘導体、ビスフェニルメタン誘導体、キサンテン誘導体、フルオラン誘導体、スピロピラン誘導体が挙げられる。これらの中でも、アノード性エレクトロクロミック分子としては、低分子チオフェン誘導体(例えば、モノチオフェン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、チエノアセン誘導体)、低分子の芳香環を有するアミン類(例えばフェナジン誘導体、トリアリルアミン誘導体)であることが好ましい。
これは、これらの分子をエレクトロクロミック層に用いることにより、所望の吸収波長プロファイルを持つエレクトロクロミック素子を提供しやすいからである。これらの分子は、中性状態で紫外領域に吸収ピークを有し、可視光領域には吸収を有さず、可視光領域の透過率が高い消色状態を取る。そして、酸化反応によりこれらの分子がラジカルカチオンとなり、可視光領域に吸収がシフトすることで着色状態となる。これらの分子は、そのπ共役長を拡大縮小させること、また置換基を変更してπ共役系に変化を加えることで、その吸収波長、酸化還元反応が進行する電位を設計することができる。
ここで低分子とは、分子量で2000以下、好ましくは1000以下である。カソード性エレクトロクロミック分子の例としては、ビオロゲン誘導体等のピリジン系化合物、キノン化合物等が挙げられる。これらの分子も、そのπ共役長を拡大縮小させること、また置換基を変更してπ共役系に変化を加えることで、その吸収波長、酸化還元反応が進行する電位を設計することができる。
本発明においては、EC材料として、それぞれ複数種類のアノード性EC材料、カソード性EC材料が含まれていてもよい。
またEC材料は、第一の電極1かつ/又は第二の電極2に固定化されている形で用いられていてもよい。これは、本発明のEC素子においては、電荷のインバランスを調整する際に、電極間の電荷の授受があればよく、EC材料が電解質4を介して拡散して第三の電極3に到達させる必要がないためである。ただし、必要がないだけで、拡散して第三の電極に到達させてもよい。また上述したように、EC材料が電解質4を介して自由に拡散可能である場合は、第三の電極3に到達させることによって、着色体が消色体に転換されることが起こる可能性があり、これを抑制するために隔壁6等の物質輸送を低減する工夫が用いられることがある。これに対して、EC材料が第一の電極1かつ/又は第二の電極2に固定化されている場合には、着色体が消色体に転換される可能性がほとんどないという点で好ましい。
EC材料を固定化させる具体的な方法としては、EC材料分子に含まれる官能基を介して電極材料に結合させる方法、EC材料を静電相互作用などの力を利用して包括的、(例えば、膜状態)に保持させる方法、EC材料を物理的に電極に吸着させる場合等がある。中でも、EC素子の速い応答を実現する観点から、EC材料である低分子有機化合物が官能基を通して多孔質電極に化学結合させる方法、EC材料である高分子化合物を電極上に形成させる方法が好ましい。前者の具体的な例としては、酸基(例えば、リン酸基、カルボン酸基)等の官能基を通して、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の酸化物微粒子電極上にEC材料である低分子有機化合物を固定化させる方法が挙げられる。後者の例としては、ビオロゲンポリマーを透明電極上に重合形成させる方法が挙げられる。ビオロゲンポリマーの透明電極上に重合形成方法としては、電解重合を挙げることができる。
尚、以上説明したEC材料を固定化させる方法は、第三の電極3が有する酸化還元物質の固定化の際に採用することができる。
8.EC素子の駆動方法
本発明のEC素子は、第三の電極3を用いることでEC素子の電荷のバランスの調整を行う。本発明のEC素子は、第三の電極3が酸化還元物質を有し、EC材料との間で、酸化又は還元のされやすさが規定されているため、その酸化又は還元のされやすさを利用して電荷のリバランスを行うことができる。
以下、本発明のEC素子の駆動方法の具体例を記述する。EC素子を消色させるために、第一の電極1と第二の電極2を、例えば、短絡させた状態において、EC素子10に含まれるアノード性のEC材料が酸化体として着色したまま残存する状態を考える。即ち、アノード性の電荷のインバランスが生じている場合を考える。このときに、酸化体のアノード性のEC材料と、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体が直接あるいは電極反応を通じて電荷の授受ができる場合には以下のようになる。酸化・還元のされやすさから、第三の電極3が有する酸化還元物質の還元体から酸化体のアノード性のEC材料へと電子は供給されるため、アノード性の電荷のインバランスは解消される。反対に、EC素子10に含まれるカソード性のEC材料が還元体として着色したまま残存する状態を考える。即ち、カソード性の電荷のインバランスが生じている場合を考える。このときに、還元体のカソード性のEC材料と、第三の電極3が有する酸化還元物質の酸化体が直接あるいは電極反応を通じて電荷の授受ができる場合には以下のようになる。酸化・還元のされやすさから、還元体のカソード性のEC材料から第三の電極3が有する酸化還元物質へ電子が供給されるため、カソード性の電荷のインバランスは解消される。同様の理由でアノード性のEC材料及びカソード性のEC材料の双方が含まれるEC素子の場合においても第三の電極3が有する酸化還元物質を用いることで効果的に電荷のインバランスを解消することができる。
このように、本発明のEC素子は、酸化又は還元のされやすさによって電荷のリバランスを行うことができるために、特段電荷のバランスを検知する機構を設けなくてもその効果を発揮することができる。
ところで、EC材料と、第三の電極3が有する酸化還元物質との間の電荷の授受は、同材料−物質間の直接の電荷の授受でもよいが、電極を通じての授受を利用することでその効果を大きくすることができる。その理由を以下に説明する。同材料−物質間の電荷の授受が直接進行するためには、同材料−物質間の距離を十分に接近させる必要がある。これは、EC材料が第一電極1かつ/又は第二の電極2に固定されている場合にはほぼ不可能であるし、電解質4中に溶解している場合においても物質が輸送される過程を経る必要があるために比較的に時間がかかる。これに対し、例えば、第三の電極3を第一の電極1(第二の電極2も同様、以下同じ。)と短絡させた場合は、第三の電極3と第一の電極1の電位がそろうため、第一の電極1においても、EC材料と、第三の電極3が有する酸化還元物質の間の電荷の授受を進行させることができる。このように、第三の電極3と、第一の電極1又は第二の電極2を利用したEC材料と、第三の電極3が有する酸化還元物質の間の電荷の授受を、電極反応を通じた電荷の授受という。通常の動作において、EC材料は、第一の電極1又は第二の電極2において着色/消色の反応をするため、EC材料の着色体は、第一の電極1又は第二の電極2の近傍に存在することが多い。尚、EC材料が第一の電極1かつ/又は第二の電極2に固定されている場合は、常に該当する電極の近傍に存在している状態になる。このため、電極を通じての授受をより効果的に利用することで、比較的に短時間で、EC材料が第一の電極1かつ/又は第二の電極2に固定されている場合においても効果的に電荷のリバランスを行うことができる。
以上説明した電極反応を通じた電荷の授受を利用する場合、第三の電極3と第一の電極1かつ/又は第二の電極2との電位差を適宜制御する必要がある。具体例を挙げながら、以下に説明する。電荷のリバランスを行わない時、通常、第三の電極3と第一の電極1との間及び第三の電極3と第二の電極2との間は、いずれも開回路状態となっている。これは、電荷のリバランスを行う意図のない時に、電極反応を通じて電荷の授受が行われ不必要な電荷のリバランスが進行するのを防ぐためである。そして、例えば、消色時に電荷のリバランスを行う際には、第三の電極3と第一の電極1、かつ/又は第三の電極3と第二の電極2との間を接続状態とし、対象となる電極間の電位差(電圧)を適宜制御する。本発明において、電荷のリバランスを行うタイミングは、特に限定されないが、EC素子が消色動作時として十分な時間を経過した時点で残存する着色状態のEC材料は、基本的に電荷のインバランスによって生じるものである。このため、残存する着色状態のEC材料をリバランスによって消色する消色動作時が典型的な例として挙げられる。また、このときに制御する電位差は、その絶対値が大きすぎるとEC材料、電解質の劣化反応を引き起こす可能性がある。そのため、その値は、素子の構成要素に、使用上悪影響の出ない範囲で設定することになる。例えば、電位差Vを、0V≦V≦5V程度の範囲にすることができる。尚、電荷のリバランスを行う際に、大きな電圧(の絶対値)を印加すると、電荷のリバランスに必要な電極反応を促進する点で有利である。一方、電荷のリバランスを行う際に、小さな電圧(の絶対値)を印加すると、EC素子に対する悪影響、EC素子の消費電力の増大を抑制できる点で有利である。電荷のリバランスを行う際に印加する電圧(の絶対値)の範囲は、素子の特性、使用環境に合わせて適宜設定することが好ましい。もっとも電荷のリバランスを行う際に印加する電圧は、典型的には0V(短絡状態)であるが、電荷の保持、電荷のリバランスの加速を目的として、着色動作と比較して小さな電圧(例えば、1V以下)を第一の電極1、第二の電極2、第三の電極の各電極間に適宜印加してもよい。
また電圧を印加する際に、電圧を印加する時間は、印加する電圧の値によって大きく異なるが、基本的な考え方としては、電極の表面で電気二重層が形成されてファラデー電流が流れ始める時間よりも長い時間とし、かつ電荷のバランスが正常点となるまでの時間とするのが好ましい。具体的には、1ms以上である。尚、外部から積極的に電圧を印加しない場合、電圧を印加する時間としては特に上限はなく、使用休止期間に常に短絡状態にして電荷のリバランスを行うことも好ましい。外部から積極的に電圧を印加して電荷のリバランスを行う場合は、電極表面で電気二重層が形成されてファラデー電流が流れ始める時間よりも長い時間で、かつ電荷のバランスが正常点を超えて反対極性のEC材料の着色体の残存色が発生する期間よりも短い時間が好ましい。具体的には、EC素子の応答速度に大きく依存するが、例としては、1ms以上10s以下とすることができる。短い時間電圧を印加し、その結果に基づいて次の印加時間、印加電圧を選択することも好ましく行われる。またこれらの電圧の印加パターンとしては、連続印加に加えて、パルス状等、あるパターンをもって印加することを行ってもよい。
また積極的に電圧を印加する場合には、EC素子の電荷のバランス状態を検知した上で、印加する電圧の極性、大きさを決定することが好ましい。具体的には、検知されたEC素子の電荷バランス状態に基づき、第一の電極1と第二の電極2の少なくとも一方と、第三の電極3との間の電位差を制御するステップを有することが好ましい。また、電位差を制御するステップに基づいた電位差の制御後、さらに検知されたEC素子の電荷バランス状態に基づき、追加の電位差制御の実施を判断することが好ましい。この電荷のバランス状態の検知と電圧の印加については、以下に説明する。
本発明のEC素子では、必要に応じて電荷のバランス状態を検知し、その情報に基づき、第三の電極3と第一の電極1かつ/又は第二の電極2との間の電圧を制御してもよい。例えば、アノード性のEC材料と、カソード性のEC材料とを両方とも用いた場合には、アノード性のEC材料の着色が残る場合とカソード性のEC材料の着色が残る場合とがある。着色が残ったEC材料を有効に消色させるためには、電荷のバランスの極性に応じた電圧を第三の電極3と第一の電極1かつ/又は第二の電極2とに印加する必要がある。この際に逆極性の電圧を印加すると、電荷インバランスが拡大し、色残りしている材料の着色体が増大し、消色不良が悪化することになるので、電荷バランスの極性検知は重要である。また、極性は適合していても、電荷インバランスの程度を越えた電荷量を投入した場合には、逆極性の電荷インバランスを発生させる可能性がある。そのため、検知された電荷のバランス状態に基づく電圧と電荷量の制御は重要である。
EC素子の電荷のバランスを検知する手段として、例えば、EC材料の光吸収を利用する手法、電極電位測定を利用する手法等がある。EC材料の光吸収を利用する場合、具体的な手法としては、EC素子中に含まれているアノード性材料、カソード性材料のそれぞれに特徴的な吸収波長における光の吸収量を比較することによって行うことができる。より具体的には以下のような例が挙げられる。例えば、アノード材料、カソード材料のそれぞれに特徴的な吸収波長の光源を準備してEC素子に入射させ、出射された光を受光素子で検知することによって行うことができる。そして、各吸収波長における吸光度の初期消色状態からの変化量を求め、この変化量に差がある場合、電荷バランスは、変化量が大きい方のEC材料が、吸光度の変化量に比例する程度で色残りしていると判断することができる。この検知の際に使用される光源、検出器としては、検出に必要な光強度、感度があり、EC素子の用途としての特性に悪影響を及ぼさないものでああれば、制限なく使用することができる。光源として、例えば、LED等が挙げられる。受光素子として、例えば、フォトダイオード等が挙げられる。これら光源、検出器、また検出器からの信号に基づく検知、設定条件から続く工程を選択すること等を行う回路等は、EC素子を備えるEC装置に付帯させてもよい。EC装置に付帯させることによって、EC装置を交換した場合等においても、そのEC素子に特有の特性を確実に反映させた動作を実現できる。一方で、必要に応じてEC装置以外の部材に持たせてもよい。例えば、EC装置が窓に使用される場合であれば、窓枠等に付帯させてもよい。また、カメラに使用される場合であれば、カメラ本体等に付帯させてもよい。このことは、体積制限の緩和や、回路の共通利用可能性が向上させる点で好ましい。また、検知の手法については、部品点数の制限等の理由から、使用者が目視で判断して情報を入力(例えば、ボタンを押す)等の方法を選択することもできる。
EC素子の電荷のバランスを検知する手法として電極電位測定を利用する場合、具体的な方法としては、参照電極等を用いて、第一の電極1かつ/又は第二の電極2の電位を測定することが挙げられる。以下に具体例を挙げて説明する。尚、以下の説明は、極性が逆であればカソード性のEC材料の着色が残る場合も当てはまるため、両方の場合を代表してアノード性のEC材料の色残りについて説明する。ここで、EC素子の透過率を最大化させる動作、例えば、第一の電極1と第二の電極2との短絡を行ってもなお電荷のインバランスによってアノード性のEC材料の着色が残る場合、即ち、アノード性のEC材料の一部が酸化体のままとなっている場合を考える。このとき、EC素子中のカソード性のEC材料は、ほぼ還元状態(消色状態)であるために、第一の電極1かつ/又は第二の電極2の電位は、アノード性のEC材料の酸化体と還元体との比によって規定されると考えられる。EC材料として用いられる材料は、一般的に高い可逆性を持つ酸化還元特性を示す。これは、逆に示さないとその応答性、耐久性が低下したり、消費電力が増大したりするためである。従って、第一の電極1かつ/又は第二の電極2の電位は、ネルンストの式に従い、アノード性のEC材料の標準電極電位から、その酸化体と還元体との濃度比(正確には活量比)の自然対数に比例して、わずかにずれた値を示すことになる。このことを利用して、電荷のバランスの状態を検知することができる。例えば、アノード性のEC材料及びカソード性のEC材料が電解質中に溶解し、かつ自由に動ける場合では、第一の電極1かつ/又は第二の電極2の電位は、アノード性のEC材料又はカソード性のEC材料のいずれの酸化還元電位に近いかによって判断できる。例えば、電極電位が、カソード性のEC材料の酸化還元電位に近ければ、電荷のバランスは、カソード性のEC材料が色残りする方向であると判断でき、その差の大小が電荷インバランスの程度を反映する。また、アノード性のEC材料とカソード性のEC材料とが第一の電極1、第二の電極2のそれぞれに固定化されている場合は、EC材料を固定化した電極の電位が、対応する固定化材料の酸化還元電位からどちらの方向にどの程度ずれているかを測定する。このずれから、電荷インバランスの極性と程度を判断することができる。以下に例を記述する。カソード性のEC材料を固定化した電極の電位が、カソード性EC材料がほぼ酸化体であると考えられる(酸化還元電位に比して十分に正な)電位にあるとする。それと同時に、アノード性のEC材料を固定化した電極の電位がアノード性EC材料の酸化体と還元体とが共存していると考えられる程度に酸化還元電位に近い場合を想定する。この場合、電荷のバランスは、アノード性のEC材料が色残りする方向で、その程度が電荷インバランスの程度であると判断することができる。上述の光検知と同様、これらの検知、設定条件から続く工程の選択等を行う回路等は、EC装置に付帯させてもよいし、EC装置以外の部材に持たせてもよい。
図4は、本発明のEC素子の制御回路の例を示す模式図である。図4の制御回路には、可変電圧源24と、可変電圧源24と各電極(1,2,3)との間に設けられるスイッチ25,26,27を有する。通常の駆動時にはスイッチ25,27をオン状態、スイッチ26をオフ状態にして、第一の電極1と第二の電極2との間に電圧を印加する。一方、電荷のリバランスを行う際は、以下のいずれかを選択する。
(a)スイッチ25,26をオン状態、スイッチ27をオフ状態にして、第一の電極1と第三の電極3との間に電圧を印加する。
(b)スイッチ26,27をオン状態、スイッチ25をオフ状態にして、第二の電極2と第三の電極3との間に電圧を印加する。
(c)スイッチ25,26,27を全てオン状態にして、第一の電極1と第2の電極と第三の電極3との間に電圧を印加する。
9.効果
本発明では、第三の電極3を用いることで、EC素子の電荷のインバランスによる消色不良を解消することができる。代表的な例としては、EC素子の透過率を最大化させる動作をした際にも残存するEC材料の着色体を、消色体に変換することで、透過率を向上させることができる。この電荷のインバランスによる消色不良に対する対策としては、例えば、特許文献1に示されるレドックスバッファーを用いる方法がある。
しかし、「発明が解決しようとする課題」にて説明したように、レドックスバッファーを用いる方法では、表示電極間における電荷のインバランスが解消されるわけがない。そのため、このEC素子の着色時のスペクトルにおける、アノード性EC材料の着色体の寄与分とカソード性EC材料の着色体の寄与分との比を修正することができない。
これに対し、本発明の手法、即ち、第三の電極3を用いる手法は、酸化還元物質を有する第三の電極3を電荷の調整に用いることで、表示電極間における崩れた電荷のバランスをリバランスするものである。別の言い方をすると、EC素子全体としては、電荷のバランスは変化しないが、表示電極間における電荷のインバランスは、酸化還元物質を有する第三の電極3が引き取るということになる。この場合、EC材料を着色させるときは第三の電極3を使わずに第一の電極1、第二の電極2だけを駆動させるため、電荷のインバランスにより着色時のスペクトルにおけるアノード材の寄与分と、カソード材の寄与分との比が変化した状態が再現することはない。そのため、本発明の手法を用いることで前述のEC素子の着色時のスペクトルを修正することができる。
以下、図面を参照しながら説明する。図5(a)は、本発明に該当しないEC素子の吸収スペクトルを示す図であり、図5(b)は、本発明のEC素子の吸収スペクトルを示す図である。尚、図5(a)及び(b)は、アノード性のEC材料及びカソード性のEC材料を用いた時のEC素子の吸収スペクトル(縦軸:吸光度、横軸:波長)の計算例を示している。ここでアノード性のEC材料は、455nm及び500nmに、カソード性のEC材料は、605nmにそれぞれ特徴的な吸収ピークを有している。このEC素子の電荷のバランスが正常な場合、このEC素子の吸収スペクトルは、図5(a)中のスペクトルaで表される。ここで、このEC素子の電荷のバランスがカソード性のEC材料の着色体が残存する方向に変化した場合の吸収スペクトルは、図5(a)及び(b)中のスペクトルbで表される。このときのEC素子の着色時の吸収スペクトルは、図5(a)及び(b)中のスペクトルcとなり、電荷のバランスが正常な状態のスペクトルaより、アノード性のEC材料の吸収(455nm、500nm)が低下することになる。この電荷のバランスの変化によるスペクトルの変化はレドックスバッファーを使用しても解消できない。
しかし、本発明の手法では、崩れた電荷のバランスをリバランスできるために、図5(b)中のスペクトルdのように、電荷のバランスが正常な状態のスペクトルを保持することができる。尚、図5(b)中のスペクトルdは、図5(a)中のスペクトルaとよく一致しているので、本発明のEC素子では正常な状態のスペクトルを保持されることが図5で示されている。
このため、本発明の手法(酸化還元物質を有する第三の電極を用いる手法)では、特許文献1の様にレドックスバッファーを用いた場合の課題を解決することができる。即ち、通常のEC素子の着色動作における消費電力の増大、応答速度の低下や、アノード性のEC材料の着色体とカソード性のEC材料の着色体との比の変化を解決することができる。
10.用途等
本発明のEC素子は、光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材等の構成部材として用いることができる。
(光学フィルタ)
本発明の光学フィルタは、本発明のEC素子と、このEC素子に電気接続される能動素子とを有している。EC素子に電気接続される能動素子として、具体的には、EC素子の透過率を制御するためのトランジスタ等が挙げられる。トランジスタとして、例えば、TFTやMIM素子が挙げられる。ここでTFTは、薄膜トランジスタとも呼ばれ、その構成材料としては、半導体や酸化物半導体が用いられる。
(レンズユニット)
本発明のレンズユニットは、複数のレンズを有する撮像光学系と、本発明のEC素子を有する光学フィルタとを有している。レンズユニットを構成する光学フィルタは、複数あるレンズとレンズとの間に設けてもよいし、レンズの外側に設けてもよい。本発明のレンズユニットは、光学フィルタにより、撮像光学系を通過する光又は通過した光の光量を調整することができる。
(撮像装置)
本発明の撮像装置は、光学フィルタと、この光学フィルタを通過した光を受光する撮像素子とを有する。撮像装置を構成する撮像素子は、光学フィルタを透過した光を受光する素子であり受光素子とも呼ばれる素子である。
撮像装置として、具体的には、カメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話等が挙げられる。撮像装置は、撮像光学系が着脱可能であること、即ち、撮像素子を有する本体と、レンズを有するレンズユニットとが分離できる形態であってもよい。
ここで撮像装置が、本体と、レンズユニットとで分離できる場合は、撮像時に撮像装置とは別体の光学フィルタを用いる形態も本発明に含まれる。尚、係る場合、光学フィルタの配置位置としては、レンズユニットの外側、レンズユニットと受光素子との間、複数あるレンズの間(レンズユニットが複数のレンズを有する場合)等が挙げられる。
本発明のEC素子を撮像装置の構成部材として用いる場合、EC素子の配置位置は特に限定されない。例えば、撮像光学系の前であってもよいし、撮像素子の直前であってもよい。例えば、本発明のEC素子を撮像素子につながる撮像光学系の光路内に設けることにより、撮像素子が受光する光量もしくは入射光の波長分布特性を制御することができる。またこの撮像光学系は、レンズ系ともいうことができる。撮像光学系の例としては、複数のレンズを有するレンズユニット等が挙げられる。
またこの本発明のEC素子が撮像装置に用いられる場合、EC素子が消色状態では高透明性を発揮できるので、入射光に対して充分な透過光量が得られ、また着色状態では入射光を確実に遮光及び変調した光学的特性が得られる。
レンズユニットを着脱可能な、撮像装置が光学フィルタを有する場合、レンズユニットを取り付けた際に、レンズユニットと、撮像素子との間に配置されるよう設けられてよい。
撮像装置が撮像光学系を有する場合、光学フィルタはレンズとレンズとの間に配置されても、レンズと撮像素子との間に配置されてもよく、光学フィルタと撮像素子との間に撮像光学系が配置されるように光学フィルタを配置されてもよい。
本発明のEC素子をカメラ等の撮像装置に用いた場合、撮像素子のゲインを下げることなく、光量を低減することができる。
図6は、本発明の撮像装置における実施形態の例を示す模式図である。図6の撮像装置100は、レンズユニット102と、撮像ユニット103と、を有し、レンズユニット102は、マウント部材(不図示)を介して撮像ユニット103に着脱可能に接続されている。また撮像ユニット103内、具体的には、レンズユニット102内に光学フィルタ101が配置されている。
図6において、レンズユニット102は、複数のレンズあるいはレンズ群を有するユニットであり、絞りより撮像素子110側でフォーカシングを行うリアフォーカス式のズームレンズである。
図6において、レンズユニット102は、物体側より順に正の屈折力の第1のレンズ群104、負の屈折力の第2のレンズ群105、正の屈折力の第3のレンズ群106、正の屈折力の第4のレンズ群107の4つのレンズ群を有する。図6においては、第2のレンズ群105と第3のレンズ群106と、の間に開口絞り108を有する。図6の撮像装置100は、第2のレンズ群105と第3群のレンズ群106との間隔を変化させて変倍を行い、第4のレンズ群107の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行う。図6において、レンズユニット102は、第2のレンズ群105と第3のレンズ群106との間に開口絞り108を有する。レンズユニット102を通過する光は、各レンズ群(102乃至107)、開口絞り108及び光学フィルタ101を通過して撮像素子110に受光されるように各部材が配置されている。撮像素子110が受光する光の光量は開口絞り108及び光学フィルタ101を用いて調整を行うことができる。図6において、撮像ユニット103は、ガラスブロック109と撮像素子110とを有する。またガラスブロック109と撮像素子110との間には光学フィルタ101が配置されている。
ガラスブロック109は、具体的には、ローパスフィルタやフェースプレートや色フィルタ等のガラスブロックである。
撮像素子110は、レンズユニット102を通過した光を受光するセンサ部であって、CCDやCMOS等の撮像素子を使用することができる。また、フォトダイオードのような光センサであってもよく、光の強度あるいは波長の情報を取得し出力するものを適宜利用可能である。
図6において、撮像ユニット103には、光学フィルタ101が、撮像ユニット103内のガラスブロック109と、撮像素子110と、の間に配置されている。本発明の撮像装置において、光学フィルタ101の配置位置は特に限定されるものではなく、例えば、第3のレンズ群106と第4のレンズ群107との間に配置されてもよいし、レンズユニット102の外側に配置されていてもよい。
尚、光の収束する位置に光学フィルタ101を配置と、光学フィルタ101の面積を小さくできる等の利点がある。また本発明の撮像装置では、レンズユニット102の形態も適宜選択可能であり、リアフォーカス式の他、絞りより前でフォーカシングを行うインナーフォーカス式であってもよく、その他方式であってもよい。また、ズームレンズ以外にも魚眼レンズやマクロレンズなどの特殊レンズも適宜選択可能である。
このような撮像装置は、光量調整と撮像素子の組合せを有する製品等が挙げられ、例えば、カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話やスマートフォン、PC、タブレットなどの撮像部位であってもよい。
(窓材)
本発明の窓材は、一対の透明基板と、これら透明基板の間に設けられるEC素子と、このEC素子の透過率を制御するための能動素子とを有している。この能動素子は、EC素子に接続されているが、EC素子への接続形態については、直接に接続された形態でもよいし、間接に接続された形態でもよい。本発明の窓材は、透明基板を透過する光の光量をEC素子により調整することができる。またこの窓材に、窓枠等の部材を加えることで窓として使用することができる。本発明の窓材は、航空機、自動車、住宅等の窓に用いることができる。またEC素子を有する窓材は、電子カーテンを有する窓材と呼ぶこともできる。
図7は、本発明の窓材における実施形態の例を示す模式図であり、図7(a)は斜視図、図7(b)は、図7(a)のX−X’断面図である。
図7の窓材111は、調光窓であり、EC素子114(ただし、第三の電極3は不図示)と、EC素子114を挟持する透明板113と、全体を囲繞して一体化するフレーム112と、からなる。尚、図7の窓材111の駆動手段は、フレーム112内に一体化されていてもよいし、フレーム112の外部に配置された配線を通してEC素子114と接続されていてもよい。
図7の窓材111において、透明板113は、光透過率が高い材料であれば特に限定されず、窓としての利用を考慮すればガラス素材であることが好ましい。図7において、EC素子114は透明板113とは独立した構成部材であるが、例えば、EC素子114を構成する基板(7,8)を透明板113と見立てても構わない。
図7の窓材111において、フレーム112の材質は特に問われないが、EC素子114の少なくとも一部を被覆し一体化された形態を有するもの全般をフレーム112とみなしても構わない。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[合成例1]化合物1の合成
アノード性のEC材料である化合物1を、以下に示す合成スキームに従って合成した。
Figure 2017016110
50mlの反応容器に、下記に示す試薬、溶媒を投入した。
XX−1(2,5−ジブロモエチレンジオキシチオフェン):500mg(1.67mmol)
2−イソプロポキシ−6−メトキシフェニルボロン酸:1.05g(5.0mmol)
トルエン:10ml
テトラヒドロフラン:5ml)
次に、窒素を用いて、溶液中に存在する酸素(溶存酸素)を除去した。
次に、窒素雰囲気下にて下記に示される試薬を添加した。
Pd(OAc)2:19mg(0.083mmol)
2−ジシクロヘキシルフォスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−Phos):89mg(0.22mmol)
りん酸三カリウム:1.92g(8.35mmol)
次に、反応溶液を110℃にて加熱還流しながら7時間反応を行った。
次に、反応溶液を室温まで冷却した後、減圧濃縮することで粗生成物を得た。次に、得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/酢酸エチル=4/3)を用いて分離精製することにより、化合物1を白色固体粉末として420mg(収率54%)得た。
MALDI−MS測定により、得られた化合物のM+である470を確認した。また得られた化合物のNMRスペクトルの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)σ(ppm):7.21(t,2H),6.63(d,2H),6.60(d,2H),4.41(m,2H),4.20(s,4H),3.81(s,6H),1.25(s,6H),1.24(s,6H).
[合成例2]化合物2の合成
カソード性のEC材料である化合物2は、Cinnsealach等の文献(Solar Energy Materials and Solar Cells 57巻(1999年)107−125頁に基づいて合成した。
Figure 2017016110
[合成例3]化合物3の合成
カソード性の酸化還元物質である化合物3は、Cinnsealach等の文献(Solar Energy Materials and Solar Cells 57巻(1999年)107−125頁に基づいて合成した。尚、化合物3は、EC性を有する化合物である。
Figure 2017016110
[合成例4]化合物4の合成
アノード性のEC材料である下記化合物4は、Cummins等の文献(Journal of Physical Chemistry B 104巻 (2000年) 11449−11459項に基づいて合成した。
Figure 2017016110
[実施例1]
(素子の作製)
図8に示されるEC素子30aを、以下の工程により作製した。
(1)透明導電性ガラスの準備
まずフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜が成膜されている透明導電性ガラス(TEC15、日本板硝子製)を二枚用意した。
(2)基板の作製
次に、ダイヤモンド工具を用いて、透明導電性ガラスが有するFTO膜の一部を除去して、FTO膜を三つに分割した。具体的には、第一の電極31又は第二の電極32となる中央の領域に設けられるFTO膜42と、第一の電極31又は第二の電極32とは電気的に独立している第三の電極の形成領域となる両端の領域に設けられるFTO膜33aとに分割した。
(3)第三の電極の作製
アンチモンドープ酸化スズナノ粒子(石原産業社製)12gと、濃硝酸2mLと、水200mLと、を混合し、80℃で8時間攪拌後、真空乾燥1日行うことで、酸化スズナノ粒子のケーキを得た。次に、このケーキ4gに、水20mLと、ポリエチレングリコール1.2gと、ヒドロキシプロピルセルロース0.4gと、を加えた後、15日間撹拌を行うことでスラリーを調製した。次に、このスラリーを、第三の電極33の形成領域に設けられるFTO膜33aの上に塗布形成した後、500℃、30分の条件で焼成することで、アンチモンドープ酸化スズナノ粒子膜(以下、「ナノ粒子膜」ということがある。)を得た。このとき、形成したナノ粒子膜の比表面積は450cm2/cm2であった。
次に、当該ナノ粒子膜に、5mMの1,1’−フェロセンジカルボン酸(Fc(COOH)2)のエタノール溶液を塗布し、終夜静置した後、当該ナノ粒子膜をエタノールにより洗浄、乾燥させた。これにより、当該ナノ粒子膜に1,1’−フェロセンジカルボン酸(Fc(COOH)2)を固定化させた。次に、テトラフルオロホウ酸ニトロシルを用いて、当該ナノ粒子膜に固定化されたフェロセンジカルボン酸の半分に相当する量を酸化させた。これにより、当該ナノ粒子膜に固定化された酸化還元物質(フェロセンジカルボン酸)の酸化体と還元体との比をおよそ1:1とした。以上により、当該ナノ粒子膜に非EC性の酸化還元物質(フェロセンジカルボン酸)が固定化された第三の電極33を作製した。
(4)基板の接着
第三の電極33を形成した二枚の透明導電性ガラスに、シール材35として、100μmのスペーサービーズを混合したUV硬化性の接着剤(TB3035B、スリーボンド社製)を、注入口40を残した外周に塗布した。またビーズを含まない同接着剤を、40μm高となるように、第一の電極31又は第二の電極32と第三の電極33との間に塗布して隔壁36を形成した。その後、第一の電極31と第二の電極32とが対向するように、また第三の電極33同士が対向するように、電極取出部位39が露出するように、二枚の透明導電性ガラスを重ね合わせた。次に、第三の電極33にUV光が当たらないようにマスクをした状態でUV光を照射することで、接着剤を硬化させた。これにより、基板37と基板38とを接着させた。
(5)電解質溶液の注入
0.1Mテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートの炭酸プロピレン(PC)溶液に、アノード性のEC材料である化合物1と、カソード性のEC材料であるエチルビオロゲンヘキサフルオロリン酸塩と、を溶解させて電解質溶液を調製した。このとき電解質溶液に含まれる化合物1の濃度は20mMであり、エチルビオロゲンヘキサフルオロリン酸塩の濃度は20mMであった。次に、この電解質溶液(電解質34)を注入口40から注入した後、前述のUV硬化性接着剤で封止41をすることで、EC素子30aを得た。
(酸化還元電位の測定)
本実施例で使用したEC材料及び酸化還元物質について、酸化還元電位を測定した。以下に、その具体的な方法を説明する。
0.1Mテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートの炭酸プロピレン(PC)溶液に、EC材料(化合物1、エチルビオロゲンヘキサフルオロリン酸塩)及び酸化還元物質(フェロセンジカルボン酸)をそれぞれ1mMで溶解させた溶液を調製した。次に、FTOを作用電極、白金を対電極、Ag/Ag+(PF6,PC)を参照電極として用いてCV測定を行った。その結果、化合物の半波電位(酸化還元電位)は、それぞれ下記表1の通りであった。
Figure 2017016110
この結果から、本実施例において、第三の電極が有する酸化還元物質の還元体は、アノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすいことが確認された。また、第三の電極が有する酸化還元物質の酸化体は、カソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすいことが確認された。
(EC素子の耐久駆動)
得られたEC素子について、耐久駆動の実験を行った。まず第三の電極33と、第一の電極31及び第二の電極32との間を非接続状態とした上で、第一の電極31と第二の電極32との間における1.62Vの電圧の印加と、第一の電極31と第二の電極32との間の短絡と、からなるEC素子の駆動動作を繰り返し行った。尚、このEC素子の繰り返し駆動の際に、両電極(31、32)間の電圧の印加によりEC素子に含まれる電解質溶液は着色状態になり、両電極(31、32)間の短絡によりEC素子に含まれる電解質溶液は消色状態になる。また、このEC素子の繰り返し駆動の際に、両電極(31、32)間の電圧の印加を5秒行い、両電極(31、32)間の短絡を10秒行った。一方、両電極(31、32)間の短絡を行う際に、後半8秒について、第三の電極33と第一の電極31及び第二の電極32と間の電圧を0V(短絡状態)に制御した。
電荷のインバランスによる消色不良は、目視及び分光器を用いて確認した。分光器を用いた消色の確認は以下の要領で行った。具体的には、光源(オーシャンオプティクス製DH−2000S)から光ファイバを通じて第一の電極31及び第二の電極32を透過した光を、分光器(同社製、USB4000)を用いて検出した。このとき透過光の光路が第一の電極31及び第二の電極32を透過し、第三の電極33が光路から外れるようEC素子30aを配置した。
[比較例1]
実施例1において、EC素子を作製する際に、工程(2)及び(3)を省略したこと以外は、実施例1と同様の方法によりEC素子を作製した。尚、本比較例においては、透明導電性ガラスに形成されているFTO膜は、図8中の第一の電極31又は第二の電極32に相当する。
また得られたEC素子において、第一の電極と第二の電極との間における1.62Vの電圧の印加と、第一の電極と第二の電極との間の短絡と、からなるEC素子の駆動を繰り返し行った。
(EC素子の耐久駆動の結果)
実施例1及び比較例1について、EC素子の耐久駆動の結果を下記表2にまとめた。
両電極(31、32)間の電圧の印加と、両電極(31、32)間の短絡とからなる駆動動作のサイクルを繰り返し行うと、第三の電極33を持たない比較例1のEC素子では消色不良が発生した。具体的には、短期的に見ると、ピークトップが445nmである薄黄色のアノード性の電荷のインバランスによる消色不良が発生した。この消色不良は、化合物1のラジカルカチオンに起因している。一方、長期的に見ると、ピークトップが605nmである青色のカソード性の電荷のインバランスによる消色不良が発生した。この消色不良は、エチルビオロゲンのラジカルカチオンに起因している。
これに対し、酸化還元物質を有する第三の電極33が備わっている実施例1のEC素子では、電荷のインバランスに起因する消色不良が観測されず、効果的に電荷のリバランスが行われていることが確認された。
Figure 2017016110
以上より、アノード性のEC材料及びカソード性のEC材料を有するEC素子において、以下の条件を満たすことにより、EC素子30aが有する第三の電極33によって効果的に電荷のインバランスの調整が行われ、消色不良が抑制されることが確認された。
(1a)第三の電極33が有する酸化還元物質よりも酸化還元電位が正のアノード性のEC材料を有すること(第三の電極33が有する酸化還元物質の還元体が、アノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすいこと。)。
(1b)第三の電極33が有する酸化還元物質よりも酸化還元電位が負のカソード性のEC材料を有すること(第三の電極33が有する酸化還元物質の酸化体が、カソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすいこと。)。
(1c)第三の電極33が、第一の電極31又は第二の電極32の周囲の少なくとも一部に配置されることで消色不良が均一に低減されること。
(1d)初期状態において、第三の電極33が、酸化還元物質の酸化体及び還元体を有していること。
(1e)第三の電極33と、第一の電極31又は第二の電極32との間の電位差を制御する手段を有すること。
(1f)消色動作時に第三の電極と、第一の電極31又は第二の電極32と間を短絡する手段を有すること。
[実施例2]
(素子の作製)
図9に示されるEC素子30bを、以下の工程により作製した。
(1)透明導電性ガラスの準備
実施例1で使用したフッ素ドープ酸化スズ膜(FTO膜)付透明導電性ガラスを二枚用意した。
(2)基板の作製
実施例1(2)と同様の方法により、用意した透明導電性ガラスを加工して電極付基板を作製した。
(3)第二の電極(多孔質電極)の作製
第二の電極32を設ける電極付基板(基板38)において、市販の酸化チタンナノペースト(Nanoxide−HT、ソーラロニクス製)を、第二の電極32を設ける領域に沿ってFTO膜32a上に塗布した後、500℃30分の条件で酸化チタンナノペーストを焼成して第二の電極32を形成した。次に、形成した第二の電極32に、カソード性のEC材料である化合物2の5mM水溶液を一晩浸漬し、水洗、乾燥することで、カソード性のEC材料が固定化された第二の電極32を形成した。
(4)第一の電極(多孔質電極)、第三の電極の作製
実施例1(3)と同様の方法により、アンチモンドープ酸化スズナノ粒子のスラリーを調製した。次に、第一の電極31及び第三の電極33を設ける電極付基板(基板37)において、先程調製したスラリーを、第一の電極31を設ける領域及び第三の電極33を設ける領域に沿ってFTO膜(31a、33a)上に塗布した後、500℃30分の条件で塗布物を焼成した。これにより、第一の電極31及び第三の電極33を設ける領域に、アンチモンドープ酸化スズナノ粒子膜(ナノ粒子膜)を形成した。
次に、第三の電極33を設ける領域に形成されているナノ粒子膜に、カソード性の酸化還元物質(EC性化合物)である化合物3の1mM水溶液を塗布し、終夜静置した。次に、ナノ粒子膜を洗浄、乾燥することで、酸化還元物質である化合物3を固定化させた第三の電極33を形成した。この後、第一の電極31を設ける領域に形成されているナノ粒子膜に、アノード性の酸化還元物質(非EC性化合物)である1,1’−フェロセンジカルボン酸の5mMエタノール溶液を塗布し、終夜静置した。次に、ナノ粒子膜をエタノール洗浄、乾燥することで、酸化還元物質を有する第一の電極31を形成した。
(酸化・還元のしやすさの評価)
第三の電極33に固定化された酸化還元物質(化合物3)と、カソード性のEC材料(化合物2)とのどちらが酸化されやすいか、については、以下に説明する方法で行った。まず化合物2のメタノール溶液に還元材であるアミンを含むエポキシ接着剤の硬化剤(ボンドクイック5B剤)を添加し、化合物2を還元状態(青色)にした。次に、窒素雰囲気下、酸化還元物質(化合物3)を固定したアンチモンドープ酸化スズナノ粒子膜(ナノ粒子膜)上に、還元状態の化合物2を有する溶液を滴下した。すると、化合物2由来の青色が消失し、代わってナノ粒子膜が薄黄緑色に変化した。このようにナノ粒子膜が薄黄緑色に変化したのは、化合物3が還元されたことを意味する。
これにより、化合物2(カソード性のEC材料)の還元体から化合物3(酸化還元物質(EC性化合物))の酸化体への電子移動が確認されたため、このカソード性のEC材料は、第三の電極33が有する酸化還元物質よりも酸化されやすいことが確認できた。一方で、フェロセンジカルボン酸の5mMエタノール溶液を、化合物3が固定されているナノ粒子膜上に滴下してもこのナノ粒子膜は薄黄緑色には着色しなかった。以上より、第三の電極33が有する酸化還元物質の還元体は、この第一の電極31が有するアノード性の酸化還元物質の還元体よりも酸化されやすいということがわかった。
(5)基板の接着
第二の電極32となる多孔質電極が形成されている透明導電性ガラスに、シール材35として、UV硬化性の接着剤(TB3035B、スリーボンド社製)を、注入口40を残した外周に塗布した。次に、二枚の透明導電性ガラスを、その後、第三の電極33と第二の電極32を有する透明導電性ガラスに設けられるFTO膜とが対向するように、二枚の透明導電性ガラス(基板37,38)を重ね合わせた。尚、透明導電性ガラスを重ね合せる際に、第一の電極31と第二の電極32とが重なり、電極取り出し部位39が露出するようにした。次に、三種類の多孔質電極(31、32、33)のいずれにもUV光が当たらないようにマスクをした状態でUV光を照射することで、接着剤を硬化させた。これにより、基板37と基板38とを接着させた。
(6)電解質溶液の注入
電解質溶液である0.1M過塩素酸リチウムの炭酸プロピレン溶液(電解質34)を注入口40から注入した後、前述のUV硬化性接着剤で封止41をすることで、EC素子30bを得た。
(EC素子の耐久駆動)
得られたEC素子について、耐久駆動の実験を行った。まず第三の電極33と、第一の電極31及び第二の電極32との間を非接続状態とした上で、第一の電極31と第二の電極32との間における1.8Vの電圧の印加と、第一の電極31と第二の電極32との間の短絡と、からなるEC素子の駆動動作を繰り返し行った。尚、このEC素子の繰り返し駆動の際に、両電極(31、32)間の電圧の印加によりEC素子に含まれる電解質溶液は着色状態になり、両電極(31、32)間の短絡によりEC素子に含まれる電解質溶液は消色状態になる。また、このEC素子の繰り返し駆動の際に、両電極(31、32)間の電圧の印加を3秒行い、両電極(31、32)間の短絡を5秒行った。一方、両電極(31、32)間の短絡を行う際に、後半3秒について、第三の電極33と第一の電極31及び第二の電極32と間の電圧を0V(短絡状態)に制御した。
電荷のインバランスによる消色不良は、実施例1と同様の方法により確認した。尚、分光器を用いた消色不良の確認の際は、透過光の光路が第一の電極31及び第二の電極32を透過し、第三の電極33が光路から外れるようEC素子30bを配置した。
[比較例2]
実施例2において、EC素子を作製する際に、工程(2)を省略し、工程(4)において第三の電極の作製を省略したこと以外は、実施例2と同様の方法によりEC素子を作製した。尚、本比較例においては、透明導電性ガラスに形成されているFTO膜の上に、図9の第一の電極31又は第二の電極32に相当する多孔質膜が形成されている。
また得られたEC素子において、第一の電極と第二の電極との間における1.8Vの電圧の印加と、第一の電極と第二の電極との間の短絡と、からなるEC素子の駆動を繰り返し行った。
(EC素子の耐久駆動の結果)
実施例2及び比較例2について、EC素子の耐久駆動の結果を下記表3にまとめた。
両電極(31、32)間の電圧の印加と、両電極(31、32)間の短絡とからなる駆動動作のサイクルを繰り返し行うと、第三の電極を持たない比較例2のEC素子では消色不良が発生した。具体的には、短期から長期にかけて、ピークトップが535nmである青紫色のカソード性の電荷のインバランスによる消色不良が発生した。この消色不良は、化合物2のラジカルカチオンに起因している。
これに対し、酸化還元物質を有する第三の電極33が備わっている実施例2のEC素子では、電荷のインバランスに起因する消色不良が観測されず、効果的に電荷のリバランスが行われていることが確認された。尚、実施例2のEC素子では、耐久駆動を行う際に、第三の電極33が薄黄緑色に着色した。この着色によって、酸化還元物質を有する第三の電極33を用いることで効果的に電荷のリバランスが行われていることがより明確に確認された。
Figure 2017016110
以上より、以下の事項が確認できた。
(2a)第一の電極31が有するアノード性の酸化還元物質と、第二の電極32が有するカソード性のEC材料を有するEC素子において、以下の条件を満たせば、第三の電極33によって効果的に電荷のインバランスの調整が行われ、消色不良が抑制されること。
(2a−1)第三の電極33が有する酸化還元物質の酸化体が、カソード性の有EC材料の酸化体よりも還元されやすいこと。
(2a−2)第三の電極33が有する酸化還元物質の還元体が、第一の電極31が有するアノード性の酸化還元物質の還元体よりも酸化されやすいこと。
(2a−3)第三の電極33を、第一の電極31又は第二の電極32の周囲の少なくとも一部に配置することによって消色不良が均一に低減されること。
(2a−4)第三の電極33と、第二の電極32との間の電位差を制御する手段を有すること。
(2a−5)消色動作時に第三の電極33と第二の電極32との間を短絡する手段を有すること。
(2b)酸化還元物質やEC材料を、第一の電極31や第二の電極32に固定化させた場合でも電荷のインバランスの調整が効果的に実施できること。
(2c)第三の電極33が有する酸化還元物質がEC性を有することで、電荷のリバランス状況を容易に確認できること。
[実施例3]
(素子の作製)
図10に示されるEC素子30cを、以下の工程により作製した。
(1)透明導電性ガラスの準備
まず実施例1で用いた透明導電性ガラス(TEC15、日本板硝子製)を二枚用意した。
(2)基板の作製
次に、実施例1(2)と同様の方法により、透明導電性ガラスが有するFTO膜の一部を除去した。これにより、透明導電性ガラスが有するFTO膜は、第一の電極31又は第二の電極32となる中央の領域に設けられるFTO膜42と、第一の電極31又は第二の電極32とは電気的に独立している第三の電極の形成領域となる両端の領域の設けられるFTO膜33aとに分割された。
(3)第三の電極の形成
実施例1(3)と同様の方法により、第三の電極の形成領域にあるFTO膜33a上にアンチモンドープ酸化スズナノ粒子膜(ナノ粒子膜)を形成した。
次に、一枚目の透明導電性ガラス(基板37)が有するナノ粒子膜に、実施例1(3)と同様の方法により、1,1’−フェロセンジカルボン酸(Fc(COOH)2)を固定化させた。次に、二枚目の透明導電性ガラス(基板38)が有するナノ粒子膜に、実施例2(4)と同様の方法により、化合物3を固定化させた。これにより、酸化還元物質が固定化された第三の電極、具体的には、基板37が有する第三の電極33bと、基板38が有する第三の電極33cとを作製した。
(4)基板の接着
第三の電極(33b、33c)を形成した二枚の透明導電性ガラス(基板37,38)に、シール材35として、100μmのスペーサービーズを混合したUV硬化性の接着剤(TB3035B、スリーボンド社製)を、注入口40を残した外周に塗布した。また実施例1(4)と同様の方法により隔壁36を形成した。その後、第一の電極31と第二の電極32とが対向するように、また第三の電極(33b、33c)同士が対向するように、電極取り出し部位39が露出するように二枚の透明導電性ガラスを重ね合わせた。次に、第三の電極(33b、33c)にUV光が当たらないようにマスクをした状態でUV光を照射することで、接着剤を硬化させた。これにより、基板37と基板38とを接着させた。
(5)電解質溶液の注入
0.1Mテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートの炭酸プロピレン(PC)溶液に、アノード性のEC材料である化合物1と、カソード性のEC材料であるエチルビオロゲンヘキサフルオロリン酸塩と、を溶解させて電解質溶液を調製した。このとき電解質溶液に含まれるアノード性のEC材料である化合物1の濃度は20mMであり、カソード性のEC材料であるエチルビオロゲンヘキサフルオロリン酸塩の濃度は20mMであった。次に、この溶液状の電解質34を注入口40から注入した後、前述のUV硬化性接着剤で封止41をすることで、EC素子30cを得た。
(EC素子の耐久駆動)
得られたEC素子について、耐久駆動の実験を行った。まず第三の電極(33b、33c)と、第一の電極31及び第二の電極32との間を非接続状態とした上で、第一の電極31と第二の電極32との間における1.62Vの電圧の印加と、第一の電極31と第二の電極32との間の短絡と、からなるEC素子の駆動動作を繰り返し行った。尚、このEC素子の繰り返し駆動の際に、両電極(31、32)間の電圧の印加によりEC素子に含まれる電解質溶液は着色状態になり、両電極(31、32)間の短絡によりEC素子に含まれる電解質溶液は消色状態になる。また、このEC素子の繰り返し駆動の際に、両電極(31、32)間の電圧の印加を5秒行い、両電極(31、32)間の短絡を10秒行った。一方、両電極(31、32)間の短絡を行う際に、後半8秒について、第三の電極(33b、33c)と第一の電極31及び第二の電極32と間の電圧を0V(短絡状態)に制御した。
電荷のインバランスによる消色不良は、目視及び分光器を用いて確認した。分光器を用いた消色の確認は以下の要領で行った。具体的には、光源(オーシャンオプティクス製DH−2000S)から光ファイバを通じて第一の電極31及び第二の電極32を透過した光を、分光器(同社製、USB4000)を用いて検出した。このとき透過光の光路が第一の電極31及び第二の電極32を透過し、第三の電極(33b、33c)が光路から外れるようEC素子を配置した。
[比較例3]
実施例3において、EC素子を作製する際に、工程(2)及び(3)を省略したこと以外は、実施例3と同様の方法によりEC素子を作製した。尚、本比較例においては、透明導電性ガラスに形成されているFTO膜は、図10中の第一の電極31又は第二の電極32に相当する。
また得られたEC素子において、第一の電極と第二の電極との間における1.62Vの電圧の印加と、第一の電極と第二の電極との間の短絡と、からなるEC素子の駆動を繰り返し行った。
(EC素子の耐久駆動の結果)
実施例3及び比較例3について、EC素子の耐久駆動の結果を下記表4にまとめた。
両電極(31、32)間の電圧の印加と、両電極(31、32)間の短絡とからなる駆動動作のサイクルを繰り返し行うと、第三の電極を持たない比較例3のEC素子では比較例1と同様の消色不良が発生した。
これに対し、酸化還元物質を有する第三の電極(33b、33c)が備わっている実施例3のEC素子では、電荷のインバランスに起因する消色不良が観測されなかった。また実施例3のEC素子では、耐久駆動を長期(1000サイクル以下)で行うと第三の電極(33b、33c)が薄黄緑色に着色した。この着色から、酸化還元物質が固定化された第三の電極(33b、33c)を有する実施例3のEC素子は、効果的に電荷のリバランスが行われていることが明確に確認された。
Figure 2017016110
以上より、アノード性のEC材料及びカソード性のEC材料を有するEC素子において、以下の条件を満たすことにより、EC素子10が有する第三の電極(33b、33c)によって効果的に電荷のインバランスの調整が行われ、消色不良が抑制されることが確認された。
(3a)第三の電極(33b、33c)が有する酸化還元物質の還元体が、アノード性のEC材料の還元体よりも酸化されやすいこと(第三の電極(33b、33c)が有する酸化還元物質が、アノード性のEC材料よりも負の酸化還元電位を持つこと。)。
(3b)第三の電極(33b、33c)が有する酸化還元物質の酸化体が、カソード性のEC材料の酸化体よりも還元されやすいこと(第三の電極(33b、33c)が有する酸化還元物質が、カソード性のEC材料よりも正の酸化還元電位を持つこと。)。
(3c)第三の電極(33b、33c)を、第一の電極31又は第二の電極32の周囲の少なくとも一部に配置することによって消色不良が均一に低減されること。
(3d)第三の電極(33b、33c)が複数の酸化還元物質を有すること。
(3e)第三の電極(33b、33c)と、第一の電極31又は第二の電極32との間の電位差を制御する手段を有すること。
(3f)消色動作時に第三の電極(33b、33c)と、第一の電極31又は第二の電極32との間を短絡する手段を有すること。
[実施例4]
(素子の作製)
実施例2と同様の手法を用い、アノード性の酸化還元物質(非EC性化合物)である1,1’−フェロセンジカルボン酸に換えて、化合物4(EC性化合物)を使用してEC素子を作製した。作製したEC素子には、以下の手法で電荷バランス状態の検知手段を設置した。EC素子の領域42上面に接して、発光波長495nmのLEDと、同595nmのLEDを設置した。それぞれの波長は、アノード性のEC材料、カソード性のEC材料の吸収波長に対応する。また、領域42下面に接してフォトダイオードを設置し、それぞれの波長における吸光度比を検出する手段とした。
(EC素子の耐久駆動)
得られたEC素子について、耐久駆動の実験を行った。EC素子の第一の電極31と第二の電極32の間に1.2Vを15秒、0Vを15秒の矩形波を印加するサイクル試験を3日間行った後、第一の電極1と第二の電極2を短絡し、消色させた。この時の495nm/595nmの吸光度の初期消色状態からの変化量は、それぞれ+0.002/+0.052であり、カソード性EC材料の着色体が残存する消色不良が発生していることが確認された。
(消色不良の低減)
EC素子の第一の電極31と第二の電極32の短絡を解除し、第二の電極32と第三の電極33間に電圧を印加する。印加時間は100msとし、以下のシーケンスを用いて動作させる。
(i)印加電圧は0V(短絡)から開始、電圧印加前と200ms後の吸光度の比較から、印加によって変化がない、または595nmの吸光度が増大する時に0.1V刻みで電圧を増大(第二の電極32が正、第三の電極33が負の極性)。
(ii)595nmの吸光度の初期消色状態からの変化量が0.005以下で電圧印加終了。
その結果、駆動開始より約20秒で上記の(ii)によって電圧の印加が終了し、カソード性EC材料の着色体が残存する消色不良が、1/10以下に低減されることが確認される。また処理後のEC素子の目視より、消色不良は均一に低減されてほとんど見えなくなっていることが確認される。さらに、消色不良の低減工程後、第三の電極33が薄黄緑色に着色した。この着色によって、酸化還元物質を有する第三の電極33を用いることで効果的に電荷のリバランスが行われていることがより明確に確認された。
これらの結果より、以下の事項が確認できた。
(4a)第一の電極31が有するアノード性の酸化還元物質と、第二の電極32が有するカソード性のEC材料を有するEC素子において、以下の条件を満たせば、第三の電極33によって効果的に電荷のインバランスの調整が行われ、消色不良が抑制されること。
(4b)第三の電極33が有する酸化還元物質の酸化体が、カソード性の有EC材料の酸化体よりも還元されやすいこと。
(4c)第三の電極33を、第一の電極31又は第二の電極32の周囲の少なくとも一部に配置することによって消色不良が均一に低減されること。
(4d)第三の電極33と、第二の電極32との間の電位差を制御する手段を有すること。
(4e)EC材料を、第一の電極31や第二の電極32に固定化させた場合でも電荷のインバランスの調整が効果的に実施できること。
(4f)第三の電極33が有する酸化還元物質がEC性を有することで、電荷のリバランス状況を容易に確認できること。
(4g)EC素子の検知された電荷バランス状態に基づき、第三の電極と第二の電極との間の電位差を制御することでEC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
(4h)電圧制御ステップに基づいた電圧の印加後、さらに検知されたエレクトロクロミック素子の電荷バランス状態に基づき、追加の電圧印加の実施を判断することでEC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
1:第一の電極、2:第二の電極、3:第三の電極、4:電解質、5:シール材、6:隔壁、7(8):基板、10:EC素子

Claims (22)

  1. 第一の電極と、第二の電極と、第三の電極と、を有し、前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方が透明であり、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック化合物と、カソード性の酸化還元物質と、を有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第三の電極が、前記電解質を介して前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方と電気的に接続可能であり、
    前記第三の電極が、さらに酸化還元物質を有し、
    前記第三の電極が有する酸化還元物質の還元体が、前記アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の還元体よりも酸化されやすいことを特徴とする、エレクトロクロミック素子。
  2. 第一の電極と、第二の電極と、第三の電極と、を有し、前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方が透明であり、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、カソード性の有機エレクトロクロミック化合物と、アノード性の酸化還元物質と、を有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第三の電極が、前記電解質を介して前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方と電気的に接続可能であり、
    前記第三の電極が、さらに酸化還元物質を有し、
    前記第三の電極が有する酸化還元物質の酸化体が、前記カソード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化体よりも還元されやすいことを特徴とする、エレクトロクロミック素子。
  3. 第一の電極と、第二の電極と、第三の電極と、を有し、前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方が透明であり、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック化合物と、を有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第三の電極が、前記電解質を介して前記第一の電極と前記第二の電極との少なくともいずれか一方と電気的に接続可能であり、
    前記第三の電極が、酸化還元物質を有し、
    前記第三の電極が有する酸化還元物質の還元体が、前記アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の還元体よりも酸化されやすく、
    前記第三の電極が有する酸化還元物質の酸化体が、前記カソード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化体よりも還元されやすいことを特徴とする、エレクトロクロミック素子。
  4. 前記アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位EEC(A)と、前記第三の電極が有する酸化還元物質の酸化還元電位EROとの間に、下記式(I)が満たされることを特徴とする、請求項1又は3に記載のエレクトロクロミック素子。
    RO<EEC(A) (I)
  5. 前記カソード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位EEC(C)と、前記第三の電極が有する酸化還元物質の酸化還元電位EROとの間に、下記式(II)が満たされることを特徴とする、請求項2又は3に記載のエレクトロクロミック素子。
    RO>EEC(C) (II)
  6. 前記アノード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位EEC(A)と、前記カソード性の有機エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位EEC(C)と、前記第三の電極が有する酸化還元物質の酸化還元電位EROとの間に、下記式(III)が満たされることを特徴とする、請求項3に記載のエレクトロクロミック素子。
    EC(C)<ERO<EEC(A) (III)
  7. 前記第三の電極が、前記第一の電極又は前記第二の電極の少なくとも一方を透過する光の光路外に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  8. 前記第一の電極と第二の電極との間に含まれる有機エレクトロクロミック化合物の少なくとも一つが、前記第一の電極又は前記第二の電極に固定化されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  9. 前記第三の電極が有する酸化還元物質が、エレクトロクロミック化合物であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  10. 前記第三の電極が、前記第一の電極又は前記第二の電極の周囲の少なくとも一部に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  11. 前記第三の電極が有する酸化還元物質の酸化還元状態が、酸化体と還元体が混在した状態であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  12. 前記第三の電極が、二種類以上の酸化還元物質を有することを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  13. 前記第一の電極又は前記第二の電極と、前記第三の電極と、の間の電位差を制御する手段をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  14. 前記エレクトロクロミック素子の消色動作時において、前記第一の電極又は前記第二の電極と、前記第三の電極と、の間を短絡する手段をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  15. エレクトロクロミック素子の電荷バランス状態を検知する手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  16. 請求項1乃至15のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子の駆動方法であって、検知されたエレクトロクロミック素子の電荷バランス状態に基づき、前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方と、前記第三の電極との間の電位差を制御するステップを有することを特徴とするエレクトロクロミック素子の駆動方法。
  17. 前記電位差を制御するステップに基づいた電位差の制御後、さらに検知されたエレクトロクロミック素子の電荷バランス状態に基づき、追加の電位差制御の実施を判断することを特徴とする請求項16に記載のエレクトロクロミック素子の駆動方法。
  18. 請求項1乃至15のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、
    前記エレクトロクロミック素子に接続される能動素子と、を有することを特徴とする、光学フィルタ。
  19. 複数のレンズを有する撮像光学系と、
    請求項18に記載の光学フィルタと、を有することを特徴とする、レンズユニット。
  20. 複数のレンズを有する撮像光学系と、
    請求項18に記載の光学フィルタと、
    前記光学フィルタを透過した光を受光する撮像素子と、を有することを特徴とする、撮像装置。
  21. 前記撮像光学系が着脱可能であることを特徴とする、請求項20に記載の撮像装置。
  22. 一対の透明基板と、
    前記一対の透明基板の間に配置される、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、
    前記エレクトロクロミック素子に接続される能動素子と、を有することを特徴とする、窓材。
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