JP2017008365A - 耐熱性に優れためっき材及びその製造方法 - Google Patents

耐熱性に優れためっき材及びその製造方法 Download PDF

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【課題】175℃といった高温でも、所望の耐熱性を維持することができるSnめっき材及びその製造方法を提供する。【解決手段】CuまたはCu合金からなる導電性基材上にNiまたはNi合金からなる第一下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材であって、該Snめっき材は圧延方向に対して垂直方向の断面を見たときに、前記第一下地層と前記中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個有する、Snめっき材、及びその製造方法と用途。【選択図】なし

Description

本発明は、車載部品、電気電子部品、リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット等に好適なSnめっき材及びその製造方法と用途に関する。
電気接点材には、従来から電気伝導性に優れた銅(Cu)または銅合金が利用されてきたが、近年は接点特性の向上が進み、銅または銅合金をそのまま用いるケースは減少している。このような従来の材料に代わって銅または銅合金上に各種表面処理した材料が製造・利用されている。特に電気接点材として、電気接点部に銅または銅合金上にスズ(Sn)またはSn合金がめっきされた部材が汎用されている。
このめっき材料は、導電性基材の優れた導電性と強度、およびめっき層の優れた電気接続性と耐食性とはんだ付け性を備えた高性能導電体として知られており、電気・電子機器に用いられる各種の端子やコネクタなどに広く用いられている。このめっき材料は、通常、銅などの導電性基材の合金成分が前記めっき層に拡散するのを防止するため、基材上にバリア機能を有するニッケル(Ni)、コバルト(Co)などが下地めっきされる。
このめっき材料を端子として用いた場合、例えば自動車のエンジンルーム内などの高温環境下では、端子表面のSnめっき層のSnが易酸化性のため、Snめっき層の表面に酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜は脆いため端子接続時に破れて、その下の未酸化Snめっき層が露出して良好な電気接続性が得られる。
しかし、近年の電気接点材の使用環境として、高温環境下において使用されるケースが多くなっている。例えば自動車のエンジンルーム内でのセンサー用接点材料などは、100℃〜200℃等の高温環境下で使用される可能性が高まっている。このため、従来の民生機器で想定された使用温度よりも高温における接点特性等の信頼性が求められている。特に接点特性の信頼性を左右する原因として、高温下では、基材成分の拡散および表面酸化により最表層での接触抵抗を増大させてしまうことが問題となっている。そのため、この基材成分の拡散抑制および酸化防止について種々検討がなされてきた。
特許文献1では、CuまたはCu合金基材の表面上に、NiまたはNi合金層が形成され、最表面側に厚さ0.25−1.5μmのSnまたはSn合金層が形成され、前記NiまたはNi合金層と前記SnまたはSn合金層の間にCuとSnを含む中間層が1層以上形成され、これらの中間層のうち前記SnまたはSn合金層と接している中間層のCu含有量が50質量%以下、Ni含有量が20質量%以下であり且つ平均結晶粒径が0.5〜3.0μmとすることで、はんだ付け性、耐ウィスカ性および耐熱信頼性などの特性を有し、さらに、プレス加工性に優れためっき材料が得られている。
特許文献2では、CuまたはCu合金からなる基材表面に、Ni層、Cu−Sn合金層及びSn層からなる表面めっき層がこの順に形成され、かつ前記Ni層の厚さが0.1〜1.0μm、前記Cu−Sn合金層の厚さが0.1〜1.0μm、前記Cu−Sn合金層のCu濃度が35〜75at%、前記Sn層の厚さが0.5μm以下とすることで、高温雰囲気下で長時間経過後も電気的信頼性(低接触抵抗)を維持することができ、亜硫酸ガス耐食性に優れ、厳しい加工で割れが発生しないめっき材料が得られている。
特開2003−293187 特開2004−068026
近年、例えば車載部品においては、環境温度の高温化や電気駆動車の普及による電流量増加により、これまで以上に材料に高温下での良好な電気接続性(以下、単に耐熱性という。)が求められている。その他の用途においても、環境温度の高温化や、部品の小型化や高出力化に伴う回路電流密度の増加が見られており、やはり耐熱性の向上が求められている。
特許文献1、2では、耐熱性の指標として160℃での試験を実施している。しかし、この水準をクリアしただけでは近年要求される耐熱性に十分に応じることはできない。例えば、175℃での試験においては、導電性基材から拡散したCuが表面のSnと反応して化合物を形成し、表面のSnが消滅することで電気接続性が低下することがわかってきた。
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、175℃といった高温でも、所望の耐熱性を維持することができるSnめっき材及びその製造方法と用途を提供することである。
本発明者らは、車載部品、電気電子部品、リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット等に好適なSnめっき材について鋭意研究を行い、Snめっき材にボイドを導入することで課題を解決することを想起した。
ここで、この種のめっき材料を端子として用いる場合、雄端子と雌端子を嵌合する際にめっきが剥離し、電気接続性が損なわれないように、耐摺動剥離性が要求される。これに対し、めっき層に欠陥が含まれる場合、そこが剥離の起点となり、耐摺動剥離性が低下してしまうことがある。そのため、めっき材に、欠陥の一種であるボイドを導入することは一般には、忌避されている。
そのような状況の下、本発明者らは、敢えてSnめっき材に少量のボイドを導入することにより、良好な耐摺動剥離性を維持しつつ、上記課題を解決することを見出したものである。
より具体的には、本発明者らは、CuまたはCu合金からなる導電性基材上にNiまたはNi合金、CuSn化合物、SnまたはSn合金の順に各層を形成し、該Snめっき材が圧延方向に対して垂直方向の断面を見たときに、NiまたはNi合金層とCuSn化合物層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個有することにより、従来と同等の良好な耐摺動剥離性を維持しながら、耐熱性に優れたSnめっき材が得られることを見出した。
本発明によれば、下記の手段が提供される。
(1)CuまたはCu合金からなる導電性基材上にNiまたはNi合金からなる第一下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材であって、該Snめっき材は圧延方向に対して垂直方向の断面を見たときに、前記第一下地層と前記中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個有することを特徴とするSnめっき材。
(2)CuまたはCu合金から成る導電性基材上にNiまたはNi合金からなる第一下地層、CuまたはCu合金からなる第二下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材であって、該Snめっき材は圧延方向に対して垂直方向の断面を見たときに、第二下地層と中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個有することを特徴とするSnめっき材。
(3)前記第二下地層の厚さが0〜0.1μmであることを特徴とする(2)項記載のSnめっき材。
(4)前記表面層の厚さが0.2〜5μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のSnめっき材。
(5)前記中間層の厚さが0.1〜1μmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のSnめっき材。
(6)前記第一下地層の厚さが0.1〜2μmであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のSnめっき材。
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のSnめっき材を使用した車載部品。
(8)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のSnめっき材を使用した電気電子部品。
(9)CuまたはCu合金から成る導電性基材上に、NiまたはNi合金からなる第一下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材の製造方法であって、
前記導電性基材上に、前記第一下地層、CuまたはCu合金からなる第二下地層、前記表面層をこの順に形成した後、リフロー処理により前記第二下地層と前記表面層を、前記第二下地層が無くなるまで反応させて前記中間層を形成し、
前記第二下地層を形成する、CuまたはCu合金めっきを形成する際の浴温を30〜60℃、電流密度を6〜30A/dmに調整することにより、前記リフロー処理によって、前記第一下地層と前記中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個形成することを特徴とする、Snめっき材の製造方法。
(10)CuまたはCu合金から成る導電性基材上に、NiまたはNi合金からなる第一下地層、CuまたはCu合金からなる第二下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材の製造方法であって、
前記導電性基材上に、前記第一下地層、前記第二下地層、前記表面層をこの順に形成した後、リフロー処理により前記第二下地層と前記表面層を、前記第二下地層が一部残るよう、反応させて前記中間層を形成し、
前記第二下地層を形成する、CuまたはCu合金めっきを形成する際の浴温を30〜60℃、電流密度を6〜30A/dmに調整することにより、前記リフロー処理によって、前記第二下地層と前記中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個形成することを特徴とする、Snめっき材の製造方法。
本発明のSnめっき材によれば、第一下地層と中間層の界面、あるいは第二下地層と中間層の界面に所定の個数でボイドを有することで、導電性基材から表面層への基材成分Cuの拡散を抑制し、高温下における電気接続性を維持することができる。
本発明のSnめっき材の一実施形態の側面断面図である。 本発明のSnめっき材の別の実施形態の側面断面図である。 実施例で行った摺動剥離試験の側面図である。
本発明のSnめっき材の好ましい一実施形態について、詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態のSnめっき材(10)は、CuまたはCu合金からなる導電性基材(1)上にNiまたはNi合金からなる第一下地層(2)、CuSn化合物からなる中間層(4)、SnまたはSn合金からなる表面層(5)の順に各層が形成された構成である。場合によっては図2に示したように、第一下地層(2)と中間層(4)の間にCuまたはCu合金からなる第二下地層(3)を形成しても良い。
導電性基材(1)の形状には特に制限は無く、例えば板、条、箔、線などがある。以下では実施形態として板材、条材について説明するが、その形状はこれらに限定されるものではない。導電性基材(1)には、CuまたはCu合金が用いられる。CuまたはCu合金の種類は特に限定されるものではなく、使用する用途の強度、導電率等の要求に応じて、適宜選択すれば良い。
導電性基材(1)に用いることができる銅合金の一例として、CDA(Copper Development Association)掲載合金である「C14410(Cu−0.15Sn、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC3)」、「C19400(Cu−Fe系合金材料、Cu−2.3Fe−0.03P−0.15Zn)」、「C18045(Cu−0.3Cr−0.25Sn−0.5Zn、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC64T)」、「C64770(Cu−Ni−Si系合金材料、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC−97)」、「C64775(Cu−Ni−Si系合金材料、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC−820)」等を用いることができる。(なお、前記銅合金の各元素の前の数字の単位は銅合金中の質量%を示す。)また、TPC(タフピッチ銅)やOFC(無酸素銅)、りん青銅、黄銅(例えば、70質量%Cu−30質量%Zn。7/3黄銅と略記する。)等も用いることができる。導電性や放熱性を向上させるという観点からは、導電率が5%IACS以上の銅合金の条材とすることが好ましい。なお、銅合金を導電性基材(1)として取り扱う時での本発明の「基材成分」とは、基金属である銅のことを示すものとする。導電性基材(1)の厚さには特に制限はないが、通常、0.05〜2.00mmであり、好ましくは、0.1〜1.2mmである。
第一下地層(2)は、例えばNiが用いられ、導電性基材(1)から表面層(5)への基材成分Cuの拡散を抑制する拡散バリア層として作用する。第一下地層(2)の厚さは0.1〜2μmが好ましく、0.2〜1μmがより好ましい。薄すぎると基材成分Cuの拡散抑制効果が小さくなり、Snめっき材(10)の耐熱性が低下する。また厚すぎると曲げ加工性が低下し、曲げ部の割れが生じる恐れがある。また第一下地層(2)はNi合金で形成されていても良く、例えばNi−P、Ni−Cu、Ni−Cr、Ni−Sn、Ni−Zn、Ni−Fe等を用いることができる。
中間層(4)は、第一下地層(2)上に第二下地層(3)、表面層(5)を順に形成した後にリフロー処理することで、第二下地層(3)と表面層(5)が反応することで得られ、主にCuSnとCuSnからなる。主にCuSnとCuSnからなるとは、CuSnとCuSnが50質量%以上で構成されていることを意味する。中間層(4)は表面層(5)と第一下地層(2)の反応を防止する拡散バリア層として作用する。中間層(4)の厚さは0.1〜1μmであることが好ましく、0.2〜0.8μmであることがより好ましい。薄すぎると拡散バリア層としての効果が小さくなり、表面層(5)と第一下地層(2)の反応が進み、Snめっき材(10)の耐熱性が低下する。また厚すぎると曲げ加工性が低下し、曲げ部の割れが生じる恐れがある。
表面層(5)は、接点の電気的接続性を担保するために必要である。表面層(5)の厚さは0.2〜5μmであることが好ましく、0.3〜2μmであることがより好ましい。薄すぎると、高温下でSnが導電性基材(1)から拡散してきたCuと反応して消失し、電気的接続性が損なわれる。厚すぎると、表面付近で硬質な中間層(4)の影響が薄れ、軟質なSnまたはSn合金である表面層(5)の影響が大きくなることから、嵌合型端子等の挿抜の際に挿抜力が増大し、作業負荷が増大する。特に2μm以下の厚さとすることで、顕著に挿入力を低減することができる。表面層(5)はSn合金であっても良く、例えばSn−Cu、Sn−Bi、Sn−Pb、Sn−Ag、Sn−Sb、Sn−In等を用いることができる。
第二下地層(3)は、第一下地層(2)上に第二下地層(3)、表面層(5)を順に形成した後にリフロー処理した際、中間層(4)の形成に使われることにより、図1に示すように、全て中間層(4)の形成に使われ、消失してしまってもよいし、図2に示すように、一部が使われず、残存しても良い。残存した第二下地層(3)の厚さは、0〜0.1μmであることが好ましく、0〜0.05μmであることがより好ましい。厚すぎると、高温下で表面の表面層(5)と反応し、耐熱性低下の原因となる。第二下地層(3)とするCu合金としては、例えば、Cu−Ni、Cu−Sn等を用いることができる。
本実施形態においては、第一下地層(2)と中間層(4)の界面、あるいは第二下地層(3)と中間層(4)の界面に、ボイド(6)が形成される。ボイドは、第一下地層(2)上に第二下地層(3)、表面層(5)を順に形成した後にリフロー処理した際、空孔欠陥を介した表面層(5)中への第二下地層(3)成分であるCuの拡散と、第二下地層(3)中への表面層(5)成分であるSnの拡散の速度差により、空孔欠陥が溜まることで形成される。本ボイドが形成されることで、ボイド形成箇所における導電性基材(1)から表面の表面層(5)へのCuの拡散が防止され、Snめっき材(10)全体で見たときのCuの拡散量が少なくなり、結果として高温下における電気接続性を維持することができる。ボイドは、第二下地層(3)が全て中間層(4)の形成に使われる場合、第一下地層(2)と中間層(4)の界面に形成され、第二中間層(3)が中間層形成後に残存する場合、第二下地層(3)と中間層(4)の界面において形成される。ボイドは、Snめっき材(10)の圧延方向に対して垂直方向の断面を見たときの界面長さ20μm当たりに1〜15個形成され、2〜10個形成されることが好ましい。ここでいうボイドとは、Snめっき材(10)の圧延方向に対して垂直方向の断面を見たときに、長さ0.1μm以上のサイズのものを表す。なお本明細書においてボイドの長さを表す場合は、上記界面長さ20μmを計測したときの線上で計測した長さとするものとする。また本発明において、ボイドの長さの上限は長さ3μmである。長さ3μmを超えるボイドが形成されると、耐摺動剥離性が低下する。ボイド数が少なすぎる場合、ボイドによる導電性基材(1)から表面層(5)への基材成分Cuの拡散抑制効果は得られず、良好な耐熱性は得られない。多すぎる場合、ボイドが形成される界面の密着性が低下し、耐摺動剥離性の低下により、例えば嵌合型端子等の挿抜時、摺動によりめっき剥離が生じ、電気的接続性が得られなくなる。
次に、本実施形態のSnめっき材(10)の製造方法について説明する。本実施形態のSnめっき材(10)は通常、CuまたはCu合金からなる導電性基材(1)上にNiまたはNi合金めっき→CuまたはCu合金めっき→SnまたはSn合金めっきを順に行い、その後リフロー処理を行なうことで製造される。本実施形態の製造方法においては、CuまたはCu合金めっきのめっき条件が重要であり、浴温を30〜60℃、電流密度を6〜30A/dmに調整する。各工程の前後に、脱脂、酸洗、水洗、乾燥処理を適宜行ってもよい。本発明の製造方法は、従来と同程度の工程数でありながら、それぞれのめっき工程条件、特にCuまたはCu合金めっきのめっき条件を適切に調整することで、材料特性の向上を実現した。
<第一下地層(2)を形成するNiまたはNi合金めっき>
NiまたはNi合金は、一般的な方法でめっきすれば良い。めっき浴としては、例えばスルファミン浴やワット浴、硫酸浴等を使用できる。めっき条件は、浴温20〜60℃、電流密度1〜20A/dmでめっきすればよい。
<第二下地層(3)を形成するCuまたはCu合金めっき>
CuまたはCu合金めっき中の空孔欠陥の数を制御することで、前記ボイドの数を制御できる。通常、ボイドの形成を回避するために空孔欠陥を極力導入しないことが重要となる。一方、本発明においては、あえて空孔欠陥を導入、制御することで、良好な耐熱性を有するSnめっき材(10)が得られる。空孔欠陥の数は、浴温、電流密度、撹拌強度を調整することで決まる。また添加剤の種類、添加濃度も影響する。空孔欠陥の数を増加させるためには、例えばCuめっきの結晶粒径を小さくすれば良く、浴温を下げる、電流密度を上げる、撹拌強度を上げる等で調整することができる。具体的には、浴温を30〜60℃程度、電流密度を6〜30A/dm程度の範囲で制御する。撹拌強度は例えば、撹拌速度を300〜1000rpmの範囲に調整すればよい。めっき浴としては、例えば硫酸浴やシアン浴を使用できる。
<表面層(5)を形成するSnまたはSn合金めっき>
SnまたはSn合金は、一般的な方法でめっきすれば良い。めっき浴としては、例えば硫酸浴等を使用できる。めっき条件は、浴温10〜40℃、電流密度1〜30A/dmでめっきすればよい。
<リフロー処理>
上記表面層(5)まで形成した後のリフロー処理は、一般的な方法で実施できる。例えば400〜800℃に設定した炉内に材料を通過させ、5〜20秒加熱した後、冷却すればよい。リフロー処理により、第二下地層(3)と表面層(5)が反応し、中間層(4)が形成される。
ここでボイド(6)は、第二下地層(3)と中間層(4)の間に形成される。
したがって、リフロー処理により第二下地層(3)と表面層(5)を、第二下地層(3)が無くなるまで反応させて中間層(4)を形成した場合は、図1のように第一下地層(2)と中間層(4)の間にボイド(6)が形成される。
またリフロー処理により第二下地層(3)と表面層(5)を、第二下地層(3)が一部残るよう、反応させて中間層(4)を形成した場合は、図2のように第二下地層(3)と中間層(4)の間にボイド(6)が形成される。
本実施形態のSnめっき材(10)は、第一下地層(2)と中間層(4)の界面、あるいは第二下地層(3)と中間層(4)の界面に所定の数でボイドが形成され、導電性基材(1)から表面層(5)へのCuの拡散を抑止し、高温下で使用しても電気的接続性を維持することができる。
(Snめっき材(10)の用途)
本実施形態のSnめっき材(10)は、特に高温下での耐熱性(電気接続性)に優れる。このため本発明のSnめっき材(10)は、小型端子、高圧大電流端子等の車載部品の他、端子、コネクタ、リードフレームなどの電気電子部品に好適である。
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
板厚0.25mmの銅合金基材(商品名:EFTEC−97)に電解脱脂、酸洗を行った後、Niめっき、Cuめっき、Snめっきを順に施し、700℃に保持した炉中を5〜10秒通過させリフロー処理した。各めっき条件を表1に示す。なお、Cuめっきに関しては、リフロー処理後のボイド数が規定の範囲に収まるように、浴温、電流密度、撹拌速度を適宜調整した。浴温は30〜60℃、電流密度は6〜30A/dm、撹拌速度は300〜1000rpmの範囲で調整した。
このような条件で、後述の表2に示す通り、本発明の範囲に入る例として、層厚構成の異なる発明例1〜8のSnめっき材(10)を作成した。
また比較例として、ボイド数が本発明の規定から外れているSnめっき材も作製した(比較例1、2)。
Figure 2017008365
[カソード電解脱脂]
脱脂液:NaOH 60g/リットル
脱脂条件:2.5A/dm、温度60℃、脱脂時間60秒
[酸洗]
酸洗液:10%硫酸
酸洗条件:30秒 浸漬、室温
このようにして製造した供試材について、下記の評価を実施した。
(Snめっき材の層厚測定)
JIS H 8501の10に記載された定電流溶解法により、Snめっき材の各層の層厚を測定した。
(組織観察−ボイド数)
SEM(走査型電子顕微鏡)により、Snめっき材の圧延方向に対して垂直方向の断面を観察し、第一下地層(2)と中間層(4)の界面、あるいは第二下地層(3)と中間層(4)の界面のボイド数を計測した。観察は、Snめっき材(10)について圧延方向に対して垂直方向の断面に湿式研磨およびバフ研磨を施し、エッチング後、SEMにて5000〜10000倍の倍率で行った。第一下地層(2)と中間層(4)の界面、あるいは第二下地層(3)と中間層(4)の界面について、界面長100μmの範囲を計測し、20μm当たりの、長さ0.1μm以上のボイド数に換算した。各層の界面の状態は、2次電子像観察、反射電子像観察、SEMに付随したEDX(エネルギー分散型X線分光法)を用いた元素マッピングを併用して用いることで判断した。
(高温下での耐熱性)
160℃、1000時間加熱後のSn残存量(160℃耐熱性)と、175℃、240時間加熱後のSn残存量(175℃耐熱性)をJIS H 8501の10に記載された定電流試験法で測定し、それぞれSnが少しでも残存していると評価されたものをA(良)、全く残存していないと評価されたものをD(劣)とした。
(めっき膜の耐摺動剥離性)
耐摺動剥離性の試験としては、Snめっき材(10)の表面で可動片を摺動させ、該摺動後にめっき剥離の有無を調べた。この摺動工程では、まず図3に示すように、台座(12)上に、固定片としてのSnめっき材(10)を動かないように固定した。ついで可動片(11)として、固定片と同じSnめっき材(10)を張り出し加工した、0.5mmRのディンプル材を準備した。そしてこの可動片(11)を、1Nの荷重をかけた状態で、Snめっき材(10)表面に押し付け、その荷重をかけたまま、一回(片方向のみ)可動片(11)をSnめっき材(10)表面上で摺動させた。
このように可動片(11)を摺動させた後のSnめっき材(10)の表面のうち、可動片(11)の摺動を受けた箇所を、マイクロスコープで観察した。このような観察において、めっきの剥離が全く生じなかったものをA(良)、少しでも生じたものをD(劣)と評価した。
Figure 2017008365
表2に、作製したSnめっき材(10)の各層のめっき厚(層厚)、ボイド数、特性をまとめて示した。
ここで表2中、「層厚(μm)」と記載した欄の「Ni」と記載した欄は第一下地層(2)の厚さを示し、「Cu」と記載した欄は第二下地層(3)の厚さを示し、「CuSn」と記載した欄は中間層(4)の厚さを示し、「Sn」と記載した欄は表面層(5)の厚さを示す。また「ボイド数(個)」と記載した欄は、上述したとおり、20μm当たりの、長さ0.1μm以上のボイド数を示す。
表2において、本発明の条件を満たす、発明例1〜8はいずれも耐熱性、耐摺動剥離性のすべてに優れていた。これに対し、比較例1は175℃での耐熱性において、比較例2は耐摺動剥離性において、評価が劣る結果となった。
以上から、本発明の条件を満たすSnめっき材が優れた特性を示すことが確認された。
1 導電性基材
2 第一下地層
3 第二下地層
4 中間層
5 表面層
6 長さ0.1μm以上のボイド
10 Snめっき材

Claims (10)

  1. CuまたはCu合金からなる導電性基材上にNiまたはNi合金からなる第一下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材であって、該Snめっき材は圧延方向に対して垂直方向の断面を見たときに、前記第一下地層と前記中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個有することを特徴とするSnめっき材。
  2. CuまたはCu合金から成る導電性基材上にNiまたはNi合金からなる第一下地層、CuまたはCu合金からなる第二下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材であって、該Snめっき材は圧延方向に対して垂直方向の断面を見たときに、第二下地層と中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個有することを特徴とするSnめっき材。
  3. 前記第二下地層の厚さが0〜0.1μmであることを特徴とする請求項2に記載のSnめっき材。
  4. 前記表面層の厚さが0.2〜5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のSnめっき材。
  5. 前記中間層の厚さが0.1〜1μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のSnめっき材。
  6. 前記第一下地層の厚さが0.1〜2μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のSnめっき材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のSnめっき材を使用した車載部品。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のSnめっき材を使用した電気電子部品。
  9. CuまたはCu合金から成る導電性基材上に、NiまたはNi合金からなる第一下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材の製造方法であって、
    前記導電性基材上に、前記第一下地層、CuまたはCu合金からなる第二下地層、前記表面層をこの順に形成した後、リフロー処理により前記第二下地層と前記表面層を、前記第二下地層が無くなるまで反応させて前記中間層を形成し、
    前記第二下地層を形成する、CuまたはCu合金めっきを形成する際の浴温を30〜60℃、電流密度を6〜30A/dmに調整することにより、前記リフロー処理によって、前記第一下地層と前記中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個形成することを特徴とする、Snめっき材の製造方法。
  10. CuまたはCu合金から成る導電性基材上に、NiまたはNi合金からなる第一下地層、CuまたはCu合金からなる第二下地層、CuSn化合物からなる中間層、SnまたはSn合金からなる表面層の順に各層が形成されたSnめっき材の製造方法であって、
    前記導電性基材上に、前記第一下地層、前記第二下地層、前記表面層をこの順に形成した後、リフロー処理により前記第二下地層と前記表面層を、前記第二下地層が一部残るよう、反応させて前記中間層を形成し、
    前記第二下地層を形成する、CuまたはCu合金めっきを形成する際の浴温を30〜60℃、電流密度を6〜30A/dmに調整することにより、前記リフロー処理によって、前記第二下地層と前記中間層の界面長さ20μm当たりに、長さ0.1μm以上のボイドを1〜15個形成することを特徴とする、Snめっき材の製造方法。
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