JP2017014029A - 窒化ガリウム結晶の製造方法、窒化ガリウム結晶、及び窒化ガリウム結晶基板 - Google Patents

窒化ガリウム結晶の製造方法、窒化ガリウム結晶、及び窒化ガリウム結晶基板 Download PDF

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昌弘 林
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Abstract

【課題】成長した窒化ガリウム結晶の応力分布を小さくする。【解決手段】窒化ガリウム結晶の製造方法は、a軸長の格子定数が0.3189nmより小さい柱状の第1の窒化ガリウム結晶を準備する準備工程と、第1の窒化ガリウム結晶の周囲に第2の窒化ガリウム結晶を成長させる成長工程とを備える。第1の窒化ガリウム結晶のc軸長の格子定数が0.5170nmより小さいことが好ましい。準備工程は、フラックス法により1つ以上の窒化ガリウム結晶を製造する第1の工程と、1つ以上の窒化ガリウム結晶の中から第1の窒化ガリウム結晶を選別する第2の工程とを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、窒化ガリウム結晶の製造方法、窒化ガリウム結晶、及び窒化ガリウム結晶基板に関する。
窒化ガリウム(GaN)系半導体材料は、青色発光ダイオード(LED)、白色LED、半導体レーザー(LD:Laser Diode)等の半導体デバイスに用いられている。半導体デバイスの基板となる窒化ガリウム結晶の製造方法として、MO−CVD法(有機金属化学気相成長法)、MBE法(分子線エピタキシャル成長法)、フラックス法等が知られている。フラックス法は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属とガリウムとの混合融液中に所定条件下で窒素を溶解させることにより、混合融液中で窒化ガリウム結晶を成長させる方法である。フラックス法は、比較的低温低圧下での結晶成長が可能であること、成長した結晶の転位密度が低くなること等の利点を有する。
特許文献1は、フラックス法において窒化アルミニウム(AlN)の針状結晶を種結晶として用いる方法を開示している。特許文献2は、フラックス法において所定のサイズを有する窒化ガリウムの針状結晶を種結晶として用いる方法を開示している。
特許文献1のように、窒化アルミニウム結晶を種結晶として用いる場合、窒化アルミニウムと窒化ガリウムとでは格子定数が異なるため、格子不整合による転位が発生する。また、窒化アルミニウムと窒化ガリウムとでは熱膨張係数が異なるため、結晶成長温度から室温まで冷却する過程で熱応力による新たな転位、クラック等が発生する。特許文献2は、窒化ガリウム結晶を種結晶として用いるため、特許文献1と比較すると転位やクラックの発生は抑制されるが、成長した結晶内の残留応力により、大きな応力分布が発生してしまう場合があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、成長した窒化ガリウム結晶の応力分布を小さくすることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の窒化ガリウム結晶の製造方法は、a軸長の格子定数が0.3189nmより小さい柱状の第1の窒化ガリウム結晶を準備する準備工程と、前記第1の窒化ガリウム結晶の周囲に第2の窒化ガリウム結晶を成長させる成長工程とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、成長した窒化ガリウム結晶の応力分布を小さくすることが可能となる。
図1は、種結晶を製造するための第1の窒化ガリウム結晶製造装置の構成を例示する図である。 図2Aは、種結晶の形状を例示する図である。 図2Bは、図2Aの種結晶を加工して得られる種結晶5の形状を例示する図である。 図3は、種結晶を用いてバルク状の窒化ガリウム結晶を製造するための第2の窒化ガリウム結晶製造装置の構成を例示する図である。 図4Aは、成長後の窒化ガリウム結晶の第1の形状を例示する図である。 図4Bは、成長後の窒化ガリウム結晶の第2の形状を例示する図である。 図4Cは、成長後の窒化ガリウム結晶の第3の形状を例示する図である。 図5Aは、成長後の窒化ガリウム結晶をc軸に対して垂直な断面に沿って切断することにより得られた窒化ガリウム結晶基板の構造を例示する上面図である。 図5Bは、図5Aの5B−5B断面図である。 図6は、成長前の種結晶のc軸長の格子定数と、成長前後の種結晶のa軸長の格子定数差との関係を示すグラフである。 図7は、中央領域に対するPLスペクトルの測定結果を示すグラフである。 図8は、成長分域に対するPLスペクトルの測定結果を示すグラフである。
以下に図面を参照して、窒化ガリウム結晶の製造方法、窒化ガリウム結晶、及び窒化ガリウム結晶基板の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、種結晶を製造するための第1の窒化ガリウム結晶製造装置(以下、第1の製造装置と略記する)1の構成を例示する図である。第1の製造装置1は、フラックス法により窒化ガリウム結晶からなる種結晶5を製造する装置である。
第1の製造装置1は、外部耐圧容器11、内部容器12、反応容器13、ヒータ14、窒素ガス供給管15、希釈ガス供給管16、混合ガス供給管17、分岐管18,19,20、バルブ21,22,23,24,25、圧力制御装置28,29、及び圧力計31を含む。
ステンレス製の外部耐圧容器11内に内部容器12及びヒータ14が設置されている。内部容器12内に反応容器13が設置されている。内部容器12は外部耐圧容器11に対して着脱可能となっている。
反応容器13は混合融液33を保持し、混合融液33中で種結晶5を製造するための容器である。混合融液33とは、窒化ガリウムの原料、フラックスとしてのアルカリ金属又はアルカリ土類金属、添加物等が融解したものである。ヒータ14は内部容器12を介して反応容器13及び混合融液33を加熱する。
窒素ガス供給管15は窒素ガス(N)のガスボンベ等と接続されている。希釈ガス供給管16は希釈ガス(Ar)のガスボンベ等と接続されている。希釈ガスとしては、不活性ガスのアルゴンを用いることが望ましいが、これに限定されず、ヘリウム等の他の不活性ガスを用いてもよい。
窒素ガス供給管15には圧力制御装置28及びバルブ21が設置されている。希釈ガス供給管16には圧力制御装置29及びバルブ22が設置されている。窒素ガス供給管15及び希釈ガス供給管16は混合ガス供給管17に合流している。混合ガス供給管17は、外部耐圧容器11の内部空間35に連通する第1の分岐管18、内部容器12の内部空間36に連通する第2の分岐管19、及び外気に連通する第3の分岐管20に分岐している。混合ガス供給管17にはバルブ23及び圧力計31が設置されている。第2の分岐管19にはバルブ24が設置されている。第3の分岐管20にはバルブ25が設置されている。
圧力制御装置28により圧力が調整された窒素ガスはバルブ21を介して混合ガス供給管17に流入する。圧力制御装置29により圧力が調整された希釈ガスはバルブ22を介して混合ガス供給管17に流入する。窒素ガス及び希釈ガスは混合ガス供給管17内で混合される。圧力計31が示す値に応じてバルブ21〜25を制御することにより、内部空間35,36の混合ガスの圧力を制御することができる。バルブ24の作用により、外部耐圧容器11の内部空間35と内部容器12の内部空間36とを個別に制御することができる。
窒素ガス及び希釈ガスの各圧力を圧力制御装置28,29とバルブ21,22とで調整することにより、混合ガスの窒素分圧及び内部空間35,36内の全圧を調整することができる。例えば、内部容器12の内部空間36の全圧を高くすることにより、反応容器13内のフラックス物質(アルカリ金属又はアルカリ土類金属)の蒸発を抑制することができる。すなわち、窒化ガリウム結晶の結晶成長条件に影響を与える窒素分圧と、フラックス物質の蒸発に影響を与える全圧とを別々に制御することが可能となっている。
ヒータ14は内部容器12を介して反応容器13を加熱することにより混合融液33の温度を制御する。混合融液33の温度は窒化ガリウム結晶の結晶成長条件に適合する所定の温度を維持するように制御される。これにより、混合融液33中に窒化ガリウム結晶からなる種結晶5が生成される。
図2Aは、種結晶5の形状を例示する図である。本例における種結晶5は、六方晶の結晶構造に即した結晶面を有する柱状の結晶である。当該種結晶5のc軸を横切る断面は六角形状である。図2Bは、図2Aの種結晶5を加工して得られる種結晶5の形状を例示する図である。図2Bに示される種結晶5は、四角柱形状の結晶である。どちらの種結晶5もバルク状の窒化ガリウム結晶を製造するために用いることができる。柱状とは、c軸方向の長さがc軸に垂直な断面の径に対して長い形状であり、好ましくは、c軸に対して垂直方向の断面の最大径dとc軸方向の最大長さLとの比L/dが7以上である形状である。また、結晶の長さ方向と<0001>方向とが一致していることが好ましい。また、種結晶5は、図2A又は図2Bに示すような多角柱形状だけでなく、角のない円柱形状であってもよい。
以下に、種結晶5の製造方法を例示する。本例における種結晶5の製造方法は、混合融液33中にホウ素を溶解させるホウ素溶解工程と、窒化ガリウム結晶(種結晶5)の成長時に結晶中にホウ素を取り込ませるホウ素取込工程と、混合融液33中のホウ素濃度を結晶成長の進行に伴い減少させるホウ素減少工程とを含む。なお、ホウ素減少工程を省略してもよい。
先ず、反応容器13の内壁に含まれる窒化ホウ素(BN)又は反応容器13内に設置された窒化ホウ素の部材からホウ素が混合融液33中に溶解する(ホウ素溶解工程)。その後、反応容器12内の窒素分圧、混合融液33の温度等の条件が所定の結晶成長条件に適合すると、混合融液33中に窒化ガリウム結晶からなる種結晶5が自発核生成する。その後、混合融液33中に溶解したホウ素が結晶成長している種結晶5内に取り込まれる(ホウ素取込工程)。その後、種結晶5の結晶成長に伴って結晶中に取り込まれるホウ素の量は次第に減少する(ホウ素減少工程)。
ホウ素減少工程において、種結晶5がm面({10−10}面)67を成長させながら結晶成長する場合に、c軸を横切る断面の外側の領域におけるホウ素濃度は内側の領域のホウ素濃度より低くなる。これにより、種結晶5のm面67で構成される外周面(六角柱の6つの側面)において、不純物であるホウ素濃度及び不純物に起因する結晶内の転位密度が低減され、種結晶5の外周面をその内側の領域に比べて良質の結晶で構成することが可能となる。
以下に、ホウ素溶解工程、ホウ素取込工程、ホウ素減少工程についてより具体的に説明する。
(1)窒化ホウ素を含む反応容器13を用いる方法
窒化ホウ素の焼結体(BN焼結体)を材料とした反応容器13を用いる。反応容器13が結晶成長温度まで昇温される過程において、反応容器13からホウ素が溶解し、混合融液33中に溶け出す(ホウ素溶解工程)。そして、種結晶5の成長過程において混合融液33中のホウ素が種結晶5中に取り込まれる(ホウ素取込工程)。種結晶5の成長に伴い、混合融液33中のホウ素は次第に減少する(ホウ素減少工程)。
なお、上記方法では、BN焼結体の反応容器13を用いるとしたが、反応容器13の構成はこれに限定されるものではない。反応容器13の混合融液33と接する内壁の少なくとも一部において、窒化ホウ素を含む物質(例えば、BN焼結体)が用いられていればよい。反応容器13のその他の部分にパイロリティックBN(P−BN)等の窒化物、アルミナ、YAG等の酸化物、SiC等の炭化物等を使用してもよい。
(2)反応容器13内に窒化ホウ素を含む部材を載置する方法
次に、ホウ素溶解工程として、反応容器13内に窒化ホウ素を含む部材を載置する方法を説明する。例えば、反応容器13内にBN焼結体からなる部材を載置する。なお、反応容器13の材質は(1)と同様に特に限定されるものではない。この方法においては、反応容器13が上述の結晶成長温度まで昇温される過程において、反応容器13内に設置された部材から混合融液33中にホウ素が少しずつ溶け込む(ホウ素溶解工程)。
ここで、(1),(2)の方法において、混合融液33と接する窒化ホウ素を含む部材の表面には窒化ガリウム結晶の結晶核が生成しやすい。窒化ホウ素の表面上(上述した内壁面又は部材表面)に窒化ガリウムの結晶核が生成し、その表面が次第に被覆されてくると、窒化ホウ素から混合融液33中に溶け込むホウ素の量は次第に減少していく(ホウ素減少工程)。更に、窒化ガリウム結晶の成長に伴いその表面積が大きくなると、窒化ガリウム結晶中にホウ素が取り込まれる密度が小さくなっていく(ホウ素減少工程)。
なお、上記(1),(2)では、ホウ素を含む物質を用いて混合融液33中にホウ素を溶解させるとしたが、混合融液33中にホウ素を溶解させる方法は上記に限定されず、例えば混合融液33中にホウ素を添加させる等の方法を用いてもよい。また、混合融液33中のホウ素濃度を減少させる方法についても上記方法に限られるものではない。また、種結晶5を製造するにあたり、上記ホウ素溶解工程、ホウ素取込工程、及びホウ素減少工程を省略することも可能である。
以下に、種結晶5の製造における原料等の調整及び結晶成長条件について説明する。反応容器13に原料等を投入する作業は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とされたグローブボックスに反応容器13を設置した状態で行う。
上記(1)の方法で種結晶5を製造する場合には、BN焼結体を材料とした反応容器13内にフラックス物質(ナトリウム等)と原料(ガリウム等)とを投入する。上記(2)の方法で種結晶5を製造する場合には、反応容器13内に窒化ホウ素を含む部材とフラックス物質と原料とを投入する。
フラックス物質としては、ナトリウム、ナトリウム化合物(例えば、アジ化ナトリウム)が好適であるが、リチウム、カリウム等の他のアルカリ金属、当該アルカリ金属の化合物等、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、当該アルカリ土類金属の化合物等であってもよい。また、複数種類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いてもよい。
窒化ガリウム結晶の原料としてガリウムを用いる。その他のIII族窒化物結晶の原料の例として、ホウ素、アルミニウム、インジウム等の13族金属、これらの混合物等が挙げられる。
また、上記においては反応容器13がホウ素を含む構成を説明したが、B,Al,O,Ti,Cu,Zn,Siの内の少なくとも1種を含む構成であってもよい。
上記のように反応容器13内に原料等を投入した後、ヒータ14により内部容器12及び反応容器13を結晶成長温度まで加熱する。すると、反応容器13内でフラックス物質、原料等とが溶融し、混合融液33が生成される。その後、混合融液33に所定の分圧の窒素を接触させて混合融液33中に溶解させることにより、種結晶5の原料である窒素が混合融液33中に供給される。このとき、混合融液33中に上述したようにホウ素が溶解する(ホウ素溶解工程)。
その後、反応容器13の内壁において、混合融液33に融解している原料(ガリウム及び窒素)とホウ素とから種結晶5の結晶核が生成される。この結晶核が所定の条件下で成長することにより、種結晶5が製造される。
種結晶5の結晶成長過程において、結晶中には混合融液33中のホウ素が取り込まれ(ホウ素添加工程)、種結晶5の内側にホウ素濃度が高い領域が生成される。これにより、種結晶5はc軸方向に長尺化されやすい状態となる。また、混合融液33中のホウ素濃度の減少に伴い結晶中に取り込まれるホウ素が減少する(ホウ素減少工程)と、種結晶5の外側にホウ素濃度が低い領域が生成される。これにより、種結晶5はc軸方向への成長が鈍り、m軸方向へ成長しやすい状態となる。
内部容器12内の窒素分圧は5MPa〜10MPaの範囲内とすることが好ましい。混合融液33の温度(結晶成長温度)は800℃〜900℃の範囲内とすることが好ましい。また、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率を75%〜90%の範囲内とし、結晶成長温度を860℃〜900℃の範囲内とし、窒素分圧を5MPa〜8MPaの範囲内とすることがより好ましい。更に、ガリウムとアルカリ金属とのモル比を0.25:0.75とし、結晶成長温度を860℃〜870℃の範囲とし、窒素分圧を7MPa〜8MPaの範囲とすることがより好ましい。
上記工程により種結晶5を得ることができる。種結晶5の製造方法は上記方法に限られるものではないが、高品質なバルク状の窒化ガリウム結晶を製造するためには、上記製造方法により製造した種結晶5を用いることが好ましい。
図3は、種結晶5を用いてバルク状の窒化ガリウム結晶45を製造するための第2の窒化ガリウム結晶製造装置(以下、第2の製造装置と略記する)41の構成を例示する図である。第2の製造装置41は、第1の製造装置1により製造された種結晶5を用いてフラックス法によりバルク状の窒化ガリウム結晶45を製造する装置である。
第2の製造装置41は、外部耐圧容器11、内部容器12、反応容器13、ヒータ14、窒素ガス供給管15、希釈ガス供給管16、混合ガス供給管17、分岐管18,19,20、バルブ21,22,23,24,25、圧力制御装置28,29、圧力計31、回転モータ51、回転軸52、回転盤53、及び撹拌板54を含む。第1の製造装置1との比較において、回転モータ51、回転軸52、回転盤53、及び撹拌板54が含まれる点で相違する。
回転軸52の一端側は回転モータ51に連結され、他端側は回転盤53の下面部に固定されている。回転盤53の上面部には反応容器13が固定されている。反応容器13の内部には、混合融液33を撹拌するための撹拌板54が立設されている。反応容器13の中心部には種結晶5が設置されている。
上記構成により、回転モータ51の回転により反応容器13が回転すると、撹拌板54により混合融液33が撹拌される。所定の制御装置により回転モータ51を制御することにより、撹拌効果を向上させることができる。回転制御のバリエーションとしては、一方向への定速回転、回転速度の変更、回転方向の反転、間欠運転等が挙げられる。
図3において、種結晶5の周りにバルク状の窒化ガリウム結晶45が成長した状態が示されている。図4Aは、成長後の窒化ガリウム結晶45の第1の形状を例示する図である。図4Bは、成長後の窒化ガリウム結晶45の第2の形状を例示する図である。図4Cは、成長後の窒化ガリウム結晶45の第3の形状を例示する図である。
図4Aに示す第1の形状は、六角柱と六角錐とからなる形状である。図4Bに示す第2の形状は、上記第1の形状から六角錐の頂点部分を除去した形状である。図4Cに示す第3の形状は、六角柱のみからなる形状である。窒化ガリウム結晶45のc軸に対して垂直な断面の略中心部には、種結晶5の断面が存在する。
以下に、バルク状の窒化ガリウム結晶45の製造方法を例示する。本例における窒化ガリウム結晶45の製造方法は、種結晶5の格子定数を測定し、格子定数が所定の条件を満たす種結晶5を選別する選別工程を含む。選別された種結晶5を混合融液33中に設置し、その周囲に結晶成長させることにより、バルク状の窒化ガリウム結晶45が製造される。
選別工程において、a軸長の格子定数が0.3189nmより小さい窒化ガリウム結晶が種結晶5として選別される。このとき、更にc軸長の格子定数が0.5170nmより小さい窒化ガリウム結晶を選別することが好ましい。種結晶5に取り込まれる不純物の量、歪みの発生等は、窒化ガリウム結晶の製造方法、結晶成長条件等に起因して変化する。そのため、実際に製造された種結晶5の格子定数は、文献等で報告されている窒化ガリウム結晶の格子定数とは異なる場合がある。窒化ガリウム結晶の格子定数はX線回折装置等により測定可能である。選別工程については後に詳述する。
上記のように選別された種結晶5を反応容器13の中央部に設置し、原料とフラックス物質とを反応容器13内に入れる。種結晶5は反応容器13の底面に対して垂直に立つように冶具等で保持される。反応容器13内には、結晶成長中に混合融液33を撹拌するための撹拌板54が設置されている。フラックス物質は、ナトリウムの他に、リチウム、カリウム等のアルカリ金属、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。以下の説明ではナトリウムを用いた場合を説明する。
必要に応じて、キャリア密度を制御するために、ゲルマニウム、炭素等の物質を添加してもよい。ガリウムとナトリウムとのモル比は特に限定されるものではないが、ガリウムとナトリウムとの総モル数に対するナトリウムのモル比が40%〜95%であることが好ましい。
原料、フラックス物質等をセットした後、ヒータ14により内部容器12及び反応容器13を結晶成長温度まで加熱する。このとき、回転モータ51により反応容器13(又は内部容器12及び反応容器13)を回転させる。反応容器13内では、ガリウム、ナトリウム、及び必要に応じて添加された添加物が溶融し、混合融液33が生成される。その後、混合融液33に所定の分圧の窒素を接触させ、混合融液33中に溶解させる。これにより、窒化ガリウム結晶45の原料である窒素が混合融液33中に供給される。
結晶成長条件としては、内部容器12の内部空間36及び外部耐圧容器11の内部空間35における窒素ガス分圧が0.1MPa以上であることが好ましく、2MPa〜5MPaの範囲内であることがより好ましい。混合融液33の温度(結晶成長温度)は800℃以上であることが好ましく、850℃〜900℃であることがより好ましい。
反応容器13内に設置された撹拌板54により混合融液33を撹拌することにより、混合融液33内の状態を均一に保つことができる。良好な結晶成長を実現するためには、比較的穏やかな撹拌状態を保つことが好ましい。例えば、反応容器13の最大回転速度は30rpm以下であることが好ましい。反応容器13の回転の加速及び減速を3rpm/秒以下とすることが好ましい。加速後に回転速度を一定に保つ期間を設け、一定の回転速度となる期間が20秒〜60秒であることが好ましい。減速後の反応容器13の停止期間が5秒未満であることが好ましい。反応容器13の最大回転速度及び急な加速/減速を抑えることで混合融液33の乱流を抑えることができる。停止期間を短くすることで熱対流の影響を少なくすることができる。このように攪拌を行うことで、種結晶5の複数の成長面(6つのm面67)の成長速度差を小さくすることができ、c軸に対して垂直な断面の略中心部に種結晶5が位置するように窒化ガリウム結晶45を成長させることができる。
なお、上述したような反応容器13及び混合融液33を回転させるための機構を用いることなく、静止した状態の混合融液33中で窒化ガリウム結晶45を成長させることも可能である。また、反応容器13及び混合融液33を回転させるのではなく、揺動させることによっても結晶成長を良好に行わせる効果が得られる。
上記のように製造された成長後の窒化ガリウム結晶45は、柱状の種結晶5の成長面である6つの各m面67から放射状に成長したバルク状の結晶である。種結晶5は窒化ガリウム結晶45のc軸に対して垂直な断面の略中心部に位置している。
以下に、種結晶5の格子定数について説明する。発明者は結晶成長前後で種結晶5の格子定数が変化する現象を発見し、この現象が成長後の結晶の品質に影響を及ぼすことを見出した。また、発明者は種結晶5のc軸長が短い程、成長後の(バルク状の)窒化ガリウム結晶45のc軸長が長くなりやすく、a軸長が短くなりやすいことを見出した。
上述したように、選別工程においてa軸長の格子定数が0.3189nmより小さい窒化ガリウム結晶が選別され、これが種結晶5として用いられる。成長後の窒化ガリウム結晶45に含まれる種結晶(以下、成長後の種結晶と略記する)5のa軸長の格子定数は、結晶成長開始前の種結晶5のa軸長の格子定数より小さくなる。成長後の種結晶5のa軸長の格子定数が0.3187nmより大きい場合には、成長後の種結晶5に圧縮応力が掛かり過ぎてしまうため、成長後の種結晶5又は窒化ガリウム結晶45にクラックが入ったり、結晶内に歪みが生じたりする可能性が高くなる。従って、成長後の種結晶5のa軸長の格子定数が0.3187nm以下となるように、a軸長の格子定数が0.3189nmより小さい種結晶5を用いるのである。
また、窒化ガリウム結晶45にクラック等が発生しない場合であっても、窒化ガリウム基板の応力分布は、半導体デバイスの製造において、エピタキシャル層の組成分布、格子定数分布、モザイシティー等に影響を与えることが知られている。a軸長の格子定数が0.3189nmより小さい種結晶5を用いることで、窒化ガリウム基板の応力分布を小さくすることができ、信頼性の高い半導体デバイスを製造可能な窒化ガリウム基板を提供することができる。
種結晶5のc軸長が短いと成長後の窒化ガリウム結晶45のa軸長が短くなるという現象は、ポアソン効果によるものと考えられる。成長後の窒化ガリウム結晶45のa軸長が大き過ぎると、結晶全体に歪みが生じる。従って、成長後の窒化ガリウム結晶45のa軸長が大きくなり過ぎることを防ぐため、種結晶5のc軸長の格子定数が0.5170nmより小さいことが好ましい。
以下に、成長後の窒化ガリウム結晶45から切り出した窒化ガリウム結晶基板について説明する。窒化ガリウム結晶45の切断、研削、及び研磨は周知の方法により行うことができる。例えば、切断にはマルチワイヤーソー、バンドソー、外周刃、内周刃等が用いられる。研削及び研磨にはダイヤモンド砥粒等が用いられる。必要に応じて基板主面にCMP(Chemical Mechanical Polishing)、ドライエッチング、ウエットエッチング等を行うことにより、加工変質層を除去してもよい。外形を円形に加工し、オリエンテーションフラット、インデックスフラット、ノッチ等を設けてもよい。
図5Aは、成長後の窒化ガリウム結晶45をc軸に対して垂直な断面に沿って切断することにより得られた窒化ガリウム結晶基板61の構造を例示する上面図である。図5Bは、図5Aの5B−5B断面図である。
窒化ガリウム結晶基板61は、中央領域64、成長分域65、及び境界面66を含む。中央領域64は、種結晶5が存在する領域であり、成長後の窒化ガリウム結晶45のc軸に対して垂直な断面である主面69と相似形であり且つ主面69の重心から主面69の面積の約1%に相当する面積を有する。成長分域65は、種結晶5の各m面67から放射状に成長したバルク状の窒化ガリウム結晶45が存在する領域である。境界面66は、隣接する成長分域65同士が接する面である。境界面66は、成長分域65より不純物(特に酸素)の濃度が高く、透過率又は吸光度が成長分域65と異なるため、黒っぽく視認される領域である。また、酸素がキャリアとして働くため、境界面66のキャリア濃度は高くなっている。
窒化ガリウム結晶基板61の主面69はc軸を横切っている。六角形状の中央領域64の周囲には6つの成長分域65と6つの境界面66とが配置されている。なお、図5Aでは中央領域64と成長分域65とが接している状態が示されているが、種結晶5の形状、結晶成長条件等によっては明瞭に中央領域64と成長分域65とが接していないように見える場合もある。
中央領域64の結晶特性と成長分域65の結晶特性とは異なっている。結晶特性とは、所定の温度(例えば、室温)で測定した電子線又は紫外光励起による発光スペクトル、転位密度、及び転位方向を示す。室温とは、10〜30℃を意味し、好ましくは20〜30℃、より好ましくは25〜27℃である。結晶特性が異なるとは、発光スペクトル、転位密度、及び転位方向の少なくとも1つが異なることを意味する。紫外光励起による発光スペクトルは、例えばHe−Cdレーザーを励起光源としてフォトルミネッセンス(PL)を測定することにより得られる。また、より簡便な方法としては、蛍光顕微鏡によって発光スペクトルの色や強度を観察し、観察された色・強度によって識別する方法がある。また、窒化ガリウム結晶基板61をカソードルミネッセンス装置に入れ、SEM(Scanning Electron Microscope)によって観察場所を同定した後、電子線を励起源としてカソードルミネッセンス(CL)を観察し、ダークスポットの密度から転位密度を評価し、ダークラインの方向から転位方向を評価することができる。また、窒化ガリウム結晶基板61の主面を硫酸とリン酸とからなる混酸、KOH、NaOH等の溶融アルカリでエッチングしてエッチピットを出現させ、電子顕微鏡でエッチング後の主面の組織写真を撮影し、得られた写真からエッチピットの密度及び方向を調べ、転位密度及び転位方向を評価してもよい。
以下に、中央領域64及び成長分域65の結晶特性について説明する。中央領域64の室温でのE2フォノンノードのラマンシフト量は成長分域65のラマンシフト量より大きい。中央領域64のラマンシフト量の最大値は成長分域65のラマンシフト量の平均値(0.8cm−1)より小さい。成長分域65のラマンシフト量の分布は0.5cm−1未満である。このような構成の窒化ガリウム結晶基板61上にLED、ショットキーダイオード等の半導体デバイスを製造すると、6つの成長分域65上に製造された半導体デバイスの歩留が高くなる。
以下に、ラマンシフト量の測定について説明する。六方晶GaNの室温でのE2フォノンモードのラマンシフト量は567.6cm−1であることが知られている(例えば、播磨弘、『GaNおよび関連窒化物のラマン散乱分光』、材料、日本材料学会、Vol.51、No.9、2002年9月、pp983−988)。また、HVPE法(ハイドライド気相成長法)により製造した窒化ガリウム基板をラマンシフト量に基づいて選別する技術が知られている(例えば、特開2007−169132号公報)。E2フォノンモードのラマンシフト量は圧縮応力ではプラス側に変化し、引っ張り応力ではマイナス側に変化する。圧縮応力及び引っ張り応力はc面内(すなわちa軸方向及びm軸方向)の応力分布についての評価であり、c軸方向の応力は関与していない。
本実施の形態における窒化ガリウム結晶基板61の室温でのE2フォノンノードのラマンシフト量を調べると、中央領域64のラマンシフト量は567.6cm−1よりプラス側の値であり、全ての成長分域65のラマンシフト量は567.6cm−1近傍又はややマイナス側の値であった。すなわち、中央領域64のラマンシフト量は全ての成長分域65の各ラマンシフト量より大きいことが判った。このことから、中央領域64には相対的に大きい圧縮応力があり、成長分域65には相対的に小さい引っ張り応力があると解釈できる。
上記選別工程によりa軸長の格子定数が0.3189nmより小さい種結晶5を選別して用いることにより、中央領域64及び成長分域65のラマンシフト量の分布を小さくすることができ、成長後の種結晶5に掛かるa軸方向の圧縮応力を小さくすることができる。中央領域64の圧縮応力が小さくなることにより、成長分域65の引っ張り応力も小さくなる。これにより、成長分域65の面積を中央領域64の面積に比べて十分に大きくすることが可能となる。応力分布を十分な品質を保てる程度に低く抑えつつ、c軸に垂直な断面全体の面積に対する中央領域64の面積比を1%以下にすることが可能となる。
ラマンシフト量の測定は、例えば以下の方法で行うことができる。励起光としてHe−Neレーザーの波長632.8nmの発振線を用いる。励起光は回折格子で632.8nmの発振線以外の自然放出光を除去した後に金属顕微鏡に導入され、対物レンズで絞られた窒化ガリウム結晶基板61の主面69に集光される。窒化ガリウム結晶基板61からの散乱光は再び金属顕微鏡を通ってレンズで集光され、ノッチフィルタで励起光を除去した後、分光器へと導かれる。波数校正はピーク波数が既知であるネオンランプのスペクトルの測定により行うことができる。励起光及び散乱光を、測定系を構成する装置の光軸に一致させるため、反射鏡、レンズ、プリズム等が適宜用いられてもよい。
ラマンシフト量は環境温度に影響を受けるため、測定中における環境温度の変化に留意する必要がある。中央領域64及び成長分域65のラマンシフト量の測定中における環境温度の変化は、±1℃以下、好ましくは±0.5℃以下に抑えられるべきである。また、励起光の照射による窒化ガリウム結晶基板61の温度上昇についても留意する必要がある。He−Neレーザーを長時間照射すると局所的な温度上昇が起こり、ラマンシフト量が徐々に大きくなる場合がある。これを抑制するため、He−Neレーザーを間欠で照射したり、窒化ガリウム結晶基板61の裏面に25〜27℃程度の冷却媒を置いたりすることが好ましい。また、主面69全体のラマンシフト量を測定するには長時間を要するため、実用的には主面69上を適切な間隔で測定することが好ましい。例えば、測定時間を短縮したい場合には5mm間隔等で測定し、細かく測定したい場合には100μm間隔で測定すればよい。
得られたラマンシフトのスペクトルにおいて、E2フォノンモードに対応する複数のピークのうち最大ピーク時の波数をE2フォノンモードのラマンシフト量とする。主面69全体のラマンシフト量を測定し、中央領域64のラマンシフト量と6つ成長分域65のラマンシフト量とを比較することにより、窒化ガリウム結晶基板61の応力状態を把握することができる。
ただし、成長分域65内において局所的な欠陥等によりその領域のみが特異的にラマンシフト量を示す場合がある。このような欠陥を含む窒化ガリウム結晶基板61が存在することを考慮すると、中央領域64及び成長分域65の各ラマンシフト量の絶対値を比較するのではなく、中央領域64のラマンシフト量の最大値と6つの成長分域65のラマンシフト量の平均値とを比較することが適切であるといえる。中央領域64のラマンシフト量の最大値が各成長分域65のラマンシフト量の平均値0.8cm−1より小さい場合には、中央領域64に圧縮応力が集中し過ぎることはなく、成長分域65の応力分布は小さくなる。一方、中央領域64のラマンシフト量の最大値が各成長分域65のラマンシフト量の平均値0.8cm−1より大きい場合は、窒化ガリウム結晶基板61にクラックが入ったり、成長分域65の応力分布が大きくなったりする可能性が高くなる。
また、応力分布は窒化ガリウム結晶基板61上に半導体デバイスを製造する際の歩留に影響する。応力分布が小さい程歩留は向上し、応力分布が大きい程歩留は低下する。ラマンシフト量の応力分布が0.5cm−1未満であれば、十分な歩留を得ることができる。
以下に、本実施の形態の実施例及び比較例を説明する。
(実施例)
<種結晶の準備>
図1に示す第1の製造装置1を使用して柱状の種結晶5を製造した。BN焼結体からなる内径92mmの反応容器13に、公称純度99.99999%のガリウムと公称純度99.95%のナトリウムとをモル比0.25:0.75として投入した。
高純度のアルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内で反応容器13を内部容器12内に設置した。バルブ23を閉じて反応容器13内を外部雰囲気から遮断し、アルゴンガスが充填された状態で内部容器12を密封した。その後、内部容器12をグローブボックスから出して第1の製造装置1に組み込んだ。詳細には、内部容器12をヒータ14に対して所定の位置に設置し、バルブ23部分で混合ガス供給管17に接続した。
内部容器12からアルゴンガスをパージした後、窒素供給管15から窒素ガスを取り入れた。圧力制御装置28により圧力を調整した後バルブ21を開け、内部容器12内の窒素圧力を3.2MPaとした。その後、バルブ21を閉じ、圧力制御装置28を8MPaに設定した。
次いで、ヒータ14に通電し、反応容器13を結晶成長温度870℃まで昇温させた。結晶成長温度に達するまでに反応容器13内のガリウム及びナトリウムは融解し、混合融液33が生成した。混合融液33の温度は反応容器13の温度と同温である。結晶成長温度まで昇温すると、内部容器12の内部空間36の気体が熱せられ、全圧が8MPaとなった。次いで、バルブ21を開け、窒素ガス圧力を8MPaとして、内部容器12内と窒素供給管15内とを圧力平衡状態とした。
この状態で反応容器13を600時間保持し、窒化ガリウムの結晶成長を行った。その後、ヒータ14を制御して、内部容器12内の温度を20℃程度まで降温させた。内部容器12内のガスの圧力を下げた後、内部容器12を開けたところ、反応容器13内には多数の窒化ガリウム結晶(種結晶5)が形成されていた。
多くの種結晶5は無色透明であり、結晶径dは100μm〜1500μm程度であり、c軸方向の長さLは10mm〜45mm程度であり、長さLとc面の最大径dとの比L/dは20〜300程度であった。種結晶5は概ねc軸に対して平行に成長しており、m面と、長手方向の先端部に{10−11}面とを有する六方晶構造の柱状結晶であった。
<選別工程>
製造された複数の種結晶5のうち、c軸方向の長さが35mm〜45mm、c軸を横切る断面の面積が0.8mm〜4.0mm、c軸と垂直の断面の最大径dとc軸方向の最大長さLとの比L/dが20以上の種結晶5を複数選別した。選別された種結晶5の格子定数をX線回折装置で測定した。X線回折装置はBruker AXS社製のd8 Discover(登録商標)を使用した。X線管球の陽極材として銅(Cu)を用い、電圧40kV、電流40mAとしてモノクロメーターを2結晶Ge(400)とし、スリットを縦幅0.5mm×横幅1mmとして測定を行った。種結晶5のm面((10−10)面)67を上にしてステージ上に保持し、(20−21)面で逆格子空間マッピング(Reciprocal Space Map:RSM)を行った。その結果からm軸長、a軸長、及びc軸長を算出した。格子定数を測定した種結晶5から7つの種結晶5を選別し、それぞれ実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3とした。表1に種結晶5のa軸長及びc軸長の測定結果を示す。
Figure 2017014029
<結晶成長工程>
図3に示す第2の製造装置41を用いてバルク状の窒化ガリウム結晶45を製造した。全ての実施例及び比較例において同様の結晶成長条件で結晶成長を行った。始めにアルゴンガス雰囲気のグローブボックス中で、反応容器13の底面の中心部に1つの種結晶5を設置した。内径200mmの反応容器13を用いた。次いで、反応容器13内にガリウム、ナトリウム、及びカーボンを充填した。ガリウムとナトリウムのモル比を0.3:0.7とし、カーボンはガリウム及びナトリウムの全モル数に対して1%とした。
次いで、反応容器13を内部容器12内に入れ、内部容器12をグローブボックスから取り出し、第2の製造装置41に組み込んだ。次いで、内部容器12内の全圧を2.2MPaにし、ヒータ14に通電して反応容器13を結晶成長温度870℃まで昇温し、窒素ガス圧を3.2MPaとした。反応容器13の回転をさせることにより、次のように撹拌を行った。加速及び減速を3rpm/秒とした。加速後15rpmに達したら15rpmで30秒維持した。減速させて反応容器13が停止したら停止期間を1秒設けた。その後回転方向を逆にし、上記回転制御を繰り返した。このような撹拌を1600時間続け、結晶成長を行った。
結晶成長終了後、反応容器13を20℃程度まで冷却し、反応容器13から成長後の窒化ガリウム結晶45を取り出した。成長後の窒化ガリウム結晶45は図4Aに示す形状をしており、六角柱の上に六角柱の上面を底面とする六角錐が乗った柱状バルク形状であった。成長後の窒化ガリウム結晶45の内部には種結晶5が包含されていた。それぞれの実施例及び比較例で得られた窒化ガリウム結晶45の最大径は59〜63mmであった。比較例1〜3の窒化ガリウム結晶45にはクラックが入っていた。
<結晶加工工程>
成長後の窒化ガリウム結晶45をマルチワイヤーソーを用いてc面に平行にスライスし複数の窒化ガリウム結晶基板61を製造した。比較例1〜3で製造した窒化ガリウム結晶基板61のうちの幾つかにはクラックが入っていた。そのため、比較例1〜3における
基板の加工及び評価はクラックが無い基板を選んで行った。
スライスした窒化ガリウム結晶基板61の両面を研削して平坦にし、ダイヤモンド砥粒を用いて研磨し、最後にCMPを行ってc面を主面69とする窒化ガリウム結晶基板61を完成させた。得られた窒化ガリウム結晶基板61は図5A及び図5Bに示す形状をしていた。c軸を横切る断面が主面69であり、主面69は種結晶5からなる中央領域64と、中央領域64を取り囲むように形成された6つの成長分域65と、隣り合う成長分域65の境界面66とを有していた。中央領域64は主面69と略相似形で且つ主面69の重心から主面69の面積の約1%に相当する面積を有していた。
<基板の格子定数測定>
実施例1〜4及び比較例1〜3で製造された窒化ガリウム結晶基板61の格子定数を測定した。窒化ガリウム結晶基板61を、c面(主面69)を上方に向けてX線回折装置のステージに保持し、(10−14)面で逆格子空間マッピングを行った。その結果からm軸長、a軸長、及びc軸長を算出した。測定は窒化ガリウム結晶基板61の中央領域64及び各成長分域65の中心位置で行った。表1には中央領域64のa軸長及びc軸長の格子定数と、6つ成長分域65のa軸長及びc軸長の格子定数の平均値とが示されている。
図6は、成長前の種結晶5のc軸長の格子定数と、成長前後の種結晶5のa軸長の格子定数差との関係を示すグラフである。図6から成長前の種結晶5のc軸長の格子定数が小さい程、成長前後の種結晶5のa軸長の格子定数差が大きくなることがわかる。また、種結晶5のc軸長の格子定数が0.517nmより小さい場合には、成長前後のa軸長の格子定数差が大きくなる現象が顕著に表れている。
<ラマンシフト量の測定>
実施例1〜4及び比較例1〜3で製造した各窒化ガリウム結晶基板61のc面(主面69)についてE2フォノンモードのラマンシフト量を測定した。励起光としてはHe−Neレーザーの波長632.8nmの発振線を用いた。測定時の環境温度は25±0.5度であった。He−Neレーザーを間欠で照射し、窒化ガリウム結晶基板61の温度上昇がラマンシフト量に影響を与えないように測定した。
表1に、中央領域64のラマンシフト量と成長分域65のラマンシフト量との関係を示す評価結果が示されている。実施例1〜4で製造した窒化ガリウム結晶基板61においては、中央領域64のラマンシフト量の最大値と成長分域65のラマンシフト量の平均値との差が0.80cm−1より小さく、成長分域65のラマンシフト量の最大値と最小値との差(基板内分布)が0.50cm−1未満であった。ここで、成長分域65のE2フォノンモードのラマンシフト量の最大値と最小値との差は、主面69内における応力の分布の大きさを示している。比較例1〜3で製造した窒化ガリウム結晶基板61においては、中央領域64のラマンシフト量の最大値と成長分域65のラマンシフト量の平均値との差が0.80cm−1より大きく、成長分域65のラマンシフト量の最大値と最小値との差(基板内分布)が0.50cm−1以上であった。表1から、中央領域64のラマンシフト量の最大値と成長分域65のラマンシフト量の平均値との差が小さい程、成長分域65における応力の分布が小さくなることがわかる。
<半導体デバイスの製造についての評価>
実施例1〜4及び比較例1〜3で製造された窒化ガリウム結晶基板61上にLEDを製造し、その歩留に基づいて窒化ガリウム結晶基板61の品質を評価した。先ず、窒化ガリウム結晶基板61の主面69上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、n型GaN層/クラッド層/GaN層とInGaN層との2層構造が複数層重ねられたMQW(Multi-Quantum Well)/クラッド層/p型GaN層を形成し、活性化処理によりp型GaN層を低抵抗化した。次いで、素子分離溝を形成した後、GaN基板の裏面にn電極を形成し、積層構造の上部にp電極を形成することにより、LEDを完成させた。
完成したLED素子の性能を評価し、仕様外を不良と判定した。表1に、実施例1〜4及び比較例1〜3で製造した窒化ガリウム結晶基板61上のLEDの歩留を示すデバイス評価が示されている。表1から、実施例1〜4で作製した窒化ガリウム結晶基板61の歩留が高く、比較例1〜3で作製した窒化ガリウム結晶基板61の歩留が低いことがわかる。上記ラマンシフト量の評価結果と合わせて考えると、成長分域65のラマンシフト量の最大値と最小値の差(基板内分布)が0.50cm−1以下であれば、歩留が向上することがわかる。なお、中央領域64上のLEDは全ての実施例1〜4及び比較例1〜3においても不良となった。
<フォトルミネッセンス(PL)の測定>
実施例1で製造した窒化ガリウム結晶基板61の主面69をPLで測定した。図7は、中央領域64に対するPLスペクトルの測定結果を示すグラフである。図8は、成長分域65に対するPLスペクトルの測定結果を示すグラフである。図7から、中央領域64については605nm近傍にブロードなピークがあり、364nm近傍にバンド端に起因する発光があることがわかる。図8から、成長分域65については540nm付近にブロードなピークがあることがわかる。本実施の形態においては成長分域65が6つ存在するが、いずれの成長分域65についても、ピークの強さに多少の差はあるが、ピークの位置は同様であった。実施例2〜4及び比較例1〜3で製造した窒化ガリウム結晶基板61についても同様の結果が得られた。以上のことから、中央領域64と成長分域65とではPLスペクトルの特性が異なることがわかる。
<転位密度の評価>
実施例1で製造した窒化ガリウム結晶基板61の主面69をカソードルミネッセンス(CL)で観察し、転位密度の評価を行った。なお、約100μm×100μmの倍率となる観察視野で観察を行い、当該観察視野内のダークスポットの数から転位密度を算出した。
中央領域64の転位密度は約2×10cm−2であった。成長分域65についてはほとんどの観察視野内で転位は観察されなかったが、稀に1〜2個のダークスポットが存在し、その転位密度は2×10cm−2未満であった。実施例2〜4及び比較例1〜3で製造した窒化ガリウム結晶基板61についても同様の結果が得られた。一般的に転位は結晶の成長方向に対して平行方向に伸びるため、中央領域64と成長分域65との間で転位密度の差が生じていると推察される。すなわち、中央領域64の成長方向はc軸方向(<0001>方向)であるため、中央領域64においてはc軸方向への転位が多く、c面を主面69とする窒化ガリウム結晶基板61においては貫通転位として観察される。これに対し、成長分域65はc軸に対して垂直方向に成長するため、成長分域65においてはc軸に対して垂直方向への転位が多く、c面を主面69とする窒化ガリウム結晶基板61においては転位が観察されにくいと推察される。以上のことから、中央領域64と成長分域65とでは転位の生じ方が異なることがわかる。
1 第1の窒化ガリウム結晶製造装置(第1の製造装置)
11 外部耐圧容器
12 内部容器
13 反応容器
14 ヒータ
15 窒素ガス供給管
16 希釈ガス供給管
17 混合ガス供給管
18,19,20 分岐管
21,22,23,24,25 バルブ
28,29 圧力制御装置
31 圧力計
41 第2の窒化ガリウム結晶製造装置(第2の製造装置)
45 窒化ガリウム結晶
51 回転モータ
52 回転軸
53 回転盤
54 撹拌板
61 窒化ガリウム結晶基板
64 中央領域
65 成長分域
66 境界面
67 m面
69 主面
特開2008−94704号公報 特開2011−213579号公報

Claims (6)

  1. a軸長の格子定数が0.3189nmより小さい柱状の第1の窒化ガリウム結晶を準備する準備工程と、
    前記第1の窒化ガリウム結晶の周囲に第2の窒化ガリウム結晶を成長させる成長工程と、
    を備えることを特徴とする窒化ガリウム結晶の製造方法。
  2. 前記第1の窒化ガリウム結晶のc軸長の格子定数が0.5170nmより小さい、
    ことを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム結晶の製造方法。
  3. 前記準備工程は、
    フラックス法により1つ以上の窒化ガリウム結晶を製造する第1の工程と、
    前記1つ以上の窒化ガリウム結晶の中から前記第1の窒化ガリウム結晶を選別する第2の工程と、
    を含む請求項1又は2に記載の窒化ガリウム結晶の製造方法。
  4. a軸長の格子定数が0.3189nmより小さい柱状の第1の窒化ガリウム結晶の周囲に成長した窒化ガリウム結晶であって、
    c軸を横切る主面において、前記第1の窒化ガリウム結晶の位置に対応する中央領域のE2フォノンモードのラマンシフト量が前記中央領域の外側に形成された成長分域の前記ラマンシフト量より大きい、
    ことを特徴とする窒化ガリウム結晶。
  5. a軸長の格子定数が0.3189nmより小さい柱状の第1の窒化ガリウム結晶の周囲に成長した第2の窒化ガリウム結晶のc軸を横切る断面を主面とする窒化ガリウム結晶基板であって、
    前記主面は、前記第1の窒化ガリウム結晶の位置に対応する中央領域と、前記中央領域より外側に形成された6つの成長分域と、隣り合う前記成長分域の境界部に形成された6つの境界面とを含み、
    前記中央領域のE2フォノンモードのラマンシフト量が前記成長分域の前記ラマンシフト量より大きい、
    ことを特徴とする窒化ガリウム結晶基板。
  6. 前記ラマンシフト量は、10℃以上30℃以下におけるE2フォノンモードのラマンシフト量であり、
    前記中央領域の前記ラマンシフト量の最大値と、前記各成長分域の前記ラマンシフト量の平均値との差が0.8cm−1より小さい、
    ことを特徴とする請求項5に記載の窒化ガリウム結晶基板。
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